(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-16
(45)【発行日】2022-02-25
(54)【発明の名称】ガンマ-オリザノールの製造方法
(51)【国際特許分類】
C07J 9/00 20060101AFI20220217BHJP
C07C 69/734 20060101ALI20220217BHJP
C07C 67/52 20060101ALI20220217BHJP
【FI】
C07J9/00
C07C69/734 Z
C07C67/52
(21)【出願番号】P 2020136212
(22)【出願日】2020-08-12
【審査請求日】2020-08-12
(32)【優先日】2020-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】500447978
【氏名又は名称】台灣中油股▲フン▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】陳瑞惠
(72)【発明者】
【氏名】▲せん▼育欣
(72)【発明者】
【氏名】高艾玲
(72)【発明者】
【氏名】陳勁中
(72)【発明者】
【氏名】蔡昌廷
(72)【発明者】
【氏名】蔡承佳
【審査官】中島 芳人
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第105131073(CN,A)
【文献】特開2002-293793(JP,A)
【文献】特開2001-197862(JP,A)
【文献】米国特許第06410762(US,B1)
【文献】Food Chemistry,2009年,Vol.115, Issue 2,p.389-404
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 67/52
C07C 69/734
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超臨界流体により、ガンマ-オリザノールを含む原料からガンマ-オリザノール抽出液を抽出する工程(a)と、
固液分離方式により、前記ガンマ-オリザノールを含む抽出液からガンマ-オリザノールを含む沈殿物を分離させる工程(b)と、
前記ガンマ-オリザノールを含む沈殿物から前記ガンマ-オリザノールを精製する工程(c)と、
前記工程(b)において、前記ガンマ-オリザノールを含む抽出液を固液分離する前の温度を60~80℃に維持し、
前記工程(b)において、まず、前記ガンマ-オリザノールを含む抽出液から前記ガンマ-オリザノールを含む濾滓を濾過し、前記ガンマ-オリザノールを含む濾滓を非極性溶剤に溶かして被分離溶液を形成し、前記被分離溶液から前記ガンマ-オリザノールを含む沈殿物を分離させ、
前記工程(c)では、前記ガンマ-オリザノールを含む沈殿物中の前記ガンマ-オリザノールを有機溶剤に溶かしてガンマ-オリザノール精製溶液を形成した後、前記ガンマ-オリザノール精製溶液を濾過してガンマ-オリザノール精製濾液を形成し、前記ガンマ-オリザノール精製濾液中の前記有機溶剤を除去してガンマ-オリザノールを得ること、を含むことを特徴とする、ガンマ-オリザノールの製造方法。
【請求項2】
前記工程(a)の前記ガンマ-オリザノールを含む原料は、稲類、麥類、コーン、亜麻種及び油菜種からなる群から選ばれることを特徴とする請求項1に記載のガンマ-オリザノールの製造方法。
【請求項3】
前記ガンマ-オリザノールを含む原料に前記稲類を選ぶ場合、前記稲類は、完全な稻穀と、外殻を取り除いた玄米と、米糠と、糠層を取り除いた白米とからなる群から選ばれることを特徴とする請求項2に記載のガンマ-オリザノールの製造方法。
【請求項4】
前記工程(a)の前記超臨界流体は、抽出温度が30~90℃であり、抽出圧力が75~1000barであることを特徴とする請求項1に記載のガンマ-オリザノールの製造方法。
【請求項5】
前記ガンマ-オリザノール精製溶液を濾過する前に35~40℃に加熱することを特徴とする請求項
1に記載のガンマ-オリザノールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガンマ-オリザノールの製造方法に関し、特に、超臨界流体によりガンマ-オリザノールを抽出精製する、ガンマ-オリザノールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガンマ-オリザノール(γ-oryzanol)は、植物ステロール(phytosterols)、トリテルペノイド(triterpenoids)及びフェルラ酸(ferulic acid)のエステル化により形成された化合物である。周知のガンマ-オリザノールは、ラジカル抑制及び酸化防止の作用を有するとともに、高脂血を下げて更年期障害を防ぐ効果を有する。
【0003】
従来、ガンマ-オリザノールは、食品、薬品、化粧品などに広く利用され、例えば、ガンマ-オリザノールを食品に添加して食品にコレステロール酸化生成物(Cholesterol Oxidation Products:COPs)が発生することを防ぐことができ、乳液にガンマ-オリザノールを添加すると、細胞の増殖を促し、皮膚の弾性を高めて保湿性を向上させることができた。
【0004】
ガンマ-オリザノールは、主に植物油脂から抽出される。米糠粗油は、植物油脂中のガンマ-オリザノールの含有量が最も多い油類であり、米糠粗油中には、1.4~2.9%のガンマ-オリザノールが含まれる。そのため、米糠粗油は、代表的なガンマ-オリザノールの製造原料であるが、例えばコーン油、大豆油など、他の植物油にもガンマ-オリザノールが含まれるため、ガンマ-オリザノールの製造に利用することができる。
【0005】
一般に米糠粗油を利用してガンマ-オリザノールを製造する方式は、ソープストック(soap stock)精製法である。更に詳細には、米糠粗油から精錬油品を精製する過程には、脱ガム、脱酸、脱ろう、脱色及び脱臭の工程が含まれ、脱酸工程では、粗油の脱ガム工程を行った原油をアルカリによりその酸性を中和させるが、この脱酸工程において沈殿物ソープストックを得ることができる。このソープストックは、ガンマ-オリザノールを製造するために用いてもよい。ソープストック精製法の製造工程には、以下(a)~(f)の工程が含まれる。
【0006】
(a)中和:60~70%の水分を含むソープストックを70~90℃、pH10~11の条件で均一に攪拌する。
(b)鹸化(alkalization):ソープストックに0.2~1.2%の水酸化ナトリウムを加え、均一に攪拌し続ける。
(c)サポニフィケーション(saponification):前述したソープストックを70~90℃で約30~45分間攪拌し続け、サポニフィケーション・ソープストックを得る。
(d)脱水:前述したサポニフィケーション・ソープストックを脱水する。
(e)溶出:脱水後のサポニフィケーション・ソープストックを溶剤により溶出させる。
(f)溶剤を除去してガンマ-オリザノール抽出液を得る。
【0007】
しかし、上述したようにソープストック精製法によりガンマ-オリザノールを製造する工程は、中和、鹸化、サポニフィケーション、脱水、溶出など多数の工程が必要であったため、非常に複雑であった。
【0008】
そのため、上述したような従来技術の様々な問題を解決することができるガンマ-オリザノールの製造方法が求められていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明者は、上記課題を解決するための鋭意検討を重ねた結果、かかる知見に基づいて、本発明に想到するに至った。
本発明の課題は、ガンマ-オリザノールの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の第1の形態によれば、超臨界流体により、ガンマ-オリザノールを含む原料からガンマ-オリザノール抽出液を抽出する工程(a)と、固液分離方式により、前記ガンマ-オリザノールを含む抽出液からガンマ-オリザノールを含む沈殿物を分離させる工程(b)と、前記ガンマ-オリザノールを含む沈殿物から前記ガンマ-オリザノールを精製する工程(c)と、を含むことを特徴とする、ガンマ-オリザノールの製造方法を提供する。
【0011】
前記工程(a)の前記ガンマ-オリザノールを含む原料は、稲類、麥類、コーン、亜麻種及び油菜種からなる群から選ばれることが好ましい。
【0012】
前記ガンマ-オリザノールを含む原料に前記稲類を選ぶ場合、前記稲類は、完全な稻穀と、外殻を取り除いた玄米と、米糠と、糠層を取り除いた白米とからなる群から選ばれることが好ましい。
【0013】
前記工程(a)の前記超臨界流体は、抽出温度が30~90℃であり、抽出圧力が75~1000barであることが好ましい。
【0014】
前記工程(b)において、前記ガンマ-オリザノールを含む抽出液を固液分離する前の温度を60~80℃に維持することが好ましい。
【0015】
前記工程(b)において、まず、前記ガンマ-オリザノールを含む抽出液から前記ガンマ-オリザノールを含む濾滓を濾過し、前記ガンマ-オリザノールを含む濾滓を非極性溶剤に溶かして被分離溶液を形成し、前記被分離溶液から前記ガンマ-オリザノールを含む沈殿物を分離させることが好ましい。
【0016】
前記工程(c)では、前記ガンマ-オリザノールを含む沈殿物中の前記ガンマ-オリザノールを有機溶剤に溶かしてガンマ-オリザノール精製溶液を形成した後、前記ガンマ-オリザノール精製溶液を濾過してガンマ-オリザノール精製濾液を形成し、前記ガンマ-オリザノール精製濾液中の前記有機溶剤を除去してガンマ-オリザノールを得ることが好ましい。
【0017】
前記ガンマ-オリザノール精製溶液を濾過する前に35~40℃に加熱することが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明のガンマ-オリザノールの製造方法は、常温下で高純度のガンマ-オリザノールを製造し、その製造工程が簡単であるため、従来のガンマ-オリザノールの製造方法及び製造工程が複雑であった問題を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施例に係るガンマ-オリザノールの製造方法を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の目的、特徴及び効果をより分かりやすくするために、具体的な実施例について図に基づいて詳しく説明する。
【0021】
図1を参照する。
図1に示すように、本発明の一実施例に係るガンマ-オリザノールの製造方法は、超臨界流体により、ガンマ-オリザノールを含む原料からガンマ-オリザノール抽出液を抽出する工程(a)と、固液分離方式により、ガンマ-オリザノールを含む抽出液からガンマ-オリザノールを含む沈殿物を分離させる工程(b)と、ガンマ-オリザノールを含む沈殿物からガンマ-オリザノールを精製する工程(c)と、を含む。以下、上述した工程(a)~(c)について詳細に説明する。
【0022】
ガンマ-オリザノールを含む原料から、ガンマ-オリザノールを含む抽出液を抽出する。
【0023】
まず、玄米を原料として用い、直列接続された3つのトン級抽出槽(各抽出槽の体積は6m3である。)に約12トンの玄米を充填し、二酸化炭素を超臨界流体として用い、玄米から油脂を抽出し、抽出温度を約50℃に設定し、抽出圧力を約270barに設定し、6~7時間抽出すると、玄米から抽出されたガンマ-オリザノールを含む抽出液がこげ茶色の油脂となり、ガンマ-オリザノールを含む抽出液には、乳白色の混濁物が含まれ、上述した抽出工程で8バッチ行うと、最終的に200Lの玄米粗油が得られる。
【0024】
ガンマ-オリザノールを含む抽出液の流動性を高め、ガンマ-オリザノールを含む抽出液に対して後で行うガンマ-オリザノールの分離工程を都合よく行うことができるように、オーブンによりガンマ-オリザノールを含む抽出液の温度を80℃に維持し、ガンマ-オリザノールを含む抽出液を流動性が高いこげ茶色の油脂状態に維持するが、必要に応じてガンマ-オリザノールを含む抽出液を流体状態に保持される他の温度範囲(例えば、60~80℃)に維持してもよい。
【0025】
この抽出工程において、気化した二酸化炭素を再び加圧して液体二酸化炭素に形成して超臨界流体として用い、循環管線中で繰り返して使用して貯蔵することができる。
【0026】
この抽出工程では、水、エタノールその他周知の適合する超臨界流体材料を二酸化炭素の共溶媒として用いても良いし、その他適切な流体種類を選択してもよい上、工程上の必要性又は超臨界流体の性質に基づき、抽出温度を30~90℃に設定し、抽出圧力を約75~1000barに設定するが、工程上の必要性又は超臨界流体の性質に応じて温度及び圧力をその他の数値範囲に設定してもよいが、必ずしも上述したものだけに限定されるわけではない。
【0027】
上述した抽出工程において、ガンマ-オリザノールを含む原料は、稲穀、玄米、白米、米糠又はそれらの混合物でもよいが、麥類、コーン、又は亜麻種、油菜種など油脂含有量が多い植物原料を選択してもよい。
【0028】
また、超臨界流体の抽出過程における抽出率を高めるために、エタノールなどの周知の共溶媒を添加してもよい。
【0029】
固液分離方式により、ガンマ-オリザノールを含む抽出液からガンマ-オリザノールを含む沈殿物を分離させる。
【0030】
まず、ガンマ-オリザノールを含む抽出液を固液分離させるが、本実施例では、まず、ガンマ-オリザノールを含む抽出液を濾紙で濾過し、こげ茶色の濾液と乳白色の濾滓とに分離し、乳白色の濾滓にはガンマ-オリザノールが含まれる。続いて、濾滓を水洗処理し、濾滓を非極性溶剤ヘキサンに溶かして被分離溶液を形成し、被分離溶液を遠心させてガンマ-オリザノールを含む沈殿物(pellet)及び上澄み液を得る。もし上澄み液が薄黄色である場合、再び新しいヘキサンを加えて沈殿物を水洗処理する。このように、被分離溶液を遠心して得られた上澄み液が無色となるまで、ヘキサンにより繰り返して水洗・濾過すると、沈殿物中の不純物がヘキサンに溶けて肉眼で見えなくなり、ガンマ-オリザノールを含む濾滓の水洗処理が十分にされたことを示す。
【0031】
本実施例において、遠心により被分離溶液からガンマ-オリザノールを含む沈殿物を分離させるが、濾過又は周知の他の固液分離方式によりガンマ-オリザノールを含む沈殿物を分離させてもよい。
【0032】
上述したヘキサンの上澄み液は、減圧蒸留した後に回収して再利用してもよい。濾滓は、ヘキサンの水洗処理を行った後に残留した沈殿物をドラフトチャンバー中で自然乾燥させ、沈殿物中のヘキサンを完全に揮発させるか、真空減圧吸気により沈殿物中のヘキサンを抜き取り、沈殿物中に残留したヘキサンを除去してもよい。
【0033】
本実施例では、ヘキサンを非極性溶剤として用いているが、n-ヘプタン、鎖式又は環式の炭化水素溶剤など性質が似た非極性溶剤を用いてもよい。
【0034】
本実施例では、後でガンマ-オリザノールが精製し易いように、ガンマ-オリザノールを含む沈殿物から不純物を十分に除去させる。そのため、ガンマ-オリザノールを含む抽出液を濾過する工程と、濾滓を水洗処理する工程と、を同時に行うが、他の実施例では、ガンマ-オリザノールを含む抽出液を濾過する工程のみ行い、後で精製するのに用いるガンマ-オリザノールを含む沈殿物として濾滓を直接用いてもよい。
【0035】
ガンマ-オリザノールを含む沈殿物からガンマ-オリザノールを精製する:
前述したガンマ-オリザノールを含む沈殿物には、不純物、屑などの不溶物が含まれ、高純度のガンマ-オリザノールを得るために、この工程では、アセトンを利用して沈殿物中のガンマ-オリザノールを溶出させ、沈殿物中のガンマ-オリザノールをアセトン中に溶かしてガンマ-オリザノール精製溶液を形成し、ガンマ-オリザノールを含む沈殿物中にガンマ-オリザノールが溶出しなくなるまで、薄層クロマトグラフィー(Thin Layer Chromatography:TLC)によりガンマ-オリザノールの溶解状況をモニターする。続いて、前述したガンマ-オリザノール精製溶液を予め加熱して35~40℃に維持し、濾過するときにガンマ-オリザノール精製溶液の温度が下がってガンマ-オリザノールが早めに析出され、後で回収するガンマ-オリザノールの量が減少することを防ぐために、他の実施例ではこの工程を省略してもよい。ガンマ-オリザノール精製溶液の加熱が完了した後、濾過を行い、清澄なアセトン濾液をガンマ-オリザノール精製濾液として用い、ガンマ-オリザノール精製濾液から得られたガンマ-オリザノールの純度がより高くなるが、他の実施例では、必要に応じてガンマ-オリザノール精製溶液を濾過する工程を省略してもよい。最終的に、ガンマ-オリザノール精製濾液を減圧蒸留してアセトン溶液を回収し、アセトン溶液を回収すると同時にガンマ-オリザノールを析出するか、ガンマ-オリザノール精製濾液を低温環境下に放置してガンマ-オリザノールを析出し、低温下で固液分離を行ってガンマ-オリザノールを得てもよい。析出したガンマ-オリザノールが粉末状を呈し、残留の溶剤を除去するために、析出したガンマ-オリザノールをオーブン中で50℃で一晩ベークする。
【0036】
本実施例において、アセトンを選択し、ガンマ-オリザノールを含む沈殿物からガンマ-オリザノールを溶出させることができる上、酢酸エチル、イソプロパノール、エタノール、メタノール、それらの混合物及びその性質に類似した有機溶剤から選択してもよい。
【0037】
ガンマ-オリザノールの定性及び定量測定:
前述した製造方法で製造したガンマ-オリザノールの純度を測定するために、以下数種類の方式により、本実施例の製造方法により製造した最終サンプルの粉末の定性及び定量を測定する。
【0038】
水酸化カリウム-エタノールの呈色定性測定法:
0.01gのサンプル粉末を採取して10mlの水酸化カリウム-エタノール溶液中(10%、w/v)に溶かし、溶液が黄色となる場合、それは溶液中にガンマ-オリザノールがあることを表すが、測定した結果、溶液は黄色となった。
【0039】
塩化鉄の呈色定性測定法:
0.01gのサンプル粉末を採取して2mlのアセトン溶液中に溶かしてから0.1mlの塩化鉄エタノール(2%、w/v)を加え、溶液が黄緑色又は緑色となる場合、溶液中にガンマ-オリザノールがあることを表すが、測定した結果、溶液は黄緑色となった。
【0040】
残留溶剤:
本実施例では、ヘッドスペース・ガスクロマトグラフィー-質量分析法(Headspace GC‐MS)を採用してサンプル粉末中の残留溶剤を測定し、測定した結果、サンプル粉末中には溶剤残留が無かった。
【0041】
含水量測定:
本実施例では、乾燥重量法を利用してサンプル粉末の含水量を測定し、測定した結果、サンプル粉末中の水分は、全重量の0.32重量%であり、これはサンプル粉末中の水分が非常に少ないことを表す。
【0042】
無機不純物の含量測定:
本実施例では、強熱残分測定法により、サンプル粉末の無機不純物含量を測定し、サンプル粉末の無機不純物は、全重量の2.53重量%であり、これはサンプル粉末中の無機不純物が非常に少ないことを表す。
【0043】
重金属含量測定:
本実施例では、台湾の衛生福利部食品藥物管理署所(Food and Drug Administration)が公表している「化粧品中の鉛、カドミウム、ヒ素鑑別及び含量測定方法」及び「化粧品中の水銀鑑別及び含量測定方法」を参考にし、誘導結合プラズマ質量分析装置(Inductively Coupled Plasma Mass Spectrometry:ICP-MS)を利用し、サンプル粉末中に重金属が含まれているか否かを測定し、測定した結果、サンプル粉末中には鉛(Pb)、ヒ素(As)、カドミウム(Cd)、水銀(Hg)などの重金属物質は検出されなかった。
【0044】
微生物含量測定:
本実施例では、微生物検査製品(3M Petrifilm AC、RYM、EC、STX及びCompactDry PA)により、サンプル粉末中の総生菌数及び真菌数を検査するとともに、大腸菌、黄色ブドウ球菌及び緑膿菌を含むか否かを検査するが、検査の結果、サンプル粉末中に微生物は検出されなかった。
【0045】
ガンマ-オリザノールの純度測定:
まず、0.025gのサンプル粉末を採取し、5mlのメスフラスコに投入し、0.5mlのアセトンを投入してサンプル粉末を溶解し、溶液の体積が5mlになるまで前述した5mlのメスフラスコにn-ヘプタンを加えて前処理溶液を作る。また、25mlのメスフラスコの9分目までn-ヘプタンを注ぎ入れた後、前述した25mlのメスフラスコに50μlの前処理溶液を投入し、溶液体積が25mlになるまでn-ヘプタンを注ぎ足し、被測定溶液を作る。分光光度計を使用し、OD315の条件により、被測定溶液の吸光値を測定する。以下の数式によりガンマ-オリザノールの含量を計算する。代入式:ガンマ-オリザノール含量(%)=(A×2500)/(W*E)(W=サンプル重量g;A=サンプル315mm吸光値;E=吸収係数1%(光径1cm)=359)。最終的に測定するサンプル粉末中のガンマ-オリザノール含量が95%より多く、本実施例の製造方法で製造したガンマ-オリザノールの純度が95%以上に達する。
【0046】
また、前述した被測定溶液を他の波長によりその吸光値を測定する際、前述した被測定溶液が229~233nm、289~293nm及び313~317nmのときに最大吸収量を有し、この吸光値の範囲分布は被測定溶液中にガンマ-オリザノール成分が含まれていることを証明することができる。
【0047】
上述したことから分かるように、本発明のガンマ-オリザノールの製造方法は、常温下で高純度ガンマ-オリザノールを製造し、製造したガンマ-オリザノールの純度が95%以上に達し、製造工程が簡単であり、ソープストック精製法に必要な中和、鹸化、サポニフィケーション、脱水、溶出などの工程を省略することができるため、工程が複雑であった従来技術のガンマ-オリザノールの製造方法の問題を改善することができる上、従来のソープストック精製法と比べ、発生する廃棄物が少ない。また、上述したガンマ-オリザノールの製造方法は、工程で使用する溶剤を蒸留回収して再利用することができる。
【0048】
当該分野の技術を熟知するものが理解できるように、本発明の好適な実施例を前述の通り開示したが、これらは決して本発明を限定するものではない。本発明の主旨と領域を逸脱しない範囲内で各種の変更や修正を加えることができる。従って、本発明の特許請求の範囲は、このような変更や修正を含めて広く解釈されるべきである。