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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-16
(45)【発行日】2022-02-25
(54)【発明の名称】バンパ取付具
(51)【国際特許分類】
   B60R 19/24 20060101AFI20220217BHJP
   F16B 5/06 20060101ALI20220217BHJP
   F16B 5/10 20060101ALI20220217BHJP
【FI】
B60R19/24 M
F16B5/06 Q
F16B5/10 H
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019120816
(22)【出願日】2019-06-28
(65)【公開番号】P2021006422
(43)【公開日】2021-01-21
【審査請求日】2021-03-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000135209
【氏名又は名称】株式会社ニフコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】増田 直之
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-88112(JP,A)
【文献】特開2013-169916(JP,A)
【文献】特開2003-191807(JP,A)
【文献】国際公開第2012/137627(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 19/24
F16B 5/06
F16B 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体にバンパフェースを取り付けるためのバンパ取付具であって、
本体部と、
前記本体部に設けられ、前記車体と結合する車体結合部と、
前記本体部に設けられ、前記バンパフェースに形成された係止孔に係合する弾性爪とを有し、
前記弾性爪は、前記本体部から延び、かつ可撓性を有する梁部と、前記梁部の先端から側方に突出した爪部とを有し、
前記爪部は、前記係止孔の孔壁を係止する逆止面を有し、
前記逆止面には凹凸形状が設けられているバンパ取付具。
【請求項2】
前記凹凸形状は、互いに平行に延びる複数の突条であり、
前記突条のそれぞれは、前記爪部の前記梁部に対する突出方向と直交し、かつ前記梁部の延在方向と直交する方向に延びている請求項1に記載のバンパ取付具。
【請求項3】
前記逆止面は、前記爪部の先端側に向けて前記梁部の基端側に延びている請求項1又は請求項2に記載のバンパ取付具。
【請求項4】
前記凹凸形状の表面は粗面化されている請求項1~請求項3のいずれか1つの項に記載のバンパ取付具。
【請求項5】
前記爪部は、前記逆止面よりも前記梁部の先端側に設けられ、前記梁部の基端側に向けて前記爪部の突出方向に延びる傾斜面と、
前記傾斜面と前記逆止面とを滑らかに接続する曲面とを有する請求項1~請求項4のいずれか1つの項に記載のバンパ取付具。
【請求項6】
前記本体部は、前記車体の表面に沿って延び、
前記車体結合部は、前記本体部の裏面に突設され、前記車体に形成された嵌合孔に嵌合する請求項1~請求項5のいずれか1つの項に記載のバンパ取付具。
【請求項7】
前記バンパフェースは、前記車体の外面を形成するバンパフェース本体部と、前記バンパフェース本体部の端部から前記バンパフェース本体部に対して略垂直に突出した縁壁部とを有し、
前記係止孔は前記縁壁部に形成されている請求項6に記載のバンパ取付具。
【請求項8】
前記梁部は、前記本体部の側面部に設けられ、前記本体部の裏面部側から表面部側に延び、
前記本体部の前記側面部には、前記縁壁部を受容する溝部が設けられている請求項7に記載のバンパ取付具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バンパ取付具に関する。
【背景技術】
【0002】
車体にバンパフェースを取り付けるためのバンパ取付具が公知である(例えば、特許文献1)。バンパ取付具は、車体に取り付けられる本体と、バンパフェースに形成された係止孔を係止する弾性爪とを有する。バンパ取付具の弾性爪は、可撓性を有する梁部と、梁部に設けられた爪部とを有し、梁部が弾性変形することによって爪部が係止孔に突入する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許4518406号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バンパ固定部に対するバンパフェースの脱落を防止するためには梁部の剛性を高めることが考えられる。しかし、梁部の剛性を高めると、バンパ取付具にバンパフェースを組付ける際に梁部が撓み難くなり、組み付け時の作業性が悪化するという問題がある。
【0005】
本発明は、以上の背景を鑑み、バンパ取付具において、組付け時の作業性を損なうことなく、脱落を確実に防止することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明の一態様は、車体(4)にバンパフェース(3)を取り付けるためのバンパ取付具(1)であって、本体部(18)と、前記本体部に設けられ、前記車体と結合する車体結合部(19)と、前記本体部に設けられ、前記バンパフェースに形成された係止孔(15)に係合する弾性爪(20)とを有し、前記弾性爪は、前記本体部から延び、かつ可撓性を有する梁部(35)と、前記梁部の先端から側方に突出した爪部(36)とを有し、前記爪部は、前記係止孔の孔壁(65)を係止する逆止面(41)を有し、前記逆止面には凹凸形状(51)が設けられている。
【0007】
この態様によれば、凹凸形状により逆止面と係止孔の孔壁との間に作用する摩擦力を増加させることができる。これにより、係止孔の孔壁に対する逆止面の滑りを抑制することができ、爪部が係止孔の孔壁に引っ掛かった状態を維持できる。この態様によれば、片持ち梁の剛性を増加させないため、組付け時の作業性を損なうことなく、バンパ取付具の脱落を確実に防止することができる。
【0008】
また、上記の態様において、前記凹凸形状は、互いに平行に延びる複数の突条(54)であり、前記突条のそれぞれは、前記爪部の前記梁部に対する突出方向と直交し、かつ前記梁部の延在方向と直交する方向に延びているとよい。
【0009】
この態様によれば、突条が係止孔の開口端縁を係止するため、逆止面の係止孔の孔壁に対する滑りを一層抑制することができる。
【0010】
また、上記の態様において、前記逆止面は、前記爪部の先端側に向けて前記梁部の基端側に延びているとよい。
【0011】
この態様によれば、組付け時において爪部が係止孔に進入するときに、凹凸形状と係止孔の孔壁との接触を避けることができる。これにより、爪部が係止孔に対して適切な位置まで進入することができる。
【0012】
また、上記の態様において、前記凹凸形状の表面は粗面化されているとよい。
【0013】
この態様によれば、凹凸形状と係止孔の孔壁との間に生じる摩擦力を増加させることができる。
【0014】
また、上記の態様において、端側に向けて前記爪部の突出方向に延びる傾斜面(40)と、前記傾斜面と前記逆止面とを滑らかに接続する曲面(44)とを有するとよい。
【0015】
この態様によれば、爪部が係止孔に滑らかに進入することができる。
【0016】
また、上記の態様において、前記本体部は、前記車体の表面に沿って延び、前記車体結合部は、前記本体部の裏面に突設され、前記車体に形成された嵌合孔(9)に嵌合するとよい。
【0017】
この態様によれば、車体の嵌合孔に車体結合部を嵌め込むことによって、バンパ取付具を車体の表面に取り付けることができる。
【0018】
また、上記の態様において、前記バンパフェースは、前記車体の外面を形成するバンパフェース本体部(10)と、前記バンパフェース本体部の端部(11)から前記バンパフェース本体部に対して略垂直に突出した縁壁部(13)とを有し、前記係止孔は前記縁壁部に形成されているとよい。
【0019】
この態様によれば、バンパフェースを車体に対して垂直に押し込むことによって、バンパ取付具を介してバンパフェースを車体に取り付けることができる。
【0020】
また、上記の態様において、前記梁部は、前記本体部の側面部(23)に設けられ、前記本体部の裏面部(22)側から表面部(21)側に延び、前記本体部の前記側面部には、前記縁壁部を受容する溝部(58)が設けられているとよい。
【0021】
この態様によれば、バンパ取付具の梁部及び溝部によってバンパフェースの縁壁部を固定することができる。
【発明の効果】
【0022】
以上の構成によれば、バンパ取付具において、組付け時の作業性を損なうことなく、脱落を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本実施形態に係るバンパ取付具を用いたフロントフェンダへのバンパフェースの取付構造を示す分解斜視図
図2】バンパ取付具を示す斜視図
図3】バンパ取付具を示す斜視図
図4】バンパ取付具を示す上面図
図5】バンパ取付具を示す平面図
図6】爪部の逆止面を示す斜視図
図7】バンパ取付具を用いたフロントフェンダへのバンパフェースの取付構造を示す断面図
図8】バンパ取付具を用いたフロントフェンダへのバンパフェースの取付構造を示す断面図
図9】抜去力がバンパフェースに加わった状態におけるバンパ取付具を用いたフロントフェンダへのバンパフェースの取付構造を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して、本発明に係るバンパ取付具1の実施形態について説明する。図1に示すように、バンパ取付具1は、車体にバンパフェース3を取り付けるために使用される。バンパフェース3は、フロントバンパフェース及びリアバンパフェースのいずれでもよい。以下の説明では、フロントバンパフェースであるバンパフェース3を車体としてのフロントフェンダ4に取り付けるバンパ取付具1の例について説明する。
【0025】
車体の一部をなすフロントフェンダ4は、車体の左右の側部の前部を構成する。フロントフェンダ4は鋼板から形成されている。フロントフェンダ4の前端部5には、バンパフェース3と接続するバンパ接続部7が設けられている。バンパ接続部7は、フロントフェンダ4の他の部分に対して車幅方向に内側に段部8を介して凹んでいる。バンパ接続部7は、フロントフェンダ4の前縁に沿って延びている。バンパ接続部7には、厚み方向に貫通する複数の嵌合孔9が形成されている。
【0026】
バンパフェース3は、車体の前端部5を左右に延びるフロントバンパの前方を覆う部材である。バンパフェース3は、板状のバンパフェース本体部10と、バンパフェース本体部10の端部11に設けられた縁壁部13とを有する。バンパフェース3は、樹脂材料から形成されている。バンパフェース本体部10は、左右方向に延在し、その両端部が後方に屈曲している。バンパフェース本体部10の左右の端部11は、左右において対応するフロントフェンダ4のバンパ接続部7に左右外方から対向する。バンパフェース本体部10の左右の端部11は、段部8に沿って延び、バンパ接続部7と接続する。縁壁部13は、バンパフェース本体部10の縁部14から、バンパフェース本体部10の裏面側に略垂直に突出している。左右の端部11に設けられた縁壁部13のそれぞれは、段部8と微小な隙間を介して対向している。左右の端部11に設けられた縁壁部13のそれぞれには複数の係止孔15が形成されている。
【0027】
バンパ取付具1は、バンパ接続部7に結合し、バンパフェース3の縁壁部13を係止することによって、バンパフェース3をフロントフェンダ4に固定する。
【0028】
図1及び図2図5に示すように、バンパ取付具1は、本体部18と、フロントフェンダ4と結合する車体結合部19と、バンパフェース3を係止する弾性爪20とを有する。バンパ取付具1は、樹脂材料から形成されている。
【0029】
本体部18は、略直方体の細長い形状に形成されている。本体部18は、主面をなす表面部21と、表面部21と相反する側に設けられた裏面部22と、裏面部22及び表面部21に対して略垂直に延び、かつ本体部18の長手方向に延びる側面部23とを有する。裏面部22及び表面部21の適所には肉抜き部24が形成されている。
【0030】
車体結合部19は、本体部18の裏面部22に設けられた複数の結合部である。車体結合部19のいくつかは、例えば裏面部22に間隔をおいて突設された複数の拡開片25を有する第1結合部27であってよい。複数の拡開片25は、それらの間にピン又はねじが挿入されることによって互いに拡開する。車体結合部19の他のいくつかは、裏面部22から突出した脚部28と、脚部28に対して側方に突出した爪部29とを有する第2結合部30であってよい。爪部29は、可撓性を有し、脚部28に対して側方に進退可能に設けられている。また、車体結合部19の他のいくつかは、貫通孔である第3結合部31であってよい。第3結合部31には、本体部18をフロントフェンダ4に締結するための締結部材が装着される。締結部材は、例えばフロントフェンダ4を貫通して第3結合部31に結合するファスナやねじであるとよい。
【0031】
弾性爪20は、本体部18の長手方向に沿った一方の側面部23に複数設けられている。各弾性爪20は、本体部18の側面部23に形成された複数の凹部33に設けられている。凹部33は、本体部18の側面部23から本体部18の内方に向けて凹むと共に、表面部21に開口している。凹部33の裏面部22側の端部には、表面部21側を向く端面34が設けられている。複数の凹部33は、本体部18の延在方向に沿って、互いに離間して配置されている。各弾性爪20は、対応する凹部33に配置され、本体部18の延在方向に沿って、互いに離間して配置されている。弾性爪20はそれぞれ、凹部33の端面34から表面部21側に延びる梁部35(片持ち梁部)と、片持ち梁部の先端から、本体部18に対して外方(側方)に突出した爪部36とを有する。
【0032】
片持ち梁部は、本体部18の側面部23に対して平行な外側面を有する板片である。片持ち梁部の外側面は、本体部18の側面部23と略同一平面上に配置されている。片持ち梁部は可撓性を有し、爪部36の突出方向及び突出方向に対して逆向きに弾性変形することができる。各凹部33の端面34には、厚み方向に貫通する貫通孔39が形成されている。貫通孔39は、端面34の剛性を低下させ、片持ち梁部の揺動を容易にする。貫通孔39は片持ち梁部の基端部の内縁に沿って延在しているとよい。
【0033】
図6に示すように、爪部36は、片持ち梁部の先端側に傾斜面40を有し、片持ち梁部の基端側に逆止面41を有する。傾斜面40は、片持ち梁部の外側面の先端側から基端側に向けて爪部36の突出方向に延びる平面である。逆止面41は、傾斜面40と片持ち梁部の外側面とを接続する面であって、傾斜面40に対して片持ち梁部の基端側に設けられる。逆止面41は、片持ち梁部に対して略垂直に配置されていてもよい。爪部36は、その両側部に互いに相反する第1側部42及び第2側部43を有する。第1側部42及び第2側部43はそれぞれ、傾斜面40、逆止面41、及び片持ち梁部に接続する。第2側部43は、爪部36の基端側に設けられた第1面部45と、爪部36の先端側に設けられた第2面部46とを有する。第1面部45及び第2面部46は、それぞれ爪部36の先端側に向けて第1側部42側に傾斜している。第2面部46の第1側部42側への傾斜角は、第1面部45の第1側部42側への傾斜角よりも大きく設定されている。第2側部43が傾斜することによって、傾斜面40及び逆止面41は、爪部36の先端側に向けて幅が狭くなっている。傾斜面40と逆止面41との境界部(稜部)は、曲面44によって滑らかに接続されている。
【0034】
本実施形態では、逆止面41は、爪部36の先端側に向けて片持ち梁部の基端側に延びている。すなわち、逆止面41は片持ち梁部の外側面に対してオーバーハングし、外側面に対して鋭角をなす。
【0035】
逆止面41には、複数の凹凸形状51が設けられている。凹凸形状51は、逆止面41の基準面に対して突出した複数の凸部、及び基準面に対して窪んだ複数の凹部の少なくとも一方を有する。複数の凸部及び凹部は、それぞれが互いに独立して形成されてもよく、それぞれが互いに連続して設けられていてもよい。複数の凸部及び凹部は、逆止面41に対して所望の形状をなすように規則的に設けられていてもよく、例えば互いに平行、又は格子状に設けられていてもよい。それぞれの凸部及び凹部の大きさ及び形状は互いに異なっていてもよい。凸部及び凹部の表面は粗面化されているとよい。例えば、凸部及び凹部の表面は、バンパ取付具1を形成する成形型の表面にブラスト処理又はシボ処理等の粗面化処理を施すことによって粗面化されるとよい。
【0036】
本実施形態では、凹凸形状51は、逆止面41に突設された互いに平行に延びる複数の凸部である突条54であるとよい。突条54はそれぞれ、爪部36の片持ち梁部に対する突出方向と直交し、かつ片持ち梁部の延在方向と直交する方向に延びているとよい。隣り合う突条54の間には、突条54と平行に延びる凹部である溝55が形成される。他の実施形態では、凹凸形状51は、逆止面41に凹設された複数の溝55であってもよい。
【0037】
図1図5に示すように、本体部18の弾性爪20が設けられている側の側面部23には、バンパフェース3の縁壁部13を受容する溝部58が設けられている。溝部58は、本体部18の側面部23と、側面部23から側方に突出した複数の底壁部59と、それぞれの底壁部59の先端から本体部18の表面部21側に延びる複数の縦壁部60とによって画定されている。溝部58は、本体部18の表面側にむけて開口し、長手方向に断続的に連続している。縦壁部60は、先端側に向けて内向きに傾斜しているとよい。
【0038】
本体部18の側面部23には、複数の突当部61が突設されている。突当部61は、例えば本体部18の裏面側から表面側に延びる突条である。突当部61は、各凹部33の側面部23への開口縁に沿って設けられているとよい。突当部61の突出端は縦壁部60の内側面より本体部18側に位置する。
【0039】
次に、バンパ取付具1を用いたフロントフェンダ4及びバンパフェース3の組付構造及び組み付け方法について説明する。最初に、フロントフェンダ4のバンパ接続部7に設けられた複数の嵌合孔9にバンパ取付具1の対応する車体結合部19をそれぞれ嵌合させることによって、フロントフェンダ4のバンパ接続部7にバンパ取付具1を結合する。第1結合部27を嵌合孔9に嵌合させたときには、複数の拡開片25の間にバンパ取付具1の本体部18の表面部21側からピン又はねじを挿入することによって複数の拡開片25を拡開させる。これにより、第1結合部27は嵌合孔9に対して抜け止めされる。また、第2結合部30は、脚部28を嵌合孔9に挿入することによって嵌合孔9に嵌合される。
【0040】
フロントフェンダ4にバンパ取付具1が結合された状態では、バンパ取付具1はバンパ接続部7においてフロントフェンダ4の段部8に沿って延在する。バンパ取付具1は、弾性爪20及び溝部58が設けられている側の側面部23が段部8に隙間を介して対向するように配置される。溝部58は、バンパ接続部7と相反する側に向けて開口する。
【0041】
次に、図7図9に示すように、バンパフェース本体部10の端部11に設けられた縁壁部13をバンパ取付具1の溝部58に挿入することによってバンパ取付具1にバンパフェース3を係止させる。このとき、縁壁部13は、バンパ取付具1のそれぞれの爪部36に当接し、爪部36を凹部33側に押圧する。これにより、片持ち梁部は弾性変形して凹部33内に傾倒する。その後、縁壁部13の溝部58内への移動に伴って爪部36の先端は縁壁部13の表面を摺動し、係止孔15に到達する。爪部36が係止孔15に到達すると、片持ち梁部は復元し、爪部36は係止孔15に突入する。これにより、爪部36の逆止面41が係止孔15の孔壁65に対向する。すなわち、弾性爪20が係止孔15を係止する。縁壁部13が溝部58内に受容された状態で、縁壁部13は縦壁部60と図3に示す突当部61とによって挟持され、位置が定まる。
【0042】
図7図9に示すように、バンパ取付具1にバンパフェース3が係止された状態において、バンパフェース本体部10の左右の端部11における縁壁部13はフロントフェンダ4の段部8に対向する。バンパフェース本体部10の縁部14は、フロントフェンダ4の外側面と段部8との境界部に対向する。バンパフェース本体部10は、フロントフェンダ4の外側面と概ね面一になるように配置される。
【0043】
次に、バンパフェース3に抜去力が加わったときのバンパ取付具1の動作について説明する。ここで、抜去力とは、バンパフェース3をバンパ取付具1から抜き去る方向に加わる力であり、バンパフェース3の縁壁部13に沿って、フロントフェンダ4の外方に加わる。バンパフェース3に抜去力が加わると、縁壁部13が抜去方向に移動し、係止孔15の孔壁65が爪部36の先端に設けられた曲面44に当接する。その後、縁壁部13が更に抜去方向に移動すると、孔壁65が爪部36の先端部の曲面44を抜去方向に押し、爪部36が回転すると共に片持ち梁部が弾性変形して凹部33内に傾倒する。これにより爪部36の逆止面41と係止孔15の孔壁65とのなす角度は小さくなる。このとき、爪部36は曲面44において係止孔15の孔壁65上を摺動する。
【0044】
その後、縁壁部13が更に抜去方向に移動すると、爪部36が更に回転して爪部36の逆止面41の凹凸形状51が係止孔15の孔壁65に当接する。凹凸形状51が係止孔15の孔壁65に当接することによって爪部36の逆止面41と係止孔15の孔壁65との間に作用する摩擦力が増大し、孔壁65に対する爪部36の摺動が抑制される。このとき、凹凸形状51は孔壁65に食い込むことによって、逆止面41と孔壁65との間に作用する摩擦力を更に増大させる。また、凹凸形状51が係止孔15の孔壁65と開口面との角部66を係止することによって、孔壁65に対する爪部36の摺動が一層抑制される。特に、凹凸形状51が突条54である場合、凹凸形状51が角部66を係止する部分の面積が増加するために、孔壁65に対する爪部36の摺動が一層抑制される。
【0045】
孔壁65に対する爪部36の摺動が抑制されると、爪部36が係止孔15から脱離し難くなり、抜去力に対してバンパフェース3がバンパ取付具1から脱離し難くなる。
【0046】
以下、バンパ取付具1の効果について説明する。バンパフェース3に抜去力が加わる時には、弾性爪20の爪部36の逆止面41の凹凸形状51が係止孔15の孔壁65に当接することによって逆止面41と孔壁65との間に作用する摩擦力が増大し、孔壁65に対する爪部36の摺動が抑制される。よって、バンパフェース3を抜去し難くなり、バンパ取付具1の脱落を確実に防止することができる。また、凹凸形状51が係止孔15の孔壁65と開口面との角部66を係止することによって、孔壁65に対する爪部36の摺動が一層抑制される。特に、凹凸形状51が突条54である場合、凹凸形状51が角部66を係止する部分の面積が増加するために、孔壁65に対する爪部36の摺動が一層抑制される。これにより、逆止面41と角部66との間に作用する摩擦力を増加させることができる。これにより、係止孔15に対する逆止面41の滑りを抑制することができ、逆止面41が角部66に引っ掛かった状態を維持できる。よって、バンパフェース3を抜去し難くなり、バンパ取付具1の脱落を確実に防止することができる。この構成では、抜去力に対する抵抗力を高めるために片持ち梁部の剛性を増加させる必要がない。そのため、弾性爪20を係止孔15に挿入するために必要な力が増加することがなく、組付け時の作業性を損なうことはない。
【0047】
また、本実施形態では、凹凸形状51は片持ち梁部に対する突出方向と直交し、かつ片持ち梁部の延在方向と直交する方向に延びる複数の突条54である。そのため、突条54の延びる方向と係止孔15の角部66の延在方向が平行となり、突条54と角部66との引っ掛かり面積を増加させることができる。よって、逆止面41と係止孔15との滑りを一層抑制することができる。
【0048】
また、本実施形態では、凹凸形状51の表面は粗面化されている。これにより、凹凸形状51と係止孔15の孔壁65との間に生じる摩擦力を増加させることができる。よって、逆止面41と係止孔15との滑りを更に抑制することができる。
【0049】
更に、バンパ取付具1の弾性爪20の爪部36の傾斜面40及び逆止面41は、曲面44によって滑らかに接続されている。よって、バンパフェース3の組み付け時において、爪部36は係止孔15に滑らかに進入することができる。よって、組み付けが容易になる。また、爪部36の逆止面41は、爪部36の先端側に向けて片持ち梁部の基端側に延びている。よって、組付け時において爪部36が係止孔15に進入するときに、凹凸形状51と係止孔15の孔壁65との接触を避けることができる。これにより、爪部36が係止孔15に対して適切な位置まで進入することができる。よって、組み付けが容易になる。
【0050】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。本実施形態では、弾性爪20の梁部35(片持ち梁部)が本体部18の裏面部22側から表面部21側に延びる構成としたが、他の実施形態では片持ち梁部が本体部18の表面部21側から裏面部22側に延びる構成としてもよい。この場合、爪部36の逆止面41は傾斜面40に対して片持ち梁部の先端側、すなわち本体部18の裏面部22側に設けられるとよい。
【0051】
また本実施形態では、梁部35は本体部18の裏面部22側から表面部21側に延びる片持ち梁部であったが、他の実施形態では梁部35は両持ち梁部であってもよい。この場合、両持ち梁部は本体部18の裏面部22側と表面部21側とを接続するように凹部33に設けられる。また両持ち梁部は、爪部36の突出方向及び突出方向に対して逆向きに弾性変形することができるように構成されるとよい。
【0052】
凹凸形状51は、逆止面41の少なくとも一部に形成されているとよく、逆止面41の全域に形成されていてもよい。凹凸形状51は、係止孔15の孔壁65の形状や角部66の形状に合わせて、形状が適宜設定されるとよい。例えば、凹凸形状51は角部66が嵌合可能な凹部を含んでもよい。また、凹凸形状51における凸部の先端は先鋭に形成されていることが好ましい。これによれば、凹凸形状51の凸部が係止孔15の孔壁65に食い込み易くなり、孔壁65に対する逆止面41の滑りが一層抑制される。凹凸形状51の凸部は、例えば先端が尖った円錐形や角錐形に形成されるとよい。また、孔壁65と逆止面41との滑りを抑制するために、孔壁65に凹凸形状が形成されてもよく、更に孔壁65が粗面化されてもよい。
【0053】
本実施形態では、バンパ取付具1がバンパフェース3を車体のフロントフェンダ4に取り付ける構成としたが、他の実施形態ではバンパ取付具1がバンパフェース3を車体のリヤフェンダに取り付ける構成としてもよい。また、更に他の実施形態ではバンパ取付具1がバンパフェース3を車体に設けられたブラケットに取り付ける構成としてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 :バンパ取付具
3 :バンパフェース
4 :フロントフェンダ(車体)
9 :嵌合孔
10 :バンパフェース本体部
11 :端部
13 :縁壁部
15 :係止孔
18 :本体部
19 :車体結合部
20 :弾性爪
21 :表面部
22 :裏面部
23 :側面部
31 :第3結合部
35 :梁部
36 :爪部
40 :傾斜面
41 :逆止面
44 :曲面
51 :凹凸形状
54 :突条
58 :溝部
65 :孔壁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9