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特許7025968鉄道車両のホイールセットを制御するためのアクチュエータ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-16
(45)【発行日】2022-02-25
(54)【発明の名称】鉄道車両のホイールセットを制御するためのアクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   B61F 5/44 20060101AFI20220217BHJP
   F15B 15/02 20060101ALI20220217BHJP
【FI】
B61F5/44 Z
F15B15/02 A
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2018056685
(22)【出願日】2018-03-23
(65)【公開番号】P2018162059
(43)【公開日】2018-10-18
【審査請求日】2021-03-04
(31)【優先権主張番号】10 2017 002 926.1
(32)【優先日】2017-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】518101532
【氏名又は名称】リープヘル-トランスポーテーション システムズ ゲーエムベーハー ウント コー.カーゲー
【氏名又は名称原語表記】Liebherr-Transportation Systems GmbH & Co.KG
【住所又は居所原語表記】Liebherrstr.1,Korneuburg Austria
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュナイダー リヒャルト
【審査官】林 政道
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-108900(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61F 1/00-99/00
F15B 15/00-15/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両(60)のホイールセット(50)を制御するためのアクチュエータ(1)であって、
上記鉄道車両(60)の車台(100)またはホイールセット軸受ハウジング(120)に固定される車軸ケーシング(2)と、
上記車軸ケーシング(2)内に設けられ、該車軸ケーシング(2)を両側部の各々において貫通するピストンロッド(5)を含むピストン面(4)を有する同期シリンダ(3)と、
上記車軸ケーシング(2)に対する上記同期シリンダ(3)の運動にしたがって可動であるハウジング(6)と、
上記ピストンロッド(5)の端部に設けられ、該ピストンロッド(5)を上記ハウジング(6)に接続するピストンロッドばね要素(7)とを備え
上記車軸ケーシング(2)に対する上記ハウジング(6)の相対運動が、上記ホイールセット(50)を偏向させるためのストロークに利用可能である、
ことを特徴とするアクチュエータ。
【請求項2】
請求項1において、
上記車軸ケーシング(2)は、細長い形状を有し、
上記同期シリンダ(3)は、上記車軸ケーシング(2)の長手方向中央に設けられている
ことを特徴とするアクチュエータ。
【請求項3】
請求項2において、
2つの上記ピストンロッド(5)は、上記車軸ケーシング(2)の長手方向に対して垂直に向いている
ことを特徴とするアクチュエータ。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項において、
上記ピストンロッド(5)に設けられた上記ピストンロッドばね要素(7)は、矩形状または円筒状であり、および/または上記ピストンロッド(5)の長手方向と平行に積層されたゴム積層ばねである
ことを特徴とするアクチュエータ。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項において、
上記車軸ケーシング(2)と上記ハウジング(6)との間に設けられた車軸ケーシングばね要素(8)をさらに備え、
上記車軸ケーシングばね要素(8)の主ばね方向は、上記車軸ケーシング(2)の長手方向と平行に向いており、
上記車軸ケーシングばね要素(8)は、上記車軸ケーシング(2)の長手方向と平行に積層されたゴム積層ばねである
ことを特徴とするアクチュエータ。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項において、
一対の上記車軸ケーシングばね要素(8)が、上記ピストンロッド(5)の長手方向と上記車軸ケーシング(2)の長手方向とによって規定される平面の一方側のみに設けられ、
上記一対の車軸ケーシングばね要素(8)は、上記車軸ケーシング(2)の長手方向における上記ハウジング(6)の上記車軸ケーシング(2)に対する運動を緩衝するように構成されている
ことを特徴とするアクチュエータ。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項において、
上記ピストンロッド(5)の長手方向と上記車軸ケーシング(2)の長手方向とによって規定される平面において上記車軸ケーシング(2)で上記ハウジング(6)をスライド支持するためのスライド要素(9)をさらに備え、
第1の上記スライド要素(9)は、上記ピストンロッド(5)の長手方向と上記車軸ケーシング(2)の長手方向とによって規定される平面の一方側に設けられ、
第2の上記スライド要素(9)は、上記ピストンロッド(5)の長手方向と上記車軸ケーシング(2)の長手方向とによって規定される平面の他方側に設けられている
ことを特徴とするアクチュエータ。
【請求項8】
請求項7において、
上記スライド要素(9)は、
上記ピストンロッド(5)の長手方向における運動を許容するスライドプレート(91)と、
円形セグメント状に形成され、上記ピストンロッド(5)の長手方向と上記車軸ケーシング(2)の長手方向とによって規定される平面に対する法線方向回りの上記ハウジング(6)の回動を許容する要素(92)とを有する
ことを特徴とするアクチュエータ。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項において、
上記ピストンロッド(5)および上記車軸ケーシング(2)と協働して上記同期シリンダ(3)のゼロ位置からのオフセットを求めるための位置センサ(10)をさらに備えることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項において、
上記同期シリンダ(3)の2つのチャンバ(31,32)を互いに接続するバルブ(11)と、
一方の上記チャンバ(31)から他方の上記チャンバ(32)への油圧流体の流れを所望の調節動作に対応する方向にのみ許容することで上記同期シリンダ(3)の調節を実現するように構成されたバルブ制御部(12)とを備え、
上記アクチュエータ(1)は、上記同期シリンダ(3)の能動的動作のために油圧ユニット(13)を利用しないか、または該油圧ユニット(13)を備えない
ことを特徴とするアクチュエータ。
【請求項11】
請求項10において、
上記アクチュエータ(1)の上記バルブ(11)は、先行または後続の上記アクチュエータ(1)の上記同期シリンダ(3)に接続されており、
上記バルブ制御部(12)は、後続の上記アクチュエータ(1)の油圧流体流れを先行の上記アクチュエータ(1)の調節のために必要に応じて利用するように構成され、
後続または先行の上記アクチュエータ(1)のいずれも、上記同期シリンダ(3)の能動的動作のために油圧ユニット(13)を利用しないか、または該油圧ユニット(13)を備えない
ことを特徴とするアクチュエータ。
【請求項12】
請求項1~9のいずれか1項において、
上記同期シリンダ(3)を駆動するための油圧ユニット(13)をさらに備え、
上記油圧ユニット(13)は、上記車台(100)に、および/または上記車軸ケーシング(2)の長手方向端部の前側に配置されている
ことを特徴とするアクチュエータ。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項において、
上記アクチュエータ(1)にエネルギーを供給するためのエネルギー生成ユニットであって、上記鉄道車両(60)の移動に伴って生じる上記同期シリンダ(3)内での圧力変化または上記同期シリンダ(3)における油圧流体流れを利用してエネルギーを生成するエネルギー生成ユニットをさらに備える
ことを特徴とするアクチュエータ。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項において、
より高品質の制御、および/または、上記車台のおよび/または線路状態の診断を可能とするセンサをさらに備える
ことを特徴とするアクチュエータ。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項において、
様々な状態を表示可能な視覚的な状態表示部をさらに備える
ことを特徴とするアクチュエータ。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1項において、
携帯装置と通信可能であってオンライン診断を可能とするインターフェースをさらに備える
ことを特徴とするアクチュエータ。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか1項に記載のアクチュエータ(1)を備えた鉄道車両(60)の車台(100)であって、
上記アクチュエータ(1)の上記車軸ケーシング(2)は、上記車台(100)に接続固定されており、
上記アクチュエータ(1)の上記ハウジング(6)は、車軸ガイドに押し入れられ、ホイールセット軸受ハウジング(120)に接続され、またはホイールセット軸受ハウジング(120)に組み込まれている
ことを特徴とする車台。
【請求項18】
請求項17において、
1つの上記ホイールセット(50)毎に1つのみの上記アクチュエータ(1)が設けられ、
および/または、
上記アクチュエータ(1)は、非駆動状態において、直線レール部の移動中に上記ホイールセット(50)の自律的な位置合わせを可能とする高い固有減衰を有する
ことを特徴とする車台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両のホイールセットを制御するためのアクチュエータ、そのようなアクチュエータを備えた鉄道車両の車台、および当該アクチュエータの動作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両のコーナリング時には、典型的にはシャフトを介して強固に連結されたホイールセットの車輪を鉄道車両の車台に対して旋回させる必要がある。従来技術では、この目的のために、原則としてラバーメタル要素で構成されたいわゆるホイールセットガイド要素が設けられる。
【0003】
ここで、図1および図2は、本主題をより良く理解できるように、鉄道車両のホイールセットを制御するためのアクチュエータの直線移動時およびコーナリング時における様々な位置を示している。
【0004】
図1に示す直線移動では、アクチュエータにおいて車台フレームに対してホイールセットを強固に連結することが有利である。これに対し、コーナリング時には、できるだけ小さな摩擦で線路上を移動できるように、車台フレームに対してホイールセットを旋回させることがアクチュエータに求められる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術に係るアクチュエータは、ホイールセットの満足な旋回のためには不十分な限られたストロークしか有しない。また、そのようなアクチュエータは、高い縦剛性値を有しており、そのために大きな制御力が必要となる。従来技術より既知のアクチュエータの縦方向および横方向の剛性の結合は、また、特定の車台特性の再現の柔軟性を低減する。油圧ラインを備えたアクチュエータでは、漏出のリスクも増大する。加えて、そのようなアクチュエータの力は、典型的には当該アクチュエータのゴム部品の歪みのために制限される。
【0006】
本発明の目的は、鉄道車両のホイールセットを制御するための従来技術より公知のアクチュエータにおける上に挙げた欠点を克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、請求項1の全特徴を有するアクチュエータを用いて達成される。そのようなアクチュエータは、鉄道車両の車台またはホイールセット軸受ハウジングに固定される車軸ケーシングと、車軸ケーシング内に設けられ、当該車軸ケーシングを両側部の各々において貫通するピストンロッドを含むピストン面を有する同期シリンダと、車軸ケーシングに対する同期シリンダの運動にしたがって可動であるハウジングと、好ましくはピストン面から離れたピストンロッドの端部に設けられ、ピストンロッドをハウジングに接続するピストンロッドばね要素とを備える。
【0008】
したがって、当該アクチュエータによると、ハウジングの運動を生じさせることが可能であり、そして当該運動は、同期シリンダの調節またはピストンロッドの運動によるホイールセットの旋回運動の発生に利用される。ここで、車軸ケーシングは、原則として、車台に固定位置で固定されており、そのため当該車軸ケーシングに対するハウジングの相対運動が、ホイールセットを偏向させるためのストロークに利用可能である。
【0009】
本発明の任意の変形例によると、車軸ケーシングは、実質的に細長い形状を有し、同期シリンダは、好ましくは車軸ケーシングの長手方向中央に配置されている。
【0010】
ここで、2つのピストンロッドが、車軸ケーシングの長手方向に対して垂直に向けられていてもよい。
【0011】
本発明の別の態様によると、各ピストンロッドに設けられたピストンロッドばね要素は、好ましくは円筒形状に形成され、および/または各ピストンロッドの長手方向と平行に積層されたゴム積層ばねである。そのようなゴム積層ばねは、ホイールセットガイドの縦剛性を再現または決定するために採用される。また、そのようなゴム積層ばねは、軸受スリーブを介して予荷重を与えられて設置されていてもよい。さらに、そのようなゴム積層ばねは、ホイールセット軸受ハウジングがピストンロッドおよびそのガイドに対するいかなる荷重をも実質的に伴わずにピストンの長手軸に対して垂直に動けるように、非常に低いせん断抵抗を有していてもよい。鉄道車両の車台においてアクチュエータを正しい向きで設置することにより、ピストンロッドへの実質的な荷重なくしてホイールセットの横運動を実行することができる一方、縦方向において所望のばね力が作用する。
【0012】
また、ハウジングは、車軸ガイドに押し入れられていてもよいし、またはホイールセット軸受ハウジングに対して、例えばねじ止めにより、直接的に接続されていてもよい。
【0013】
本発明の別の態様によると、アクチュエータは、車軸ケーシングとハウジングとの間に設けられた少なくとも1つの車軸ケーシングばね要素を備え、車軸ケーシングばね要素の主ばね方向は、車軸ケーシングの長手方向と平行に向いており、車軸ケーシングばね要素は、好ましくは、車軸ケーシングの長手方向と平行に積層されたゴム積層ばねである。ここで、車軸ケーシングは、その長手軸に関して回転対称であってもよい。また、車軸ケーシングは、当該車軸ケーシングの長手軸に対して垂直な平面に関して鏡面対称性を有していてもよい。
【0014】
アクチュエータが正しい向きで設置された状態において、車軸ケーシングばね要素は、ホイールセットガイドの横剛性を再現または決定する。有利には、そのような車軸ケーシングばね要素は、主ばね方向に対して垂直な方向において非常に軟らかく、それにより、アクチュエータは、小さなパワー消費で大きな変位を実行することができる。
【0015】
ここでまた、一対の車軸ケーシングばね要素が、ピストンロッドの長手方向と車軸ケーシングの長手方向とによって規定される平面の一方側のみに設けられ、かつ車軸ケーシングの長手方向におけるハウジングの車軸ケーシングに対する運動を緩衝するように構成されていてもよい。アクチュエータが設置された状態において、このことは、ホイールセットに対する車台の横運動の緩衝に対応する。
【0016】
本発明の別の任意の変形例によると、アクチュエータは、ピストンロッドの長手方向と車軸ケーシングの長手方向とによって規定される平面において車軸ケーシングでハウジングをスライド支持するためのスライド要素を備え、第1のスライド要素は、好ましくはピストンロッドの長手方向と車軸ケーシングの長手方向とによって規定される平面の一方側に設けられ、第2のスライド要素は、当該平面の他方側に設けられている。スライド要素によって、ピストンロッドの長手方向において車軸ケーシングに対してハウジングを動かすことができる。アクチュエータが設置された状態において、この動きの方向は、縦方向に対応する。
【0017】
好ましい実施形態によると、スライド要素は、ピストンロッドの長手方向における運動を許容するスライドプレートと、円形セグメント状に形成され、好ましくはピストンロッドの長手方向と車軸ケーシングの長手方向とによって規定される平面に対する法線方向回りのハウジングの回動を許容する要素とを有する。
【0018】
それにより、小さな摩擦係数を伴うできる限り摩耗のない運動を実現することができる。また、スライド要素は、径方向に予荷重を与えられていてもよい。本発明のある態様によると、スライド要素は、同様にまた、ピストンロッドばね要素に用いられるようなゴム積層ばねと似た態様で、ゴム積層ばねとして設計されていてもよい。
【0019】
また、アクチュエータは、好ましくは、ピストンロッドおよび車軸ケーシングと協働して同期シリンダのゼロ位置からのオフセットを求めるための位置エンコーダを備える。本発明の別の任意の態様によると、アクチュエータは、同期シリンダの2つのチャンバを互いに接続するバルブと、一方のチャンバから他方のチャンバへの油圧流体の流れを、所望の調節動作に対応する方向にのみ許容するようにバルブを開閉することのみによって同期シリンダの調節を実現するように構成されたバルブ制御部とをさらに備え、好ましくは、同期シリンダの能動的動作のために油圧ユニットを利用しないか、または当該油圧ユニットを備えない。
【0020】
上記バルブは、例えば、一方のチャンバから他方のチャンバへ油圧流体が流れるのを許容するためにのみ切り替えられてもよく、他方のチャンバから一方のチャンバへの逆流は、しかしながら不可能である。そして、対応する油圧流体流れを生じさせる外力がピストンロッドに作用する場合、アクチュエータは、所望の位置に移動する。よって、力は、同期シリンダによって間接的または受動的にのみ生み出される。
【0021】
本発明の別の任意の変形例によると、アクチュエータのバルブは、先行または後続のアクチュエータの別の同期シリンダに接続され、バルブ制御部は、後続のアクチュエータの油圧流体流れを、必要に応じて先行のアクチュエータの調節のために利用するように構成され、後続および先行のアクチュエータのいずれも、同期シリンダの能動的動作のために油圧ユニットを利用しないか、または当該油圧ユニットを備えない。互いに対して後続または先行して配置された複数のホイールセットが、鉄道車両内に一般に存在する。ここで、関連するホイールセットのアクチュエータを、先行または後続のアクチュエータに接続することが有利である。
【0022】
本発明の別の態様によると、アクチュエータは、同期シリンダを駆動するための油圧ユニットをさらに備え、当該油圧ユニットは、好ましくは、車台に、および/または車軸ケーシングの長手方向端部の前側に配置されている。
【0023】
また、アクチュエータは、当該アクチュエータにエネルギーを供給するためのエネルギー生成ユニットであって、鉄道車両の移動に伴って生じる同期シリンダ内での圧力変化または同期シリンダにおける油圧流体流れを利用してエネルギーを生成するエネルギー生成ユニットをさらに備えていてもよい。また、それにより生成されたエネルギーが、エネルギー貯蔵ユニットに蓄えられ、かつ必要に応じてアクチュエータに供給されてもよい。
【0024】
鉄道車両が直線移動する際、ホイールセットは移動方向における小さな連続揺れ運動(いわゆる正弦波状運動)も行うため、ホイールセットに接続されたアクチュエータは、その同期シリンダにおいて圧力変化を生じ、当該圧力変化はエネルギー源として利用可能である。アクチュエータおよびアクチュエータの他の任意の構成要素、例えば電子機器回路、センサシステム、バルブ、または油圧ユニットの電源となるバッテリを、圧力変化またはそれに基づく油圧流体流れを利用してエネルギーを生成するジェネレータによって置換することができる。したがって、エネルギー生成ユニットは、同期シリンダ内の圧力変化を電気エネルギーに変換するように構成されている。
【0025】
これに代えてまたは加えて、エネルギー生成ユニットは、同期シリンダ内の圧力変化によって生じる油圧流体流れを電気エネルギーに変換するように構成されていてもよい。同期シリンダの各チャンバを接続可能なバルブがこれらのチャンバ間で接続される場合、圧力変化を発生させるエネルギーは、対応するバルブ駆動によって生じ得る。また、エネルギー生成ユニットは、アクチュエータのハウジング内または鉄道車両の車台の中央部に配置されていてもよい。同じことが、エネルギー貯蔵ユニットについても言える。エネルギー生成ユニットは、同期シリンダの圧力変化によって、鉄道車両の低速時に特にその強みを発揮しかつ納得のいく結果をもたらす。
【0026】
本発明は、また、上述した変形例のいずれか1つに係るアクチュエータを備えた鉄道車両の車台に関し、アクチュエータの車軸ケーシングは、車台に接続固定されており、アクチュエータのハウジングは、車軸ガイドに押し入れられ、ホイールセット軸受ハウジングに接続され、またはホイールセット軸受ハウジングに組み込まれている。
【0027】
車台の別の態様によると、1つのホイールセット毎に1つのみのアクチュエータが設けられ、および/または、アクチュエータは、非駆動状態において、直線レール部の移動中にホイールセットの自律的な位置合わせを可能とする高い固有減衰を有する。
【0028】
また、アクチュエータが、ホイールセットのシャフト駆動部から離れたホイールセットの側部に配置されていることが有利である。
【0029】
本発明は、また、鉄道車両のホイールセットを制御するように構成されたアクチュエータ、特に上記変形例のいずれか1つに係るアクチュエータを動作させるための方法であって、ホイールセットを旋回させるためのアクチュエータの調節を、車台によって支持された車体に対する当該車台の変位角度に基づいて実行し、当該変位角度に基づくアクチュエータの調節を、変位角度が第1閾値を超えた場合にのみ実行し、アクチュエータの調節を、好ましくは変位角度に対して比例的に実行する、方法に関する。
【0030】
ここで、車体に対する車台の変位角度は、鉄道車両がカーブを通過する場合に車体に対して車台が取る角度オフセットのことを言う。ホイールセットは、この変位角度が第1閾値を超えた場合にのみ当該変位角度に基づいてアクチュエータによって制御される。
【0031】
このことは、典型的には直線移動時に生じるホイールセットの正弦波状運動、揺れ運動に対して特に有利である。なぜなら、この状態では、車台の変位角度に基づいてアクチュエータを制御しないことが有利であるためである。そのような状態においては、ホイールセットの強固な支持を提供することがむしろ有利である。ホイールセットは、第1閾値を超えた後にのみ制御され、よってアクチュエータの制御はコーナリング時にのみ実行される。
【0032】
当該方法の別の態様によると、ホイールセットを旋回させるためのアクチュエータは、鉄道車両の別の先行または後続のアクチュエータに接続されており、後続のアクチュエータを、先行のアクチュエータの調節動作に基づいて調節し、後続のアクチュエータの調節におけるシステム誘起遅延を除去する。これにより、線路上でのホイールセットのさらに高速な調節が可能となる。
【0033】
本発明の別の特徴、細部、および利点について、以下の図面の説明を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1図1は、鉄道車両が直線移動している場合におけるホイールセットの最適なアクチュエータ位置を示す図である。
図2図2は、コーナリング時におけるアクチュエータの最適位置を示す図である。
図3図3は、本発明に係るアクチュエータの断面図であって、当該断面は設置状態において縦方向および鉛直方向に対応する。
図4図4は、本発明に係るアクチュエータの部分断面図であって、当該断面は設置状態において縦方向および幅方向に対応する。
図5図5は、本発明に係るアクチュエータの断面図であって、当該断面はアクチュエータの設置状態において幅方向および鉛直方向に対応する。
図6図6は、車台におけるアクチュエータの配置を示す構造イメージ図である。
図7図7は、鉄道車両の車台における本発明に係るアクチュエータの配置を示す構造図である。
図8図8は、本発明に係るアクチュエータの動作モードを示す機能図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物、あるいはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0036】
図1は、鉄道車両が直線移動する際の、それぞれが複数のアクチュエータ1によって保持された車台100の2つのホイールセット50の概略図である。鉄道車両に典型的なホイールセットの車輪の円錐形状によって直線移動時に生じる正弦波状の動きが、ここでまた概略的に示されている。
【0037】
図2は、同様に、ホイールセット50のアクチュエータ1が鉄道車両の車台100に対して当該ホイールセット50を旋回させる鉄道車両のコーナリング時を概略的に示す図である。
【0038】
図3は、鉄道車両において正しい向きで設置された本発明に係るアクチュエータをX-Z平面で示す断面図である。ここで、X方向は、直線移動での前方向に相当する鉄道車両の縦方向に対応している。ここで、Z方向は、鉄道車両の鉛直方向である。Y方向は、図3における紙面直交方向、すなわちX方向およびZ方向に垂直な方向であって、鉄道車両の幅方向を記述している。図3の断面図は、Y方向に延びる車軸ケーシング2を備えたアクチュエータ1を示している。この車軸ケーシング2は、中央部に同期シリンダの態様で形成されたシリンダ3を有する。また、車軸ケーシング2は、その長手軸に関して回転対称に形成されていることも確認できる。さらに、車軸ケーシング2は、その長手方向に対して垂直な向きの平面に関して鏡面対称性を有する。
【0039】
シリンダ3のピストン面4は、車軸ケーシング2を両側部の各々において貫通するピストンロッド5を有する。ピストンロッド5は、ここではX方向に向けられている。アクチュエータ1のハウジング6に接続されたピストンロッドばね要素7は、車軸ケーシング2の外部に位置するピストンロッド5の各端部に設けられている。
【0040】
ここで、車軸ケーシング2内に形成されたシリンダチャンバ31,32は、同期シリンダ3のピストン面4によって互いに分離されている。シリンダ3のX方向、すなわち車軸ケーシング2の長手方向(Y方向)に垂直な方向における移動は、シリンダチャンバ31,32への供給ラインまたはシリンダチャンバ31,32からの対応する排出ライン(図示せず)によって可能である。それにより、ピストンロッド5および当該ピストンロッド5の前側に配置されたピストンロッドばね要素7のみでなく、ピストンロッドばね要素7に接続されたハウジング6も動く。当該ハウジング6は、車軸ケーシング2に沿って、X方向においてスライド要素9にわたってスライドする。
【0041】
ここで、複数のスライド要素9が、好ましくは鉛直方向(Z方向)において互いに離間して設けられていてもよい。ここで、各スライド要素9は、円形セグメントとして形成された要素92およびスライドプレート91を有していてもよく、それによりZ軸(鉛直方向)回りにおけるハウジング6の回動がまた可能となる。
【0042】
ピストンロッドばね要素7は、図中では、ホイールセットガイドの縦剛性を再現または決定するように構成されたゴム積層ばねである。ピストンロッドばね要素7は、円筒形状を有していてもよく、軸受スリーブを介して予荷重を与えられて設置される。また、ピストンロッドばね要素7は、非常に低いせん断抵抗を有しており、そのためホイールセット軸受ハウジングは、車軸ケーシング2を通じて、ピストンロッド5およびそのガイドに実質的な荷重をかけることなく、X軸回りの運動および横方向運動を行うことができる。
【0043】
したがって、同期シリンダ3のX方向における運動によって、関連するピストンロッド5およびピストンロッドばね要素7のみでなく、ピストンロッドばね要素7に接続されたハウジング6も動く。スライド要素9は、この例では車軸ケーシング2の上側および下側の両方にZ方向に設けられていてもよく、ハウジング6のX方向における運動およびZ軸回りの回動の自由度を支える。
【0044】
図4は、X-Y平面における部分断面図である。所定の目的に係るアクチュエータ1の向きにおいて、X-Y平面は一部が露出したアクチュエータ1の平面視に対応する。
【0045】
車台フレームへの固定のために設けられた車軸ケーシング2の一部がハウジング6の両側から突出しているのが確認できる。車台に対するホイールセットの旋回のために利用される車台に対するアクチュエータ1の必要な相対運動は、車台に対して車軸ケーシング2が固定連結されていることと、当該車軸ケーシング2に対してシリンダ運動が可能であることとに由来する。ここで、シリンダ3およびハウジング6は、X軸(縦方向)に沿ってY軸(幅方向)と垂直に動かされる。図3で既に言及した構成要素に加えて、この図におけるアクチュエータは、シリンダの位置を検出するように構成された位置エンコーダ10を備える。この目的のために、位置エンコーダ10は、車軸ケーシング2と、ピストンロッド5に接続された構成要素とに接続されている。
【0046】
また、車軸ケーシングばね要素8を確認することができる。この車軸ケーシングばね要素8は、ハウジング6と車軸ケーシング2との間の緩衝性を提供する。ここで、車軸ケーシングばね要素8の主ばね方向は、車軸ケーシング2の長手方向(Y方向)と平行であって、よってホイールセットガイドの横剛性を実質的に再現または決定する。ここで、車軸ケーシングばね要素8は、同様に、小さなアクチュエータ力による大きな位置調節を可能とするべく、X方向において非常に軟らかいゴム積層ばねとして設計されていてもよい。ここで、車軸ケーシングばね要素8は、車軸ケーシング2とハウジング6との間に、二つ一組になってY方向にオフセットして設けられていてもよい。また、車軸ケーシングばね要素8は、二つ一組になって(Z方向において)頂部のみまたは底部のみに取り付けられていてもよい。車軸ケーシングばね要素8の数および配置は、アクチュエータの要求に応じて設定される。
【0047】
図5は、Y-Z平面におけるアクチュエータ1の断面図である。鉄道車両または鉄道車両の車台においてアクチュエータ1が正しい向きで設置される場合において、この図は背面視または正面視に対応する。
【0048】
同期シリンダ3は、そのピストンロッド5が紙面直交方向に前後移動できる状態にあり、車軸ケーシング2の長手方向に対して実質的に垂直に向いている。車軸ケーシング2は、複数の車軸ケーシングばね要素8に対する接触面を形成するフランジ状突出部を含む中央部を有する。また、中央部には、車軸ケーシング2においてハウジング6をスライド支持するためのスライド要素9が設けられている。この視点では、ハウジング6が車軸ケーシング2に対して直接連結点を何ら有しておらず、そのため当該ハウジング6が車軸ケーシング2に対して移動可能に支持されていることが確認できる。ここで、ハウジング6の位置は、車軸ケーシング2に対する同期シリンダ3の位置に依存する。位置を測定するために、同期シリンダ3のピストンロッド5と相互作用する位置エンコーダ10が設けられており、したがってハウジング6またはシリンダ3の現在位置を測定することができる。
【0049】
図6は、油圧ユニット13と、バルブ11および対応するバルブ制御部12とを備えたアクチュエータの概略図である。既出の各図に示されたアクチュエータ1は、その車軸ケーシング2の長手方向端部が車台フレーム100または車台に対して固定接続されていることが確認できる。また、シリンダ3のチャンバ31,32に油圧ラインを介して接続された油圧ユニット13は、ここでは、車軸ケーシング2の前側に配置されている。シリンダの調節運動は、2つのチャンバの一方への油圧流体の供給と、他方のチャンバからの油圧流体の排出とによって実行されてもよい。これにより、ホイールセット軸受ハウジング120が、シリンダの調節運動にしたがって調節される。結果として、車台100に対してホイールセットが旋回し、そのことが鉄道車両のコーナリングにおいて利点になる。
【0050】
状態表示部は、参照番号14で示されていて、ある実施形態ではカラーLEDランプであってもよい。状態表示部は、容易に視認できる態様でアクチュエータ1のハウジングに取り付けられていて、視覚的な制御による状態認識を可能とする。ここで、状態の認識コンセプトは次のように設計されてもよい。
【0051】
すなわち、適切に動作している場合、ランプ14は緑色に点灯し、動作不良時には赤色に変化する。区別される診断が表示可能であるべきであり、その他の色、例えば橙色、黄色など、または消灯がその他の状態を示すものとして使用されてもよい。その他の状態の例としては、電源故障、センサ故障、およびポンプライン故障などが考えられる。
【0052】
また、無線動作式の診断スティック15がアクチュエータ1と相互作用してもよい。WiFiデータ伝送を有するUSBドングルとして、当該診断スティック15が携帯端末装置に情報を送ってもよい。これは、各車台の測定パラメータが既知の道のりにわたって記録されかつ正しく動作するシステムの対応データと比較され得るように、鉄道車両の移動中に実行可能であることが有利である。データの伝送が、鉄道車両の各客室もしくは別の客室または運転室に対して実行されるのが有利である。ここでは、センサデータ、バルブデータ、ならびにモータ、ポンプ、動力源、および状態表示部におけるデータなどの存在するシステムの全データを記録可能である。そして、システムデータは、診断ソフトの助けにより時間に伴ってまたは道のりに伴って記録可能であって、先立って保存された同じ道のりまたは同じ経路の測定データと比較可能である。このようなインターフェースの助けにより、必要な修正の介入を認識することやその早期の設計が可能となる。
【0053】
エネルギー源16は、油圧ユニット13およびバルブ制御部12に対して、これらのユニットにエネルギーを供給するべく接続されていることが確認できる。
【0054】
図7は、鉄道車両の設置状態におけるアクチュエータ1の概略図である。ここで、鉄道車両の車台100は、当該鉄道車両の車体110に対して可動的に支持されている。カーブを移動する場合、車台100は当該カーブにしたがって動くであろう一方、車台100よりもずっと長い車体110は当該車台100に対して回動する。この角度は、変位角度と呼ばれるものであって、測定装置20によって測定されてアクチュエータ1に送られる。車台100のホイールセットは、測定装置20によって測定された変位角度に基づいて、当該車台100に対して旋回させられる。
【0055】
したがって、カーブ移動の円弧半径は、測定装置20によって測定される。測定装置20は、例えば、縦方向においてアンチローリング装置に設けられるかまたは当該装置から離れて設けられた位置エンコーダによって提供される。
【0056】
そして、ホイールセット50の制御は、ホイールセット50毎に1つのみのアクチュエータ1が設けられた状態で、電気油圧式のアクチュエータ1を介して実行される。ホイールセット50は、典型的には互いに対して点対称に配置され、アクチュエータ1は、好ましくはホイールセット50のシャフト駆動部から離れた端部に配置される。ホイールセット50毎に1つしかアクチュエータ1がないため、当該アクチュエータ1は明らかにより大きな調節距離を及ぼす必要があるが、構成要素の数やそれに関連するコストは著しく低減される。また、そのような構成によると、ホイールセット50の縦方向位置が明確になり、また駆動されるホイールセットとの結合において生じる動きがずっと小さくなるという利点が得られる。
【0057】
アクチュエータ1が受動状態または非駆動状態において高い固有減衰を有することが有利である。なぜなら、その場合、ホイールセット50が直線移動時に自動的に理想的な位置取りをし、ホイールセットガイドの有効な縦剛性が高いままとなって安定した操縦が実現されるためである。
【0058】
図8は、基本設計に係る制御コンセプトを示している。ここでは、車台100に対する車体110の角度オフセットを求めるための変位角度の測定は、測定装置20を介して実行される。そして、アクチュエータ1の制御は、変位角度に基づいて実行される。これは閾値を超えた後にのみ実行されるため、正弦波状運動や車体運動の結果としての当該制御による安定操縦の劣化は生じない。ここで、アクチュエータ1の制御は、変位角度に、すなわちカーブの円弧半径に比例する最もシンプルな態様で実行されてもよい。しかしながら、これは上述した閾値を超えた後のみのことである。
【0059】
アクチュエータ1の駆動は、所望の位置と実際の位置との間の差に応じて駆動される4/3ウェイバルブ11を介して実行される。
【0060】
ここで、本発明によると、その他の態様において別の基準を用いた制御が行われてもよい。考えられる別の基準としては、例えば次のものが挙げられる。
・任意の伝達関数が考えられる、依存的に漸減的、漸増的、段階的な半径
・移動速度または移動加速度
・車体110と車台100との間の縦運動の測定によって求まる引張力
・アクチュエータ1における圧力測定によって求まるアクチュエータ力であって、車輪とレールの間の接触輪郭の質を考慮に入れたもの
・先行または後続のホイールセットの個々の制御部
・アンチローリング装置の使用を省略できるような、(実際には正弦波状運動に対する基準位相において)車台を安定させる高周波数帯域での制御
【0061】
また、ポンプおよびモータを有する油圧ユニット13は、必要な場合にのみ駆動されてもよい。所望の位置と実際の位置との差の第2閾値を超えると、ポンプが駆動されてもよく、よってアクチュエータのエネルギー消費量が著しく低減され得る。これは、不十分な接触輪郭を伴う線路状況においてのみポンプを実際にオンに切り替えればよいことを意味する一方、ホイールセット50はある程度の接触輪郭があれば追加の力なくして正しい位置取りをする。なぜなら、それは油圧ユニット13を利用することなく受動的に駆動されるバルブのみによって実現可能であるためである。
【0062】
また、2つまたはそれ以上の車台100のアクチュエータシステムが、先行の車台100の情報を利用するために接続されていてもよい。よって、後続の車台に対応する油圧ユニットのポンプの起動の遅れを解消することや、それらを適切なタイミングで停止することが可能となる。それにより、カーブの過渡的部分や線路切替部を通過するための制御方法を最適化することもできる。
【0063】
アクチュエータは、各車台から自律的に制御されることが好ましい。エネルギー源だけは必要だが、データ検出、データ処理、および自身の駆動は車台の内部で実行される。
【0064】
ここで、ホイールセットガイド内のアクチュエータ1は、車軸ガイド軸受または支持軸受に組み込まれていることが好ましい。図8では、モータおよびポンプと(両方とも参照番号13で示す)、バルブ11と、位置センサおよび圧力センサと、制御ユニットとが、アクチュエータ1を制御するために設けられている。なお、より上位の制御方法のために必要とされる別のセンサが存在していてもよい。ここで、例えば加速度計やジャイロ計が考えられる。外部の油圧ラインが存在しないことが有利であり、それにより漏れや故障のリスクが大幅に低減される。
【0065】
アクチュエータ1の制御部は、加えてフェイルセーフ設計である。なぜなら、当該システムは、電子機器回路、センサシステム、動力源、ポンプ、および/またはモータの故障に際して、高い固有減衰を伴う堅牢なホイールセットガイドとして振る舞うためである。このことは、当該車台が、ホイールセット制御部を備えないかまたは非常にゆっくりと動作する制御部を備える古典的な車台のように振る舞うことを意味する。
【0066】
漏れや縦剛性の低下が生じると、不安定な走行につながり得る車台のでこぼこ走行が発生する。しかしながら、システム内に残された減衰および剛性によって、車輪-レール間の力が安全限界値を超えることが阻止される。
【0067】
また、本発明の好ましい実施形態によると、エネルギー源が自律的なものであってもよい。この目的のために、同期シリンダ内の圧力変化を利用してエネルギーを生成するエネルギー生成ユニットが設けられる。ここで、例えば、当該シリンダから押し出された油圧流体が、エネルギーを生成するために利用されてもよい。シリンダ内の圧力は直線移動中にも連続的に変化するため、受動的に接続されたアクチュエータもエネルギー源として利用可能である。電子機器回路、センサシステム、バルブ、およびポンプのエネルギー源が、このエネルギーによって実現されてもよい。ここで、エネルギー生成は、様々な移動状態においてバルブの直接駆動によって最大化され得る。
【0068】
そのような自律的なエネルギー源を備えたアクチュエータ1の制御コンセプトを改変することが有利である。このコンセプトは、特に低いエネルギー制御状態が望まれる場合にも利用可能であって、必ずしも自律的なエネルギー源に限定されるものではない。
【0069】
ここで、各アクチュエータ1は、当該アクチュエータの取るべき位置に向かう所望の方向における油の流れのみを各バルブが許容するように、個別に駆動される。車輪と線路との間の接触輪郭が十分であれば、ホイールセットに対する制御は、理想的にはこの制御のみで足りる。しかしながら、接触輪郭の質がアクチュエータを所望の位置に自律的に調節するのに不十分である場合、先行および後続のホイールセットの2つのシリンダを油圧ラインおよび追加のバルブを介して相互接続し、それにより後続ホイールセットの油圧流体の流れを必要に応じて先行ホイールセットの制御に利用可能にすることが有利である。
【0070】
この実施形態は、利用可能なスペースを欠くためにエネルギー源を設置できない古い車両の改装に特に貢献する。よって、制御可能なアクチュエータは、モータやポンプを含む油圧ユニットを一切有しないが、同期シリンダの各チャンバ間のバルブのみ有する。このため、シリンダに間接的または受動的に力を発生させることのみが可能である。このことは、例えば、アクチュエータを所望の方向に駆動するような力がレールからホイールセットに伝わる場合にチャンバ間での流れを許容するようにバルブを開くことによって実現される。ここでまた、様々な基準にしたがってバルブの制御を行うことが有利である。当該基準は、例えば、レールカーブの円弧半径、2つのホイールセットの引張力や径方向位置、および/またはシリンダ力であってもよい。よって、例えば、シリンダの油圧流体の流通を両方向でブロックして中心のずれた車両走行を阻止することが有利である。
【0071】
また、先行および後続のアクチュエータのシリンダチャンバが、油圧ラインを介して互いの制御部に接続されていてもよい。これにより、先行のホイールセットが、後続のホイールセットの運動を介して制御され得る。
【0072】
本発明に係る実施形態の特に廉価な変形例によると、アクチュエータは、位置エンコーダを有しておらず、変位角度または円弧半径を求めるための測定装置20を有する。また、中央ユニットは、電子機器回路、バルブ、ジェネレータ、エネルギー貯蔵部、および状態表示部を有する。また、油圧ラインが、シリンダから中央ユニットへ延びており、そして当該中央ユニットは、変位角度または円弧半径を求めるための測定装置にケーブル接続を介して接続されている。
【0073】
本発明に係るアクチュエータに基づく別の機能は、線路診断を実行することである。本発明によると、そのコンセプトにしたがって比較的少ない労力を伴う線路またはレールの状態診断が可能となる。円弧半径およびホイールセットの個別位置に関する情報が、本発明のコンセプトから利用可能である。システムが圧力センサおよび横加速度センサを備える場合、線路状態を記述する全ての関連パラメータが得られる。ここで、個々のパラメータは、次の表1を用いて示すように決定される。
【0074】
【表1】
【0075】
診断は、好ましくは、鉄道車両の2~3台程度の車両についてのみ提供されるべきである。これに関連して、対応する車両または列車内の演算処理装置に線路診断の評価システムへのアクセスを伴ってアクチュエータが常時接続されているのが効果的である。
【符号の説明】
【0076】
1 アクチュエータ
2 車軸ケーシング
3 同期シリンダ
31 (一方の)チャンバ
32 (他方の)チャンバ
4 ピストン面
5 ピストンロッド
6 ハウジング
7 ピストンロッドばね要素
8 車軸ケーシングばね要素
9 スライド要素
91 スライドプレート
92 要素
10 位置エンコーダ(位置センサ)
11 バルブ
12 バルブ制御部
13 油圧ユニット
50 ホイールセット
60 鉄道車両
100 車台
120 ホイールセット軸受ハウジング
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8