(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-16
(45)【発行日】2022-02-25
(54)【発明の名称】アナログ機器検針システム及び方法
(51)【国際特許分類】
G01D 9/00 20060101AFI20220217BHJP
【FI】
G01D9/00 C
G01D9/00 A
(21)【出願番号】P 2018048125
(22)【出願日】2018-03-15
【審査請求日】2021-01-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000133526
【氏名又は名称】株式会社チノー
(74)【代理人】
【識別番号】100067323
【氏名又は名称】西村 教光
(74)【代理人】
【識別番号】100124268
【氏名又は名称】鈴木 典行
(72)【発明者】
【氏名】鄭 立
【審査官】岩本 太一
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-285303(JP,A)
【文献】特開2002-056387(JP,A)
【文献】特開2016-162412(JP,A)
【文献】特開2012-146154(JP,A)
【文献】特開2011-112626(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0178329(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 9/00- 9/42
15/00-15/34
G08C 13/00-25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象のアナログ値を示す目盛り盤と、測定したアナログ値に応じて前記目盛り盤上を動く指示部とを有するアナログ機器を検針するアナログ機器検針システムであって、
前記アナログ機器を識別する機器情報と、前記アナログ機器の測定値の上下限の範囲を示す測定値範囲情報と、前記目盛り盤内に設定される目盛り領域の形状を特定する形状情報とを少なくとも含む機器特定情報と、
矩形状のコードの3隅に位置検出パターンが配置されるQRコード(登録商標)が前記目盛り盤近傍に形成され、
前記目盛り盤と前記
QRコード(登録商標)とが同一画像内に収まるように撮像する撮像手段と、
前記撮像手段で撮像された撮像画像を2値化処理した2値画像データを取得する2値化処理手段と、
前記撮像された撮像画像内の
QRコード(登録商標)を解析して得られる機器特定情報
に含まれる形状情報から前記2値画像データ内の目盛り領域
の形状や配置位置を特定し、前記撮像画像上で前記位置検出パターン
の2つのパターンの中心を通る一軸を基準として構成される直交座標系において、特定された前記目盛り領域内に存在する黒データの各ピクセルの相対座標を取得する座標取得手段と、
前記座標取得手段で取得した黒データの各ピクセルの相対座標を統計処理して前記目盛り領域内における前記指示部の位置を特定する位置特定手段と、
前記位置特定手段で特定された前記指示部の位置情報と、前記目盛り領域における上限値の位置情報及び下限値の位置情報に基づいて前記指示部が指示する目盛り盤上のアナログ値を数値に換算する換算手段と、
前記換算された数値を前記機器情報と関連付けして記憶する記憶手段と、
を備えたことを特徴とするアナログ機器検針システム。
【請求項2】
測定対象のアナログ値を示す目盛り盤と、測定したアナログ値に応じて前記目盛り盤上を動く指示部とを有するアナログ機器を検針するアナログ機器検針方法であって、
前記アナログ機器を識別する機器情報と
、前記アナログ機器における測定値の上下限の範囲を示す測定値範囲情報と
、前記目盛り盤内に設定される目盛り領域の形状を特定する形状情報とを少なくとも含む機器特定情報と
、矩形状のコードの3隅に位置検出パターンが配置されるQRコード(登録商標)を前記目盛り盤近傍に形成
するステップと、
前記目盛り盤と前記QRコード(登録商標)とが同一画像内に収まるように撮像するステップと、
撮像された前記撮像画像を2値化処理した2値画像データを取得するステップと、
前記撮像された撮像画像内の
QRコード(登録商標)を解析して得られる機器特定情報
に含まれる形状情報から前記2値画像データ内の目盛り領域
の形状や配置位置を特定し、前記撮像画像上で前記位置検出パターン
の2つのパターンの中心を通る一軸を基準として構成される直交座標系において、特定された前記目盛り領域内に存在する黒データの各ピクセルの相対座標を取得するステップと、
前
記取得した黒データの各ピクセルの相対座標を統計処理して前記目盛り領域内における前記指示部の位置を特定するステップと、
前
記特定された前記指示部の位置情報と、前記目盛り領域における上限値の位置情報及び下限値の位置情報に基づいて前記指示部が指示する目盛り盤上のアナログ値を数値に換算するステップと、
前記換算された数値を前記機器情報と関連付けして記憶するステップと、
を有することを特徴とするアナログ機器検針方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アナログ計器や開閉弁などの各種アナログ機器における現在の状態を指し示す指針の指示位置を検針するアナログ機器検針システム及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば工場プラント内に設置される圧力計や電圧計などのアナログ計器や開閉弁などのアナログ機器において、指針が指し示す指示値(測定値)や各種状態(開閉状態)を記録する場合、作業員が計器の指示値を目視で読み取り、その指示値を紙の点検シートに記録する又は携帯機器に入力する手法が一般的である。
【0003】
しかし、アナログ機器の設置位置が目線よりも高い場合や工場に設置された機器の隙間に配置されているような場合、作業員が指示値を読み取るのが難しく、また読み取った指示値の入力に時間がかかるなど検針に係る作業効率が悪いという問題があった。また、検針の際に、作業員が指針の指示値を読み間違えたり、読み取った数値の入力ミスをするなどのヒューマンエラーが起こってしまうという問題がある。
【0004】
そこで、上記問題を解決するため、下記特許文献1には、事前に計器の形状パターンや種類を紐付けた状態で保存しておき、検査時に撮像した画像と予め記憶させた形状パターンとを重畳させて指示値を取得するシステムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、生産ライン完成品検査のための特許文献1のシステムでは、予め撮像する形状パターンは計器の表示面(指針や目盛りが現れている面)を正面から撮像したものとなるが、実際に作業員が工場プラントの現場で点検する場合は、形状パターンと必ずしも同じ位置、同じ角度で計器が撮像できる保証がないため、撮像した画像と予め記憶する形状パターンとが一致しない場合は適切な指示値が取得できないという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、アナログ機器の指針が指し示す指示値や各種状態を確実に読み取って作業効率化を図りつつ、ヒューマンエラーを防止することができるアナログ機器検針システム及び方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するため、本発明の第1の態様は、測定対象のアナログ値を示す目盛り盤と、測定したアナログ値に応じて前記目盛り盤上を動く指示部とを有するアナログ機器を検針するアナログ機器検針システムであって、
前記アナログ機器を識別する機器情報と、前記アナログ機器の測定値の上下限の範囲を示す測定値範囲情報と、前記目盛り盤内に設定される目盛り領域の形状を特定する形状情報とを少なくとも含む機器特定情報と、矩形状のコードの3隅に位置検出パターンが配置されるQRコード(登録商標)が前記目盛り盤近傍に形成され、
前記目盛り盤と前記QRコード(登録商標)とが同一画像内に収まるように撮像する撮像手段と、
前記撮像手段で撮像された撮像画像を2値化処理した2値画像データを取得する2値化処理手段と、
前記撮像された撮像画像内のQRコード(登録商標)を解析して得られる機器特定情報に含まれる形状情報から前記2値画像データ内の目盛り領域の形状や配置位置を特定し、前記撮像画像上で前記位置検出パターンの2つのパターンの中心を通る一軸を基準として構成される直交座標系において、特定された前記目盛り領域内に存在する黒データの各ピクセルの相対座標を取得する座標取得手段と、
前記座標取得手段で取得した黒データの各ピクセルの相対座標を統計処理して前記目盛り領域内における前記指示部の位置を特定する位置特定手段と、
前記位置特定手段で特定された前記指示部の位置情報と、前記目盛り領域における上限値の位置情報及び下限値の位置情報に基づいて前記指示部が指示する目盛り盤上のアナログ値を数値に換算する換算手段と、
前記換算された数値を前記機器情報と関連付けして記憶する記憶手段と、
を備えたことを特徴とする、アナログ機器検針システムである。
【0009】
本発明に係る第2の態様は、測定対象のアナログ値を示す目盛り盤と、測定したアナログ値に応じて前記目盛り盤上を動く指示部とを有するアナログ機器を検針するアナログ機器検針方法であって、
前記アナログ機器を識別する機器情報と、前記アナログ機器における測定値の上下限の範囲を示す測定値範囲情報と、前記目盛り盤内に設定される目盛り領域の形状を特定する形状情報とを少なくとも含む機器特定情報と、矩形状のコードの3隅に位置検出パターンが配置されるQRコード(登録商標)を前記目盛り盤近傍に形成するステップと、
前記目盛り盤と前記QRコード(登録商標)とが同一画像内に収まるように撮像するステップと、
撮像された前記撮像画像を2値化処理した2値画像データを取得するステップと、
前記撮像された撮像画像内のQRコード(登録商標)を解析して得られる機器特定情報に含まれる形状情報から前記2値画像データ内の目盛り領域の形状や配置位置を特定し、前記撮像画像上で前記位置検出パターンの2つのパターンの中心を通る一軸を基準として構成される直交座標系において、特定された前記目盛り領域内に存在する黒データの各ピクセルの相対座標を取得するステップと、
前記取得した黒データの各ピクセルの相対座標を統計処理して前記目盛り領域内における前記指示部の位置を特定するステップと、
前記特定された前記指示部の位置情報と、前記目盛り領域における上限値の位置情報及び下限値の位置情報に基づいて前記指示部が指示する目盛り盤上のアナログ値を数値に換算するステップと、
前記換算された数値を前記機器情報と関連付けして記憶するステップと、
を有することを特徴とする、アナログ機器検針方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、作業員が検針対象となるアナログ機器を撮像するだけで、自動的に指示部が指し示すアナログ値をデジタル化した測定値として取得することができるため、アナログ機器を検針する手間が省けるとともに、目視による測定値の読み間違いや点検ミス(記入漏れや機器識別の間違い)などのヒューマンエラーを未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明のアナログ機器検針システムの機能ブロック図である。
【
図2】(a)は本発明の検針対象であるアナログ機器の撮像画像例を示す概念図であり、(b)は
図2(a)の撮像画像に所定の画像処理を施したときの概念図である。
【
図3】撮像画像を2値化した後に黒データのピクセルの相対座標を取得するまでの流れを示す概念図である。
【
図4】目盛り領域内に存在する黒データの各ピクセルの位置を表したヒストグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
なお、本明細書に添付する図面は、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺、縦横の寸法比、形状などについて、実物から変更し模式的に表現される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。従って、添付した図面を用いて説明する実施の形態により、本発明が限定されず、この形態に基づいて当業者などにより考え得る実施可能な他の形態、実施例及び運用技術などは全て本発明の範疇に含まれるものとする。
【0014】
また、本明細書において、添付する各図を参照した以下の説明において、方向乃至位置を示すために上、下、左、右の語を使用した場合、これはユーザが各図を図示の通りに見た場合の上、下、左、右に一致する。
【0015】
本発明は、例えば工場プラントなどに設置される圧力計や電圧計などのアナログ計器、開閉弁や調節弁などの現在の状態を示す状態信号を外部出力する機能を備えていないアナログ機器100の検針を行うシステムであって、アナログ機器100の指針の位置を把握し、指針が指し示す状態情報(測定値や機器の状態を示す情報)を取得するシステムである。つまり、アナログ機器検針システム1は、作業員がアナログ機器100の設置箇所まで出向き、各機器に対する検針作業の効率化を図るための発明である。
【0016】
本発明の検針対象となるアナログ機器100とは、上述したように例えば工場プラントなどに設置される圧力計や電圧計などのアナログ計器や開閉弁などを指し、現在の状態を示す状態信号を外部出力する機能を備えていない機器である。また、アナログ機器100の指示部101とは、アナログ計器であれば目盛り盤上を測定量に応じて移動する指針であり、開閉弁であれば現在の状態(開放状態、閉塞状態)を示す指針片を指す。本実施形態では、アナログ機器100としてアナログ計器の例で説明する。
【0017】
[システム構成]
まず、本実施形態のアナログ機器検針システム1の構成について説明する。
アナログ機器検針システム1は、撮像部10と、記憶部20と、画像処理部30とで構成され、アナログ機器100の表示領域である目盛り盤の近傍に形成された機器特定コード40を読み取り、この読み取った機器特定コード40を基に作成する仮想的な直交座標系から指示部101が指し示す現在の状態情報(指示値)を取得する。
【0018】
<機器特定コード>
機器特定コード40は、アナログ機器100を特定するための機器特定情報がコード化されたものであり、アナログ機器100の目盛り盤近傍に形成されている。機器特定コード40は、アナログ機器100の目盛り盤近傍に形成されているため、指示部101が指し示している表示状態と一緒に撮像部10で撮像することができる。
【0019】
機器特定コード40の形成方法としては、アナログ機器100を設置する際にシール状のものを貼着するのが効率的であるが、製造時に予め印刷処理を施して形成してもよい。機器特定コード40の形成位置としては、アナログ機器100の目盛り盤近傍であり、少なくとも指示部101が指し示す表示状態を撮像する際に同一画面上に収まる位置であればよい。よって、表示領域である目盛り盤に対するピントと機器特定コード40に対するピントが合うように、撮像される目盛り盤のサイズに合わせて機器特定コード40のサイズや形成位置が自ずと規定される。本実施形態では、目盛り盤に機器特定コード40を形成した構成とする。
【0020】
また、機器特定コード40には、少なくとも3以上の位置検出パターン41が形成されている。この位置検出パターン41は、機器特定コード40の位置を特定して切り出すためのパターンであり、例えば機器特定コード40がQRコード(登録商標)の場合は、矩形状のコードの3隅に配置される四角形状の切り出しシンボルのことを指す。位置検出パターン41は、読み取ったどの位置からもセルの幅の比率(白セルと黒セルの比率)が規定されており、読み取り角度が正面ではなく回転してずれていたとしても、パターン位置の検出や位置関係から機器特定コード40の回転角度や傾きを認識することができる。
【0021】
本実施形態では、機器特定コード40として一般的に広く普及されているQRコード(登録商標)を使用する。
【0022】
また、位置検出パターン41は、目盛り盤を撮像した際に目盛り盤上の目盛りの上下限位置や指示部101が指し示す位置を特定する相対座標を取得するための仮想的な直交座標系を作成する際に使用される。
【0023】
図2(a)には目盛り盤が円形のアナログ機器100を撮像した画像を模式的に示し、
図2(b)には、撮像したアナログ機器100の撮像画像に画像処理部30が画像処理を施した模式図である。
図2(b)に示すように、画像処理部30は、この撮像画像に対して所定の画像処理を施して仮想的な直交座標系を作成する。図中に示すように、この撮像画像を平面視したときに、機器特定コード40における図中左右方向に並設される2つ位置検出パターン41の中心を通る座標軸をX軸(横軸)とし、図中上下方向に並設される2つの位置検出パターン41の中心を通る座標軸をY軸(縦軸)とし、X軸とY軸が直交する点を原点(0,0)とする直交座標系を作成する。画像処理部30は、この直交座標系における画像内の所定ピクセルの相対座標を取得する。
【0024】
機器特定コード40に含まれる機器特定情報は、アナログ機器100の種類や設置箇所に基づき設定された特定のタグ(機器情報)、アナログ機器100の測定値の上下限範囲を示す情報(測定値範囲情報)、目盛り盤内に設定される目盛り領域Eの形状が特定可能な情報(形状情報)、アナログ機器100の設置箇所を示す情報(設置箇所情報)などが含まれている。
【0025】
機器特定情報に含まれる形状情報は、目盛り盤上に設定される目盛り領域Eの形状を特定するための情報であり、位置検出パターン41から仮想的に作成した直交座標系に基づいて得られる相対座標により規定される。目盛り領域Eは、アナログ機器100毎に設定されるが、画像処理部30によって目盛り領域E内における指示部101が指し示す位置の特定が可能なように、目盛り領域E内に指示部101のような領域の幅方向に亘って連続する黒データが存在しない領域が設定される。
【0026】
図2(b)に示すように、目盛り盤が円形のアナログ機器100の場合、目盛り盤が円形で目盛りが所定曲率の円弧に沿って所定間隔を空けて並列している構成であるため、撮像画像を平面視したときにその幅が目盛り盤上に配置される目盛りの基端から所定距離だけ内方に及ぶ略馬蹄形状の領域が目盛り領域E(図中のハッチング領域)となる。よって、図例では、目盛り領域Eの形状を特定するための情報として目盛り領域Eにおける円心座標(図中における座標(x1、y1)であり、指示部101の回転中心と同位置)、目盛り領域Eの外周半径r1と内周半径r2、目盛り領域Eの円心座標を水平方向(図中の左右方向)に通る仮想的な始線L1から目盛り領域Eの上下限値までの角度(つまり、指示部101の回転角に相当する始点角度θ0、終点角度θ1)などが形状特定に必要な情報となる。
【0027】
また、図示しないが、目盛り盤が矩形状で目盛りが水平方向に並列している構成の場合、撮像画像を平面視したときにその幅が目盛り盤上に配置される目盛りの基端から所定距離下方に及ぶ横長の矩形状領域が目盛り領域Eとなる。よって、目盛り領域Eの形状を特定するための情報としては、上辺の座標(例えばY軸と上辺との交点の座標)、下辺の座標(例えばY軸と下辺との交点の座標)、目盛り領域Eにおける下限位置の相対座標(下限値の目盛りの基端位置の座標)及び目盛り領域Eにおける上限位置の相対座標(上限値の目盛りの基端位置の座標)などが形状特定に必要な情報となる。
【0028】
目盛り盤に作成される直交座標系から得られる相対座標は、撮像距離や撮像倍率、画像のピクセル数に応じてピクセル座標へのスケール変換の比率が決まる。そのため、例えばX軸上に並設される2つの位置検出パターン41の距離を「1.0」とし、X軸上に並設される2つの位置検出パターン41の距離を「1.0」とした場合、この距離をピクセル数に換算することで撮像画像上の取得対象となるピクセルの相対座標を求めることができる。
【0029】
<撮像部>
撮像部10は、アナログ機器100の目盛り盤で指示部101が指し示した状態と、目盛り盤近傍に形成された機器特定コード40を撮像する手段である。撮像部10は、撮像した画像を加工処理するため、デジタルデータで取得する。そのため、撮像部10の構成として、移動端末(携帯電話、スマートフォン、ノートPC、タブレット端末など)に搭載されるカメラ機能やデジタルカメラなどを使用する。
【0030】
撮像部10は、アナログ機器100の表示領域である目盛り盤と、機器特定コード40とが同一画面上に収まるように操作され、この撮像画像を画像処理部30に出力する。
【0031】
本実施形態では、撮像部10として作業員が所持するスマートフォンのカメラ機能を使用する。
【0032】
<記憶部>
記憶部20は、各種OS(オペレーティングシステム)やアナログ機器検針システム1用のアプリケーションソフトウェアなどのプログラムを記憶する主記憶装置(ROM、RAMなどの半導体メモリ)や補助記憶装置(フラッシュメモリやハードディスクドライブなど)で構成され、アナログ機器検針システム1を構成する各部に所定の処理を実行させるための各種情報を記憶する。
【0033】
また、記憶部20は、アナログ機器100を撮像した撮像画像内の機器特定コード40を解析した機器特定情報や、画像処理部30で取得された検針対象であるアナログ機器100の撮像時の指示部101が指示する状態情報(測定値)を機器情報と関連付けした状態で記憶する。
【0034】
本実施形態では、記憶部20として作業員が所持するスマートフォンに搭載される内部メモリやSDカードなどの各種記憶装置を利用する。
【0035】
<画像処理部>
画像処理部30は、撮像部10で取得した撮像画像と、機器毎に予め設定された機器特定情報とに基づいて、撮像された指示部101が指し示すアナログ機器100の現在の状態情報を取得する。
画像処理部30は、コード解析手段31と、2値化処理手段32と、座標取得手段33と、位置特定手段34と、換算手段35とを備えている。
【0036】
本実施形態において、画像処理部30は、作業員が所持するスマートフォンにアナログ機器検針システム1用のアプリケーションソフトウェアがインストールされ、このアプリケーションソフトウェア(アプリ)をOS(オペレーティングシステム)によって実行し、スマートフォンに搭載されるCPUやメモリ(記憶部20)を協働させることでその機能が実現される。
【0037】
コード解析手段31は、撮像部10で撮像した撮像画像内の機器特定コード40を解析し、このコードに含まれる機器特定情報を記憶部20に記憶させる。
【0038】
2値化処理手段32は、撮像部10で撮像された多値化画像を2値化処理する。2値化処理は、基準となる濃度値を2値化閾値として設定し、この2値化閾値を用いて撮像部10で撮像された撮像画像の各ピクセルを白データ、黒データの2値画像データに変換する濃度変換処理を行う2値化処理手段32は、2値化処理した2値画像データを座標取得手段33に出力する。
【0039】
なお、2値化閾値は、少なくとも目盛り盤上の背景が白データに変換され、目盛りや指示部101が黒データに変換されるように濃度値が設定されている。
【0040】
座標取得手段33は、記憶部20から読み出した機器特定情報に含まれる形状情報に基づいて2値画像データ内における目盛り領域Eの形状や配置位置を特定し、目盛り領域E内に存在する黒データの各ピクセルについての相対座標を取得する。この相対座標は、位置検出パターン41から作成される直交座標系を用いて取得される。座標取得手段33は、目盛り領域E内に存在する黒データに対応する各ピクセルの相対座標を取得すると、この座標情報を位置特定手段34に出力する。
【0041】
座標取得手段33は、2値画像データにおける目盛り領域E内の黒データにのみ着目し、この領域内に存在する黒データの各ピクセルの相対座標を取得する。
図3では、指示部101の先端の一部における黒データと白データを示しており、図中矢印が指示する黒データ(点線で囲われたピクセル)の相対座標(x2,y2)を取得している例である。
【0042】
位置特定手段34は、目盛り領域E内の全ての黒データに対応する各ピクセルの相対座標から、各ピクセルが目盛り領域Eのどの位置に存在しているかを特定する。本実施形態では、座標取得手段33で取得した目盛り領域E内の全ての黒データに対応する各ピクセルの座標情報の角度を求める。この角度は、目盛り領域Eの円心座標を水平方向に通る始線L1から円心座標と黒データの各ピクセルの相対座標とを結ぶ直線とで成す角度のことである。
【0043】
次に、位置特定手段34は、目盛り領域E内の全黒データの相対座標に応じた角度の統計処理を行う。統計処理では、縦軸をピクセル数、横軸を目盛り領域Eにおける始点角度θ0と終点角度θ1の角度を上下限とした範囲のヒストグラムを作成して、指示部101が指し示す位置を角度情報から特定する。位置特定手段34は、特定した指示部101の位置に基づく位置情報(ここでは角度情報)を換算手段35に出力する。
【0044】
上記統計処理によってピクセル数のヒストグラムを作成すると、ある角度付近に黒データが連続して存在することが確認されるため、この黒データが集中する部分を指示部101の位置と推定することができる。
【0045】
また、作成したヒストグラムに所定ピクセル数以上連続する黒データのみを抽出する抽出用閾値を設けることで、抽出用閾値を越える黒データの分布にのみ着目することができる。これにより、目盛り領域E内における指示部101が指し示す位置情報を特定する処理負担を大幅に削減することができる。
【0046】
図4は、
図3に示した目盛り領域E内に存在する黒データの各ピクセルをヒストグラムにしたものである。
図4において、目盛りは測定値の下限を示す始点(225°)から測定値の上限を示す終点(-45°)の範囲とし、この角度範囲に存在する数値及び指示部101を構成する黒データのピクセルの位置が分布表示されている。位置特定手段34は、このヒストグラムによって指示部101の位置をある程度推定することも可能であるが、抽出用閾値を用いることで図中の30°付近にのみ黒データの分布が連続していることを容易に把握することができる。
【0047】
なお、
図4のように、指示部101として推定される黒データの分布が複数列固まって存在するときは、最もピクセル数の多い角度を指示部101の位置として特定することができる。
【0048】
また、目盛り領域Eが横長の矩形状の場合は、縦軸をピクセル数、横軸を測定範囲における上下限値の範囲とし、黒データの各ピクセルの相対座標に応じた目盛り領域E内の位置に基づくヒストグラムを作成し、抽出用閾値を越える黒データの分布位置に着目することで、目盛り領域E内における指示部101の位置を特定することができる。なお、特定された指示部101の位置に応じた位置情報は相対座標として取得される。
【0049】
換算手段35は、位置特定手段34で特定された指示部101の位置情報と、目盛り領域Eにおける上限値の位置情報及び下限値の位置情報に基づいて指示部101が指示する状態情報(目盛り盤上のアナログ値)を数値(デジタル値)に換算する。つまり、アナログ機器100の目盛り盤上で割り振られた目盛りにおける上限値と下限値の間の距離を「1」としたときに、上限値と指示部101との間の距離と、下限値と指示部101との間の距離の比率を求め、この比率を測定値の上下限値の範囲に当てはめることで、目盛り盤上で指示部101が指し示す位置に対応する測定値を特定している。
【0050】
本実施形態において、換算手段35は、位置特定手段34から出力された角度情報と、目盛り領域Eにおける始点角度θ0及び終点角度θ1と、機器特定情報に含まれる測定値範囲情報における測定範囲の上限値と下限値を用いて、下記式から指示部101が指し示す値(測定値)を数値化する。
<式1>
測定値=(指示部101の角度-始点角度θ0)/(終点角度θ1-始点角度θ0)×(測定範囲の上限値-測定範囲の下限値)…式1
【0051】
一例として、位置特定手段34で得られた指示部101の角度を30°、略馬蹄形状の目盛り領域Eの始点角度θ0を225°、終点角度θ1を-45°、検針対象であるアナログ機器100の測定範囲の下限値を0.0MPa、下限値を1.0MPaとすると、上記式1に各値を当てはめると測定値は、0.72Mpaとなる。
【0052】
なお、目盛り領域Eが横長の矩形状の場合は、目盛り領域Eにおける下限位置の相対座標と目盛り領域Eにおける上限位置の相対座標とを結ぶ距離を「1」とし、位置特定手段34で検出した指示部101の位置(相対座標)と下限値の目盛りの位置(相対座標)までの水平方向の距離と、指示部101の位置(相対座標)から上限値の目盛りの位置(相対座標)までの水平方向の距離との比率を求めて目盛り盤内における指示部101が指し示す位置を特定している。
【0053】
[処理動作]
次に、上述したアナログ機器検針システム1の処理動作について説明する。
ここでは、検針対象である圧力計の機器特定情報が読取可能な機器特定コード40が予め目盛り盤上に貼着されており、所持するスマートフォンで機器特定コード40を読み取って検針対象の圧力計の圧力値を取得するときの動作である。
【0054】
作業員は、所持するスマートフォンを操作してアナログ機器検針システム1用のアプリを起動した状態でカメラ機能を用いてアナログ機器100の目盛り盤と機器特定コード40が収まるように撮像する。
【0055】
次に、アプリの起動プログラムに従って撮像画像からアナログ機器100が測定した測定値(圧力値)を取得する処理を行う。
撮像画像の画像処理として、まず撮像画像内の機器特定コード40を解析して撮像したアナログ機器100の機器特定情報を記憶部20に記憶させる。
【0056】
次に、撮像画像を2値化処理して2値画像データを取得し、記憶部20から読み出した機器特定情報に含まれる形状情報から2値画像データ内における目盛り領域Eの形状や配置位置を特定する。
【0057】
次に、2値画像データに含まれる黒データのうち、目盛り領域E内に存在する黒データの各ピクセルの相対座標を取得する。これら相対座標は、機器特定コード40の位置検出パターン41から仮想的に作成される直交座標系に基づいて取得する。
【0058】
次に、目盛り領域E内の黒データに対応する各ピクセルの相対座標と、目盛り領域Eの円心座標との2点間の角度を、目盛り領域Eの円心座標を通る仮想的な始線L1を基準として求め、目盛り領域E内における全ての黒データの相対座標に応じた角度を統計処理する。統計処理では、縦軸をピクセル数、横軸を目盛り領域Eにおける始点角度θ0と終点角度θ1の角度範囲としたヒストグラムを作成し、指示部101が指し示す位置情報(角度情報)を取得する。
【0059】
次に、取得した指示部101の位置情報と、目盛り領域Eにおける始点角度θ0及び終点角度θ1と、機器特定情報に含まれる測定値範囲情報における測定範囲の上限値と下限値を用いて、指示部101が指し示す値(測定値)を数値化する。これにより、アナログ機器100で測定された現在のアナログ値を数値化した測定値(デジタル値)が取得される。
【0060】
そして、取得した測定値は、撮像時に解析した機器特定コード40に含まれる機器情報と関連付けした状態で検針日時と合わせて記憶部20に記憶させる。
【0061】
以上説明したように、上述したアナログ機器検針システム1は、アナログ機器100の機器特定情報と位置検出パターン41を含む機器特定コード40が予め目盛り盤近傍に形成され、撮像部10でアナログ機器100の目盛り盤と機器特定コード40が収まるように撮像する。撮像画像は、2値化処理により2値画像データとし、この2値化画像データにおける目盛り領域Eに相当する部分に存在する黒データの各ピクセルの相対座標を、位置検出パターン41から作成される直交座標系を用いて取得する。
【0062】
そして、目盛り領域E内の黒データに対応する各ピクセルの相対座標を統計処理して目盛り領域E内で指示部101が指し示す位置情報を取得し、この位置情報と、目盛り領域Eにおける上限値の位置情報と下限値の位置情報を用いて、指示部101が指し示すアナログ値を数値化した測定値と機器情報とを関連付けした状態で検針日時と合わせて記憶部20に記憶させる。
【0063】
これにより、作業員が検針対象となるアナログ機器100を撮像するだけで、自動的に指示部101が指し示すアナログ値をデジタル化した測定値として取得することができるため、アナログ機器100を検針する手間が省けるとともに、目視による測定値の読み間違いや点検ミス(記入漏れや機器識別の間違い)などのヒューマンエラーを未然に防止することができる。また、検針日時と合わせて測定値と機器情報とをログ情報として記憶部20に記憶させることで、プラント内に設置された全てのアナログ機器100の状態を一括して管理することができる。
【符号の説明】
【0064】
1…アナログ機器検針システム
10…撮像部
20…記憶部
30…画像処理部
31…コード解析手段
32…2値化処理手段
33…座標取得手段
34…位置特定手段
35…換算手段
40…機器特定コード
41…位置検出パターン