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▶ エフ ホフマン−ラ ロッシュ アクチェン ゲゼルシャフトの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-16
(45)【発行日】2022-02-25
(54)【発明の名称】コネクタデバイス
(51)【国際特許分類】
   A61M 39/02 20060101AFI20220217BHJP
   A61M 5/142 20060101ALI20220217BHJP
   A61M 39/26 20060101ALI20220217BHJP
【FI】
A61M39/02 114
A61M5/142 522
A61M39/26
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2019510422
(86)(22)【出願日】2017-08-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-09-05
(86)【国際出願番号】 EP2017070906
(87)【国際公開番号】W WO2018041645
(87)【国際公開日】2018-03-08
【審査請求日】2020-07-17
(31)【優先権主張番号】16186167.9
(32)【優先日】2016-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501205108
【氏名又は名称】エフ ホフマン-ラ ロッシュ アクチェン ゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リスト、ハンス
【審査官】上田 真誠
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0211946(US,A1)
【文献】特開2014-040921(JP,A)
【文献】特公昭56-018834(JP,B1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0105731(US,A1)
【文献】国際公開第2013/153722(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 39/00-39/10
A61M 39/26
F16L 37/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第2コネクタ部分との流体接続を確立して液状薬剤を患者に非経口的に供給するための第1コネクタ部分(110、310、410)であって、前記第1コネクタ部分は、注入部位接合部の一部であり、
前記第1コネクタ部分は、
注入カニューレ(107)と、
バルブチャンバ(116、316、416)、および、円周シールリップ(114、314、414)を有する円形開口部を備えるバルブ受座(112、312、412)を有する、流体接続を確立するためのバルブ(111、311、411)と、
前記バルブチャンバ内に設けられ、前記円形開口部に押し付けられると、前記バルブ受座の前記円形開口部を密閉して閉鎖することが可能であるバルブ部材(113、313、413)と、
前記バルブ部材を前記バルブ受座の前記円形開口部に押し付ける付勢力を前記バルブ部材に加える弾性要素(115、315、415)と、
を備え、
前記バルブ受座は、前記円形開口部の、前記バルブチャンバの反対側に位置する、前記円形開口部の周りの円周壁をさらに含み、
前記円周壁は、前記第2コネクタ部分の対応する接続コーン部を受容するための凹状受容部(118、318、418)を形成し、前記凹状受容部は、凹状円錐台の形状を有し、前記バルブチャンバと反対の方向を向き、前記円形開口部は、前記凹状受容部の中心に位置し、前記接続コーン部は、凸状円錐台の形状を有し、
前記バルブは、前記接続コーン部が前記凹状受容部と当接すると、前記接続コーン部が前記弾性要素の前記付勢力に逆らって前記バルブチャンバの方向に向かって前記バルブ部材に押し付けられることで、前記円形開口部を開放するように構成され、
前記凹状受容部は、弾性材料によって作製され、
前記第1コネクタ部分の前記凹状受容部の前記凹状円錐台は、前記凹状受容部の長手方向軸に対して第1円錐角αをなし、前記第2コネクタ部分の前記接続コーン部の前記凸状円錐台は、前記接続コーン部の長手方向軸に対して第2円錐角βをなし、
前記第1円錐角αは、前記第2円錐角βよりも大きい、第1コネクタ部分。
【請求項2】
前記バルブ受座(112、312、412)は、エラストマー性ポリマーで作製される、請求項1記載の第1コネクタ部分。
【請求項3】
前記バルブ部材は、バルブボール(113、313)である、請求項1または2記載の第1コネクタ部分。
【請求項4】
前記弾性要素は、エラストマー性ポリマー製の弾性構造(115)、または、コイルばね(315、415)である、請求項1~3のいずれか1項に記載の第1コネクタ部分。
【請求項5】
前記バルブチャンバ(116、316、416)に流体的に接続される(117、317、417)注入カニューレ(107)をさらに備える、請求項1~4のいずれか1項に記載の第1コネクタ部分。
【請求項6】
前記注入カニューレ(107)の遠位端に配置されるセプタム(103)をさらに備える、請求項5記載の第1コネクタ部分。
【請求項7】
前記注入カニューレ内に配置され、前記セプタム(103)を貫通し、前記注入カニューレ(107)を一時的に補剛するための穿刺針(109)をさらに備える、請求項6記載の第1コネクタ部分。
【請求項8】
前記バルブ受座(112)および前記セプタム(103)は、単一部品である、請求項6または7記載の第1コネクタ部分。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の第1コネクタ部分との流体接続を確立するための第2コネクタ部分(150、250)であって、
第1コネクタ部分の対応する凹状受容部に受容されるための凸状円錐台の形状を有する接続コーン部(151、251)と、
前記バルブ部材を前記弾性要素の前記付勢力に逆らって押し付けることによって、第1コネクタ部分のバルブ部材を作動させるための、前記接続コーン部の先端にある凹部(153、253、253d、253e、253f)と、
流体供給管路(152)と、
を備え、
前記流体供給管路は、少なくとも部分的に、前記接続コーン部(151、251)の外郭面に向かって開口する、1つまたは複数の出口(154、254、254d、258、258e、258f)を有する、
第2コネクタ部分。
【請求項10】
前記凹部(153、253、253d、253e、253f)の表面は、逆円錐の形状または球状凹部の形状を有する、請求項9記載の第2コネクタ部分。
【請求項11】
前記流体供給管路(152)は、前記凹部(153、253)上に位置する出口(158、258)、および前記出口から前記凹部を横切って、前記接続コーン部(151、251)の前記外郭面にまで延びる、1つまたは複数のノッチ(154、254)を有する、請求項9または10記載の第2コネクタ部分。
【請求項12】
前記凹部(153、253、253d)の表面は、2つまたはそれ以上の分離した領域を備える、請求項9~11のいずれか1項に記載の第2コネクタ部分。
【請求項13】
請求項1~8のいずれか1項に記載の第1コネクタ部分、および、請求項9~12のいずれか1項に記載の第2コネクタ部分を備えるコネクタデバイス(170)。
【請求項14】
所定の力で前記第1コネクタ部分と前記第2コネクタ部分とを押し合わせる手段をさらに備える、請求項13記載のコネクタデバイス。
【請求項15】
前記第1コネクタ部分および前記第2コネクタ部分を互いに対して、整列および/または方向決めする手段、および/または、前記第1コネクタ部分および前記第2コネクタ部分を、所定の定められた位置にて、互いに対し着脱可能に固定する手段をさらに備える、請求項13または14記載のコネクタデバイス。
【請求項16】
前記第1円錐角αと前記第2円錐角βとの差異は、20°よりも小さいか、または20°に等しい、請求項13~15のいずれか1項に記載のコネクタデバイス。
【請求項17】
前記第1円錐角αと前記第2円錐角βとの差異は、15°よりも小さいか、または15°に等しい、請求項16記載のコネクタデバイス。
【請求項18】
前記第1円錐角αと前記第2円錐角βとの差異は、5°と15°との間である、請求項16記載のコネクタデバイス。
【請求項19】
請求項9~12のいずれか1項に記載の第2コネクタ部分、または、請求項1~8のいずれか1項に記載の第1コネクタ部分を備える、携帯型注入ポンプユニット(160)。
【請求項20】
請求項1~8のいずれか1項に記載の第1コネクタ部分、または、請求項9~12のいずれか1項に記載の第2コネクタ部分を備える、注入部位接合部(161)。
【請求項21】
請求項1~8のいずれか1項に記載の第1コネクタ部分、または、請求項9~12のいずれか1項に記載の第2コネクタ部分を備える、携帯型注入ポンプと共に使用するための、注入管。
【請求項22】
請求項13~18のいずれか1項に記載のコネクタデバイスを備える、携帯型注入ポンプシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯型注入ポンプシステムの別々のユニットを流体的に接続するためのコネクタデバイス、および独立請求項のプリアンブルに記載のそのようなコネクタデバイスのコネクタ部分に関する。
【背景技術】
【0002】
注入ポンプは、患者に、長期に亘って液状薬剤を非経口的に供給するために使用される。今日では、患者の体上で持ち運びすることができる、非常に小さい寸法の注入ポンプが利用可能である。そのような小型の携帯型注入ポンプは、カニューレを通して患者の組織内に運搬される、糖尿病の治療のためのインスリン、または疼痛治療のための鎮痛剤など、効果の高い液状薬剤の少用量での計量に特に有用である。糖尿病治療は、たとえば、ナノリットルの範囲内の少用量を繰り返し計量することを含む。
【0003】
あるアプローチでは、身に着けて持ち運びされる、たとえばベルトに付着される注入ポンプは、柔軟な管により、患者の体に付着される、挿入ヘッドとも呼称される注入部位接合部に流体的に接続される。注入部位接合部は、体組織内に挿入されるカニューレを有するカニューレユニット、カニューレが取り付けられるハウジング、およびカニューレを上流の注入ポンプに接続された柔軟な管に流体的に接続するコネクタ手段を備える。管は、注入部位接合部と繰り返し接続および切断され得る。コネクタ手段は、たとえば、カニューレおよびハウジングの流体システムを密閉して閉鎖するセプタムを備えてもよい。セプタムは、流体接続を可逆的に確立するために、中空のコネクタ針により貫通され得る。カニューレは、注入針に類似した、それ自体で体組織内へと挿入されるために十分に硬質である先端を有する、剛性または半剛性カニューレとして実現され得る。代替的に、カニューレは、柔軟な材料で作製されてもよい。そのような柔軟なカニューレは、使用中、より快適である。柔軟なカニューレは、組織内に直接挿入することができないため、追加の穿刺装置が、たとえば金属製の剛性を有する穿刺針の形態で柔軟なカニューレ内部に配置される。穿刺装置の先端は、カニューレの近位端部から突出し、カニューレは、間質液に向かって開口される。穿刺装置および固定されたカニューレを体組織内に挿入した後、穿刺装置がカニューレから取り外される。カニューレは、このとき柔軟性を有し、体組織内に留まる。概して、穿刺針は、セプタムを貫通するように配置され、セプタムは、穿刺針を引き抜いた後、この時点で開口しているカニューレの流路の遠位端部を密閉して閉鎖する。そのような注入部位接合部および挿入ヘッド例が、その開示内容の全てが参照により本明細書に組み込まれる、特許文献1、特許文献2、および特許文献3に示されている。
【0004】
別のアプローチでは、注入ポンプ装置は、注入部位接合部(いわゆるパッチポンプ)と直接、流体的に接続される。そのような実施形態の例が、その開示内容の全てが参照により本明細書に組み込まれる、特許文献4に示されている。注入部位接合部は、患者の体表面に接着接続されるベースプレートを備え得る。次に、注入ポンプユニットが、適切なロック機構を用いてベースプレートに取り付けられる。注入ポンプとカニューレとの間の流体接続がポンプの中空のコネクタ針により確立され、カニューレの遠位端部の流路を密閉して閉鎖するカニューレユニットのセプタムを可逆的に貫通する。有利には、ポンプは、注入部位接合部と繰り返し接続および切断され得る。たとえば、ポンプユニットは、同じ注入部位接合部を使用して、別のポンプユニットに交換され得る、または患者の体の別の位置に取り付けられた追加の注入部位接合部を用いて、同じポンプユニットが、使用され得る。
【0005】
図1は、先行技術により知られる注入部位接合部のカニューレユニットを概略的に示す。カニューレユニットは、適切な熱可塑性ポリマー材料製のハウジングボディ2を備える。注入部位接合部では、ハウジングボディは、接合部の残り、たとえばベースプレート(図示されず)上に適切に取り付けられる。
【0006】
ハウジングボディ2には、ボディの両端部を接続する、ボディの長手方向軸に沿った通路が設けられる。一方の端部には、貫通可能なセプタム3が、対応するセプタム受座3a内に配置され、それによって通路のこの端部が密閉して閉鎖される。反対の端部には、注入カニューレ7の遠位端部がハウジングボディ2内に埋め込まれる。セプタム3とカニューレ7との間の通路が、円錐状の流体チャンバ4および流体管路5を画定する。注入ポンプの、または注入ポンプに接続される注入管の中空のコネクタ針6がセプタム3を貫通する。動作中、破線の矢印で示すように、液状薬剤がその中を通って運搬される針管路6a、流体チャンバ4、流体管路5、およびカニューレ管路7aにより、注入ポンプ(図示されず)と注入カニューレの近位端部(図示されず)との間に流路が確立される。
【0007】
そのようなカニューレユニットは、患者の組織内へカニューレを挿入するために、先端がカニューレの遠位端部から突出し、遠位端部がセプタム3を貫通した状態で、穿刺針はカニューレ内に配置され得るため、特に、柔軟なカニューレの組み合わせで有用である。挿入後、穿刺針はカニューレから引き抜かれる。次に、セプタムが流体チャンバを環境から、密閉して分離させ、それによってカニューレユニットの内容積を無菌に保ちながら、流路は患者の組織に流体的に接続される。セプタムは、この時点で、図1に示す中空のコネクタ針6を用いてセプタムを貫通することによって、注入ポンプとの流体接続を確立するために使用され得る。
【0008】
代替の実施形態では、別のセプタムが、穿刺針を引き抜いた後に流路を密閉するため、および注入部位接合部を注入ポンプに接続するために使用されてもよい。専用のコネクタセプタムが、コネクタ針がカニューレにより画定される長手方向軸に対し直角のコネクタセプタムを貫通するように、たとえば、ボディの側壁に配置されてもよい。類似の注入部位接合部は、特許文献3の図1Dに示されている。そのような変形例が、穿刺針の必要性なしに剛性注入カニューレと組み合わされる場合、穿刺針のためのセプタムが省かれ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】国際公開第02/07804号
【文献】米国特許出願公開第2008/0288144号明細書
【文献】米国特許出願公開第2012/296290号明細書
【文献】国際公開第2007/056504号
【発明の概要】
【0010】
既に説明した先行技術のカニューレユニットでは、コネクタ針6の先端6bが、ボディ2の内容積壁内に誤って食い込み、それによってポリマー材料の削りくずが発生し、それらは、ともに容認できないことである、カニューレ通路を閉塞させ得ること、または患者の組織内へと運搬され得ることを防止するために、流体管路5およびその後に続くカニューレ管路7aよりも大きい直径の流体チャンバ4が必要とされる。さらに、針6とボディ3の内壁との衝突により、コネクタ針が歪む可能性があり、それによって、セプタム3からの漏洩が引き起こされ得る。
【0011】
図1に示す円錐状の流体チャンバ4は、コネクタ針の移動の適切な案内と組み合わされて、上記の問題を解決し得るが、必然的に、利用不可能となる、液体を通過させて運搬されない相当な容積を含む。数マイクロリットルの空気が、そのようなデッドボリューム8内に閉じ込められる。液体と比較すると気体は非常に弾性であるため、注入ポンプの流体システム内の大きな容積は、ナノリットルの範囲内の用量の繰り返しの計量の精密性に悪影響を及ぼす。さらに、空気の容積が大きくなると、閉じ込められた空気は、システム圧力が特定の警報閾を超えて上昇する前にかなり圧縮されるため、閉塞の適時の検出が妨げられる可能性がある。さらに、温度の変化もまた、閉じ込められた気体の容積の大きな変化をもたらし、それにより、望ましくない、液状薬剤の投薬またはカニューレ内への体液の吸い戻しが引き起こされる可能性があり、それらはともに、計量の誤りの原因となり得る。
【0012】
したがって、注入ポンプへの流体接続を確立するためにセプタムを適用する注入部位接合部により、注入ポンプは実際にははるかに精密であるが、必然的に、計量の精密性が、ある特定の限度に制限される。
【0013】
貫通可能なセプタムおよび中空の針を2つの流体システムを結合させるために使用することのさらなる不利な点は、実行され得る結合/分離ステップの回数が制限されるということである。中空の結合針がセプタムを貫通する度に、弾性のセプタム材料からなるポリマーマトリクスが切断される。しばらくしてから、セプタムの弾性材料は、針が作り出した穴を適切に閉鎖することが出来なくなる程度に損傷する可能性がある。セプタムから漏れ始める。さらに、多すぎる貫通ステップの後、中空の針は、セプタム材料から小片を切り抜く可能性があり、小片は閉塞を引き起こし得る、または患者の組織内に運搬され得る。
【0014】
注入部位接合部を注入ポンプと、または、注入ポンプに接続された柔軟な管と着脱可能に接続するためのコネクタの分野において、改善の必要性が継続して存在する。
【0015】
本発明の全体的な目的は、1つまたは複数の上記の問題、および他の問題を克服する、携帯型注入ポンプシステムの構成要素を接続するための、有利なコネクタデバイスを提供することである。本発明の別の目的は、そのようなコネクタデバイスのための、有利なコネクタ部分を提供することである。
【0016】
そのようなコネクタデバイスは、閉じ込められた空気の容積が減少されるべきである。可能であれば、全体のデッドボリュームも減少されるべきである。さらに、コネクタデバイスは、機能性を低下させずに、特に、漏洩または他の機能上の欠陥の危険性なく、何度も繰り返し、確実に接続を確立し、接続解除することが可能であるべきである。
【0017】
そのようなコネクタデバイスおよびコネクタ部分は、確実かつ、大規模生産においてコストの効率が良くあるべきである。
【0018】
本発明のさらなる目的は、携帯型注入ポンプ装置、およびそのようなコネクタデバイスおよび/またはコネクタ部分を備える携帯型注入ポンプ装置の構成要素を提供することである。
【0019】
これらの、および他の目的は、独立請求項の特徴により実質的に達成される。さらに、追加の有利な実施形態が、従属請求項および本明細書に従う。
【0020】
本発明は、添付の請求項に詳述される1つまたは複数の特徴、および/または以下の、1つまたは複数の特徴またはそれらの組み合わせを含んでもよい。
【0021】
本発明による第2コネクタ部分との流体接続を確立するための本発明による第1コネクタ部分は、以下においてより詳細に説明するように、バルブ受座、バルブ部材、および弾性要素を有するバルブを備える。バルブ受座は、バルブチャンバ、および円周シールリップを有する円形開口部を備える。バルブ部材は、バルブチャンバ内に設けられ、円形開口部に押し付けられると、バルブ受座の円形開口部を密閉して閉鎖することが可能である。弾性要素は、バルブ部材を、バルブ部材にバルブ受座の円形開口部に押し付ける付勢力を加える。バルブ部材は、円形開口部の、バルブチャンバの反対側に位置する、円形開口部の周りの円周壁をさらに備える。円周壁は、第2コネクタ部分の対応する接続コーン部を受容するための凹状受容部を形成し、凹状受容部は、円錐台の形状を有し、バルブチャンバと反対の方向を向き、円形開口部は、凹状受容部の中心に位置する。
【0022】
有利には、バルブ受座はエラストマー性ポリマーで作製される。
【0023】
そのような本発明による第1コネクタ部分の有利な実施形態では、バルブ部材はバルブボールである。
【0024】
有利には、第1コネクタ部分において、弾性要素は、エラストマー性ポリマー製の弾性構造、またはコイルばねである。
【0025】
本発明による第1コネクタ部分は、有利に、バルブチャンバに流体的に接続される注入カニューレをさらに備える。そのような実施形態では、第1コネクタ部分が注入カニューレの遠位端に配置されるセプタムをさらに備える場合、特に有利である。さらに有利には、そのような第1コネクタ部分は、注入カニューレ内に配置され、セプタムを貫通し、注入カニューレを一時的に補剛するための穿刺針をさらに備える。有利には、バルブ受座およびセプタムは、単一部品である。
【0026】
本発明による第1コネクタ部分との流体接続を確立するための本発明による第2コネクタ部分は、上にさらに説明したように、第1コネクタ部分の対応する凹状受容部に受容されるための直円錐台と、第1コネクタ部分のバルブ部材を作動させるための、円錐台の先端にある凹部と、流体供給管路と、を備える。流体供給管路は、少なくとも部分的に、コーン部の外郭面に向かって開口する、1つまたは複数の出口を有する。
【0027】
本発明による第2コネクタ部分の有利な実施形態では、凹部の表面は、逆円錐の形状を有する、または中空球状の部分を形成する。
【0028】
代替的、または追加的に、流体供給管路は、凹部上に位置する出口、および出口から凹部を横切って、コーン部の外郭面にまで延びる、1つまたは複数のノッチを有する。
【0029】
本発明による第2コネクタ部分のさらに有利な実施形態では、凹部の表面は、2つまたはそれ以上の分離した領域を備える。
【0030】
本発明によるコネクタデバイスは、本発明による第1コネクタ部分および本発明による第2コネクタ部分を備える。
【0031】
有利には、本発明によるコネクタデバイスは、所定の力で第1コネクタ部分と第2コネクタ部分とを押し合わせる手段をさらに備える。
【0032】
代替的に、または追加的に、本発明によるコネクタデバイスの有利な実施形態は、第1コネクタ部分および第2コネクタ部分を互いに対して、整列および/または方向決めする手段をさらに備える。
【0033】
代替的に、または追加的に、本発明によるコネクタデバイスの有利な実施形態は、第1コネクタ部分および第2コネクタ部分を、所定の定められた位置にて、互いに対し着脱可能に固定する手段をさらに備える。
【0034】
本発明による、そのようなコネクタデバイスの有利な実施形態では、第1コネクタ部分の凹状受容部の円錐台が、コーン部の長手方向軸に対し第1円錐角αをなし、第2コネクタ部分の直円錐台が、コーン部の長手方向軸に対し第2円錐角βをなし、第1円錐角αは、第2円錐角βより大きいか等しく、第1円錐角αと第2円錐角βとの差異は、約20°よりも小さいか等しく、有利には約15°よりも小さいか等しく、さらに有利には、約5°と約15°との間である。
【0035】
本発明による携帯型注入ポンプユニットは、本発明による第2コネクタ部分、または本発明による第1コネクタ部分を備える。
【0036】
本発明による注入部位接合部は、本発明による第1コネクタ部分、または本発明による第2コネクタ部分を備える。
【0037】
そして、本発明による第2コネクタ部分を備える携帯型注入ポンプユニットは、本発明による第1コネクタ部分を備える注入部位接合部と結合され得る。本発明による第1コネクタ部分を備える携帯型注入ポンプユニットは、本発明による第2コネクタ部分を備える注入部位接合部と結合され得る。
【0038】
本発明による、携帯型注入ポンプと共に使用するための注入管は、本発明による第1コネクタ部分、および/または本発明による第2コネクタ部分を備える。
【0039】
そして、前述の本発明による注入管は、本発明による注入部位接合部、および/または本発明による携帯型注入ポンプユニットと結合され得る。
【0040】
本発明による携帯型注入ポンプシステムは、本発明によるコネクタデバイスを備える。
【0041】
本発明によるアダプタは、中空のコネクタ針と、中空の移送針に流体的に接続される流体移送管路と、本発明による第1コネクタ部分または本発明による第2コネクタ部分と、を備え、流体移送管路は、コネクタ部分または第2コネクタ部分の流体システムに流体的に接続される。
【0042】
コネクタセプタム、コネクタセプタムにより密閉して閉鎖される流体チャンバ、流体チャンバに流体的に接続される流体移送管路、および本発明による第1コネクタ部分または本発明による第2コネクタ部分を備え、流体移送管路は、第1コネクタ部分または第2コネクタ部分の流体システムに流体的に接続される。
【0043】
本発明による上記のアダプタにより、携帯型注入ポンプユニット、注入部位接合部、および中空のコネクタ針のような先行技術のコネクタ部分が備え付けられた注入管、および/または前述の中空のコネクタ針により貫通されて、携帯型注入ポンプユニットと動作的に相互接続されるセプタム、注入部位接合部、または本発明による第1コネクタ部分および/または本発明による第2コネクタ部分が備え付けられる注入管などの要素と装置とを接続することが可能になる。
【0044】
次に、本発明のより完全な理解を用意にするために、添付の図面を参照する。これらの図面は、本発明を制限すると解釈されるべきではないが、例示目的のみであると意図される。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】上でさらに説明された先行技術によるカニューレユニットの縦断面を概略的に示す。
図2(a)】コネクタデバイスの雌型コネクタ部分を有し、バルブが閉鎖されている、本開示によるコネクタデバイスの実施形態の縦断面を概略的に示す。
図2(b)】接続ステップ中に、コネクタデバイスの雄型コネクタ部分が雌型コネクタ部分に接近している、本開示によるコネクタデバイスの実施形態の縦断面を概略的に示す。
図2(c)】2つのコネクタ部分が接続された状態であり、バルブが開放している、本開示によるコネクタデバイスの実施形態の縦断面を概略的に示す。
図2(d)】注入ポンプによりコネクタデバイス内を運搬される液状薬剤の流路が矢印で示されている。
図2(e)】雌型コネクタ部分の斜視図である。
図3(a)】非結合状態の、注入ポンプユニット、注入部位接合部、および注入ポンプユニットの流体システムを注入部位接合部のカニューレに接続させるための図2のコネクタデバイスを備える本開示によるパッチポンプシステムを、斜視図および部分断面図で概略的に示す。
図3(b)】結合状態の、注入ポンプユニット、注入部位接合部、および注入ポンプユニットの流体システムを注入部位接合部のカニューレに接続させるための図2のコネクタデバイスを備える本開示によるパッチポンプシステムを、斜視図および部分断面図で概略的に示す。
図4(a)】補剛された注入カニューレを体組織に挿入した後、注入部位接合部が体表面上に取り付けられた、図3のパッチポンプシステムを斜視図で概略的に示す。
図4(b)】穿刺針の取り外し後、この時点で注入部位接合部が動作状態である、図3のパッチポンプシステムを斜視図で概略的に示す。
図4(c)】注入ポンプユニットを部分下面図で示す。
図4(d)】注入ポンプユニットが注入部位接合部に結合される直前の、図3のパッチポンプシステムを斜視図で概略的に示す。
図5(a)】図2の実施形態に類似であるノッチの配置および流体供給管路を有する、本開示によるコネクタデバイスの雌型コネクタ部分の異なる有利な実施形態を下面図で概略的に示す。
図5(b)】代替的なノッチの配置および流体供給管路を有する、本開示によるコネクタデバイスの雌型コネクタ部分の異なる有利な実施形態を下面図で概略的に示す。
図5(c)】代替的なノッチの配置および流体供給管路を有する、本開示によるコネクタデバイスの雌型コネクタ部分の異なる有利な実施形態を下面図で概略的に示す。
図5(d)】代替的なノッチの配置および流体供給管路を有する、本開示によるコネクタデバイスの雌型コネクタ部分の異なる有利な実施形態を下面図で概略的に示す。
図5(e)】代替的なノッチの配置および流体供給管路を有する、本開示によるコネクタデバイスの雌型コネクタ部分の異なる有利な実施形態を下面図で概略的に示す。
図5(f)】代替的なノッチの配置および流体供給管路を有する、本開示によるコネクタデバイスの雌型コネクタ部分の異なる有利な実施形態を下面図で概略的に示す。
図6(a)】本開示によるコネクタデバイスの雄型コネクタ部分の追加の有利な実施形態の縦断面を概略的に示す。
図6(b)】本開示によるコネクタデバイスの雄型コネクタ部分の追加の有利な実施形態の縦断面を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本明細書において提供される例は、本発明の説明を向上させるものとしての役割を果たすが、本発明を本明細書にて開示する特徴に限定することには適さない。同一の、または少なくともその機能に関して同一である構成要素は、以下において、同一または少なくとも類似の参照番号たとえば2、102、302、402で指定される。
【0047】
本発明によるコネクタデバイスの有利な実施形態を、図2(a)~(e)に開示する。コネクタデバイスは、雌型の第1コネクタ部分110および雄型の第2コネクタ部分150を備える。非接続状態では、切り離された雌型コネクタ部分110の流体システムは、環境に対し密閉される。2つのコネクタ部分が整列され、ある一定の力で互いに対し押し当てられると、流体システムが環境に対し密閉されたままで、それぞれの流体システム間で流体接続が確立される。
【0048】
図2(a)に、穿刺針109の取り外し前のコネクタデバイス170の雌型の第1コネクタ部分110を単体で示す。第1コネクタ部分110は、示されている例では、注入部位接合部のベースプレート101から突出している、ハウジングボディ102を備える。ハウジングボディ102は、垂直壁119により区画され、以下においてより詳細に説明するように、第2コネクタ部分150との適切な整列を保証するために、回転対称でない外形を有する(図示せず)。
【0049】
ハウジングボディ102内には、柔軟な注入カニューレ107が、遠位端である第1端部がボディに固定されて、取り付けられる。中間部分および近位端である第2端部は、第1コネクタ部分110の反対側となる、ベースプレート101の底面から突出する。カニューレチャンバ104が、カニューレ107の内側管路の上流に、カニューレ107の遠位端とセプタム103との間の容積により画定される。穿刺針109は、先端(図示されず)がカニューレの近位端から突出した状態で、カニューレ107内部に配置される。穿刺針109は、注入カニューレから穿刺針を取り外した後に流体システムを密閉するために、セプタム103を貫通する。穿刺針109が柔軟なカニューレ107内に挿入された状態で、カニューレおよび針が、患者の組織内に挿入され得る。
【0050】
実際のコネクタ部分110は、凹状接続コーン部118およびバルブ111を備える。接続コーン部118は、対応する、第2コネクタ部分150の接続コーン部151に押し当てられるように挿入され、それによって密閉接続が確立される。第2コネクタ部分との接続が確立されない限り、コネクタバルブ111は、第1コネクタ部分の流体システムを環境に対し密閉して閉鎖する。バルブ111は、円周シールリップ114を備えるバルブ受座112およびボール形状のバルブ部材113を備える。ボール部材は弾性要素115に取り付けられ、弾性要素115は、ある一定の付勢力でバルブ部材ボール113を円周シールリップ114に押し付け、それによって、バルブが密閉して閉鎖される。バルブ受座112、バルブ部材113および弾性要素115が、バルブの内部容積、バルブチャンバ116を画定する。狭い移送管路117が、カニューレ107の内側管路の上流で、バルブチャンバ116をカニューレチャンバ104と接続させる。示されている実施形態は、たとえば図1に示す先行技術のカニューレユニットと比較して極めて小さいデッドボリュームを有する。コネクタ針による損傷を防ぐために、大容量のカニューレチャンバを必要としない。さらに、気泡が蓄積しないように、および閉じ込められる空気が最小となるように、完全な流体システムが、本質的に液状薬剤の流路内に存在する。
【0051】
ハウジングボディ102およびベースプレート101は、適切な剛性を有するポリマー材料、たとえばポリプロピレンのような熱可塑性ポリマーで作製されてもよい。バルブ受座112および接続コーン部118、ならびにセプタム103は、単一の要素として実現され、適切なエラストマー性ポリマー材料、たとえばゴム、シリコンエラストマー、熱可塑性エラストマー、などで作製される。球形バルブ部材113は、剛性を有する、硬質材料、たとえば硬質の、非弾性ポリマー、スチール、ガラス、セラミックなどで作製され、有利には滑らかな表面を有する。弾性要素115は、バルブ受座112、接続コーン部118、およびセプタム103に対し上で説明したものと類似の、適切なエラストマー性ポリマー材料で作製される。弾性材料は、シールリップ114に対する、バルブ部材113の必要な付勢力を提供することが可能であるべきである。液状薬剤または体組織と接触するすべての材料は、その目的に対し受容可能でなければならない。当業者は、様々な要素の意図される機能に対し、どの材料が適切であるか知っている。
【0052】
第1コネクタ部分110を製造するために、様々な要素102、112/118/103、115、107、109が、特定の製造方法に応じて、異なる順番で組み立てられてもよい。1つの可能性のあるアプローチでは、たとえば、カニューレ107にねじ締めされた穿刺針109が提供され、ハウジングボディおよびベースプレートの製造中に、適切な射出成型工具を使用して、ハウジングボディ102およびベースプレート101のポリマーマトリクスに部分的に組み込まれる。弾性要素115は、ベースプレートに取り付けられる、または二成分射出成型技術を用いて、ハウジングボディ/ベースプレートとともに製造される。そして、バルブボール113が弾性要素115上に設置される。バルブ受座、接続コーン部およびセプタムを含む単一の構成要素が、射出成型によって製造され、最終的に、ハウジングボディ102内の空洞の形状の、対応するシート125に挿入される。この挿入ステップ中、穿刺針の遠位端が、有利にセプタムを貫通し、図2(a)に示すコネクタ部分に達する。さらなるステップにおいて、穿刺針の遠位端は、針の取り外しを容易にするための取っ手が備え付けられる。
【0053】
非接続状態のコネクタデバイス170の雄型の第2コネクタ部分150が、図2(b)および(e)、そして図5(a)においてみることができる。接続コーン部151が、垂直壁155を有する空洞157の底部に配置される。球形の凹部153が、コーン部151の中心に位置する。球形凹部153の半径は、以下においてより詳細に説明するように、バルブが開口したときに、バルブ部材ボールを整列させたままに維持するという目的を有するため、バルブ部材113の半径と略同一である。凹部の中心にて、流体供給管路152が外部に向かって開口する。流体供給管路152は、注入ポンプの下流で流体システムに、または注入管に接続される、流体管路出口158から径方向に延在する2つのノッチ154が設けられる。ノッチ154の深さは、球形凹部153の周りのコーン部表面の中央領域内へと延びるが、確立のために第1コネクタ部分の逆コーン部118の表面と接触するコーン部表面の外側領域内には延びないように選択される。図5(a)では、これら2つの領域は、コーン部表面の内側領域および外側領域を画定する破線の円により、概略的に見えるようにされる。
【0054】
第2コネクタ部分150は、好ましくは、剛性を有する、硬質ポリマー材料、たとえば適切な熱可塑性ポリマーで作製される。金属、ガラス、またはセラミック材料のような他の硬質材料も、また、より高価かつ製造がより困難であるが、可能である。
【0055】
コネクタデバイスは、有利に、2つのコネクタ部分の適切な向きおよび整列を保証する主要案内構造を備える。示される実施形態では、そのような主要案内構造は、相互に作用する案内要素119、155の形状で設けられる。第1コネクタ部分110の案内要素119は、ベースプレート101から直角に延びるハウジングボディ102の外壁119として実現される。第2コネクタ部分150の案内要素155は、空洞の底部から直角に延びる、空洞157の内壁155として実現され、底部には、コネクタ構成要素が配置される(図2(e)参照)。2つの案内壁119、155は、接続過程中に、2つのコネクタ部分110、150の適切な向きがもたらされるように形状決めされる。換言すると、2つのコネクタ部分は、1つの正しい向きでのみ組み立てられ得る。示される例では、空洞157の非回転対称の卵型の壁155およびハウジングボディ102の外壁119により、2つのコネクタ部分110、150の一特定の回転配置において、結合軸161に適切に整列される2つのコネクタ部分110、150とのみ結合が可能になる。
【0056】
開示されるコネクタデバイス170の2つのコネクタ部分110、150の接続が確立される直前の、接続過程中の状況を図2(b)に示す。注入カニューレが、患者の体組織191内に挿入されており、注入部位接合部のベースプレート101が、体表面に付着されている。穿刺針が取り除かれている。2つのコネクタ部分110、150が軸171に沿って適切に整列され、互いに対し正確に方向付けられている。外側案内壁119が、内側案内壁155を備える、対応する空洞157に挿入されている。矢印で表される、2つのコネクタ部分110、150の接続移動の間、案内壁119、155は、結合軸171に沿って、互いに対してスライドする。
【0057】
図2(c)は、2つのコネクタ部分110、150間の接続が確立された状態のコネクタデバイス170を示す。接続コーン部151が、ある一定の力で凹状接続コーン部118内へと押し付けられる。凹状接続コーン部118は、エラストマー性ポリマー材料で作製されるため、接続コーン部155が硬質の、非弾性材料で作製される一方で、弾性の、弾力性を有するコーン部118は、2つのコーン部が接触する領域内で変形し、それによって、第1コネクタ部分と第2コネクタ部分と間に、確実な、流体的に密閉された接続が確立される。
【0058】
有利には、接続コーン部155の、その長手方向軸に対する傾斜角は、その逆コーン部118の対応する傾斜角よりもわずかに大きくなるように選択され、その結果、2つのコーン部の間の円周状の接触領域が、中心軸171から径方向外側に延び、中心軸に接近して接触圧力が最も高くなる。そのような実施形態により、流体システム内へと押し付けられて、接触している2つのコーン部の表面の間に空気が存在することが防止される。空気は、環境に向かって外側に安全に押し出される。
【0059】
結合過程の間、2つの接続コーン部118、151が触れ始める直前に、球形凹部153が、ボールバルブ部材113上に接触する。コーン部151の、残りの前進移動の間、コーン部が互いに当接し始め、コーン部118が、接触領域内でわずかに圧縮され、その間に、バルブ部材113は、弾性要素115の付勢力(破線矢印で示す)に逆らって、ベースプレートへと向けて押し下げられる。結果として、バルブ部材ボール113は、シールリップ114に当接しなくなり、コネクタバルブ111が開口する。したがって、コネクタデバイスの開示される実施形態において、第2コネクタデバイス150の接続コーン部151は、第1コネクタデバイス110のバルブ111のバルブ部材113のためのアクチュエータとして機能する。コーン部118は弾力性を有するが、コーン部151/球形凹部153およびバルブ部材113の両方が、硬質の非弾性材料からなるため、コーン部151によるバルブ部材113の移動は正確である。
【0060】
既に説明したコネクタデバイスの2つのコネクタ部分、特にそれらの接続コーン部151および118のそれぞれは、適切に接続され、動作的であるために、ある特定の、互いに対し定められる位置へと運ばれ、保持される必要がある。この位置で、2つのコーン部の間の密閉式の緊密な接続が達成され、弾性要素の閉口しようとする付勢力に逆らってバルブボールをその開口位置に保持することによって、バルブは開口を維持される。2つのコネクタ部分の正確な位置決めは、2つのコネクタ部分を正確に整列し、互いに対してある一定の距離を保つ、適切な案内および係止手段により達成され得る。そのような案内係止手段は、コネクタデバイスに直接設けられてもよく、またはより高次のシステムに、たとえばパッチ注入ポンプを注入部位接合部に係止するための手段によって設けられてもよい。対応する技術、たとえば着脱可能なクランプ機構、バヨネットカップリングなどが、当業者に周知である。
【0061】
この時点で、液状薬剤は、図2(d)に概略的に矢印で示すように、下流に、注入ポンプから注入カニューレ内へと、患者の体組織191へと向かって運搬され得る。液体は、流体供給管路152を通って管路の出口158へと向かって下流へと流動する。出口158はバルブボール113によって遮断されるため、流体は、2つのノッチ154によってもたらされる、球形凹部153とバルブ部材113の間2つの管路を通り、この時点でアクセス可能であるバルブチャンバ115内へと流動する。バルブチャンバ115内では、液体は、バルブ受座112とバルブ部材113との間を下方向に、そして弾性要素115の周りを、移送管路117を通ってカニューレチャンバ104内へと流動する。カニューレチャンバから、液体は、最後に、カニューレ管路107aを通って、カニューレの近位端へと向かい、患者の組織191内へと流動する。
【0062】
2つのコネクタ部分110、150の間の接続を解除するためには、接続過程が反転される。第2コネクタ部分150が、第1コネクタ部分から離れるように上方向に移動させられると、バルブ部材ボール113も、弾性要素115の付勢力により駆動されて、バルブ受座112のシールリップ114に達するまで上方向に移動する。この時点で、バルブ111は再度、密閉して閉鎖され、流体システムを環境から保護する。バルブ部材の閉鎖移動の間、圧縮された弾性コーン部118は拡張するが、そのコーン部表面をコーン部151のコーン部表面に当接させたままにする。第2部分150のさらなる上方向の移動により、2つのコーン部は分離される。2つのコネクタ部分の係合が解除される。
【0063】
コネクタデバイスの示されている実施形態は、既知のセプタム/針式のコネクタデバイスの有利な代替として使用されてもよく、注入管コネクタに接続されるように、および注入パッチポンプユニットに直接結合されるように意図される注入部位接合部に適用されてもよい。図3および4は、図2のコネクタデバイスを使用する、そのようなパッチポンプシステムを示す。
【0064】
パッチポンプシステムは、注入ポンプユニット160および対応する注入部位接合部161を備える。注入部位接合部161は、その平坦な底面で患者の体表面、たとえば上腕、太もも、または腹部の領域に付着可能であるベースプレート101を備える。たとえば、ベースプレートの底面に設けられる接着層を使用する適切な付着方法が、先行技術により知られている。注入部位接合部は、図2に開示するもののような第1コネクタ部分110、カニューレ107、および穿刺針109(図3には図示されず)をさらに備える。注入ポンプユニット160は、図2に開示するものと類所の、空洞157内に位置する第2コネクタ部分150を備える。パッチポンプ160内に一体化され得る携帯型注入ポンプが、先行技術により知られているため、流体供給管路152の上流のポンプシステムに関する詳細は示されない。注入ポンプユニット160は、適切な係止手段を用いて注入部位接合部161の上面に取り外し可能に取り付けられる。そのような目的のために使用され得る係止手段、たとえば離脱可能なキャッチロック機構などが、当業者には知られており、詳細は示されない。注入ポンプユニットを注入部位接合部のベースプレートに固定して取り付けることに加え、係止手段には、追加の2つの目的がある。一方では、係止手段は、主要案内要素が互いに当接し、接続ステップ中の正確な整列を保証すると、案内壁119、155の前面で2つのコネクタ部分の正確な向きを保証する、コネクタデバイスのための副次的案内要素として機能する。他方では、係止手段は、注入ポンプユニットおよび注入部位接合部を互いに対して固定して緊密に保持し、それによって、2つのコネクタ部分に対する押付力が絶えず保持される。
【0065】
パッチポンプシステムを動作状態に設定するために、図4(a)に示す第1ステップにて、注入部位接合部161が患者の体表面上に設置される。示されている実施形態では、ベースプレート101を体に手動で設置する間に、一時的に補剛された注入カニューレ107が組織内に挿入される。
【0066】
第1のステップにおいて体にベースプレートを付着させ、第2のステップにおいて自動的に、補剛されたカニューレを体組織内に挿入し、カニューレハブをベースプレートに固定的に付着させ、そしてその後に穿刺針を引き抜くことを可能にする、いわゆるインサータ装置が知られている。そのような技術は、開示されるコネクタデバイスにも適用され得る。そのような場合、カニューレおよび第1コネクタデバイスを有するハウジングボディを備えるハブは、一時的に補剛されたカニューレの挿入後に、ベースプレートに固定的に付着される。
【0067】
しかし、示されている実施形態では、穿刺針109は手動で取り外され、図4(b)の、この時点で動作的である注入部位接合部161に達する。注入ポンプ装置160は、注入部位接合部161(図4(c))に付着されるように備えられ、ベースプレート(図4(d))に取り付けられる。
【0068】
示されているように、第2コネクタ部分の流体供給管路と第1コネクタ部分の流体システムとの間に流体接続を確立するために、液体は、当接している球形凹部およびバルブ部材ボールを通過しなければならない。これは、既に説明したコネクタデバイスの実施形態においては、球形凹部の中心の、供給管路出口から、第1コネクタ部分のコーン部と接触している、コーン部の内側領域へと延びる2つのノッチにより達成される。そのような配置を、図5(a)にも示す。
【0069】
図5(b)~(f)は、第2のコネクタの接続コーン部上の様々な要素の代替的な配置をさらに示す。破線の円は、他のコネクタ部分の逆コーン部に接するコーン部251の外側領域と、バルブ開口するとバルブチャンバに面する内側領域との間の境界線を表す。図5(b)は、1つのノッチ254のみが出口258から延び、したがって最小限の相違が示される代替的な実施形態を示す。図5(c)は、3つのノッチ254を有し、流動横断面の増加をもたらすさらなる実施形態を示す。同様に、ノッチの量がさらに増加され得る、および/またはノッチの幾何学的形状がより複雑な形状に変更され得る。本質的に、球形凹部の領域は、バルブ部材の正確かつ確実な作動を可能にする限り、極めて最小限に減少されてもよい。球形凹部領域が大きく減少した実施形態が図5(d)に図示されている。ノッチは、結合軸に直角である円形平面254dにまで延びており、出口258が円形平面254d内に開口している。球形凹部は、同じ球形形状の一部分の代わりとなる前端面253dを有する、平面254dから延びる、4つの扇形状の突出部に減少されている。そのような実施形態では、第1コネクタ部分のバルブボールは、3つの突出部のうち前端面253dのみと接し、同時に、円形平面254dとバルブボール表面との間の自由容積を通って流動し得る。
【0070】
ノッチを利用しない、コネクタコーン部のさらなる実施形態を、図5(e)に示す。流体供給管路およびその出口258eは、球形凹部253の中心からコーン部の内側領域251内に延びる楕円形の横断面を有する。結果として、球形凹部253の円形領域内にない、出口258eの2つの外側領域が、バルブが開口すると、バルブチャンバに向かって直接開口する。同様のアプローチが、図5(f)に開示する実施形態に適用される。流体供給チャネルおよびその出口258fは、結合軸に整列されないが、中心からずれて位置する。出口の横断面の少なくとも一部が、コーン部251のコーン部の内側領域表面内に位置する。出口258fのこの領域は、バルブが開口すると、バルブチャンバに向かって直接開口する。
【0071】
図6に、コネクタデバイスの第1コネクタ部分のさらなる実施形態を示す。第1コネクタ部分310、410の機能原則は、図2に示す第1コネクタ部分の場合と略同じである。
【0072】
図6(a)に示す実施形態310は、バルブ部材313をバルブ受座312にシールリップ318押し付ける付勢力が、コイルばね315を用いて生み出されるという点で、既に説明した第1コネクタ部分と異なる。さらに、接続コーン部318を有するバルブ部材312は、穿刺針のためのセプタムを含まない。セプタム(図示されず)は、別個の要素として実現される、またはたとえば剛性を有するカニューレが使用される場合、省かれる。
【0073】
図6(b)に示す第1コネクタ部分410の実施形態では、ボール形状のバルブ部材は、略円筒状のバルブ部材413に置き換えられている。このシリンダの一方の端部は、コイルばね415の内部に配置され、それによって、バルブ部材413とばね415との整列が保証され、バルブチャンバの容積が減少する。バルブ部材412のシールリップ414に面するバルブ部材の他方の端部は、半球として実現される。コイルばね415は、シリンダの周縁部上で支持される。
【0074】
ここまでに説明した実施形態において、第2コネクタ部分の流体供給管路は、接続状態であり、第1コネクタ部分のバルブ部材によって少なくとも部分的に遮断される出口内で開口している。そのような構成要素は、たとえば射出成型技術を用いて効率的に生産され得る。しかし、原則的には、出口を省き、流体接続を盲穴の形態の流体供給管路と、流体供給管路から枝分かれした専用の管路を1つまたは複数有するコーン部の内側領域表面との間に設けることも可能である。
【0075】
本発明は、本明細書において説明した特定の実施形態によって範囲が限定されるものではない。実際には、本明細書において説明したものに加えて、本発明の様々な修正例が、前述の説明および添付の図面から当業者に明白となる。したがって、そのような修正例は、添付の請求項の範囲内に入る。さらに、本明細書において、様々な文献が引用され、その開示内容の全てがそれぞれ、参照により本明細書に組み込まれる。
【符号の説明】
【0076】
2 ハウジングボディ
3 コネクタセプタム
3a セプタムシート
4 流体チャンバ
5 流体管路
6 コネクタ針
6a 針管路
6b 針の先端
7 注入カニューレ
7a カニューレ管路
8 閉じ込められた空気
10 第1コネクタ部分
50 第2コネクタ部分
70 コネクタデバイス
100 挿入ヘッド
101 ベースプレート
102 ハウジングボディ
103 セプタム
104 カニューレチャンバ
107 注入カニューレ
109 穿刺針
110 第1コネクタ部分、雌型コネクタ部分
111 コネクタバルブ
112 バルブシート
113 バルブ部材、バルブボール
114 シールリップ
115 弾性要素
116 バルブチャンバ
117 流体移送管路
118 凹状接続コーン部
119 案内要素、案内壁
125 バルブシートおよびセプタムのための空洞
150 第2コネクタ部分、雄型コネクタ部分
151 接続コーン部
152 流体供給管路
153 球形凹部
154 ノッチ
155 案内要素、案内壁
157 空洞
158 流体供給管路の出口
160 注入ポンプユニット
161 注入部位接合部
170 コネクタデバイス
171 結合軸
190 体表面
191 体組織
250 第2コネクタ部分
251 接続コーン部
253 球形凹部
253d 突出部の球形前面
253e 球形凹部
253f 球形凹部
254 ノッチ
254d 円形平面
258 流体供給管路の出口
258e 流体供給管路の出口
258f 流体供給管路の出口
302 ハウジングボディ
310 第1コネクタ部分
311 バルブ
312 バルブシート
313 バルブ部材、ボール
314 シールリップ
315 ばね要素
316 バルブチャンバ
317 流体移送管路
318 凹状接続コーン部
402 ハウジングボディ
410 第1コネクタ部分
411 バルブ
412 バルブ受座
413 バルブ部材
414 シールリップ
415 ばね要素
416 バルブチャンバ
417 流体移送管路
418 凹状接続コーン部
図1
図2(a)】
図2(b)】
図2(c)】
図2(d)】
図2(e)】
図3(a)】
図3(b)】
図4(a)】
図4(b)】
図4(c)】
図4(d)】
図5(a)】
図5(b)】
図5(c)】
図5(d)】
図5(e)】
図5(f)】
図6(a)】
図6(b)】