IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 公益財団法人鉄道総合技術研究所の特許一覧

特許7026030トンネル緩衝工の開口部調整装置とその開口部調整方法
<>
  • 特許-トンネル緩衝工の開口部調整装置とその開口部調整方法 図1
  • 特許-トンネル緩衝工の開口部調整装置とその開口部調整方法 図2
  • 特許-トンネル緩衝工の開口部調整装置とその開口部調整方法 図3
  • 特許-トンネル緩衝工の開口部調整装置とその開口部調整方法 図4
  • 特許-トンネル緩衝工の開口部調整装置とその開口部調整方法 図5
  • 特許-トンネル緩衝工の開口部調整装置とその開口部調整方法 図6
  • 特許-トンネル緩衝工の開口部調整装置とその開口部調整方法 図7
  • 特許-トンネル緩衝工の開口部調整装置とその開口部調整方法 図8
  • 特許-トンネル緩衝工の開口部調整装置とその開口部調整方法 図9
  • 特許-トンネル緩衝工の開口部調整装置とその開口部調整方法 図10
  • 特許-トンネル緩衝工の開口部調整装置とその開口部調整方法 図11
  • 特許-トンネル緩衝工の開口部調整装置とその開口部調整方法 図12
  • 特許-トンネル緩衝工の開口部調整装置とその開口部調整方法 図13
  • 特許-トンネル緩衝工の開口部調整装置とその開口部調整方法 図14
  • 特許-トンネル緩衝工の開口部調整装置とその開口部調整方法 図15
  • 特許-トンネル緩衝工の開口部調整装置とその開口部調整方法 図16
  • 特許-トンネル緩衝工の開口部調整装置とその開口部調整方法 図17
  • 特許-トンネル緩衝工の開口部調整装置とその開口部調整方法 図18
  • 特許-トンネル緩衝工の開口部調整装置とその開口部調整方法 図19
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-16
(45)【発行日】2022-02-25
(54)【発明の名称】トンネル緩衝工の開口部調整装置とその開口部調整方法
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/14 20060101AFI20220217BHJP
   E21F 17/00 20060101ALI20220217BHJP
   E01F 8/00 20060101ALI20220217BHJP
   E01B 19/00 20060101ALI20220217BHJP
【FI】
E21D9/14
E21F17/00
E01F8/00
E01B19/00 B
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2018167808
(22)【出願日】2018-09-07
(65)【公開番号】P2020041289
(43)【公開日】2020-03-19
【審査請求日】2020-10-31
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年9月6日 公益財団法人鉄道総合技術研究所主催の「鉄道総研技術フォーラム2018東京開催」において文書をもって発表 平成30年9月6日 公益財団法人鉄道総合技術研究所主催の「鉄道総研技術フォーラム2018東京開催」において集会により公開
(73)【特許権者】
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100104064
【弁理士】
【氏名又は名称】大熊 岳人
(72)【発明者】
【氏名】宮地 徳蔵
(72)【発明者】
【氏名】大久保 秀彦
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-225010(JP,A)
【文献】特開2008-019668(JP,A)
【文献】特開平08-135381(JP,A)
【文献】特開平05-113093(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル坑口を覆うトンネル緩衝工の長さ方向に形成された開口部の開度を調整するトンネル緩衝工の開口部調整装置であって、
前記トンネル坑口に移動体が突入するときに発生する圧力波の波形に基づいて、前記開口部の開度を調整する開度調整部を備え、
前記開度調整部は、前記圧力波の勾配波形に複数のピークが存在するときに、各ピークの高さがほぼ等しくなるように前記開口部の開度を調整すること、
を特徴とするトンネル緩衝工の開口部調整装置。
【請求項2】
請求項に記載のトンネル緩衝工の開口部調整装置において、
前記開度調整部は、
前記圧力波の勾配波形が右上がりであるときには、前記開口部の開度が小さくなるようにこの開口部の開度を調整し、
前記圧力波の勾配波形が左上がりであるときには、前記開口部の開度が大きくなるようにこの開口部の開度を調整すること、
を特徴とするトンネル緩衝工の開口部調整装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項に記載のトンネル緩衝工の開口部調整装置において、
前記開度調整部は、前記トンネル緩衝工の長さ方向に前記開口部が複数形成されているときに、この複数の開口部が同じ開度になるように、この複数の開口部の開度を調整すること、
を特徴とするトンネル緩衝工の開口部調整装置。
【請求項4】
トンネル坑口を覆うトンネル緩衝工の長さ方向に形成された開口部の開度を調整するトンネル緩衝工の開口部調整装置であって、
前記トンネル坑口に移動体が突入するときに発生する圧力波の波形に基づいて、前記開口部の開度を調整する開度調整部を備え、
前記開度調整部は、前記トンネル緩衝工の長さ方向に前記開口部が複数形成されているときに、この複数の開口部が同じ開度になるように、この複数の開口部の開度を調整すること、
を特徴とするトンネル緩衝工の開口部調整装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のトンネル緩衝工の開口部調整装置において、
前記開度調整部は、前記トンネル緩衝工の長さ方向と交差する方向に、前記開口部を塞ぐ塞ぎ部材を移動することによって、この開口部の開度を調整すること、
を特徴とするトンネル緩衝工の開口部調整装置。
【請求項6】
請求項5に記載のトンネル緩衝工の開口部調整装置において、
前記開度調整部は、前記開口部がスリット状の開口部であるときに、前記トンネル緩衝工の長さ方向と交差する方向に前記塞ぎ部材を移動することによって、このスリット状の開口部の開度を調整すること、
を特徴とするトンネル緩衝工の開口部調整装置。
【請求項7】
請求項5に記載のトンネル緩衝工の開口部調整装置において、
前記開度調整部は、前記開口部が離散窓状の開口部であるときに、前記トンネル緩衝工の長さ方向と交差する方向に前記塞ぎ部材を移動することによって、この離散窓状の開口部の開度を調整すること、
を特徴とするトンネル緩衝工の開口部調整装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載のトンネル緩衝工の開口部調整装置において、
前記開度調整部は、前記トンネル緩衝工の長さ方向に、前記開口部を塞ぐ塞ぎ部材を移動することによって、この開口部の開度を調整すること、
を特徴とするトンネル緩衝工の開口部調整装置。
【請求項9】
請求項8に記載のトンネル緩衝工の開口部調整装置において、
前記開度調整部は、前記開口部がスリット状の開口部であるときに、前記トンネル緩衝工の長さ方向に前記塞ぎ部材を移動することによって、このスリット状の開口部の開度を調整すること、
を特徴とするトンネル緩衝工の開口部調整装置。
【請求項10】
請求項8に記載のトンネル緩衝工の開口部調整装置において、
前記開度調整部は、前記開口部が離散窓状の開口部であるときに、前記トンネル緩衝工の長さ方向に前記塞ぎ部材を移動することによって、この離散窓状の開口部の開度を調整すること、
を特徴とするトンネル緩衝工の開口部調整装置。
【請求項11】
トンネル坑口を覆うトンネル緩衝工の長さ方向に形成された開口部の開度を調整するトンネル緩衝工の開口部調整方法であって、
前記トンネル坑口に移動体が突入するときに発生する圧力波の波形に基づいて、前記開口部の開度を調整する開度調整工程を含
前記開度調整工程は、前記圧力波の勾配波形に複数のピークが存在するときに、各ピークの高さがほぼ等しくなるように前記開口部の開度を調整する工程を含むこと、
を特徴とするトンネル緩衝工の開口部調整方法。
【請求項12】
請求項11に記載のトンネル緩衝工の開口部調整方法において、
前記開度調整工程は、
前記圧力波の勾配波形が右上がりであるときには、前記開口部の開度が小さくなるようにこの開口部の開度を調整し、
前記圧力波の勾配波形が左上がりであるときには、前記開口部の開度が大きくなるようにこの開口部の開度を調整する工程を含むこと、
を特徴とするトンネル緩衝工の開口部調整方法。
【請求項13】
請求項11又は請求項12に記載のトンネル緩衝工の開口部調整方法において、
前記開度調整工程は、前記トンネル緩衝工の長さ方向に前記開口部が複数形成されているときに、この複数の開口部が同じ開度になるように、この複数の開口部の開度を調整する工程を含むこと、
を特徴とするトンネル緩衝工の開口部調整方法。
【請求項14】
トンネル坑口を覆うトンネル緩衝工の長さ方向に形成された開口部の開度を調整するトンネル緩衝工の開口部調整方法であって、
前記トンネル坑口に移動体が突入するときに発生する圧力波の波形に基づいて、前記開口部の開度を調整する開度調整工程を含み、
前記開度調整工程は、前記トンネル緩衝工の長さ方向に前記開口部が複数形成されているときに、この複数の開口部が同じ開度になるように、この複数の開口部の開度を調整する工程を含むこと、
を特徴とするトンネル緩衝工の開口部調整方法。
【請求項15】
請求項11から請求項14までのいずれか1項に記載のトンネル緩衝工の開口部調整方法において、
前記開度調整工程は、前記トンネル緩衝工の長さ方向と交差する方向に前記開口部を塞ぐ塞ぎ部材を移動することによって、この開口部の開度を調整する工程を含むこと、
を特徴とするトンネル緩衝工の開口部調整方法。
【請求項16】
請求項15に記載のトンネル緩衝工の開口部調整方法において、
前記開度調整工程は、前記開口部がスリット状の開口部であるときに、前記トンネル緩衝工の長さ方向と交差する方向に、前記塞ぎ部材を移動することによって、このスリット状の開口部の開度を調整する工程を含むこと、
を特徴とするトンネル緩衝工の開口部調整方法。
【請求項17】
請求項15に記載のトンネル緩衝工の開口部調整方法において、
前記開度調整工程は、前記開口部が離散窓状の開口部であるときに、前記トンネル緩衝工の長さ方向と交差する方向に前記塞ぎ部材を移動することによって、この離散窓状の開口部の開度を調整する工程を含むこと、
を特徴とするトンネル緩衝工の開口部調整方法。
【請求項18】
請求項11から請求項17までのいずれか1項に記載のトンネル緩衝工の開口部調整方法において、
前記開度調整工程は、前記トンネル緩衝工の長さ方向に、前記開口部を塞ぐ塞ぎ部材を移動することによって、この開口部の開度を調整する工程を含むこと、
を特徴とするトンネル緩衝工の開口部調整方法。
【請求項19】
請求項18に記載のトンネル緩衝工の開口部調整方法において、
前記開度調整工程は、前記開口部がスリット状の開口部であるときに、前記トンネル緩衝工の長さ方向に前記塞ぎ部材を移動することによって、このスリット状の開口部の開度を調整する工程を含むこと、
を特徴とするトンネル緩衝工の開口部調整方法。
【請求項20】
請求項18に記載のトンネル緩衝工の開口部調整方法において、
前記開度調整工程は、前記開口部が離散窓状の開口部であるときに、前記トンネル緩衝工の長さ方向に前記塞ぎ部材を移動することによって、この離散窓状の開口部の開度を調整する工程を含むこと、
を特徴とするトンネル緩衝工の開口部調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、トンネル坑口を覆うトンネル緩衝工の長さ方向に形成された開口部の開度を調整するトンネル緩衝工の開口部調整装置とその開口部調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネル緩衝工には、その側面に、離散型の窓や線路方向に長いスリットが複数配置されており、これらの開閉状態を列車速度や先頭部形状に合わせて最適化するのが一般的である。窓やスリットの単純な一部閉鎖については、高さ方向と長手方向の2方向からの閉鎖が考えられる。従来のトンネル緩衝工は、トンネル坑口に設置されるフード部の側壁に開度を調整可能な側面開口部を備えている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような従来のトンネル緩衝工104では、図19に示すように、このトンネル緩衝工104の側面の開口部104eの開度を調整することによってこの開口部104eの大きさを変化させている。この従来のトンネル緩衝工104では、列車先頭部がトンネル坑口103aに突入したときにトンネル103内に発生する圧縮波の圧力勾配を、開口部104eを適切に調整(設定・配置など)することによって小さく抑え、トンネル微気圧波を低減させている。現在一般的に検討される開口部最適化については、長手方向の開口部位置の最適化を考えており、開口する位置と開口部の幅を調整している(以下、開口部位置調整方式という)。例えば、図19(A)に示す開口部位置調整方式Aは、開口面積が同じである複数の開口部104eがトンネル緩衝工104の長手方向に所定の間隔をあけて離散窓状に形成されている。この開口部位置調整方式Aは、閉鎖窓のような塞ぎ部材110Aの位置や数を変更することによって、複数の離散窓状の開口部104eの大きさを調整する方式である。図19(B)に示す開口部位置調整方式Bは、開口面積が同じである複数の開口部104eがトンネル緩衝工104の長手方向に所定の間隔をあけてスリット状に形成されている。この開口部位置調整方式Bは、引戸又は蓋などの塞ぎ部材110Bの位置と幅を変更することによって、複数のスリット状の開口部104eを部分的に閉鎖して、このスリット状の開口部4eの大きさを調整する方式である。図19に示すような開口部位置調整方式A,Bに対して、開口部の高さ方向の開度を長手方向に一定とし、この開度(すなわち開口部の高さ)を最適化することも考えられる(以下、開口部高さ調整方式という)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-019668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図19(A)に示す従来の開口部位置調整方式A及び図19(B)に示す従来の開口部位置調整方式Bでは、設定した開口部と微気圧波の関係を推定する簡易な手法や、過去のデータなどから傾向を推測する有効な手法もないため、最適開口部の指針がないことが問題であった。そこで、数値シミュレーションや模型実験などによって、開口部と微気圧波低減効果の関係を総当たり式に調べた結果をデータベースとして参照することが多いが、この場合には、膨大な総当たり数が問題となる。例えば、図19(A)に示すような開口部位置調整方式Aの場合には、複数の離散窓状の開口部104eを閉鎖する位置や数を変更するときに、長さ30m程度のトンネル緩衝工を想定すると、総当たり数は28= 256通りとなり、長さが2倍のトンネル緩衝工であれば、216=65536通りとなる。360km/h域の新幹線(登録商標)の営業運転では、100mクラスのトンネル緩衝工も想定されており、その場合には、総当たり数は天文学的な数字となる。
【0006】
この発明の課題は、トンネル緩衝工の開口部を最適な開度に短時間で調整することができるトンネル緩衝工の開口部調整装置とその開口部調整方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、以下に記載するような解決手段により、前記課題を解決する。
なお、この発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、この実施形態に限定するものではない。
請求項1の発明は、図1図3図5図6及び図8図14に示すように、トンネル坑口(3a)を覆うトンネル緩衝工(4)の長さ方向に形成された開口部(4e)の開度を調整するトンネル緩衝工の開口部調整装置であって、前記トンネル坑口に移動体(1)が突入するときに発生する圧力波の波形に基づいて、前記開口部の開度を調整する開度調整部(10)を備え、前記開度調整部は、前記圧力波の勾配波形に複数のピーク(P 1 ,P 2 )が存在するときに、各ピークの高さがほぼ等しくなるように前記開口部の開度を調整することを特徴とするトンネル緩衝工の開口部調整装置(6)である。
【0008】
請求項2の発明は、請求項に記載のトンネル緩衝工の開口部調整装置において、図6に示すように、前記開度調整部は、前記圧力波の勾配波形が右上がりであるときには、前記開口部の開度が小さくなるようにこの開口部の開度を調整(S140)し、前記圧力波の勾配波形が左上がりであるときには、前記開口部の開度が大きくなるようにこの開口部の開度を調整(S150)することを特徴としているトンネル緩衝工の開口部調整装置である。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項に記載のトンネル緩衝工の開口部調整装置において、図1図3図5及び図8図14に示すように、前記開度調整部は、前記トンネル緩衝工の長さ方向に前記開口部が複数形成されているときに、この複数の開口部が同じ開度になるように、この複数の開口部の開度を調整することを特徴とするトンネル緩衝工の開口部調整装置である。
【0010】
請求項4の発明は、図1図3図5及び図8図14に示すように、トンネル坑口(3a)を覆うトンネル緩衝工(4)の長さ方向に形成された開口部(4e)の開度を調整するトンネル緩衝工の開口部調整装置であって、前記トンネル坑口に移動体(1)が突入するときに発生する圧力波の波形に基づいて、前記開口部の開度を調整する開度調整部(10)を備え、前記開度調整部は、前記トンネル緩衝工の長さ方向に前記開口部が複数形成されているときに、この複数の開口部が同じ開度になるように、この複数の開口部の開度を調整することを特徴とするトンネル緩衝工の開口部調整装置(6)である。
【0011】
請求項5の発明は、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のトンネル緩衝工の開口部調整装置において、図5図9及び図14(A)に示すように、前記開度調整部は、前記トンネル緩衝工の長さ方向と交差する方向に、前記開口部を塞ぐ塞ぎ部材(10a)を移動することによって、この開口部の開度を調整することを特徴とするトンネル緩衝工の開口部調整装置である。
【0012】
請求項6の発明は、請求項5に記載のトンネル緩衝工の開口部調整装置において、図5及び図14(A)に示すように、前記開度調整部は、前記開口部がスリット状の開口部であるときに、前記トンネル緩衝工の長さ方向と交差する方向に前記塞ぎ部材を移動することによって、このスリット状の開口部の開度を調整することを特徴とするトンネル緩衝工の開口部調整装置である。
【0013】
請求項7の発明は、請求項5に記載のトンネル緩衝工の開口部調整装置において、図9に示すように、前記開度調整部は、前記開口部が離散窓状の開口部であるときに、前記トンネル緩衝工の長さ方向と交差する方向に前記塞ぎ部材を移動することによって、この離散窓状の開口部の開度を調整することを特徴とするトンネル緩衝工の開口部調整装置である。
【0014】
請求項8の発明は、請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載のトンネル緩衝工の開口部調整装置において、図10図13及び図14(B)に示すように、前記開度調整部は、前記トンネル緩衝工の長さ方向に、前記開口部を塞ぐ塞ぎ部材を移動することによって、この開口部の開度を調整することを特徴とするトンネル緩衝工の開口部調整装置である。
【0015】
請求項9の発明は、請求項8に記載のトンネル緩衝工の開口部調整装置において、図10図11及び図14(B)に示すように、前記開度調整部は、前記開口部がスリット状の開口部であるときに、前記トンネル緩衝工の長さ方向に前記塞ぎ部材を移動することによって、このスリット状の開口部の開度を調整することを特徴とするトンネル緩衝工の開口部調整装置である。
【0016】
請求項10の発明は、請求項8に記載のトンネル緩衝工の開口部調整装置において、図12及び図13に示すように、前記開度調整部は、前記開口部が離散窓状の開口部であるときに、前記トンネル緩衝工の長さ方向に前記塞ぎ部材を移動することによって、この離散窓状の開口部の開度を調整することを特徴とするトンネル緩衝工の開口部調整装置である。
【0017】
請求項11の発明は、図1図3図5図14に示すように、トンネル坑口(3a)を覆うトンネル緩衝工(4)の長さ方向に形成された開口部(4e)の開度を調整するトンネル緩衝工の開口部調整方法であって、前記トンネル坑口に移動体(1)が突入するときに発生する圧力波の波形に基づいて、前記開口部の開度を調整する開度調整工程(S140,S150)を含前記開度調整工程は、前記圧力波の勾配波形に複数のピークが存在するときに、各ピークの高さがほぼ等しくなるように前記開口部の開度を調整する工程を含むことを特徴とするトンネル緩衝工の開口部調整方法である。
【0018】
請求項12の発明は、請求項11に記載のトンネル緩衝工の開口部調整方法において、前記開度調整工程は、前記圧力波の勾配波形が右上がりであるときには、前記開口部の開度が小さくなるようにこの開口部の開度を調整(S140)し、前記圧力波の勾配波形が左上がりであるときには、前記開口部の開度が大きくなるようにこの開口部の開度を調整(S150)する工程を含むことを特徴とするトンネル緩衝工の開口部調整方法である。
【0019】
請求項13の発明は、請求項11又は請求項12に記載のトンネル緩衝工の開口部調整方法において、図1図3図5及び図7図14に示すように、前記開度調整工程は、前記トンネル緩衝工の長さ方向に前記開口部が複数形成されているときに、この複数の開口部が同じ開度になるように、この複数の開口部の開度を調整する工程(S140,S150)を含むことを特徴とするトンネル緩衝工の開口部調整方法である。
【0020】
請求項14の発明は、図1図3図5及び図7図14に示すように、トンネル坑口(3a)を覆うトンネル緩衝工(4)の長さ方向に形成された開口部(4e)の開度を調整するトンネル緩衝工の開口部調整方法であって、前記トンネル坑口に移動体(1)が突入するときに発生する圧力波の波形に基づいて、前記開口部の開度を調整する開度調整工程(S140,S150)を含み、前記開度調整工程は、前記トンネル緩衝工の長さ方向に前記開口部が複数形成されているときに、この複数の開口部が同じ開度になるように、この複数の開口部の開度を調整する工程を含むことを特徴とするトンネル緩衝工の開口部調整方法である。
【0021】
請求項15の発明は、請求項11から請求項14までのいずれか1項に記載のトンネル緩衝工の開口部調整方法において、図5図7図9及び図14(A)に示すように、前記開度調整工程は、前記トンネル緩衝工の長さ方向と交差する方向に前記開口部を塞ぐ塞ぎ部材(15a)を移動することによって、この開口部の開度を調整する工程(S140,S150)を含むことを特徴とするトンネル緩衝工の開口部調整方法である。
【0022】
請求項16の発明は、請求項15に記載のトンネル緩衝工の開口部調整方法において、図5図7及び図14(A)に示すように、前記開度調整工程は、前記開口部がスリット状の開口部であるときに、前記トンネル緩衝工の長さ方向と交差する方向に、前記塞ぎ部材を移動することによって、このスリット状の開口部の開度を調整する工程(S140,S150)を含むことを特徴とするトンネル緩衝工の開口部調整方法である。
【0023】
請求項17の発明は、請求項15に記載のトンネル緩衝工の開口部調整方法において、図7及び図9に示すように、前記開度調整工程は、前記開口部が離散窓状の開口部であるときに、前記トンネル緩衝工の長さ方向と交差する方向に前記塞ぎ部材を移動することによって、この離散窓状の開口部の開度を調整する工程(S140,S150)を含むことを特徴とするトンネル緩衝工の開口部調整方法である。
【0024】
請求項18の発明は、請求項11から請求項17までのいずれか1項に記載のトンネル緩衝工の開口部調整方法において、図7図10図13及び図14(B)に示すように、前記開度調整工程は、前記トンネル緩衝工の長さ方向に、前記開口部を塞ぐ塞ぎ部材を移動することによって、この開口部の開度を調整する工程(S140,S150)を含むことを特徴とするトンネル緩衝工の開口部調整方法である。
【0025】
請求項19の発明は、請求項18に記載のトンネル緩衝工の開口部調整方法において、図7図10図11及び図14(B)に示すように、前記開度調整工程は、前記開口部がスリット状の開口部であるときに、前記トンネル緩衝工の長さ方向に前記塞ぎ部材を移動することによって、このスリット状の開口部の開度を調整する工程(S140,S150)を含むことを特徴とするトンネル緩衝工の開口部調整方法である。
【0026】
請求項20の発明は、請求項18に記載のトンネル緩衝工の開口部調整方法において、図7図12及び図13に示すように、前記開度調整工程は、前記開口部が離散窓状の開口部であるときに、前記トンネル緩衝工の長さ方向に前記塞ぎ部材を移動することによって、この離散窓状の開口部の開度を調整する工程(S140,S150)を含むことを特徴とするトンネル緩衝工の開口部調整方法である。
【発明の効果】
【0027】
この発明によると、トンネル緩衝工の開口部の最適な開度を短時間で調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】この発明の第1実施形態に係るトンネル緩衝工の開口部調整装置を模式的に示す側面図である。
図2図1のII-II線で切断した状態を示す断面図である。
図3図2のIII-III線で切断した状態を示す断面図である。
図4】この発明の第1実施形態に係るトンネル緩衝工の開口部調整装置の構成図である。
図5】この発明の第1実施形態に係るトンネル緩衝工の開口部調整装置による開口部の開度の調整動作を説明するための模式図であり、(A)は開口部の開度が初期状態であるときの模式図であり、(B)は開口部の開度が小さくなるように調整したときの模式図であり、(C)開口部の開度が大きくなるように調整したときの模式図である。
図6】この発明の第1実施形態に係るトンネル緩衝工の開口部調整装置の圧力勾配波形演算部が演算した圧力勾配波形を一例として模式的に示すグラフであり、(A)は右上がりの圧力勾配波形を模式的に示すグラフであり、(B)は左上がりの圧力勾配波形を模式的に示すグラフであり、(C)は開口部の開度を最適化したときの圧力勾配波形を模式的に示すグラフである。
図7】この発明の第1実施形態に係るトンネル緩衝工の開口部調整方法を説明するためのフローチャートである。
図8】この発明の第2実施形態に係るトンネル緩衝工の開口部調整装置を模式的に示す側面図である。
図9】この発明の第2実施形態に係るトンネル緩衝工の開口部調整装置による開口部の開度の調整動作を説明するための模式図であり、(A)は開口部の開度が初期状態であるときの模式図であり、(B)は開口部の開度が小さくなるように調整したときの模式図であり、(C)開口部の開度が大きくなるように調整したときの模式図である。
図10】この発明の第3実施形態に係るトンネル緩衝工の開口部調整装置を模式的に示す側面図である。
図11】この発明の第3実施形態に係るトンネル緩衝工の開口部調整装置による開口部の開度の調整動作を説明するための模式図であり、(A)は開口部の開度が初期状態であるときの模式図であり、(B)は開口部の開度が小さくなるように調整したときの模式図であり、(C)開口部の開度が大きくなるように調整したときの模式図である。
図12】この発明の第4実施形態に係るトンネル緩衝工の開口部調整装置を模式的に示す側面図である。
図13】この発明の第4実施形態に係るトンネル緩衝工の開口部調整装置による開口部の開度の調整動作を説明するための模式図であり、(A)は開口部の開度が初期状態であるときの模式図であり、(B)は開口部の開度が小さくなるように調整したときの模式図であり、(C)開口部の開度が大きくなるように調整したときの模式図である。
図14】この発明の第4実施形態に係るトンネル緩衝工の開口部調整装置による開口部の開度の調整動作を説明するための模式図であり、(A)は開口部の開度が初期状態であるときの模式図であり、(B)は開口部の開度が小さくなるように調整したときの模式図であり、(C)開口部の開度が大きくなるように調整したときの模式図である。
図15】この発明の実施例に係るトンネル緩衝工の開口部調整装置による開口部調整効果の実験に使用した模型実験装置の概略図である。
図16】この発明の実施例に係るトンネル緩衝工の開口部調整装置によるスリット型開口部の開度と圧力勾配最大値比の関係を示すグラフである。
図17】この発明の実施例に係るトンネル緩衝工の開口部調整装置による最適な開口部高さに調整したときの圧力勾配最大値比の最小値と緩衝工長さとの関係を示すグラフである。
図18】この発明の実施例に係るトンネル緩衝工の開口部調整装置によるトンネル内圧力勾配波形と開口部高さとの関係を示すグラフである。
図19】従来のトンネル緩衝工の開口部位置調整方式を模式的に示す側面図であり、(A)は離散窓状の開口部位置調整方式Aを模式的に示す側面図であり、(B)はスリット状の開口部位置調整方式Bを模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(第1実施形態)
以下、図面を参照して、この発明の第1実施形態について詳しく説明する。
図1図3に示す列車1は、軌道2に沿って移動する移動体である。列車1は、例えば、320km/h以上の高速で走行する新幹線車両などの鉄道車両である。軌道2は、列車1が走行する通路(移動経路)である。軌道2は、図2に示すように、上り本線2a及び下り本線2bの二本の本線で構成された複線である。図1図3に示すトンネル3は、山腹などの地中を貫通して列車1を通過させるための固定構造物(土木構造物)である。トンネル3は、図2に示すように、一つの固定構造物内に二本の本線2a,2bを収容する複線用の鉄道トンネル(複線トンネル)である。トンネル3は、図2及び図3に示すように、列車1が突入及び退出する出入口となるトンネル坑口3aなどを備えている。
【0030】
図1図3に示すトンネル緩衝工4は、トンネル微気圧波を低減するためにトンネル坑口3aを覆う固定構造物(土木構造物)である。トンネル緩衝工4は、図2に示すように、一つのトンネル覆工内に二本の本線2a,2bを収容する複線用の入口緩衝工(複線トンネル緩衝工)である。トンネル緩衝工4は、列車1の先頭部がトンネル3の入口側のトンネル坑口3aに突入したときに発生する圧縮波の圧力勾配(波面の勾配)を緩やかにすることによって、トンネル3の出口側のトンネル坑口(反対側坑口)から外部に放射するトンネル微気圧波を低減する。トンネル緩衝工4は、例えば、トンネル断面積の1.4~1.6倍程度のコンクリート製、鉄筋コンクリート製又は鋼板製のフード状(覆い状)の構造物であり、図1及び図3に示すようにトンネル坑口3aの外部に軌道2に沿ってトンネル3を延長するように構築されている。トンネル緩衝工4は、図2に示すように、このトンネル緩衝工4の中心線に対して直交する平面で切断したときの断面形状が半円形である。トンネル緩衝工4は、図1及び図3に示す列車1が突入及び退出する緩衝工口(出入口)4aと、図1図3に示すトンネル緩衝工4の上側部分を構成する天部4bと、図2に示すトンネル緩衝工4の側面部分を構成する側壁4c、4dと、図1及び図3に示すトンネル緩衝工4の長さ方向に形成された開口部4eなどを備えている。トンネル緩衝工4は、列車1の速度に応じた長さに構築されており、近年の列車1の高速化に伴って長大化している。
【0031】
図1図3に示す開口部4eは、トンネル微気圧波の圧力勾配を調整する部分である。開口部4eは、図1及び図3に示すように、トンネル緩衝工4の長手方向に所定の間隔をあけてスリット状に形成されており、高さHに比べて長さLが長い細長の長方形状に形成されている。開口部4eは、いずれも開口面積(H×L)が同じである。開口部4eは、図1及び図3に示すように、列車1の移動方向に沿って所定の間隔をあけて、図2に示すようにトンネル緩衝工4の側壁4c,4dを貫通して側壁4c,4dにそれぞれ連続して形成されている。開口部4eは、トンネル坑口3aに列車1が突入するときに発生する圧縮波の勾配が可能な限り小さくなるような形状に調整されているため、この開口部4eの一部が列車1の先頭部形状によって最適な形状となるために閉鎖されている。
【0032】
図4に示す圧力波検出装置5は、列車1がトンネル坑口3aに突入するときに発生する圧力波を検出する装置である。圧力波検出装置5は、例えば、図1及び図3に示すように、列車1がトンネル坑口3aに突入するときにトンネル3内に発生する圧縮波を検出する圧力計などの圧力変換装置である。圧力波検出装置5は、トンネル坑口3aから所定距離(例えば100m程度)だけ離れたトンネル3内に設置されている。圧力波検出装置5は、検出した圧縮波を圧力波検出信号(圧力波情報)として開口部調整装置6に出力する。
【0033】
図1図5に示す開口部調整装置6は、トンネル緩衝工4の長さ方向に形成された開口部4eの開度を調整する装置である。ここで、開度とは、開口部4eの開閉状態を表す比率(開口率)である。開度は、例えば、開口部4eが全開状態であるときは100%であり、開口部4eが全閉状態であるときは0%であり、開口部4eが半開状態であるときには50%である。開口部調整装置6は、図6に示すように、列車1がトンネル坑口3aに突入したときに発生する圧力波の波形に基づいて、図5に示すように開口部4eの開度を調整してトンネル微気圧波を低減する。開口部調整装置6は、図5に示すように、複数の開口部4eの大きさが変化するように、この複数の開口部4eを同時に同じ割合で開閉してこの複数の開口部4eの開度を調整する。開口部調整装置6は、複数の開口部4eを高さ方向のみに開閉してこの複数の開口部4eの大きさを調整する開口部高さ調整方式によって、この複数の開口部4eの開度を最適に調整する。開口部調整装置6は、図4に示すように、圧力波情報入力部7と、圧力勾配波形演算部8と、波形評価部9と、開度調整部10と、駆動部11と、制御部12などを備えている。
【0034】
図4に示す圧力波情報入力部7は、圧力波検出装置5が出力する圧力波情報を入力させる手段である。圧力波情報入力部7は、圧力波検出装置5が出力する圧力波情報を制御部12に出力する。圧力波情報入力部7は、例えば、圧力波検出装置5から制御部12に圧力波情報を入力させるインタフェース(I/F)回路などである。
【0035】
圧力勾配波形演算部8は、圧力波検出装置5の検出結果に基づいて圧力勾配波形を演算する手段である。圧力勾配波形演算部8は、例えば、図6に示すように、トンネル坑口3aに列車1が突入したときにトンネル3内に発生する圧力波の波形に基づいて、図6に示すような圧力勾配波形を演算する。ここで、圧力勾配波形とは、トンネル坑口3aに列車1が突入したときにトンネル3内に発生する圧縮波の時間微分波形である。図6に示す縦軸は、圧力勾配であり、横軸は時間である。圧力勾配波形演算部8は、演算後の圧力勾配波形を圧力勾配波形信号(圧力勾配波形情報)として制御部12に出力する。
【0036】
図4に示す波形評価部9は、圧力勾配波形に複数のピークP1,P2が存在するときに、各ピークP1,P2の高さがほぼ等しいか否かを評価する手段である。波形評価部9は、例えば、図6に示すような圧力勾配波形に複数のピークP1,P2が存在するか否かを評価する。波形評価部9は、圧力勾配波形演算部8が演算した圧力勾配波形に複数のピークP1,P2が存在するときには、この複数のピークP1,P2の大きさ(ピーク値)を比較する。波形評価部9は、図6(A)に示すように、圧力勾配波形が右上がり(ピークP1<ピークP2)であるか、図6(B)に示すように圧力勾配波形が左上がり(ピークP1>ピークP2)であるかを評価する。波形評価部9は、圧力勾配波形が右上がりであるか左上がりであるかの評価結果を波形評価信号(波形評価情報)として制御部12に出力する。
【0037】
図1図5に示す開度調整部10は、トンネル坑口3aに列車1が突入するときに発生する圧力波の波形に基づいて、開口部4eの開度を調整する手段である。開度調整部10は、図1図3及び図5に示すような複数の開口部4eがトンネル緩衝工4の長さ方向に存在するときに、この複数の開口部4eの開度を調整する。開度調整部10は、図2に示す側壁4c側の開口部4eの開度と側壁4d側の開口部4eの開度とを同時に調整する。開度調整部10は、図1図5に示すように、開口部4eを塞ぐ塞ぎ部材10aを備えており、この塞ぎ部材10aの垂直方向の位置を調整することによって複数の開口部4eの開度を調整する。塞ぎ部材10aは、開口部4eの高さ方向に移動自在にガイド部によってガイドされている。塞ぎ部材10aは、例えば、合成樹脂製又は金属製の一枚の長板状又は複数枚のシャッタ状の開閉部材であり、複数の開口部4eの開度を同時に調整可能である。
【0038】
開度調整部10は、波形評価部9の評価結果に基づいて開口部4eの開度を調整する。開度調整部10は、図1図3及び図5に示すように、トンネル緩衝工4の長さ方向と交差する方向(高さ方向)に塞ぎ部材10aを移動することによって、この開口部4eの開度を調整する。開度調整部10は、図6(A)(B)に示すように圧力勾配波形に複数のピークP1,P2が存在するときに、図6(C)に示すように各ピークP1,P2の高さがほぼ等しくなるように開口部4eの開度を調整する。開度調整部10は、例えば、図6(A)に示すように、圧力勾配波形が右上がりでありときには、図5(B)に示すように開口部4eが小さくなるように、開口部4eの高さHを高さH0から高さH1に小さく(低く)してこの開口部4eの開度を調整する。一方、開度調整部10は、例えば、図6(B)に示すように、圧力勾配波形が左上がりでありときには、図5(C)に示すように開口部4eが大きくなるように、開口部4eの高さHを高さH0から高さH2に大きく(高く)してこの開口部4eの開度を調整する。開度調整部10は、図1図3及び図5に示すように、トンネル緩衝工4の長さ方向に開口部4eが複数形成されているときに、この複数の開口部4eが同じ開度になるように、この複数の開口部4eの開度を調整する。
【0039】
図1図4に示す駆動部11は、波形評価部9の評価結果に基づいて開度調整部10を駆動する手段である。駆動部11は、開度調整部10が開口部4eの開度を調整するように、この開度調整部10を駆動する。駆動部11は、開口部4eの高さ方向に塞ぎ部材10aを進退させるための駆動力を発生する動力シリンダ、電動機又はリニアモータなどの駆動力発生装置である。駆動部11は、図5(B)に示すように、開口部4eを小さくするときには、開口部4eを塞ぎ部材10aが閉鎖するようにこの塞ぎ部材10aを上昇させる。一方、駆動部11は、図5(C)に示すように、開口部4eを大きくするときには、開口部4eを塞ぎ部材10aが開放するようにこの塞ぎ部材10aを下降させる。
【0040】
図4に示す制御部12は、開口部調整装置6に関する種々の動作を制御する中央処理部(CPU)である。制御部12は、開口部調整プログラムに従って所定の開口部調整処理を実行する。制御部12は、例えば、圧力波検出装置5が出力する圧力波情報を圧力勾配波形演算部8に出力したり、圧力勾配波形演算部8に圧力勾配波形の演算を指令したり、圧力勾配波形演算部8が出力する圧力勾配波形情報を波形評価部9に出力したり、圧力勾配波形の各ピークP1,P2の高さがほぼ等しいか否かの評価を波形評価部9に指令したり、圧力勾配波形が右上がりであるか左上がりであるかの評価を波形評価部9に指令したり、開度調整部10の塞ぎ部材10aの駆動を駆動部11に指令したり、波形評価部9が出力する波形評価情報に基づいて駆動部11を駆動制御したりする。制御部12には、圧力波情報入力部7、圧力勾配波形演算部8、波形評価部9及び駆動部11などが通信可能に接続されている。
【0041】
次に、この発明の第1実施形態に係るトンネル緩衝工の開口部調整方法について説明する。
以下では、図4に示す制御部12の動作を中心として説明する。
図7に示すステップ(以下、Sという)100において、圧力波検出装置5が圧力波を検出したか否かを制御部12が判断する。図1及び図3に示すように、列車1がトンネル坑口3aに突入すると、列車1の前方のトンネル3内に圧縮波が発生して、この圧縮波がトンネル3内を伝播し、この圧縮波の圧力勾配にほぼ比例したパルス状の圧力波であるトンネル微気圧波が突入側のトンネル坑口3aとは反対側のトンネル坑口から外部に放射する。例えば、トンネル坑口3aへの列車1の突入を列車検出装置が検出すると、開口部調整装置6に電源装置から電力が供給されて、開口部調整プログラムに従って一連の開口部調整処理を制御部12が開始する。初期状態では、図5(A)に示すように、開口部4eの高さHが初期設定値の高さH0に設定されている。トンネル3内を伝搬する圧縮波を圧力波検出装置5が検出し、圧力波検出装置5が圧力波情報を開口部調整装置6の圧力波情報入力部7に出力する。圧力波情報が入力したと制御部12が判断したときにはS110に進み、圧力波情報が入力していないと制御部12が判断したときには一連の開口部調整処理を制御部12が終了する。
【0042】
S110において、圧力波検出装置5の検出結果に基づいて圧力勾配波形を圧力勾配波形演算部8が演算する。圧力波検出装置5から圧力波情報入力部7を通じて圧力波情報が制御部12に入力すると、この圧力波情報を圧力勾配波形演算部8に制御部12が出力するとともに、圧力勾配波形の演算を圧力勾配波形演算部8に制御部12が指令する。その結果、図6に示すような圧力勾配波形を圧力勾配波形演算部8が演算し、圧力勾配波形演算部8が圧力勾配波形情報を制御部12に出力する。
【0043】
S120において、圧力勾配波形の複数のピークP1,P2がほぼ同じであるか否かを波形評価部9が評価する。圧力勾配波形演算部8から圧力勾配波形情報が制御部12に入力すると、この圧力勾配波形情報を波形評価部9に制御部12が出力するとともに、図6(C)に示すように圧力勾配波形の複数のピークP1,P2がほぼ同じであるか否かの評価を波形評価部9に制御部12が指令する。図6(A)(B)に示すように、圧力勾配波形の複数のピークP1,P2が同じではないと波形評価部9が評価したときにはS130に進み、圧力勾配波形の複数のピークP1,P2がほぼ同じであると波形評価部9が評価したときには、一連の開口部調整処理を制御部12が終了する。
【0044】
S130において、圧力勾配波形が右上がりであるか否かを波形評価部9が評価する。図6(A)に示すように、圧力勾配波形のピークP1がピークP2よりも低く圧力勾配波形が右上がりであるか、図6(B)に示すように圧力勾配波形のピークP1がピークP2よりも高く、圧力勾配波形が左上がりであるかを波形評価部9が評価する。圧力勾配波形が右上がりであるか否かを波形評価部9が評価して、波形評価部9が波形評価情報を制御部12に出力する。図6(A)に示すように、圧力勾配波形が右上がりであると波形評価部9が評価したときにはS140に進み、図6(B)に示すように圧力勾配波形が左上がりであると波形評価部9が評価したときにはS150に進む。
【0045】
S140において、開口部4eが小さくなるようにこの開口部4eの開度を開度調整部10が調整する。図6(A)に示すように、圧力勾配波形が右上がりでありときには、図5(B)に示すように開口部4eが小さくなるように制御部12が駆動部11を駆動制御し、この開口部4eの開度を開度調整部10が調整する。このため、図5(B)に示すように、駆動部11が塞ぎ部材10aを上方に所定量(例えば0.2m程度)だけ駆動して、開口部4eの高さHが高さH0から高さH1に低くなり開口部4eが小さくなる。その結果、図6(A)に示す圧力勾配波形のピークP1が低くなりピークP2が高くなる。開口部4eの開度を開度調整部10が調整するとS120に戻り、図6(C)に示すように圧力勾配波形の複数のピークP1,P2がほぼ同じになるまで、S120以降の処理を制御部12が繰り返す。
【0046】
S150において、開口部4eが大きくなるようにこの開口部4eの開度を開度調整部10が調整する。図6(B)に示すように、圧力勾配波形が左上がりでありときには、開口部4eが大きくなるように制御部12が駆動部11を駆動制御し、この開口部4eの開度を開度調整部10が調整する。このため、図5(C)に示すように、駆動部11が塞ぎ部材10aを下方に所定量(例えば0.2m程度)だけ駆動して、開口部4eの高さHが高さH0から高さH2に高くなり開口部4eが大きくなる。その結果、図6(B)に示す圧力勾配波形のピークP1が高くなりピークP2が低くなる。開口部4eの開度を開度調整部10が調整するとS120に戻り、図6(C)に示すように圧力勾配波形の複数のピークP1,P2がほぼ同じになるまで、S120以降の処理を制御部12が繰り返す。
【0047】
この発明の第1実施形態に係るトンネル緩衝工の開口部調整装置とその開口部調整方法には、以下に記載するような効果がある。
(1) この第1実施形態では、トンネル坑口3aに列車1が突入するときに発生する圧力波の波形に基づいて、開口部4eの開度を開度調整部10が調整する。このため、各開口部4eの開度を一律に変更して開口部4eの開度を最適化することができる。その結果、最適な開口部4eの開度の調整に要する時間や試番数を大幅に低減することができるとともに、開口部4eの開度の最適解をほぼ確実に得ることができる。例えば、図19(A)に示す従来の開口部位置調整方式Aや、図19(B)に示す従来の開口部位置調整方式Bなどに比べて、トンネル微気圧波の低減効果を十分に発揮しつつ、最適な開口部4eの開度に短時間で簡単に調整することができる。
【0048】
(2) この第1実施形態では、圧力勾配波形に複数のピークP1,P2が存在するときに、各ピークP1,P2の高さがほぼ等しくなるように開口部4eの開度を開度調整部10が調整する。このため、列車1がトンネル坑口3aに突入する毎に発生する圧力波の波形から圧力勾配波形を演算して、この圧力勾配波形に存在する複数のピークP1,P2が揃うように開口部4eの開度を簡単に調整することができる。トンネル微気圧波のピーク値とトンネル3内の圧力勾配ピーク値は、ほぼ比例関係にあるため、圧力勾配ピーク値を低減することがトンネル微気圧波の対策になる。トンネル緩衝工4の開口部4eの大きさを変更しても、トンネル3内の圧縮波の圧力上昇量は変化しないため、圧力勾配の積分値は開口部4eの大きさの変更に影響されない。この第1実施形態では、最適な開口部4eに設定することによって、圧力勾配波形の複数のピークP1,P2が同じ高さになる。このため、圧力勾配のピークP1,P2が分散されて、圧力勾配ピーク値が小さくなりトンネル微気圧波を低減することができる。
【0049】
(3) この第1実施形態では、圧力勾配波形が右上がりであるときには、開口部4eの開度が小さくなるようにこの開口部4eの開度を開度調整部10が調整する。また、この第1実施形態では、圧力勾配波形が左上がりであるときには、開口部4eの開度が大きくなるようにこの開口部4eの開度を開度調整部10が調整する。このため、圧力勾配波形が右上がりであるか左上がりであるかを評価することによって、開口部4eの開度を短時間で最適化することができる。
【0050】
(4) この第1実施形態では、トンネル緩衝工4の長さ方向に開口部4eが複数形成されているときに、この複数の開口部4eが同じ開度になるように、この複数の開口部4eの開度を開度調整部10が調整する。このため、図19に示す従来の開口部位置調整方式A,Bのような開口部の位置や数を個別に調整する作業が不要になって、トンネル微気圧波の低減効果を維持しつつ最適な開口部4eの開度を短時間で簡単に調整することができる。
【0051】
(5) この第1実施形態では、トンネル緩衝工4の長さ方向と交差する方向に塞ぎ部材10aを移動することによって、この開口部4eの開度を開度調整部10が調整する。このため、例えば、複数の開口部4eの開度を同時に調整することができるとともに、開口部4eを最適な開度に短時間で調整することができる。
【0052】
(6) この第1実施形態では、トンネル緩衝工4の長さ方向と交差する方向に塞ぎ部材10aを移動することによって、スリット状の開口部4eの開度を開度調整部10が調整する。このため、図19(B)に示す従来の開口部位置調整方式Bのような塞ぎ部材110Bの位置と幅を変更してスリット状の開口部104eを部分的に調整する煩雑な作業が不要になって、スリット状の開口部4eの高さHのみを調整する簡単な作業により作業負担を大幅に軽減することができる。
【0053】
(第2実施形態)
以下では、図1図5に示す部分と同一の部分については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
図8及び図9に示す開口部4eは、図1図3及び図5に示す開口部4eとは異なり、トンネル緩衝工4の長手方向に所定の間隔をあけて離散窓状に形成されており、高さHと幅Wとがほぼ同じである正方形状に形成されている。開口部4eは、いずれも開口面積(H×W)が同じである。開口部4eは、図2に示す開口部4eと同様に、トンネル緩衝工4の側壁4c,4dを貫通して側壁4c,4dにそれぞれ連続して形成されている。
【0054】
図8及び図9に示す開口部調整装置6は、図1図5に示す開口部調整装置6と同様に、複数の開口部4eを高さ方向に開閉する開口部高さ調整方式によって、この複数の開口部4eの開度を最適に調整する。開度調整部10は、図8及び図9に示すように、トンネル緩衝工4の長さ方向に開口部4eが複数形成されているときに、この複数の開口部4eが同じ開度になるように、この複数の開口部4eの開度を調整する。開度調整部10は、例えば、図6(A)に示すように、圧力勾配波形が右上がりでありときには、図9(B)に示すように開口部4eが小さくなるように、開口部4eの高さHを高さH0から高さH1に小さく(低く)してこの開口部4eの開度を調整する。一方、開度調整部10は、例えば、図6(B)に示すように、圧力勾配波形が左上がりでありときには、図9(C)に示すように開口部4eが大きくなるように、開口部4eの高さHを高さH0から高さH2に大きく(高く)してこの開口部4eの開度を調整する。
【0055】
図8及び図9に示す駆動部11は、図9(B)に示すように、開口部4eを小さくするときには、開口部4eを塞ぎ部材10aが閉鎖するようにこの塞ぎ部材10aを上昇させる。一方、駆動部11は、図9(C)に示すように、開口部4eを大きくするときには、開口部4eを塞ぎ部材10aが開放するようにこの塞ぎ部材10aを下降させる。
【0056】
この発明の第2実施形態に係るトンネル緩衝工の開口部調整装置とその開口部調整方法には、第1実施形態の効果に加えて、以下に記載するような効果がある。
この第2実施形態では、トンネル緩衝工4の長さ方向と交差する方向に塞ぎ部材10aを移動することによって、離散窓状の開口部4eの開度を開度調整部10が調整する。このため、図19(A)に示す従来の開口部位置調整方式Aのような塞ぎ部材110Aの位置と幅を変更して離散窓状の開口部104eを部分的に調整する煩雑な作業が不要になって、離散窓状の開口部4eの高さHのみを調整する簡単な作業により作業負担を大幅に軽減することができる。
【0057】
(第3実施形態)
図10及び図11に示す開口部4eは、図1図3及び図5に示す開口部4eと同様に、トンネル緩衝工4の長手方向に所定の間隔をあけてスリット状に形成されており、高さHに比べて長さLが長い細長の長方形状に形成されている。図10及び図11に示す開口部調整装置6は、図1図5図8及び図9に示す開口部調整装置6とは異なり、複数の開口部4eを長さ方向に開閉する開口部長さ調整方式によって、この複数の開口部4eの開度を最適に調整する。開度調整部10は、塞ぎ部材10aの水平方向の位置を調整することによって複数の開口部4eの開度を調整する。開度調整部10は、図10及び図11に示すように、トンネル緩衝工4の長さ方向に塞ぎ部材10aを移動することによって、この開口部4eの開度を調整する。開度調整部10は、例えば、図6(A)に示すように、圧力勾配波形が右上がりでありときには、図11(B)に示すように開口部4eが小さくなるように、開口部4eの長さLを長さL0から長さL1に小さく(短く)してこの開口部4eの開度を調整する。一方、開度調整部10は、例えば、図6(B)に示すように、圧力勾配波形が左上がりでありときには、図11(C)に示すように開口部4eが大きくなるように、開口部4eの長さLを長さL0から長さL2に大きく(長く)してこの開口部4eの開度を調整する。開度調整部10は、図10及び図11に示すように、トンネル緩衝工4の長さ方向に開口部4eが複数形成されているときに、この複数の開口部4eが同じ開度になるように、この複数の開口部4eの開度を調整する。
【0058】
駆動部11は、図11(B)に示すように、開口部4eを小さくするときには、開口部4eを塞ぎ部材10aが閉鎖するようにこの塞ぎ部材10aを拡大させる。駆動部11は、例えば、開度調整部10が所定量(例えば0.2m程度)だけ拡大するようにこの開度調整部10を駆動して、開口部4eの長さLを長さL0から長さL1に短くして開口部4eを小さくする。一方、駆動部11は、図11(C)に示すように、開口部4eを大きくするときには、開口部4eを塞ぎ部材10aが開放するようにこの塞ぎ部材10aを縮小させる。駆動部11は、例えば、開度調整部10が所定量(例えば0.2m程度)だけ縮小するように、開口部4eの長さLを長さL0から長さL1に長くして開口部4eを大きくする。
【0059】
この発明の第3実施形態に係るトンネル緩衝工の開口部調整装置とその開口部調整方法には、第1実施形態及び第2実施形態の効果に加えて以下に記載するような効果がある。
(1) この第3実施形態では、トンネル緩衝工4の長さ方向に塞ぎ部材10aを移動することによって、この開口部4eの開度を開度調整部10が調整する。このため、例えば、複数の開口部4eの開度を同時に調整することができるとともに、開口部4eを最適な開度に短時間で簡単に調整することができる。
【0060】
(2) この第3実施形態では、トンネル緩衝工4の長さ方向に塞ぎ部材10aを移動することによって、スリット状の開口部4eの開度を開度調整部10が調整する。このため、図19(B)に示す従来の開口部位置調整方式Bのような塞ぎ部材110Bの位置と幅を変更してスリット状の開口部104eを部分的に調整する煩雑な作業が不要になって、スリット状の開口部4eの長さLのみを調整する簡単な作業により作業負担を大幅に軽減することができる。
【0061】
(第4実施形態)
図12及び図13に示す開口部4eは、図8及び図9に示す開口部4eと同様に、トンネル緩衝工4の長手方向に所定の間隔をあけて離散窓状に形成されており、高さHと幅Wとがほぼ同じである正方形状に形成されている。図12及び図13に示す開口部調整装置6は、図11及び図12に示す開口部調整装置6と同様に、複数の開口部4eを長さ方向に開閉する開口部長さ調整方式によって、この複数の開口部4eの開度を最適に調整する。開度調整部10は、例えば、図6(A)に示すように、圧力勾配波形が右上がりでありときには、図13(B)に示すように開口部4eが小さくなるように、開口部4eの幅Wを幅W0から幅W1に小さく(狭く)してこの開口部4eの開度を調整する。一方、開度調整部10は、例えば、図6(B)に示すように、圧力勾配波形が左上がりでありときには、図13(C)に示すように開口部4eが大きくなるように、開口部4eの幅Wを幅W0から幅W2に大きく(広く)してこの開口部4eの開度を調整する。開度調整部10は、図12及び図13に示すように、トンネル緩衝工4の長さ方向に開口部4eが複数形成されているときに、この複数の開口部4eが同じ開度になるように、この複数の開口部4eの開度を調整する。
【0062】
図12及び図13に示す駆動部11は、図13(B)に示すように、開口部4eを小さくするときには、開口部4eを塞ぎ部材10aが閉鎖するように、この塞ぎ部材10aを拡大させる。一方、駆動部11は、図13(C)に示すように、開口部4eを大きくするときには、開口部4eを塞ぎ部材10aが開放するように、この塞ぎ部材10aを縮小させる。
【0063】
この発明の第4実施形態に係るトンネル緩衝工の開口部調整装置とその開口部調整方法には、第1実施形態~第3実施形態の効果に加えて、以下に記載するような効果がある。
この第4実施形態では、トンネル緩衝工4の長さ方向に塞ぎ部材10aを移動することによって、離散窓状の開口部4eの開度を開度調整部10が調整する。このため、図19(A)に示す従来の開口部位置調整方式Aのような塞ぎ部材110Aの位置と幅を変更して離散窓状の開口部104eを部分的に調整する煩雑な作業が不要になって、離散窓状の開口部4eの幅Wのみを調整する簡単な作業により作業負担を大幅に軽減することができる。
【0064】
(第5実施形態)
図14に示すトンネル緩衝工4は、このトンネル緩衝工4の長さ方向に形成された大きさが異なる複数の開口部4eを備えている。図14(A)に示す開口部調整装置6は、複数の開口部4eを高さ方向に開閉する開口部高さ調整方式によって、この複数の開口部4eの開度を最適に調整する。一方、図14(B)に示す開口部調整装置6は、図14(A)に示す開口部調整装置6とは異なり、複数の開口部4eを長さ方向に開閉する開口部長さ調整方式によって、この複数の開口部4eの開度を最適に調整する。開度調整部10は、図14に示すように、トンネル緩衝工4の長さ方向に大きさの異なる開口部4eが複数形成されているときに、この複数の開口部4eが同じ開度になるように、この複数の開口部4eの開度を調整する。開度調整部10は、大きさの異なる複数の開口部4eが全て同じ開度に変化するように、この複数の開口部4eの開度を同時に調整する。図14(A)に示す開度調整部10は、トンネル緩衝工4の長さ方向と交差する方向(高さ方向)に塞ぎ部材10aを移動することによって、この開口部4eの開度を調整する。一方、図14(B)に示す開度調整部10は、トンネル緩衝工4の長さ方向に塞ぎ部材10aを移動することによって、この開口部4eの開度を調整する。この第5実施形態には、第1実施形態~第4実施形態の効果に加えて、個々の開口部4eの大きさが異なるトンネル緩衝工4についてもこれらの開口部4eの開度を短時間で簡単に調整することができる。
【実施例
【0065】
次に、この発明の実施例について説明する。
(模型実験)
図15に示すトンネル緩衝工模型の性能を調べるため、公益財団法人鉄道総合技術研究所の超高速列車模型発射装置を使用して、トンネル模型に車両模型を打ち込み、トンネル坑口から1mの位置に設置した圧力計によりトンネル内圧縮波の波形を計測した。圧力勾配波形は中心差分で求めた。
【0066】
模型実験のスケールは、63.4m2の新幹線トンネルの鏡像を考慮して1/127とした。トンネル模型に内径100mmのパイプを用いた。車両模型は、車両/トンネル断面積比(ブロッケージ比)0.19、全長1000mm、先頭部長さ15m相当とし、先頭部形状は回転楕円体、緩衝工模型の中心あるいは新幹線列車相当の偏心走行とした。模型突入速度は主に360km/hとした。緩衝工模型は、実スケール10m毎に9m×1.3m(鏡像含まず、実寸71mm×10mm)のスリット型開口部を有する模型と、実スケール3.2m毎に2.5m×1.3m(鏡像含まず,実寸20mm×10mm)の正方形状の離散窓型開口部を有する模型とを2種類使用した。スリット型開口部の緩衝工模型は、図1図5に示す第1実施形態のトンネル緩衝工に対応し、離散窓型開口部の緩衝工模型は、図8及び図9に示す第2実施形態のトンネル緩衝工に対応する。トンネル緩衝工/トンネル断面積の比(以下、断面積比という)を1.4とし、車両模型を中心走行と、実際の新幹線車両の複線走行を考慮した緩衝工模型の中心から開口部側へずらした偏心走行とを実施した。
【0067】
(スリット型開口部及び離散窓型開口部の高さ調整)
スリット型開口部の緩衝工模型については、複数のスリット型開口部の高さのみを蓋を用いて変更してスリット型開口部の調整による効果を調べた。離散窓型開口部の緩衝工模型については、複数の離散窓型開口部の高さのみを蓋を用いて変更して離散窓型開口部の調整による効果を調べた。
【0068】
(実験結果)
図16に示すグラフは、開度と圧力勾配最大値比との関係を表す。図16に示す縦軸は、圧力勾配最大値比であり、横軸は開度である。ここで、圧力勾配最大値比α=(∂p/∂tmax緩衝工あり)/( ∂p/∂tmax緩衝工なし)であり、開度は図5に示すH0~H2をHで除した量に相当する。σは、断面積比であり、Lはトンネル緩衝工長さ(実寸)である。図16に示すように、スリット窓・中心走行、離散窓・中心走行、離散窓・偏心走行のいずれの条件についても圧力勾配最大値比αが最小になる開度が一つ存在する。これらにおいては、開度に対して圧力勾配最大値比αの変化がほぼ単調であり、一つの極小値を持つことから、明らかに最適な開度があることが確認された。また、断面積比σ=1及びσ=1.4の場合には、最適な開度がほぼ同じであり、トンネル緩衝工が長くなると最適な開度が小さくなることが確認された。
【0069】
図17に示すグラフは、最適な開度に調整したときの圧力勾配最大値比の最小値と緩衝工長さとの関係を表す。図17に示す縦軸は、圧力勾配最大値比αの最小値であり、横軸はトンネル緩衝工長さ(m)である。図17に示す「位置調整方式」は、図19(A)に示す従来の開口部位置調整方式Bに相当する実験結果である。「高さ調整方式」は、図1図3及び図5に示すスリット状の開口部4eの高さのみを調整する開口部高さ調整方式に相当する実験結果である。図17に示すように、従来の開口部位置調整方式Bと開口部高さ調整方式とは圧力勾配最大値比が同じであり、最適な開口部の性能がほぼ同等であり、いずれの方式でも同等の微気圧波低減効果があることが確認された。
【0070】
図18に示すグラフは、トンネル緩衝工長さ(実寸)L=30m、断面積比σ=1.4の場合のトンネル内の圧力勾配波形と開度との関係を表す。図18に示す縦軸は、圧力勾配∂p/∂tであり、横軸は時間である。図18に示すように、最適値(0.03)よりも開度が大きい開度0.38,開度0.5の場合(開口部を開けすぎの場合)には、圧力勾配波形は右上がりである。一方、最適値よりも開度が小さい開度0.23の場合(開口部を閉めすぎの場合)には、圧力勾配波形は左上がりである。開度が最適値である開度0.33の場合には、圧力勾配波形の2つのピーク(あるいは複数のピーク)がほぼ揃っている。以上より、スリット型開口部の高さ調整方式では、僅か数回の試行で最適解が得られており、従来の離散窓型開口部の位置調整方式に比べて、最適化に要する時間を劇的に削減可能であることが確認された。この傾向は、ほかの条件の場合にも共通してみられることが確認された。
【0071】
(他の実施形態)
この発明は、以上説明した実施形態に限定するものではなく、以下に記載するように種々の変形又は変更が可能であり、これらもこの発明の範囲内である。
(1) この実施形態では、移動体が列車1である場合を例に挙げて説明したが、磁気浮上式鉄道又は自動車などの他の移動体についても、この発明を適用することができる。また、この実施形態では、固定構造物がトンネル3及びトンネル緩衝工4である場合を例に挙げて説明したが、固定構造物をこれらに限定するものではない。例えば、雪崩を通過させるために山腹斜面から線路上を覆う庇状のスノーシェッド(雪崩防護工)、吹雪、地吹雪による線路上の吹き溜まりの発生を防止するために線路上を覆うスノーシェルタ、斜面から転落又は落下してくる落石を通過させるために線路上を覆う落石覆い(落石防護工)、線路上を立体的に交差する橋梁又は高架橋などの立体交差、線路上部に駅本屋が存在する橋上駅(橋上建物)、線路を超えるために線路上に架け渡された跨線橋などの固定構造物についても、この発明を適用することができる。さらに、この実施形態では、列車1が新幹線列車である場合を例に挙げて説明したが、在来線を走行する在来線列車、又は新幹線と在来線とを相互に走行可能な新在直通運転用の列車などについても、この発明を適用することができる。
【0072】
(2) この実施形態では、軌道2が複線である場合を例に挙げて説明したが、軌道2が単線又は複々線である場合についてもこの発明を適用することができる。また、この実施形態では、トンネル緩衝工4の断面形状が半円形である場合を例に挙げて説明したが、四角形又は六角形のような多角形である場合についても、この発明を適用することができる。さらに、この実施形態では、開口部4eの形状が四角形である場合を例に挙げて説明したが、円形、楕円形又は多角形である場合についても、この発明を適用することができる。
【0073】
(3) この実施形態では、トンネル緩衝工4の側壁4c,4dの長さ方向に開口部4eが形成されている場合を例に挙げて説明したが、トンネル緩衝工4の天部4bの長さ方向に開口部4eが形成されている場合についても、この発明を適用することができる。また、この実施形態では、トンネル緩衝工4に開口部4eが複数形成されている場合について説明したが、トンネル緩衝工4に開口部4eが単数形成されている場合についても、この発明を適用することができる。さらに、この実施形態では、スリット状又は離散窓状の開口部4eを有するトンネル緩衝工4を例に挙げて説明したが、スリット状及び離散窓状の開口部4eを組み合わせたトンネル緩衝工や、大きさの異なる複数のスリット状及び離散窓状の開口部4eを組み合わせたトンネル緩衝工についても、この発明を適用することができる。
【0074】
(4) この実施形態では、トンネル3内に発生する圧縮波を圧力波検出装置5によって検出する場合を例に挙げて説明したが、列車1が突入する側とは反対側のトンネル坑口3aから外部に放射する微気圧波を圧力波検出装置5によって検出する場合についても、この発明を適用することができる。また、この実施形態では、塞ぎ部材10aが長板状又はシャッタ状の開閉部材である場合を例に挙げて説明したが、カーテン状の開閉部材又は作動流体によって膨張伸縮する袋状の開閉部材などである場合についても、この発明を適用することができる。
【0075】
(5) この実施形態では、圧力勾配波形の2つのピークP1,P2の高さがほぼ等しくなるように開口部4eの開度を調整する場合を例に挙げて説明したが、圧力勾配波形の3つ以上のピークの高さがほぼ等しくなるように開口部4eの開度を調整する場合についても、この発明を適用することができる。また、この実施形態では、圧力勾配波形が右上がりであるときには開口部4eを小さくし、圧力勾配波形が左上がりであるときには開口部4eを大きくする場合を例に挙げて説明したが、開度調整部10の調整動作を限定するものではない。例えば、圧力勾配波形が右上がりであるときには開口部4eを大きくし、圧力勾配波形が左上がりであるときには開口部4eを小さくする場合についても、この発明を適用することができる。
【0076】
(6) この実施形態では、圧力勾配波形のピークP1,P2がほぼ同一になるように開度調整部10を自動で制御して開口部4eの開度を最適に調整する場合を例に挙げて説明したが、圧力勾配波形を表示装置の画面上に表示し、圧力勾配波形のピークP1,P2がほぼ同一になるように開度調整部10を手動で操作して開口部4eの開度を最適に調整する場合についても、この発明を適用することができる。また、この第1実施形態及び第2実施形態では、一枚の塞ぎ部材10aによって複数の開口部4eを開閉する場合を例に挙げて説明したが、各開口部4eに対応する複数の塞ぎ部材10aによって複数の開口部4eをそれぞれ開閉する場合についても、この発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0077】
1 列車(移動体)
2 軌道
3 トンネル
3a トンネル坑口
4 トンネル緩衝工
4a 緩衝工口
4b 天部
4c,4d 側壁
4e 開口部
5 圧力波検出装置
6 開口部調整装置
7 圧力波情報入力部
8 圧力勾配波形演算
9 波形評価部
10 開度調整部
11 駆動部
12 制御部
H,H0~H2 高さ
1,P2 ピーク
W,W0~W2
L,L0~L2 長さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19