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特許7026058ビルドプレート経由での脱ガスによって気泡を低減する三次元印刷法および装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-16
(45)【発行日】2022-02-25
(54)【発明の名称】ビルドプレート経由での脱ガスによって気泡を低減する三次元印刷法および装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/124 20170101AFI20220217BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20220217BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20220217BHJP
   B29C 64/255 20170101ALI20220217BHJP
【FI】
B29C64/124
B33Y10/00
B33Y30/00
B29C64/255
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2018563427
(86)(22)【出願日】2017-06-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-07-11
(86)【国際出願番号】 US2017040376
(87)【国際公開番号】W WO2018006018
(87)【国際公開日】2018-01-04
【審査請求日】2020-06-24
(31)【優先権主張番号】62/357,659
(32)【優先日】2016-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/357,646
(32)【優先日】2016-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515220524
【氏名又は名称】カーボン,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100180231
【弁理士】
【氏名又は名称】水島 亜希子
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】フェラー,ボブ・イー
(72)【発明者】
【氏名】ムーア,デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】タンブルストン,ジョン・アール
(72)【発明者】
【氏名】トゥロン,ロナルド
(72)【発明者】
【氏名】ラーカー,カイル
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/142546(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0292862(US,A1)
【文献】特開平02-024121(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104875391(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
B33Y 10/00
B33Y 30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元物体を形成する方法であって、
キャリア、およびビルド面を有する光学的に透明な部材を用意するステップであって、前記キャリアおよび前記ビルド面がそれらの間にビルド領域を画定するステップと、
前記ビルド領域を重合性液体で充填するステップと、
前記光学的に透明な部材を介して前記ビルド領域に光を連続的または断続的に照射するステップであって、前記重合性液体から固体ポリマーを形成する、ステップと、
前記光学的に透明な部材を介して減圧および/またはポリマー阻害剤富化ガスを前記重合性液体に加えることによって重合性液体のガス含有量を低減するステップと、
前記キャリアを前記ビルド面から離れるよう連続的または断続的に(例えば逐次的に、または前記照射するステップと同時に)移動させるステップであって、前記固体ポリマーから前記三次元物体を形成する、ステップと
を含み、
前記光学的に透明な部材を介して減圧および/またはポリマー阻害剤富化ガスを重合性液体に加えることによって重合性液体のガス含有量を低減するステップが、前記光学的に透明な部材を介して重合阻害剤ガスを前記重合性液体に供給することを含み、
前記重合阻害剤ガスを重合性液体に供給することが、前記重合阻害剤ガスを実質的に一定の圧力で供給することを含む方法。
【請求項2】
前記重合阻害剤ガスを重合性液体に供給することが、酸素富化ガスを大気圧未満の圧力で供給することを含む請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記酸素富化ガスの酸素含有率が約80%~100%である請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記酸素富化ガスの圧力が実質的に、大気圧での空気中の酸素の分圧に等しい請求項に記載の方法。
【請求項5】
三次元物体を形成する方法であって、
キャリア、およびビルド面を有する光学的に透明な部材を用意するステップであって、前記キャリアおよび前記ビルド面がそれらの間にビルド領域を画定するステップと、
前記ビルド領域を重合性液体で充填するステップと、
前記光学的に透明な部材を介して前記ビルド領域に光を連続的または断続的に照射するステップであって、前記重合性液体から固体ポリマーを形成する、ステップと、
前記光学的に透明な部材を介して減圧および/またはポリマー阻害剤富化ガスを前記重合性液体に加えることによって重合性液体のガス含有量を低減するステップと、
前記キャリアを前記ビルド面から離れるよう連続的または断続的に(例えば逐次的に、または前記照射するステップと同時に)移動させるステップであって、前記固体ポリマーから前記三次元物体を形成する、ステップと
を含み、
前記光学的に透明な部材を介して減圧および/またはポリマー阻害剤富化ガスを重合性液体に加えることによって重合性液体のガス含有量を低減するステップが、前記光学的に透明な部材を介して重合阻害剤ガスを前記重合性液体に供給することを含み、
前記減圧および/またはポリマー阻害剤富化ガスを加えるステップが、減圧を断続的に加えることを含む方法。
【請求項6】
三次元物体を形成する方法であって、
キャリア、およびビルド面を有する光学的に透明な部材を用意するステップであって、前記キャリアおよび前記ビルド面がそれらの間にビルド領域を画定するステップと、
前記ビルド領域を重合性液体で充填するステップと、
前記光学的に透明な部材を介して前記ビルド領域に光を連続的または断続的に照射するステップであって、前記重合性液体から固体ポリマーを形成する、ステップと、
前記光学的に透明な部材を介して減圧および/またはポリマー阻害剤富化ガスを前記重合性液体に加えることによって重合性液体のガス含有量を低減するステップと、
前記キャリアを前記ビルド面から離れるよう連続的または断続的に(例えば逐次的に、または前記照射するステップと同時に)移動させるステップであって、前記固体ポリマーから前記三次元物体を形成する、ステップと
を含み、
前記重合性液体が、前記光学的に透明な部材の上の下側領域と、前記光学的に透明な部材とは反対側の前記下側領域の上の上側領域を含み、前記光学的に透明な部材を介して減圧および/またはポリマー阻害剤富化ガスを重合性液体に加えるステップが、前記上側領域内のガス濃度を低減することを含む方法。
【請求項7】
前記下側領域の厚さが約1~1000ミクロンである請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記光学的に透明な部材を介して減圧を断続的に重合性液体に加えるステップが、前記上側領域内のガス濃度を低減し、前記下側領域内のガス濃度を維持するのに十分である請求項またはに記載の方法。
【請求項9】
前記光学的に透明な部材がビルドプレートを備え、このビルドプレートがガスおよび/または圧力の制御装置に接続するよう構成されているチャネル層を備える請求項1からのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記充填ステップ、前記照射ステップおよび/または前記移動ステップが、
(i)前記ビルド面に接触している重合性液体のデッドゾーンを連続的に維持し、且つ
(ii)前記デッドゾーンと前記固体ポリマーとの間でこれらと相互接触している重合ゾーンの勾配を連続的に維持し、前記重合ゾーンの勾配が、部分的に硬化した形態の前記重合性液体を含む
ことも同時に行いながら、実行される請求項1からのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記光学的に透明な部材を介して減圧を断続的に重合性液体に加えることによって重合性液体のガス含有量を低減するステップが、前記重合性液体中のガス濃度を低減することによってデッドゾーンを1000ミクロン未満に維持するのに十分である請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記重合領域に接着した状態のキャリアが、静止状態のビルドプレート上のビルド面から離れるように一方向に移動する請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記充填ステップが、前記ビルド面に対して前記キャリアを縦方向に往復運動させて、前記重合性液体による前記ビルド領域の再充填を向上または加速させることを更に含む請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記光学的に透明な部材を介して減圧を重合性液体に加える際に、前記キャリアの移動を低減する又は静止させること更に含む請求項1から13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
重合性液体から三次元物体を形成する装置であって、
(a)支持材と、
(b)前記支持材と動作可能に関連付けられ、前記三次元物体を形成する際の土台となるキャリアと、
(c)ビルド面を有するガス透過性の光学的に透明な部材であって、前記ビルド面および前記キャリアが中間のビルド領域を画定する、部材と、
(d)前記ビルド面と動作可能に関連付けられ、前記ビルド領域に固化または重合のための液体ポリマーを供給するよう構成された液体ポリマー供給装置(例えばウェル)と、
(e)前記光学的に透明な部材を介して前記ビルド領域を照射して前記重合性液体から固体ポリマーを形成するよう構成された放射源と、
(f)前記透明な部材または前記キャリアのいずれかと動作可能に関連付けられた少なくとも1つの駆動装置と、
(g)前記キャリア、および/または前記少なくとも1つの駆動装置、および前記放射源と動作可能に関連付けられ、前記固体ポリマーから前記三次元物体を形成するために、前記キャリアを前記ビルド面から離れるように移動させる制御装置と、
(h)前記光学的に透明な部材と流体連通状態にあり、前記ガス透過性部材を介して前記ビルド面への圧力を制御し、かつ/またはガスを供給するよう構成されているガス/圧力の制御装置と
を備え、前記ガス/圧力の制御装置が、請求項1から14のいずれか1項に記載の方法を実行するよう構成されている装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2016年7月1日に出願された米国仮出願第62/357,646号および第62/357,659号に基づく優先権を主張するものであり、これらの開示はここに引用することによりその全体が本明細書の一部をなすものとする。
【0002】
本発明は、液体の材料から固体の三次元物体を製作するための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0003】
従来の積層造形(additive fabrication)技法または三次元製作技法では、三次元物体構築は段階的または交互積層(layer-by-layer)の様式で実施される。特に、層形成は、可視光またはUV光の照射が作用する条件下で光硬化性樹脂の固化を通じて実施される。2つの技法が知られており、すなわち1つは、成長中の物体(growing object)の上面に新たな層が形成される技法と、もう1つは、成長中の物体の底面に新たな層が形成される技法である。
【0004】
成長中の物体の上面に新たな層が形成される場合、毎回の照射工程後に、構築中の物体が樹脂「プール」中へと降下させられ、新たな樹脂層が上部にコーティングされ、新たな照射工程が行われる。そのような技法の初期の例が、Hullの米国特許第5,236,637号、図3に記載されている。そのような「トップダウン」技法の不利点は、成長中の物体を液体樹脂の(潜在的に深い)プールに浸し、液体樹脂の正確な被覆層を再構築する必要があることである。
【0005】
成長中の物体の底面に新たな層が形成される場合、毎回の照射工程後に、構築中の物体は製作ウェル内の底板から分離されなければならない。そのような技法の初期の例が、Hullの米国特許第5,236,637号、図4に記載されている。そのような「ボトムアップ」技法は、代わりに比較的浅いウェルまたはプールから物体を持ち上げることにより、物体が浸される深いウェルの必要性を排除する可能性を有する一方、そのような「ボトムアップ」製作技法を商業的に実施する際の問題は、固化層を底板から分離する際、それらの間で物理的および化学的な相互作用が発生することから、細心の注意を払わなければならないことと、付加的な機械要素を採用しなければならないことである。例えば、米国特許第7,438,846号では、弾性の分離層を使用して、底部の構築面における固化材料の「非破壊的」分離を実現している。他のアプローチ、例えばB9Creator(商標)三次元プリンター(B9Creations of Deadwood社(米国サウスダコタ州)製)では、スライド式ビルドプレートを採用している。例えば、M.Joyceの米国特許出願第2013/0292862号およびY. Chen et al.の米国特許出願第2013/0295212号(いずれも2013年11月7日)を参照されたい。また、Y.Pan et al.、J. Manufacturing Sci. and Eng.134、051011-1(2012年10月)も参照されたい。これらのアプローチでは、装置を複雑化したり、方法を低速化したり、および/または最終製品を潜在的に歪めたりする可能性のある機械的工程を導入する。
【0006】
「トップダウン」技法に関して、三次元物体を製造するための連続プロセスが米国特許第7,892,474号において多少詳しく提唱されているが、この参考文献では、製造する物品に対して非破壊的な形で連続プロセスを「ボトプアップ」システムにおいて実施できる方法を説明していない。したがって、「ボトムアップ」製作における機械的分離工程の必要性を排除できる、三次元製作向けの代替的な方法および装置が必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
本明細書には、積層造形(additive manufacturing)により三次元物体を製造する方法、システムおよび装置(関連する制御方法、制御システムおよび制御装置を含む)が記載される。好適な(ただし必ずしも制限的でない)実施形態において、本方法は連続的に実行される。好適な(ただし必ずしも制限的でない)実施形態において、三次元物体は液体界面から製造される。したがって、本明細書においてそれらは時々、制限を目的とするのではなく便宜上、「連続液体界面印刷」、または「連続液体界面生産」(「CLIP」)と呼ばれる場合もある(これら2つは互換的に使用される)。例えばJ.Tumbleston et al.,Continuous liquid interface production of 3D objects,Science 347,1349-1352を参照のこと(2015年3月16日にオンライン公開)。本発明の一実施形態の概略図が本明細書の図1に記載されている。上記および下記の方法と組成物に関する一部の実施形態において、重合性液体は室温および/または本方法の動作条件下にて500または1,000センチポイズ以上~最大10,000、20,000、または50,000センチポイズ以上の粘度を有する。
【0008】
一部の実施形態において、三次元物体の形成方法は、キャリア、およびビルド面を有する光学的に透明な部材を用意するステップ(前記キャリアおよび前記ビルド面は、それらの間にビルド領域を画定する)と、前記ビルド領域を重合性液体で充填するステップと、前記光学的に透明な部材を介して前記ビルド領域に光を連続的または断続的に照射して前記重合性液体から固体ポリマーを形成するステップと、光学的に透明な部材を介して減圧および/またはポリマー阻害剤富化ガスを重合性液体に加えることによって重合性液体のガス含有量を低減するステップと、前記キャリアを前記ビルド面から離れるように連続的または断続的に(例えば逐次的に、または前記照射工程と同時に)移動(advance)させて、前記固体ポリマーから前記三次元物体を形成するステップとを含む。
【0009】
一部の実施形態において、光学的に透明な部材を介して減圧および/またはポリマー阻害剤富化ガスを重合性液体に加えることによって重合性液体のガス含有量を低減するステップは、光学的に透明な部材を介して重合阻害剤ガスを重合性液体に供給することを含む。
【0010】
一部の実施形態において、重合阻害剤ガスを重合性液体に供給することは、重合阻害剤ガスを実質的に一定の圧力で供給することを含む。
【0011】
一部の実施形態において、重合阻害剤ガスを重合性液体に供給することは、酸素富化ガスを大気圧未満の圧力で供給することを含む。
【0012】
一部の実施形態において、酸素富化ガスの酸素含有率は約80%~100%である。
【0013】
一部の実施形態において、酸素富化ガスの圧力は実質的に、大気圧での空気中の酸素の分圧に等しい。
【0014】
一部の実施形態において、減圧および/またはポリマー阻害剤富化ガスを重合性液体に加えるステップは、減圧を断続的に加えることを含む。
【0015】
一部の実施形態において、重合性液体は、光学的に透明な部材の上の下側領域と、光学的に透明な部材とは反対側の下側領域の上の上側領域を含み、前記光学的に透明な部材を介して減圧および/またはポリマー阻害剤富化ガスを重合性液体に加えるステップは、上側領域内のガス濃度を低減することを含む。
【0016】
一部の実施形態において、下側領域の厚さは約1~1000ミクロンである。
【0017】
一部の実施形態において、光学的に透明な部材を介して減圧を断続的に重合性液体に加えるステップは、上側領域内のガス濃度を低減し、下側領域内のガス濃度を維持するのに十分である。
【0018】
一部の実施形態において、光学的に透明な部材は、ビルドプレートを含み、このビルドプレートは、ガスおよび/または圧力の制御装置に接続するよう構成されるチャネル層を含む。
【0019】
一部の実施形態において、充填工程、照射工程、および/または移動工程は、(i)前記ビルド面に接触している重合性液体のデッドゾーンの連続的維持、および(ii)前記デッドゾーンと前記固体ポリマーとの間でこれらと相互接触している重合ゾーンの勾配(前記重合ゾーンの勾配は部分硬化した形態の前記重合性液体を含む)の連続的維持も同時に行いながら実行される。
【0020】
一部の実施形態において、光学的に透明な部材を介して減圧を断続的に重合性液体に加えることによって重合性液体のガス含有量を低減することは、重合性液体中のガス濃度の低減することによってデッドゾーンを1000ミクロン未満に維持するのに十分である。
【0021】
一部の実施形態において、前記重合領域に接着した状態のキャリアは、静止状態のビルドプレート上のビルド面から離れるように一方向に移動させられる。
【0022】
一部の実施形態において、充填工程はさらに、前記重合性液体による前記ビルド領域の再充填を向上または加速するために、前記ビルド面を基準として前記キャリアを縦方向に往復運動させることをも含む。
【0023】
一部の実施形態において、光学的に透明な部材を介して減圧が重合性液体に加えられる際、キャリアの移動を低減または静止(hold stationary)させる。
【0024】
一部の実施形態において、重合性液体から三次元物体を形成する装置は(a)支持材と、(b)前記支持材と動作可能に関連付けられ、前記三次元物体を形成する際の土台となるキャリアと、(c)ビルド面を有するガス透過性の光学的に透明な部材(前記ビルド面および前記キャリアが中間のビルド領域を画定する)と、(d)前記ビルド面と動作可能に関連付けられ、前記ビルド領域に固化または重合のための液体ポリマーを供給するよう構成された液体ポリマー供給装置(例えばウェル)と、(e)前記光学的に透明な部材を介して前記ビルド領域を照射して前記重合性液体から固体ポリマーを形成するよう構成された放射源と、(f)場合により、前記透明な部材または前記キャリアのいずれかと動作可能に関連付けられた少なくとも1つの駆動装置と、(g)前記キャリア、および/または場合により前記少なくとも1つの駆動装置、および前記放射源と動作可能に関連付けられた、前記キャリアを前記ビルド面から分離させる形で移動させて前記固体ポリマーから前記三次元物体を形成するための制御装置と、(h)前記光学的に透明な部材と流体連通状態にあり、前記ガス透過性部材を介して前記ビルド面への圧力を制御し、かつ/またはガスを供給するよう構成設定されるガス/圧力制御装置とを含み、前記ガス/圧力制御装置は前述の方法を実行するよう構成設定される。
【0025】
一部の好適なCLIPの実施形態において、充填工程、照射工程、および/または移動工程は、(i)前記ビルド面に接触している重合化液体のデッドゾーン(または持続的液体界面)の連続的維持、および(ii)前記デッドゾーンと前記デッドゾーンに相互接触している前記固体ポリマーとの間の重合ゾーン(後述するとおり、増大中の三次元物体の底部活性表面と記載される場合もある)の勾配の連続的維持も同時に行いながら実行される。言い換えれば、一部の好適なCLIPの実施形態において、三次元物体、またはその少なくとも一部の接触部分は、原位置で形成または製造される。「原位置」は、本明細書で使用する場合、化学工学分野での意味を有し、「所定の位置」を意味する。例えば、三次元物体の増大中の部分とビルド面の両方(典型的に中間に介在する活性表面または重合勾配、およびデッドゾーン)が、3D物体の少なくとも一部の形成中に所定の位置に維持されるか、あるいは3D物体における断裂線または断裂面の形成を防ぐよう、十分に所定の位置に維持される状態を意味する。例えば、本発明に記載の一部の実施形態では、最終の3D物体において互いに接触する3D物体の様々な部分を、重合性勾配または活性表面から逐次的に形成することができ、あるいは重合性勾配または活性表面の内部で形成することもできる。さらに、3D物体の第1の部分が重合勾配内に残留しているか、または活性表面と接触している状態を維持している状態のまま、第1の部分と接触している第2の部分を重合勾配内に形成することもできる。相応に、3D物体を(離散的な複数の層に分かれた製作ではなく)重合性勾配または活性表面から連続的に、遠隔操作により製作、増大または製造することができる。デッドゾーンと、重合ゾーンの勾配/活性表面は、製造する物体の形成の一部または全部を通じ、例えば(および一部の実施形態において)少なくとも5、10、20、または30秒間、および一部の実施形態では少なくとも1または2分間、維持され得る。
【0026】
本発明の非制限的な実施例および具体的な実施形態は、本明細書の図面および下記の明細書本文においてさらに詳しく説明される。本明細書において引用される米国特許参考文献の開示はすべて、引用することによりその全体が本明細書の一部をなすものとする。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の方法の一実施形態の概略図である。
図2】本発明の装置の一実施形態の透視図である。
図3】本発明を実行するための制御システムおよび方法を例示する第1のフローチャートである。
図4】本発明を実行するための制御システムおよび方法を例示する第2のフローチャートである。
図5】本発明を実行するための制御システムおよび方法を例示する第3のフローチャートである。
図6】一部の実施形態に記載のチャネル層を有するビルドプレートの垂直断面図である。
図7】一部の実施形態に記載のチャネル層を有するビルドプレートの垂直断面図である。
図8A-8D】一部の実施形態に記載の三次元印刷システムの概略図の断面図である。
図9】一部の実施形態に記載のビルドプレートの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明について、以下、本発明の実施形態を示す添付図面を参照しつつ、より詳しく記述する。ただし、本発明は多種多様な形態で具現化することができ、また本明細書に記載の実施形態に限定されると解釈されるべきではなく、むしろこれらの実施形態は、本開示が綿密かつ完全なものとなるよう、また本発明の範囲を当業者へ十分に伝えることができるよう、記載される。
【0029】
全体にわたり、同様の番号は同様の要素を指す。図面では、特定の線の太さ、層、構成要素、要素または特徴が、明瞭化のため誇張される場合がある。破線を使用する場合、これは別段に指定のない限り、任意選択的な特徴または動作を例示するものである。
【0030】
本明細書で使用する専門用語は、特定の実施形態に限った記述を目的とするものであり、本発明の制限を意図するものではない。本明細書で使用する場合、単数形の表記は、文脈が別段に明示的に示す場合を除き、複数形も含むことが意図される。さらに、本明細書において「含む」という用語を使用する場合、これは説明される特徴、整数、工程、動作、要素、構成要素および/またはこれらの集合もしくは組み合わせの存在を指定するものであるが、他の1つ以上の特徴、整数、工程、動作、要素、構成要素および/またはこれらの集合もしくは組み合わせの存在または追加を除外するわけではないことも、理解されることになる。
【0031】
本明細書で使用する場合、「および/または」という表記は、それに関連する列挙項目の1つ以上のありとあらゆる組み合わせを含むほか、選択肢(「または」)において解釈される場合は組み合わせの欠如も含む。
【0032】
別段に定義されない限り、本明細書で使用する用語(技術用語および科学用語を含む)はすべて、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。さらに、一般的に使用される辞書において定義されている用語など、用語は本明細書および特許請求の範囲の文脈における各々の意味と整合的な意味を有すると解釈されるべきであり、また本明細書において相応に明示的に定義されない限り、理想化された意味または過剰に形式的な意味に解釈されるべきでないことも、理解されることになる。簡潔および/または明瞭を期すため、公知の機能または構成は詳細に記述されない場合がある。
【0033】
或る要素が別の要素の「上にある」、別の要素に「取り付けられている」、「接続されている」、「連結されている」、「接触している」などの状態にあると言及される場合、その要素は他の要素の直上にある、他の要素に直接取り付けられている、直接接続されている、および/または直接接触している場合もあれば、介在要素が存在する場合もある。対照的に、或る要素が、例えば別の要素の「直上にある」、別の要素に「直接取り付けられている」、「直接接続されている」、「直接連結されている」、または「直接接触している」状態にあると言及される場合、介在要素は存在しない。また、当業者であれば、別の特徴に「隣接して」配置される構造または特徴への言及は、隣接する特徴と重なり合う部分、または隣接する特徴の下方に存在する部分を有し得ることも理解することになる。
【0034】
空間に関して相対的な用語、例えば「下方」、「下側」、「上方」、「上側」といった用語は、本明細書において、図面において例示されるような、或る要素または特徴の別の要素または特徴に対する関係を記述する際、記述の簡略化のために使用される場合がある。空間に関して相対的な用語は、図面において描かれる配向に加え、使用中または動作中の装置の様々な配向を包含する意図もあると理解されることになる。例えば、図面に記載の装置が反転される場合、他の要素または特徴の「下方にある」と記述される要素は、その後において他の要素または特徴の「上方」に配向されることになる。したがって、「下方」という例示的用語は、上方と下方の配向をいずれも包含し得る。装置は別の状態で配向される(90度または他の配向での回転)場合もあり、空間に関して本明細書で使用する相対的な用語も相応に解釈することができる。同様に、「上方へ」、「下方へ」、「縦方向」、「横方向」といった用語も、本明細書では別途具体的に指示する場合を除き、単に説明目的で使用される。
【0035】
「第1の」、「第2の」などの用語は、本明細書では様々な要素、構成要素、領域、層および/または部分の記述に使用され得るが、係る用語によってこれらの要素、構成要素、領域、層および/または部分が限定されるべきではない旨、理解されることになる。むしろ、これらの用語は或る要素、構成要素、領域、層および/または部分を別の要素、構成要素、領域、層および/または部分と区別することだけを目的に使用される。したがって、本明細書において論じられる第1の要素、構成要素、領域、層または部分は、本発明の教示から逸脱することなく第2の要素、構成要素、領域、層または部分と呼ばれることもあり得る。動作(または工程)の順序は、別途具体的に指示する場合を除き、特許請求の範囲または図面に記載の順序に限定されるわけではない。
【0036】
1.重合性液体/A剤成分
任意の適切な重合性液体を、本発明の実現に使用することができる。液体(本明細書では「液体樹脂」、「インク」、または単に「樹脂」と呼ばれる場合もある)は、モノマー、特に光重合性モノマーおよび/またはフリーラジカル重合性モノマー、ならびにフリーラジカル開始剤などの適切な開始剤、ならびにこれらの組み合わせを含み得る。例としてアクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、アクリルアミド、スチレン系樹脂、オレフィン、ハロゲン化オレフィン、環状アルケン、無水マレイン酸、アルケン、アルキン、一酸化炭素、官能性オリゴマー、多官能性硬化部位モノマー、官能性PEGなど、およびこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。液体樹脂、モノマーおよび開始剤の例として、米国特許第8,232,043号、同第8,119,214号、同第7,935,476号、同第7,767,728号、同第7,649,029号、国際公開第2012/129968A1号、中国特許第102715751A号、特開第2012-210408A号に記載のものが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0037】
酸触媒型重合性液体。前述の一部の実施形態では、重合性液体はフリーラジカル重合性液体を含む(この場合、開始剤は後述するとおり、酸素であってもよい)一方、他の実施形態では、重合性液体は酸触媒型またはカチオン重合型の重合性液体を含む。そのような実施形態において、重合性液体は、エポキシド基、ビニルエーテル基など、酸触媒反応に適する基を含有するモノマーを含む。したがって、適切なモノマーの例として、メトキシエテン、4-メトキシスチレン、スチレン、2-メチルプロパ-1-エン、1,3-ブタジエンなどのオレフィン、オキシレン、チエタン、テトラヒドロフラン、オキサゾリン、1,3-ジオキセパン、オキセタン-2-オンなどのヘテロ環モノマー(ラクトン、ラクタム、および環状アミンを含む)、およびこれらの組み合わせが挙げられる。適切な(一般的にイオン性または非イオン性の)光酸発生剤(PAG)は酸触媒型重合性液体に含まれ、例として、オニウム塩、スルホニウム塩およびヨードニウム塩など、例えばジフェニルヨージドヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨージドヘキサフルオロアルセネート、ジフェニルヨージドヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルp-メトキシフェニルトリフレート、ジフェニルp-トルエニルトリフレート、ジフェニルp-イソブチルフェニルトリフレート、ジフェニルp-tert-ブチルフェニルトリフレート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムトリフレート、ジブチルナフチルスルホニウムトリフレート、およびこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。例えば米国特許第7,824,839号、同第7,550,246号、同第7,534,844号、同第6,692,891号、同第5,374,500号および同第5,017,461号を参照されたい。また、Photoacid Generator Selection Guide for the electronics industry and energy curable coatings(BASF 2010)も参照されたい。
【0038】
ヒドロゲル。一部の実施形態において、適切な樹脂の例として、ポリ(エチレングリコール)(PEG)およびゼラチンなど、光硬化性ヒドロゲルが挙げられる。PEGヒドロゲルは、増殖因子などの様々な生物学的製剤を送達するために使用されているが、連鎖増殖重合により架橋されるPEGヒドロゲルが直面している大きな課題は、不可逆的なタンパク質損傷の可能性である。持続的な送達を可能にする光重合の前に、親和性結合性ペプチド配列をモノマー樹脂溶液に含めることにより、光重合されたPEGジアクリレートヒドロゲルからの生物学的製剤の放出を最大化させる条件を増強することができる。ゼラチンは、食品産業、化粧品産業、製薬産業および写真産業で頻繁に使用されるバイオポリマーである。ゼラチンは、コラーゲンの熱変性または化学的分解および物理的分解によって得られる。ゼラチンには、動物、魚およびヒトに見られるものを含め、3種類が存在する。冷水魚の皮膚由来のゼラチンは、薬学的用途での使用に安全であると考えられている。UV光または可視光を使用して、適切に修飾されたゼラチンを架橋させることができる。ゼラチンを架橋させる方法の例として、ローズベンガルなどの色素由来の誘導体の硬化が挙げられる。
【0039】
光硬化性シリコーン樹脂。適切な樹脂の例として、光硬化性シリコーンが挙げられる。Silopren(商標)UV Cure Silicone Rubberなど、UV硬化シリコーンゴムを、LOCTITE(商標)Cure Silicone接着封止剤として使用することができる。用途の例として、光学機器、医療用および外科用器具、外部照明および筐体、電気コネクター/センサー、光ファイバーならびにガスケットが挙げられる。
【0040】
生分解性樹脂。生分解性のネジおよびステントなど、薬剤の送達または一時的性能用途向けの埋込型装置の場合、生分解性樹脂は特に重要である(米国特許第7,919,162号、同第6,932,930号)。乳酸およびグリコール酸(PLGA)の生分解性コポリマーをジメタクリル酸PEGに溶解させて、使用に適する透明樹脂を得ることができる。ポリカプロラクトンおよびPLGAオリゴマーをアクリル基またはメタクリル基で官能化させて、効果的に使用可能な樹脂にすることができる。
【0041】
光硬化性ポリウレタン。特に有用な樹脂は、光硬化性ポリウレタンである。(1)脂肪族ジイソシアネートに基づくポリウレタン、ポリ(ヘキサメチレンイソフタレートグリコール)および場合により1,4-ブタンジオール、(2)多官能性アクリル酸エステル、(3)光開始剤、ならびに(4)抗酸化剤を含む光重合性ポリウレタン組成物を配合することにより、硬質、耐摩耗性、耐汚染性の材料を得ることができる(米国特許第4,337,130号)。光硬化性熱可塑性ポリウレタンエラストマーは、光反応性ジアセチレンジオールを鎖延長剤として組み込む。
【0042】
高性能樹脂。一部の実施形態において、高性能樹脂を使用する。そのような高性能樹脂は時々、前述のとおり、また下記にてさらに詳しく論ずるとおり、高性能樹脂の融解および/または粘度低減のために加熱の使用が必要となり得る。そのような樹脂の例として、米国特許第7,507,784号、同第6,939,940号に記載されているような、エステル、エステルイミドおよびエステルアミドオリゴマーの液晶ポリマーと呼ばれる場合もある材料用の樹脂が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。そのような樹脂は高温での熱硬化性樹脂として採用される場合があることから、本発明において、そのような樹脂は、下記にてさらに詳しく論ずるとおり、照射後に架橋を開始するために適切な光開始剤、例えばベンゾフェノン開始剤、アントラキノン開始剤およびフルオレノン開始剤(これらの誘導体を含む)をさらに含む。
【0043】
付加的な樹脂の例。歯科用途に特に有用な樹脂の例として、EnvisionTEC社製のClear GuideおよびE-Denstone Materialが挙げられる。補聴器産業に特に有用な樹脂の例として、EnvisionTEC社製のe-Shell 300 Seriesの樹脂が挙げられる。特に有用な樹脂の例として、成型/鋳造用途において加硫ゴムと直接併用するためのEnvisionTEC社製のHTM140IV High Temperature Mold Materialが挙げられる。頑丈で硬い部品の製造に特に有用な材料の例として、EnvisionTEC社製のRC31樹脂が挙げられる。インベストメント鋳造用途に特に有用な樹脂の例として、EnvisionTEC社製のEasy Cast EC500が挙げられる。
【0044】
付加的な樹脂成分。液体樹脂または重合性材料は、内部に固体粒子を懸濁または分散し得る。製作する最終生産物に応じて、任意の適切な固体粒子を使用することができる。この粒子は、金属、有機/ポリマー、無機、またはこれらの組成物もしくは混合物であってもよい。この粒子は、非導電性、半導電性または導電性(金属導体および非金属導体またはポリマー導体を含む)であってもよく、磁性、強磁性、常磁性または非磁性であってもよい。この粒子は、球状、楕円状、円柱形などを含め、任意の適切な形状であってもよい。この粒子は、後述するとおり、活性剤または検出可能な化合物を含むが、同じく後述するとおり、液体樹脂中で溶解および可溶化された状態で提供することもできる。例えば、磁性または常磁性の粒子またはナノ粒子を採用することができる。樹脂材料または重合性材料は、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、ブロックコポリマーなどの分散剤を含有し得る。
【0045】
液体樹脂は、製作する生産物特有の目的に同じく応じて、顔料、色素、活性化合物または薬用化合物、検出可能な化合物(例えば蛍光性、燐光性、放射性)などを含め、この液体樹脂中で可溶化される付加的成分を有し得る。そのような付加的成分の例として、タンパク質、ペプチド、siRNAなどの核酸(DNA、RNA)、糖類、小型有機化合物(薬物および薬物様化合物)など、およびこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0046】
重合阻害剤。本発明で使用する阻害剤または重合阻害剤は、液体または気体の形態であってもよい。一部の実施形態において、気体の阻害剤が好適である。特定の阻害剤は、重合されるモノマーおよび重合反応次第で決まる。フリーラジカル重合モノマーの場合、阻害剤は、好都合には酸素であってもよく、空気、酸素を豊富に含む気体(場合により、ただし一部の実施形態において好ましくは、その可燃性を低減するために付加的な不活性ガスを含有する)、または一部の実施形態では純粋な酸素ガスなど、気体の形態で供給することができる。モノマーが光酸発生開始剤により重合される場合など、代替的実施形態において、阻害剤は、アンモニアなどの塩基、微量アミン(例えばメチルアミン、エチルアミン、ジアルキルアミンおよびトリアルキルアミン(例えばジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミンなど))、または二酸化炭素、およびこれらの混合物または組み合わせであってもよい。
【0047】
生細胞を担持する重合性液体。一部の実施形態において、重合性液体は生細胞を「粒子」として内部に担持し得る。そのような重合性液体は一般的に水性であり、酸素化され得るとともに、生細胞が不連続相の状態である「乳剤」と捉えることもできる。適切な生細胞は、植物細胞(例えば単子葉植物、双子葉植物)、動物細胞(例えば哺乳類細胞、鳥類細胞、両生類細胞、爬虫類細胞)、微生物細胞(例えば原核生物、真核生物、原生動物等)などであってもよい。生細胞は、任意の種類の組織(例えば血液、軟骨、骨、筋肉、内分泌腺、外分泌腺、上皮、内皮など)から分化された細胞もしくは当該組織に相当する分化細胞であるか、または幹細胞もしくは前駆細胞等の未分化細胞であってもよい。そのような実施形態において、重合性液体はヒドロゲルを形成する液体であってもよく、例として米国特許第7,651,683号、同第7,651,682号、同第7,556,490号、同第6,602,975号、同第5,836,313号などに記載のものが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0048】
2.装置。
本発明の装置の非限定的な実施形態が図2に示されている。この装置は、壁14により定義されるビルドチャンバーを反射鏡13を介して照らす電磁放射線12を供給するデジタル光プロセッサー(DLP)などの放射源11と、ビルドチャンバーの底部を形成する剛性のビルドプレート15とを含み、ビルドチャンバーには液体樹脂16が充填されている。下記にてさらに詳しく論ずるとおり、チャンバー15の底部は、半透過性部材を含むビルドプレートで構成される。構築物17の下方にある物体の頂部は、キャリア18に取り付けられる。キャリアは、リニアステージ19によって縦方向に駆動されるが、後述するとおり、代替的構造物を使用してもよい。
【0049】
液体樹脂のリザーバー、チューブ、ポンプ、液体レベルセンサーおよび/またはバルブを、ビルドチャンバー内の液体樹脂プールを補充するために含めることができる(明瞭化のため不記載)が、一部の実施形態において、単純な重力供給が採用され得る。キャリア用またはリニアステージ用の駆動装置/アクチュエーターを、付随する配線と併せて、既知の技法に従って含めることができる(同じく明瞭化のため不記載)。駆動装置/アクチュエーター、放射源、ならびに一部の実施形態ではポンプおよび液体レベルセンサー、これらをすべて、同じく既知の技法に従って、適切な制御装置と動作可能に関連付けることができる。
【0050】
本発明を実行するために使用するビルドプレート15は一般的に、(典型的には剛性または固体、静止、および/もしくは固定の状態である)半透過性(またはガス透過性)部材を単独で含むか、または1つ以上の付加的な支持用基材(例えば、別段に可撓性の半透過性材料を剛性化するためのクランプおよび引張部材)との組み合わせから成る。半透過性部材は、該当する波長にて光学的に透明な(または別段に、ヒトの目で視覚的に透明であると認知されるか否かを問わず、放射源に対して透明である、すなわち光学的に透明なウィンドウは一部の実施形態において視覚的に不透明な場合もある)任意の適切な材料を原料とすることができ、例として多孔質ガラスまたは微多孔質ガラス、および剛性のガス透過性コンタクトレンズの製造に使用される剛性のガス透過性ポリマーが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。例えばNorman G. Gaylordの米国再発行特許第31,406号を参照されたい。米国特許第7,862,176号、同第7,344,731号、同第7,097,302号、同第5,349,394号、同第5,310,571号、同第5,162,469号、同第5,141,665号、同第5,070,170号、同第4,923,906号および同第4,845,089号も参照されたい。一部の実施形態において、そのような材料はガラス質および/もしくは非晶質のポリマーを特徴とし、ならびに/または実質的に架橋されていることから、本質的に非膨潤性である。好ましくは、半透過性部材は、液体樹脂または重合対象材料接触しても膨潤しない材料を原料として形成される(すなわち「非膨潤性」である)。半透過性部材に適する材料の例として、米国特許第5,308,685号および同第5,051,115号に記載のものなど、非晶質フルオロポリマーが挙げられる。例えば、そのようなフルオロポリマーは、重合される有機液体樹脂インクと併用される場合に潜在的に膨潤すると予想されるシリコーンと比べ、特に有用である。一部の液体樹脂インク、例えばより水性のモノマー系および/または低い膨潤傾向を有する一部のポリマー樹脂インク系の場合、シリコーンベースのウィンドウ材料が適切となり得る。有機液体樹脂インクの溶解性または透過性を、ウィンドウ材料の架橋密度の増加または液体樹脂インクの分子量の増加を含め、既知の多数のパラメーターにより、劇的に低減させることができる。一部の実施形態において、本発明の装置から分離される場合には可撓性であるが、装置内に取り付けられる場合には固定され、(例えば引張リングにより)張力を掛けられる結果、装置内で固定化または剛性化される材料の薄膜またはシートから、ビルドプレートを形成することができる。特定の材料の例として、DuPont社から市販されているTEFLON AF(登録商標)フルオロポリマーが挙げられる。付加的な材料の例として、米国特許第8,268,446号、同第8,263,129号、同第8,158,728号および同第7,435,495号に記載されているようなパーフルオロポリエーテルポリマーが挙げられる。
【0051】
本質的にすべての固体材料、および前述の材料のほとんどが、形状および厚さなどの要因、ならびにそれらが受ける圧力および温度などの環境要因に応じて、「剛性」と見なされ得るにせよ、固有の「可撓性」を多少は有することが理解されることになる。加えて、ビルドプレートに関する「静止状態」または「固定状態」の表記は、下記にて詳述するとおり、たとえビルドプレートを漸進的に調整する(例えば、重合ゾーンの勾配の崩壊に至らない、または崩壊の原因にならない調整)ための機構が提供される場合であっても、あるいは重合性液体の供給を補助するためにビルド面が往復運動に貢献する場合であっても、プロセスの機械的中断が発生しない、あるいは(交互積層の方法または装置の場合のように)プロセスの機械的中断のための機構または構造が提供されないことを意味する。
【0052】
半透過性部材は典型的に、上面部分、底面部分および端面部分を含む。ビルド面は上面部分上にあり、また供給面は上面部分上、底面部分上および/または端面部分上のうちの1箇所、2箇所または3箇所すべてに存在し得る。図2で例示される実施形態において、供給面は底面部分上にあるが、供給面が端面部分上および/または上面部分上に提供される(ビルド面に近接しているが、ビルド面から独立または離間している)という代替的構成を通常の技術で実施することができる。
【0053】
半透過性部材は、一部の実施形態において0.01、0.1または1ミリメートルから、10または100ミリメートルまたはそれ以上までの厚さを有する(下記にてさらに詳しく論ずるとおり、半透過性部材は、製造する品目のサイズに応じるものであり、ガラスなどの付加的な支持用プレートに積層されるか又はそれに接触しているか否かを問わない)。
【0054】
重合阻害剤に対する半透過性部材の透過性は、大気および/または阻害剤の圧力、阻害剤の選択、製作の進行度または速度などの条件次第で決まる。概して、阻害剤が酸素である場合、酸素に対する半透過性部材の透過性は、10または20バーラー~最大1000または2000バーラー以上の範囲であってもよい。例えば、150PSIの圧力条件下で純粋な酸素、またはより酸素濃度が高い大気中で使用される10バーラーの透過性を有する半透過性部材は、大気条件下の周囲大気から酸素が供給される場合、500バーラーの透過性を有する半透過性部材と実質的に同じ能力を発揮し得る。
【0055】
したがって、半透過性部材は、可撓性のポリマーフィルム(任意の適切な厚さ、例えば0.001、0.01、0.05、0.1または1ミリメートル~1、5、10、または100ミリメートル以上を有する)を含み得、ビルドプレートはさらに、ポリマーフィルムに接続され、(例えば、物体を移動させ、弾性的にまたは伸縮自在に元に戻す際にフィルムが物体に張り付かないよう、少なくとも十分に)フィルムを固定し、剛性化する役割を果たす引張部材(例えば、「ドラムヘッド」の場合のような周囲のクランプおよび動作可能に関連付けられた歪み部材または伸縮部材、あるいは複合形態を含む複数の周辺クランプ)を含み得る。フィルムは上面および底面を有し、ビルド面が上面上にあり、供給面が好ましくは底面上にある。他の実施形態において、半透過性部材は、(i)前記重合性液体に接触するよう配置された上面および底面を有するポリマーフィルム層(任意の適切な厚さ、例えば0.001、0.01、0.1または1ミリメートル~5、10または100ミリメートル以上を有する)、ならびに(ii)前記フィルム層の底面に接触する、剛性の、ガス透過性の、光学的に透明な支持部材(任意の適切な厚さ、例えば0.01、0.1または1ミリメートル~10、100または200ミリメートル以上を有する)を含む。支持部材は、フィルム層の底面に接触している上面を有し、また支持部材は、重合阻害剤の供給面の役割を果たし得る底面を有する。半透過性(すなわち重合阻害剤に対して透過性)である任意の適切な材料を使用することができる。例えば、ポリマーフィルムまたはポリマーフィルム層は、例えばTEFLON AF1600(登録商標)フルオロポリマーフィルムまたはTEFLON AF2400(登録商標)フルオロポリマーフィルムのような非晶質の熱可塑性フルオロポリマーなどのフルオロポリマーフィルム、あるいはパーフルオロポリエーテル(PFPE)、特に架橋型PFPEフィルム、または架橋型シリコーンポリマーフィルムであってもよい。支持部材は、ポリジメチルシロキサン部材などのシリコーンポリマー部材もしくは架橋型シリコーンポリマー部材、剛性のガス透過性ポリマー部材、または多孔質もしくは微多孔質のガラス部材を含む。(例えばPFPE材料およびPDMS材料を使用して)接着剤を使用しなくても、フィルムを剛性の支持部材に直接、積層または固定することができる、あるいはPDMS層の上側表面と反応するシランカップリング剤を第1のポリマーフィルム層への接着に使用することができる。UV硬化性PFPEと剛性PDMS支持層との間の連結層として、UV硬化性のアクリレート官能性シリコーンを使用することもできる。
【0056】
装置内に配置される場合、キャリアは、ビルド面の全領域内で、ビルド面上に「ビルド領域」を定義する。前述のJoyce and Chenの装置のように、本発明では連続する相間での接着を破壊するための側方(例えばX方向および/またはY方向)の「投擲」が必要でないことから、ビルド面内でのビルド領域の面積を最大化することができる(または逆に、ビルド領域に割り当てられないビルド面の面積を最小化することができる)。したがって、一部の実施形態において、ビルド領域の全表面積は、ビルド面の全表面積の少なくとも50、60、70、80または90パーセントを占め得る。
【0057】
図2に記載のとおり、様々な構成要素が支持アセンブリーまたはフレームアセンブリー20に装着される。支持アセンブリーまたはフレームアセンブリーの特定の設計は重要でなく、多数の構成を想定することができるが、例示されている実施形態では、前述のビルドチャンバーを形成するために、放射源11が確実にまたは強固に取り付けられるベース21、リニアステージが作動可能に関連付けられる垂直部材22、および壁14が着脱可能にまたは確実に取り付けられ(または壁が配置され)、ビルドプレートが恒久的または着脱可能に強固に固定される水平テーブル23で構成される。
【0058】
前述のとおり、ビルドプレートは、剛性の半透過性部材の単一かつ一体型の部品で構成されるか、または付加的な材料を含み得る。例えば、多孔質または微多孔質のガラスを、剛性の半透過性材料に積層または固定することができる。あるいは、上側部分としての半透過性部材を、重合阻害剤を担持するガスを半透過性部材に供給するよう形成されたパージ経路を有する透明な下側部材に固定することができる(前述および後述のとおり、パージ経路を通ってガスがビルド面に至る結果、未重合の液体材料の放出層の形成を促進する)。そのようなパージ経路は、ベースプレートを通る形で完全にまたは部分的に延びる経路であってもよい。例えば、パージ経路は、ベースプレート中へと部分的に延びてもよいが、その場合、歪みがもたらされないよう、ビルド面の直下領域で終わる。具体的な幾何形状は、半透過性部材へ至る阻害剤の供給面の位置が、ビルド面と同じ側にあるかまたは反対側にあるか、ビルド面の端部上にあるか、あるいはこれらのうち複数が組み合わされた位置にあるか次第で決まる。
【0059】
電子ビーム放射源および電離放射線源を含め、採用される特定の樹脂に応じて、任意の適切な放射源(または放射源の組み合わせ)を使用することができる。好適な一実施形態において、放射源は1つ以上の光源などの化学線源、特に1つ以上の紫外光源である。白熱灯、蛍光灯、燐光灯または発光灯、レーザー、発光ダイオードなど、またこれらの配列を含め、任意の適切な光源を使用することができる。前述のとおり、好ましくは、光源は制御装置に動作可能に関連付けられたパターン形成要素を含む。一部の実施形態において、光源またはパターン形成要素は、デジタルライトプロセッシング(DLP)を備えたデジタル(または変形可能な)マイクロミラーデバイス(DMD)、空間変調器(SLM)もしくは微小電気機械システム(MEMS)ミラー配列、マスク(別名レチクル)、シルエット、またはこれらの組み合わせを含む。米国特許第7,902,526号を参照されたい。好ましくは、光源は、例えばマスクレスフォトリソグラフィにより、マスクを使用せずに重合性液体の曝露または照射を実行するよう構成された、液晶光バルブ配列またはマイクロミラー配列またはDMD(例えば動作可能に関連付けられたデジタルライトプロセッサーを有し、典型的には順繰りに適切な制御装置の制御下に置かれるもの)など、空間光変調配列を含む。例えば米国特許第6,312,134号、同第6,248,509号、同第6,238,852号および同第5,691,541号を参照されたい。
【0060】
一部の実施形態において、下記にてさらに詳しく論ずるとおり、X方向および/またはY方向での移動がZ方向での移動と同時に発生し、結果的に重合性液体の重合過程でX方向および/またはY方向での移動が発生し得る(これは上記のY.Chen et al.またはM.Joyceに記載の、重合性液体の補充を目的とする先行および後続の重合工程間での移動と対照的である)。本発明では、そのような移動を、ビルド面の特定ゾーンにおける「焼き付き」または汚損の低減などを目的に行うことができる。
【0061】
本発明の一部の実施形態における利点は、前述のJoyceまたはChenの装置のような広範囲にわたる側方の「投擲」の要件がないために半透過性部材上のビルド面(すなわちビルドプレートまたはウィンドウ)のサイズを低減することができるという点にあることから、本発明の方法、システムおよび装置では、(そのような側方移動が存在する場合に)キャリアおよび物体の側方移動(X方向および/またはY方向での移動またはこれらの組み合わせを含む)は、好ましくはビルド領域の(側方移動方向における)幅の80、70、60、50、40、30、20パーセント、さらには10パーセント以下または未満である。
【0062】
一部の実施形態において、キャリアは、静止状態のビルドプレートから離れる形で上方へ移動するよう、エレベーターに装着される一方、他の実施形態では逆の配置も使用され得る。つまり、キャリアを固定してビルドプレートを降下させることにより、キャリアをビルドプレートから遠ざける形で移動させることができる。同じ結果を達成するために、他にも多数の様々な機械的構成が、当業者には明らかとなる。
【0063】
キャリアを製作する材料の選択、および物品を製造するためのポリマーまたは樹脂の選択に応じて、キャリアへの物品の接着が時々、物品の仕上げまたは「ビルド」の完了に至る過程でキャリア上に物品を保持する上で十分でない場合がある。例えば、アルミニウム製キャリアはポリ(塩化ビニル)(または「PVC」)と比べ、接着力が低い場合がある。したがって、1つの解決策は、製造する物品を重合する表面上にPVCを含むキャリアを採用することである。仕上がった部分をキャリアから好都合に分離できないほどこれが接着を促進し過ぎてしまう場合、様々な技法を任意で用いて、より接着性の低いキャリアに物品をさらに固定してもよく、例として製作過程で物品をキャリアにさらに固定するための、「Greener Masking Tape for Basic Painting #2025 High adhesion」などの粘着テープの適用が挙げられるが、これに限定されるわけではない。
【0064】
3.制御装置およびプロセス制御。
本発明の方法および装置は、例えば本方法の速度および/または信頼性を高めるために、フィードバック制御およびフィードフォワード制御を含むプロセス制御を実施するためのプロセス工程および装置の特徴を含み得る。
【0065】
本発明の実行で使用する制御装置を、ハードウェア回路、ソフトウェアまたはこれらの組み合わせとして実装することができる。一実施形態において、制御装置は、適切なインターフェースハードウェアおよび/またはソフトウェアを通じてモニター、駆動装置、ポンプおよび他の構成要素と動作可能に関連付けられたソフトウェアを実行する、汎用コンピューターである。本明細書に記載の三次元の印刷または製作の方法および装置の制御に適するソフトウェアの例として、ReplicatorGオープンソース3d印刷プログラム、3D system社製の3DPrint(商標)コントローラーソフトウェア、Slic3r、Skeinforge、KISSlicer、Repetier-Host、PrintRun、Curaなど、およびこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0066】
プロセス中に(例えば、前記充填工程、照射工程および移動工程のうちの1つ、一部または全部の間に)連続的にまたは断続的に、直接または間接的にモニタリングを行うためのプロセスパラメーターの例として、照射強度、キャリアの温度、ビルドゾーン内の重合性液体、増大中の生産物の温度、ビルドプレートの温度、圧力、移動速度、力(例えばキャリアおよび製作する生産物を介してビルドプレートに掛かる力)、歪み(例えば、製作する生産物の増大過程でキャリアに掛かる歪み)、放出層の厚さなどが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0067】
フィードバック制御システムおよび/またはフィードフォワード制御システムで使用され得る既知のパラメーターの例として、(例えば、製作する物品の既知の形状または容積から)予想される重合性流体の消費量、重合性液体から形成されるポリマーの分解温度等などが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0068】
(例えば前述のプロセス工程の一部または全部において)モニタリングされるパラメーターおよび/または既知のパラメーターへの対応として連続的にまたは段階的に、直接または間接的に制御を行うためのプロセス条件の例として、重合性液体の供給速度、温度、圧力、キャリアの移動率または移動速度、照射強度、照射持続時間(例えば「スライス」毎の持続時間)などが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0069】
例えば、温度が重合生産物の分解温度を超えているかどうかを判定するために、適切な熱電対、非接触式温度センサー(例えば赤外線温度センサー)または他の適切な温度センサーを使用して、ビルドゾーン内の重合性液体の温度またはビルドプレートの温度を直接または間接的にモニタリングすることができる。その場合、ビルドゾーン内および/またはビルドプレートの温度を下げるため、制御装置を介してプロセスパラメーターを調整することができる。そのような調整に適するプロセスパラメーターの例として、冷却装置による温度低下、キャリアの移動速度の低下、照射強度の低下、放射曝露持続時間の短縮などが挙げられる。
【0070】
加えて、放射源(例えば水銀灯などの紫外光源)の強度を、光検出器を使用してモニタリングすることにより、(例えば使用中の放射源の定常的劣化を通じた)放射源からの強度の低下を検出することができる。検出された場合、制御装置を介してプロセスパラメーターを調整することにより、強度喪失に適応することができる。そのような調整に適するプロセスパラメーターの例として、加熱装置による昇温、キャリアの移動速度の低下、光源への電力増加などが挙げられる。
【0071】
別の例として、製作時間を延ばすための温度および/または圧力の制御を、加熱装置および冷却装置(個別に、または相互に組み合わせて1つの制御装置に対して別々に応答するように)、ならびに/または圧力供給(例えばポンプ、圧力容器、弁およびこれらの組み合わせ)、ならびに/または制御可能な弁などの圧力解放機構(個別に、または相互に組み合わせて1つの制御装置に対して別々に応答するように)を使用して実現することができる。
【0072】
一部の実施形態において、制御装置は、最終生産物の一部または全部の製作過程全体にわたり、本明細書に記載の(例えば図1を参照されたい)重合ゾーンの勾配を維持するように構成される。具体的な構成(例えば時間、移動率または移動速度、照射強度、温度など)は、特定の重合性液体および創出される生産物の性質などの要因に依存することになる。過去に判定された、または一連の試験稼働もしくは「試行錯誤」を通じて判定された一連のプロセスパラメーターまたは指示の入力により、重合ゾーンの勾配を維持するための構成を経験的に実行することができる。構成は既定の指示を通じて提供され得る。構成は適切なモニタリングおよびフィードバック(上記にて論じたとおり)、これらの組み合わせにより、または他の何らかの適切な形で達成され得る。
【0073】
一部の実施形態において、制御装置は、ビルドプレート内のチャネルに至るチャンバーおよび/またはガス導管への流体流動の増減のため、本明細書に記載の導管に供給されるガスの圧力および/または組成を制御するよう構成設定される。
【0074】
一部の実施形態において、前述の装置との間に適切なインターフェースハードウェアを有する汎用コンピューター内で実行されるソフトウェアプログラムにより、前述の方法および装置を制御することができる。多数の選択肢が商業的に利用可能である。複数の構成要素を1つに組み合わせた非限定的な例が図3から5に記載されており、これらの図において「マイクロコントローラー」はParallax社製Propeller、ステッパーモーター駆動装置はSparkfun社製EasyDriver、LED駆動装置はLuxeon社製Single LED Driver、USB/シリアル変換装置はParallax社製USB to Serial変換装置、そしてDLPシステムはTexas Instruments社製LightCrafterシステムである。
【0075】
4.一般的方法。
前述のとおり、本発明は三次元物体の形成方法を提供するものであり、本方法は、(a)キャリアおよびビルドプレートを提供する工程(前記ビルドプレートは半透過性部材を含み、前記半透過性部材はビルド面および前記ビルド面から離れた供給面を含み、前記ビルド面と前記キャリアが中間のビルド領域を画定し、前記供給面は重合阻害剤と流体接触する)、その後における(同時および/または順次の)(b)前記ビルド領域に重合性液体を充填する工程(前記重合性液体は前記ビルドセグメントと接触する)、(c)前記ビルドプレートを介して前記ビルド領域を照射して前記ビルド領域内に固体の重合領域を生み出す工程(前記固体の重合領域と前記ビルド面との間に前記重合性液体から成る液体フィルム放出層が形成され、液体フィルムの重合は前記重合阻害剤によって阻害される)、ならびに(d)前記キャリアが前記重合領域に接着された状態で前記キャリアを前記静止状態のビルドプレート上の前記ビルド面から離れる形で移動させて、前記重合領域と前記上部ゾーンとの間に後続のビルド領域を創出する工程を含む。概して、本方法は(e)工程(b)から(d)までの継続および/または反復により、互いに接着した状態の重合領域の堆積の継続または反復により前記三次元物体が形成されるまで、後続の重合領域が従前の重合領域と接着した状態を生み出す工程を含む。
【0076】
放出層の機械的放出が必要ないことから、または酸素を補充するためのビルド面の機械的移動が必要ないことから、本方法を連続的な形で実行することができるが、前述の個別の工程を逐次的に、同時に、またはこれらを組み合わせる形で実行できることも、理解されることになる。実際、製作中の領域の密度および/または複雑さなどの要因に応じて、工程の速度を経時的に変化させることができる。
【0077】
また、ウィンドウまたは放出層からの機械的放出においては一般的に、ウィンドウの再コーティングを可能にする次の照射工程に対して望ましい距離よりもさらに遠くまでキャリアをビルドプレートから移動させ、次いでキャリアを再びビルドプレートに近付けるよう戻す(例えば「二歩前進一歩後退」動作)必要があることから、本発明は一部の実施形態において、この「バックアップ」工程の排除を可能にするとともに、再コーティングのためにウィンドウの移動に介入することなく、または形成済みの弾性放出層の「スナッピング」を行うことなく、キャリアを一定方向に、または単一方向に移動させることを可能にする。しかし、本発明の他の実施形態では、放出の実現ではなく、より迅速に重合性液体をビルド領域内へ充填または圧送することを目的に、往復運動が用いられる。
【0078】
一部の実施形態において、移動工程は、工程毎または増分毎に均等な増分(例えば0.1または1ミクロン~最大10または100ミクロン以上の増分)で逐次的に実行される。一部の実施形態において、移動工程は、工程毎または増分毎に可変性の増分(例えば毎回の増分が0.1または1ミクロン~最大10または100ミクロン以上の範囲)で逐次的に実行される。増分の大きさは、移動率と併せて、部分的に、温度、圧力、製造する物品の構造(例えばサイズ、密度、複雑さ、構成など)などの要因に依存することになる。
【0079】
本発明の他の実施形態において、移動工程は均等または可変性の比率で連続的に実行される。
【0080】
一部の実施形態において、移動率(実行が逐次的か連続的かのいずれを問わない)は、同じく温度、圧力、製造する物品の構造、放射強度などの要因に応じて1秒当たり約0.1、1、または10ミクロン~最大約100、1,000、または10,000ミクロンの範囲である。
【0081】
下記にてさらに記述するとおり、一部の実施形態において、充填工程は、加圧条件下で前記重合性液体を前記ビルド領域内へ押し込むことによって実行される。そのような場合、1つまたは複数の移動工程を、1秒当たり少なくとも0.1、1、10、50、100、500または1000ミクロン以上の移動率または累積移動率または平均移動率で実行することができる。概して、圧力は、前記圧力が掛からない状態で前記移動工程を繰り返す最大移動率と比べ、少なくとも2、4、6、8または10倍の前記移動工程率にまで高める十分な圧力としてよい。前述のような装置を圧力容器内に収納することにより圧力を印加し、(例えば空気、酸素に豊富に含む空気、ガスの混和物、純粋な酸素などの)加圧雰囲気中でプロセスを実行する場合、10、20、30または40ポンド毎平方インチ(PSI)~最大200、300、400または500PSI以上の圧力を使用することができる。不規則な大型の物体を製作する場合、より高い圧力は、大型高圧容器のコストを背景に、より遅い製作時間と比べ好ましくない場合がある。そのような実施形態では、供給面および重合性液体の両方が、同じ圧縮ガス(例えば、酸素を20~95体積パーセント含み、酸素が重合阻害剤の役割を果たすもの)に流体接触していてもよい。
【0082】
他方、より小さい品目を製作する場合、あるいはロッドまたは繊維は圧力容器の孔または開口部を通って製造される関係上、圧力容器から除去または排出できるロッドまたは繊維を製作する場合、圧力容器のサイズを、製作する生産物のサイズの割に小さく保つことができ、また(所望される場合は)より高い圧力を、より容易に利用することができる。
【0083】
前述のとおり、照射工程は一部の実施形態において、パターン化された照射を使用して実行される。パターン化された照射は、製作する特定の品目に応じて、固定されたパターンであるか、または前述のとおりパターン発生装置(例えばDLP)によって創出される可変パターンであってもよい。
【0084】
パターン化された照射が、経時的に一定に保持されるパターンではなくむしろ可変パターンである場合、毎回の照射工程は任意の適切な時間であるか、または例えば照射強度、重合性材料中における色素の有無、増大率などの要因に応じた持続時間であってもよい。したがって、一部の実施形態において、毎回の照射工程の持続時間を0.001、0.01、0.1、1または10マイクロ秒~最長1、10、または100分以上の範囲とすることができる。各照射工程間の間隔は、一部の実施形態において、好ましくは可能な限り短く、例えば0.001、0.01、0.1、または1マイクロ秒~最長0.1、1、または10秒である。
【0085】
デッドゾーンと重合ゾーンの勾配との間には(これら2つが接触する場所に)厳密な境界がないが、重合ゾーンの勾配の厚さは、一部の実施形態において、少なくともデッドゾーンの厚さと同等である。したがって、一部の実施形態において、デッドゾーンの厚さは0.01、0.1、1、2もしくは10ミクロン~最大100、200もしくは400ミクロン以上であり、および/または重合ゾーンの前記勾配と前記デッドゾーンを併せた厚さは1もしくは2ミクロン~最大400、600、もしくは1000ミクロン以上である。したがって、重合ゾーンの勾配は、その時点で特有のプロセス条件次第で厚くなる場合もあれば薄くなる場合もある。重合ゾーンの勾配が薄い場合、それは増大中の三次元物体の底部の活性表面として説明することもでき、この表面とモノマーが反応して、付帯的に増大するポリマー鎖の形成を継続し得る。一部の実施形態において、重合ゾーンの勾配または活性表面は、(重合工程が継続する一方で)少なくとも5、10、15、20または30秒~最長5、10、15または20分以上、あるいは三次元生産物の完成まで維持される。
【0086】
本方法はさらに、前記三次元物体に(例えば既定の望ましい意図的な開裂位置に、あるいは前記物体において開裂の防止または低減が重要でない位置に)開裂線を十分に形成できる時間にわたり重合ゾーンの前記勾配/活性表面を遮断し、その後、重合ゾーンの前記勾配を(例えば移動工程の一時停止および再開、照射強度の増減、ならびにこれらの組み合わせによって)再開する工程を含み得る。
【0087】
一部の実施形態において、ビルド面は平坦であるが、他の実施形態において、ビルド面は不規則で、例えば凸状または凹状に湾曲しているか、あるいはビルド面内に形成された壁または溝を有する。いずれの場合もビルド面は平滑であるか、または凹凸があってもよい。
【0088】
繊維またはロッドの形成において湾曲および/または不規則なビルドプレートまたはビルド面を使用して、様々な材料を、製作する単一の物体に供給することができる(つまり、それぞれが別々の液体供給部などと関連付けられている、ビルド面内に形成された経路または溝を介して同一のビルド面に様々な重合性液体を供給することができる)。
【0089】
重合性液体用のキャリア供給経路。重合性液体を液体導管およびリザーバーシステムからビルドプレートへ直接供給することができる一方、一部の実施形態において、キャリアは内部に1つ以上の供給経路を含む。キャリア供給経路は、重合性液体供給部、例えばリザーバーおよび付随するポンプと流体連通する状態である。異なるキャリア供給経路を同じ供給部と流体連通させ、互いに同時に動作させることができるか、あるいは(例えば、各キャリア供給経路用のポンプおよび/または弁の提供を通じて)異なるキャリア供給経路を互いに別々に制御することができる。別々に制御可能な供給経路は、同じ重合性液体を含有するリザーバーと流体連通させることができるか、または異なる重合性流体を含有するリザーバーと流体連通させることができる。弁アセンブリーの使用を通じて、一部の実施形態において、所望される場合は同じ供給経路を介した異なる重合性液体を交互に供給することができる。
【0090】
5.重合性液体の往復供給。
本発明の一実施形態では、重合性液体によるビルド領域の再充填を向上または加速するために、ビルド面を基準としてキャリアを縦方向に往復運動(または振動)させる(つまり、これら2つは互いを基準に縦方向に往復運動する)。そのような往復運動または振動(これら2つの用語は本明細書において互換的に使用される)は、ビルド面への重合性液体の供給を向上するよう構成設定される限り、互いに均一および不均一、および/または周期的もしくは非周期的な構成設定を含め、如何なる適切な構成設定であってもよい。
【0091】
一部の実施形態において、アップストロークおよびダウンストロークを含む縦方向往復運動工程は、アップストロークの移動距離がダウンストロークの移動距離より長い状態で実行されることにより、移動工程の一部または全部を同時に実行することができる(つまり、キャリアをZ次元においてビルドプレートから切り離す形で駆動する)。
【0092】
一部の実施形態において、アップストロークの速度は、アップストロークの合計時間のうち少なくとも20、30、40、または50パーセントの期間にわたり、アップストロークの完了まで、またはダウンストロークの開始に相当する方向変化が生じるまで、徐々に加速する(つまり、アップストロークの漸進的開始および/または漸進的加速が提供される)。言い換えれば、アップストロークは静かに、または徐々に開始する。
【0093】
一部の実施形態において、ダウンストロークの速度は、ダウンストロークの合計時間のうち少なくとも20、30、40、または50パーセントの期間にわたり、徐々に減速する(つまり、アップストロークの漸進的終了および/または漸進的減速が提供される)。言い換えれば、ダウンストロークは静かに、または徐々に、完了または終了する。
【0094】
一部の実施形態ではアップストロークの突発的な終了または突発的な減速、およびダウンストロークの突発的な開始または加速(例えばアップストロークからダウンストロークへ至る移動のベクトルまたは方向の急速な変化)が生じる一方、ここでは漸進的な遷移を(例えばアップストロークとダウンストロークとの間での移動に「停滞期」または一時停止を導入することにより)導入し得ることが理解されることになる。また、毎回の往復運動工程は単一のアップストロークおよびダウンストロークで構成され得る一方、往復運動工程は、頻度および/または振幅が同じ場合もあれば異なる場合もある、連動する2、3、4または5セット以上の複数の往復運動を含んでもよい、という点も理解されることになる。
【0095】
一部の実施形態において、縦方向往復運動工程は、(例えばアップストロークおよびダウンストロークの1サイクル当たり)0.01または0.1秒~最長1または10秒間の合計時間にわたり実行される。
【0096】
一部の実施形態において、アップストロークの移動距離は0.02または0.2ミリメートル(あるいは20または200ミクロン)~1または10ミリメートル(あるいは1000~10,000ミクロン)である。ダウンストロークの移動距離はアップストロークの移動距離と同じであるか、またはそれ未満であってもよく、ダウンストロークの移動距離が少なければ、三次元物体が徐々に形成される過程でキャリアをビルド面から切り離す形で移動させることの達成に役立つ。往復運動工程が複数の連動する往復運動を含む場合、同一セット内のすべてのアップストロークの合計移動距離は、好ましくは、三次元物体が徐々に形成されるにつれてキャリアをビルド面から切り離す形で移動させることを達成できるよう、当該セット内のすべてのダウンストロークの合計移動距離より長い。
【0097】
好ましくは、縦方向往復運動工程、特に本工程におけるアップストロークは、ビルド領域内での気泡またはガスポケットの形成を引き起こすわけではなく、むしろビルド領域は往復運動工程全体にわたり重合性液体が充填された状態を維持し、重合ゾーンまたは重合領域の勾配は「デッドゾーン」と接触している状態を維持し、そして製作される物体は往復運動工程全体にわたり増大する。理解されることになるとおり、往復運動の目的は、往復運動工程が行われない状態でビルド領域を再充填可能な速度と比べ、ビルド領域の再充填を加速または向上することであり、特に、比較的広いビルド領域に重合性液体を再充填しなければならない場合がそうである。
【0098】
一部の実施形態において、移動工程は断続的に、毎分1、2、5または10回の個別移動から、毎分最大300、600または1000回の個別移動の比率で実行され、毎回の移動に一時停止が続き、一時停止中に照射工程が実行される。1回以上の往復運動工程(例えばアップストロークにダウンストロークが加わる工程)を毎回の移動工程内で実行できることが理解されることになる。言い換えれば、往復運動工程を移動工程内に組み入れることができる。
【0099】
一部の実施形態において、個別の移動は、毎回の移動につき10または50ミクロン~最大100または200ミクロンの平均移動距離(場合により、毎回の縦方向往復運動工程の都度、総移動距離、例えばアップストローク距離からダウンストローク距離を引いた合計を含む)にわたり実行される。
【0100】
本発明を実行するための、往復運動工程が本明細書に記載されている装置は実質的に前述のとおり、駆動装置がキャリアと関連付けられ、および/または付加的な駆動装置が透明部材と動作可能に関連付けられ、制御装置がそれらの片方または両方と動作可能に関連付けられ、キャリアと透明部材を前述のとおり互いを基準に往復運動させるよう構成される形で実装される。
【0101】
代替的実施形態において、縦方向往復運動は、キャリアが縦方向または「Z」次元においてビルドプレートから離れるように(例えば連続的または段階的に)移動する間、縦方向または「Z」次元における上方および下方への移動範囲を制限できるようにビルド面(および対応するビルドプレート)を構成することによって実行され得る。一部の実施形態において、そのような限定的な移動範囲を、例えば増大中の物体へビルドプレートを粘性の重合性液体を介して部分的に接着することによる達成される上方運動と、それに続く、ビルドプレートの重量、弾力性など(場合によりばね、緩衝装置、衝撃吸収装置または同様のものを、ビルドプレートおよびビルド面の上方運動または下方運動いずれかに影響を及ぼすよう構成したものを含む)により達成される下方運動の作用により、受動的に付与することができる。別の一実施形態において、そのようなビルド面の運動を、別の駆動システムをビルドプレートと動作可能に関連付け、この駆動システムを制御装置にも動作可能に関連付けて、縦方向往復運動を別個に達成するようにすることにより、能動的に達成することができる。さらに別の一実施形態において、縦方向往復運動は、ビルドプレートおよび/またはビルド面を上方および下方へ屈曲するように構成し、併せて上方運動は増大中の物体へビルド面を粘性の重合性液体を介して部分的に接着することによって達成され、続いて下方運動はビルド面が以前の位置に戻るよう付勢または作用するビルド面固有の剛性によって達成されるよう構成することにより、実行され得る。
【0102】
照明工程または照射工程は、断続的である場合、例えば往復運動が能動的に達成されるか受動的に達成されるかの違いなど様々な要因に応じて、縦方向往復運動と同調する形で実行される場合もあれば、縦方向往復運動と同調しない形で実行される場合もある、という点が理解されることになる。
【0103】
また、縦方向往復運動は、キャリアとビルド面の全領域との間で同時に実行できる(例えばビルド面が固定されている場合)場合もあれば、キャリアとビルド面の様々な領域との間で異なる時点で実行できる(例えばビルド面が張力の掛かったポリマーフィルムなど可撓性材料でできている場合)場合もある、という点も理解されることになる。
【0104】
6 流体流動を増やすために圧力および/またはチャネルを低減するビルドプレート
図6で図示されているとおり、三次元プリンター用のビルドプレート700が示されている。ビルドプレート700は光学的に透明な第1のチャネル層702と、第1のチャネル層上の光学的に透明でガス透過性の第2のチャネル層704と、上側表面および下側表面を有する可撓性、光学的に透明、ガス透過性のシート706とを含む。シートの上側表面は、三次元物体を形成するためのビルド面710を形成する。接着層712と714はそれぞれ、チャネル層702と704との間、およびチャネル層704とシート706との間に位置する。チャネル層702は、圧力制御装置750に流体接続されるチャネル702Aを含み、チャネル層704は、片側でガス源760に、もう片側で真空または出口770に流体接続されるチャネル704Aを含む。図示されているとおり、チャネル層704は平坦部分704Bを含み、底面は接着層714と上面によってチャネル層702に接着する。チャネル層704は、平坦部分704Bの上面でチャネルを画定する部分704Cをも含む。チャネル層702、704における「チャネル」は、流体の流入を可能にする非対称の空隙または不規則な表面または他の構成設定を含むと理解すべきである。
【0105】
シート706は、本明細書に記載の非晶質フルオロポリマーを含む任意の適切な半透過性または透過性の材料(つまり、重合阻害剤に対して透過性)から形成されてもよい。例えば、ポリマーフィルムまたはポリマーフィルム層は、例えばTEFLON AF1600(商標)またはTEFLON AF2400(商標)フルオロポリマーフィルムのような非晶質の熱可塑性フルオロポリマーなどのフルオロポリマーフィルム、あるいはパーフルオロポリエーテル(PFPE)、特に架橋型PFPEフィルム、または架橋型シリコーンポリマーフィルムであってもよい。チャネル層704は、透過性ポリマー(例えばポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS))など、ガス透過性または半透過性の材料を含み得る、またはそれによって提供され得る。シート706の厚さは約150μm未満であってもよい。平坦部分704Bおよびチャネルを画定する部分704Cを、酸素プラズマ処理、UVオゾン処理および/または湿式化学処理など、酸化処理を含む化学結合によって一体的に接着してもよい。接着層714は、ポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)フィルムなどガス透過性接着剤であってもよい。この構成設定では、チャネル704Aを通って真空/出口770に至る流動をガス源760が増加/減少させ得る。チャネル704A内のガス流は、ビルド面710上に存在するガス重合阻害剤を増加させ得るガス透過性の透過性チャネル層704、接着層712およびシート706を通るガスの流動を増加または減少させ得る。例えば、ガス源760は酸素ガス源またはその他、ビルド面710での重合を阻害するガスであってもよい。チャネル702Aと704Aは互いに平行な状態で図示されているが、チャネル702Aと704Aは一般的に、ビルドプレート700の光学的品質を改善するために互いに直交する状態であってもよい。
【0106】
一部の実施形態において、酸素など重合阻害剤による雰囲気の富化を使用してもよい。例えば、圧力制御装置750は、例えば、十分な酸素または他の重合阻害剤がビルド領域内に存在する状態を引き続き可能にしつつ、ビルドプレート表面での総ガス圧が下がっても高い酸素分圧を維持するよう、またはビルドウィンドウの透過性低下を可能にするよう、酸素富化の状態にあるチャンバーにガスを供給し得る。
【0107】
ビルドプレート700は、湾曲または屈曲し得るほど十分に薄く、かつ/または可撓性であってもよい。一部の実施形態において、ビルドプレート700の厚さは10、20、30、50、100、200、300、400、500、600、700、800、900ミクロン~1、2、3、4、5、6、7、8、9または10ミリメートルの範囲である。一部の実施形態において、ビルドプレート700は約70~80GPaのヤング率および/または約500~750kgf/mmのビッカース硬度を有する。
【0108】
例えば、圧力制御装置750は、ビルドプレート700を上方(圧力増加)または下方(圧力減少)に屈曲させることができるよう、チャネル層702のチャネル702A内の圧力を増加または減少させ得る。下記の図7に関して論じているとおり、チャネル702Aを含むチャンバーまたは導管によって圧力制御装置750をチャネル702Aに接続してもよい。一部の実施形態において、圧力制御装置750と複数のチャネル702Aのいずれか1つとの間の流体接続がチャネル702Aの全てにおける圧力を十分に制御できるよう、複数のチャネル702Aを互いに、例えば1つまたは複数の接続チャネルによって流体接続してもよい。相応に、チャネル702A内の圧力は圧力制御装置750によって制御され得る。前述のとおり、ビルドプレート700(あるいはその一部または層、例えば最上層または最上部分)は可撓性であってもよい。ビルド中、キャリア/物体がビルド面710から遠ざかるにつれ、ビルドプレート700は上向きに屈曲し、例えばドームの形状になってもよい。理解すべき点として、他の屈曲形状も可能であり、例として開示全体がここに引用することにより本明細書の一部をなすものとする国際公開第2016/149104号に記載のような非対称形状、あるいはビルドプレートの端から端にかけて伝播する「波形」が挙げられる。ビルドプレート700が上向きに屈曲し続けるにつれ、圧力制御装置750はチャネル702A内の圧力を低下させてビルドプレート700に対し、ビルドプレート700が概して平坦な位置に引き戻されるまで下向きの力を加え得る。ビルドプレート700が平坦な位置に戻ると、ビルドプレート700の動きは、物体/キャリアの下方のビルド領域内への付加的な重合性液体(例えば樹脂)の引き込みを補助し得る。相応に、ビルドプレート700の振動は十分に、重合性液体によるビルド領域の再充填を向上または加速させ得る。加えて、圧力制御装置750は、ビルドプレート700がドーム形状または屈曲位置から平坦位置へと移行する際の振動および/または力の速度を増加させ得、これによりビルド面710上のビルド領域への重合性液体の流入が増加し得る。
【0109】
一部の実施形態において、圧力制御装置750は、チャネル702A内の圧力を大気圧より高い圧力および低い圧力に加減する能力を有し得るが、圧力制御装置750は、チャネル702A内の圧力を低減する真空ポンプによって提供されてもよく、このポンプはビルドプレート700の底に対して減圧(例えば大気圧未満、またはシートの反対側に掛かる圧力より低い圧力)を加える

ビルドプレート700が屈曲位置から上向きに平坦位置へと戻る際の振動および/または力の速度を増加させるために、、チャネル702A内の圧力を低減する真空ポンプによって提供されてもよい。

さらに、圧力制御装置750はチャネル702Aに送達されるガスの成分を、例えば望ましい量の酸素または窒素を供給するといった形で制御し得る。一部の実施形態において、空気と比較して酸素量が増やされ、窒素量が減らされる。ガスの組成は圧力制御装置750によって圧力と一緒に制御され得る。
【0110】
図7に図示されているとおり、ビルドプレート700はハウジング800によって、三次元プリンター向けのビルド面710を提供する位置に固定され得る。図示されているとおり、チャネル層702はハウジング800内でクランプによって張力が掛かった状態に保持されるよう、ビルドプレート700の他の層より幅が広い。ビルドプレート700がハウジング800内にあるとき、ハウジング800は圧力制御装置750と流体接続される下側チャンバー802と、ガス源760および真空/出口770に流体接続される上側チャンバー804とを形成する。上側と下側のチャンバー802および804は、チャネル層702によって分離される。コーキングまたは他の封止材料など封止部材806を、ビルドプレート700の上面におけるハウジング800と交差する端部に提供して、重合性液体(例えば樹脂)がチャンバー804に進入する事態を低減または防止してもよい。ビルドプレート700に対する付加的な平面支持を提供するよう、ベース810を下側チャンバー802に含めてもよい。ベース810はサファイア、ガラス、ポリマーおよび/または石英から形成されてもよく、チャネル層702の底面に配置されてもよい。
【0111】
本発明の実施形態は圧力制御装置750およびガス源760/真空出口770にそれぞれ接続される上側と下側のチャンバー802および804に関して記述されるが、理解すべき点として、チャネル層702、704に圧力制御および/またはガス源を提供する何らかの適切な導管を使用してもよい。
【0112】
この構成設定において、付加的な重合阻害剤がビルド面710に到達するよう、ガス源760からチャネル704経由で真空/出口770に至る重合阻害剤ガスの流動を増やし、および/またはガスの圧力を増やすことができる。加えて、ビルド面710への重合性液体の流動を増やすために振動周波数の制御または増加できるよう、ビルド中のビルドプレート700の屈曲は圧力制御装置750によって制御され得る。これらの特徴は、ビルド面に存在する重合阻害剤ガスの増加およびビルド面710に引き込む重合性液体を増やす振動増加を背景に、三次元物体のビルド速度を加速させ得る。
【0113】
7 ビルドプレート経由での脱ガスによって気泡を低減する方法
一部の実施形態において、ビルドプレートに対する圧力およびガス供給を制御して、図1および2に記載の三次元印刷プロセスおよび装置内の重合性液体(例えば樹脂)に含まれる過剰なガスによって形成される気泡または空隙を低減させることができる。本明細書に記載の方法は、図6および7に関して記載のガス源760および真空/出口770など、圧力制御装置/ガス供給を使用して、ビルドプレートに供給されるガスの圧力および/または成分の制御によって実行され得るが、理解すべき点として、代替的ビルドプレートを含む何らかの適切なシステムを使用してもよい。例えば、任意の透過性のビルドプレートを配置して、ビルド面と反対側が圧力制御チャンバー内に位置するようにする、あるいは任意の適切な圧力制御チャネルの構成設定を使用してもよい。
【0114】
図8Aを参考に、三次元印刷装置900はチャネル層910およびシートまたはビルドプレート920を含み、これらを使用して図2のシステムにおける光学的に透明な部材またはビルドプレートを提供することができる。チャネル層910はガス透過性材料から形成されてもよく、またビルドプレート920経由でビルド領域にガスを提供するよう使用され得、チャネル910内のガス組成および/または圧力を制御して、ビルドプレート920経由でビルド領域に至るガスの圧力を低減する(例えば大気圧より低い圧力またはビルドプレート920の反対側に掛かる圧力より低い圧力)、および/またはガス組成を修正することができる。ビルド領域内の樹脂または重合性液体は「デッドゾーン」930と、重合固体または部分重合固体940とを形成する。ガス/圧力制御装置980およびガス供給装置982は1種または複数種のガスをチャネル層910に提供する結果、制御装置980に供給されるガスは入口Iと出口Oを介してガスの成分と圧力を制御される状態で供給され、ビルドプレート920経由でビルド面およびデッドゾーン930へと透過する。ビルドプレート(半透過性部材)の側においてビルド領域とは反対側に大気圧より低い圧力で酸素富化ガスが供給されることによる、酸素など重合阻害剤の重合性液体/ビルド領域への流入および重合性液体からの窒素など気泡形成ガスの流出の一例が図9に記載されている。
【0115】
図8Bに記載のとおり、キャリアが上方に移動するにつれ、ビルド領域は付加的な重合性液体で充填される。例えば、チャネル層910のガスの成分および/または圧力が大気圧の状態の空気である場合、デッドゾーン920内の過剰なガスが気泡950または隙間領域を形成し得る。例えば、溶解ガスが融合し、重合性液体中に隙間を形成し得る。一部の実施形態において、チャネル層910のガスの成分および/または圧力の制御により、気泡950の形成を低減または防止することができる。
【0116】
例えば、酸素ガスは重合阻害剤の役割を果たし得る一方、窒素ガスは概して重合を阻害せず、むしろ重合固体940内で気泡950を形成し得る。空気は有意な量の窒素(約80%)と約20%の酸素を含有することから、空気を重合阻害剤として使用する場合、空気中の窒素が原因で固体940内に気泡950が形成し得る。一部の実施形態において、チャネル層910に供給される重合ガスのガス成分を、窒素量を減らして酸素量を増やすよう選択し、気泡950の形成を低減または排除することができる。酸素富化ガスを減圧条件で提供してもよく、および/またはチャネル層910経由でビルド面に提供される酸素富化ガスは空気中の酸素含有率20%より高くてもよい。特定の実施形態において、チャネル層910経由でビルド面に提供されるガスの酸素含有率は約0.2atmであり、ほぼ100%の酸素であるが、これは窒素を実質的に除去した状態の空気における酸素含有率とほぼ同じである。
【0117】
一部の実施形態において、酸素富化ガス(あるいは窒素低減ガスまたは重合阻害剤ガスの割合が比較的高く気泡生成ガスもしくは非重合阻害剤ガスの割合が比較的低いガス)は気泡形成が低減または排除されるよう、連続的な圧力条件で提供される。しかし、前述のガス組成または減圧を、光学的に透明な部材を介して断続的に重合性液体に加えることにより、重合性液体のガス含有率を低減させてもよい。キャリアをビルド面から遠ざける形で連続的または断続的に(例えば逐次的に、または前記照射工程と同時に)移動させて、固体ポリマーから三次元物体を形成することができる。ビルド面に減圧を加える間、キャリアは静止状態で、減圧を加える工程が完了した後にビルド面から離れる動きを再開してもよい。このように、光学的に透明な部材を介して重合性液体に減圧を断続的に加える工程と、重合阻害剤ガスを重合性液体に供給する工程とを、交互に反復してもよい。例えば、図8Cに図示されているとおり、気泡が形成される場合、特定のガス組成および/または圧力をチャネル層910内のチャネル経由で加えてデッドゾーン930内の重合性液体からガスを除去し、図8Dに記載のとおり、さもなければ固体物体940内で形成されるおそれのある重合性液体中の隙間や気泡を除去することができる。一部の実施形態において、デッドゾーン930の厚さも、例えばある種のガスまたは減圧ガスをシート930またはビルドプレートに加えることによって制御して、重合性液体中のガスを除去し、重合阻害剤ガスが液体の重合を阻害するデッドゾーン930の厚さを減らすことができる。
【0118】
本明細書に記載されているような様々な構成設定において、光学的に透明な部材を介して重合阻害剤ガスを重合性液体に供給することができる。
【0119】
光学的に透明な部材を介して重合性液体に加えられる減圧の量と持続時間は、好ましくは十分に重合性液体中のガス濃度を低減させる。圧力は大気圧の0%、5%、10%、20%、25%、30%、40%~50%、60%、70%、80%、90%または100%の範囲であってもよい。供給されるガスにおける酸素または重合阻害剤ガスの割合は20%、25%、30%、40%~50%、60%、70%、80%、90%または100%の酸素であってもよい。
【0120】
一部の実施形態において、重合性液体はガス濃度の勾配を有し、これが重合性液体を硬化させるための照射量または「用量」を決定付ける。例えば、重合性液体は光学的に透明な部材の上の下側領域と、光学的に透明な部材とは反対側の下側領域の上の上側領域を有することにより、下側領域における硬化用量が上側領域よりも高くなり得る。光学的に透明な部材を介して重合性液体に加えられる減圧は上側領域内のガス濃度を低減し得る一方で下側領域内に重合阻害剤ガスを維持する結果、デッドゾーンの厚さを低減する。一部の実施形態において、下側領域の厚さは約1000ミクロン未満、あるいは約1、2、5、10、20、50、100、200、300~400、500、600、700、800、900または1000ミクロンの範囲である。
【0121】
一部の実施形態において、酸素ガスは重合阻害剤として使用され得る。酸素ガスは任意の適切な圧力で供給してもよく、好ましくは大気圧より低い圧力で供給される。特定の実施形態において、酸素の圧力は実質的に、大気圧での空気中の酸素の分圧に等しい(例えば100%の酸素が約0.2atmで供給される)。重合阻害剤ガスは窒素またはその他、デッドゾーン内での重合阻害に実質的に寄与しないガスを実質的に含有しない状態であってもよい。
【0122】
如何なる特定の理論にも拘束されることを望むわけではないが、ガスで飽和された樹脂は局所圧力が低下すると脱ガスしやすい。ビルドプラットフォームの移動と樹脂再充填の過程で、大きな圧力低下が発生し得る。印刷部分とウィンドウの分離の結果、ガスの融合が生じる場合、印刷部分に空隙が形成され得る。相応に、ガスの圧力を制御する、またはガス透過性ビルドプレート経由で真空を加えることにより、圧力が変化する前に溶解ガスのレベルを低減させることができ、また溶解ガスの量を減らせば、空隙形成前に樹脂に対して発生し得る圧力差が増大し得る。ビルドプレートはガスに対して透過性であり、ビルドプレート/樹脂の界面で平衡状態が比較的素早く確立され得る。印刷形成と部品移動のための空気(または酸素)と真空との間の循環はそれぞれ、部品における空隙形成の前に樹脂に対する圧力差が最大となる状態でCLIPプロセスが実行されることを可能にし得る。さらに、重合阻害における活性成分ではない窒素の除去により、総体的なガスレベルを低減し、さらに、印刷部分における気泡または空隙の形成を低減し得る。
【0123】
加えて、重合性液体とビルドプレートとの間の界面に酸素が供給されることが望ましい一方、重合性液体においてこの界面から遠く離れた重合液体の領域に存在する酸素を硬化させるために必要な照射量の増加に繋がるおそれがあり、その結果、曝露時間が長くなり、印刷速度が遅くなる。総体的な酸素レベルの低減は硬化時間の短縮に繋がる可能性があり、またCLIPプロセスが効果的になるよう界面に十分な酸素を維持することが難しくなる状況に繋がる可能性もある。その上、光は重合性液体を通過する際に強度が減衰することから、モノマーからポリマーへの変換率は曝露領域全体にわたり一定とは限らない。酸素濃度レベルを制御すれば曝露時間を短縮し、印刷速度を高めることができ、その結果、ビルドプレートと重合液体との界面における酸素レベルを効果的に維持することができる。酸素濃度プロファイルも、光強度の変化を視野に入れつつ、モノマーからポリマーへの変換率をより安定させるよう制御することができる。
【0124】
8 付加的なビルドプレート材料
本明細書に記載のビルドプレートを形成するため、多層ビルドプレートおよび/または複数の材料から形成されたビルドプレートを含め、任意の適切な材料を使用してもよい。例えば、可撓層(単独あるいは付加的な支持材または層と一緒に使用)は編み込みガラス織物(ガラス繊維またはeガラス)に架橋シリコン弾性被覆(室温加硫(RTV)シリコンなど)を施したものを含んでもよく、これはガラス繊維織物に軽く浸透して機械的耐久性を提供し得る。シリコンエラストマー(ゴム)の酸素透過性はTeflon(登録商標)AF-2400と同等である。そのような構成設定を単独で使用する、または空気(酸素)の流動向けに利用可能な織物の未充填区域を有するガラスプレートに添加(接着剤で固定)してもよい。スルホン化テトラフルオロエチレン系フッ素化重合体-共重合体、例えばDupont社製のNafion(登録商標)を使用してもよい。
【0125】
一部の実施形態において、現在浄水用途向けに大量に使用されている非対称フラットシート膜(米国特許出願公開第2014/0290478号を参照)が使用され得る。これらの膜は概してポリスルホンまたはポリエーテルスルホンであり、パーフルオロポリマーまたは架橋シリコンエラストマーで被覆して化学的抵抗性を高めることができる。ポリ(フッ化ビニリデン)や、場合によってはポリイミド非対称(多孔質)膜も、例えば化学的抵抗性が問題である場合に使用され得る。膜の一部は被覆せずにそのまま使用することができる。そうした膜の例としてFilmTec(登録商標)膜(Dow Chemical社(米国ミシガン州ミッドランド)製)が挙げられる。これらは多孔質ポリスルホン非対称膜に架橋高Tgポリアミド被覆を施したものである(被覆の厚さは約0.1ミクロン)。架橋ポリアミド被覆は化学的抵抗性を提供するはずである。ポリアミドの酸素透過性は低いが、被覆が薄いため、実効酸素透過率は高い。ポリアミド層のないポリスルホン支持材を、シリコンゴム(またはAF-2400)など多様なポリマーで被覆して、非常に高い酸素透過率を達成することができる。FilmTec(登録商標)膜は、塩水脱塩工場で使用される主要な材料であることから、大量に生産されている。PVDF多孔質膜は繰り返し使用できる。
【0126】
9 ビルドプレート被覆
ビルドプレート表面またはビルド領域にオムニフォビック表面を使用してもよい。例えば、毛管力によって表面に固定または保持される非混和性流体を含有する、パターン化された表面(無作為な粒子配列または微細パターンの表面)を使用してもよい。そのような表面は、表面上の流体が表面に沿って浮遊する結果をもたらし得る。そのような表面の例が米国特許第8,535,779号および第8,574,704号に記載されており、これらの開示は、ここに引用することによりその全体が本明細書の一部をなすものとする。
【0127】
10 ビルドプレートの可撓層
本発明に係る実施形態は、半透過性(またはガス透過性)部材(例えばTEFLON AF(登録商標)フルオロポリマーなどパーフルオロポリマー)を含む、ビルドプレート上の可撓層に関して記述されるが、理解すべき点として、本明細書に記載の構成設定において任意の適切な可撓性材料を使用してもよい。例えば、グラシンなど透明で弾力性のある紙を使用してもよい。グラシンは比較的透明な耐油紙で、スーパーカレンダー仕上げの適切に水和されたセルロース系繊維から形成される。グラシンをワックスまたは釉薬で可塑化および/または被覆することができる。グラシンはガス透過性であってもよい。一部の実施形態において、架橋シリコンエラストマーまたはTEFLON AF(登録商標)フルオロポリマーなどパーフルオロポリマーの薄膜でグラシンを被覆してもよい。グラシン紙は実質的に耐油性であり、本明細書に記載の重合性液体に限定的に付着し得る。
【0128】
本発明は重合性液体に関して記述されている一方、当業者であれば、本明細書に記載の方法と装置を、有機材料や無機材料など適切な固化性液体と併せて使用できることを理解することになる。一部の実施形態において、本発明の実行時に使用可能な「二重硬化」重合性液体(または「樹脂」)および方法として、J.Rolland et al.,Method of Producing Polyurethane Three-Dimensional Objects from Materials having Multiple Mechanisms of Hardening,PCT公開番号WO2015/200179(2015年12月30日公開);J.Rolland et al.,Methods of Producing Three-Dimensional Objects from Materials Having Multiple Mechanisms of Hardening,PCT公開番号WO2015/200173(2015年12月30日公開);J.Rolland et al.,Three-Dimensional Objects Produced from Materials Having Multiple Mechanisms of Hardening,PCT公開番号WO/2015/200189(2015年12月30日公開);J.Rolland et al.,Polyurethane Resins Having Multiple Mechanisms of Hardening for Use in Producing Three-Dimensional Objects(2015年12月30日公開);ならびにJ.Rolland et al.,Method of Producing Three-Dimensional Objects from Materials having Multiple Mechanisms of Hardening,米国特許出願第14/977,822号(2015年12月22日出願);J.Rolland et al.,Method of Producing Polyurethane Three-Dimensional Objects from Materials having Multiple Mechanisms of Hardening,米国特許出願第14/977,876号(2015年12月22日出願),J.Rolland et al.,Three-Dimensional Objects Produced from Materials having Multiple Mechanisms of Hardening,米国特許出願第14/977,938号(2015年12月22日出願),およびJ.Rolland et al.,Polyurethane Resins having Multiple Mechanisms of Hardening for Use in Producing Three-Dimensional Objects,米国特許出願第14/977,974号(2015年12月22日出願)に記載のものが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。これらすべての開示が、ここに引用することによりその全体が本明細書の一部をなすものとする。
【0129】
本発明は、上記にて詳述のとおり、好ましくは連続液体相間重合によって実行される一方、一部の実施形態において、積層造形を含め、ボトムアップ製作向けに代替的な方法および装置を使用することができる。そのような方法および装置の例として、Johnの米国特許第7,438,846号、El-Siblaniの米国特許第8,110,135号、Joyceの米国特許出願公開第2013/0292862号およびChen et al.の米国特許出願公開第2013/0295212号に記載のものが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。これらの特許および出願の開示は、ここに引用することによりその全体が本明細書の一部をなすものとする。
【0130】
上記は本発明を例示するものであり、本発明を限定するものと解釈してはならない。本発明は以下の特許請求の範囲によって定義され、特許請求の範囲の同等物も本発明に含まれることになる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図9