IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 電子磁気工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-着磁ヨーク 図1
  • 特許-着磁ヨーク 図2
  • 特許-着磁ヨーク 図3
  • 特許-着磁ヨーク 図4
  • 特許-着磁ヨーク 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-16
(45)【発行日】2022-02-25
(54)【発明の名称】着磁ヨーク
(51)【国際特許分類】
   H01F 13/00 20060101AFI20220217BHJP
   H02K 15/03 20060101ALI20220217BHJP
【FI】
H01F13/00 350
H02K15/03 H
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019125400
(22)【出願日】2019-07-04
(65)【公開番号】P2021012918
(43)【公開日】2021-02-04
【審査請求日】2020-05-07
(73)【特許権者】
【識別番号】591011775
【氏名又は名称】電子磁気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(72)【発明者】
【氏名】横溝 稔
(72)【発明者】
【氏名】一井 皇介
【審査官】秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-215383(JP,A)
【文献】特開平06-290944(JP,A)
【文献】実開平05-085013(JP,U)
【文献】特開2015-220875(JP,A)
【文献】特開2014-161210(JP,A)
【文献】特開2014-096897(JP,A)
【文献】特開昭60-051444(JP,A)
【文献】特開2000-232757(JP,A)
【文献】特開2003-088027(JP,A)
【文献】特開2003-319593(JP,A)
【文献】特開昭61-196504(JP,A)
【文献】特開平8-279415(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 13/00
H02K 15/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁被覆が施された巻線と、
前記巻線を収容する孔、及び前記巻線が巻かれるティースが交互に周方向に形成された鉄心と、
前記鉄心及び前記巻線の周囲に充填されて成形されている樹脂と、
前記巻線のU字形状に屈曲された屈曲部と前記鉄心の軸方向の端面との間において前記巻線の曲げ半径により生じる半円状の空間に設けられ、前記巻線の通電時の動きを抑制するように前記巻線を支持する巻線支持部と、を備える着磁ヨーク。
【請求項2】
請求項1に記載の着磁ヨークにおいて、前記巻線支持部は、前記樹脂よりも強度が高い材料で形成されている、着磁ヨーク。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の着磁ヨークにおいて、前記巻線支持部は、絶縁体で形成されている、着磁ヨーク。
【請求項4】
請求項1に記載の着磁ヨークにおいて、前記巻線支持部は、前記鉄心の一部である、着磁ヨーク。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の着磁ヨークにおいて、前記巻線支持部は、前記巻線の屈曲部の内周面に接する接触部分が、前記巻線の屈曲部の内周面に沿う曲面形状になっている、着磁ヨーク。
【請求項6】
請求項5に記載の着磁ヨークにおいて、前記巻線支持部の前記接触部分に内接又は外接する仮想円の中心から前記巻線支持部の前記接触部分の中心までの線分と、前記仮想円の中心を通り且つ前記ティースの前面と平行な線分とのなす角が40度以上50度以下である、着磁ヨーク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁石を着磁する着磁装置に用いられる着磁ヨークに関する。
【背景技術】
【0002】
磁石を着磁する着磁装置の一例として、鉄心に巻線が巻かれている着磁ヨークを着磁すべき磁石に近接配置し、その巻線にパルス電流を流すことによって、着磁ヨークに強い磁場を発生させて、磁石に磁界を印加して、磁石を着磁する着磁装置が公知である。このような着磁装置に用いられる着磁ヨークは、極めて大きなパルス電流が繰り返し巻線に流れるため、巻線の被覆に熱的劣化が生じやすい。さらに着磁ヨークの巻線は、電流が流れるときに一方向の力が作用し、電流が遮断されると逆方向の力が作用するため、パルス電流を流す度に被覆の機械的劣化も生ずる。そのため着磁ヨークの故障は、着磁を繰り返すことによって巻線の被覆が徐々に劣化し、最終的に巻線の被覆が絶縁破壊して短絡故障するに至る場合が多い。
【0003】
このような巻線の被覆の絶縁破壊に起因する故障を低減して着磁ヨークの耐久性を向上させる従来技術の一例として、鉄心及び巻線の周囲にエポキシ樹脂等の樹脂を充填して成形した着磁ヨークが公知である(例えば特許文献1を参照)。このような構成の着磁ヨークによれば、パルス電流が流れるときに巻線に作用する力が樹脂によって緩和されるので、巻線の被覆の機械的劣化を低減することができる。さらに鉄心及び巻線の周囲に形成された樹脂が巻線に作用する力によって破損する虞を低減するために、樹脂に接する端面板に凹凸を設けた着磁ヨークが公知である(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-096897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、例えば電気自動車のモータのロータ(回転子)等、より大きくて強力な磁石を着磁できる着磁ヨークの必要性が高まりつつある。このような着磁ヨークにおいては、より大きなパルス電流を巻線に流す必要があるため、パルス電流が流れるときに巻線に作用する力がより大きくなり、それによって鉄心及び巻線の周囲に充填成形された樹脂により大きな力が作用することになる。またこのような着磁ヨークにおいては、より大きな電流を巻線に流す必要があることから、必然的により太い巻線が必要になる。そして巻線が太くなると、小さな曲げ半径で巻くことが困難になるため、巻線の曲げ半径が必然的に大きくなり、それによって巻線の屈曲部と鉄心との間に空間が生じやすくなる。巻線の屈曲部(特に巻線の屈曲部と直線部分との境界部分)は、最も大きな力が作用する。そのため巻線の屈曲部と鉄心との間の空間が大きくなると、鉄心及び巻線の周囲に充填成形された樹脂だけでは、パルス電流を流したときに巻線に作用する力を抑制することが難しくなってくる。
【0006】
このようなことから鉄心及び巻線の周囲に樹脂を充填して成形するだけでは、より大きくて強力な磁石を着磁できる着磁ヨークを構成する上で、巻線の被覆の劣化を十分に抑制することができず、実用的な耐久性が得られない虞が生ずる。さらに巻線の屈曲部と鉄心との間の空間は、狭いため、樹脂が充填されにくい場合がある。そのため従来の着磁ヨークは、樹脂が充填されていない状態になる虞があり、それによって耐久性が大きく低下してしまう虞もある。
【0007】
このような状況に鑑み本発明はなされたものであり、その目的は、より耐久性が高い着磁ヨークを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
<本発明の第1の態様>
本発明の第1の態様は、巻線と、前記巻線を収容する孔、及び前記巻線が巻かれるティースが交互に周方向に形成された鉄心と、前記鉄心及び前記巻線の周囲に充填されて成形されている樹脂と、前記巻線の屈曲部と前記鉄心との間の空間に設けられ、前記巻線を支持する巻線支持部と、を備える着磁ヨークである。
【0009】
本発明の第1の態様によれば、巻線にパルス電流を流したときに最も大きな力が作用する巻線の屈曲部の動きを巻線支持部で抑制することができるので、特に巻線の被覆の絶縁破壊が生じやすい巻線の屈曲部の機械的劣化を効果的に抑制することができる。また着磁する磁石の形状等に応じて最適な着磁ができるように鉄心の形状等を設計する上で、鉄心の形状等に何ら制約は生じない。したがって本発明の第1の態様によれば、着磁効率を低下させることなく、より耐久性が高い着磁ヨークを提供できるという作用効果が得られる。
【0010】
<本発明の第2の態様>
本発明の第2の態様は、前述した本発明の第1の態様において、前記巻線支持部は、前記樹脂よりも強度が高い材料で形成されている、着磁ヨークである。
本発明の第2の態様によれば、巻線にパルス電流を流したときに最も大きな力が作用する巻線の屈曲部の動きをより高い強度で効果的に抑制することができるので、さらに耐久性を向上させることができる。
【0011】
<本発明の第3の態様>
本発明の第3の態様は、前述した本発明の第1の態様又は第2の態様において、前記巻線支持部は、絶縁体で形成されている、着磁ヨークである。
本発明の第3の態様によれば、巻線支持部材で渦電流損が生じないので、渦電流損に起因して着磁効率が低下する虞を低減することができる。
【0012】
<本発明の第4の態様>
本発明の第4の態様は、前述した本発明の第1態様において、前記巻線支持部は、前記鉄心の一部である。
本発明の第4の態様によれば、巻線支持部と鉄心とを共通の材料で構成できるため、着磁ヨークの製造コストの低減を図ることができる。
【0013】
<本発明の第5の態様>
本発明の第5の態様は、前述した本発明の第1~第4の態様のいずれかにおいて、前記巻線支持部は、前記巻線の屈曲部の内周面に接する接触部分が、前記巻線の屈曲部の内周面に沿う曲面形状になっている、着磁ヨークである。
本発明の第5の態様によれば、巻線の屈曲部の内周面が巻線支持部材に点接触ではなく面接触することになるので、巻線の屈曲部と巻線支持部材とが接する部分に作用する力が分散される。それによって巻線の屈曲部の機械的劣化をさらに効果的に抑制することができるので、さらに耐久性を向上させることができる。
【0014】
<本発明の第6の態様>
発明の第6の態様は、前述した本発明の第5態様において、前記巻線支持部の前記接触部分に内接又は外接する仮想円の中心から前記巻線支持部の前記接触部分の中心までの線分と、前記仮想円の中心を通り且つ前記ティースの前面に平行な線分とのなす角が40度以上50度以下である。
本発明の第6の態様によれば、巻線の振動に伴う、巻線と巻線支持部との摺動を小さな角度範囲に収めることが可能となる。更には、巻線と巻線支持部との間に樹脂を充填するスペースを確保することが可能になり、巻線に作用する力の緩和及び巻線の被覆の機械的劣化を低減することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、より耐久性が高い着磁ヨークを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る着磁ヨークの要部を図示した正面図。
図2】本発明に係る着磁ヨークの巻線の結線図。
図3】第1実施例の着磁ヨークの一部を拡大図示した要部断面図。
図4】第2実施例の着磁ヨークの一部を拡大図示した要部断面図。
図5】第3実施例の着磁ヨークの一部を拡大図示した要部断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
尚、本発明は、以下説明する実施例に特に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変形が可能であることは言うまでもない。
【0018】
図1は、本発明に係る着磁ヨークの要部を図示した正面図である。図2は、本発明に係る着磁ヨークの巻線21の結線図である。
【0019】
本発明に係る着磁ヨークは、鉄心である着磁ヨーク本体10、巻線21、樹脂22を備える。本発明に係る着磁ヨークは、巻線21にパルス電流を流すことによって強い磁場を発生させ、ワーク30の磁石に磁界を印加して着磁する着磁装置に用いられる。
【0020】
着磁ヨーク本体10は、着磁するワーク30が配置される円形の貫通孔11を有する円筒形状をなしている。ワーク30は、例えばモータのロータ(回転子)である。着磁ヨーク本体10は、その周方向に等間隔で交互に形成された複数のスロット12及び複数のティース13を含む。複数のスロット12は、巻線21が収容される孔であり、着磁ヨーク本体10の軸方向に貫通する貫通孔である。複数のティース13は、巻線21が巻かれる部分であり、ワーク30の磁石に一対一で対応するように形成されている。着磁ヨーク本体10の大きさや形状、貫通孔11の大きさや形状、スロット12及びティース13の位置、大きさ、形状は、ワーク30の磁石(図示省略)を最も効率良く着磁できるように(磁石に対して磁束が垂直に入るように)、ワーク30の磁石の位置、大きさ、形状等に応じて設定される。
【0021】
巻線21は、絶縁被覆が施された電線である。複数のスロット12を通じて複数のティース13に巻かれた巻線21は、直列に接続されるとともに、複数のティース13にN極の磁界とS極の磁界が交互に発生するように、交互に逆の巻き方向で複数のティース13に巻かれている。巻線21の両端には、パルス電流を発生する電源装置(図示せず)が接続される。巻線21の電線の太さ、被覆の材質や厚み等は、例えば必要とされる着磁力や巻線21に流れるパルス電流の大きさ等に応じて設定される。また各ティース13における巻線21の巻数は、巻線21に流れるパルス電流の通電時間やピーク電流値等に応じて設定される。
尚、図示していないが、隣接する巻線21の間や巻線21とスロット12との間には、絶縁性を有する材料でシート状に形成された絶縁紙等を設けるのが好ましい。
【0022】
樹脂22は、例えばエポキシ系樹脂であり、着磁ヨーク本体10及び巻線21の周囲に充填されて成形されている。樹脂22が充填されて成形された後の着磁ヨークは、巻線21及び着磁ヨーク本体10の大部分が樹脂22で覆われた状態になる。樹脂22の強度(例えば引張強度等)は、高すぎるとクラックが生じやすくなり、低すぎると巻線21に作用する力を抑制できない。つまり樹脂22の強度は、着磁ヨークの仕様等に応じて適切に設定される。
【0023】
<第1実施例>
図3は、第1実施例の本発明に係る着磁ヨークの一部を拡大図示した要部断面図である。
【0024】
本発明に係る着磁ヨークは、さらに巻線21を支持する巻線支持部として機能する巻線支持部材23を備える。巻線支持部材23は、巻線21の屈曲部211とティース13との間の空間212に設けられている。巻線21の屈曲部211は、図示の如く、巻線21のU字形状に屈曲されている部分である。巻線支持部材23は、例えば一定の厚みを有する板状の部材であり、絶縁体で形成されている。より具体的には巻線支持部材23は、例えばベーク材(フェノール樹脂)やMCナイロン(登録商標)等のポリアミド系樹脂で形成されており、複数のティース13のそれぞれに設けられている。巻線支持部材23は、各ティース13の前面131及び後面にそれぞれ設けられている。さらに巻線21とティース13との間、及び巻線21と巻線支持部材23との間の隙間には、絶縁性を有する材料で形成されたシート状の部材である絶縁紙24が設けられている。
【0025】
このように巻線21の屈曲部211とティース13との間の空間212に巻線支持部材23を設けることで、巻線21にパルス電流を流したときに最も大きな力が作用する巻線21の屈曲部211の動きを巻線支持部材23で抑制することができる。それによって特に絶縁破壊が生じやすい巻線21の屈曲部211の劣化を効果的に抑制することができる。また着磁するワーク30の形状等に応じて最適な着磁ができるように着磁ヨーク本体10の形状等を設計する上で、着磁ヨーク本体10の形状等に何ら制約は生じない。したがって本発明によれば、着磁効率を低下させることなく、より耐久性が高い着磁ヨークを提供することができる。
【0026】
巻線支持部材23は、樹脂22よりも強度(例えば引張強度等)が高い材料で形成されているのが好ましい。それによって巻線21にパルス電流を流したときに最も大きな力が作用する巻線21の屈曲部211の動きをより高い強度で効果的に抑制することができるので、着磁ヨークの耐久性をさらに向上させることができる。また巻線支持部材23の材料は、例えば非磁性体でもよいが、金属を用いると渦電流が流れて発熱し、損失(渦電流損)が生ずる。そのため巻線支持部材23は、絶縁体で形成されているのが好ましく、それによって渦電流損に起因して着磁効率が低下する虞を低減することができる。
【0027】
さらに巻線支持部材23は、図示の如く、巻線21の屈曲部211の内周面に接する接触部分231が、巻線21の屈曲部211の内周面に沿う曲面形状になっているのが好ましい。例えば巻線21の屈曲部211の曲げ半径は、その巻線21の太さに応じて決まってくる。そして巻線支持部材23の形状は、例えば巻線21の屈曲部211の曲げ半径に応じて適切な曲面形状に設定される。このような形状に巻線支持部材23を形成することで、巻線21の屈曲部211の内周面が巻線支持部材23に点接触ではなく面接触することになり、巻線21の屈曲部211と巻線支持部材23とが接する部分に作用する力が分散される。それによって巻線21の屈曲部211の劣化をさらに効果的に抑制することができるので、さらに耐久性を向上させることができる。
【0028】
そして、巻線支持部材23の接触部分231に外接する仮想円Sの中心Oから巻線支持部材23の接触部分231の中心Mまでの線分L1と、仮想円Sの中心Oを通り且つティース13の前面131と平行な線分L2とのなす角が40度以上50度以下であることが好ましい。特に、当該なす角が45度となることがより好ましい。これにより、巻線21の振動に伴う、巻線21と巻線支持部材231との摺動を小さな角度範囲に収めることが可能となる。更には、巻線21と巻線支持部材231との間に樹脂を充填するスペースを確保することが可能になり、巻線21に作用する力の緩和及び巻線21の被覆の機械的劣化を低減することができる。
【0029】
なお、仮想円Oは、巻線支持部材23の接触部分231に外接する円のみならず、内接する円であってもよい。このような仮想円Oが内接する場合であっても、線分L1の長さが変わり、且つ線分L2の位置が平行に偏移するだけであるため、上記なす角は同一となる。
【0030】
<第2実施例>
図4は、第2実施例の本発明に係る着磁ヨークの一部を拡大図示した要部断面図である。
第2実施例の着磁ヨークは、巻線支持部材23が金属で形成されている点で第1実施例と相違している。それ以外の構成については、第1実施例と同様であるため詳細な説明を省略する。このように本発明に係る着磁ヨークは、巻線支持部材23を金属で形成することも可能であり、このような態様においても本発明による作用効果が得られる。
【0031】
<第3実施例>
図5は、第3実施例の本発明に係る着磁ヨークの一部を拡大図示した要部断面図である。
第3実施例の着磁ヨークは、第1実施例の巻線支持部材23は設けられておらず、巻線21の屈曲部211とティース13との間の空間212で巻線21を支持する巻線支持部131がティース13に形成されている。すなわち、巻線支持部131は、鉄心である着磁ヨーク本体10(ティース13)の一部として形成されている。巻線支持部131は、各ティース13の前面及び後面にそれぞれ設けられている。さらに巻線21とティース13との間の隙間には、絶縁性を有する材料で形成されたシート状の部材である絶縁紙24が設けられている。上記以外の構成については、第1実施例と同様であるため詳細な説明を省略する。
【0032】
このように巻線21の屈曲部211とティース13との間の空間212で巻線21を支持する巻線支持部131をティース13に形成することで、巻線21にパルス電流を流したときに最も大きな力が作用する巻線21の屈曲部211の動きを巻線支持部131で抑制することができる。それによって第3実施例の着磁ヨークは、特に絶縁破壊が生じやすい巻線21の屈曲部211の劣化を効果的に抑制することができるので、第1実施例と同様に、より耐久性が高い着磁ヨークを提供することができる。さらに第3実施例の着磁ヨークは、巻線21の屈曲部211とティース13との間の空間212で巻線21を支持する巻線支持部131がティース13の一部で形成されているので、例えば巻線21の屈曲部211とティース13との間の空間212が狭く、その間に第1実施例の巻線支持部材23を挿入することが困難な場合でも、より耐久性が高い着磁ヨークを提供できる。
【0033】
さらに第3実施例の巻線支持部131は、図示の如く、巻線21の屈曲部211の内周面に接する接触部分132が、巻線21の屈曲部211の内周面に沿う曲面形状になっているのが好ましい。例えば巻線21の屈曲部211の曲げ半径は、その巻線21の太さに応じて決まってくる。そして巻線支持部131の形状は、例えば巻線21の屈曲部211の曲げ半径に応じて適切な曲面形状に設定される。このような形状に巻線支持部131を形成することで、巻線21の屈曲部211の内周面が巻線支持部131に点接触ではなく面接触することになり、巻線21の屈曲部211と巻線支持部131とが接する部分に作用する力が分散される。それによって巻線21の屈曲部211の劣化をさらに効果的に抑制することができるので、さらに耐久性を向上させることができる。
【0034】
また、第3実施例の巻線支持部131は、鉄心である着磁ヨーク本体10の一部として形成されるため、巻線支持部131と着磁ヨーク本体10との材料の共通化が図られ、着磁ヨーク自体の製造コストの低減が可能になる。
【0035】
なお、第3実施例においても、第1実施例と同様に、巻線支持部131の接触部分132に外接する仮想円(図示せず)の中心(図示せず)から巻線支持部131の接触部分132の中心(図示せず)までの線分(図示せず)と、当該仮想円の中心を通り且つティース13の前面(巻線支持部131の前面)と平行な線分(図示せず)とのなす角が40度以上50度以下であることが好ましく、当該なす角が45度となることがより好ましい。これにより、巻線21の振動に伴う、巻線21と巻線支持部131との摺動を小さな角度範囲に収めることが可能となる。更には、巻線21と巻線支持部131との間に樹脂を充填するスペースを確保することが可能になり、巻線21に作用する力の緩和及び巻線21の被覆の機械的劣化を低減することができる。
【符号の説明】
【0036】
10 着磁ヨーク本体(鉄心)
11 貫通孔
12 スロット
13 ティース
131 巻線支持部
21 巻線
22 樹脂
23 巻線支持部材
24 絶縁紙
図1
図2
図3
図4
図5