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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-16
(45)【発行日】2022-02-25
(54)【発明の名称】ダイヤフラムバルブ
(51)【国際特許分類】
   F16K 7/12 20060101AFI20220217BHJP
【FI】
F16K7/12 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2017241620
(22)【出願日】2017-12-18
(65)【公開番号】P2019108920
(43)【公開日】2019-07-04
【審査請求日】2020-11-11
(73)【特許権者】
【識別番号】501417929
【氏名又は名称】株式会社キッツエスシーティー
(74)【代理人】
【識別番号】100081293
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 哲男
(72)【発明者】
【氏名】高 朝克図
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-042314(JP,A)
【文献】登録実用新案第3029515(JP,U)
【文献】特開2002-340203(JP,A)
【文献】特開2017-101693(JP,A)
【文献】特許第2775176(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 7/12-7/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボデー内に、ダイヤフラム弁体とこのダイヤフラム弁体が接離される弁座部材とを有するダイヤフラムユニットが着脱自在に装着され、このダイヤフラムユニットは、略環状の保持部材を有し、この保持部材の略中央位置に前記弁座部材が固定され、前記保持部材の上部には、前記ダイヤフラム弁体の周縁部が、前記保持部材のかしめにより保持されていることを特徴とするダイヤフラムバルブ。
【請求項2】
前記保持部材の上面外周縁に環状突起部が形成され、この環状突起部の内周面に前記ダイヤフラム弁体の外周縁が当接してこのダイヤフラム弁体が芯出し状態に保持された請求項1に記載のダイヤフラムバルブ。
【請求項3】
前記保持部材は、中央付近の一次側開口部と、この一次側開口部の周囲に複数設けられた二次側開口部とを有し、前記一次側開口部に前記弁座部材が圧入状態で装着された請求項1又は2に記載のダイヤフラムバルブ。
【請求項4】
前記保持部材は、中央付近の一次側開口部と、この一次側開口部の周囲に複数設けられた二次側開口部とを有し、前記一次側開口部に前記弁座部材が保持用の押え部材を介して装着された請求項1乃至3の何れか1項に記載のダイヤフラムバルブ。
【請求項5】
前記保持部材が、前記ボデーとこのボデーの上部に装着されるボンネットとの間に位置決め状態で固定され、前記弁座部材の一次開口側がボデーに密着された請求項1乃至の何れか1項に記載のダイヤフラムバルブ。
【請求項6】
前記ボデーの当該位置に、前記保持部材の底面側に当接シールするシール部が形成された請求項1乃至の何れか1項に記載のダイヤフラムバルブ。
【請求項7】
前記シール部と前記保持部材との間にガスケットが装着された請求項に記載のダイヤフラムバルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイヤフラムバルブに関し、例えば、ALD(Atomic Layer Deposition:原子層堆積法)プロセスのように極めて高い機能性が要求されるダイヤフラムバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体製造用ガス供給装置では、例えば、ALDに代表されるような短時間でバルブを開閉するプロセスが導入されることが多くなってきている。ALDプロセスでは、約200℃程度或はそれ以上の高温雰囲気の下、ガス供給系から、前駆体、不活性ガス、酸化種ガスなどの複数種のガスが、極めて短いサイクルの高速切換により安定した流量で交互にチャンバーに供給され、チャンバー内のウエハにナノレベルで原子層が一層ずつ均質・均一に積み重ねられて薄膜が形成される。
【0003】
その際、特に、ALDプロセスで使用されるダイヤフラムバルブには、弁閉時のシール性の確保に加えて、およそ200℃の高熱に耐え得る耐熱性、ガスを短時間で正確に供給する流量の安定性、ガスの混合を避けるために高い締切性能を伴いつつ短時間でガスの供給を切替えるための高速作動性、多数回のバルブ開閉サイクルに耐え得る高耐久性などの機能性が要求される。
【0004】
この場合、ALDプロセスでは、前記のようにダイヤフラムバルブを短時間で高速開閉させることで消耗や劣化が早く進みやすくなり、弁体や弁座が故障したり汚れが付着した際には、シール性及び上記機能性を維持できなくなる場合がある。
これを回復するためにはメンテナンスが必要になり、メンテナンスを実施する場合、通常は、ダイヤフラム弁体や弁座等の部品が本体に組み込まれた状態で内部を洗浄したり、或は、バルブ全体を交換することが多い。
【0005】
一方、メンテナンスを容易にするために、ダイヤフラム弁体や弁座が組込まれたユニットを設け、このユニットを本体から取外し可能にし、ユニットごと弁体や弁座を交換可能にしたものが知られている。
例えば、特許文献1のダイヤフラム弁では、ダイヤフラム及び弁座が、離散弁アセンブリとして組み合わされたものが記載され、これにより弁アセンブリを着脱して洗浄したり、カートリッジとして交換可能になっている。この弁アセンブリは、環状弁座担体の外側リムにダイヤフラムが溶接されることにより、ダイヤフラム弁体が弁アセンブリに固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特表2016―505125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1のダイヤフラム弁のように、ダイヤフラム弁体が弁座担体に溶接で固着されている場合、溶接時の熱の影響によりダイヤフラム弁体や弁座担体に熱影響や歪み、余計な応力が発生して残存する可能性がある。これにより、弁閉時のシール性、及びその機能性に悪影響を及ぼすおそれがあり、例えば、ALDプロセスで使用するダイヤフラムバルブでは、シール漏れの発生に加えて、バルブ動作時の耐熱性、流量の安定性、高速の作動性、耐久性などの機能性が低下する可能性が生じる。
【0008】
これに加えて、ダイヤフラム弁体を溶接で弁座担体に固定する場合、均一な溶着状態で高精度に固着する必要があるため、その作業性が悪くなると同時に作業時間も長くなり、歩留りの低下にもつながりやすい。
【0009】
本発明は、上記の問題点を解決するために開発したものであり、その目的とするところは、ダイヤフラム弁体や弁座を取外し可能に設けてメンテナンス可能なダイヤフラムバルブであり、ダイヤフラム弁体や弁座の装着時のバルブ機能への影響を最小限に抑えて、弁閉時の漏れを確実に防ぎつつ、その機能性を十分に発揮しながら開閉動作する製作容易なダイヤフラムバルブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、ボデー内に、ダイヤフラム弁体とこのダイヤフラム弁体が接離される弁座部材とを有するダイヤフラムユニットが着脱自在に装着され、このダイヤフラムユニットは、略環状の保持部材を有し、この保持部材の略中央位置に弁座部材が固定され、保持部材の上部には、ダイヤフラム弁体の周縁部が、保持部材のかしめにより保持されているダイヤフラムバルブである。
【0012】
請求項に係る発明は、保持部材の上面外周縁に環状突起部が形成され、この環状突起部の内周面にダイヤフラム弁体の外周縁が当接してこのダイヤフラム弁体が芯出し状態に保持されたダイヤフラムバルブである。
【0013】
請求項に係る発明は、保持部材は、中央付近の一次側開口部と、この一次側開口部の周囲に複数設けられた二次側開口部とを有し、一次側開口部に弁座部材が圧入状態で装着されたダイヤフラムバルブである。
【0014】
請求項に係る発明は、保持部材は、中央付近の一次側開口部と、この一次側開口部の周囲に複数設けられた二次側開口部とを有し、一次側開口部に弁座部材が保持用の押え部材を介して装着されたダイヤフラムバルブである。
【0015】
請求項に係る発明は、保持部材が、ボデーとこのボデーの上部に装着されるボンネットとの間に位置決め状態で固定され、弁座部材の一次開口側がボデーに密着されたダイヤフラムバルブである。
【0016】
請求項に係る発明は、ボデーの当該位置に、保持部材の底面側に当接シールするシール部が形成されたダイヤフラムバルブである。
【0017】
請求項に係る発明は、シール部と保持部材との間にガスケットが装着されたダイヤフラムバルブである。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に係る発明によると、ダイヤフラム弁体、弁座部材、保持部材によるダイヤフラムユニットを設けていることで、このダイヤフラムユニットをボデー内部から一体に取外しできる。これにより、ダイヤフラムユニットごと洗浄したり交換可能になり、容易にメンテナンスを実施可能になる。保持部材の略中央位置に弁座部材を固定し、一方、保持部材の上面側には、ダイヤフラム弁体及び保持部材の何れか一方或は双方の塑性変形によりダイヤフラム弁体の周縁部を保持している。このため、これらの部品に熱影響や歪み、余分な応力が発生するおそれがなく、ダイヤフラム弁体や弁座の装着時のバルブ機能への影響を最小限に抑えて、弁閉時の漏れを確実に防ぎつつ、ダイヤフラムバルブとしての機能性を十分に発揮可能になる。バルブの動作時には、保持部材に固定された弁座部材に対して、保持部材上面側に保持されたダイヤフラム弁体が高精度に開閉動作し、例えば、ALDプロセスに用いる場合にも、耐熱性、流量の安定性、高速応答性、耐久性等の機能性を十分に発揮しつつ開閉動作可能となる。しかも、塑性変形によりダイヤフラム弁体を装着できるため、製作も容易である。さらには、かしめ加工により、容易にダイヤフラム弁体を保持部材に保持させた状態のダイヤフラムユニットを構成でき、製作時に部品が熱影響を受けたり、歪んだり、余計な応力の影響を受けるおそれがない。このため、加工時にダイヤフラム弁体の弁開閉機能に悪影響を及ぼす部位が変形することがなく、弁閉時のシール性を確保しつつ、耐熱性、流量安定性、高速応答性、耐久性の機能性にも優れた高精度のダイヤフラムバルブを提供できる。ダイヤフラムユニットごとの加工精度のバラツキも少なくなるため、歩留りも向上する。
【0020】
請求項に係る発明によると、ダイヤフラム弁体を保持部材に対して芯出し状態に保持することで、弁体が高精度に動作して適正量のガスを供給でき、異なるバルブごとの性能のバラツキや個体差を抑え、弁体に偏った力が加わることを防いで外部リークやシートリークを阻止し、耐久性も向上できる。
【0021】
請求項に係る発明によると、弁座部材を圧入状態で保持部材の一次側開口部に装着することにより、適宜の治具を用いて弁座部材を保持部材から抜き取り、この弁座部材の交換が可能になる。そのため、弁座部材のみを交換し、その他の部品を再利用することが可能になる。
【0022】
請求項に係る発明によると、保持部材の一次側開口部に押え部材を介して弁座部材を装着することで、この押え部材を弁座部材に対して圧入して弁座部材を保持部材に保持する力を働かせることができ、弁座部材を保持部材に対して強固に固定できる。しかも、適宜の治具で押え部材のみを抜き取るようにすれば、自然に弁座が保持部材から外れるため、治具を弁座部材に接触させて傷付けることなく、容易に弁座部材を取外すことができる。これにより、弁座部材のみの交換はおろか、弁座部材を洗浄して再利用することも可能になる。
【0023】
請求項に係る発明によると、保持部材をボデーとボンネットとの間に位置決め固定しつつ、弁座部材の一次開口側をボデーに密着することにより、弁座部材とボデーとの間の漏れを確実に防ぐことが可能となる。
【0024】
請求項に係る発明によると、ボデーの当該位置に形成したシール部が保持部材の底面側に当接シールすることにより、ボデーと保持部材との間の漏れを確実に防ぐことが可能となる。
【0025】
請求項に係る発明によると、シール部と保持部材との間にガスケットを装着することにより、ボデーのシール部、及びボデーのシール部に対向する保持部材の対向側の潰れや傷の発生を抑え、ダイヤフラムユニットを繰り返し交換した場合にもシール性を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明におけるダイヤフラムバルブの実施形態を示す要部断面図である。
図2図1におけるダイヤフラムユニットを示す拡大断面図である。
図3図1のダイヤフラムバルブが分離した状態を示す断面図である。
図4】本発明におけるダイヤフラムバルブの他の実施形態を示す要部断面図である。
図5図4におけるダイヤフラムユニットを示す拡大断面図である。
図6図4のダイヤフラムバルブが分離した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本発明におけるダイヤフラムバルブの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明のダイヤフラムバルブの実施形態の要部を示した断面図であり、ダイヤフラムバルブの流路開閉部付近を示している。図2は、ダイヤフラムユニットの断面図を示し、図3においては、図1のダイヤフラムバルブの分離状態を示している。
【0028】
図1図3において、本発明のダイヤフラムバルブは、ボデー1、ダイヤフラムユニット2、ボンネット3、ダイヤフラムピース4、駆動軸5、ベース体6を有している。
【0029】
ボデー1は、例えばSUS316Lなどのステンレス材料により、外観略直方体状で容体状に一体形成され、その上部には開口部10が形成され、この開口部10の内周側には雌螺子11が形成されている。雌螺子11よりも奥側には円形状の嵌合部12が形成され、この嵌合部12よりも奥側には空間よりなる弁室13が形成されている。
【0030】
ボデー1の底面側には一次側流路14、二次側流路15が弁室13に連通して形成され、これら一、二次側流路14、15と連通した状態で内部の弁室13にダイヤフラムユニット2が着脱自在に装着される。
ボデー1の当該位置、本実施形態では弁室13の底面側には、断面台形状に突出する環状のシール部16が形成され、このシール部16は、後述する保持部材20の底面側に当接シール可能に設けられる。
【0031】
ダイヤフラムユニット2は、ダイヤフラム弁体21、弁座部材22、保持部材20を有し、これらが一体に組み合わせられて、ボデー1内部に着脱自在に装着される。
【0032】
ダイヤフラム弁体21は、金属製の薄板状の部材が所定枚数重ねられて構成され、自然状態において片側(上方)に向けて中心部を頂点とした緩やかな凸曲面状を呈した外観略円盤状に形成され、この自然状態の形態に自己復帰可能な弾性力を有している。ダイヤフラム弁体21は保持部材20に取付けられ、この保持部材20に取付けられた弁座部材22のシール部位に接離可能に設けられている。
【0033】
弁座部材22は、フッ素樹脂等の樹脂材料により略円筒状に設けられ、保持部材20の略中央位置に設けられる。弁座部材22の外周面の略中間位置には、所定高さの環状凸部25が形成されている。
【0034】
保持部材20は金属材料により略環状に設けられ、中央付近には挿通穴からなる一次側開口部26、この一次側開口部26の周囲には、一次側開口部26よりもやや小径の挿通穴からなる複数の二次側開口部27が形成される。一次側開口部26は、保持部材20の両面側にやや突出した突出部位が形成されてその流路の長さが確保され、この一次側開口部26の内周面の略中間位置には、弁座部材22の環状凸部25と嵌合可能な環状凹部28が形成される。
【0035】
保持部材20の上面外周縁には環状突起部30が形成され、この環状突起部30の内周面は、ダイヤフラム弁体21の外径と略同じか或はやや大径に設けられる。環状突起部30の上端部(先端側)は、かしめ加工等の塑性加工により、内径側(内側)に折り曲げ可能に設けられる。環状突起部30の内周側には環状の台形部29が形成され、この台形部29の上底側に平坦な環状シール面32が設けられる。
【0036】
保持部材20の一次側開口部26には、前述した弁座部材22が圧入状態で装着され、これにより、弁座部材22が保持部材20の略中央位置に固定される。このとき、環状凸部25が環状凹部28に嵌合することで、弁座部材22が保持部材20に位置決め状態で強固に保持され、保持部材20に対する弁座部材22のずれや脱落が防止される。
【0037】
一方、保持部材20上部のシール面32にはダイヤフラム弁体21が載置され、この状態で環状突起部30が内側に絞られてかしめ加工により塑性変形される。これにより、ダイヤフラム弁体21の周縁部が変形した環状突起部30に押えられ、ダイヤフラム弁体21が保持部材20に対して保持される。このとき、ダイヤフラム弁体21は、保持部材20に対して完全に固定されることはなく、無負荷の状態で軽く保持された状態になっている。
ダイヤフラム弁体21の保持部材20への装着後には、かしめ部である環状突起部30の内周面にダイヤフラム弁体21の外周縁が当接した状態となり、ダイヤフラム弁体21が芯出しされた状態となる。
【0038】
前述のように一体化されたダイヤフラムユニット2は、ボデー1の上方より弁室13内に装着され、この上からボンネット3、ダイヤフラムピース4が装着された状態で、ボデー1にベース体6が固定されて一体化される。
【0039】
ボンネット3は、大径の円板部位である大径部40と、小径の円筒部位である小径部41とを有する略筒状に形成される。大径部40は、弁室13内に嵌め込み可能な外径に設けられ、その底面側が凹曲面状に形成される。これにより、大径部40底面の外周縁には、図1においてボンネット3の最も下方に位置する環状の押圧部42が設けられる。小径部41は、後述のベース体6の下部に形成された嵌合凹部43に嵌め込み可能な外径に設けられる。
【0040】
ボンネット3の中央内周には装着穴44が形成され、この装着穴44にダイヤフラムピース4が装着される。ダイヤフラムピース4は、装着穴44に挿着可能な外径の略円柱状に設けられ、挿着後には、装着穴44に対して摺動してボンネット3内を昇降動可能になっている。
【0041】
ベース体6は、ボデー1と図示しないアクチュエータとの間に設けられ、その下部外周にはボデー1の雌螺子11と螺合可能な雄螺子45、下部内周側にはボンネット3の小径部41が嵌合可能な嵌合凹部43が形成される。ベース体6の上部外周側にはおねじ部47が形成され、ベース体6の中央には貫通孔48が形成される。
【0042】
ベース体6の貫通孔48には、Oリング49を介して駆動軸5が昇降動可能に挿着され、この駆動軸5の上部には、例えば、図示しないピストンとシリンダとを有するエア駆動式のエアアクチュエータが設けられる。
【0043】
ベース体6の嵌合凹部43には、ボンネット3の小径部41が嵌合状態で挿着され、この状態で雄螺子45と雌螺子11とが螺合されてベース体6とボデー1とが一体化される。その際、ボンネット3の装着穴44には、ダイヤフラムピース4が挿着されている。ベース体6とボデー1との螺着時には、ベース体6の底面側でボンネット3の大径部40上面が押圧され、このボンネット3底面側の押圧部42によりダイヤフラム弁体21の上面外周縁が押圧され、ダイヤフラムユニット2全体がボンネット3とボデー1のシール部16との間に挟まれた状態でこれらが固着される。
【0044】
これにより、ボデー1とベース体6との間に、ダイヤフラムユニット2と、ダイヤフラムピース4が装着されたボンネット3とが介在された状態で、ダイヤフラムバルブとして一体化される。
【0045】
本実施形態のダイヤフラムバルブは、上記構成により、エアアクチュエータの動作が駆動軸5を介してダイヤフラムピース4に伝達可能に設けられる。駆動軸5が下降してその先端部でダイヤフラムピース4が押圧されたときには、このダイヤフラムピース4が下降してダイヤフラム弁体21の中央付近がその弾性力に抗して押圧され、ダイヤフラム弁体21が中央付近を中心に変形して弁座部材22に着座して弁閉状態となる。
【0046】
一方、エアアクチュエータにより駆動軸5が上昇すると、ダイヤフラム弁体21がその弾性力によりダイヤフラムピース4を押し上げながら凸曲面状に復帰する方向に変形することで、ダイヤフラム弁体21が弁座部材22から離間して弁開状態となる。
【0047】
なお、上記実施形態では、環状突起部30のかしめ加工による塑性変形により、ダイヤフラム弁体21を保持部材20に保持しているが、塑性変形によってダイヤフラム弁体21を保持可能であれば、かしめ加工以外の塑性変形手段を用いてもよい。さらに、塑性変形をさせる側は保持部材に限らず、ダイヤフラム弁体21及び保持部材20の何れか一方或は双方の塑性変形により固定可能である。
【0048】
また、駆動軸5でダイヤフラム弁体21を変形させて流路を開閉するものであれば、駆動手段はエア駆動式のアクチュエータに限ることはなく、各種のアクチュエータを用いることができる。さらに、アクチュエータ以外であってもよく、例えば、図示しないハンドルを有する手動方式で駆動軸を動作させるようにしてもよい。
【0049】
次いで、本発明のアクチュエータの上記実施形態における作用を述べる。
本発明のアクチュエータは、ボデー1内にダイヤフラム弁体21と弁座部材22とを有するダイヤフラムユニット2を着脱自在に装着しているので、これらダイヤフラム弁体21、及び弁座部材22をユニット2として一体に取り外してメンテナンス可能になる。これによって、ダイヤフラム弁体21や弁座部材22に付着した不純物を洗浄により取り除いたり、或はダイヤフラムユニット2全体を交換してバルブとしての機能を回復できる。
【0050】
ダイヤフラムユニット2を交換する場合には、雄螺子45と雌螺子11との螺合を緩め、ボデー1からベース体6を取り外し、このベース体6から、ボンネット3、ダイヤフラムピース4を取り出す。
一方、ボデー1側では、弁室13からダイヤフラムユニット2を抜出し、新規のダイヤフラムユニット2、或は取出したダイヤフラムユニット2を洗浄したものを開口部10から弁室13に挿入する。
この状態でボンネット3、ダイヤフラムピース4をダイヤフラムユニット2の上からボデー1内に挿入し、ベース体6をボデー1に所定のトルクで締付けて雄螺子45と雌螺子11とを螺合させて一体化するようにする。
【0051】
ダイヤフラムユニット2において、略環状の保持部材20の略中央位置に弁座部材22を圧入により固定しているため、組立てが簡単になる。
保持部材20の環状突起部30をかしめ加工により塑性変形させ、この環状突起部30と環状シール面32との間に、その周縁部を押えるようにしてダイヤフラム弁体21を保持しているので、ダイヤフラムユニット2形成時には、ダイヤフラム弁体21に不必要な変形が加わることがない。
すなわち、かしめ加工時にダイヤフラム弁体21を保持部材20に固着することなく、無負荷の状態で軽く保持した状態としていることで、強い締付け力による余分な応力や歪みが生じることがなく、溶接などによる熱影響が加わることもないため、組付け精度や耐久性に悪影響を及ぼす要因を排除できる。
【0052】
ダイヤフラム弁体21は、かしめ部である環状突起部30の内周面に外周縁が当接し、保持部材20に対して芯出し状態で保持されるので、ボデー1に対してダイヤフラム弁体21の中心のずれを防ぎつつ高精度に組付けでき、バルブ性能のバラツキや、バルブの個体差を防ぐことができる。これにより、ベース体6とボデー1との螺着による締付け時の偏った力が加わることを阻止して外部リークやシートリークを防止し、耐久性も向上できる。
【0053】
しかも、ベース体6とボデー1との螺着時には、ボデー1のシール部16とボンネット3の押圧部42との間にダイヤフラムユニット2が挟着される。このため、かしめ加工により保持部材20に軽く保持された状態のダイヤフラム弁体21に対して、環状の押圧部42で均等に押圧力を加えてこのダイヤフラム弁体21を芯出し状態で保持部材20の所定位置に固定できる。その際、ダイヤフラム弁体21が環状シール面32に押し付けられることで、これらダイヤフラム弁体21と保持部材20との間のシール性が確保されて漏れを確実に防止している。一方、保持部材20の底面側では、断面台形状のシール部16が外径縁に所定の推力で押圧されることで、これらが当接シールして弁室13からボンネット3側への漏れを防いでいる。
【0054】
この場合、シール部16を略台形の突起状に設けていることで、このシール部16と保持部材20とが圧接するときの潰れなどの変形を保持部材20側に発生させることができ、金属材料同士であるボデー1と保持部材20とのシールであるにもかかわらず、ボデー1(シール部16)側を損傷させたり潰したりするおそれがない。このことから、ボデー1を交換することなく、ダイヤフラムユニット2のみを交換し、その交換ごとにバルブのシール性、及び耐熱性、流量安定性、高速応答性、耐久性等の機能性を回復でき、ALDプロセスなどの高温の雰囲気下で複数種のガスを高速切換で供給する場合にも、ダイヤフラムユニット2の複数回の交換が可能になり、安定した動作により高い前記機能性を発揮しつつ使用可能となる。
【0055】
上記のように、保持部材20が、ボデー1と、このボデー1に装着されるボンネット3との間に位置決め状態で固定されることにより、弁座部材22の一次開口側である一次側シール部位が弁室13の一次側流路14の周縁部の所定位置に密着され、弁座部材22の開口部分以外からの二次側への流体漏れを防止できる。
【0056】
図4図6においては、本発明のダイヤフラムバルブの他の実施形態を示している。なお、この実施形態において、上記実施形態と同一部分は同一符号によって表し、その説明を省略する。
【0057】
この実施形態のダイヤフラムバルブでは、ボデー50内にダイヤフラムユニット51が着脱自在に装着され、このダイヤフラムユニット51は、ダイヤフラム弁体21、弁座部材52、保持部材53、押え部材54、ガスケット55を有している。
【0058】
保持部材53の中央付近には一次側開口部56が設けられ、この一次側開口部56の底面側には環状段部57が形成される。
弁座部材52は略筒状に形成され、その外周には環状段部57に係合可能な環状突起58が形成され、内周底面側には環状段状部59が形成される。
【0059】
押え部材54は、保持部材53の一次側開口部56に対して、弁座部材52の保持用として設けられる。この押え部材54は、弁座部材52の内周側に嵌合可能な略円筒状に形成され、その外周下部には、弁座部材52の環状段状部59に係合可能な環状鍔部60が形成される。
【0060】
弁座部材52は、保持部材53の一次側開口部56の下方より、環状突起58が環状段部57に係合する位置まで圧入される。この状態で、押え部材54が弁座部材52の下方より、環状鍔部60が環状段状部59に係合する位置まで圧入される。このように、弁座部材52は、保持部材53と押え部材54との間に、位置決めされた状態で装着される。
【0061】
保持部材53の底面外周側には、上面側の環状突起部30、環状シール面32を有する台形部29と略同じ形状の環状突起部30、台形部29がそれぞれ形成される。この底面側の台形部29の環状シール面32には、ガスケット55が装着可能に設けられる。
【0062】
ガスケット55は、フッ素樹脂によりコーティングされて環状に設けられ、下部環状突起部30の内周側に装着される。この状態で環状突起部30の先端側がかしめ加工により塑性変形されることにより、ガスケット55の周縁部が台形部29と変形した環状突起部30との間に保持されて保持部材53の所定位置に装着される。
【0063】
この実施形態では、上記のように保持部材53に弁座部材52、押え部材54、ガスケット55が取付けられ、これにダイヤフラム弁体21を含めたダイヤフラムユニット51が構成され、このダイヤフラムユニット51がボデー50内に装着される。
【0064】
ボデー50の弁室13の底面外周には環状溝部61が形成され、この環状溝部61に保持部材53底面側のかしめ加工後の環状突起部30が装入可能な深さに設けられる。
【0065】
ダイヤフラムユニット51をボデー50に装着した後には、このボデー50の環状溝部61に保持部材53底面側のかしめ部である環状突起部30を逃がした状態で、ボデー50の環状溝部61の内周側に形成された平坦状のシール部62と、保持部材53の環状シール面32とが、ガスケット55を介してシールされる。このようにガスケット55を介して保持部材53を装着しているため、ボデー50及び保持部材53の双方に潰れなどの変形が生じにくくなり、ボデー50が損傷するおそれがない。これにより、ダイヤフラムユニット51を複数回交換可能になり、シール性及び機能性を確保しつつ使用が可能となる。
【0066】
以上、本発明の実施の形態について詳述したが、本発明は、前記実施の形態記載に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲に記載されている発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の変更ができるものである。
【符号の説明】
【0067】
1 ボデー
2 ダイヤフラムユニット
3 ボンネット
16 シール部
20 保持部材
21 ダイヤフラム弁体
22 弁座部材
26、56 一次側開口部
27 二次側開口部
30 環状突起部
54 押え部材
55 ガスケット
図1
図2
図3
図4
図5
図6