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特許7026059校正バネの調整用止め具を含む回路遮断器型の保護装置
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  • 特許-校正バネの調整用止め具を含む回路遮断器型の保護装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-16
(45)【発行日】2022-02-25
(54)【発明の名称】校正バネの調整用止め具を含む回路遮断器型の保護装置
(51)【国際特許分類】
   H01H 71/74 20060101AFI20220217BHJP
   H01H 73/50 20060101ALI20220217BHJP
   H01H 69/01 20060101ALI20220217BHJP
【FI】
H01H71/74
H01H73/50 G
H01H69/01
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018565275
(86)(22)【出願日】2017-02-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-06-27
(86)【国際出願番号】 FR2017050289
(87)【国際公開番号】W WO2017216433
(87)【国際公開日】2017-12-21
【審査請求日】2019-12-17
(31)【優先権主張番号】1655675
(32)【優先日】2016-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】510339212
【氏名又は名称】アジェ-エレクトロ エス.アー.エス.
【氏名又は名称原語表記】HAGER-ELECTRO S.A.S.
(74)【代理人】
【識別番号】100080447
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 恵一
(72)【発明者】
【氏名】エロワ,ステファヌ
(72)【発明者】
【氏名】ジェルシュ,ジェレミー
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-012532(JP,A)
【文献】特開2008-192365(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 71/74
H01H 73/50
H01H 69/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路遮断器型の電線の保護装置において、シャフト(12)と、校正バネ(14)と、電線の電流を流すために設けられた少なくとも1つの電気回路と、この回路に連結されたコイルと、前記コイルにより引付けられ、校正バネ(14)を圧縮する可動鉄心(8)とを含み、校正バネ(14)が、シャフト(12)の周りに巻付けられた巻回体およびこのシャフト(12)に結合された連結部分(16)を有している装置であって、シャフト(12)は、この連結部分の位置付け幅を提供する複数の位置を有する、バネ(14)の連結部分(16)の支えを受け入れる調節用止め具(30)を含み、
調節可能な止め具(30)が、シャフト(12)の回転軸に直交する枢軸(O)を中心として回転するように組付けられており、前記調節可能な止め具(30)が、バネ(14)の連結部分(16)の異なる支え側面を含むことを特徴とする保護装置
【請求項2】
調節可能な止め具(30)が、ほぼ多角形の形状、好ましくは正方形の形状を有することを特徴とする、請求項に記載の保護装置。
【請求項3】
バネ(14)の連結部分(16)の支え用の調整可能な止め具(30)の各側面が、この側面に対して本質的に平行な方向に延在しこの連結部分を収容するために設けられたくぼみ(40)を有することを特徴とする、請求項またはに記載の保護装置。
【請求項4】
調整可能な止め具(30)が、ドライバー(34)を用いたその回転駆動を可能にするスリット(32)を含むことを特徴とする、請求項のいずれか1つに記載の保護装置。
【請求項5】
調整可能な止め具(30)の連続する2つの位置の間で、シャフト(12)の軸を中心としたバネ(14)の連結部分(16)の角度の幅が10°未満であることを特徴とする、請求項1~のいずれか1つに記載の保護装置。
【請求項6】
バネ(14)および位置付け幅は、調整可能な止め具(30)の2つの連続する位置の間でバネ(14)の剛性の差が10%以下であるように決定されることを特徴とする、請求項1~のいずれか1つに記載の保護装置。
【請求項7】
調整用止め具(30)が、マーキングを含むことを特徴とする、請求項1~のいずれか1つに記載の保護装置。
【請求項8】
バネ(30)が、このバネの連結部分(16)を形成するシャフト(12)に平行な直線部分によって連結された2つの巻回体本体を含むことを特徴とする、請求項1~のいずれか1つに記載の保護装置。
【請求項9】
気回路内の電流を測定するステップと、必要な場合には、バネ(14)の連結部分(16)の支えを受け入れるシャフト(12)上に固定された調節用止め具(30)の位置を修正して、このバネのプレストレスを修正するステップとを含むことを特徴とする、請求項1~のいずれか1つに記載の電線の保護装置の調節方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線路内における例えば短絡の後の電流の急速な上昇、または線路内における過負荷の際の緩慢な上昇に由来する障害の場合に、回路を開放することにより少なくとも1本の線路の保護を確保するように構想された、回路遮断器型の電線の保護装置、ならびにこのような保護装置を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特に仏国特許発明第2987164号明細書により提示されている回路遮断器型の少なくとも1本の線路の保護装置の1つの型は、校正された応力を示す校正バネに対抗する可動鉄心および金属性の固定鉄心を備えた電流線の回路に連結されたコイルを含む磁気アセンブリを含んでいる。
【0003】
コイル内の電流は、電流の大きさに左右される磁気の引力を可動鉄心上で発生させ、この可動鉄心は、応力の磁気閾値に基づいて戻りバネを圧縮して引外し装置を移動させる。引外し装置はこのとき、軸上に組付けられた枢動アームが上下に動いて電気回路内に配置された接点の完全な開放を誘発するようにすることができる。
【0004】
こうして、この線路内に印加される電流に直接左右される電流線の有効な保護が得られる。
【0005】
大量生産の場合、このシステムを形成する異なる電気的構成要素および機械的構成要素は、応力の磁気閾値に関して不確実性をもたらす、特に寸法誤差に由来する製造上のばらつきを有する。特に、大量生産された校正バネは、磁気閾値の幅において支配的な役割を果たす力のばらつきを有する。
【0006】
公知の解決法は、より正確な応力の磁気閾値を得るために、異なる構成要素、特にバネの製造上のばらつきを削減することからなる。しかしながらこの解決法は、これらの構成要素の製造および制御方法のコストの大幅な増加を引き起こす。
【0007】
公知の別の解決法は、特定の校正バネを用いて保護装置を組立て、次に、回路遮断を開始する磁気閾値に結び付けられる電流を測定した後、このバネを取り換えて、磁気閾値に求められる精度を得るべくバネの力の程度を調整することからなる。
【0008】
しかしながら、この解決法には、操作時間が必要であり、これがより高いコストをもたらす。
【0009】
同様に、複数の連結位置を有するバネを配置して、この連結を修正することにより異なる力の程度を得ることも知られている。この解決法には、バネのために場所をとる複数の連結位置を必要とし、特に非常にコンパクトな保護装置のためには適していない可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】仏国特許発明第2987164号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、特に、先行技術のこれらの欠点を回避することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このために本発明は、回路遮断器型の電線の保護装置において、シャフトと、校正バネと、電線の電流を流すために設けられた少なくとも1つの電気回路と、コイルによって引付けられ、応力の磁気閾値に基づいて移動し校正バネを圧縮する可動鉄心を備え、この回路に連結されたこのコイルとを含み、校正バネが、電気回路の接点を開放するために、シャフトの周りに巻付けられた巻回体およびこのシャフトに結合された連結部分を有している装置であって、シャフトは、この連結部分の位置付け幅を提供する複数の位置を有する、バネの連結部分の支えを受け入れる調節用止め具を含むことを特徴とする保護装置を提案する。
【0013】
この装置の利点は、引外し磁気閾値を与える電流の測定値に応じて校正バネの支え位置を素早く変更するために、作業者が調整用止め具にアクセスできるという点にある。こうして、コンパクトであり得るこのシステムを用いて、シャフトとの関係におけるバネの固定部分の位置ひいてはそのプレストレスを容易に修正することができ、これにより、引外し磁気閾値を補正して所望の精度を得ることが可能になる。
【0014】
本発明に係る保護装置は、互いに組み合わせることのできる以下の1つ以上の特徴をさらに含むことができる。
【0015】
有利には、調節可能な止め具は、シャフトの回転軸に直交する枢軸を中心として回転するように組付けられており、前記調節可能な止め具は、好ましくはシャフトの回転軸に直交する枢軸の周りに配置された、バネの連結部分の異なる支え側面を含む。
【0016】
この場合、一実施形態によると、調節可能な止め具は、ほぼ多角形の形状、好ましくは正方形の形状を有する。このようにして、バネの連結のために少なくとも3つの支え位置が得られる。
【0017】
有利には、バネの連結部分の支え用の調整可能な止め具の各側面は、この側面に対して本質的に平行な方向に延在しこの連結部分を収容するために設けられたくぼみを有する。こうして、バネのワイヤーの維持が実現される。
【0018】
有利には、調整可能な止め具は、ドライバーを用いてその回転駆動を可能にするスリットを含む。そのケースの収納部の奥に存在し得る調整用止め具を操作するための単純な手段が得られる。
【0019】
特に、調整可能な止め具の連続する2つの位置の間で、シャフトの軸を中心としたバネの連結部分の角度の幅は10°未満であり得る。
【0020】
特に、調整可能な止め具の2つの連続する位置の間で、バネの剛性の差は10%以下であり得る。
【0021】
有利には、調整用止め具は、その移動方向に沿って応力の磁気閾値の増大または減少を表示するマーキングを含む。作業者はこうして、その調節を実施するために適用すべき移動方向を容易に見ることができる。
【0022】
有利にはバネは、このバネの連結部分を形成するシャフトに平行な直線部分によって連結された2つの巻回体本体を含む。連結部分との関係において対称で最良のバランスを備えたバネが得られる。
【0023】
本発明は同様に、前述の特徴のうちのいずれかを含む電線の保護装置の調節方法において、応力の磁気閾値のために電気回路内の電流を測定するステップと、必要な場合には、バネの連結部分の支えを受け入れるシャフト上に固定された調節用止め具の位置を修正して、このバネのプレストレスを修正するステップとを含む方法をも目的としている。
【0024】
添付図面を参照しながら、一例として記されている以下の説明を読むことで、本発明をより良く理解でき、他の特徴および利点がより明確になるものである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】3極を含む線路を保護するように想定された、本発明に係る保護装置の内部を表わす。
図2】この装置の中央コイルの金属性の鉄心およびこのコイルの校正バネを支持する軸を示す斜視図である。
図3】この軸の上面図である。
図4】この軸の側面図である。
図5】切断平面V-Vに沿って提示されたこの軸の断面図である。
図6】切断平面VI-VIに沿って提示されたこの軸の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1および2は、電流線に対する接続を行なう金属電気接点4を各々含む、3つの電流線の安全を独立した形で確保するように想定された平行な3つのアセンブリを含む、成型プラスチック材料製の支持体2を示している。
【0027】
図2は、両側にある他の2つのアセンブリと類似のものである、中央にあるアセンブリの要素を詳しく示す。
【0028】
各アセンブリは、巻線の磁気主要軸に沿って配置された図示されていない巻線を含み、このコイルはこの軸の一方の側で、このコイルの後部面および側方部を覆う金属性の固定鉄心6によって取り囲まれ、この軸のもう一方の側で、このコイルの前部面を覆う金属性の可動鉄心8によって取り囲まれている。
【0029】
金属性の可動鉄心8は、その磁気軸に沿ってコイルに接近するためにこの可動鉄心の枢動を可能にする2つの下部足状部10を含む。
【0030】
コイルの磁気軸に直交し、金属性鉄心6、8の上方に配置され、支持体2内で自由に回転するシャフト12が、各コイルの上方に、この磁気軸を通る垂直対称平面を有するバネ14を支持している。
【0031】
各バネ14は、シャフト12に平行でこのシャフトに固定された連結部分16を形成する直線中央部分を含み、この中央部分は、各端部で、このシャフトの回りに巻付けられた突合せ巻回体を伴う螺旋部分14によって延長されており、この螺旋部分は、側方の一点において可動鉄心8の上部に押しつけられる小さなフックをその端部に含む、可動部分18を形成する直線部分で終わる。
【0032】
このようにして、二重の巻回体本体を伴う校正されたバネ14が得られ、このバネは、反動を得るためにその連結部分16によってシャフト12を支えとし、コイルの引力に対抗してコイルから可動鉄心8を離隔させる傾向をもつ校正された応力をこの鉄心上に常時発生させる対称的な支えを、可動鉄心8の上部で各々の側に適用する。
【0033】
各コイルについて、校正されたバネ14の一定の応力を超えるこのコイルの引力から、可動鉄心8がコイルに向かって移動した時点で、引外し装置を形成する上下に動くレバー20が解放される。この場合、レバー20は上下に動いて、電気回路の電気接点を急激に開放して、この回路の遮断を実現する。好ましくは、上下に動くレバー20はシャフト12に剛性的に連結されている。
【0034】
保護装置は、ケース2の上部からはみ出るユーザー調節用ボタン22を含み、これらのボタンは、この装置が保護用フードで覆われている場合に外部からアクセス可能であり、調節用ボタンの位置に対面してフード上に付けられたマーキングにより表示される回路遮断器の磁気引外し閾値の特定の調節を、ドライバーを用いてこのボタンを回すことで可能にしている。
【0035】
磁気引外し閾値の特定の調節は、求められる保護を確保する目的で装置のこの引外しの程度を微妙に校正することを必要とする。したがって、引外しの程度の微妙な校正を可能にする工場内での調節を想定することが有利である。
【0036】
図3、4および5は、各校正バネ14について1つの調整可能な止め具30を有し、この調整可能な止め具は、好ましくはこのシャフトの軸に直交する中心の枢軸Oによってシャフト12上に固定された、成型プラスチック材料製のほぼ正方形の形になり、この軸に対して平行で可動鉄心8の反対側に向けられたその面は、このシャフトと一体化する目的で校正バネの連結部分16の支えを実現する。
【0037】
調整可能な止め具30の正方形の3つの作用部側面は、バネ14の連結用直線部分16の調整を可能にしてこの部分からの分離を回避する、この側面に本質的に平行な方向に延在するわずかなくぼみ40を含む。
【0038】
調整可能な止め具30の正方形の上部は、この止め具を、矢印36により提示されているようにマーキング「-」を有する側に向かって左へ4分の1回転回し、矢印38により提示されているようにマーキング「+」を有する側に向かって右へ4分の1回転回すために、図1に提示されたドライバー34の係合を可能にする中央スリット32を有する。代替的には、調整可能な止め具30の正方形の上部は、プラスのドライバーの係合を可能にする十字形の中央くぼみを有することができる。
【0039】
調整可能な止め具30の正方形の3つの作用部側面は、その枢軸Oから段階的に大きくなる距離のところにあることから、図3の右側に提示された位置Aから出発して連続的にこの正方形を回転させることによって、矢印36により表示される「-」方向への回転の後、このバネに小さなプレストレスを与える枢軸Oに最も近いバネ14の連結用直線部分16の位置が得られ、その後、「+」の方向での4分の1回転の回転により、このバネに中位のプレストレスを与える位置Bが得られ、次に、「+」の方向に4分の1回転の後続する回転により、このバネに強いプレストレスを与える位置Cが得られる。
【0040】
特に、提示された実施例について、調整可能な止め具30の位置は、2つの連続する位置の間に、5°変動するシャフト12の周りのバネ14の連結部分16の角度位置の幅を提供する。この角度位置の変動により、2つの位置の間で、電流の大きさの程度に適応されたバネの剛性にしたがって+/-7%と+/-10%との間に含まれるバネ14の剛性の調整が可能になる。
【0041】
こうして、フードが開放した状態の装置を作業場内で調整する、正確かつ使用が簡単な手段が得られ、この手段により、作業者は、完全に組立てられた装置の引外し閾値を与える実際の電流の程度の測定を行なうことができ、次に調整可能な止め具30の3つの位置のうちの1つを適用することにより校正バネ14の支え点の調節を行なうことができるようになる。
【0042】
こうして、異なる構成要素の製造誤差、特に校正バネ14の製造誤差は、組立て済みの装置を分解することなく極ごとに個別に補正され、こうしてこれらの構成要素について正常な精度を求めることが可能となり、こうして製造コストは削減される。
【0043】
シャフト12上に統合されたこの調整可能な止め具システム30は、非常にコンパクトで、既存の装置上に、その外形寸法を修正することなく容易に追加することができる。
【0044】
調整可能な止め具30の正方形の3つの面の使用は、これらの面上でのバネ14の連結用直線部分16の支えによって、非常に安定したスライド位置を提供する。変形形態として、正方形の4つの面を使用すること、あるいは異なる数の支え面を含む止め具を実現することが可能であると思われる。同様に、バネの連結点16の位置の連続的変動を提供する、この連結点の支えを含む調整可能な止め具を使用することも可能である。
【符号の説明】
【0045】
8 可動鉄心
12 シャフト
14 校正バネ
16 連結部分
30 調節用止め具
図1
図2
図3
図4
図5
図6