(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-16
(45)【発行日】2022-02-25
(54)【発明の名称】弁
(51)【国際特許分類】
F16K 1/34 20060101AFI20220217BHJP
F16K 1/42 20060101ALI20220217BHJP
F16K 1/36 20060101ALI20220217BHJP
【FI】
F16K1/34 Z
F16K1/42 G
F16K1/36 Z
(21)【出願番号】P 2017254131
(22)【出願日】2017-12-28
【審査請求日】2020-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000133733
【氏名又は名称】株式会社テイエルブイ
(72)【発明者】
【氏名】飛田 泰平
【審査官】笹岡 友陽
(56)【参考文献】
【文献】実開昭57-202058(JP,U)
【文献】実開昭60-019867(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2013/0020521(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第106090268(CN,A)
【文献】実開昭60-121559(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 1/34
F16K 1/42
F16K 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流入口および流出口が設けられたケーシングと、
前記流入口から流入した流体が通過して前記流出口へ流れる弁口が形成された弁座と、
前記弁座に離着座して前記弁口を開閉する弁体とを備え、
前記弁座は、内周シート部および外周シート部を有する環状の凹溝又は凸環部が設けら
れるとともに、前記凹溝の横断面は三角形に形成され、前記凸環部の横断面は半円形に形成されており、
前記弁体は、前記弁座の環状の凹溝の内周シート部および外周シート部に離着座する内周シート部および外周シート部を有する凸環部又は前記弁座の凸環部の内周シート部および外周シート部に離着座する内周シート部および外周シート部を有する環状の凹溝が設けられ
るとともに、前記凹溝の横断面は三角形に形成され、前記凸環部の横断面は半円形に形成されており、
前記凹溝の横断面の三角形と前記凸環部の横断面の半円形とによって構成される拡大部であって、前記弁体が前記弁座から離座し前記弁座と前記弁体との間隙が途中開度のとき、前記弁座の内周シート部と前記弁体の内周シート部とで形成される間隙から前記弁座の外周シート部と前記弁体の外周シート部とで形成される間隙に至る流路に
、流路面積を拡大する
ことによって流体を減速させ、上流側から下流側の順に段階的に圧力を低下させる拡大部が設けられていることを特徴とする弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、蒸気や空気等の気体又は温水や水等の液体が流れる流体配管系統に設けられて流体の流れを制御する弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、リリーフ弁が開示されている。このリリーフ弁は、流体が通過する弁口(圧力開放口)が形成された弁座と、弁座に離着座して弁口を開閉する弁体とを備えている。弁座には、凸環部が弁体側端に設けられ、弁体には、環状の凹溝が弁座側端に設けられている。弁体は、環状の凹溝の外表面全体が弁座の凸環部の外表面全体に着座することにより弁口を閉じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前述のようなリリーフ弁においては、弁座と弁体との間隙が所定以下の途中開度のとき、弁口を通過する流体が弁座と弁体との間を高速で通過するため、弁座と弁体とにエロージョンが発生する可能性があった。
【0005】
本願に開示の技術は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、エロージョンの発生を抑制することができる弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の弁は、ケーシングと、弁座と、弁体とを備えている。前記ケーシングは、流体の流入口および流出口が設けられたものである。前記弁座は、前記流入口から流入した流体が通過して前記流出口へ流れる弁口が形成されたものである。前記弁体は、前記弁座に離着座して前記弁口を開閉するものである。前記弁座は、内周シート部および外周シート部を有する環状の凹溝又は凸環部が設けられたものである。前記弁体は、前記弁座の環状の凹溝の内周シート部および外周シート部に離着座する内周シート部および外周シート部を有する凸環部又は前記弁座の凸環部の内周シート部および外周シート部に離着座する内周シート部および外周シート部を有する環状の凹溝が設けられたものである。そして、前記弁体が前記弁座から離座し前記弁座と前記弁体との間隙が途中開度のとき、前記弁座の内周シート部と前記弁体の内周シート部とで形成される間隙から前記弁座の外周シート部と前記弁体の外周シート部とで形成される間隙に至る流路に流路面積を拡大する拡大部が設けられている。
【発明の効果】
【0007】
本願の弁によれば、エロージョンの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る弁の概略構成を示す断面図である。
【
図2】
図2は、実施形態1に係る弁の弁座と弁体とについて弁体が弁座に着座した状態を拡大して示す断面図である。
【
図3】
図3は、実施形態1に係る弁の弁座と弁体とについて弁体が弁座から離座し弁座と弁体との間隙が所定以下の途中開度時の状態を拡大して示す断面図である。
【
図4】
図4は、実施形態2に係る弁の弁座と弁体とについて弁体が弁座から離座し弁座と弁体との間隙が所定以下の途中開度時の状態を拡大して示す断面図である。
【
図5】
図5は、実施形態1の変形例に係る弁の弁座と弁体とについて弁体が弁座から離座し弁座と弁体との間隙が所定以下の途中開度時の状態を拡大して示す断面図である。
【
図6】
図6は、実施形態2の変形例に係る弁の弁座と弁体とについて弁体が弁座から離座し弁座と弁体との間隙が所定以下の途中開度時の状態を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本願の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本願に開示の技術、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0010】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る弁の概略構成を示す断面図である。
図2は、実施形態1に係る弁の弁座と弁体とについて弁体が弁座に着座した状態を拡大して示す断面図である。
図3は、実施形態1に係る弁の弁座と弁体とについて弁体が弁座から離座し弁座と弁体との間隙が所定以下の途中開度時の状態を拡大して示す断面図である。本実施形態1の弁1は、流体として蒸気が流通するものである。
図1に示すように、本実施形態1の弁1は、ケーシング11と、弁座21と、弁体31とを備えている。
【0011】
ケーシング11は、本体12と、上蓋13と、下蓋14とを有している。なお、
図1ではその縦方向が上下方向である。本体12の上部開口には、仕切部材15を挟んで上蓋13が設けられている。上蓋13および仕切部材15は、上蓋13に設けられているフランジ16によって本体12に締結されている。本体12の下部開口には、下蓋14が締結されている。本体12には、蒸気の流入口17および流出口18が設けられている。流入口17および流出口18は互いに対向している。
【0012】
弁座21は、本体12の内部に設けられている。弁座21は、略円筒状に形成され、円筒軸が上下方向に延びる状態で設けられている。そして、弁座21は、円筒内部が弁口22となっている。ケーシング11の内部は、弁座21の下方が流入空間19となり、弁座21の上部が流出空間20となっている。流入空間19は流入口17と連通し、流出空間20は流出口18と連通し、流入空間19と流出空間20とは弁座21の弁口22によって連通している。弁座21の弁口22は、流入口17と流出口18とを連通させるものであり、流入口17から流入した蒸気が通過して流出口18へ流れるものである。
【0013】
弁体31は、流出空間20に配置されている。弁体31には、上下方向に延びる弁軸32が一体に設けられている。弁体31は、弁軸32が上下方向に変位することにより弁座21の弁体側端に離着座し、弁口22を開閉するものである。弁軸32の上部は、仕切部材15および上蓋13を貫通して外部に突出している。弁軸32と上蓋13との間には、コイルバネ41およびパッキング42が押え部材43によって装着されている。
【0014】
弁座21は、
図2および
図3に示すように、弁体側端に環状の凹溝23が形成されている。環状の凹溝23は、横断面が三角形に形成されている。環状の凹溝23には、内周シート部24及び外周シート部25が設けられている。
【0015】
弁体31は、
図2および
図3に示すように、弁座側端に凸環部32が形成されている。凸環部32の先端は、横断面が半円形に形成されている。凸環部32の先端側には、内周シート部33及び外周シート部34が設けられている。弁体31は、凸環部32の内周シート部33及び外周シート部34が弁座21の環状の凹溝23の内周シート部24及び外周シート部25に離着座することにより、弁口22を開閉する。
図2に示すように、弁体31の内周シート部33および外周シート部34が弁座21の内周シート部24および外周シート部25に着座して弁口22を閉じたとき、弁座21の内周シート部24と外周シート部25との間と、弁体31の内周シート部33と外周シート部34との間とに拡大部44が設けられている。
【0016】
図3に示すように、弁体31が弁座21から離座し弁座21と弁体31との間隙が所定以下の途中開度のとき、弁座21の内周シート部24と外周シート部25との間と、弁体31の内周シート部33と外周シート部34との間とに形成される間隙S1における流路は、弁座21の内周シート部24と弁体31の内周シート部33とで形成される間隙S2から弁座21の外周シート部25と弁体31の外周シート部34とで形成される間隙S3に至る流路において流路面積を拡大する拡大部44が設けられている。
【0017】
弁体31が弁座21から離座し弁口22が開けられると、流入口17から流入した蒸気は、弁座21の弁口22を通過し、弁座21の内周シート部24と弁体31の内周シート部33との間から弁座21の外周シート部25と弁体31の外周シート部34との間を通過し、流出口18から外部に流出する。
【0018】
本実施形態の弁1においては、弁体31が弁座21から離座し弁座21と弁体31との間隙が所定以下の途中開度のとき、弁座21の内周シート部24と外周シート部25との間と、弁体31の内周シート部33と外周シート部34との間とに形成される間隙S1における流路は、弁座21の内周シート部24と弁体31の内周シート部33とで形成される間隙S2から弁座21の外周シート部25と弁体31の外周シート部34とで形成される間隙S3に至る流路において流路面積を拡大する拡大部が設けられている。この場合、間隙S2における上流側圧力、間隙S1における中間圧力、間隙S3における下流側圧力の順に圧力が段階的に低下し、蒸気の流れは拡大部44において減速する。このため、蒸気が弁座21と弁体31との間を高速で通過することを抑制することができる。これにより、エロージョンの発生を抑制することができる。
【0019】
(実施形態2)
図4は、実施形態2に係る弁の弁座と弁体とについて弁体が弁座から離座し弁座と弁体との間隙が所定以下の途中開度時の状態を拡大して示す断面図である。本実施形態2の弁の弁座121と弁体131とは、
図4に示すように、弁座121に凸環部123を形成し、弁体131に環状の凹溝132を形成したものである。
【0020】
弁座121は、弁体側端に凸環部123が形成されている。凸環部123は、横断面が半円形に形成されている。凸環部123には、内周シート部124及び外周シート部125が設けられている。
【0021】
弁体131は、弁座側端に環状の凹溝132が形成されている。環状の凹溝132は、横断面が三角形に形成されている。環状の凹溝132には、内周シート部133及び外周シート部134が設けられている。弁体131は、環状の凹溝132の内周シート部133及び外周シート部134が弁座121の凸環部123の内周シート部124及び外周シート部125に離着座することにより、弁口122を開閉する。
【0022】
弁体131が弁座121から離座し弁座121と弁体131との間隙が所定以下の途中開度のとき、弁座121の内周シート部124と外周シート部125との間と、弁体131の内周シート部133と外周シート部134との間とに形成される間隙S4における流路は、弁座121の内周シート部124と弁体131の内周シート部133とで形成される間隙S5から弁座121の外周シート部125と弁体131の外周シート部134とで形成される間隙S6に至る流路において流路面積を拡大する拡大部144が設けられている。
【0023】
弁体131が弁座121から離座し弁口122が開けられると、蒸気は、弁座121の弁口122を通過し、弁座121の内周シート部124と弁体131の内周シート部133との間から弁座121の外周シート部125と弁体131の外周シート部134との間を通過する。
【0024】
本実施形態2の弁においては、弁体131が弁座121から離座し弁座121と弁体131との間隙が所定以下の途中開度のとき、弁座121の内周シート部124と外周シート部125との間と、弁体131の内周シート部133と外周シート部134との間とに形成される間隙S4における流路は、弁座121の内周シート部124と弁体131の内周シート部133とで形成される間隙S5から弁座121の外周シート部125と弁体131の外周シート部134とで形成される間隙S6に至る流路において流路面積を拡大する拡大部144が設けられている。この場合、間隙S5における上流側圧力、間隙S4における中間圧力、間隙S6における下流側圧力の順に圧力が段階的に低下し、蒸気の流れは拡大部144において減速する。このため、蒸気が弁座121と弁体131との間を高速で通過することを抑制することができる。これにより、エロージョンの発生を抑制することができる。
【0025】
以上のように、上記実施形態の弁は、弁体31,131が弁座21,121から離座し弁座21,121と弁体31,131との間隙が所定以下の途中開度のとき、弁座21,121の内周シート部24,124と外周シート部25,125との間と、弁体31,131の内周シート部33,133と外周シート部34,134との間とに形成される間隙S1,S4における流路は、弁座21,121の内周シート部24,124と弁体31,131の内周シート部33,133とで形成される間隙S2,S5における流路から弁座21,121の外周シート部25,125と弁体31,131の外周シート部34,134とで形成される間隙S3,S6に至る流路において流路面積を拡大する拡大部44,144が設けられている。
【0026】
上記の構成によれば、間隙S2,S5における上流側圧力、間隙S1,S4における中間圧力、間隙S3,S6における下流側圧力の順に圧力が段階的に低下し、蒸気の流れは拡大部44,144において減速する。このため、蒸気が弁座21,121と弁体31,131との間を高速で通過することを抑制することができる。これにより、エロージョンの発生を抑制することができる。
【0027】
(その他の実施形態)
上記実施形態1において弁座21の環状の凹溝23は、横断面が三角形に形成されているが、これに限られるものではない。例えば、
図5に示すように、弁座221の環状の凹溝223は、横断面が矩形に形成されてもよい。矩形の環状の凹溝223には、内周シート部224及び外周シート部225が設けられている。弁体31は、凸環部32の内周シート部33及び外周シート部34が弁座221の環状の凹溝223の内周シート部224及び外周シート部225に離着座することにより、弁口222を開閉する。弁体31が弁座221から離座し弁座221と弁体31との間隙が所定以下の途中開度のとき、弁座221の内周シート部224と外周シート部225との間と、弁体31の内周シート部33と外周シート部34との間とに形成される間隙S7における流路は、弁座221の内周シート部224と弁体31の内周シート部33とで形成される間隙S8から弁座221の外周シート部225と弁体31の外周シート部34とで形成される間隙S9に至る流路において流路面積を拡大する拡大部244が設けられている。
【0028】
また、上記実施形態2において弁体131の環状の凹溝132は、横断面が三角形に形成されているが、これに限られるものではない。例えば、
図6に示すように、弁体331の環状の凹溝332は、横断面が矩形に形成されてもよい。矩形の環状の凹溝332には、内周シート部333及び外周シート部334が設けられている。弁体331は、環状の凹溝332の内周シート部333及び外周シート部334が弁座121の凸環部123の内周シート部124及び外周シート部125に離着座することにより、弁口122を開閉する。弁体331が弁座121から離座し弁座121と弁体331との間隙が所定以下の途中開度のとき、弁座121の内周シート部124と外周シート部125との間と、弁体331の内周シート部333と外周シート部334との間とに形成される間隙S10における流路は、弁座121の内周シート部124と弁体331の内周シート部333とで形成される間隙S11から弁座121の外周シート部125と弁体331の外周シート部334とで形成される間隙S12に至る流路において流路面積を拡大する拡大部344が設けられている。
【0029】
また、上記実施形態の弁は、蒸気以外の流体、例えば、空気、温水、水であっても同様に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本願に開示の技術は、流体の流れを制御する弁について有用である。
【符号の説明】
【0031】
1 弁
11 ケーシング
17 流入口
18 流出口
21,121,221 弁座
22,122,222 弁口
23,123,223 凹溝
24,124,224 内周シート部
25,125,225 外周シート部
31,131,331 弁体
32,132,332 凸環部
33,133,333 内周シート部
34,134,334 外周シート部
44,144,244,344 拡大部
S1,S4,S7,S10 間隙
S2,S5,S8,S11 間隙
S3,S6,S9,S12 間隙