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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-16
(45)【発行日】2022-02-25
(54)【発明の名称】ECMサイクル正常化剤
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/071 20100101AFI20220217BHJP
   A61K 36/81 20060101ALI20220217BHJP
   A61K 31/704 20060101ALI20220217BHJP
   A61K 8/9789 20170101ALI20220217BHJP
   A61K 8/63 20060101ALI20220217BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20220217BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20220217BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220217BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20220217BHJP
   A23G 3/34 20060101ALI20220217BHJP
   A23G 4/06 20060101ALN20220217BHJP
   A23C 9/123 20060101ALN20220217BHJP
   A23C 9/13 20060101ALN20220217BHJP
   A23L 29/281 20160101ALN20220217BHJP
   A23L 2/52 20060101ALN20220217BHJP
【FI】
C12N5/071
A61K36/81
A61K31/704
A61K8/9789
A61K8/63
A61Q19/00
A61P17/00
A61P43/00 105
A23L33/105
A23G3/34 101
A23G4/06
A23C9/123
A23C9/13
A23L29/281
A23L2/00 F
A23L2/52
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020153562
(22)【出願日】2020-09-14
(62)【分割の表示】P 2019120120の分割
【原出願日】2019-06-27
(65)【公開番号】P2021006043
(43)【公開日】2021-01-21
【審査請求日】2020-09-14
(31)【優先権主張番号】P 2018173024
(32)【優先日】2018-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018197122
(32)【優先日】2018-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】594045089
【氏名又は名称】オリザ油化株式会社
(72)【発明者】
【氏名】竹田 翔伍
(72)【発明者】
【氏名】山田 和佳奈
(72)【発明者】
【氏名】下田 博司
(72)【発明者】
【氏名】村井 弘道
【審査官】佐久 敬
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-290829(JP,A)
【文献】特開2017-171598(JP,A)
【文献】特開2017-128538(JP,A)
【文献】国際公開第2016/084886(WO,A1)
【文献】特開2016-063795(JP,A)
【文献】特表2008-530076(JP,A)
【文献】Journal of the American Academy of Dermatology,2012年,Vol. 66, No.4, Suppl.,AB25
【文献】オリザ油化、健食・化粧品向けトマト種子エキス、肌状態正常に保つ,化学工業日報,2018年10月01日,p.5,全文, 日経テレコン[online][2019年11月20日検索]
【文献】オリザ油化、美容向けの新素材「トマト種子エキス」を開発―10/3からの食品開発展で初披露,食品と開発,2018年09月21日,全文,[2019年11月20日検索]インターネット<URL:https://www.kenko-media.com/food_devlp/archives/2952>
【文献】Chem. Pharm. Bull.,2011年,Vol.59 No.11,pp.1406-1408
【文献】Phytochemistry,1996年,Vol.42 No.1,pp.169-172
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
A61K
A23G
A23C
A23L
C07D
C07H
C07J
A01H
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
lycoperoside Aを含有するトマト種子の含水エタノール及び/又は含水メタノール抽出物を有効成分とする皮膚線維芽細胞におけるendo180遺伝子発現促進剤。
【請求項2】
請求項1の剤を有効成分とする皮膚線維芽細胞におけるコラーゲン産生・取り込みサイクル正常化剤。
【請求項3】
lycoperoside Aを含有するトマト種子の含水エタノール及び/又は含水メタノール抽出物を有効成分とする皮膚線維芽細胞におけるコラーゲン産生促進剤。
【請求項4】
lycoperoside Aを含有するトマト種子の含水エタノール及び/又は含水メタノール抽出物を有効成分とする皮膚線維芽細胞におけるECMサイクル正常化剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞外マトリックス成分の産生、取り込みサイクル正常化剤に関するものである。本発明は、食品、薬品、皮膚外用剤等に広く利用される。
【背景技術】
【0002】
トマト(Solanum lycopersicum)は世界中で日常的に食されている植物であり、ビタミンC、リコピン、GABAなどの成分を豊富に含むことからジュースやサプリメントとして販売されている。トマトの機能性としては、血圧低下作用やコレステロール低下作用が報告されている。また、2004年にはトマトから新規のサポニンであるesculeoside類が同定され(非特許文献1及び非特許文献2)、そのうちesculeoside Aにはマウスにおける高脂血症および動脈硬化の改善作用が見出されている(非特許文献3)。しかしながら、これらは全てトマトの果実における知見であり、トマトの種子に限定した報告は少ない。
【0003】
一方、コラーゲンは皮膚における細胞外マトリックスの主要な構成因子であり、皮膚の弾力性やハリを保つうえで重要な役割を果たしている。コラーゲン以外の細胞外マトリックスの主要な構成因子としてはエラスチンが挙げられ、エラスチンもコラーゲン同様皮膚の弾力性を保つうえで重要な因子である。コラーゲンやエラスチンは繊維芽細胞によって産生され、その分解産物は再び繊維芽細胞に吸収されるサイクルをとっていることがわかっている。しかし、このサイクルに異常をきたし、分解産物が蓄積することによって細胞形態の変質や皮膚における酸化ストレスの増加などが引き起こされることがわかっている。よって、細胞外マトリックスを構成するコラーゲンおよびエラスチンの産生・分解サイクルを正常に保つことは皮膚のコンディションを正常に保つうえで非常に重要と考えられる。
【0004】
そこで、細胞外マトリックスを構成するコラーゲンおよびエラスチンの産生・分解サイクルを正常に保つために、その分解産物は再び繊維芽細胞に吸収する作用を有する細胞小器官がリソソームである(特許文献1)。
リソソームは、真核生物が持つ細胞小器官の一つであり、内部に加水分解酵素を持つ細胞内消化の場である。エンドサイトーシスやオートファジーによって膜内に取り込まれた生体高分子はリソソームにおいて分解され、分解物のうち有用なものは、細胞質に吸収され再利用され、不用物はエキソサイトーシスによって細胞外に廃棄されるか、残余小体として細胞内に留まる。
【0005】
リソソームの活性は種々の疾患に関わっていることが知られている。代表的な疾患としては、リソソーム蓄積症が知られている。リソソーム蓄積症は、多くの場合リソソーム内で働く加水分解酵素の欠損または変異によって当該酵素の基質が分解されずに沈着物として細胞内に蓄積することによって発症する。リソソーム蓄積症には、広範な臨床的不均一性および生物学的多様性があり、脂質蓄積症、ムコ多糖症、ムコ脂質症、および糖タンパク質蓄積症が含まれる(特許文献2及び3参照)。
【0006】
他方、ケラチノサイト内におけるリソソーム活性を向上させメラノソームタンパク質の分解を促進することにより美白効果が得られることが知られている(特許文献4、非特許文献4及び5)。
【0007】
また、リソソーム内酵素であるカテプシンB1、Dがコラーゲンを分解すること(非特許文献6)、ヒアルロン酸がリソソーム内に取り込まれ分解されること(非特許文献7)、若年者の皮膚と比較し、高齢者の皮膚では断片化されたコラーゲン量が有意に多いこと(非特許文献8)が知られている。
リソソームは100種類以上のリソソーム膜タンパク質から構成され、多くは内腔側に向け高度に糖鎖修飾されている。それらの糖鎖修飾は、加水分解酵素の作用から逃れるために重要であると考えられている。主要なリソソーム膜タンパク質としては、LAMP-1、LAMP-2、LIMP-2などがあり、これらは全リソソーム膜タンパク質量の50%以上を占める(非特許文献9)。
そこで、細胞内においてこれらのリソソーム膜タンパク質の量を評価することにより、細胞内のリソソームの量がわかる。これにより、細胞内のLAMP-1の量はリソソームの量の指標となる。
【0008】
【文献】Fujiwara S. et al., Tetrahedron, 60, 4915-4920 (2004).
【文献】Ono M. et al., Chem. Pharm. Bull., 54(2), 237-239 (2006).
【文献】Nohara T., J. Trad. Med., 27, 217-224 (2010).
【文献】富士フイルム株式会社、“シミの原因となるメラニン色素が表皮細胞内で分解される現象を実証 美白有用成分「AMA(エーエムエー)」にメラニン色素分解促進効果を確認”、[online]、2013年11月28日、[平成28年3月24日検索]、インターネット〈URL:http://www.fujifilm.co.jp/corporate/news/articleffnr_0831.html〉
【文献】富士フイルム株式会社、“タンパク質分解酵素「カテプシンV」がシミの原因となるメラニン色素を含むメラノソームの分解に関与することを発見 米ぬか脂質に含有される「オリザノール」が、メラノソームの分解を促すことを確認”、[online]、2015年11月5日、[平成28年3月24日検索]、インターネット〈URL:http://www.fujifilm.co.jp/corporate/news/articleffnr_1020.html〉
【文献】Biochem. J. (1974) 137, 387-398
【文献】Matrix Biol. 2002 Jan;21(1):15-23.
【文献】The Journal of Investigative Dermatology vol. 120, No. 5 may 2003.
【文献】Paul Saftig, Judith KlumpermanLysosome biogenesis and lysosomal membrane proteins: trafficking meets function. Nat. Rev. Mol. Cell Biol.: 2009, 10(9);623-35
【文献】特開2017-206468号公報
【文献】特表2014-517015号公報
【文献】特表2014-523881号公報
【文献】特開2015-10071号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、コラーゲンやエラスチン等の細胞外マトリックス成分(ECM)の産生、分解、取り込みのサイクルに関する研究はあまりなされてこなかった。
上記背景の下、本発明者は、トマト種子の抽出物及びそれに含まれるサポニンについて、ECMの主要成分であるコラーゲン及びエラスチンの産生に関する遺伝子と、分解されたコラーゲン、エラスチンにおける細胞内の取り込みに関連する遺伝子の両方の発現を促進する機能を有することを見出した。
また、皮膚線維芽細胞においてコラーゲン産生を促進し、LAMP-1を指標として皮膚線維芽細胞内のリソソームの量を評価した結果、皮膚線維芽細胞内のリソソームを増加させる作用を有することを見出した。
これにより、ECMの産生、取り込みのサイクル(以下「ECMサイクル」という)を正常化し、最終的に、細胞外マトリックスの恒常性を維持する作用を有することを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、新規のECMサイクル正常化剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明の技術的特徴は以下のとおりである。
1.lycoperoside Aを有効成分とする皮膚線維芽細胞におけるsmad遺伝子発現促進剤。
2.lycoperoside Aを有効成分とする皮膚線維芽細胞におけるendo180遺伝子発現促進剤。
3.トマト種子抽出物を有効成分とする皮膚線維芽細胞におけるendo180遺伝子発現促進剤。
4.上記1.~上記3.のいずれか1項の剤を有効成分とする皮膚線維芽細胞におけるコラーゲン産生・取り込みサイクル正常化剤。
5.lycoperoside Aを有効成分とする皮膚線維芽細胞におけるfiblin遺伝子発現促進剤。
6.lycoperoside Aを有効成分とする皮膚線維芽細胞におけるneuraminidase-1遺伝子発現促進剤。
7.上記5.又は上記6.の剤を有効成分とする皮膚線維芽細胞におけるエラスチン産生・取り込みサイクル正常化剤。
8.トマト種子抽出物を有効成分とする皮膚線維芽細胞におけるコラーゲン産生促進剤。
9.トマト種子抽出物を有効成分とする皮膚線維芽細胞におけるリソソーム増加剤。
10.lycoperoside Aを有効成分とする皮膚線維芽細胞におけるリソソーム増加剤。
11.lycoperoside Hを有効成分とする皮膚線維芽細胞におけるリソソーム増加剤。
12.上記1.~上記11.から選ばれるいずれか1項の剤を有効成分とする皮膚線維芽細胞におけるECMサイクル正常化剤。
13.lycoperoside Aを有効成分とする皮膚線維芽細胞におけるECMサイクル正常化剤。
14.トマト種子抽出物を有効成分とする皮膚線維芽細胞におけるECMサイクル正常化剤。
【発明の効果】
【0011】
本発明のsmad遺伝子発現促進剤は、果肉には含まれておらず、トマト種子のみに含まれるサポニンであるlycoperoside A が、コラーゲンの産生に関与するsmad遺伝子の発現を促進するため、トマト種子固有の成分であるlycoperoside Aがコラーゲンの産生を促進する作用を有する。
また、本発明のendo180遺伝子発現促進剤は、lycoperoside A が、分解されたコラーゲンの細胞内への取り込みに関与するendo180遺伝子の発現を促進するため、lycoperoside Aが分解されたコラーゲンの細胞内への取り込みを促進する作用を有する。
これにより、lycoperoside Aは、コラーゲンの産生に関与するsmad遺伝子と、分解されたコラーゲンの細胞内への取り込みに関与するendo180遺伝子との両方を促進するため、コラーゲンの産生・取り込みサイクルを正常化する作用を有する。したがって、lycoperoside Aは、コラーゲン産生・取り込みサイクル正常化剤として優れた効果を有する。
また、本発明のfiblin遺伝子発現促進剤は、lycoperoside A が、エラスチンの産生に関与するfiblin遺伝子の発現を促進するため、トマト種子固有の成分である、lycoperoside Aがエラスチンの産生を促進する作用を有する。
そして、本発明のneuraminidase-1遺伝子発現促進剤は、lycoperoside A が、分解されたエラスチンの細胞内への取り込みに関与するneuraminidase-1遺伝子の発現を促進するため、lycoperoside Aが分解されたエラスチンの細胞内への取り込みを促進する作用を有する。
これにより、lycoperoside Aは、エラスチンの産生に関与するfiblin遺伝子と、分解されたエラスチンの細胞内への取り込みに関与するneuraminidase-1遺伝子との両方を促進するため、エラスチンの産生・取り込みサイクルを正常化する作用を有する。したがって、lycoperoside Aは、エラスチン産生・取り込みサイクル正常化剤として優れた効果を有する。
また、本発明は、lycoperoside A及びトマト種子の抽出物が、コラーゲン産生促進剤として優れた効果を有する。
また、lycoperoside A、lycoperoside H及びトマト種子の抽出物は、皮膚皮膚線維芽細胞内においてリソソームを構成している膜たんぱく質の1種であるLAMP-1を増加させる作用を有する。これにより、lycoperoside A、lycoperoside H及びトマト種子の抽出物は、皮膚皮膚線維芽細胞内においてリソソームを増加させる作用を有する。
これにより、細胞内マトリックス成分の取り込みを促進する作用を有する。
以上により、lycoperoside Aは、コラーゲン・エラスチン双方の産生・取り込みサイクルを正常化する作用を有するので、細胞外マトリックス成分の産生、取り込みの正常化作用を有し、これにより、ECMサイクル正常化剤として優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施例のトマト種子抽出物およびサポニンのコラーゲン産生量に及ぼす作用を示すグラフである。
図2】本実施例のトマト種子抽出物およびサポニンのsmad遺伝子発現量に及ぼす作用を示すグラフである。
図3】本実施例のトマト種子抽出物およびサポニンのendo180遺伝子発現量に及ぼす作用を示すグラフである。
図4】本実施例のトマト種子抽出物およびサポニンのfiblin-4遺伝子発現量に及ぼす作用を示すグラフである。
図5】本実施例のトマト種子抽出物およびサポニンのneuraminidase-1遺伝子発現量に及ぼす作用を示すグラフである。
図6】トマト種子抽出物および種子サポニンの皮膚線維芽細胞中LAMP-1量に及ぼす作用を示す写真である。白色がLAMP-1を示す。
図7】細胞シート中に蓄積した細胞外マトリックス分解物の蛍光免疫染色像(3D像)である。円柱型や丸みを帯びた形状のものが細胞核であり,それらの間に存在する霞状に見えるものが細胞外マトリックス分解物である。
図8】トマト種子エキスおよびリコペロサイド類の細胞シートにおけるEndo180遺伝子発現に対する効果を示すグラフである。
図9】トマト種子エキスおよびリコペロサイド類の細胞シートにおけるNeuraminidase-1遺伝子発現に対する効果示すグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明のECMサイクル正常化剤は、lycoperoside Aを有効成分とすることを特徴とする。
lycoperoside Aは、下記化学式(1)にて示されるサポニンである。
【化1】
【0014】
lycoperoside Aを得る方法は特に限定されないが、植物から抽出、精製する方法が特に好ましい。
lycoperoside Aを植物から抽出する場合、その原料は特に限定されないが、特にトマトを用いることが好ましい。lycoperoside Aを高濃度含有するからである。
また、トマトからlycoperoside Aを得る場合、その部位として、トマトの種子を用いる。lycoperoside Aはトマトの果肉、果皮等には含まれておらず、トマトの種子のみに含まれているからである。
【0015】
また、抽出法として溶媒抽出を行う場合、抽出物を得るための抽出溶媒としては、例えば水、低級1価アルコール(メチルアルコール、エチルアルコール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール等)、液状多価アルコール(グリセリン、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール等)、低級エステル(酢酸エチル等)、炭化水素(ベンゼン、ヘキサン、ペンタン等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)、エーテル類(ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジプロピルエーテル等)、アセトニトリル等が挙げられ、それらの一種又は二種以上を用いることができる。
【0016】
好ましい抽出方法の例としては、濃度0~100%(v/v)の含水エタノール又は含水メタノールを用い、室温で、又は加温して1~10時間抽出を行った後、ろ過する方法等が挙げられる。
【0017】
精製方法として、上記方法にて得られたトマト種子抽出物を、酢酸エチルおよびn-ブタノールで順次分配抽出を行い、その後、シリカゲルクロマトグラフィー、カラムクロマトグラフィー等を行うことによって、lycoperoside A(ECMサイクル正常化剤)を得ることができる。
【0018】
トマトの種子からlycoperoside Aを得る具体的な方法としては、本明細書の実施例による方法が好ましい。
【0019】
また、本発明のコラーゲン産生促進剤は、トマト種子抽出物又はlycoperoside Aを有効成分とすることを特徴とする。
上記は、上述した方法で製造することができる。
【0020】
本発明のECMサイクル正常化剤は、各種飲食品用組成物の素材として使用することができる。飲食品としては、例えば、菓子類(ガム、キャンディー、キャラメル、チョコレート、クッキー、スナック、ゼリー、グミ、錠菓等)、麺類(そば、うどん、ラーメン等)、乳製品(ミルク、アイスクリーム、ヨーグルト等)、調味料(味噌、醤油等)、スープ類、飲料(ジュース、コーヒー、紅茶、茶、炭酸飲料、スポーツ飲料等)をはじめとする一般食品や、健康食品(錠剤、カプセル等)、栄養補助食品(栄養ドリンク等)機能性表示食品、特定保健用食品が挙げられる。これらの飲食品に本発明のECMサイクル正常化剤を適宜配合するとよい。
【0021】
これら飲食品用組成物には、その種類に応じて種々の成分を配合することができ、例えば、ブドウ糖、果糖、ショ糖、マルトース、ソルビトール、ステビオサイド、コーンシロップ、乳糖、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、L-アスコルビン酸、dl-α-トコフェロール、エリソルビン酸ナトリウム、グリセリン、プロピレングリコール、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、アラビアガム、カラギーナン、カゼイン、ゼラチン、ペクチン、寒天、ビタミンB類、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウム、アミノ酸類、カルシウム塩類、色素、香料、保存剤等の食品素材を使用することができる。
【0022】
具体的な製法としては、ECMサイクル正常化剤を粉末セルロースとともにスプレードライまたは凍結乾燥し、これを粉末、顆粒、打錠または溶液にすることで容易に飲食品(インスタント食品等)に含有させることができる。また、前記ECMサイクル正常化剤を、例えば、油脂、エタノール、グリセリンあるいはこれらの混合物に溶解して液状にし、飲料に添加するか、固形食品に添加することが可能である。必要に応じてアラビアガム、デキストリン等のバインダーと混合して粉末状あるいは顆粒状にし、飲料に添加するか固形食品に添加することも可能である。
【0023】
本発明のECMサイクル正常化剤を飲食品に適用する場合の添加量としては、健康維持や美容が主な目的であるので、飲食品に対して有効成分の含量が合計1~20wt%以下であるのが好ましい。
【0024】
本発明のECMサイクル正常化剤は、薬品用組成物(医薬品および医薬部外品を含む。)の素材として用いてもよい。薬品製剤用の原料に、本発明のECMサイクル正常化剤を適宜配合して製造することができる。本発明のECMサイクル正常化剤に配合しうる製剤原料としては、例えば、賦形剤(ブドウ糖、乳糖、白糖、塩化ナトリウム、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、結晶セルロース、カカオ脂、硬化植物油、カオリン、タルク等)、結合剤(蒸留水、生理食塩水、エタノール水、単シロップ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン溶液、カルボキシメチルセルロース、リン酸カリウム、ポリビニルピロリドン等)、崩壊剤(アルギン酸ナトリウム、カンテン、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、デンプン、乳糖、アラビアゴム末、ゼラチン、エタノール等)、崩壊抑制剤(白糖、ステアリン、カカオ脂、水素添加油等)、吸収促進剤(第四級アンモニウム塩基、ラウリル硫酸ナトリウム等)、吸着剤(グリセリン、デンプン、乳糖、カオリン、ベントナイト、硅酸等)、滑沢剤(精製タルク、ステアリン酸塩、ポリエチレングリコール等)などが挙げられる。
【0025】
本発明のECMサイクル正常化剤の投与方法は、一般的には、錠剤、丸剤、軟・硬カプセル剤、細粒剤、散剤、顆粒剤、液剤等の形態で経口投与することができるが、非経口投与であってもよい。非経口剤として投与する場合は、溶液の状態、または分散剤、懸濁剤、安定剤などを添加した状態で、局所組織内投与、皮内、皮下、筋肉内および静脈内注射などによることができる。また、坐剤などの形態としてもよい。
【0026】
投与量は、投与方法、病状、患者の年齢等によって変化し得るが、大人では、通常、1日当たり有効成分として0.5~5000mg、子供では通常0.5~3000mg程度投与することができる。
ECMサイクル正常化剤の配合比は、剤型によって適宜変更することが可能であるが、通常、経口または粘膜吸収により投与される場合は約0.3~15.0wt%、非経口投与による場合は、0.01~10wt%程度にするとよい。なお、投与量は種々の条件で異なるので、前記投与量より少ない量で十分な場合もあるし、また、範囲を超えて投与する必要のある場合もある。
【0027】
本発明のECMサイクル正常化剤は、皮膚外用剤(化粧品、医薬品および医薬部外品を含む)として用いても、ECMサイクル正常化作用を期待することができる。
本発明のECMサイクル正常化剤を配合しうる皮膚外用剤の形態としては、例えば、乳液、石鹸、洗顔料、入浴剤、クリーム、乳液、化粧水、オーデコロン、ひげ剃り用クリーム、ひげ剃り用ローション、化粧油、日焼け・日焼け止めローション、おしろいパウダー、ファンデーション、香水、パック、爪クリーム、エナメル、エナメル除去液、眉墨、ほお紅、アイクリーム、アイシャドー、マスカラ、アイライナー、口紅、リップクリーム、シャンプー、リンス、染毛料、分散液、洗浄料等が挙げられる。また、本発明のECMサイクル正常化剤を配合しうる医薬品または医薬部外品の形態としては、軟膏剤、クリーム剤、外用液剤等が挙げられる。
【0028】
上記形態の皮膚外用剤には、本発明によるECMサイクル正常化剤の他に、そのECMサイクル正常化作用を損なわない範囲で化粧品、医薬部外品などの皮膚外用剤に配合される成分、油分、高級アルコール、脂肪酸、紫外線吸収剤、粉体、顔料、界面活性剤、多価アルコール・糖、高分子、生理活性成分、溶媒、酸化防止剤、香料、防腐剤等を配合することができる。例を以下に羅列するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0029】
(1)油分の例
エステル系の油相成分:トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、2-エチルヘキサン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ブチル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸エチル、パルミチン酸オクチル、イソステアリン酸イソセチル、ステアリン酸ブチル、ミリスチン酸ブチル、リノール酸エチル、リノール酸イソプロピル、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソセチル、ミリスチン酸イソステアリル、パルミチン酸イソステアリル、ミリスチン酸オクチルドデシル、イソステアリン酸イソセチル、セバシン酸ジエチル、アジピン酸ジイソプロピル、ネオペンタン酸イソアラキル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル、トリ2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、カプリル酸セチル、ラウリン酸デシル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸デシル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸セチル、ステアリン酸ステアリル、オレイン酸デシル、リシノレイン酸セチル、ラウリン酸イソステアリル、ミリスチン酸イソトリデシル、ミリスチン酸イソセチル、ミリスチン酸イソステアリル、パルミチン酸イソセチル、パルミチン酸イソステアリル、ステアリン酸オクチル、ステアリン酸イソセチル、オレイン酸イソデシル、オレイン酸オクチルドデシル、リノール酸オクチルドデシル、イソステアリン酸イソプロピル、2-エチルヘキサン酸セトステアリル、2-エチルヘキサン酸ステアリル、イソステアリン酸ヘキシル、ジオクタン酸エチレングリコール、ジオレイン酸エチレングリコール、ジカプリン酸プロピレングリコール、ジ(カプリル・カプリン酸)プロピレングリコール、ジカプリル酸プロピレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、トリカプリル酸グリセリル、トリウンデシル酸グリセリル、トリイソパルミチン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、ネオペンタン酸オクチルドデシル、オクタン酸イソステアリル、イソノナン酸オクチル、ネオデカン酸ヘキシルデシル、ネオデカン酸オクチルドデシル、イソステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソステアリル、イソステアリン酸オクチルデシル、ポリグリセリンオレイン酸エステル、ポリグリセリンイソステアリン酸エステル、炭酸ジプロピル、炭酸ジアルキル(C12-18)、クエン酸トリイソセチル、クエン酸トリイソアラキル、クエン酸トリイソオクチル、乳酸ラウリル、乳酸ミリスチル、乳酸セチル、乳酸オクチルデシル、クエン酸トリエチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル、クエン酸トリオクチル、リンゴ酸ジイソステアリル、ヒドロキシステアリン酸2-エチルヘキシル、コハク酸ジ2-エチルヘキシル、アジピン酸ジイソブチル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジオクチル、ステアリン酸コレステリル、イソステアリン酸コレステリル、ヒドロキシステアリン酸コレステリル、オレイン酸コレステリル、オレイン酸ジヒドロコレステリル、イソステアリン酸フィトステリル、オレイン酸フィトステリル、12-ステアロイルヒドロキシステアリン酸イソセチル、12-ステアロイルヒドロキシステアリン酸ステアリル、12-ステアロイルヒドロキシステアリン酸イソステアリル等が挙げられる。
炭化水素系の油相成分:スクワラン、流動パラフィン、α-オレフィンオリゴマー、イソパラフィン、セレシン、パラフィン、流動イソパラフィン、ポリブテン、マイクロクリスタリンワックス、ワセリン等が挙げられる。
動植物油とその硬化油、および天然由来のロウ:牛脂、硬化牛脂、豚脂、硬化豚脂、馬油、硬化馬油、ミンク油、オレンジラフィー油、魚油、硬化魚油、卵黄油等の動物油およびその硬化油、アボカド油、アルモンド油、オリーブ油、カカオ脂、キウイ種子油、杏仁油、ククイナッツ油、ゴマ油、小麦胚芽油、コメ胚芽油、コメヌカ油、サフラワー油、シアバター、大豆油、月見草油、シソ油、茶実油、ツバキ油、トウモロコシ油、ナタネ油、硬化ナタネ油、パーム核油、硬化パーム核油、パーム油、硬化パーム油、ピーナッツ油、硬化ピーナッツ油、ヒマシ油、硬化ヒマシ油、ヒマワリ油、ブドウ種子油、ホホバ油、硬化ホホバ油、マカデミアナッツ油、メドホーム油、綿実油、硬化綿実油、ヤシ油、硬化ヤシ油等の植物油およびその硬化油、ミツロウ、高酸価ミツロウ、ラノリン、還元ラノリン、硬化ラノリン、液状ラノリン、カルナバロウ、モンタンロウ等のロウ等が挙げられる。
シリコーン系の油相成分:ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルシクロポリシロキサン、オクタメチルポリシロキサン、デカメチルポリシロキサン、ドデカメチルシクロシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ポリエーテル変性オルガノポリシロキサン、ジメチルシロキサン・メチルセチルオキシシロキサン共重合体、ジメチルシロキサン・メチルステアロキシシロキサン共重合体、アルキル変性オルガノポリシロキサン、末端変性オルガノポリシロキサン、アミノ変性シリコーン油、アミノ変性オルガノポリシロキサン、ジメチコノール、シリコーンゲル、アクリルシリコーン、トリメチルシロキシケイ酸、シリコーンRTVゴム等が挙げられる。
フッ素系の油相成分:パーフルオロポリエーテル、フッ素変性オルガノポリシロキサン、フッ化ピッチ、フルオロカーボン、フルオロアルコール、フルオロアルキル・ポリオキシアルキレン共変性オルガノポリシロキサン等が挙げられる。
【0030】
(2)高級アルコールの例
ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、ベヘニルアルコール、2-エチルヘキサノール、ヘキサデシルアルコール、オクチルドデカノール等が挙げられる。
【0031】
(3)脂肪酸の例
カプリル酸、カプリン酸、ウンデシレン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキン酸、アラキドン酸、ベヘン酸、エルカ酸、2-エチルヘキサン酸等が挙げられる。
【0032】
(4)紫外線吸収剤の例
パラアミノ安息香酸、パラアミノ安息香酸アミル、パラアミノ安息香酸エチルジヒドロキシプロピル、パラアミノ安息香酸グリセリル、パラアミノ安息香酸エチル、パラアミノ安息香酸オクチル、パラアミノ安息香酸オクチルジメチル、サリチル酸エチレングリコール、サリチル酸オクチル、サリチル酸トリエタノールアミン、サリチル酸フェニル、サリチル酸ブチルフェニル、サリチル酸ベンジル、サリチル酸ホモメンチル、ケイ皮酸ベンジル、パラメトキシケイ皮酸オクチル、パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル、ジパラメトキシケイ皮酸モノ2-エチルヘキサン酸グリセリル、パラメトキシケイ皮酸イソプロピル、パラメトキシヒドロケイ皮酸ジエタノールアミン塩、ジイソプロピル・ジイソプロピルケイ皮酸エステル混合物、ウロカニン酸、ウロカニン酸エチル、ヒドロキシメトキシベンゾフェノン、ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸及びその塩、ジヒドロキシメトキシベンゾフェノン、ジヒドロキシメトキシベンゾフェノンジスルホン酸ナトリウム、ジヒドロキシベンゾフェノン、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノン、ヒドロキシオクトキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、ブチルメトキシジベンゾイルメタン、2、4、6-トリアニリノ-p-(カルボ-2-エチルヘキシル-1-オキシ)-1、3、5-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、メチル-O-アミノベンゾエート、2-エチルヘキシル-2-シアノ-3、3-ジフェニルアクリレート、フェニルベンゾイミダゾール硫酸、3-(4-メチルベンジリデン)カンフル、イソプロピルジベンゾイルメタン、4-(3、4-ジメトキシフェニルメチレン)-2、5-ジオキソ-1-イミダゾリジンプロピオン酸2-エチルヘキシル等、およびこれらの高分子誘導体やシラン誘導体等が挙げられる。
【0033】
(5)粉体・顔料の例
赤色104号、赤色201号、黄色4号、青色1号、黒色401号等の色素、黄色4号ALレーキ、黄色203号BAレーキ等のレーキ色素、ナイロンパウダー、シルクパウダー、ウレタンパウダー、テフロン(登録商標)パウダー、シリコーンパウダー、ポリメタクリル酸メチルパウダー、セルロースパウダー、デンプン、シリコーンエラストマー球状粉体、ポリエチレン末等の高分子、黄酸化鉄、赤色酸化鉄、黒酸化鉄、酸化クロム、カーボンブラック、群青、紺青等の有色顔料、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウム等の白色顔料、タルク、マイカ、セリサイト、カオリン、板状硫酸バリウム等の体質顔料、雲母チタン等のパール顔料、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム等の金属塩、シリカ、アルミナ等の無機粉体、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム、パルミチン酸亜鉛、ミリスチン酸亜鉛、ミリスチン酸マグネシウム、ラウリン酸亜鉛、ウンデシレン酸亜鉛等の金属セッケン、ベントナイト、スメクタイト、窒化ホウ素等が挙げられる。これらの粉体の形状(球状、棒状、針状、板状、不定形状、燐片状、紡錘状等)および粒子径に特に制限はない。なおこれらの粉体は、従来公知の表面処理、例えばフッ素化合物処理、シリコーン処理、シリコーン樹脂処理、ペンダント処理、シランカップリング剤処理、チタンカップリング剤処理、油剤処理、N-アシル化リジン処理、ポリアクリル酸処理、金属セッケン処理、アミノ酸処理、レシチン処理、無機化合物処理、プラズマ処理、メカノケミカル処理等によって事前に表面処理されていてもいなくても構わない。
【0034】
(6)界面活性剤の例
アニオン性界面活性剤:脂肪酸セッケン、α-アシルスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルアリルスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、POEアルキルエーテル硫酸塩、アルキルアミド硫酸塩、アルキルリン酸塩、POEアルキルリン酸塩、アルキルアミドリン酸塩、アルキロイルアルキルタウリン塩、N-アシルアミノ酸塩、POEアルキルエーテルカルボン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルスルホ酢酸ナトリウム、アシル化加水分解コラーゲンペプチド塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル等が挙げられる。
カチオン性界面活性剤:塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化セトステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム、臭化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベヘニン酸アミドプロピルジメチルヒドロキシプロピルアンモニウム、ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド、ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ラノリン誘導体第四級アンモニウム塩等が挙げられる。
両性界面活性剤:カルボキシベタイン型、アミドベタイン型、スルホベタイン型、ヒドロキシスルホベタイン型、アミドスルホベタイン型、ホスホベタイン型、アミノカルボン酸塩型、イミダゾリン誘導体型、アミドアミン型等が挙げられる。
ノニオン性界面活性剤:プロピレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、POEソルビタン脂肪酸エステル、POEソルビット脂肪酸エステル、POEグリセリン脂肪酸エステル、POEアキルエーテル、POE脂肪酸エステル、POE硬化ヒマシ油、POEヒマシ油、POE・POP共重合体、POE・POPアルキルエーテル、ポリエーテル変性シリコーンラウリン酸アルカノールアミド、アルキルアミンオキシド、水素添加大豆リン脂質等が挙げられる。
天然系界面活性剤:レシチン、サポニン、糖系界面活性剤等が挙げられる。
【0035】
(7)多価アルコール、糖の例
エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、3-メチル-1、3-ブタンジオール、1、3-ブチレングリコール、ソルビトール、マンニトール、ラフィノース、エリスリトール、グルコース、ショ糖、果糖、キシリトール、ラクトース、マルトース、マルチトール、トレハロース、アルキル化トレハロース、混合異性化糖、硫酸化トレハロース、プルラン等が挙げられる。またこれらの化学修飾体等も使用可能である。
【0036】
(8)高分子の例
アクリル酸エステル/メタクリル酸エステル共重合体(プラスサイズ、互応化学社製)、酢酸ビニル/クロトン酸共重合体(レジン28-1310、NSC社製)、酢酸ビニル/クロトン酸/ビニルネオデカネート共重合体(28-2930、NSC社製)、メチルビニルエーテルマレイン酸ハーフエステル(ガントレッツES、ISP社製)、T-ブチルアクリレート/アクリル酸エチル/メタクリル酸共重合体(ルビマー、BASF社製)、ビニルピロリドン/ビニルアセテート/ビニルプロピオネート共重合体(ルビスコールVAP、BASF社製)、ビニルアセテート/クロトン酸共重合体(ルビセットCA、BASF社製)、ビニルアセテート/クロトン酸/ビニルピロリドン共重合体(ルビセットCAP、BASF社製)、ビニルピロリドン/アクリレート共重合体(ルビフレックス、BASF社製)、アクリレート/アクリルアミド共重合体(ウルトラホールド、BASF社製)、ビニルアセテート/ブチルマレエート/イソボルニルアクリラート共重合体(アドバンテージ、ISP社製)、カルボキシビニルポリマー(カーボポール、BFGoodrich社製)、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体(ペミュレン、BF Goodrich社製)等のアニオン性高分子化合物や、ジアルキルアミノエチルメタクリレート重合体の酢酸両性化物(ユカフォーマー、三菱化学社製)、アクリル酸オクチルアクリルアミド/アクリル酸ヒドロキシプロピル/メタクリル酸ブチルアミノエチル共重合体(AMPHOMER、NSC社製)等の両性高分子化合物、ビニルピロリドン/ジメチルアミノエチルメタクリレートの4級化物(GAFQUAT、ISP社製)、メチルビニルイミダゾリウムクロリド/ビニルピロリドン共重合体(ルビコート、BASF社製)等のカチオン性高分子化合物、ポリビニルピロリドン(ルビスコールK、BASF社製)、ビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合体(ルビスコールVA、BASF社製)、ビニルピロリドン/ジメチルアミノエチルメタクリレート共重合体(コポリマー937、ISP社製)、ビニルカプロラクタム/ビニルピロリドン/ジメチルアミノエチルメタクリレート共重合体(コポリマーVC713、ISP社製)等のノニオン性高分子化合物等がある。また、セルロースまたはその誘導体、ケラチン及びコラーゲンまたはその誘導体、アルギン酸カルシウム、プルラン、寒天、ゼラチン、タマリンド種子多糖類、キサンタンガム、カラギーナン、ハイメトキシルペクチン、ローメトキシルペクチン、グアーガム、アラビアゴム、結晶セルロース、アラビノガラクタン、カラヤガム、トラガカントガム、アルギン酸、アルブミン、カゼイン、カードラン、ジェランガム、デキストラン等の天然由来高分子化合物も好適に用いることができる。
【0037】
(9)生理活性成分の例
生理活性成分としては、皮膚に塗布した場合に皮膚に何らかの生理活性を与える物質が挙げられる。例えば、美白成分、免疫賦活剤、老化防止剤、紫外線防御剤、スリミング剤、ひきしめ剤、抗酸化剤、発毛剤、育毛剤、保湿剤、血行促進剤、抗菌剤、殺菌剤、乾燥剤、冷感剤、温感剤、ビタミン類、アミノ酸、創傷治癒促進剤、刺激緩和剤、鎮痛剤、細胞賦活剤、酵素成分等が挙げられる。これらの好適な配合成分の例としては、例えばアシタバエキス、アボカドエキス、アマチャエキス、アルテアエキス、アルニカエキス、アロエエキス、アンズエキス、アンズ核エキス、イチョウエキス、ウイキョウエキス、ウコンエキス、ウーロン茶エキス、エイジツエキス、エチナシ葉エキス、オウゴンエキス、オウバクエキス、オウレンエキス、オオムギエキス、オトギリソウエキス、オドリコソウエキス、オランダカラシエキス、オレンジエキス、海水乾燥物、海藻エキス、加水分解エラスチン、加水分解コムギ末、加水分解シルク、カモミラエキス、カロットエキス、カワラヨモギエキス、甘草エキス、カルカデエキス、カキョクエキス、キナエキス、キューカンバ-エキス、グアノシン、クチナシエキス、クマザサエキス、クララエキス、クルミエキス、グレープフルーツエキス、クレマティスエキス、クロレラエキス、クワエキス、ゲンチアナエキス、紅茶エキス、酵母エキス、ゴボウエキス、コメヌカ発酵エキス、コメ胚芽油、コンフリーエキス、コラーゲン、コケモモエキス、サイシンエキス、サイコエキス、サイタイ抽出液、サルビアエキス、サボンソウエキス、ササエキス、サンザシエキス、サンショウエキス、シイタケエキス、ジオウエキス、シコンエキス、シソエキス、シナノキエキス、シモツケソウエキス、シャクヤクエキス、ショウブ根エキス、シラカバエキス、スギナエキス、セイヨウキズタエキス、セイヨウサンザシエキス、セイヨウニワトコエキス、セイヨウノコギリソウエキス、セイヨウハッカエキス、セ-ジエキス、ゼニアオイエキス、センキュウエキス、センブリエキス、ダイズエキス、タイソウエキス、タイムエキス、茶エキス、チョウジエキス、チガヤエキス、チンピエキス、トウキエキス、トウキンセンカエキス、トウニンエキス、トウヒエキス、ドクダミエキス、トマトエキス、納豆エキス、ニンジンエキス、ニンニクエキス、ノバラエキス、ハイビスカスエキス、バクモンドウエキス、パセリエキス、蜂蜜、ハマメリスエキス、パリエタリアエキス、ヒキオコシエキス、ビサボロール、ビワエキス、フキタンポポエキス、フキノトウエキス、ブクリョウエキス、ブッチャーブルームエキス、ブドウエキス、プロポリス、ヘチマエキス、ベニバナエキス、ペパーミントエキス、ボダイジュエキス、ボタンエキス、ホップエキス、マツエキス、マロニエエキス、ミズバショウエキス、ムクロジエキス、メリッサエキス、モモエキス、ヤグルマギクエキス、ユーカリエキス、ユキノシタエキス、ヨクイニンエキス、ヨモギエキス、ラベンダーエキス、リンゴエキス、レタスエキス、レモンエキス、レンゲソウエキス、ローズエキス、ローズマリーエキス、ローマカミツレエキス、ローヤルゼリーエキス等を挙げることができる。
また、デオキシリボ核酸、ムコ多糖類、ヒアルロン酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、コラーゲン、エラスチン、キチン、キトサン、加水分解卵殻膜などの生体高分子、アミノ酸、加水分解ペプチド、乳酸ナトリウム、尿素、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、ベタイン、ホエイ、トリメチルグリシンなどの保湿成分、スフィンゴ脂質、セラミド、フィトスフィンゴシン、コレステロール、コレステロール誘導体、リン脂質などの油性成分、ε-アミノカプロン酸、グリチルリチン酸、β-グリチルレチン酸、塩化リゾチーム、グアイアズレン、ヒドロコールチゾン等の免疫賦活剤、ビタミンA、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、パントテン酸カルシウム、ビオチン、ニコチン酸アミド、ビタミンCエステル等のビタミン類、アラントイン、ジイソプロピルアミンジクロロアセテート、4-アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸等の活性成分、トコフェロール、カロテノイド、フラボノイド、タンニン、リグナン、サポニン等の抗酸化剤、α-ヒドロキシ酸、β-ヒドロキシ酸などの細胞賦活剤、γ-オリザノール、ビタミンE誘導体などの血行促進剤、レチノール、レチノール誘導体等の創傷治癒剤、アルブチン、コウジ酸、プラセンタエキス、イオウ、エラグ酸、リノール酸、トラネキサム酸、グルタチオン等の美白剤、セファランチン、カンゾウ抽出物、トウガラシチンキ、ヒノキチオール、ヨウ化ニンニクエキス、塩酸ピリドキシン、DL-α-トコフェロール、酢酸DL-α-トコフェロール、ニコチン酸、ニコチン酸誘導体、パントテン酸カルシウム、D-パントテニルアルコール、アセチルパントテニルエチルエーテル、ビオチン、アラントイン、イソプロピルメチルフェノール、エストラジオール、エチニルエストラジオール、塩化カプロニウム、塩化ベンザルコニウム、塩酸ジフェンヒドラミン、タカナール、カンフル、サリチル酸、ノニル酸バニリルアミド、ノナン酸バニリルアミド、ピロクトンオラミン、ペンタデカン酸グリセリル、L-メントール、モノニトログアヤコール、レゾルシン、γ-アミノ酪酸、塩化ベンゼトニウム、塩酸メキシレチン、オーキシン、女性ホルモン、カンタリスチンキ、シクロスポリン、ジンクピリチオン、ヒドロコールチゾン、ミノキシジル、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、ハッカ油、ササニシキエキス等の育毛剤などが挙げられる。
【0038】
(10)酸化防止剤の例
亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、エリソルビン酸、エリソルビン酸ナトリウム、チオジプロピオン酸ジラウリル、トコフェロール、トリルビグアナイド、ノルジヒドログアヤレチン酸、パラヒドロキシアニソール、ブチルヒドロキシアニソール、ジブチルヒドロキシトルエン、ステアリン酸アスコルビル、パルミチン酸アスコルビル、没食子酸オクチル、没食子酸プロピル、カロテノイド、フラボノイド、タンニン、リグナン、サポニン、リンゴエキスやチョウジエキスなどの酸化防止効果の認められる植物エキス等が挙げられる。
【0039】
(11)溶媒の例
精製水、エタノール、低級アルコール、エーテル類、LPG、フルオロカーボン、N-メチルピロリドン、フルオロアルコール、揮発性直鎖状シリコーン、次世代フロン等が挙げられる。
【0040】
本発明のコラーゲン産生促進剤は、飲食品用組成物、薬品組成物、皮膚外用剤の原料として用いることができる。
これらに配合しうる製剤原料としては、上述したECMサイクル正常化剤に用いたものと同様のものを用いることができ、製造方法、投与方法もECMサイクル正常化剤と同様の方法を用いることができる。
【実施例
【0041】
以下、本発明を実施例に基づいて説明する。
実施例1:トマト種子抽出物の調製、並びにトマト種子からサポニン成分の単離および同定
乾燥トマト種子 367.7gをメタノールで抽出(70℃、2時間)してメタノール抽出物を得た。得られたメタノール抽出物を水に分散させ、酢酸エチルおよびn-ブタノールで順次分配抽出を行い、酢酸エチル可溶部(酢酸エチル画分)0.63 g、n-ブタノール可溶部(ブタノール分画)2.41 gおよび水可溶部(水分画)5.05 gをそれぞれ得た。そして、これらのうちブタノール分画を本実施例のトマト種子抽出物とした。そしてブタノール分画をシリカゲルクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=9:1→7:3→クロロホルム:メタノール:水=6:4:1→メタノール)に供し、Fr. 1~6を得た。Fr. 3(1.1 g)を逆相ODSカラムクロマトグラフィー(メタノール濃度20%→50%→80%→100%)に供し、Fr.3-1~Fr.3-4を得た。Fr.3-3(mg)から逆相HPLC分取(Inertsil ODS-SP, 70%メタノール)によってサポニン化合物であるlycoperoside A (上記化学式(1))(7.0 mg)およびH (下記化学式(2))(7.5 mg)を単離した。各化合物は1H-NMR(600 MHz)および13C-NMR(150 MHz)スペクトルを文献値と比較することにより同定した。
【化2】
【0042】
試験例1-1: トマト種子抽出物およびサポニンのコラーゲン産生に及ぼす作用
ヒト皮膚線維芽細胞(TIG-103)を24ウェルプレートに1.0×104個/ウェルの細胞濃度で播種し、2日間培養した。培養後の細胞にトマト種子エキスメタノール抽出物のブタノール分画(1, 3および10 μg/mL)、lycoperoside AおよびH(0.1, 0.3および1.0 μg/mL)を添加し、1日間培養した。添加培養後、培地を除去した細胞をPBSでホモジネートし、得られた細胞懸濁液を用いて細胞層中のコラーゲン量をCollagen assay kit(コスモ・バイオ社)を用いて測定した。また、MTTアッセイによる毒性評価も行った。その結果を図1に示す。
【0043】
結果及び試験例1-1における実施例の効果
図1に示されるように、ブタノール分画(3 μg/mL)およびlycoperoside A(0.3および1 μg/mL)を添加した細胞では有意にコラーゲン産生量が増加していることがわかった。また、サンプルの添加による細胞毒性は見られなかった。これにより、トマト種子抽出物及びlycoperoside Aはコラーゲン産生促進剤として有用であることが確認された。
【0044】
試験例1-2:トマト種子エキスおよび種子サポニンの細胞内リソソーム量に及ぼす効果
ヒト皮膚線維芽細胞(TIG-103)を48ウェルプレートに1.0×105個/ウェルの細胞濃度で播種し,1日間培養した。培養後の細胞にトマト種子エキスメタノール抽出物のn-ブタノール分画(3 μg/mL),lycoperoside AおよびH(10 μM)を添加し,2日間培養した。添加培養後,培地を除去した細胞を4%パラホルムアルデヒド/PBSで固定し,蛍光免疫染色法によってLAMP-1の細胞中の局在および存在量を顕微鏡で確認した。
【0045】
結果及び試験例1-2に関する効果
その結果,サンプル無添加のコントロールと比較して,n-ブタノール分画(3 μg/mL),lycoperoside AおよびH(10 μM)の添加によって細胞中のLAMP-1の量が増加していることがわかった(図6)。特にlycoperoside Aの添加による増加は顕著であった。
この結果から,トマト種子抽出物およびそれに含まれるlycoperoside AおよびHは,皮膚真皮の細胞外マトリックスにおいて老廃物の取り込み・分解を担うリソソームの量を増やすことが確認された。
【0046】
結果及び試験例1-1、及び1-2に関する実施例の効果
以上により、トマト種子抽出物及びlycoperoside Aはコラーゲン産生を促進し、皮膚真皮の細胞外マトリックスにおいて老廃物の取り込み・分解を担うリソソームの量を増やすので、ECMサイクルを正常化させ、細胞外マトリックスを常に正常に保つ作用があることがわかった。
【0047】
試験例2:トマト種子抽出物およびサポニンの細胞外マトリックス恒常性に及ぼす作用
ヒト皮膚線維芽細胞(TIG-103)を12ウェルプレートに1.0×105個/ウェルの細胞濃度で播種し、1日間培養した。培養後の細胞にトマト種子エキスメタノール抽出物のブタノール分画(1, 3および10 μg/mL)、lycoperoside AおよびH(1, 3および10 μM)を添加し、2日間培養した。培養後の細胞からRNAを抽出し、リアルタイムRT-PCR法によって各遺伝子(smad遺伝子、endo180遺伝子、fiblin遺伝子、neuraminidase-1遺伝子)の発現量を評価した。
その結果を図2(smad遺伝子)、図3(endo180遺伝子)、図4(fiblin-4遺伝子)及び図5(neuraminidase-1遺伝子)に示す。
【0048】
結果及び試験例2における実施例の効果
図2に示されるように、コラーゲンの産生に関与するsmad遺伝子はlycoperoside Aの添加(3および10 μM)で有意に発現が増加し、図3に示されるように、分解されたコラーゲンの取り込みに関与するendo180遺伝子はブタノール分画の添加(1 μg/mL)およびlycoperoside Aの添加(3 μM)で有意に発現が増加することが確認された。これにより、lycoperoside A は、smad遺伝子発現促進剤、endo180遺伝子発現促進剤として有用であり、コラーゲンの産生、取り込みサイクル正常化剤として有用であることが確認された。
また、図4に示されるように、エラスチンの産生に関与するfiblin遺伝子はlycoperoside Aの添加(10 μM)で有意に発現が増加した。そして、図5に示されるように、エラスチン分解産物の取り込みに関与するneuraminidase-1遺伝子はlycoperoside Aの添加(3 μM)で有意に発現が増加した。これにより、lycoperoside A は、fiblin遺伝子発現促進剤、neuraminidase-1遺伝子発現促進剤として有用であり、エラスチンの産生、取り込みサイクル正常化剤として有用であることが確認された。
【0049】
試験例3:細胞外マトリックスを形成した状態におけるトマト種子抽出物および種子サポニンのECMサイクル正常化作用の評価
ヒト皮膚線維芽細胞(TIG-103)を細胞シート回収用温度応答性細胞培養器材(UpCell:登録商標,株式会社セルシード製)に播種し,細胞同士が密着してシートを形成するまで2週間培養した。細胞シート形成後、細胞外マトリックス分解物としてコラーゲントリペプチド(H-Gly-Pro-Hyp-OH)を終濃度200 μMで添加した。同時に、トマト種子エキスメタノール抽出物のn-ブタノール分画(1, 3および10μg/mL)、lycoperoside AおよびH(0.1, 0.3および1.0μM)を添加し、2日間培養した。添加培養後、細胞シートを回収し、蛍光免疫染色により細胞シート中に蓄積したコラーゲン分解物量を調べた。また、細胞シート中のRNAを抽出し、リアルタイムRT-PCR法によってコラーゲン分解物およびエラスチン分解物の取り込みに関与する遺伝子の発現量を評価した。
【0050】
結果及び試験例3における実施例の効果
その結果、得られた免疫染色像から、細胞シート中に蓄積した細胞外マトリックス分解物がブタノール分画(10μg/mL)および種子サポニン(1.0μM)の添加によって減少していることがわかった(図7)。また、遺伝子発現解析の結果、分解物の蓄積によって減少した遺伝子発現がコラーゲン分解物の取り込みに関与するEndo180ではトマト種子エキス(10 μg/mL)、lycoperoside A(1, 3 μM)およびlycoperoside H(1μM)によって有意に増加した(図8)。同様にエラスチン分解物の取り込みに関与するNeuraminidase-1遺伝子発現においてもトマト種子エキス(10μg/mL)、lycoperoside A(1, 3, 10μM)およびlycoperoside H(10μM)によって有意に増加した(図9)。
以上の結果より、トマト種子エキスおよび種子サポニンは,実際に細胞外マトリックスを形成した細胞においても細胞外マトリックス分解物の取り込みに関与する遺伝子の発現を促進させ、分解物の取り込み能を増加させることがわかった。
【0051】
実施例の効果
以上の結果から、トマト種子抽出物及びトマトに含まれるサポニンのうちlycoperoside Aはコラーゲンおよびエラスチンの産生・分解を促進することで、ECMサイクル正常化剤として有用であり、したがって、細胞外マトリックスの恒常性を維持する作用があることがわかった。
【0052】
以下により、本発明のECMサイクル正常化剤の配合例を挙げるが、下記配合例は本発明を限定するものではない。
配合例1:チューインガム
砂糖 52.0wt%
ガムベース 20.0
グルコース 10.0
水飴 16.0
香料 0.5
桜の花エキス 0.5
グルコシルセラミド 0.5
ECMサイクル正常化剤 0.5
100.0wt%
【0053】
配合例2:グミ
還元水飴 38.0wt%
グラニュー糖 20.0
ブドウ糖 20.0
ゼラチン 4.7
水 9.68
キウイ果汁 4.0
キウイフレーバー 0.6
色素 0.02
桜の花エキス 1.0
グルコシルセラミド 1.0
ECMサイクル正常化剤 1.0
100.0wt%
【0054】
配合例3:キャンディー
砂糖 50.0wt%
水飴 33.0
水 14.2
有機酸 2.0
香料 0.2
桜の花エキス 0.1
グルコシルセラミド 0.1
ECMサイクル正常化剤 0.4
100.0wt%
【0055】
配合例4:ヨーグルト(ハード・ソフト)
牛乳 41.5wt%
脱脂粉乳 5.8
砂糖 8.0
寒天 0.15
ゼラチン 0.1
乳酸菌 0.005
桜の花エキス 0.1
グルコシルセラミド 0.1
ECMサイクル正常化剤 0.4
香料 微量
水 残余
100.0wt%
【0056】
配合例5:清涼飲料
果糖ブドウ糖液糖 30.0wt%
乳化剤 0.5
イチゴ種子エキス 0.05
グルコシルセラミド 0.05
ECMサイクル正常化剤 0.05
香料 適量
精製水 残余
100.0wt%
【0057】
配合例6:ソフトカプセル
米胚芽油 86.0wt%
桜の花エキス 0.5
グルコシルセラミド 0.5
乳化剤 12.0
ECMサイクル正常化剤 1.0
100.0wt%
【0058】
配合例7:錠剤
乳糖 53.0wt%
結晶セルロース 30.0
澱粉分解物 10.0
桜の花エキス 0.5
グルコシルセラミド 0.5
グリセリン脂肪酸エステル 5.0
ECMサイクル正常化剤 1.0
100.0wt%
【0059】
配合例8:顆粒内服剤(医薬品)
ECMサイクル正常化剤 1.0wt%
イチゴ種子エキス 0.5
グルコシルセラミド 0.5
乳糖 30.0
コーンスターチ 60.0
結晶セルロース 7.0
ポリビニールピロリドン 1.0
100.0wt%
【0060】
配合例9:錠菓
砂糖 75.4wt%
グルコース 19.0
ショ糖脂肪酸エステル 0.2
イチゴ種子エキス 0.5
グルコシルセラミド 0.5
ECMサイクル正常化剤 0.5
精製水 3.9
100.0wt%
【0061】
配合例10:キャットフード
とうもろこし 33.0wt%
小麦粉 35.0
ミートミール 15.0
牛脂 8.9
食塩 1.0
かつおエキス 4.0
イチゴ種子エキス 0.5
グルコシルセラミド 0.5
ECMサイクル正常化剤 1.0
タウリン 0.1
ビタミン類 0.5
ミネラル類 0.5
100.0wt%
【0062】
配合例11:ドッグフード
とうもろこし 30.0wt%
肉類(チキン) 15.0
脱脂大豆 10.0
小麦粉 24.0
糟糠類 5.0
桜の花エキス 0.5
グルコシルセラミド 0.5
ECMサイクル正常化剤 5.0
動物性油脂 8.9
オリゴ糖 0.1
ビタミン 0.5
ミネラル 0.5
100.0wt%
【0063】
配合例12:化粧クリーム
スクワラン 20.0wt%
ミツロウ 5.0
精製ホホバ油 5.0
グリセリン 5.0
グリセリンモノステアレート 2.0
ポリオキシエチレン(20)ソルビタン-
モノステアレート 2.0
ECMサイクル正常化剤 2.0
防腐剤 適量
香料 適量
精製水 残余
100.0wt%
【0064】
配合例13:化粧水
エタノール 5.0wt%
グリセリン 2.0
1,3-ブチレングリコール 2.0
ポリエチレンオレイルエーテル 0.5
クエン酸ナトリウム 0.1
クエン酸 0.1
ECMサイクル正常化剤 0.1
精製水 残余
100.0wt%
【0065】
配合例14:ボディージェル
マカデミアナッツ油 2.0wt%
ミリスチン酸オクチルドデシル 10.0
メチルフェニルポリシロキサン 5.0
ベヘニルアルコール 3.0
ステアリン酸 3.0
バチルアルコール 1.0
モノステアリン酸グリセリル 1.0
テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット
2.0
水素添加大豆リン脂質 1.0
セラミド 0.1
パルミチン酸レチノール 0.1
防腐剤 適量
ツボクサ抽出物 1.0
ECMサイクル正常化剤 1.0
1、3-ブチレングリコール 5.0
精製水 残余
100.0wt%
【0066】
配合例15:乳液
スクワラン 4.0wt%
ワセリン 2.5
セタノール 2.0
グリセリン 2.0
親油型モノステアリン酸グリセリン 1.0
ステアリン酸 1.0
L-アルギニン 1.0
ECMサイクル正常化剤 0.5
水酸化カリウム 0.1
香料 微量
精製水 残余
100.0wt%
【0067】
配合例16:浴用剤(液状)
プロピレングリコール 50.0wt%
エタノール 20.0
硫酸ナトリウム 5.0
ECMサイクル正常化剤 0.5
ラノリン 0.5
アボガド油 0.5
色素 1.5
香料 22.0
100.0wt%
【産業上の利用可能性】
【0068】
以上、説明したように、本発明は新規なECMサイクル正常化剤を提供することができる。


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9