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特許7026100鉄道の接触架線のための改良されたハンガー、及び、当該ハンガーを含む電力供給線
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  • 特許-鉄道の接触架線のための改良されたハンガー、及び、当該ハンガーを含む電力供給線 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-16
(45)【発行日】2022-02-25
(54)【発明の名称】鉄道の接触架線のための改良されたハンガー、及び、当該ハンガーを含む電力供給線
(51)【国際特許分類】
   B60M 1/234 20060101AFI20220217BHJP
【FI】
B60M1/234 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019504808
(86)(22)【出願日】2017-07-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-09-12
(86)【国際出願番号】 IB2017054474
(87)【国際公開番号】W WO2018020397
(87)【国際公開日】2018-02-01
【審査請求日】2020-06-12
(31)【優先権主張番号】102016000077791
(32)【優先日】2016-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】519025714
【氏名又は名称】オフィシナ フラテリ ベルトロッチ エスピーエー
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マルケシエロ ステファノ
(72)【発明者】
【氏名】ガリバルディ ルイジ
(72)【発明者】
【氏名】アナスタシオ ダリオ
(72)【発明者】
【氏名】ファサナ アレッサンドロ
【審査官】西井 香織
(56)【参考文献】
【文献】英国特許出願公告第918317(GB,A)
【文献】特開2012-116418(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第581987(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60M 1/00 - 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道の架空線のためのハンガー(5)であって、送電ケーブル(2)又はブラケットと電力供給接触ワイヤ(4)との間に取り付けられるように適合されており、前記ハンガーが、
前記電力供給接触ワイヤのアンダーカット部を締め付けるためのクランプ(8)と、当該クランプに接続された負剛性の弾性装置(10)とを備え、当該弾性装置が、
a.第1の方向(A)に沿った予圧縮された弾性組立体(11)であって、前記第1方向(A)を横切る第2の方向(B)に移動させることにより負荷外乱後の予圧縮を低減する可動点(12)を有する、予圧縮された弾性組立体(11)と、
b.前記予圧縮された弾性組立体(11)に接続された弾性要素(13)であって、前記クランプ(8)が前記電力供給接触ワイヤ上のパンタグラフ通過時に移動するとき、前記第2方向(B)に前記可動点(12)への作用を加えるための弾性要素(13)と、
c.前記クランプ(8)を前記弾性要素(13)に牽引/圧縮下で接続するためのスペーサ(14)と、
d.前記可動点(12)の移動時に発生される予め定義された摩擦作用とを含み、
前記負剛性弾性装置(10)が、前記ハンガー(5)が前記架空線に固定され且つ前記電力供給接触ワイヤが静止しているときに前記可動点(12)が中立位置を有するように構成されており、且つ、弾性要素(13)にスペーサ(14)を介して作用する前記クランプ(8)が、前記パンタグラフの通過後に前記可動点(12)を、前記電力供給接触ワイヤの長手方向の張力により前記中立位置に戻すように構成されており、前記可動点(12)が前記第2方向(B)に沿って移動し、それにより、パンタグラフの通過が生じたときに、前記弾性組立体(11)の弾性エネルギーを解放する、前記ハンガー(5)。
【請求項2】
前記予め定義された摩擦作用が、前記弾性組立体(11)及び/又は前記弾性要素(13)の変形可能な弾性材料の乾式摩擦及び/又はヒステリシス内部摩擦により規定されることを特徴とする、請求項1に記載のハンガー。
【請求項3】
前記負剛性弾性装置(10)が、前記可動点(12)にてヒンジ連結された第1及び第2の支柱(16,17)を有する関節機構(15)を備え、且つ、前記第1及び第2の支柱(16,17)が、前記可動点(12)が前記第2の方向(B)に沿って移動するときにそれぞれのガイド(18,19)に沿ってスライドすることを特徴とする、請求項2に記載のハンガー。
【請求項4】
前記乾式摩擦が、前記ガイド(18,19)に対する前記第1及び第2の支柱(16,17)の並進運動による滑り摩擦であることを特徴とする、請求項3に記載のハンガー。
【請求項5】
前記関節機構(15)がスライダ(20,21)を備え、当該スライダ(20,21)が、前記可動点(12)の移動時の前記弾性組立体(11)の予圧縮の低減と共に減少する摩擦作用を規定するように、前記それぞれのガイド(18,19)から漸進的に係合解除されることを特徴とする、請求項3又は4に記載のハンガー。
【請求項6】
前記ガイド(18,19)が前記関節機構(15)に対して固定されており、且つ、前記予圧縮された弾性組立体(11)が、前記ガイド(18,19)により担持された、前記スライダ(20,21)により圧縮される対向するばね(22,23)を含むことを特徴とする、請求項5に記載のハンガー。
【請求項7】
前記ガイド(18,19)が、前記第1及び第2の支柱(16,17)それぞれに係合する角度を調整可能なブッシュであることを特徴とする、請求項3又は4に記載のハンガー。
【請求項8】
前記予圧縮された弾性組立体(11)が、対向するばね(22,23)を含み、当該対向ばね(22,23)が、前記第1及び第2の支柱(16,17)により担持され且つ角度を調整可能なブッシュにより圧縮され、且つ、記ばね(22,23)の記ガイド(18,19)に対する対向端において前記第1及び第2の支柱(16,17)それぞれがカウンタウェイト(24,25)を含むことを特徴とする、請求項7に記載のハンガー。
【請求項9】
前記負剛性弾性装置(10)を支持するフレーム又はケーシング(30)を備え、且つ、当該フレーム又はケーシング(30)が、前記負剛性弾性装置(10)及び弾性要素(13)を目視検査するために開放されていることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載のハンガー。
【請求項10】
前記ハンガーを前記ブラケット又は前記送電ケーブル(2)に接続するための接続部(31)を備えており、前記接続部(31)、前記可動点(12)、及び前記クランプ(8)が位置合わせされていることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載のハンガー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道の架空電力供給線(送電線)の接触架線のためのハンガーと、当該ハンガーを含む鉄道架空電力供給線とに関する。
【背景技術】
【0002】
ハンガーは、架空送電線の電力供給接触ワイヤ(接触線)を、架けられた状態に保持する。ハンガーは、鉄道の電力供給線の2つの連続したポール又はポータルの間で所定のスパンに沿って送電ケーブルから吊り下げられるか、或いはポールにて、ポール又はポータルに取り付けられたブラケットから直接吊り下げられる。
【0003】
伸ばされた接触ワイヤは線状の導電体であり、この導電体上に電車車両のパンタグラフが載置されて、電車の牽引のための電気組立体に(及び、おそらくは、電車に搭載されているその他の装置にも)電力が供給される。
【0004】
接触ワイヤは所定の断面を有する。この断面は、ケーブルの動作中、パンタグラフと接触する底部凸状輪郭と、ハンガーの接続クランプのための、例えば燕尾状のアンダーカットを有する頂部輪郭とを有する。
【0005】
ハンガーの接続クランプは、好ましくは、銅合金から、さらにより好ましくは、ニッケル及びケイ素も含む合金からつくられて、接触ワイヤの頂部輪郭部に、パンタグラフの通過を妨害しないようにフォームフィッティング(嵌合)連結により取り付けられる。
【0006】
電車の走行中のパンタグラフと接触架線(接触ワイヤ)との分離を最小限にし、また防止し得ることが必要であると考えられる。具体的は、分離の原因の1つは、接触ワイヤが地面に対して動くことである。この動きは、自然の原因(例えば、風)と、電車が通過するときに接触ワイヤに沿って伝播する振動との両方により生じる。また、接触ワイヤは、カウンタウェイトによりピンと張られているが、それでもなお、2つの隣接するハンガー間に、接触ワイヤ自体の重量により生じる矢状物が生じる。
【0007】
詳細には、パンタグラフは、接触ワイヤに接触圧力を加えるように構成されており、当該接触圧力は、特には高速列車上で、接触ワイヤの上方移動(より一般的には、ある程度の大きさの応力)を生じさせる。より詳細には、この動きは局所的であり、パンタグラフと接触ワイヤとの間の接触領域において最大である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、パンタグラフと電力供給接触ワイヤとの分離を、特に高速電車(すなわち走行速度が200km/hを超える電車)に関して、低減し、また防止し得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的は、請求項1に記載のハンガーにより達成される。
【0010】
ここで本発明を、本発明の幾つかの非定的な実施形態を例示する添付図面を参照しつつ説明する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】線路の概略図である。
図2】本発明によるハンガーのクランプの詳細図である。
図3】本発明によるハンガーの第1の実施形態の図である。
図4】本発明によるハンガーの第2の実施形態の図である。
図5】数値シミュレーション後の接触ワイヤとパンタグラフとの接触力を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、電車の架空送電線を定性的に示す。架空線は、複数のポール又はポータル1と、送電ケーブル2と、接触ワイヤ4とを備え、送電ケーブル2は、ポール1により担持されているブラケットに、トラック3より上に架けられるように取り付けられており、接触ワイヤ4は、送電ケーブル2に、複数のハンガー5を介して、電気牽引車のパンタグラフに接触するように接続されている。
【0013】
架空線は、さらに、送電ケーブル2及び接触ワイヤ4の両方を伸ばすためのカウンタウェイト(図示せず)を含み、これは、接触ワイヤ4の、隣り合う2本のハンガー5間の妨害的な矢状物(static arrow)を低減するためにある。この妨害的矢状物は、接触ワイヤ4自体の重量によるものである。
【0014】
接触ワイヤ4は押出成形により得られ、国家規制で定められた断面を有する。これらの規制は、ワイヤの断面が、使用時にトラック3に向って凸状である底部輪郭6と、ハンガー5及び送電ケーブル2の方に向けられた、アンダーカットされた頂部輪郭7とを有することを提示している。接触ワイヤ4を送電ケーブル2に鉛直方向に堅固に固定するために、各ハンガー5がクランプ8を含む。クランプ8は、ボルト又はその他の同等の締結具を用いて締め付けられた後、クランプ8が頂部輪郭7を締め付けることにより、接触ワイヤ4にフォームフィッティング連結により連結される。例えば、イタリアの規格によれば、接触ワイヤ4の断面は、頂部輪郭7において、第1及び第2の78度偏角、V字状で燕尾状のアンダーカットを規定している(図2)。
【0015】
本発明によれば、ハンガー5は、振動エネルギーを蓄積するための負剛性の弾性装置10を含むように改変される。
【0016】
弾性装置10は、予圧縮された弾性組立体11を、方向A(使用時に接触ワイヤ4とほぼ平行)に沿って含み、また、可動点12を有するように構成されている。可動点12は、方向Aを横切る(具体的には、方向Aに垂直な)方向Bに移動し、これにより、幾つの状況において、予圧縮された弾性組立体11の予圧縮を低減する。詳細には、弾性組立体11は、ハンガー5とは別個に考えるならば、予圧縮されて、座屈弾性が安定していない中立状態に保たれる。この中立状態が乱されると、可動点12の移動後、弾性ポテンシャルエネルギーが解放される。
【0017】
これに加えて、弾性装置10は、予圧縮された弾性組立体11に接続された弾性要素13を含む。弾性要素13は、方向Bに沿った作用を可動点12に加え、且つ、中立位置を安定的に画定するためのものである。
【0018】
弾性要素13はクランプ8に、牽引力と圧縮力の両方を弾性要素13とクランプ8との間で伝達するようにスペーサ14により連結されている。
【0019】
弾性組立体11が、可動点12の方向Bに沿った移動により圧縮予荷重の一部を解放すると、負剛性弾性装置10が、摩擦作用(好ましくは、弾性組立体11及び/又は弾性要素13の製造に使用される変形可能な弾性材料の乾式摩擦又はヒステリシス内部摩擦)を発生する。摩擦が乾式摩擦である場合、滑り摩擦を利用できる。
【0020】
この比較的低い摩擦は、予圧縮された弾性組立体11内の弾性ポテンシャルエネルギーの蓄積と組み合わされて、接触ワイヤ4の波状現象(具体的には、パンタグラフの通過により引き起こされる波状現象)に対する全体的な高い消散作用をもたらす。従って、弾性組立体11及び/又は弾性要素13の運動により発生する摩擦は比較的低くされることができ、また、予圧縮された弾性組立体11における弾性エネルギーの蓄積から生じる作用と組み合わせるように予め定義される
【0021】
本発明の好ましい実施形態によれば、予圧縮された弾性組立体11は関節機構15を含み、関節機構15は、可動点12にて相互にヒンジ連結された第1及び第2のアーム又は支柱16,17を有する。可動点12の、方向Bに沿った運動は、関節機構15にスライド可能に連結されたガイド18,19により得られる。一実施形態によれば、摩擦作用は、ガイド18,19と関節機構15との相互作用中に発生する。また、ガイド18,19の位置及び/又は構成が方向Aを画定する。
【0022】
好ましくは、弾性要素13は、接触ワイヤ4及び関連する張力カウンタウェイトの作用の結果として自己位置合わせできるように可動点12にヒンジ連結されている。
【0023】
好ましくは、さらに、予圧縮された弾性組立体11及び/又は弾性要素13が、コイルばねを含む。
【0024】
図3による実施形態において、関節機構15は、第1及び第2のスライダ20,21をさらに含む。これらのスライダは、方向Aに沿ってガイド18,19と協働するように、それぞれ、第1及び第2のアーム16,17にヒンジ連結されている。また、予圧縮された弾性組立体11は、スライダ20,21により圧縮及び解放される第1及び第2のコイルばね22,23を含む。これらのコイルばねは、予圧縮を得るように、互いに対向して方向Aに平行に配置されている。
【0025】
好ましくは、可動点12の移動中に、予圧縮された弾性組立体11の予圧縮の減少と共に可変摩擦が漸進的に低減されるように、スライダ20,21がガイド18,19から漸進的に係合解除される。
【0026】
図3に示されている特定の実施形態によれば、スライダ20,21はスリーブであり、ガイド18,19は、スリーブ20,21に係合されたた固定バーである。さらに、ばね22,23が、バー18,19を取り囲み、且つ、バー18,19により、方向Aに対し平行(具体的には、方向Aと同軸状)を維持するようにガイドされる。方向Aは、バー18,19及びブッシュ20,21の軸に一致する。この実施形態によれば、ばね22,23は、可動点12の移動中に方向Aに対して固定されている。これにより、可動質量が低減され、その結果、いずれの負の慣性寄与も低減される。
【0027】
図4に示されている別の実施形態によれば、アーム16,17は、可動点12の位置とは無関係にガイド18,19に一定の摩擦を生じさせるように係合されている。
【0028】
具体的には、ガイド18,19は、アーム16,17にそれぞれ係合された角度調整可能なブッシュであり、可動点12が方向Bに沿って移動するときにアームの角度移動を可能にする。
【0029】
また、ばね22,23は、好ましくは、それぞれのアーム16,17により支持されており、これらのばねは、圧縮されるために、それぞれ、調整可能なブッシュ18,19に当接している。
【0030】
有利には、各アームが、可動点12の、関連する調整可能ブッシュ18,19対して対向側にカウンタウェイト24,25を有する。これにより、各アーム16,17は、そのばね22,23と共に、可動点12が方向Aに沿って配置されているときに、対応するブッシュ18,19に対して鉛直方向のバランスを維持できる。
【0031】
さらに、カウンタウェイト24,25は、アーム16,17が調整可能ブッシュ18,19から滑り落ちることを防止するような寸法を有する。
【0032】
図4の実施形態においては、ブッシュ18,19の回転中心を結ぶ線が方向Aを画定する。
【0033】
両方の実施形態において、ガイド18,19は、剛性のフレーム又はケーシング30により担持されており、剛性フレーム又はケーシング30は、ポール/ポータル1のブラケットから吊り下がり、又は、隣り合う2つのポール/ポータル間の送電ケーブル2から吊り下がっている。
【0034】
剛性フレーム30は、開放されていることが好ましく、これにより、負剛性弾性装置10の部品の目視検査を可能にする。
【0035】
剛性フレームとブラケット又は送電ケーブル2との接続は、鉛直方向における牽引/圧縮の伝達を可能にしなければならない。
【0036】
有利には、可動点12と、クランプ8と、方向Bに沿ってクランプ8に対向しているハンガー5の接続部31とが位置合わせされている。接続部31は、ブラケット及び/又は送電ケーブル2に固定されている。
【0037】
本発明によるハンガー5は、使用中に静止状態下で、弾性組立体11の圧縮が最大状態(使用中のその他の状態を基準とする)のときに可動点12が方向Aに沿って実質的に位置合わせされるように取り付けられる。
【0038】
電車のパンタグラフが通過するとき、弾性要素13は可動点12に、可動点12の位置を乱すのに十分に大きい、方向Bに沿った外乱を伝達し、その結果、予圧縮された弾性組立体11から弾性エネルギーを解放させる。好ましくは、この外乱は、弾性エネルギーと、そして同時に、可動点12の、送電ケーブル2に向かう移動とを可能にする外乱である。こうすることにより、パンタグラフの到達により負剛性弾性装置10に導入されたエネルギーは、予圧縮された弾性組立体11の予荷重の解放により解放される弾性ポテンシャルエネルギーにより、少なくとも部分的に補償される。これに加えて、クランプ8が可動点12を中立位置に戻すとき、予圧縮された弾性組立体11及び弾性要素13に蓄積されている弾性エネルギーが、接触ワイヤ4の波状現象をさらに減じる。このようにして、パンタグラフとの接触状態が、高速電車の通過の場合であっても改善される。
【0039】
より詳細には、パンタグラフの通過後、接触ワイヤ4は、架空送電線に沿ったカウンタウェイトにより得られる張力の結果として、可動点12を、弾性要素13の作用により中立位置に戻す。
【0040】
図5は、送電ケーブル2、ハンガー5、及び接触ワイヤ4のための有限要素モデルと、パンタグラフに関する集中パラメータモデルとを用いた比較シミュレーションの結果を示す。パンタグラフのシミュレーション速度は350km/hである。
【0041】
図3の図を参照すると、各ばね22,23の剛性は15N/mmであり、弾性要素13の剛性は12N/mmである。
【0042】
詳細には、図5は、本発明によるハンガー5を使用した場合(実線)に、パンタグラフと接触ワイヤ4との接触力がゼロになることが全くないことを示す。これは、本発明によるハンガー5を使用しない場合(破線)と比較して、分離が生じないことを保証する。
【0043】
クランプ8を製造するための好ましい材料は、銅及びその合金、或いは、鋼及びその合金、特には、ステンレス鋼及びその合金である。
図1
図2
図3
図4
図5