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特許7026098子宮頸管より採取された絨毛外栄養膜細胞からの胎児DNAの単離と分析
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-16
(45)【発行日】2022-02-25
(54)【発明の名称】子宮頸管より採取された絨毛外栄養膜細胞からの胎児DNAの単離と分析
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/10 20060101AFI20220217BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20220217BHJP
   C12Q 1/6869 20180101ALI20220217BHJP
【FI】
C12N15/10 100Z
G01N33/50 P
C12Q1/6869 Z
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2019503634
(86)(22)【出願日】2017-04-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-06-20
(86)【国際出願番号】 US2017026335
(87)【国際公開番号】W WO2017176985
(87)【国際公開日】2017-10-12
【審査請求日】2020-01-10
(31)【優先権主張番号】62/318,982
(32)【優先日】2016-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518357689
【氏名又は名称】ウェイン ステート ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】WAYNE STATE UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】110000774
【氏名又は名称】特許業務法人 もえぎ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ドリューロ,サッシャ
(72)【発明者】
【氏名】アルマン,ランドール,ディー.
【審査官】田村 直寛
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/121294(WO,A1)
【文献】特表2009-531033(JP,A)
【文献】JAIN, Chandni V.,Molecular Regulation Of Trophoblast Survival During Placentation And Pathologies Of Placental Insufficiency,Wayne State University Dissertations,1642,2016年01月01日,https://digitalcommons.wayne.edu/cgi/viewcontent.cgi?article=2641&context=oa_dissertations
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/10
G01N 33/50
C12Q 1/6869
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
継続妊娠の胎児の細胞のDNAを単離する方法であって、
妊娠中の被験者由来の母体細胞及び胎児絨毛外栄養膜細胞を含有する母体子宮頸管内試料を提供することと、
前記母体子宮頸管内試料から胎児絨毛外栄養膜細胞を単離し、母体DNAによる汚染のある単離胎児絨毛外栄養膜細胞を生成することと、
前記単離胎児絨毛外栄養膜細胞を物理的細胞溶解法、化学的細胞溶解法、又はマイクロ流体法により溶解することと、
前記溶解した胎児絨毛外栄養膜細胞から胎児核を単離し、単離胎児核を生成することにより、前記汚染母体DNAの少なくとも一部を除去することと、
前記単離胎児核を溶解することと、
前記単離胎児核及び/又は前記単離絨毛外栄養膜細胞をDNaseにより処理して、前記汚染母体DNAの少なくとも一部を除去することと、
前記単離胎児核からゲノムDNAを精製し、精製胎児ゲノムDNAを生成することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記単離胎児核をDNaseにより処理することが、前記単離胎児核を溶解する前に行われ、前記汚染母体DNAの少なくとも一部を除去する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記単離絨毛外栄養膜細胞をDNaseにより処理することが、単離胎児絨毛外栄養膜細胞を溶解する前に行われ、前記汚染母体DNAの少なくとも一部を除去する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記胎児絨毛外栄養膜細胞をDNaseにより処理する前に、前記胎児絨毛外栄養膜細胞を固定し、前記DNaseを支持体に付着させ、前記胎児絨毛外栄養膜細胞への前記DNaseの侵入を防止する、請求項1乃至3の何れかに記載の方法。
【請求項5】
前記胎児絨毛外栄養膜細胞は、前記胎児絨毛外栄養膜細胞を前記DNaseにより処理する前に固定されない、請求項1乃至3の何れかに記載の方法。
【請求項6】
前記精製胎児ゲノムDNAは、10%乃至100%の範囲の胎児割合を特徴とする、請求項1乃至5の何れかに記載の方法。
【請求項7】
前記精製胎児ゲノムDNAは、25%乃至100%の範囲の胎児割合を特徴とする、請求項1乃至6の何れかに記載の方法。
【請求項8】
継続妊娠の胎児の細胞のDNAをアッセイする方法であって、
妊娠中の被験者由来の胎児絨毛外栄養膜細胞を含有する母体子宮頸管内試料を提供することと、
前記母体子宮頸管内試料から胎児絨毛外栄養膜細胞を単離することと、
前記単離胎児絨毛外栄養膜細胞を物理的細胞溶解法、化学的細胞溶解法、又はマイクロ流体法により溶解することと、
前記溶解した胎児絨毛外栄養膜細胞から胎児核を単離することと、
前記単離胎児核を溶解し、前記単離胎児核からゲノムDNAを精製することと、
前記単離胎児核及び/又は前記単離絨毛外栄養膜細胞をDNaseにより処理して、前記汚染母体DNAの少なくとも一部を除去することと、
前記精製胎児ゲノムDNAをアッセイすることにより、前記精製胎児ゲノムDNAのゲノムDNA配列の特性を決定し、これにより継続妊娠の胎児の細胞のゲノムDNAをアッセイすることと、を含む、方法。
【請求項9】
前記精製胎児ゲノムDNAをアッセイすることにより、前記精製胎児ゲノムDNAのゲノムDNA配列内の少なくとも1つの個別のヌクレオチドの特性を決定し、これにより1塩基の分解能で継続妊娠の胎児の細胞のDNAをアッセイする、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記アッセイすることは、配列決定、高分解能融解曲線分析、メチル化分析、キャピラリ電気泳動、質量分析、一本鎖高次構造多型分析、単一塩基伸長、制限断片長多型からなる群から選択される方法を含む、請求項8又は9記載の方法。
【請求項11】
前記配列決定は、大規模並列シグネチャ配列決定、単一分子リアルタイム配列決定、ポロニーシーケンシング、イオン半導体、パイロシーケンシング、合成による配列決定、ライゲーションによる配列決定、及び鎖終結配列決定からなる群から選択される方法を含む、請求項8乃至10の何れかに記載の方法。
【請求項12】
前記単離胎児核をDNaseにより処理することが、前記単離胎児核を溶解する前に行われ、前記汚染母体DNAの少なくとも一部を除去する、請求項8乃至11の何れかに記載の方法。
【請求項13】
前記単離絨毛外栄養膜細胞をDNaseにより処理することが、単離胎児絨毛外栄養膜細胞を溶解する前に行われ、前記汚染母体DNAの少なくとも一部を除去する、請求項8乃至12の何れかに記載の方法。
【請求項14】
前記胎児絨毛外栄養膜細胞をDNaseにより処理する前に、前記胎児絨毛外栄養膜細胞を固定し、前記DNaseを支持体に付着させ、前記胎児絨毛外栄養膜細胞への前記DNaseの侵入を防止する、請求項8乃至13の何れかに記載の方法。
【請求項15】
前記胎児絨毛外栄養膜細胞は、前記胎児絨毛外栄養膜細胞を前記DNaseにより処理する前に固定されない、請求項8乃至13の何れかに記載の方法。
【請求項16】
前記精製胎児ゲノムDNAは、10%乃至100%の範囲の胎児割合を特徴とする、請求項8乃至15の何れかに記載の方法。
【請求項17】
前記精製胎児ゲノムDNAは、25%乃至100%の範囲の胎児割合を特徴とする、請求項8乃至16の何れかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の参照]
本願は、出典を明記することによりその開示内容全体を共に本願明細書の一部とする2016年4月6日出願の米国仮特許出願第62/318,982号に基づく優先権を主張する。
【0002】
本開示は、一般に胎児DNAを分析するための方法に関する。特定の態様によれば、本開示は、妊娠中の被験者由来の胎児絨毛外栄養膜細胞からDNAを単離し、胎児DNAを分析する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
胎児ゲノムの分析は、胎児のリスクを判定する様々な遺伝性障害の検出に有用である。現在、周産期の診断は、羊水穿刺、絨毛膜絨毛のサンプリング、及び血液由来無細胞DNAを用いて、様々な度合いのリスク及び精度で侵襲的に行われている。
【0004】
胎児DNAを分析する「無細胞」方法は、血液試料中の胎児DNAの大部分が143bp程度となる胎児DNAの分解により制限される(Wong et al., Annu Rev. Med,, 67:419-432, 2016)。更に、血液試料から「無細胞」方法により単離されたDNAの「胎児割合」は10乃至20%に制限される。「胎児割合」という用語は、胎児DNAである試料中のDNAの割合を示し、残りは母体DNAである。胎児割合は、逆に「母性汚染」という用語に関連する。したがって、例えば、試料中のDNAの胎児割合が10%である場合、試料は、90%の母性汚染を特徴とする。
【0005】
継続妊娠の際に得られる子宮頸管内試料は、胎児細胞含有試料の中でも独特である。胎児起源の絨毛外栄養膜細胞は、下部子宮端内に自然に脱落する。これらの胎児絨毛外栄養膜細胞を含有する子宮頸管内試料は、胎児ゲノム分析用の胎児ゲノムDNAの有用な供給源になると思われるが、胎児絨毛外栄養膜からの従来のDNA抽出により得られた胎児ゲノムDNAを確実に分析することはできなかった。驚くべきことに、高度に精製された胎児絨毛外栄養膜細胞から単離された胎児DNAの配列決定では、信頼できる胎児DNAシグナルを生成することができない。
【0006】
継続妊娠の際に取得された子宮頸管内試料は、胎児栄養膜細胞より多くの母体細胞を含有する。意外なことに、本発明者らは、母体細胞が殆ど又は全く存在しないような絨毛外胎児栄養膜細胞の単離後であっても、有意な量の母系ゲノムDNAが胎児の絨毛外栄養膜細胞に結合していることを見出した。理論考察に拘束されることを望むものではないが、本発明者らは、母体DNAは、子宮頸管内試料中の老化母体細胞により放出され、この母体DNAは、恐らく分解され、子宮頸管内試料中の胎児絨毛外栄養膜細胞の原形質膜に結合する可能性があると考えている。この問題は、これまで知られておらず、胎児ゲノムDNAの供給源として、子宮頸管内試料の胎児絨毛外栄養膜細胞を用いた胎児ゲノム分析に関する重要な問題を引き起こしている。したがって、より正確なゲノム胎児DNAアッセイの必要性は、引き続き存在している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】Wong et al., Annu Rev. Med,, 67:419-432, 2016
【発明の概要】
【0008】
本発明により提供される、継続妊娠の胎児のDNAを単離する方法は、妊娠中の被験者から母体細胞及び胎児絨毛外栄養膜細胞を含有する母体子宮頸管内試料を得ることと、母体子宮頸管内試料から胎児絨毛外栄養膜細胞を単離し、母体DNAによる汚染のある単離胎児絨毛外栄養膜細胞を生成することと、単離胎児絨毛外栄養膜細胞を溶解することと、溶解した胎児絨毛外栄養膜細胞から胎児核を単離し、単離胎児核を生成することにより、汚染母体DNAの少なくとも一部を除去することと、単離胎児核を溶解することと、単離胎児核からゲノムDNAを精製し、精製胎児ゲノムDNAを生成することと、を含む。
【0009】
本発明により提供される、継続妊娠の胎児のDNAを単離する方法は、妊娠中の被験者から母体細胞及び胎児絨毛外栄養膜細胞を含有する母体子宮頸管内試料を得ることと、母体子宮頸管内試料から胎児絨毛外栄養膜細胞を単離し、母体DNAによる汚染のある単離胎児絨毛外栄養膜細胞を生成することと、単離胎児絨毛外栄養膜細胞を溶解することと、溶解した胎児絨毛外栄養膜細胞から胎児核を単離し、単離胎児核を生成することにより、汚染母体DNAの少なくとも一部を除去することと、単離胎児核を更に処理して、汚染母体DNAの少なくとも一部を更に除去することと、単離胎児核を溶解することと、単離胎児核からゲノムDNAを精製し、精製胎児ゲノムDNAを生成することと、を含む。
【0010】
本発明により提供される、継続妊娠の胎児のDNAを単離する方法は、妊娠中の被験者から母体細胞及び胎児絨毛外栄養膜細胞を含有する母体子宮頸管内試料を得ることと、母体子宮頸管内試料から胎児絨毛外栄養膜細胞を単離し、母体DNAによる汚染のある単離胎児絨毛外栄養膜細胞を生成することと、単離胎児絨毛外栄養膜細胞を溶解することと、溶解した胎児絨毛外栄養膜細胞から胎児核を単離し、単離胎児核を生成することにより、汚染母体DNAの少なくとも一部を除去することと、単離胎児核を更に処理して、汚染母体DNAの少なくとも一部を更に除去することと、単離胎児核を溶解することと、単離胎児核からゲノムDNAを精製し、精製胎児ゲノムDNAを生成することと、を含む。
【0011】
随意により、単離胎児核を溶解する前に、単離胎児核をDNaseにより処理することにより、汚染母体DNAの少なくとも一部を除去する。
【0012】
随意により、胎児絨毛外栄養膜細胞を母体子宮頸管内試料から単離する前に、単離絨毛外栄養膜細胞をDNaseにより処理することにより、汚染母体DNAの少なくとも一部を除去する。
【0013】
他の選択肢では、単離胎児絨毛外栄養膜細胞を溶解する前に、単離絨毛外栄養膜細胞をDNaseにより処理することにより、汚染母体DNAの少なくとも一部を除去する。
【0014】
更に他の選択肢では、胎児絨毛外栄養膜細胞をDNaseにより処理する前に、胎児絨毛外栄養膜細胞を固定し、DNaseを支持体に付着させ、胎児絨毛外栄養膜細胞へのDNaseの侵入を防止する。
【0015】
随意により、胎児絨毛外栄養膜細胞は、胎児絨毛外栄養膜細胞をDNaseにより処理する前に固定されない。
【0016】
本発明の継続妊娠の胎児のDNAを単離する方法の態様によれば、精製胎児ゲノムDNAは、10%乃至100%の範囲の胎児割合を特徴とする。
【0017】
本発明の継続妊娠の胎児のDNAを単離する方法の態様によれば、精製胎児ゲノムDNAは、25%乃至100%の範囲の胎児割合を特徴とする。
【0018】
本発明により提供される、継続妊娠の胎児のDNAをアッセイする方法は、妊娠中の被験者から胎児絨毛外栄養膜細胞を含有する母体子宮頸管内試料を得ることと、母体子宮頸管内試料から胎児絨毛外栄養膜細胞を単離することと、単離胎児絨毛外栄養膜細胞を溶解することと、溶解した胎児絨毛外栄養膜細胞から胎児核を単離することと、単離胎児核を溶解し、単離胎児核からゲノムDNAを精製することと、精製胎児ゲノムDNAをアッセイすることにより、精製胎児ゲノムDNAのゲノムDNA配列の特性を決定し、これにより継続妊娠の胎児のゲノムDNAをアッセイすることと、を含む。
【0019】
随意により、本発明の態様による精製胎児ゲノムDNAをアッセイすることにより、精製胎児ゲノムDNAのゲノムDNA配列内の少なくとも1つの個別のヌクレオチドの特性を決定し、これにより1塩基の分解能で継続妊娠の胎児のDNAをアッセイする。
【0020】
随意により、本発明の態様による精製胎児ゲノムDNAをアッセイすることは、精製胎児ゲノムDNAを用いた配列決定、高分解能融解曲線分析(high resolution melt analysis)、メチル化分析、キャピラリ電気泳動、質量分析、一本鎖高次構造多型分析、単一塩基伸長、制限断片長多型からなる群から選択される方法を実施することを含む。
【0021】
随意により、本発明の態様による精製胎児ゲノムDNAを配列決定することは、大規模並列シグネチャ配列決定(massively parallel signature sequencing)、単一分子リアルタイム配列決定(single-molecule real-time sequencing)、ポロニーシーケンシング(polony sequencing)、イオン半導体、パイロシーケンシング、合成による配列決定(sequencing by synthesis)、ライゲーションによる配列決定(sequencing by ligation)、及び鎖終結配列決定(chain termination sequencing)からなる群から選択される方法を実施することを含む。
【0022】
本発明の態様によれば、本発明により提供される、継続妊娠の胎児のDNAをアッセイする方法は、妊娠中の被験者から胎児絨毛外栄養膜細胞を含有する母体子宮頸管内試料を得ることと、母体子宮頸管内試料から胎児絨毛外栄養膜細胞を単離することと、汚染母体DNAの少なくとも一部を除去するために単離胎児核を処理することと、単離胎児絨毛外栄養膜細胞を溶解することと、溶解した胎児絨毛外栄養膜細胞から胎児核を単離することと、単離胎児核を溶解し、単離胎児核からゲノムDNAを精製することと、精製胎児ゲノムDNAをアッセイすることにより、精製胎児ゲノムDNAのゲノムDNA配列の特性を決定して、継続妊娠の胎児のゲノムDNAをアッセイすることと、を含む。
【0023】
随意により、本発明により提供される継続妊娠の胎児のDNAをアッセイする方法は、胎児絨毛外栄養膜細胞を母体子宮頸管内試料から単離する前に、単離絨毛外栄養膜細胞をDNaseにより処理することにより、汚染母体DNAの一部を除去することを含む。
【0024】
随意により、本発明により提供される継続妊娠の胎児のDNAをアッセイする方法は、単離胎児絨毛外栄養膜細胞を溶解する前に、単離絨毛外栄養膜細胞をDNaseにより処理することにより、汚染母体DNAの一部を除去することを含む
【0025】
本発明により提供される、継続妊娠の胎児のDNAをアッセイする方法は、妊娠中の被験者から胎児絨毛外栄養膜細胞を含有する母体子宮頸管内試料を得ることと、母体子宮頸管内試料から胎児絨毛外栄養膜細胞を単離することと、単離胎児絨毛外栄養膜細胞を溶解することと、溶解した胎児絨毛外栄養膜細胞から胎児核を単離することと、単離胎児核を溶解し、単離胎児核からゲノムDNAを精製することと、精製胎児ゲノムDNAをアッセイし、ここで、胎児絨毛外栄養膜細胞は、胎児絨毛外栄養膜細胞をDNaseにより処理する前に固定し、DNaseを支持体に付着させ、胎児絨毛外栄養膜細胞へのDNaseの侵入を防止し、これにより精製胎児ゲノムDNAのゲノムDNA配列の特性を決定して、継続妊娠の胎児のゲノムDNAをアッセイすることと、を含む。
【0026】
本発明により提供される、継続妊娠の胎児のDNAをアッセイする方法は、妊娠中の被験者から胎児絨毛外栄養膜細胞を含有する母体子宮頸管内試料を得ることと、母体子宮頸管内試料から胎児絨毛外栄養膜細胞を単離することと、単離胎児絨毛外栄養膜細胞を溶解することと、溶解した胎児絨毛外栄養膜細胞から胎児核を単離することと、単離胎児核を溶解し、単離胎児核からゲノムDNAを精製することと、精製胎児ゲノムDNAをアッセイし、ここで、胎児絨毛外栄養膜細胞は、胎児絨毛外栄養膜細胞をDNaseにより処理する前に固定せず、これにより精製胎児ゲノムDNAのゲノムDNA配列の特性を決定して、継続妊娠の胎児のゲノムDNAをアッセイすることと、を含む。
【0027】
本発明の継続妊娠の胎児のDNAをアッセイする方法の態様によれば、精製胎児ゲノムDNAは、10%乃至100%の範囲の胎児割合を特徴とする。
【0028】
本発明の継続妊娠の胎児のDNAをアッセイする方法の態様によれば、精製胎児ゲノムDNAは、25%乃至100%の範囲の胎児割合を特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、5つの独立した試料及び陽性及び陰性対照での胎児及び母体細胞の増幅DNAを示すゲルの画像であり、増幅DNAは、DNA標準サイズマーカー(L)が示すように、700乃至900塩基対長のスメアとして表される。
図2図2は、5つの独立した試料及び陽性及び陰性対照での胎児及び母体細胞内の様々な染色体からのPCR増幅断片を示すゲルの画像であり、断片の長さは、DNA標準(L)が示すように、100乃至800塩基対である。
図3図3は、5つの独立した試料における胎児(F)及び母体(M)細胞からのライブラリ調製に成功した際のデジタル電気泳動分析を示すゲルの画像であり、DNA標準サイズマーカー(L)のサイズを参考としてy軸上に示す。
図4図4は、log10スケール上での全てのエクソーム配列の標的領域(約1Mb)による平均カバレッジを示すCercosヒートマップの画像で、母体(M)及び胎児(F)試料の各染色体(1-22、X、Y)を示すものであり、左側の拡大領域は、X及びY染色体の詳細なカバレッジを示す。
図5図5Aは、胎児及び母体細胞に対するWGA後の常染色体、X及びY染色体の相対カバレッジを示すグラフである。図5Bは、標準試料として使用される新生児血液試料(黒点)及び母体血液試料に対するWGA後の常染色体、X及びY染色体の相対カバレッジを示すグラフである。
図6図6は、1人の患者の母体細胞(母体)、胎児栄養膜細胞(TRIC)、及び胎盤組織(胎盤)から得られたDNAのショートタンデムリピート(STR)グラフィカルプロファイルである。
図7図7は、単一患者の対応する母体及び胎児(TRIC)検体における94の配列決定したSNPのアレル頻度の比較を示すグラフである。
図8図8は、単一患者の対応する胎児(TRIC)及び胎盤検体における94の配列決定したSNPのアレル頻度の比較を示すグラフである。
図9図9は、単一患者の対応する母体及び胎盤検体における94の配列決定したSNPのアレル頻度の比較を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本明細書に用いた科学用語及び技術用語は、当業者が通常理解する意味を有するものとする。こうした用語は、以下を例として含む様々な標準的参考文献の文中で定義及び使用されている:J. Sambrook and D.W. Russell, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press; 3rd Ed., 2001、F.M. Ausubel, Ed., Short Protocols in Molecular Biology, Current Protocols; 5th Ed., 2002、B. Alberts et al., Molecular Biology of the Cell, 4th Ed., Garland, 2002、D.L. Nelson and M.M. Cox, Lehninger Principles of Biochemistry, 4th Ed., W.H. Freeman & Company, 2004、Engelke, D.R., RNA Interference (RNAi): Nuts and Bolts of RNAi Technology, DNA Press LLC, Eagleville, PA, 2003、Herdewijn, P. (Ed.), Oligonucleotide Synthesis: Methods and Applications, Methods in Molecular Biology, Humana Press, 2004、A. Nagy, M. Gertsenstein, K. Vintersten, R. Behringer, Manipulating the Mouse Embryo: A Laboratory Manual, 3rd edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press; December 15, 2002, ISBN-10: 0879695919、Kursad Turksen (Ed.), Embryonic stem cells: methods and protocols in Methods Mol Biol. 2002;185, Humana Press; Current Protocols in Stem Cell Biology, ISBN: 9780470151808.
【0031】
単数の用語である「a」、「an」、及び「the」は、限定的ではなく、特に明記されていない限り、或いは文脈から明らかとなる場合を除き、複数の指示物を含むものとする。
【0032】
「TRIC」という用語は、本明細書において、TRIC「子宮頸部からの栄養膜採取及び単離(Trophoblast Retrieval and Isolation form the Cervix)」法により得られる胎児栄養膜を示す。TRICは、継続妊娠において子宮頸管から安全且つ非侵襲的に胎児細胞を単離する方法であり、実施例の説明を参照されたい。
【0033】
本発明の態様により、継続妊娠の胎児の細胞からゲノムDNAを単離するための方法及び胎児のゲノムDNAのアッセイのための方法が提供される。胎児細胞ゲノムDNAの分析は、一塩基多型、塩基修飾、及び詳細なゲノムDNA配列情報を含む、胎児の異常又は変化の検出等、胎児に関する詳細な情報を提供する。
【0034】
本発明の態様による方法は、単離胎児絨毛外栄養膜細胞核からゲノムDNAを精製し、胎児割合が10%乃至100%の範囲となる精製胎児ゲノムDNAを生成することを含む。本発明の態様による方法は、単離胎児絨毛外栄養膜細胞核からゲノムDNAを精製し、胎児割合が25%乃至100%の範囲となる精製胎児ゲノムDNAを生成することを含む。本発明の態様による方法は、単離胎児絨毛外栄養膜細胞核からゲノムDNAを精製し、胎児割合が50%以上となる精製胎児ゲノムDNAを生成することを含む。本発明の態様による方法は、単離胎児絨毛外栄養膜細胞核からゲノムDNAを精製し、胎児割合が75%以上となる精製胎児ゲノムDNAを生成することを含む。本発明の態様による方法は、単離胎児絨毛外栄養膜細胞核からゲノムDNAを精製し、胎児割合が15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、65%、70%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上となる精製胎児ゲノムDNAを生成することを含む。上述したように、胎児割合は、逆に母体DNAによる汚染に関連するため、精製胎児ゲノムDNAは、0%乃至90%の母系汚染を有するものとして特徴付けられる。本発明の態様による方法は、単離胎児絨毛外栄養膜細胞核からゲノムDNAを精製し、母系汚染が85%、80%、75%、70%、65%、60%、55%、50%、45%、40%、35%、30%、25%、24%、23%、22%、21%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%以下となる精製胎児ゲノムDNAを生成することを含む。本発明の態様による方法は、単離胎児絨毛外栄養膜細胞核からゲノムDNAを精製し、母系汚染が75%、70%、65%、60%、55%、50%、45%、40%、35%、30%、25%、24%、23%、22%、21%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13% 12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%以下となる精製胎児ゲノムDNAを生成することを含む。
【0035】
本発明の方法では、子宮頸管内試料中の圧倒的な母体細胞集団にもかかわらず、胎児ゲノムDNAの精製及びアッセイが可能となる。本発明の方法は、継続妊娠から4乃至5週間の妊娠期間早期に、臨床的に意義のある胎児ゲノムデータを初めて提供する。妊娠期間は、周知の通り、最後の月経期間の開始日から測定される時間として定義される。本発明の方法は、無細胞DNA評価法を複雑にするボディマス指数又は妊娠期間等の要因は妨げとならない。
【0036】
組成物及び方法は、本明細書において特にヒトの女性及びヒトの胎児に関連して説明されるが、ヒトに限定されず、他の種の胎児ゲノムDNAも、同様に単離及び分析し得る。
【0037】
本発明の態様による方法は、妊娠中の被験者から胎児絨毛外栄養膜細胞を含有する母体子宮頸管内試料を得ることと、母体子宮頸管内試料から胎児絨毛外栄養膜細胞を単離することと、単離胎児絨毛外栄養膜細胞を溶解することと、溶解した胎児絨毛外栄養膜細胞から胎児絨毛外栄養膜細胞核を単離することと、単離胎児絨毛外栄養膜細胞核からゲノムDNAを精製することにより、細胞外栄養膜細胞から胎児ゲノムDNAを単離することと、を含む。
【0038】
母体子宮頸管内試料は、妊娠第1期、第2期、及び/又は第3期等にある、妊娠約4週乃至約30週の妊婦から採取される。
【0039】
本発明の態様によれば、受胎後約2週間(妊娠4週)から妊娠約20週(妊娠中間時点)まで又はそれ以降の妊娠中の被験者から試料を採取する。
【0040】
本発明の態様によれば、胎児絨毛外栄養膜細胞を母体子宮頸管内試料から単離することは、母体子宮頸管内試料内の母体細胞と結合しない胎児絨毛外栄養膜細胞に特異的な抗体と胎児絨毛外栄養膜細胞を接触させ、抗体に付着した胎児絨毛外栄養膜細胞を捕獲することにより達成される。
【0041】
本発明の方法の特定の態様によれば、抗体は、主要組織適合遺伝子複合体、クラスI、G(HLA-G)に特異的である。
【0042】
随意により、胎児絨毛外栄養膜細胞に特異的な抗体は、水溶液に不溶性の任意の固体又は半固体の支持体に付着させる。抗体の支持体への付着は、支持体への吸着及び支持体への化学結合を例として含む様々な方法の何れかにより達成される。
【0043】
胎児絨毛外栄養膜細胞に特異的な抗体は、直接又は間接的に支持体に付着させることができる。「直接的に付着させる」という用語は、胎児絨毛外栄養膜細胞に特異的な抗体に支持体が共有結合又は非共有結合していること、及び支持体が二次抗体を介して抗体に結合していないことを示すために用いられる。「間接的に付着させる」という用語は、胎児絨毛外栄養膜細胞に特異的な抗体が、二次抗体又はリンカー等の中間物を介して支持体に共有結合又は非共有結合していることを示すために用いられる。
【0044】
本発明の態様によれば、胎児絨毛外栄養膜細胞に特異的な抗体は、タンパク質A又はタンパク質G分子への抗体の結合を介して、支持体に間接的に結合され、タンパク質A又はタンパク質G分子は、支持体に結合される。
【0045】
不溶性の固体又は半固体の支持体は、ガラス、ポリプロピレン、ポリスチレン、ナイロン等のプラスチック、紙、シリコン、ニトロセルロース、又は材料の機能を著しく阻害することなく所望の材料を付着させることが可能な他の任意の材料等、様々な材料にすることができる。支持体は、シリコンチップ及びガラスプレート等の平面、粒子、マイクロタイタプレート、マイクロタイタウェル、ピン、ファイバ等の3次元を含む様々な形態又は形状の何れかにすることができる。
【0046】
特定の態様において、不溶性の固体又は半固体の支持体は、粒子である。
【0047】
粒子は、円筒形、球形等の任意の形状、サイズ、組成、又は物理化学的特性のものにすることができる。粒子サイズ又は組成は、例えば特定の細孔サイズを有するフィルター上で、又は他の何らかの物理的性質により、粒子を流体から分離可能となるように選択することができる。
【0048】
使用される粒子は、1ミリメートル未満の直径にすることが可能であり、例えば、直径約0.1マイクロメータ以上約1,000マイクロメータ以下の範囲のサイズ、例として、直径約3ミクロン以上25ミクロン以下、又は約5ミクロン以上約10ミクロン以下、直径1ナノメートル(nm)以上約100,000ナノメートル以下、例えば約10nm以上1,000nm以下の範囲のサイズ、又は例えば200nm以上500nm以下の範囲のサイズを有することができる。特定の実施形態において、使用される粒子は、ビーズ、特にマイクロビーズ及びナノビーズである。
【0049】
不溶性の固体又は半固体の支持体は、支持体に結合されるべき材料に結合するための官能基を含むことができる。例えば、支持体は、カルボキシル、アミン、アミノ、カルボキシラート、ハライド、エステル、アルコール、カルバミド、アルデヒド、クロロメチル、硫黄酸化物、窒素酸化物、エポキシ、及び/又はトシル官能基を含むことができる。官能基、その修飾、及び抗体又は酵素等の材料の支持体への結合は、当該技術分野において公知である。特定の例において、1-エチル-3-[3-ジメチルアミノプロピル]カルボジイミドハイドロクロリド、EDC、又はEDACの化学的性質を用いて、不溶性の固体又は半固体支持体に所望の材料を付着させることができる。
【0050】
本発明の方法の特定の態様によれば、胎児絨毛外栄養膜細胞に特異的な抗体は、複数の磁性粒子に直接付着させ、胎児絨毛外栄養膜細胞を母体子宮頸管内試料から除去することは、磁性粒子を磁石の影響下に置くことを含む。
【0051】
胎児抗原に特異的に結合する抗体に直接結合された磁性ナノ粒子は、一般に10nm乃至1μmの範囲のサイズを有するが、これより小さい又は大きい磁性ナノ粒子も使用し得る。
【0052】
本発明の方法の特定の態様によれば、HLA-G抗体は、磁性ナノ粒子に付着させる。
【0053】
随意により、母体子宮頸管内試料の細胞は、固定剤により処理することで固定し、固定剤による処理は、母体子宮頸管内試料から胎児絨毛外栄養膜細胞を単離する前又は単離した後に行う。
【0054】
使用される固定剤は、グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、又はそれらの任意の2つ以上の組み合わせにすることができる。本発明の方法の特定の態様によれば、アルデヒド固定剤は、パラホルムアルデヒドである。本発明の他の態様によれば、固定剤は、非アルデヒド固定剤である。
【0055】
非アルデヒド固定剤は、例として、アセトン、酢酸、並びにエタノール及びメタノール等のアルコールを含む。2種以上の非アルデヒド固定剤の組み合わせを随意により使用する。本発明の態様によれば、メタノールと酢酸との混合物を非アルデヒド固定剤として使用する。
【0056】
随意により、母体子宮頸管内試料は、最初に非アルデヒド固定剤において固定する。単離胎児絨毛外栄養膜細胞は、随意によりアルデヒド固定剤により固定する。非アルデヒド固定剤及び/又はアルデヒド固定剤は、生理食塩水等の生理的液体又は緩衝液、又は哺乳類細胞に適合する緩衝液により母体子宮頸管内試料を洗浄することにより、随意により除去又は部分的に除去される。
【0057】
他の選択肢において、胎児絨毛外栄養膜細胞は、プロテアーゼ及び/又はグリコサミノグリカン分解酵素(GAGase)により処理し、胎児絨毛外栄養膜細胞をプロテアーゼ及び/又はGAGaseにより処理することは、母体子宮頸管内試料から胎児絨毛外栄養膜細胞を除去する前又は除去した後、及び胎児絨毛外栄養膜細胞をヌクレアーゼで処理する前又は処理した後に行う。
【0058】
グリコサミノグリカン分解酵素は、例えば、ヒアルロニダーゼ、ヘパリナーゼ、及びコンドロイチナーゼを含む。
【0059】
本発明の方法の特定の態様によれば、母体子宮頸管内試料は、粘液溶解剤により処理しない。本発明の方法の特定の態様によれば、母体子宮頸管内試料は、胎児絨毛外栄養膜の単離前に、N-アセチル-L-システイン、DTT、トリプシン、及びトリプシン/EDTAから選択される粘液溶解剤により処理しない。本発明の方法の特定の態様によれば、母体子宮頸管内試料は、胎児絨毛外栄養膜の単離前に、コラゲナーゼ、プロテアーゼ、リベラーゼブレンザイム、及び粘液溶解剤のうち1種以上により処理しない。
【0060】
随意により、母体子宮頸管内試料は、胎児絨毛外栄養膜細胞を単離する前に酸性化する。酸性化剤を試料に随意により添加し、試料のpHを約pH5乃至6にする。酸性化剤は、例えば、任意の酸又は酸性緩衝液にすることができる。
【0061】
単離胎児絨毛外栄養膜細胞を更に処理して、胎児絨毛外栄養膜細胞から核を単離する。
【0062】
限定ではないが、細胞を破壊して無傷核を放出させる物理的、化学的、マイクロ流体的、又は混合様式的方法を含む様々な方法の何れかにより、単離胎児絨毛外栄養膜細胞を溶解して細胞を破壊し、無傷核を放出させる。
【0063】
物理的細胞溶解法には、限定ではないが、均質化、超音波処理、ボルテックス、及びビーズビーティングが含まれる。細胞溶解及び無傷核放出のための均質化法の例には、ダウンス均質化が挙げられる。
【0064】
細胞溶解及び無傷核放出のための化学的細胞溶解法には、限定ではないが、低張緩衝液及び/又は非イオン性界面活性剤による処理が含まれる。細胞を溶解し、無傷核を放出させるために用いる非イオン性界面活性剤には、限定ではないが、通常0.1乃至1%の範囲のノニルフェノキシポリエトキシルエタノール(NP-40)、通常0.1乃至1%の範囲のオクチルフェノキシポリエトキシエタノール及び分岐オクチルフェノキシポリ(エチレンオキシ)エタノール(IGEPAL CA-630)等の誘導体、及び通常0.1乃至5%の範囲のt-オクチルフェノキシポリエトキシエタノール(Triton X-100)が含まれる。随意により、非イオン性界面活性剤は、低張緩衝液中に存在する。単離胎児絨毛外栄養膜細胞を溶解し、無傷核を放出させる細胞溶解緩衝液の例は、10mM Hepes pH7.5、2mM MgCl2、25mM KCl、0.5%NP-40、又は1%Triton X-100である。
【0065】
化学的細胞溶解法には、限定ではないが、プロテアーゼK、プロナーゼ、トリプシン、及び/又はペプシンを含むプロテアーゼによる処理等のプロテアーゼ処理が含まれる。プロテアーゼの活性は、プロテアーゼの濃度、pH、インキュベーションの時間及び温度により決まり、これらは全て、所望のタンパク質分解の程度を達成するために当業者が調整可能である。細胞を溶解して無傷核を放出させる制御されたタンパク質分解のために、好ましくは、ペプシン(Phe1Val、Gln4His、Glu13Ala、Ala14Leu、Leu15Tyr、Tyr16Leu、Gly23Phe、Phe24)又はトリプシン等のタンパク質切断部位が限定された酵素を用いて、核DNAが無傷の状態を維持するように、核に影響を与えることなく細胞膜を徐々に消化する。
【0066】
随意により、細胞は、非イオン性界面活性剤により低張緩衝液中で均質化を施し、細胞を溶解して無傷核を放出させる。
【0067】
マイクロ流体法を用いて、例えば米国特許第8304185号、Nan et al., Lab Chip, 14:1060-1073, 2014、及びCui et al., Ann. Rev. Biomed. Engin., 17:267-286, 2015に記載されているように、細胞を溶解して無傷核を放出させることができる。
【0068】
無傷核を含有する細胞溶解物は、更に加工して無傷核を単離する。例えば、胎児絨毛外栄養膜細胞核の分離は、細胞溶解物中に存在する他の成分からの無傷核の切断、洗浄、分画遠心、濾過、又はマイクロ流体分離により達成される。
【0069】
胎児絨毛外栄養膜細胞核の単離には、核をペレット化する遠心分離及び胎児絨毛外栄養膜細胞の細胞質を含有する上清の除去が随意により含まれる。核を洗浄し、遠心分離を1回又は複数回繰り返し行うことができる。
【0070】
マイクロ流体手法を用いて、例えば米国特許第8304185号、Nan et al., Lab Chip, 14:1060-1073, 2014、及びCui et al., Ann. Rev. Biomed. Engin., 17:267-286, 2015に記載されているように、細胞溶解物中に存在する他の成分から胎児絨毛外栄養膜細胞核を分離することができる。
【0071】
他の例では、胎児絨毛外栄養膜細胞を不溶性の固体又は半固体支持体に取り付け、細胞を溶解させ、細胞質を洗い流して核を支持体上に残す。本明細書に記載のもの等、任意の支持体を使用することができる。
【0072】
ガラススライドは、使用可能な支持体の具体的な例である。細胞を含有する試料と接触した状態でスライドを遠心分離することにより、細胞は、ガラススライドに容易に付着する。
【0073】
又は、細胞を含有する液滴をスライド上に載置することができる。細胞は、他の処理を行うことなくガラススライドに付着する。
【0074】
固体又は半固体支持体は、随意により接着促進剤により処理し、細胞の接着を促進する。接着促進剤の例には、ポリ-L-リジン及びポリ-L-イノシン等のポリカチオン性材料、及び/又はコラーゲン、フィブロネクチン、及びラミニンにより例示される細胞外マトリックス材料が挙げられる。
【0075】
他の例では、核の溶解を伴わずに抗体にアクセス可能な無傷核の核タンパク質に特異的な抗体を、核に結合して核を分離する。抗体は、抗体に結合した核を支持体に間接的に結合させ、その後、他の物質を洗い流すことができるように、本明細書に記載の支持体等の支持体に結合させることができる。抗体は、磁性粒子等の磁性支持体に付着させ、磁性支持体に付着した抗体に結合した核を、磁石の影響下で他の成分から分離させることができる。核の溶解を伴わずに抗体にアクセス可能な無傷核の核タンパク質に特異的な抗体には、限定ではないが、核外膜の表面上に位置するネスプリンタンパク質に特異的な抗体が含まれる。
【0076】
更に他の例では、核の保持及び大きさの違いに基づく他の溶解物成分の除去を可能にする、濾過等のサイズ排除法により、胎児絨毛外栄養膜細胞溶解物から核を単離する。
【0077】
単離胎児絨毛外栄養膜細胞核は、限定ではないが、核を破壊してゲノムDNAを放出させる物理的、化学的、マイクロ流体的、又は混合様式的方法を含む様々な方法の何れかにより溶解させる。
【0078】
核溶解のための物理的方法には、限定ではないが、均質化、超音波処理、ボルテックス、及びビーズビーティングが含まれる。核溶解及びゲノムDNA放出のための均質化法の例には、ダウンス均質化が挙げられる。
【0079】
核溶解及びゲノムDNA放出のための化学的細胞溶解法には、限定ではないが、1種以上の界面活性剤及び/又はカオトロピック剤による細胞の処理が含まれる。
【0080】
単離核の溶解は、随意により、低張/高張緩衝液及び/又は通常0.1乃至1%の範囲のSDS等のイオン性界面活性剤による処理を含む。随意により、イオン性界面活性剤は、低張緩衝液中に存在する。単離核を溶解する溶解緩衝液の例は、400mM NaCl、10mM Tris、2mM EDTA、pH8.2、0.66%SDS、及び50μg/mLプロテイナーゼKである。単離核は、イオン性界面活性剤により低張緩衝液中で均質化を施し、核を溶解し得る。
【0081】
化学的核溶解法には、限定ではないが、プロテアーゼK、プロナーゼ、トリプシン、及び/又はペプシンを含むプロテアーゼによる処理等のプロテアーゼ処理が含まれる。プロテアーゼの活性は、プロテアーゼの濃度、pH、インキュベーションの時間及び温度により決まり、これらは全て、所望のタンパク質分解の程度を達成するために当業者が調整可能である。
【0082】
他の例では、核を不溶性の固体又は半固体支持体に取り付け、核を溶解させ、核含有物を洗い流してゲノムDNAを支持体上に残す。本明細書に記載のもの等、任意の支持体を使用することができる。ガラススライドは、使用可能な支持体の具体的な例である。
【0083】
胎児ゲノムDNAは、沈殿、遠心分離、及び洗浄、ゲル電気泳動等の電気泳動分離、サイズ排除クロマトグラフィ、段階勾配遠心分離又は連続勾配遠心分離等の勾配遠心分離により例示されるDNA単離法により、核の溶解物から単離される。
【0084】
母体子宮頸管内試料、単離胎児絨毛外栄養膜細胞、及び/又は単離胎児絨毛外栄養膜の細胞核は、試料中に存在するが母体細胞に含有されない母体DNAの少なくとも一部を除去するために随意により処理される。母体DNAを除去する処理には、限定ではないが、母体DNAを消化するDNaseによる処理が含まれる。消化された母体DNAは、その後、洗い流して、母体DNAの少なくとも一部を除去することができる。随意により、母体DNAをDNA吸収材料に接触させ、母体DNAを吸収する。その後、吸収された母体DNAを有する吸収材料を除去することにより、母体DNAの少なくとも一部を除去する。DNA吸収材料の例には、抗DNA抗体が挙げられ、随意により支持体に付着される。
【0085】
母体細胞及び胎児絨毛外栄養膜細胞を含む母体子宮頸管内試料は、DNase及び/又はプロテアーゼにより随意により処理し、DNase処理試料及び/又はプロテアーゼ処理試料を生成する。細胞をDNase及び/又はプロテアーゼ処理の前に固定する場合、少なくともDNase、及び随意によりプロテアーゼは、固定した細胞に侵入できない支持体に付着させる。母体子宮頸管内試料をDNase及び/又はプロテアーゼにより処理した後、活性を有するDNase及び/又はプロテアーゼは、DNase及び/又はプロテアーゼの濾過、洗浄、及び/又は熱失活等により、DNase処理試料及び/又はプロテアーゼ処理試料から除去する。
【0086】
溶解前に、単離された胎児絨毛外栄養膜細胞は、随意によりDNase及び/又はプロテアーゼにより処理する。細胞をDNase及び/又はプロテアーゼ処理の前に固定する場合、少なくともDNase、及び随意によりプロテアーゼは、固定した細胞に侵入できない支持体に付着させる。胎児絨毛外栄養膜細胞をDNase及び/又はプロテアーゼにより処理した後、活性を有するDNase及び/又はプロテアーゼは、DNase及び/又はプロテアーゼの濾過、洗浄、及び/又は熱失活等により、DNase処理細胞及び/又はプロテアーゼ処理細胞から除去する。
【0087】
胎児絨毛外栄養膜細胞の溶解後、細胞から放出された無傷の胎児絨毛外栄養膜細胞核は、随意によりDNase及び/又はプロテアーゼにより処理する。核をDNase及び/又はプロテアーゼ処理の前に固定する場合、少なくともDNase、及び随意によりプロテアーゼは、固定した核に侵入できない支持体に付着させる。胎児絨毛外栄養膜細胞核をDNase及び/又はプロテアーゼにより処理した後、活性を有するDNase及び/又はプロテアーゼは、DNase及び/又はプロテアーゼの濾過、洗浄、及び/又は熱失活等により、DNase処理核及び/又はプロテアーゼ処理核から除去する。
【0088】
細胞及び/又は核をDNaseにより処理した後、細胞及び/又は核との接触からDNaseを除去する際には、1種以上のDNase阻害剤を随意により洗浄緩衝液に含め、核及びDNAを保護する。含まれるDNase阻害剤の例には、2-メルカプトエタノール、2-ニトロ-5-チオシアノ安息香酸、アクチン、アルファB2a、G2、G2a、及びM1(非競合性、Ca2+、EGTA、EDTA、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、仔ウシ脾臓阻害タンパク質、カルボジイミド、コレステロール硫酸、ヨード酢酸、及びそれらの任意の2つ以上の組み合わせが挙げられる。
【0089】
本発明の態様による方法において使用されるDNaseは、本明細書に記載の支持体等の1つ以上の支持体に共有結合等により随意により結合されるため、固定した細胞又は固定した核にDNaseは浸透不可能となる。本発明の特定の態様によれば、DNaseは、固定した細胞への侵入を防止するような大きさのビーズ等の粒子に付着させる。このような粒子は、一般に10nmより大きな粒子直径を有する。
【0090】
特定の態様によれば、無傷の胎児絨毛外栄養膜細胞は、母体子宮頸管内試料からの単離前又は単離後に、DNaseにより処理しない。
【0091】
特定の態様によれば、単離胎児絨毛外栄養膜細胞核は、胎児絨毛外栄養膜細胞からの単離前又は単離後に、DNaseにより処理しない。
【0092】
胎児絨毛外栄養膜細胞ゲノムDNAをアッセイして、胎児絨毛外栄養膜細胞DNAの1つ以上の特性を決定し、随意により標準と比較する。胎児絨毛外栄養膜細胞ゲノムDNAをアッセイすることには、任意の応用可能なゲノムDNAアッセイが含まれる。
【0093】
ゲノムDNAアッセイには、限定ではないが、配列決定、高分解能融解曲線分析、メチル化分析、キャピラリ電気泳動、質量分析、一本鎖高次構造多型分析、単一塩基伸長、及び制限断片長多型が含まれる。ゲノムDNAアッセイには、一塩基多型を検出するアッセイ、及びゲノムDNA配列内の一つ以上の単一塩基でのメチル化の検出等の1塩基の分解能を有するDNA塩基修飾のアッセイが含まれる。
【0094】
配列決定の方法には、例えば、大規模並列シグネチャ配列決定、単一分子リアルタイム配列決定、ポロニーシーケンシング(polony sequencing)、イオン半導体(Ion Torrent sequencing)、パイロシーケンシング(454)、合成による配列決定(Illumina)、ライゲーションによる配列決定(SOLiD sequencing)、鎖終結(Sanger sequencing)が含まれる。
【0095】
ゲノムDNAアッセイには、限定ではないが、ドットブロット、サザンブロット、及びDNase保護が含まれる。こうしたアッセイの詳細は、例えばJ. Sambrook and D.W. Russell, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press; 3rd Ed., 2001、及びF.M. Ausubel, Ed., Short Protocols in Molecular Biology, Current Protocols; 5th Ed., 2002に記載されている。
【0096】
胎児ゲノムDNAは、ゲノムDNAアッセイを行う前に増幅法により随意により増幅させる。増幅方法には、核酸ポリメラーゼと増幅対照の標的核酸に隣接する一対のプライマーとにより媒介される鋳型特異的プライマー伸長が含まれ、限定ではないが、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、ライゲーション媒介PCR(LM-PCR)、phi-29 PCR、リアルタイム定量的PCR(qPCR)、全ゲノム増幅、及び他の核酸増幅法を含み、例えば、C.W. Dieffenbach et al., PCR Primer: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2003、V. Demidov et al., DNA Amplification: Current Technologies and Applications, Taylor & Francis, 2004、及びKroneis, T. (Ed.), Whole Genome Amplification: Methods and Protocols (Methods in Molecular Biology), 2015, Humana Press ISBN-10: 1493929895に記載されるものが含まれる。
【0097】
本発明の態様による方法は、精製胎児ゲノムDNAのゲノムDNA配列内の少なくとも1つの個別のヌクレオチドの特性を決定し、これにより継続妊娠の胎児のDNAをアッセイすることを含む。
【0098】
標準
【0099】
胎児細胞から単離されたゲノムDNAは、本発明の態様による胎児細胞において、標準との比較で、ゲノムDNAバリアントを同定するために分析される。
【0100】
ゲノムDNAアッセイに適した標準は、当該技術分野において周知であり、使用される標準は、任意の適切な標準にすることができる。
【0101】
標準は、個々の対照被験者の試料又は対照被験者の集団において同時に分析される又は以前に決定された参照ゲノムであり、呼び出して、アッセイ結果と比較するために、印刷又は電子媒体に保存されたものにし得る。
【0102】
発明の組成物及び方法の実施形態を、以下の実施例に例示する。これらの実施例は説明の目的で提供され、発明の組成物及び方法の範囲に対する限定とは見做されない。
【実施例
【0103】
実施例1
【0104】
試料採集及び栄養膜細胞の単離
【0105】
母体細胞及び胎児細胞は、妊娠5、7、14、15、及び15週の5種類の子宮頸部検体から取得した。同じ患者からの母体血液及び胎児血液スポットDNAを、利用可能な範囲で基準物質として使用した。5件の胎児/母体対由来のゲノムDNAを単離し、エクソーム配列決定を行った。
【0106】
子宮頸管内細胞は、ThinPrepにより取得し、PAPスメア実施中に即座に固定し、タンパク質及び核酸を保存した。採集した試料を処理し、粘液と細胞を分離した。次に、細胞をリン酸緩衝食塩水(PBS)により洗浄し、遠心分離し、1.5mLのPBSに再懸濁し、抗HLA-G抗体被覆磁性ナノ粒子と共に、混合しながら4℃で一晩インキュベートした。HLA-G陰性の非結合細胞を、磁気固定化及びPBS中での3回の洗浄後に収集した。HLA-G陽性の結合細胞を収集し、EVTマーカーについて染色する。単離されたHLA-G陽性の絨毛外栄養膜(EVT)細胞は、本明細書において相互交換可能に、単離胎児細胞、単離胎児絨毛外栄養膜細胞、又は単離EVTと呼ばれ、HLA-G陰性の頸部細胞は、母体細胞と呼ばれる。
【0107】
蛍光免疫ハイブリダイゼーション
【0108】
単離胎児絨毛外栄養膜細胞(HLA-G陽性)をスライド上にスピンし、FISH法によりX及びY染色体を染色した。Y染色体について陽性の試料を、以下の実験のために選択した。使用した試料を表1に示す。
【表1】
【0109】
単離EVT及び母体細胞のDNA抽出及び検証
【0110】
各試料について、胎児細胞DNAをFISHに用いたスライドから抽出し、HLA-G陰性細胞画分から母体細胞DNAを抽出した。
【0111】
以前にFISH分析に使用されていないスライド上の単離胎児絨毛外栄養膜を、以下のように処理して、母体DNAに汚染されている可能性のある細胞膜及び細胞質を除去し、単離胎児絨毛外栄養膜細胞核のみを残した。
【0112】
スライド上の単離胎児絨毛外栄養膜細胞を、新たに調製したプロテアーゼ溶液(100mLの0.01N HCl中0.011gmのペプシン)中で、11分間37℃でインキュベートし、胎児核が無傷の状態で細胞を溶解させた。細胞片を、1×リン酸緩衝食塩水(PBS、pH7.5)中で洗浄することで溶解後に除去し、無傷の胎児核をスライド上に残した。
【0113】
次に、単離胎児核を、プロテイナーゼKを含むPCR適合溶解緩衝液、5mM Tris-HCL、pH8.8により42℃で一晩インキュベートして溶解させ、その後、酵素の不活性化を65℃で30分間、80℃で15分間行った(細胞対緩衝液比は、1μL緩衝液:2細胞に維持)。これに続いて、Copy No.プローブ(Applied Biosystems)による標準的なTaqManリアルタイムPCR(qPCR)アッセイを行い、DNA抽出手順及びSRYプローブ(Applied Biosystems)を検証して、単離EVTの性別が男であることを確認した。
【0114】
HLA-G陰性母体細胞(10,000細胞)由来のDNAは、DNeasy Blood&Tissue Kit(Qiagen)として市販されている標準的なシリカカラムに基づくDNA精製プロトコルを用いて抽出した。抽出したDNAは、蛍光DNAインターカレート色素アッセイ、Pico Green Assay(Invitrogen)を用いて定量した。
【0115】
母体血液及び胎児血液試料からのDNA抽出及び精製
【0116】
患者から採取した血液2mLを、Ficoll-Hypaque溶液5mL上で層状とし、200gで10分間遠心分離した。次に、白血球層(バフィコート)を新しいチューブに吸引した。胎児の血液は、血液パンチ/スポットとして取得した。DNAは、バフィコート及び血液スポットから、EZ1 DNA Blood 350μL Kit(Qiagen)及びEZ1 DNA Investigator Kit(Qiagen)をそれぞれ用いて、製造業者のプロトコルに従い抽出した。その後、MiniElute PCR Purification Kit(Qiagen)を用いて、製造業者のプロトコルに従いDNA精製を行った。
【0117】
全ゲノム増幅(WGA)
【0118】
単離EVT及び母体細胞からDNAを抽出した後、単離DNAの一部に対して、PCRに基づくWGAとして、細胞の全ゲノムをバランス良く完全に増幅するAmpli 1TM Whole Genome Amplification Kit(Silicon Biosystems)を製造業者のプロトコルに従い用いた。図1は、5つの独立した試料及び陽性(+)及び陰性(-)対照での胎児及び母体細胞の増幅DNAを示している。増幅DNAは、DNA標準サイズマーカー(L)が示すように、700乃至900塩基対長のスメアとして表される。図1のアガロースゲル上での全ゲノム増幅の可視化のために、全ゲノム増幅試料6μLをローディングバッファ2μLと混合し、1%アガロースゲルにロードして電気泳動を行った。L:ラダー、F:胎児試料、M:母体試料。対照、-:増幅手順用の水による対照、+:ヒト男性ゲノムDNA。図1は、代表画像を示す。
【0119】
その後、標準的な市販の固相逆固定化(solid phase reverse immobilization)によるビーズに基づく精製システムであるAgencourt Ampure XP常磁性ビーズを用いて3Xビーズ精製を行った。DNAは、その電荷のため、ビーズ上の官能基に結合する。タンパク質は、ビーズに対する親和性が低く、製造業者のプロトコルを用いて洗い流される。
【0120】
WGA手順の質を評価するために、選択領域を増幅するPCRに基づくアッセイであるAmplifi 1TM QCキット(Silicon Biosystems)を使用した。品質管理(QC)アッセイの結果は、ゲル電気泳動を用いて、得られたアンプリコンの長さ(単位:塩基対、bp)を、予想されるものと比較することにより評価した(表2参照)。
【表2】
【0121】
更に、増幅した試料のアリコート6μLを1%アガロースゲル上に流して、WGAを視覚的に確認した。図2は、5つの独立した試料及び陽性(+)及び陰性(-)対照での胎児及び母体細胞の様々な染色体からのPCR増幅断片を示す。断片の長さは、DNA標準マーカー(L)が示すように、100乃至800塩基対である。アガロースゲル上での全ゲノム増幅のQCアッセイを視覚化するために、複製物をプールし、試料24μLをローディングバッファ6μLと混合し、1%アガロースゲルにロードして電気泳動を行った。L:ラダー、F:胎児試料、M:母体試料。対照、-:増幅手順用の水による対照、+:増幅した対照ヒト男性ゲノムDNA。図2は、代表画像を示す。
【0122】
ライブラリ調製
【0123】
DNAライブラリは、DNAの開始入力50ngを用いて、Nextera Rapid Capture Exome Kit(Illumina)を使用して、製造業者のプロトコルにより調製した。ライブラリの調製に使用した試料及びそれぞれの画分の概要を表3に示す。
【表3】
【0124】
単離EVT及び母体細胞から単離したDNAは、別々に3連で増幅し、プールした複製物50ngをライブラリ調製に用いた。バフィコート及び血液スポットからの全ゲノム増幅DNA試料及び非増幅DNAを、蛍光DNAインターカレート色素アッセイ、Pico Green Assay(Invitrogen)を用いて定量した。一意的にバーコード化したアダプタを試料に連結した後、PCR増幅及びライブラリ精製を行った。最終的なライブラリプールは、蛍光DNAインターカレート色素アッセイ、Pico Green Assay(Invitrogen)を用いて定量化し、バイオアナライザ上でHigh Sensitivity DNA Chip(Agilent Technologies)を用いて品質を評価した。図3は、5つの独立した試料における胎児(F)及び母体(M)細胞からのライブラリ調製に成功した際のデジタル電気泳動分析を示す。DNA標準サイズマーカー(L)のサイズを参考としてy軸上に示す。
【0125】
個々のライブラリ試料は、市販のKAPAライブラリ定量キット(KAPA Biosystems-Illumina)を用いてRT-PCRにより定量した。キットに提供されるDNA標準は、10倍希釈系列(20pM乃至0.0002pM)を表す。個々の濃度を決定する際には、結果的に生じたcDNAを配列決定前に2nMの濃度で個々のライブラリに組み合わせ(多重化し)、配列決定のレーン効果を全て排除した。
【0126】
実施例2
【0127】
非染色スライドのための方法
【0128】
単離胎児絨毛外栄養膜細胞(HLA-G陽性)は、スライド上にスピンした。スライドを明視野顕微鏡下で観察し、細胞を有する範囲の輪郭を定める。スライドを、新たに調製したプロテアーゼ溶液(100mLの0.01N HCl中0.011gmのペプシン)に37℃で11分間浸漬して細胞を溶解し、無傷の胎児絨毛外栄養膜の核を放出させる。次に、スライドを1×リン酸緩衝食塩水(PBS、pH7.5)により5分間室温で洗浄する。次に、スライドを、アルコール勾配のエタノール90%、80%、及び70%にそれぞれ1分間通過させて脱水する。次に、スライドを乾燥させ、顕微鏡下で再度観察し、細胞喪失がないことを確認する。
【0129】
単離胎児絨毛外栄養膜細胞核を溶解させるために、5mM Tris/HCL pH8.8/プロテイナーゼK核溶解緩衝液(Arcturus PicoPure DNA抽出キット(Thermo Fisher)において市販のものを取得)5乃至10μLを65℃に加熱し、スライド上で核と接触させ、スライドを65℃に設定したサーモサイクラー上に1乃至2分間載置する。使用する緩衝液の量は変化させ、スライド上の細胞数に基づくものにする。更に5μLの核溶解緩衝液を添加し、全量をスライドから除去し、0.2mLチューブに入れる。チューブ内の核溶解緩衝液の最終量は、2細胞/1μL緩衝液の比を維持するように調整する。その後、スライドを再度視覚化し、全ての細胞が抽出されたことを確認する。次に、チューブを65℃で一晩インキュベートし、その後95℃で30分間不活性化する。DNA単離の成功は、Copy No.プローブ(Applied Biosystems)及びSRYプローブ(Applied Biosystems)によるTaqManリアルタイムPCR(qPCR)アッセイにより確認し、性別を確認する。
【0130】
単離EVT及び母体細胞のDNA抽出及び検証
【0131】
全ゲノム増幅について
【0132】
試料毎に、胎児絨毛外栄養膜細胞DNAを細胞溶解後のスライド上の単離核から抽出した。母体細胞DNAは、HLA-G陰性細胞画分から、5乃至10μLの5mM Tris/HCL pH 8.8/プロテイナーゼK細胞溶解緩衝液を42℃で一晩使用し、その後65℃で30分間及び80℃で15分間不活性化することにより単離した。細胞対緩衝液比は1μL緩衝液:2細胞に維持した。試料毎の溶解細胞数を表4に示す。
【0133】
その後、TaqManリアルタイムPCR(qPCR)アッセイを行い、Copy No.プローブ(Applied Biosystems)によりDNA抽出手順を検証し、SRYプローブ(Applied Biosystems)により単離EVT(胎児試料)の性別が男であることを確認した。
【0134】
標的配列決定について:
【0135】
試料由来のスライド上の細胞数を数え、細胞を有する範囲に印を付ける。FISH処理した細胞上のカバースリップを、1×SSC緩衝液(75℃)にカバースリップが持ち上がるまで3分間浸漬して分離する。スライド及びカバースリップを共に顕微鏡下で視覚化し、細胞喪失の有無を判定する。
【0136】
未染色のスライドも、明視野顕微鏡下で観察し、細胞を有する範囲に印を付ける。次に、スライドを新たに調製したプロテアーゼ溶液(0.01N HCl中0.011gmのペプシン)に37℃で11分間浸漬する。その後、スライドを1×PBS(リン酸緩衝食塩水、pH7.5)により5分間室温で洗浄する。次に、スライドを、アルコール勾配のエタノール90%、80%、及び70%にそれぞれ1分間通過させて脱水し、乾燥させる。スライドを再び顕微鏡下で再度観察し、細胞喪失がないことを確認する。
【0137】
65℃に加熱した溶解緩衝液(Arcturus PicoPure DNA抽出キット、ThermoFischer)5μLを添加して細胞を溶解し、スライドを65℃に設定したサーモサイクラー上に1乃至2分間載置する。更に5μLの溶解緩衝液を添加し、全量をスライドから除去し、0.2mLチューブに入れる。チューブ内の溶解緩衝液の最終量は、2細胞/1μL緩衝液の比を維持するように調整する。スライドを視覚化し、全ての細胞がスライドから抽出されたことを確認する。次に、チューブを65℃で一晩インキュベートし、その後95℃で30分間不活性化する。DNA単離の成功は、Copy No.プローブ(Applied Biosystems)及びSRYプローブ(Applied Biosystems)によるTaqManリアルタイムPCR(qPCR)アッセイにより確認し、性別を確認する。
【表4】
【0138】
実施例3
【0139】
胎児絨毛外栄養膜細胞からのゲノムDNAの単離
【0140】
母体子宮頸管内試料は、サイトブラシを用いて採集し、サイトブラシを氷冷培地又はPBS(137mM NaCl、10mMリン酸緩衝液)で濯ぐ。
【0141】
細胞を遠心分離し、10mM PBSに2.7mM CaCl2、1mM MgCl2を加えたものに再懸濁した後、室温まで加温する。
【0142】
胎児細胞を除去するための磁気分離手順は、抗HLA-G抗体にコンジュゲートした250nm磁性ナノ粒子20μLを、洗浄した細胞に対して、1mLのPBS中に再懸濁後に添加することにより開始され、4℃で1乃至24時間、振盪しながらインキュベートする。
【0143】
母体細胞(HLA-G陰性)は、DynaMagTM Spinマグネット(Life Technologies)を用いて、磁化した(HLA-G陽性)胎児絨毛外栄養膜細胞から分離する。
【0144】
次に、磁石を用いて胎児絨毛外栄養膜細胞を3回洗浄し、残存母体細胞を取り除く。
【0145】
単離胎児絨毛外栄養膜細胞は、50乃至100マイクロリットルのPBS/10mM EDTAの溶液に再懸濁する。15マイクロリットルのアリコートを、細胞計数及び胎児細胞の品質管理用に取り出す。随意により、単離母体細胞を50乃至100マイクロリットルのPBS/10mM EDTAの溶液に再懸濁させ、15マイクロリットルのアリコートを、必要に応じて細胞計数及び品質管理用に取り出す。
【0146】
単離胎児絨毛外栄養膜細胞は、50mM Tris-HCl、pH8.5、150mM NaCl、1%NP-40の添加により溶解させ、その後、約1000xgの低速での遠心分離を行い、無傷の胎児絨毛外栄養膜細胞核をペレット化する。上清を除去し、核をPBS/10mM EDTAにより2、3回洗浄する。
【0147】
ゲノムDNAは、3×濃縮DNA抽出緩衝液(90mM TRIS、90mM EDTA、1.5%EDTA、pH8.0、3mg/mLプロテイナーゼK)25マイクロリットルを単離胎児絨毛外栄養膜細胞核50マイクロリットルに添加することにより、胎児絨毛外栄養膜細胞核から抽出する。次に、核を65℃で3時間、その後95℃で10分間インキュベートする。
【0148】
抽出したゲノムDNAは、その後のアッセイ用に凍結するか、又は微量遠心分離機において高速で5分間遠心分離することにより更に精製することができる。随意により、例えば、Zymresearch DNA 10濃縮キット等の市販のDNA精製及び濃縮キットを用いて、DNAを更に精製する。
【0149】
実施例4
【0150】
胎児絨毛外栄養膜栄養細胞からのゲノムDNAの単離
【0151】
母体子宮頸管内試料は、サイトブラシを子宮頸管に略2cm挿入し、引き出しながら2、3回回転させることにより採集する。子宮頸管内に存在する粘液もブラシに採集される。サイトブラシは、例えばThinPrepキットを用いて固定剤中で濯ぐ。検体は、冷蔵又は環境温度で保存され、更なる処理のために実験室に輸送される。RNA又はHLA-Gタンパク質を失うことなく、少なくとも1週間4℃で保存することができる。
【0152】
胎児絨毛外栄養膜細胞のゲノムDNAを単離するために、細胞を含む20mLの量のThinPrepに酢酸0.6mLを添加し、最終濃度を3%酢酸とすることにより母体子宮頸管内試料を酸性化した後、全細胞をPBSで2回洗浄する。
【0153】
細胞を、250ミクロンフィルターを介して遠心分離し、4℃のPBS10mLに再懸濁させる。その後、細胞をPBS10mL中で更に2回洗浄し、最終的なペレットをPBS中で1mLの量にする。
【0154】
胎児細胞を除去するための磁気分離手順は、抗HLA-G抗体にコンジュゲートした250nm磁性ナノ粒子20μLを、洗浄した細胞に対して、1mLのPBS中に再懸濁後に添加することにより開始され、4℃で1乃至24時間、振盪しながらインキュベートする。
【0155】
母体細胞(HLA-G陰性)は、DynaMagTM Spinマグネット(Life Technologies)を用いて、磁化した(HLA-G陽性)胎児絨毛外栄養膜細胞から分離する。
【0156】
次に、磁石を用いて胎児絨毛外栄養膜細胞を3回洗浄し、残存母体細胞を取り除く。
【0157】
単離胎児絨毛外栄養膜細胞は、50乃至100マイクロリットルのPBS/10mM EDTAの溶液に再懸濁する。15マイクロリットルのアリコートを、細胞計数及び胎児細胞の品質管理用に取り出す。随意により、単離母体細胞を50乃至100マイクロリットルのPBS/10mM EDTAの溶液に再懸濁させ、15マイクロリットルのアリコートを、必要に応じて細胞計数及び品質管理用に取り出す。
【0158】
DNase Iは、PBS10mLに0.9mM MgCl2を加えたものに1mgのDNase I粉末(Worthington Cat#2138、>2000Kunitz 単位/mg)を溶解することにより調製される。
【0159】
核DNAを、固定した透過性の単離胎児絨毛外栄養膜細胞に侵入するヌクレアーゼによる分解から保護するために、DNaseは、固定した細胞に侵入することができないビーズ又は粒子等の1つ以上の支持体に共有結合等により付着させる。本実施例では、非磁性ビーズに共有結合したDNaseを、単離胎児絨毛外栄養膜細胞、5マイクロリットルのF7(MoBiTec、ドイツ)に添加し、室温で10分間インキュベートする。
【0160】
DNase処理した単離胎児絨毛外栄養膜細胞は、250ミクロンフィルターを介して遠心分離し、4℃のPBS10mLに再懸濁させる。その後、細胞をPBS10mL中で更に2回洗浄し、最終的なペレットをPBS中で1mLの量にする。ビーズに固定されたDNaseは、ゲル濾過、メッシュ上での濾過、マイクロ流体チャネル内の層流、又は他の適切な方法等のサイズ排除法を用いて、胎児DNAの抽出前に除去される。
【0161】
DNase処理された単離胎児絨毛外栄養膜細胞は、50mM Tris-HCl、pH8.5、150mM NaCl、1%NP-40の添加により溶解させ、その後、低速度での遠心分離を行い、無傷の胎児絨毛外栄養膜細胞細胞核をペレット化する。上清を除去し、核をPBS/10mM EDTAで2、3回洗浄する。
【0162】
ゲノムDNAは、3×濃縮DNA抽出緩衝液(90mM TRIS、90mM EDTA、1.5%EDTA、pH8.0、3mg/mLプロテイナーゼK)25マイクロリットルを単離胎児絨毛外栄養膜細胞核50マイクロリットルに添加することにより、胎児絨毛外栄養膜細胞核から抽出する。次に、核を65℃で3時間、その後95℃で10分間インキュベートする。
【0163】
抽出したゲノムDNAは、その後のアッセイ用に凍結するか、又は微量遠心分離機において高速で5分間遠心分離することにより更に精製することができる。随意により、例えば、Zymresearch DNA 10濃縮キット等の市販のDNA精製及び濃縮キットを用いて、DNAを更に精製する。
【0164】
実施例5
【0165】
試料
【0166】
母体細胞及び胎児細胞を、5乃至19週(9.1±4.0週)の範囲の妊娠期間に得られた子宮頸管内検体(n=22)から単離し、対応する新生児の血液スポットを各胎児の出産後に取得した。妊娠第1期で妊娠を終える第2群の女性では、子宮頸管内検体及び対応する胎盤組織を取得した。
【0167】
子宮頸管内胎児栄養膜細胞の単離
【0168】
子宮頸管内試料は、ThinPrepキット(Hologic、マサチューセッツ州マルボロ)を用いて即座に固定した。子宮頸管内試料を遠心分離し、10mLのリン酸緩衝食塩水(PBS)に再懸濁し、その後、PBSで3回洗浄した。1.5mLのPBS中に最終的に再懸濁した後、抗HLA-G被覆磁性ナノ粒子を添加し、混合しながら4℃で一晩インキュベートした。非結合(母体)細胞は、磁気固定化及びHLA-G陽性(胎児)細胞の分離後に収集した。その後、両タイプの単離細胞をPBSにて3回洗浄した。栄養膜細胞(各試料から110乃至1515、平均373)及び母体細胞を計数し、略50個の細胞群をガラス顕微鏡スライド上に載置した。細胞をβ-hCGの発現について免疫蛍光顕微鏡法により評価し、標識細胞の割合を決定した。栄養膜特異的タンパク質β-hCGの発現は、単離胎児細胞において、胎児単離細胞平均89.8±5.2%で存在する一方、β-hCGは、単離母体細胞には存在しなかった。表5は、評価した試料のうち3件の例を示す。
【表5】
【0169】
蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)
【0170】
単離胎児絨毛外栄養膜細胞をスライドに載せ、Y染色体上のDYZ1サテライトIII及びX染色体上のDXZ1アルファサテライトを蛍光標識プローブ(Abbott Molecular)として用いて、FISHによりX及びY染色体についてプローブした。核をDAPIにより対比染色し、各染色体について採点し、XX又はXYである細胞を定量した。X及びY染色体に対する蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)及びSRY遺伝子に対する定量的PCR(qPCR)により、男の胎児由来の栄養膜単離物を同定した。
【0171】
単離核からのDNAの抽出及び単離
【0172】
胎児DNAは、胎児DNAを核から抽出する前に、胎児絨毛外栄養膜細胞核を単離することにより取得した。単離胎児絨毛外栄養膜細胞をスライド上に載せ、溶解させ、スライドに付着したままの核から胎児細胞DNAを抽出した。
【0173】
細胞は、新たに調製したプロテアーゼ溶液(100mLの0.01N HCl中0.011gmのペプシン)中において11分間37℃でインキュベートすることにより溶解し、無傷胎児絨毛外栄養膜細胞核を放出させた。
【0174】
核は、5乃至10μLの5mM Tris/HCL pH8.8/プロテイナーゼK細胞溶解緩衝液中において42℃で一晩インキュベートすることにより溶解し、細胞対緩衝液比は、1μL緩衝液:2細胞に維持した。65℃で30分間、80℃で15分間の不活性化後、1μLをRNaseH及びSRY遺伝子のqPCRに使用して、核からのDNA抽出及び胎児細胞の性別が男であることを確認した。
【0175】
免疫磁気分離により胎児細胞を枯渇させPCRチューブに凍結保存しておいた対応する子宮頸管内試料由来の母体細胞の20細胞アリコートから、対応する母体細胞DNAを抽出した。
【0176】
DNase消化後の単離核からのDNAの抽出及び単離
【0177】
DNaseにより処理した細胞から単離されたDNAに対して標的配列決定を行った。子宮頸管内試料から単離した胎児及び母体細胞を別々のスライド上に滴下し、乾燥させてスライドに接着した。
【0178】
胎児細胞が接着したスライドを、新たに調製したプロテアーゼ溶液(100mLの0.01N HCl中0.011gmのペプシン)に37℃で11分間浸漬して細胞を溶解し、無傷の胎児絨毛外栄養膜細胞核を放出させ、その後、PBS洗浄を5分間行い、細胞原形質膜及び潜在的な母体DNA断片を除去して、単離胎児絨毛外栄養膜細胞核を生成した。10μLの洗浄済み固定化DNase(DNase I、マトリックスF7M上に固定化、MoBiTec、ドイツ、ゲッティンゲン)をペプシン処理スライド上に添加し、室温で3乃至5分間インキュベートすることにより、外来性DNA(即ち、非胎児DNA)をガラス結合した単離胎児絨毛外栄養膜細胞核から更に除去した。スライドをPBSで洗浄し、DNase含有ビーズを除去することによりDNase活性を停止させた。
【0179】
次に、単離胎児絨毛外栄養膜細胞核を、65℃で一晩、0.5μL/細胞の5mM Tris/HCL pH8.8/プロテイナーゼK核溶解緩衝液と共に42℃で一晩インキュベートすることにより溶解し、細胞対緩衝液比は、1μL緩衝液:2細胞に維持した。その後、95℃で30分間インキュベートしてプロテアーゼを不活性化した。
【0180】
スライドに接着した母体細胞は、65℃で一晩、0.5μL/細胞の5mM Tris/HCL pH8.8/プロテイナーゼK核溶解緩衝液と共に42℃で一晩インキュベートすることにより溶解し、細胞対緩衝液比は、1μL緩衝液:2細胞に維持した。その後、95℃で30分間インキュベートしてプロテアーゼを不活性化した。母体細胞では、DNA抽出前に核を単離せず、細胞のDNase処理は行わなかった。
【0181】
胎盤絨毛(20乃至25mg)を切断し、PBS100μLに懸濁させた。10μLの固定化DNaseを添加し、室温で10分間振盪して、効率的なDNA消化を確実に行った。PBS中で洗浄することにより、DNaseビーズを除去した。DNAは、標準的なDNA単離法を用いて組織から抽出した。
【0182】
全てのDNAを、Qiagen MinElute PCR精製キットを用いて精製し、最終量20μLで溶出させ、蛍光DNAアッセイを用いて定量した。
【0183】
血液及び組織からの参照DNAの抽出及び単離
【0184】
母体血液2mLをFicoll-Hypaque溶液(GE Healthcare)5mL上で層状とし、200xgで10分間遠心分離した後、白血球層(バフィコート)を採取した。新生児の血液スポットは、採取カード上の血液スポットから1/4インチのパンチとして取得した。DNAは、母体のバフィコート及び新生児の血液スポットから、EZ1 DNA Blood Kit(Qiagen)及びEZ1 DNA Investigator Kit(Qiagen)をそれぞれ用いて、製造業者のプロトコルに従い抽出した。DNAは、MiniElute PCR精製キット(Qiagen)を用いて、製造業者のプロトコルに従い精製した。母体血液の代わりに、DNeasy Blood&Tissue Kit(Qiagen)として市販されている標準的なシリカカラムに基づくDNA精製プロトコルを用いて、子宮頸管内試料から単離された10,000個の母体細胞のDNAを抽出した。全ての単離DNAは、蛍光DNAインターカレート色素アッセイ、Pico Green Assay(Invitrogen)を用いて定量した。
【0185】
定量的PCR(qPCR)
【0186】
各胎児の性別は、TaqManプローブ及びRNaseH及び男性SRY遺伝子に対するプライマー(Life Technology)によるマルチプレックスリアルタイムqPCRにより、自動データ分析を備えたBioRad CFX 364リアルタイム蛍光サーモサイクラーを用いて決定した。試料を95℃で10分間インキュベートした後、92℃で15秒間及び60℃で1分間を50サイクル行った。
【0187】
全ゲノム増幅(WGA)
【0188】
胎児ゲノムDNAを10乃至50個の核から単離し(表5参照)、胎児又は母体DNAのアリコート(約4ゲノム当量)を全ゲノム増幅(WGA)に用いた。WGAは、4つの常染色体断片のPCR増幅により確認した(図1及び2参照)。胎児及び母体細胞から単離されたDNAの一部(略4コピー)に対して、PCRに基づくWGAとして、細胞の全ゲノムをバランス良く完全に増幅するAmpli 1TM Whole Genome Amplification Kit(Silicon Biosystems)を製造業者のプロトコルに従い用いた。その後、標準的な市販の固相逆固定化(solid phase reverse immobilization)によるビーズに基づく精製システムであるAgencourt Ampure XP常磁性ビーズを用いて3Xビーズ精製を行った。DNAは、その電荷のため、ビーズ上の官能基に結合する。タンパク質は、ビーズに対する親和性が低く、製造業者のプロトコルを用いて洗い流される。
【0189】
WGA手順の質を評価するために、各増幅試料の6μLアリコートを1%アガロースゲル電気泳動(図1参照)により、選択領域を増幅するPCRに基づくアッセイであるAmplifi 1TM QCキット(Silicon Biosystems)を用いて評価した。結果は、ゲル電気泳動を用いて評価し、QCアッセイアンプリコンのbp長を、キットにより予想されるものと比較した(図2参照)。各試料は、3連で増幅し、個々の複製物を品質について評価した。複製物は、DNAライブラリ調製用にプールした。
【0190】
エクソーム配列決定用のライブラリ調製
【0191】
WGA増幅DNA(子宮頸管内試料から単離された胎児栄養膜細胞の核、子宮頸管内試料から単離された母体子宮頸管内細胞由来)及び未増幅DNA(新生児血液スポット及び母体細胞又は血液由来)の両方を配列決定した。DNAライブラリは、50ngの入力DNAによりNextera Rapid Capture Exome Kit(Illumina)を用いて、製造業者のプロトコルにより調製した。一意的にバーコード化したアダプタを試料に連結した後、PCR増幅及びライブラリ精製を行った。最終的なライブラリプールを定量し、高感度DNAチップ(Agilent Technologies)を用いて品質を評価した(図3参照)。
【0192】
各ライブラリは、KAPAライブラリ定量キット(KAPA Biosystems、Illumina)を用いてRT-PCRにより定量した。キットに提供されるDNA標準は、0.0002乃至20pMの10倍希釈系列を表す。個別ライブラリからそれぞれ2nMを、マルチプレックス配列決定のために組み合わせ、配列決定のレーン効果を排除した。ライブラリは、Illumina HiSeq 2500上で高速フローセルにおいて配列決定した。
【0193】
エクソーム配列決定データ分析
【0194】
エクソン配列読み取りのアラインメント及びバリアントコールは、BWA Enrichmentパイプラインバージョン2.1.0.0(Illumina BaseSpace Workflow)を用いて、Nextera Rapid Capture Exome v1.2の標的領域であるホモサピエンス参照ゲノム(UCSC hg19)により、アダプタのトリミング及びPCR複製物のフラグ付けを含めて行った。その後、VCFファイルをIllumina Variant Studio 2.2にロードし、BWA Enrichment品質管理を通したコールをフィルタリングし、最小リード深度100を確保し、挿入及び削除バリアントを取り除いた。
【0195】
各母体及び胎児ペア間で共有されるバリアントを同定した後、ホモ接合体と見做すべき変異型アレルのパーセンテージ85超及びヘテロ接合体と見做すべき変異型アレルのパーセンテージ85未満を用いて、共有ホモ接合体及び共有ヘテロ接合体を除去した。次に、母体及び胎児の変異型アレルのパーセンテージの最小差を25に設定した。残りのバリアントは、有益なもの、即ち、母体ホモ接合体/胎児ヘテロ接合体、又は母体ヘテロ接合体/胎児ホモ接合体と見做した。
【0196】
同じ個体のWGA増幅試料及び未増幅試料との間で共有されるバリアントについては、未増幅DNAがヘテロ接合性を示し、増幅DNAがホモ接合性を示した際にアレルドロップアウトを特定した。ヘテロ接合体であるWGA増幅DNAでは、追加のアレルが特定される一方、未増幅試料は、ホモ接合体であった。
【0197】
染色体カバレッジは、各標的領域についての染色体あたりの平均カバレッジ値を倍数染色体カバレッジの比として計算することにより決定した。
【0198】
表6及び7に示す配列決定データにより、全染色体のカバレッジが明らかになった。
【表6】
【表7】
【0199】
全ての染色体のカバレッジは、図4に提示した結果にも示される。図4は、log10スケール上での全てのエクソーム配列の標的領域による平均カバレッジを示すCercosヒートマップであり、母体(M)及び胎児(F)試料の各染色体(1-22、X、Y)を示す。高いカバレッジほど、暗い灰色で示される。最も外側の円は、染色体のイデオグラムであり、時計回りの方向がpter-qter方向であり、セントロメアを黒で示している。拡大領域(左)に、X及びY染色体の詳細なカバレッジを示す。図5Aは、胎児及び母体細胞に対するWGA後の常染色体、X及びY染色体の相対カバレッジを示し、図5Bは、標準試料として使用される新生児血液試料(黒点)及び母体血液試料に対するWGA後の常染色体、X及びY染色体の相対カバレッジを示す。図5A及び5Bの点は、個々のデータ点を示す。ボックス:25乃至75パーセンタイル、ボックス内の水平線:中央値、ひげ:1.5×四分位範囲(第3四分位-第1四分位)。女及び男のそれぞれの性別と一致して、母体DNAにおいて予想される常染色体:X:Y染色体の比(2:2:0)が得られ(1.96±0.03対2.29±0.46対0.05±0.08)、一方、男の胎児で予想される比(2:1:1)が単離胎児核由来の栄養膜DNAにおいて得られた(1.67±0.11対1.16±0.24対2.46±1.02)(図5A参照)。栄養膜細胞におけるY染色体の割合の上昇は、Y染色体の多くがX染色体と共有されていることから、アライメントの誤りによるものである可能性が高い。WGA増幅DNA(図5A参照)は、WGA中の非GCリッチ領域の優先増幅のため、未増幅DNAに比べ染色体カバレッジの大きな変動を示した(図5B参照)。
【0200】
実施例6
【0201】
標的配列決定
【0202】
子宮頸管内試料から単離した胎児栄養膜細胞、子宮頸管内試料から単離された母体子宮頸管内細胞、及びエクソーム配列決定のための上述したような対応する胎盤由来の組織の核からDNAを取得した。男と女の両方の胎児(N=20)の妊娠を使用して、標的配列決定を行った。
【0203】
ForenSeq標的配列決定用のライブラリ調製
【0204】
子宮頸管内試料由来の胎児栄養膜細胞又は子宮頸管内試料から単離した母体子宮頸管内細胞(妊娠5乃至19週の範囲内の20件の子宮頸管内検体における略282細胞、表8)の単離核からの胎児DNAを配列決定し、対応する胎盤検体から単離した配列決定済みの参照胎児DNAと比較した。
【表8】
【0205】
配列分析は、子宮頸管内試料採取の5乃至7日後に完了した。標的PCR及びDNAライブラリ調製用にForenSeq DNA Signature Prep Kit(Illumina)を用いて、各タイプの略1.9±0.9ngのDNAを配列決定し、その後、MiSeq FGxシステムにおいて分析した。DNAライブラリは、ForenSeq DNA Signature Prep Kit(Illumina)により、94のSNP座及び59のSTR座(常染色体及び性染色体に特異的)の分析が可能な「primer mix A」を用いて、製造者の指示に従って調製した。個々の試料をQubitにより定量し、ライブラリ標準化の前にAgilent高感度DNAチップを用いて分析した。200乃至1000bpのライブラリのパーセンテージは、ライブラリのトレースに基づいて計算し、これに応じてコアファシリティにおいて混合した。200乃至1kbのプールサイズを選択し、サイズ選択陰性対照をプールに混合した。試料は、陽性及び陰性対照を含むMiSeq FGXシステム(Illumina)において配列決定した。
【0206】
ForenSeq標的配列決定データ分析
【0207】
ForenSeq標的配列決定データは、実行品質レポート及び詳細な遺伝子型を提供するForenSeq Universal Analysisソフトウェアから抽出した。このレポートから、各ショートタンデムリピート(STR)又は一塩基多型(SNP)のリード深度を用いて、データを抽出し、アレルパーセンテージを決定した。STRデータでは、相対ピークが最も高い2つの優性アレルを更なる分析に使用した。
【0208】
子宮頸管内試料から単離した胎児栄養膜細胞の単離胎児核から得られた胎児DNAの純度を決定するために、母体DNAによる汚染レベルをSNP及びSTRデータから計算した。3試料の組(胎児、母体、胎盤)毎に、各SNPのホモ又はヘテロ接合性を最初に胎盤で決定し、次に胎児と比較し、胎児DNAの偏差パーセンテージを計算した。ホモ又はヘテロ接合性からの偏差も、母体DNAのSNPプロファイルにおいて計算し、技術的及び/又は生物学的変化の閾値を決定した。次に、母体及び胎盤SNPプロファイルを比較し、有益ではないSNP(即ち、同一の母体及び胎盤アレル)を除外した。有益なSNPについては、胎児試料から得られた偏差を胎児試料から差し引き、2を掛けて(胎児試料に寄与する2つの母体アレルに対応)、母系汚染のパーセンテージを求めた。
【0209】
STR遺伝子型のみで胎児DNA純度を決定できるかを調べるために、各常染色体STRを使用した。相対ピークが最も高い優性アレルを合計し、不純な試料から純粋なもの(汚染15%未満)を識別する中央値及び範囲を確立した。純粋な試料は、中央値STRアレルが85%超である一方、不純な試料は、中央値STRアレルが80%未満となた。不純な試料を識別するためのカットオフを確立するために、82.5%を選択した。
【0210】
153の全ての遺伝子座について、配列決定が成功した。SNP判別分析により、単離胎児栄養膜細胞核から得られた胎児DNAにおいて、平均胎児DNA純度が89.2±5.0%であることが分かった(表8参照)。DNA単離前に胎児核を単離することなく胎盤から脱落した細胞から単離した胎児DNAを分析する以前の試みとは対照的に、単離栄養膜細胞核からの胎児DNAのアッセイにより、高分解能STRプロファイルが生成され、複数の共有及び識別アレルの詳細が得られた。1件の試料からの母体細胞(母体)、胎児栄養膜細胞(TRIC)、及び胎盤組織(胎盤)からなるDNAトライアドのグラフィカルSTRプロファイルを図6に示す。各DNA試料について、相対ピーク又はホモ接合の場合の単一のピークが最も高い2つの優性アレルをSTR毎に決定し、トライアド間で比較した。隣接するミニプロットは、共有STR(上のミニプロット)及び識別STR(中央及び下のミニプロット)の分布を、優性アレル毎に数字及び陰影強度で示したリードのパーセンテージにより示している。
【0211】
これらのデータは、共に母体DNAとは異なる、TRICにより得られた胎児栄養膜の単離核から得られた胎児DNAと参照胎盤DNAとのアレルプロファイル間の一致を示しており、全試料において胎児の性別は100%正確に同定された(表8参照)。
【0212】
母体遺伝子型と、胎児遺伝子型に一致した参照胎盤遺伝子型とを比較することにより、有益なSNPを特定した(母体又は胎児DNAのホモ接合体、他のヘテロ接合体)。図7、8、及び9は、単一患者の対応する母体、胎児(TRIC)、及び胎盤検体の例における94の配列決定したSNPのアレル頻度の比較を示す。
【0213】
有益なSNPは、合計SNPのうち平均48.7±5.5%であった。全ての母体及び胎児遺伝子型のペアは、何れのアレルにおいても禁止組み合わせ(AA/BB)が無く(図7)、親及び子孫として関連する固有の個体と一致していた。対応する胎盤から得られたDNAに対する胎児(TRIC)DNAの比較では、遺伝的同一性が実証され(図8参照)、一方、図9に示す母体及び胎盤DNAからのSNPの比較では、図7に示すものと類似の差が見られた。
【0214】
項目
【0215】
項目1.継続妊娠の胎児のDNAを単離する方法であって、妊娠中の被験者から母体細胞及び胎児絨毛外栄養膜細胞を含有する母体子宮頸管内試料を得ることと、前記母体子宮頸管内試料から胎児絨毛外栄養膜細胞を単離し、母体DNAによる汚染のある単離胎児絨毛外栄養膜細胞を生成することと、前記単離胎児絨毛外栄養膜細胞を溶解することと、前記溶解した胎児絨毛外栄養膜細胞から胎児核を単離し、単離胎児核を生成することにより、前記汚染母体DNAの少なくとも一部を除去することと、前記単離胎児核を溶解することと、前記単離胎児核からゲノムDNAを精製し、精製胎児ゲノムDNAを生成することと、を含む、方法。
項目2.更に、前記単離胎児核を処理して、前記汚染母体DNAの少なくとも一部を除去することを含む、項目1記載の方法。
項目3.更に、前記単離胎児核を溶解する前に、前記単離胎児核をDNaseにより処理することにより、前記汚染母体DNAの少なくとも一部を除去することを含む、項目1又は2記載の方法。
項目4.更に、胎児絨毛外栄養膜細胞を前記母体子宮頸管内試料から単離する前に、前記単離絨毛外栄養膜細胞をDNaseにより処理することにより、前記汚染母体DNAの少なくとも一部を除去することを含む、項目1乃至3の何れかに記載の方法。
項目5.更に、単離胎児絨毛外栄養膜細胞を溶解する前に、前記単離絨毛外栄養膜細胞をDNaseにより処理することにより、前記汚染母体DNAの少なくとも一部を除去することを含む、項目1乃至4の何れかに記載の方法。
項目6.前記胎児絨毛外栄養膜細胞をDNaseにより処理する前に、前記胎児絨毛外栄養膜細胞を固定し、前記DNaseを支持体に付着させ、前記胎児絨毛外栄養膜細胞への前記DNaseの侵入を防止する、項目1乃至5の何れかに記載の方法。
項目7.前記胎児絨毛外栄養膜細胞は、前記胎児絨毛外栄養膜細胞を前記DNaseにより処理する前に固定されない、項目1乃至5の何れかに記載の方法。
項目8.前記精製胎児ゲノムDNAは、10%乃至100%の範囲の胎児割合を特徴とする、項目1乃至7の何れかに記載の方法。
項目9.前記精製胎児ゲノムDNAは、25%乃至100%の範囲の胎児割合を特徴とする、項目1乃至8の何れかに記載の方法。
項目10.継続妊娠の胎児のDNAをアッセイする方法であって、妊娠中の被験者から胎児絨毛外栄養膜細胞を含有する母体子宮頸管内試料を得ることと、前記母体子宮頸管内試料から胎児絨毛外栄養膜細胞を単離することと、前記単離胎児絨毛外栄養膜細胞を溶解することと、前記溶解した胎児絨毛外栄養膜細胞から胎児核を単離することと、前記単離胎児核を溶解し、前記単離胎児核からゲノムDNAを精製することと、前記精製胎児ゲノムDNAをアッセイすることにより、前記精製胎児ゲノムDNAのゲノムDNA配列の特性を決定し、これにより継続妊娠の胎児のゲノムDNAをアッセイすることと、を含む、方法。
項目11.前記精製胎児ゲノムDNAをアッセイすることにより、前記精製胎児ゲノムDNAのゲノムDNA配列内の少なくとも1つの個別のヌクレオチドの特性を決定し、これにより1塩基の分解能で継続妊娠の胎児のDNAをアッセイする、項目10記載の方法。
項目12.前記アッセイすることは、配列決定、高分解能融解曲線分析、メチル化分析、キャピラリ電気泳動、質量分析、一本鎖高次構造多型分析、単一塩基伸長、制限断片長多型からなる群から選択される方法を含む、項目10又は11記載の方法。
項目13.前記配列決定は、大規模並列シグネチャ配列決定、単一分子リアルタイム配列決定、ポロニーシーケンシング、イオン半導体、パイロシーケンシング、合成による配列決定、ライゲーションによる配列決定、及び鎖終結配列決定からなる群から選択される方法を含む、項目10乃至12の何れかに記載の方法。
項目14.更に、前記単離胎児核を処理して、前記汚染母体DNAの少なくとも一部を除去することを含む、項目10乃至13の何れかに記載の方法。
項目15.更に、前記単離胎児核を溶解する前に、前記単離胎児核をDNaseにより処理することにより、前記汚染母体DNAの少なくとも一部を除去することを含む、項目10乃至14の何れかに記載の方法。
項目16.更に、胎児絨毛外栄養膜細胞を前記母体子宮頸管内試料から単離する前に、前記単離絨毛外栄養膜細胞をDNaseにより処理することにより、前記汚染母体DNAの少なくとも一部を除去することを含む、項目10乃至15の何れかに記載の方法。
項目17.更に、単離胎児絨毛外栄養膜細胞を溶解する前に、前記単離絨毛外栄養膜細胞をDNaseにより処理することにより、前記汚染母体DNAの少なくとも一部を除去することを含む、項目10乃至16の何れかに記載の方法。
項目18.前記胎児絨毛外栄養膜細胞をDNaseにより処理する前に、前記胎児絨毛外栄養膜細胞を固定し、前記DNaseを支持体に付着させ、前記胎児絨毛外栄養膜細胞への前記DNaseの侵入を防止する、項目10乃至17の何れかに記載の方法。
項目19.前記胎児絨毛外栄養膜細胞は、前記胎児絨毛外栄養膜細胞を前記DNaseにより処理する前に固定されない、項目10乃至17の何れかに記載の方法。
項目20.前記精製胎児ゲノムDNAは、10%乃至100%の範囲の胎児割合を特徴とする、項目10乃至19の何れかに記載の方法。
項目21.前記精製胎児ゲノムDNAは、25%乃至100%の範囲の胎児割合を特徴とする、項目10乃至20の何れかに記載の方法。
項目22.実質的に本明細書に記載の継続妊娠の胎児のDNAを単離する方法。
項目23.実質的に本明細書に記載の1塩基の分解能を有する継続妊娠の胎児のDNAをアッセイする方法。
【0216】
本明細書にて言及した任意の特許又は公表文献は、各公表文献について明確且つ個別に出典を明記することにより本願明細書の一部とすることを示したものとして、出典を明記することにより本願明細書の一部とする。
【0217】
本明細書に記載の組成物及び方法は、好適な実施形態を例示的に現時点で表すものであり、本発明の範囲を限定するものではない。それらの変更及び他の用途は、当業者に想到されるであろう。こうした変更及び他の用途は、特許請求の範囲に記載の本発明の範囲を逸脱することなく実施することができる。
【符号の説明】
【0218】
[図1及び2]
Controls: 対照
[図4]
relative coverage: 相対カバレッジ
[図5A]
Fetal: 胎児
Maternal: 母体
Average chromosomal coverage ratio: 平均染色体カバレッジ比
Autosomal: 常染色体
[図5B]
Newborn Ref.: 新生児参照
Maternal Ref.: 母体参照
Average chromosomal coverage ratio: 平均染色体カバレッジ比
Autosomal: 常染色体
[図6]
Amelogenin: アメロゲニン
Maternal: 母体
Placenta: 胎盤
Allele: アレル
[図7、8、及び9]
Allele frequency: アレル頻度
SNP ID number: SNP ID番号
Maternal: 母体
Fetal: 胎児
Placenta: 胎盤
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9