(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-16
(45)【発行日】2022-02-25
(54)【発明の名称】ネットワーク接続システム及びその方法
(51)【国際特許分類】
H04L 47/24 20220101AFI20220217BHJP
【FI】
H04L47/24
(21)【出願番号】P 2019162098
(22)【出願日】2019-09-05
(62)【分割の表示】P 2018000138の分割
【原出願日】2014-09-11
【審査請求日】2019-10-07
(31)【優先権主張番号】P 2013188736
(32)【優先日】2013-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】500260296
【氏名又は名称】フリービット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104411
【氏名又は名称】矢口 太郎
(72)【発明者】
【氏名】池田 博樹
(72)【発明者】
【氏名】石田 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】大泉 洋
(72)【発明者】
【氏名】三沢 徳章
【審査官】大石 博見
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-209267(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モバイルネットワークとインターネットとの間に置かれた帯域制御ルータを有し、
モバイルネットワーク上の携帯情報端末にインストールされた複数のアプリケーションソフトウェアが、サービスの種類に応じて、上記帯域制御ルータを介して上記インターネット上にある特定のサービスサーバに接続されるように構成されている
ネットワーク接続システムであって、
このシステムは、
ユーザの携帯情報端末毎に設定された、サービスの種類に応じた接続ポリシーをデータ格納部に格納する手段と、
特定の携帯情報端末から上記サービスサーバへの接続に際して接続しようとしているサービスの種類を検出し、当該携帯情報端末の上記検出されたサービスに関する前記接続ポリシーを前記データ格納部から取り出し、上記携帯情報端末を特定する情報と共に帯域制御ルータに送信する通信帯域制御ポリシー設定手段と、
を有し、
前記帯域制御ルータは、前記送信された接続ポリシーに基づき、前記特定された携帯情報端末からのパケット及び前記特定された携帯情報端末へのパケットを優先制御若しくは所定の優先通信帯域で転送するものであり、
前記通信帯域制御ポリシー設定手段は、特定の携帯情報端末から上記サービスサーバに接続しようとしているサービスの種類の検出を、前記携帯情報端末上で最前面にアクティブ表示されているアプリケーションの種類を受信することで行うものである
ことを特徴とするネットワーク接続システム。
【請求項2】
請求項1記載のネットワーク接続システムにおいて、
優先制御若しくは帯域制御するべきサービスの種類とそのサービスの接続ポリシーとが格納されているテーブルを参照し、サービスの種類に応じた接続ポリシーを上記テーブルから取り出して上記帯域制御ルータに送信するものである
ことを特徴とするネットワーク接続システム。
【請求項3】
請求項1記載のネットワーク接続システムにおいて、
前記接続ポリシーは、特定のサービス毎に異なる通信優先度若しくは通信帯域の設定を含むものである
ことを特徴とするネットワーク接続システム。
【請求項4】
請求項1記載のネットワーク接続システムにおいて、
帯域制御ルータによる携帯情報端末毎のデータ通信量に基づき、サービス毎の回線通信混雑度を算出し、
前記回線通信混雑度を表示するユーザに表示するための混雑度表示インタフェースを生成する混雑度表示部を有する
ことを特徴とするネットワーク接続システム。
【請求項5】
請求項1記載のネットワーク接続システムにおいて、
帯域制御ルータによる携帯情報端末毎のデータ通信量をユーザに表示するためのデータ通信量表示インタフェースを生成する通信量表示部を有する
ことを特徴とするネットワーク接続システム。
【請求項6】
請求項1記載のネットワーク接続システムにおいて、
帯域制御ルータによる携帯情報端末毎のデータ通信量に基づき、ユーザ課金することを特徴とするネットワーク接続システム。
【請求項7】
請求項1記載のネットワーク接続システムにおいて、
前記接続ポリシーは、特定のサービス毎に異なるデータ圧縮度の設定を含むものである
ことを特徴とするネットワーク接続システム。
【請求項8】
請求項7記載のネットワーク接続システムにおいて、
前記接続ポリシーのデータ圧縮度は、特定のサービス毎に異なるデータ変換方法の設定を含むものである
ことを特徴とするネットワーク接続システム。
【請求項9】
請求項1記載のネットワーク接続システムにおいて、
前記接続ポリシーは、特定のサービス毎に異なる通信可能な時間帯、場所の設定を含むものである
ことを特徴とするネットワーク接続システム。
【請求項10】
請求項1記載のネットワーク接続システムにおいて、
前記携帯情報端末を特定する情報は、前記携帯情報端末のIPアドレスである
ことを特徴とするネットワーク接続システム。
【請求項11】
請求項1記載のネットワーク接続システムにおいて、
ユーザ課金情報を受け取り、携帯情報端末に関連付けるユーザ課金情報取得部を有する
ことを特徴とするネットワーク接続システム。
【請求項12】
請求項1記載のネットワーク接続システムにおいて、
前記サービスの種類の検出は、アプリケーションが接続する接続先URLにより行うものである
ことを特徴とするネットワーク接続システム。
【請求項13】
請求項1記載のネットワーク接続システムにおいて、
優先制御若しくは帯域制御するべきサービスの種類は、音声通話のためのサービスを少なくとも含む
ことを特徴とするネットワーク接続システム。
【請求項14】
請求項1記載のネットワーク接続システムにおいて、
前記携帯情報端末にインストールされ、
前記携帯情報端末に、この携帯情報端末のディスプレイ上にアクティブ表示されたサービスの種類を検出させる手段と;
前記携帯情報端末に、この携帯情報端末を特定する情報を取得させる手段であって、この特定する情報はこの携帯情報端末を通信ネットワーク上でユニークに特定するためのものである、取得させる手段と;
前記携帯情報端末に、上記サービスの種類を前記携帯情報端末を特定する情報と共に前記通信帯域制御ポリシー設定手段に送信させる手段と
を有する管理ソフトウエアプログラムを有するものであり、前記通信帯域制御ポリシー設定手段によるサービスの種類の検出は、前記携帯情報端末から受け取った情報に基づいて行われるものである、ことを特徴とするネットワーク接続システム。
【請求項15】
請求項1記載のネットワーク接続システムにおいて、
前記ユーザの携帯情報端末毎に設定されたサービスの種類に応じた接続ポリシーは、ユーザの携帯端末上に生成された設定インタフェースにより設定されるものである
ことを特徴とするネットワーク接続システム。
【請求項16】
モバイルネットワークとインターネットとの間に置かれた帯域制御ルータを有し、モバイルネットワーク上の携帯情報端末にインストールされた複数のアプリケーションソフトウェアが、サービスの種類に応じて、上記帯域制御ルータを介して上記インターネット上にある特定のサービスサーバに接続されるように構成されているネットワーク接続システムで実行される方法であって、
この方法は、
ユーザの携帯情報端末毎に設定されたサービスの種類に応じた接続ポリシーをデータ格納部に格納する工程と、
特定の携帯情報端末から上記サービスサーバへの接続に際して接続しようとしているサービスの種類を検出し、当該携帯情報端末の上記検出されたサービスに関する前記接続ポリシーを前記データ格納部から取り出し、上記携帯情報端末を特定する情報と共に帯域制御ルータに送信する通信
帯域制御ポリシー設定工程と、
を有し、
前記帯域制御ルータは、前記送信された接続ポリシーに基づき、前記特定された携帯情報端末からのパケット及び前記特定された携帯情報端末へのパケットを優先制御若しくは所定の優先通信帯域で転送するものであり、
前記通信帯域制御ポリシー設定工程は、特定の携帯情報端末から上記サービスサーバに接続しようとしているサービスの種類の検出を、前記携帯情報端末上で最前面にアクティブ表示されているアプリケーションの種類を受信することで行うものである
ことを特徴とするネットワーク接続システムで行う方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、モバイルネットワークで使用されるネットワーク接続システムに関し、特に、モバイルネットワーク上の端末機器にインストールされた特定アプリケーションの接続通信帯域を特異的に優先制御/帯域制御するためのネットワーク接続システム及びその方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯情報端末、いわゆるスマートフォンの性能が向上し、ユーザが必要なアプリケーションソフトウェアを自由に選択しインストールすることができるようになってきている。ここで、多くのアプリケーションソフトウェアは、インターネット上に置かれた特定のサービスサーバと接続し、このサービスサーバから各種情報を受け取ることで、スマートフォン上にユーザが求める情報を提示するように構成されている。
【0003】
ここで、通常のネットワーク接続構成においては、アプリケーションソフトウェアからのIPパケットは、ベストエフォートで転送されるようになっており、アプリケーション毎に取捨選択するようにIPパケットを優先制御することはできない。したがって、例えば、IP電話のような音声情報を扱うようなアプリケーションソフトウェアの通信を他のアプリケーションソフトウェアよりも優先させるといった制御は行えず、スマートフォンのユーザの不満に繋がっていた。
【0004】
一方、特定のスマートフォンのIPアドレスを予めルータに設定してそのスマートフォンからの接続を優先制御することは可能であるが、その場合、IP電話だけでなくそのスマートフォンの全てのアプリケーションの接続が優先制御されることになる。また、特定のサービスサーバ宛の接続のみを優先制御することは可能であるが、例えば最近のIP電話サービスは、複数のサーバを連携させて提供されるようになっているため、これら複数のサーバの全IPアドレスを、すべて把握して、予めルータに設定することは困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
すなわち、従来のモバイルキャリアのネットワーク接続システムでは、例えばIP電話アプリケーションのIPパケットだけを優先制御/帯域制御することで、ユーザに高品質な電話サービスを提供したいという希望に応えることが困難であった。
【0006】
この発明は、このような事情を鑑みてなされたものであり、携帯情報端末上で異なる複数のアプリケーションが実行される場合であっても、非常に簡易な構成で高品質なサービスを提供することができるネットワーク接続システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、この発明の第1の主要な観点によれば、モバイルネットワークとインターネットとの間に置かれた帯域制御ルータを有し、
モバイルネットワーク上の携帯情報端末にインストールされた複数のアプリケーションソフトウェアが、上記帯域制御ルータを介して上記インターネット上にあるサービスサーバに接続されるように構成されているネットワーク接続システムであって、
このシステムは、
インターネット上に設けられたアプリケーション通信環境管理サーバであって、特定の携帯情報端末から上記サービスサーバに接続しようとしているアプリケーションの種類を検出し、アプリケーションの種類に応じた接続ポリシー(帯域制御、優先通信、圧縮変換方法等)を上記携帯情報端末を特定する情報(IPアドレス、ポート番号等)と共に前記帯域制御ルータにセットするアプリケーション通信環境管理サーバを有し、
前記帯域制御ルータは、前記アプリケーション通信環境管理サーバから受け取った接続ポリシーに応じ、前記特定された携帯情報端末からのパケットを優先制御若しくは所定の優先通信帯域で転送するものである
ことを特徴とするネットワーク接続システムが提供される。
【0008】
この発明の一の実施形態によれば、前記アプリケーション接続サーバは、特定の携帯情報端末から上記サービスサーバに接続しようとしているアプリケーションの種類の検出を、前記携帯情報端末上で最前面にアクティブ表示されているアプリケーションの種類を受信することで行うものである。
【0009】
この発明の別の一の実施形態によれば、前記アプリケーション接続サーバは、特定の携帯情報端末から上記サービスサーバに接続しようとしているアプリケーションの種類の検出を、携帯情報端末から送信されたパケットに含まれるタグに基づいて行うものである。
【0010】
この発明のさらなる別の一の実施形態によれば、前記タグは、前記携帯情報端末のOSが生成した前記アプリケーションのプロセスID若しくはこのプロセスIDに関連する識別子である。
【0011】
この発明の更なる別の一の実施形態によれば、前記帯域制御ルータは、同時に複数種類の前記アプリケーションが検出された場合、前記パケットに含まれるアプリケーション毎に異なるIPアドレス若しくは/及びポート番号に応じて、個別の接続ポリシーに応じ、前記特定された携帯情報端末からのパケットを優先制御若しくは所定の優先通信帯域で転送するものである。
【0012】
この発明の更なる別の一の実施形態によれば、前記帯域制御ルータは、同時に複数種類の前記アプリケーションが種類が検出された場合、前記パケットに含まれるアプリケーション毎のIPアドレス若しくは/及びポート番号に応じて、個別の接続ポリシーに応じ、前記特定された携帯情報端末からのパケットを優先制御若しくは所定の優先通信帯域で転送するものである。
この発明の更なる別の一実施形態によれば、前記アプリケーション接続環境管理サーバは、優先接続若しくは帯域制御するべきアプリケーションの種類とそのアプリケーションの接続ポリシーとが格納されているテーブルを参照し、アプリケーションソフトウェアの種類に応じた接続ポリシーを上記テーブルから取り出して上記帯域制御ルータに送信するものである。
【0013】
また別の一実施形態によれば、この発明のシステムは、前記接続ポリシーは、特定のアプリケーション毎に異なる通信優先度若しくは通信帯域の設定を含むものである。
【0014】
更なる別の一実施形態によれば、この発明のシステムは、帯域制御ルータによる携帯通信端末毎のデータ通信量を監視し、携帯情報端末でアクティブなアプリケーションの種類に応じて、アプリケーション毎のダウンロードデータ通信量を記録するデータ通信量記録部を有する。この場合、上記携帯情報端末でアクティブなアプリケーションの種類に応じ、前記データ通信量記録部で記録されたアプリケーション毎のデータ通信量が所定の上限値に達したかを判断する通信量上限判断部を有するものであり、このシステムは、上記通信量上限判断部の判断に応じて前記帯域制限ルータによる当該携帯情報端末からのパケットの転送を制限する通信制限部を有することが好ましい。
【0015】
また、前記データ通信量記録部で記録されたアプリケーション毎のデータ通信量に基づき、アプリケーション毎の回線通信混雑度を算出し、前記混雑度を表示するユーザに表示するための混雑度表示インタフェースを生成する混雑度表示部を有することが好ましい。また、前記データ通信量記録部で記録されたアプリケーション毎のデータ通信量をユーザに表示するためのデータ通信量表示インタフェースを生成する通信量表示部を有することが好ましい。さらに、前記データ通信量記録部で記録されたアプリケーション毎のデータ通信量に基づき、ユーザ課金することが好ましい。
【0016】
更なる別の一実施形態によれば、この発明のシステムは、前記接続ポリシーは、特定のアプリケーション毎に異なるデータ圧縮度の設定を含むものである。
【0017】
更なる別の一実施形態によれば、この発明のシステムは、前記接続ポリシーのデータ圧縮度は、特定のアプリケーション毎に異なるデータ変換方法の設定を含むものである。
【0018】
更なる別の一実施形態によれば、この発明のシステムは、前記接続ポリシーは、特定のアプリケーション毎に異なる通信可能な時間帯、場所の設定を含むものである。
【0019】
更なる別の一実施形態によれば、この発明のシステムは、前記携帯情報端末を特定する情報は、前記情報携帯端末のIPアドレスである。
【0020】
更なる別の一実施形態によれば、この発明のシステムは、ユーザ課金情報を受け取り、携帯情報端末に関連付けるユーザ課金情報取得部を有する。
【0021】
更なる別の一実施形態によれば、この発明のシステムは、前記携帯情報端末から受け取るアプリケーションの種類は、当該アプリケーションが提供するサービスの種類を特定するものである。
【0022】
更なる別の一実施形態によれば、この発明のシステムは、ユーザに、接続条件を設定するための設定インタフェースを生成し、そのインタフェースを通して設定するようにするものである。
【0023】
更なる別の一実施形態によれば、この発明のシステムは、前記優先接続するべきアプリケーションソフトウェア若しくはそのアプリケーションソフトウェアが提供するサービスの種別は、音声通話のためのアプリケーションソフトウェア若しくはサービスを少なくとも含むものである。
【0024】
更なる別の一実施形態によれば、この発明のシステムは、前記携帯情報通信端末にインストールされ、前記携帯情報端末に、この携帯情報端末のディスプレイ上にアクティブ表示されたアプリケーションの種類を検出させる手段と;前記携帯情報端末に、この携帯情報端末を通信ネットワーク上でユニークに特定するための携帯情報端末特定情報を取得させる手段と;前記携帯情報端末に、上記アプリケーションの種別を携帯状態端末を特定する情報と共に前記帯域制御システムに送信させる手段とを有するアプリケーション管理ソフトウエアプログラムを有するものである。
【0025】
更なる別の一実施形態によれば、この発明のシステムは、 前記携帯情報通信端末にインストールされ、前記携帯情報端末に、この携帯情報端末上で起動されたアプリケーションのプロセスIDを検出させる手段と;前記携帯情報端末に、この携帯情報端末を通信ネットワーク上でユニークに特定するための携帯情報端末特定情報を取得させる手段と;前記携帯情報端末に、上記アプリケーションから送信されるパケットに上記プロセスID若しくはプロセス毎に異なる特定のタグを含ませ、携帯状態端末を特定する情報と共に前記帯域制御システムに送信させる手段とを有するアプリケーション管理ソフトウエアプログラムを有するものである。
【0026】
更なる別の一実施形態によれば、この発明のシステムは、前記携帯情報通信端末にインストールされ、
前記携帯情報端末に、この携帯情報端末上で起動されたアプリケーションのIPアドレス若しくは/及びポート番号を検出させる手段と;前記携帯情報端末に、この携帯情報端末を通信ネットワーク上でユニークに特定するための携帯情報端末特定情報を取得させる手段と;前記携帯情報端末に、上記アプリケーションから送信されるパケットに上記IPアドレス及び/若しくはポート番号を含ませ、携帯状態端末を特定する情報と共に前記帯域制御システムに送信させる手段とを有するアプリケーション管理ソフトウエアプログラムを有するものである。
【0027】
更なる別の一実施形態によれば、この発明のシステムは、前記携帯情報通信端末にインストールされ、前記携帯情報端末に、前記帯域制御システムからアプリケーション毎の通信状態を受け取らせこの携帯状態端末のディスプレイ上に表示する手段を有するアプリケーション管理ソフトウエアプログラムを有するものである。
【0028】
この発明の第2の主要な観点によれば、モバイルネットワークとインターネットとの間に置かれた帯域制御ルータを有し、モバイルネットワーク上の携帯情報端末にインストールされた複数のアプリケーションソフトウェアが、上記帯域制御ルータを介して上記インターネット上にあるサービスサーバに接続されるように構成されているネットワーク接続システムにより実行される方法であって、インターネット上に設けられたアプリケーション接続環境管理サーバで、特定の携帯情報端末から前記サーバに接続しようとするアプリケーションの種類を検出し、アプリケーションソフトウェアの種類に応じた接続ポリシー(制御帯域・圧縮有無等)を上記携帯情報端末を特定する情報(IPアドレス等)と共に帯域制御ルータに送信する工程と、前記帯域制御ルータが、前記アプリケーション接続環境管理サーバから受け取った接続ポリシー(制御帯域・圧縮有無等)に応じ、前記特定された携帯情報端末からのパケットを優先制御若しくは所定の優先通信帯域で転送する工程とを有することを特徴とする方法が提供される。
【0029】
この発明の上記特許請求の範囲に記載していない他の特徴については、この後の発明の最良の実施形態及び図面中に明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】
図1は、モバイルネットワークを通したデータ通信環境を示す全体概略構成図。
【
図2】
図2は、この発明の一実施形態に係るデータ通信環境を示す全体概略構成図。
【
図3】
図3は、同じく、アプリ管理ソフトを示す概略構成図。
【
図4】
図4は、同じく、アプリ管理ソフトの処理工程を示すフローチャート。
【
図5】
図5は、同じく、アプリ・インフラ連携サーバを示す概略構成図。
【
図6】
図6は、同じく、アプリ・インフラ連携サーバの処理工程を示すフローチャート。
【
図7】
図7は、同じく、帯域制御接続ポリシーを説明するための概念図。
【
図8】
図8は、同じく、帯域制御接続ポリシーを説明するための概念図。
【
図9】
図9は、同じく、帯域制御接続ポリシーを説明するための概念図。
【
図10】
図10は、同じく、帯域制御接続ポリシーを説明するための概念図。
【
図11】
図11は、同じく、アプリ・インフラ連携サーバの処理工程を示すフローチャート。
【
図12】
図12は、同じく、携帯情報端末の表示画面例を示す図。
【
図13】
図13は、同じく、携帯情報端末の表示画面例を示す図。
【
図14】
図14は、同じく、課金サーバによる課金処理工程を示すフローチャート。
【
図15】
図15は、別の実施形態を示す帯域制御方式を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
この実施形態では、帯域制御ルータを含むネットワーク接続システムが、仮想移動体通信事業者(Mobile Virtual Network
Operator、以下「MVNO事業者」という)によって提供される場合を例にとって説明する。
【0032】
MVNO事業者とは、モバイルネットワークという物理的な移動体回線網を自社では持たず、実際に保有する移動体通信事業者(Mobile Network Operator、以下「MNO事業者」という)から借りて、自社ブランドで通信サービスを行う事業者のことをいう。
【0033】
本発明の特徴的構成の説明をする前に、本発明の理解の便宜のため、まず
図1を参照して、モバイルネットワークを通したデータ通信環境の一例について説明する。
(本願発明の前提となるデータ通信環境)
図1中、図に1で示すのがMNO事業者のモバイルネットワークであり、2で示すのがMVNO事業者のネットワーク接続システムである。
【0034】
MVNO事業者と契約したユーザの携帯情報端末3は、基地局4を介してMNO事業者のモバイルネットワーク5に接続された後、MVO事業者側のサービスゲートウェイ6(SGW)からMVNO事業者側のパケットデータネットワークゲートウェイ7(PGG)を介してMVNO事業者のネットワーク接続システム2にルーティングされ、ついで、このネットワーク接続システム2に設けられたルータ8によってインターネットの各種サーバ10a~10eに接続されるようになっている。これらMVO事業者側のサービスゲートウェイ6とMVNO事業者側のパケットゲートウェイ7の間には、MVO事業者とMVNO事業者との契約に基づいた通信帯域、例えば100Mbpsが確保されるように構成されている。
【0035】
前記ユーザの携帯情報端末3は、いわゆるスマートフォンであって、図示しないCPU、RAM、及びROMを有する。ROMにはiOS(商品名)やAndroid(商品名)等のオペレーションシステムソフトウェアプログラム(以下「OS」という)と、各種アプリケーションソフトウェアプログラム(以下、単に「アプリケーション」という)3a~3eがインストールされている他、これらのOSやアプリ3a~3eで利用するデータが格納されるようになっている。
【0036】
このユーザの携帯情報端末3にインストールされたアプリケーション3a~3eとしては、動画ソフト3a、IP電話3b、SNS3c、ブラウザ3d、メーラ3e等があるが、ユーザが自己の好みで追加のアプリケーションを自由にインストールできるようになっている。これら携帯情報端末3上のアプリ3a~3eは、CPUにより適宜RAM上に呼び出されて展開され実行されることで、上記MNO事業者のモバイルネットワーク5とMVNO事業者のネットワーク接続システム2を介して、インターネット9上にある各種サーバ10a~10eに接続し、これらサーバ10a~10eとの間で適宜必要なデータ通信を行うことで各種処理を行うようになっている。
【0037】
この図に示すように上記携帯情報端末のアプリ3a~3eは、実行されるとき、異なるIPアドレスを有する複数のサーバ10a~10eと接続される。この場合、前記ネットワーク接続システム2に設けられたルータ8は、上記携帯情報端末3からのパケットのヘッダ情報に含まれる宛先IPアドレスに基づき、当該パケット3a~3eを宛先のサーバ10a~10eに適宜転送するようになっている。
【0038】
このルータ8は、携帯情報端末3のIPアドレスに基づいて通過するパケットの転送順序や転送速度を制御するための帯域制御機能12を備えている。帯域制御機能は、QoS機能とも呼ばれ、大きく、「優先制御」と「帯域制御」の二つに区別できる。この発明に当てはめた場合、優先制御方式は、ネットワーク上に流れているパケットについて送出元IPアドレスによりアプリケーション種別を区別し、アプリケーション毎に絶対的な優先度を割り当てる方法であり、帯域制御機能とは、アプリケーション毎に使用できる通信帯域の上限を割り当てる方式である。
【0039】
この帯域制御によれば、優先度の高いアプリケーションのパケットが常に優先して出力されるか、若しくはより大きい通信帯域を使用できることができ、優先度の高いサービスに係るパケットを安定して転送することが可能になる。
【0040】
これらQoS制御においては、受け取ったIPパケットからアプリケーションの種類を正確に識別することが重要になる。一般に、動画ソフトやIP電話ソフトからの動画・音声のパケットは、品質を維持するために優先制御されるか広い通信帯域で転送される必要がある。この場合、上記ルータ8は、受け取った多くのパケットから動画ソフトやIP電話のIPパケットのみを特定する必要がある。このIPパケットの識別は一般に発信元や宛先のIPアドレスや転送ポート番号に基づいて行われる。
【0041】
例えば、IP電話専用機やVoIPゲートウエイなど、特定の端末装置が固定のIPアドレスで使用されている場合には、発信元の端末措置のIPアドレスを指定することで、対象のパケットを確実に見分けられる。
【0042】
しかしながら、上述した携帯情報端末3のように同一の端末上で優先度の違う複数のアプリが動いているようなケースではこの方法は利用できない。すなわち、IPアドレスの情報だけでパケットを識別しようとすると、優先する必要のない通信まで優先制御/帯域制御してしまうことになる。また、携帯情報端末に対してDHCPでIPアドレスを自動的に割り振る環境の場合、そもそもIPアドレスを見てもどの端末か判断できない。
【0043】
一方、宛先サーバ10a~10eのIPアドレスに基づいてアプリケーション種別を識別する場合も考えられる。例えば、携帯情報端末3からのパケットが常に特定のIP電話サーバ10bに接続される場合、IP電話用サーバ10bのIPアドレスを指定することで、対象のパケットがどのサービス種別に属するかを確実に見分けることができる。しかし、近時のアプリケーションは、1つのアプリケーションで多数の異なるサーバに接続するものもあり、このすべてのサーバのアドレスを指定することは困難で実質的に不可能であるということがあった。
【0044】
前述したように、この発明は、このような事情に鑑みてなされたものである。
(この発明の特徴的構成)
以下、本願発明の特徴的構成を上記
図1で説明したモバイル通信環境に適用した例について、
図2~
図14に基づいて説明する。ただし、
図1のものと同様の構成要素については、同一の符号を用いて詳しい説明は省略する。
【0045】
まず、
図2に示すように、この実施形態では、MVNO事業者のシステム2が、上記
図1に示したのと基本的に同様の構成及び機能を有する帯域制御ルータ8に加えて、本発明の機能に対応したアプリ・インフラ連携サーバ14(本発明の「アプリケーション接続環境管理サーバ」)と、回線市場状況をモニターするための回線状況/使用量センシングサーバ15と、使用帯域に応じた課金を管理する課金サーバ17と、圧縮変換プロキシサーバ19と、前記携帯情報端末3にインストールされたアプリ管理ソフト16とを有することを特徴とするものである。なお、この発明では、上記帯域制御ルータ8を含め、MVNO事業者側のシステム2を「帯域制御システム」と称している。
【0046】
まず、アプリ管理ソフト16は、携帯情報端末3にインストールされている。このアプリケーション管理ソフト16は、当該携帯情報端末3上でアクティブになったアプリケーション3a~3eの種類に関する情報を、当該携帯状態端末3を特定するためのIPアドレス・ポート番号と共に前記アプリ・インフラ連携サーバ14に送信するものである。
【0047】
上記アプリ・インフラ連携サーバ14は、MVNO事業者のシステム2に設けられており、かつ、上記携帯情報端末3にインストールされたアプリ管理ソフト16と協働するように設計されたもので、上記携帯情報端末3上でアクティブなアプリケーション3a~3eの種類を検出し、アプリケーション3a~3eの種類に応じた接続ポリシーを上記携帯情報端末3を特定するためのIPアドレス・ポート番号と共に帯域制御ルータ8にセットする機能を有する。
【0048】
上記帯域制御ルータ8は、上記アプリ・インフラ連携サーバ14から受け取った接続ポリシーに応じ、前記特定された携帯情報端末3からのパケットを優先制御若しくは所定の優先通信帯域で転送するものである。この結果、アプリケーション3a~3eの種類に応じた優先制御若しくは所定の優先通信帯域で通信が行われることになる。
【0049】
上記回線状況/使用量モニタリングサーバ15は、上記MVNO事業者側のシステム2に設けられたパケットゲートウェイ7(PGW)を通過するパケットを監視し、携帯情報端末3のIPアドレス・ポート番号に関連付けてデータ通信量を出力し、上記アプリ・インフラ連携サーバ14に通知するものである。
【0050】
以下、この発明のアプリ・インフラ連携サーバ14及びアプリ管理ソフト16の構成を詳しく説明する。
(アプリ管理ソフト)
図3は、ユーザの携帯情報端末3を示す模式図である。
【0051】
この携帯情報端末3には、図示しないOSと、複数の異なるアプリケーション3a~3eと、この発明のアプリ管理ソフト16とがインストールされている。
【0052】
このアプリ管理ソフト16は、携帯情報端末3の図示しないOSと連携し特定のアプリケーションが起動されアクティブになったことを検出するアプリ検出モジュール22と、この携帯情報端末3に搭載されたGPS等の位置検出デバイス21と連携しこの携帯情報端末3の地理的位置の検出を行う位置検出モジュール23と、OSと連携しこの携帯情報端末3のIPアドレスおよびポート番号を検出する端末IPアドレス・ポート番号検出モジュール24と、アプリケーション3a~3eのパラメータを検出するアプリパラメータ検出部25と、前記検出モジュール22~25の検出結果に基づいてアクティブアプリの状態変化を判定するアクティブアプリ状態変化判定モジュール26と、アプリ・インフラ連携サーバ14に上記アクティブアプリ状態変化判定モジュール25で判定された状態変化を送信するサーバ通信モジュール27と、この携帯情報端末3のアクティブアプリケーションの通信状態及び上記サーバ14から受けとったアプリ毎の通信状態及び回線混雑状態をこの携帯情報端末3の表示画面29に表示するアプリ通信状態表示部28とを有する。この実施形態においては、このアプリ管理ソフト16は、OSに対するAPIの形で実装されている。
【0053】
以下、
図4を参照してこのアプリ管理ソフト16の基本的動作を説明する。なお、図中の符号S1~S6は工程を参照するためのものであり、以下の説明中のステップS1~S6に対応する。
【0054】
まずこの管理ソフト16が起動すると、前記アプリ起動検出モジュール22が動作し、携帯情報端末3にインストールされたいずれかのアプリケーション3a~3eが起動され、この携帯情報端末3の表示画面29上でアクティブになったかを監視する(図に示すステップS1)。この実施形態で「アクティブ」とは、起動されたアプリケーションが端末3の表示画面29の最前面に表示されユーザのフォーカスを取得したことを意味する。一旦アプリケーションが起動された後は、このアプリ起動検出モジュール22は一定の時間間隔で当該アプリケーションがアクティブであるか、別のアプリケーションが起動されてアクティブになったかを監視する。特定のアプリケーションがアクティブな場合、このアプリ起動検出モジュール22は、アプリケーション名(OSが出力するアプリケーションのユニークな名前)を出力し、アクティブアプリの状態変化判定モジュール26に送る。
【0055】
このアクティブアプリ状態変化判定モジュール26は、上記アプリ起動検出モジュール22から受け取ったアプリケーション名が変動した時、すなわち、アクティブなアプリケーションが変化したときに、「アクティブアプリの状態変化」が生じたと判定する(ステップS2)。
【0056】
一方、上記位置検出モジュール23は、上記場所信号検出デバイス21からの信号を監視し(ステップS3)、当該携帯情報端末3の現在の位置座標を上記アクティブアプリ状態変化判定モジュール26に送る。このアクティブアプリ状態変化判定モジュール26は、上記位置検出モジュールから受け取った位置座標情報が一定以上変動したとき若しくは一定の条件に合致した場合に、「アクティブアプリの状態変化」が生じたと判定する(ステップS2)。
【0057】
さらに、上記端末IPアドレス・ポート番号検出モジュール24は、この携帯情報端末3の通信モジュール30と連動して、この携帯情報端末3の現在のIPアドレスおよび現在使用している通信ポートの番号を監視し(ステップS4)、取得した情報を上記記アクティブアプリの状態変化判定モジュール26に送る。このアクティブアプリ状態変化判定モジュール26は、上記端末IPアドレス・ポート番号検出モジュールから受け取ったIPアドレス若しくはポート名が変動した時、「アクティブアプリの状態変化」が生じたと判定する(ステップS2)。
【0058】
さらに、上記アプリ・パラメータ取得モジュール25は、特定のアプリケーションと連動し、そのアプリケーションに関連付けられたパラメータを取得し(ステップS5)、上記記アクティブアプリの状態変化判定モジュール26に送る。パラメータの例としては、ブラウザの場合には接続先URLが、IP電話の場合には接続先電話番号が該当する。上記アクティブアプリ状態変化判定モジュール26は、上記パラメータが変動した時、「アクティブアプリの状態変化」が生じたと判定する(ステップS2)。
【0059】
アクティブアプリの状態変化判定モジュール26は、上記各モジュール22~25から受け取った情報に基づいて、上述したように「アクティブアプリの状態変化」であるかを判別し、状態変化であると判別した場合のみ、その判定結果をアプリ・インフラ連携サーバ14に送る(ステップS6)。
【0060】
この時アプリ・インフラ連携サーバ14に送られる情報は、例えば、アプリ名、ドメイン名ベース、座標位置、アプリのパラメータ、携帯端末のIPアドレス・使用ポート番号である。この情報は、回線使用帯域を確保するため、状態変化が生じたと判定された場合のみ送られるようになっている。
(アプリ・インフラ連携サーバ)
図5は、上記状態変化状を受け取るアプリ・インフラ連携サーバ14の構成を示す模式図である。
【0061】
このアプリ・インフラ連携サーバ14は、図示しないOS,RAM、各種入出力インタフェースと、この図に示されたデータ格納部30とプログラム格納部31とを有する。
【0062】
データ格納部30には、ユーザ情報32と、このシステムで帯域制御するアプリケーション情報33と、上記端末の状態変化判別情報に基づいて設定されるユーザ・アプリ毎帯域制御接続ポリシー34とが格納されている。
【0063】
プログラム格納部31には、上記携帯情報端末3からこの端末3上でのアプリの通信状態の変化情報を受け取るアプリ状態変化情報取得モジュール36と、上記アプリ状態変化情報取得モジュール36で取得した情報に基づき上記ユーザ・アプリ毎通信帯域制御・接続ポリシー34を取得し上記通信帯域制御ルータ8に送信するポリシー設定部38と、上記回線状況・使用量センシングサーバ15から上記端末3の通信量を取得しユーザ・アプリに関連付けて上記データ格納部30に格納するデータ通信量記録部39と、上記アプリ毎の通信量をユーザ・アプリ毎の通信帯域制御接続ポリシーに適用し、通信上限を判別する通信上限判別部40と、データ通信状態を上記携帯端末3に対して表示するためのインタフェースを生成するデータ通信状態表示処理部41と、上記アプリ管理ソフト16と連携するためにアプリ管理ソフト16のサーバ送信モジュール27と通信するアプリ管理ソフト通信モジュール42と、ユーザのアプリケーション毎の使用帯域・通信量に応じた課金処理を行うための課金処理モジュール43と、を有する。
【0064】
以下、
図6以下を参照してこのアプリ・インフラ連携サーバ14の基本的動作を説明する。図中のS7~S17の符号は、以下の説明中のステップS7~ステップS17に対応する。
【0065】
このアプリ・インフラ連携サーバ14では、上記アプリ管理ソフト通信モジュール42が上記サーバ通信モジュール27と通信することで、前記携帯情報端末3との通信が行われる。
【0066】
まず
図6のステップS7で、前記アプリ状態変化情報取得モジュール36が、上記アプリ管理ソフト通信モジュール42を通して、上記携帯情報端末3の前記アプリ管理ソフト16から送信された状態変化情報を受け取る。この状態情報には、前述したように、ユーザの端末3上でアクティブなアプリケーションのアプリ名、ドメイン名ベース、座標位置、アプリのパラメータ、携帯端末3のIPアドレス・使用ポート番号が含まれる。ついで、ステップS8で、前記通信帯域制御ポリシー設定部38が、上記状態変化情報に基づいて、ユーザ・アプリ毎の制御帯域接続ポリシーを設定する。
【0067】
ここで、前記ユーザ情報32(
図5)は、上記携帯情報端末3とユーザの属性を結びつけるための情報であり、そのようなユーザ情報としては、上記で端末3から受信したIPアドレス・ポート番号が格納される他、当該ユーザが通信帯域に関する特定の契約をしているかの情報も含むことが可能である。また、その特定の契約が有料の場合には、後で説明するように課金処理モジュール43を通して前記課金サーバ17によってユーザに対する課金処理が行われるようになっている。上記通信帯域制御ポリシー設定部38は、このユーザ情報32によって上記端末3から受け取った状態変化情報を特定のユーザに結び付けるように認識する。
【0068】
また、アプリ情報33(
図5)は、このシステムで帯域制御接続する特定のアプリケーションの識別情報を格納している。この実施形態では、上記携帯情報端末3にインストールされた一部のアプリケーションのみを識別して帯域制御接続するものであり、上記アプリ情報33には帯域制御対象のアプリケーション名が登録されている。この実施例では、ウェブブラウザ、youtube、Gmail、Facebook、Twitter,Yahoo(以上、いずれも登録商標)、050(IP電話)の各ソフトを認識するように、このアプリ情報33にそれらにユニークな情報が格納されている。上記通信帯域制御ポリシー設定部38は、このアプリ情報33に基づいて、制御対象アプリケーションであるかを認識するようになっている。
【0069】
通信帯域制御ポリシー設定部38は、上記状態変化情報、上記ユーザ情報32、アプリ情報33を参照することで、上記ユーザ・アプリ毎の追伸帯域制御接続ポリシー34からユーザ・アプリ毎の接続ポリシーを特定し、前記帯域制御ルータ8(圧縮度については圧縮変換プロキシ19(以下、圧縮変換プロキシ19の設定については帯域制御の設定に含めるとして説明は省略する))にセットする。具体的な接続ポリシー34は、この実施例では、通信帯域34a、データ圧縮度34b、通信可能時間帯34c、通信可能場所34d、データ通信量上限34e、データ通信残量34fが含まれる。
【0070】
図7~
図10は、この実施形態で設定される接続ポリシーの概念を説明するための模式図である。
【0071】
図7は、ユーザ・アプリと回線速度(通信帯域)(34a)に関するポリシー設定例を示す概念図である。上記で述べた特定のアプリケーション以外のデフォルトの接続速度(接続帯域)は100kbpsに設定されおり、特定のアプリケーションについてはLTE速度が設定されている。また、この例では、一部のアプリケーションについてはモバイル接続が許可されずWifi接続のみ可能な設定になっている。
【0072】
図8は、ユーザ・アプリとアプリケーション毎のダウンロード残量(34e,34f)に関するポリシー設定例を示す概念図である。デフォルトについては無制限となっているが、接続速度がLTE速度に設定されている特定のアプリケーションについては100MBに初期設定されている。この実施形態においては、ユーザ自身がこの上限を増やすオプション設定を行うことができ、この場合、上記課金サーバ17によって初期設定を超えた使用量に対して課金処理を行うことができるように構成されている。なお、課金方法については、これに限定されるものではなく、様々な方法を採ることが可能である。
【0073】
上記した回線速度(帯域制御)とダウンロード残量の設定が主な接続ポリシーとなるが、この実施形態は、上記回線速度に加えて様々なポリシー(上記データ圧縮度34b、通信可能時間帯34c、通信可能場所34d)を設定することができる。
図9は、その例を総合的に示すものである。
【0074】
この
図9に示すように、デフォルト(allで示す)では、100kbps、圧縮度「中」、ダウンロード残量が100MB、使える時間帯や場所については定めがなく、月間容量が100MBと設定されている。また、特定のアプリケーションについてはこの表に示すように設定される。
【0075】
また、この例では、
図10の概念図に示すように、アプリケーションに特有のパラメータに基づいた帯域制御も行えるようになっている。この例では、ブラウザの接続先URL毎に回線速度が定義されている。この情報についても、上記接続ポリシー34として、前記データ格納部30内に格納されている。
【0076】
図6に示すように、このようなポリシー34を、上記帯域制御ルータ8に設定する場合、このサーバ14は、前記アプリ状態変化情報取得モジュール36が、上記アプリ管理ソフト16から受け取った状態変化信号を受け取り(ステップS7)、IPアドレスおよびポート番号からユーザを特定し、アプリ名とユーザ名を上記ユーザ情報32、アプリ情報33及びポリシー34に適用し、当該アプリケーションについての接続ポリシーを特定する(ステップS8)。
【0077】
具体的には、当初は、上記でデフォルトで示した接続ポリシーが設定されており、場所や時間に関わらず、通信速度100kbps、通信上限は無制限が設定されている。しかし、上記携帯情報端末3で、youtubeが起動されアクティブになったことが検出されると、上記
図9でyoutubeで特定される接続ポリシーを特定する(ステップS8)。
【0078】
ついで、上記通信帯域制御ポリシー設定部38は、その他の条件、この実施形態では通信残量をチェックし(ステップS9)、その条件をクリアした場合、上記で決定した接続ポリシーを帯域制御ルータ8に送信し、セットする(ステップS10)。このポリシーは、上記端末3を特定する情報、この例ではIPアドレスおよびポート番号と共に上記帯域制御ルータ8にセットされる。
【0079】
この帯域制御ルータ8は、パケットに含まれる発信元のIPアドレスおよびポート番号に基づいて、それに対応する接続ポリシーに基づいて帯域制御を実行する。この帯域制御ルータ8は、上記特定の携帯情報端末3からのすべてのパケットを一括で帯域制御することになるが、その時にユーザがアクティブに使っているアプリケーション(この場合にはyoutube)に基づく帯域制御であるので、結果として上記アプリケーションの種類に合致した速度帯域が確保されることになる。
【0080】
この場合、上記端末3上でユーザがアクティブなアプリケーションを切り替えてから帯域制御がセットされるまでのタイムラグが重要になるが、この実施形態の環境の下でそのタイムラグの長さは10秒以下であり、アプリケーションがロードされる間に新しい帯域がセットされることになるので、ユーザはセットの遅れを体感することはないと思われる。
(帯域制御通信中の動作)
次に、
図11以下を参照して、帯域制御通信中の上記アプリ・インフラ連携サーバ14の動作について説明する。
【0081】
通信中、このサーバ14の前記データ通信量記録部39(
図5に示す)は、前記回線状況/使用量センシングサーバ15を通して通信状態をモニターし、上記特定のユーザの携帯情報端末3の単位時間ごとの通信量をその時通信しているアプリケーションに関連付けて記録する(ステップS11,S12)。この記録は、
図8の模式図に示すように、前記ユーザ・アプリ毎通信帯域制御接続ポリシー34の通信残量(youtubeの例では現在50MB)を適宜更新することで実行される。
【0082】
ついで、通信上限判断部40が、ユーザ・アプリ毎通信帯域制御接続ポリシー34の通信残量が上限(youtubeの例では1G)に達していないかを判断し(ステップS13)、達していない場合には、現在の通信を継続し、達している場合には、帯域制御をデフォルトの値に戻して上記制御帯域サーバにセットする(ステップS14)。このことで、当該アプリケーション(この例ではyoutube)の優先帯域制御(この例では75Mbps)は終了し、初期設定(デフォルト)の回線速度100kbpsに制限されることになる。
【0083】
なお、通信の途中で、別のアプリケーションがアクティブになった場合には、通信の途中でも、
図4及び
図6に示す動作が実行され、異なるアプリケーションに適合した帯域制御が実行されることになる。
(回線状況の表示)
また、この実施形態では、
図5に示すデータ通信状態表示処理部41が、アプリ毎のデータ通信量及び回線混雑度をユーザの携帯情報端末3に提示する機能を有する。具体的には、このデータ通信状態表示処理部41がユーザに提示するべきアプリ毎の時系列データをユーザの端末3からの求めにより送信する。このデータは、ユーザの端末3のアプリ管理ソフトに設けられたアプリ毎通信状態表示部28によって、
図12及び
図13に示すように画面上に表示される。
【0084】
図12は、アプリ毎の回線混雑度を示すインタフェースである。この図によれば、Web接続は混雑しているが、Youtubeにはまだ余裕があることがわかる。このようなインタフェースを見ることで、ユーザは、どのソフトについて快適な通信が行えるのかを知ることができる。
【0085】
図13は、アプリ毎の接続ポリシーを設定するためのユーザインタフェースである。ユーザはこの画面から、アプリ毎の接続速度、データ圧縮度、ダウンロード残量を設定することができる。すなわち、各設定値をプルダウン式に選択設定し、この画面上でOKボタンを押すことにより、設定が可能になる。設定された値は、上記アプリ・インフラ連携サーバ14の通信帯域制御ポリシー設定部38によって上記データ格納部30(34)に書き込まれ更新される。
(課金処理)
この実施形態では、前記課金サーバ17がユーザのデータ使用量と使用帯域に応じた課金を行うように構成されている。
【0086】
この場合、
図14のフローチャートに示すように、前記課金サーバ17が、上記アプリ・インフラ連携サーバ14の課金処理モジュール43と連携し、上記データ格納部30内のユーザ・アプリ毎帯域制御・接続ポリシー34を検索し、登録された通信帯域及び使用量(残量)を取得する(S15)。この課金処理モジュール43は、その情報を、ユーザを特定する情報と共に前記課金サーバ17に送信する。
【0087】
前記課金サーバ17は、課金ポリシー(
図2に17aで示す)を保持しており、前記連携サーバ14から取得したユーザ情報に基づいてユーザ毎の課金ポリシーを特定する(ステップS16)。課金ポリシーとしては、例えば、ユーザYoutube等、動画のデータ通信料は安く、WEBなどデータ通信料は高く設定することが可能である。これにより、ユーザに関し、アプリ毎の接続帯域及び使用量に応じた課金処理を行うことができる(ステップS17)。
【0088】
以上説明した構成によれば、携帯情報端末3にネットワーク情報通信を行う複数のアプリケーションがインストールされている場合であっても、アプリケーション毎に異なる制御帯域で通信制御を行うことが可能になる。
【0089】
なお、この発明は上記一実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を変更しない範囲で種々変形可能である。
【0090】
まず、上記一実施形態においては、端末3の表示画面29の最前面にアクティブ表示され、ユーザのフォーカスを得たアプリケーションの種類に基づいて端末3の接続帯域制御を行っていたが、これに限定されるものではなく、
図15に示すように、バックグラウンドで動作するアプリケーションを含む複数のアプリケーション3a、3bの種類に基づいて帯域制御するものであってもよい。以下、この場合の制御を、
図15に基づいて詳しく説明する。
【0091】
携帯情報端末3のOS(例えばアンドロイド(登録商標)等)は、端末3上でアプリケーションを起動すると、プロセスも起動し、アプリケーション毎のユニークなプロセスIDを出力する。このプロセスIDは、上記アプリ管理ソフト50のIPアドレス・ポート番号検出モジュール25によって検出され、それに基づき
図15中に50で示すプロセス毎通信タグ付与モジュールが、プロセス番号毎に異なるタグをパケットに付与する。このタグは、上記実施形態のプロセスID自体であっても良いし、前記アプリ名であっても良いし、プロセスIDと関連するその他の識別子であっても良い。このようにパケットにタグを付すことにより、同一の端末3による同一セッションの通信であっても、どのアプリケーションにより送出されたパケットであるかを判別することが可能になり、端末3の最前面で動作するアプリ以外にも、バックグラウンドで動作するアプリがパケットを送信している場合でも、そのバックグラウンドで動作するアプリを判別することが可能になる。そして、この接続は、上記MVNO事業者のシステム2に設けられたタグ解除モジュール51で終端され、帯域制御後に上記タグを削除するように構成されている。
【0092】
このような構成によれば、端末3上で複数のアプリケーションが同時に通信している場合でも、それぞれの接続について異なる接続ポリシーに基づく帯域制御・優先制御を行うこともできる。具体的には、
図6のステップS7で、前記アプリ状態変化情報取得モジュール36が、上記アプリ管理ソフト通信モジュール42を通して、上記携帯情報端末3の前記アプリ管理ソフト16から送信された状態変化情報を受け取る。この状態情報には、前述したのと同様に、ユーザの端末3上で起動されたアプリケーション毎のプロセスIDに基づいて付与されたタグ(前記実施例ではアクティブかに基づいてそのアプリケーション名を出力していた)、ドメイン名ベース、座標位置、アプリのパラメータ、プロセス名、携帯端末3のIPアドレス・使用ポート番号が含まれる。ついで、ステップS8で、前記通信帯域制御ポリシー設定部38が、上記状態変化情報に基づいて、ユーザ・アプリ毎の制御帯域接続ポリシーを設定する。なお、タグに基づいてどのアプリによるパケットかを判別する場合には、あらかじめ当該タグとアプリ名との関連付けをアプリインフラ連携サーバ14に送信しておく必要があるが、この実施形態では、この送信は前記状態変化判定モジュール26によって実行される。
【0093】
上記のような構成によれば、特定のパケットに含まれるタグによりどのアプリケーションにより送出されたパケットであるかが識別できるから、端末3の最前面にアクティブ表示されているアプリだけでなく、バックグラウンドで通信しているものの帯域制御、たとえば、帯域を絞ったり接続を遮断する事も可能となる。
【0094】
なお、アプリケーション毎にタグを付す場合だけでなく、異なるポート番号を割り当てたり異なるIPアドレス(仮想IPアドレス)を割り当ててトンネル接続を確立するようにしてもよい。この機能は、前記タグ付与モジュール、ネットワークスタックの機能50により実行される。このような構成によれば、複数のアプリケーションが上記端末3上で同時に通信している場合でも、それぞれのアプリのパケットの通信帯域を個別に制御(帯域制御、優先制御)することができる。なお、アプリ間で優先順位を決める場合、前記管理サーバ側で決められた接続ポリシーで実施することになる。また、この場合、上記トンネル接続は、前記タグ解除モジュール51で実行され、各パケットからアプリ毎のIPアドレス若しくは/及びポート番号が削除される。 また、更なる別の実施形態として、上記接続ポリシー34としては、上記実施形態のものに限定されるものではなく、他のポリシーを含ませることも可能である。例えば、上記圧縮プロキシサーバ19で実行されるデータ圧縮方法として、具体的な画像変換方法や動画変換方法を規定することも可能である。たとえば白黒に変換したら、高精細に変換したりすることも設定することも可能である。
【0095】
また、上記一実施形態では、帯域制御により具体的な回線速度の値を割り当てる方法で帯域制御機能を提供していたが、帯域制御に変えて、優先制御(回線速度の絶対値ではなく相対的優先度の割り当て)によりこの機能を提供するようにしてもよい。
また、上記一実施形態では、接続ポリシーを直接帯域制御ルータ8にセットしたが、これに限定されない。PGW7を介して行う等、間接的に行ってもよい。
【0096】
さらに、上記帯域制御通信中の動作(
図11)において、上記一実施例では、ユーザ・アプリ毎通信帯域制御接続ポリシー34の通信残量が上限(youtubeの例では1G)に達した場合に、帯域制御をデフォルトの値(100kbps)に戻して上記制御帯域サーバ8にセットする(
図11のステップS14)ようにしていたが、通信(ルーティング)自体をブロックするようにしてもよい。
【符号の説明】
【0097】
3…携帯情報端末
3a~3e…各種アプリケーション
2…ネットワーク接続システム
4…基地局
5…モバイルネットワーク
6…SWG
7…PWG
8…帯域制御ルータ
9…インターネット
10a~10e…各種サービスサーバ
14…アプリ・インフラ連携サーバ
15…回線状況/使用量センシングサーバ
16…アプリ管理ソフト
19…圧縮変換プロキシサーバ