(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-16
(45)【発行日】2022-02-25
(54)【発明の名称】系統連系システム、連系制御装置及び系統連系方法
(51)【国際特許分類】
H02J 3/40 20060101AFI20220217BHJP
B60L 55/00 20190101ALI20220217BHJP
H02J 3/32 20060101ALI20220217BHJP
H02J 7/34 20060101ALI20220217BHJP
H02J 9/06 20060101ALI20220217BHJP
H02J 7/00 20060101ALN20220217BHJP
【FI】
H02J3/40
B60L55/00
H02J3/32
H02J7/34 G
H02J9/06 120
H02J7/00 P
(21)【出願番号】P 2018146044
(22)【出願日】2018-08-02
【審査請求日】2021-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】西尾 隆平
(72)【発明者】
【氏名】大堀 彰大
(72)【発明者】
【氏名】服部 将之
(72)【発明者】
【氏名】松永 耕治
【審査官】杉田 恵一
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-174450(JP,A)
【文献】特開平10-341533(JP,A)
【文献】特開2009-254192(JP,A)
【文献】特開2013-094026(JP,A)
【文献】特開2013-099204(JP,A)
【文献】特開2013-247841(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/32
H02J 3/40
H02J 7/00
H02J 7/34
H02J 9/06
B60L 53/00
B60L 55/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統との系統連系システムであって、
蓄電池と、
該蓄電池からの電力を交流へ変換する電力変換装置と、
商用電源から負荷へ電力を供給し、前記商用電源が停電した場合に前記電力変換装置から前記負荷へ電力を供給する連系制御装置とを備え、
前記商用電源が復電した場合に、前記電力変換装置は、前記商用電源からの電力の電圧及び周波数が所定の範囲内であるか否かを判定し、
前記商用電源からの電力の電圧及び周波数が前記所定の範囲内である場合に、前記電力変換装置は、前記電力変換装置から前記負荷へ供給している電力の電圧位相を、前記商用電源からの電力の電圧位相に同期させ、
前記商用電源からの電力の電圧又は周波数が前記所定の範囲内ではない場合に、前記電力変換装置は、前記商用電源からの電力の電圧及び周波数が前記所定の範囲内になるまで、位相同期のための処理を待機し、前記負荷への電力供給を続行し、
前記連系制御装置は、
前記電力変換装置から前記負荷へ供給している電力の電圧位相が前記商用電源からの電力の電圧位相に同期した後に、前記商用電源から前記負荷への電力供給を開始し、前記商用電源から前記負荷への電力供給の開始後に、前記電力変換装置から前記負荷への電力供給を停止する
ことを特徴とする系統連系システム。
【請求項2】
前記電力変換装置は、前記電力変換装置から前記負荷へ供給している電力の電圧位相
を前記商用電源からの電力の電圧位相に同期させるために、
前記電力変換装置から前記負荷へ供給している電力の周波数を、前記商用電源からの電力の周波数に合わせ、
電力の周波数が合った後に、前記電力変換装置から前記負荷へ供給している電力のゼロクロス点を、前記商用電源からの電力のゼロクロス点に合わせる
ことを特徴とする請求項
1に記載の系統連系システム。
【請求項3】
電動自動車用の充放電スタンドを更に備え、
前記連系制御装置は、
前記商用電源が停電した場合に、前記電力変換装置及び前記充放電スタンドから前記負荷へ電力を供給する
ことを特徴とする請求項1
又は2に記載の系統連系システム。
【請求項4】
前記連系制御装置は、
前記商用電源が停電した場合に、前記電力変換装置から特定の負荷へ電力を供給し、
前記商用電源が復電した場合に、前記商用電源から前記特定の負荷への電力供給を開始する
ことを特徴とする請求項1乃至
3のいずれか一つに記載の系統連系システム。
【請求項5】
商用電源が停電した場合に
、蓄電池からの電力を
交流へ変換する電力変換装置から負荷へ
電力を供給す
る連系制御装置であって、
前記商用電源が復電した場合に、
前記電力変換装置に、前記商用電源からの電力の電圧及び周波数が所定の範囲内であるか否かを判定させ、
前記商用電源からの電力の電圧及び周波数が前記所定の範囲内である場合に、前記電力変換装置に、前記電力変換装置から前記負荷へ供給している電力の電圧位相を、前記商用電源からの電力の電圧位相に同期させ、
前記商用電源からの電力の電圧又は周波数が前記所定の範囲内ではない場合に、前記電力変換装置に、前記商用電源からの電力の電圧及び周波数が前記所定の範囲内になるまで、位相同期のための処理を待機させ、前記負荷への電力供給を続行させ、
前記電力変換装置から前記負荷へ供給している電力の電圧位相が前記商用電源からの電力の電圧位相に同期した後に、前記商用電源から前記負荷への電力供給を開始し、
前記商用電源から前記負荷への電力供給の開始後に、前記蓄電池からの電力の供給を停止す
ること
を特徴とする連系制御装置。
【請求項6】
電力系統との系統連系方法であって、
蓄電池と、
該蓄電池からの電力を交流へ変換する電力変換装置とを用い、
商用電源から負荷へ電力を供給し、
前記商用電源が停電した場合に、前記電力変換装置から前記負荷へ電力を供給し、
前記商用電源が復電した場合に、前記電力変換装置に、
前記商用電源からの電力の電圧及び周波数が所定の範囲内であるか否かを判定させ、
前記商用電源からの電力の電圧及び周波数が前記所定の範囲内である場合に、前記電力変換装置に、前記電力変換装置から前記負荷へ供給している電力の電圧位相を、前記商用電源からの電力の電圧位相に同期させ、
前記商用電源からの電力の電圧又は周波数が前記所定の範囲内ではない場合に、前記電力変換装置に、前記商用電源からの電力の電圧及び周波数が前記所定の範囲内になるまで、位相同期のための処理を待機させ、前記負荷への電力供給を続行させ、
前記電力変換装置から前記負荷へ供給している電力の電圧位相が前記商用電源からの電力の電圧位相に同期した後に、前記商用電源から前記負荷への電力供給を開始し、
前記商用電源から前記負荷への電力供給を開始した後に、前記電力変換装置から前記負荷への電力供給を停止する
ことを特徴とする系統連系方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、停電時に蓄電池からの電力供給を行い、復電時に商用電源からの電力供給を再開させる系統連系システム、連系制御装置及び系統連系方法に関する。
【背景技術】
【0002】
市場では、ガソリン車又はハイブリッド車からプラグインハイブリッド車(PHEV)又は電気自動車(EV)などの電動自動車への移行が進みつつある。特許文献1には、このような電動自動車を住宅で使用される電気機器に接続し、災害時等の非常時に、電動自動車中の蓄電池を非常用電源として使用するV2H(Vehicle to Home)機器が開示されている。一方で、蓄電池から電力系統への電力流通サービスは、V2Hに留まらず、一般家庭向けから、さらに大きな需要家や電力網に対するサービスであるV2B(Vehicle to Building)又はV2G(Vehicle to Grid)などを総称したV2Xに拡大している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
系統連系システムは、商用電源が停電した場合に、蓄電池から負荷へ電力を供給する。また、商用電源が復電した場合に、系統連系システムは、商用電源から負荷への電力供給を再開させる。従来の系統連系システムでは、商用電源からの電力供給を再開させる際に、蓄電池から負荷への電力供給を停止し、その後、商用電源から負荷への電力供給を開始する。このため、負荷への電力供給が中断するという問題がある。
【0005】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、復電時に電力供給を中断させないようにすることができる系統連系システム、連系制御装置及び系統連系方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る系統連系システムは、電力系統との系統連系システムであって、蓄電池と、該蓄電池からの電力を交流へ変換する電力変換装置と、商用電源から負荷へ電力を供給し、前記商用電源が停電した場合に前記電力変換装置から前記負荷へ電力を供給する連系制御装置とを備え、前記商用電源が復電した場合に、前記電力変換装置は、前記商用電源からの電力の電圧及び周波数が所定の範囲内であるか否かを判定し、前記商用電源からの電力の電圧及び周波数が前記所定の範囲内である場合に、前記電力変換装置は、前記電力変換装置から前記負荷へ供給している電力の電圧位相を、前記商用電源からの電力の電圧位相に同期させ、前記商用電源からの電力の電圧又は周波数が前記所定の範囲内ではない場合に、前記電力変換装置は、前記商用電源からの電力の電圧及び周波数が前記所定の範囲内になるまで、位相同期のための処理を待機し、前記負荷への電力供給を続行し、前記連系制御装置は、前記電力変換装置から前記負荷へ供給している電力の電圧位相が前記商用電源からの電力の電圧位相に同期した後に、前記商用電源から前記負荷への電力供給を開始し、前記商用電源から前記負荷への電力供給の開始後に、前記電力変換装置から前記負荷への電力供給を停止することを特徴とする。
【0007】
本発明においては、系統連系システムは、蓄電池と、電力変換装置と、連系制御装置とを備える。連系制御装置は、商用電源が停電した場合に電力変換装置から負荷へ電力を供給させる。復電時には、連系制御装置は、電力変換装置から負荷へ電力を供給している状態で、商用電源から負荷への電力供給を開始させ、その後、電力変換装置から負荷への電力供給を停止する。このため、復電時に、負荷への電力の供給が中断されること無く、電力の供給源が切り替わる。
【0009】
本発明においては、連系制御装置は、復電時に、電力変換装置から負荷へ供給している電力の電圧位相を、商用電源からの電力の電圧位相に同期させ、同期後に、商用電源から負荷への電力供給を開始させる。位相同期を行うことにより、負荷に対して電圧変動等のストレスを与えることなく商用電源を接続することができる。
本発明においては、電力変換装置は、商用電源からの電力の電圧及び周波数が所定の範囲内にある場合に位相同期を行い、電圧又は周波数が所定の範囲内に無い場合は、位相同期を行わず、負荷への電力供給を続行する。不安定な状態の商用電源から負荷へ電力が供給されることが防止され、電力変換装置から負荷への安定的な電力供給が継続される。
【0010】
本発明に係る系統連系システムは、前記電力変換装置は、前記電力変換装置から前記負荷へ供給している電力の電圧位相を前記商用電源からの電力の電圧位相に同期させるために、前記電力変換装置から前記負荷へ供給している電力の周波数を、前記商用電源からの電力の周波数に合わせ、電力の周波数が合った後に、前記電力変換装置から前記負荷へ供給している電力のゼロクロス点を、前記商用電源からの電力のゼロクロス点に合わせることを特徴とする。
【0011】
本発明においては、電力変換装置は、位相同期を行う際に、電力変換装置からの電力の周波数と商用電源からの電力の周波数とを合わせ、その後、電力変換装置からの電力のゼロクロス点と商用電源からの電力のゼロクロス点とを合わせる。電力の周波数を合わせた後にゼロクロス点を合わせることによって、位相跳躍の発生を抑制した上で、電力変換装置からの電力の電圧位相と商用電源からの電力の電圧位相との同期が可能になる。
【0014】
本発明に係る系統連系システムは、電動自動車用の充放電スタンドを更に備え、前記連系制御装置は、前記商用電源が停電した場合に、前記電力変換装置及び前記充放電スタンドから前記負荷へ電力を供給することを特徴とする。
【0015】
本発明においては、系統連系システムは、電動自動車用の充放電スタンドを更に備える。連系制御装置は、停電時に、電力変換装置及び充放電スタンドから負荷へ電力を供給させる。電動自動車を非常用電源として利用することが可能となる。
【0016】
本発明に係る系統連系システムは、前記連系制御装置は、前記商用電源が停電した場合に、前記電力変換装置から特定の負荷へ電力を供給し、前記商用電源が復電した場合に、前記商用電源から前記特定の負荷への電力供給を開始することを特徴とする。
【0017】
本発明においては、系統連系システムは、停電時に、特定の負荷へ電力を供給し、復電時に、電力の供給を中断することなく、特定の負荷への電力の供給源を商用電源へ切り替える。非常用のエレベータ等の重要な特定の負荷への電力供給を主に行うことにより、商用電源の停電時に供給すべき電力を必要最小限とし、電力を供給できる時間を長くすることができる。
【0018】
本発明に係る連系制御装置は、商用電源が停電した場合に、蓄電池からの電力を交流へ変換する電力変換装置から負荷へ電力を供給する連系制御装置であって、前記商用電源が復電した場合に、前記電力変換装置に、前記商用電源からの電力の電圧及び周波数が所定の範囲内であるか否かを判定させ、前記商用電源からの電力の電圧及び周波数が前記所定の範囲内である場合に、前記電力変換装置に、前記電力変換装置から前記負荷へ供給している電力の電圧位相を、前記商用電源からの電力の電圧位相に同期させ、前記商用電源からの電力の電圧又は周波数が前記所定の範囲内ではない場合に、前記電力変換装置に、前記商用電源からの電力の電圧及び周波数が前記所定の範囲内になるまで、位相同期のための処理を待機させ、前記負荷への電力供給を続行させ、前記電力変換装置から前記負荷へ供給している電力の電圧位相が前記商用電源からの電力の電圧位相に同期した後に、前記商用電源から前記負荷への電力供給を開始し、前記商用電源から前記負荷への電力供給の開始後に、前記蓄電池からの電力の供給を停止することを特徴とする。
【0019】
本発明においては、連系制御装置は、商用電源が停電した場合に、蓄電池からの電力を負荷へ供給する。連系制御装置は、復電時に、蓄電池からの電力を負荷へ供給している状態で、商用電源から負荷への電力供給を開始し、その後、蓄電池からの電力の供給を停止する。このため、復電時に、負荷への電力の供給が中断されること無く、電力の供給源が切り替わる。
【0020】
本発明に係る系統連系方法は、電力系統との系統連系方法であって、蓄電池と、該蓄電池からの電力を交流へ変換する電力変換装置とを用い、商用電源から負荷へ電力を供給し、前記商用電源が停電した場合に、前記電力変換装置から前記負荷へ電力を供給し、前記商用電源が復電した場合に、前記電力変換装置に、前記商用電源からの電力の電圧及び周波数が所定の範囲内であるか否かを判定させ、前記商用電源からの電力の電圧及び周波数が前記所定の範囲内である場合に、前記電力変換装置に、前記電力変換装置から前記負荷へ供給している電力の電圧位相を、前記商用電源からの電力の電圧位相に同期させ、前記商用電源からの電力の電圧又は周波数が前記所定の範囲内ではない場合に、前記電力変換装置に、前記商用電源からの電力の電圧及び周波数が前記所定の範囲内になるまで、位相同期のための処理を待機させ、前記負荷への電力供給を続行させ、前記電力変換装置から前記負荷へ供給している電力の電圧位相が前記商用電源からの電力の電圧位相に同期した後に、前記商用電源から前記負荷への電力供給を開始し、前記商用電源から前記負荷への電力供給を開始した後に、前記電力変換装置から前記負荷への電力供給を停止することを特徴とする。
【0021】
本発明においては、蓄電池と、電力変換装置とを用い、商用電源が停電した場合に、電力変換装置から負荷へ電力を供給する。復電時には、電力変換装置から負荷へ電力を供給している状態で、商用電源から負荷への電力供給を開始し、その後、電力変換装置から負荷への電力供給を停止する。このため、復電時に、負荷への電力の供給が中断されること無く、電力の供給源が切り替わる。
【発明の効果】
【0022】
商用電源の復電時に、負荷への電力供給を中断させることなく商用電源から負荷への電力供給を再開させることが可能となる等、本発明は優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】実施形態1に係る系統連系システムの外観構成の一例を示す模式図である。
【
図2】実施形態1に係る系統連系システムの回路構成の一例を示す模式図である。
【
図3】実施形態1に係る連系盤、蓄電池PCS及び充放電スタンドの通信接続態様の例並びに蓄電池PCS及び充放電スタンドの内部の構成例を示すブロック図である。
【
図4】電力系統が正常である場合の実施形態1に係る系統連系システムによる系統連系の第1例を示す模式図である。
【
図5】電力系統が正常である場合の実施形態1に係る系統連系システムによる系統連系の第2例を示す模式図である。
【
図6】実施形態1に係る系統連系システムによる非常時の自立運転の一例を示す模式図である。
【
図7】実施形態1に係る系統連系システムが停電時に自立運転を開始する処理の手順の例を示すフローチャートである。
【
図8】実施形態1に係る系統連系システムが復電時に行う処理の手順の例を示すフローチャートである。
【
図9】実施形態1に係る蓄電池PCSが実行する位相同期処理の手順の例を示すフローチャートである。
【
図10】実施形態1に係る系統連系システムによる復電時の系統連系の例を示す模式図である。
【
図11】実施形態2に係る系統連系システムの回路構成の一例を示す模式図である。
【
図12】実施形態2に係る連系盤及び蓄電池PCSの通信接続態様の例並びに蓄電池PCSの内部の構成例を示すブロック図である。
【
図13】電力系統が正常である場合の実施形態2に係る系統連系システムによる系統連系の一例を示す模式図である。
【
図14】実施形態2に係る系統連系システムによる非常時の自立運転の一例を示す模式図である。
【
図15】実施形態2に係る系統連系システムが停電時に自立運転を開始する処理の手順の例を示すフローチャートである。
【
図16】実施形態2に係る系統連系システムが復電時に行う処理の手順の例を示すフローチャートである。
【
図17】実施形態2に係る系統連系システムによる復電時の系統連系の例を示す模式図である。
【
図18】実施形態3に係る系統連系システムの回路構成の一例を示す模式図である。
【
図19】電力系統が正常である場合の実施形態3に係る系統連系システムによる系統連系の第1例を示す模式図である。
【
図20】電力系統が正常である場合の実施形態3に係る系統連系システムによる系統連系の第2例を示す模式図である。
【
図21】実施形態3に係る系統連系システムによる非常時の自立運転の一例を示す模式図である。
【
図22】実施形態3に係る系統連系システムが停電時に自立運転を開始する処理の手順の例を示すフローチャートである。
【
図23】実施形態3に係る系統連系システムが復電時に行う処理の手順の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下本発明をその実施の形態を示す図面に基づき具体的に説明する。
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る系統連系システム100の外観構成の一例を示す模式図である。
図1の例では、系統連系システム100は駐車場に設置されており、駐車場は5台分の駐車スペースを有する。系統連系システム100は、駐車場に設置される電動自動車(51、52、53、54、55)用の充放電スタンド41、42、43、44、45と、駐車場に設置される系統連系ユニットとを備える。系統連系システム100は、事業継続計画(BCP)のための機器として提供することができる。系統連系ユニットは、蓄電池を収容する蓄電池盤10、蓄電池PCS(Power Conditioning System)を収容する電力変換盤20、電力系統との系統連系を行う連系制御装置を収容する連系盤30を備える。なお、充放電スタンドの数は5個に限定されない。
図1中には、蓄電池、蓄電池PCS及び連系制御装置は図示していない。蓄電池PCSは、電力変換装置に対応する。
【0025】
電動自動車は、プラグインハイブリッド車(PHEV)又は電気自動車(EV)であり、本明細書では、PHEV又はEVとも称する。充放電スタンド41~45は、電動自動車に搭載されたバッテリ(車載用蓄電池)の充電及び放電を行うことができる。電力変換盤20に収容された蓄電池PCSは、交流から直流及び直流から交流の双方向に電力を変換することができ、蓄電池盤10に収容された蓄電池の充電及び放電を行うことができる。連系盤30に収容された連系制御装置は、電力系統が正常である時には、電力系統と蓄電池PCS及び充放電スタンド41~45との系統連系運転を行う。
【0026】
連系制御装置は、災害等の原因により電力系統が異常である時、例えば停電時に、蓄電池PCS及び充放電スタンド41~45による自立運転を行うことができる。電動自動車の全部又は一部が駐車場に駐車していない場合でもあっても、系統連系ユニットは、蓄電池PCSによって蓄電池の電力を負荷へ供給することにより、電力系統の負荷に対して所要の電力を供給することができる。負荷は、各種の電気機器である。例えば、負荷は、駐車場が設置された施設内に設けられた電気機器である。
【0027】
図2は、実施形態1に係る系統連系システム100の回路構成の一例を示す模式図である。蓄電池盤10は、定置蓄電池11、不図示の制御装置、冷却装置及びヒータ等を収容している。電力変換盤20は、蓄電池PCS21、及び蓄電池PCS21の放熱のための冷却装置(不図示)を収容している。蓄電池PCS21は、不図示の制御装置及び冷却装置等を含んでいる。連系盤30は、連系制御装置36、リモートIO31、開閉部としてのVCB(真空遮断器;Vacuum Circuit Breaker)32、変圧器33、UVR(不足電圧継電器;Under Voltage Relay )34、計器用変圧器35等を備える。
【0028】
連系盤30は、端子台101、102、断路器37、ブレーカ103、104、111~115を備える。端子台101は、高圧引込側の電路(高圧電源線)に設けられている。すなわち、端子台101には、電力系統の降圧トランス85の二次側からの電力線、及び一般負荷に接続される降圧トランス86の一次側からの電力線が接続される。降圧トランス85は、商用電源に接続され、商用電源からの電圧を降圧する。一般負荷は、例えば、災害時に電力が遮断されても、比較的影響が少ない電気機器を含む。
【0029】
端子台102は、高圧引出側の電路(高圧電源線)に設けられている。すなわち、端子台102は、重要負荷に接続される降圧トランス87の一次側からの電力線が接続される。ここで、重要負荷は、災害等の異常時でも電力を継続して供給する必要性がある重要な負荷(重要負荷)である。例えば、重要負荷は、非常用のエレベータ、連続運転が必要な電気機器、建屋の照明又は空調機器などが含まれる。
【0030】
端子台101には、断路器37を介して、VCB32の一方の電極、UVR34、及び計器用変圧器35が接続されている。VCB32は、電極を高真空の容器内に収容し、電流を遮断する際に電極間に発生するアーク放電を構成する物質を高真空内で拡散させてアークを消滅させる遮断器である。
【0031】
計器用変圧器35は、商用電源からの電力の電圧及び周波数を測定し、測定値をUVR34へ入力する。UVR34は、電力系統側の短絡事故、停電などの異常を検出することができる。UVR34は、異常を検出した場合、VCB32へ制御信号を出力し、VCB32の電路を遮断させる。
【0032】
また、系統連系システムを用いて電力需要管理を行う建物には、降圧トランス85の一次側の電力を監視する電力監視ユニット80が設けられている。なお、電力監視ユニット80は、必ずしも必須ではない。また、降圧トランス85が設置されていない場合には、電力監視ユニット80が監視する箇所は適宜設定される。電力監視ユニット80は、OVGR(地絡過電圧継電器;Over Voltage Ground Relay )81、RPR(逆電力継電器;Reverse Power Relay )/UPR(不足電力継電器;Under Power Relay )82、及び電力センサ83を備える。OVGR80は、電力系統の地絡事故の継続検出を行う。RPR/UPR82は、電力系統側への逆潮流又は短絡事故などの異常を検出することができる。OVGR81又はRPR/UPR82で異常を検出した場合にも、VCB32の電路が遮断される。
【0033】
リモートIO31は、電力センサ83で検出した電力(アナログ値)をデジタル値へ変換するAD変換器である。リモートIO31は、変換後の電力(デジタル値)を連系制御装置36へ出力する。
【0034】
VCB32の他方の電極には、電路を介して変圧器33(より具体的には、第1巻線331)が接続されている。変圧器33は、第1巻線331、電路を介してブレーカ103に接続される第2巻線332、電路を介してブレーカ111~115に接続される第3巻線333を備える。
【0035】
すなわち、変圧器33は、三相の三巻線変圧器とすることができる。第1巻線331側の電圧及び電力(皮相電力)は、例えば、6600V、50kVAとすることができる。第2巻線332側の電圧及び電力は、例えば、300V、50kVAとすることができる。第3巻線333側の電圧及び電力は、例えば、210V、50kVAとすることができる。電圧及び電力は、これらの値に限定されない。変圧器33を三巻線変圧器とすることにより、変圧器を二つ設ける場合に比べて省スペース化、軽量化を図ることができる。
【0036】
ブレーカ103には、蓄電池PCS21が接続される。蓄電池PCS21は、交流から直流及び直流から交流の双方向に電力を変換することができ、定置蓄電池11の充電及び放電を行うことができる。
【0037】
ブレーカ104には、第3巻線333の三相のうちの一相の電路が接続される。例えば、105V~210Vの電圧が、蓄電池PCS21に含まれる制御装置及び冷却装置用の電源として、さらに蓄電池盤10内の制御装置、冷却装置及びヒータ用の電源として供給される。
【0038】
ブレーカ111~115それぞれには、充放電スタンド41~45からの電力線が接続される。充放電スタンド41~45は、交流から直流及び直流から交流の双方向に電力を変換することができる変換回路を備え、電動自動車51~55に搭載されたバッテリの充電及び放電を行うことができる。
【0039】
図3は、実施形態1に係る連系盤30、蓄電池PCS21及び充放電スタンド41の通信接続態様の例並びに蓄電池PCS21及び充放電スタンド41の内部の構成例を示すブロック図である。連系盤30は、蓄電池PCS21及び充放電スタンド41と通信を行う通信部38を備えている。通信部38は、連系制御装置36に通信線で接続されている。また、通信部38は、蓄電池PCS21及び充放電スタンド41に通信線で接続されている。連系制御装置36は、通信部38を通じて、蓄電池PCS21及び充放電スタンド41との間で信号を送受信する。
【0040】
蓄電池PCS21は、制御部211と、電力変換部212と、通信部213とを備える。制御部211は、蓄電池PCS21の各部の動作を制御する。電力変換部212は、交流から直流への変換及び直流から交流への変換を行う。通信部213は、通信部38に通信線で接続されている。蓄電池PCS21は、通信部213により、連系制御装置36との間で信号を送受信する。更に、連系盤30は、表示部301を備えている。例えば、表示部301はディスプレイである。表示部301は、蓄電池PCS21及び充放電スタンド41の動作に関する情報、並びに商用電源の電圧等の情報を表示する。
【0041】
充放電スタンド41は、制御部411と、充放電部412と、通信部413と、通知部414とを備える。制御部411は、充放電スタンド41の各部の動作を制御する。充放電部412は、電動自動車51のバッテリの充放電を実行する。通信部413は、通信部38に通信線で接続されている。充放電スタンド41は、通信部413により、連系制御装置36との間で信号を送受信する。
【0042】
通知部414は、電動自動車51のバッテリの充放電に関する情報を通知する。通知部414は、例えば、表示パネル又は表示灯でもよく、あるいは無線通信を介して、ユーザ又は管理者などが使用する端末装置へ通知してもよい。充放電に関する情報は、例えば、充放電の準備中、準備完了、充放電中、充放電完了などの動作状態、バッテリの充電状態(SOC)、満充電にするための所要時間、満充電になるまでの残余時間、放電可能量、充放電に関する料金などの情報を含めることができる。これにより、電動自動車の充放電に関する情報をタイムリーに把握することができる。
【0043】
充放電スタンド42~45の構成は、充放電スタンド41の構成と同様である。充放電スタンド42~45は、充放電スタンド41と同様に、通信部38に通信線で接続されている。通信部38、213及び413並びに充放電スタンド42~45が備える通信部は、例えば、ゲートウェイである。
【0044】
次に、実施形態1に係る系統連系システム100による系統連系方法について説明する。
図4は、電力系統が正常である場合の実施形態1に係る系統連系システム100による系統連系の第1例を示す模式図である。
図4では、一部の電力の流れを矢印で示している。連系制御装置36は、電力系統が正常であって、充電モードが設定されている場合に、商用電源からの電力を充放電スタンド41~45へ供給し、充放電スタンド41~45により電動自動車51~55を充電することができる。これにより、系統連系システム100を電動自動車の急速充電スタンドとして利用することができる。
【0045】
また、図示していないが、電力系統が正常である場合に、商用電源から重要負荷へ電力が供給される。また、電力系統が正常である場合に、商用電源から一般負荷へ電力が供給される。
【0046】
電力系統の負荷を一般負荷と重要負荷との二つの系統に分けることにより、災害等の異常時に供給すべき電力を必要最小限とし、重要負荷へ電力を継続して供給するとともに、重要負荷へ電力を供給できる時間を長くすることができる。重要負荷は、特定の負荷に対応する。
【0047】
図5は、電力系統が正常である場合の実施形態1に係る系統連系システム100による系統連系の第2例を示す模式図である。
図5では、一部の電力の流れを矢印で示している。連系制御装置36は、電力系統が正常であって、エネマネモード(エネルギーマネジメントモード)に設定された状態で、所定箇所の受電点電力が閾値以上である場合、例えば、電力センサ83で検出した電力が閾値以上である場合、閾値以下になるように、充放電スタンド41~45から重要負荷及び一般負荷へ電力を供給させる。又は、連系制御装置36は、蓄電池PCS21に、重要負荷及び一般負荷へ電力を供給させる。これにより、電力のピークカット運転が可能になる。なお、所定箇所の受電点電力が閾値以下である場合は、閾値を超えない範囲で、電力系統から充放電スタンド41~44又は蓄電池PCS21へ電力を供給することができる。
【0048】
図6は、実施形態1に係る系統連系システム100による非常時の自立運転の一例を示す模式図である。
図6では、電力の流れを矢印で示している。連系制御装置36は、電力系統が異常である場合、即ち商用電源の停電時に、VCB32の電路を遮断して商用電源と重要負荷とを切り離す。この状態で、充放電スタンド41~44又は蓄電池PCS21から電力を供給することにより、連系制御装置36による自立運転を可能にすることができる。連系制御装置36は、電力系統が異常である場合に、充放電スタンド41~45又は蓄電池PCS21の少なくとも一方から重要負荷に電力を供給することができる。
【0049】
図7は、実施形態1に係る系統連系システム100が停電時に自立運転を開始する処理の手順の例を示すフローチャートである。以下、ステップをSと略する。UVR34は、商用電源からの電圧に基づいて、商用電源の停電を検出する(S11)。UVR34は、計器用変圧器35が測定した商用電源からの電圧を入力され、入力された電圧が所定の電圧以下となった場合に、商用電源の停電を検出し、VCB32へ、電路を遮断するための制御信号を出力する。VCB32が制御信号に応じて電路を遮断することにより、系統連系システム100は、重要負荷から商用電源及び一般負荷を切り離す(S12)。
【0050】
連系制御装置36は、次に、蓄電池PCS21を停止させる(S13)。S13では、連系制御装置36は、停止のための制御信号を蓄電池PCS21へ出力し、蓄電池PCS21は制御信号に応じて停止する。連系制御装置36は、次に、充放電スタンド41~45を停止させる(S14)。S14では、連系制御装置36は、停止のための制御信号を充放電スタンド41~45へ出力し、充放電スタンド41~45は制御信号に応じて停止する。商用電源の停電時には、蓄電池PCS21及び充放電スタンド41~45は何らかのエラーによって自ら停止している可能性がある。S13及びS14では、蓄電池PCS21又は充放電スタンド41~45が自ら停止している場合であっても、連系制御装置36は、停止のための制御信号を出力することによって、蓄電池PCS21及び充放電スタンド41~45を確実に停止させる。
【0051】
連系制御装置36は、次に、蓄電池PCS21を動作させる(S15)。S15では、連系制御装置36は、自立運転モードでの動作開始のための制御信号を蓄電池PCS21へ出力し、蓄電池PCS21は制御信号に応じて動作を開始する。蓄電池PCS21は、以降、自立運転の動作を行う。連系制御装置36は、UVR34による停電の検出、VCB32による電路の遮断及び蓄電池PCS21の停止を夫々に示す信号を受け付け、これらの信号を全て受け付けた後にS15の処理を行う。蓄電池PCS21が動作を開始することにより、制御用の電力が蓄電池PCS21から充放電スタンド41~45へ供給される。
【0052】
連系制御装置36は、次に、充放電スタンド41~45を動作させる(S16)。S16では、連系制御装置36は、動作開始のための制御信号を充放電スタンド41~45へ出力し、充放電スタンド41~45は制御信号に応じて動作を開始する。系統連系システム100は、以上で自立運転開始の処理を終了する。
【0053】
系統連系システム100が自立運転を開始した後は、
図6に示すように、蓄電池PCS21及び充放電スタンド41~45から重要負荷へ電力が供給される。連系制御装置36が自立運転を行う場合、蓄電池PCS21は電圧制御を行い電圧源として動作する。所要の電力を得るために必要な電流は、電圧源として動作する蓄電池PCS21に充放電スタンド41~44が連系し電流源として動作することにより実現される。停電時に、充放電スタンド41~45から重要負荷に所要の電力を供給することができない場合でも、蓄電池PCS21から重要負荷に電力を供給することができる。このため、系統連系システム100は、全体として、電力系統の重要負荷に対して所要の電力を供給することができる。
【0054】
より具体的には、連系制御装置36は、電力系統が異常であり、充放電スタンド41~45から供給できる電力が重要負荷の容量を超える場合、充放電スタンド41~45から蓄電池PCS21へ余剰電力を供給する。これにより、電動自動車が駐車スペースに駐車している場合、電動自動車の電力を有効利用することができる。
【0055】
また、連系制御装置36は、電力系統が異常であり、充放電スタンド41~45から供給できる電力が重要負荷の容量未満である場合、充放電スタンド41~45及び蓄電池PCS21の両方から重要負荷へ電力を供給する。例えば、重要負荷の容量が50kVAとし、充放電スタンド41~45から全体で30kVAの電力を供給することができる場合には、蓄電池PCS21から20kVAの電力を供給して、変圧器33の高圧側から50kVAの電力を重要負荷へ供給することができる。重要負荷の容量が変化した場合には、重要負荷の容量に適した電力だけを供給することができる。これにより、所要台数の電動自動車の全部又は一部が駐車スペースに駐車していない場合、不足分の電力を蓄電池PCS21から供給することができ、電力系統の重要負荷に対して所要の電力を供給することができる。
【0056】
商用電源が停電した状態から復電した場合、系統連系システム100は、商用電源から重要負荷への電力供給を再開させる。
図8は、実施形態1に係る系統連系システム100が復電時に行う処理の手順の例を示すフローチャートである。UVR34は、商用電源からの電圧に基づいて、商用電源の復電を検出する(S21)。UVR34は、計器用変圧器35が測定した商用電源からの電圧を入力され、入力された電圧が所定の電圧を超過した場合に、商用電源の復電を検出し、連系制御装置36へ、復電の検出に応じた制御信号を出力する。連系制御装置36は、UVR34からの制御信号に応じて、蓄電池PCS21へ、蓄電池PCS21からの電力の電圧位相と商用電源からの電力の電圧位相との同期を開始することを指示する(S22)。例えば、S22では、連系制御装置36は、位相同期開始を指示する制御信号を、蓄電池PCS21へ、通信部38を介して送信する。蓄電池PCS21は、連系制御装置36からの制御信号に応じて、蓄電池PCS21からの電力の電圧位相と商用電源からの電力の電圧位相とを同期させる位相同期処理を実行する。
【0057】
図9は、実施形態1に係る蓄電池PCS21が実行する位相同期処理の手順の例を示すフローチャートである。以下の処理は、主に制御部211によって実行される。蓄電池PCS21は、位相同期開始の指示があるか否かを判定する(S301)。例えば、位相同期開始を指示する制御信号を通信部213で受信している場合は、蓄電池PCS21は、位相同期開始の指示があると判定する。また、位相同期開始を指示する制御信号を通信部213で受信しない場合、又は位相同期開始を取り消す制御信号を通信部213で受信した場合は、蓄電池PCS21は、位相同期開始の指示が無いと判定する。位相同期開始の指示が無い場合は(S301:NO)、蓄電池PCS21は、位相同期処理を終了する。位相同期処理を終了した後は、蓄電池PCS21は、自立運転を続行し、随時S301から処理を繰り返す。
【0058】
位相同期開始の指示がある場合(S301:YES)、蓄電池PCS21は、所定時間、位相同期処理を待機し、自立運転を続行する(S302)。待機時間は、予め設定されており、例えば300秒である。蓄電池PCS21は、次に、商用電源からの電力の電圧及び周波数を取得する(S303)。S303では、例えば、蓄電池PCS21は、計器用変圧器35が測定した電圧及び周波数を入力される。蓄電池PCS21は、商用電源からの電力の電圧及び周波数を測定してもよい。
【0059】
蓄電池PCS21は、次に、商用電源からの電力の電圧及び周波数が所定の範囲内であるか否かを判定する(S304)。例えば、蓄電池PCS21は、商用電源からの電力の電圧が所定の下限電圧を超過し、かつ所定の上限電圧未満であるかを判定する。また、蓄電池PCS21は、商用電源からの電力の周波数が所定の下限周波数を超過し、かつ所定の上限周波数未満であるかを判定する。電圧及び周波数の範囲は、電力系統が正常である場合に商用電源から安定的に供給される電力の電圧及び周波数の範囲であり、予め設定されている。例えば、下限電圧は、UVR34の動作のトリガとなる電圧と同一である。
【0060】
商用電源からの電力の電圧又は周波数が所定の範囲内ではない場合は(S304:NO)、蓄電池PCS21は、同期範囲外を示す情報を表示部301に表示する(S305)。例えば、蓄電池PCS21は、通信部213から、同期範囲外を示す情報を表示部301へ送信し、表示部301は、通信部38を介して蓄電池PCS21からの情報を受信し、「同期範囲外」という文字画像を表示する。蓄電池PCS21は、次に、位相同期開始の指示があるか否かを判定する(S306)。位相同期開始の指示が無い場合は(S306:NO)、蓄電池PCS21は、位相同期処理を終了する。位相同期処理を終了した後は、蓄電池PCS21は、自立運転を続行し、随時S301から処理を繰り返す。
【0061】
位相同期開始の指示がある場合(S306:YES)、蓄電池PCS21は、処理をS303へ戻す。S303~S306の処理を繰り返すことにより、蓄電池PCS21は、商用電源からの電力の電圧又は周波数が所定の範囲内になるまで位相同期を待機して自立運転を続行する。自立運転を行っている状態では、蓄電池PCS21は、重要負荷への電力供給を続行する。このとき、蓄電池PCS21は、蓄電池PCS21からの電力の周波数を、自立運転の状態で維持する。復電したものの電力系統が不安定な場合に、商用電源からの電力の電圧又は周波数が所定範囲を逸脱する。蓄電池PCS21が位相同期を待機して自立運転を続行している間に電力系統が安定した場合は、商用電源からの電力の電圧及び周波数は、所定の範囲内で安定し得る。蓄電池PCS21が位相同期を待機して自立運転を続行することにより、不安定な状態の商用電源が重要負荷に接続されることが防止され、重要負荷への安定的な電力供給が継続される。
【0062】
商用電源からの電力の電圧及び周波数が所定の範囲内である場合は(S304:YES)、蓄電池PCS21は、商用電源からの電圧のゼロクロス点と蓄電池PCS21からの電圧のゼロクロス点との差の値が閾値以下であるか否かを判定する(S307)。ゼロクロス点は、交流電圧の値がゼロになる瞬間であり、交流電圧の正負が反転する瞬間である。S305では、蓄電池PCS21は、例えば、ゼロクロス点の時刻を測定し、測定した時刻の差を計算する。閾値は予め設定されている。
【0063】
ゼロクロス点の差の値が閾値を超過している場合は(S307:NO)、蓄電池PCS21は、商用電源からの電力の周波数が基本周波数未満であるか否かを判定する(S308)。基本周波数は、予め定められている。例えば、基本周波数は、50Hz又は60Hzである。
【0064】
商用電源からの電力の周波数が基本周波数未満である場合は(S308:YES)、蓄電池PCS21は、蓄電池PCS21からの電力の周波数を商用電源からの電力の周波数よりも所定量増加させる(S309)。周波数を増加させる所定量は、基本周波数よりも十分小さい値に予め定められている。所定量は、例えば、0.02Hzである。蓄電池PCS21は、S309の処理により、商用電源からの電力の周波数が比較的低いことに応じて、蓄電池PCS21からの電力の周波数を若干増加させて、周波数が所定の範囲から外れないようにする。
【0065】
商用電源からの電力の周波数が基本周波数以上である場合は(S308:NO)、蓄電池PCS21は、蓄電池PCS21からの電力の周波数を商用電源からの電力の周波数よりも所定量減少させる(S310)。周波数を減少させる所定量は、基本周波数よりも十分小さい値に予め定められており、例えば、0.02Hzである。蓄電池PCS21は、S310の処理により、商用電源からの電力の周波数が比較的高いことに応じて、蓄電池PCS21からの電力の周波数を若干減少させて、周波数が所定の範囲から外れないようにする。S309又はS310の処理が終了した後は、蓄電池PCS21は、処理をS306へ戻す。
【0066】
ゼロクロス点の差の値が閾値以下である場合は(S307:YES)、蓄電池PCS21は、蓄電池PCS21からの電力の周波数を商用電源からの電力の周波数に合わせる(S311)。蓄電池PCS21は、次に、蓄電池PCS21からの電圧のゼロクロス点を、商用電源からの電圧のゼロクロス点に合わせる(S312)。制御部211は、正弦波をなす電圧の時間変化を規定したテーブルを予め記憶している。S312では、蓄電池PCS21は、商用電源からの電圧のゼロクロス点の時点で、テーブルのゼロクロス点に対応するデータを読み込み、蓄電池PCS21からの電圧のゼロクロス点を、商用電源からの電圧のゼロクロス点にロックする。
【0067】
商用電源からの電圧のゼロクロス点と蓄電池PCS21からの電圧のゼロクロス点との差が大きい状態でゼロクロス点を合わせた場合は、位相跳躍が発生する。S307~S312の処理では、ゼロクロス点の差が小さい状態でゼロクロス点を合わせることによって、位相跳躍の発生を抑制した上で、蓄電池PCS21からの電力の電圧位相と商用電源からの電力の電圧位相との同期が可能となる。また、商用電源からの電力の周波数と蓄電池PCS21からの電力の周波数とが大きく異なる場合でも、位相跳躍が発生する。S311~S312の処理では、電力の周波数を合わせた後に、ゼロクロス点を合わせることによって、位相跳躍の発生を抑制した上で、蓄電池PCS21からの電力の電圧位相と商用電源からの電力の電圧位相との同期が可能となる。
【0068】
蓄電池PCS21は、次に、位相同期が完了したことを連系制御装置36へ通知する(S313)。例えば、蓄電池PCS21は、通信部213から、位相同期完了を示す信号を連系制御装置36へ送信する。蓄電池PCS21は、次に、電力変換部212へ入力される電圧を制御する電圧コントローラの入力ゲインをゼロにする(S314)。
【0069】
自立運転時は、蓄電池PCS21は、電圧コントローラにより電圧制御を行っている。商用電源から電力が供給される状態では、電圧は商用電源によって固定される。S314では、電圧コントローラの入力ゲインをゼロにすることにより、蓄電池PCS21は、電圧の制御を停止する。固定された電圧を蓄電池PCS21が制御しようとして蓄電池PCS21による電圧制御が暴走することが防止される。位相同期が完了した後にS314の処理が行われるので、電圧制御の停止によって蓄電池PCS21からの電圧と商用電源からの電圧とが大きくずれることはない。蓄電池PCS21は、以上で位相同期処理を終了する。
【0070】
連系制御装置36は、S22の後、位相同期が完了したか否かを判定する(S23)。例えば、通信部38を通じて位相同期完了を示す信号を受信した場合は、連系制御装置36は、位相同期が完了したと判定する。位相同期完了を示す信号の受信が無い場合は、連系制御装置36は、位相同期が完了していないと判定する。位相同期が完了していない場合は(S23:NO)、連系制御装置36は、UVR34が商用電源の停電を検出したか否かを判定する(S24)。例えば、連系制御装置36は、停電を示す信号をUVR34から受け付けた場合に、UVR34が商用電源の停電を検出したと判定する。停電の検出が無い場合は(S24:NO)、連系制御装置36は、処理をS23へ戻す。
【0071】
停電が検出された場合は(S24:YES)、連系制御装置36は、蓄電池PCS21への位相同期開始の指示を取り消す(S25)。S25では、例えば、連系制御装置36は、位相同期開始を指示する制御信号の送信を停止するか、又は、通信部38を通じて、位相同期開始を取り消す制御信号を蓄電池PCS21へ送信する。S25の処理に応じて、蓄電池PCS21は、位相同期処理を中止する。S25の処理の後、連系制御装置36は、商用電源からの電力供給を再開させることなく、処理を終了する。このように、蓄電池PCS21が位相同期処理を実行している最中に再度停電した場合、連系制御装置36は、蓄電池PCS21に位相同期処理を中止させる。この場合、商用電源からの電力供給は再開されず、系統連系システム100は、自立運転を続行する。
【0072】
位相同期が完了した場合(S23:YES)、連系制御装置36は、充放電スタンド41~45を停止させる(S26)。S26では、連系制御装置36は、通信部38を通じて、停止のための制御信号を充放電スタンド41~45へ出力する。充放電スタンド41~45は、制御信号に応じて停止する。
【0073】
連系制御装置36は、次に、VCB32を投入し、商用電源を重要負荷へ接続させる(S27)。S27では、連系制御装置36は、VCB32へ、電路を接続するための制御信号を出力する。VCB32は、制御信号に応じて、電路を接続する。VCB32が電路を接続することにより、商用電源は重要負荷へ接続される。連系制御装置36は、次に、蓄電池PCS21を停止させる(S28)。S25では、連系制御装置36は、通信部38を通じて、停止のための制御信号を蓄電池PCS21へ出力する。蓄電池PCS21は、制御信号に応じて停止する。系統連系システム100は、以上で復電時の処理を終了する。
【0074】
図10は、実施形態1に係る系統連系システム100による復電時の系統連系の例を示す模式図である。系統連系システム100により、復電時には、商用電源が重要負荷へ接続され、商用電源から重要負荷へ電力が供給されるようになる。S21~S28の処理では、系統連系システム100は、蓄電池PCS21から重要負荷へ電力を供給している状態で、商用電源を重要負荷へ接続させ、その後、蓄電池PCS21を停止する。このため、重要負荷への電力の供給が中断されることが無い。即ち、蓄電池PCS21から重要負荷へ電力を供給している状態から、無瞬断で、商用電源から重要負荷へ電力を供給している状態へ切り替わる。このようにして、商用電源から重要負荷への電力供給が再開される。
【0075】
また、S21~S28の処理では、位相同期が行われた後に、商用電源が重要負荷へ接続される。蓄電池PCS21から重要負荷へ電力を供給している状態で商用電源が重要負荷へ接続されたときは、蓄電池PCS21からの電力と商用電源からの電力が同時に重要負荷へ供給される。位相同期を行うことにより、重要負荷に対して電圧変動等のストレスを与えることなく商用電源を接続することができる。両方の電力を同時に重要負荷へ供給する状態から蓄電池PCS21を停止することにより、電力の供給を中断することなく、重要負荷への電力の供給源を切り替えることが可能となる。
【0076】
S21~S28の処理が終了した後、連系制御装置36は、系統連系を行うべく、充放電スタンド41~45及び蓄電池PCS21を再起動することができる。蓄電池PCS21は、以降、系統連系の動作を行う。その後、系統連系システム100は、
図4又は
図5を用いて説明したような系統連系を実行することができる。なお、S21~S28の処理では、商用電源から重要負荷への電力供給を開始する前に充放電スタンド41~45を停止しているが、連系制御装置36は、充放電スタンド41~45を停止する処理を行う事無く復電時の処理を行ってもよい。この場合は、充放電スタンド41~45が停止することなく、重要負荷への電力の供給源が切り替わる。
【0077】
本実施形態では、電力系統の連系を6600Vの高圧で行う例を示したが、系統連系システム100は、低圧で連系する形態であってもよい。低圧とする場合は、50kVA未満とする必要があるので、変圧器33の第1巻線331側の電圧及び電力(皮相電力)は、例えば、210V、49kVAとすることができ、第2巻線332側の電圧及び電力(皮相電力)は、例えば、300V、49kVAとすることができ、第3巻線333側の電圧及び電力(皮相電力)は、例えば、210V、49kVAとすることができる。また、変圧器は、三巻線変圧器に限定されるものではなく、二巻線変圧器を2つ備える構成でもよい。
【0078】
なお、系統連系システム100は、充放電スタンド41~45の代わりに、又は充放電スタンド41~45に追加して、太陽電池等の電力の供給手段を備えていてもよい。この形態においても、系統連系システム100は、停電時に、蓄電池PCS21から重要負荷に電力を供給することができ、復電時に、電力の供給を中断することなく、重要負荷への電力の供給源を商用電源へ切り替えることができる。
【0079】
(実施形態2)
実施形態2においては、充放電スタンド41~45を備えていない系統連系システム100を示す。実施形態1には、駐車場に設置された系統連系システム100の例を示したが、実施形態2に係る系統連系システム100は、例えば、建物内に設置されている。
【0080】
図11は、実施形態2に係る系統連系システム100の回路構成の一例を示す模式図である。系統連系システム100は、実施形態1と比べて、充放電スタンド41~45を備えていない。連系盤30は、実施形態1と比べて、ブレーカ111~115を備えていない。また、連系盤30は、三巻線変圧器である変圧器33を備えておらず、二巻線変圧器である変圧器302及び変圧器303を備えている。変圧器302の高圧側は、電路を介してVCB32に接続される。変圧器302の低圧側は、電路を介してブレーカ103に接続される。変圧器303は、変圧器302の高圧側とブレーカ104との間に接続される。蓄電池PCS21へ供給される電力及び蓄電池PCS21から供給される電力は、変圧器302で変圧される。変圧器303で変圧された電力は、蓄電池PCS21に含まれる制御装置及び冷却装置用の電源として、さらに蓄電池盤10内の制御装置、冷却装置及びヒータ用の電源として供給される。
【0081】
連系盤30のその他の部分の構成は、実施形態1と同様である。蓄電池盤10、電力変換盤20、電力監視ユニット80、降圧トランス85、86及び87の構成は、実施形態1と同様である。負荷は、建物内に設けられている電気機器である。一般負荷は、例えば、電気機器の中で、災害時に電力が遮断されても比較的影響が少ない電気機器である。重要負荷は、災害等の異常時でも電力を継続して供給する必要性がある電気機器である。例えば、重要負荷は、非常用のエレベータ、又は連続運転が必要な電気機器である。
【0082】
図12は、実施形態2に係る連系盤30及び蓄電池PCS21の通信接続態様の例並びに蓄電池PCS21の内部の構成例を示すブロック図である。実施形態1と同様に、連系盤30は、通信部38を備えている。通信部38は、連系制御装置36に通信線で接続されており、また、蓄電池PCS21に通信線で接続されている。蓄電池PCS21の構成は、実施形態1と同様である。
【0083】
図13は、電力系統が正常である場合の実施形態2に係る系統連系システム100による系統連系の一例を示す模式図である。
図13では、一部の電力の流れを矢印で示している。連系制御装置36は、電力系統が正常である場合、商用電源からの電力を蓄電池PCS21へ供給し、蓄電池PCS21に定置蓄電池11を充電させることができる。連系制御装置36は、所定箇所の受電点電力が閾値以上である場合、閾値以下になるように、蓄電池PCS21に、重要負荷及び一般負荷へ電力を供給させる。所定箇所の受電点電力が閾値以下である場合は、閾値を超えない範囲で、電力系統から蓄電池PCS21へ電力を供給することができる。また、系統連系システム100は、電力系統が正常である場合に、商用電源から一般負荷及び重要負荷へ電力が供給されるように系統連系を行うことができる。
【0084】
図14は、実施形態2に係る系統連系システム100による非常時の自立運転の一例を示す模式図である。
図14では、電力の流れを矢印で示している。連系制御装置36は、電力系統が異常である場合、即ち商用電源の停電時に、VCB32の電路を遮断して商用電源と重要負荷とを切り離す。これにより、連系制御装置36による自立運転を可能にすることができる。連系制御装置36は、電力系統が異常である場合に、蓄電池PCS21から重要負荷へ電力を供給する。
【0085】
図15は、実施形態2に係る系統連系システム100が停電時に自立運転を開始する処理の手順の例を示すフローチャートである。UVR34は、商用電源からの電圧に基づいて、商用電源の停電を検出する(S41)。UVR34が電路を遮断するための制御信号をVCB32へ出力し、VCB32が電路を遮断することにより、系統連系システム100は、重要負荷から商用電源及び一般負荷を切り離す(S42)。
【0086】
連系制御装置36は、次に、蓄電池PCS21を停止させる(S43)。S43では、連系制御装置36は、停止のための制御信号を蓄電池PCS21へ出力し、蓄電池PCS21は制御信号に応じて停止する。連系制御装置36は、次に、蓄電池PCS21を動作させる(S44)。S44では、連系制御装置36は、自立運転モードでの動作開始のための制御信号を蓄電池PCS21へ出力し、蓄電池PCS21は制御信号に応じて動作を開始する。蓄電池PCS21は、以降、自立運転の動作を行う。連系制御装置36は、UVR34による停電の検出、VCB32による電路の遮断及び蓄電池PCS21の停止を夫々に示す信号を受け付け、これらの信号を全て受け付けた後にS44の処理を行う。系統連系システム100は、以上で自立運転開始の処理を終了する。
【0087】
系統連系システム100が自立運転を開始した後は、
図14に示すように、蓄電池PCS21から重要負荷へ電力が供給される。連系制御装置36が自立運転を行う場合、蓄電池PCS21は電圧制御を行い電圧源として動作する。このようにして、系統連系システム100は、停電時に、蓄電池PCS21から電力を供給することにより、重要負荷に対して所要の電力を供給することができる。
【0088】
図16は、実施形態2に係る系統連系システム100が復電時に行う処理の手順の例を示すフローチャートである。UVR34は、商用電源からの電圧に基づいて、商用電源の復電を検出する(S51)。UVR34は、連系制御装置36へ、復電の検出に応じた制御信号を出力し、連系制御装置36は、蓄電池PCS21へ、蓄電池PCS21からの電力の電圧位相と商用電源からの電力の電圧位相との同期を開始することを指示する(S52)。蓄電池PCS21は、蓄電池PCS21からの電力の電圧位相と商用電源からの電力の電圧位相とを同期させる位相同期処理を実行する。位相同期処理の内容は、実施形態1と同様である。蓄電池PCS21は、位相同期が完了した場合に、位相同期が完了したことを連系制御装置36へ通知する。
【0089】
連系制御装置36は、S52の後、位相同期が完了したか否かを判定する(S53)。例えば、通信部38を通じて位相同期完了を示す信号を受信した場合は、連系制御装置36は、位相同期が完了したと判定する。位相同期が完了していない場合は、連系制御装置36は、UVR34が商用電源の停電を検出したか否かを判定する(S54)。停電の検出が無い場合は(S54:NO)、連系制御装置36は、処理をS53へ戻す。
【0090】
停電が検出された場合は(S54:YES)、連系制御装置36は、蓄電池PCS21への位相同期開始の指示を取り消す(S55)。S55の処理に応じて、蓄電池PCS21は、位相同期処理を中止する。S55の処理の後、連系制御装置36は、商用電源からの電力供給を再開させることなく、処理を終了する。このように、蓄電池PCS21が位相同期処理を実行している最中に再度停電した場合、商用電源からの電力供給は再開されず、系統連系システム100は、自立運転を続行する。
【0091】
位相同期が完了した場合(S53:YES)、連系制御装置36は、VCB32を投入し、商用電源を重要負荷へ接続させる(S56)。S56では、連系制御装置36は、VCB32へ、電路を接続するための制御信号を出力し、VCB32は、電路を接続する。これにより、商用電源は重要負荷へ接続される。連系制御装置36は、次に、蓄電池PCS21を停止させる(S57)。系統連系システム100は、以上で復電時の処理を終了する。
【0092】
図17は、実施形態2に係る系統連系システム100による復電時の系統連系の例を示す模式図である。系統連系システム100により、復電時には、商用電源が重要負荷へ接続され、商用電源から重要負荷へ電力が供給されるようになる。S51~S57の処理では、系統連系システム100は、蓄電池PCS21から重要負荷へ電力を供給している状態から、無瞬断で、商用電源から重要負荷へ電力を供給している状態へ切り替わる。このようにして、商用電源から重要負荷への電力供給が再開される。
【0093】
S51~S57の処理が終了した後、連系制御装置36は、系統連系を行うべく、蓄電池PCS21を再起動することができる。蓄電池PCS21は、以降、系統連系の動作を行う。その後、系統連系システム100は、
図13を用いて説明したような系統連系を実行することができる。
【0094】
以上のように、実施形態2においても、系統連系システム100は、停電時に、蓄電池PCS21から重要負荷に電力を供給し、復電時に、電力の供給を中断することなく、重要負荷への電力の供給源を商用電源へ切り替えることができる。なお、実施形態2では、二巻線変圧器である変圧器302及び変圧器303の代わりに、三巻線変圧器を備えてもよい。また、系統連系システム100は、複数の蓄電池盤10及び電力変換盤20を備え、複数の蓄電池PCS21から電力を供給する形態であってもよい。
【0095】
(実施形態3)
実施形態3においては、産業用の系統連系システム100の例を示す。実施形態3に係る系統連系システム100は、FEMS(工場エネルギー管理システム;Factory Energy Management System)の一部を構成する。系統連系システム100は、工場内に設置されている。
【0096】
図18は、実施形態3に係る系統連系システム100の回路構成の一例を示す模式図である。連系盤30、蓄電池盤10、電力変換盤20、電力監視ユニット80、降圧トランス85及び87の構成は、実施形態2と同様である。系統連系システム100は、実施形態2と比べて、降圧トランス86を備えていない。降圧トランス87は、負荷88に接続されている。負荷88は、工場に設けられている電気機器である。例えば、負荷88は、工場の設備機器又は照明である。
【0097】
連系盤30及び蓄電池PCS21の通信接続態様並びに蓄電池PCS21の内部の構成は、実施形態2と同様である。蓄電池PCS21は、動作している場合に、動作していることを示す信号を、通信部213から送信する。連系制御装置36は、蓄電池PCS21が動作していることを示す信号を、通信部38を通じて受信する。
【0098】
図19は、電力系統が正常である場合の実施形態3に係る系統連系システム100による系統連系の第1例を示す模式図である。
図19では、一部の電力の流れを矢印で示している。連系制御装置36は、電力系統が正常である場合に、商用電源から負荷88へ電力が供給されるように系統連系を行う。
【0099】
図20は、電力系統が正常である場合の実施形態3に係る系統連系システム100による系統連系の第2例を示す模式図である。
図20では、一部の電力の流れを矢印で示している。連系制御装置36は、蓄電池PCS21に、負荷88へ電力を供給させる。また、連系制御装置36は、商用電源からの電力を蓄電池PCS21へ供給し、蓄電池PCS21に定置蓄電池11を充電させることができる。
【0100】
図21は、実施形態3に係る系統連系システム100による非常時の自立運転の一例を示す模式図である。
図21では、電力の流れを矢印で示している。連系制御装置36は、電力系統が異常である場合、即ち商用電源の停電時に、VCB32の電路を遮断して商用電源と重要負荷とを切り離す。これにより、連系制御装置36による自立運転を可能にすることができる。連系制御装置36は、電力系統が異常である場合に、蓄電池PCS21から重要負荷へ電力を供給する。
【0101】
図22は、実施形態3に係る系統連系システム100が停電時に自立運転を開始する処理の手順の例を示すフローチャートである。UVR34は、商用電源からの電圧に基づいて、商用電源の停電を検出する(S61)。UVR34が電路を遮断するための制御信号をVCB32へ出力し、VCB32が電路を遮断することにより、系統連系システム100は、負荷88から商用電源を切り離す(S62)。
【0102】
連系制御装置36は、次に、蓄電池PCS21を停止させる(S63)。S63では、連系制御装置36は、停止のための制御信号を蓄電池PCS21へ出力し、蓄電池PCS21は制御信号に応じて停止する。連系制御装置36は、次に、蓄電池PCS21を動作させる(S64)。S64では、連系制御装置36は、自立運転モードでの動作開始のための制御信号を蓄電池PCS21へ出力し、蓄電池PCS21は制御信号に応じて動作を開始する。蓄電池PCS21は、以降、自立運転の動作を行う。連系制御装置36は、UVR34による停電の検出、VCB32による電路の遮断及び蓄電池PCS21の停止を夫々に示す信号を受け付け、これらの信号を全て受け付けた後にS64の処理を行う。系統連系システム100は、以上で自立運転開始の処理を終了する。
【0103】
系統連系システム100が自立運転を開始した後は、
図21に示すように、蓄電池PCS21から負荷88へ電力が供給される。連系制御装置36が自立運転を行う場合、蓄電池PCS21は電圧制御を行い電圧源として動作する。このようにして、系統連系システム100は、停電時に、蓄電池PCS21から電力を供給することにより、負荷88に対して所要の電力を供給することができる。従って、停電時でも、工場内の負荷88へ電力が供給され、工場の操業の停止が防止される。
【0104】
図23は、実施形態3に係る系統連系システム100が復電時に行う処理の手順の例を示すフローチャートである。UVR34は、商用電源からの電圧に基づいて、商用電源の復電を検出する(S71)。次に、連系制御装置36は、蓄電池PCS21へ、蓄電池PCS21からの電力の電圧位相と商用電源からの電力の電圧位相との同期を開始することを指示する(S72)。蓄電池PCS21は、蓄電池PCS21からの電力の電圧位相と商用電源からの電力の電圧位相とを同期させる位相同期処理を実行する。位相同期処理の内容は、実施形態1及び2と同様である。蓄電池PCS21は、位相同期が完了した場合に、位相同期が完了したことを連系制御装置36へ通知する。
【0105】
連系制御装置36は、S72の後、位相同期が完了したか否かを判定する(S73)。位相同期が完了していない場合は、連系制御装置36は、UVR34が商用電源の停電を検出したか否かを判定する(S74)。停電の検出が無い場合は(S74:NO)、連系制御装置36は、処理をS73へ戻す。停電が検出された場合は(S74:YES)、連系制御装置36は、蓄電池PCS21への位相同期開始の指示を取り消す(S75)。S75の処理に応じて、蓄電池PCS21は、位相同期処理を中止する。S75の処理の後、連系制御装置36は、商用電源からの電力供給を再開させることなく、処理を終了する。このように、位相同期処理の最中に再度停電した場合、商用電源からの電力供給は再開されず、系統連系システム100は、自立運転を続行する。
【0106】
位相同期が完了した場合(S73:YES)、連系制御装置36は、VCB32を投入し、商用電源を負荷88へ接続させる(S76)。S76では、VCB32が電路を接続することにより、商用電源は負荷88へ接続される。連系制御装置36は、次に、蓄電池PCS21を停止させる(S77)。系統連系システム100は、以上で復電時の処理を終了する。
【0107】
復電時の処理が終了した後は、
図19に示すように、商用電源が負荷88へ接続され、商用電源から負荷88へ電力が供給される。S71~S77の処理では、系統連系システム100は、蓄電池PCS21から負荷88へ電力を供給している状態から、無瞬断で、商用電源から負荷88へ電力を供給している状態へ切り替わる。このようにして、商用電源から負荷88への電力供給が再開される。
【0108】
S51~S57の処理が終了した後、連系制御装置36は、系統連系を行うべく、蓄電池PCS21を再起動することができる。蓄電池PCS21は、以降、系統連系の動作を行う。その後、系統連系システム100は、
図20を用いて説明したような系統連系を実行することができる。
【0109】
以上のように、実施形態3においても、系統連系システム100は、停電時に、蓄電池PCS21から負荷88へ電力を供給し、復電時に、電力の供給を中断することなく、負荷88への電力の供給源を商用電源へ切り替えることができる。従って、復電時に、工場内の負荷88への電力供給が途切れることが無く、工場の操業の中断が防止される。なお、実施形態3では、二巻線変圧器である変圧器302及び変圧器303の代わりに、三巻線変圧器を備えてもよい。また、系統連系システム100は、複数の蓄電池盤10及び電力変換盤20を備え、複数の蓄電池PCS21から電力を供給する形態であってもよい。
【0110】
本発明は上述した実施の形態の内容に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。即ち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0111】
10 蓄電池盤
11 定置蓄電池
20 電力変換盤
21 蓄電池PCS(電力変換装置)
30 連系盤
32 VCB
33 変圧器
34 UVR
36 連系制御装置
41、42、43、44、45 充放電スタンド
51、52、53、54、55 電動自動車
100 系統連系システム