(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-16
(45)【発行日】2022-02-25
(54)【発明の名称】交通路設備の検測装置のセンサーユニット冷却装置及びセンサーユニット冷却方法
(51)【国際特許分類】
G01B 21/00 20060101AFI20220217BHJP
G01B 11/00 20060101ALI20220217BHJP
B61K 9/08 20060101ALI20220217BHJP
【FI】
G01B21/00 R
G01B11/00 Z
B61K9/08
(21)【出願番号】P 2020529956
(86)(22)【出願日】2018-07-13
(86)【国際出願番号】 JP2018026544
(87)【国際公開番号】W WO2020012647
(87)【国際公開日】2020-01-16
【審査請求日】2020-12-25
(73)【特許権者】
【識別番号】504007202
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテクファインシステムズ
(74)【代理人】
【識別番号】100114166
【氏名又は名称】高橋 浩三
(72)【発明者】
【氏名】荒木 正樹
(72)【発明者】
【氏名】大曽根 淳
(72)【発明者】
【氏名】神田 宏幸
(72)【発明者】
【氏名】浜岡 敬伸
(72)【発明者】
【氏名】大黒 崇弘
【審査官】眞岩 久恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-175735(JP,A)
【文献】特開2015-175611(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0155543(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第107430003(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 21/00-21/32
G01B 11/00-11/30
B61K 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交通路設備の検測装置のセンサーを含むセンサーユニットを収納する冷却ケースと、
前記センサーユニット冷却用の冷却素子と、
前記冷却ケースとの間に弾性体を有し、前記冷却ケースと前記冷却素子とを接続する接続機構と、
前記交通路設備の検測車両に設置され、前記冷却ケース、前記冷却素子、及び前記接続機構を密閉する密閉容器とを備え、
前記接続機構は、前記検測車両の走行時の振動が前記冷却ケースに伝わらない様に前記弾性体により吸収しながら、前記センサーユニットの熱を前記冷却ケースから前記冷却素子へ伝導し、
前記密閉容器は、前記冷却素子の熱を伝導して外部へ放出する
ことを特徴とする交通路設備の検測装置のセンサーユニット冷却装置。
【請求項2】
前記冷却素子は、ペルチェ素子からなる
ことを特徴とする請求項1に記載の交通路設備の検測装置のセンサーユニット冷却装置。
【請求項3】
前記冷却ケースと前記密閉容器との間に設けられた断熱材を備えた
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の交通路設備の検測装置のセンサーユニット冷却装置。
【請求項4】
前記冷却ケース及び前記接続機構は、互いに噛み合う櫛歯状の接合部を有する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の交通路設備の検測装置のセンサーユニット冷却装置。
【請求項5】
前記接続機構は、長さ方向又は幅方向の少なくとも一方に、複数の前記弾性体を有する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の交通路設備の検測装置のセンサーユニット冷却装置。
【請求項6】
前記接続機構は、前記冷却ケースとの間に、高熱伝導性で振動に対してダンパー効果を有する高粘度の高熱伝導グリスを介在させた
ことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の交通路設備の検測装置のセンサーユニット冷却装置。
【請求項7】
交通路設備の検測装置のセンサーを含むセンサーユニットを、冷却ケースに収納し、
前記冷却ケースと前記センサーユニット冷却用の冷却素子とを、前記冷却ケースとの間に弾性体を有する接続機構により接続し、
前記冷却ケース、前記冷却素子、及び前記接続機構を、密閉容器に密閉し、
前記密閉容器を、前記交通路設備の検測車両に設置し、
前記検測車両の走行時の振動が前記冷却ケース及び前記冷却素子に伝わらない様に、前記検測車両の走行時の振動を前記接続機構の前記弾性体により吸収し、
前記センサーユニットの熱を、前記冷却ケースから前記接続機構を介して前記冷却素子へ伝導し、
前記冷却素子の熱を、前記密閉容器へ伝導して、前記密閉容器から外部へ放出する
ことを特徴とする交通路設備の検測装置のセンサーユニット冷却方法。
【請求項8】
前記冷却素子として、ペルチェ素子を用いる
ことを特徴とする請求項7に記載の交通路設備の検測装置のセンサーユニット冷却方法。
【請求項9】
前記冷却ケースと前記密閉容器との間に断熱材を設ける
ことを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の交通路設備の検測装置のセンサーユニット冷却方法。
【請求項10】
前記冷却ケース及び前記接続機構に、互いに噛み合う櫛歯状の接合部を設ける
ことを特徴とする請求項7乃至請求項9のいずれか一項に記載の交通路設備の検測装置のセンサーユニット冷却方法。
【請求項11】
前記接続機構の長さ方向又は幅方向の少なくとも一方に、複数の前記弾性体を設ける
ことを特徴とする請求項7乃至請求項10のいずれか一項に記載の交通路設備の検測装置のセンサーユニット冷却方法。
【請求項12】
前記冷却ケースと前記接続機構との間に、高熱伝導性で振動に対してダンパー効果を有する高粘度の高熱伝導グリスを介在させる
ことを特徴とする請求項7乃至請求項11のいずれか一項に記載の交通路設備の検測装置のセンサーユニット冷却方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交通路設備の形状、位置等を検測する交通路設備の検測装置のセンサーユニット冷却装置及びセンサーユニット冷却方法に関する。なお、本発明において、交通路設備とは、交通機関の交通路を構成する設備をいう。
【背景技術】
【0002】
例えば、鉄道の線路には、車両が走行するレール(軌道)、給電用の架線又はサードレール(第三軌条)等の交通路設備が設けられている。鉄道の安全な運行を行うためには、これらの交通路設備の保守・点検が必要である。
【0003】
従来から、レールや架線の点検の際、レール又は架線の形状、位置等を検測する検測装置には、レーザー変位計等の2次元センサーが用いられている。例えば、軌道の形状を検測する方法として、特許文献1には、2次元センサーを用いて、軌道のプロファイルデータを取得する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
交通路設備の検測装置のセンサーを含むセンサーユニットは、検測車両の外面に取り付けられて、検測車両と共に移動する。例えば、レールの形状、位置等を検測する検測装置では、検測車両の床下の台車に、センサーユニットが設置される。そのため、センサーユニットは、検測車両の走行時に大きな振動を受け、検測車両の走行時の振動による影響を、何らかの方法で緩和する必要がある。また、センサーは、動作時に自ら熱を発生するが、検測車両の走行時の振動で大きな加速度が掛かるため、空気冷却用のファンを設置することができない。そして、センサーユニットは、検測車両の外面に取り付けられるため、線路が敷設されている周囲環境の影響を受け、例えば、中東や東南アジア等の高温地域で使用される検測装置のセンサーユニットは、50℃以上の高温の環境下で、正常に動作することが要求される。しかしながら、多くのセンサーは、その様な高温の環境下で動作するようには設計されておらず、センサーを含むセンサーユニットの冷却構造が必要となった。
【0006】
本発明の課題は、検測車両の走行時の振動を吸収でき、かつ冷却機構を備えた、交通路設備の検測装置のセンサーユニットの冷却構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の交通路設備の検測装置のセンサーユニット冷却装置は、交通路設備の検測装置のセンサーを含むセンサーユニットを収納する冷却ケースと、センサーユニット冷却用の冷却素子と、冷却ケースとの間に弾性体を有し、冷却ケースと冷却素子とを接続する接続機構と、交通路設備の検測車両に設置され、冷却ケース、冷却素子、及び接続機構を密閉する密閉容器とを備え、接続機構が、検測車両の走行時の振動が冷却ケースに伝わらない様に弾性体により吸収しながら、センサーユニットの熱を冷却ケースから冷却素子へ伝導し、密閉容器が、冷却素子の熱を伝導して外部へ放出することを特徴とする。
【0008】
また、本発明の交通路設備の検測装置のセンサーユニット冷却方法は、交通路設備の検測装置のセンサーを含むセンサーユニットを、冷却ケースに収納し、冷却ケースとセンサーユニット冷却用の冷却素子とを、冷却ケースとの間に弾性体を有する接続機構により接続し、冷却ケース、冷却素子、及び接続機構を、密閉容器に密閉し、密閉容器を、交通路設備の検測車両に設置し、検測車両の走行時の振動が冷却ケース及び冷却素子に伝わらない様に、検測車両の走行時の振動を接続機構の弾性体により吸収し、センサーユニットの熱を、冷却ケースから接続機構を介して冷却素子へ伝導し、冷却素子の熱を、密閉容器へ伝導して、密閉容器から外部へ放出することを特徴とする。
【0009】
冷却ケースとセンサーユニット冷却用の冷却素子とを、冷却ケースとの間に弾性体を有する接続機構により接続するので、検測車両の走行時の振動が、接続機構の弾性体により吸収される。そして、センサーユニットの熱を、冷却ケースから接続機構を介して冷却素子へ伝導し、冷却素子の熱を、密閉容器へ伝導して、密閉容器から外部へ放出するので、検測車両の走行時の振動を吸収でき、かつ冷却機構を備えた、センサーユニットの冷却構造が提供される。
【0010】
さらに、本発明の交通路設備の検測装置のセンサーユニット冷却装置は、冷却素子が、ペルチェ素子からなることを特徴とする。また、本発明の交通路設備の検測装置のセンサーユニット冷却方法は、冷却素子として、ペルチェ素子を用いることを特徴とする。冷却素子として、ペルチェ素子を用いることにより、装置を小型化することができる。ペルチェ素子の熱膨張による歪みや寸法のバラつきは、接続機構の弾性体で吸収される。
【0011】
さらに、本発明の交通路設備の検測装置のセンサーユニット冷却装置は、冷却ケースと密閉容器との間に設けられた断熱材を備えたことを特徴とする。また、本発明の交通路設備の検測装置のセンサーユニット冷却方法は、冷却ケースと密閉容器との間に断熱材を設けることを特徴とする。冷却素子は、センサーユニットから発生した発熱量を、冷却ケースを介して密閉容器に移動させると共に、冷却素子自身の動作で発生する熱量も加わり、これら総熱量を密閉容器から外部に放出する役目を果たすので、その際、密閉容器の温度は冷却ケースより高くなる。そこで、冷却ケースと密閉容器との間に断熱材をはさみ込むことにより、断熱材は、密閉容器に伝わった熱が冷却ケースに逆戻りすることを防ぐことができ、さらに断熱材は、緩衝材又は制振材としての役割も果たし、耐振性を向上させる。
【0012】
さらに、本発明の交通路設備の検測装置のセンサーユニット冷却装置は、冷却ケース及び接続機構が、互いに噛み合う櫛歯状の接合部を有することを特徴とする。また、本発明の交通路設備の検測装置のセンサーユニット冷却方法は、冷却ケース及び接続機構に、互いに噛み合う櫛歯状の接合部を設けることを特徴とする。櫛歯状の接合部を設けることにより、冷却ケースと接続機構との接触面積が大きくなり、冷却ケースから接続機構への熱の伝導が促進される。さらに、噛み合う櫛歯状の接合部には、高熱伝導性で振動に対してダンパー効果を有する高粘度の高熱伝導グリスを介在させ、振動抑制効果と高熱伝導性効果を共に向上させる。
【0013】
さらに、本発明の交通路設備の検測装置のセンサーユニット冷却装置は、接続機構が、長さ方向又は幅方向の少なくとも一方に、複数の弾性体を有することを特徴とする。また、本発明の交通路設備の検測装置のセンサーユニット冷却方法は、接続機構の長さ方向又は幅方向の少なくとも一方に、複数の弾性体を設けることを特徴とする。長さ方向又は幅方向に複数設けた弾性体により、検測車両の走行時の振動や、冷却素子の熱膨張による歪みや寸法のばらつき、及び、密閉容器、冷却素子、接続機構の寸法公差による接合部間の隙間の寸法変動が、バランス良く吸収される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、検測車両の走行時の振動を吸収でき、かつ冷却機構を備えた、交通路設備の検測装置のセンサーユニットの冷却構造を提供することができる。
【0015】
さらに、冷却素子として、ペルチェ素子を用いることにより、装置を小型化することができる。また、ペルチェ素子の熱膨張による歪みや寸法のバラつきを、接続機構の弾性体で吸収することができる。
【0016】
さらに、冷却ケースと密閉容器との間に断熱材を設けることにより、冷却素子によってセンサーユニットから発生した熱を、冷却ケースを介して密閉容器に移動させる際、断熱材は、密閉容器から冷却ケースに熱が逆戻りすることを極力小さくすることができる。
【0017】
さらに、冷却ケース及び接続機構に、互いに噛み合う櫛歯状の接合部を設けることにより、冷却ケースと接続機構との接触面積を大きくして、冷却ケースから接続機構への熱の伝導を促進させることができる。また、断熱材が緩衝材又は制振材としての役割も果たし、耐振性を向上させることができる。
【0018】
さらに、接続機構の長さ方向又は幅方向の少なくとも一方に、複数の弾性体を設けることにより、検測車両の走行時の振動や、冷却素子の熱膨張による歪みや寸法のばらつき、及び、密閉容器、冷却素子、接続機構の寸法公差による接合部間の隙間の寸法変動を、バランス良く吸収することができる。
【0019】
さらに、冷却ケースと接続機構との間に、高熱伝導性で振動に対してダンパー効果を有する高粘度の高熱伝導グリスを介在させることにより、振動抑制効果と高熱伝導性効果を共に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施の形態による交通路設備の検測装置の概略構成を示す図である。
【
図2】センサーユニットの動作を説明する図である。
【
図4】本発明の一実施の形態によるセンサーユニット冷却装置を示す一部断面側面図である。
【
図5】本発明の一実施の形態による接続機構の斜視図である。
【
図6】本発明の他の実施の形態によるセンサーユニット冷却装置を示す一部断面側面図である。
【
図7】本発明の他の実施の形態による接続機構の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[検測装置の構成]
図1は、本発明の一実施の形態による交通路設備の検測装置の概略構成を示す図である。本実施の形態は、鉄道の線路に敷設された給電用のサードレールの形状、位置等を検測する検測装置の例を示している。検測装置100は、センサーユニット10、制御装置20、距離パルス発生器23、及び処理装置30を含んで構成されている。センサーユニット10は、検測車両の床下に設置されている。制御装置20、距離パルス発生器23、及び処理装置30は、検測車両に搭載されている。
【0022】
センサーユニット10は、レーザー光源11、シリンドリカルレンズ12、集光レンズ13、及びセンサー14を含んで構成されている。レーザー光源11は、例えばレーザーダイオード等からなり、レーザービームを発生する。レーザー光源11から発生したレーザービームは、シリンドリカルレンズ12により拡散されて、センサーユニット10から照射される。
【0023】
図2は、センサーユニットの動作を説明する図である。地下鉄の線路等では、枕木1上に敷設されたレール2の一方の脇に、給電用のサードレール3が、所定の高さに敷設されている。検測車両5及び営業車両の床下の台車の側面には、図示しない集電用のコレクターシュー(集電靴)が取り付けられており、コレクターシューが通電されたサードレール3に接触することによって、検測車両5及び営業車両への電気の供給が行われる。サードレール3の近傍には、カバー4が、サードレール3に近接して設置されている。センサーユニット10は、センサーユニット冷却装置40に収納されて、検測車両5の床下の台車に設置されている。センサーユニット10から照射されたレーザー光は、サードレール3へ照射される。そして、照射されたレーザー光がサードレール3により散乱されて、散乱光が発生する。
【0024】
図1において、サードレールにより散乱されたレーザー光は、集光レンズ13で集光されて、センサー14の受光面で受光される。センサー14は、例えばCCDラインセンサー等からなり、受光した散乱光の強度に応じた画像信号を出力する。
【0025】
図3は、サードレールの一例を示す図である。サードレール3の本体は、例えば、アルミニウム等の電気伝導性の良い金属からなる。サードレール3の上部又は下部の、コレクターシューが接触する接触面には、ステンレス鋼からなる保護板3a,3bが取り付けられており、接触面の摩耗が防止されている。
【0026】
図1において、制御装置20は、制御回路21及びメモリ22を含んで構成されている。距離パルス発生器23は、検測車両が所定の距離を走行する度に、検測車両の走行方向の位置情報を示す距離パルスを発生する。制御回路21は、センサー14から出力された画像信号を、距離パルス発生器23から発生された距離パルスと共に収集して、メモリ22に記憶する。
【0027】
処理装置30は、例えばパーソナルコンピュータ(PC)等からなり、CPU31、メモリ32、及び演算回路33を含んで構成されている。メモリ32には、制御装置20のメモリ22に記憶された距離パルス及び画像信号が転送される。CPU31は、メモリ32に記憶された距離パルスから、メモリ32に記憶された画像信号が、検測車両の走行方向のどの位置のものであるかを判別し、各画像信号をその位置のプロファイルデータとしてメモリ32に記憶する。演算回路33は、CPU31の制御により、メモリ32に記憶されたプロファイルデータに対し、所定の処理を行って、サードレール3の形状、位置等を検測する。
【0028】
[センサーユニット冷却装置の構成]
(第1の実施の形態)
図4は、本発明の一実施の形態によるセンサーユニット冷却装置を示す一部断面側面図である。センサーユニット冷却装置40は、密閉容器41、透明窓42、冷却ケース43、冷却素子44、接続機構45、絶縁体47、及び断熱材48を含んで構成されている。密閉容器41は、外形がほぼ直方体の箱状であり、例えば、アルミニウム等の熱伝導率の高い材料で構成されている。密閉容器41の一面には、開口が設けられており、開口には、ガラスやプラスチック等からなる透明窓42が取り付けられている。センサーユニット10からのレーザー光は、透明窓42を透過して、サードレール3へ照射され、サードレール3からの散乱光は、透明窓42を透過して、センサーユニット10のセンサー14で受光される。
【0029】
センサーユニット10は、冷却ケース43に収納されている。冷却ケース43は、例えば、アルミニウム等の熱伝導率の高い材料で構成されて、絶縁体47に対して若干の隙間をもって設置され、冷却ケース43の下面には、櫛歯状の接合部43aが設けられている。
【0030】
一方、密閉容器41の内部の底面には、冷却素子44が取り付けられている。冷却素子44は、例えばペルチェ素子からなり、図示しない電源から電流が供給される。冷却素子44の上面には、例えばアルミニウム等の熱伝導率の高い材料で構成された、接続機構45が取り付けられている。接続機構45の上面には、櫛歯状の接合部45aが設けられている。冷却ケース43の接合部43aと接続機構45の接合部45aとを噛み合わせることにより、センサーユニット10内で発生した熱が、冷却ケース43及び接続機構45を介して、冷却素子44へ伝導される。そして、冷却素子44の熱は、密閉容器41へ伝導されて、密閉容器41から外部へ放出される。なお、冷却ケース43の接合部43aと、接続機構45の接合部45aとの隙間には、高熱伝導性と高粘度を有する高熱伝導グリスが充填されることにより、耐振性を高めるダンパー効果を持たせ、また伝熱性能を高めることができる。
【0031】
接続機構45には、冷却ケース43との間に、弾性体46が設けられている。弾性体46は、例えばコイルバネ等からなる。
図5は、本発明の一実施の形態による接続機構の斜視図である。本実施の形態では、接続機構45の接合部45aの櫛歯の一部が取り除かれており、冷却ケース43の接合部43aの櫛歯の一部も、同様に取り除かれている。そして、櫛歯の一部を取り除いた空間に、弾性体46が取り付けられている。
図5に示した実施の形態の接続機構45は、
図5の図面斜め方向(
図4の図面奥行方向)の寸法と、図面横方向の寸法とが、ほぼ同じ寸法となっており、
図5の図面の中央に1個の弾性体46が設置されている。
【0032】
図4において、中央に設置された1個の弾性体46、及び断熱材48は、検測車両5の走行時の振動や、冷却素子44の熱膨張による歪みや寸法のばらつき、及び、密閉容器41、冷却素子44、接続機構45の寸法公差による接合部43aと45a間の隙間の寸法変動をバランス良く吸収し、検測車両5の台車に設置された密閉容器41が大きく振動しても、接続機構45の弾性体46、及び断熱材48により、冷却ユニットを収納する冷却ケース43、及び冷却素子44には走行時の大きな振動が伝わらず、冷却ケース43、及び冷却素子44を振動から保護することができ、かつ、熱を伝導することができる。
【0033】
冷却素子44の周囲には、絶縁体47により壁が構成されている。絶縁体47は、例えば、ベークライト等からなる。密閉容器41内において、冷却ケース43と密閉容器41との間には、断熱材48が充填されている。断熱材48は、例えば、ウレタン等からなる。冷却素子44の熱を、密閉容器41へ伝導して、密閉容器41から外部へ放出する際、冷却ケース43と密閉容器41との間に設けた断熱材48により、冷却素子44の熱が、密閉容器41から冷却ケース43へ伝導するのが防止される。
【0034】
(第1の実施の形態の効果)
以上説明した第1の実施の形態によれば、次の効果を奏する。
(1)検測装置100のセンサー14を含むセンサーユニット10を、冷却ケース43に収納し、冷却ケース43とセンサーユニット冷却用の冷却素子44とを、冷却ケース43との間に弾性体46を有する接続機構45により接続し、冷却ケース43、冷却素子44、及び接続機構45を、密閉容器41に密閉し、密閉容器41を、検測車両5に設置し、検測車両5の走行時の振動を、接続機構45の弾性体46により吸収しながら、センサーユニット10の熱を、冷却ケース43から接続機構45を介して冷却素子44へ伝導し、冷却素子44の熱を、密閉容器41へ伝導して、密閉容器41から外部へ放出することにより、検測車両5の走行時の振動を吸収でき、かつ冷却機構を備えた、交通路設備の検測装置100のセンサーユニット10の冷却構造を提供することができる。
【0035】
(2)さらに、冷却素子44として、ペルチェ素子を用いることにより、装置を小型化することができる。また、ペルチェ素子の熱膨張による歪みや寸法のバラつきを、接続機構45の弾性体46で吸収することができる。
【0036】
(3)さらに、冷却ケース43と密閉容器41との間に断熱材48を設けることにより、冷却素子44の熱が、密閉容器41へ伝導して、密閉容器41から外部へ放出する際、密閉容器41から冷却ケース43へ伝導するのを防止することができる。
【0037】
(4)さらに、冷却ケース43及び接続機構45に、互いに噛み合う櫛歯状の接合部43a,45aを設けることにより、冷却ケース43と接続機構45との接触面積を大きくして、冷却ケース43から接続機構45への熱の伝導を促進させることができる。
【0038】
(5)さらに、冷却ケース43と接続機構45との間に、高熱伝導性で振動に対してダンパー効果を有する高粘度の高熱伝導グリスを介在させることにより、振動抑制効果と高熱伝導性効果を共に向上させることができる。
【0039】
(第2の実施の形態)
図6は、本発明の他の実施の形態によるセンサーユニット冷却装置を示す一部断面側面図である。また、
図7は、本発明の他の実施の形態による接続機構の斜視図である。
図7に示した実施の形態の接続機構45は、冷却素子44の寸法が
図6の図面奥行方向に大きい場合のもので、
図7の図面斜め方向(
図6の図面奥行方向)の寸法が、図面横方向より大きいので、接続機構45の接合部45aの櫛歯の底面に、複数の弾性体46が取り付けられている。なお、弾性体46の数は、
図7の例に限るものではない。また、接続機構45の接合部45aの櫛歯の上面に、複数の弾性体46を取り付けてもよい。弾性体46は、
図7の図面斜め方向(
図6の図面奥行方向)に複数設けられており、これにより、検測車両5の走行時の振動や、冷却素子44の熱膨張による歪みや寸法のばらつき、及び、密閉容器41、冷却素子44、接続機構45の寸法公差による接合部43aと45a間の隙間の寸法変動が、バランス良く吸収される。
【0040】
なお、冷却素子44の寸法が、
図6の図面奥行方向と比べて横方向に大きい場合には、接続機構45は、
図7の図面横方向の寸法を大きくして、複数の弾性体46を
図7の図面横方向に設置してもよい。
【0041】
(第2の実施の形態の効果)
以上説明した第2の実施の形態によれば、上述した第1の実施の形態の(1)~(5)の効果を奏すると共に、次の効果を奏する。
【0042】
(6)接続機構45の長さ方向又は幅方向の少なくとも一方に、複数の弾性体46を設けることにより、検測車両5の走行時の振動や、冷却素子44の熱膨張による歪みや寸法のばらつき、及び、密閉容器41、冷却素子44、接続機構45の寸法公差による接合部43aと45a間の隙間の寸法変動を、バランス良く吸収することができる。
【0043】
なお、本発明で用いる接続機構の弾性体は、コイルバネに限らず、弾性を有し、振動を吸収できるものであればよい。
【0044】
本発明は、鉄道の線路のレール(軌道)の形状、位置等を検測する検測装置や、振動及び高温が問題となる他の各種の交通路設備の検測装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 枕木
2 レール
3 サードレール
3a,3b 保護板
4 カバー
5 検測車両
10 センサーユニット
11 レーザー光源
12 シリンドリカルレンズ
13 集光レンズ
14 センサー
20 制御装置
21 制御回路
22 メモリ
23 距離パルス発生器
30 処理装置
31 CPU
32 メモリ
33 演算回路
40 センサーユニット冷却装置
41 密閉容器
42 透明窓
43 冷却ケース
43a,45a 接合部
44 冷却素子
45 接続機構
46 弾性体
47 絶縁体
48 断熱材
100 検測装置