(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-16
(45)【発行日】2022-02-25
(54)【発明の名称】洗浄デバイスを採用するオレフィンのオリゴマー化方法
(51)【国際特許分類】
C07C 2/08 20060101AFI20220217BHJP
C07C 11/08 20060101ALI20220217BHJP
C07C 11/107 20060101ALI20220217BHJP
【FI】
C07C2/08
C07C11/08
C07C11/107
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017243341
(22)【出願日】2017-12-20
【審査請求日】2020-12-18
(32)【優先日】2016-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】504143038
【氏名又は名称】アクセンス
(73)【特許権者】
【識別番号】591007826
【氏名又は名称】イエフペ エネルジ ヌヴェル
【氏名又は名称原語表記】IFP ENERGIES NOUVELLES
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100060874
【氏名又は名称】岸本 瑛之助
(72)【発明者】
【氏名】カトリーヌ ブトロ
(72)【発明者】
【氏名】ニコラ ジャノ
(72)【発明者】
【氏名】ザヴィエ リエージュ
(72)【発明者】
【氏名】エティエンヌ ニーデルコルン
(72)【発明者】
【氏名】ジェローム プグリエ
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル-ジャン ヴィネル
(72)【発明者】
【氏名】フレデリック ファヴル
(72)【発明者】
【氏名】リオネル マグナ
【審査官】奥谷 暢子
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-062552(JP,A)
【文献】特開2016-183146(JP,A)
【文献】特開平03-007893(JP,A)
【文献】特表2004-504282(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレンのアルファ-オレフィンへのオリゴマー化のための方法であって、
- 反応器(10)を含む反応セクション(1)において、触媒と、任意の希釈剤との存在下にエチレンをオリゴマー化するための工程、
- 反応流出物中に含有される触媒の失活のための工程、
- 反応流出物中に含有される生成物を蒸発させて、それらを失活触媒から分離するための工程であって、蒸発セクション(2)において行われる、工程、
- 反応流出物(103)中に含有される生成物の分離のための分離セクションにおける工程
を含み、
前記反応器は、少なくとも1つの冷却ループ((100a/b)、(101a/b)、(102a/b))を備え、これら
によって、反応媒体は、少なくとも2つの切り替え可能な熱交換器を通じて移動させられ、該熱交換器は、少なくとも1つの冷却ループに接続されて、少なくとも1つの熱交換器が少なくとも1つの冷却ループに操作可能に接続されている時に、他の非接続の熱交換器が、洗浄デバイスにより洗浄するための工程を経ることができるようにされ、該洗浄デバイスにおいて、前記熱交換器を洗浄することができる溶媒は、ループ中に移動するようにされ、洗浄デバイスは、
- 洗浄溶媒のための収納ドラム(40)と、
- 130℃より高い温度に洗浄溶媒を加熱して、非接続の熱交換器中に堆積したポリマーが溶解することができるようにするための熱交換器(43)と、
- 洗浄溶媒を、洗浄デバイスにおいて洗浄溶媒収納ドラム(40)、洗浄溶媒のための熱交換器(4
3)、および洗浄されるべき非接続の熱交換器との間でループ中に移動させるための流通ポンプ(42)
を
含み、
洗浄デバイスの溶媒ループから得られた洗浄溶媒の少なくとも一部(406)を、蒸発セクション(2)における生成物蒸発工程に送る
方法。
【請求項2】
反応媒体(103)を、熱交換器(20)中に移動させ、該熱交換器(20)では、蒸発セクション(2)においてそれを蒸気化させる、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
分離セクション(3)における分離工程において分離された未反応エチレンを、反応器に再循環させる(流れ(306))、請求項1
または2に記載の方法。
【請求項4】
熱交換器(43)は、150℃以上の温度に洗浄溶媒を加熱して、非接続の熱交換器中に堆積したポリマーを溶解させるようにする、請求項1~
3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
飽和溶媒中のポリマーおよびより重質のオリゴマーの濃度は、洗浄溶媒に対して5重量%以下である、請求項1~
4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
洗浄溶媒は、飽和炭化水素;不飽和炭化水素;芳香族炭化水素;ガソリン、ディーゼルまたはケロセンの留分;およびイソパラフィンから選択され、これらは、単独でまたは混合物として用いられる、請求項1~
5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
洗浄溶媒の少なくとも一部は、分離セクション(3)における分離のための工程に由来する(流れ(305))、請求項1~
6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
洗浄溶媒の少なくとも一部は、より重質の化合物フラクションおよび/または分離工程から分離された任意の希釈剤を起源とする、請求項1~
7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
洗浄溶媒を移動させるためのループ((402)、(403)、(404)、(405))上でフィルタ(39)を採用する、請求項1~
8のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
一旦ポリマーが洗浄溶媒中に溶解したところで、飽和洗浄溶媒の少なくとも一部を、フラッシュドラム(46)により減圧しかつ部分蒸気化する工程の方に向け、少なくとも1つの蒸気相(409)と、少なくとも1つの液相(410)とを生じさせる、請求項1~
9のいずれか1つに記載の方法。
【請求項11】
エチレンのオリゴマー化方法は、エチレンの1-ブテンへのダイマー化のための方法である、請求項1~
10のいずれか1つに記載の方法。
【請求項12】
エチレンのオリゴマー化方法は、エチレンの1-ヘキセンへのトリマー化のための方法である、請求項1~
10のいずれか1つに記載の方法。
【請求項13】
エチレンのオリゴマー化方法は、エチレンの1-オクテンへのテトラマー化のための方法である、請求項1~
10のいずれか1つに記載の方法。
【請求項14】
設備であって、
- 反応器(10)を含む反応セクション(1)と、
- 反応流出物の蒸発のためのセクション(2)と、
- 分離セクション(3)と
を含み、前記反応器は、少なくとも1つの冷却ループ((100a/b)、(101a/b)、(102a/b))を備え、これらの冷却ループによって、少なくとも1つの反応媒体が、少なくとも2つの切り替え可能な熱交換器を通じて移動するようにされ、該熱交換器は、少なくとも1つの冷却ループに接続されて、少なくとも1つの熱交換器が少なくとも1つの冷却ループに操作可能に接続されている時に、他の非接続の熱交換器が洗浄デバイスによって洗浄するための工程を経ることができるようにされ、該洗浄デバイスでは、前記熱交換器を洗浄することができる溶媒が、ループ中に移動するようにされ、該洗浄デバイスは、
- 洗浄溶媒のための収納ドラム(40)と、
- 130℃より高い温度に洗浄溶媒を加熱して、非接続の熱交換器中に堆積したポリマーを溶解させることができるようにするための熱交換器(43)と、
- 洗浄溶媒を、洗浄デバイスにおいて、洗浄溶媒収納ドラム(40)、洗浄溶媒のための熱交換器(43)、および洗浄されるべき非接続の熱交換器の間でループに移動させるための流通ポンプ(42)と
を含
み、
洗浄デバイスは、少なくとも1つの導管を介して蒸発セクション(2)に接続され、該導管は、洗浄溶媒の少なくとも一部を、反応流出物の蒸発のための前記セクション(2)に送るために用いられる
設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレンのオリゴマー化の分野に関する。このオリゴマー化の目的は、ポリエチレンの製造方法においてコモノマーとして用いられるアルファ-オレフィンを製造することにある。オリゴマー化反応は、通常、液相触媒反応方法において行われる。それは、高度に発熱性でもあり、熱交換器を介した外部冷却を必要とする。二次的オリゴマー化反応は、非常に長いオリゴマーおよび/またはポリマーの生成である。ほとんどの場合、これらのポリマーは、閉塞を引き起こす;特に、それらは、熱交換器の菅上に堆積する。これにより、閉塞した熱交換器を隔離しかつ洗浄するために方法の頻繁な停止が必要となり、このことは、方法の効率および操作能力について有害な作用を有し、その製造コストに影響を及ぼす。
【背景技術】
【0002】
方法の設備におけるポリマーの堆積に関連する問題を緩和する試みは、当業者に知られている。このような試みは、通常、種々の機械的手段を用いること、例えば、高圧下に水を投射することにより洗浄することに至る。当該方法は、開にされることになる交換器を要するというデメリットに喘ぎ、また、その交換器が業務に戻される前にそれの強烈な乾燥処理を必要とする。このタイプの触媒作用において湿気が、既知の毒物であるからである。
【0003】
溶媒を用いる洗浄処理が考えられる。ポリエチレンが、適切な温度条件下に大部分の軽質炭化水素中に可溶であるからである。洗浄処理のために作用した溶媒は、ポリマーおよび重質オリゴマー並びに触媒(または触媒から得られた化合物、例えば金属)により飽和されている。結論として、これは、溶媒の外部供給に加えて、一方のポリマー、重質オリゴマーおよび触媒(または触媒から得られた化合物)と、他方の溶媒との分離に関する設備コストを要するというデメリットに喘ぐ。
【0004】
本出願人の研究は、エチレンのオリゴマー化のための新規方法の開発に至った。この方法は、より効率的であり、本法の前記設備を洗浄するための方法の統合された使用のために、設備、または実際にはオレフィンオリゴマー化タイプの前記方法において用いられた熱交換器を洗浄するための停止をほとんど必要としない。
【0005】
本発明は、本発明による方法における使用のための設備にも関する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の概要)
本発明は、エチレンのアルファ-オレフィンへのオリゴマー化の方法であって、
- 反応器(10)を含む反応セクション(1)において、触媒と、任意の希釈剤との存在下に、エチレンをオリゴマー化するための工程、
- 反応流出物中に含有される触媒の失活のための工程、
- 反応流出物中に含有される生成物を蒸発させて失活触媒からそれらを分離するための工程であって、蒸発セクション(2)において行われる工程、
- 反応流出物(103)中に含有される生成物の分離のための分離セクション(3)における工程
を含み、
前記反応器は、少なくとも1つの冷却ループ((100a/b)、(101a/b)、(102a/b))を備えており、これらにより、反応媒体は、少なくとも2つの切り替え可能な熱交換器を通じて移動するようになされ、これらの熱交換器は、少なくとも1つの冷却ループに接続されて、少なくとも1つの熱交換器が、少なくとも1つの冷却ループに操作可能に接続されている時に、他の非接続の熱交換器が、洗浄デバイスによる洗浄処理のための工程を経ることができるようにされ、この洗浄デバイスにおいて、熱交換器を洗浄することができる溶媒は、ループ中に移動するようになされ、この洗浄デバイスは、
- 洗浄溶媒のための収納ドラム(40)と、
- 130℃より高い温度に洗浄溶媒を加熱して、非接続の熱交換器中に堆積したポリマーを溶解させることができるようにするための熱交換器(43)と、
- 洗浄溶媒を、洗浄デバイスにおいて、溶媒収納ドラム(40)、溶媒のための熱交換器(43)および洗浄されるべき非接続の熱交換器の間でループ中に移動させるための流通ポンプ(42)と
を含む、方法に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明による方法の利点の一つは、オリゴマー化方法の収率および操作能力を損なうことなく、方法の設備、特に、用いられた交換器を迅速かつ効果的に洗浄する手段を提供することにある。
【0008】
本方法の別の利点は、方法それ自体からの洗浄溶媒を特に用いることにより、本方法の種々の工程を行いやすく、かつ、本方法の種々の工程と統合されることにある。
【0009】
本発明による方法は、設備コストおよび/または生産性の喪失を最小限にすることによって、かつ/または、洗浄溶媒の消費を最小限にすることによって従来技術のデメリットを克服するために用いられてよい。それは、炭化水素溶媒を用いて熱交換器の壁上に形成されかつ堆積されたポリマーを溶解させることによって熱交換器を洗うために用いられ得る。それは、重質オリゴマーおよび/またはポリマーおよび/または使用済み触媒で飽和している洗浄溶媒の少なくとも一部をオリゴマー化セクションからの流出物と混合することによって、触媒失活および蒸発のセクションにおける洗浄溶媒中に含有される重質オリゴマーおよび/またはポリマーおよび/または使用済み触媒の除去を統合するためにも用いられ得る。
【0010】
(図面の簡単な説明)
図1は、本方法のレイアウトを説明し、本方法は、本発明による洗浄デバイスを用いて行われ、一つの熱交換器(12a)が作動中であり、他方(12b)が洗浄デバイスにより洗浄されている場合である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(発明の詳細な説明)
本発明は、エチレンのアルファ-オレフィンへのオリゴマー化のための方法であって、
- 反応器(10)を含む反応セクション(1)において、触媒と、任意の希釈剤との存在下に、エチレンをオリゴマー化するための工程、
- 反応流出物(103)中に含有される触媒の失活のための工程、
- 反応流出物中に含有される生成物を蒸発させて、それらを失活触媒から分離するための、蒸発セクション(2)において行われる工程、
- 反応流出物中に含有される生成物の分離のための分離セクション(3)における工程
を含み、
前記反応器は、少なくとも1つの冷却ループ((100a/b)、(101a/b)、(102a/b))を備えており、これらにより、反応媒体は、少なくとも2つの切り替え可能な熱交換器を通じて移動するようにされ、これらの熱交換器は、少なくとも1つの冷却ループに接続されて、少なくとも1つの熱交換器が、少なくとも1つの冷却ループに操作可能に接続されている時に、他の非接続の熱交換器が、洗浄デバイスにより洗浄するための工程を経ることができるようにされ、この洗浄デバイスにおいて、前記熱交換器を洗浄することができる溶媒は、ループ中に移動するようにされ、この洗浄デバイスは、
- 洗浄溶媒のための収納ドラム(40)、
- 130℃より高い温度に洗浄溶媒を加熱して、非接続の熱交換器中に堆積したポリマーが溶解することを可能にするようにするための熱交換器(43)、
- 洗浄溶媒を、洗浄デバイスにおいて、洗浄溶媒収納ドラム(40)と、洗浄溶媒のための熱交換器(43)と、洗浄されるべき非接続の熱交換器との間でループ中に移動させるための流通ポンプ(42)
を含む、方法に関する。
【0012】
有利には、本発明によると、洗浄デバイスの溶媒ループから得られた洗浄溶媒の少なくとも一部(406)、(407)は、蒸発セクション(2)における生成物蒸発工程に送られる。
【0013】
明確性の目的のために、本発明は、本明細書の以降において、本方法の例示的レイアウトを記載する
図1を参照しながら記載されることになる。
図1への参照は、あらゆる場合において、本方法の範囲を制限するべきではない。
【0014】
洗浄処理のための用いられていた洗浄溶媒は、重質オリゴマーおよび/またはポリマーおよび/または使用済み触媒を含有しており、これは、本明細書の以降において「飽和化洗浄溶媒(charged cleaning solvent)」と称される。
【0015】
(反応セクション(1))
本発明によると、エチレンのアルファ-オレフィンへのオリゴマー化のための方法は、エチレンのオリゴマー化のための工程を含み、触媒の存在下に反応器(10)を含む反応セクション(1)において行われる。有利には、エチレンのオリゴマー化のための反応は、液相触媒作用の方法であり、一般的に均一系であり、希釈剤の存在下または非存在下に、ツィーグラータイプの触媒を用いて行われる。このツィーグラータイプの触媒は、一般的に、金属、例えば、チタン、クロム、ジルコニウムの化合物と、少なくとも1種の有機アルミニウム化合物とを含む。反応は、好ましくは、周囲温度から200℃の範囲内、好ましくは30℃~170℃の範囲内の温度、0.5~20MPaの範囲内、好ましくは1.0~10MPaの範囲内の圧力で行われる。このオリゴマー化反応は、しばしば、不活性な希釈剤、例えば、オルト-キシレンまたはシクロヘキサン中で行われる。
【0016】
本発明の一般的な背景において、エチレンのオリゴマー化方法は、エチレンの1-ブテンへのダイマー化のための方法、エチレンの1-ヘキセンへのトリマー化のための方法またはエチレンの1-オクテンへのテトラマー化のための方法であってよい。
【0017】
エチレンのオリゴマー化のための反応は発熱性である。反応によって生じた熱は、反応媒体の制御されていない温度上昇を防止するために抜き出される必要がある。到達される温度レベルに応じて、結果は、触媒および反応生成物の熱的劣化による選択性の喪失であるかもしれない。反応器において生じた反応の熱は、少なくとも1つの熱交換器(12a/b)を含む少なくとも1つの冷却ループ(導管(100a/b)、(101a/b)、(102a/b))を用いることによって抜き出される。
【0018】
エチレンのオリゴマー化のための反応セクション(1)から得られた反応流出物(103)は、未転化エチレンと、アルファ-オレフィン、例えば、1-ブテン、1-ヘキセン、または1-オクテンと、他のC4~C30+反応生成物(すなわち、分子当たり4個~30個以上の範囲内の炭素原子を含有するもの)と、並びに、オリゴマー化反応のための任意の希釈剤とを含む。前記流出物は、触媒の少なくとも一部も含む。反応流出物(103)は、熱交換器(20)中に移動させられてよく、この熱交換器(20)では、それは、蒸発セクション(2)において蒸発させられる。
【0019】
エチレンのダイマー化方法の特定の場合において、熱交換器(20)におけるこの蒸発は、好ましくは、エチレンのダイマー化工程の圧力に等しいかまたは実質的に等しい圧力および80℃の温度で行われ、これは、少なくとも1つの気相と少なくとも1つの液相とが、蒸発セクション(2)において、特に、蒸発セクション(2)のための1つ以上のフラッシュドラムにおいて分離され得ることを意味する。
【0020】
(失活および蒸発のセクション(2))
本発明によると、一般に、オリゴマー化のための反応セクション(1)からの出口において、流出物(103)中に含有される触媒は、失活工程を経る。これは、好ましくは、蒸発セクション(2)の上流で行われる。この失活は、当業者に知られている、オリゴマー化触媒について阻害活性を有する任意の化合物を用いて行われる。例は、流出物(103)中に存在する触媒の実質的に全体を失活させることを目的とする極性の酸素含有または窒素含有の化合物である。このタイプの窒素含有触媒阻害剤の例は、欧州特許EP 0 200 654 Bに記載されている。
【0021】
失活工程において用いられる触媒阻害剤は、一般的に、アミン、好ましくは一級または二級のアミンであって、一般式R1R2NHを有し、式中、R1は、水素またはヒドロカルビル基であり、R2は、ヒドロカルビル基であるもの、または線状または分枝のアルコールであって、好ましくは2~20個の炭素原子、より好ましくは5~15個の炭素原子を含有するもの、またはカルボン酸、例えば、n-オクタン酸または水またはアンモニアから選択される。
【0022】
触媒阻害剤がアミンから選択される場合、以下の化合物またはその混合物から選択される阻害剤が好ましくは用いられる:シクロヘキシルアミン、エチル-2-ヘキシルアミン、アリールアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、アニリン、N-メチルアニリン、ジブチルアミン、ジデシルアミン、および天然脂肪、例えば獣脂、パーム油またはコプラ油から得られたアミンの混合物。
【0023】
触媒阻害剤がアルコールから選択される場合、線状または分枝のアルコールであって、2~20個の炭素原子を含有するものが用いられ、例えば、1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、3-ヘキサノール、2-メチル-1-ヘキサノール、2-エチル-1-ヘキサノール、1-ヘプタノール、2-ヘプタノール、2-メチル-3-ヘプタノール、1-オクタノール、2-オクタノール、3-オクタノール、1-デカノール、2-デカノール、3-デカノール、または2-エチル-1-デカノール;ジオール、例えば、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオールまたは実際にポリオール、例えば、グリセロールであり、単独でまたは混合物として用いられる。好ましくは、2-エチル-1-ヘキサノールが用いられる。
【0024】
触媒阻害剤がカルボン酸から選択される場合、線状または分枝の酸であって、2~20個の炭素原子を含有するものが用いられ、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ペンタン酸(吉草酸)、ヘキサン酸、または、2-エチルヘキサン酸、オクタン酸(カプリル酸)、ドデカン酸、ステアリン酸、安息香酸、2-ヒドロキシ安息香酸であり、単独でまたは混合物として用いられる。好ましくは、2-エチルヘキサン酸およびオクタン酸(カプリル酸)が用いられる。
【0025】
触媒失活工程の後、本発明によると、失活化反応器から得られた反応流出物(103)(失活工程は、
図1に示されない)は、蒸発工程を経て、一方では失活触媒並びに反応からの重質副生物が、他方では未転化エチレン、形成された生成物並びに任意の希釈剤が分離される。この蒸発工程は、好ましくは、反応流出物の一部の蒸気化によって行われ、未転化エチレン、形成された生成物および任意の希釈剤を含有する1種以上の蒸気相が得られる。このまたはこれらの蒸気相は、有利には、分離セクション(3)に送られ(導管(203)、(207)を参照のこと)、この分離セクション(3)において、形成された興味のある種々の生成物が互いに分離される。
【0026】
本発明によると、反応流出物(103)中に含有される生成物の蒸発のための工程は、蒸発セクション(2)において行われ、この工程において、触媒は、反応からの一式の生成物から分離される。
【0027】
本発明の方法のバリエーションにおいて、蒸発セクション(2)は、少なくとも1個のフラッシュドラム(21)、(23)(液体-蒸気の平衡を有するドラム/分離器)と、所望の生成物を蒸気化させるための少なくとも1個の蒸気化器または薄膜式または流下膜式の蒸発器(22)を含んでよい。
【0028】
エチレンのダイマー化方法の特定の場合において、反応流出物(103)は、好ましくは、熱交換器(20)から、単独でまたは流れ(406-407)から得られた洗浄溶媒の少なくとも一部との混合物として得られ(流れ(211)、(201))、これは、第1のフラッシュドラム(21)において、1-ブテンを必然的に含有すると共に他のC6およびC8炭化水素生成物およびエチレンを含有する気相(207)と、失活触媒を含有する第2の液相(202)とを分離することができる条件下に蒸気化されてもよい。一つの実施形態において、流れ(406-407)から得られた洗浄溶媒の少なくとも一部(流れ(213))を、流出物(103)との混合物として熱交換器(20)の上流に送ることが可能である。有利には、液相(202)の少なくとも一部は、単独でまたは流れ(406-407)から得られた洗浄溶媒の少なくとも一部(流れ(212))との混合物として、蒸気化器または薄膜式蒸発器(22)に向けられてよく、そこで、それは、1-ブテンを必然的に含有しかつより重質な炭化水素生成物を任意に含有する気相(203)と、濃縮された失活触媒を豊富に含む液相(204)とを分離することを可能にする条件下に蒸発させられる。薄膜式または流下膜式の蒸発器における蒸発の割合は、一般的に、蒸発器に入る液相に対して99重量%程度である。濃縮された失活触媒を豊富に含む液相(204)の少なくとも一部は、単独でまたは流れ(406-407)から得られた洗浄溶媒の少なくとも一部(流れ(210))と混合されて、有利には、フラッシュドラム(23)において減圧され、フラッシュされて、ポリマーおよび失活触媒を実質的に含まない蒸気相(205)と、ポリマーおよび失活触媒で濃縮された液相(206)とが生じる。有利には、蒸発セクション(2)において行われ、1-ブテンを必然的に含有し、エチレン並びにより重質な炭化水素生成物を含有する蒸発工程から得られた気相(207)、(203)は、液体生成物の形態に凝縮させられ、これは、分離セクション(3)において行われる分離工程に送られ、この分離セクション(3)において、種々の生成物が、互いから分離されることになる。
【0029】
エチレンのトリマー化方法の特定の場合において、反応器からの反応流出物は、好ましくは、失活および蒸発のセクション(2)に送られ、このセクション(2)は、有利には、フラッシュドラムを含む。反応流出物中の触媒は、阻害剤として用いられる2-エチルヘキサノールを注入することによって失活させられてよい。混合物は、ダイナミックインラインミキサ(
図1に示されない)を用いることによって生じさせられてよい。特に、反応器から得られた反応媒体は、第1のフラッシュドラムにおいて、好ましくは2.4MPaである圧力に減圧されてよい。前記減圧された反応媒体は、好ましくは175℃である温度に加熱することによって蒸気化させられてよい。この蒸気化は、熱交換器において行われる。蒸気相は、次いで、ドラムにおいて液相から分離される。蒸気相は、分離セクション(3)に送られる。第1のフラッシュドラムからの液相は、第2のフラッシュドラムにおいて、好ましくは1.1MPaである圧力に減圧される。前記減圧された液相は、次いで、好ましくは175℃である温度に加熱することによって蒸気化させられる。この蒸気化は、熱交換器において行われる。蒸気相は、次いで、ドラムにおいて液相から分離される。蒸気相は、分離セクション(3)に送られ、第2のフラッシュドラムからの液相は、好ましくは0.2MPaである圧力に減圧される。前記減圧された液相は、次いで、好ましくは200℃である温度に加熱することによって蒸気化させられる。この蒸気化は、好ましくは、薄層式蒸発器において行われる。失活および蒸発のセクション(2)において分離された失活触媒並びにそれの重質副生物は、ポンプでくみ上げられ、焼却炉に送られる。
【0030】
(分離セクション(3))
オレフィンのオリゴマー化のための方法に関連する、本発明の一般的な背景において、分離工程は、有利には、分離セクション(3)において行われ、この分離セクション(3)は、オレフィンのオリゴマー化反応において形成された種々の生成物を分離する。
【0031】
エチレンのオリゴマー化から得られたオリゴマーオレフィンは、反応しなかったエチレンより大きい分子量を有する。一般に、反応しなかったエチレンは、反応から得られたオリゴマーオレフィンの沸点より低い沸点を有する。当業者に知られている分離のための任意の手段であって、分離されるべき生成物の間の揮発性および分子量における相違を利用するものが採用されてよい。有利には、本発明によると、分離セクション(3)における分離工程において採用される分離手段は、任意のタイプの蒸留塔である。
【0032】
エチレンのダイマー化のための方法の場合、未反応エチレンのみ(流れ(306))、1-ブテン(流れ(301))およびC6+炭化水素生成物(流れ(304))が好ましくは分離される。
【0033】
エチレンのトリマー化のための方法の場合、未反応エチレン(流れ(306))は、好ましくは、興味の生成物、例えば、1-ヘキセンおよび場合による希釈剤(流れ(301)および場合による(302)、(303)等)およびより重質なフラクション(流れ(304))から分離される。
【0034】
分離セクション(3)は、有利には、複数の蒸留塔を備えている(
図1に示されていない)。
【0035】
有利には、本発明によると、分離セクション(3)における分離工程において分離された未反応エチレンは、反応器に再循環させられる(流れ(306))。
【0036】
エチレンのトリマー化のための方法の特定の場合において、分離セクション(3)は、少なくとも4個の蒸留塔を含んでよく、これらは、以下のように配置される:第1の蒸留塔:未転化エチレンが、頭部フラクションと、化合物の残りを含有する底部フラクションとに分離される;第2の蒸留塔:第1の塔から得られた底部フラクションが、1-ヘキセンおよび1-ブテンを含む頭部フラクションと、底部フラクションとに分離される;前記底部フラクションは、主として、希釈剤からなる;第3の蒸留塔:第2の蒸留塔からの頭部フラクションが、1-ブテンを主として含む頭部フラクションと、1-ヘキセン、反応生成物を主として含む底部フラクションとに分離される;第4の塔:第2の蒸留塔からの底部フラクションが、反応器に再循環させられてよい希釈剤を主として含む頭部フラクションと、より重質な生成物、特にC8+(8個以上の炭素原子を含有するもの)を含む底部フラクションとに分離される。失活触媒並びに重質副生物は排出される。
【0037】
本発明による方法のバリエーションにおいて、洗浄溶媒は、希釈剤によって構成される。本発明による方法のバリエーションにおいて、洗浄溶媒は、より重質な生成物、特に、第4の塔から得られたC8+を含む底部フラクションによって構成される。本発明による方法のバリエーションにおいて、洗浄溶媒は、第2の塔から得られた底部生成物によって構成される。
【0038】
(熱交換器のための洗浄セクション(12a/12b))
本発明によると、反応セクション(1)において用いられる反応器は、冷却ループ((100a/b)、(101a/b)、(102a/b))を備えており、これらによって、少なくとも反応媒体は、少なくとも2つの熱交換器を通じて移動させられ、オリゴマー化反応によって生じた熱が抜き出され、反応器中の反応媒体の制御することのできない温度上昇が回避される。
【0039】
本発明によると、用いられる熱交換器(12a)、(12b)は、切り換え可能であり、少なくとも1つの冷却ループに接続されて、少なくとも1つの熱交換器が作動しており、少なくとも1つの冷却ループに接続されている時に、他の熱交換器は、非接続であり、かつ、洗浄するための工程が、洗浄デバイスによって行われることができるようになっており、この洗浄デバイスにおいて、前記熱交換器を洗浄することができる溶媒が、ループ中に移動するようにされ、この洗浄デバイスは、
- 洗浄溶媒のための収納ドラム(40)と、
- 130℃より高い、好ましくは150℃より高い、より好ましくは170℃より高い、一層より好ましくは180℃より高い温度に洗浄溶媒を加熱して、非接続の熱交換器中に堆積したポリマーを溶解させることができるようにするための熱交換器(43)と、
- 洗浄溶媒を、洗浄デバイスにおいて、洗浄溶媒収納ドラム(40)と、洗浄溶媒のための熱交換器(43)と、洗浄されるべき非接続の熱交換器との間でループ中に移動させるための流通ポンプ(42)と
を含む。
【0040】
流通ポンプ(42)を活用して、導管(402)、(403)、(404)、(405)を介して高温の溶媒を移動させることによって洗浄は行われる。
【0041】
本発明によると、溶媒収納ドラム(40)の圧力は、好ましくは、固定されて、洗浄溶媒を液体の形態に維持するようにされる。この圧力は、好ましくは0.5~3MPaの範囲内である。
【0042】
本発明による方法は、複数の熱交換器(12a)、(12b)を採用してよく、これらは、少なくとも1つの冷却ループに接続されて、オリゴマー化反応によって生じた熱を抜き出すことができる。好ましくは、2または3または4または5個の熱交換器が採用されてよい。
図1は、2つの冷却ループを有し、それぞれが、1つの熱交換器を含んでおり、交互に用いられる。熱交換器(12a)が冷却ループ((100a)、(101a)、(102a))により作動している時、バルブ(15a)/(16a)は、開にされ、反応器(10)に接続される。この時間の間に、バルブ(15b)/(16b)は、閉にされ、それにより、反応器(10)の第2の冷却ループ((100b)、(101b)、(102b))は隔離され、洗浄デバイスによりそれを洗浄することが可能になっている。
【0043】
洗浄溶媒は、有利には、飽和炭化水素、例えば、ブタン、イソブタン、ペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、n-ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、またはドデカン;不飽和炭化水素、例えば、モノオレフィンまたはジオレフィンであって、4~20個の炭素原子を含有するもの;芳香族炭化水素、例えば、ベンゼン、トルエン、オルト-、メタ-またはパラ-キシレン、クメン、メシチレン、エチルベンゼン;ガソリン、ディーゼルまたはケロセンの留分;イソパラフィン、例えば、Isopar EまたはCから選択され、単独でまたは混合物として用いられる。洗浄溶媒は、本方法自体から、特に、分離セクション(3)から得られてよい。好ましくは、洗浄溶媒の少なくとも一部、さらには洗浄溶媒の全部は、分離セクション(3)における分離工程を起源とする(流れ(305))。好ましくは、洗浄溶媒の少なくとも一部、さらには、洗浄溶媒の全体は、より重質な化合物のフラクションおよび/または分離セクション(3)の分離工程から分離された任意の希釈剤を起源とする。
【0044】
本発明のバリエーションにおいて、フィルタ(39)が、洗浄溶媒を移動させるためのループ((402)、(403)、(404)、(405))上に提供されてよい。このフィルタは、完全に溶解させられることなく除かれた熱交換器から引き離され得たポリマーのあらゆる考えられる破片を捕捉するために用いられてよい。
【0045】
有利には、本発明によると、洗浄デバイスの溶媒ループから得られた飽和洗浄溶媒の少なくとも一部(406)は、蒸発セクション(2)における生成物の蒸発のための工程に送られる。
【0046】
例として、一旦ポリマーが洗浄溶媒中に溶解したところで、飽和洗浄溶媒の少なくとも一部は、生成物の蒸発のための工程の方に、特に、蒸発セクション(2)に向けられてよい(
図1中の導管(406)、(407)、(211)、(212)、(210)および(213)を参照のこと)。
【0047】
本方法のバリエーションにおいて、一旦、ポリマーが洗浄溶媒中に溶解したところで、飽和洗浄溶媒の少なくとも一部(406-407)は、蒸発セクション(2)に、反応流出物(103)の一部との混合物として、熱交換器(20)が存在する場合にはこの熱交換器(20)の上流(流れ(213))または下流(流れ(211))のいずれかに送られる。
【0048】
本方法のバリエーションにおいて、一旦、ポリマーが洗浄溶媒中に溶解したところで、飽和洗浄溶媒の少なくとも一部(406-407)は、蒸発セクション(2)において採用されたフラッシュドラム(21)から得られた液相(202)との混合物として送られる(流れ(212))。
【0049】
本方法のバリエーションにおいて、一旦、ポリマーが洗浄溶媒中に溶解したところで、飽和洗浄溶媒の少なくとも一部(406-407)は、蒸発セクション(2)において採用された蒸気化器または薄膜式蒸発器(22)から得られた液相(204)との混合物として送られる(流れ(210))。
【0050】
飽和洗浄溶媒中のポリマーおよび重質オリゴマーの濃度は、洗浄溶媒に対して有利には5重量%以下、好ましくは1重量%以下である。
【0051】
本発明のバリエーションにおいて、一旦、ポリマーが洗浄溶媒中に溶解したところで、飽和洗浄溶媒の少なくとも一部は、好ましくは、流れ(406)、(408)から取り出されたものであり、これは、フラッシュドラム(46)により減圧されかつ部分蒸気化工程の方に向けられて、少なくとも1つの蒸気相(409)と、少なくとも1つの液相(410)とが生じさせられる。この減圧に由来する部分蒸気化は、2つの利点を有する。第1に、それは、交換器(45)における任意の選択的凝縮の後に方法の分離セクション(3)に直接的に向けられ得る十分に低い含有率のポリマー、重質オリゴマーおよび触媒を有する蒸気相を生じさせるために用いられ得る(ライン(409)、(412))。交換器(45)における凝縮の後に、この蒸気相の少なくとも一部は、搬入ドラム(41)中に集められてもよく、その後に、溶媒収納ドラム(40)に戻され(流れ(413)、(414))、再度、本発明の方法による交換器を洗浄するために作用する。
【0052】
さらに、この部分蒸気化は、フラッシュドラム(46)から回収された液相の流れ(410)/(411)の温度を低下させて、それを、好ましくは、流れ(407)との混合物として、冷却する必要なく蒸発セクション(2)に再注入することができるようにするために用いられてよい。実際に、触媒を完全に分離する前の反応器の下流セクションにおけるあまりに高い温度は、それが失活している場合であっても、生成物劣化をもたらすかもしれない。そのような実施において、流通ポンプ(44)が、流れ(410)と(411)との間に提供されてよい。導管(407)中に熱交換器(47)を採用することも可能である。
【0053】
飽和洗浄溶媒の部分蒸気化は、好ましくは、減圧によって行われる。熱交換器を用いることは、熱交換器を閉塞させるという高いリスクを伴うであろうからである。
【0054】
本発明の方法のさらなるバリエーションによると、洗浄溶媒の少なくとも一部は、分離セクション(3)における分離のための工程に由来する(流れ(305))。好ましくは、洗浄溶媒の少なくとも一部は、より重質な化合物のフラクションおよび/または分離工程において分離された任意の希釈剤を起源とし、これにより、洗浄溶媒の外部供給の必要性が回避される。好ましくは、洗浄溶媒は、分離セクション(3)において回収された、より重質な炭化水素生成物によりもっぱら構成される(流れ(304))。より重質な炭化水素生成物のフラクションは、洗浄溶媒のための収納ドラム(40)の方に向けられてよい((305))。このようにして、溶媒の外部供給は必要とされない。導管(305)は、熱交換器(48)を備えてよい。
【0055】
本発明は、本発明による方法を採用する設備にも関する。
【0056】
本発明による設備は、
- 反応器(10)を含む反応セクション(1)と、
- 反応流出物の蒸発のためのセクション(2)と、
- 分離セクション(3)と
を含み、
前記反応器は、少なくとも1つの冷却ループ((100a/b)、(101a/b)、(102a/b))を備え、これらにより、反応媒体は、少なくとも2つの切り替え可能な熱交換器を通じて移動するようにされ、これらの熱交換器は、少なくとも1つの冷却ループに接続されて、少なくとも1つの熱交換器が、少なくとも1つの冷却ループに操作可能に接続されている時に、他の非接続の熱交換器が、洗浄デバイスにより洗浄するための工程を経ることができるようになっており、この洗浄デバイスにおいて、前記熱交換器を洗浄することができる溶媒が、ループ中に移動するようにされ、この洗浄デバイスは、
- 洗浄溶媒のための収納ドラム(40)と、
- 130℃より高い温度に洗浄溶媒を加熱して、非接続の熱交換器中に堆積したポリマーを溶解させることができるようにするための熱交換器(43)と、
- 洗浄溶媒を、洗浄デバイスにおいて洗浄溶媒収納ドラム(40)と、洗浄溶媒のための熱交換器(43)と、洗浄されるべき非接続の熱交換器との間でループ中に移動させるための流通ポンプ(42)と
を含む。
【0057】
有利には、洗浄デバイスは、少なくとも1つの導管を介して蒸発セクション(2)に接続され、この導管は、洗浄溶媒の少なくとも一部を、反応流出物の蒸発のための前記セクション(2)に送るために用いられてよい。
【0058】
(実施例1:エチレンのダイマー化のための方法への本発明による方法の適用)
1-ブテンは、液体エチレン相中の均一系触媒ダイマー化によって製造された。
図1に記載された本発明によるデバイスが採用された。触媒は、特許EP 0 135 441の実施例1に記載されたようなチタン酸n-ブチル、テトラヒドロフランおよびトリエチルアルミニウムの相互作用によって得られた。
【0059】
エチレンのダイマー化反応の間に、反応器(10)の圧力は、2.2MPaであり、温度は53℃であった。
【0060】
反応器は、2つの冷却ループを用いて冷却された。各ループは、熱交換器((12a)および(12b))を含んでいた。切り替え可能な熱交換器(12b)は、2月の操作期間の後に非接続とされた。本実施例において、この交換器(12b)の洗浄が行われる一方で、交換器(12a)は、駆動していることが仮定された。
【0061】
反応流出物(103)は、エチレン、製造された1-ブテン並びに反応器(10)中の二次反応の間に形成された所定のC6およびC8+炭化水素生成物(特にオクテン)を含有する。反応流出物(103)は、失活および蒸発のセクション(2)に導入された。反応流出物(103)は、触媒の阻害剤として用いられるデシルアミンと接触させられた。セクション(2)は、熱交換器(20)を含んでいた。この熱交換器(20)において、反応流出物(103)は、2.1MPaの圧力および80℃の温度で蒸気化させられ、次いで、フラッシュドラム(21)に送られ、1-ブテンおよびエチレンを必然的に含有する気相(207)と、失活触媒を含有する第2の液相(202)とが分離された。次に、フラッシュドラム(21)から得られた液相(202)は、薄膜式蒸気化器(22)に向けられ、この蒸気化器において、それは、フラッシュドラム(21)の圧力に実質的に等しい圧力で、エチレン、1-ブテン、並びにより重質な炭化水素生成物(C6+)を含有する気相(203)と、濃縮された失活触媒を豊富に含む液相(204)との分離を可能にする条件下に蒸発させられた。得られたこの液相(204)は、フラッシュドラム(23)において減圧されかつフラッシュされ、ポリマーおよび失活触媒を実質的に含まない蒸気相(205)と、ポリマーおよび失活触媒を濃縮した液相(206)とが生じさせられた。失活および蒸発のセクションから得られた流れの組成は、下記の表1に記載されている。
【0062】
【0063】
フラッシュドラム(21)および薄膜式蒸気化器(22)から得られた種々の蒸気相(207)および(203)は、失活触媒を実質的に含んでおらず、これらは、液体生成物の形態に凝縮させられ、種々の生成物が分離されるであろう分離セクション(3)に対応する蒸留セクションに送られ得た。蒸留セクション(3)において、一方のエチレンと、他方の1-ブテンプラスより重質の化合物とが、第2の蒸留塔(不図示)において分離された。エチレンを豊富に含むフラクションは、反応器に再循環させられた(流れ(306))。1-ブテン(流れ(301))とより重質な化合物(C6+,流れ(304))との間の分離は、第2の蒸留塔(不図示)において行われた。
【0064】
交換器(12b)を洗浄するために、本発明によるデバイスが採用された。用いられた洗浄溶媒はn-ヘキサンであった。洗浄溶媒の移動(ライン(402)、(403)、(404)、(405))は、溶媒収納ドラム(40)と洗浄されるべき交換器(12b)との間のポンプ(42)を活用して確立された。このループ上の熱交換器(43)は、180℃の温度に溶媒を加熱するために用いられ得た。
【0065】
洗浄溶媒(n-ヘキサン)のための収納ドラム(40)の圧力は、約1.4絶対MPaであり、それは液体の形態に維持された。一旦洗浄が完了したところで、ポリマーおよび触媒残渣で飽和した溶媒は、ライン(406)、(407)および(211)を介して、フラッシュドラム(21)の方に向けられた。
【0066】
本方法は、連続的に行われ、設備、特に、熱交換器を洗浄するためにその熱交換器を開にすることが回避され得たことを意味していた;これは、省力化を示し、事故のリスクを回避する。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【
図1】本発明による洗浄デバイスを用いて行われる本方法のレイアウトを説明し、一つの熱交換器(12a)が作動中であり、他方(12b)が洗浄デバイスにより洗浄されている場合である。