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特許7026116クロマトグラフィー用担体、リガンド固定担体、クロマトグラフィーカラム、標的物質の精製方法、及びクロマトグラフィー用担体の製造方法
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  • 特許-クロマトグラフィー用担体、リガンド固定担体、クロマトグラフィーカラム、標的物質の精製方法、及びクロマトグラフィー用担体の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-16
(45)【発行日】2022-02-25
(54)【発明の名称】クロマトグラフィー用担体、リガンド固定担体、クロマトグラフィーカラム、標的物質の精製方法、及びクロマトグラフィー用担体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/285 20060101AFI20220217BHJP
   G01N 30/88 20060101ALI20220217BHJP
   B01J 20/281 20060101ALI20220217BHJP
   B01D 15/38 20060101ALI20220217BHJP
   C07K 1/22 20060101ALI20220217BHJP
【FI】
B01J20/285 Z
G01N30/88 J
B01J20/281 R
B01J20/281 X
B01J20/281 G
B01D15/38
C07K1/22
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019537676
(86)(22)【出願日】2018-08-23
(86)【国際出願番号】 JP2018031154
(87)【国際公開番号】W WO2019039545
(87)【国際公開日】2019-02-28
【審査請求日】2021-02-19
(31)【優先権主張番号】P 2017160120
(32)【優先日】2017-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】513133022
【氏名又は名称】JSRライフサイエンス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】502066476
【氏名又は名称】ジェイエスアール マイクロ インコーポレイテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】316008086
【氏名又は名称】ジェイエスアール マイクロ エヌ.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】JSR Micro N.V.
【住所又は居所原語表記】Technologielaan 8, B-3001, Leuven, BELGIUM
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】則信 智哉
【審査官】大瀧 真理
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-053757(JP,A)
【文献】特開平01-165600(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0029196(US,A1)
【文献】特開2006-111717(JP,A)
【文献】国際公開第2015/119255(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/281 - 20/292
G01N 30/00 - 30/96
B01D 15/38
C17K 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(9)で表される構造単位(A)及び下記式(10)で表される構造単位(B)を有し、構造単位(B)中のリガンドを固定可能な官能基の残基同士が、下記式(2-1)又は(2-4)で表される架橋構造で架橋されている重合体を含む、クロマトグラフィー用担体に、抗体アフィニティリガンドを固定してなる、リガンド固定担体(但し、シリカ、アルミナ又はジルコニアを含む場合を除く)
【化1】
〔式(9)中、
8 は、水素原子又はメチル基を示し、
9 は、単結合又は2価の連結基を示し、
1 は、リガンドを固定可能な官能基を示す。〕
【化2】
〔式(10)中、
10 は、水素原子又はメチル基を示し、
11 は、単結合又は2価の連結基を示し、
2 は、リガンドを固定可能な官能基の残基を示し、
**は、式(2-1)又は(2-4)で表される架橋構造と結合する結合手を示す。〕
【化3】
〔式(2-1)中、R 2 は、単結合又は2価の有機基を示し、*は、結合手を示す。〕
【化4】
〔式(2-4)中、R 2 は、単結合又は2価の有機基を示し、*は、結合手を示し、R 4a 及びR 4b は、それぞれ独立して、2価の有機基を示す。〕
【請求項2】
前記架橋構造が、前記式(2-1)で表されるものである、請求項1に記載のリガンド固定担体。
【請求項3】
2が、炭素数1~40の2価の炭化水素基、又は炭素数2~40の2価の炭化水素基の炭素-炭素原子間にエーテル結合、アミド結合及びエステル結合から選ばれる1種以上を有する基である、請求項1又は2に記載のリガンド固定担体。
【請求項4】
2が、炭素数1~40のアルカンジイル基、又は炭素数2~40のアルカンジイル基の炭素-炭素原子間にエーテル結合、アミド結合及びエステル結合から選ばれる1種以上を有する基である、請求項1~3のいずれか1項に記載のリガンド固定担体。
【請求項5】
前記重合体が、芳香族ビニル系架橋性モノマーに由来する構造単位をさらに有する、請求項1~4のいずれか1項に記載のリガンド固定担体。
【請求項6】
前記担体が粒子状の担体である、請求項1~のいずれか1項に記載のリガンド固定担体。
【請求項7】
前記担体が多孔質担体である、請求項1~のいずれか1項に記載のリガンド固定担体。
【請求項8】
前記抗体アフィニティリガンドが、イムノグロブリン結合性タンパク質である、請求項1~7のいずれか1項に記載のリガンド固定担体。
【請求項9】
前記抗体アフィニティリガンドが、プロテインA、プロテインG、プロテインL、又はこれらの類縁物質である、請求項1~8のいずれか1項に記載のリガンド固定担体。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載のリガンド固定担体がカラム容器に充填されている、クロマトグラフィーカラム。
【請求項11】
クロマトグラフィーによって抗体を精製する方法であって、請求項1~9のいずれか1項に記載のリガンド固定担体を用いることを特徴とする、抗体の精製方法。
【請求項12】
クロマトグラフィーによって抗体を精製する方法であって、請求項1~9のいずれか1項に記載のリガンド固定担体と、抗体を含む試料とを接触させる工程を含む、抗体の精製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロマトグラフィー用担体、リガンド固定担体、クロマトグラフィーカラム、標的物質の精製方法、及びクロマトグラフィー用担体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、抗体医薬等に代表されるバイオ医薬品の分野では、タンパク質等の標的物質の発現技術が著しく進展し、それに伴いクロマトグラフィー等による精製工程での生産性の向上が求められている。生産性を向上させる方法として、宿主細胞由来タンパク質、デオキシリボ核酸のような、医薬品原料に混在する不純物の濃度を1回の精製で可能な限り低減させ、精製回数や工程を少なくすることが挙げられ、これを実現できるクロマトグラフィー用充填剤(リガンド固定担体)の需要が高まっている。
【0003】
精製工程における不純物除去効率を向上させるためには、担体の防汚性を改善させ、不純物と充填剤との疎水性相互作用による非特異吸着を抑制し、充填剤に対する不純物の付着を抑える必要がある。斯様な付着を抑える有効な手段として、充填剤の担体の親水化が知られている(特許文献1)。
そのため、親水性を高めた担体として、水溶性ポリマーで細孔内部が固定された特定の固相担体(特許文献2)や、アクリルアミドモノマー等の親水性モノマーを逆相懸濁重合して形成した固相担体、親水性モノマーを保護基等で疎水化処理した後に重合し、脱保護して得た固相担体が開発されている(特許文献3~5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2005/010529号パンフレット
【文献】特許第5250985号
【文献】特表2003-511659号公報
【文献】特表2009-503203号公報
【文献】特開2006-111717号公報
【文献】国際公開第2015/119255号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来採用されていた技術で担体の防汚性を改善させた場合には、耐圧性能や耐破損性能が低下するという問題があった。担体の耐圧性能が不十分な場合には、スケールの大きなカラムを用いて精製を行う際に圧密化が起こり、通液しなくなる可能性がある。また、カラム圧力損失が大きくなり、高線流速下で使用することが困難となるため、操作に要する時間が長時間化する。一方、耐破損性能が不十分な場合は、一定の流速を超えたときに圧潰や塑性変形が急激に発生してしまい、再利用できなくなるという問題がある。
このような背景の下、3,6-ジオキサ-1,8-オクタンジチオールを用いて架橋構造を導入した担体が提案されているが(特許文献6)、この担体は親水性が不十分であり、防汚性の更なる改善が望まれるものであった。また、耐圧性能や耐破損性能にも改善の余地があった。
【0006】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、優れた防汚性を有し、且つ耐圧性能及び耐破損性能に優れるクロマトグラフィー用担体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明者は鋭意検討した結果、クロマトグラフィー用担体に含まれる重合体に、-C(=O)-NH-で示される基を少なくとも2個含む部分構造を導入することによって、優れた防汚性と、優れた耐圧性能及び耐破損性能とが両立されることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の<1>~<15>を提供するものである。
【0009】
<1> -C(=O)-NH-で示される基を少なくとも2個含む部分構造(以下、特定部分構造とも称する)を有する重合体(以下、特定重合体とも称する)を含む、クロマトグラフィー用担体(以下、本発明のクロマトグラフィー用担体とも称する)。
<2> 前記部分構造が、下記式(1)で表される2価以上の架橋構造である、<1>に記載の担体。
【0010】
【化1】
【0011】
〔式(1)中、
1は、n価の有機基を示し、
1は、-C(=O)-NH-を示し、
2は、単結合又は2価の連結基を示し、
nは、2以上の整数を示し、
*は、結合手を示す。
但し、nが2の場合、R1は、単結合であってもよい。〕
<3> 前記部分構造が、下記式(1-2)で表される架橋構造である、<1>又は<2>に記載の担体。
【0012】
【化2】
【0013】
〔式(1-2)中、
2は、単結合又は2価の有機基を示し、
1a及びX1bは、-C(=O)-NH-を示し、
2a及びX2bは、それぞれ独立して、単結合又は2価の連結基を示し、
*は、結合手を示す。〕
【0014】
<4> R2が、炭素数1~40の2価の炭化水素基、又は炭素数2~40の2価の炭化水素基の炭素-炭素原子間にエーテル結合、アミド結合及びエステル結合から選ばれる1種以上を有する基である、<3>に記載の担体。
<5> R2が、炭素数1~40のアルカンジイル基、又は炭素数2~40のアルカンジイル基の炭素-炭素原子間にエーテル結合、アミド結合及びエステル結合から選ばれる1種以上を有する基である、<3>又は<4>に記載の担体。
<6> X2a及びX2bが、それぞれ独立して、単結合、-NH-、又は-R4-C(=O)O-である(R4は、2価の有機基を示す)、<3>~<5>のいずれかに記載の担体。
<7> 粒子状の担体である、<1>~<6>のいずれかに記載の担体。
<8> 多孔質担体である、<1>~<7>のいずれかに記載の担体。
<9> 前記重合体が、リガンドを固定可能な官能基を更に有する、<1>~<8>のいずれかに記載の担体。
【0015】
<10> <1>~<9>のいずれかに記載の担体にリガンドを固定してなる、リガンド固定担体(以下、本発明のリガンド固定担体とも称する)。
<11> 前記リガンドがタンパク質又はペプチドである、<10>に記載のリガンド固定担体。
【0016】
<12> <10>又は<11>に記載のリガンド固定担体がカラム容器に充填されている、クロマトグラフィーカラム(以下、本発明のクロマトグラフィーカラムとも称する)。
【0017】
<13> クロマトグラフィーによって標的物質を精製する方法であって、<10>又は<11>に記載のリガンド固定担体を用いることを特徴とする、標的物質の精製方法(以下、本発明の標的物質の精製方法とも称する)。
<14> クロマトグラフィーによって標的物質を精製する方法であって、<10>又は<11>に記載のリガンド固定担体と、標的物質を含む試料とを接触させる工程を含む、標的物質の精製方法。
【0018】
<15> 環状エーテル基、カルボキシ基、-C(=O)-O-C(=O)-、コハク酸イミドオキシカルボニル基、ホルミル基及びイソシアネート基からなる群より選ばれる1種以上の官能基を有する固相と、-C(=O)-NH-で示される基を分子内に少なくとも2個含む架橋剤とを接触させる工程を含む、クロマトグラフィー用担体の製造方法(以下、本発明のクロマトグラフィー用担体の製造方法とも称する)。
【発明の効果】
【0019】
本発明のクロマトグラフィー用担体は、優れた防汚性を有し、且つ耐圧性能及び耐破損性能に優れる。また、リガンドを固定した場合の標的物質に対する動的結合容量が大きい。
したがって、本発明によれば、優れた防汚性を有し、且つ耐圧性能及び耐破損性能に優れ、更に標的物質に対する動的結合容量が大きいリガンド固定担体及びクロマトグラフィーカラムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明のクロマトグラフィー用担体の製造方法の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<クロマトグラフィー用担体>
本発明のクロマトグラフィー用担体は、-C(=O)-NH-で示される基を少なくとも2個含む部分構造を有する重合体を含むものである。
特定部分構造としては、本発明の所望の効果を高める点から、下記式(1)で表される2価以上の架橋構造が好ましい。
【0022】
【化3】
【0023】
〔式(1)中、
1は、n価の有機基を示し、
1は、-C(=O)-NH-を示し、
2は、単結合又は2価の連結基を示し、
nは、2以上の整数を示し、
*は、結合手を示す。
但し、nが2の場合、R1は、単結合であってもよい。〕
【0024】
式(1)中、R1で示されるn価の有機基の炭素数は、本発明の所望の効果を高める点から、好ましくは1~60であり、より好ましくは1~40であり、特に好ましくは1~20である。
nは、2以上の整数を示すが、本発明の所望の効果を高める点から、2~6が好ましく、2~4がより好ましく、2又は3が更に好ましく、2が特に好ましい。なお、n個のX1は同一であっても異なっていてもよく、また、n個のX2も同一であっても異なっていてもよい。
【0025】
1で示される-C(=O)-NH-は、当該化学構造中の炭素原子がR1と結合し、且つ化学構造中の窒素原子がX2と結合していてもよく、また、化学構造中の炭素原子がX2と結合し、且つ化学構造中の窒素原子がR1と結合していてもよい。
2としては、本発明の所望の効果を高める点から、2価の連結基が好ましい。当該2価の連結基としては、本発明の所望の効果を高める点から、-NH-、-R4-C(=O)O-が好ましく、-NH-が特に好ましい。特にX2が-NH-の場合に、耐圧性能が更に良好なものとなる。
また、上記R4は、2価の有機基を示す。なお、-R4-C(=O)O-は、当該化学構造中のR4がX1と結合していてもよく、また、化学構造中の酸素原子がX1と結合していてもよい。
【0026】
4で示される2価の有機基としては、2価の炭化水素基、炭素数2以上の2価の炭化水素基の炭素-炭素原子間にエーテル結合、アミド結合及びエステル結合から選ばれる1種以上を有する基が挙げられる。
4で示される2価の有機基が、2価の炭化水素基である場合、その炭素数は、本発明の所望の効果を高める点から、好ましくは1~20、より好ましくは1~14、更に好ましくは1~8、特に好ましくは1~4である。一方、2価の有機基が、「炭素数2以上の2価の炭化水素基の炭素-炭素原子間にエーテル結合、アミド結合及びエステル結合から選ばれる1種以上を有する基」である場合、斯かる基における2価の炭化水素基の炭素数は、本発明の所望の効果を高める点から、好ましくは2~20、より好ましくは2~14、更に好ましくは2~8、特に好ましくは2~4である。
なお、R4で示される2価の炭化水素基、「炭素数2以上の2価の炭化水素基の炭素-炭素原子間にエーテル結合、アミド結合及びエステル結合から選ばれる1種以上を有する基」における2価の炭化水素基は、置換基を有していてもよい。当該置換基としては、例えば、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、ヒドロキシ基等が挙げられる。なお、置換基の置換位置及び個数は任意であり、置換基を2個以上有する場合、該置換基は同一でも異なっていてもよい。
【0027】
4で示される2価の炭化水素基、「炭素数2以上の2価の炭化水素基の炭素-炭素原子間にエーテル結合、アミド結合及びエステル結合から選ばれる1種以上を有する基」における2価の炭化水素基としては、2価の脂肪族炭化水素基、2価の脂環式炭化水素基、2価の芳香族炭化水素基が挙げられるが、本発明の所望の効果を高める点から、2価の脂肪族炭化水素基が好ましい。なお、2価の脂肪族炭化水素基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよい。
【0028】
4で示される2価の有機基が、2価の脂肪族炭化水素基である場合、その炭素数は、本発明の所望の効果を高める点から、好ましくは1~20、より好ましくは1~14、更に好ましくは1~8、特に好ましくは1~4である。一方、2価の有機基が、「炭素数2以上の2価の脂肪族炭化水素基の炭素-炭素原子間にエーテル結合、アミド結合及びエステル結合から選ばれる1種以上を有する基」である場合、斯かる基における2価の脂肪族炭化水素基の炭素数は、本発明の所望の効果を高める点から、好ましくは2~20、より好ましくは2~14、更に好ましくは2~8、特に好ましくは2~4である。
また、2価の脂肪族炭化水素基は分子内に不飽和結合を有していてもよいが、本発明の所望の効果を高める点から、好ましくはアルカンジイル基である。アルカンジイル基の具体例としては、メタン-1,1-ジイル基、エタン-1,1-ジイル基、エタン-1,2-ジイル基、プロパン-1,1-ジイル基、プロパン-1,2-ジイル基、プロパン-1,3-ジイル基、プロパン-2,2-ジイル基、ブタン-1,1-ジイル基、ブタン-1,2-ジイル基、ブタン-1,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,1-ジイル基、ペンタン-1,2-ジイル基、ペンタン-1,3-ジイル基、ペンタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,1-ジイル基、ヘキサン-1,2-ジイル基、ヘキサン-1,3-ジイル基、ヘキサン-1,4-ジイル基、ヘキサン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基、ヘプタン-1,7-ジイル基、オクタン-1,8-ジイル基等が挙げられる。これらの中では、本発明の所望の効果を高める点から、メタン-1,1-ジイル基、エタン-1,2-ジイル基、プロパン-1,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基、ヘプタン-1,7-ジイル基、オクタン-1,8-ジイル基が特に好ましい。
【0029】
上記2価の脂環式炭化水素基の炭素数は、好ましくは3~20であり、より好ましくは3~16であり、更に好ましくは3~12であり、特に好ましくは3~8である。具体的には、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロへキシレン基等のシクロアルキレン基が挙げられる。
上記2価の芳香族炭化水素基の炭素数は、好ましくは6~18であり、より好ましくは6~12である。具体的には、フェニレン基、ナフチレン基等のアリーレン基が挙げられる。
なお、2価の脂環式炭化水素基の結合部位、及び2価の芳香族炭化水素基の結合部位は、環上のいずれの炭素上でもよい。
【0030】
上記のような特定部分構造としては、本発明の所望の効果を高める点から、下記式(1-2)又は(1-3)で表される架橋構造が好ましく、式(1-2)で表される架橋構造がより好ましく、下記式(2-1)~(2-6)で表される架橋構造が更に好ましく、式(2-1)~(2-4)で表される架橋構造が更に好ましく、式(2-1)又は(2-4)で表される架橋構造が更に好ましく、式(2-1)で表される架橋構造が特に好ましい。式(2-1)で表される架橋構造である場合に、耐圧性能が特に良好になる。
【0031】
【化4】
【0032】
〔式(1-2)中、
2は、単結合又は2価の有機基を示し、
1a及びX1bは、-C(=O)-NH-を示し、
2a及びX2bは、それぞれ独立して、単結合又は2価の連結基を示し、
*は、結合手を示す。〕
【0033】
【化5】
【0034】
〔式(1-3)中、
3は、m価の有機基を示し、
1は、-C(=O)-NH-を示し、
2は、単結合又は2価の連結基を示し、
mは、3以上の整数を示し、
*は、結合手を示す。〕
【0035】
【化6】
【0036】
【化7】
【0037】
【化8】
【0038】
【化9】
【0039】
【化10】
【0040】
【化11】
【0041】
〔式(2-1)~(2-6)中、R2及び*は、式(1-2)中のR2及び*と同義であり、R2は、単結合又は2価の有機基を示し、*は、結合手を示す。また、式(2-3)~(2-4)中、R4a及びR4bは、それぞれ独立して、2価の有機基を示す。〕
【0042】
ここで、式(1-2)、(1-3)、(2-1)~(2-6)中の各記号について説明する。
【0043】
式(1-2)中のX1a及びX1b、式(1-3)中のX1は、-C(=O)-NH-を示す。式(1-2)中のX1a及びX1b、式(1-3)中のX1は、上記式(1)中のX1と同義である。
式(1-2)中のX2a及びX2b、式(1-3)中のX2は、それぞれ独立して、単結合又は2価の連結基を示す。式(1-2)中のX2a及びX2b、式(1-3)中のX2は、式(1)中のX2と同義であり、これらで示される2価の連結基としては、-NH-、-R4-C(=O)O-が好ましく、-NH-が特に好ましい。特にX2が-NH-の場合に、耐圧性能が更に良好なものとなる。なお、R4は前述のとおりであり、2価の有機基を示す。
式(2-3)~(2-4)中のR4a及びR4bは、それぞれ独立して、2価の有機基を示す。式(2-3)~(2-4)中のR4a及びR4bは、上記式(1)におけるR4と同義である。
【0044】
式(1-2)、(2-1)~(2-6)中、R2は、単結合又は2価の有機基を示すが、本発明の所望の効果を高める点から、2価の有機基が好ましい。当該2価の有機基の炭素数としては、本発明の所望の効果を高める点から、1~40が好ましく、1~30がより好ましく、1~20が更に好ましく、1~10が特に好ましい。
2で示される2価の有機基としては、本発明の所望の効果を高める点から、2価の炭化水素基、炭素数2以上の2価の炭化水素基の炭素-炭素原子間にエーテル結合、アミド結合及びエステル結合から選ばれる1種以上を有する基、2価の含窒素複素環基が好ましく、2価の炭化水素基、炭素数2以上の2価の炭化水素基の炭素-炭素原子間にエーテル結合、アミド結合及びエステル結合から選ばれる1種以上を有する基がより好ましい。なお、R2で示される2価の炭化水素基、「炭素数2以上の2価の炭化水素基の炭素-炭素原子間にエーテル結合、アミド結合及びエステル結合から選ばれる1種以上を有する基」における2価の炭化水素基、2価の含窒素複素環基は、置換基を有していてもよい。当該置換基としては、例えば、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、ヒドロキシ基等が挙げられる。なお、置換基の置換位置及び個数は任意であり、置換基を2個以上有する場合、該置換基は同一でも異なっていてもよい。
【0045】
2で示される2価の有機基が、2価の炭化水素基である場合、その炭素数は、本発明の所望の効果を高める点から、好ましくは1~40、より好ましくは1~30、更に好ましくは1~20、特に好ましくは1~10である。一方、R2で示される2価の有機基が、「炭素数2以上の2価の炭化水素基の炭素-炭素原子間にエーテル結合、アミド結合及びエステル結合から選ばれる1種以上を有する基」である場合、斯かる基における2価の炭化水素基の炭素数は、本発明の所望の効果を高める点から、好ましくは2~40、より好ましくは2~30、更に好ましくは2~20、特に好ましくは2~10である。
2で示される2価の炭化水素基、「炭素数2以上の2価の炭化水素基の炭素-炭素原子間にエーテル結合、アミド結合及びエステル結合から選ばれる1種以上を有する基」における2価の炭化水素基としては、2価の脂肪族炭化水素基、2価の脂環式炭化水素基、2価の芳香族炭化水素基が挙げられるが、本発明の所望の効果を高める点から、2価の脂肪族炭化水素基が好ましい。なお、2価の脂肪族炭化水素基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよい。
【0046】
2で示される2価の有機基が、2価の脂肪族炭化水素基である場合、その炭素数は、本発明の所望の効果を高める点から、好ましくは1~40、より好ましくは1~30、更に好ましくは1~20、更に好ましくは1~10、更に好ましくは1~8、特に好ましくは2~6である。一方、R2で示される2価の有機基が、「炭素数2以上の2価の脂肪族炭化水素基の炭素-炭素原子間にエーテル結合、アミド結合及びエステル結合から選ばれる1種以上を有する基」である場合、斯かる基における2価の脂肪族炭化水素基の炭素数は、本発明の所望の効果を高める点から、好ましくは2~40、より好ましくは2~30、更に好ましくは2~20、更に好ましくは2~10、更に好ましくは2~8、特に好ましくは2~6である。
また、「炭素数2以上の2価の脂肪族炭化水素基の炭素-炭素原子間にエーテル結合、アミド結合及びエステル結合から選ばれる1種以上を有する基」としては、炭素数2以上の2価の脂肪族炭化水素基の炭素-炭素原子間にエステル結合を有する基が好ましい。例えば、-(CH22-OC(=O)-CH2-が挙げられる。
また、2価の脂肪族炭化水素基は分子内に不飽和結合を有していてもよいが、本発明の所望の効果を高める点から、好ましくはアルカンジイル基である。アルカンジイル基の具体例としては、メタン-1,1-ジイル基、エタン-1,1-ジイル基、エタン-1,2-ジイル基、プロパン-1,1-ジイル基、プロパン-1,2-ジイル基、プロパン-1,3-ジイル基、プロパン-2,2-ジイル基、ブタン-1,1-ジイル基、ブタン-1,2-ジイル基、ブタン-1,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,1-ジイル基、ペンタン-1,2-ジイル基、ペンタン-1,3-ジイル基、ペンタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,1-ジイル基、ヘキサン-1,2-ジイル基、ヘキサン-1,3-ジイル基、ヘキサン-1,4-ジイル基、ヘキサン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基、ヘプタン-1,7-ジイル基、オクタン-1,8-ジイル基等が挙げられる。これらの中では、本発明の所望の効果を高める点から、メタン-1,1-ジイル基、エタン-1,2-ジイル基、プロパン-1,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基、ヘプタン-1,7-ジイル基、オクタン-1,8-ジイル基が特に好ましい。
【0047】
上記2価の脂環式炭化水素基の炭素数は、好ましくは3~20であり、より好ましくは3~16であり、更に好ましくは3~12であり、特に好ましくは3~8である。具体的には、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロへキシレン基等のシクロアルキレン基が挙げられる。
上記2価の芳香族炭化水素基の炭素数は、好ましくは6~18であり、より好ましくは6~12である。具体的には、フェニレン基、ナフチレン基等のアリーレン基が挙げられる。
【0048】
上記2価の含窒素複素環基の炭素数は、好ましくは4~18であり、より好ましくは4~10であり、特に好ましくは4~6である。具体的には、ピリジニレン基(ピリジン環由来の2価の基)、ピリミジニレン基(ピリミジン環由来の2価の基)等が挙げられる。
【0049】
なお、2価の脂環式炭化水素基の結合部位、2価の芳香族炭化水素基の結合部位及び2価の含窒素複素環基の結合部位は、環上のいずれの炭素上でもよい。
【0050】
式(1-3)中、mは、3以上の整数を示すが、本発明の所望の効果を高める点から、3~6が好ましく、3又は4がより好ましく、3が特に好ましい。なお、m個のX1は同一であっても異なっていてもよく、また、m個のX2も同一であっても異なっていてもよい。
【0051】
mが3である場合、R3は3価の有機基であるが、当該3価の有機基としては、3価の炭化水素基が挙げられる。3価の炭化水素基は、置換基を有していてもよい。当該置換基としては、上記2価の炭化水素基が有していてもよいものと同様のものが挙げられる。
3価の炭化水素基の炭素数としては、1~40が好ましく、1~30がより好ましく、1~20が更に好ましく、1~10が特に好ましい。
3価の炭化水素基としては、3価の脂肪族炭化水素基、3価の脂環式炭化水素基、3価の芳香族炭化水素基が挙げられるが、3価の脂肪族炭化水素基、3価の脂環式炭化水素基が好ましい。なお、3価の脂環式炭化水素基の結合部位及び3価の芳香族炭化水素基の結合部位は、環上のいずれの炭素上でもよい。
【0052】
3価の脂肪族炭化水素基の炭素数としては、本発明の所望の効果を高める点から、1~40が好ましく、1~30がより好ましく、1~20が更に好ましく、1~10が更に好ましく、1~8が更に好ましく、2~6が特に好ましい。また、3価の脂肪族炭化水素基は分子内に不飽和結合を有していてもよいが、好ましくはアルカントリイル基である。アルカントリイル基の具体例としては、メタン-1,1,1-トリイル基、エタン-1,1,1-トリイル基、エタン-1,1,2-トリイル基、プロパン-1,2,3-トリイル基、プロパン-1,2,2-トリイル基等が挙げられる。
3価の脂環式炭化水素基の炭素数は、好ましくは3~20であり、より好ましくは3~16であり、更に好ましくは3~12であり、特に好ましくは3~8である。具体的には、シクロプロパントリイル基、シクロブタントリイル基、シクロペンタントリイル基、シクロへキサントリイル基等のシクロアルカントリイル基が挙げられる。
【0053】
特定部分構造としては、-C(=O)-NH-で示される基を分子内に少なくとも2個含む架橋剤由来の構造が挙げられる。このような架橋剤としては、-C(=O)-NH-で示される基を分子内に少なくとも2個含むとともに、リガンドを固定可能な官能基と反応して架橋構造を導入できるものが好ましい。例えば、オキサリルジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、2,3-ジヒドロキシコハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ピメリン酸ジヒドラジド、オクタン二酸ジヒドラジド、ノナン二酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、キノリン酸ジヒドラジド等のジカルボン酸ジヒドラジド類;シクロヘキサントリカルボン酸トリヒドラジド等のトリカルボン酸トリヒドラジド類;N1,N1-(エタン-1,2-ジイル)ビス(コハク酸モノアミド)等の(アルキレンビスイミノ)ビス(オキソアルカン酸)類等が挙げられる。架橋剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。これら架橋剤の中では、本発明の所望の効果を高める点から、ジカルボン酸ジヒドラジド類、(アルキレンビスイミノ)ビス(オキソアルカン酸)類が好ましく、ジカルボン酸ジヒドラジド類がより好ましい。ジカルボン酸ジヒドラジド類を用いた場合に耐圧性能が特に良好になる。
【0054】
また、特定重合体としては、本発明の所望の効果を高める点から、リガンドを固定可能な官能基を更に有するものが好ましい。
リガンドを固定可能な官能基としては、環状エーテル基、カルボキシ基、-C(=O)-O-C(=O)-、コハク酸イミドオキシカルボニル基、ホルミル基及びイソシアネート基からなる群より選ばれる1種以上の官能基が挙げられるが、本発明の所望の効果を高める点から、環状エーテル基が好ましい。
ここで、「環状エーテル基」としては、環を構成する原子数が3~7個の環状エーテル基が好ましい。環状エーテル基は、置換基としてアルキル基を有していてもよい。環状エーテル基の具体例としては、以下の式(3)~(8)で表される環状エーテル基が挙げられるが、式(3)、(5)又は(8)で表される環状エーテル基が好ましく、式(3)で表される環状エーテル基がより好ましい。
【0055】
【化12】
【0056】
〔式中、R5a、R5b、R5c及びR6は、それぞれ独立して、水素原子又はアルキル基を示し、*は、結合手を示す。〕
【0057】
5a、R5b、R5c及びR6で示されるアルキル基の炭素数は、好ましくは1~4であり、より好ましくは1又は2である。アルキル基は直鎖状でも分岐鎖状でもよく、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等が挙げられる。また、R5a、R5b、R5c及びR6としては、水素原子が好ましい。
【0058】
また、特定重合体としては、リガンドを固定可能な官能基の残基を2個以上有し、当該2個以上の残基が、特定部分構造で架橋されているものが好ましく、リガンドを固定可能な官能基の残基2個以上と、リガンドを固定可能な官能基とを有し、且つ2個以上の残基が、特定部分構造で架橋されているものがより好ましい。
リガンドを固定可能な官能基の残基は、上記リガンドを固定可能な官能基が架橋剤によって架橋されたときに残る残基を意味する。当該残基としては、具体的には、環状エーテル基が開環してなる2価の基、-C(=O)-、-NH-C(=O)-が挙げられ、本発明の所望の効果を高める点から、環状エーテル基が開環してなる2価の基が好ましい。当該環状エーテル基が開環してなる2価の基における「環状エーテル基」としては、リガンドを固定可能な官能基として挙げたものと同様のものが好ましい。
【0059】
特定部分構造の含有量は、本発明の所望の効果を高める点から、特定重合体中、好ましくは0.5~50質量%であり、より好ましくは1~40質量%であり、特に好ましくは10~35質量%である。
特定重合体中のリガンドを固定可能な官能基とその残基との合計含有量(α)に対する特定重合体中の特定部分構造の含有量(β)のモル比〔(β)/(α)〕は、本発明の所望の効果を高める点から、好ましくは0.01~0.8であり、より好ましくは0.05~0.7であり、更に好ましくは0.1~0.6であり、特に好ましくは0.2~0.5である。本発明によれば、モル比〔(β)/(α)〕が0.2以上の場合であっても優れた防汚性が得られる。
なお、特定重合体中の各構造の含有量は、元素分析や熱分解ガスクロマトグラフィー等により測定可能である。
【0060】
特定重合体としては、リガンドを固定可能な官能基を有する構造単位(A)及びリガンドを固定可能な官能基の残基を有する構造単位(B)を有し、構造単位(B)中の上記残基同士が、特定部分構造で架橋されているものが好ましい。構造単位(A)としては、下記式(9)で表される構造単位が好ましく、構造単位(B)としては、下記式(10)で表される構造単位が好ましい。
【0061】
【化13】
【0062】
〔式(9)中、
8は、水素原子又はメチル基を示し、
9は、単結合又は2価の連結基を示し、
1は、リガンドを固定可能な官能基を示す。〕
【0063】
【化14】
【0064】
〔式(10)中、
10は、水素原子又はメチル基を示し、
11は、単結合又は2価の連結基を示し、
2は、リガンドを固定可能な官能基の残基を示し、
**は、特定部分構造と結合する結合手を示す。〕
【0065】
式(9)中のZ1で示されるリガンドを固定可能な官能基、式(10)中のZ2で示されるリガンドを固定可能な官能基の残基としては、上記と同様のものが挙げられる。また、式(10)中の**は、特定部分構造と結合する結合手を示し、特定部分構造で架橋されていることを意味する。
【0066】
式(9)中のR9、式(10)中のR11で示される2価の連結基としては、例えば、アルカンジイル基、炭素数2以上のアルカンジイル基の炭素-炭素原子間にエーテル結合を有する基、アリーレン基、-C(=O)O-R12-*、-C(=O)NH-R13-*、-Ar-R14-*、又は-Ar-OR15-*等が挙げられる。ここで、Arは、アリーレン基を示し、R9、R11における*は、上記Z1又はZ2に結合する結合手を示す。R9、R11、Arで示されるアリーレン基としては、フェニレン基、ナフチレン基、フェナントレニレン基等が挙げられる。
また、R12~R15は、それぞれ独立して、アルカンジイル基、又は炭素数2以上のアルカンジイル基の炭素-炭素原子間にエーテル結合を有する基を示す。
【0067】
9、R11、R12~R15で示されるアルカンジイル基の炭素数としては、1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3が特に好ましい。当該アルカンジイル基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよい。アルカンジイル基の具体例としては、メタン-1,1-ジイル基、エタン-1,1-ジイル基、エタン-1,2-ジイル基、プロパン-1,1-ジイル基、プロパン-1,2-ジイル基、プロパン-1,3-ジイル基、プロパン-2,2-ジイル基、ブタン-1,1-ジイル基、ブタン-1,2-ジイル基、ブタン-1,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,1-ジイル基、ペンタン-1,2-ジイル基、ペンタン-1,3-ジイル基、ペンタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,1-ジイル基、ヘキサン-1,2-ジイル基、ヘキサン-1,3-ジイル基、ヘキサン-1,4-ジイル基、ヘキサン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基、ヘプタン-1,7-ジイル基、オクタン-1,8-ジイル基等が挙げられる。
【0068】
9、R11、R12~R15で示される「炭素数2以上のアルカンジイル基の炭素-炭素原子間にエーテル結合を有する基」としては、-Ra(ORbpORc-で表される基が好ましい(Ra、Rb及びRcは、それぞれ独立して、炭素数1~4のアルカンジイル基を示し、pは0~30の整数を示す。)。
a、Rb及びRcで示されるアルカンジイル基は直鎖状でも分岐鎖状でもよい。具体的には、メタン-1,1-ジイル基、エタン-1,1-ジイル基、エタン-1,2-ジイル基、プロパン-1,1-ジイル基、プロパン-1,2-ジイル基、プロパン-1,3-ジイル基、プロパン-2,2-ジイル基、ブタン-1,1-ジイル基、ブタン-1,2-ジイル基、ブタン-1,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基が挙げられる。pとしては、0~20の整数が好ましく、0~10の整数がより好ましく、0~5の整数が更に好ましく、0が特に好ましい。なお、pが2~30の整数の場合、p個のRbは同一であっても異なっていてもよい。炭素数2以上のアルカンジイル基の炭素-炭素原子間にエーテル結合を有する基の好適な具体例としては、C1-4アルカンジイルオキシC1-4アルカンジイル基が挙げられる。
なお、R9、R11、R12~R15で示されるアルカンジイル基、炭素数2以上のアルカンジイル基の炭素-炭素原子間にエーテル結合を有する基は、置換基を有していてもよい。当該置換基としては、例えば、ヒドロキシ基等が挙げられる。
【0069】
上記のようなR9、R11の中では、特定重合体の製造し易さ等の点から、-C(=O)O-R12-*が特に好ましい。
【0070】
構造単位(A)や構造単位(B)を構成するモノマーとしては、リガンドを固定可能な官能基及び重合性不飽和基を有するモノマーが好ましい。このようなモノマーとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、3-オキシラニルプロピル(メタ)アクリレート、4-オキシラニルブチル(メタ)アクリレート、5-オキシラニルペンチル(メタ)アクリレート、6-オキシラニルヘキシル(メタ)アクリレート、7-オキシラニルヘプチル(メタ)アクリレート、8-オキシラニルオクチル(メタ)アクリレート、(3-メチルオキシラニル)メチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、グリセリンモノ(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、α-(メタ)アクリル-ω-グリシジルポリエチレングリコール、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等の環状エーテル基を有する(メタ)アクリレート系モノマー;(ビニルベンジル)グリシジルエーテル、(イソプロペニルベンジル)グリシジルエーテル、(ビニルフェネチル)グリシジルエーテル、(ビニルフェニルブチル)グリシジルエーテル、(ビニルベンジルオキシエチル)グリシジルエーテル、(ビニルフェニル)グリシジルエーテル、(イソプロペニルフェニル)グリシジルエーテル、1,2-エポキシ-3-(4-ビニルベンジル)プロパン等の環状エーテル基を有する芳香族ビニル系モノマー;アリルグリシジルエーテル等の環状エーテル基を有するアリルエーテル系モノマー;イソシアナトエチル(メタ)アクリレート等のイソシアネート基を有する(メタ)アクリレート系モノマー;マレイン酸無水物、メチルマレイン酸無水物、グルタコン酸無水物等の不飽和ジカルボン酸無水物系モノマーの他、(メタ)アクリル酸、3,4-エポキシ-1-ブテン、3,4-エポキシ-3-メチル-1-ブテン等が挙げられる。これらモノマーは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
これらモノマーの中では、本発明の所望の効果を高める点から、環状エーテル基を有する(メタ)アクリレート系モノマーが好ましく、グリシジル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0071】
特定重合体中の構造単位(A)及び(B)の合計含有割合は、特定部分構造100質量部に対して、好ましくは100~1500質量部であり、より好ましくは100~1000質量部である。
【0072】
また、特定重合体は、特定部分構造並びに構造単位(A)及び(B)の他にも構造単位を有していてもよい。このような構造単位を構成するモノマー(以下、他のモノマーとも称する)としては、リガンドを固定可能な官能基をもたない重合性不飽和基含有モノマーが挙げられる。他のモノマーは、非架橋性モノマー、架橋性モノマーに大別され、これらのうち一方を用いても併用してもよい。なお、本発明によれば、ヒドロキシ基等の親水性基を含まないモノマーを他のモノマーとして用いた場合であっても、防汚性等の本発明の所望の効果を満足させることができ、広範なモノマー組成に適用可能である。
【0073】
上記非架橋性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリレート系非架橋性モノマー、(メタ)アクリルアミド系非架橋性モノマー、芳香族ビニル系非架橋性モノマー、ビニルケトン系非架橋性モノマー、(メタ)アクリロニトリル系非架橋性モノマー、N-ビニルアミド系非架橋性モノマー等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。非架橋性モノマーの中では、(メタ)アクリレート系非架橋性モノマー、芳香族ビニル系非架橋性モノマーが好ましい。
【0074】
上記(メタ)アクリレート系非架橋性モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、4-tert-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、ブタントリオールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、イノシトールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0075】
また、上記(メタ)アクリルアミド系非架橋性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0076】
また、上記芳香族ビニル系非架橋性モノマーとしては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ハロゲン化スチレン、4-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、2,4,6-トリメチルスチレン、エチルビニルベンゼン、4-イソプロピルスチレン、4-n-ブチルスチレン、4-イソブチルスチレン、4-tert-ブチルスチレン等のスチレン類;1-ビニルナフタレン、2-ビニルナフタレン等のビニルナフタレン類等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0077】
また、上記ビニルケトン系非架橋性モノマーとしては、例えば、エチルビニルケトン、プロピルビニルケトン、イソプロピルビニルケトン等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
また、上記(メタ)アクリロニトリル系非架橋性モノマーとしては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
また、上記N-ビニルアミド系非架橋性モノマーとしては、例えば、N-ビニルアセトアミド、N-ビニルプロピオンアミド等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0078】
特定重合体中の非架橋性モノマーで構成される構造単位の含有割合は、特定部分構造100質量部に対して、好ましくは1~500質量部であり、より好ましくは1~100質量部である。
【0079】
また、上記架橋性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリレート系架橋性モノマー、芳香族ビニル系架橋性モノマー、アリル系架橋性モノマー等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。また、架橋性モノマーとしては、2~5官能の架橋性モノマーが好ましく、2又は3官能の架橋性モノマーがより好ましい。架橋性モノマーの中では、(メタ)アクリレート系架橋性モノマー、芳香族ビニル系架橋性モノマーが好ましい。
【0080】
上記(メタ)アクリレート系架橋性モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ブタントリオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グルコースジ(メタ)アクリレート、グルコーストリ(メタ)アクリレート、グルコーステトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、イノシトールジ(メタ)アクリレート、イノシトールトリ(メタ)アクリレート、イノシトールテトラ(メタ)アクリレート、マンニトールジ(メタ)アクリレート、マンニトールトリ(メタ)アクリレート、マンニトールテトラ(メタ)アクリレート、マンニトールペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0081】
また、上記芳香族ビニル系架橋性モノマーとしては、例えば、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルキシレン、ジビニルエチルベンゼン、ジビニルナフタレン等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0082】
また、上記アリル系架橋性モノマーとしては、例えば、フタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、テレフタル酸ジアリル、マレイン酸ジアリル、フマル酸ジアリル、イタコン酸ジアリル、トリメリット酸ジアリル、トリメリット酸トリアリル、シアヌル酸トリアリル、イソシアヌル酸ジアリル、イソシアヌル酸トリアリル等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
さらに、架橋性モノマーとしては、上記例示したものの他に、ジアミノプロパノール、トリスヒドロキシメチルアミノメタン、グルコサミン等のアミノアルコールと(メタ)アクリル酸との脱水縮合反応物や、ブタジエン、イソプレン等の共役ジオレフィン等を挙げることができる。
【0083】
特定重合体中の架橋性モノマーで構成される構造単位の含有割合は、特定部分構造100質量部に対して、好ましくは1~1000質量部であり、より好ましくは10~500質量部である。
【0084】
特定重合体は、特定部分構造を有するものであれば特に限定されるものではなく、アガロース、デキストラン、セルロース等の多糖類で構成される天然高分子でも合成高分子でもよいが、好ましくは合成高分子である。また、特定重合体は、好ましくは水不溶性重合体である。
また、特定重合体の含有量は、本発明のクロマトグラフィー用担体中、好ましくは80~100質量%であり、より好ましくは90~100質量%であり、特に好ましくは99~100質量%である。
また、本発明のクロマトグラフィー用担体は、支持体(固相担体)として使用できる形態であればよい。このような形態としては、例えば、粒子状、モノリス状、板状、膜状(中空糸を含む)、繊維状、カセット状、チップ状等が挙げられ、好ましくは粒子状である。また、本発明のクロマトグラフィー用担体としては、多孔質粒子等の多孔質担体が好ましい。また、多孔質粒子としては、多孔質ポリマー粒子が好ましい。
【0085】
また、本発明のクロマトグラフィー用担体が粒子状の担体である場合、平均粒径(体積平均粒径)は、耐圧性能や耐破損性能の点から、好ましくは20~150μmであり、より好ましくは40~100μmである。また、平均粒径の変動係数は、好ましくは40%以下であり、より好ましくは30%以下である。
また、本発明のクロマトグラフィー用担体の比表面積は、好ましくは1~500m2/gであり、より好ましくは10~300m2/gである。
また、本発明のクロマトグラフィー用担体の体積平均細孔径は、好ましくは10~300nmである。
なお、上記平均粒径、変動係数、比表面積及び体積平均細孔径は、レーザー回析・散乱粒子径分布測定等により測定できる。
【0086】
<クロマトグラフィー用担体の製造方法>
本発明のクロマトグラフィー用担体は、常法を適宜組み合わせて製造できるが、環状エーテル基、カルボキシ基、-C(=O)-O-C(=O)-、コハク酸イミドオキシカルボニル基、ホルミル基及びイソシアネート基からなる群より選ばれる1種以上の官能基を有する固相と、-C(=O)-NH-で示される基を分子内に少なくとも2個含む架橋剤とを接触させる工程を含む方法により、簡便且つ効率よく製造することができる。
【0087】
上記製法の具体的な方法としては、例えば、(工程1)原料粒子等の固相を常法に従って得て、図1に例示されるように、(工程2)得られた固相と、-C(=O)-NH-で示される基を分子内に少なくとも2個含む架橋剤とを接触させる方法が挙げられる。
以下、上記各工程について、具体的に説明する。
【0088】
(工程1)
工程1は、環状エーテル基、カルボキシ基、-C(=O)-O-C(=O)-、コハク酸イミドオキシカルボニル基、ホルミル基及びイソシアネート基からなる群より選ばれる1種以上の官能基を有するモノマー(以下、官能基含有モノマーとも称する)を(共)重合させ、上記官能基を有する固相を得る工程である。(共)重合の方法は、好ましくは懸濁重合である。
官能基含有モノマーとしては、構造単位(A)、(B)を構成するモノマーとして例示したものが挙げられる。また、官能基含有モノマーとともに上記他のモノマー(非架橋性モノマー、架橋性モノマー)を共重合させてもよい。
官能基含有モノマーの合計使用量としては、本発明の所望の効果を高める点から、工程1で使用するモノマー総量100質量部に対して、1~99質量部が好ましく、20~95質量部がより好ましく、40~90質量部が特に好ましい。
架橋性モノマーの合計使用量としては、本発明の所望の効果を高める点から、工程1で使用するモノマー総量100質量部に対して、1~70質量部が好ましく、3~60質量部がより好ましく、5~50質量部が特に好ましい。
なお、非架橋性モノマーを使用する場合、その合計使用量は、官能基含有モノマーや架橋性モノマー以外の残余の量である。
【0089】
また、工程1の具体的な方法としては、例えば、モノマー及び必要に応じて多孔化剤を含む混合溶液(単量体溶液)に重合開始剤を溶解させ、水系媒体中に懸濁させて所定温度まで加熱して重合させる方法や、モノマー及び必要に応じて多孔化剤を含む混合溶液(単量体溶液)に重合開始剤を溶解させ、所定温度まで加熱した水系媒体中に添加して重合させる方法、モノマー及び必要に応じて多孔化剤を含む混合溶液(単量体溶液)を、水系媒体中に懸濁させて所定温度まで加熱して、重合開始剤を添加し重合させる方法等が挙げられる。
【0090】
重合開始剤としてはラジカル重合開始剤が好ましい。ラジカル重合開始剤としては、例えば、アゾ系開始剤、過酸化物系開始剤、レドックス系開始剤等が挙げられ、具体的には、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル、アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、過酸化ベンゾイル、過酸化ジ-tert-ブチル、過酸化ベンゾイル-ジメチルアニリン等が挙げられる。重合開始剤の合計使用量は、通常、モノマー総量100質量部に対して0.01~10質量部程度である。
【0091】
上記多孔化剤は、多孔質粒子を製造するために使用され、油滴内の重合において、モノマーと共に存在し、非重合成分として孔を形成する役割を有する。多孔化剤は、多孔質表面において容易に除去可能なものであれば特に限定されるものではなく、例えば、各種の有機溶剤や混合モノマーに可溶な線状重合物等が挙げられ、これらを併用してもよい。
【0092】
上記多孔化剤としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン等の脂肪族炭化水素類;シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、テトラクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、4-メチル-2-ペンタノール、2-エチル-1-ヘキサノール等の脂肪族アルコール類;シクロヘキサノール等の脂環式アルコール類;2-フェニルエチルアルコール、ベンジルアルコール等の芳香族アルコール類;ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、アセトフェノン、2-オクタノン、シクロヘキサノン等のケトン類;ジブチルエーテル、ジイソブチルエーテル、アニソール、エトキシベンゼン等のエーテル類;酢酸イソペンチル、酢酸ブチル、酢酸-3-メトキシブチル、マロン酸ジエチル等のエステル類の他、非架橋性ビニルモノマーのホモポリマー等の線状重合物が挙げられる。多孔化剤は単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
上記多孔化剤の合計使用量は、通常、モノマー総量100質量部に対して40~600質量部程度である。
【0093】
上記水系媒体としては、例えば水溶性高分子水溶液等が挙げられ、水溶性高分子としては、例えばヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、デンプン、ゼラチン等が挙げられる。
水系媒体の合計使用量は、通常、モノマー総量100質量部に対して200~7000質量部程度である。
また、水系媒体の分散媒として水を用いる場合、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、硫酸ナトリウム、燐酸カルシウム、塩化ナトリウム等の分散安定剤を使用してもよい。
【0094】
また、工程1には、アルキル硫酸エステル塩、アルキルアリール硫酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩、脂肪酸塩等のアニオン性界面活性剤をはじめとする各種界面活性剤を用いてもよい。また、亜硝酸ナトリウム等の亜硝酸塩、ヨウ化カリウム等のヨウ化物塩、tert-ブチルピロカテコール、ベンゾキノン、ピクリン酸、ハイドロキノン、塩化銅、塩化第二鉄等の重合禁止剤を用いることもできる。また、ドデシルメルカプタン等の重合調製剤を用いてもよい。
【0095】
また、工程1の重合温度は重合開始剤に応じて決定すればよいが、通常2~100℃程度であり、アゾビスイソブチロニトリルを重合開始剤として用いる場合は、50~100℃が好ましく、60~90℃がより好ましい。また、重合時間は通常5分間~48時間、好ましくは10分間~24時間である。
【0096】
(工程2)
工程2は、官能基含有モノマーに由来する官能基の一部に、-C(=O)-NH-で示される基を分子内に少なくとも2個含む架橋剤を付加反応させ、当該架橋剤由来の特定部分構造を導入する工程である。これにより、上記官能基の残基同士が特定部分構造を介して架橋される。
【0097】
工程2で用いる架橋剤としては、-C(=O)-NH-で示される基を分子内に少なくとも2個含む架橋剤として上記で例示したものが挙げられ、-C(=O)-NH-で示される基を分子内に少なくとも2個含むとともに、リガンドを固定可能な官能基と反応して架橋構造を導入できるものが好ましい。
固相が環状エーテル基を有する場合には、具体的には、架橋性基として-C(=O)-NH-NH2で示される基を分子内に少なくとも2個含む架橋剤、-C(=O)-NH-で示される基を分子内に少なくとも2個含むとともに、架橋性基としてカルボキシ基を分子内に少なくとも2個含む架橋剤等を使用することができる。
固相がカルボキシ基、-C(=O)-O-C(=O)-、コハク酸イミドオキシカルボニル基、ホルミル基を有する場合には、具体的には、架橋性基として-C(=O)-NH-NH2で示される基を分子内に少なくとも2個含む架橋剤等を使用することができる。
固相がイソシアネート基を有する場合には、具体的には、架橋性基として-C(=O)-NH-NH2で示される基を分子内に少なくとも2個含む架橋剤等を使用することができる。
なお、架橋剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0098】
架橋剤の合計使用量は、本発明の所望の効果を高める点から、官能基含有モノマーに由来する官能基1モルに対して、好ましくは0.01~0.8モル当量であり、より好ましくは0.05~0.7モル当量であり、更に好ましくは0.1~0.6モル当量であり、特に好ましくは0.2~0.5モル当量である。本発明によれば、架橋剤の合計使用量が0.2モル当量以上の場合であっても優れた防汚性が得られる。
【0099】
なお、工程2は、塩基性触媒存在下で行ってもよい。塩基性触媒としては、トリエチルアミン、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン、ジイソプロピルエチルアミン等が挙げられ、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0100】
また、工程2の反応時間は特に限定されないが、通常0.5~72時間程度であり、好ましくは0.5~48時間である。また、反応温度は、溶媒の沸点以下で適宜選択すればよいが、通常2~100℃程度である。
【0101】
なお、上記各工程で得られる反応生成物を、蒸留、抽出、洗浄等の分離手段で精製してもよい。
【0102】
そして、上記のようにして製造できる本発明のクロマトグラフィー用担体は、親水性が高く優れた防汚性を有し、且つ耐圧性能及び耐破損性能に優れる。また、リガンドを固定した場合の標的物質に対する動的結合容量が大きい。さらに、モノマー組成に依らずこのような効果を得ることができ、しかも製造も簡便である。
本発明のクロマトグラフィー用担体は、アフィニティクロマトグラフィー用担体として特に有用である。
【0103】
<リガンド固定担体>
本発明のリガンド固定担体は、本発明のクロマトグラフィー用担体に、リガンドを固定してなるものである。すなわち、本発明のクロマトグラフィー用担体を支持体(固相担体)としたものである。支持体とする担体としては、本発明の所望の効果を高める点から、特定部分構造とリガンドを固定可能な官能基とを有する重合体を含む担体が好ましい。
上記リガンドは、標的物質と結合する分子であればよいが、例えば、プロテインA、プロテインG、アビジン等のタンパク質;インシュリン等のペプチド;DNA、RNA等の核酸;酵素;イミノジ酢酸等のキレート化合物;抗体;抗原;ホルモン;ヘパリン、ルイスX、ガングリオシド等の糖質;レセプター;アプタマー;ビオチンやその誘導体等のビタミン類;金属イオン;合成色素の他、2-アミノフェニルホウ素酸、4-アミノベンズアミジン、グルタチオンのような低分子化合物等が挙げられる。なお、上記に例示したリガンドはその全体を用いてもよいが、リコンビナント、酵素処理等によって得られるそのフラグメントを用いてもよい。また、人工的に合成されたペプチドやペプチド誘導体であってもよい。
上記リガンドの中でも、タンパク質、ペプチド、核酸、酵素、キレート化合物が好ましく、タンパク質、ペプチドがより好ましく、タンパク質が特に好ましい。特に、抗体を標的物質とする抗体アフィニティリガンドの中では、イムノグロブリン結合性タンパク質が好ましい。
【0104】
抗体アフィニティリガンドとしては、ペプチド性リガンド、タンパク質性リガンド、化学合成性リガンド(合成化合物)が挙げられ、好ましくはペプチド性又はタンパク質性リガンドである。中でも、プロテインA、プロテインG、プロテインL、プロテインH、プロテインD、プロテインArp、プロテインFcγR、抗体結合性合成ペプチドリガンド、これらの類縁物質が好ましく、プロテインA、プロテインG、プロテインL、これらの類縁物質がより好ましく、プロテインA、その類縁物質が特に好ましい。
【0105】
リガンドの固定量は、動的結合容量の点から、クロマトグラフィー用担体の乾燥重量1g当たり、好ましくは10~300mg、より好ましくは25~150mgである。リガンドの固定量は、後述する実施例と同様の方法で測定すればよい。
【0106】
担体へのリガンドの固定は常法と同様にして行えばよい。リガンド固定法としては、例えば、リガンドを固定可能な官能基にリガンドを結合させる方法が挙げられる。この方法は、国際公開第2015/119255号パンフレット、国際公開第2015/041218号パンフレット等の記載を参考にして行えばよい。具体的には、担体の環状エーテル基やカルボキシ基、-C(=O)-O-C(=O)-、ホルミル基等とリガンドのアミノ基等を結合させる方法が挙げられる。
また、リガンドの配向性を制御する方法(米国特許第6,399,750号、LjungquistC.他著,rEur.J.Biochem.」,1989年,186巻,557-561頁)や、リンカー(スペーサー)を介してリガンドを担体に固定する方法(米国特許第5,260,373号、特開2010-133733号公報、特開2010-133734号公報)、会合性基によりリガンドを担体上に集積させる方法(特開2011-256176号公報)等を利用して固定してもよい。
なお、リガンドが固定された担体を、メタンチオール、チオグリセロール等のチオール化合物と接触させ、未反応の官能基を開環等させてもよい。この処理は、国際公開第2015/119255号パンフレット等の記載を参考にして行えばよい。
【0107】
そして、本発明のリガンド固定担体は、優れた防汚性を有し、且つ耐圧性能及び耐破損性能に優れ、更に標的物質に対する動的結合容量が大きい。
本発明のリガンド固定担体は、クロマトグラフィーへの使用に適し、アフィニティクロマトグラフィーへの使用に特に適する。
【0108】
<クロマトグラフィーカラム>
本発明のクロマトグラフィーカラムは、本発明のリガンド固定担体がカラム容器に充填されているものである。
本発明のクロマトグラフィーカラムは、アフィニティクロマトグラフィーへの使用に適する。
【0109】
<標的物質の精製方法>
本発明の標的物質の精製方法は、クロマトグラフィーによって標的物質を精製する方法であって、本発明のリガンド固定担体を用いることを特徴とする。
本発明の標的物質の精製方法は、本発明のリガンド固定担体を用いる以外は常法に従い行えばよいが、本発明のリガンド固定担体と、標的物質を含む試料とを接触させる工程を含む方法が挙げられる。また、当該工程によって担体に捕捉された標的物質を溶出させる溶出工程を更に含んでいてもよい。溶出工程には、リガンドと標的物質を解離させる解離液が通常使用される。
また、精製は、本発明のクロマトグラフィーカラムを用いて行ってもよい。このような方法としては、本発明のクロマトグラフィーカラムに標的物質を含む試料を通液する工程を含む方法が挙げられ、上記と同様に溶出工程を更に含んでいてもよい。
本発明における標的物質としては、例えば、抗原;モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体等の抗体;細胞(正常細胞;大腸がん細胞、血中循環がん細胞等のがん細胞);DNA、RNA等の核酸;タンパク質、ペプチド、アミノ酸、糖、多糖、脂質、ビタミン等の生体関連物質が挙げられ、創薬ターゲットとなる薬物、ビオチン等の低分子化合物でもよい。
【実施例
【0110】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0111】
(実施例1)
(1)448gの純水にポリビニルアルコール(クラレ社製 PVA-217)2.69gを添加し、加熱撹拌してポリビニルアルコールを溶解させ、冷却した後、ドデシル硫酸ナトリウム(和光純薬工業製)0.045gを添加し、撹拌して水溶液Sを調製した。
一方、ジビニルベンゼン(和光純薬工業製)3.63g、1-エチル-4-ビニルベンゼン(ChemSampCo社製)0.36g及びグリシジルメタクリレート(三菱ガス化学社製)14.15gからなる単量体組成物を、2-オクタノン(東洋合成社製)29.38gに溶解させ、単量体溶液を調製した。
次いで、前記水溶液Sを、セパラブルフラスコ内に全量投入し、温度計、撹拌翼及び冷却管を装着して、温水バスにセットし、窒素雰囲気下で撹拌を開始した。セパラブルフラスコ内に前記単量体溶液を全量投入して、温水バスにより加温し内温が85℃に到達したところで2,2'-アゾイソブチロニトリル(和光純薬工業社製)1.34gを添加し、内温を86℃にした。
【0112】
(2)その後、86℃に温度を維持したまま、3時間撹拌を行った。次いで、反応液を冷却した後、斯かる反応液をろ過し、純水とエタノールで洗浄した。洗浄した粒子を純水に分散させてデカンテーションを3回行い、小粒子を除いた。次いで、粒子の濃度が10質量%となるように粒子を純水に分散させ、多孔質粒子分散液を得た。この分散液に含まれる多孔質粒子を、「多孔質担体1」と称する。
(3)その後、多孔質粒子分散液100gにアジピン酸ジヒドラジド(東京化成工業株式会社製)0.956g及びジイソプロピルエチルアミン1.418gを加え、70℃まで加温し、70℃を維持したまま、8時間撹拌を行った。次いで、反応液を冷却した後、斯かる反応液をろ過し、純水とエタノールで洗浄した。次いで、粒子の濃度が10質量%となるように粒子を純水に分散させ、多孔質架橋粒子分散液を得た。この分散液に含まれる多孔質架橋粒子を、「クロマトグラフィー用担体V1」と称する。
(4)次いで、改変プロテインA(Repligen製 rSPA)0.15gを、1.2M 硫酸ナトリウム/0.1M リン酸ナトリウムバッファー(pH6.6)40mLに溶解させプロテインA溶解液を得て、このプロテインA溶解液に多孔質架橋粒子分散液(粒子乾燥質量換算で1g相当)を添加した。この分散液を25℃で10時間振とう撹拌し、プロテインAを粒子に固定した。
次いで、生成したプロテインA固定粒子を、1.0M α-チオグリセロール(東京化成工業株式会社製)/0.1M 硫酸ナトリウム(pH8.3)40mLに分散させ、25℃で17時間振とう撹拌することで、未反応のエポキシ基を開環させた。さらに、得られた未反応のエポキシ基が開環したプロテインA固定粒子を、0.1M リン酸ナトリウムバッファー(pH6.6)、0.1M 水酸化ナトリウム水溶液、0.1Mクエン酸ナトリウムバッファー(pH3.2)で洗浄し、アフィニティクロマトグラフィー用充填剤含有液を得た。この液に含まれる充填剤を、「リガンド固定担体W1」と称する。
【0113】
(実施例2)
実施例1の工程(3)において、アジピン酸ジヒドラジドの使用量を2.390gに、ジイソプロピルエチルアミンの使用量を3.546gにそれぞれ変更した以外は、実施例1の工程(1)~(3)と同様の操作を行い、多孔質架橋粒子分散液を得た。この分散液に含まれる多孔質架橋粒子を、「クロマトグラフィー用担体V2」と称する。
次いで、実施例1の工程(4)と同様の工程を実施することで、アフィニティクロマトグラフィー用充填剤含有液を得た。この液に含まれる充填剤を、「リガンド固定担体W2」と称する。
【0114】
(実施例3)
実施例1の工程(3)において、アジピン酸ジヒドラジドの使用量を3.823gに、ジイソプロピルエチルアミンの使用量を5.673gにそれぞれ変更した以外は、実施例1の工程(1)~(3)と同様の操作を行い、多孔質架橋粒子分散液を得た。この分散液に含まれる多孔質架橋粒子を、「クロマトグラフィー用担体V3」と称する。
次いで、実施例1の工程(4)と同様の工程を実施することで、アフィニティクロマトグラフィー用充填剤含有液を得た。この液に含まれる充填剤を、「リガンド固定担体W3」と称する。
【0115】
(実施例4)
実施例1の工程(3)において、アジピン酸ジヒドラジドをコハク酸ジヒドラジド(東京化成工業株式会社製)0.802gに変更した以外は、実施例1の工程(1)~(3)と同様の操作を行い、多孔質架橋粒子分散液を得た。この分散液に含まれる多孔質架橋粒子を、「クロマトグラフィー用担体V4」と称する。
次いで、実施例1の工程(4)と同様の工程を実施することで、アフィニティクロマトグラフィー用充填剤含有液を得た。この液に含まれる充填剤を、「リガンド固定担体W4」と称する。
【0116】
(実施例5)
実施例1の工程(3)において、アジピン酸ジヒドラジドをセバシン酸ジヒドラジド(東京化成工業株式会社製)1.264gに変更した以外は、実施例1の工程(1)~(3)と同様の操作を行い、多孔質架橋粒子分散液を得た。この分散液に含まれる多孔質架橋粒子を、「クロマトグラフィー用担体V5」と称する。
次いで、実施例1の工程(4)と同様の工程を実施することで、アフィニティクロマトグラフィー用充填剤含有液を得た。この液に含まれる充填剤を、「リガンド固定担体W5」と称する。
【0117】
(実施例6)
実施例1の工程(3)において、アジピン酸ジヒドラジドを、下記式で示されるN1,N1-(エタン-1,2-ジイル)ビス(コハク酸モノアミド)1.428gに変更した以外は、実施例1の工程(1)~(3)と同様の操作を行い、多孔質架橋粒子分散液を得た(なお、N1,N1-(エタン-1,2-ジイル)ビス(コハク酸モノアミド)は、コハク酸無水物とエチレンジアミンから合成した)。この分散液に含まれる多孔質架橋粒子を、「クロマトグラフィー用担体V6」と称する。
次いで、実施例1の工程(4)と同様の工程を実施することで、アフィニティクロマトグラフィー用充填剤含有液を得た。この液に含まれる充填剤を、「リガンド固定担体W6」と称する。
【0118】
【化15】
【0119】
(比較例1)
実施例1の工程(1)~(2)と同様の操作を行い、「多孔質担体1」を得た。この担体を、「クロマトグラフィー用担体X1」と称する。
次いで、実施例1の工程(4)と同様の工程を実施することで、アフィニティクロマトグラフィー用充填剤含有液を得た。この液に含まれる充填剤を、「リガンド固定担体Y1」と称する。
【0120】
(比較例2)
実施例1の工程(3)において、アジピン酸ジヒドラジドを3,6-ジオキサ-1,8-オクタンジチオール(東京化成工業株式会社製)1.000gに変更した以外は、実施例1の工程(1)~(3)と同様の操作を行い、多孔質架橋粒子分散液を得た。この分散液に含まれる多孔質架橋粒子を、「クロマトグラフィー用担体X2」と称する。
次いで、実施例1の工程(4)と同様の工程を実施することで、アフィニティクロマトグラフィー用充填剤含有液を得た。この液に含まれる充填剤を、「リガンド固定担体Y2」と称する。
【0121】
試験例1 (圧密線流速の測定)
各実施例及び比較例で得られた担体V1~V3、X1~X2を内径16mm、充填高さ100mmとなるようにカラム容器に充填し、このカラムをGEヘルスケアバイオサイエンス社製AKTA pilotに接続した。次いで、線流速100cm/hrで純水の通液を開始して、線流速を100cm/hrずつ1分間毎に段階的に上げていき、2.0MPaに達したときの線流速を圧密線流速として記録した。そして、圧密線流速について以下の基準で評価した。結果を表1に示す。
【0122】
(圧密線流速の評価基準)
AAA:圧密線流速が3500cm/hr以上
AA:圧密線流速が3100cm/hr以上3500cm/hr未満
A:圧密線流速が2900cm/hr以上3100cm/hr未満
B:圧密線流速が2900cm/hr未満
【0123】
試験例2 (耐破損性能の評価)
各実施例及び比較例で得られた担体V1~V3、X1~X2を、固形分濃度10質量%となるように純水に加え、定量制御ダイヤフラムポンプ(タクミナ社製)を用いて6L/minの吐出速度で60回の循環処理を行った。
その後、循環処理後の担体を、固形分濃度が2.5質量%程度となるように純水で希釈し、シスメックス社製フロー式粒子像分析装置(型番 FPIA-3000)を用いてトータルカウント500個にセットして各粒子の円形度(=(粒子投影面積と同じ面積の円の周囲長/粒子投影像の周囲長)×100)を測定した。
次いで、全測定対象粒子のうち円形度0.95以上の粒子の個数を全測定粒子数で除することにより円形度0.95以上の粒子分布(=円形度0.95以上の粒子数/測定粒子数×100)を算出し、以下の基準で評価した。結果を表1に示す。
【0124】
(耐破損性能の評価基準)
AA:円形度0.95以上の粒子分布が93%以上
A:円形度0.95以上の粒子分布が89%以上93%未満
B:円形度0.95以上の粒子分布が89%未満
【0125】
【表1】
【0126】
試験例3 (プロテインA結合量の定量)
各実施例及び比較例で得られた担体W1~W3、Y1~Y2に結合したプロテインAの結合量を、ビシンコニン酸(BCA)試薬を用いて定量した。
具体的には、固形分換算で1mgの担体W1~W3、Y1~Y2と、参照値を測定するためにプロテインAを結合する前の担体V1~V3、X1~X2をテストチューブにそれぞれ採取し、ThermoFisher Scientific社のBCA Protein Assay液に浸透させ、37℃で30分間、転倒混和した。
その後、各反応液の吸光度(波長:570nm)と検量線(担体に結合させたプロテインAと同一)の吸光度から結合量を算出した。表2に示す結合量は参照値を差し引いた値である。
【0127】
試験例4 (親水性の評価)
各実施例及び比較例の担体W1~W3、Y1~Y2の親水性を評価した。
すなわち、GEヘルスケア社製AKTAprime plusを用いて、20mMリン酸ナトリウム/150mM塩化ナトリウム水溶液(pH7.5)を線流速300cm/hrで通液することで、それぞれの担体を容量4mL(5mmφ×200mm長)のカラムに充填高さ約20cmでパッキングした。
その後、1体積%アセトン/1Mナトリウム水溶液(100μL)をカラムに注入し、次いで20mMリン酸ナトリウム/150mM塩化ナトリウム水溶液(pH7.5)を線流速300cm/hrで通液することで、アセトンの保持時間(RT(アセトン))をUV検出器で測定した。次いで、1体積%シクロヘキサノン/1Mナトリウム水溶液(100μL)を用いて、同様にシクロヘキサノンの保持時間(RT(シクロヘキサノン))を測定した後、RT(シクロヘキサノン)/RT(アセトン)の値(CHN/ACN)を算出し、親水性を以下の基準で評価した。結果を表2に示す。なお、CHN/ACNが小さいほど親水性が高いといえる。
【0128】
(親水性の評価基準)
AA:CHN/ACNが1.060以下
A:CHN/ACNが1.060超1.078以下
B:CHN/ACNが1.078超
【0129】
試験例5 (DBCの測定)
GEヘルスケア社製AKTAprime plusを用いて、線流速300cm/hrにおけるタンパク質(ヒトIgG抗体、Equitech Bio社製 HGG-1000)に対する各実施例及び比較例の担体W1~W3、Y1~Y2のDBCを測定した。カラム容器は容量4mL(5mmφ×200mm長)のものを、タンパク質は20mMリン酸ナトリウム/150mM塩化ナトリウム水溶液(pH7.5)にタンパク質を5mg/mL溶解したものをそれぞれ使用し、溶出先端10%ブレークスルーのときのタンパク質捕捉量とカラム充填体積からDBCを求めた。結果を表2に示す。
【0130】
試験例6 (HCPの測定)
カラム容器(GEヘルスケア社製Tricorn10/50 column)に、各実施例及び比較例の担体W1~W3、Y1~Y2を、充填高さ約5cmで充填してカラムを作製した。得られたカラムをGEヘルスケア社製AKTA Prime Plusにそれぞれ接続し、20mMリン酸ナトリウムバッファー(pH7.5)を5カラム容量(カラム容積の5倍)、流速1mL/分にて通液し、平衡化させた。
次いで、モノクローナル抗体Trastuzumabを含有するCHO細胞培養上清を、約23mg抗体/mL担体の負荷量で、流速1mL/分にてカラムに通液した。
次いで、20mMリン酸ナトリウムバッファー(pH7.5)、20mMリン酸ナトリウム/1M塩化ナトリウムバッファー(pH7.5)、及び20mMリン酸ナトリウムバッファー(pH7.5)を、それぞれ5カラム容量、流速1mL/分にてカラムに順次通液した。
その後、50mMクエン酸ナトリウムバッファー(pH3.2)を、流速1mL/分にてカラムに通液し、カラム内に捕捉されていたモノクローナル抗体を溶出させ、Abs.280>100mAuの溶出フラクションを回収した。
そして、分光光度計を用い、回収したフラクション中に含有される抗体濃度(mg/mL)を測定した。また、Cygnus Technologies社製 CHO HCP ELISA kit,3Gを用い、回収したフラクション中に含有されるHost Cell Protein(HCP)の濃度(ng/mL)を測定した。さらにHCPの濃度を抗体濃度で除することにより、単位抗体量当たりのHCP量を算出し、以下の基準で評価した。結果を表2に示す。
(HCPの評価基準)
A:HCPが3300ppm以下
B:HCPが3300ppm超
【0131】
【表2】
図1