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特許7026074自動運転車両の遠隔運転システム、方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-16
(45)【発行日】2022-02-25
(54)【発明の名称】自動運転車両の遠隔運転システム、方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04Q 9/00 20060101AFI20220217BHJP
   B62D 6/00 20060101ALI20220217BHJP
【FI】
H04Q9/00 301B
B62D6/00
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019052710
(22)【出願日】2019-03-20
(65)【公開番号】P2020155936
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2021-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092772
【弁理士】
【氏名又は名称】阪本 清孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119688
【弁理士】
【氏名又は名称】田邉 壽二
(72)【発明者】
【氏名】杉本 修
(72)【発明者】
【氏名】大岸 智彦
【審査官】木村 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-206218(JP,A)
【文献】特開2010-149612(JP,A)
【文献】特開2013-091443(JP,A)
【文献】特開2004-314891(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04Q 9/00
B62D 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動運転車両の第1ステアリングを操舵コントローラの第2ステアリングで遠隔操作する遠隔運転システムにおいて、
自動運転車両が検知した第1ステアリングの操舵角を取得する手段と、
第2ステアリングの操舵角を第1ステアリングの目標操舵角として自動運転車両へ送信する手段と、
前記取得した第1ステアリングの操舵角と前記第2ステアリングの操舵角との差分を操舵角差分として検知する手段と、
前記操舵角差分に応じた操舵抵抗力を前記第2ステアリングに生じさせる手段とを具備したことを特徴とする自動運転車両の遠隔運転システム。
【請求項2】
前記操舵抵抗力を生じさせる手段は、操舵角差分が大きいほど操舵抵抗力を小さくすることを特徴とする請求項1に記載の自動運転車両の遠隔運転システム。
【請求項3】
前記操舵抵抗力を生じさせる手段は、操舵角差分が大きいほど操舵抵抗力を大きくすることを特徴とする請求項1に記載の自動運転車両の遠隔運転システム。
【請求項4】
操舵角差分が小さくなる方向への操舵抵抗力を、操舵角差分が大きくなる方向への操舵抵抗力よりも小さくしたことを特徴とする請求項3に記載の自動運転車両の遠隔運転システム。
【請求項5】
前記操舵抵抗力を生じさせる手段は、入力信号に応じた操舵抵抗力を第2ステアリングに生じさせるドライビングフォース機能を備えた操舵コントローラに前記操舵抵抗力に対応した信号を入力させることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の自動運転車両の遠隔運転システム。
【請求項6】
前記第1ステアリングの操舵角を取得する手段は、自動運転車両からセルラー回線で操舵角を受信することを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の自動運転車両の遠隔運転システム。
【請求項7】
前記操舵抵抗力が、ロジスティック特性を有する変換関数に前記操舵角差分を適用して求められることを特徴とする請求項1ないし6いずれかに記載の自動運転車両の遠隔運転システム。
【請求項8】
前記変換関数のパラメータが車両の走行状態に応じて可変であることを特徴とする請求項7記載の自動運転車両の遠隔運転システム。
【請求項9】
自動運転車両の第1ステアリングを操舵コントローラの第2ステアリングで遠隔操作する遠隔運転方法において、
コンピュータが、自動運転車両が検知した第1ステアリングの操舵角を取得し、
コンピュータが、第2ステアリングの操舵角を第1ステアリングの目標操舵角として自動運転車両へ送信し、
コンピュータが、前記取得した第1ステアリングの操舵角と第2ステアリングの操舵角との差分を操舵角差分として検知し、
コンピュータが前記操舵角差分に応じた操舵抵抗力を前記第2ステアリングに生じさせることを特徴とする自動運転車両の遠隔運転方法。
【請求項10】
前記操舵角差分が大きいほど操舵抵抗力を小さくすることを特徴とする請求項9に記載の自動運転車両の遠隔運転方法。
【請求項11】
前記操舵角差分が大きいほど操舵抵抗力を大きくすることを特徴とする請求項9に記載の自動運転車両の遠隔運転方法。
【請求項12】
自動運転車両の第1ステアリングを操舵コントローラの第2ステアリングで遠隔操作する遠隔運転プログラムおいて、
自動運転車両が検知した第1ステアリングの操舵角を取得する手順と、
第2ステアリングの操舵角を第1ステアリングの目標操舵角として自動運転車両へ送信する手順と、
前記取得した第1ステアリングの操舵角と前記第2ステアリングの操舵角との差分を操舵角差分として検知する手順と、
前記操舵角差分に応じた操舵抵抗力を前記第2ステアリングに生じさせる手順とを、コンピュータに実行させる自動運転車両の遠隔運転プログラム。
【請求項13】
前記操舵角差分が大きいほど操舵抵抗力を小さくすることを特徴とする請求項12に記載の自動運転車両の遠隔運転プログラム。
【請求項14】
前記操舵角差分が大きいほど操舵抵抗力を大きくすることを特徴とする請求項12に記載の自動運転車両の遠隔運転プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動運転車両を遠隔操作により運転する遠隔運転システム、方法およびプログラムに係り、特に、自動運転車両のステアリングの遠隔操作に好適な自動運転車両の遠隔運転システム、方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
カメラやGNSSなどのセンサを利用して、自車位置や周囲物体を認識しながら、カーナビから与えられたルート上をレベル4自動運転走行することを可能にした自動運転が特許文献1,2に開示されている。また、自動運転システム用オープンソースソフトウェアとして「Autoware」(登録商標)が非特許文献1に開示されている。
【0003】
自動運転車両には、自動運転システム(遠隔運転機能を含む)、セルラー通信システム、車両周辺を撮影するカメラが搭載されるものと想定されており、通信回線を介して車両周辺の映像情報が遠隔側のオペレータに提供されるほか、遠隔側のハンドル・アクセル・ブレーキ等の操作信号が伝達される。伝達された操作信号は、自動運転システムおよび自動運転車内の車載ネットワーク、例えばCAN (Controller Area Network)を介してECU (engine control unit)に到達し、最終的に車両操作が行われる。車両側からは車速やギアの選択情報、ステアリング・アクセル・ブレーキの現在値などが送信されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-142921号公報
【文献】特開2018-77845号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】https://github.com/CPFL/Autoware/tree/master/ui/web/remote_monitor
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ステアリングの遠隔操作に用いられるコントローラには規格品がなく、自動運転車両の運転機構を模したものとしてゲームコントローラが用いられることが多い。しかしながら、自動運転車両の操舵系には実車両に固有の機械的な抵抗に加えて、タイヤと路面との摩擦力に応じた抵抗が発生するため、路面状況に応じてステアリング操作に要する抵抗力が変化する。
【0007】
これに対して、ゲームコントローラの操舵系には路面状況に応じた抵抗力が発生せず、また、自動運転車両に固有の物理的特性を操舵系に反映する手段も存在しない。そのため、一般的にステアリング操作時の抵抗力が、ゲームコントローラでは自動運転車両に比べて小さくなる。その結果、自動運転車両の操舵角とゲームコントローラの操舵角との間に差異が発生し、この差異が大きくなるとオペレータが自動運転車両を希望通りに旋回させることが難しくなる。
【0008】
現状では、このような差異の吸収は操舵コントローラ側のステアリングを操作するオペレータに委ねられており、オペレータが目視で車両側の操舵角に合わせるような操作を行うなどの対応を行っているが、オペレータの負荷増加を招いている。
【0009】
本発明の目的は、上記の技術課題を解決し、自動運転車両のステアリングを遠隔運転システムから遠隔操作する際、自動運転車両の操舵角と遠隔運転システムの操舵角とに差分が生じないように遠隔運転システムのステアリングを操作できる自動運転車両の遠隔運転システム、方法およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明は、自動運転車両の第1ステアリングを操舵コントローラの第2ステアリングで遠隔操作する遠隔運転システムにおいて、以下の構成を具備した点に特徴がある。
【0011】
(1) 自動運転車両が検知した第1ステアリングの操舵角を取得する手段と、第2ステアリングの操舵角を第1ステアリングの目標操舵角として自動運転車両へ送信する手段と、取得した第1ステアリングの操舵角と第2ステアリングの操舵角との差分を操舵角差分として検知する手段と、前記操舵角差分に応じた操舵抵抗力を前記第2ステアリングに生じさせる手段とを具備した。
【0012】
(2) 前記操舵抵抗力を生じさせる手段は、操舵角差分が大きいほど操舵抵抗力を小さくするようにした。
【0013】
(3) 前記操舵抵抗力を生じさせる手段は、操舵角差分が大きいほど操舵抵抗力を大きくするようにした。
【0014】
(4) 操舵角差分が大きいほど操舵抵抗力を大きく際、操舵角差分が小さくなる方向への操舵抵抗力を、操舵角差分が大きくなる方向への操舵抵抗力よりも小さくした。
【0015】
(5) 前記操舵抵抗力を生じさせる手段は、入力信号に応じた操舵抵抗力を第2ステアリングに生じさせるドライビングフォース機能を備えた操舵コントローラに、前記操舵抵抗力に対応した信号を入力させるようにした。
【0016】
(6) 第1ステアリングの操舵角を取得する手段は、自動運転車両からセルラー回線で操舵角を受信するようにした。
【0017】
(7) 操舵抵抗力が、ロジスティック特性を有する変換関数に操舵角差分を適用することで求められるようにした。
【0018】
(8) 変換関数のパラメータを車両の走行状態に応じて可変とした。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、以下のような効果が達成される。
【0020】
(1) 操舵コントローラのステアリングに、自動運転車両のステアリングとの操舵角差に応じた操舵抵抗力を生じさせるので、操舵コントローラのオペレータは、自動運転車両のステアリング操作が路面との摩擦や障害物の影響を受ける状況下でも、操舵コントローラのステアリングを自動運転車両のステアリングを実際に操作しているのと同等の感覚で操作できるようになる。その結果、自動運転車両の状況に応じたステアリング操作が可能になり、自動運転車両をオペレータの意思通りに遠隔運転できるようになる。
【0021】
(2) 操舵角差分が大きいほど操舵抵抗力を小さくすれば、操舵角差分が大きい場合に操舵角差分が小さくなるようにオペレータが操舵コントローラのステアリングを操作することが容易になる。また、操舵角差分が小さい場合には操舵抵抗力が大きくなるので、操舵角差分が小さい状態から脱するような操作を阻害でき、操舵角差分が小さい状態を維持することが容易になる。さらに、操舵コントローラがステアリングの操舵方向ごとに操舵抵抗力を異ならせる機能を有していない場合でも自動運転車両の状況に応じた正確なステアリング操作を支援できる。
【0022】
(3) 操舵角差分が大きいほど操舵抵抗力を大きくすれば、操舵コントローラのステアリング操舵角と自動運転車両のステアリング操舵角との操舵角差を大きくするような操作を阻害することができるので、自動運転車両の状況に応じた正確なステアリング操作が可能になる。
【0023】
(4) 操舵角差分が大きいほど操舵抵抗力を大きく際、操舵角差分が小さくなる方向への操舵抵抗力を、操舵角差分が大きくなる方向への操舵抵抗力よりも小さくしたので、操舵角差分が大きくなる操舵を阻害しながら、操舵角差分が小さくなる操舵を容易にできる。
【0024】
(5) ドライビングフォース機能を備えた操舵コントローラに対して、操舵抵抗力に対応した信号を入力させるようにしたので、汎用の操舵コントローラを用いながら、自動運転車両の状況に応じたステアリングの遠隔操作が可能になる。
【0025】
(6) 自動運転車両からセルラー回線で操舵角を受信するようにしたので、自動運転車両との距離に関わらず正確な遠隔運転が可能になる。
【0026】
(7) 操舵抵抗力が、ロジスティック特性を有する変換関数に操舵角差分を適用して求められるので、自動運転車両のステアリングに生じている操舵抵抗力を操舵コントローラのステアリングで正確に再現できるようになる。
【0027】
(8) 変換関数のパラメータを車両の走行状態に応じて可変としたので、自動運転車両の走行状態に関わらずステアリングの正確な遠隔操作が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明を適用した自動運転車両の遠隔運転システムの機能ブロック図である。
図2】差分信号検出部の機能ブロック図である。
図3】操舵角差分と操舵抵抗値との関係(その1)を示した図である。
図4】操舵コントローラをオペレータが操作する様子を示した図である。
図5】遠隔操作画面の一例を示した図である。
図6】操舵角比較画像の詳細を示した図である。
図7】操舵角差分と操舵抵抗値との関係(その2)を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。図1は、本発明を適用した自動運転車両の遠隔運転システムの構成を示した機能ブロック図であり、遠隔操作に対応した自動運転車両に搭載される自動運転システム部1と、自動運転車両から離れた場所に設置され、オペレータによる遠隔操作を受け付けて自動運転車両を遠隔運転する遠隔運転システム部2とを含む。
【0030】
各システム部1,2はセルラー回線3で相互通信可能に接続され、遠隔運転システム部2のステアリングST2に入力された操舵操作を含む各種の遠隔操作が自動運転システム部1に伝達されて自動運転車両のステアリング操作を含む各種の操作に反映される。
【0031】
自動運転システム部1において、操舵角情報受信部101は、遠隔運転システム部2の操舵角情報送信部205からステアリングST2の操舵角を含む操舵角情報を受信する。CAN情報生成部102は、操舵角情報をCANフォーマットに変換し、CANバスを介して車両ECU103へ転送する。
【0032】
車両ECU103は、ステアリング駆動部(図示省略)に車両ステアリングST1の目標操舵角として前記取得した操舵角を通知する。その結果、車両ステアリングST1は目標操舵角と等しくなるように電気的または機械的に操舵されることになる。
【0033】
CAN情報取得部104は、車両ECU103が検知してCANフォーマットに変換した車両ステアリングST1の操舵角を含むCAN情報をCANバスから取得する。操舵角情報抽出部105は、取得したCAN情報から操舵角を含む操舵角情報を取得する。操舵角情報送信部106は、前記操舵角情報をセルラー回線3で遠隔運転システム部2へ送信する。
【0034】
遠隔運転システム部2において、操舵角情報受信部201は、前記自動運転システム部1が送信した操舵角情報(車両側操舵角)を受信する。差分信号検出部202は、後に詳述する操舵コントローラ204がステアリングST2の操作に応答して出力した操舵角情報(コントローラ側操舵角)と前記車両側操舵角との差分(操舵角差分DA)を求めて操舵抵抗力決定部203へ出力する。
【0035】
前記操舵コントローラ204は、例えばLogicool(登録商標)社製のレーシングゲーム用コントローラ「G29 Driving Force」であり、ステアリングST2の操作に連動して操舵角信号を出力する機能に加えて、外部入力に応答してステアリングST2に操舵抵抗力を生じさせるドライビングフォース機能を有する。
【0036】
抵抗力決定部203は、後に詳述するように、前記操舵角差分DAに対応した操舵角抵抗値Resを操舵コントローラ204に外部入力として与える。その結果、ステアリングST2には前記操舵角差分DAに対応した操舵抵抗力が発生し、オペレータが当該操舵抵抗力に抗してステアリングST2を操舵すると、その際の操舵角が操舵コントローラ204から出力されることになる。
【0037】
図2は、前記差分信号検出部202の機能ブロック図であり、操舵コントローラ204が出力したコントローラ側操舵角は、例えば約50msの間隔で出力される離散信号であり、操舵角情報受信部201から取得した車両側操舵角は、自動運転車両のステアリング操舵角が変化した時のみ不定期に更新される離散信号である。いずれの操舵角信号も、操舵の方向を判断するため、直前の信号値がバッファ202a,202bにそれぞれ一時記憶される。
【0038】
コントローラ側操舵方向ORは、コントローラ側操舵角の現在値をARcur、その直前値(バッファ出力)をARprev とするとき、次式(1)で与えられる。
【0039】
OR=ARcur - ARprev …(1)
【0040】
車両側操舵方向OCは、車両側操舵角の現在値をACcur、その直前値をACprevとするとき、次式(2)で与えられる。
【0041】
OC=ACcur - ACprev …(2)
【0042】
前記操舵角差分DAは、次式(3)で定義される。
【0043】
DA=|ARcur - ACcur| …(3)
【0044】
前記操舵抵抗力決定部203は、前記3つの出力信号OR,OC,DAに基づいて、最終的な操舵抵抗力の大きさおよび方向を決定し、これを操舵コントローラ204のドライビングフォース機能を実現する外部入力に供給する。
【0045】
ここで、操舵抵抗の表現は操舵コントローラ204の仕様に依存するため、本実施形態では、正規化された操舵抵抗値Resの出力方法を規定する。ここで、操舵角差分DAについても-1~+1の間で正規化されていることを前提とすれば、0≦DA≦2の範囲で変動する。本実施形態では、操舵抵抗値Resが次式(4)で定義される。
【0046】
Res=c0+c1/(1 + exp((DA-c2)/c3 )) …(4)
【0047】
ここで、c0,c1,c2,c3は、操舵コントローラ204の仕様に応じて設定されるパラメータである。操舵抵抗値Resは、操舵角差分DAの値に応じて0~1の値を持つロジスティック関数として表される。図3は、c0=1,c1=1,c2=1,c3=0.2とした場合のロジスティック特性の例を示しており、操舵抵抗力値は、操舵角差分が大きいほど小さくなり、操舵角差分が小さいほど大きくなる。
【0048】
なお、操舵角差分DAと操舵抵抗値との関係は所定のロジスティック特性に固定されるものではなく、車速や路面状況に応じて前記パラメータc0=1,c1=1,c2=1,c3=0.2を変更することで最適化されるものであっても良い。
【0049】
図4は、操舵コントローラ204をオペレータが操作する様子を示した図であり、オペレータはディスプレイ200を確認しながら操舵コントローラ204のステアリングST2を操舵する。本実施形態では、前記操舵抵抗力決定部203が決定した操舵抵抗力が外部入力として供給されるので、その大きさによりオペレータがステアリングST2を操舵する際の抵抗力が変化することになる。
【0050】
操舵コントローラ204が出力するコントローラ側操舵角は、前記差分信号検出部202へ供給されて前記操舵角差DAの検出に供される一方、前記操舵角情報送信部205へ供給されて自動運転システム1へ送信される。ディスプレイ200は、自動運転車両の運転状況や操舵コントローラ204の操作状況を表示する。
【0051】
図5は、前記ディスプレイ200に表示される遠隔操作画面の一例を示した図である。本実施形態では、自動運転車両に5つのカメラが搭載され、第1カメラが撮影した運転者視野映像I1、第2カメラが撮影した助手席視野映像I2、第3カメラが撮影した右側映像I3、第4カメラが撮影した左側映像I4および第5カメラが撮影した速度計映像I5が、それぞれ表示されている。
【0052】
さらに、本実施形態では自動運転車両のステアリング舵角を示すステアリング操作画像I6、自動運転車両から取得した速度信号およびエンジン回転数信号に基づいて構成されたインスツルメントパネル画像I7、自動運転車両のステアリングST1の舵角と操舵コントローラ204のステアリングST2の舵角との相対関係を示した操舵角比較画像I8および各種のインジケータI9が表示されている。
【0053】
図6は、前記操舵角比較画像I8の詳細を示した図であり、「Vehicle Steer」は、自動運転車両のステアリングST1の現在の操舵角を、長方形枠の左右端部をそれぞれ左操舵限界および右操舵限界としたときの相対位置として、丸印P1で表現している。同様に、「Controller Steer」は、操舵コントローラ204のステアリングST2の現在の操舵角を丸印P2で表現している。したがって、各丸印P1,P2の水平方向の位置ずれが各ステアリングの操舵角の差分を表現することになる。
【0054】
操舵コントローラ204のステアリングST2には、前記操舵角の差分に応じた操舵抵抗力が発生するので、オペレータはステアリングST2を操作する際、前記操舵角比較画像I8を参照し、操舵角の差分がゼロまたはゼロに近い状態が維持されるように注意しながら、操舵抵抗力に抗してステアリングST2を操作する。
【0055】
本実施形態によれば、操舵コントローラ204のステアリングST2に自動運転車両のステアリングST1との操舵角差DAを低減させるように操舵抵抗力を生じさせるので、オペレータは、操舵コントローラ4のステアリングST2を自動運転車両のステアリングST1実際に操作しているのと同等の操作感覚で操作できるようになる。その結果、自動運転車両の状況に応じたステアリング操作が可能になり、自動運転車両をオペレータの意思通りに遠隔操作できるようになる。
【0056】
すなわち、本実施形態によれば、操舵角差分DAが大きいほど操舵抵抗力が小さくなるので、操舵角差分DAが大きい場合に、これが小さくなるようにオペレータが操舵コントローラのステアリングを操作することが容易になる。また、操舵角差分DAが小さい場合には操舵抵抗力が大きくなるので、操舵角差分DAが小さい状態から脱するような操作を阻害でき、操舵角差分DAが小さい適正状態を維持することが容易になる。
【0057】
さらに、本実施形態では操舵抵抗力を操舵角差分DAに基づいて決定する際、操舵方向を考慮する必要がないので、操舵コントローラ204がステアリングST2の操舵方向ごとに操舵抵抗力を異ならせる機能を有していない場合でも自動運転車両の状況に応じた正確なステアリング操作を支援できる。
【0058】
なお、上記の実施形態では、操舵角差分DAが大きいほど操舵抵抗力を小さくするものとして説明したが、本発明はこれのみに限定されるものではなく、図7に示したように、操舵角差分DAが大きいほど操舵抵抗力を大きくするようにしても良い。
【0059】
このようにすれば、操舵コントローラ204のステアリング操舵角と自動運転車両のステアリング操舵角との操舵角差分DAを大きくするような操作を阻害することができるので、自動運転車両の状況に応じた正確なステアリング操作が可能になる。
【0060】
ただし、操舵角差分DAのみに基づいて操舵抵抗力を決定してしまうと、操舵角差分DAが大きい状態から、これを小さくする方向へ操舵する際の操舵抵抗力も大きくなるので、操舵角差分DAを小さくする方向の操舵抵抗力は、大きくする方向の操舵抵抗力よりも小さくすることが望ましい。
【符号の説明】
【0061】
1…自動運転システム部,2…遠隔運転システム部,100,200…ステアリング,101…操舵角情報受信部,102…CAN情報生成部,103…車両ECU,104…CAN情報取得部,105…操舵角情報抽出部,106…操舵角情報送信部,201…操舵角情報受信部,202…差分信号検出部,203…操舵抵抗力決定部,204…操舵コントローラ,205…操舵角情報送信部,ST1…自動運転車両のステアリング,ST2…操舵コントローラのステアリング
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7