(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-16
(45)【発行日】2022-02-25
(54)【発明の名称】電源装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20220217BHJP
【FI】
H02M3/28 H
(21)【出願番号】P 2018082020
(22)【出願日】2018-04-23
【審査請求日】2021-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 俊太郎
(72)【発明者】
【氏名】石垣 将紀
(72)【発明者】
【氏名】芦田 亘史
(72)【発明者】
【氏名】北尾 明大
(72)【発明者】
【氏名】野澤 尭志
【審査官】麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-68491(JP,A)
【文献】特開2008-79375(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/102644(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁気的に結合する第1スイッチング回路及び第2スイッチング回路を備える電源装置であって、
前記第1スイッチング回路は、
第1コンデンサと、第1スイッチング素子と、磁路を形成する第1巻線と、を含む第1ループと、
第2コンデンサと、第2スイッチング素子と、磁路を形成する第2巻線と、を含む第2ループと、
前記第1スイッチング素子及び前記第1巻線を接続する経路と、前記第2スイッチング素子及び前記第2巻線を接続する経路との間に設けられた第1共通コンデンサと、
を備え、
前記第2スイッチング回路は、
第3コンデンサと、第3スイッチング素子と、磁路を形成する第3巻線と、を含む第3ループと、
第4コンデンサと、第4スイッチング素子と、磁路を形成する第4巻線と、前記第4巻線に直列に接続された付加巻線と、を含む第4ループと、
前記第3スイッチング素子及び前記第3巻線を接続する経路と、前記第4スイッチング素子及び前記第4巻線を接続する経路との間に設けられた第2共通コンデンサと、
を備え、
前記第1巻線及び前記第2巻線と前記第3巻線及び前記第4巻線とが磁気結合されており、
前記第1巻線及び前記第2巻線と前記付加巻線との磁気結合は、前記第1巻線及び前記第2巻線と前記第3巻線との磁気結合並びに前記第1巻線及び前記第2巻線と前記第4巻線との磁気結合よりも弱いことを特徴とする電源装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電源装置であって、
前記第1巻線及び前記第2巻線と前記付加巻線とは磁気結合していないことを特徴とする電源装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電源装置であって、
前記第1スイッチング回路及び前記第2スイッチング回路と電磁気的に結合する第3スイッチング回路を備え、
前記第3スイッチング回路は、
第5コンデンサと、第5スイッチング素子と、磁路を形成する第5巻線と、を含む第5ループと、
第6コンデンサと、第6スイッチング素子と、磁路を形成する第6巻線と、を含む第6ループと、
前記第5スイッチング素子及び前記第5巻線を接続する経路と、前記第6スイッチング素子及び前記第6巻線を接続する経路との間に設けられた第3共通コンデンサと、
を備え、
前記第1巻線及び前記第2巻線と前記第5巻線及び前記第6巻線とが磁気結合されていることを特徴とする電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバータを含む電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車等の電動化の進展に伴って、複数の電源からモータ、補機等の様々な負荷へ電力を供給するために複数のコンバータが用いられることが多くなっている。ハイブリッド自動車や電気自動車等の電動車両には、駆動用モータに電力を供給するためのバッテリが搭載されている。ハイブリッド自動車では、エンジンの駆動力や回生制動によって発電した電力によってバッテリが充電される。また、プラグイン機能を備えた電動車両では、商用電源から供給される電力によってバッテリが充電される。バッテリを充電するため、電動車両には電力変換装置が搭載されている。電力変換装置は、バッテリ充電のために入力された電圧を適切な電圧に変換してバッテリに印加するために使用される。
【0003】
例えば、2つのスイッチング回路を各回路の巻線によって磁気的に結合させ、2つのスイッチング回路の間で電力を伝送させる電力変換装置が示されている(特許文献1及び2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-193713号公報
【文献】特開2006-187147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような電源装置において、出力のリプルを減少させるためのフィルタのサイズも含めて回路全体の高電力密度化を図ることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つの態様は、電磁気的に結合する第1スイッチング回路及び第2スイッチング回路を備える電源装置であって、前記第1スイッチング回路は、第1コンデンサと、第1スイッチング素子と、磁路を形成する第1巻線と、を含む第1ループと、第2コンデンサと、第2スイッチング素子と、磁路を形成する第2巻線と、を含む第2ループと、前記第1スイッチング素子及び前記第1巻線を接続する経路と、前記第2スイッチング素子及び前記第2巻線を接続する経路との間に設けられた第1共通コンデンサと、を備え、前記第2スイッチング回路は、第3コンデンサと、第3スイッチング素子と、磁路を形成する第3巻線と、を含む第3ループと、第4コンデンサと、第4スイッチング素子と、磁路を形成する第4巻線と、前記第4巻線に直列に接続された付加巻線と、を含む第4ループと、前記第3スイッチング素子及び前記第3巻線を接続する経路と、前記第4スイッチング素子及び前記第4巻線を接続する経路との間に設けられた第2共通コンデンサと、を備え、前記第1巻線及び前記第2巻線と前記第3巻線及び前記第4巻線とが磁気結合されており、前記第1巻線及び前記第2巻線と前記付加巻線との磁気結合は、前記第1巻線及び前記第2巻線と前記第3巻線との磁気結合並びに前記第1巻線及び前記第2巻線と前記第4巻線との磁気結合よりも弱いことを特徴とする電源装置である。
【0007】
ここで、前記第1巻線及び前記第2巻線と前記付加巻線とは磁気結合していないことが好適である。
【0008】
また、前記第1スイッチング回路及び前記第2スイッチング回路と電磁気的に結合する第3スイッチング回路を備え、前記第3スイッチング回路は、第5コンデンサと、第5スイッチング素子と、磁路を形成する第5巻線と、を含む第5ループと、第6コンデンサと、第6スイッチング素子と、磁路を形成する第6巻線と、を含む第6ループと、前記第5スイッチング素子及び前記第5巻線を接続する経路と、前記第6スイッチング素子及び前記第6巻線を接続する経路との間に設けられた第3共通コンデンサと、を備え、前記第1巻線及び前記第2巻線と前記第5巻線及び前記第6巻線とが磁気結合されていることが好適である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、出力電流のリプルを低減させることができ、これに伴って出力側に設けられるフィルタを小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1の実施の形態における電源装置の構成を示す図である。
【
図2】電源装置の電圧及び電流の時間変化を示す図である。
【
図3】電源装置の電圧及び電流の時間変化を示す図である。
【
図4】第2の実施の形態における電源装置の構成を示す図である。
【
図5】電源装置の電圧及び電流の時間変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第1の実施の形態]
図1は、第1の実施の形態における電源装置100の構成を示す。電源装置100は、コンデンサC1~C6、インダクタL1~L4,Lm、スイッチング素子S1~S4を含んで構成される。
【0012】
電源装置100は、コンデンサC1,C2,Cx1、インダクタL1,L2及びスイッチング素子S1,S2から構成される1次スイッチング回路102と、コンデンサC3,C4,Cx2、インダクタL3,L4,Lm及びスイッチング素子S3,S4から構成される2次スイッチング回路104を組み合わせて構成される。1次スイッチング回路102には、ポートAが設けられる。また、2次スイッチング回路104には、ポートBが設けられる。ポートAには、バッテリ等から入力電圧Vaが印加される。また、ポートBには、出力電圧Vbが出力される。
【0013】
1次スイッチング回路102は、以下のように構成される。インダクタL1及びスイッチング素子S1は直列に接続され、さらにこれらがコンデンサC1に並列に接続される。これにより、インダクタL1、スイッチング素子S1及びコンデンサC1による第1ループが構成される。インダクタL2及びスイッチング素子S2は直列に接続され、さらにこれらがコンデンサC2に並列に接続される。これにより、インダクタL2、スイッチング素子S2及びコンデンサC2による第2ループが構成される。インダクタL1とスイッチング素子S1との接続点とインダクタL2及びスイッチング素子S2の接続点が第1共通コンデンサCx1にて接続される。さらに、コンデンサC1とスイッチング素子S1の接続点とコンデンサC2とスイッチング素子S2との接続点が短絡される。コンデンサC1とコンデンサC2の直列接続の両端間がポートAとされる。1次スイッチング回路102では、スイッチング素子S1とスイッチング素子S2が排他的に交互にスイッチングされる。
【0014】
2次スイッチング回路104では、1次スイッチング回路102と同様に、コンデンサC3,C4,Cx2、インダクタL3,L4及びスイッチング素子S3,S4がそれぞれコンデンサC1,C2,Cx1、インダクタL1,L2及びスイッチング素子S1,S2と同様に接続される。ここで、インダクタLmは、インダクタL4の直近においてインダクタL4に対して直列に接続される。なお、インダクタLmは、インダクタL1~L4よりもインダクタンスを小さくすることが好適である。また、コンデンサC4の両端間がポートBとされる。2次スイッチング回路104では、スイッチング素子S3とスイッチング素子S4が排他的に交互にスイッチングされる。
【0015】
電源装置100では、インダクタL1及びインダクタL2とインダクタL3及びインダクタL4とが磁気的に結合される。インダクタL1~L4は、1つの磁気コアにより結合させることが好適である。なお、スイッチング素子S1とスイッチング素子S2のスイッチングと、スイッチング素子S3とスイッチング素子S4のスイッチングとの位相差が0の場合に互いに磁気コア内に同じ方向に磁束を発生させる方向にインダクタL1~L4は巻回される。
【0016】
一方、インダクタL1及びインダクタL2とインダクタLmとの磁気結合は、インダクタL1及びインダクタL2とインダクタL3及びインダクタL4との磁気結合よりも弱くされている。本実施の形態では、インダクタLmをインダクタL1及びインダクタL2とは同じ磁気コアにより結合させないような構成としている。これにより、インダクタLmは、インダクタL1~L4と、ほぼ完全に磁気結合がないようにされている。
【0017】
まず、インダクタLmが設けられていない構成において、
図2に示すように、スイッチング素子S1とスイッチング素子S2とをスイッチングデューティDで制御し、スイッチング素子S3とスイッチング素子S4とをスイッチングデューティDで制御し、1次スイッチング回路102と2次スイッチング回路104との間を位相差Φで制御した場合について考察する。
図2は、この場合における入力電流Iin、出力電流Iout、インダクタL1~L4を流れる電流i1~i4の変化を示す。
【0018】
スイッチングの位相差Φの影響により、インダクタL1~L4には台形電流が発生し、1次スイッチング回路102と2次スイッチング回路104との間で電力が伝送される。このとき、入力ポートであるポートAでは入力電流Iinにリプルは発生しないが、出力ポートであるポートBでは出力電流Ioutに大きな電流リプルが発生する。
【0019】
図3は、インダクタLmを設けた電源装置100において、スイッチング素子S1とスイッチング素子S2とをスイッチングデューティDで制御し、スイッチング素子S3とスイッチング素子S4とをスイッチングデューティDで制御し、1次スイッチング回路102と2次スイッチング回路104との間を位相差Φで制御したときの電流波形を示す。
図3は、入力電流Iin、出力電流Iout、インダクタL1~L4を流れる電流i1~i4の変化を示す。
【0020】
インダクタL4に直列にインダクタLmを設けることにより、インダクタL4からみた1次スイッチング回路102のインダクタL1及びインダクタL2の漏れインダクタンスとインダクタL3からみた1次スイッチング回路102のインダクタL1及びインダクタL2の漏れインダクタンスとに差が生ずる。これによって、
図3に示すように、インダクタL3に流れる電流i3とインダクタL4に流れる電流i4との台形電流波形に不均等を発生させることができる。その結果、インダクタL3に流れる電流i3の振幅は従来の電源装置に比べて大きくなるが、インダクタL4に流れる電流i4の振幅は小さくすることができる。これにより、電源装置100から出力される電流ioutのリプルを低減することができる。
【0021】
[第2の実施の形態]
第2の実施の形態における電源装置200は、
図4に示すように、第1の実施の形態における電源装置100の構成を3ポートに拡張したものである。すなわち、電源装置200は、1次スイッチング回路102及び2次スイッチング回路104に加えて、コンデンサC5,C6,Cx3、インダクタL5,L6及びスイッチング素子S5,S6から構成される3次スイッチング回路106を備える。
【0022】
3次スイッチング回路106は、以下のように構成される。インダクタL5及びスイッチング素子S5は直列に接続され、さらにこれらがコンデンサC5に並列に接続される。これにより、インダクタL5、スイッチング素子S5及びコンデンサC5による第5ループが構成される。インダクタL6及びスイッチング素子S6は直列に接続され、さらにこれらがコンデンサC6に並列に接続される。これにより、インダクタL6、スイッチング素子S6及びコンデンサC6による第6ループが構成される。インダクタL5とスイッチング素子S5との接続点とインダクタL6及びスイッチング素子S6の接続点が第3共通コンデンサCx3にて接続される。さらに、コンデンサC5とスイッチング素子S5の接続点とコンデンサC6とスイッチング素子S6との接続点が短絡される。コンデンサC5とコンデンサC6の直列接続の両端間がポートDとされる。3次スイッチング回路106では、スイッチング素子S5とスイッチング素子S6が排他的に交互にスイッチングされる。
【0023】
電源装置200では、インダクタL1及びインダクタL2とインダクタL3及びインダクタL4とインダクタL5及びインダクタL6が磁気的に結合される。インダクタL1,L2,L3,L4,L5,L6は、1つの磁気コアにより結合させることが好適である。なお、スイッチング素子S1とスイッチング素子S2のスイッチングと、スイッチング素子S3とスイッチング素子S4のスイッチングと、スイッチング素子S5とスイッチング素子S6のスイッチングの位相差が0の場合に互いに磁気コア内に同じ方向に磁束を発生させる方向にインダクタL1,L2,L3,L4,L5,L6は巻回される。
【0024】
一方、インダクタL1及びインダクタL2とインダクタL5及びインダクタL6とインダクタLmとの磁気結合は、インダクタL1及びインダクタL2とインダクタL5及びインダクタL6とインダクタL3及びインダクタL4との磁気結合よりも弱くされている。本実施の形態では、インダクタLmをインダクタL1及びインダクタL2とインダクタL5及びインダクタL6は同じ磁気コアにより結合させないような構成としている。これにより、インダクタLmは、インダクタL1,L2,L3,L4,L5,L6と、ほぼ完全に磁気結合がないようにされている。
【0025】
図5は、電源装置200において、スイッチング素子S1~S6をスイッチングデューティDにてスイッチング制御して、インダクタL1の端子間のL1電圧とインダクタL3の端子間のL3電圧とを位相差Φ1で変化させ、インダクタL5の端子間のL5電圧とインダクタL3の端子間のL3電圧とを位相差Φ2で変化させた場合の1次スイッチング回路102の入力電流Iin1,3次スイッチング回路106のIin2、2次スイッチング回路104の出力電流Ioutを流れる電流の変化を示す。
【0026】
本実施の形態では、インダクタL4に直列にインダクタLmを設けることにより、インダクタL4からみた1次スイッチング回路102のインダクタL1及びインダクタL2の漏れインダクタンスとインダクタL3からみた1次スイッチング回路102のインダクタL1及びインダクタL2の漏れインダクタンスとに差が生ずる。また、インダクタL4からみた3次スイッチング回路106のインダクタL5及びインダクタL6の漏れインダクタンスとインダクタL3からみた3次スイッチング回路106のインダクタL5及びインダクタL6の漏れインダクタンスとに差が生ずる。これによって、インダクタL3に流れる電流i3とインダクタL4に流れる電流i4との台形電流波形に不均等を発生させることができる。その結果、インダクタL3に流れる電流i3の振幅は従来の電源装置に比べて大きくなるが、インダクタL4に流れる電流i4の振幅は小さくすることができる。これにより、電源装置100から出力される電流ioutのリプルを低減することができる。
【0027】
以上のように、第1の実施の形態における電源装置100及び第2の実施の形態における電源装置200では、出力電流Ioutのリプルを従来の電源装置よりも小さくすることができる。これにより、出力電流に対するフィルタのサイズを小型化することができる。
【符号の説明】
【0028】
100,200 電源装置、102 1次スイッチング回路、104 2次スイッチング回路、106 3次スイッチング回路。