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特許7026169液性免疫の抑制または増進のための、VISTAアゴニスト及びVISTAアンタゴニストの使用
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  • 特許-液性免疫の抑制または増進のための、VISTAアゴニスト及びVISTAアンタゴニストの使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-16
(45)【発行日】2022-02-25
(54)【発明の名称】液性免疫の抑制または増進のための、VISTAアゴニスト及びVISTAアンタゴニストの使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20220217BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220217BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220217BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220217BHJP
   C07K 16/18 20060101ALN20220217BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20220217BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20220217BHJP
【FI】
A61K39/395 U ZNA
A61K39/395 D
A61K45/00
A61P35/00
A61P43/00 121
C07K16/18
C12P21/08
C12N15/13
【請求項の数】 1
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020107224
(22)【出願日】2020-06-22
(62)【分割の表示】P 2017517210の分割
【原出願日】2015-06-11
(65)【公開番号】P2020169192
(43)【公開日】2020-10-15
【審査請求日】2020-07-22
(31)【優先権主張番号】62/010,736
(32)【優先日】2014-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516371449
【氏名又は名称】キャシー・エイ・グリーン
(73)【特許権者】
【識別番号】516371450
【氏名又は名称】リー・ワン
(73)【特許権者】
【識別番号】516371461
【氏名又は名称】ランドルフ・ジェイ・ノエル
(73)【特許権者】
【識別番号】516371472
【氏名又は名称】ウィリアム・アール・グリーン
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(72)【発明者】
【氏名】キャシー・エイ・グリーン
(72)【発明者】
【氏名】リー・ワン
(72)【発明者】
【氏名】ランドルフ・ジェイ・ノエル
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム・アール・グリーン
【審査官】伊藤 基章
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-527144(JP,A)
【文献】Cancer Research,2014年04月,Vol.74,No.7,p1933-1944
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/395
A61K 45/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌を有する対象において、VISTAが媒介する液性免疫阻害阻害または無効化するための医薬組成物であって、VISTAアンタゴニストである抗VISTA抗体またはVISTAアンタゴニストである抗VISTA抗体断片を含み、iNOS/NO阻害物質と組み合わせて使用される、前記医薬組成物
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2014年6月11日出願の米国仮出願第62/010,736号に対する優先権を主張する。この出願は、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、VISTAがB細胞応答性を調節(抑制)するという発見に関する。この発見に基づき、本発明は、B細胞応答性の抑制と、B細胞応答性の低減が治療的に有益である状態の治療と、を目的とした、VISTAアゴニストの単独使用、またはiNOS/NO阻害物質などの他の免疫抑制因子と関連させた使用に関する。また、本発明は、B細胞応答性の促進と、B細胞応答性の増進が治療的に有益である状態の治療のための、VISTAアンタゴニストの単独使用または併用にも関する。
【背景技術】
【0003】
骨髄由来抑制細胞(MDSC)による、T細胞応答に対する阻害は、腫瘍の微小環境において、十分に明らかにされている。本発明の発明者らは、LP-BM5レトロウイルスを、それに感受性であるB6マウスに感染させ、その感染期間中に単球性MDSCを導入することで、重度の免疫不全が引き起こされることを示した(2013,J.Viral.87:2058-2071)。こうしたMDSCは、エクスビボでの抑制アッセイにおいて、T細胞応答性だけでなく、B細胞応答性も阻害した。刺激されたT細胞の増殖及びIFN-ガンマの産生の、MDSCによる阻害は、ほとんど完全にiNOS/NO依存性であった一方で、B細胞応答のMDSCによる抑制の、iNOS/NOに対する依存性は、僅か約50%にすぎなかった。この結果は、iNOS阻害物質と、MDSCの供給源としてiNOSのノックアウト(k.o.)マウスと、を使用して示したものである。
【0004】
ここで、我々は、新規に説明される負のチェックポイント制御因子であるVISTAを調べることによって、MDSCによるB細胞応答性の阻害における、追加の抑制機構をさらに研究した。抗VISTA遮断抗体、及びLP-BM5に感染したVISTA-/-MDSCを使用したところ、MDSCによるB細胞応答の抑制は、MDSCが発現したVISTAに部分的に依存するものであった。試薬を併用して、iNOS/NO及びVISTAの両方を遮断すると、MDSCによるB細胞応答性の抑制は、相乗的とはいかないにせよ、相加的に解除された。こうした結果は、LP-BM5が誘導する免疫不全における、MDSCの役割と矛盾しないと共に、現在研究課程にある、MDSCによるB細胞応答の抑制に関する領域において、特有の抑制経路が複数存在し、それらの関与が強調されていることとも矛盾しないものであった。
【発明の概要】
【0005】
前述のように、本発明は、VISTAがB細胞応答性を調節(抑制)するという発見に
関する。この発見に基づき、本発明は、B細胞応答性の抑制と、B細胞応答性の低減が治療的に有益である状態の治療と、を目的とした、VISTAアゴニストの使用に関する。また、本発明は、B細胞応答性の促進と、B細胞応答性の増進が治療的に有益である状態の治療のための、VISTAアンタゴニストの使用に関する。
【0006】
具体的には、ヒトにおいてB細胞応答性の低減が望ましい状態を治療するために、アゴニストである抗ヒトVISTA抗体もしくは抗ヒトVISTA抗体断片、または例えば、VISTA融合タンパク質といったVISTAポリペプチドが使用される。具体的には、これは、疾患病理にB細胞応答が関与する、自己免疫性状態、アレルギー性状態、及び炎
症性状態を治療する上で、治療的に望ましくあり得る。
【0007】
また、ヒトにおいてB細胞応答性の増加が望ましい状態を治療するために、アンタゴニストである抗ヒトVISTA抗体もしくは抗ヒトVISTA抗体断片、または例えば、VISTA断片及びVISTA結合体といったVISTAポリペプチドを単独、または抗原及び可能性のある別の免疫アゴニストと関連させて使用してよい。具体的には、これは、癌、感染性疾患の治療において、治療的に望ましくあり得ると共に、例えば、腫瘍抗原、自己抗原、または感染病原体もしくは感染病原体に感染した細胞に対して特異的である抗原といった、所望の抗原に対する、例えば、防御的なB細胞免疫応答を誘発するための、予防ワクチン及び治療ワクチンといったワクチンの効力促進においても、治療的に望ましくあり得る。
【0008】
VISTAは、T細胞活性化のV-ドメイン免疫グロブリン抑制因子(VISTA)(GenBank:JN602184)75と命名された、免疫グロブリン(Ig)ファミリーのリガンドである。VISTAの重要な特徴には下記のものが含まれる。PD-L1に対して、VISTAが有する相同性は限られたものであるが、その特有構造に起因して、VISTAはB7ファミリーには属していない。VISTAは、造血性コンパートメント内に排他的に発現するものであり、CD11bを高発現する骨髄系細胞(CD11b.sup.high myeloid cell)上で発現レベルが非常に高く、CD4+T細胞及びCD8+T細胞、ならびに制御性T細胞上の発現レベルは低い。可溶性であるVISTA-Ig融合タンパク質、またはAPC上に発現するVISTAは、PD-1非依存性である未同定の受容体を介して、CD4+T細胞及びCD8+T細胞の増殖及びサイトカイン産生を抑制するためのリガンドとして働く。抗VISTAmAb(13F3)は、VISTAが媒介するT細胞の抑制をインビトロで無効にし、抗腫瘍T細胞応答を増進することによって、複数のマウス腫瘍モデルにおいて腫瘍の増殖を抑制した。腫瘍細胞上でVISTAを過剰発現させると、ワクチン接種した宿主における、防御的な抗腫瘍免疫が損なわれた。VISTAをノックアウトしたマウスでは、炎症性の表現型が発生し、これは、末梢性寛容の減少を示唆するものである。米国特許第8,236,304号及び第8,231,872号、公開国際出願WO/2011/120013及びWO/2006/116181、米国公開出願第2008/0287358号、第2011/0027278号、及び第2012/0195894号、ならびに2005年4月25日出願の米国仮特許出願第60/674,567号、2012年6月22日出願の第61/663,431号、2012年6月25日出願の第61/663,969号、2010年10月6日出願の第61/390,434号、2011年1月26日出願の第61/436,379号、及び2011年3月7日出願の第61/449,882号を参照のこと。これらの文献はそれぞれ、その全体が参照によって、本明細書に組み込まれる。
【0009】
したがって、VISTAは、T細胞関連の免疫応答を決定的に制御する免疫チェックポイントタンパク質リガンドであることが一般に知られている。しかしながら、本発明以前は、VISTAがさらにB細胞応答性を制御することは知られていなかった。
【0010】
骨髄由来抑制細胞(MDSC)によるT細胞応答に対する阻害は、腫瘍の微小環境において、十分に明らかにされている。しかしながら、B細胞応答に対するその作用の解明は、はるかに遅れている。本明細書で、我々は、負のチェックポイント制御因子であるVISTAが関与する、MDSCによるB細胞応答性の阻害における、追加の抑制機構を示す。抗VISTA遮断抗体、及びLP-BM5に感染したVISTA-/-MDSCを使用したところ、MDSCによるB細胞応答の抑制は、MDSCが発現したVISTAに部分的に依存するものであった。試薬を併用して、iNOS/NO及びVISTAの両方を遮断すると、MDSCによるB細胞応答性の抑制は、相乗的とはいかないにせよ、相加的に解除された。こうした結果は、LP-BM5が誘導する免疫不全において、MDSCが能
動的に役割を担っていると共に、現在研究課程にある、MDSCによるB細胞応答の抑制に関する領域において、特有の抑制経路が複数存在し、それらが強く関与していることを示すものである。
【0011】
発明の例示の実施形態
本発明は、必要とする対象における、VISTAが媒介する液性免疫阻害の阻害方法または無効化方法を提供し、当該方法は、例えば、B細胞免疫が抑制される癌または感染性疾患状態を有する対象における、VISTAアンタゴニストの単独投与、または別の免疫アゴニストと関連させた投与を含む。
【0012】
本発明は、必要とする対象における、VISTAが媒介する液性免疫阻害の促進方法または増加方法も提供し、当該方法は、例えば、疾患病理にB細胞応答または抗体応答が関与する、自己免疫性状態、アレルギー性状態、炎症性状態、または感染性状態を有する対象における、VISTAアゴニストの単独投与、または別の免疫アンタゴニストと関連させた投与を含む。
【0013】
本発明は、必要とする対象における、限定はされないが、抗原特異的な抗体応答を含むB細胞増殖またはB細胞応答の抑制方法も提供し、当該方法は、例えば、疾患病理にB細胞応答または抗体応答が関与する、自己免疫性状態、アレルギー性状態、炎症性状態、または感染性状態を有する対象に対する、VISTAアゴニストの投与を含む。
【0014】
本発明は、必要とする対象における、限定はされないが、抗原特異的な抗体応答を含むB細胞増殖またはB細胞応答の増加方法も提供し、当該方法は、例えば、B細胞免疫が抑制される癌または感染性疾患状態を有する対象に対する、VISTAアゴニストの投与を含む。
【0015】
本発明は、抗原または治療抗体に対して誘発される液性免疫応答の促進方法も提供し、当該方法は、VISTAアンタゴニストの使用を含む治療レジメンにおける、そのような抗原または抗体の投与を含み、例えば、当該抗原は、腫瘍抗原、自己抗原、アレルゲン、もしくは感染病原体の抗原であるか、または当該抗体は、腫瘍抗原、自己抗原、アレルゲンもしくは感染病原体の抗原に対して特異的である。
【0016】
本発明は、治療ワクチンまたは予防ワクチンによって誘発される液性免疫応答の促進方法も提供し、当該方法は、VISTAアンタゴニストの使用を含む治療レジメンにおける、そのようなワクチンの投与を含み、例えば、当該ワクチンは、腫瘍抗原、自己抗原、アレルゲン、または感染病原体の抗原を含む。
【0017】
本発明は、VISTAアンタゴニスト及びiNOS/NO阻害物質を使用した、液性免疫応答の促進方法も提供し、当該iNOS/NO阻害物質は、例えば、任意選択で、NG-ニトロ-L-アルギニンメチルエステル、NG-エチル-L-アルギニン、N-イミノエチル-L-アルギニン、L-NG-メチルアルギニン、及びNG-ニトロ-L-アルギニンであるアルギニン誘導体であるか、または当該阻害物質は、NG-ニトロ-L-アルギニンメチルエステルもしくはロバスタチン、フェニル酢酸のナトリウム塩(NaPA)、FPT阻害物質II、N-アセチルシステイン(NAC)、及びcAMPであるか、または米国第6,586,474号、第6,545,170号、第6,593,372号、第6,787,668号、第6,809,117号、第6,591,889号、第7,196,118号、第7,049,058号に開示のiNOS/NO阻害物質のいずれかであり、これらはすべて、参照によって、それらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0018】
本発明は、VISTAアゴニストと、例えば、一酸化窒素または一酸化窒素を含む化合
物といったiNOS/NO促進物質と、を使用した、液性免疫応答の阻害方法も提供する。
【0019】
前述の実施形態のいずれかでは、VISTAアンタゴニストには、アンタゴニストである抗ビスタ抗体またはVISTAの断片が含まれてよい。
【0020】
前述の実施形態のいずれかでは、VISTAアゴニストには、アゴニストである抗ヒトVISTA抗体または抗ヒトVISTA抗体断片またはVISTA-Ig結合体またはVISTAの多量体形態が含まれてよく、例えば、当該VISTA-Igは、少なくとも1つのエフェクター機能の減弱もしくは増加のために、任意選択で改変され得るIgG1、IgG2、IgG3、もしくはIgG4のFc領域もしくはその断片を含むか、またはヒト抗体もしくはヒト化抗体を含んでよい。
【0021】
前述の実施形態のいずれかでは、VISTAアンタゴニストまたはVISTAアゴニストは、PD-1アゴニストもしくはPD-L1アゴニスト、またはPD-1アンタゴニストもしくはPD-L1アンタゴニストと関連させて使用してよく、例えば、当該アゴニストまたはアンタゴニストは、抗PD-1抗体もしくは抗PD-L1抗体、またはPD-1融合タンパク質、またはPD-1もしくはPD-L1を発現する細胞である。
【0022】
前述の実施形態のいずれかでは、VISTAアンタゴニスト及びiNOS/NO阻害物質は、一緒に投与される。
【0023】
前述の実施形態のいずれかでは、VISTAアゴニスト及びiNOS/NO促進物質は、一緒に投与される。
【0024】
前述の実施形態のいずれかでは、VISTAアンタゴニスト及びiNOS/NO阻害物質は、B細胞免疫を促進するための治療レジメンにおいて、別々に投与される。
【0025】
前述の実施形態のいずれかでは、VISTAアンタゴニストである化合物及びiNOS/NO阻害物質である化合物は、単独投与されるこうした化合物のいずれかと比較して、液性免疫に対する相乗作用を誘発するために十分な量で投与される。
【0026】
前述の実施形態のいずれかでは、VISTAアゴニストである化合物及びiNOS/NO促進物質または一酸化窒素は、単独投与されるこうした化合物のいずれかと比較して、液性免疫に対する相乗作用を誘発するために十分な量で投与される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1A-Bは、インビボでのLP-BM5による感染に伴って、脾臓細胞においてVISTAの発現が増加することを示す。
図2図2A-Cは、Ly6C+CD11b+で精製した脾臓細胞が、インビトロでB細胞増殖及びT細胞増殖を抑制するためには、異なる機構的要件を有していることを示す。
図3図3は、ナイーブVISTA-/-レスポンダー脾臓細胞と、a-VISTAで事前処理したLy6C+CD11b+MDSCと、をレスポンダー:抑制因子(R:S)の比が3:1となるように混合し、α-CD40及びIL-4で3日間刺激したものを示す。
図4図4は、記載の系統のマウスにLP-BM5を感染させ、5週間後に当該マウスから精製した単球性MDSC(Ly6C+CD11b+)を示しており、フローサイトメトリーによる評価で、ナイーブVISTA-/-脾臓細胞の増殖が異なるパターンで抑制されていることを示すものである。
図5A図5A-Bは、B細胞増殖の単球性の抑制が、2つの主な機構であるiNOS/NO及びVISTAに依存するものであることを示す。
図5B図5A-Bは、B細胞増殖の単球性の抑制が、2つの主な機構であるiNOS/NO及びVISTAに依存するものであることを示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
発明の詳細な説明
本発明の詳細を記載する前に、下記の定義を提供する。
【0029】
別段の定義がない限り、本明細書で使用する専門用語及び科学用語はすべて、本発明が属する技術分野の当業者が一般に理解するものと同一の意味を有する。本発明において、または本発明の試験において、本明細書に記載のものと類似または同等の方法及び材料を使用してよいが、本明細書には、適した方法及び材料を記載する。材料、方法、及び実施例は、単に例示にすぎず、限定を意図するものではない。
【0030】
本明細書の説明及び請求の範囲全体においては、「a」、「an」、及び「the」は、別段の明確な記載内容がない限り、複数の参照を含むことを意味する。
【0031】
「癌(cancer)」及び「癌性(cancerous)」という用語は、典型的には、未制御の細胞増殖によって特徴づけられる、哺乳動物の生理的状態を指すか、またはそれを説明するものである。癌の例には、限定はされないが、カルシノーマ、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、及び白血病が含まれる。そのような癌のより具体的な例には、扁平細胞癌、肺癌(小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌、及び肺の扁平上皮癌を含む)、腹膜の癌、肝細胞癌、胃(gastric)癌または胃(stomach)癌(胃腸癌を含む)、膵癌、神経膠芽腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝癌(liver cancer)、膀胱癌、肝細胞腫、乳癌、結腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌または子宮癌、唾液腺癌、腎(kidney)癌または腎(renal)癌、肝癌(liver cancer)、前立腺癌、外陰癌、甲状腺癌、肝癌(hepatic carcinoma)、ならびに様々な型の頭部癌及び頸部癌、ならびにB細胞リンパ腫(低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL)、小リンパ球性(SL)NHL、中悪性度/濾胞性NHL、中悪性度びまん性NHL、高悪性度免疫芽球性NHL、高悪性度リンパ芽球性NHL、高悪性度小型非切れ込み核細胞性NHL、巨大腫瘤病変NHL、マントル細胞リンパ腫、エイズ関連リンパ腫、及びワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症を含む)、慢性リンパ性白血病(CLL)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、ヘアリー細胞白血病、慢性骨髄芽球性白血病、多発性骨髄腫、ならびに移植後リンパ増殖性障害(PTLD)が含まれる。
【0032】
本発明によって治療が可能な例示の癌には、限定はされないが、カルシノーマ、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、及び白血病またはリンパ系腫瘍が含まれる。そのような癌のより具体的な例には、結腸直腸癌、膀胱癌、卵巣癌、黒色腫(melanoma)、扁平上皮癌、肺癌(小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌、及び肺の扁平上皮癌を含む)、腹膜の癌、肝細胞癌、胃(gastric)癌または胃(stomach)癌(胃腸癌を含む)、膵癌、神経膠芽腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝癌(liver cancer)、膀胱癌、肝細胞腫、乳癌、結腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌または子宮癌、唾液腺癌、腎(kidney)癌または腎(renal)癌、肝癌(liver cancer)、前立腺癌、外陰癌、甲状腺癌、肝癌(hepatic carcinoma)、ならびに様々な型の頭部癌及び頸部癌、ならびにB細胞リンパ腫(低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL)、小リンパ球性(SL)NHL、中悪性度/濾胞性NHL、中悪性度びまん性NHL、高悪性度免疫芽球性NHL、高悪性度リンパ芽球性NHL、高悪性度小型非切れ込み核細胞性NHL、巨大腫瘤病変NHL、マントル細胞リンパ腫、エイズ関連リンパ腫、及びワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症を含む)、慢性リンパ性白血病(CLL)、
急性リンパ芽球性白血病(ALL)、ヘアリー細胞白血病、慢性骨髄芽球性白血病、ならびに移植後リンパ増殖性障害(PTLD)、ならびに母斑症、浮腫(脳腫瘍に関連するものなど)、及びメイグス症候群に関連する異常な血管増殖が含まれる。好ましくは、癌は、結腸直腸癌、乳癌、結腸直腸癌、直腸癌、非小細胞肺癌、非ホジキンリンパ腫(NHL)、腎細胞癌、前立腺癌、肝癌(liver cancer)、膵癌、軟部組織肉腫、カポジ肉腫、カルチノイド細胞腫(carcinoid carcinoma)、頭部癌及び頸部癌、黒色腫、卵巣癌、中皮腫、ならびに多発性骨髄腫からなる郡から選択される。例示の1つの実施例では、癌は、早期または進行した(転移性であるものを含む)膀胱癌、卵巣癌、または黒色腫である。別の実施形態では、癌は、結腸直腸癌である。本発明の治療が可能な癌性の状態には、骨髄由来抑制細胞によるVISTAの発現が抗腫瘍応答及び抗浸潤性免疫応答を抑制する転移性癌が含まれる。本発明の方法は、血管形成腫瘍の治療に特に適している。
【0033】
本発明は、化学療法もしくは放射線療法または他の生物製剤を併用した癌の治療にも適していると共に、それらの活性の増進にも適しており、すなわち、骨髄由来抑制細胞によるVISTAの発現が抗腫瘍応答及び化学療法もしくは放射線療法の効力または他の生物製剤の効力を抑制している個体における、それらを併用した癌の治療、及びそれらの活性の増進にも適している。本発明に従って、抗癌活性を示す任意の化学療法剤を使用することができる。好ましくは、化学療法剤は、アルキル化剤、代謝拮抗剤、葉酸類似物質、ピリミジン類似物質、プリン類似物質及び関連阻害物質、ビンカアルカロイド、エピポドフィロトキシン、抗生物質、L-アスパラギナーゼ、トポイソメラーゼ阻害物質、インターフェロン、白金配位化合物、アントラセンジオンで置換された尿素、メチルヒドラジン誘導体、副腎皮質抑制剤、副腎皮質ステロイド、プロゲスチン、エストロゲン、抗エストロゲン剤、アンドロゲン、抗アンドロゲン剤、ならびに性腺刺激ホルモン放出ホルモン類似物質からなる郡から選択される。より好ましくは、化学療法剤は、5-フルオロウラシル(5-FU)、ロイコボリン(LV)、イリノテカン、オキサリプラチン、カペシタビン、パクリタキセル、及びドセタキセルからなる郡から選択される。抗VEGE抗体の投与と組み合わせて投与するために、2つ以上の化学療法剤を混合物として使用することができる。好ましい併用化学療法の1つは、5-FU及び1つまたは複数の他の化学療法剤を含むフルオロウラシルに基づくものである。併用化学療法の適した投薬レジメンは、当該技術分野で知られており、例えば、Saltzら(1999)Proc.ASCO 18:233a及びDouillardら(2000)Lancet 355:1041-7において説明されている。生物製剤は、PD-L1、PD-L2、CTLA-4に対する抗体、及びPD-L1、PD-L2、CTLA-4の融合タンパク質などの別の免疫増強剤ならびにサイトカイン、増殖因子のアンタゴニスト及びアゴニスト、ホルモン、ならびに抗サイトカイン抗体であってよい。
【0034】
本明細書では、「活性化受容体(activating receptor)」は、抗原、複合化抗原(例えば、MHC分子と関連があるもの)、Ig-融合タンパク質、リガンド、または抗体に結合する免疫細胞受容体を広く指す。活性化受容体は、限定はされないが、T細胞受容体(TCR)、B細胞受容体(BCR)、サイトカイン受容体、LPS受容体、補体受容体、及びFc受容体である。例えば、T細胞受容体は、T細胞上に存在し、CD3分子と結合する。T細胞受容体は、MHC分子との関連において、抗原(ならびにポリクローナルT細胞活性化試薬)によって刺激される。TCRを介したT細胞活性化は、多数の変化をもたらし、当該変化は、例えば、タンパク質のリン酸化、膜脂質の変化、イオン流出、環状ヌクレオチドの変化、RNA転写の変化、タンパク質合成の変化、及び細胞容積の変化である。例えば、T細胞受容体は、T細胞上に存在し、CD3分子と結合する。T細胞受容体は、MHC分子との関連において、抗原(ならびにポリクローナルT細胞活性化試薬)によって刺激される。TCRを介したT細胞活性化は、多数の変化をもたらし、当該変化は、例えば、タンパク質のリン酸化、膜脂質の変化、イオン流出、
環状ヌクレオチドの変化、RNA転写の変化、タンパク質合成の変化、及び細胞容積の変化である。
【0035】
本明細書では、「抗原提示細胞」は、抗原提示専門の細胞(例えば、Bリンパ球、単球、樹状細胞、及びランゲルハンス細胞)ならびに他の抗原提示細胞(例えば、角化細胞、内皮細胞、星状細胞、線維芽細胞、及び乏突起膠細胞)を広く指す。
【0036】
本明細書では、「アミノ酸」は、天然起源のアミノ酸及び合成アミノ酸、ならびに天然起源のアミノ酸に類似した様式で機能するアミノ酸類似物質及びアミノ酸模倣物質を広く指す。天然起源のアミノ酸は、遺伝コードによってコードされるアミノ酸、ならびに後に修飾されるアミノ酸(例えば、ヒドロキシプロリン、ガンマ-カルボキシグルタミン酸、及びO-リン酸化セリン)である。アミノ酸類似物質は、天然起源のアミノ酸と同一の基本化学構造(すなわち、水素、カルボキシル基、アミノ基に結合した炭素)及びR基を有する化合物を指す(例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチルメチオニンスルホニウム)。類似物質は、修飾されたR基(例えば、ノルロイシン)、または修飾されたペプチド骨格主鎖を有し得るが、天然起源のアミノ酸と同一の基本化学構造を保持しているものである。アミノ酸模倣物質は、アミノ酸の一般化学構造とは異なるが、天然起源のアミノ酸と類似した様式で機能する構造を有する化学化合物を指す。
【0037】
本明細書では、「アネルギー」または「寛容」は、活性化受容体が媒介する刺激に対する屈折性(refractivity)を広く指す。屈折性は、一般に、抗原特異的であり、寛容化抗原に対する曝露終了後に持続するものである。例えば、T細胞におけるアネルギー(無応答性とは対照的)は、例えば、IL-2といったサイトカインの産生欠如によって特徴づけられる。T細胞が抗原に対して曝露され、第1シグナル(T細胞受容体またはCD-3が媒介するシグナル)を受け取る際に、第2シグナル(共刺激シグナル)が存在しないと、T細胞にアネルギーが生じる。こうした条件下で、同一抗原に対して細胞が再度曝露されると(たとえ共刺激分子の存在下で再曝露が生じたとしても)、サイトカイン産生に失敗し、したがって、増殖に失敗する。しかしながら、アネルギー性T細胞は、無関係な抗原に対する応答は開始することができ、サイトカイン(例えば、IL-2)と共に培養されたならば、増殖することができる。例えば、T細胞アネルギーは、Tリンパ球によるIL-2産生の欠如によっても観測することができ、これは、ELISAによって測定されるか、または指標細胞株を使用した増殖アッセイによって測定される。あるいは、レポーター遺伝子構築物を使用することができる。例えば、アネルギー性T細胞は、5’のIL-2遺伝子転写促進因子の制御下にある異種性プロモーターが誘導するIL-2遺伝子の転写開始に失敗するか、または当該転写促進因子内に見ることができるAPI配列の多量体が誘導するIL-2遺伝子の転写開始に失敗する(Kangら(1992)Science 257:1134)。共刺激シグナルの調節は、免疫細胞のエフェクター機能の調節につながるものである。したがって、「PD-L3活性またはVISTA活性」という用語は、PD-L3ポリペプチドまたはVISTAポリペプチドが、1つまたは複数のその天然結合パートナーに対して結合する能力と、免疫細胞の共刺激シグナルまたは阻害性シグナルを調節する能力と、免疫応答を調節する能力と、を含む。免疫細胞における阻害性シグナルの調節は、免疫細胞の増殖の調節、及び/または免疫細胞によるサイトカイン分泌の調節をもたらすものである。
【0038】
本明細書では、「抗体」は、抗体の「抗原結合部分」(「抗体部分」、「抗原結合断片」、「抗体断片」とも互換的に使用される)、ならびに全体抗体分子を広く指す。本明細書では、「抗原結合部位」という用語は、抗原(例えば、VISTA(PD-L3))に対して特異的に結合する能力を保持した1つまたは複数の抗体断片を指す。抗体の抗原結合機能は、全長抗体の断片によって生じ得るものである。抗体の「抗原結合部分」という用語に包含される抗原結合断片の例には、(a)VLドメイン、VHドメイン、CLドメ
イン、及びCH1ドメインからなる1価の断片であるFab断片、(b)ヒンジ領域で、ジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む2価の断片であるF(ab’)2断片、(c)VHドメイン及びCH1ドメインからなるFd断片、(d)抗体の単一アームのVLドメイン及びVHドメインからなるFv断片、(e)VHドメインからなるdAb断片(Wardら(1989)Nature 341:544-546)、ならびに(f)単離された相補性決定領域(CDR)が含まれる。さらに、Fv断片の2つのドメインであるVL及びVHは、別々の遺伝子によってコードされるものであるが、組換え手法を使用し、合成リンカーによって結合することができ、当該合成リンカーは、それらを、VL領域及びVH領域が対となり、1価の分子を形成した単一タンパク質とすることが可能なものである。(当該1価の分子は、単鎖Fv(scFv)として知られる。例えば、Birdら(1988)Science 242:423-426、Hustonら(1988)Proc Natl.Acad.Sci.USA 85:5879-5883、及びOsbournら(1998)Nat.Biotechnol.16:778を参照のこと。単鎖抗体も、抗体の「抗原結合部分」という用語内に包含されことを意図する。完全IgG分子または他のアイソタイプをコードする発現ベクターを作成するために、ヒト免疫グロブリン定常領域のcDNAまたはゲノム配列に対して、特異的なscFvの任意のVH配列及びVL配列を連結することができる。タンパク質化学または組換えDNA技術のいずれかを使用した、Fab、Fvまたは他の免疫グロブリン断片の作成にも、VH及びVLを使用することができる。ダイアボディなどの、他の形態の単鎖抗体も包含される。ダイアボディは、VHドメイン及びVLドメインを単一ポリペプチド鎖上に発現させた、2価の2重特異性抗体であるが、同一鎖上の2つのドメイン間で対形成することが不可能な非常に短いリンカーを使用しており、それによって、ドメインに、別の鎖の相補性ドメインとの対形成を強制し、2つ抗原結合部位を創出しているものである。例えば、Holligerら(1993)Proc Natl.Acad.Sci.USA
90:6444-6448、Poljakら(1994)Structure 2:1121-1123を参照のこと。
【0039】
またさらに、抗体またはその抗原結合部分(抗原結合断片、抗体断片、抗体部分)は、抗体または抗体部分が、1つまたは複数の他のタンパク質またはペプチドと、共有結合または非共有結合で会合することによって形成される、より大きな免疫接着分子の一部であり得る。免疫接着分子の例には、4量体であるscFV分子を作成するために、ストレプトアビジンのコア領域の使用した例(Kipriyanovら(1995)Hum.Antibodies Hybridomas 6:93-101)、ならびに2価のビオチン化scFv分子を作成するために、システイン残基、マーカーペプチド、及びC末端ポリヒスチジンタグを使用した例が含まれる。Kipriyanovら(1994)Mol
Immunol.31:1047-1058。Fab断片及びF(ab’)2断片などの抗体部分は、それぞれ、全抗体のパパイン消化または全抗体のペプシン消化などの従来の手法を使用して、全抗体から調製することができる。さらに、抗体、抗体部分、及び免疫接着分子は、本明細書に記載されるような標準的な組換えDNA手法を使用して取得することができる。
【0040】
抗体は、ポリクローナル、モノクローナル、異種、同種、同系、または例えば、ヒト化、キメラといったそれらの改変形態であってよい。好ましくは、本発明の抗体は、VISTA(PD-L3)分子に対して、特異的または実質的に特異的に結合する。本明細書では、「モノクローナル抗体」及び「モノクローナル抗体組成物」という用語は、抗原の特定エピトープとの免疫反応が可能な抗原結合部位を1種のみ含む抗体分子の集団を指し、一方、「ポリクローナル抗体」及び「ポリクローナル抗体組成物」という用語は、特定抗原との相互作用が可能な抗原結合部位を複数種含む抗体分子の集団を指す。モノクローナル抗体組成物は、典型的には、それが免疫反応する特定抗原に向けて示す結合親和性が単一のものである。
【0041】
本明細書では、「抗原」は、抗体の結合が可能な分子または分子部分を広く指し、当該抗原は、動物において、その抗原のエピトープへの結合が可能な抗体の産生を誘導することがさらに可能なものである。抗原が有するエピトープは、1つまたは複数であってよい。本明細書で特異的反応と称すものは、抗原が、他の抗原によって誘起され得る多数の他の抗体とは反応せず、その抗原に対応する抗体と、高度に選択的な様式で反応することを意味する。特定の関心抗原に対する免疫応答の増進が好ましい場合、抗原の例には、限定はされないが、防御的な免疫応答を誘発し得る感染性疾患の抗原が例示として含まれる。
【0042】
本明細書では、「アレルギー性疾患」は、アレルギー性反応を伴う疾患を広く指す。より具体的には、「アレルギー性疾患」は、アレルゲンが同定されており、そのアレルゲンに対する曝露と、病理学的変化の発生との間に強い相関が存在し、その病理学的変化が免疫学的機構を有していることが証明されている疾患であると定義される。本明細書では、免疫学的機構は、白血球がアレルゲンによる刺激に対して免疫応答を示すことを意味する。
【0043】
本明細書では、「アンチセンス核酸分子」は、mRNA配列に対して相補性であるか、または遺伝子をコードする鎖に対して相補性である、タンパク質をコードする「センス」核酸に対して相補性(例えば、2本鎖cDNA分子のコード鎖に対して相補性)である核酸配列を広く指す。したがって、アンチセンス核酸分子は、センス核酸分子に対して水素結合することができる。
【0044】
本明細書では、「喘息」は、炎症、気道の狭小化、及び吸入物質に対する気道の反応性の増加によって特徴づけられる呼吸器系の疾患を広く指す。喘息は、排他的ではないが、アトピー性症状またはアレルギー性症状と関連することが多い。
【0045】
本明細書では、「アポトーシス」は、当該技術分野で知られる手法を使用して特徴づけることができるプログラム細胞死を広く指す。アポトーシス細胞死は、細胞の縮小、膜の小疱形成、及び結果的に細胞が断片化するクロマチン凝縮によって特徴づけることができる。アポトーシスが進行中の細胞は、特徴的なパターンを有した、ヌクレオソーム間のDNAの切断も示す。
【0046】
本明細書では、「自己免疫」または「自己免疫疾患もしくは自己免疫状態」は、個体自体の組織から生じるか、またはそれを対象とする疾患もしくは障害、またはその共分離(co-segregate)もしくは徴候、またはそこからもたらされる状態を広く指す。
【0047】
本明細書では、「B細胞受容体(BCR)」は、B細胞上に見られる、膜Ig(mIg)と、他の膜貫通ポリペプチド(例えば、Igα及びIgβ)と、の複合体を広く指す。mIgのシグナル伝達機能は、オリゴマーまたは多量体である抗原によって受容体分子が架橋することによって引き起こされる。B細胞は、抗免疫グロブリン抗体によっても活性化することができる。BCR活性化の際は、B細胞において、チロシンリン酸化を含む多数の変化が生じる。
【0048】
本明細書では、「癌(cancer)」は、異常であり、制御されておらず、悪性増殖または悪性腫瘍を引き起こす細胞分裂(例えば、未制御の細胞増殖)によって特徴づけられる任意の新生物疾患(浸潤性または転移性を問わず)を広く指す。
【0049】
本明細書では、「キメラ抗体」は、定常領域またはその一部が、変更、置換、または交換され、その結果、抗原結合部位(可変領域)が、クラス、エフェクター機能、及び/も
しくは種が異なるか、もしくは変更された定常領域に連結されている抗体分子であるか、または、そのキメラ抗体に対して、新規の特性を与える完全に異なる分子に連結されている抗体分子を広く指し、例えば、酵素、毒素、ホルモン、増殖因子、薬物、可変領域、またはそれらの一部が、抗原特性が異なるか、または変更された可変領域で、変更、置換、または交換される。
【0050】
本明細書では、「コード領域」は、アミノ酸残基へと翻訳されるコドンを含む核酸配列領域を広く指し、一方、「非コード領域」という用語は、アミノ酸へと翻訳されない核酸配列領域(例えば、5’非翻訳領域及び3’非翻訳領域)を指す。
【0051】
本明細書では、「保存的に改変された変異体」は、アミノ酸配列及び核酸配列の両方に適用され、特定の核酸配列に関して、本質的に同一である配列へと保存的に改変された変異体を広く指し、同一もしくは本質的に同一であるアミノ酸配列をコードする核酸であるか、またはその核酸がアミノ酸配列をコードしない核酸を指す。遺伝コードは縮重しているため、非常に多くの数の機能的に同一である核酸が、任意の所与のタンパク質をコードする。「無変化変形形態(silent variation)」は、一種の保存的に改変された核酸変形形態である。ポリペプチドをコードする、本明細書のあらゆる核酸配列も、核酸の無変化変形形態で可能性のあるものはすべて説明するものである。当業者であれば、機能的に同一である分子を生じさせるために、核酸中のそれぞれのコドン(通常、メチオニンを対象とする唯一のコドンであるAUG、及び通常、トリプトファンを対象とする唯一のコドンであるTGGは除く)は改変され得ることを認識するであろう。
【0052】
本明細書では、「相補性決定領域」、「超可変領域」、または「CDR」は、抗体の軽鎖または重鎖の可変領域に見られる、1つまたは複数の超可変領域または相補性決定領域(CDR)を広く指す。Kabatら(1987)“Sequences of Proteins of Immunological Interest” National Institutes of Health,Bethesda,Mdを参照のこと。こうした表現は、Kabatら(1983)“Sequences of Proteins of Immunological Interest”U.S.Dept,of Health and Human Servicesによって定義されるような超可変領域、または抗体の3次元構造を有する超可変ループを含む。Chothia and Lesk(1987)J Mol.Biol.196:901-917。それぞれの鎖のCDRは、フレームワーク領域によって非常に近接して維持されており、他の鎖に由来するCDRと共に、抗原結合部位の形成に寄与するものである。CDR内には、選択性決定領域(SDR)と説明される選択(select)アミノ酸が存在し、これは、抗体-抗原相互作用において、CDRが使用する決定的な接触残基に相当するものである。Kashmiri(2005)Methods 36:25-34。
【0053】
本明細書では、「対照量」は、マーカーを広く指し、試験量のマーカーに対して比較されることになる任意の量またはある一定範囲の量であり得る。例えば、対照量のマーカーは、特定の疾患もしくは状態を有する患者、またはそのような疾患もしくは状態を有さない人におけるマーカーの量であってよい。対照量は、絶対量(例えば、マイクログラム/10、または相対量(例えば、シグナルの相対強度)のいずれかであり得る。
【0054】
本明細書では、「共刺激受容体」は、免疫細胞に共刺激シグナルを伝達する受容体を広く指し、例えば、CD28またはICOSである。本明細書では、「阻害性受容体」という用語は、免疫細胞に対する負のシグナルを伝達する受容体を含む。
【0055】
本明細書では、「共刺激する」は、増殖またはエフェクター機能を誘導する、第2の非活性化受容体が媒介するシグナル(「共刺激シグナル」)を、共刺激分子が与える能力を
広く指す。例えば、共刺激シグナルは、(例えば、T細胞受容体が媒介するシグナルを受け取ったT細胞において)サイトカイン分泌をもたらし得る。細胞の受容体が媒介するシグナルを(例えば、活性化受容体を介して)受け取った免疫細胞は、「活性化された免疫細胞」と本明細書で称され得る。
【0056】
本明細書では、「細胞質ドメイン」は、細胞の細胞質へと伸びたタンパク質部分を広く指す。
【0057】
本明細書では、「診断の(diagnostic)」は、病的な状態の存在または性質の特定を広く指す。診断方法は、その感度または特異性で異なる。診断アッセイの「感度(sensitivity)」は、疾患を有しており、陽性の結果を受ける個体の割合(「真の陽性」の割合)である。疾患を有しており、アッセイによって検出されない個体は、「偽の陰性」である。疾患を有さず、アッセイにおいて陰性の結果を受ける対象は、「真の陰性」と呼ばれる。診断アッセイの「特異性」は、1マイナス偽の陽性割合であり、「偽の陽性」割合は、疾患を有さないが陽性の結果を受ける割合であると定義される。特定の診断方法が、状態の確定診断を提供しなくてよいが、その方法が、診断に役立つ陽性指標を提供するのであれば十分である。
【0058】
本明細書では、「診断(diagnosing)」は、疾患もしくは症状の分類、疾患の重症度の決定、疾患の進行の監視、疾患の予後の予測、及び/または回復の見込みの予測を広く指す。「検出」という用語も、前述のいずれを任意選択で包含してよい。いくつかの実施形態では、対象から得た生体試料における、本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチドのレベルの決定が、本発明による疾患の診断に影響を与えてよく、決定したレベルは、その疾患に対する素因、またはその疾患の存在の有無と相関し得るものである。「対象から得た生体試料」は、対象から物理的に取り出していない試料も任意選択で含んでよいことに留意されるべきである。
【0059】
本明細書では、「有効量」は、患者に対して、疾患の治療のために投与されると、当該疾患に対してそのような治療の効果を与えるために十分である化合物、抗体、抗原または細胞の量を広く指す。有効量は、予防に有効な量、及び/または防止に有効な量であってよい。有効量は、徴候/症状の低減に有効な量、徴候/症状の発生防止、徴候/症状の発生重症度の低減、徴候/症状の発生排除、徴候/症状の発生進行の鈍化、徴候/症状の発生進行の防止、及び/または徴候/症状の発生予防作用、のために有効な量であってよい。「有効量」は、治療されることになる患者の、疾患及びその重症度ならびに年齢、体重、病歴、感受性、及び既存の状態に応じて変化してよい。「有効量」という用語は、本発明の目的のための「治療上有効な量」と同義である。
【0060】
本明細書では、「細胞外ドメイン」は、細胞表面から伸びたタンパク質部分を広く指す。
【0061】
本明細書では、「発現ベクター」は、原核細胞、酵母細胞、真菌細胞、植物細胞、昆虫細胞、または哺乳類細胞を含む任意の細胞において、インビトロまたはインビボで、恒常的または誘導的に、本発明の核酸配列を発現する目的のための、任意の組換え発現システムを広く指す。当該用語は、直鎖状または環状の発現システムを含む。当該用語は、エピソームのままで存在する発現システム、または宿主細胞ゲノムへと組み込まれる発現システムを含む。発現システムは、自己複製能力を有しているか、または有していない可能性があり、有していない場合は、すなわち、細胞において、一過性発現のみを推進するものである。当該用語は、組換え核酸の転写に必要な、最小の配列のみを含む組換え発現カセットを含む。
【0062】
本明細書では、「ファミリー」は、本発明のポリペプチド分子及び核酸分子を広く指し、共通構造のドメインまたはモチーフを有すると共に、本明細書で定義されるようなアミノ酸配列相同性または核酸配列相同性を十分に有した、2つ以上のポリペプチド分子または核酸分子を意味することを意図する。ファミリーのメンバーは、天然起源または非天然起源であり得、同一種または異種のいずれかに由来し得る。例えば、ファミリーは、ヒト起源である最初のポリペプチド、ならびにヒト起源である他の異なるポリペプチドを含み得るか、あるいは、非ヒト起源のホモログ(例えば、サルのポリペプチド)を含み得る。ファミリーのメンバーは、共通の機能特性も有し得る。
【0063】
本明細書では、「Fc受容体」(FcR)は、免疫グロブリン分子(Ig)のFc部分を標的とする細胞表面受容体を広く指す。Fc受容体は、免疫応答に関与する多くの細胞で見られるものである。ヒトFcRの中で、これまで同定されたものは、IgG(FcγRと命名された)、IgE(Fc.イプシロン.R1)、IgA(FeαR)、及び重合IgM/A(FcμαR)を認識するものである。FcRは、下記の細胞型においてみられる。すなわち、FcεRI(マスト細胞)、Fc.イプシロン.RII(白血球の多く)、RcαR(好中球)、及びFcμαR(腺上皮、肝細胞)である。Hogg(1988)Immunol Today 9:185-86。FcγRは、幅広く研究されており、細胞免疫防御において中心であると共に、自己免疫疾患の病態形成に関与する炎症メディエーター及び加水分解酵素の放出を刺激する役割を担うものである。Unkeless(1988)Annu.Rev.Immunol.6:251-87。FcγRは、エフェクター細胞と、Igを分泌するリンパ球とを決定的に結び付けるものであり、これは、マクロファージ/単球、多核白血球、及びナチュラルキラー(NK)細胞のFcγRが、IgGによって媒介される特異的な認識要素を与えるためである。ヒト白血球は、IgGを標的とする異なる受容体を少なくとも3つ有しており、当該受容体は、すなわち、hFcγRI(単球/マクロファージ上に見られる)、hFcγ.RII(単球、好中球、好酸球、血小板、おそらくB細胞、及びK562細胞株上に見られる)、ならびにFcγIII(NK細胞、好中球、好酸球、及びマクロファージ上に見られる)である。
【0064】
T細胞に関して、T細胞への共刺激シグナルの伝達には、シクロスポリンによって阻害されないシグナル伝達経路が関与している。さらに、共刺激シグナルは、T細胞における、サイトカイン分泌(例えば、IL-2及び/またはIL-10)を誘導することができ、及び/またはT細胞における、抗原に対する無応答性の誘導、アネルギーの誘導、もしくは細胞死の誘導を防止することができる。
【0065】
本明細書では、「フレームワーク領域」または「FR」は、抗体の軽鎖及び重鎖の可変領域内に存在する、1つまたは複数のフレームワーク領域を広く指す。Kabatら(1987)“Sequences of Proteins of Immunological Interest” National Institutes of Health,Bethesda,Mdを参照のこと。こうした表現は、抗体の軽鎖及び重鎖の可変領域内に存在するCDR間に挿入されているアミノ酸配列領域を含む。
【0066】
本明細書では、「異種性の」は、核酸部分を広く指し、当該核酸が、天然において、お互いに同一である関係性において見られない2つ以上の部分配列を含むことを示す。例えば、当該核酸は、典型的には、組換えで産生されて、無関係な遺伝子を配置した2つ以上の配列を有することで、新しい機能性核酸が作成されるものである(例えば、ある供給源由来のプロモーターと、別の供給源由来のコード領域とを使用する)。同様に、異種性タンパク質は、当該タンパク質が、天然において、お互いに同一である関係性において見られない2つ以上の配列を含むことを示すものである(例えば、融合タンパク質)。
【0067】
本明細書では、「高親和性」は、抗体が、標的抗原に対して、少なくとも10-8Mの
KD、より好ましくは、少なくとも10-9MのKD、さらにより好ましくは、少なくとも10-10MのKDを有することを広く指す。しかしながら、「高親和性」である結合は、他の抗体アイソタイプで変化し得るものである。例えば、IgMアイソタイプにとっての「高親和性」である結合は、抗体が、少なくとも10-7M、より好ましくは、少なくとも10-8MのKを有することを指す。
【0068】
本明細書では、「相同性」は、核酸配列と、参照核酸配列との類似性度合い、またはポリペプチド配列と、参照ポリペプチド配列との類似性度合いを広く指す。相同性は、部分的または完全なものであってよい。完全相同性は、核酸配列またはアミノ酸配列が同一であることを示す。部分的に相同性である核酸配列またはアミノ酸配列は、参照核酸配列または参照アミノ酸配列と同一ではないものである。相同性の度合いは、配列比較によって決定することができる。「配列同一性」という用語は、「相同性」と互換的に使用してよい。
【0069】
本明細書では、「宿主細胞」は、本発明の組換え発現ベクターのなどの、本発明の核酸分子が導入された細胞を広く指す。宿主細胞は、原核細胞(例えば、E.coli)、または酵母、昆虫細胞(例えば、SF9)、両生類細胞、またはCHO、HeLa、HEK-293などの哺乳類細胞などの真核細胞であってよく、例えば、培養細胞、人工培養組織(explant)、及びインビボの細胞である。「宿主細胞」及び「組換え宿主細胞」という用語は、本明細書で互換的に使用される。そのような用語は、特定の対象細胞だけでなく、そのような細胞の子孫または潜在的子孫も指すことを理解されるべきである。なぜならこれは、変異または環境の影響のいずれかに起因して、後に続く世代において、ある特定の変態が生じ得るためであり、実際、子孫は親細胞と同一ではあり得ないが、依然として、本明細書で使用される用語の範囲内に含まれる。
【0070】
本明細書では、「ヒト化抗体」は、非ヒト細胞によって産生された抗体を含むことを広く指し、当該産生抗体は、ヒト細胞によって産生されるであろうものと非常に類似した抗体へと変更された可変領域及び定常領域を有する。例えば、非ヒト抗体のアミノ酸配列を変更することによって、ヒト生殖系列の免疫グロブリンの配列においてみられるアミノ酸を組み込む。本発明のヒト化抗体は、ヒト生殖系列の免疫グロブリンの配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、無作為もしくは部位特異的であるインビトロでの変異誘発、またはインビボでの体細胞変異によって導入される変異)を、例えば、CDRにおいて含んでよい。本明細書では、「ヒト化抗体」という用語は、マウスなどの別の哺乳類種の生殖系列から得られたCDR配列が、ヒトフレームワーク領域の配列に移植された抗体も含む。
【0071】
本明細書では、「ハイブリダイゼーション」は、鎖がお互いに逆平行に配置されると、相補性であるヌクレオチド間で水素結合が形成されることによって生じる、相補性(部分的相補性を含む)ポリヌクレオチド鎖の物理的相互作用を広く指す。
【0072】
本明細書では、「IgVドメイン」及び「IgCドメイン」は、Igスーパーファミリーのメンバーであるドメインを広く指す。こうしたドメインは、Igフォールドと呼ばれる特徴的な折り畳みパターンを有した構造単位に対応するものである。Igフォールドは、2つのベータシートのサンドイッチからなるものであり、すべてではないが、ほとんどのドメインにおいて、それぞれのベータシートが5~10残基のアミノ酸の逆平行ベータ鎖からなり、2つのシート間に、保存されたジスルフィド結合を有する。Ig分子、TCR分子、及びMHC分子のIgCドメインは、同一型の配列パターンを共有しており、IgスーパーファミリーのC1セットと呼ばれる。他のIgCドメインは、他のセットに含まれる。IgVdメインも配列パターンを共有しており、Vセットドメインと呼ばれる。IgVドメインは、C-ドメインより長く、ベータ鎖の対をさらに形成するものである。
【0073】
本明細書では、「免疫細胞」は、造血性起源の細胞であり、免疫応答において役割を担う細胞を広く指す。免疫細胞には、B細胞及びT細胞などのリンパ球、ナチュラルキラー細胞、ならびに単球、マクロファージ、好酸球、マスト細胞、好塩基球、及び顆粒球などの骨髄系細胞が含まれる。
【0074】
本明細書では、「免疫アッセイ」は、抗原に特異的に結合する抗体を使用するアッセイを広く指す。免疫アッセイは、抗原の単離、標的化、及び/または定量のために、特定抗体の特異的結合特性を使用することによって特徴づけられてよい。
【0075】
本明細書では、「免疫応答」は、T細胞の共刺激の調節が影響を与える、T細胞媒介性及び/またはB細胞媒介性の免疫応答を広く指す。例示の免疫応答には、B細胞応答(例えば、抗体産生)、T細胞応答(例えば、サイトカイン産生、及び細胞傷害活性)、ならびに例えば、マクロファージといった、サイトカインに応答性である細胞の活性化が含まれる。本明細書では、免疫応答に関する「下方調節(downmodulation)」という用語は、任意の1つまたは複数の免疫応答の減少を含み、一方、免疫応答に関する「上方調節(upmodulation)」という用語は、任意の1つまたは複数の免疫応答の増加を含む。1つの型の免疫応答の上方調節は、別の型の免疫応答において、対応する下方調節を引き起こし得ることを理解されよう。例えば、ある特定のサイトカイン(例えば、IL-10)の産生の上方調節は、細胞免疫応答の下方調節を引き起こし得る。
【0076】
本明細書では、「炎症性状態または炎症性疾患」は、慢性または急性の炎症性疾患を広く指す。
【0077】
本明細書では、「阻害性シグナル」は、免疫細胞上の阻害性受容体分子を介して伝達されるシグナルを広く指す。シグナルは、活性化受容体(例えば、TCR分子、CD3分子、BCR分子、またはFc分子)を介したシグナルと拮抗し、例えば、二次情報伝達物質の生成阻害、増殖阻害、または例えば、食作用の減少、抗体産生の減少、もしくは細胞傷害活性の減少といった、免疫細胞のエフェクター機能の阻害、あるいは免疫細胞におけるメディエーター(例えば、サイトカイン(例えば、IL-2)及び/またはアレルギー性応答のメディエーター)産生の欠如、あるいはアネルギーの発生をもたらし得る。
【0078】
本明細書では、「単離された」は、それが天然に生じるその元環境から取り出された材料を広く指し、したがって、その天然環境に由来して、人の手によって変えられたものである。単離された材料は、例えば、ベクターシステムに含まれる外来性の核酸、宿主細胞内に含まれる外来性の核酸、またはその元環境から取り出され、このようにして、人の手によって変えられた任意の材料である(例えば、「単離された抗体」)。例えば、本明細書では、「単離された」または「精製された」は、タンパク質、DNA、抗体、RNA、または生物学的に活性であるそれらの部分であって、当該生体物質が得られる細胞源もしくは組織源に由来する細胞材料もしくは他の混入タンパク質を実質的に含まないものであるか、または化学的に合成される場合は、化学前駆物質もしくは他の化学物質を実質的に含まないものを広く指す。「細胞材料を実質的に含まない」という言葉は、VISTA(PD-L3)タンパク質の調製であって、当該タンパク質が、それが単離された細胞の細胞構成成分から分離される調製、またはそれが組換えで産生された細胞の細胞構成成分から分離される調製を含む。
【0079】
本明細書では、「単離された抗体」は、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体を指すことを意図する(例えば、PD-L3またはVISTAに特異的に結合し、PD-L3またはVISTA以外の抗原に特異的に結合する抗体を実質的に含まない、単離された抗体)。さらに、単離された抗体は、他の細胞材料及び/または化学物質
を実質的に含有し得ない。
【0080】
本明細書では、「K-assoc」または「Ka」は、特定の抗体-抗原相互作用の会合速度を広く指し、一方、本明細書では、「Kdiss」または「Kd」という用語は、特定の抗体-抗原相互作用の解離速度を指す。本明細書では、「KD」という用語は、解離定数を指すことを意図し、当該解離定数は、KdのKaに対する比(すなわち、Kd/Ka)から得られるものであり、モル濃度(M)として表現される。抗体のKD値は、当該技術分野でよく確立された方法を使用して決定することができる。
【0081】
本明細書では、「標識」または「検出可能部分」は、分光学的手段、光化学的手段、生化学的手段、免疫化学的手段、化学的手段、または他の物理的手段によって検出が可能な組成物を広く指す。
【0082】
本明細書では、「低厳密性条件」、「中厳密性条件」、「高厳密性条件」、または「超厳密性条件」は、核酸ハイブリダイゼーション及び洗浄のための条件を広く指す。ハイブリダイゼーション反応の実施を対象にしたガイダンスは、Ausubelら(2002)Short Protocols in Molecular Biology(5.sup.th Ed.)John Wiley & Sons,NYにおいて見つけることができる。例示の特異的ハイブリダイゼーション条件には、限定はされないが、下記の条件が含まれる。すなわち、(1)低厳密性ハイブリダイゼーション条件は、6倍の塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)を約45℃で使用した後、0.2倍のSSC、0.1%のSDSを使用して少なくとも50℃で2回洗浄する条件であり(低厳密性条件では、洗浄温度を55℃まで上昇させることができる)、(2)中厳密性ハイブリダイゼーション条件は、6倍のSSCを約45℃で使用した後、0.2倍のSSC、0.1%のSDSを使用して60℃で1回または複数回洗浄する条件であり、(3)高厳密性ハイブリダイゼーション条件は、6倍のSSCを約45℃で使用した後、0.2倍のSSC、0.1%のSDSを使用して65℃で1回または複数回洗浄する条件であり、そして(4)超厳密性ハイブリダイゼーション条件は、0.5Mのリン酸ナトリウム、7%のSDSを65℃で使用した後、0.2倍のSSC、1%のSDSを65℃で使用して1回または複数回洗浄する条件である。
【0083】
本明細書では、「哺乳動物」は、ヒトを含む、クラスが哺乳綱である温血脊椎動物のいずれか及びすべてを広く指し、皮膚が毛で覆われていること、及び雌性動物では、若年を育てるための、乳を産生する乳腺によって特徴づけられる。哺乳動物の例には、限定はされないが、アルパカ、アルマジロ、カピバラ、ネコ、ラクダ、チンパンジー、チンチラ、ウシ、イヌ、ヤギ、ゴリラ、ハムスター、ウマ、ヒト、キツネザル、ラマ、マウス、非ヒト霊長類、ブタ、ラット、ヒツジ、トガリネズミ、リス、バク(tapir)、及びハタネズミが含まれる。哺乳動物には、限定はされないが、ウシ種、イヌ種、ウマ種、ネコ種、マウス種、ヒツジ種、ブタ種、霊長類種、及びげっ歯類種が含まれる。また、哺乳動物には、ワシントンD.C.のNational Museum of Natural History,Smithsonian Institutionによって維持されているMammal Species of the Worldに示されているもののいずれか、またはそのすべても含まれる。
【0084】
本明細書では、「天然起源の核酸分子」は、天然に生じる核酸配列を有するRNA分子またはDNA分子(例えば、天然タンパク質をコードする)を広く指す。
【0085】
本明細書では、「核酸」または「核酸配列」は、1本鎖形態または2本鎖形態のいずれかであるデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドのオリゴヌクレオチドを広く指す。当該用語は、核酸、すなわち、オリゴヌクレオチドを包含し、天然ヌクレオチドの
既知の類似物質を含む。当該用語は、合成骨格主鎖を有する核酸様構造も包含する。別段の記載がない限り、特定の核酸配列は、明示的に示される配列に加えて、保存的に改変(例えば、縮重コドンでの置換)されたその変異体及び相補性配列も黙示的に包含する。核酸という用語は、遺伝子、cDNA、mRNA、オリゴヌクレオチド、及びポリヌクレオチドと互換的に使用される。
【0086】
本明細書では、「オリゴマー形成ドメイン」は、VISTA細胞外ドメインまたはその断片に結合すると、オリゴマー形成を促進するドメインを広く指す。当該オリゴマー形成ドメインは、例えば、ロイシンジッパーといった、自己会合するアルファヘリックスを含み、当該アルファヘリックスは、追加のジスルフィド結合によって、さらに安定化され得る。ドメインは、膜をまたぐ、方向性のある折り畳みに適合するように設計されており、この折り畳みは、ポリペプチドがインビボで折り畳まれて、機能性の結合タンパク質となることを促進するプロセスであると考えられている。その例は、当該技術分野で知られており、例としては、コイルドGCN4、及びCOMPが含まれる。
【0087】
αヘリカルコイルドコイルは、タンパク質において見られる、おそらく最も広汎性のサブユニットオリゴマー形成モチーフである。したがって、コイルドコイルは、様々な異なる機能を果たすものである。例えば、転写活性化因子のいくつかのファミリーでは、短いロイシンジッパーが、DNAに対するDNA結合領域の位置決めにおいて重要な役割を担っている。Ellenbergerら(1992)Cell 71:1223-1237。コイルドコイルは、中間系フィラメントタンパク質のオリゴマー形成にも使用される。さらに、コイルドコイルタンパク質は、小胞膜の融合及びウイルス膜の融合の両方において、重要な役割を担っているようである。Skehel and Wiley(1998)Cell 95:871-874。両方の場合で、融合されることになる膜に包埋されている疎水性配列は、長いアルファ-ヘリックスの束からなる桿状複合体の同一末端に位置している。この分子配置は、複合体が膜の融合に向けて会合するにつれて、膜の近接した接合を引き起こすためのものであると考えられている。コイルドコイルは、オリゴマー形成を制御するために使用されることが多い。コイルドコイルは、転写因子を含む多くの型のタンパク質に見られ、当該タンパク質には、限定はされないが、数ある中でも、GCN4、ウイルス融合ペプチド、SNARE複合体、及びある特定のtRNA合成酵素が含まれる。トロポミオシン、中間系フィラメント、及び紡錘極体の構成成分などのタンパク質では、非常に長いコイルドコイルが見られる。コイルドコイルは、お互いが巻き付いて高次コイルを形成しているアルファ-へリックスの多くに関与しており、その高次コイル形成様式は、平行配向または逆平行配向で会合する、高度に組織化されたものである。2量体及び3量体が最も一般的ではあるが。へリックスは、同一タンパク質または異なるタンパク質に由来し得るものである。コイルドコイルは、構成成分であるへリックスが一緒になり、その疎水性の継ぎ目が隠れることによって形成される。疎水性の継ぎ目は、それぞれのへリックスに巻き付いてねじれるため、へリックスもねじれてお互いが巻き付いたコイルを形成することで、疎水性の継ぎ目が隠れて、高次コイルが形成される。これは、隣接へリックス間での側鎖の特徴的な嵌合であり、ノブ・イントゥ・ホール(knob-into-hole)パッキングとしても知られ、コイルドコイルとしての構造を定義するものである。平行である立体構造をとることが最も一般的ではあるが、この型の相互作用が生じるために、へリックスが同一方向に並ぶ必要はない。逆平行である立体構造は、3量体では非常に稀であり、5量体では知られていないが、分子内2量体では、より一般的であり、分子内2量体では、2つのへリックスが、短いループによって結合されることが多い。細胞外空間では、ヘテロ3量体のコイルドコイルタンパク質であるラミニンが、基底膜の形成において重要な役割を担っている。他の例は、トロンボスポンジン及び軟骨オリゴマー基質タンパク質(COMP)であり、3つの鎖(トロンボスポンジン1及びトロンボスポンジン2)または5つ鎖(トロンボスポンジン3、トロンボスポンジン4、及びCOMP)が結合されたものである。当該分子は、外観が花束様であり、それがオリゴ
マー構造を有している理由は、おそらく、C末端ドメインの、細胞受容体との多価相互作用によるものである。塩基性領域ロイシンジッパー(basic region leucine zipper)(bZIP)DNA結合モチーフを含む真核生物タンパク質で同定されたものは30を超え、酵母の転写活性化因子であるGCN4はその内の1つである。Ellenbergerら(1992)Cell 71:1223-1237。bZIPの2量体は、連続するアルファへリックスの1つの対であり、当該アルファへリックスは、そのカルボキシ末端の34残基にわたって平行コイルドコイルを形成しており、DNA結合部位の主要な溝を通り抜け、そのアミノ末端に向かって徐々に分岐しているものである。コイルドコイルの2量体形成接合部は、DNA軸に対してほとんど垂直に配向していることにより、複合体の外観はT字となる。bZIPは、疎水性かつ非極性である残基が7残基繰り返す配列を4~3つ含み、当該残基は、平行アルファへリックスのコイルドコイルへと一緒にパッキングされる。Ellenbergerら(1992)Cell
71:1223-1237。2量体の安定性は、7残基の繰り返し位置a及び位置bにおけるロイシン残基及び非極性残基の隣り合ったパッキング、ならびに限られた数のへリックス内またはヘリックス間の塩橋からもたらされるものであり、これは、GCN4のロイシンジッパーペプチドの結晶構造において示されたものである。Ellenbergerら(1992)Cell 71:1223-1237。別の例は、Mr52,000であるサブユニットのホモ3量体として、ウシの気管軟骨から単離されたCMP(マトリリン-1)であり(Paulsson & Heinegard(1981)Biochem J.197:367-375)、それぞれのサブユニットは、vWFA1モジュール、単一EGFドメイン、vWFA2モジュール、及び5つの7残基繰り返し配列にまたがるコイルドコイルドメインからなるものである。Kissら(1989)J.Biol.Chem.264:8126-8134、Hauser and Paulsson(1994)J.Biol.Chem.269:25747-25753。精製されたCMPを電子顕微鏡で解析することにより、それぞれのサブユニットが楕円体を形成している花束様の3量体構造が示され、当該楕円体は、コイルドコイルに対応する共通点に由来して現れるものである。Hauser and Paulsson(1994)J.Biol.Chem.269:25747-25753。マトリリン-1におけるコイルドコイルドメインは、これまで幅広く研究されてきた。非変性条件下で、鎖間のジスルフィド結合を完全に還元した後に、3量体構造は保持される。Hauser and Paulsson(1994)J.Biol.Chem.269:25747-25753。さらなる別の例は、軟骨オリゴマー基質タンパク質(COMP)である。非コラーゲン性の糖タンパク質であるCOMPは、軟骨において最初に同定されたものである。Hedbomら(1992)J.Biol.Chem.267:6132-6136。当該タンパク質は、5つのサブユニットを有した524kDaのホモ5量体であり、当該サブユニットは、N末端の7残基繰り返し領域(cc)、それに続く4つの上皮増殖因子(EGF)様ドメイン(EF)、7つのカルシウム結合ドメイン(T3)、及びC末端球状ドメイン(TC)からなるものである。このドメイン組成によると、COMPは、トロンボスポンジンのファイミリーに属する。位置a及び位置bにおいて、疎水性残基を選択的に有する7残基の繰り返し(abcdefg)が、へリックスのコイルドコイルドメインを形成している。Cohen and Parry(1994)Science 263:488-489。最近、COMPの組換えである5本鎖コイルドコイルドメイン(COMPcc)が結晶化され、0.2nmの分解能で、その構造が解析された。Malashkevichら(1996)Science 274:761-765。
【0088】
本明細書では、「動作可能な形で連結された」は、2つのDNA断片によってコードされるアミノ酸配列がフレーム内に残存するように、2つのDNA断片が連結されることを広く指す。
【0089】
本明細書では、「パラトープ」は、抗原を認識する抗体部分を広く指す(例えば、抗体
の抗原結合部位)。パラトープは、抗体のFv領域の小さな領域(例えば、15~22残基のアミノ酸)であってよく、抗体の重鎖部分及び軽鎖部分を含んでよい。GoldsbyらAntigens(Chapter 3)Immunology(5.sup.th
Ed.)New York:W.H.Freeman and Companyの57~75ページ目を参照のこと。
【0090】
本明細書では、「患者(patient)」は、疾患状態の緩和または疾患状態の発生もしくは再発の防止のいずれかのための治療を必要とする任意の動物を広く指す。また、本明細書では、「患者」は、危険因子、疾患歴、感受性、症状、徴候を有し、以前に診断され、疾患の患者集団のメンバーとなる危険があるか、またはそのメンバーである任意の動物も広く指す。患者は、ヒトなどの臨床的な患者であるか、またはペット、家畜化動物、家畜、外来動物、もしくは動物園の動物などの獣医学的な患者であってよい。「対象(subject)」という用語は、「患者」という用語と互換的に使用されてよい。
【0091】
「ポリペプチド」、「ペプチド」、及び「タンパク質」は、互換的に使用され、アミノ酸残基の重合体を広く指す。当該用語は、1つまたは複数のアミノ酸残基が、対応する天然起源のアミノ酸の類似物質または模倣物質であるアミノ酸重合体、ならびに天然起源のアミノ酸重合体に対して適用される。当該用語は、1つまたは複数のアミノ酸残基が、対応する天然起源のアミノ酸の人工的な化学的模倣物質であるアミノ酸重合体、ならびに天然起源のアミノ酸重合体、及び非天然起源のアミノ酸重合体に対して適用される。ポリペプチドは、例えば、糖タンパク質を形成させるために、糖質残基を付加することによって、修飾することができる。「ポリペプチド」、「ペプチド」、及び「タンパク質」という用語は、糖タンパク質、ならびに非糖タンパク質を含む。
【0092】
本明細書では、「プロモーター」は、核酸の転写を方向づける一連の核酸配列を広く指す。本明細書では、プロモーターは、ポリメラーゼII型プロモーターの場合、TATA配列などの、転写開始部位の近くに必要となる核酸配列を含む。プロモーターは、遠位の転写促進因子または転写抑制因子の配列も任意選択で含み、当該配列は、転写開始部位から数千塩基対ほど離れて位置し得るものである。「恒常的」プロモーターは、ほとんどの環境条件下または発生条件下において活動性であるプロモーターである。「誘導性」プロモーターは、環境制御下または発生制御下において活動性であるプロモーターである。
【0093】
本明細書では、「予防上有効な量」は、疾患の予防または疾患再発の防止のために、患者に対して投与されると、疾患または再発のための、そのような予防をもたらすために十分である化合物量を広く指す。予防上有効な量は、徴候及び/または症状の発生を防止するために有効な量であってよい。「予防上有効な量」は、治療されることになる患者の、疾患及びその重症度、ならびに年齢、体重、病歴、状態に対する素因、既存の状態に応じて変化してよい。
【0094】
本明細書では、「予防」は、徴候及び/または症状が、患者に存在しないか、寛解中であるか、または患者に以前存在したものである、治療の過程を広く指す。予防は、患者の疾患の治療の後に生じる疾患の防止を含む。さらに、防止は、疾患を潜在的に発症し得る患者の治療を含み、特に、疾患に感受性である患者(例えば、患者集団のメンバー、危険因子を有する個体、または疾患発症の危険を有する個体)の治療を含む。
【0095】
本明細書では、「組換えの(recombinant)」は、産物に関するものとして、例えば、細胞、または核酸、タンパク質、またはベクターを広く指し、細胞、核酸、タンパク質、またはベクターが、異種性の核酸もしくはタンパク質の導入によって改変されたか、または天然の核酸もしくはタンパク質の変更によって改変されたことを示すか、あるいは細胞が、そのように改変された細胞から得られたものであることを示す。したがっ
て、例えば、組換え細胞は、その細胞の天然(非組換え)形態には見られない遺伝子を発現するか、または天然の遺伝子を、通常とは異なる状態において、異常に発現するか、その発現状態にあるか、もしくはそれを全く発現しない。
【0096】
本明細書では、「シグナル配列」または「シグナルペプチド」は、約15残基以上のアミノ酸を含むペプチドを広く指し、当該ペプチドは、分泌型ポリペプチド及び膜結合型ポリペプチドのN末端に生じ、多数の疎水性アミノ酸残基を含むものである。例えば、シグナル配列は、少なくとも約10~30のアミノ酸残基、好ましくは約15~25のアミノ酸残基、より好ましくは、約18~20のアミノ酸残基、及びさらにより好ましくは、約19のアミノ酸残基を含み、少なくとも約35~65%、好ましくは、約38~50%、及びより好ましくは、約40~45%の疎水性アミノ酸残基(例えば、バリン、ロイシン、イソロイシン、またはフェニルアラニン)を有する。「シグナル配列」は、当該技術分野で「シグナルペプチド」とも称され、そのような配列を含むポリペプチドを方向づけ、脂質二重層へと移行させ、分泌ポリペプチド及び膜結合ポリペプチドにおいて切断されるために働く。
【0097】
本明細書では、抗体に対して、「特異的に(もしくは選択的に)結合する」または「に特異的に(もしくは選択的に)免疫反応性である」または「特異的に相互作用もしくは結合する」は、タンパク質またはペプチド(もしくは他のエピトープ)を広く指し、いくつかの実施形態では、タンパク質及び他の生物製剤の不均一集団におけるタンパク質の存在を決定的にする結合反応を指す。例えば、指定の免疫アッセイ条件下で、特定の抗体が、特定のタンパク質に対して、基礎環境(非特異的シグナル)と比較して少なくとも2倍を超えて強く結合すると共に、試料中に存在する他のタンパク質に対して有意な量で実質的に結合することはない。典型的には、特異的反応または選択的反応であれば、基礎環境のシグナルまたはノイズの少なくとも2倍であり、より典型的には、基礎環境の約10~100倍を超えることになる。
【0098】
本明細書では、「特異的にハイブリッド形成可能である」及び「相補性である」は、核酸が伝統的なWatson-Crickまたは他の非伝統的な型のいずれかによって、別の核酸配列と水素結合を形成できることを広く指す。当該核酸の相補性配列を有した核酸分子に対する結合自由エネルギーは、例えば、RNAi活性といった、当該核酸の関連機能を生じさせることを十分に可能にするものである。核酸分子に対する結合自由エネルギーの決定は当該技術分野においてよく知られている。例えば、Turnerら(1987)CSH Symp.Quant.Biol.LII:123-33、Frierら(1986)PNAS 83:9373-77、Turnerら(1987)J.Am.Chem.Soc.109:3783-85を参照のこと。相補性割合は、第2の核酸配列と、水素結合を形成(例えば、Watson-Crickの塩基対形成)することができる、核酸分子中の近接残基の割合を示す(10の内、少なくとも約5、6、7、8、9、10は、少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、及び100%の相補性を含むということである)。「完全に相補性である」、または100%の相補性は、核酸配列のすべての近接残基が、第2の核酸配列に存在する同一の数の近接残基と水素結合することを広く指す。「実質的相補性」は、ポリヌクレオチド鎖が、非相補性となるように選択された、突出などのポリヌクレオチド鎖領域を除いて、少なくとも約90%の相補性を示すことを指す。特異的な結合が望ましい条件下、すなわち、インビボアッセイもしくは治療処置の場合は、生理学的条件下、またはインビトロアッセイの場合は、アッセイが実施される条件下で、非標的配列に対する、オリゴマー化合物の非特異的結合を回避するために、十分な度合いの相補性が、特異的結合には必要である。非標的配列は、通常、少なくとも5つのヌクレオチドが異なり得る。
【0099】
本明細書では、疾患の「徴候」は、患者の検査で発見が可能である、疾患を示す任意の
異常性を広く指し、主観的な疾患指標である症状とは対照的に、疾患の客観的指標である。
【0100】
本明細書では、「固体担体」、「担体」、及び「基質」は、固体構造または半固体構造をとり、別の材料が結合できる任意の材料を広く指し、限定はされないが、滑面担体(例えば、金属表面、ガラス表面、プラスチック表面、シリコン表面、及びセラミック表面)ならびに加工(textured)材料及び多孔性材料が含まれる。
【0101】
本明細書では、「対象(subject)」は、本発明による治療に適した任意の個体を広く指し、限定はされないが、トリ対象及び哺乳類対象が含まれ、好ましくは哺乳類である。本発明による治療の必要がある哺乳類対象はいずれも適した対象である。ヒト対象は、性別及び発生の段階(すなわち、新生児、幼児、若年、青年、成人)を問わず、本発明による治療が可能である。本発明は、動物対象に対しても実施してよく、具体的には、獣医学的目的、ならびに薬物選別目的及び薬物開発目的のために、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、及びウマなどの動物対象に対しても実施してよい。「対象」は、「患者」と互換的に使用される。
【0102】
本明細書では、「化学的前駆物質または他の化学物質を実質的に含まない」は、タンパク質が、タンパク質合成に関与する化学的前駆物質または他の化学物質から分離される、VISTAタンパク質の調製物を広く指す。1つの実施形態では、「化学的前駆物質または他の化学物質を実質的に含まない」という言葉は、化学的前駆物質または非VISTA化学物質の含有量が(乾燥重量で)約30%未満であるか、より好ましくは、化学的前駆物質または非VISTA化学物質の含有量が約20%未満であるか、さらにより好ましくは、化学的前駆物質または非VISTA化学物質の含有量が約10%未満であるか、及び最も好ましくは、化学的前駆物質または非VISTA(PD-L3)化学物質の含有量が約5%未満であるVISTAタンパク質の調製物を含む。
【0103】
本明細書では、疾患の「症状」は、患者に生じ、疾患が示す、構造、機能、または感覚における、任意の病的現象または正常からの逸脱を広く指す。
【0104】
本明細書では、「T細胞」は、CD4+T細胞、及びCD8+T細胞を広く指す。T細胞という用語は、1型ヘルパーT細胞及び2型ヘルパーT細胞の両方も含む。
【0105】
本明細書では、「Treg細胞」(抑制性T細胞と称されることもある)は、免疫システムを調節し、自己抗原に対する寛容を維持して、自己免疫疾患を抑止することができるT細胞の亜集団を広く指す。Foxp3+CD4+CD25+制御性T細胞(Treg)は、正常な生理学的条件下での末梢性寛容の維持に非常に重要であると共に、癌における抗腫瘍免疫応答を抑制する。
【0106】
本明細書では、「治療(therapy)」、「治療の(therapeutic)」、「治療(treating)」、または「治療(treatment)」は、疾患の治療、疾患のもしくはその臨床的症状の発症抑止もしくは発症低減、及び/または疾患の緩和であり、疾患またはその臨床的症状の退縮を引き起こすものを広く指す。治療は、疾患、徴候、及び/または疾患症状の予防、治療、療法、低減、軽減、及び/またはそれらからの解放の提供を包含する。治療は、進行中である疾患の徴候及び/または症状(例えば、炎症、疼痛)を有する患者における徴候及び/または症状の軽減を包含する。治療は、「予防」も包含する。「低減した」という用語は、治療の目的では、徴候及び/または症状の、有意な臨床的低減を広く指す。治療は、再発または反復する徴候及び/もしくは症状(例えば、炎症、疼痛)の治療を含む。治療には、限定はされないが、任意の時間における徴候及び/または症状の出現防止、ならびに現存する徴候及び/または症状の低減、
ならびに現存する徴候及び/または症状の排除が含まれる。治療は、慢性疾患の治療(維持管理)及び急性疾患の治療を含む。例えば、治療は、徴候及び/または症状(例えば、炎症、疼痛)の再発または反復の治療または防止を含む。
【0107】
本明細書では、「膜貫通ドメイン」は、細胞膜にまたがる、長さがアミノ酸約15残基のアミノ酸配列を広く指す。より好ましくは、膜貫通ドメインは、少なくとも約20、少なくとも約25、少なくとも約30、少なくとも約35、少なくとも約40、または少なくとも約45のアミノ酸残基を含んで細胞質にまたがる。膜貫通ドメインは、疎水性残基が豊富であり、典型的には、アルファへリックス構造を有する。1つの実施形態では、膜貫通ドメインのアミノ酸の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、またはそれを超える割合が疎水性であり、例えば、ロイシン、イソロイシン、チロシン、またはトリプトファンである。膜貫通ドメインは、例えば、Zagottaら(1996)Annu.Rev.Neurosci.19:235-263において説明されている。
【0108】
本明細書では、「遺伝子導入動物」は、非ヒト動物、好ましくは、哺乳動物、より好ましくは、マウスであり、その動物の1つまたは複数の細胞が「導入遺伝子」を含むものを広く指す。「導入遺伝子」という用語は、遺伝子導入動物の発生起源である細胞のゲノムへと組み込まれた外来性DNAであり、成熟動物のゲノムに依然として存在して、遺伝子導入動物の1つまたは複数の細胞型または組織における、コード遺伝子の発現を方向づけるものを指す。
【0109】
本明細書では、「腫瘍」は、組織の新生物形成の形態、具体的には、内在性組織が自発的、自律的、及び不可逆的に過剰増殖し、程度の差はあるものの、阻害解除された形態にある、少なくとも1つの細胞または細胞塊であり、その増殖が、概して、程度の差はあるものの、特定細胞及び特定組織の機能の明白な減少と関連しているものを広く指す。この細胞または細胞塊は、その増殖に関して、それ自体によって、または宿主生物の制御機構によって、効果的に阻害されないものであり、例えば、結腸直腸癌、黒色腫、またはカルシノーマである。腫瘍抗原は、悪性細胞自体の中またはその細胞上に存在する抗原を含むだけでなく、内皮細胞及び他の血管構成成分を含む、腫瘍組織を支持する間質に存在する抗原も含む。
【0110】
本明細書では、「無応答性」は、刺激に対する免疫細胞の屈折性を広く指し、当該刺激は、例えば、活性化受容体またはサイトカインを介した刺激である。無応答性は、例えば、免疫抑制剤または高用量の抗原に対する曝露に起因して生じ得る。
【0111】
本明細書では、「可変領域」または「VR」は、抗体における軽鎖及び重鎖のそれぞれの対内に存在するドメインであり、抗原に対する抗体の結合に直接的に関与するものを広く指す。それぞれの重鎖は、一方の末端に可変ドメイン(VH)を有し、それに多くの定常ドメインが続いている。それぞれの軽鎖は、一方の末端に可変ドメイン(VL)を有し、そのもう一方の末端に定常ドメインを有する。軽鎖の定常ドメインは、重鎖の最初の定常ドメインと並列しており、軽鎖の可変ドメインは、重鎖の可変ドメインと並列している。
【0112】
本明細書では、「ベクター」は、それに連結された別の核酸分子を輸送する能力を有する核酸分子を広く指す。ベクターの1つの型は、「プラスミド」であり、これは、追加のDNAセグメントを連結し得る環状2本鎖DNAループを指す。別の型のベクターは、ウイルスベクターであり、これは、追加のDNAセグメントをウイルスゲノムへと連結し得るものである。ある特定のベクターは、それが導入される宿主細胞において、自己複製する能力を有している(例えば、細菌の複製起点を有する細菌ベクター及びエピソーム哺乳
類ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳類ベクター)は、宿主細胞への導入に際して、宿主細胞のゲノムへと組み込まれ、それによって宿主ゲノムと共に複製される。さらに、ある特定のベクターは、それが動作可能な形で連結されたゲノムの発現を方向づける能力を有している。本明細書では、ベクターは、「組換え発現ベクター」または単に「発現ベクター」と称される。一般に、組換えDNA手法において実用的である発現ベクターは、プラスミドの形態であることが多い。本明細書では、「プラスミド」及び「ベクター」は、互換的に使用されてよく、これは、プラスミドが最も一般に使用されるベクター形態であることと同様である。しかしながら、本発明は、同等機能を有して働く、ウイルスベクターなどの、そのような他の形態の発現ベクター(例えば、複製欠損性のレトロウイルス、アデノウイルス、及びアデノ随伴ウイルス)を含むことを意図する。手法及び手順は、当該技術分野において知られる従来方法に従って、ならびに本明細書にわたって引用及び議論されている様々な一般参考文献及びより特定の参考文献において説明されているように、一般に実施される。例えば、Sambrookら(2001)Molec.Cloning:Lab.Manual[3.sup.rd Ed]Cold Spring Harbor Laboratory Pressを参照のこと。組換えDNA、オリゴヌクレオチド合成、及び組織培養、ならびに形質転換(例えば、電気穿孔、リポフェクション)に標準手法を使用してよい。酵素反応及び精製手法は、製造者の説明書に従って実施するか、または当該技術分野で一般に達成されるように実施するか、または本明細書に記載されるように実施してよい。
【0113】
本明細書に記載の分析化学、合成有機化学、ならびに医薬品(medicinal)化学及び医薬(pharmaceutical)化学に関連して利用される命名法、ならびにそれらの実験手順及び実験手法は、当該技術分野においてよく知られており、一般に使用されるものである。化学合成、化学分析、医薬調製、処方、及び送達、ならびに患者の治療に標準手法を使用してよい。
【0114】
本明細書では、「VISTAアゴニスト」は、VISTAの発現または活性、具体的には、例えば、抗原特異的な抗体応答といったB細胞増殖及びB細胞応答に対する、VISTAの抑制作用を直接的または間接的に促進する任意の化合物を含む。これには、アゴニストである抗VISTA抗体及び抗VISTA抗体断片、抗体もしくはその抗体断片、ペプチド、糖アルコイド(glycoalkoid)、アンチセンス核酸、リボザイム、レチノイド、アベミル(avemir)、小分子、またはそれらの任意の組み合わせが含まれる。好ましいVISTAアゴニストには、VISTA-Igポリペプチドであり、例えば、VISTAポリペプチドまたはその断片が、例えば、ヒトのIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4といった抗体の全Fc領域またはそのFc領域の断片に対して結合しているものが含まれる。他の例示のVISTAアゴニストには、VISTAの多量体形態であり、すなわち、2つ以上のVISTAポリペプチドまたはその断片を含むものが含まれ、例えば、典型的には、オリゴマー化または多量体化したドメインまたは配列を介して結合した、2、3、4、5、または6個のVISTAポリペプチドである。そのような配列は、知られており、利用可能である。また、VISTAアゴニストには、その表面にVISTAを発現する遺伝子導入細胞、及びVISTAの発現を促進する核酸が含まれる。ほとんどの実例では、そのようなアゴニストは、ヒトVISTAに特異的であろう。
【0115】
本明細書では、「VISTAアンタゴニスト」は、VISTAの発現または活性、具体的には、例えば、抗原特異的な抗体応答といったB細胞増殖及びB細胞応答に対する、VISTAの抑制作用を直接的または間接的に阻害または遮断する任意の化合物を指す。これには、アンタゴニストである抗VISTA抗体及び抗VISTA抗体断片、抗体もしくはその抗体断片、ペプチド、糖アルコイド(glycoalkoid)、アンチセンス核酸、リボザイム、レチノイド、アベミル(avemir)、小分子、またはそれらの任意の組み合わせが含まれる。好ましいVISTAアンタゴニストには、例えば、抗原特異的
な抗体応答といったB細胞増殖またはB細胞応答性に対するMSDCの抑制作用を遮断または阻害する抗ヒトVISTA抗体及び抗ヒトVISTA抗体断片が含まれる。他の好ましいVISTAアンタゴニストには、アンチセンス核酸及び干渉RNAもしくはsiRNAまたはペプチド核酸(「PNA」)などの、VISTAの発現を遮断または抑制する核酸が含まれる。他の例示のVISTAアンタゴニストには、例えば、免疫細胞といった細胞に対するVISTAの結合を遮断するVISTA断片と、免疫細胞に対するVISTAの結合を遮断するVISTAポリペプチドを発現する細胞と、が含まれる。
【0116】
宿主による病態形成度合いの制御は、免疫制御性の応答を明らかに反映するものであり、例えば、腫瘍微小環境との関連において、過度の負の免疫制御をもたらす制御機構が含まれる。ウイルス感染では、ほとんどの場合、ウイルスが免疫制御性の細胞及び分子を乗っ取ることで、宿主応答性を減少させることによって、病態形成を間接的に増加促進するにすぎない一方で、誤って方向づけされた免疫制御性システムが、疾患を近くに引き起こすエフェクター細胞/分子として直接的に働き得る可能性がある。
【0117】
過去10年にわたってよく研究された免疫制御性の細胞型は、骨髄由来抑制細胞(MDSC)である(Ostrand-Rosenberg,2010、Youn and Gabrilovich,2010において概説されている)。CD4+FoxP3+Treg細胞のように、MDSCは、具体的には、様々な腫瘍システムにおいて、防御的なT細胞免疫応答に関して、負の様式にある一次的活動であるとみなされている。さらに、MDSC制御性である制御が、自己免疫疾患のプロセスを制限することができるという証拠を提供する文献が、数は少ないものの増加している(Bowen and Olson,2009)。MDSCは、その最終定義が、それが(未成熟な)骨髄起源であることと、その抑制性様式に基づいているものの、マウスシステムにおいて、Gr-1及びCD11bが陽性である表面表現型を有していることが一般に認められている。MDSC集団は、典型的には、不均一ではあるものの、表現型的に識別可能な細胞表面表現型を有するマウスMDSCサブセットが2つ存在する。mAbを使用することで、抗Gr-1が認識する特異性を分離する。すなわち、顆粒球/PMN様MDSCサブセットは、Ly6G+/hi Ly6C+/loであり、一方、単球性MDSCサブセットは、Ly6G+/lo Ly6C+/hi(Ostrand-Rosenberg,2010、Peranzoniら 2010、Youn and Gabrilovich,2010において概説されている)。腫瘍微小環境の広範囲にわたる研究に主に基づいて、MDSCは、それがレスポンダーT細胞の抑制を引き起こす機構によって、異なる形でも特徴づけられた。当該機構には、アルギナーゼ、iNOS/NO、他の酸素活性種及び窒素活性種、ならびに他の機構が含まれる(LaFace and Talmadgeにおいて概説されている)。MDSCの総説によっては、B細胞応答が、MDSC制御に対して感受性であり得、MDSCが、ポリクローナル活性化因子及び分裂促進物質に対して、MHCに制限されない応答を幅広く示し得ることを示しているものの、MDSCによるB細胞の標的化に主眼を置いた文献は明らかに限られている。
【0118】
様々な感染性疾患におけるMDSCの研究もまた遅れている。関連文献は、すなわち、細菌感染(Gabrilovich and Nagaraj,2009)、酵母/真菌感染(Mencacciら 2002)、原虫寄生虫感染(Voisinら 2004)、寄生虫様感染(Brysら 2005)、及びウイルス感染であり、ウイルス感染は、例えば、A型インフルエンザウイルス(Jeisy-Scottら 2011)、慢性マウスB型肝炎ウイルス(Chenら 2011)、ならびに水疱性口内炎ウイルス(Willmonら 2011)及び単純ヘルペスウイルス1型操作株(Walkerら 2011)の両方である。しかし、レトロウイルス感染、及びその結果として生じる後天性免疫不全などの疾患と関連した、MDSC集団の存在または機能に対する報告は、最近のものが少数存在するにすぎない(Vollbrechtら 2012,comment M
acantangayら 2012、Greenら 2013、Qinら 2013,Garg and Spector,2014)。
【0119】
レトロウイルスは、様々な免疫制御性の機構を都合よく利用する能力を有する。HIV-1及びSIVは、エフェクターT細胞上で、PD1の成熟前発現を引き起こすことが示され、これにより、抗ウイルスCD8+細胞溶解性(cytolytic)Tリンパ球(CTL)エフェクター細胞に対して不適切に早期な下方制御を強いることができ、これは、ウイルス排除の後期段階において生じる正常なT細胞収縮期と類似したものである(Dayら 2006、Veluら 2009)。マウスフレンドウイルス(FV)によって、PD-1及びTim-3の発現が変更されることで、レトロウイルス負荷及び病態形成に対して様々な作用を与えることが報告され(Takamuraら 2010、Zelinskyら 2011)、これには、「消耗(exhaustion)」、または他のウイルスシステムにおいて観測される、相対的に「無機能(function-less)」であるT細胞の表現型が含まれる(Dayら 2006、Veluら 2009)。ウイルス感染は、抗腫瘍免疫及び自己免疫の主要な制御点である、CD4+FoxP3+制御性T(Treg)細胞などの免疫制御性の細胞も変え得るものである(Sakaguchi,2004、Piccirillo and Shevach,2004において概説されている)。本明細書に記載の研究のLP-BM5マウスレトロウイルスシステムでは、LP-BM5の病態形成の媒介における、CD25+CD4+T細胞の直接的な役割を支持する証拠が早期に報告されており、当該T細胞は、FoxP3を含めずに他のマーカーを評価することによってTregであるとされた(Beilharzら 2004)。しかしながら、LP-BM5の感染/病態形成における、真のCD4+FoxP3+Treg細胞の非間接的な役割を支持する報告が後になされ、それは、防御的なCD8+CTL応答の発生を(PD-1/PD-L1と共に)制限するものであった(Li and
Green,2006、Li and Green 2011)。
【0120】
LP-BM5レトロウイルス分離株が感染した後、高度に感受性であるC57BL/6(B6)系などの、ある特定の近交系マウスは、免疫不全を含む疾患症候群を発症する。T細胞応答及びB細胞応答の重度な減衰を含む、重度の免疫不全が感染後約5週間で始まり、直ちに表面化して、数多くの疾患特徴が引き起こされる(Simardら 1997)。結果的に、疾患の進行に対する感受性が増加しており、通常であれば限定的な感染を引き起こす環境病原体に対して曝露されると死に至ることもある。LP-BM5による感染の後半時点では、B6マウスに、B細胞リンパ腫が発生する。LP-BM5が誘導する疾患のこうした特徴は、HIVに感染した個体において見られるものの多くと類似しているため、この症候群は、マウスAIDS(MAIDS)と命名された。
【0121】
LP-BM5レトロウイルスによる病態形成の機構は、完全には理解されていない。CD4+T細胞もしくはB細胞のいずれかを遺伝的に欠損しているB6マウス、または抗体によってCD4+T細胞もしくはB細胞のいずれかを事前にインビボで枯渇させたB6マウスへ、LP-BM5を接種すると、感染は引き起こすが、ウイルスが誘導する疾患は引き起こさない(Yetterら 1988)。「病原性CD4+エフェクターT細胞がこのように必要であることと関連し、我々は、CD154/CD40相互作用が、LP-BM5の病態形成の誘導及び進行の両方に必要であることを決定した。B6マウスの感染開始時点、または感染の3~4週間後のいずれかに、□-CD154(CD40リガンド)モノクローナル抗体(mAb)を使用してインビボ処理を実施すると、脾腫、高ガンマグロブリン血症、免疫細胞サブセットの表現型の変化、ならびにB細胞及びT細胞の免疫不全を含む、標準MAIDSパラメーターの実質的な阻害を引き起こす(Greenら 1996、Greenら 1998)。LP-BM5が誘導する疾患の度合いは、PD-1/PD-L1及びIL-10によっても制御されており、これらが働いて病原性CD4+T細胞を下方制御することで、結果として疾患の低減につながるものであった(Li a
nd Green,2006)。PD-1のライゲーション及びCD4+Treg細胞を組み合わせることでも、B6マウスにおける防御的なCD8+CTL応答の発生を阻害した(Li and Green,2011)。CD11b+FcRγIII/II+骨髄系細胞集団が増殖することも、LP-BM5が誘導する病態形成の顕著な特徴である。この細胞表面表現型に基づいて、我々は、最近、レトロウイルスが誘導するMDSCの、このシステムへの関与の可能性について評価した。実際、我々は、骨髄系細胞表面表現型(Gr-1+、Ly6C+、Ly6G-、CD11b+)を有した、LP-BM5が誘導するMDSC集団を特定し、当該MDSC集団は、LP-BM5が誘導する免疫不全を測定するために標準的に使用される刺激に対する免疫応答への対抗に有効である、エクスビボでの強力な阻害活性を有していた。我々は、以前に、有益な情報が得られるB6ノックアウト系をいくつか使用することによって、LP-BM5の病態形成に対する感受性レベルが変化することを示し、我々は、LP-BM5がインビボで誘導する疾患重症度と、MDSCによるエクスビボでの抑制活性との直接的な相関を確立した(Greenら 2013)。
【0122】
これも最近のことあるが、決定的な負の免疫制御因子リガンドのサブセットに属する新しい免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリーのメンバーであるVISTA(T細胞活性化のV-ドメインIg抑制因子)が定義された(Wangら 2011、LeMercierら 2014、Linesら 2014)。VISTAは、B7ファミリーのリガンドであるPD-L1に対して相同性を有し、特に、その細胞外ドメインに対して相同性を有する。VISTAは、造血性細胞上で主に発現するため、骨髄系抗原提示細胞(APC)上及びT細胞上にて高度に増加し得る。VISTAが自己免疫及び抗腫瘍免疫においてT細胞応答を阻害するために働くということを示す証拠がいくつか存在する。第1に、VISTA特異的mAbは、VISTAを発現しているAPCによる、VISTA誘導性のT細胞応答抑制をインビトロで妨害する。第2に、抗VISTA処理は、マウスにおいて、T細胞が媒介する実験用自己免疫脳脊髄炎の発症を悪化させる。第3に、可溶性のVISTA-Ig融合タンパク質、またはAPC上でのVISTAの発現は、T細胞の増殖及びサイトカイン産生をインビトロで阻害する。第4に、腫瘍細胞上でのVISTAの過剰発現は、マウスにおける防御的な抗腫瘍免疫をインビボで直接的に妨害する。こうした早期の報告をまとめると、VISTAが、PD-L1などの他のIgスーパーファミリーのメンバーとは重複しない機能活性を有した、新規の免疫制御性分子として働き、したがって、疾患の重症度に関して本質的に反対の意義を有してはいるが、自己免疫、及び腫瘍細胞に対するT細胞免疫監視の両方の発生及び制御において重要な役割を担っている可能性があることを示している。
【0123】
本出願では、我々は、こうしたMDSCの抑制機構にVISTAが関与している可能性に関して、さきほど説明したLP-BM5レトロウイルスが誘導する単球性MDSC集団をさらに評価した(Greenら 2013)。具体的には、T細胞増殖及びIFN-γ産生応答の、MDSCによる阻害が、iNOS/NOにほとんど完全に依存する(Greenら 2013)ものであることを考慮し、我々は、MDSCのT細胞標的へのVISTAの関与と、B細胞標的へのVSITAの関与とを対比し、これは、我々が、iNOS/NOに起因するものであるとし、MDSCによる抑制機構の約50%しか以前に説明することができなかったことである。我々の結果は、T細胞応答性の抑制とB細胞応答性の抑制との対比において、MDSCが発現するVISTAが異なる役割を果たすことを示しており、MDSC機能の不均一性、及び異なるMDSC亜集団の可能性を明確に示すものである。
【実施例
【0124】
実験実施例
実施例において使用した材料及び方法
マウス.7週齢の雄性C57BL/6(B6)マウスをNational Institutes of Health(メリーランド州、ベゼスダ)から購入し、Dartmouth Medical School Animal facilityにおいて飼育し、約8~10週齢となったところで使用した。B6へと完全に戻し交配させたiNOSノックアウトマウスの繁殖ペアは、Jackson Labs(メイン州、バーハーバー)から入手し、当該繁殖ペアは、元は、以前に説明された(Laubachら 1995)ようにして得られたものである。また、B6へと戻し交配させたものであり、報告に沿って得たVISTAノックアウト繁殖ペアは、から入手した。
【0125】
細胞精製.実験に向けて、LP-B5を感染させた3匹のマウスまたは4匹のマウス(感染後5週間(5w.p.i.))のいずれかに由来する抑制細胞集団である脾臓細胞の懸濁液をプールし、□-Ly6Gを結合させた常磁性ビーズで標識した後、製造者のプロトコール(MACS,Miltenyi Biotec,カリフォルニア州、オーバーン)に従って、カラム精製を実施した。最初の精製に由来するカラム溶出部を□-CD11bを結合させた常磁性ビーズで標識してからカラム精製に供すことで、陽性に選択された細胞集団が得られ、そのCD11b+Ly6C+は、>75%であった。
【0126】
LP-BM5ウイルス接種.LP-BM5は、以前の説明(Klinkenら 1988)に沿って、我々の研究室で調製した。LP-BM5ウイルスのストックを産生させるために、LP-BM5ウイルス調製物を感染させたSC-1細胞に由来するクローン化細胞株としてG6細胞を、非感染SC-1細胞との共培養に使用した。当該G6細胞は、元は、Janet Hartley博士及びHerbert Morse博士(NIH)の好意により提供されたものである。5x104の同種志向性プラーク形成単位をマウスの腹腔内に感染させた。当該プラーク形成単位は、標準的なレトロウイルスXCプラークアッセイ(Roweら 1970)によって決定した。
【0127】
3H-チミジン取り込み増殖アッセイ.レスポンダー細胞の目的で、未分画またはCD19+で精製したもののいずれかである5x105個の非感染脾臓細胞を、1.6x105個(別段の記載がない限り)のCD11b+Ly6G+、またはCD11b+Ly6C+で濃縮した抑制細胞と共に、96ウェル平底プレートに播種した。当該抑制細胞は、記載の野生型B6系、またはB6ノックアウト系である、5-w.p.i.のLP-BM5感染マウスの脾臓から得たものである。5%のFCS、Lグルタミン、抗生物質、及び最終濃度で10.ig/mlのLPS、50.ig/mlのct-CD40と10ng/mlのIL-4、または2.ig/mlのConAのいずれかを含む培地を、プレートのすべてのウェルに3連で分注した。増殖抑制の阻害アッセイに向けて、非分画またはCD11b+Ly6C+で濃縮した抑制細胞を1時間事前処理してから、NOS阻害物質である0.8mMのNG-モノメチル-L-アルギニン(L-NMMA)、負対照である、そのエナンチオマーのNG-モノメチル-D-アルギニン(D-NMMA)(A.G.Scientific,カリフォルニア州、サンディエゴ)、または80ug/mlの精製ct-VISTA(13F3)もしくは対照HIgのいずれかとの共培養を開始した。66時間後、すべてのウェルに、1mCiの3H-チミジン(Perkin Elmer,マサチューセッツ州、ウォルサム)を添加し、シンチレーション測定(Perkin Elmer,マサチューセッツ州、ウォルサム)によるチミジンの取り込み評価のために6時間後に回収した。B細胞レスポンダー細胞及びT細胞レスポンダー細胞の刺激データは、いずれも抑制割合として示されている。抑制割合の計算では、まず初めに、残留する応答性割合(R)を次のように計算した。R=(共培養したレスポンダー細胞及び実験用抑制細胞のcpm)÷(共培養したレスポンダー細胞及び対象である非感染抑制細胞のcpm)x100%。平均値の標準偏差は、3連ウェルで決定し、等分散を仮定した2つの試料による両側スチューデントT検定によって、統計学的に比較した。
【0128】
CFSE希釈増殖アッセイ.ナイーブレスポンダー脾臓細胞を5.iMのCFSE(Cell trace,CFSE proliferation Kit,Molecular Probes,オレゴン州、ユージーン)を含むPBS/0.5%BSAを使用して、37℃で10分標識した後、10%のFBSを含む冷却RPMIを氷上で添加して5分間保持した。冷却した10%FCS/RPMIで3回洗浄した後、上記の3H-チミジン取り込み増殖アッセイと同一の様式で、細胞培養を開始した。培養4日目に、モノクローナル抗体(mAb)であるct-CD19-PerCP(Biolegend,カリフォルニア州、サンディエゴ)で染色し、FACSCaliburフローサイトメーター(BD bioscience,カリフォルニア州、サンノゼ)で分析した。
【0129】
フローサイトメトリー.5x10個の脾臓細胞を、FcγIII/II受容体を標的とする非標識化mAB(2.4G2,Biolegend,カリフォルニア州、サンノゼ)と共に、氷上で10分間インキュベートした後、FITC-、PE-、APC-またはP
erCP-が結合した抗体を使用して、氷上で25分間、表面染色した。CellQue
stソフトウェア(BD Bioscience,カリフォルニア州、サンノゼ)を使用し、FACSCaliburフローサイトメーターで染色細胞を解析して、対数増幅によって定量化した。下記のマウス抗原の発現を検出するために、記載のmAbを用いた。精製VISTA(13F4)/PEストレプトアビジン、CD4(RM4-5)、CD19(6D5)、CD11b(M1/70)、Ly6G(1A8)、Ly6C(HK1.4)。適切なFITC-、PE-、PerCP-、またはAPC-が結合した、無関係な特異性を有するIgアイソタイプを各実験用mAbの対照として使用した。
【0130】
実施例1:脾臓細胞によるVISTAの発現
この実施例は、図1の実験に関するものである。こうした実験では、脾臓細胞によるVISTAの発現は、インビボでLP-BM5が感染することで増加することが示された。図1(A)は、フローサイトメトリー分析を含むものであり、非感染野生型B6マウスまたは感染後5週間もしくは8.5週間の野生型B6マウスに由来する脾臓細胞のVISTA発現パターンを示している。割合は、VISTAの発現に陽性である細胞を示し、イタリック体である値は、VISTAに陽性である細胞のMFIを示す。図1(B)は、脾臓細胞表面のVISTAの発現であり、下記の群のCD11b+細胞のVISTAを示す。すなわち、記載の非感染マウス系または感染マウス系から、その後に精製することなく得た細胞と、5wpi-LP-BM5マウスから精製したLy6C+CD11b+脾臓細胞と、である。示されている結果パターンは、2回の追加実験を代表するものである。
【0131】
実施例2:Ly6C+CD11b+で精製した脾臓細胞は、B細胞増殖と、T細胞増殖とをインビトロで抑制するために、異なる機構的必要要件を有している。
この実施例は、図2の実験に関するものである。こうした実験は、Ly6C+CD11b+で精製した脾臓細胞が、B細胞増殖と、T細胞増殖とをインビトロで抑制するために、異なる機構的必要要件を有していることを示している。図2(A及びB)は、レスポンダー対抑制因子(R:S)の比を3:1とし、ナイーブB6レスポンダー脾臓細胞を、a-VISTA及びLNMMAで事前に処理したLy6C+CD11b+MDSCと混合し、(A)a-CD40及びIL-4、または(B)ConAで3日間刺激した実験の結果を示す。
【0132】
図では、3H-チミジンの取り込みは、抑制%に変換されている(材料及び方法を参照のこと)。示されている結果パターンは、それぞれ刺激の3回の追加実験を代表するものである。図2Cは、4回の独立した実験の平均値+標準偏差を示し、ナイーブ野生型B6レスポンダーと共に3日間培養する前に実施した、Ly6C+CD11b+MDSCに対するa-VISTAでの事前処理が抑制を遮断した%を示している。有意性レベルは次のとおりである。はp<0.05、**はP<0.01、***はP<0.001の有意
差レベルであることを示す。
【0133】
実施例3:MDSCが媒介する脾臓細胞の増殖阻害に対する、VISTAアンタゴニストの作用
この実施例は、図3の実験に関するものである。こうした実験では、レスポンダー対抑制因子(R:S)の比を3:1として、ナイーブVISTA-/-レスポンダー脾臓細胞を、α-VISTAで事前処理したLy6C+CD11b+MDSCと混合し、a-CD40及びIL-4で3日間刺激した。示されている結果パターンは、3回の追加実験を代表するものである。はp<0.05、**はP<0.01、***はP<0.001、有意差なし(ns.)は、P>0.05であることを示す。
【0134】
実施例4:MDSCによる脾臓細胞の増殖抑制
この実施例は、図4の実験に関するものである。こうした実験では、LP-BM5に感染後、5週間が経過した、記載の種のマウスから精製した単球性MDSC(Ly6C+CD11b+)が、ナイーブVISTA-/-脾臓細胞の増殖を異なるパターンで抑制していることを示しており、これはフローサイトメトリーによって評価したものである。CFSEで標識したVISTA-/-レスポンダー細胞を、ct-CD40+IL4の存在下(+)または非存在下(-)かつ、単球性MDSCの存在下または非存在下で3日間培養した。すなわち、(a)(-)と、(b)(+)(灰色の影付き曲線)と、(c)(+)、野生型のMDSC(黒色の開曲線)と、(d)(+)、DNMMAで処理した野生型のMDSC(黒色の開曲線)と、(e)(+)、LNMMAで処理した野生型のMDSCと、(f)(+)、INOS-/-MDSC(点線の曲線)と、(g)(+)と、(h)(+)、VISTA-/-MDSC及び野生型のMDSCの対比と、である。4日間のインキュベーションの終了時点で、すべての培養物に由来する細胞を、ct-CD19と蛍光色素が結合したmAbで染色し、FACSによってCFSE希釈も評価した。CFSE標識したVISTA-/-レスポンダーは、%=最初の増殖ピーク中の細胞の割合eであり、イタリック体の数=CFSE+細胞のMFIである。示されている結果パターンは、1回の追加実験を代表するものである。
【0135】
実施例5:MDSCによるB細胞の増殖抑制
この実施例は、図5の実験に関するものである。こうした実験では、B細胞増殖の単球性の抑制が、2つの主な機構であるiNOS/NO及びVISTAに依存することが示された。5Aの実験では、LP-BM5に感染した5w.p.の野生型マウスまたはVISTA-/-マウスから精製したLy6C+CD11b+MDSCをct-VISTA遮断抗体または対照HIg、LNMMAまたは対照DNMMAで事前に処理してから、VISTA-/-レスポンダー細胞、ct-CD40、及びIL-4と共に3日間培養した。5(B)の実験では、パネル(A)に示すものと同一の処理レジメンに、ct-VISTA及びLNMMAの両方を含む組み合わせレジメンを含めて、野生型のLy6C+CD11b+MDSCを事前処理した。レスポンダーが取り込んだ3Hチミジンのcpmによって、(A)及び(B)の両方の抑制%を計算した。示されている結果パターンは、2回の追加実験(A)及び1回の追加実験(B)を代表するものである。は、P<0.05、**は、P<0.01、有意差なし(ns.)はP>0.05であることを示す。
【0136】
結果及び結論
LP-BM5レトロウイルスによる感染後にMDSCが増殖するため、VISTAの細胞表面発現は、感染後(p.i.)に初めて評価した。5w.p.i.の時点で、VISTA+脾臓細胞の割合は増加していなかったが、VISTAのMFIは増加し、陽性ピークの形状が変化した(図1A)。この変化は、非感染B6マウスにおいて、CD4 T細胞がVISTAを優位に発現するという報告(Wangら 2011)と、インビボでの刺激に際して増殖するCD11b+VISTA+細胞などの細胞型のさらなる存在と、の
両方に一致するものであり、本明細書では、我々が報告したLP-BM5感染が、MDSCを増殖させている(我々の参考文献)。8.5w.p.i.の時点で、VISTAの発現増加は、より明白であった(図1A)。非感染B6マウスと、5w.p.i.の野生型B6マウス、VISTA-/-B6マウス、及びINOS-/-B6マウスと、に由来する細胞による、VISTA及びCD11bの同時発現をさらに染色して対比させることで、抗VISTAmAbの特異性を確認し、高度に濃縮された単球性MDSC集団における、VISTAの発現増加を実証した(図1B)(以前にLy6Cも発現していることを示した(我々の参考文献を参照のこと。本明細書では、データ未掲載)。さらに、Wangら(2011)による研究によって予測されていたように、他の主なVISTA+集団は、CD4 T細胞コンパートメントであった(データ未掲載)。
【0137】
次に、単球性MDSCによるVISTA発現の機能性を、遮断実験において評価した。最初に、MDSCによる抑制において、VISTAが機構的に関与している可能性を、iNOS/NOの既知の分化的役割と比較した(図2A/B)。MDSCによる、T細胞応答性の抑制は、iNOS/NOに本質的に完全に依存するものであることが、iNOS阻害物質であるLNMMA(対照であるDNMMAとの比較)によって明らかとなった一方で、B細胞応答性では、MDSCによる抑制は、LNMMAによって約50%遮断された(以前にGreenら 2013において示したとおり)。際立って対照的であったことは、抗VISTAmAbが、MDSCによる、B細胞応答性の抑制を再び約50%遮断した一方で、MDSCによる、T細胞応答性の抑制は、本質的に影響を受けなかったことである。実際、いくつかの独立した実験にわたって、抗VISTAによる遮断の範囲は、65%あたりに集中していたが、対照であるハムスター免疫グロブリン(HIg)の非特異的な軽微な作用を考慮すれば、約55%のデルタに近づくものであった。したがって、B細胞応答の抑制のために、VISTAは、iNOS/NOと比較して区別可能な様式で働くようである。
【0138】
抗VISTAの遮断作用が、MDSCを特異的に対象としていることを明解に示すために、VISTA-/-レスポンダー細胞を使用して、抗VISTAによる遮断実験を繰り返した(図3)。抗VISTAによって、高有意(p=0.0001)ではあるが、部分的な遮断(しかし、HIgでは遮断はされなかった)が再び観測された。こうした結果によって、遮断は、MDSCのVISTAに依存するものであることが確認され、単純化かつ明確化の目的で、続くすべての実験で、VISTA-/-レスポンダー細胞を用いた。
【0139】
こうした発見を独立して実証し、これら2つの分子機構を比較するために、様々な野生型及びノックアウト型のB6を起源とし、対比させた単球性MDSCの存在下で、CFSEを事前負荷したレスポンダー細胞を刺激し、フローサイトメトリーによる分析を実施し、CD19+B細胞を同定した(図4)。図4Aでは、野生型のMDSCが、刺激されたB細胞を抑制することが明瞭に観測され(パネルa、パネルb、及びパネルcの比較)、LNMMAを含めることによって、増殖曲線が部分的に回復し、MDSCの非存在下で刺激された対照B細胞のものへと近づいた(DNMMAでは現象は生じなかった)(パネルd、パネルe)。また、iNOS/NOに対する、この部分的な依存は、最初の増殖ピークに示される細胞割合と、最初の増殖ピーク及びそれに続くすべての増殖ピークを合わせて達成したCFSEのMFI値と、の両方によって明らかとなった。このCFSE増殖プロファイルは、iNOS-/-MDSCを(阻害物質非存在下で)代わりに使用すると、図4BのiNOS-/-MDSCの曲線と、野生型のMDSC+LNMMAの曲線と、を対比させたオーバレイが一致するによって明確に示された(パネルeとパネルfとの比較)。しかしながら、重要なことに、VISTA-/-MDSCを用いると、2つの結果は顕著であった。すなわち、1)MDSCのVISTA発現の減少に起因して、MDSCによる抑制が部分的に遮断されること(図4パネルg)、及び2)MDSCのVISTAの除去に起因する増殖曲線の遮断プロファイルと、LNMMAによるiNOS/NOの遮断
に起因する増殖曲線の遮断プロファイルと、を対比して、それぞれの遮断プロファイルを、阻害物質非存在下での野生型のMDSCによる抑制と比較すると、非常に異なるということ(図4、パネルh)である。こうした発見は、MDSCによる、B細胞応答性の抑制が、VISTAに依存する要素と、iNOS/NOに依存する要素とが、区別可能な性質を有していることを確認するものであり、これら2つの機構が独立していることを示唆したものである。
【0140】
MDSCによるB細胞の抑制における、これら2つの経路の役割を評価するために、追加の組み合わせ「治療(treatment)」実験を実施した。第1に、我々は、iNOS/NOの阻害物質であるLNMMAの存在下で、野生型及びVISTA-/-を起源とするMDSCを対比させて用いた。野生型のMDSC(対照として)では、B細胞応答性に対するその抑制は、抗VISTAmAbまたはLNMMAのいずれによっても部分的に遮断され(図5A)、上記の我々の結果と一致した。対照的に、同一のレスポンダー細胞及び試薬を使用した同一の実験では、VISTA-/-起源のMDSCは、LNMMAのみによって遮断可能な様式において、B細胞の応答性を抑制した(図5A)。そして、遮断度合いは、この時点で本質的に100%であり、これは、iNOS/NO経路のみが保持されていることを示している。こうしたデータは、MDSCによる抑制の主な機構経路は2つのみであるということと、より一層一致するものであった。第2の手法では、抗VISTA、LNMMA、またはこれら2つの遮断試薬の組み合わせで、野生型のMDSCを処理した(図5B)。VISTA及びiNOS/NOの両方の関与を妨害した組み合わせ処理のみで、本質的に完全な抑制遮断が生じた。まとめると(図5A/B)、相乗的とはいかないにせよ、MDSCによる抑制の、この相加的な遮断は、LP-BM5に感染したマウスに由来する単球性MDSCによる、B細胞応答の2つの主な抑制機構を定義し、iNOS/NO及びVISTAへの依存性を再び示すものであった。
【0141】
結論として、本明細書で我々は、MDSCによる抑制、具体的には、MDSCによるB細胞応答性の抑制において、新規の負のチェックポイント制御因子であるVISTAが関与していることを説明しており、我々の知見では、これは初めてのことである。このVISTA依存性の抑制機構が、MDSCによるB細胞応答の抑制のみにおいて、役割を担うもの(player)であり、T細胞応答ではそうではないという我々の観測が、我々の発見の新規性に貢献している。したがって、MDSCによるB細胞反応性の抑制は、まさに研究中の領域であった。我々は、LP-BM5レトロウイルスが誘導するMDSCによる抑制が、PD-L1またはPD-1(またはIL-10)のいずれにも依存しないことを以前に報告した(Greenら 2013)。したがって、VISTA依存性経路の関与に対する本明細書の結果は、iNOS/NOの機構とあわせて、配列相同性が最も近接したその類縁体であるPD-L1(Wangら 2011)との対比において、VISTAが関連する機能の特有性を明確に示すものである。LP-BM5レトロウイルスに感染したマウスに由来する同一の単球性MDSC集団による、B細胞の抑制と、T細胞の抑制との対比において、VISTAが分化的に関与していることを総合すると、こうした結果は、異なる機構を有する機能性/表現型MDSC亜集団の存在可能性、及び抑制標的から、LP-BM5が誘導するMAIDSに特有である、T細胞応答及びB細胞応答の重度かつ幅広い免疫不全におけるMDSCサブセットの役割に至るまで、重要なさらなる疑問を提起するものである。
【0142】
本発明の治療用途
B細胞応答性に対するVISTAの作用、具体的には、MSDCによって媒介される、B細胞応答性に対するVISTAの抑制作用に基づき、VISTAアンタゴニストを単独または他の免疫活性化因子もしくは免疫アゴニストと関連させて使用してよく、具体的には、B細胞応答性の増加が治療的に望ましい状態を治療または防止するために、アゴニストである抗CD40抗体またはCD40LポリペプチドなどのCD40アゴニストなどの
、液性免疫を増進するものと関連させて使用してよい。そのような状態には、具体的には、B細胞が応答する癌が含まれ、例えば、抗体応答が疾患病理に関与するか、または予防免疫もしくは治療免疫に関与するものである。そのような癌の状態の例には、限定はされないが、カルシノーマ、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫(脂肪肉腫を含む)、神経内分泌腫瘍、中皮腫、シュワン腫(schwanoma)、髄膜腫、腺癌、黒色腫、卵巣癌、乳癌、肺癌、脳癌、消化器癌、及び白血病またはリンパ系腫瘍が含まれる。
【0143】
そのような癌のより具体的な例には、非ホジキンリンパ腫(NHL)などの血液系腫瘍が含まれる。NHL癌(cancer)には、限定はされないが、バーキットリンパ腫(BL)、小リンパ球性リンパ腫/慢性リンパ性白血病(SLL/CLL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、濾胞性リンパ腫(FL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLCL)、辺縁帯リンパ腫(MZL)、ヘアリー細胞白血病(HCL)及びリンパ形質細胞性白血病(LPL)、粘膜関連リンパ組織型節外性辺縁帯B細胞リンパ腫(MALT)、結節性辺縁帯B細胞リンパ腫、縦隔大細胞型細胞リンパ腫、血管内大細胞型細胞リンパ腫、原発性滲出液リンパ腫、前駆Bリンパ芽球性白血病/リンパ腫、前駆T細胞及びNK細胞リンパ腫(前駆Tリンパ芽球性リンパ腫、芽球性NK細胞リンパ腫)、末梢性T細胞リンパ腫及び末梢性T細胞白血病(PTL)、成人T細胞白血病/T細胞リンパ腫及び大顆粒リンパ球性白血病、T細胞性慢性リンパ性白血病/前リンパ球性白血病、T細胞大顆粒リンパ球性白血病、侵攻性NK細胞白血病、節外性T/NK細胞リンパ腫、腸症型T細胞リンパ腫、肝脾T細胞リンパ腫、未分化大細胞リンパ腫(ALCL)、血管中心性及び血管免疫芽細胞性のT細胞リンパ腫、菌状息肉腫/セザリー症候群、ならびに皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)を含む成熟T細胞及びNK細胞の腫瘍が含まれる。VISTAアンタゴニストによる治療が可能であり得る他の癌には、限定はされないが、ホジキンリンパ腫、B細胞性急性リンパ芽球性白血病/リンパ腫(B-ALL)、及びT細胞性急性リンパ芽球性白血病/リンパ腫(T-ALL)を含むリンパ球前駆細胞の腫瘍、胸腺腫、ランゲルハンス細胞組織球症、多発性骨髄腫(MM)、成熟を伴うAML、分化を伴わないAML、急性前骨髄球性白血病、急性骨髄単球性白血病、及び急性単球性白血病を含む急性骨髄性白血病(AML)などの骨髄性新生物、骨髄異形成症候群、ならびに慢性骨髄性白血病(CML)を含む慢性骨髄増殖性疾患(MDS)が含まれる。VISTAアンタゴニストで治療が可能であり得る他の癌には、限定はされないが、神経膠腫、神経膠芽腫、神経芽細胞腫、星状細胞腫、髄芽腫、上衣腫、及び網膜芽細胞腫などの中枢神経系の腫瘍と、頭頸部の固形腫瘍(例えば、上咽頭癌、唾液腺癌、及び食道癌)、肺の固形腫瘍(例えば、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌、及び肺の扁平上皮癌)、消化器系の固形腫瘍(例えば、胃腸癌を含む胃(gastric)癌または胃(stomach)癌、胆管または胆道の癌、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、及び肛門癌)、生殖器系の固形腫瘍(例えば、精巣、陰茎、または前立腺の癌、子宮、腟、外陰部、子宮頸部、卵巣、及び子宮内膜の癌)、皮膚の固形腫瘍(例えば、黒色腫、基底細胞癌、扁平上皮癌、日光角化症)、肝臓の固形腫瘍(例えば、肝癌(liver cancer)、肝癌(hepatic carcinoma)、肝細胞癌、及び肝細胞腫)、骨の固形腫瘍(例えば、骨巨細胞腫、及び溶骨性骨癌)、さらなる組織ならびに臓器の固形腫瘍(例えば、膵癌、膀胱癌、腎(kidney)癌または腎(renal)癌、甲状腺癌、乳癌、腹膜の癌、及びカポジ肉腫)と、脈管系の腫瘍(例えば、血管肉腫及び血管外皮腫)と、が含まれる。
【0144】
治療し得る他の特定の癌の指標には、限定はされないが、すべての非ホジキンリンパ腫(NHL)、特に、抵抗性/耐性NHL、慢性リンパ性白血病(CLL)、B細胞性急性リンパ芽球性白血病/リンパ腫(B-ALL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、及び多発性骨髄腫(MM)が含まれる。
【0145】
B細胞応答性に対するVISTAの作用、具体的には、MSDCによって媒介される、B細胞応答性に対するVISTAの抑制作用にさらに基づき、B細胞応答性の増加が治療
的に望ましい感染性の状態を治療または防止するために、VISTAアンタゴニストを使用してよい。そのような状態には、具体的には、ウイルス、細菌、真菌、原虫、及び寄生虫などの病原体によって引き起こされる疾患が含まれる。アデノウイルス、サイトメガロウイルス、デング熱、エプスタイン・バーウイルス、ハンタン、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、単純ヘルペスI型、単純ヘルペスII型、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、インフルエンザ、麻疹、流行性耳下腺炎、パポーバウイルス、ポリオ、呼吸器多核体ウイルス(RSV)、牛疫、ライノウイルス、ロタウイルス、風疹、SARSウイルス、天然痘、ウイルス性髄膜炎、及び同様のものを含むウイルスによって、感染性疾患は引き起こされ得る。Bacillus anthracis、Borrelia burgdorferi、Campylobacter jejuni、Chlamydia trachomatis、Clostridium botulinum、Clostridium tetani、Diphtheria、E. coli、Legionella、Helicobacter pylori、Mycobacterium rickettsia、Mycoplasma neisseria、Pertussis、Pseudomonas aeruginosa、S.pneumonia、Streptococcus、Staphylococcus、Vibrio cholerae、Yersinia pestis、及び同様のものを含む細菌によっても、感染性疾患は引き起こされ得る。Aspergillus fumigatus、Blastomyces dermatitidis、Candida albicans、Coccidioides immitis、Cryptococcus neoformans、Histoplasma capsulatum, Penicillium marneffei、及び同様のものなどの真菌によっても、感染性疾患は引き起こされ得る。クラミジア、コクジジオア(kokzidioa)、リーシュマニア、マラリア、リケッチア、トリパノソーマ、及び同様のものなどの原虫及び寄生虫によっても、感染性疾患は引き起こされ得る。
【0146】
B細胞応答性に対するVISTAの作用、具体的には、MSDCによって媒介される、B細胞応答性に対するVISTAの抑制作用にさらに基づき、治療ワクチンの効力を「後押しする(boost)」ために、VISTAアンタゴニストを使用してよい。本発明の本出願では、対象は、1つもしくは複数の抗原、または典型的には、それに対して特異的なヒト抗体もしくヒト化抗体である1つもしくは複数の抗体を、少なくとも1つのVISTAアンタゴニストと組み合わせて、投与することによって、特定抗原に対して、能動的または受動的に免疫化されることになり、当該VISTAアンタゴニストは、例えば、抗VISTA抗体、あるいはアンタゴニストであるVISTAポリペプチドまたはVISTAの活性もしくは発現を弱めるそのようなペプチドもしくはアンチセンス核酸などの核酸を含むVISTA結合体である。
【0147】
VISTAアンタゴニストは、所望の抗原または抗体を含むワクチンの投与の、前、同時、または後に投与されてよい。そのような抗原または抗体、及びVISTAアンタゴニストは、同一または異なる製剤に存在してよい。最も典型的には、それらは、異なる製剤に含められる。VISTAアンタゴニストは、所望の抗原に対して誘発されることになるか、または治療抗体によって誘発されることになるB細胞免疫応答をVISTAアンタゴニストが促進するような量及び投薬条件で投与される。この抗原は、腫瘍抗原、例えば、細菌、ウイルス、酵母、真菌、もしくは寄生虫の抗原といった感染病原体の抗原を含むか、またはアレルゲンもしくは自己抗原を含んでよい。同様に、投与される抗体は、腫瘍抗原、例えば、細菌、ウイルス、酵母、真菌、もしくは寄生虫の抗原といった感染病原体の抗原、アレルゲン、または自己抗原に対して特異的であってよい。
【0148】
また、B細胞応答性に対するVISTAの作用、具体的には、MSDCによって媒介される、B細胞応答性に対するVISTAの抑制作用にさらに基づき、B細胞応答性の低減
が治療的に望ましい状態を治療または防止するために、VISTAアゴニストを使用してよい。そのような状態には、具体的には、B細胞応答が疾患病理に関与している自己免疫状態、B細胞応答が疾患病理に関与している炎症性状態、及びB細胞応答が疾患病理に関与しているアレルギー性状態が含まれる。
【0149】
VISTAアゴニストで治療が可能な、そのような自己免疫状態の例には、下記のものが含まれる。すなわち、同種膵島移植片拒絶(allogenic islet graft rejection)、円形脱毛症、強直性脊椎炎、抗リン脂質抗体症候群、自己免疫アジソン病、抗好中球細胞質自己抗体(ANCA)、副腎の自己免疫疾患、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性心筋炎、自己免疫性好中球減少症、自己免疫性卵巣炎及び自己免疫性精巣炎、自己免疫性血小板減少症、自己免疫性蕁麻疹、ベーチェット病、水疱性類天疱瘡、心筋症、キャッスルマン病、セリアック病皮膚炎(celiac spruce-dermatitis)、慢性疲労免疫機能障害症候群、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、チャーグ・ストラウス症候群、瘢痕性類天疱瘡、クレスト症候群、寒冷凝集素症、クローン病、皮膚筋炎、円板状エリテマトーデス、本態性混合型クリオグロブリン血症、第VIII因子欠乏症、線維筋痛-線維筋炎(fibromyalgia-fibromyositis)、糸球体腎炎、グレーブス病、ギラン・バレー症候群、グッドパスチャー症候群、移植片対宿主病(GVHD)、橋本甲状腺炎、血友病A、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、IgA腎症(neuropathy)、IgM多発神経炎(polyneuropathy)、免疫媒介性の血小板減少症、若年性関節炎、川崎病、扁平苔癬、エリテマトーデス、メニエール病、混合性結合組織疾患、多発性硬化症、1型糖尿病、重症筋無力症、尋常性天疱瘡、悪性貧血、結節性多発動脈炎、多発性軟骨炎、多腺性症候群、リウマチ性多発筋痛症、多発性筋炎及び皮膚筋炎、原発性無ガンマグロブリン血症、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、乾癬性関節炎、レイノー現象(Reynaud‘s phenomenon)、ライター症候群、関節リウマチ、サルコイドーシス、強皮症、シェーグレン症候群、固形臓器移植片拒絶、スティフマン症候群、全身性エリテマトーデス、高安動脈炎、側頭動脈炎/巨細胞性動脈炎、血栓性血小板減少性紫斑病、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜炎、疱疹状皮膚炎型血管炎(dermatitis
herpetiformis vasculitis)などの血管炎、白斑、ならびにウェグナー肉芽腫症(Wegner’s granulomatosis)である。
【0150】
VISTAアゴニストで治療が可能な、そのような自己免疫状態の例には、下記のものが含まれる。すなわち、急性呼吸促迫症候群(ARDS)、急性化膿性関節炎、アジュバント関節炎、若年性特発性関節炎、アレルギー性脳脊髄炎、アレルギー性鼻炎、アレルギー性血管炎、アレルギー、喘息、アテローム性動脈硬化、慢性的な細菌感染またはウイルス感染に起因する慢性炎症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、冠動脈疾患、脳炎、炎症性腸疾患、炎症性骨溶解症、急性過敏性反応及び遅延型過敏性反応と関連した炎症、腫瘍と関連した炎症、末梢神経損傷または脱髄性疾患、熱傷及び虚血などの組織外傷と関連した炎症、髄膜炎に起因する炎症、多臓器損傷症候群、肺線維症、敗血症性ショック及び感染性ショック、スティーブンス・ジョンソン症候群、未分化関節症(arthropy)、ならびに未分化脊椎関節症である。
【0151】
VISTAアゴニストで治療が可能な、そのようなアレルギー性状態の例が、例として含まれ、VISTAアゴニストを使用した治療が可能な好ましいアレルギー性状態には、アレルギー性接触皮膚炎、汎発性脱毛症、喘息、アナフィラクトイド紫斑喘息、アトピー性皮膚炎、疱疹状皮膚炎、持久性隆起性紅斑、輪状紅斑、多形性紅斑、結節性紅斑、アレルギー性肉芽腫症、環状肉芽腫、顆粒球減少症、過敏性肺炎、角膜炎、ネフローゼ症候群、オーバーラップ症候群、鳩飼病、特発性多発性神経炎、蕁麻疹、ブドウ膜炎、若年性皮膚筋炎、及び白斑が含まれる。
【0152】
B細胞応答性の低減が望ましくあり得る状態の他の例には、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、自己免疫性溶血性貧血、黒色表皮腫、アレルギー性接触皮膚炎、アジソン病、アトピー性皮膚炎、円形脱毛症、汎発性脱毛症、アミロイドーシス、アナフィラクトイド紫斑、アナフィラキシー様反応、再生不良性貧血、遺伝性血管性浮腫、特発性血管性浮腫、強直性脊椎炎、頭部動脈炎、巨細胞性動脈炎、高安動脈炎、側頭動脈炎、喘息、毛細血管拡張性運動失調症、自己免疫性卵巣炎、自己免疫性精巣炎、多腺性自己免疫異常(Autoimmune polyendocrine failure)、ベーチェット病、ベルジェ病、バージャー病、水疱性類天疱瘡、カンジダ症、慢性皮膚粘膜カンジダ症、カプラン症候群、心筋梗塞後症候群、心膜切開後症候群、心炎、セリアックスプルー、シャーガス病、チェディアック・東症候群、チャーグ・ストラウス疾患、コーガン症候群、寒冷凝集素症、クレスト症候群、クローン病、クリオグロブリン血症、原因不明の線維化性胞隔炎、疱疹状皮膚炎、皮膚筋炎、糖尿病、ダイアモンドブラックファン症候群、ディジョージ症候群、円板状エリテマトーデス、好酸球性筋膜炎、上強膜炎、持久性隆起性紅斑、輪状紅斑、多形性紅斑、結節性紅斑、家族性地中海熱、フェルティ症候群、肺線維症、アナフィラキシー様糸球体腎炎、自己免疫性糸球体腎炎、連鎖球菌感染後糸球体腎炎、移植後糸球体腎炎、膜性糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、移植片対宿主病、免疫媒介性顆粒球減少症、環状肉芽腫、アレルギー性肉芽腫症、肉芽腫性筋炎、グレーブス病、橋本甲状腺炎、新生児溶血性疾患、特発性ヘモクロマトーシス、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、慢性活動性肝炎及び慢性進行性肝炎、組織球症X、好酸球増加症候群、特発性血小板減少性紫斑病、ヨブ症候群、若年性皮膚筋炎、若年性関節リウマチ(若年性慢性関節炎)、川崎病、角膜炎、乾性角結膜炎、ランドリー・ギラン・バレー・ストロール症候群(Landry-Guillain-Barre-Strohl syndrome)、ハンセン病、らい腫型、レフレル症候群、ライエル症候群、ライム病、リンパ腫様肉芽腫症、全身性肥満細胞症、混合性結合組織疾患、多発単神経炎、マックル・ウェルズ症候群、皮膚粘膜リンパ節症候群、皮膚粘膜リンパ節症候群、多中心性細網組織球症、多発性硬化症、重症筋無力症、菌状息肉症、全身性壊死性血管炎、ネフローゼ症候群、オーバーラップ症候群、脂肪織炎、発作性寒冷ヘモグロビン尿症、発作性夜間ヘモグロビン尿症、類天疱瘡、天疱瘡、紅斑性天疱瘡、落葉状天疱瘡、尋常性天疱瘡、鳩飼病、過敏症間質性肺炎、結節性多発動脈炎、リウマチ性多発筋痛症、多発性筋炎、特発性多発神経炎、ポルトガル家族性多発神経炎、子癇前症/子癇、原発性胆汁性肝硬変、進行性全身性硬化症(強皮症)、乾癬、乾癬性関節炎、肺胞蛋白症、肺線維症、レイノー現象/レイノー病、リーデル甲状腺炎、ライター症候群、再発性多発軟骨炎、リウマチ熱、関節リウマチ、サルコイドーシス、強膜炎、硬化性胆管炎、血清病、セザリー症候群、シェーグレン症候群、スティーブンス・ジョンソン症候群、スチル病、亜急性硬化性全脳炎、交感性眼炎、全身性エリテマトーデス、移植片拒絶、潰瘍性大腸炎、未分化結合組織疾患、慢性蕁麻疹、寒冷蕁麻疹、ブドウ膜炎、白斑、ウェーバー・クリスチャン病、ウェゲナー肉芽腫症、ウィスコット・アルドリッチ症候群が含まれる。VISTAアゴニストまたはVISTAアンタゴニストで治療が可能な他のB細胞関連の状態には、B細胞が、過多、過少、過活動性、または不活性であるか(もしくはB細胞の活性が実質的に減少している)、あるいはB細胞が機能障害性であることによって特徴づけられる疾患を含むB細胞関連の状態が含まれる。B細胞が関与することが知られている例示のヒト疾患には、限定はされないが、自己免疫疾患(例えば、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、ANCA関連血管炎、抗リン脂質抗体症候群、突発性血小板減少性紫斑病(ITP)、自己免疫性溶血性貧血、ギラン・バレー症候群、慢性免疫多発神経炎、自己免疫性甲状腺炎、I型(自己免疫性)糖尿病、膜性糸球体腎症、グッドパスチャー症候群、自己免疫性胃炎、悪性貧血、尋常性天疱瘡、原発性胆汁性肝硬変、皮膚筋炎-多発性筋炎、重症筋無力症、全身性硬化症(強皮症)、多発性硬化症、間質性肺疾患、慢性疲労症候群、妊娠性抗好中球細胞質抗体に起因する自己免疫性甲状腺炎(ANCA)、及びセリアック病)と、炎症性疾患(例えば、免疫グロブリンA腎症、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、慢性移植片拒絶、アトピー性皮膚炎、橋本甲状腺炎、グレーブス病、萎縮性甲状腺炎、リーデル
甲状腺炎、喘息、ライム神経ボレリア症、潰瘍性大腸炎、クローン病、及びアレルギー)と、癌(例えば、リンパ腫、非ホジキンリンパ腫(NHL)、侵攻性(aggressうive)NHL、再発した侵攻性NHL、再発した低悪性NHL、抵抗性NHL、抵抗性の無痛性、免疫グロブリンが変異したCLL及び免疫グロブリンが未変異のCLLを含む慢性リンパ性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫、白血病、ヘアリー細胞白血病(HCL)、急性リンパ性白血病(ALL)、マントル細胞リンパ腫、中悪性度/濾胞性NHL、中悪性度びまん性NHL、高悪性度免疫芽球性NHL、高悪性度リンパ芽球性NHL、高悪性度小型非切れ込み核細胞性NHL、巨大腫瘤病変NHL、バーキットリンパ腫、多発性骨髄腫、前駆B細胞急性リンパ芽球性白血病、及び下記のものに由来する他の悪性腫瘍が含まれ、すなわち、初期B細胞前駆体、ヘアリー細胞白血病、ヌル急性リンパ芽球性白血病、ワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症、胚中心B細胞様(GCB)DLBCL、活性化B細胞様(ABC)DLBCL、及び3型DLBCLを含むびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、前リンパ球性白血病、軽鎖病、形質細胞腫、骨硬化性骨髄腫、形質細胞性白血病、意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症(MGUS)、くすぶり型多発性骨髄腫(SMM)、低悪性度多発性骨髄腫(IMM)、古典的ホジキンリンパ腫及び結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫を含むホジキンリンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫(LPL)、ならびに胃粘膜関連リンパ組織型(MALT)リンパ腫を含む辺縁帯リンパ腫である)と、が含まれる。
【0153】
強皮症は、限定はされないが、限局性皮膚疾患、びまん性皮膚疾患、皮膚硬化を伴わない(sine)強皮症、未分化結合組織疾患、オーバーラップ症候群、限局性強皮症、モルフェア、線状強皮症、サーベル状切痕、成年性浮腫性硬化症(scleredema adultorum of Buschke)、硬化性粘液水腫、慢性移植片対宿主病(GVHD)、好酸球性筋膜炎、糖尿病性皮膚硬化症、ならびに原発性アミロイドーシス、及び多発性骨髄腫と関連するアミロイドーシスを含む疾患の混成群を包含する。(Harrison’s Principles of Internal Medicine,16.sup.th ed./editors,Dennis L.Kasperら.The McGraw-Hill Companies,Inc.2005 New York, N.Y.において概説されている)。
本願は以下の発明を包含する。
[項目1] 必要とする対象における、VISTAが媒介する液性免疫阻害の阻害方法または無効化方法であって、VISTAアンタゴニストの投与を含む前記方法。
[項目2] B細胞免疫が抑制される癌または感染性疾患状態を有する対象の治療のために使用される、項目1に記載の方法。
[項目3] 必要とする対象における、VISTAが媒介する液性免疫阻害の促進方法または増加方法であって、VISTAアゴニストの投与を含む前記方法。
[項目4] B細胞応答または抗体応答が疾患病理に関与する、自己免疫性状態、アレルギー性状態、炎症性状態、または感染性状態を有する対象の治療のために使用される、項目3に記載の方法。
[項目5] 必要とする対象における、限定はされないが、抗原特異的な抗体応答を含む、B細胞増殖またはB細胞応答の抑制方法であって、VISTAアゴニストの投与を含む前記方法。
[項目6] B細胞応答または抗体応答が疾患病理に関与する、自己免疫性状態、アレルギー性状態、炎症性状態、または感染性状態を有する対象の治療のために使用される、項目5に記載の方法。
[項目7] 必要とする対象における、限定はされないが、抗原特異的な抗体応答を含む、B細胞増殖またはB細胞応答の増加方法であって、VISTAアンタゴニストの投与を含む前記方法。
[項目8] B細胞免疫が抑制される癌または感染性疾患状態を有する対象の治療のために使用される、項目7に記載の方法。
[項目9] 抗原または治療抗体に対して誘発される液性免疫応答の促進方法であって、VISTAアンタゴニストの使用を含む治療レジメンにおける、そのような抗原または抗体の投与を含む前記方法。
[項目10] 前記抗原が、腫瘍抗原、自己抗原、アレルゲン、または感染病原体の抗原である、項目9に記載の方法。
[項目11] 前記抗体が、腫瘍抗原、自己抗原、アレルゲン、または感染病原体の抗原に対して特異的である、項目9に記載の方法。
[項目12] 治療ワクチンまたは予防ワクチンによって誘発される液性免疫応答の促進方法であって、VISTAアンタゴニストの使用を含む治療レジメンにおける、そのようなワクチンの投与を含む前記方法。
[項目13] 前記ワクチンが、腫瘍抗原、自己抗原、アレルゲン、または感染病原体の抗原を含む、項目12に記載の方法。
[項目14] iNOS/NO阻害物質の投与をさらに含む、項目1~13のいずれか1項に記載の方法。
[項目15] iNOS/NO促進物質、または一酸化窒素もしくは一酸化窒素を含む化合物の投与をさらに含む、項目1~13のいずれか1項に記載の方法。
[項目16] 前記iNOS/NO阻害物質が、一酸化窒素を阻害する化合物であるか、または一酸化窒素の合成を阻害する化合物である、項目14に記載の方法。
[項目17] 前記iNOS/NO阻害物質が、一酸化窒素を促進する化合物であるか、または一酸化窒素の合成を促進する化合物である、項目14に記載の方法。
[項目18] 前記化合物が、任意選択で、NG-ニトロ-L-アルギニンメチルエステル、NG-エチル-L-アルギニン、N-イミノエチル-L-アルギニン、L-NG-メチルアルギニン、及びNG-ニトロ-L-アルギニンであるアルギニン誘導体であるか、または前記阻害物質が、NG-ニトロ-Lアルギニンメチルエステルである、項目17に記載の方法。
[項目19] 前記化合物が、ロバスタチン、フェニル酢酸のナトリウム塩(NaPA)、FPT阻害物質II、N-アセチルシステイン(NAC)、及びcAMPであるか、またはこれらのすべてが、参照によって、それらの全体がここに組み込まれる、米国第6,586,474号、第6,545,170号、第6,593,372号、第6,787,668号、第6,809,117号、第6,591,889号、第7,196,118号、第7,049,058号において開示されているiNOS/NO阻害物質のいずれかである、項目17に記載の方法。
[項目20] 前記VISTAアンタゴニストが、抗VISTA抗体またはVISTAの断片である、項目1~19のいずれかに記載の方法。
[項目21] 前記iNOS/NO阻害物質が、L-NMAまたはLNMMAである、先行項目のいずれかに記載の方法。
[項目22] 前記VISTAアゴニストが、アゴニストである抗ヒトVISTA抗体または抗ヒトVISTA抗体断片またはVISTA-Ig結合体またはVISTAの多量体形態である、先行項目のいずれかに記載の方法。
[項目23] 前記VISTA-Igが、任意選択で、少なくとも1つのエフェクター機能の減弱または増加のために改変され得る、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4のFc領域またはその断片を含む、項目22に記載の方法。
[項目24] 前記対象が、癌または感染性疾患を有する、先行項目のいずれかに記載の方法。
[項目25] 前記対象が、レトロウイルスなどのウイルス、細菌、または寄生虫によって引き起こされる感染性疾患を有する、先行項目のいずれかに記載の方法。
[項目26] 前記対象が、進行した癌もしくは転移性の癌を有し、及び/または固形腫瘍を有する、先行項目のいずれかに記載の方法。
[項目27] 前記癌が、肉腫、黒色腫、卵巣癌、肺癌、リンパ腫、白血病、または骨髄性の癌である、項目26に記載の方法。
[項目28] 前記VISTAアゴニストまたはVISTAアンタゴニストが、未変化の抗VISTA抗体または抗VISTA抗体断片である、先行項目に記載の方法。
[項目29] 前記抗体が、ヒトのものであるか、またはヒト化されたものである、項目28に記載の方法。
[項目30] 前記抗体が、ヒトFc領域を含む項目28に記載の方法。
[項目31] 前記Fc領域が、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4のものである、項目30に記載の方法。
[項目32] 前記Fc領域に変異が導入され、補体との結合、FcRとの結合、ADCC、糖鎖修飾、または半減期を阻害または増進する、項目28に記載の方法。
[項目33] PD-1アゴニストもしくはPD-L1アゴニスト、またはPD-1アンタゴニストもしくはPD-L1アンタゴニストの投与をさらに含む、先行項目のいずれかに記載の方法。
[項目34] 前記アンタゴニストが、抗PD-1抗体もしくは抗PD-L1抗体、またはPD-1融合タンパク質である、項目33に記載の方法。
[項目35] 前記アゴニストが、抗PD-1抗体もしくは抗PD-L1抗体、またはPD-1融合タンパク質もしくはPD-L1融合タンパク質、またはPD-1もしくはPD-L1を発現する細胞である、項目33に記載の方法。
[項目36] VISTAアンタゴニスト及びiNOS/NO阻害物質が、一緒に投与される、先行項目のいずれかに記載の方法。
[項目37] VISTAアゴニスト及びiNOS/NO促進物質が、一緒に投与される、先行項目のいずれかに記載の方法。
[項目38] B細胞免疫を促進するための治療レジメンにおいて、VISTAアンタゴニスト及びiNOS/NO阻害物質が別々に投与される、先行項目のいずれかに記載の方法。
[項目39] VISTAアンタゴニストである化合物及びiNOS/NO阻害物質である化合物が、単独投与されるこうした化合物のいずれかと比較して、液性免疫に対する相乗作用を誘発するために十分な量で投与される、先行項目のいずれかに記載の方法。
[項目40] VISTAアゴニストである化合物、及びiNOS/NO促進物質または一酸化窒素が、単独投与されるこうした化合物のいずれかと比較して、液性免疫に対する相乗作用を誘発するために十分な量で投与される、先行項目のいずれかに記載の方法。
【0154】
配列
マウスVISTA配列識別番号:1
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マウスVISTA配列識別番号:2
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マウスVISTA配列識別番号:3
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ヒトVISTA配列識別番号:4
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図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
【配列表】
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