(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-16
(45)【発行日】2022-02-25
(54)【発明の名称】タイヤの加速度ピーク値を用いたタイヤの摩耗測定装置及びそれを用いたタイヤの摩耗測定方法
(51)【国際特許分類】
B60C 19/00 20060101AFI20220217BHJP
B60C 11/24 20060101ALI20220217BHJP
【FI】
B60C19/00 H
B60C11/24 Z
(21)【出願番号】P 2020166812
(22)【出願日】2020-10-01
【審査請求日】2020-10-01
(31)【優先権主張番号】10-2019-0122313
(32)【優先日】2019-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514040088
【氏名又は名称】ハンコック タイヤ アンド テクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HANKOOK TIRE & TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】133,Teheran-ro,Gangnam-gu,Seoul 06133,Republic of Korea
(73)【特許権者】
【識別番号】515162224
【氏名又は名称】コリア アドバンスド インスティテュート オブ サイエンス アンド テクノロジー
【氏名又は名称原語表記】KOREA ADVANCED INSTITUTE OF SCIENCE AND TECHNOLOGY
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】キム、ミン テ
(72)【発明者】
【氏名】イ、ホ ジョン
(72)【発明者】
【氏名】チェ、セ ボム
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、ダ ソル
(72)【発明者】
【氏名】イ、ジョン ヒョプ
【審査官】赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-153034(JP,A)
【文献】特開2019-127253(JP,A)
【文献】特開2009-018667(JP,A)
【文献】特開2013-169816(JP,A)
【文献】再公表特許第2009/157516(JP,A1)
【文献】特開2020-041899(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0009618(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00- 19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設置されるタイヤ内部の加速度を前記タイヤ内部の各点に対して測定する信号受信部と、
前記信号受信部から信号情報を伝達されて前記タイヤ内部の加速度信号の中から、前記タイヤの半径方向である軸方向に垂直な縦方向の加速度のピーク値を用い
てタイヤのトレッド摩耗率を推定する信号解析部と、
前記信号解析部から前記タイヤのトレッド磨耗率に対する情報である分析情報を伝達されて送信する送信部と、
前記送信部から前記分析情報を伝達されて前記タイヤが設置された車両に対する制御信号を生成する制御モジュールと、を備え、
加速度のピーク値は、前記信号受信部が前記タイヤと路面の接地部位に対する加速度の測定時に獲得され
、
前記信号解析部は、前記タイヤの速度、荷重と空気圧の影響度を排除させる正規化を通して獲得された下の式に加速度のピーク値を代入して前記タイヤのトレッドの厚さを導出することにより、前記タイヤのトレッド摩耗率を演算して推定する
【数1】
ことを特徴とするタイヤの加速度ピーク値を用いたタイヤの摩耗測定装置。
【請求項2】
前記タイヤの固有の定数値であるαに対するデータは、前記信号解析部に事前に設定されて格納される
請求項1に記載のタイヤの加速度ピーク値を用いたタイヤの摩耗測定装置。
【請求項3】
前記制御モジュールは、
前記車両に対する制御を遂行する車両制御部と、
前記送信部から前記分析情報を伝達されて前記車両制御部に伝達する情報伝達部と、を含み、
前記車両制御部は、前記分析情報を用いて前記タイヤの交換時期を判定する
請求項1に記載のタイヤの加速度ピーク値を用いたタイヤの摩耗測定装置。
【請求項4】
前記制御モジュールは、前記タイヤの交換時点又は前記タイヤの交換サービス情報を表示するディスプレイ部をさらに含む
請求項1に記載のタイヤの加速度ピーク値を用いたタイヤの摩耗測定装置。
【請求項5】
軸方向に対する前記タイヤ内部の加速度が前記タイヤ内部の各点に対して測定される第1のステップと、
前記タイヤ内部の加速度信号の中から、前記タイヤの半径方向である軸方向に垂直な縦方向の加速度のピーク値を用いて前記タイヤのトレッド摩耗率を推定する第2のステップと、
前記タイヤのトレッド摩耗率情報を用いて前記タイヤの交換時期が判定される第3のステップと、
前記タイヤの交換時期に関する情報が、前記車両のユーザー及び前記車両と連結された外部の統合制御システムに伝達される第4のステップと、を備える
請求項1に記載のタイヤの
摩耗測定装置を用いたタイヤの摩耗測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤの加速度ピーク値を用いたタイヤの摩耗測定装置及びそれを用いたタイヤの摩耗測定方法に関し、さらに詳しくは、タイヤの加速度ピーク値の傾向性を用いてタイヤのトレッド摩耗率を測定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のコンポーネントの中で唯一に路面と接触しているタイヤは、車両の旋回及び制動の性能と直接関連付けられ、タイヤの摩耗が発生した場合、制動及び旋回の性能を適切に発揮できない問題が発生するため、 摩耗したタイヤは、車両の安全性に直結することができる。具体的には、タイヤの摩耗に伴って濡れた路面で制動距離が増加することにより、車両の事故に直結することができる。
【0003】
これにより、タイヤのトレッドなどに対する摩耗率をリアルタイムで測定し、タイヤの磨耗率に応じて自動的にタイヤの交換時期などを知らせるシステムに対する研究開発が活発に進められている。
【0004】
特許文献1:米国特許出願公開第2017-0113495号明細書(発明の名称:Indirect tire wear state estimation system)では、車両の荷重を推し量った後、それをベースに走行距離に応じた摩耗率を推定しているが、摩耗率推定のために多すぎる因子に関する情報が必要であることにより、非効率的という問題を有している。また、特許文献12米国特許第8483976号明細書(発明の名称:Method for estimating tire wear and apparatus for estimating tire wear)と、特許文献3:米国特許第8061191号明細書(発明の名称:Method and apparatus for detecting wear of tire)は、タイヤに対するセンシングを用いた方法でタイヤの摩耗率を測定しているが、一貫性のある結果を期待し難く、実際の車両の運行状況を反映していない限界を有していて、実際の条件で正確なタイヤの摩耗判定に限界を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許出願公開第2017-0113495号明細書
【文献】米国特許第8483976号明細書
【文献】米国特許第8061191号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、加速度センサを用いてタイヤの加速度信号を測定し、このような加速度信号を分析してタイヤのトレッド摩耗量を測定することにある。
【0007】
本発明が解決しようとする技術的課題は、以上で言及した技術的課題に限定されず、言及されていないもう1つの技術的課題は、以下の記載から、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者に明確に理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記のような目的を達成するための本発明の構成は、車両に設置されるタイヤ内部の加速度を前記タイヤ内部の各点について測定する信号受信部と、前記信号受信部から信号情報を伝達されて前記タイヤ内部の加速度信号の中から、前記タイヤの半径方向である軸方向に垂直な縦方向の加速度のピーク値を用いて前記タイヤのトレッド摩耗率を推定する信号解析部と、前記信号解析部から前記タイヤのトレッド磨耗率に対する情報である分析情報を伝達されて送信する送信部と、前記送信部から前記分析情報を伝達されて前記タイヤが設置された車両に対する制御信号を生成する制御モジュールと、を備え、加速度のピーク値は、前記信号受信部が前記タイヤと路面の接地部位に対する加速度を測定するとき、獲得されることを特徴とする。
【0009】
本発明の実施形態において、前記信号解析部は、前記タイヤの速度、荷重と空気圧の影響度を排除させる正規化を通して獲得された以下の式に加速度のピーク値を代入して前記タイヤのトレッドの厚さを導出することにより、前記タイヤのトレッド摩耗率を演算して推定することができる。
【0010】
【0011】
本発明の実施形態において、前記信号解析部は、前記タイヤに対する固有の定数値であるαに関するデータは、前記信号解析部に事前に設定されて格納され得る。
【0012】
本発明の実施形態において、前記制御モジュールは、前記車両に対する制御を遂行する車両制御部、及び前記送信部から前記分析情報を伝達されて前記車両制御部に伝達する情報伝達部を含み、前記車両制御部は、前記分析情報を用いて前記タイヤの交換時期を判定することができる。
【0013】
本発明の実施形態において、前記制御モジュールは、前記記タイヤの交換時点又は前記タイヤの交換サービス情報を表示するディスプレイ部をさらに含み得る。
【0014】
上記のような目的を達成するための本発明の構成は、軸方向に対する前記タイヤ内部の加速度が前記タイヤ内部の各点に対して測定される第1のステップと、前記タイヤ内部の加速度信号の中から前記タイヤの半径方向である軸方向に垂直な縦方向の加速度のピーク値を用いて前記タイヤのトレッド摩耗率を推定する第2のステップと、前記タイヤのトレッド摩耗率情報を用いて前記タイヤの交換時期が判定される第3のステップと、前記タイヤの交換時期に関する情報が、前記車両のユーザー及び前記車両と連結された外部の統合制御システムに伝達される第4のステップと、を備える。
【発明の効果】
【0015】
上記のような構成による本発明の効果は、加速度センサを用いてタイヤの加速度信号を測定し、そこからタイヤの加速度のピーク値を抽出し、これについての分析でタイヤのトレッド摩耗率を推定するため、リアルタイムでタイヤの摩耗量を測定することができるというものである。
【0016】
そして、タイヤの摩耗量に対する情報を車両のユーザーだけでなく、統合制御システムとも共有してタイヤの交換に対する自動サービスが実施されるようにできるというものである。
【0017】
本発明の効果は、上記した効果に限定されるものではなく、本発明の詳細な説明又は特許請求の範囲に記載された発明の構成から推論可能なすべての効果を含むものとして理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態によるタイヤの摩耗測定装置の構成に対する概略図である。
【
図2】本発明の一実施形態によるタイヤの路面接触時の形状に対する概略図と加速度信号に対するグラフである。
【
図3】本発明の一実施形態によるタイヤのトレッド摩耗量(mm)に応じたタイヤの加速度信号のピーク値の変化を比較したグラフである。
【
図4】本発明の一実施形態によるタイヤの速度、荷重と空気圧の変化に伴うタイヤの加速度のピーク値の変化を比較したグラフである。
【
図5】本発明の一実施形態によるタイヤの速度、荷重と空気圧の変化に伴うタイヤの加速度のピーク値の変化を比較したグラフである。
【
図6】本発明の一実施形態によるタイヤの速度、荷重と空気圧の変化に伴うタイヤの加速度のピーク値の変化を比較したグラフである。
【
図7】本発明の一実施形態によるタイヤの縦方向の加速度のピーク値をカーブフィッティングした結果に対するグラフである。
【
図8】本発明の一実施形態によるタイヤの摩耗量に応じた加速度のピーク値を比較したグラフである。
【
図9】本発明の一実施形態による加速度センサから獲得された実際の信号による加速度のピーク値をカーブフィッティングした結果に対するグラフである。
【
図10】本発明の一実施形態によるタイヤトレッド摩耗による正規化された加速度のピーク値の傾向性を示したグラフである。
【
図11】本発明の一実施形態による加速度のピーク値の傾向性とタイヤの実際の摩耗量とを比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下では、添付した図面を参照して本発明を説明することにする。しかし、本発明は、いくつかの異なる形態で実施される場合があり、したがって、ここで説明する実施形態に限定されるものではない。そして図面で本発明を明確に説明するために説明と関係ない部分は省略しており、明細書全体を通して類似した部分については類似した参照符号を付した。
【0020】
明細書全体において、ある部分が他の部分と「連結(接続、接触、結合)」されているとするとき、これは「直接的に連結」されている場合だけではなく、その中間に他の部材を間に置いて、「間接的に連結」されている場合も含む。なお、ある部分があるコンポーネントを「含む」とするとき、これは特に反対される記載がない限り、他のコンポーネントを除外するのではなく、他のコンポーネントをさらに備えることができるというのを意味する。
【0021】
本明細書で使用される用語は、単に特定の実施形態を説明するために使用されたもので、本発明を限定する意図ではない。単数の表現は、文脈上明らかに別の意味を示していると定義されない限り、複数の表現を含む。本明細書では、「含む」又は「有する」などの用語は、明細書上に記載された特徴、数字、ステップ、動作、コンポーネント、部品又はこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであって、1つ以上の他の特徴、数字、ステップ、動作、コンポーネント、部品又はこれらを組み合わせたものの存在若しくは付加可能性を予め排除しないものとして理解されるべきである。
【0022】
以下、添付された図面を参照して、本発明について詳細に説明することにする。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態によるタイヤの摩耗測定装置の構成に対する概略図である。
図1に示すように、車両に設置されるタイヤの内部の加速度をタイヤ内部の各点に対して測定する信号受信部110と、信号受信部110から信号情報を伝達され、タイヤ内部の加速度信号の中からタイヤの半径方向である軸方向に垂直な縦方向の加速度のピーク値を用いてタイヤのトレッド摩耗率を推定する信号解析部120と、信号解析部120からタイヤのトレッド磨耗率に対する情報である分析情報を伝達されて送信する送信部130と、送信部130からの分析情報を伝達されてタイヤが設置された車両に対する制御信号を生成する制御モジュール200と、を備え、加速度のピーク値は、信号受信部110がタイヤと路面の接地部位に対する加速度を測定するときに、獲得され得る。
【0024】
ここで、信号受信部110、信号解析部120と送信部130の結合で1つのモジュールである計測モジュール100が形成される場合があり、このような計測モジュール100は、車両に設置された各タイヤに連結されて形成されるか、又は車両に設置されたすべてのタイヤに連結されて形成される場合もある。
【0025】
そして、制御モジュール200は、車両に対する制御を遂行する車両制御部210、及び送信部130からの分析情報を伝達されて車両制御部210に伝達する情報伝達部220を含み、 車両制御部210は、分析情報を用いてタイヤの交換時期を判定することができる。また、制御モジュール200は、タイヤの交換時点やタイヤの交換サービス情報を表示するディスプレイ部230をさらに含み得る。
【0026】
信号受信部110は、複数の加速度センサを含み、複数の加速度センサのそれぞれは、タイヤトレッドの内部の複数の各点に対する軸方向の加速度を測定することができる。そして、それぞれの加速度センサには、番号が順次に付与される場合があり、これにより、それぞれの加速度センサで測定された加速度信号は、順次に収集されてデータ化され得る。そして、分析情報を伝達された送信部130は、分析情報を制御モジュール200の情報伝達部220に無線又は有線で伝達することができ、このためには情報伝達部220は、送信部130と無線又は有線で連結される。
【0027】
車両制御部210は、車両に対する制御を遂行すると同時に、車両の外部の統合制御システムと無線連結され得る。車両制御部210には、タイヤの磨耗率に基づいて予定されたタイヤの交換時期に関する情報である交換時期の情報が事前に記憶されており、車両制御部210は、交換時期の情報とリアルタイムのタイヤ摩耗率を比較・判定してタイヤの交換のための残余時間、タイヤ交換時点などに対する情報を生成することができる。そして、車両制御部210は、タイヤの交換のための残余時間やタイヤの交換時点などに対する情報を生成し、統合制御システムは、車両制御部210から伝達された情報を用いて該当する車両に設置されたタイヤの交換時点に在庫として残っているタイヤの数量、タイヤの交換可能な修理センターなどに対するタイヤの交換サービスの情報を車両制御部210に伝達することができ、車両制御部210は、タイヤの交換サービスについての情報をディスプレイ部230に伝達してこのような情報がディスプレイ部230に表示され得る。そして、車両制御部210から生成されたタイヤの交換のための残余時間、タイヤ交換時点などに対する情報もディスプレイ部230に表示されてユーザーに伝達される。
【0028】
以下、信号解析部120が、タイヤのトレッド摩耗率を推定する数式の導出過程について説明することにする。
【0029】
図2は、本発明の一実施形態によるタイヤの路面接触時の形状に対する概略図と加速度信号に対するグラフである。具体的には、
図2において、上部の概略図が形状に変形されたタイヤを示し、下部のグラフが、タイヤの回転によって生成された加速度信号のグラフである。
図2に示すように、路面に接地されるタイヤの接地部位の両端から縦方向の加速度信号は、ピーク値を形成することができる。つまり、このような縦方向の加速度のピーク値は、タイヤと路面の接地特性、及び接地近くのタイヤの性質の特性をよく反映するといえる。
【0030】
前記のようにタイヤのトレッド内部の各点に加速度センサが形成されてタイヤの加速度信号を測定することができるが、本発明のタイヤの摩耗測定装置では、加速度のピーク値を利用するため、信号解析部120は、信号受信部110から伝達される加速度信号のうち、路面に対するタイヤの接地部位に隣接するように形成された加速度センサから伝達される加速度信号を用いたり、路面に対するタイヤの接地部位に隣接するように形成された加速度センサの中の最も大きな信号を生成する加速度センサーから伝達される加速度信号を用いたりすることができる。
【0031】
タイヤの摩耗に応じて表される2つのタイヤ状態の変化に基づいて、タイヤの磨耗率の増加に伴うタイヤの縦方向の加速度のピーク値の傾向性の変化を分析することができる。タイヤの摩耗に伴う1番目のタイヤの状態の変化は、タイヤの曲げ剛性の変化であり得る。タイヤの摩耗が増加するにつれて、タイヤのトレッド厚さが減少し、これにより、タイヤの曲げ剛性も減少することができる。このようなタイヤの摩耗によるタイヤのトレッド曲げ剛性の減少は、タイヤの接地部位(領域)でより大きなタイヤの変形を発生させることができる。
【0032】
図3は、本発明の一実施形態によるタイヤのトレッド摩耗量(mm)に応じたタイヤの加速度信号のピーク値の変化を比較したグラフである。
図3において、横軸はタイヤの回転角(rotation(deg))を示し、縦軸は縦方向の加速度(longitudinal acceleration)を示す。具体的には、
図3は、Flexible Ring(フレキシブルリング)タイヤモデルを介してタイヤの回転時に発生する加速度信号に対するグラフであり、これを利用してそれぞれのタイヤのトレッド摩耗量に応じた加速度信号のピーク値の変化を比較することができる。このとき、Flexible Ringタイヤモデルの分析は、コンピュータプログラムを用いて行われる場合があり、これに利用されるコンピュータプログラムは、プログラムは、PythonやMatlabなどを用いて数式を計算することができ、このようなコンピュータプログラムを用いたシミュレーションでFlexible Ringタイヤモデル分析が遂行され得る。なお、ANSYS、NASTRAN、ABAQUSのようなFEMプログラムを利用して数学的モデルの傾向性を検証することができる。以下、同様である。
【0033】
図3において、aグラフはタイヤのトレッド摩耗量がない場合に対するグラフであり、bグラフはタイヤのトレッド摩耗量が2mmの場合に対するグラフであり、cグラフはタイヤのトレッド摩耗量が4mmの場合に対するグラフであり、dグラフは、タイヤのトレッド摩耗量が6mmの場合に対するグラフである。
図3に示すように、タイヤの摩耗が進行されるにつれてタイヤの曲げ剛性が低下し、結果的にタイヤの接地部位で形状の変形が増加することを確認することができる。そして、これは、タイヤの接地部位の両端での曲率変化が発生することを意味することができる。
【0034】
結論としては、タイヤのトレッド摩耗が増加するほど、路面に対するタイヤの接地部位の両端で縦方向の加速度信号のピーク値が増加することができる。このようなタイヤの摩耗に伴う曲げ剛性の減少は、タイヤの接地部位でさらに大きなタイヤの変形を惹起することができ、これはタイヤの接地部位接触の両端での曲率変化が増加することを意味することができる。タイヤの摩耗が増加するほど接地部位の両端での縦方向の加速度信号、すなわち、縦方向の加速度のピーク値が増加することができる。
【0035】
なお、一方で、2番目のタイヤの状態変化でタイヤの摩耗が増加するにつれて、タイヤのトレッド質量は減少し、タイヤのトレッド剛性は増加することができる。そして、タイヤのトレッド剛性の増加に応じて、タイヤのトレッドの固有振動数が増加することができる。なお、タイヤの回転が進行される場合には、ある1つの時点で接触していた路面とタイヤとの接地部位に端は瞬間的に接触解除(release)されることがあり、このとき、タイヤのトレッドを単純な形態の質量-バネ-ダンパーシステム(mass-spring-damper system)であると仮定すると、そのシステムの固有振動数が大きくなるほど瞬間加速度が大きくなる傾向性を有しているため、タイヤのトレッド摩耗が進行されるにつれて、タイヤのトレッドの固有振動数は増加し、これにより、タイヤの接地部位の両端の縦方向の加速度信号の値は増加することができる。これは、
図3の結果から明らかになり、
図3に示すように、Flexible Ringタイヤモデルを介してタイヤの摩耗による縦方向の加速度信号のピーク(peak)値を比較した結果、タイヤの摩耗が増加するほど、タイヤの縦方向の加速度のピーク値が増加することを確認することができる。
【0036】
しかし、上記のように加速度のピーク値がタイヤの摩耗進行に応じて変化しても、縦方向の加速度のピーク値をそのままタイヤに対する摩耗の推定因子として使用するのには多くの限界がある。
【0037】
図4~
図6は、本発明の一実施形態によるタイヤの速度、荷重と空気圧の変化に伴うタイヤ加速度のピーク値の変化を比較したグラフである。
図4~
図6において、横軸はタイヤの回転角(rotation(deg))を示し、縦軸は縦方向の加速度(longitudinal acceleration)を示す。具体的には、
図4は、タイヤの速度変化に伴うタイヤ加速度のピーク値の変化を示したグラフである。
図4で、aグラフはタイヤの速度が30km/h(kph)の場合に対するグラフであり、bグラフは、タイヤの速度が65km/h(kph)の場合に対するグラフであり、cグラフはタイヤの速度が100km/h(kph)の場合に対するグラフである。
【0038】
なお、
図5は、タイヤの荷重変化によるタイヤ加速度のピーク値の変化を示したグラフである。
図5において、aグラフはタイヤの荷重が5000Nである場合に対するグラフであり、bグラフはタイヤの荷重が6000Nである場合に対するグラフであり、cグラフはタイヤの荷重が7000Nである場合に対するグラフであり、dグラフはタイヤの荷重が8000Nである場合に対するグラフである。
【0039】
そして、
図6は、タイヤの空気圧の変化に伴うタイヤ加速度のピーク値の変化を示したグラフである。
図6において、aグラフは、タイヤの荷重が1.5barである場合に対するグラフであり、bグラフは、タイヤの荷重が1.7barである場合に対するグラフであり、cグラフは、タイヤの荷重が1.9barである場合に対するグラフであり、dグラフは、タイヤの荷重が2.1barである場合に対するグラフである。
【0040】
図4~
図6に示すように、タイヤにおいて縦方向の加速度のピーク値は、タイヤの速度、荷重と空気圧に大きく影響を受けるため、加速度のピーク値に対するタイヤの摩耗の影響だけを確認するために、タイヤの速度、荷重と空気圧に対する影響度を除去する必要がある。
【0041】
これにより、Flexible Ringタイヤモデルに基づいてタイヤの縦方向の加速度のピーク値を、タイヤの速度や荷重又は空気圧の影響を排除してタイヤの摩耗による信号特性であると判定することができる。下記の数式は、タイヤの縦方向の加速度のピーク値を表現することができる。
【0042】
【0043】
【0044】
上記数式で同じ縦方向の加速度のピーク値に対して角速度(速度)に対する正規化を行うことができ、理論的にFlexible Ringタイヤモデルに基づいた縦方向の加速度は、下記数式のように表現され得る。
【0045】
【0046】
ここで、νは、タイヤの縦方向の距離ベクトル変化量であり得る。
【0047】
そして、Flexible Ringタイヤモデルでタイヤ内部に回転抵抗力による減衰効果がないと仮定すると、タイヤの縦方向の加速度は、タイヤの角速度が変わっても一定の値を有し得る。これにより、タイヤの縦方向の加速度のピーク値は、下記数式のように表現され得る。
【0048】
【0049】
ここで、それぞれの係数と文字が表す意味は、上記された数式において使用される係数と文字が表す意味と同一である。
【0050】
そして、3つの仮定を使用して、上記数式をさらに簡単に定義することができ、ここで3つの仮定(Assumption)は、下記のようになり得る。
【0051】
【0052】
【0053】
その結果、上記数式は、下記の数式のように表現することができる。
【0054】
【0055】
上記のような仮定により比較的簡単に表現されるタイヤの縦方向の加速度の数式である上記数式の検証のために、Flexible Ringタイヤモデルを用いたシミュレーションを行った。このとき、タイヤの縦方向の加速度のピーク値に対するタイヤ速度の影響は、上記数式に示すように影響図から排除され、タイヤに設置された加速度センサーによる実際の加速度信号もやはり発見される場合があるため、タイヤの速度は65km/hに固定した後、タイヤの摩耗量(wear、0~6mm)、空気圧(1.5bar~2.1bar)と荷重(5000~8000N)が変わる条件についてシミュレーションを行った。
【0056】
図7は、本発明の一実施形態によるタイヤの縦方向の加速度のピーク値をカーブフィッティングした結果に対するグラフである。
図7において、aグラフは、タイヤの摩耗量を0mmに設定してタイヤの空気圧と荷重が変化する条件に対するグラフであり、bグラフは、タイヤの摩耗量を2mmに設定してタイヤの空気圧と荷重が変わる条件のグラフであり、cグラフは、タイヤの摩耗量を4mmに設定してタイヤの空気圧と荷重が変化する条件に対するグラフであり、dグラフは、タイヤの摩耗量を6mmに設定してしタイヤの空気圧と荷重が変化する条件に対するグラフである。ここで、横軸(x軸)は、タイヤの接地部位の端部の角度(contact angle)を示し、縦軸(y軸)は、タイヤ縦方向の加速度のピーク値(peak value of longitudinal acceleration)を示す。
【0057】
最終的には、上記のようなシミュレーションを通して求められたタイヤの縦方向の加速度のピーク値を上記数式にカーブフィッティングした結果、
図7のような結果が得られる。また、すべての条件について縦方向の加速度のピーク値が良好にフィッティング(fitting)されることを確認することができる。この結果として、縦方向の加速度のピーク値の表現式である上記数式が実際の値をよく描写することがわかる。つまり、上で仮定された式である上記数式は、Flexible Ringタイヤモデルを通して実験的に検証されたことが分かる。 上記数式のような縦方向の加速度のピーク値の表現式は、実際にタイヤの加速度センサーを介して計測した縦方向の加速度のピーク値をタイヤの摩耗推定因子として加工するのに積極的に活用され得る。
【0058】
図8は、本発明の一実施形態によるタイヤの摩耗量に応じた加速度のピーク値を比較したグラフである。具体的には、
図8は、実際の実験を介して、タイヤの摩耗量に応じた縦方向の加速度のピーク値を比較したグラフである。
図8において、横軸はタイヤの回転角(rotation(deg))を示し、縦軸は縦方向の加速度(longitudinal acceleration)を示す。 Flexible Ringタイヤモデルを介して分析した摩耗によるタイヤの縦方向の加速度のピーク値の傾向性が実際のタイヤの加速度信号でも観察されるかを分析しており、さらにタイヤの縦方向の加速度のピーク値を摩耗推定因子として使用するための処理を行った。
図8に示すように、実際のデータを見ると、タイヤのトレッドの摩耗に応じて、実際のタイヤを介して測定した縦方向の加速度のピーク値がタイヤの摩耗と大きな傾向性があることがわかる。
【0059】
図8に示すように、タイヤの縦方向の加速度のピーク値はFlexible Ringタイヤモデルと同様に、タイヤの速度、荷重、又は空気圧の影響を受けることができる。したがって、このような影響を排除する過程が必要であり得る。これに必要な過程である正規化は、下記の数式に基づいて行われることがあり、タイヤの縦方向の加速度のピーク値をタイヤの角速度(Ω)、接地角(θ
r)と厚さ(h)の関数として表現することができる。つまり、前記モデルから仮定した式を介して下記数式のような式を誘導し出すことができる。
【0060】
【0061】
【0062】
上記された数式でタイヤに応じて決定される因子αの値を知っていれば、これにより、タイヤのトレッドの厚さ(h)、すなわち、タイヤの摩耗にのみ関連された関数(左辺)を抜出すことができる。そして、信号解析部120は、タイヤの速度、荷重と空気圧の影響度を排除させる正規化を通して獲得された上記数式に加速度のピーク値を代入して、タイヤのトレッドの厚さを導出することにより、タイヤのトレッド摩耗率を演算して推定することができる。具体的には、タイヤのトレッドの厚さの減少量とタイヤのトレッドの最初の厚さを比較して演算することにより、タイヤのトレッド摩耗率を演算して推定することができる。なお、タイヤに対する固有の定数値であるαに対するデータは、信号解析部120に事前に設定されて格納され得る。
【0063】
図9は、本発明の一実施形態による加速度センサから獲得された実際の信号に基づいた加速度のピーク値をカーブフィッティングした結果に対するグラフである。実際、タイヤの加速度センサによる加速度信号に基づいて、上記数式を利用してαの値を導出してみることができ、上記されたように、αの値は、タイヤの固有因子に設定されて事前に信号解析部120に格納・利用され得る。
【0064】
図10は、本発明の一実施形態によるタイヤのトレッドの摩耗による正規化された加速度のピーク値の傾向性を示したグラフであり、
図11は、本発明の一実施形態による加速度のピーク値の傾向性とタイヤの実際摩耗量とを比較したグラフである。
図10において、横軸はタイヤトレッドの実際の摩耗量(mm)を示し、縦軸は正規化された加速度のピーク値(Normalized longitudinal peak)を示すことができる。そして、
図11において、縦軸はFlexible Ringタイヤモデルを用いて演算された摩耗量(mm)を示し、横軸はタイヤのトレッドの実際の摩耗量(mm)を示すことができる。
【0065】
図10及び
図11に示すように、新たに定義されて正規化された縦方向の加速度のピーク値をいくつかの条件に適用・分析した。具体的には、タイヤの空気圧(Pressure)、荷重(Load)、スピード(Velocity)などを変更しながら、タイヤの摩耗段階別に総計12個の条件(荷重条件の3つ×空気圧条件の4つ)に対して比較分析を行った。ここで、各点は、いくつかの条件の結果を示し、実線はそれぞれの摩耗量に対する各点の平均値をつないで形成されたグラフであり得る。
【0066】
図6及び
図7の結果から分かるように、タイヤのトレッド摩耗が増加するほど、正規化された縦方向の加速度ピーク値が持続的に増加する傾向性を有することを確認することができる。
【0067】
上記した過程を介してタイヤの摩耗に伴う縦方向の加速度のピーク値を正規化し、タイヤの摩耗に伴う加速度のピーク値の傾向性を分析した。その結果、タイヤの摩耗が進行されるにつれて、正規化された縦方向の加速度ピーク値は、シミュレーションと実験の両方で値が小さくなる傾向性を示すことで確認された。
【0068】
具体的に、このような正規化された縦方向の加速度のピーク値に基づいて摩耗推定を行い、これに対する性能評価を行う場合には、正規化された縦方向の加速度のピーク値のみに基づいたタイヤの摩耗推定の結果、
図10及び
図11と同一の性能を有することを確認した。正規化された縦方向の加速度のピーク値の傾向性は、タイヤのトレッドの摩耗レベルに関係なく、ほぼ一定の傾きを示したため、どのような摩耗レベルでも類似した推定性能を示すことを確認した。
【0069】
上記のような構成によって、加速度センサーを用いてタイヤの加速度信号を測定し、そこからタイヤの加速度のピーク値を抽出し、それに対する分析でタイヤのトレッド摩耗率を推定するため、リアルタイムでタイヤの摩耗量を測定することができる。そして、タイヤの摩耗量に関する情報を車両のユーザーだけでなく、統合制御システムと共有してタイヤの交換に対する自動サービスが実施されるようにすることができる。
【0070】
以下、本発明のタイヤの摩耗装置を用いたタイヤの摩耗測定方法について説明することにする。
【0071】
第1のステップでは、軸方向に対するタイヤ内部の加速度がタイヤ内部の各点について測定され得る。そして、第2のステップでは、タイヤ内部の加速度信号のうちからタイヤの半径方向である軸方向に垂直な縦方向の加速度のピーク値を用いてタイヤのトレッド摩耗率を推定することができる。次に、第3のステップでは、タイヤのトラド摩耗率情報を用いてタイヤの交換時期が判定される。その後、第4のステップでは、タイヤの交換時期に関する情報が車両のユーザーと車両に連結された外部の統合制御システムに伝達される。
【0072】
本発明のタイヤの摩耗測定装置を用いたタイヤの摩耗測定方法に対する残りの事項は、上記された本発明のタイヤの摩耗測定装置に対する事項と同一であり得る。
【0073】
上述した本発明の説明は、例示のためのものであり、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的思想や必須の特徴を変更せず、他の具体的な形態に容易に変形可能であると理解できるはずである。したがって、以上で記述した実施形態は、すべての面で例としてのものであり、限定的ではないものとして理解しなければならない。例えば、単一形で説明されている各コンポーネントは、分散されて実施される場合もあり、同様に分散されたものとして説明されているコンポーネントも、結合された形態で実施され得る。
【0074】
本発明の範囲は、後述する特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の意味及び範囲、そしてその均等概念から導出されるすべての変更又は変形された形態が、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0075】
10:タイヤ
100:計測モジュール
110:信号受信部
120:信号解析部
130:送信部
200:制御モジュール
210:車両制御部
220:情報伝達部
230:ディスプレイ部