(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-16
(45)【発行日】2022-02-25
(54)【発明の名称】ピストンポンプ
(51)【国際特許分類】
F04B 1/2064 20200101AFI20220217BHJP
【FI】
F04B1/2064
(21)【出願番号】P 2017231334
(22)【出願日】2017-12-01
【審査請求日】2020-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000241267
【氏名又は名称】豊興工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】花井 真樹
(72)【発明者】
【氏名】逸見 睦生
【審査官】谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】実開昭50-125103(JP,U)
【文献】特開2016-065482(JP,A)
【文献】実開昭59-186489(JP,U)
【文献】実公昭43-007977(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 1/2064
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吸入する吸入ポートと液体を吐出する吐出ポートを形成する弁板と、弁板を内部に配置して吸入ポートに接続する吸入通路と吐出ポートに接続する吐出通路とを形成するポンプ本体と、ポンプ本体の内部に回転自在に軸支して弁板に摺接するシリンダブロックと、シリンダブロックに嵌合してシリンダブロックの回転に応じて往復動する複数個のピストンと、シリンダブロックの回転に伴うピストンの往復動で容積を拡大縮小して吸入ポートと吐出ポートへ交互に連通する複数個のシリンダ室と、ピストンの頭部に当接してピストンの往復動する移動量を設定する斜板とを備え、ポンプ本体に形成した吐出通路は吐出ポートに面する開口を円弧状に窪み形成し、ポンプ本体に形成した吸入通路は吸入ポートに面する開口を円弧状に窪み形成し、両通路は円弧状に形成した開口の内周と外周との間を接続する梁を設け、
開口の窪み深さを周方向の両端部から中央部に向けて漸次深く形成し、最深の窪みの底面に連通し、さらに両通路は中心を介して対称位置で同一形状に形成したことを特徴とするピストンポンプ。
【請求項2】
前記吐出通路は前記梁を前記開口の周方向の中央部に設けたことを特徴とする請求項1に記載のピストンポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダブロックの回転に応じてピストンを往復動して液体を吸入通路から吸入して吐出通路へ吐出するピストンポンプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のピストンポンプは、シリンダブロック(シリンダバレル)の回転に伴いピストンを往復動し、ピストンの往動でシリンダ室の容積が拡大して液体を吸入通路(吸入ポート)からシリンダ室に吸入し、ピストンの復動でシリンダ室の容積が縮小して液体をシリンダ室から吐出通路(吐出ポート)に吐出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、かかる従来のピストンポンプでは、吐出通路をポンプ本体を構成するカバーに円弧状に開口して形成しているため、特に、吐出する液体が高圧だと、カバーの強度不足により吐出通路の開口が圧力の作用で拡がり液体が漏れる問題点があった。
【0005】
本発明の課題は、ポンプ本体に形成する吐出通路の開口からの液体漏れを防止して、高圧の用途に適用し得るピストンポンプを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を達成すべく、本発明は次の手段をとった。即ち、
液体を吸入する吸入ポートと液体を吐出する吐出ポートを形成する弁板と、弁板を内部に配置して吸入ポートに接続する吸入通路と吐出ポートに接続する吐出通路とを形成するポンプ本体と、ポンプ本体の内部に回転自在に軸支して弁板に摺接するシリンダブロックと、シリンダブロックに嵌合してシリンダブロックの回転に応じて往復動する複数個のピストンと、シリンダブロックの回転に伴うピストンの往復動で容積を拡大縮小して吸入ポートと吐出ポートへ交互に連通する複数個のシリンダ室と、ピストンの頭部に当接してピストンの往復動する移動量を設定する斜板とを備え、ポンプ本体に形成した吐出通路は吐出ポートに面する開口を円弧状に窪み形成し、ポンプ本体に形成した吸入通路は吸入ポートに面する開口を円弧状に窪み形成し、両通路は円弧状に形成した開口の内周と外周との間を接続する梁を設け、開口の窪み深さを周方向の両端部から中央部に向けて漸次深く形成し、最深の窪みの底面に連通し、さらに両通路は中心を介して対称位置で同一形状に形成したことを特徴とするピストンポンプがそれである。
【0007】
この場合、前記吐出通路は前記梁を前記開口の周方向の中央部に設けてもよい。
【発明の効果】
【0008】
以上詳述したように、請求項1に記載の発明は、ポンプ本体に形成した吐出通路は吐出ポートに面する開口を円弧状に窪み形成し、円弧状に形成した開口の内周と外周との間を接続する梁を設けた。このため、梁で吐出通路の強度を向上できて、弁板の吐出ポートに面する吐出通路の開口の内周と外周との間が拡がらないから、開口からの液体漏れを防止でき、高圧の用途に良好に適用することができる。また、吸入通路と吐出通路は中心を介して対称位置で同一形状に形成した。このため、シリンダブロックの一方向と一方向と反対の他方向の両回転において、吐出通路の開口からの液体漏れを防止でき、高圧の用途に良好に対応することができる。また、両通路は開口の窪み深さを周方向の両端部から中央部に向けて漸次深く形成し、最深の窪みの底面に連通した。このため、液体を吸入する際に、吸入通路の最深部から深さが浅い部分へ向けて液体を滑らかに移動できるから、吸入通路から吸入ポートを介してシリンダ室へ液体を吸入する吸入効率を向上することができる。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、吐出通路は梁を開口の周方向の中央部に設けた。このため、円弧状に形成した開口を梁の周方向両側で均等に設けることができ、吐出通路の強度をより一層向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態を示したピストンポンプの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づき説明する。
図1において、1はポンプ本体で、円筒状のハウジング2の一端開口を蓋部材3で閉塞すると共に、ハウジング2の他端開口をフランジ部材4で閉塞し、ハウジング2と蓋部材3およびハウジング2とフランジ部材4とをそれぞれ図示しないボルトで固定して構成している。5はポンプ本体1へ回転自在に軸支した駆動軸で、蓋部材3に軸受6を介して軸支すると共に、フランジ部材4に軸受7を介して軸支し、先端をフランジ部材4より突出している。8はポンプ本体1の内部に収装したシリンダブロックで、駆動軸5にスプライン9で結合し、駆動軸5とともにポンプ本体1へ回転自在に軸支している。
【0014】
10はシリンダブロック8に備えた複数個のピストンで、シリンダブロック8の周方向へ等間隔に9個配置し、軸方向へ往復動自在に嵌合して、頭部をシリンダブロック8から突出している。11はシリンダブロック8へピストン10を嵌合して区画形成した9個のシリンダ室で、シリンダブロック8の回転に伴うピストン10の往復動で容積を拡大縮小する。12は液体を吸入する吸入ポート13と液体を吐出する吐出ポート14を貫通形成する弁板で、ポンプ本体1を構成する蓋部材3の内側面3Aに2個のピン12A(
図2、
図3に図示)で固定配置してシリンダブロック8と摺接し、シリンダブロック8の回転に応じてシリンダ室11を吸入ポート13と吐出ポート14へ交互に連通する。
【0015】
15は吸入ポート13に接続する吸入通路、16は吐出ポート14に接続する吐出通路で、それぞれ蓋部材3に形成している。
図2に示す如く、吸入通路15と吐出通路16は径方向の中心Mを介して対称位置に配置し、同一形状に形成している。両通路15、16は弁板12の両ポート13、14に面する開口15A、16Aを蓋部材3の内側面3Aへ円弧状に窪み形成している。15B、16Bは梁で、開口15A、16Aの周方向の中央部に、開口15A、16Aの内周と外周との間を接続して設けている。
【0016】
図3に示す如く、吐出通路16は、開口16Aの窪み深さを周方向の両端部から中央部に向けて漸次深く形成している。詳述すると、吐出通路16は、円弧状の窪みを周方向の両端部に形成した第1窪み16Cと、第1窪み16Cの周方向の内方に形成した第2窪み16Dと、第2窪み16Dの周方向の内方で中央部に形成した第3窪み16Eとの3つの窪みを連設して構成している。そして、吐出通路16は、第1窪み16Cから第2窪み16Dさらに第3窪み16Eへと窪み深さを漸次深く形成し、蓋部材3の外側面3Bから最深の第3窪み16Eの底面に向けて穿設している。
【0017】
吸入通路15は、吐出通路16と同様に、開口15Aの窪み深さを周方向の両端部から中央部に向けて漸次深く形成した3つの窪みを連設して構成し、蓋部材3の外側面3Bから最深の窪みの底面に向けて穿設している。
【0018】
17はフランジ部材4の内側面に一体形成して傾転角を一定にした斜板で、ピストン10の頭部に枢支したシュー18に当接し、ピストン10の往復動する移動量を一定に設定している。19はシュー18の背部に配置した押え板で、シュー18を斜板17に押しつけている。20はシリンダブロック8に隣接して駆動軸5にスプライン9で結合したリテーナで、ばね21力を押ピン22を介して付与され、このばね21力を押え板19へシュー18を斜板17に押しつける方向に付与している。23はポンプ本体1の内部に溜まったドレンを排出する排出口で、ハウジング2の径方向の対称位置に2個穿設し、着脱自在に螺合した栓24で閉塞している。
【0019】
次に、かかる構成の作動を説明する。
図1において、駆動軸5でシリンダブロック8を一方向に回転駆動すると、シュー18が斜板17上を滑動し、ピストン10は左右方向へ往復動する。シリンダ室11はピストン10の左方向への往動で容積を拡大し、吸入通路15から吸入ポート13を経て液体を吸入する。また、シリンダ室11はピストン10の右方向への復動で容積を縮小し、室内の液体を吐出ポート14を経て吐出通路16に吐出する。このように、シリンダブロック8の回転駆動により、ピストン10を一定量往復動して液体を吸入通路15から吸入して吐出通路16に吐出する定容量のポンプ作動を行う。そして、駆動軸5によるシリンダブロック8の回転駆動を停止すると、液体を吸入吐出するポンプ作動を停止する。
【0020】
また、シリンダブロック8を一方向と反対方向の他方向に回転駆動すると、シリンダ室11は吐出通路16から吐出ポート14を経て液体を吸入し、この液体を吸入ポート13を経て吸入通路15に吐出するポンプ作動を行う。そして、シリンダブロック8の回転駆動の停止により、ポンプ作動を停止する。このように、シリンダブロック8の一方向と他方向の両方向への回転駆動で、ポンプ作動を可能にしている。
【0021】
かかる作動において、
図2に示す如く、ポンプ本体1を構成する蓋部材3に形成した吐出通路16は、吐出ポート14に面する開口16Aを円弧状に窪み形成し、円弧状に形成した開口16Aの内周と外周との間を接続する梁16Bを設けた。このため、梁16Bで吐出通路16の強度を向上できて、弁板12の吐出ポート14に面する吐出通路16の開口16Aの内周と外周との間が拡がらないから、開口16Aからの液体漏れを防止でき、高圧の用途に良好に適用することができる。
【0022】
また、吐出通路16は梁16Bを開口16Aの周方向の中央部に設けた。このため、円弧状に形成した開口16Aを梁16Bの周方向両側で均等に設けることができ、吐出通路16の強度をより一層向上することができる。
【0023】
また、吸入通路15は開口15Aの窪み深さを周方向の両端部から中央部に向けて漸次深く形成した。このため、液体を吸入する際に、吸入通路15最深部から深さが浅い部分へ向けて液体を滑らかに移動できるから、吸入通路15から吸入ポート13を介してシリンダ室11へ液体を吸入する吸入効率を向上することができる。
【0024】
また、吸入通路15と吐出通路16は中心Mを介して対称位置で同一形状に形成した。このため、シリンダブロック8の一方向と一方向と反対の他方向の両回転において、吐出通路16もしくは15の開口16Aもしくは15Aからの液体漏れを防止でき、高圧の用途に良好に対応することができる。
【0025】
なお、前述の一実施形態では、斜板17の傾転角を一定にした定容量のピストンポンプとしたが、斜板をポンプ本体1内へ傾転自在に設けて可変容量のピストンポンプとしてもよいことは勿論である。
【符号の説明】
【0026】
1:ポンプ本体
8:シリンダブロック
10:ピストン
11:シリンダ室
12:弁板
13:吸入ポート
14:吐出ポート
15:吸入通路
16:吐出通路
15A、16A:開口
15B、16B:梁