(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-16
(45)【発行日】2022-02-25
(54)【発明の名称】圧力感知層及び圧力感知層を含むデバイス
(51)【国際特許分類】
G01L 1/14 20060101AFI20220217BHJP
C08J 9/28 20060101ALI20220217BHJP
A61B 5/021 20060101ALI20220217BHJP
【FI】
G01L1/14 K
C08J9/28 101
C08J9/28 CFH
A61B5/021
(21)【出願番号】P 2020536619
(86)(22)【出願日】2018-04-18
(86)【国際出願番号】 EP2018059957
(87)【国際公開番号】W WO2019129391
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2021-04-16
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2018/050002
(32)【優先日】2018-01-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2018/050003
(32)【優先日】2018-01-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508079739
【氏名又は名称】ローディア オペレーションズ
(73)【特許権者】
【識別番号】516147534
【氏名又は名称】エコール シューペリュール ドゥ フィジック エ ドゥ シミ アンデュストリエル ドゥ ラ ヴィユ ドゥ パリ
【氏名又は名称原語表記】Ecole Superieure de Physique et de Chimie Industrielles de la Ville de Paris
【住所又は居所原語表記】10 rue Vauquelin, F-75005 Paris FRANCE
(73)【特許権者】
【識別番号】509016944
【氏名又は名称】セントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック(シー.エヌ.アール.エス.)
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】タウバーン, マチュー
(72)【発明者】
【氏名】プリュボ, ミキャエル
(72)【発明者】
【氏名】コリン, アニー
(72)【発明者】
【氏名】プーラン, フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】トルイエ-フォンティ, リーズ
(72)【発明者】
【氏名】サンソー, オリヴィエ
【審査官】森 雅之
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106633891(CN,A)
【文献】特許第6049898(JP,B2)
【文献】特開平5-325647(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0235781(US,A1)
【文献】特表2019-515722(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 1/14
C08J 9/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)シロキサンポリマーを含み、
且つ閉鎖細孔体積分率を含
む、多孔質マトリックス材料の第1の層、及び、
b)前記多孔質マトリックス材料の第1の層a)の前記閉鎖細孔体積分率中
に存在する導電性又は半導電性フィラー、を含み、
c)1つ以上の追加の層を含んでいてもよいフィルムを含む、圧力感知層。
【請求項2】
第1の層が開放細孔体積分率を含むか、又は閉鎖細孔体
積が全細孔体
積の100%をなす、請求項1に記載の圧力感知層。
【請求項3】
フィラーの量が、a)及びb)の全重量に基づいて、0.1~15重量%の範囲にある、請求項1又は2に記載の圧力感知層。
【請求項4】
シロキサンポリマーはポリジメチルシロキサン(PDMS)である、請求項1~3のいずれか一項に記載の圧力感知層。
【請求項5】
導電性又は半導電性フィラーは、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、グラファイト、グラフェン、及びカーボンブラックから選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の圧力感知層。
【請求項6】
導電性又は半導電性フィラーは、銅、銀、金、及び亜鉛
粒子からなる群から選択される金属粒子から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の圧力感知層。
【請求項7】
導電性又は半導電性フィラーは、固有導電性ポリマー(ICP)から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の圧力感知層。
【請求項8】
半導電性フィラーは、Si、Si-Ge、GaAs、InP、GaN、SiC、ZnS、ZnSe、CdSe、及びCdSからなる群から、又は金属酸化物粒子から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の圧力感知層。
【請求項9】
絶縁層である第2の
層を備
え、第2の層が第1の層に隣接する、請求項1~
8のいずれか一項に記載の圧力感知層。
【請求項10】
請求項1~
9のいずれか一項に記載の圧力感知層でコーティングされた基材。
【請求項11】
少なくとも1つの電極と、請求項1~
9のいずれか一項に記載の
少なくとも1つの圧力感知
層とを含む、圧力感知デバイス。
【請求項12】
圧力変動に応答して信号を提供する請求項
11に記載の圧力感知デバイスであって、圧力変動は脈波事象である、圧力感知デバイス。
【請求項13】
a)圧力変動に応答して静電容量変化信号を提供する、少なくとも1つの、請求項1~
9のいずれか一項に記載の圧力感知層又は請求項
11若しくは
12に記載の圧力感知デバイス、
b)電源、
c
)圧力感知層によって提供される静電容量変化信号をアナログ又はデジタル電気信号に変換することが可能な少なくとも1つの信号変換ユニット、
d)信号変換ユニットc)によって提供されるアナログ信号をデジタル化すること、及び/又は少なくとも1つの信号変換ユニットc)とデジタル的に通信することが可能な少なくとも1つのマイクロコントローラユニットであって、少なくとも1つの信号変換ユニットc)から得た信号を、少なくとも1つの制御ユニット内に格納され
たアルゴリズムを用いて、読み取り可能なコードとして他のフォーマットに変換することが可能な、少なくとも1つのマイクロコントローラユニット、を備え、
且つ、
e)マイクロコントローラユニットによって提供されたデータをデータ受信デバイスに伝送するための少なくとも1つのデータ伝送手段、及び/又は、
f)マイクロコントローラユニットd)、若しくは少なくとも1つのデータ伝送手段e)によって提供されたデータをユーザに通信する手段、を備えていてもよい、圧力感知モニタ。
【請求項14】
ウェアラブルデバイスである、請求項
13に記載の圧力感知モニタ。
【請求項15】
a)シロキサンポリマーを含み、
且つ閉鎖細孔体積分率を含
む、多孔質マトリックス材料、及び、
b)前記多孔質マトリックス材料a)の前記閉鎖細孔体積分率中
に存在する導電性又は半導電性フィラー、を含む、複合材料。
【請求項16】
多孔質マトリックス材料が開放細孔体積分率を含むか、又は閉鎖細孔体
積が全細孔体
積の100%をなす、請求項
15に記載の複合材料。
【請求項17】
フィラーの量が、複合材の全重量に基づいて、0.1~15重量%の範囲にある、請求項
15又は
16に記載の複合材料。
【請求項18】
シロキサンポリマーはポリジメチルシロキサン(PDMS)である、請求項
15~
17のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項19】
導電性又は半導電性フィラーは、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、グラファイト、グラフェン、カーボンブラックから、銅、銀、金、及び亜鉛
粒子からなる群から選択される金属粒子から、固有導電性ポリマー(ICP)から、Si、Si-Ge、GaAs、InP、GaN、SiC、ZnS、ZnSe、CdSe、及びCdSからなる群から、若しくは金属酸化物粒子から選択される、請求項
15~
18のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項20】
請求項
15~
19のいずれか一項に記載の複合材料を含むフィルム。
【請求項21】
請求項
20に記載のフィルムの第1の層と、第1の層に隣接する絶縁層である第2の層とを備える、多層システム。
【請求項22】
圧力感知デバイスにおける、請求項
15~
19のいずれか一項に記載の複合材料の使用、又は請求項
20に記載のフィルムの使用、又は請求項
21に記載の多層システムの使用。
【請求項23】
圧力感知デバイスは血圧感知デバイスである、請求項
22に記載の使用。
【請求項24】
請求項
15~
19のいずれか一項に記載の複合材料の製造のための
方法であって、以下のステップ、
a)シロキサンポリマー前駆体、及び硬化剤を含
む第1の非水相を準備するステップ、
b)水に分散させた導電性又は半導電性フィラーを含む第2の水相を準備するステップ、
c)撹拌下で、水相b)を非水相a)に添加してエマルジョンを調製するステップ、
d)ステップc)で得られた生成物を網状化するステップ、及び最後に、
e)ステップd)で得られた生成物を熱処理して水を除去するステップ、を含む
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合材料を含む圧力感知層に関し、複合材料は、閉鎖細孔体積分率を有する多孔質シロキサンポリマーマトリックス、及びマトリックスの前記閉鎖細孔体積分率中に実質的に存在する導電性又は半導電性フィラー(以下、合わせて導電性フィラーと称する)を含み、並びに上記圧力感知層を含むデバイスに関する。
【0002】
圧力センサは、様々な異なる用途に対する可能性ゆえに、近年大きな注目を集めている。特に、低圧領域で高感度を有する圧力センサに対する需要は非常に高く、そのようなシステムは、とりわけヘルスケア及び医療診断システム、並びに電子システム、特にいわゆるイースキン(e-skin)システムに必要である。
【0003】
圧力感知デバイスは、感知に使用されるパラメータに依存して、典型的には3つの種類に分類される。ピエゾ抵抗デバイスは、外部圧力の印加による導電率の変化を使用する。ピエゾ電気デバイスは、ピエゾ電気効果、すなわち、圧力の印加による材料中での電荷発生を使用している。ピエゾ電気デバイスの感度は、その効果の起点にあるピエゾ電気物質の物理的特性によって制限される。一方、ピエゾ容量センサは、圧力の印加に反応して発生する静電容量の変化を利用し、その感度は理論的に制限されていない。静電容量の変化は、コンデンサを形成するシステムの2つの電極の距離が、圧力の印加に反応して変化した結果であるか、又は2つの電極の間に挟まれた誘電体材料の等価比誘電率(equivalent relative permittivity)(誘電定数(dielectric constant))が圧力の印加により変更されることに起因する場合がある。
【0004】
ピエゾ抵抗デバイスと比較して、ピエゾ容量センサは、低い電力消費及び良好な再現性などのいくつかの利点を提供する。ピエゾ電気デバイスと比較して、ピエゾ容量センサは加工処理が容易であり、様々な形状に成形することが容易である。その上、ピエゾ容量性センサはポーリング又は延伸を必要としない。
【0005】
静電容量変化の大きさは、比誘電率(誘電定数)の変化、及び/又は誘電体層の厚さの変化、及び/又は電極の表面積の変化によって決定される。
【0006】
そのようなデバイスでは、特に低圧力範囲での感度を向上させるために、マイクロ又はナノ構造が提案されている。しかし、これには一般に、複雑で高価な作製工程が必要である。
【0007】
B.Y.Lee et al,Sensors and Actuators A 240(2016),103~109は、微細孔を有する誘電体エラストマーフィルムに基づく低コストの圧力センサについて記載している。多孔質フィルムは、シロキサンエラストマー材料と水滴とを使用し、いかなる添加剤もなしで調製される。ベース材料としてポリジメチルシロキサンが使用され、分散物質として水滴が選択される。硬化剤と混合されたPDMSプレポリマーの溶液と、水とが容器内で撹拌される。水が不溶性であることに起因して、撹拌工程により、水の微小液滴がPDMS溶液に均一に分散される。このようにして得られた溶液を2枚のガラス基材の間に置き、その後、溶液を硬化させた。硬化中に水が蒸発し、最初は水が存在していた微細孔を有する、重合した多孔質PDMSフィルムが得られる。約100μmの厚さを有するこのフィルムは、静電容量性の圧力センサの誘電体層を形成する。
【0008】
A.J.Gallant,Procedia Chemistry 1(2009),568-571、は多孔質PDMS力感知抵抗器に関する。エラストマーの力感知抵抗器は、カーボンブラックを充填したPDMSの多孔質マトリックスから作製されている。PDMSマトリックスはスポンジの形をしており、糖足場(sugar scaffold)を使用して得られる。PDMS前駆体を入れた皿に砂糖キューブを置き、1時間放置してPDMSで飽和させた。次いで、キューブを硬化させ、余分なPDMSを除去し、蒸留水を入れたビーカーにキューブを入れて砂糖を溶解した。このようにして得られた構造は、砂糖キューブの逆転マトリックスであり、空洞がランダムな構成で分布し方向付けられている。カーボンブラック粒子を導入するために、カーボンブラックの水中懸濁液を、水飽和したスポンジに滴状添加し、それにより、スポンジの開放細孔体積分率中に高濃度の炭素を構築する。いったん充填されると、乾燥するまでスポンジを放置し、その上にPDMSの薄層をコーティングし硬化して炭素をスポンジ内部に封止する。スポンジ内では、細孔壁は炭素で裏打ちされている。圧力を印加すると、カーボンブラックで裏打ちされた細孔壁が接触し、それにより炭素-炭素結合の数が増加し、細孔が導電性になる。
【0009】
S.J.A.Majerus,“Flexible,structured MWCNT/PDMS sensors for chronic vascular access monitoring”,IEEE Sensors Book Series:IEEE sensors,published 2016-Conference 15th IEE Sensors conference Orlando,FL Oct.30-Nov.03,2016は、内部多孔質構造を有するPDMSを印刷するための、いわゆる付加製造法を適用することにより得られる、ピエゾ抵抗性の可撓性脈動センサに関する。細孔は、約1mmの平均細孔サイズを有すると報告されている。導電性センサを得るために、製造工程中に多層カーボンナノチューブが追加される。抵抗率は非線形であると言われ、ヒステリシスが観察された。どちらも望ましくない効果である。
【0010】
国際公開第2017/172978号は、とりわけ、センサ回路を備えるトランスデューサ回路であって、センサ回路は電極を含み、トランスデューサ回路は静電容量の変化を電気信号に変換するように構成及び配置され、静電容量の変化は、血流力学的或いは脈波事象に起因する圧力及び/又は電界変調に対する反応である、トランスデューサ回路と、トランスデューサ回路からの電気信号を介して、血流力学的又は脈波事象を感知するように構成並びに配置された電気信号感知回路と、を備えるウェアラブル機器について開示している。
【0011】
Bao et al,Nature Materials 2010,Vol.9 pp.859-864は、微細構造化ゴム誘電体層を有する高感度の可撓性圧力センサについて記載している。
【0012】
Bao et.Al,Adv.Mater.2015,27(4),634-640は、パルス信号増幅用のマイクロヘアリーセンサについて記載しているが、製造は複雑で高価である。
【0013】
Park et al.,ACS Appl.Mater.Interfaces 2016,8(26),16922-31は、圧力感知が可能な3次元(3-D)微多孔質誘電体エラストマーの巨大ピエゾ容量効果に基づく可撓性でウェアラブルな圧力センサについて報告している。エラストマー誘電体層中に微細孔が存在することに起因して、ピエゾ容量圧力センサは非常に小さな圧力であっても非常に変形可能であり、感度の向上につながっている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明による圧力感知デバイスで使用され得る互いに組み合わされた電極の例の図を示す。
【
図2】本発明による圧力感知デバイスの例を示し、上から下に以下の構成要素を示す:封止材(25)、上部電極(24)、圧力感知層(23)、下部電極(22)、及び保護層(21)。
【
図3】本発明による圧力感知デバイスの例を示し、上から下に以下の構成要素を示す:封止材(35)、上部電極(34)、圧力感知層(33)、下部電極(32)、及び保護層(31)であり、上部電極(34)はパターン形成されている。
【
図4-7】ウェアラブルデバイスの形態の本発明による圧力感知モニタの実施形態のブロック図を示し、それぞれのモニタの構成要素を示す。
【0015】
本発明の目的は、高い感度及び良好な再現性を提供する、圧力感知層と、圧力感知層を含むデバイスとを提供することである。
【0016】
この目的は、請求項1に記載の圧力感知層により実現される。本発明の好ましい実施形態が、従属クレーム及び以下の詳細な説明に示される。
【0017】
本発明の更なる目的は、請求項1に記載の圧力感知層を備えるデバイスである。
【0018】
本発明による圧力感知層によって測定される静電容量の変化を生成する圧力は特に制限されず、通常は10Pa~1MPaの範囲にある。本発明による圧力感知層は、好ましくは、低圧感知層である。本明細書で使用される場合、「低圧」という用語は、0.01~100kPaの範囲、好ましくは0.05~20kPaの範囲、より好ましくは0.1~10kPaの範囲、更により好ましくは0.1~1kPaの範囲の圧力に関する。
【0019】
本発明による圧力感知層は、以下を含むフィルムを含む。
a)シロキサンポリマーを含み、閉鎖細孔体積分率と、任意選択で開放細孔体積分率とを含む、多孔質マトリックス材料、及び、
b)前記多孔質マトリックス材料a)の前記閉鎖細孔体積分率中に実質的に存在する導電性又は半導電性フィラー、及び任意選択で、
c)1つ以上の追加の層。
【0020】
多孔質材料は一般に、その細孔率によって特徴付けられる。細孔率又は空隙率は、材料中の空隙(すなわち「空」)の空間の測定値であり、総体積に対する空隙の体積の比率であり、0~1の間、又は百分率として0%~100%の間になる。
【0021】
見かけの細孔率又は開放細孔率(oPo)は細孔率の比率であり、材料の総体積に対する、液体又はガスが浸透して入ることができる開放細孔の体積の百分率である。
【0022】
固相中に閉じ込められた相互接続されていない間隙は、開放細孔体積分率の一部ではなく、それらは閉鎖細孔体積分率の一部である。この比率には、材料中の任意の種類の閉鎖細孔も含まれる。
【0023】
開放細孔率と閉鎖細孔率を合計すると、材料の総細孔率になる。
【0024】
本発明による圧力感知層中の多孔質マトリックス材料は、導電性又は半導電性フィラーのかなりの部分が存在する閉鎖細孔体積分率を含む。
【0025】
本発明の好ましい実施形態によれば、閉鎖細孔体積分率は、材料の開放細孔体積分率以上であることが好ましい。すなわち、閉鎖細孔体積分率を形成する細孔の体積は、好ましくは、開放細孔体積分率を形成する細孔の体積に少なくとも等しい又はそれよりも大きい(したがって、両方の細孔体積分率の比は、好ましくは少なくとも1である)。
【0026】
特に好ましい実施形態によれば、閉鎖細孔体積と開放細孔体積の比は、1:1~100:1の範囲、好ましくは1.5:1~50:1の範囲にあり、更により好ましくは、閉鎖細孔体積は全細孔体積の100%をなす、すなわち、その製品は閉鎖細孔のみを含む。
【0027】
多孔質材料の開放細孔体積分率は、当業者に周知の技術であるガス置換比重瓶法によって決定することができる。この技術では、ガス置換法を使用して体積を精密に測定する。一般にHeである不活性ガスが置換ガスとして使用される。既知の重量の試料が、既知の容積を有する、測定デバイスの区画内に密封される。次いで、平衡に達するまで、すなわち圧力が一定になるまで、入口バルブを通してチャンバの中にHeを流入させる。次いで、入口バルブは閉じられ、既知の厳密な体積を有する第2のチャンバへの出口バルブが開かれる。試料チャンバを充填した時点、及び次いでガスを第2の空のチャンバの中に放出した時点で観察された圧力により、試料の固相体積(これは、試料の固体部分によって置換されたガスの体積に、ガスがアクセスできない細孔の体積を加えたものに等しい)の計算が可能になる。ヘリウムガスは小さな細孔でも素早く充填し、Heガスがアクセスできない試料の体積部分のみがガスを置換する。試料のこの部分は、試料の固体部分に、閉鎖細孔体積分率で表される体積を加えたものからなる(この部分は、ガスにアクセスできない部分であると定義される)。
【0028】
試料によって置換される体積がVsで示され、試料セルの既知の体積がVcで示され、ガスが移動して入る第2のコンパートメントの体積がVrであり、試料セルを充填した後の圧力がPaであり、拡張してコンパートメントセルの中に入った後の圧力がPeである場合、試料によって置換された体積は次のように計算できる。
Vs=Vc-Vr(Pe/(Pa-Pe))
【0029】
置換体積又は比重瓶体積Vsは、多孔質試料の固体部分の体積(これは、本明細書では理論体積と称する)に、閉鎖細孔の体積を加えたものを反映する。理論体積は細孔のない固体試料の理論密度から得ることができ、これは一般に、大部分の材料で既知である又は容易に決定できる。比重瓶体積から理論体積を差し引くと、閉鎖細孔の体積が得られる。
【0030】
多孔質試料のバルク体積は、多孔質試料の幾何学的体積であり、これは理論体積と閉鎖細孔の体積と開放細孔の体積の合計である。それに応じて、開放細孔の体積は、試料のバルク(幾何学的)体積から理論体積と(上記で説明したように得た)閉鎖細孔の体積とを差し引くことで得ることができる。
【0031】
閉鎖細孔体積分率は、閉鎖細孔の体積をバルク体積で除算することによって得られる。開放細孔体積分率は、類似の方法で得ることができる。次いで、閉鎖細孔体積分率を開放細孔体積分率で単純に除算することにより、両方の分率の比率が得られる。
【0032】
多孔質試料の総細孔率はまた、バルク密度を理論密度で除算したものを1から減算することによって得ることができる。
【0033】
前述のことは、次の例で説明できる。理論体積が2cm3、比重瓶体積が3cm3である試料は、1cm3の閉鎖細孔体積分率を有する(比重瓶体積から理論体積を差し引くことで得られる)。多孔質試料が4cm3の幾何学的(バルク)体積を有する場合、バルク体積に基づく総細孔率は2/4、すなわち0.5である。閉鎖細孔体積分率は、バルク体積に対しては、この場合0.25であり、試料の合計細孔体積に対しては0.5である。これにより、閉鎖細孔体積分率/開放細孔体積分率の比が1になる。
【0034】
同じ理論体積及びバルク体積において比重瓶の体積が3.5cm3の場合は、閉鎖細孔の体積は1.5cm3であり、これは、バルク体積に基づいて37.5%、又は総細孔体積に基づいて75%になる。この場合、閉鎖細孔体積分率の開放細孔体積分率に対する比率は3:1である。
【0035】
本発明による圧力感知層中の多孔質材料のポリマーマトリックスは、シロキサンポリマーである。
【0036】
シリコーンとしても知られるシロキサンポリマー又はポリシロキサンは、シロキサンの繰り返しユニットから構成される不活性な合成化合物を含み、多くの場合、炭素又は水素又はその両方と結合するポリマーである。それらは典型的には、耐熱性でありゴム状である。
【0037】
シロキサンは、-Si-O-Si結合を有する有機シリコン化学物質の官能基である。シロキサンという単語は、シリコン、酸素、アルカンという単語に由来する。シロキサン材料は、Si-O結合の数に応じて、いくつかの種類のいわゆるシロキシド基で構成されてもよく、Mユニットは一般構造要素R3SiO0.5で表され、Dユニットは一般構造要素R2SiOで表され、及びTユニットは一般構造要素RSiO1.5で表される。
【0038】
シロキサン官能基はシリコーンの主鎖を形成する。
【0039】
より正確には、重合したシロキサン又はポリシロキサンでは、シリコーンは無機のシリコン-酸素主鎖(…-Si-O-Si-O-Si-O-…)からなり、有機側基がシリコン原子に結合している。側基は、好ましくは、アルキル基、アリール基、又はそれらの組み合わせから選択される。
【0040】
場合によっては、有機側基を使用して、これら-Si-O-主鎖の2つ以上をリンクすることができる。-Si-O-鎖の長さ、側基、及び架橋を変化させることにより、多種多様な特性及び組成を有するシリコーンを合成できる。
【0041】
有機側基は、アルキル基、ハロアルキル基、アリール基、ハロアリール基、アルコキシル基、アラルキル基、及びシラシクロアルキル基、並びにアルケニル基などのより反応性の高い基、例えば、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、及び/又はデセニル基であってもよい。アクリレート基、メタクリレート基、アミノ基、イミノ基、ヒドロキシ基、エポキシ基、エステル基、アルキルオキシ基、イソシアネート基、フェノール基、ポリウレタンオリゴマー基、ポリアミドオリゴマー基、ポリエステルオリゴマー基、ポリエーテルオリゴマー基、ポリオール基、及びカルボキシプロピル基などの極性基は、シロキサン骨格鎖のシリコン原子に任意の組み合わせで結合されてもよい。
【0042】
シロキサンは、アルケニル基などの任意の有用な基で、及び/又はメチル基、エチル基、イソプロピル基、n-プロピル基、ビニル基、又はそれらの組み合わせなどのアルキル基で終端することができる。シロキサンを終端するために使用できる他の基は、アクリレート基、メタクリレート基、アミノ基、イミノ基、ヒドロキシ基、エポキシ基、エステル基、アルキルオキシ基、イソシアネート基、フェノール基、ポリポリウレタンオリゴマー基、ポリアミドオリゴマー基、ポリエステルオリゴマー基、ポリエーテルオリゴマー基、ポリオール基、及びカルボキシプロピル基、並びにハロ基、例えばフルオロ基である。
【0043】
(有機基がアルキル基である)ポリジアルキルシロキサンは、本発明の圧力感知層での使用に好適なシロキサンポリマーの好ましい基である。
【0044】
ポリジアルキルシロキサンポリマーは、以下の一般式で表すことができる。
ここで、Alkは、出現ごとに同じであっても異なっていてもよく、直鎖、分岐鎖、又は環状アルキル基を表す。
【0045】
好ましいアルキル基は、炭素原子を1~12個、好ましくは1~8個、より好ましくは1~4個有する直鎖又は分岐鎖アルキル基である。
【0046】
ポリジアルキルシロキサンの最もよく知られている例は、ポリジメチルシロキサン(ここで、Alkはメチル基であり、以下ではPDMSと称する)であり、これも本発明による最も好ましいポリジアルキルシロキサンである。ポリジメチルシロキサン、すなわちPDMSという用語は、本明細書で使用される場合、その誘導体、例えば、ヒドロキシ-、ビニル-アリル-、などのエンドキャップされたPDMSを包含する。
【0047】
本発明による圧力感知層中の多孔質マトリックス材料は、成分b)として、本発明による圧力感知層の微多孔質ポリマーマトリックスa)の閉鎖細孔体積分率中に実質的に存在する導電性又は半導電性フィラーを含む。
【0048】
本発明の目的において、実質的に存在するとは、閉鎖細孔体積分率中に、導電性フィラーの少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、更により好ましくは少なくとも70%が存在することを意味する。複合材料a)の閉鎖細孔体積分率中に、導電性フィラーの総含有量の最大99%、好ましくは最大95%、更により好ましくは最大90%が存在し得る。
【0049】
本発明の圧力感知層中の半導電性又は導電性フィラーを、半導電性又は導電性を有する任意の材料から選択してもよい。
【0050】
したがって、好適な導電性フィラーを、銅、銀、金、亜鉛のような金属粒子からなるリストから選択してもよい。好ましくは導電性金属フィラーは銀又は銅であり、より好ましくは銀である。
【0051】
導電性ポリマー粒子は、固有導電性ポリマー(ICP)で実質的に構成される、又は更には固有導電性ポリマー(ICP)で構成される。それらは、二重結合の完全に共役したシーケンスを鎖に沿って有するマクロ分子で構成される有機ポリマーである。このような化合物は金属導電性を有し得る又は半導体であり得る。固有導電性ポリマーの例は、ポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリピロール、又はポリアニリンである。ICPの中でも、ポリチオフェン及びポリアニリンが好ましくは使用される。より好ましくは、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)、又はPEDOT、具体的にはPEDOT-PSS、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)とポリ(スチレンスルホネート)とのポリマーブレンドが使用される。
【0052】
半導電性フィラーは、半導電性材料で本質的に構成される、又は半導電性材料で構成される。半導電性コアは通常、半導電性材料を少なくとも95重量%、好ましくは少なくとも97重量%、より好ましくは少なくとも99重量%を含む。
【0053】
通常は、半導電性材料は、Si、Si-Ge、GaAs、InP、GaN、SiC、ZnS、ZnSe、CdSe、及びCdSからなるリストから選択される。好ましくは、半導電性材料は、GaAs、SiC、ZnS、及びCdSからなるリストから選択される。より好ましくは、半導電性材料はSiCである。
【0054】
好ましくは、半導電性フィラーは、GaAs、SiC、ZnS、及びCdSナノ粒子からなるリストから選択される。
【0055】
好適なフィラーの別のグループは、典型的には、金属と、酸化状態が-2の酸素の陰イオンとを含有する金属酸化物粒子、例えばZnOである。
【0056】
一実施形態によれば、本発明に好適な導電性又は半導電性フィラーは、1に近いアスペクト比を有し得る。アスペクト比が1に近い場合、粒子は球形になる傾向がある。
【0057】
別の実施形態によれば、本発明に好適な導電性又は半導電性フィラーは、1よりも大きいアスペクト比を有し得る。この場合、アスペクト比は、好ましくは少なくとも5、より好ましくは少なくとも10、更により好ましくは少なくとも15、最も好ましくは少なくとも20である。粒子は一般に、最大で5000、好ましくは最大で1000、より好ましくは最大で500、更により好ましくは最大で200のアスペクト比を有する。
【0058】
アスペクト比は、粒子の長さと幅の比率である(ISO 13794:1999)。平均アスペクト比は、当業者によって、透過型電子顕微鏡(TEM)又は走査型電子顕微鏡(SEM)の写真の画像処理によって決定され得る。
【0059】
場合によっては、1よりも高いアスペクト比を有する、ナノワイヤの形態の金属フィラーが有利であることが分かっている。特に好ましいナノワイヤは銀ナノワイヤである。
【0060】
本発明の圧力感知層にて使用する半導電性又は導電性フィラーの別のグループは炭素質フィラーである。
【0061】
本発明の目的のために、用語「炭素質フィラー」は、少なくとも50重量%を超える元素状炭素、好ましくは少なくとも75重量%の元素状炭素、より好ましくは少なくとも90重量%の元素状炭素を含むフィラーを示す。とりわけ好ましい炭素質フィラーは、99重量%以上の元素状炭素を含む、又は元素状炭素からなる。
【0062】
好ましくは、炭素質フィラーは、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、グラファイト、グラフェン、及びカーボンブラックから選択される。経済的な理由で特に好ましいのはカーボンブラックである。
【0063】
グラフェン自体は一般に、ハニカム構造中に密に詰め込まれたsp2-結合炭素原子の1原子の厚さの平面シートとして考えられる。グラフェンという名称は、グラファイト(graphite)と接尾辞-eneに由来する。グラファイトそれ自体は、一緒に積み重ねられた多数のグラフェンシートからなる。
【0064】
グラファイト、カーボンナノチューブ、フラーレン、及びグラフェンは、前述した意味において、それらの構成原子の基本的構造配置が同じである。各構造は、規則的な六角形の形状で化学的に堅く結合した6個の炭素原子で始まり、これは通常はベンゼンと称されるものに類似の芳香族構造体である。
【0065】
カーボンナノホーンは、グラフェンシートのホーン形のアグリゲートから名をとって命名されている。細管の長さが約40~50nm、直径が約2~3nmの単層ナノホーン(SWNH)は、単層ナノチューブ(SWNT)から派生し、約20°のコーン開角を有する、5つの五員環の円錐状キャップで終わる。SWNHは互いに会合して、平均直径が約80~100nmの「ダリアのような」及び「つぼみのような」構造のアグリゲートを形成してもよい。前者はダリアの花弁のように表面から突出した細管とグラフェンシートからなり、後者は粒子自体の内部で展開する細管で構成される。
【0066】
カーボンブラック(CAS 1333-86-4)は、活性炭よりも小さいものの、高い表面積対体積比を有する準結晶性カーボンの一種である。
【0067】
化学的には、カーボンブラックは、95~99%の炭素からなる元素状炭素のコロイド形態である。これは一般に、炭化水素の部分燃焼又は熱分解から得られ、回転楕円体の一次粒子で構成されるブドウの房状形態のアグリゲートとして存在し、一次粒子のサイズは、一次粒子内の所与のアグリゲート及びターボストラティック層構造(turbostratic layering)内で均一である。
【0068】
上述の好適な炭素質フィラーは様々な供給元及び供給業者から入手可能であり、当業者は、その専門知識及び特定の適用事例に基づいて、本発明に従って、複合材料にて使用するのに好適な材料を選択するであろう。
【0069】
特定の適用事例では、300nm以下、好ましくは200nm以下の平均直径を有する球状ナノ粒子状フィラーが、ある種の利点を提供することが見出されている。
【0070】
本明細書で使用する場合、球状粒子の平均粒子径という用語は、いわゆるContinデータ反転アルゴリズムにより得られるような強度計量粒子サイズ分布に基づいて算出される粒子径のメジアンD50を指す。一般的に言えば、D50は、強度計量サイズ分布を2つの等しい部分、すなわちD50よりも小さいサイズのもの、及びD50よりも大きいサイズのものに分割する。
【0071】
通常は、上で定義されたような平均粒子径は、以下の手順に従って決定される。最初に、必要であれば、粒子を、それらが含有されていてもよい媒質から分離する(このような粒子の製造には様々な工程があるので、製品は、様々な形態、例えば、形の整った乾燥粒子として又は好適な分散媒中の懸濁液として入手可能な場合がある。形の整った粒子は次いで、好ましくは動的光散乱法による粒子サイズ分布の決定のために使用される。これに関して、ISO Norm Particles size analysis-Dynamic Light Scattering(DLS),ISO 22412:2008(E)に記載されている方法に従うことが推奨される。この標準は、とりわけ、計器位置(セクション8.1.)、システム適格性(セクション10)、試料要件(セクション8.2.)、測定手順(セクション9.1~5及び7)、及び再現性(セクション11)に関する指示事項を提供する。測定温度は一般に25℃であり、使用されるそれぞれの分散媒の屈折率及び粘性係数は、少なくとも0.1%の精度で既知であるはずである。適切な温度平衡の後、セルの位置を、システムソフトウェアに従って最適な散乱光信号となるように調整すべきである。時間自己相関関数の収集を開始する前に、試料によって散乱された時間平均強度が5回記録される。測定体積を通って偶発的に移動するダスト粒子の予想される信号を排除するために、平均散乱強度の5つの測定値の平均の1.10倍の強度閾値が設定されてもよい。一次レーザ源減衰器は普通、システムソフトウェアによって調整され、好ましくは約10,000cpsの範囲で調整される。上記のように設定された平均強度閾値を超えるような、時間自己相関関数のその後の測定値は無視されるべきである。
【0072】
例えば粒子の分散を向上させるために、処理を適用する場合、粒子の平均直径の測定は、この処理後に実行する必要がある。
【0073】
一般に、測定値は、それぞれ数秒の典型的な継続時間を有し上述の閾値判定基準に従ってシステムによって許容された、自己相関関数の好適な数の収集(例えば、200個の収集のセット)からなる。次いで、普通は装置製造業者のソフトウェアパッケージに含まれている、ソフトウェアパッケージとして入手可能なContinアルゴリズムを使用して、時間自己相関関数の記録の全セットについてデータ分析が実施される。
【0074】
本発明による圧力感知層において使用される導電性又は半導電性フィラーは、球形から逸脱してもよく、1に近いアスペクト比によって特徴付けられる。
【0075】
板状粒子もまた好適である。典型的には、板状粒子は、板の形状を有する粒子又は板に似ている粒子から本質的になる、又は更にはそのような粒子からなる、すなわち粒子は平らである、又はほぼ平らであり、それらの厚さはその他の2つの寸法と比べると小さい。
【0076】
針状粒子もまた好適である。典型的には、針状粒子は、針の形状の粒子又は針に類似する形状を有する粒子から本質的になる、又は更にはそのような粒子からなる。
【0077】
最後に、繊維状粒子もまた当業者には周知である。典型的には、繊維状粒子は、繊維の形状を有する粒子又は繊維に似ている粒子から本質的になる、又は更にはそのような粒子からなる、すなわち粒子は細く且つ非常に細長く、それらの長さは、その他の2つの寸法と比べると非常に大きい。とりわけ強化を増加させる目的のために、本発明による圧力感知層が含有すると有利な繊維状粒子は、以下を有する。
- 典型的には5を超える、好ましくは10を超える、より好ましくは15を超える数平均アスペクト比;
- 典型的には、少なくとも50μm、好ましくは少なくとも100μm、より好ましくは少なくとも150μmの数平均長さ;及び
- 典型的には、25μm未満、好ましくは20μm未満、より好ましくは15μm未満の数平均直径。
【0078】
本発明による圧力感知層内の多孔質マトリックス材料の上面SEM画像の画像処理を使用して決定される平均細孔径は、好ましくは0.1~200μmの範囲、好ましくは0.5~100μmの範囲、更により好ましくは1~50μmの範囲にある。場合によっては、10~30μmの平均細孔径が有益であることが分かっている。
【0079】
SEMは、広範囲の倍率及び深い被写界深度を可能にし、画像分析に適したデジタルデータを生成するので、細孔構造の定量分析に適切である。SEMは、光学顕微鏡とTEMの最良の側面を組み合わせたものである。
【0080】
平均細孔径を決定する典型的な手順を、以下の通りに、より詳細に説明する。
【0081】
ソフトウェアパッケージImageJを使用して、細孔の内部領域を選択するために画像を閾値処理することにより細孔サイズ分布を決定し、次いで粒子解析パッケージを使用して、画像のグレースケール分析を実施した。この手順により、細孔領域の分布の特定が可能になる。細孔が球形であり、その中心において切断され、したがって等価な大円を示すと想定すると、細孔サイズDは表面積Aから等価直径として抽出され、すなわち、D=2sqrt(A/pi)である。細孔径の平均及び標準偏差は、いくつかの画像(例えば、所与の試料に対して10枚の画像)にわたって細孔径分布を蓄積する統計分析によって得られる。
【0082】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、本発明の圧力感知層中の多孔質マトリックス材料は、外部圧力がない場合に、10-5から10-12S/mの範囲、好ましくは10-6から10-9S/m範囲の比電気導電率を有する。
【0083】
電気導電率又は比導電率は電気抵抗率の逆数であり、電流を伝導する材料の能力の尺度を示す。
【0084】
ピエゾ容量デバイス、すなわち、外部圧力の印加による静電容量の変化を使用するデバイスにとっては、材料が導電性になることなく、材料の高い比誘電率(誘電定数)を得ることが望ましい。
【0085】
良好なピエゾ容量センサと見なされるためには、機械的圧縮下で、相対静電容量変化ΔC/Co(Coは外部圧力を印加していない場合の静電容量を表し、ΔCは所与の圧力を印加している場合の静電容量変化を表す)の大きな変動を得ることが望ましい。導電性フィラーの量を増加させると、ΔC/Coの変動が増加する。
【0086】
比誘電率は、その材料を誘電体として使用するコンデンサの静電容量を、誘電体として真空を使用する同様のコンデンサと比較した比率である。比誘電率は一般に誘電定数εとしても知られている。誘電率は、材料中の2つの点電荷の間のクーロン力に影響を与える材料特性である。比誘電率は、電荷間の電界が真空に比べて減少する要因である。
【0087】
比誘電率は無次元数であり、通常は複素数値であり、その実部と虚部は次のように表される。
ε=ε’-iε’’
ここで、ε’は誘電率の実部、ε’’は誘電率の虚部である。
【0088】
比誘電率は、コンデンサを設計する場合に、及び回路に対して材料が静電容量を導入すると予想されるような他の状況において重要な情報である。比誘電率の高い材料が電界中に置かれると、その電界の大きさは誘電体の体積内では、ある程度減少することになる。
【0089】
静電容量は、ボディが電荷を蓄える能力である。コンデンサの静電容量は、設計の幾何学的形状(例えば、プレートの面積及びプレート間の距離)、及びコンデンサのプレート間にある誘電体材料の誘電率のみの関数である。
【0090】
静電容量は、導体の幾何学的形状、及び導体間にある絶縁体の誘電特性が既知の場合に計算できる。静電容量Cは、比誘電率に正比例し、コンデンサのプレート間の距離に反比例する。
【0091】
外部圧力を印加すると、本発明の圧力感知層中の多孔質マトリックス材料中の細孔の細孔壁の距離が減少し、それによりコンデンサの静電容量は増加する。これにより、所与の圧力でのΔCの値が得られる。コンデンサのプレート間の材料の比誘電率が高いほど、ΔCは高くなる。したがって、感度を最適化するために、可能な限り高い比誘電率を実現することが望ましい。
【0092】
本発明による比誘電率は、好ましくは以下のように測定される。好ましくはフィルムの形態である試料が、2つの金属円盤電極の間に挟まれ、誘電率は、インピーダンスアナライザ(BioLogicインピーダンスアナライザMTZ-35)を使用して1Vの印加電圧下で10~106Hzの周波数範囲で測定される。
【0093】
本発明による圧力感知層中の多孔質マトリックス材料(並びに、そのような多孔質マトリックス材料を含むフィルム)の比誘電率(誘電定数)は、特定の制限を受けることなく広範囲に及び得る。誘電率が高いほど、圧力感知用途に対する感度は高くなる。誘電率の上限は、多孔質マトリックス材料及びフィラー)を含む複合材料が導電性になる、すなわち、10-4S/mを超える導電率を持つことによって規定される。3~200の範囲、好ましくは5~190の範囲の誘電率が実現されている。
【0094】
しかし、材料が導電性になることは望ましくない。
【0095】
細孔内の導電性フィラーの量を増やすと比誘電率は高くなるが、いったんパーコレーション点に達すると、材料は導電性になり望ましくない。閉鎖細孔体積分率の中に導電性フィラーを局在させることで、パーコレーション点に到達するのに必要なフィラーの量が増加し、それにより、比誘電率を大幅に増加させながら低い導電率が保持され、これにより、外部圧力が適用され細孔壁間の距離が減少した場合に信号が向上する。
【0096】
全体として、これは多孔質マトリックス材料を含む圧力感知層の非常に良好な感度につながる。
【0097】
本発明の好ましい実施形態によれば、フィラーの量は、多孔質マトリックス材料及びフィラーの全重量に基づいて、0.1~15重量%の範囲、好ましくは0.5~12重量%の範囲にある。
【0098】
パーコレーション点に近い、又はパーコレーション点を超える量の導電性フィラーについては、材料全体を低導電性を有する非導電性の最終製品にするために、圧力感知層の上に非導電性材料の追加層がコーティングされ得る。
【0099】
多孔質マトリックス材料の多孔質微細構造により、均質な材料では実現できない等価弾性係数を有する材料を実現することが可能になる。多孔質構造により、非多孔質誘電体層と比較して、誘電体層の大幅な変形が可能になる。この変形性の増加は、圧縮下での静電容量の大きな変化につながる。
【0100】
圧力感知層上にコーティングされた非導電性材料の絶縁層を使用することで全体的な導電率が減少し、これにより、パーコレーション閾値を超えて細孔内の導電性フィラーの量を増加させることができ、それにより比誘電率が更に増加する。
【0101】
好適な非導電性材料は、例えば、ポリジアルキルシロキサン、具体的にはポリジメチルシロキサン(PDMS)、及びポリエステル、好ましくはポリエチレンテレフタレートポリマーである。二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの層が、特定の適用事例では特に有利であることが分かっている。そのようなフィルムの単なる例として、DuPont社から市販されている製品であるMylar(登録商標)、又は三菱ケミカル株式会社から入手可能なHostaphan(登録商標)に言及することができる。
【0102】
本発明の別の実施形態は、本発明による圧力感知層でコーティングされた基材に関する。このような基材をどのように得ることができるかについての詳細は、本発明による圧力感知層を得るための、本発明による工程に関連して後述されることになる。
【0103】
本発明の別の実施形態は、少なくとも1つの電極と、上述のような少なくとも1つの圧力感知層とを備える圧力感知デバイスに関する。
【0104】
好適な電極は、導電性材料で作製されてもよい。本発明による圧力感知デバイスに好適な電極は、当業者に周知の任意の方法によって得ることができるので、本明細書では更なる詳細を説明する必要はない。
【0105】
好適な電極は、例えば、Au、Ag、Pt、Al、Ni、Pd、Cu、Mo、Ti、Cr、W、Al-Cu合金、ITO(インジウムスズ酸化物)、導電性ポリマー(PEDOT(ポリ-3,4-エチレンジオキシチオフェンのような)、具体的にはPEDOT-PSS(ポリ-3,4-エチレンジオキシチオフェンポリスチレンスルホネート)、又はPANI(ポリアニリン))、及びカーボンベースの材料(カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、グラファイト、グラフェン、カーボンブラックなど)、からなる群から選択される材料を含んでもよい。好ましい電極はAg、Au、Pt、又はPEDOT/PSSを含み、より好ましい電極はAg又はPEDOT/PSSを含む。
【0106】
本発明による圧力感知デバイスの電極は一般に、100μmを超えない、好ましくは50μmを超えない、より好ましくは20μmを超えない平均厚さを有する。電極層の厚さは、導電性材料と、圧力感知層上への導電性材料の堆積に使用される工程とに依存する。堆積に使用される工程は、当業者に周知の工程のいずれであってもよい。
【0107】
本発明による圧力感知デバイスの電極は、圧力感知層と密接に接触していても接触していなくてもよい。
【0108】
少なくとも1つの電極と圧力感知層との間にスペーシング層を追加することができる。これにより、感度の調整が可能になる。電極とスペーシング層との間の界面は接着性であっても、そうでなくてもよく、スペーシング層と圧力感知層との間の界面は接着性であっても、そうでなくてもよい。
【0109】
一実施形態によれば、圧力感知層は、一対の感知電極の間に配置してもよい。圧力感知層の側に配置された各電極は、好ましくは、圧力感知層の反対側に配置された少なくとも別の電極との少なくとも1つの重なり部分を示す。
【0110】
一実施形態によれば、圧力感知層の少なくとも一方の側の電極は、導電性パッドのアレイに対応するようにパターン形成されることができ、より単純には、連続的であってパターン形成されていなくてもよい。
【0111】
導電性パッドのアレイをパターン形成することにより、電極と重なり合う領域に配置されたセンサのアレイが生成される。
【0112】
図2及び
図3は本発明による例示的な圧力感知デバイスを示し、保護層(21、31)、底部電極(22、32)、圧力感知層(23、33)、上部電極(24、34)、及び封止材(25、35)を備える。実施形態の間の差異は、
図3では上部電極(34)がパターン形成されているという事実にある。
【0113】
アレイの様々なセンサからの信号を差動モードで使用して、振動ノイズ及び温度変化などの、アレイのセンサに共通し得る信号を排除できる。
【0114】
圧力感知層の表面上に幾何学的に分布した複数の電極の使用により、信号源が圧力感知層の小さな部分に局在している場合に信号検出を強化することが可能になる。
【0115】
別の実施形態では、電極と電極アレイとの間に圧力感知層を配置してもよい。
【0116】
圧力信号に起因する静電容量の変化は、圧力の印加に反応して圧力感知層の厚さが変化する結果、及び/又は、圧力の印加下での、2つの電極の間に挟まれた圧力感知層の等価比誘電率(誘電定数)の変化、すなわちピエゾ容量効果に対応する変化の結果であり得る。
【0117】
更なる実施形態では、パターン形成される場合、感知電極は、圧力感知層の同じ側に配置されてもよく、好ましくは互いに組み合わされてもよい。
【0118】
当業者は、専門知識に基づいて、互いに組み合わされた電極を製造するための好適な技術について知っており、対象となる特定の適用事例に基づいて、好適な材料及び工程を選択するであろうから、本明細書では更なる詳細を説明する必要はない。
【0119】
電極が互いに組み合わされている場合、信号は、電極の平面に直交する領域における、電界線に沿って配置された材料の変形から発生することになる。
【0120】
図1は、4つのセンサユニットを含有する互いに組み合わされたセンサアレイを示す。信号は、静電容量の変化を、第1のセンサについてはコネクタ2と接地1との間、第2のセンサについてはコネクタ3と接地1との間、第3のセンサについてはコネクタ4と接地6との間、第4のセンサについてはコネクタ5と接地6との間で測定することにより抽出できる。
【0121】
圧力感知デバイスが1つの電極のみを含む実施形態では、圧力感知層は、電極と圧力信号の起点との間に配置される。
【0122】
上述の2つ以上の電極を備える実施形態に関して、電極は、圧力感知層と密接に接触していても、そうでなくてもよく、電極と圧力感知層との間にスペーシング層を追加することができる。これにより、感度の調整が可能になる。電極とスペーシング層との間の界面は接着性であっても、そうでなくてもよく、スペーシング層と圧力感知層との間の界面は接着性であっても、そうでなくてもよい。
【0123】
電極が1つしか存在しない場合は、電極は、電極によって成される静電容量の変化を介して圧力を電気的に感知するために、圧力信号の起点に「十分に近い」必要がある。
【0124】
より良好な信号抽出を可能にするために、圧力感知層を電極と組み合わせて使用してもよい。
【0125】
より具体的には、電極を圧力信号の起点と機械的に結合させることにより、圧力感知層は、その厚さ及び組成に応じて、電極の感度を機械的に変調し、信号対雑音比を変調し、且つ、又は信号強度を減少させ、又は、電極と圧力信号の起点との間のフリンジ電界分布を変化させることにより、圧力感知層は、その厚さ及び組成に応じて、電極の感度を電気的に変調し、信号対雑音比を変調し、且つ又は信号強度を減少させ、又は、圧力感知層は、電極を圧力信号の起点から機械的及び電気的に絶縁して、電極による信号抽出の堅牢性を向上させることができ、又は、特にウェアラブル機器の場合は、圧力感知層を使用して、その厚さ及び組成を変化させることにより、機器の剛性、及び又は快適性、及び又は順応性を適合させることができる。
【0126】
圧力感知層中の多孔質マトリックス材料は高い比誘電率を示し、比誘電率は、組成をわずかに変化させることにより、電気導電率を保持しながら調整できる。その上、その等価弾性係数はまた、組成をわずかに変化させることで容易に調整することができる。
【0127】
調整可能な比誘電率を用いて、電極と圧力信号の起点との間のフリンジ電界分布を最適化及び変調できる。非常に低く調整可能な弾性係数を使用して、圧力信号の起点での表面に対応できる。
【0128】
圧力感知層の一方の側に配置された電極は、導電性パッドのアレイに対応するようにパターン形成される場合があり、又は、より単純には、連続的であってパターン形成されていない場合がある。
【0129】
導電性パッドのアレイをパターン形成することにより、センサのアレイが生成される。この場合、圧力感知層は、電極を絶縁するための電磁シールドとして使用できる。
【0130】
アレイの様々なセンサからの信号を差動モードで使用して、振動ノイズ及び温度変化などの、アレイのセンサに共通し得る信号を排除できる。アクティブな感知層の複数の厚さ又はアクティブな感知層の複数の組成を使用する場合は、感度の低いセンサ回路を使用して、環境条件の変化に起因するベースラインシフトを除去できる。
【0131】
圧力感知層の表面上に幾何学的に分布した複数のセンサの使用により、信号源が圧力感知層の小さな部分に局在している場合に信号検出を強化することが可能になる。
【0132】
圧力感知層の表面上に幾何学的に分布した複数のセンサの使用により、複数の信号源を考慮した場合に、信号源の起点を空間的に局在化し、信号源同士を区別することが可能になる。
【0133】
上述の圧力感知層及び圧力感知デバイスは、一般に保護層の目的に適合する追加層を含んでもよい。
【0134】
このような保護層は、環境安定性及び耐湿性を提供するために使用できる。ウェアラブルデバイスの場合、保護層は好ましくは皮膚適合性を有するポリマー層である。これは、例えば、PE又はPPのようなポリオレフィン、PETのようなポリエステル、PDMSのようなシロキサンポリマー、ポリイミド、VDFベースのポリマー若しくはPTFEのようなフッ素化ポリマー、又はポリアミドからなるリストから選択される材料を含んでもよい。特定の実施形態では、保護層は圧力感知層であってもよい。別の特定の実施形態では、保護層は下部電極層として機能してもよい。
【0135】
そのような保護層は一般に、100μmを超えない、好ましくは50μmを超えない、より好ましくは20μmを超えない平均厚さを有する。保護層は、その機能的特性を維持する限り、非常に薄くすることができる。
【0136】
圧力感知層又は圧力感知デバイスは、封止材料中に封止されていてもよい。
図2及び
図3は、例示的な実施形態を示す。封止材料は、保護層の材料と同じである又は異なっている場合がある。
【0137】
好ましい実施形態では、封止材層及び保護層は同じ材料でできている。
【0138】
好ましい実施形態では、電極のアレイはシステムの上部に配置され、下部電極は連続的である。
【0139】
圧力信号に起因する静電容量の変化が小さい場合、信号を増幅及び又はフィルタリングすることが有利な場合がある。例えば、静電容量変化信号は、アクティブな感知層を電界効果トランジスタ(FET)のゲート上に取り付けることによって増幅することができる。
【0140】
本発明の別の実施形態は、以下を備える圧力感知モニタに関する。
a)圧力変動に応答して静電容量変化信号を提供する、少なくとも1つの、本発明による圧力感知層又は圧力感知デバイス、
b)電源、
c)圧力感知層によって提供される静電容量変化信号をアナログ又はデジタル電気信号に変換することが可能な少なくとも1つの信号変換ユニットであって、任意選択で信号用のフィルタ及びアンプを有する、少なくとも1つの信号変換ユニット、
d)信号変換ユニットc)によって提供されるアナログ信号をデジタル化すること、及び/又は少なくとも1つの信号変換ユニットc)とデジタル的に通信することが可能な少なくとも1つのマイクロコントローラユニットであって、少なくとも1つの信号変換ユニットc)から得た信号を、少なくとも1つの制御ユニット内に格納された好適なアルゴリズムを用いて、読み取り可能なコードとして他のフォーマットに変換することが可能な、少なくとも1つのマイクロコントローラユニット、
及び、任意選択的に、
e)マイクロコントローラユニットによって提供されたデータをデータ受信デバイスに伝送するための少なくとも1つのデータ伝送手段、及び/又は、
f)マイクロコントローラユニットd)、若しくは少なくとも1つのデータ伝送手段e)によって提供されたデータをユーザに通信する手段。
【0141】
図4~
図7は、ウェアラブルデバイスの形態の本発明による圧力感知モニタの例示的実施形態を示す。
【0142】
圧力感知デバイス(401、501、601及び701)は、1つ以上の電極(402、502、602、702)、本発明による圧力感知層(403、503、603、703)、及び保護層(404、504、604、704)を備える。圧力変化に起因する静電容量(405、505、605及び705)の変化が感知され、信号変換ユニット(406、506、606及び706)を備える電子デバイス(410、510、610及び710)に転送され、信号変換ユニットは、データ伝送ユニット(407、507、607及び707)、マイクロコントローラユニット(408、508、608及び708)、及び電源(409、509、609及び709)を備える。
【0143】
図4の実施形態によれば、通信信号(412)は、データ通信用の手段を表すスマートフォン(411)に転送される。スマートフォンは、データ伝送ユニット(413)と、患者認証(414)、患者通知(415)、データ分析(416)、結果分析(417)、及びデータ格納(418)のための手段とを備える。
【0144】
図5の実施形態では、通信信号(512)は、データ通信用の手段を表すスマートフォン(511)に転送される。スマートフォンは、データ伝送ユニット(513)と、患者認証(514)及び患者通知(515)のための手段とを備え、クラウド(519)の要素としての、データ分析(516)、結果分析(517)、及びデータ格納(518)のための手段へのインターネット接続(520)を有する。
【0145】
図6の実施形態によれば、電子デバイスは加えてメモリユニット(621)を備え、通信信号(612)は、データ通信用の手段を表すスマートフォン(611)に転送される。スマートフォンは、データ伝送ユニット(613)と、患者認証(614)及び患者通知(615)のための手段とを備え、クラウド(619)の要素としてのデータ分析(616)、結果分析(617)、及びデータ格納(618)のための手段へのインターネット接続(620)を有する。
【0146】
図7の実施形態では、電子デバイス710は加えて表示デバイス(722)を備え、表示デバイス(722)はユーザインタフェース(724)を介して、患者認証(714)及び特許通知(715)のための手段に接続される。通信信号(712)は、データ伝送ユニット(713)を含むゲートウェイ(723)に転送され、データ伝送ユニット(713)は、インターネット接続を介してクラウド(719)に接続され、クラウド(719)は、データ分析(716)、結果分析(717)、及びデータ格納装置(718)のための手段を備える。
【0147】
図4から
図7のブロック図では、圧力感知デバイスはセンサと呼ばれ、電源はバッテリと呼ばれ、信号変換ユニットは信号コンディショニングを表し、マイクロコントローラユニットはMCUと呼ばれ、データ伝送手段は通信と呼ばれる。スマートフォンはデータ通信用の手段を表す。
【0148】
本発明の圧力感知モニタの電源は、モニタの要素に電力を供給する。電源は、好ましくは、充電式電池ユニット又は一次電池ユニットで作製され、電力管理ユニットを含有してもよい。好ましくは、電力管理ユニットは、外部電源から受け取った電気エネルギーを、充電式電池ユニットにとって許容可能な値に変更することができる。充電式電池ユニット及び又は一次電池ユニットは可撓性であり得る。一次電池ユニットは、任意の一次電気エネルギー貯蔵セルであってもよい。充電式電池ユニットは、任意の充電式電気エネルギー貯蔵セルであってもよい。既知であって文献に記載されている任意の電力管理ユニットを使用できる。
【0149】
信号変換ユニットは、静電容量の変化をアナログ又はデジタル信号に変換する。これは、例えば、交流ブリッジ感知回路、静電容量-電圧コンバータ、静電容量-周波数コンバータ、静電容量-電流コンバータ、静電容量-パルス幅コンバータ、静電容量-デジタルコンバータ、差動静電容量感知コンバータ、低電力差動静電容量感知低雑音、又は低電力差動静電容量感知回路、からなる群から選択され得る。それぞれのユニットは当業者に周知であり、文献に記載されており、様々な供給元から市販されているので、本明細書では更なる詳細を説明する必要はない。
【0150】
F.Aeziniaの博士論文(Design of Interface circuits for capacitive sensing applications,pages 22 to 27)には、いくつかの例示的な好適な信号変換ユニットについて記載されている。
【0151】
マイクロコントローラユニットd)を使用して、信号をデジタル化してもよい。マイクロコントローラユニットは、センサデータの積分などのデジタルデータへの数学的な計算、又はフーリエ変換などの信号変換、を実施してもよい。これは一般に、マイクロコントローラユニットに読み取り可能なコードとして格納されている好適なアルゴリズムを使用して実現される。
【0152】
任意選択で、マイクロコントローラユニットd)の処理されたデータを、例えばホストコンピューティングデバイスなどのデータ受信デバイスに伝送するために、データ伝送手段e)が存在してもよく、例えば、処理されたデータはBluetooth(登録商標)無線通信用にフォーマットされてもよい。
【0153】
データ伝送手段を使用して他のデバイスに、例えばサービスプロバイダに接続して、圧力感知モニタによって感知された圧力信号に関連する様々なサービスを提供してもよい。サービスプロバイダは、例えば、クリニックであって、クリニックが圧力感知モニタのユーザの健康モニタリングに関連する様々なサービスを提供することを可能にしてもよい。データ伝送手段はまた、取得された信号と、感知された圧力信号から計算されたデータとに関する情報を、Bluetooth(登録商標)無線通信用にデータをフォーマットすることによって、スマートフォン又はコンピュータなどの外部デバイスに伝送してもよい。好適な伝送手段は当業者に周知であり、様々な供給元から市販されているので、本明細書では更なる詳細を説明する必要はない。当業者は、専門的経験に基づいて、及びデバイスが意図する特定の適用事例に基づいて、データ伝送手段を選択するであろう。
【0154】
任意選択で、マイクロコントローラユニットd)、又は少なくとも1つのデータ伝送手段e)によって提供されたデータをユーザに通信する手段f)が存在してもよい。そのような手段は、例えば、取得された信号に関する情報、又は例えば取得された信号から計算されたデータであって感知された圧力信号を反映するデータの情報を表示するディスプレイであってもよい(感知された圧力信号は、例えば、以下に記載されるような血流力学的活動から導出されてもよい)。ここでも、データを好適な形で表示するための対応する手段対応するデバイスが知られており、先行技術で説明されているので、本明細書では更なる詳細を説明する必要はない。当業者は、存在する場合は好適な表示デバイスを、専門知識及び特定の適用事例に基づいて選択するであろう。
【0155】
好ましい実施形態によれば、圧力変動は脈波事象であり、したがって、圧力感知デバイス又は圧力感知モニタは、小さな圧力変動によって生成される脈波波形信号を生成する。次いで、この信号を使用して、例えば、心拍数、心拍数の変動、血圧などの血流力学的活動からの様々な血流力学的パラメータを計算することができる。
【0156】
本明細書で使用される場合、「脈波事象」という用語は、好ましくは、心拍動(例えば、心筋の収縮、心拍動又は心音、血圧又は血流速度の変化)によって引き起こされる又は心拍動を示す血流力学的応答及び/又は属性を指す若しくは含む。
【0157】
「脈波波形」という用語は、例えば、心臓が収縮し、波が動脈樹の動脈壁に沿って移動する時に心臓によって生成される動脈脈波波形などの、脈波事象によって生成される信号又は波形を指すか又は含む。
【0158】
「血流力学的又は血流力学的パラメータ」という用語は、体の臓器、血管、及び組織の内部での血流に関するパラメータを指すか又は含む。例示的な血流力学的パラメータは、拡張期血圧、収縮期血圧、動脈壁の硬化、及び血液量を含むが、これらに限定されない。
【0159】
別の好ましい実施形態によれば、少なくとも1つのマイクロコントローラユニットc)は、少なくとも1つの信号変換ユニットb)から得た信号を血流力学的パラメータに変換する。
【0160】
マイクロコントローラユニットc)は、プログラムコード(命令のセットとして実行されるプログラム)を格納するためのメモリ回路を含むマイクロコンピュータ又は他のCPUを備えてもよく、プログラムコードは、(例えば、脈波事象に起因する圧力差及び又は容量変化を監視する)アルゴリズムを実行し、及び/又は血流力学的パラメータを伴い、及び/又はそのような特定のパラメータ感知に関連する、文献に記載されているようなより複雑なアルゴリズムを実行する。そのような工程/アルゴリズムは、特定の用途に適切な関連するステップ、機能、操作、アクティビティを実行するために具体的に実装されることになる。
【0161】
心拍数は、脈波波形のフーリエ変換から計算され得る。心拍数は、脈波波形のフーリエ変換がピークを示す、周波数の逆数に対応する。この計算ステップは、例えば10Hzのカットオフ周波数を使用して、例えば脈波波形のフーリエ変換にローパスフィルタを使用して、信号のフィルタに進むために有利に使用することができる。心拍数の値は、一定期間(例えば15秒)にわたって平均化され得る。
【0162】
心拍数の変動性は、個々の心拍数の値の分布から決定され得る。
【0163】
血圧は、脈波波形から様々な方式で計算され得る。
【0164】
脈波波形の形状及び他の特徴は、血圧に相関し得る。
【0165】
血圧の変動は、膨張可能カフのデータに対して較正された動脈ラインなどを用いて、最初にデータを較正することによって監視できる。
【0166】
脈波波形を分析し及び/又は様々な血流力学的パラメータを決定するために、特徴分析及び計算流体力学技術を含む様々な異なる技術を使用することができる。例えば、血流力学的現象に起因する特徴は、血圧、動脈壁の硬化、及び他の血流力学的パラメータと相関させることができる。血流力学的現象に起因する特徴に関するより一般的で具体的な情報については、Cecelia,Marina,and Phil Chowienczyk.“Role of Arterial Stiffness in Cardiovascular Disease.”JRSM Cardiovascular Disease 1.4(2012):cvd.2012.012016,PMC,Web.31 Jan.2017;David A.Donley et al,“Aerobic exercise training reduces arterial stiffness in metabolic syndrome”Journal of Applied Physiology published 1 June 2014,Voll l6,no.11,1396-1404;Baruch,Martin C,et al“Validation of the pulse decomposition analysis algorithm using central arterial blood pressure.”Biomedical engineering oriHne 13.1(2014):96.及び、Munir,Sbahzad,et al.“Peripheral augmentation index defines the relationship between central and peripheral pulse pressure.”Hypertension 51.1(2008):112-118,が参照され、その各々が本明細書に完全に組み込まれる。別の例として、増幅計数(AI)、(末梢二次収縮期血圧(pSBP2)-拡張期血圧(DBP))/(末梢収縮期血圧(pSBP)-DBP)が、動脈壁の硬化のマーカーとして使用でき、末梢及び中心ピーク血圧(pPP及びcPP)の両方に相関し得る。AIは正規化されたパラメータであり、絶対較正なしで分析できる。計算流体力学技術は、脈波速度及び/又は脈波形状などのパラメータを計算するために、脈管構造をインダクタコンデンサ抵抗(LCR)回路として、及び/又は弾性管のネットワークとしてモデル化することを含み得る。血流力学的パラメータを決定するために使用される計算流体力学に関連するより一般的で具体的な情報については、Lee,Byoung-Kwon,“Computational fluid dynamics in cardiovascular disease”,Korean circulation journal 41.8(2011):423-430、及び、Xiaoman Xing and Mingshan Sun,“Optical blood pressure estimation with photoplethysmography and FFT-based neural networks,”Biomed.Opt.Express 7,3007-3020(2016),が参照され、その各々が、更なる情報のために本明細書に全体が組み込まれる。
【0167】
血管壁の弾性特性に関する仮定を用いて、(例えば、フォトプレチスモグラフィ(PPG)によって得られる)脈波波形と血圧との関係を導出するために使用できるモデルの1つは、国際公開第2017/172978号のセクション00108以降に記載されており、更なる情報のために参照される。
【0168】
脈波波形を血圧値に相関させるために、様々な手法が使用され得る。脈波波形を血圧値に相関させることに関する、より一般的で具体的な情報については、Xing,Xiaoman,and Mingshan Sun.“Optical Blood Pressure Estimation with Photoplethysmography and FFT-Based Neural Networks”,Biomedical Optics Express 7.8(2016):3007-3020、及び、http://cs229.stanford.edu/proj2014/Sharath%20Ananth,Blood%20Pressure%20Detection%20from%20PPG.pdfが参照され、その各々は全体が本明細書に組み込まれる。
【0169】
本発明による圧力感知モニタ又は圧力感知デバイスは、ウェアラブルデバイスであってもよく、又はその構成要素を形成してもよい。
【0170】
ウェアラブルデバイスは、体の様々な部位の皮膚に直接装着できる器具である。これらのデバイスは、着用者の健康に関する非常に重要な情報を継続的且つ非侵襲的にリアルタイムで容易に収集できるので、かなりの注目を集めている。
【0171】
ウェアラブルヘルスケアデバイスの使用はまた、より便利で安価な方法で、人々が自分のヘルスケアにより大きな関心を持つように奨励し、それにより人々のコンプライアンスが向上する。
【0172】
本発明によるウェアラブルデバイスは、例えば、なかでもスマートリストバンド、時計、シャツ、靴、ヘッドバンド、眼鏡、及びネックレスなど様々な異なる形態を有し得る。それらの大部分はセンサを含有し、センサは生データを集め、生データは分析のためにデータベース又はソフトウェアアプリケーションに提供される。
【0173】
ウェアラブルデバイスは、様々な異なるデータを決定するための1つ以上のセンサを備え得る。したがって、圧力感知の他に、ウェアラブルデバイスを使用して、消費カロリー、歩数、運動に費やした時間に関するデータを収集してもよく、これらの機能の2つ以上が多くの場合にウェアラブルデバイスで組み合わせられる。したがって、本発明による圧力感知モニタは、ウェアラブルデバイス全体を構成してもよく、又はその一部を形成してもよい。更に、本発明による圧力感知デバイスを、ウェアラブルデバイス内の他の感知デバイスと組み合わせてもよい。
【0174】
ウェアラブルデバイスのレビューは、Bao et al.,Advanced materials for health monitoring with skin-based wearable devices,Adv.Healthcare Mater.2017,6,1700024-(doi 10.1002/adhm.201700024)、に与えられており、更なる情報のために本文献が参照される。
【0175】
本発明の別の実施形態は、以下を含む複合材料に関する。
a)シロキサンポリマーを含み、閉鎖細孔体積分率と、任意選択で開放細孔体積分率とを含む、多孔質マトリックス材料、及び、
b)前記多孔質マトリックス材料a)の前記閉鎖細孔体積分率中に実質的に存在する導電性又は半導電性フィラー。
【0176】
本発明による圧力感知層の一部を形成する多孔質マトリックス材料に対する及びフィラーに対する組成、構造及び特性について上述したことは、本発明による複合材料についても当てはまる。それに応じて、更なる詳細については、上述の説明をここで参照する。
【0177】
本発明の別の実施形態は、本発明による複合材料を製造する工程に関し、工程は以下のステップを含む。
【0178】
a)シロキサンポリマー前駆体、及び硬化剤、及び任意選択で界面活性剤を含む、第1の非水相を準備するステップ、
b)水に分散させた導電性フィラーと、任意選択で水中での導電性フィラーの分散を促進及び支援するための添加剤とを含む、第2の水相を準備するステップ、
c)撹拌下で、水相b)を非水相a)に添加してエマルジョンを調製するステップ、
d)ステップc)で得られた生成物を網状化するステップ、及び最後に、
e)ステップd)で得られた生成物を熱処理して水を除去するステップ。
【0179】
本発明の工程による複合材料は、逆エマルジョン技術を用いて得られ、非水相はモノマーと架橋剤、及び任意選択で界面活性剤の混合物であり、水相は導電性又は半導電性フィラー、及び任意選択で界面活性剤を含有する水溶液である。
【0180】
本発明の工程のステップa)では、非水相が、シロキサンポリマー前駆体、硬化剤、及び任意選択で界面活性剤を使用することによって調製される。
【0181】
シロキサンポリマー前駆体は、好ましくは、以下に記載されるような2成分キットであってもよい。
【0182】
シロキサン前駆体ポリマー及び硬化剤を含む2成分キットは様々な供給業者から市販されており、当業者は専門知識及び特定の適用事例のニーズに基づいて適切な前駆体製品を選択するであろう。
【0183】
単なる例として、そのような2成分キットの主要な組成が、Sylgard(登録商標)184についてより詳細に説明される。
【0184】
Sylgard184(登録商標)は、ジメチルシロキサン、及び有機修飾シリカを含むシリコンエラストマーである。Sylgard(登録商標)184は、ベース(パートA)を硬化剤(パートB)と組み合わせることにより調製される。ベースは、溶媒(エチルベンゼン)中に、シロキサン(ジメチルビニル末端ジメチルシロキサン)、及びジメチルビニル化及びトリメチル化シリカ)を含む。硬化剤はまた、ジメチルメチル水素シロキサン、ジメチルビニル末端ジメチルシロキサン、ジメチルビニル化及びトリメチル化シリカ、テトラメチルテトラビニルシクリテトラシロキサン(tetramethyl tetravinyl cyclitetra siloxane)、及びエチルベンゼンを含む、溶媒中のシロキサン及びシリカの混合物を含む。
【0185】
Sylgard(登録商標)527は、Sylgard(登録商標)184と実質的に類似のシリコーンエラストマーゲルであるが、シリカフィラーを含まない。これはまた、ベース及び硬化剤からも調製される。多種多様なシロキサン組成物が様々な供給業者から市販されている。Sylgard(登録商標)シリーズの製品は、ステップa)における本発明の工程で使用することができ、例えばDow Chemicalから市販されている、そのような好適な2成分キットの単なる一例である。好適な硬化性シロキサンポリマー前駆体の別のグループは、Wacker Chemieから入手可能なElastosil(登録商標)シリーズの製品である。
【0186】
例示的なPDMS前駆体は、水素化物官能性架橋剤で架橋可能なビニル官能性PDMS、又は水素化物官能性架橋剤で架橋可能なヒドロキシル官能性PDMS、又は金属触媒の存在下で架橋可能なヒドロキシル官能性PDMSである。
【0187】
Sylgard(登録商標)184は、本発明による工程で使用されてよい特に好ましいシロキサンポリマー前駆体である。
【0188】
シロキサン前駆体は、触媒、阻害剤、流動化剤、シリコーン油、溶媒、及びフィラーの群から選択される1つ以上の賦形剤を含有してもよい。一実施形態では、賦形剤は、触媒(例えば、付加硬化用のPt錯体、又は縮合硬化用のSn錯体)、又は過酸化物(過酸化物硬化)の群から選択される。
【0189】
非水相a)はまた、任意選択で、系を安定させるために界面活性剤を含んでもよい。この目的に好適な界面活性剤は当業者に周知であり、多数の市販業者から多種多様に入手可能である。当業者は専門的知識に基づいて、好適な界面活性剤を選択するであろう。
【0190】
単なる例として、Silube(登録商標)などのシリコーンアルキルポリエーテルの製品シリーズが、本明細書では好適な界面活性剤として言及され得る。シリコーンアルキルポリエーテルは、ポリエーテルと共反応したアルキル化シリコーンである。このような界面活性剤は、有機油及びシリコーンを、水で、それぞれ水相で乳化するのに効果的である。
【0191】
Siltech社から入手可能なSilube(登録商標)製品は、次の構造で表される。
【0192】
界面活性剤は、シロキサン前駆体組成物に添加されてもよく、一般に、非水相a)の総重量の0.5~10重量%、好ましくは0.75~7.5重量%の量で存在する。
【0193】
本発明の工程のステップb)では、その中に分散された導電性又は半導電性フィラーを含む水相が提供される。
【0194】
ステップb)で提供される水相を得るために、導電性又は半導電性フィラーを、撹拌下又は超音波の適用下で、水、好ましくは脱イオン水に添加して、導電性フィラーを分散させることが好ましい。超音波を使用してフィラーの均質な分散を支援する場合、システムの過度な加熱を避けるために、システムは好ましくは、例えば氷浴で冷却される。
【0195】
導電性又は半導電性フィラーを添加する前の溶液は、導電性又は半導電性フィラーの分散を促進及び支援するために添加剤を含んでもよい。この目的のための好ましい界面活性剤は、アカシアゴムとしても知られるアラビアゴムである。アカシアゴムは、様々な種のアカシアの木の樹液を固めたものからなる天然ゴムである。アラビアゴムは、糖たんぱく質と多糖類の複雑な混合物である。
【0196】
当業者は、水溶液系における導電性及び半導電性フィラーの分散を促進及び支援する更なる添加剤について知っており、対応する製品が多くの様々な供給業者から多種多様に市販されているので、本明細書では更なる詳細を述べる必要はない。当業者は、専門知識及び経験に基づいて好適な分散助剤を選択するであろう。
【0197】
エマルジョンを得るために、工程のステップc)において、ステップb)で提供された水相が、ステップa)で提供された非水相に機械的撹拌下でゆっくりと添加される。
【0198】
流体のある領域が、隣接する領域に対して異なる速度で移動する時、流体は剪断力を受ける。高剪断ミキサーは、一般には電気モータで駆動される回転インペラ又は高速ロータ、又は一連のそのようなインペラ又はインラインロータを使用して、流体に作用して、流れと剪断力を生成する。先端速度、すなわちロータの外径での流体の速度は、ロータの中心での速度よりも大きいであろうし、この速度の違いが剪断力を生成する。
【0199】
好ましい実施形態では、高剪断ミキサーは、ステップb)で提供される水相を、ステップa)で提供される普通は不混和性のメインの連続相の中に分散又は輸送し、それによりエマルジョンを生成する。
【0200】
当業者は、特定の適用状況の必要性及び生成物の所望の最終形態に応じて、撹拌機の直径及びその回転速度を選択する(及びそれにより適用される剪断速度を規定する)であろう。
【0201】
高剪断速度の適用により、大量の非水相をシリコーンゴム中に均一に分布させ、長期間にわたって安定なエマルジョンを形成することが可能であることが驚くべきことに見出された。
【0202】
非水相の水相に対する重量比は特定の制限を受けず、一般に1:10~10:1の範囲内、好ましくは1:5~5:1の範囲内にある。好ましくは、非水相は系の連続相を形成し、その中に水相が分散され、非水相及び水相の量がそれぞれ選択される。そのような場合、水相の重量は、好ましくは、非水相の量を超えることはなく、一般に、エマルジョン全体の30~40重量%の範囲にある。いくつかの適用事例では、ほぼ等しい重量の非水相と水相が特定の利点を提供することが分かっている。
【0203】
ステップc)の後、導電性フィラーを含有する水相の液滴が非水相中に分散されたエマルジョンが得られる。これらの液滴の平均直径は一般に、0.1~300μmの範囲、好ましくは0.5~150μmの範囲、特に好ましくは1~30μmの範囲にある。得られる平均液滴サイズは、連続相の粘度に依存する。
【0204】
次いで、ステップc)で得られたエマルジョンを、一般に水の沸点未満の温度で、好ましくは60~95℃の範囲で、0.5~12時間、好ましくは1~8時間の間、網状化(硬化)することにより固体材料がステップd)で得られる。場合によっては、約4時間の硬化時間が最適であることが見出された。このステップにおける相対湿度は一般に、100%に近いか又は100%と同等である。
【0205】
一実施形態では、硬化は、触媒としてPtを使用することなどによって、付加ベースの硬化の形で行われてもよく、架橋剤のSi-H基がシリコーンポリマーのビニル基と反応する。
【0206】
別の実施形態によれば、硬化は、Snベースの硬化システム及び室温加硫シリコーンゴムの使用などによる縮合ベースのシステムで行われてもよく、アルコキシ架橋剤が加水分解工程を経て水酸基と共に残り、問題のポリマーに結合した別の水酸基との縮合反応に参加する。
【0207】
更に別の実施形態では、硬化は、過酸化物ベースのシステムで行われてもよく、有機過酸化物化合物が高温で分解して、ポリマー鎖を化学的に架橋する反応性ラジカルを形成する。
【0208】
最終ステップでは、ステップd)で得られた生成物に熱処理を実施して水を除去する。硬化後に形成されたシロキサンポリマーは水蒸気を透過するので、導電性又は半導電性フィラーがマトリックス材料の閉鎖細孔体積分率中に実質的に存在している状態で、好ましくは細孔壁が導電性又は半導電性フィラーでコーティングされた状態で、液滴は多孔質構造を去り、それにより本発明による複合材料が得られる。
【0209】
ステップd)での硬化、及びステップe)での乾燥の条件は、多孔質複合材料の形態に影響を与え、当業者は、所望の形態を得るために好適な方法でその条件を選択するであろう。
【0210】
本発明の別の実施形態は、本発明による複合材料を含む、好ましくはこの複合材料から本質的になる、更により好ましくはこの複合材料からなるフィルムに関する。
【0211】
好ましい実施形態によれば、フィルムの厚さは、0.1~500μmの範囲、好ましくは5~250μmの範囲にある。層の平均厚さは、好ましくは少なくとも5μm、より好ましくは少なくとも10μm、より好ましくは少なくとも15μmである。最も好ましい実施形態では、層の平均厚さは15μm~100μmの範囲にある。
【0212】
本発明によるフィルム(これは、本発明による圧力感知層に含まれるフィルムである)は、本発明による工程のステップc)のエマルジョンを、ステップd)を適用する前にモールドに流し込むことによってフィルムに形成することによって得ることができる。次いで、このようにして得られたフィルムは、本発明の工程に従ってステップd)及びe)が実施されて、圧力感知デバイスでの使用に好適な最終フィルムが得られる。
【0213】
本発明による工程の最終ステップでは、ステップd)で得られた生成物に熱処理を実施して水を除去する。この熱処理ステップは一般に、大気圧での水の沸点を超える温度で、好ましくは100~200℃の範囲の温度で、0.1時間~5時間、好ましくは0.5~5時間の持続時間にわたって実施される。場合によっては、130~170℃の温度、及び0.75~3時間、特に1~2時間の処理時間が好適であることが見出されている。
【0214】
最終ステップの後、微多孔質複合材料が最終的にフィルム形状で得られ、微多孔質複合材料は、閉鎖細孔体積分率中に細孔を含み、細孔は、平均直径が好ましくは0.1~200μmの範囲にあり、好ましくは細孔壁は裏打ちされており、細孔は導電性フィラーである程度充填されている。
【0215】
本発明の更なる実施形態は、本発明によるフィルムでコーティングされた基材に関する。この基材は、本発明による圧力感知層に含まれる基材である。
【0216】
基材は構造及び組成に関して特定の制限は受けず、当業者は具体的な適用状況の必要性を考慮して基材を選択するであろう。
【0217】
基材の構造は、特定の意図した使用に合わせて採用されてもよく、基材は、変形可能なフィルム用のキャリアの機能を有してもよく、又は前記そのフィルムに対して機械的安定性の増加を提供してもよい。
【0218】
基材の材料は、圧力感知デバイスにおけるコーティングされた基材の意図した最終用途に応じて、それぞれ金属性若しくは非金属性、又は絶縁性若しくは導電性であり得る。場合によっては、アルミニウム基材、又はアルミニウムを含む基材が、特定の利点を提供することが見出されている。
【0219】
基材へのフィルムのコーティングは、文献に記載されている当業者に周知の従来のコーティング技術を用いて実施され得るので、本明細書では更なる詳細を説明する必要はない。
【0220】
本発明の別の実施形態は、本発明によるフィルムの第1の層と、それに隣接する絶縁層である第2の層とを含む多層システムに関する。
【0221】
本発明による複合材料を含むフィルム、又はそのようなフィルムでコーティングされた基材は、パーコレーション限界に近い量、又はそれを超える量の導電性フィラーが使用されると、誘電損失を示す場合があり、これはある種の欠点である。
【0222】
本発明による多層システムは、本発明に従って、絶縁層である第2の層をフィルム上に追加することにより、これらの欠点を克服する。これにより、材料の高い誘電率が維持されると同時に、導電率が大幅に減少する。
【0223】
第2の絶縁層の材料は、第1の層上にフィルム又は好適なコーティングに形成され得る任意の絶縁材料であり得る。経済性及び加工性の理由から、熱可塑性ポリマー又はシリコーンゴムの絶縁層が好ましい。熱可塑性ポリマーの例としてポリエステルを言及することができる。ポリエチレンテレフタレートポリマーに基づくマイラー(登録商標)フィルムが多くの供給業者から市販されおり、加工性及びコストの点で有利であり、したがって、第2の絶縁層に対して特に好ましい絶縁材料のグループを表す。
【0224】
第2の絶縁層の厚さは特定の制限を受けず、多くの場合、0.1~500μmの範囲、好ましくは0.1~50μmの範囲、好ましくは多くとも5μmである。
【0225】
絶縁層は、本発明に従う複合材料を含むフィルム上に、又はそのようなフィルムでコーティングされた基材上に延展させてもよい。絶縁層自体も基材上に堆積させてもよい。
【0226】
複合材料を含むフィルム上への絶縁層のコーティングは、当業者に周知であり文献に記載されているスピンコーティング、回転コーティング、又は他のコーティング技術などの従来のコーティング技術によって実現できる。
【0227】
本発明による圧力感知層、圧力感知層を含むフィルム、及びそのようなフィルムを含むコーティングされた基材又は多層構造は、ピエゾ容量デバイスでの使用に特に好適である。その高い誘電率及び低い導電率に起因して、その材料を使用するデバイスの感度は高く、外部圧力の非常に小さな変動を確実に決定することができる。
【0228】
本発明による微多孔質複合材料に圧縮応力が印加された場合、その微細構造の大きな変形並びに変更が生じる。両方の影響により、等価静電容量の大きな変動につながり、したがって、低い外部圧力、例えば0.1kPa~10kPaの範囲における高い感度につながる。それに応じて、本発明による複合物は、容量性の圧力感知用途にとって、より具体的には、血圧及び心拍数などの生体信号の監視に一般的に必要な低圧センサにとって優れた候補である。
【0229】
実施例1
5gのアラビアゴム(Sigma Aldrichから入手)と95gの脱イオン水を平底フラスコ内で混合することにより、5.0重量%のアラビアゴムを含む溶液を調製した。カーボンブラック粉末(導電性フィラー)を分散させるための界面活性剤として機能するアラビアゴムを均質に溶解させるために磁気撹拌を適用した。使用したカーボンブラックは、Alfa Aesarから購入した参照番号39724-カーボンブラックであり、受け入れたままの状態で使用した。
【0230】
カーボンブラック粉末の分散は、所望の量のカーボンブラック粉末とアラビアゴム溶液を平底フラスコ中で混合することにより実施した。超音波処理による過度の温度上昇を回避するために溶液を氷浴で冷却しながら、混合物を1時間、超音波処理してカーボンブラック粒子を均質に分散させた。得られた生成物を水相として使用した。
【0231】
非水相として、Sylgard(登録商標)184を、PDMSベース及び硬化剤からなるキットとしてDow Corning社から購入した。PDMS材料の比誘電率は約2であった。PDMSベースと架橋剤との混合物に、Silube(登録商標)J-208-212を界面活性剤として加えて、界面活性剤が5重量%の濃度になるようにした。
【0232】
スパチュラで機械的に撹拌しながら水相を非水相にゆっくりと添加して、水相と非水相との比が50:50になるようにした。
【0233】
このようにして得られた油中水型エマルジョンを深さ500μm、直径24mmのモールドに流し込みカバーした。その後、モールドを(湿度が100%になるように)水浴中で90℃の温度で4時間さらすことにより、フィルムを網状化した。
【0234】
最後のステップでは、網状化されたフィルムをモールドから取り出し、150℃の温度のオーブン内に1時間置いて水分を除去した。
【0235】
得られた複合材料は、平均直径が10~30μmである細孔を有する微多孔質構造を有していた。平均細孔径を、生成物の走査型電子顕微鏡(SEM)画像で決定した。
【0236】
複合材料のカーボンブラック含有量は、複合材料の全体重量を基準にして、4.6~10.2重量%の範囲であった。
【0237】
誘電率を、円形の黄銅電極を備えるサンドイッチ形状を使用した広帯域誘電分光法によって決定した。測定を、10Hz~107Hzの周波数fにわたって室温で行った。誘電率の実部は、いかなるカーボンブラックも含まない材料では3であり、4.6重量%のカーボンブラックを含む複合材料では13.5であった。カーボンブラックの量が10.2重量%において、誘電率は4000と決定されたが、濃度がパーコレーション閾値を超えたので材料は導電性であった。得られたフィルムを絶縁フィルム(マイラーフィルム)との多層構造にした場合、誘電率は330であったが、材料は非導電性のままであった。
【0238】
静電感度を、電極として機能する直径25mmの円形ステンレス鋼クランプを使用して圧縮下で測定した。Keysight Precision LCRメータを使用して1V及び100Hzで複素インピーダンスを測定しながら、RSA GII Solids Analyzerを使用して試料に標準圧力を維持した。試料の等価静電容量Cp及び抵抗Rpを見積もるために、材料が、抵抗とコンデンサの並列の組み合わせとして機能すると仮定した。基準静電容量C0を、適宜、試料に0.1kPaを印加した時と定義した。0.1kPa~70kPaの範囲の圧力で測定を実施した。
【0239】
カーボンブラックの濃度が4.2重量%で絶縁層がない場合、2kPa~10kPaの圧力範囲においてΔC/Coは0.9~1.8の範囲の値に達した。カーボンブラックの濃度が10%で絶縁層が存在しない場合、ΔC/Coの値は2kPaの圧力において0に近い値に低下した。絶縁層が存在しカーボンブラックの濃度が10重量%の場合、ΔC/Coは2kPaの圧力において約1.8であり、10kPaの圧力において4を超えた。
【0240】
圧力センサ(カーボンブラックの濃度が10重量%の場合)は、0.1kPa~1kPaの圧力変化に対して敏感であり、この圧力変化は、プラス150pFの静電容量の変化と関連付けられた。
【0241】
通常は、本発明の感知層は、非常に小さな圧力変化に敏感であり、0.1kPaと低い圧力変化は、100pF以上の静電容量の変化に関連付けられる。
【0242】
これらの結果は、本発明による圧力感知層を低圧力感知デバイスで使用するための優れた感度を示している。
【0243】
【0244】
1 第1及び第2のセンサ用の接地
2 第1のセンサ
3 第2のセンサ
4 第3のセンサ
5 第4のセンサ
6 第3及び第4のセンサ用の接地
21、31 保護層
22、32 底部電極
23、33 圧力感知層
24、34 上部電極
25、35 封止材
401、501、601、701 圧力感知デバイス
402、502、602、702 電極
403、503、603、703 圧力感知層
404、504、604、704 保護層
405、505、605、705 圧力変化による静電容量変化
406、506、606、706 信号変換ユニット
407、507、607、707 データ伝送ユニット
408、508、608、708 マイクロコントローラユニット
409、509、609、709 電源
410、510、610、710 電子デバイス
411、511、611 スマートフォン
412、512、612、712 通信信号
413、513、614、713 データ伝送ユニット
414、514、614、714 患者認証手段
415、515、615、715 患者通知手段
416、516、616、716 データ分析手段
417、517、617 結果分析手段
418、518、618、718 データ格納手段
519、619、719 クラウド
520、620、720 インターネット接続
621、721 メモリ
722 表示デバイス
723 ゲートウェイ
724 ユーザインタフェース