(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-16
(45)【発行日】2022-02-25
(54)【発明の名称】半導体装置および電子制御装置
(51)【国際特許分類】
H02H 11/00 20060101AFI20220217BHJP
H03K 17/687 20060101ALI20220217BHJP
【FI】
H02H11/00 130
H03K17/687 A
(21)【出願番号】P 2018136573
(22)【出願日】2018-07-20
【審査請求日】2021-01-15
(73)【特許権者】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】特許業務法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】相馬 治
【審査官】高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-512498(JP,A)
【文献】特開2001-224135(JP,A)
【文献】特開2017-188773(JP,A)
【文献】特開2007-082374(JP,A)
【文献】特開2012-060763(JP,A)
【文献】特開2008-283743(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0337550(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02H 11/00
H03K 17/00 -17/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源に結合される正極電源端子および負極電源端子と、負荷に結合される負荷駆動端子とを備え、制御入力信号に応じて前記電源と前記負荷との間の通電を制御する半導体装置であって、
前記正極電源端子と前記負荷駆動端子との間に設けられ、ソースおよびバックゲートが前記正極電源端子側に、ドレインが前記負荷駆動端子側に結合されるnチャネル型の第1の電力用トランジスタと、
前記正極電源端子と前記負荷駆動端子との間で前記第1の電力用トランジスタと直列に設けられ、ソースおよびバックゲートが前記負荷駆動端子側に、ドレインが前記正極電源端子側に結合されるnチャネル型の第2の電力用トランジスタと、
前記第1の電力用トランジスタのゲートを充電する第1の昇圧回路と
、
オンに制御された際に、前記第1の電力用トランジスタのゲー
トをソースへ
短絡するnチャネル型の短絡用トランジスタを含んだ第1のゲート放電回路
と、
前記負極電源端子を基準として前記正極電源端子に印加された負電位が予め定めた負のしきい値電位よりも正側か負側かを判別し、正側となる第1の場合には前記短絡用トランジスタをオンに制御し、負側となる第2の場合には前記短絡用トランジスタをオフに制御する負電位検出回路と、
を有する、
半導体装置。
【請求項2】
請求項1記載の半導体装置において、
前記半導体装置は、1個の半導体パッケージで構成される、
半導体装置。
【請求項3】
請求項
1記載の半導体装置において、
前記負電位検出回路は、前記正極電源端子と前記負極電源端子との間に直列に設けられる第1の抵抗および第1のツェナーダイオードを有し、前記第1のツェナーダイオードのブレークダウンの有無を検出することで前記負のしきい値電位よりも正側か負側かを判別する、
半導体装置。
【請求項4】
請求項
1記載の半導体装置において、
前記負電位検出回路は、一端が前記正極電源端子に結合される第2のツェナーダイオードを有し、前記第2の場合には、前記正極電源端子の電位を基準に前記第2のツェナーダイオードのブレークダウン電圧だけ正側となる電位を前記第1の昇圧回路を介して前記第1の電力用トランジスタのゲートに印加する、
半導体装置。
【請求項5】
請求項
1記載の半導体装置において、
前記第1の電力用トランジスタは、前記第2の電力用トランジスタよりも低耐圧な構造を備える、
半導体装置。
【請求項6】
請求項
1記載の半導体装置において、
前記短絡用トランジスタは、前記制御入力信号のアサート期間では、ゲートに前記正極電源端子の電位が印加されることでオフとなり、
前記半導体装置は、さらに、
前記短絡用トランジスタのゲートと前記負極電源端子との間に設けられ、前記制御入力信号のアサート期間での前記短絡用トランジスタのゲート電位を前記制御入力信号のネゲート期間で維持するコンデンサを有する、
半導体装置。
【請求項7】
請求項
6記載の半導体装置において、
さらに、前記正極電源端子と前記短絡用トランジスタのゲートとの間に設けられ、前記制御入力信号のネゲート期間でオフに制御されることで前記短絡用トランジスタのゲートをハイインピーダンス状態に制御する制御用トランジスタを有する、
半導体装置。
【請求項8】
請求項
1記載の半導体装置において、さらに、
前記制御入力信号がアサートされた場合に、前記第2の電力用トランジスタのゲートを充電する第2の昇圧回路と、
前記制御入力信号がネゲートされた場合に、前記第2の電力用トランジスタのゲート電荷をソースへ放電する第2のゲート放電回路と、
を有する、
半導体装置。
【請求項9】
マイクロコントローラと、
前記マイクロコントローラからの制御入力信号に応じてバッテリと負荷との間の通電を制御するリレー装置と、
を有する電子制御装置であって、
前記リレー装置は、
前記バッテリに結合される正極電源端子および負極電源端子と、
前記負荷に結合される負荷駆動端子と、
前記正極電源端子と前記負荷駆動端子との間に設けられ、ソースおよびバックゲートが前記正極電源端子側に、ドレインが前記負荷駆動端子側に結合されるnチャネル型の第1の電力用トランジスタと、
前記正極電源端子と前記負荷駆動端子との間で前記第1の電力用トランジスタと直列に設けられ、ソースおよびバックゲートが前記負荷駆動端子側に、ドレインが前記正極電源端子側に結合されるnチャネル型の第2の電力用トランジスタと、
前記第1の電力用トランジスタのゲートを充電する第1の昇圧回路と、
オンに制御された際に、前記第1の電力用トランジスタのゲー
トをソースへ
短絡するnチャネル型の短絡用トランジスタを含んだ第1のゲート放電回路
と、
前記負極電源端子を基準として前記正極電源端子に印加された負電位が予め定めた負のしきい値電位よりも正側か負側かを判別し、正側となる第1の場合には前記短絡用トランジスタをオンに制御し、負側となる第2の場合には前記短絡用トランジスタをオフに制御する負電位検出回路と、
を有する、
電子制御装置。
【請求項10】
請求項
9記載の電子制御装置において、
前記負電位検出回路は、前記正極電源端子と前記負極電源端子との間に直列に設けられる第1の抵抗および第1のツェナーダイオードを有し、前記第1のツェナーダイオードのブレークダウンの有無を検出することで前記負のしきい値電位よりも正側か負側かを判別する、
電子制御装置。
【請求項11】
請求項
9記載の電子制御装置において、
前記負電位検出回路は、一端が前記正極電源端子に結合される第2のツェナーダイオードを有し、前記第2の場合には、前記正極電源端子の電位を基準に前記第2のツェナーダイオードのブレークダウン電圧だけ正側となる電位を前記第1の昇圧回路を介して前記第1の電力用トランジスタのゲートに印加する、
電子制御装置。
【請求項12】
請求項
9記載の電子制御装置において、
前記第1の電力用トランジスタは、前記第2の電力用トランジスタよりも低耐圧な構造を備える、
電子制御装置。
【請求項13】
請求項
9記載の電子制御装置において、
前記短絡用トランジスタは、前記制御入力信号のアサート期間では、ゲートに前記正極電源端子の電位が印加されることでオフとなり、
前記リレー装置は、さらに、
前記短絡用トランジスタのゲートと前記負極電源端子との間に設けられ、前記制御入力信号のアサート期間での前記短絡用トランジスタのゲート電位を前記制御入力信号のネゲート期間で維持するコンデンサを有する、
電子制御装置。
【請求項14】
請求項
13記載の電子制御装置において、
前記リレー装置は、さらに、前記正極電源端子と前記短絡用トランジスタのゲートとの間に設けられ、前記制御入力信号のネゲート期間でオフに制御されることで前記短絡用トランジスタのゲートをハイインピーダンス状態に制御する制御用トランジスタを有する、
電子制御装置。
【請求項15】
請求項
9記載の電子制御装置において、
前記電子制御装置は、自動車に搭載される、
電子制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置および電子制御装置に関し、例えば、負荷から電源への逆方向の通電を遮断する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、バッテリのプラス端子から電源供給対象への電源経路上に、プラス端子側から順にnチャネル型のFET[1]とnチャネル型のFET[2]とを備えた電源逆接続保護回路が示される。FET[1]とFET[2]のドレインは、共通に接続され、FET[1]とFET[2]のゲート電圧は、それぞれ、ドレイン側から動作電力が供給されるチャージポンプ回路によって生成される。
【0003】
特許文献2には、正極側の電源供給端子から電子機器の電源入力端子への電源経路上に、電源供給端子側をドレインとするpチャンネルFETを備えた保護装置が示される。当該pチャンネルFETのゲートは、抵抗を介して負極側の電源供給端子に接続され、さらに、コンデンサを介してソースに接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-82374号公報
【文献】特開2003-37933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、車両用の電子制御装置(ECU:Electronic Control Unit)等では、電源と負荷との間の通電を制御するため、2個の直列トランジスタからなるリレーが設けられる場合がある。2個の直列トランジスタの一方には、負荷から電源への逆方向の通電を遮断することが求められる。一方、2個の直列トランジスタは、リレーの小型化、低損失化のため、特許文献1に示されるように、nチャネル型であることが望ましい。しかし、特許文献1に示されるような構成では、当該逆方向の通電を遮断できない恐れがある。
【0006】
後述する実施の形態は、このようなことに鑑みてなされたものであり、その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施の形態による半導体装置は、電源に結合される正極電源端子および負極電源端子と、負荷に結合される負荷駆動端子とを備え、制御入力信号に応じて電源と負荷との間の通電を制御する。当該半導体装置は、nチャネル型の第1の電力用トランジスタおよび第2の電力用トランジスタと、第1の昇圧回路と、第1のゲート放電回路とを有する。第1の電力用トランジスタは、正極電源端子と負荷駆動端子との間に設けられ、ソースおよびバックゲートが正極電源端子側に、ドレインが負荷駆動端子側に結合される。第2の電力用トランジスタは、正極電源端子と負荷駆動端子との間で第1の電力用トランジスタと直列に設けられ、ソースおよびバックゲートが負荷駆動端子側に、ドレインが正極電源端子側に結合される。第1の昇圧回路は、第1の電力用トランジスタのゲートを充電する。第1のゲート放電回路は、負極電源端子の電位が正極電源端子の電位よりも高い場合に、第1の電力用トランジスタのゲート電荷をソースへ放電する。
【発明の効果】
【0008】
前記一実施の形態によれば、負荷から電源への逆方向の通電を遮断することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施の形態1による電子制御装置を適用した車両の構成例を示す概略図である。
【
図2】
図1における電子制御装置の主要部の構成例を示す概略図である。
【
図3】本発明の実施の形態1による半導体装置(リレー装置)の概略構成例を示すブロック図である。
【
図4】
図3の半導体装置(リレー装置)における主要部の詳細な構成例を示す回路図である。
【
図5】
図4における昇圧回路内の各トランジスタの構造例を示す断面図である。
【
図6】
図3の半導体装置(リレー装置)の外形例を示す模式図である。
【
図7】本発明の実施の形態2による半導体装置(リレー装置)の概略構成例を示すブロック図である。
【
図8】
図7の半導体装置(リレー装置)における負電位検出回路の概略的な構成例を示す回路図である。
【
図9】
図7の半導体装置(リレー装置)における主要部の詳細な構成例を示す回路図である。
【
図10】
図9の回路を配線基板上で形成した場合の構成例を示す回路図である。
【
図11】
図7のリレー装置と、
図10に基づくリレー装置との外形例を比較した模式図である。
【
図12】本発明の実施の形態3による半導体装置(リレー装置)において、前提となる問題点の一例を示す波形図である。
【
図13】本発明の実施の形態3による半導体装置(リレー装置)の概略構成例を示すブロック図である。
【
図14】
図13の半導体装置(リレー装置)における主要部の詳細な構成例を示す回路図である。
【
図15】
図13における遅延回路の詳細な構成例を示す回路図である。
【
図17】(a)、(b)および(c)は、本発明の第1の比較例となるリレー装置のそれぞれ異なる構成例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらは互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。
【0011】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0012】
また、実施の形態では、MISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)の一例としてMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)(MOSトランジスタと呼ぶ)を用いるが、ゲート絶縁膜として非酸化膜を除外するものではない。実施の形態では、pチャネル型のMOSFETをpMOSトランジスタと呼び、nチャネル型のMOSFETをnMOSトランジスタと呼ぶ。
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0014】
(実施の形態1)
《車両の概略》
図1は、本発明の実施の形態1による電子制御装置を適用した車両の構成例を示す概略図である。
図1に示す車両(例えば自動車)VCLは、バッテリBATと、フューズボックスFSUと、電子制御装置(具体的にはリレーボックス)ECUと、ボディコントロールモジュールBCMと、複数の負荷LD[1],…,LD[k],…,LD[n]とを備える。フューズボックスFSUは、バッテリBATの電力を電子制御装置ECUへ伝送すると共に大電流から保護する機能を担う。
【0015】
負荷LD[1]~LD[n]は、自動車用の各種電装部品であり、例えば、DCモータや、ランプや、ヒータや、各種インダクタンス負荷や、各種コンデンサ負荷等に該当する。ボディコントロールモジュールBCMは、各種負荷(ここではLD[k],…,LD[n])を制御する。電子制御装置(リレーボックス)ECUは、複数のリレー(スイッチ)を備え、フューズボックスFSUを介して伝送されるバッテリBATの電力を、各リレーを介して各種負荷(ここではLD[1],…)やボディコントロールモジュールBCMへ供給する。すなわち、電子制御装置(リレーボックス)ECUは、バッテリBATと負荷との間の通電を制御する。
【0016】
ここで、電子制御装置(リレーボックス)ECUは、バッテリBATの電力を各種負荷へ供給する関係上、低損失であることが望まれる。さらに、電子制御装置(リレーボックス)ECUは、小型であることが望まれる。小型化によって、リレーボックスの設置箇所に対する制約が緩和されるため、例えば、ワイヤハーネスによる配線経路の効率化等が図れる。この配線経路の効率化は、車両の低重量化や、低コスト化や、低損失化等に寄与する。
【0017】
《電子制御装置の概略》
図2は、
図1における電子制御装置の主要部の構成例を示す概略図である。
図2に示す電子制御装置(リレーボックス)ECUは、マイクロコントローラMCUと、リレー装置RLYと、電源レギュレータVREGと、外部抵抗Reとを含み、これらが配線基板上に実装された構成となっている。電子制御装置ECUには、正極側のバッテリ端子Pi1(+)を介して、バッテリBATからの高電位側のバッテリ電源(バッテリ電源電位とも呼ぶ)VBが供給される。また、電子制御装置ECUには、負極側のバッテリ端子Pi1(-)を介してバッテリBATからの低電位側のバッテリ電源(接地電源電位とも呼ぶ)GNDが供給される。接地電源電位GNDを0Vとした場合、バッテリ電源電位VBは、代表的には、12V等である。
【0018】
電源レギュレータVREGは、バッテリ電源VBからマイクロコントローラMCU用の電源(例えば5V等)を生成する。マイクロコントローラMCUは、広く知られているように、各種プログラムやデータを格納するメモリや、メモリに格納されたプログラムを実行するプロセッサや、各種アナログ周辺回路および各種ディジタル周辺回路を備える。リレー装置RLYは、マイクロコントローラMCUからの制御入力信号INに応じてバッテリBATと負荷LDとの間の通電を制御する。具体的には、リレー装置RLYは、バッテリBATから負荷LDへの通電を、制御入力信号INがアサートされた場合にはオンに制御し、制御入力信号INがネゲートされた場合にはオフに制御する。
【0019】
また、リレー装置RLYは、自己診断を実行する診断回路を備える。リレー装置RLYは、当該診断回路による診断結果となる結果通知信号PFをマイクロコントローラMCUへ出力する。この例では、リレー装置RLYは、診断結果が異常である場合、結果通知信号PFの電位レベルを外部抵抗Reを介して所定のレベルに制御することで、マイクロコントローラMCUへ異常を通知する。マイクロコントローラMCUは、結果通知信号PFの電位レベルをアナログ・ディジタル変換回路によってディジタル信号に変換することで異常を認識する。
【0020】
負荷LDは、電子制御装置ECUの正極側の負荷駆動端子Po1(+)および負極側の負荷駆動端子Po1(-)に結合される。負荷駆動端子Po1(+)には、リレー装置RLYからの出力電位VOが印加され、負荷駆動端子Po1(-)には、バッテリ端子Pi1(-)と共に接地電源電位GNDが印加される。なお、電子制御装置ECUは、実際には、1個のリレー装置RLYに限らず、複数のリレー装置RLYを備える。
【0021】
《リレー装置(比較例)の概略》
図17(a)、
図17(b)および
図17(c)は、本発明の第1の比較例となるリレー装置のそれぞれ異なる構成例を示す概略図である。
図2において、例えば、負荷LDがDCモータ等の場合、バッテリBATが誤って逆接続されると、逆方向の通電によって逆回転(すなわち誤動作)が生じる。このため、リレー装置RLYには、このような逆方向の通電を遮断することが求められる。
【0022】
図17(a)に示すリレー装置RLY’aは、負荷LDに通電を行うメカニカルスイッチ(メカニカルリレー)MSWを備える。メカニカルスイッチMSWは、オフ時には機械的にオープンとなるため、バッテリBATが逆接続された場合、逆方向の通電を遮断することができる。しかし、メカニカルスイッチMSWを用いると、小型化が図り難いため、リレー装置RLY’aの設置箇所が限定され得る。また、メカニカルスイッチMSWは接点寿命があるため、メンテナンスの必要性からもリレー装置RLY’aの設置箇所が限定され得る。
【0023】
図17(b)に示すリレー装置RLY’bは、直列に結合されるダイオードDrおよびnチャネル型の電力用トランジスタ(例えば、MOSFET)QN2を備え、当該直列回路によって負荷LDに通電を行う。電力用トランジスタQN2は、バックゲートおよびソースが負荷LD側に結合され、制御入力信号INを受けたドライバDVによってオン・オフが制御される。電力用トランジスタQN2は、ソース(バックゲート)とドレインとの間に、ドレイン側をカソード(ソース側をアノード)とする寄生ダイオードDn2を備える。このため、例えば、バッテリBATが逆接続された場合、電力用トランジスタQN2は、オフ状態であっても寄生ダイオードDn2を介して逆方向の通電を行ってしまう。
【0024】
そこで、電力用トランジスタQN2側をカソードとするダイオードDrが設けられる。ダイオードDrは、バッテリBATが逆接続された場合、ブレークダウンしない限り逆方向の通電を遮断することができる。このように、半導体素子(Dr,QN2)を用いることで、メカニカルスイッチMSWを用いる場合と比べて、リレー装置RLY’bの小型化が図れる。しかし、ダイオードDrを用いると、順方向の通電(すなわちバッテリBATから負荷LDへの通電)を行う際に順方向電圧に伴う損失が生じるため、低損失化の観点で問題が残る。
【0025】
図17(c)に示すリレー装置RLY’cは、
図17(b)に示したダイオードDrの代わりに、pチャネル型の電力用トランジスタ(例えば、MOSFET)QP1が設けられる。電力用トランジスタQP1は、ソースが電力用トランジスタQN2側に結合され、これに伴い、電力用トランジスタQN2側をカソードとする寄生ダイオードDp1を備える。電力用トランジスタQP1は、ゲートが負極側のバッテリ端子Pi1(-)に結合され、バッテリBATが順接続された場合にはオンとなる。一方、バッテリBATが逆接続された場合、電力用トランジスタQP1はオフとなり、その寄生ダイオードDp1も逆バイアスとなるため、逆方向の通電が遮断される。
【0026】
このように、ダイオードDrの代わりにpチャネル型の電力用トランジスタQP1を用いることで、
図17(b)で述べたような順方向電圧の問題を解消することができる。ただし、pチャネル型を用いると、nチャネル型を用いる場合と比べて同一面積でのオン抵抗が大きくなる。その結果、nチャネル型を用いる場合と比べて、小型化または低損失化の点で不利益となる。また、pチャネル型を用いる場合、バッテリ電源電位VBによって電力用トランジスタQP1のゲート・ソース間電圧が定まるため、バッテリ電源電位VBが低い場合に、電力用トランジスタQP1のオン抵抗の増大を招き得る。
【0027】
《リレー装置(実施の形態1)の概略》
図3は、本発明の実施の形態1による半導体装置(リレー装置)の概略構成例を示すブロック図である。
図3に示す半導体装置(リレー装置)RLYaは、例えば、1個の半導体パッケージで構成されるインテリジェントパワーデバイス(IPD)であり、
図2のリレー装置RLYに適用される。リレー装置RLYaは、電源に結合される正極電源端子Pi2(+)および負極電源端子Pi2(-)と、負荷LDに結合される正極側の負荷駆動端子Po2(+)と、制御入力信号INが入力される制御入力端子Pi3とを備える。負荷LDの他端は、負極側の負荷駆動端子Po2(-)に結合される。
【0028】
正極電源端子Pi2(+)は、電源(電源電位)[1a]VD1aに結合され、負極電源端子Pi2(-)は、電源(電源電位)[3]VD3に結合される。負極側の負荷駆動端子Po2(-)は、電源(電源電位)[2]VD2に結合される。
図2に示したように、正極電源端子Pi2(+)および負極電源端子Pi2(-)にバッテリBATが結合される場合、電源電位[1a]VD1aは、バッテリ電源電位VBとなり、電源電位[3]VD3は、接地電源電位GNDとなる。また、電源電位[2]VD2も接地電源電位GNDとなる。電源[3]VD3は制御用の接地電源として用いられ、電源[2]VD2は電力用の接地電源として用いられる。
【0029】
リレー装置RLYaは、入力バッファIBFと、レベルシフタLSと、制御回路CTLaと、昇圧回路(チャージポンプ回路)CP1a,CP2と、逆流防止回路RCFと、ゲート放電回路DCG1a,DCG2と、電力用トランジスタQN1,QN2とを備える。逆流防止回路RCFは、“VD1a>VD3”の場合(すなわちバッテリBATが順接続の場合)には、電源[1a]VD1aと電源[1b]VD1bとを導通し、“VD1a<VD3”の場合(すなわちバッテリBATが逆接続の場合)には、電源[1a]VD1aと電源[1b]VD1bとを遮断する。電源(電源電位)[1b]VD1bは、高電位側の内部電源(内部電源電位)となる。
【0030】
電力用トランジスタQN1,QN2は、例えば、nチャネル型のMOSFETである。電力用トランジスタQN1は、正極電源端子Pi2(+)と正極側の負荷駆動端子Po2(+)との間に設けられ、ソースおよびバックゲートが正極電源端子Pi2(+)側に、ドレインが負荷駆動端子Po2(+)側に結合される。電力用トランジスタQN2は、正極電源端子Pi2(+)と正極側の負荷駆動端子Po2(+)との間で電力用トランジスタQN1と直列に設けられ、ソースおよびバックゲートが負荷駆動端子Po2(+)側に、ドレインが正極電源端子Pi2(+)側に結合される。正極側の負荷駆動端子Po2(+)には、電力用トランジスタQN1,QN2のオン・オフに応じた出力電位VOが印加される。
【0031】
入力バッファIBFは、制御入力端子Pi3からの制御入力信号INを受け、それをレベルシフタLSを介して制御回路CTLaへ出力する。レベルシフタLSは、接地電源電位GNDを‘L’レベルとして所定の振幅で推移する制御入力信号INを、電源電位[1b]VD1bを‘H’レベルとして所定の振幅で推移する信号に変換する。制御回路CTLaは、電源(電源電位)[4]VD4を基準として、電源[1b]VD1bで動作する。電源[4]VD4は、内部接地電源IGNDであり、例えば、電源[1b]VD1bを所定の電位だけ降圧することで生成される。例えば、電源電位[1b]VD1bが12Vの場合、電源電位[4]VD4は、6V等である。また、電源[4]VD4は、可変電源であり、スタンバイ時には、省電力化のため電源[1b]VD1bと短絡される。
【0032】
制御回路CTLaは、制御入力信号INに応じて、昇圧回路CP1aへイネーブル信号S_EN1を出力し、昇圧回路CP2へイネーブル信号S_EN2を出力する。具体的には、制御回路CTLaは、例えば、制御入力信号INのアサート時には、イネーブル信号S_EN1,S_EN2を共にアサートし、制御入力信号INのネゲート時には、イネーブル信号S_EN1,S_EN2を共にネゲートする。
【0033】
昇圧回路CP1a,CP2は、電源(電源電位)[5]VD5を基準として、電源[1b]VD1bで動作する。電源[5]VD5は、内部接地電源IGNDであり、電源[4]VD4の場合と同様にして生成および制御される。昇圧回路CP1aは、イネーブル信号S_EN1のアサートに応じて電力用トランジスタQN1をオンに制御するための昇圧電位(具体的には電源電位[1a]VD1aよりも高い電位)を生成し、当該昇圧電位で電力用トランジスタQN1のゲートを充電する。同様に、昇圧回路CP2は、イネーブル信号S_EN2のアサート(制御入力信号INのアサート)に応じて電力用トランジスタQN2をオンに制御するための昇圧電位を生成し、当該昇圧電位で電力用トランジスタQN2のゲートを充電する。
【0034】
ゲート放電回路DCG1aは、負極電源端子Pi2(-)の電位が正極電源端子Pi2(+)の電位よりも高い場合(すなわち、バッテリBATが逆接続された場合)に、電力用トランジスタQN1のゲート電荷をソースへ放電する。一方、ゲート放電回路DCG2は、ゲート放電回路DCG1aとは異なり、イネーブル信号S_EN2のネゲート(制御入力信号INのネゲート)に応じて電力用トランジスタQN2のゲート電荷をソースへ放電する。
【0035】
《リレー装置(実施の形態1)の主要部の詳細》
図4は、
図3の半導体装置(リレー装置)における主要部の詳細な構成例を示す回路図である。
図5は、
図4における昇圧回路内の各トランジスタの構造例を示す断面図である。
図4には、
図3における逆流防止回路RCF、昇圧回路CP1aおよびゲート放電回路DCG1a周りの詳細な構成例が示される。逆流防止回路RCFは、電源[1a]VD1aと電源[1b]VD1bとの間に並列に結合される逆流防止用ダイオードDcおよびpMOSトランジスタMP1を備える。
【0036】
ここで、バッテリBATの逆接続時には、電源[3]VD3から順バイアスとなるESD保護用ダイオードDe1を介して電源[1b]VD1bへ電流が逆流し、さらに、電源[1b]VD1bから電源[1a]VD1aへ電流が逆流する恐れがある。そこで、逆流防止用ダイオードDcは、当該電源[1b]VD1bから電源[1a]VD1aへの電流の逆流を防止する。ただし、逆流防止用ダイオードDcでは、バッテリBATの順接続時に順方向電圧降下が生じる。そこで、pMOSトランジスタMP1は、ゲートが電源[3]VD3に結合されることで、バッテリBATの順接続時にはオンとなり、電源電位[1b]VD1bと電源電位[1a]VD1aとを同電位に制御する。また、バッテリBATの逆接続時、pMOSトランジスタMP1はオフとなり、その寄生ダイオードDp3も逆バイアスとなる。
【0037】
例えば、
図1に示したような12V系の車載システムでは、逆電圧の定格は-16Vが一般的であるため、逆流防止用ダイオードDcの耐圧は、16V以上あればよく、例えば20V等で設計される。pMOSトランジスタMP1の耐圧は、逆電圧のみを考慮すれば、逆流防止用ダイオードDcの耐圧以上であればよいが、バッテリBATの順接続時のダンプサージ等も考慮し、50V以上で設計されることが望ましい。
【0038】
昇圧回路(チャージポンプ回路)CP1aは、電源[1b]VD1bと負荷駆動端子Po2(+)との間に直列に結合されるpMOSトランジスタMP2および抵抗R2と、昇圧回路本体となるnMOSトランジスタMN1~MN3およびコンデンサC1~C3とを備える。コンデンサC1~C3の一端には、図示しない発振回路からのクロック信号CK(反転クロック信号CKB)が印加される。また、ゲート放電回路DCG1aは、電力用トランジスタQN1のゲート電荷をソースへ放電する抵抗R1と、電力用トランジスタQN1のゲートを保護する保護ダイオードD2とを備える。
【0039】
このような構成において、まず、バッテリBATが順接続の場合で、制御入力信号INがアサートされた場合を想定する。この場合、制御入力信号INのアサートに応じて、イネーブル信号S_EN1もアサートされる。pMOSトランジスタMP2は、イネーブル信号S_EN1のアサートレベル(ここでは‘L’レベル)を受けてオンとなり、nMOSトランジスタMN1~MN3のバックゲートに電源電位[1b]VD1bを供給する。
【0040】
nMOSトランジスタMN1~MN3のそれぞれは、
図5に示されるように、n型の半導体基板SUB上に形成される。半導体基板SUBの主面側にはp型ウエルPWが形成される。p型ウエルPW内には、ソース(S)およびドレイン(D)となるn
+型のソース拡散層DFsおよびドレイン拡散層DFdと、バックゲート(BG)となるp
+型の給電用拡散層DFbとが形成される。ソース拡散層DFsとドレイン拡散層DFdの間の上部には、ゲート絶縁膜を挟んでゲート(G)となるゲート電極GEが配置される。
【0041】
このような構造では、ソース拡散層DFsおよびドレイン拡散層DFdをエミッタ、p型ウエルPWをベース、半導体基板SUBをコレクタとするnpn型の寄生バイポーラトランジスタBTが存在する。半導体基板SUBには、図示しない箇所で電源電位[1b]VD1bが供給される。寄生バイポーラトランジスタBTは、前述したように、pMOSトランジスタMP2を介してバックゲート(BG)に電源電位[1b]VD1bが供給された場合にオンとなる。
【0042】
寄生バイポーラトランジスタBTは、オンとなった場合、ソース拡散層DFsおよびドレイン拡散層DFdにチャージ電流を流すことで
図4のコンデンサC1~C3に対してチャージ動作を行い、加えて、電力用トランジスタQN1のゲートに初期のチャージを行う。この状態で、
図4の昇圧回路CP1aは、コンデンサC1~C3の一端にクロック信号CK(反転クロック信号CKB)を印加することでコンデンサC1からコンデンサC3に向けて順次ポンプ動作を行い、所定の昇圧電位を生成する。
【0043】
一方、昇圧回路CP1aがこのようなチャージポンプ動作によって電力用トランジスタQN1のゲートにゲート充電電流を流すのと並行して、ゲート放電回路DCG1a内の抵抗R1は、ゲート放電電流を流す。ここで、抵抗R1は、前述したゲート放電電流がゲート充電電流よりも十分に小さくなるよう高い抵抗値に設定される。その結果、電力用トランジスタQN1のゲートには昇圧電位が印加され、電力用トランジスタQN1はオンとなる。
【0044】
次に、バッテリBATが順接続の場合で、制御入力信号INがネゲートされた場合を想定する。この場合、制御入力信号INのネゲートに応じて、イネーブル信号S_EN1もネゲートされる。pMOSトランジスタMP2は、イネーブル信号S_EN1のネゲートレベル(ここでは‘H’レベル)を受けてオフとなる。その結果、昇圧回路CP1a内のnMOSトランジスタMN1~MN3のバックゲート電位は、抵抗R2を介して出力電位VOと同電位に制御される。
【0045】
その結果、nMOSトランジスタMN1~MN3の寄生バイポーラトランジスタBTはオフとなり、また、クロック信号CK(反転クロック信号CKB)の印加も制御入力信号INのネゲートに伴い停止する。これにより、昇圧回路CP1aは、非活性状態となる。その結果、電力用トランジスタQN1のゲートの電荷は、ゲート放電回路DCG1a内の抵抗R1を介してソースへ放電され、当該ゲート電位は、時間と共に電源電位[1a]VD1aに近づいていく。この放電期間では、電力用トランジスタQN1はオンとなる。ただし、
図3のゲート放電回路DCG2は、イネーブル信号S_EN2のネゲートに応じて迅速に電力用トランジスタQN2をオフに制御するため、電力用トランジスタQN1がオンであっても、電源[1a]VD1aから負荷LDへの順方向の通電は遮断される。
【0046】
続いて、バッテリBATが逆接続された場合を想定する。この場合、電源電位[3]VD3はバッテリ電源電位VB、電源電位[1a]VD1aは接地電源電位GND、電源電位[1b]VD1bは“VB-VF”(VFはESD保護用ダイオードDe1の順方向電圧)となる。制御回路CTLaは、この電位関係では動作せず、イネーブル信号S_EN1として略バッテリ電源電位VBを出力する。その結果、pMOSトランジスタMP2はオフとなり、nMOSトランジスタMN1~MN3のバックゲート電位は、負荷駆動端子Po2(+)と同電位(例えば、略バッテリ電源電位VB)になる。
【0047】
一方、電力用トランジスタQN1は、バッテリBATが逆接続された時点では、ゲート放電回路DCG1a内の抵抗R1によってオフしている。昇圧回路CP1aでは、逆接続に伴いクロック信号が生成されないためポンプ動作は行われないが、負荷駆動端子Po2(+)からの電位(例えば、略バッテリ電源電位VB)に応じて寄生バイポーラトランジスタBTがオンとなり、コンデンサC1~C3に対するチャージ動作は行われる。ただし、この際のチャージ電流(言い換えれば、電力用トランジスタQN1のゲート充電電流)は、抵抗R2によって調整可能である。
【0048】
したがって、抵抗R1によるゲート放電電流が、抵抗R2と寄生バイポーラトランジスタBTのhfeで決まるゲート充電電流よりも十分大きくなるように抵抗R2の抵抗値を高く設計すれば、電力用トランジスタQN1は、オフを維持する。例えば、hfe=100に対して、抵抗R2の抵抗値を抵抗R1の抵抗値の1000倍等に設計すればよい。また、別の方式として、抵抗R2と直列に、負荷駆動端子Po2(+)から昇圧回路CP1aに向けた逆電流を防止するダイオードを別途設けてもよい。
【0049】
図6は、
図3の半導体装置(リレー装置)の外形例を示す模式図である。
図3の半導体装置(リレー装置)RLYaは、
図6に示されるように、1個の半導体チップ又は1個の半導体パッケージで構成される。一方、例えば、特許文献1に示されるような第2の比較例となるリレー装置RLY’dは、例えば、配線基板BD1上に複数の部品(2個の電力用トランジスタ部品(QN1,QN2)および2個の昇圧回路部品(CP’1,CP’2))を実装した構成となる。
【0050】
このように、
図3の半導体装置(リレー装置)RLYaを用いると、第2の比較例となるリレー装置RLY’dを用いる場合と比較して、装置の小型化が実現できる。その結果、リレー装置の設置箇所に対する制約が緩和され、
図1に示したような車両において、ワイヤハーネスの配線経路を簡素化できる。このワイヤハーネスの簡素化は、車両の低重量化や、低コスト化や、低消費電力化等に寄与する。
【0051】
《実施の形態1の主要な効果》
以上、実施の形態1の方式では、バッテリBATの順接続時で、制御入力信号INがアサートの場合には、昇圧回路CP1aは、チャージ動作およびポンプ動作共に活性状態であり、電力用トランジスタQN1は、“昇圧回路CP1aのゲート充電電流”>“ゲート放電回路DCG1aのゲート放電電流”によってオンとなる。また、バッテリBATが順接続で、制御入力信号INがネゲートの場合には、昇圧回路CP1aは非活性状態であり、電力用トランジスタQN1は、ゲート放電回路DCG1aのゲート放電電流によって所定の期間経過後にオフとなる。一方、バッテリBATが逆接続された場合には、昇圧回路CP1aは、チャージ動作が弱い活性状態であり、電力用トランジスタQN1は、“昇圧回路CP1aのゲート充電電流”<“ゲート放電回路DCG1aのゲート放電電流”によってオフとなる。
【0052】
このように、電力用トランジスタQN1のゲート・ソース間にゲート放電回路DCG1aを設けることで、負荷LDから電源への逆方向の通電を遮断することが可能になる。また、nチャネル型の2段構成の電力用トランジスタQN1,QN2を前提とすることで、リレー装置RLYaの低損失化または小型化を実現できる。さらに、リレー装置RLYaを1個の半導体パッケージ(IPD)で実現することで、装置の更なる小型化を実現できる。なお、ここでは、ゲート放電回路DCG1a内に抵抗R1を設けたが、抵抗R1の代わりにnMOSトランジスタを設けることも可能である。この場合、当該nMOSトランジスタのゲートは、電源[3]VD3に結合される。
【0053】
(実施の形態2)
《実施の形態2の前提となる問題点》
図1および
図2に示したような自動車向けのリレー装置RLYの場合、例えば、
図3に示した電源[1a]VD1aは、通常、バッテリ電源VBに結合される。この場合、電源[1a]VD1aには、様々な外来サージ(またはノイズ)が印加され得る。ここで、オルタネータ起因のダンプサージを代表とする正極性サージが生じた場合には、
図3の電力用トランジスタQN1に過大な電力が印加される状況は生じ難い。これは、電力用トランジスタQN1がオフ状態でも寄生ダイオードDn1が通電するためである。一方、フィールドコイルや誘導性負荷起因の負極性サージが生じた場合、電力用トランジスタQN1は、オフ状態になっていると、ブレークダウンによって過大な電力が消費され、破壊に至る恐れがある。
【0054】
《リレー装置(実施の形態2)の構成および動作》
図7は、本発明の実施の形態2による半導体装置(リレー装置)の概略構成例を示すブロック図である。
図7に示す半導体装置(リレー装置)RLYbは、
図3に示した構成例と比較して、次の5点が異なっている。1つ目の相違点として、
図3に示した電力用トランジスタQN1の代わりに電力用トランジスタQN1(L)が設けられる。電力用トランジスタQN1(L)は、電力用トランジスタQN1および電力用トランジスタQN2よりも低耐圧な構造を備える。具体例として、電力用トランジスタQN2(および電力用トランジスタQN1)の耐圧は40V等であるのに対して、電力用トランジスタQN1(L)の耐圧は20V等である。
【0055】
2つ目の相違点として、詳細は
図9に示すが、ゲート放電回路DCG1bは、
図4の抵抗R1の代わりに短絡用トランジスタ(MN16)を備える。3つ目の相違点として、昇圧回路CP1bは、
図4に示した昇圧回路本体(MN1~MN3、C1~C3)で構成される。4つ目の相違点として、
図3に示した逆流防止回路RCFの代わりに、負電位検出回路VNDETが設けられる。負電位検出回路VNDETは、負電位検出信号[1]S_DET1でゲート放電回路DCG1b内の短絡用トランジスタを制御し、負電位検出信号[1]S_DET2で昇圧回路CP1bを制御する。これに伴い、5つ目の相違点として、制御回路CTLbは、
図3に示したイネーブル信号S_EN1を出力しない。
【0056】
図1および
図2に示したような12V系の車載システムでは、一般的に、正極性のDC定格は、ジャンプスタート時の誤接続等を考慮して28Vが要求される。一方、ジャンプスタート等の状況が想定されない負極性のDC定格は、-16Vというのが一般的である。このような正極性と負極性の定格電位差に着目すると、電力用トランジスタQN1(L)を低耐圧な構造で実現することができる。その具体的な構造例として、例えば、特開2016-207716号公報等が挙げられる。このような構造を用いることで、
図3の場合と比較して、電力用トランジスタQN1(L)のオン抵抗を低減することが可能になり、装置の更なる低損失化または小型化を図ることが可能になる。
【0057】
しかし、電源[1a]VD1aに、例えば-60V~-120V等といった負サージが印加された場合、電力用トランジスタQN1(L)のブレークダウンに伴う損失が低耐圧にした分だけ増大する。そこで、例えば、特許文献2に示されるような方式を用いると、負サージ印加時に電力用トランジスタをオンに制御できるため、このような損失を低減でき、電力用トランジスタの保護を図ることも可能になる。しかし、特許文献2の方式では、例えば、負サージの発生期間に応じた大容量のコンデンサが必要とされるため、リレー装置を1個の半導体チップや1個の半導体パッケージで構成することが困難となり得る。そこで、
図7では、負電位検出回路VNDET等が設けられる。
【0058】
《リレー装置(実施の形態2)の主要部の詳細》
図8は、
図7の半導体装置(リレー装置)における負電位検出回路の概略的な構成例を示す回路図である。
図9は、
図7の半導体装置(リレー装置)における主要部の詳細な構成例を示す回路図である。例えば、
図7において、バッテリBATの逆接続時も電源[1a]VD1aへの負サージ印加時も、共に、電源[3]VD3を基準に電源[1a]VD1aに負の電位が印加される。ただし、電力用トランジスタQN1(L)は、バッテリBATの逆接続時にはオフであり、負サージ印加時にはオンであることが望まれる。そこで、バッテリBATの逆接続時と負サージ印加時とを区別し、その結果に応じて電力用トランジスタQN1(L)のオン・オフを切り替えるため、負電位検出回路VNDETが設けられる。
【0059】
図8に示す負電位検出回路VNDETは、
図4に示した逆流防止回路RCF内のpMOSトランジスタMP1および逆流防止用ダイオードDcに加えて、抵抗R11と負電位判別回路JDGとを備える。抵抗R11および逆流防止用ダイオード(ツェナーダイオード)Dcは、電源[1a]VD1a(言い換えれば正極電源端子Pi2(+))と電源[1b]VD1bとの間に直列に設けられる。ここで、バッテリBATの逆接続時や負サージ印加時、電源[1b]VD1bは、順バイアスとなるESD保護用ダイオードDe1を介して電源[3]VD3(言い換えれば負極電源端子Pi2(-))に結合される。したがって、抵抗R11および逆流防止用ダイオードDcは、実質的に、正極電源端子Pi2(+)と負極電源端子Pi2(-)との間に直列に設けられることになる。
【0060】
逆流防止用ダイオード(ツェナーダイオード)Dcのブレークダウン電圧は16V以上であり、例えば20V等に設定される。バッテリBATが逆接続された場合(例えば、電源[1a]VD1aに-12V等が印加された場合)、逆流防止用ダイオードDcはブレークダウンしないため、抵抗R11の両端には、所定の電位差は生じない。一方、電源[1a]VD1aに、逆流防止用ダイオードDcのブレークダウン電圧を超える負サージ(例えば、-20Vよりも負側の負サージ)が印加された場合、逆流防止用ダイオードDcはブレークダウンするため、抵抗11の両端に所定の電位差が生じる。負電位判別回路JDGは、この抵抗R11における所定の電位差の有無(すなわち、逆流防止用ダイオードDcのブレークダウンの有無)でバッテリBATの逆接続時か負サージ印加時かを判別する。
【0061】
詳細は、
図9で述べるが、負電位判別回路JDGは、バッテリBATの逆接続時には、負電位検出信号[1]S_DET1を介してゲート放電回路DCG1bをオンに制御し、負電位検出信号[2]S_DET2を介して昇圧回路CP1bを非活性化する。その結果、電力用トランジスタQN1(L)は、オフとなり、逆方向の通電を遮断する。一方、負電位判別回路JDGは、負サージ印加時には、負電位検出信号[1]S_DET1を介してゲート放電回路DCG1bをオフに制御し、負電位検出信号[2]S_DET2を介して昇圧回路CP1bに、電源電位[1a]VD1aよりも正側となる所定の電位を出力させる。その結果、電力用トランジスタQN1(L)はオンとなり、負サージに伴う電力損失が低減できる。
【0062】
一方、バッテリBATの順接続時には、電源[1a]VD1aと電源[1b]VD1bは、pMOSトランジスタMP1を介してほぼ同電位となる。この場合、負電位判別回路JDGは、負電位検出信号[1]S_DET1を介してゲート放電回路DCG1bをオフに制御し、負電位検出信号[2]S_DET2を介して昇圧回路CP1bを活性化することで、電力用トランジスタQN1(L)をオンに制御する。
【0063】
このように、負電位検出回路VNDETは、電源[3]VD3(負極電源端子Pi2(-))を基準として電源[1a]VD1a(正極電源端子Pi2(+))に印加された負電位が予め定めた負のしきい値電位(すなわち、逆流防止用ダイオードDcのブレークダウン電圧に基づく-20V等)よりも正側か負側かを判別する。そして、負電位検出回路VNDETは、正側(例えば、バッテリBATの逆接続に伴う-12V等)の場合にはゲート放電回路DCG1bをオンに制御し、負側(負サージに伴う-100V等)の場合にはゲート放電回路DCG1bをオフに制御する。
【0064】
図9には、
図7および
図8に示した負電位検出回路VNDET周りと、昇圧回路(チャージポンプ回路)CP1b周りと、ゲート放電回路DCG1b周りの構成例が示される。ゲート放電回路DCG1bは、電源[1a]VD1aと電力用トランジスタQN1(L)のゲートとの間に並列に結合される保護ダイオードD2およびnMOSトランジスタ(短絡用トランジスタ)MN16を備える。昇圧回路CP1bは、
図4の場合と同様のnMOSトランジスタMN1~MN3およびコンデンサC1~C3を備える。
【0065】
負電位検出回路VNDETa(VNDET)は、負電位判別回路JDGa(JDG)を含む。負電位判別回路JDGaは、nMOSトランジスタMN11~MN15と、抵抗R12~R15と、pMOSトランジスタMP11と、ダイオード(ツェナーダイオード)D11と、コンデンサC11とを備える。ゲート放電回路DCG1b内のnMOSトランジスタ(短絡用トランジスタ)MN16のゲートには、負電位判別回路JDGaからの負電位検出信号[1]S_DET1が印加される。
【0066】
また、昇圧回路CP1b内のnMOSトランジスタMN1~MN3のバックゲートには、負電位判別回路JDGaからの負電位検出信号[2]S_DET2が印加される。ダイオード(ツェナーダイオード)D11は、電源[1a]VD1a(言い換えれば正極電源端子Pi2(+))とnMOSトランジスタMN1~MN3のバックゲートとの間に、電源[1a]VD1a側をアノード(バックゲート側をカソード)として結合される。
【0067】
図9において、電源[3]VD3は、バッテリBATの接地電源電位GNDに結合され、詳細には、外部抵抗(例えば100Ω等)を介して接地電源電位GNDに結合される。また、負電位検出回路VNDETa内の逆流防止用ダイオードDcのブレークダウン電圧は、例えば20V等であり、これは電力用トランジスタQN1(L)の耐圧と同程度である。このように、逆流防止用ダイオードDcのブレークダウン電圧は、電力用トランジスタQN1(L)の保護を図る観点から、電力用トランジスタQN1(L)の耐圧と同程度またはそれ以下(ただし、バッテリ電源電位VBよりは上)とすることが望ましい。
【0068】
このような構成において、まず、バッテリBATが順接続されている場合を想定する。この場合、電源[1b]VD1bはpMOSトランジスタMP1によって電源[1a]VD1aとほぼ同電位になるため、負電位判別回路JDGaは判別動作を行わない。負電位判別回路JDGaは、抵抗R12を介して負電位検出信号[1]S_DET1を略電源電位[1a]VD1aに制御することでゲート放電回路DCG1b内のnMOSトランジスタMN16をオフに制御する。また、負電位判別回路JDGaは、ダイオードD11を介して昇圧回路CP1b内のnMOSトランジスタMN1~MN3のバックゲートに略電源電位[1a]VD1aを供給する。その結果、昇圧回路CP1bは、チャージ動作を行い、また、クロック信号(図示省略)に基づくポンプ動作を行うことで、電力用トランジスタQN1(L)のゲート電位を、電力用トランジスタQN1(L)が十分線形領域で動作できる電位まで昇圧する。
【0069】
次に、バッテリBATが逆接続された場合を想定する。この場合、逆流防止用ダイオードDcはブレークダウンしないため、抵抗R11の両端には電位差が生じない。このため、nMOSトランジスタMN11はオフし、電源電位[1b]VD1b(すなわち、略バッテリ電源電位VB)が抵抗R12を介して伝送されることで、nMOSトランジスタMN12はオン、pMOSトランジスタMP11はオフとなる。その結果、負電位検出信号[1]S_DET1は、電源[1b]VD1bと同電位(略バッテリ電源電位VB)になり、負電位検出信号[2]S_DET2は、電源[1a]VD1a(すなわち、接地電源電位GND)と同電位になる。
【0070】
ゲート放電回路DCG1b内のnMOSトランジスタMN16は、負電位検出信号[1]S_DET1に応じてオンとなる。昇圧回路CP1bでは、負電位検出信号[2]S_DET2に応じて寄生バイポーラトランジスタ(
図5のBT)がオフとなり、発振回路も動作しないためポンプ動作も行われない。このため、昇圧回路CP1bは非活性状態となる。その結果、電力用トランジスタQN1(L)は、オフとなり、逆方向の通電を遮断する。
【0071】
続いて、バッテリBATの順接続時で、電源[1a]VD1aに負サージ(例えば、-60V~-120V等)が印加された場合を想定する。この場合、電源[1a]VD1aと電源[3]VD3の電位関係は、前述したバッテリBATの逆接続時と同じであるため、仮に、バッテリBATの逆接続時と負サージ印加時とを区別しなければ、nMOSトランジスタMN16のオンによって電力用トランジスタQN1(L)はオフとなる。
【0072】
しかし、負サージ印加時には、電力用トランジスタQN1(L)はオンであることが望まれる。ここで、
図7に示した制御入力信号INがアサートレベルの場合には、電力用トランジスタQN1(L)は、元々オンであるため、負サージが印加されても特に問題は生じない。一方、制御入力信号INがネゲートレベルの場合(すなわち、昇圧回路CP1bが元々非活性状態の場合)には、バッテリBATの逆接続時と異なり電力用トランジスタQN1(L)をオンさせるための工夫が必要となる。
【0073】
電源[1a]VD1aに負サージが印加されると、ESD保護用ダイオードDe1を介して、逆流防止用ダイオードDcがブレークダウンし、抵抗R11の両端に電位差が生じる。また、電源[1b]VD1bは、電源[3]VD3からESD保護用ダイオードDe1の順方向電圧分降下した電位となり、電源電位[1a]VD1aよりも高くなる。その結果、nMOSトランジスタMN11はオンとなり、負電位検出信号[1]S_DET1は、電源[1a]VD1aと同電位になる。これにより、ゲート放電回路DCG1b内のnMOSトランジスタMN16は、オフとなる。
【0074】
また、nMOSトランジスタMN11のオンに応じて、pMOSトランジスタMP11はオンとなり、nMOSトランジスタMN12はオフとなる。その結果、pMOSトランジスタMP11から抵抗R13およびダイオードD11の経路で電流が流れる。これにより、負電位検出信号[2]S_DET2は、電源電位[1a]VD1aを基準に、ダイオード(ツェナーダイオード)D11のブレークダウン電圧(例えば6V等)だけ正側となる電位になる。
【0075】
昇圧回路CP1bでは、寄生バイポーラトランジスタBTが当該負電位検出信号[2]S_DET2を受けてオンとなり、チャージ動作を行う。なお、昇圧回路CP1bでは、制御入力信号INのネゲートに伴いポンプ動作は行われないため、昇圧回路CP1bは、チャージ動作のみが活性状態となる。これにより、電力用トランジスタQN1(L)のゲート・ソース間に、ダイオード(ツェナーダイオード)D11のブレークダウン電圧によって定まるオン電圧を印加することができる。この際に、nMOSトランジスタMN16はオフである。その結果、負サージ印加時に、電力用トランジスタQN1(L)をオンに制御することが可能になる。このように、ダイオードD11のブレークダウン電圧は、電力用トランジスタQN1(L)が十分線形領域で動作できる値であればよい。
【0076】
ここで、昇圧回路CP1b内の寄生バイポーラトランジスタ(
図5のBT)のベース電流は、抵抗R13で調整可能であり、電力用トランジスタQN1(L)のオンスピードは、抵抗R13の値により決めることができる。例えば、急速にオンさせたい場合は、抵抗R13を小さい抵抗値に設定すればよい。また、ここでは、ゲート放電回路DCG1b内にnMOSトランジスタMN16を設けた。一方、nMOSトランジスタの代わりにpMOSトランジスタを用いることは容易でない。すなわち、この場合、バッテリBATの逆接続時、電源[1a]VD1aが接地電源電位GNDとなっている状態で、電力用トランジスタQN1(L)のゲート電位を接地電源電位GNDまで放電するためには、pMOSトランジスタのゲートに負電位を印加する必要がある。
【0077】
また、逆流防止用ダイオードDcの耐圧付近でのチャタリング防止のため、負電位検出信号[1]S_DET1および負電位検出信号[2]S_DET2は、負サージ印加時の状態でラッチされることが望ましい。nMOSトランジスタMN13~MN15、抵抗R14,R15およびコンデンサC11は、このラッチ用の素子として設けられる。ラッチは、電源電位[1a]VD1aが正極に戻ると、電源電位[1a]VD1aと電源電位[1b]VD1bの電位差が小さくなるため解除される。
【0078】
以上のように、負サージ印加時に電力用トランジスタQN1(L)を急速にオンさせることにより、ブレークダウンさせた場合と比較して、電力用トランジスタQN1(L)の損失を大幅に低減することが可能になり、電力用トランジスタQN1(L)に低耐圧な構造を適用することが可能になる。また、電力用トランジスタQN1(L)の保護を図ることも可能になる。損失に関する具体例を以下に示す。
【0079】
電力用トランジスタQN1(L)の耐圧を“BV1”、オン抵抗を“Ron1”、負サージ電位を“Vsr”、負荷抵抗を“RL”とすると、ブレークダウンさせた場合の損失PL1は、式(1)となり、オンさせた場合の損失PL2は、式(2)となる。例えば、Vsr=-100V、BV1=20V、Ron1=5mΩ、RL=1Ωとした場合、PL1が1600Wであるのに対して、PL2は、50Wとなる。
PL1=BV1×(|Vsr|-BV1)/RL …(1)
PL2=Ron×(|Vsr|/RL)2 …(2)
【0080】
図10は、
図9の回路を配線基板上で形成した場合の構成例を示す回路図である。
図10に示されるように、
図9の回路は、配線基板BD2上に複数の部品を実装することで実現することも可能である。
図10において、チャージ回路CUは、前述した負サージ印加時の
図5の寄生バイポーラトランジスタBTに相当する回路であり、昇圧回路自体は、ドライバDVb1内に搭載される。
図11は、
図7のリレー装置と、
図10に基づくリレー装置との外形例を比較した模式図である。
【0081】
図11に示されるように、
図10に基づくリレー装置(配線基板BD2)では、
図7のリレー装置RLYbと比較して、部品点数が大きく増大するため、装置の小型化が図ることが困難となる。また、
図10におけるpMOSトランジスタMPb1のゲート酸化膜耐圧はダンプサージを考慮して、40V以上のものが必要になるが、一般的なゲート酸化膜耐圧は20Vであるため、ツェナーダイオードZDb2の耐圧を20V以下に設定する必要がある。バッテリ電源電位VBを8V~16V程度として温度特性を加味すると、ツェナーダイオードZDb2の耐圧は、16V~20Vの範囲内に収める必要があり、部品選定が困難となり得る。
【0082】
《実施の形態2の主要な効果》
以上、実施の形態2の方式では、バッテリBATの順接続時で、制御入力信号INのアサート時、昇圧回路CP1bは、チャージ動作およびポンプ動作共に活性状態となる。また、ゲート放電回路DCG1b内のnMOSトランジスタMN16は、ソースが電源[1a]VD1aに結合され、ゲートがpMOSトランジスタMP1および抵抗R12を介して電源[1a]VD1aに結合され、ドレインに昇圧電位が印加された状態であるためオフとなる。これにより、電力用トランジスタQN1(L)はオンとなる。一方、制御入力信号INのネゲート時、nMOSトランジスタMN16は、ドレインに昇圧電位が残存している期間でオフとなり、電力用トランジスタQN1(L)は、当該期間でオンとなる。ただし、電力用トランジスタQN2はオフである。
【0083】
また、バッテリBATの逆接続時、昇圧回路CP1bは非活性状態であり、nMOSトランジスタMN16は、ソースが電源[1a]VD1aに結合され、ゲートがESD保護用ダイオードDe1および抵抗R12を介して電源[3]VD3に結合された状態であるためオンとなる。これにより、電力用トランジスタQN1(L)はオフとなる。さらに、バッテリBATの順接続時で、制御入力信号INのネゲート時で、負サージ印加時、昇圧回路CP1bは、チャージ動作が活性状態となる。nMOSトランジスタMN16は、ソースが電源[1a]VD1aに結合され、ゲートもnMOSトランジスタMN11を介して電源[1a]VD1aに結合されるためオフとなる。これにより、電力用トランジスタQN1(L)はオンとなる。
【0084】
このような方式を用いることで、実施の形態1の場合と同様の効果が得られる。さらに、負サージ印加時に電力用トランジスタQN1(L)をオンに駆動できるように構成することで、負サージ印加時の損失を低減でき、電力用トランジスタQN1(L)に電力用トランジスタQN2よりも低耐圧な構造を適用することが可能になる。その結果、リレー装置の更なる低損失化または小型化が実現可能になる。
【0085】
(実施の形態3)
《実施の形態3の前提となる問題点》
前述したように、
図9に示したゲート放電回路DCG1b内のnMOSトランジスタMN16のゲート電位は、負電位検出信号[1]S_DET1で制御される。バッテリBATが順接続の場合、負電位検出信号[1]S_DET1は、電源[1a]VD1aとほぼ同電位になる。このため、nMOSトランジスタMN16は、オフとなり、電力用トランジスタQN1(L)のゲート電荷を放電できる状態にはなっていない。すなわち、電力用トランジスタQN1(L)をオフに制御できない状態となっている。
【0086】
一方、負荷LDへの通電自体は、電力用トランジスタQN2で制御され、電力用トランジスタQN2は、制御入力信号INに応じて迅速にオン・オフが制御される。このため、電力用トランジスタQN1(L)の状態に関わらず、電力用トランジスタQN2をオフに制御することで、負荷LDへの順方向の通電を遮断することができる。
【0087】
このようなことから、電力用トランジスタQN1(L)をオフに制御できないことで致命的な問題は生じないが、コンデンサ負荷等を用いた場合には問題が生じ得る。例えば、コンデンサ負荷を用いた場合で、制御入力信号INのネゲート時にクランキングが生じた場合、“コンデンサ負荷の電位>電源電位[1a]VD1a”となるため、コンデンサ負荷の電荷が電源[1a]VD1aに抜けてしまい、その後回復しないという問題が生じ得る。
【0088】
図12は、本発明の実施の形態3による半導体装置(リレー装置)において、前提となる問題点の一例を示す波形図である。
図12には、時刻t1で制御入力信号INがネゲートされ、時刻t2~t5の期間でクランキングが発生した場合の電源電位[1a]VD1aと、電力用トランジスタQN1(L),QN2のゲート電位と、出力電位VOの電位変動が示される。
【0089】
時刻t1で制御入力信号INがネゲートされると、電力用トランジスタQN2のゲート電位は、ゲート放電回路DCG2により負荷駆動端子Po2(+)の出力電位VOと同電位になるまで引き下げられる。一方、ゲート放電回路DCG1b内のnMOSトランジスタMN16は、オンしないため、電力用トランジスタQN1(L)のゲート電位は、電力用トランジスタQN1(L)がオン可能な電位に維持される。電力用トランジスタQN1(L)のゲート電位は、厳密には、当該ゲートに結合される各素子のリーク電流により、長期的には、電源電位[1a]VD1aまで下がるが、
図12では、そのリーク電流が無い場合を仮定している。
【0090】
時刻t2でクランキングが発生し、電源電位[1a]VD1aが下がると、負荷駆動端子Po2(+)に結合されたコンデンサ負荷の電荷は、電力用トランジスタQN2の寄生ダイオードDn2と電力用トランジスタQN1(L)のチャネルを経由して、電源[1a]VD1aに抜けてしまう。時刻t4~t5の期間で、電源電位[1a]VD1aは元の電位に復帰する。しかし、コンデンサ負荷の電位(出力電位VO)は、電力用トランジスタQN2がオフであるため、抜けてしまった電荷が再供給されることなく、時刻t3~t4の期間で落ち込んだ電位に維持される。
【0091】
コンデンサ負荷が用いられる例として、リレー装置の下流に、コンデンサ負荷をバックアップ電源とするユニットが存在するような場合が挙げられる。この場合、例えば、下流ユニットが低電圧によって遮断される等のリスクが生じ得る。そこで、後述する実施の形態3のリレー装置(半導体装置)を用いることが有益となる。
【0092】
《リレー装置(実施の形態3)の構成および動作》
図13は、本発明の実施の形態3による半導体装置(リレー装置)の概略構成例を示すブロック図である。
図13に示す半導体装置(リレー装置)RLYcは、
図7に示した構成例と比較して、次の4点が異なっている。1つ目の相違点として、負荷LD2がコンデンサ負荷となっている。2つ目の相違点として、遅延回路DLYが追加され、3つ目の相違点として、ゲート放電回路DCG3が追加される。4つ目の相違点として、詳細は
図14に示すが、負電位検出回路VNDETに電力用トランジスタQN1(L)のゲート電位が入力される。
【0093】
遅延回路DLYは、入力バッファIBFから出力される制御信号INxのネゲートへの遷移(すなわち、制御入力信号INのネゲートへの遷移)をトリガとして、所定の期間アサートされる遅延信号S_DLYを出力する。ゲート放電回路DCG3は、電力用トランジスタQN1(L)のゲートと電源[3]VD3との間に設けられ、遅延回路DLYからの遅延信号S_DLYを受けて、電力用トランジスタQN1(L)のゲート電荷を電源[3]VD3に向けて放電する。
【0094】
《リレー装置(実施の形態3)の主要部の詳細》
図14は、
図13の半導体装置(リレー装置)における主要部の詳細な構成例を示す回路図である。
図15は、
図13における遅延回路の詳細な構成例を示す回路図である。
図14には、
図13に示した負電位検出回路VNDET周りと、昇圧回路(チャージポンプ回路)CP1b周りと、ゲート放電回路DCG1b周りと、ゲート放電回路DCG3周りの構成例が示される。
【0095】
負電位検出回路VNDETc(VNDET)内の負電位判別回路JDGcは、
図9に示した構成例と比較して、さらに、抵抗R12と直列に結合されるnMOSトランジスタMN21と、nMOSトランジスタMN16のゲートと電源[3]VD3との間に設けられるコンデンサC21とを備える。nMOSトランジスタMN21のゲートは、電力用トランジスタQN1(L)のゲートに結合される。ゲート放電回路DCG3は、nMOSトランジスタMN21(および電力用トランジスタQN1(L))のゲートと電源[3]VD3との間に直列に結合される抵抗R21およびnMOSトランジスタMN22を備える。nMOSトランジスタMN22のゲートには、遅延信号S_DLYが印加される。
【0096】
まず、
図14に示される回路の概略を説明する。
図12で述べた問題の要因は、ゲート放電回路DCG1b内のnMOSトランジスタMN16が、バッテリBATの逆接続時にはオンに制御されるが、バッテリBATの順接続時にはオフを維持することにある。その結果、バッテリBATの順接続時には、制御入力信号INがネゲートされても、電力用トランジスタQN1(L)のオンが維持される事態が生じ得るため、クランキング時に電荷抜けが生じてしまう。
【0097】
ここで、nMOSトランジスタMN16がオフを維持するのは、nMOSトランジスタMN16のゲート電位が電源電位[1a]VD1aに追従するためである。一方、クランキングに伴う電源電位[1a]VD1aの変動時に、nMOSトランジスタMN16のゲート電位が、電源電位[1a]VD1aに追従せずにクランキング発生前の電源電位[1a]VD1aを維持する場合を考える。この場合、nMOSトランジスタMN16は、電源電位[1a]VD1aの変動に応じてゲート・ソース間電圧が生じるため、自動的にオンとなる。その結果、電力用トランジスタQN1(L)をオフに制御することができる。
【0098】
そこで、クランキング発生前の負電位検出信号[1]S_DET1の電位(nMOSトランジスタMN16のゲート電位)を維持するコンデンサC21が設けられる。具体的には、nMOSトランジスタ(短絡用トランジスタ)MN16は、制御入力信号INのアサート期間では、ゲート(負電位検出信号[1]S_DET1)に電源電位[1a]VD1aが印加されることでオフとなっている。コンデンサC21は、この制御入力信号INのアサート期間でのnMOSトランジスタMN16のゲート電位を、制御入力信号INのネゲート期間で維持する。
【0099】
ただし、電源電位[1b]VD1bは、電源電位[1a]VD1aの変動に連動するため、仮に、nMOSトランジスタMN21が無い場合、コンデンサC21の電位も電源電位[1b]VD1bに連動してしまい、クランキング発生前の電源電位[1a]VD1aを維持できない。そこで、nMOSトランジスタ(制御用トランジスタ)MN21が設けられる。nMOSトランジスタMN21は、電源[1b]VD1b(ひいては、電源[1a]VD1a(正極電源端子Pi2(+)))とnMOSトランジスタMN16のゲートの間に設けられる。nMOSトランジスタMN21は、制御入力信号INのネゲート期間でオフに制御されることで、nMOSトランジスタMN16のゲートをハイインピーダンス状態に制御する。
【0100】
具体的には、nMOSトランジスタMN21のゲートは、電力用トランジスタQN1(L)のゲートに結合され、当該ゲートと同電位になる。したがって、電源電位[1a]VD1aの変動が生じると、ゲートにクランキング発生前の電源電位[1a]VD1aが印加されているnMOSトランジスタMN16がオンし、電力用トランジスタQN1(L)のゲート電位を、クランキング発生後の変動状態の電源電位[1a]VD1aに制御する。nMOSトランジスタMN21では、変動状態の電源電位[1a]VD1aに連動してソース(電源電位[1b]VD1b)の変動が生じるが、同様にしてゲートも変動するため、オフを維持する。その結果、nMOSトランジスタMN16のゲートは、ハイインピーダンス状態に保たれ、そのゲート電位は、コンデンサC21によってクランキング発生前の電源電位[1a]VD1aに保たれる。
【0101】
一方、例えば、クランキング発生前に電力用トランジスタQN1(L)のゲートが昇圧電位を維持している場合、電力用トランジスタQN1(L)はオンとなっており、nMOSトランジスタMN21もオンとなっている。ここで、前述したように制御入力信号INのネゲート期間でnMOSトランジスタMN21がオフとなるためには、制御入力信号INがアサートレベルからネゲートレベルに遷移する際に、初期状態としてnMOSトランジスタMN21をオフに制御しておく必要がある。
【0102】
そうでない場合、電源電位[1a]VD1aが変動すると、負電位検出信号[1]S_DET1が当該変動状態の電源電位[1a]VD1aへの追従を開始してしまうため、nMOSトランジスタMN16はオンとならず、その結果として、nMOSトランジスタMN21もオンを維持することになり得る。そこで、ゲート放電回路DCG3が設けられる。ゲート放電回路DCG3は、制御入力信号INがアサートレベルからネゲートレベルに遷移する際に、nMOSトランジスタMN21および電力用トランジスタQN1(L)のゲート電位を“VD1a-VF”(VFは、保護ダイオードD2の順方向電圧)に定める。これによって、ゲート放電回路DCG3は、nMOSトランジスタMN21をオフに制御し、加えて、電力用トランジスタQN1(L)もオフに制御する。
【0103】
次に、
図14および
図15に示される回路の詳細について説明する。
図15に示される遅延回路DLYは、nMOSトランジスタMN31~MN33と、pMOSトランジスタMP31~MP34と、抵抗R31~R33と、コンデンサC31~C33と、ダイオードD31と、インバータIV31と、電流源IS31,IS32とを備える。電流源IS31,IS32は、カレントミラー回路やゲートとソースをショートしたデプレッショントランジスタ等で実現される。なお、抵抗R31~R33は、ゲートとソースをショートしたデプレッショントランジスタ等に置き換えても問題ない。
【0104】
電流源IS31、ダイオードD31および抵抗R33は、電源[1b]VD1bの基準となる電源(電源電位)[6]VD6を生成する。nMOSトランジスタMN31およびpMOSトランジスタMP31のゲートには、入力バッファIBFからの制御信号INxが入力される。コンデンサC32,C33、抵抗R32、nMOSトランジスタMN33、pMOSトランジスタMP33,MP34およびインバータIV31は、タイマ回路を構成する。そして、インバータIV31によって遅延信号S_DLYが出力される。インバータIV31は、電源[1b]VD1bと電源[6]VD6との間の信号を、電源[1b]VD1bと電源[3]VD3との間の信号にレベルシフトする機能も備える。
【0105】
このような構成において、制御信号INxは、制御入力信号INのアサートに応じてアサートレベル(この例ではVD3レベル)となる。その結果、nMOSトランジスタMN31はオフとなり、電源[1b]VD1bと電源[6]VD6は同電位になる。すなわち、電源[6]VD6は、所定の電源が生成されていない非活性状態となる。また、pMOSトランジスタMP31はオンとなり、ノードNaは電源[1b]VD1bと同電位になる。
【0106】
制御入力信号INがアサートからネゲートに切り替わると、制御信号INxはネゲートレベル(この例ではVD1bレベル)となり、nMOSトランジスタMN31はオンとなり、同時に、pMOSトランジスタMP31はオフとなる。ただし、この時点では、pMOSトランジスタMP32がオフであるため、ノードNaの電位は、コンデンサC31と抵抗R31で決まる時定数で電源電位[1b]VD1bから電源[3]VD3へと推移する。
【0107】
一方、制御信号INxがアサートレベル(VD3レベル)からネゲートレベル(VD1bレベル)に切り替わった直後では、ノードNaの電位は電源電位[1b]VD1bの近傍である。このため、nMOSトランジスタMN32はオンとなり、ダイオードD31と電流源IS31によって電源[6]VD6が生成される。すなわち、電源[6]VD6は活性状態となる。詳細は後述するが、電源[6]VD6が生成された直後、ノードNbの電位は、電源電位[6]VD6のレベルであるため、pMOSトランジスタMP32はオンであり、コンデンサC31と抵抗R31で決まる時定数とは関係なく、nMOSトランジスタMN32のオンは維持される。
【0108】
コンデンサC32、抵抗R32およびnMOSトランジスタMN33は、ノードNbの電位を初期化するために設けられ、電源[6]VD6が生成された直後に、nMOSトランジスタMN33をオンに制御し、ノードNbの電位を電源電位[6]VD6のレベルに引き下げる。これにより、pMOSトランジスタMP32はオンとなり、前述したように、コンデンサC31および抵抗R31の時定数に関わらず、nMOSトランジスタMN32のオンが維持される。
【0109】
コンデンサC32および抵抗R32で決まる一定時間が経過すると、nMOSトランジスタMN33はオフとなる。その結果、電流源IS32の電流をpMOSトランジスタMP33,MP34でミラーした電流によってコンデンサC33のチャージが始まり、ノードNbの電位は、電源電位[6]VD6から電源電位[1b]VD1bへ推移する。遅延信号S_DLYは、電源[6]VD6の活性化時点から、ノードNbの電位がインバータIV31のしきい値に達するまでの期間でアサートレベルとなり、この期間でゲート放電回路DCG3内のnMOSトランジスタMN22をオンに制御する。
【0110】
ノードNbの電位がインバータIV31のしきい値に達すると、遅延信号S_DLYはネゲートレベルとなり、ゲート放電回路DCG3内のnMOSトランジスタMN22はオフとなる。遅延信号S_DLYのアサート期間の長さは、当該期間内に電力用トランジスタQN1(L)のゲート電荷が放電されるように、ゲート放電回路DCG3内の抵抗R21の抵抗値と併せて適切に設定される。ノードNbの電位がインバータIV31のしきい値を超えて電源電位[1b]VD1bに近づくと、pMOSトランジスタMP32はオフとなる。
【0111】
その結果、ノードNaの電位は、コンデンサC31と抵抗R31で決まる時定数に応じて、電源電位[1b]VD1bから電源電位[3]VD3へ推移し、nMOSトランジスタMN32はオフとなる。これにより、電源[6]VD6は、電源[1b]VD1bと同電位になり、遅延回路DLYの消費電流はゼロとなる。遅延回路DLYは、制御入力信号INがアサートからネゲートへ切り替わった際の一定期間だけ動作すればよい。このため、一定期間の後は、このように電源[6]VD6を非活性化することで消費電流を無くすことが望ましい。
【0112】
図16は、
図14の回路の動作例を示す波形図である。制御入力信号INがネゲートされると、遅延信号S_DLYは、一定時間アサートされる(時刻t1~t3)。電力用トランジスタQN1(L)のゲート電荷は、時刻t1~t3の期間内で放電される必要があり、かつ電力用トランジスタQN2のゲート電荷よりも遅く放電される必要がある。この例では、電力用トランジスタQN1(L)のゲート電荷は、時刻t2で放電され、電力用トランジスタQN2のゲート電荷は、時刻t1後かつ時刻t2前に放電される。この放電順序に関し、仮に、電力用トランジスタQN1(L)が電力用トランジスタQN2よりも先にオフになると、電力用トランジスタQN1(L)と電力用トランジスタQN2の合成抵抗の変動が不連続となり、スイッチングノイズを招く恐れがある。
【0113】
時刻t4~t7の期間は、クランキングによる電源[1a]VD1aの電位変動期間となる。当該電位変動期間において、電力用トランジスタQN1(L)は既に時刻t2でオフになっている(すなわち、ゲートとソースが電源[1a]VD1aに結合されている)ため、コンデンサ負荷の電位(出力電位VO)は、
図12の場合と異なり、電源[1a]VD1aへ抜けない。
【0114】
すなわち、当該電位変動期間において、
図14のnMOSトランジスタMN11およびnMOSトランジスタMN21はオフであるため、負電位検出信号[1]S_DET1は、コンデンサC21により、時刻t1以前のレベル(電位変動前の略電源電位[1a]VD1aレベル)に維持される。これにより、当該電位変動期間では、ゲート放電回路DCG1b内のnMOSトランジスタMN16は、電力用トランジスタQN1(L)のゲート電位が電位変動後の電源電位[1a]VD1aと同電位になるように制御する。
【0115】
なお、このような制御を用いずとも、電力用トランジスタQN1(L)のゲート電位は、ゲート・ドレイン間容量により、ソース電位にある程度は追従する。ただし、電力用トランジスタQN1(L)のゲート・ソース間容量との兼ね合いや、負電位検出信号[2]S_DET2の残留電荷に伴う昇圧回路CP1bのチャージ動作も考えられるため、前述したような制御を行うことが望ましい。
【0116】
《実施の形態3の主要な効果》
以上、実施の形態3の方式では、実施の形態2と同様の動作を行うことに加えて、バッテリBATの順接続時で、制御入力信号INのネゲート時で、クランキング発生時に、コンデンサC21が、nMOSトランジスタMN21がオフの状態でクランキング発生前のnMOSトランジスタMN16のゲート電位を維持する。その結果、nMOSトランジスタMN16は、クランキングによってソース電位が低下するため自動的にオンとなり、これに伴い、電力用トランジスタQN1(L)はオフとなる。なお、バッテリBATの逆接続時、nMOSトランジスタMN21は、オフになり得るが、電源[1b]VD1b側をアノードとする寄生ダイオードDn21が導通するため、実施の形態2の場合と同様の動作となる。
【0117】
このような方式を用いることで、実施の形態2と同様の効果が得られる。さらに、制御入力信号INのネゲート期間で電力用トランジスタQN1(L)をオフに制御することができ、クランキングによって電源電位[1a]VD1aが変動した場合であっても電力用トランジスタQN1(L)のオフを維持することができる。その結果、コンデンサ負荷の電荷抜けを防ぐことが可能になる。なお、ここでは、
図9の構成例に対して各種回路を追加したが、
図4の構成例に対して同様の回路を追加することも可能である。
【0118】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【符号の説明】
【0119】
BAT バッテリ
BT 寄生バイポーラトランジスタ
C コンデンサ
CP 昇圧回路
D ダイオード
DCG ゲート放電回路
Dn 寄生ダイオード
ECU 電子制御装置
GND バッテリ電源(接地電源電位)
IN 制御入力信号
LD 負荷
MCU マイクロコントローラ
MN nMOSトランジスタ
MP pMOSトランジスタ
QN 電力用トランジスタ
R 抵抗
RLY リレー装置
VB バッテリ電源(バッテリ電源電位)
VCL 車両
VD 電源(電源電位)
VNDET 負電位検出回路
VO 出力電位