(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-16
(45)【発行日】2022-02-25
(54)【発明の名称】物流業務システムの構築方法および物流業務システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/08 20120101AFI20220217BHJP
【FI】
G06Q10/08
(21)【出願番号】P 2021090008
(22)【出願日】2021-05-28
【審査請求日】2021-05-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】399076312
【氏名又は名称】株式会社YE DIGITAL
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浅成 直也
(72)【発明者】
【氏名】西山 文明
(72)【発明者】
【氏名】楊 明超
(72)【発明者】
【氏名】平井 隆弘
【審査官】池田 聡史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/095418(WO,A1)
【文献】特表2006-506716(JP,A)
【文献】特表2006-510133(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータが実行する、物流業務システムの構築方法であって、
物流業務を実行するユーザが抽象化につき第2のレベルで定義する、前記物流業務における要素、前記要素の間の依存関係、および、前記要素の間でやり取りされるデータに関する定義情報を外部装置または記憶媒体から取得する取得工程と、
汎用的なワークフローエンジン
において定義される第1のレベルの前記定義情報よりも具体化され、前記第2のレベルよりも抽象化された第3のレベルの前記定義情報によって前記物流業務に関するワークフローが生成可能となるように、
前記取得工程において取得された前記第2のレベルの前記
定義情報を
前記第3のレベルで抽象モデル化するモデル化工程と、
前記モデル化工程において抽象モデル化された前記
第3のレベルの前記定義情報に基づき、
ビジネスプロセスモデリング言語を介してカスタマイズされた前記ワークフロー
エンジンを生成する生成工程と
を含
み、
前記モデル化工程は、
前記第2のレベルの前記定義情報に前記要素として含まれ、少なくとも前記物流業務システムの上位システム、サブシステム、人および機器を含む利害関係者を示すデータを、作業主体を示すデータとして抽象モデル化し、前記作業主体が前記物流業務において行う各作業を示すデータを、少なくとも特定、カウントまたは移動を示すデータとして抽象モデル化し、前記作業主体への一連の作業の指示である作業指示を示すデータを、少なくとも前記特定、カウントまたは移動の組み合わせからなるデータとして定義する
ことを特徴とする物流業務システムの構築方法。
【請求項2】
前記モデル化工程は、
前記物流業務における在庫管理および搬送制御に関する前記
定義情報について抽象モデル化する
ことを特徴とする請求項
1に記載の物流業務システムの構築方法。
【請求項3】
前記モデル化工程は、
前記生成工程における前記
ビジネスプロセスモデリング言語によるローコード開発によって、前記在庫管理および搬送制御に関
し前記ワークフロー
エンジンが
カスタマイズ可能となるように前記
定義情報を抽象モデル化する
ことを特徴とする請求項
2に記載の物流業務システムの構築方法。
【請求項4】
前記モデル化工程は、
前記物流業務における前記
定義情報を物理的単位および仮想的単位に抽象モデル化する
ことを特徴とする請求項1
、2または3に記載の物流業務システムの構築方法。
【請求項5】
前記モデル化工程は、
前記物流業務における
前記作業主体、
前記作業主体が行う作業の対象物
、および
、前記対象物の管理場所を抽象モデル化する
ことを特徴とする請求項1~
4のいずれか一つに記載の物流業務システムの構築方法。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか一つに記載の物流業務システムの構築方法を用いて構築される物流業務システムであって、
カスタマイズされた前記ワークフロー
エンジンに
よって前記物流業務を実行する実行部
を備えることを特徴とする物流業務システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、物流業務システムの構築方法および物流業務システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種分野の業務に最適化させたワークフローを生成し、かかるワークフローに沿って業務を実行させるワークフローシステムが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来技術には、構築作業の効率化を図るうえで、さらなる改善の余地がある。
【0005】
たとえば、特許文献1に開示の技術は医療分野の診療業務のワークフローシステムに関するが、こうしたワークフローシステムをSI(System Integration)提供する場合、SI業者は、システムの構築にあたってワークフローを顧客の要件に沿って最適化することに非常に手間がかかっていた。
【0006】
物流業務に関するワークフローシステム(以下、適宜「物流業務システム」と言う)を例に挙げると、たとえばひとえに物流業務システムと言っても、業務内容、取り扱う荷の形状、入出庫指示の件数、作業者の人数、および、使用する設備の種類や台数などは顧客となる物流業者ごとに異なる場合が多い。
【0007】
このため、SI業者がSI提供を行う際は、たとえば既存や標準的なシステムを顧客の要件にあわせてカスタマイズすることがよく行われる。ただし、かかる場合、顧客の要件に依存する変更箇所が大きく、作業やデータの標準化が難しいため、システムの業務適用率が低いものとなりがちであった。また、カスタマイズにおいては、業務の業務フローをベースにシステム化を行うため、仕様齟齬が発生し、不具合の元になりやすいという問題もあった。さらに、業務変更や設備変更の際にも、修正する範囲が大きくなりがちであり、多大な工数が必要となるうえ、品質の確保を難しくしていた。
【0008】
実施形態の一態様は、上記に鑑みてなされたものであって、構築作業の効率化を図ることができる物流業務システムの構築方法および物流業務システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態の一態様に係る物流業務システムの構築方法は、コンピュータが実行する、物流業務システムの構築方法であって、取得工程と、モデル化工程と、生成工程とを含む。前記取得工程は、物流業務を実行するユーザが抽象化につき第2のレベルで定義する、前記物流業務における要素、前記要素の間の依存関係、および、前記要素の間でやり取りされるデータに関する定義情報を外部装置または記憶媒体から取得する。前記モデル化工程は、汎用的なワークフローエンジンにおいて定義される第1のレベルの前記定義情報よりも具体化され、前記第2のレベルよりも抽象化された第3のレベルの前記定義情報によって前記物流業務に関するワークフローが生成可能となるように、前記取得工程において取得された前記第2のレベルの前記定義情報を前記第3のレベルで抽象モデル化する。前記生成工程は、前記モデル化工程において抽象モデル化された前記第3のレベルの前記定義情報に基づき、ビジネスプロセスモデリング言語を介してカスタマイズされた前記ワークフローエンジンを生成する。また、前記モデル化工程は、前記第2のレベルの前記定義情報に前記要素として含まれ、少なくとも前記物流業務システムの上位システム、サブシステム、人および機器を含む利害関係者を示すデータを、作業主体を示すデータとして抽象モデル化し、前記作業主体が前記物流業務において行う各作業を示すデータを、少なくとも特定、カウントまたは移動を示すデータとして抽象モデル化し、前記作業主体への一連の作業の指示である作業指示を示すデータを、少なくとも前記特定、カウントまたは移動の組み合わせからなるデータとして定義する。
【発明の効果】
【0010】
実施形態の一態様によれば、構築作業の効率化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施形態に係る物流業務システムの構築方法の概要説明図(その1)である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る物流業務システムの構築方法の概要説明図(その2)である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る物流業務システムの構築方法の概要説明図(その3)である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る物流業務システムの構築方法の概要説明図(その4)である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る物流業務システムの構成例を示す図である。
【
図6】
図6は、各サブシステムの役割と主な機能を示す図である。
【
図7】
図7は、物流業務システムにおける管理範囲の説明図である。
【
図8】
図8は、実施形態に係る生成装置のブロック図である。
【
図9】
図9は、実施形態に係る実行システムのブロック図である。
【
図10】
図10は、実施形態に係る物流業務に関わる要素の説明図である。
【
図11】
図11は、管理場所の具体例を示す図(その1)である。
【
図12】
図12は、管理場所の具体例を示す図(その2)である。
【
図13】
図13は、管理場所の具体例を示す図(その3)である。
【
図14】
図14は、管理場所の具体例を示す図(その4)である。
【
図17】
図17は、管理場所に関する説明図(その1)である。
【
図18】
図18は、管理場所に関する説明図(その2)である。
【
図19】
図19は、管理場所に関する説明図(その3)である。
【
図20】
図20は、管理場所に関する説明図(その4)である。
【
図21】
図21は、作業主体が行う作業に関する説明図である。
【
図31】
図31は、入荷・入庫業務に関するワークフローの具体例を示す図(その1)である。
【
図32】
図32は、
図31に示すワークフローの実行時におけるUI画面の動作例を示す図である。
【
図33】
図33は、入荷・入庫業務に関するワークフローの具体例を示す図(その2)である。
【
図34】
図34は、
図33に示すワークフローの実行時におけるUI画面の動作例を示す図である。
【
図35】
図35は、補助作業を含むワークフローの具体例を示す図(その1)である。
【
図36】
図36は、補助作業を含むワークフローの具体例を示す図(その2)である。
【
図37】
図37は、生成装置の機能を実現するコンピュータの一例を示すハードウェア構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する物流業務システムの構築方法および物流業務システムの実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0013】
<本実施形態の概要>
まず、実施形態に係る物流業務システムの構築方法の概要について、
図1~
図4を参照して説明する。
図1~
図4は、実施形態に係る物流業務システムの構築方法の概要説明図(その1)~(その4)である。
【0014】
既に述べたが、物流業務システムをSI業者が顧客にSI提供するにあたり、既存技術には、構築作業の効率化を図るうえで、さらなる改善の余地がある。
【0015】
具体的には、物流業務システムをSI提供する場合、SI業者は、システムの構築にあたってワークフローを顧客の要件に沿って最適化することに非常に手間がかかっていた。
【0016】
たとえばひとえに物流業務システムと言っても、業務内容、取り扱う荷の形状、入出庫指示の件数、作業者の人数、および、使用する設備の種類や台数などは顧客となる物流業者ごとに異なる場合が多い。
【0017】
このため、SI業者がSI提供を行う際は、たとえば既存や標準的なシステムを顧客の要件にあわせてカスタマイズすることがよく行われる。ただし、かかる場合、顧客の要件に依存する変更箇所が大きく、作業やデータの標準化が難しいため、システムの業務適用率が低いものとなりがちであった。また、カスタマイズにおいては、業務の業務フローをベースにシステム化を行うため、仕様齟齬が発生し、不具合の元になりやすいという問題もあった。さらに、業務変更や設備変更の際にも、修正する範囲が大きくなりがちであり、多大な工数が必要となるうえ、品質の確保を難しくしていた。
【0018】
そこで、実施形態に係る物流業務システムの構築方法では、汎用的なワークフローエンジンを利用して物流業務に関するワークフローが生成可能となるように、上記物流業務における作業およびデータを抽象モデル化し、抽象モデル化された上記作業およびデータに基づき、上記ワークフローエンジンを利用して上記ワークフローを生成することとした。なお、「上記ワークフローエンジンを利用して上記ワークフローを生成する」とは、汎用的なワークフローエンジンをカスタマイズし、物流業務システムで活用できるワークフローシステムを制作することを指す。
【0019】
また、上記抽象モデル化にあたり、上記ワークフローエンジンにおいて定義される抽象化レベルよりも詳細なレベルで上記作業およびデータを抽象モデル化することとした。
【0020】
また、上記抽象モデル化にあたり、上記ワークフローエンジンにおいて定義される抽象化レベルである第1のレベル、および、上記物流業務を実行するユーザが定義する抽象化レベルである第2のレベルの間となる第3のレベルで上記作業およびデータを抽象モデル化することとした。
【0021】
また、上記抽象モデル化にあたり、上記第2のレベルで定義される上記物流業務における要素、かかる要素の間の依存関係、および、かかる要素の間でやり取りされるデータを、少なくとも上記物流業務が実行可能となるように上記第3のレベルで抽象モデル化することとした。
【0022】
より具体的に説明する。まず、実施形態に係る物流業務システムの構築方法では、公知技術である汎用的なワークフローエンジン(以下、適宜「汎用ワークフローエンジン」と言う)を利用することとした。
【0023】
汎用ワークフローエンジンは、業務を抽象化し、作業とデータの流れを定義してモデル化することにより、対象となるワークフローに適した操作画面やデータの流れをプログラミングレスで実現し、ワークフローのPDCA(Plan-Do-Check-Act)サイクルを管理するパッケージソフトである。なお、本実施形態では、オープンソースであるActivitiを利用している。ただし、利用する汎用ワークフローエンジンを限定するものではない。
【0024】
汎用ワークフローエンジンを利用することで、システム構築にかかる工数を大幅に削減することが可能となる。ただし、汎用ワークフローエンジンは、あくまで汎用的に業務を抽象化しており、SI提供を受ける顧客ごとに応じた物流業務システムを構築するうえでは、そのまま利用することはできない。なお、
図1に示すように、かかる汎用ワークフローエンジンにおいて定義される抽象化レベルを、以下では、「第1のレベル」と呼ぶ。
【0025】
一方で、SI提供を受ける各顧客、すなわち物流業者ごとの要件は、一般に、物流業務を実行するユーザが定義する抽象化レベルで表されると言える。言い換えれば、各顧客が物流業務を遂行するうえで認識している要件の認識レベルである。
図1に示すように、かかる物流業務を実行するユーザが定義する抽象化レベルを、以下では、「第2のレベル」と呼ぶ。
【0026】
したがって、仮に汎用ワークフローエンジンを標準的なシステムとして利用する場合、ワークフローを顧客の要件に沿って最適化させるうえでは、既存技術を用いた場合、抽象化レベルを第1のレベルから第2のレベルへ落とすカスタマイズを行う必要がある。しかし、これでは、上述した既存技術を用いた場合の課題を解決することはできない。
【0027】
そこで、
図1に示すように、実施形態に係る物流業務システムの構築方法では、第1のレベルと第2のレベルとの間、すなわち第1のレベルよりは具体的であり、第2のレベルよりは抽象的な抽象化レベルである「第3のレベル」で物流業務に関する作業およびデータを抽象モデル化する。そのうえで、抽象モデル化した作業およびデータをワークフローのオプションとしつつ、物流業務システムとしてのワークフローが描けるように、汎用ワークフローエンジンへの適合を意識しながら、ワークフロー制作者が汎用ワークフローエンジンをカスタマイズする。
【0028】
具体的には、
図2に示すように、実施形態に係る物流業務システムの構築方法では、第2のレベルで定義される物流業務における要素、かかる要素の間の依存関係、および、かかる要素の間でやり取りされるデータを、少なくとも物流業務が実行可能となるように第3のレベルで抽象モデル化する。
【0029】
ここに言う「要素」は、たとえば利害関係者である。利害関係者は、たとえば、基幹システム(上位システム)、自システム、人(管理者、作業者等)、機器等である。また、「要素の間の依存関係」は、たとえば利害関係者間を繋ぐフローである。また、「要素の間でやり取りされるデータ」は、たとえば利害関係者間を繋ぐフローでやり取りされるデータである。
【0030】
そして、実施形態に係る物流業務システムの構築方法では、たとえばこれら要素、要素の間の依存関係、および、要素の間でやり取りされるデータを、少なくとも物流業務、特に物流業務のうちの「倉庫業務」が実行可能となるように第3のレベルで抽象モデル化する。
【0031】
たとえば、実施形態に係る物流業務システムの構築方法では、顧客固有の業務および業務変化に影響を受けないよう、特に、倉庫業務の在庫管理および搬送制御に関する普遍的な部分についての抽象モデル化を実施している。
【0032】
上述の要素についての一例を挙げると、
図3に示すように、実施形態に係る物流業務システムの構築方法では、第2のレベルにおける人や機器などを、第3のレベルでは「作業主体」として抽象化する。また、第2のレベルにおける「商品」や「品目」などを、第3のレベルでは「対象物」として抽象化する。また、第2のレベルにおける「保管棚」や「什器」などを、第3のレベルでは「管理場所」として抽象化する。
【0033】
なお、第1のレベルから見れば、これら第3のレベルにおける「作業主体」、「対象物」、「管理場所」等は、第1のレベルにおいて定義される汎用的な要素(図中の「汎用要素1」、「汎用要素2」等)から具体化する必要がある。
【0034】
しかし、既存技術を用いた場合に第1のレベルから第2のレベルへの具体化を行うよりも、詳細化の程度は低いため、カスタマイズにかかる工数は少なくなる。したがって、実施形態に係る物流業務システムの構築方法によれば、物流業務システムの構築作業の効率化を図ることができる。
【0035】
なお、上述した詳細化の程度に関し、実施形態に係る物流業務システムの構築方法では、汎用ワークフローエンジンを用いたビジネスプロセスモデリング言語によるローコード開発によって、少なくとも倉庫業務に関するワークフローが生成可能となるように第3のレベルで抽象モデル化する。
【0036】
これにより、やはりカスタマイズにかかる工数を削減することができ、物流業務システムの構築作業の効率化を図ることができる。
【0037】
そしてさらに、実施形態に係る物流業務システムの構築方法では、上述した作業主体が倉庫業務において行う各作業を、「特定」、「カウント」、「移動」に分類・整理することで抽象化する。
【0038】
また、上述した作業主体への一連の作業の指示である「作業指示」を、かかる「特定」、「カウント」、「移動」の一連の作業の組み合わせとして整理・分類し、定義する。そのうえで、
図4に示すように、実施形態に係る物流業務システムの構築方法では、たとえば、それぞれ1つまでの「作業指示」、「特定」、「カウント」、「移動」から構成されるワークフローを生成する。なお、
図4に示すのは、実施形態に係るワークフローのあくまで基本形の一例であり、必須要件ではないが、「特定」、「カウント」、「移動」を含む場合、その順番は変更できない。
【0039】
また、倉庫業務において行う各作業のうち、「特定」、「カウント」および「移動」に含まれないものは「補助作業」として抽象化される。なお、「補助作業」は、
図4に示すように、ワークフロー内に任意に配置可能となるように抽象化され、定義される。
【0040】
なお、
図3および
図4を用いて説明した第3のレベルでの抽象モデル化の具体例、言い換えれば本実施形態に係る抽象化レベルでの各種情報の定義例や、生成されるワークフローの具体的な例については、
図10~
図36を用いた説明で後述する。
【0041】
このように、実施形態に係る物流業務システムの構築方法では、汎用ワークフローエンジンを利用して物流業務に関するワークフローが生成可能となるように、物流業務、特に倉庫業務における作業およびデータを抽象モデル化し、抽象モデル化された作業およびデータに基づき、汎用ワークフローエンジンを利用してワークフローを生成することとした。
【0042】
したがって、実施形態に係る物流業務システムの構築方法によれば、構築作業の効率化を図ることができる
【0043】
以下、上述した実施形態に係る物流業務システムの構築方法を適用した物流業務システム1の構成について、さらに具体的に説明する。
【0044】
<物流業務システムの構成>
図5は、実施形態に係る物流業務システム1の構成例を示す図である。また、
図6は、各サブシステムの役割と主な機能を示す図である。
【0045】
図5に示すように、実施形態に係る物流業務システム1は、管理システム30と、実行システム50と、制御システム70と、操作システム90との各サブシステムを含む。各サブシステムは、図示略のネットワークを介して相互に通信可能に設けられる。なお、各サブシステムは、たとえば1台のコンピュータが実行する各プロセスとして実現されてもよい。かかる場合、各サブシステムは、たとえばプロセス間通信によって相互に通信可能に設けられる。
【0046】
また、物流業務システム1は、図示略の基幹システム、言い換えれば上位システムと通信可能に接続される。
【0047】
管理システム30は、基幹システム連携、実行システム50が管理する各拠点の統合管理、倉庫業務に付随する業務特有処理、実行システム50との連携、等の各処理を実行する。
【0048】
実行システム50は、倉庫拠点(以下、単に「拠点」と言う)ごとに設けられる。実行システム50は、他システムとの連携、倉庫作業の最適化、可視化、等の各処理を実行する。倉庫作業の最適化処理は、後述する生成装置10によって生成されたワークフロー群に基づくワークフロー制御処理として実行される。可視化処理は、同じく生成装置10によって生成されたワークフロー群により生成されたデータに基づく操作システム90に対するUI(User Interface)提供処理として実行される。
【0049】
制御システム70は、各拠点に設けられ、実行システム50からの動作指示に基づくAS/RS(Automated Storage and Retrieval System)制御、ロボット制御、AGV(Automated Guided Vehicle)制御の各処理を実行する。
【0050】
操作システム90は、実行システム50から提供されるUIに基づく作業オペレーション機能をたとえば作業者に対し提供する。
【0051】
管理システム30、実行システム50、制御システム70および操作システム90の各サブシステムの役割と主な機能については
図6を参照されたい。
【0052】
次に、
図7は、物流業務システム1における管理範囲の説明図である。物流業務システム1は、上位システムからの入出荷指示に従い、各拠点の入出庫管理、在庫管理等を行う。
【0053】
図7に示すように、各拠点は、各実行システム50の管理範囲となる。また、全拠点、管理システム30の入庫元および出庫元は、管理システム30の管理範囲となる。
【0054】
なお、各拠点は、荷下し、入荷検品、入庫・出庫、仕分け・荷合せ、出荷検品・出荷梱包、積込み等の各機能が実行される。荷下しは、機器としてたとえばロボット等が用いられる。入荷検品は、機器としてたとえばRFID(Radio Frequency Identifier)ゲートやHT(Handy Terminal)等が用いられる。
【0055】
入庫・出庫は、機器としてたとえばAGV、コンベヤ、ロボット、HT、AS/RS等が用いられる。また、AS/RSに替えて、荷は人手でラックに置かれたり、平置きされたりする場合もある。
【0056】
仕分け・荷合せは、機器としてたとえばソータ、HT、AGV、コンベヤ等が用いられる。出荷検品・出荷梱包は、機器としてたとえばRFIDゲート、HT、自動梱包機等が用いられる。積込み、機器としてたとえばロボット等が用いられる。
【0057】
図5の説明に戻る。また、物流業務システム1において実行される各ワークフローは、生成装置10によって生成される。生成装置10は、汎用ワークフローエンジンを利用して物流業務に関するワークフローが生成可能となるように、物流業務における作業およびデータを抽象モデル化し、抽象モデル化された作業およびデータに基づき、汎用ワークフローエンジンを利用してワークフローを生成する装置である。
【0058】
生成装置10は、たとえばSI業者におけるワークフロー制作者によって利用されるコンピュータである。なお、生成装置10は、複数のコンピュータによって構成されてもよい。
【0059】
生成装置10は、生成した各ワークフローが格納されたワークフローDB(Database)12dを実行システム50にワークフローDB53aとして取得させる。実行システム50は、かかるワークフローDB53aに格納された各ワークフローに沿って物流業務を実行する。なお、実行システム50は、実施形態に係る「実行部」の一例に相当する。
【0060】
<生成装置の構成>
次に、
図8は、実施形態に係る生成装置10のブロック図である。なお、
図8および後に示す
図9では、本実施形態の特徴を説明するために必要な構成要素を機能ブロックで表しており、一般的な構成要素についての記載を省略している。
【0061】
換言すれば、
図8および
図9に図示される各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。たとえば、各機能ブロックの分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することが可能である。
【0062】
なお、
図8および
図9を用いた説明では、これまでに既に述べた構成要素については、説明を簡略するか、省略する場合がある。
【0063】
図8に示すように、実施形態に係る生成装置10は、取得I/F(Interface)11と、記憶部12と、制御部13とを備える。また、生成装置10は、UI部3が接続される。UI部3は、入出力部品であって、キーボードやマウス、ディスプレイ、タッチパネル等によって実現される。
【0064】
取得I/F11は、たとえば、NIC(Network Interface Card)等によって実現される。かかる場合、取得I/F11は、たとえば図示略のネットワークに対し有線または無線で接続され、かかるネットワークを介して外部装置から倉庫業務情報を受信する。倉庫業務情報は、上述した第2のレベルの倉庫業務に関する情報に相当する。
【0065】
また、取得I/F11は、たとえば、USB(Universal Serial Bus)等によって実現される。かかる場合、取得I/F11は、たとえばUSBインタフェースを有する記憶媒体と接続され、かかる記憶媒体から倉庫業務情報を取得する。
【0066】
記憶部12は、たとえば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の半導体メモリ素子、または、ハードディスク、光ディスク等の記憶装置によって実現される。
図8に示す例では、記憶部12は、倉庫業務情報DB12aと、抽象モデルDB12bと、汎用ワークフローエンジン12cと、ワークフローDB12dとを記憶する。
【0067】
倉庫業務情報DB12aは、取得I/F11を介し、後述する取得部13aによって取得される倉庫業務情報が格納されるデータベースである。抽象モデルDB12bは、後述するモデル化部13bによって抽象モデル化された倉庫業務における作業およびデータに関する定義情報が格納されるデータベースである。抽象モデルDB12bに格納される定義情報は、上述した第3のレベルでの定義情報に相当する。
【0068】
汎用ワークフローエンジン12cは、上述した汎用的なワークフローエンジンに相当する。ワークフローDB12dは、後述する生成部13cによって生成される倉庫業務に関する各ワークフローが格納されるデータベースである。
【0069】
制御部13は、コントローラ(controller)であり、たとえば、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等によって、記憶部12に記憶されている図示略の各種プログラムがRAMを作業領域として実行されることにより実現される。また、制御部13は、たとえば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路により実現することができる。
【0070】
制御部13は、取得部13aと、モデル化部13bと、生成部13cとを有し、以下に説明する情報処理の機能や作用を実現または実行する。
【0071】
取得部13aは、取得I/F11を介し、第2のレベルの倉庫業務情報を取得する。また、取得部13aは、取得した倉庫業務情報を倉庫業務情報DB12aへ格納する。
【0072】
モデル化部13bは、UI部3を介したワークフロー制作者の操作等に基づき、倉庫業務情報DB12aに格納された倉庫業務情報における作業およびデータを第3のレベルで抽象モデル化し、抽象モデルDB12bへ格納する。
【0073】
生成部13cは、抽象モデルDB12bへ格納された第3のレベルでの倉庫業務に関する作業およびデータに基づき、汎用ワークフローエンジン12cを利用してワークフローを生成する。
【0074】
具体的には、生成部13cは、UI部3を介したワークフロー制作者の操作等に基づき、抽象モデルDB12bへ格納された倉庫業務に関する作業およびデータを、汎用ワークフローエンジン12cを利用したローコード開発によってワークフローとして構築または組み換える。
【0075】
また、生成部13cは、生成した各ワークフローをワークフローDB12dへ格納する。ワークフローDB12dは、既に述べたように、ワークフローDB53aとして実行システム50へ提供されることとなる。
【0076】
また、生成部13cが生成する各ワークフローには、各ワークフローにおいて用いられる画面等のUIも含まれており、実行システム50は、かかるUIを介して操作システム90から作業オペレーションを受け付け、かかる作業オペレーションに応じたワークフローを実行することとなる。
【0077】
<実行システムの構成>
次に、
図9は、実施形態に係る実行システム50のブロック図である。
図9に示すように、実施形態に係る実行システム50は、取得I/F51と、通信部52と、記憶部53と、制御部54とを備える。
【0078】
取得I/F51は、上述した取得I/F11と同様に、たとえば、NICやUSB等によって実現され、生成装置10からワークフローDB12dをワークフローDB53aとして取得するためのインタフェースである。
【0079】
通信部52は、たとえば、NIC等によって実現される。通信部52は、たとえば図示略のネットワークに対し有線または無線で接続され、かかるネットワークを介して管理システム30、制御システム70および操作システム90との間で各種情報の送受信を行う。
【0080】
記憶部53は、上述した記憶部12と同様に、たとえば、RAM、ROM、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、または、ハードディスク、光ディスク等の記憶装置によって実現される。
図9に示す例では、記憶部53は、ワークフローDB53aを記憶する。
【0081】
制御部54は、上述した制御部13と同様に、コントローラであり、たとえば、CPUやMPU等によって、記憶部53に記憶されている図示略の各種プログラムがRAMを作業領域として実行されることにより実現される。また、制御部54は、たとえば、ASICやFPGA等の集積回路により実現することができる。
【0082】
制御部54は、取得部54aと、連携部54bと、ワークフロー制御部54cと、UI提供部54dとを有し、以下に説明する情報処理の機能や作用を実現または実行する。
【0083】
取得部54aは、取得I/F51を介し、生成装置10からワークフローDB12dを取得し、ワークフローDB53aとして記憶部53に記憶させる。
【0084】
連携部54bは、上述した他システムとの連携処理を実行する。ワークフロー制御部54cは、ワークフローDB53aに基づくワークフロー制御処理を実行する。ワークフロー制御処理は、上述したように倉庫作業の最適化処理に相当する。また、ワークフロー制御処理は、制御システム70に対する各種の動作指示等を含む。
【0085】
UI提供部54dは、ワークフローDB53aに基づく操作システム90に対するUI提供処理を実行する。UI提供処理は、上述したように可視化処理に相当する。ワークフロー制御部54cは、かかるUI提供部54dが提供したUIを介して操作システム90から作業オペレーションを受け付け、かかる作業オペレーションに応じたワークフローが適宜実行されるようにワークフロー制御処理を行うこととなる。
【0086】
次に、本実施形態に係る抽象化レベルでの各種情報の定義例について、
図10~
図30を用いて順次説明する。
【0087】
<作業主体、対象物、管理場所について>
まず、
図10は、実施形態に係る物流業務システム1に関わる要素の説明図である。また、
図11~
図14は、管理場所の具体例を示す図(その1)~(その4)である。
【0088】
図3を用いて既に述べたが、
図10に示すように、実施形態に係る物流業務システム1の構築方法では、物流業務システム1に関わる要素を「作業主体」、「対象物」、「管理場所」として整理・分類する。
【0089】
図10に示すように、「作業主体」は、人や機器などであって、対象物を運ぶ、数える等の作業を行う主体である。また、「対象物」は、商品等であって、運ぶ、数える等の対象となる物である。また、「管理場所」は、保管棚や什器等であって、対象物を管理する場所と単位である。
【0090】
かかる「管理場所」は、
図11に示すように、たとえばラベルNo.や、伝票No.や、什器No.等で括られた管理単位である。これは、ラベルや伝票等は、空間内において単に場所を識別するものに過ぎないとの発想に基づく。
【0091】
また、「管理場所」は、
図12に示すように、たとえば作業エリアで括られた管理単位である。また、「管理場所」は、
図13に示すように、たとえば計数を行った作業者で括られた管理単位である。言い換えれば、計数した作業者が異なれば、「管理場所」は異なるものとなる。
【0092】
あるいは、「管理場所」は、
図14に示すように、たとえばAGVといった搬送機器Eの一度の搬送分で括られた管理単位である。
【0093】
次に、「対象物」について、より具体的に説明する。
図15および
図16は、対象物に関する説明図(その1)および(その2)である。
【0094】
実施形態に係る物流業務システム1の構築方法では、対象物を区別して在庫管理する単位に、一般的にも用いられるSKU(Stock Keeping Unit)を用いる。
図15に示すように、対象物は、対象物を管理する「管理主体」が異なれば、同一品目でも別管理となる。「管理主体」は、たとえば荷主、寄託者、事業部等である。
【0095】
また、対象物に関し、「品目」は、対象物を1次的に識別するものである。色、形状、荷姿、入数等の違いで別品目となる場合がある。本実施形態では、原則、上位システムの管理と同一とする。
【0096】
また、対象物に関し、「付属情報」は、品目に付属する情報であり、たとえばロット、入庫日、使用期限、良品区分等である。「付属情報」は、ロットや使用期限のように品目に記載があるものだけでなく、入庫日や良品区分のように、記載はないが属性情報として管理するものがある。なお、ロットの記載があっても在庫管理単位として管理しない場合は含まない。
【0097】
これらを前提として、
図16に示すように、対象物には、SKUの単位でSKUNo.が付与される。このようにして、対象物を区別して在庫管理する単位にSKUが用いられる。
【0098】
次に、「管理場所」について、より具体的に説明する。
図17~
図20は、管理場所に関する説明図(その1)~(その4)である。
【0099】
図17には、「管理場所」のデータ管理範囲を示している。
図17に示すように、1つの「倉庫」は、1つの実行システム50に対応する。言い換えれば、1つの実行システム50が管理する範囲は1つの「倉庫」である。なお、ここに言う1つの「倉庫」は、建屋の括りとは限らない。
【0100】
一方、「エリア」は、倉庫内の場所である。「エリア」は、倉庫内の属性で識別される。倉庫内の属性は、フロアや部屋等の物理的な区画、AS/RSや固定ラック等の保管設備による分類、入荷場や移動中場など仮想的な場所の定義、等である。
【0101】
したがって、
図17に示すように、各実行システム50は、標準でエリアマスタを管理し、エリアをキーとしたデータ管理を行う。倉庫については、固定値として保持する。
【0102】
また、管理システム30または図示略の統括実行システムは、倉庫+エリアをキーとしたデータ管理を行う。なお、標準では倉庫マスタを管理せず、必要に応じて管理する。
【0103】
また、実施形態に係る物流業務システム1の構築方法では、
図18に示す管理場所体系で対象物を管理し、識別する。具体的には、
図18に示すように、上述の「エリア」は、たとえば部屋番号、AS/RS号機等である。入荷場等は、たとえば、入荷場等のシステム固有番号を顧客側のエリア表記に読み替えできるように定義する。
【0104】
また、「ロケーション」は、在庫登録を行う場所であり、たとえば棚番や区画番号等である。ロケーション体系は、顧客の要件に応じて定義可能とする。なお、標準的な定義例は、たとえば
図19に示す通りである。
【0105】
また、「什器No.」は、たとえばパレットNo.や、オリコン(折りたたみコンテナ)No.や、ビンNo.や、トートNo.や、箱No.等である。パレットの上にオリコンを乗せる場合等、什器を複数使用する場合の階層管理方法については後述する。
【0106】
また、「什器内間口」は、什器内を間仕切りした場合の間口No.である。また、「識別情報」は、対象物の管理単位を識別できる情報であり、物理的な識別だけでなく、視覚や作業記録により識別可能な仮想的な識別を含む。「識別情報」は、たとえば、上述したラベルNo.や伝票No.の他、各作業指示の作業No.や、ユーザID+在庫登録日時等である。
【0107】
なお、什器を複数使用する場合の階層管理方法であるが、実施形態に係る物流業務システム1の構築方法では、複数の什器を使用する場合は、管理範囲が小さい方の什器を対象物と紐付けて管理する。ただし、すべての階層管理を許可すると複雑化し、登録間違いや誤出庫等の運用ミスの原因となるため、許可する階層に制限を設けることを前提とする。
【0108】
たとえば、1階層目を棚、2階層目をパレット、3階層目をオリコンとする最大3階層までの管理とする。また、什器のユニーク性を保つために先頭1桁を種別にする等の前提条件を設けてもよい。
【0109】
図17~
図19を用いた説明を前提として、
図20の上段に示すように、ロケーション体系「AA-10-02-3-4」で管理される対象物A~Lおよび什器101~104,201,202の配置があったものとする。
【0110】
かかる場合、対象物A~Lのそれぞれについては、
図20下段の左表に示すように管理場所が管理されることとなる。また、什器101~104,201,202のそれぞれについては、
図20下段の右表に示すように管理場所が管理されることとなる。
【0111】
<作業主体が行う作業について>
次に、上述した作業主体が行う作業について、より具体的に説明する。
図21は、作業主体が行う作業に関する説明図である。また、
図22および
図23は、特定に関する説明図(その1)および(その2)である。
【0112】
また、
図24は、カウントに関する説明図である。また、
図25~
図28は、移動に関する説明図(その1)~(その4)である。
【0113】
既に述べたが、
図21に示すように、実施形態に係る物流業務システム1の構築方法では、作業主体が行う作業は、「特定」、「カウント」、「移動」およびこれら以外の「補助作業」に分類・整理される。
【0114】
また、「特定」には、「照合」、「登録」の2種類がある。また、「移動」は、「入庫登録」、「出庫登録」、「削除」を含む。また、「補助作業」には、「認証」、「入力」、「番号取得」、「参照」、「確認」、「出力」、「動作指示」、「イベント」、「定周期」がある。
【0115】
図22に示すように、まず、「特定」における「照合」は、移動もしくはカウントの対象物を特定し、作業指示またはマスタ情報等の照合元情報と照合することである。また、「特定」における「登録」は、照合項目外の属性情報(ロット、入庫日、良品/不良品等)を確認し、SKUを特定して登録することである。
【0116】
図23に示すように、「照合」は、たとえば商品のバーコードや、ラベルNo.や、什器No.で照合する。また、「登録」は、前述の属性情報を確認し、登録する。
【0117】
また、
図24に示すように、「カウント」は、特定した対象物をSKU単位に数えることである。ここで、重量や容積により測定する等、計数の手段は問わない。
【0118】
また、
図25に示すように、「移動」は、対象物を別の管理場所へ移動することである。なお、「移動」は、物理的な移動だけでなく、物理的な移動を伴わない仮想的移動をも含む。
【0119】
物理的な移動は、
図26に示すように、文字通り物理的に場所を移動することである。一方、仮想的な移動は、
図27に示すように、たとえばラベル分割や移動中引当等によって、管理単位を変更することである。また、仮想的な移動は、
図28に示すように、たとえば仮想空間側の範囲を変更することである。
【0120】
図25の説明に戻る。また、「移動」のうち、倉庫内への初回の移動については、「入庫登録」とする。同様に、「移動」のうち、倉庫からの最終の移動については、「出庫登録」とする。また、「移動」のうち、倉庫内での対象物管理対象から外れる場合については、「削除」とする。
【0121】
図22~
図25を用いて説明した「特定」、「カウント」、「移動」の各作業を含む、作業主体への一連の作業の指示が上述した「作業指示」である。
図29は、作業指示に関する説明図である。
【0122】
図29に示すように、「作業指示」には、移動を伴うものと、移動を伴わないものとがある。移動を伴う「作業指示」には、「入庫登録」、「入庫」、「在庫移動」、「補充移動」、「出庫」、「仕分け」、「出荷梱包」、「出荷登録」がある。
【0123】
「入庫登録」は、倉庫への初回移動時、対象物を特定して在庫情報を登録する。また、必要に応じてカウントする。「入庫」は、入庫作業指示に従って対象物を特定し、物理的な場所へ移動させる。
【0124】
「在庫移動」は、対象物を物理的に移動させる。「補充移動」は、補充作業指示に従って対象物を物理的に移動させる。「出庫」は、出庫作業指示に従って対象物を物理的に移動させる。また、必要に応じてカウントする。
【0125】
「仕分け」は、仕分け指示に従って対象物を物理的に移動させる。また、必要に応じてカウントする。「出荷梱包」は、対象物を特定して、梱包箱へ物理的に移動させる。また、必要に応じてカウントする。「出荷登録」は、倉庫からの最終移動時、対象物を特定して在庫情報を削除する。
【0126】
一方、移動を伴わない「作業指示」には、「入荷検品」、「出荷検品」、「棚卸し」がある。「入荷検品」は、入荷作業指示に従って対象物を特定し、カウントする。「出荷検品」は、出荷作業指示に従って対象物を特定し、カウントする。「棚卸し」は、棚卸し作業指示に従って対象物を特定し、カウントする。なお、棚卸し作業指示は、たとえば在庫情報から生成される。
【0127】
次に、上述した「補助作業」について、より具体的に説明する。
図21は、補助作業に関する説明図である。既に述べたように、作業主体が行う作業のうち、前述の「特定」、「カウント」、「移動」に含まれないものが「補助作業」である。
【0128】
図30に示すように、「補助作業」には、「認証」、「入力」、「番号取得」、「参照」、「確認」、「出力」、「動作指示」、「イベント」、「定周期」がある。
【0129】
「認証」は、ユーザ認証、機器認証等を行う作業である。「入力」は、データを入力する作業である。「入力」は、たとえば次の作業のインプットとして必要な情報を入力する。
【0130】
「番号取得」は、SKUNo.等の番号を取得する作業である。また、「番号取得」は、該当番号がない場合の発番を含む。「参照」は、データの参照・確認を行う作業である。
【0131】
「確認」は、たとえばUI画面においてボタンを押下する作業である。「出力」は、帳票出力、メッセージ出力、ログ出力等を行う作業である。「動作指示」は、機器に対する動作指示を行う作業である。「動作指示」は、たとえば搬送機器の呼出や、別の場所への移動等を行う。
【0132】
「イベント」は、前の作業により発生するイベントをトリガに発生する作業である。「定周期」は、定周期処理により発生する作業である。
【0133】
そして、これまで説明した各作業の手順を作業指示内において定義したものがワークフローである。ワークフロー制作者は、生成装置10を操作し、抽象モデルDB12bにおいて抽象化された各作業に伴う入力項目と出力項目とを定義したうえで、汎用ワークフローエンジン12cを利用して倉庫業務に関する各種のワークフローを生成する。
【0134】
<ワークフローの具体例>
ここで、生成される各種のワークフローの具体例について、
図31~
図36を用いて説明する。
図31は、入荷・入庫業務に関するワークフローの具体例を示す図(その1)である。また、
図32は、
図31に示すワークフローの実行時におけるUI画面の動作例を示す図である。
【0135】
また、
図33は、入荷・入庫業務に関するワークフローの具体例を示す図(その2)である。また、
図34は、
図33に示すワークフローの実行時におけるUI画面の動作例を示す図である。
【0136】
また、
図35および
図36は、補助作業を含むワークフローの具体例を示す図(その1)および(その2)である。なお、
図35および
図36では、斜線で塗りつぶされた各作業が補助作業に該当する。
【0137】
まず、
図31の例では、入荷・入庫業務において、荷受け時に入荷伝票が商品と一緒に添付されるものとする。また、入荷伝票には、伝票No.を示すバーコードが付いており、作業者は、伝票No.をスキャンして入荷予定と商品、数量が合っているかを照合した後、オリコンに投入するものとする。そしてその後、オリコンをAGVで入庫先へ搬送するものとする。
【0138】
かかる場合、たとえば
図31に示すようなワークフローが生成される。具体的には、入荷作業開始時に入荷伝票バーコードがスキャンされると、かかるスキャンの結果出力される伝票No.を入力として「作業指示」において入荷作業指示が作成される。
【0139】
そして、作成された作業指示に基づき、「特定」において品目バーコードスキャンおよび付属情報入力が行われる。そして、作業指示および「特定」での特定情報に基づき、つづく「カウント」においては数量が入力される。
【0140】
そして、作業指示、特定情報および「カウント」での数量に基づき、「移動(入庫登録)」が行われる。「移動(入庫登録)」ではオリコンNo.バーコードスキャンが行われ、入荷作業は終了する。
【0141】
一方、「移動(入庫登録)」のイベントをトリガとして入庫作業が開始される。入庫作業においては、入庫作業開始の結果出力される什器No.を入力として「作業指示」において移動作業指示が作成される。
【0142】
そして、作成された作業指示に基づき、「移動」においてたとえばAGVによる搬送が行われる。かかる搬送の結果がOKであれば、入庫作業が終了する。
【0143】
図31の例では、入荷作業のワークフローにおいては、それぞれ1つまでの「作業指示」、「特定」、「カウント」、「移動」が含まれ、「特定」、「カウント」、「移動」は所定の順番で実行される。すなわち、かかる入荷作業のワークフローは、
図4で説明したワークフローの基本形に基づき、生成されていることが分かる。
【0144】
また、
図31の例では、入庫作業のワークフローにおいては、それぞれ1つの「作業指示」および「移動」が含まれる。すなわち、かかる入庫作業のワークフローは、「特定」、「カウント」、「移動」の一連の作業は含まないものの、実施形態に係る第3のレベルで抽象モデル化された「移動」およびこれを指示する「作業指示」に基づき、生成されていることが分かる。
【0145】
なお、
図31のワークフローの場合、たとえば入荷伝票バーコードスキャン時の操作システム90におけるUI画面の動作を、たとえば
図32に示す動作例に対応させることが可能である。
【0146】
次に、
図33の例では、入荷・入庫業務において、荷受け時に商品のみが倉庫に入ってくるものとする。そして、作業者は、対象の入荷予定を検索し、商品、数量が合っているかを照合し、入荷作業の終了時に在庫ラベルNo.を含む在庫ラベルを発行するものとする。その後、別の作業者が、在庫ラベルをスキャンし、商品を棚に入庫するものとする。
【0147】
かかる場合、たとえば
図33に示すようなワークフローが生成される。具体的には、入荷作業開始時に品目バーコードがスキャンされると、かかるスキャンの結果出力される品目No.を入力として「作業指示」において入荷作業指示が作成される。
【0148】
そして、作成された作業指示に基づき、「特定」において付属情報入力が行われる。そして、作業指示および「特定」での特定情報に基づき、つづく「カウント」においては品目バーコードスキャンによるカウントアップが行われる。
【0149】
そして、作業指示、特定情報および「カウント」での数量に基づき、「移動(入庫登録)」が行われる。「移動(入庫登録)」では在庫ラベルNo.が発行され、入荷作業は終了する。
【0150】
一方、入庫作業においては、入庫作業開始時に別の作業者により、「移動(入庫登録)」において発行された在庫ラベルNo.を含む在庫ラベルバーコードがスキャンされると、スキャンの結果出力される在庫ラベルNo.に基づき、「作業指示」において移動作業指示が作成される。
【0151】
そして、作成された作業指示に基づき、「移動」においてたとえば作業者が手動で商品を棚に入庫し、入庫した棚の棚番バーコードをスキャンした結果、OKであれば、入庫作業が終了する。
【0152】
図33の例では、入荷作業のワークフローにおいては、
図31の場合と同様に、それぞれ1つまでの「作業指示」、「特定」、「カウント」、「移動」が含まれ、「特定」、「カウント」、「移動」は所定の順番で実行される。すなわち、かかる入荷作業のワークフローは、
図4で説明したワークフローの基本形に基づき、生成されていることが分かる。
【0153】
また、
図33の例では、入庫作業のワークフローにおいては、それぞれ1つの「作業指示」および「移動」が含まれる。すなわち、かかる入庫作業のワークフローは、「特定」、「カウント」、「移動」の一連の作業は含まないものの、実施形態に係る第3のレベルで抽象モデル化された「移動」およびこれを指示する「作業指示」に基づき、生成されていることが分かる。
【0154】
なお、
図33のワークフローの場合、たとえば品目バーコードスキャン時の操作システム90におけるUI画面の動作を、たとえば
図34に示す動作例に対応させることが可能である。
【0155】
次に、
図35の例では、補助作業を含むワークフローの具体例として、AGV等の搬送機器呼出に関するワークフローを例に挙げる。なお、上述したように、補助作業は、ワークフロー内の任意の位置に配置可能である。
【0156】
図35に示すように、搬送機器呼出の場合、作業開始後、「入力」においてSTNo.が入力されると、かかる入力の結果出力されるSTNo.に基づき、「確認」において呼出ボタンが作業者に対し提示される。
【0157】
そして、作業者が呼出ボタンを押下すれば、「動作指示」におけるSTNo.に対応する搬送機器呼出のイベントをトリガとして、搬送作業における「イベント」が搬送作業を実行する。そして、「出力」が「イベント」から搬送完了を受信すれば、「出力」は搬送実績登録を行う。
【0158】
次に、
図36の例では、補助作業を含むワークフローの具体例として、入庫業務に関するワークフローを例に挙げる。
【0159】
図36に示すように、入庫作業が開始され、「入力」において什器No.が入力されると、これに応じ「出力」は什器内の品目ラベルを出力する。一方で、「入力」において入力された什器No.に基づき、「作業指示」においては移動作業指示が作成される。
【0160】
そして、作成された作業指示に含まれる作業No.および搬送先に基づき、「動作指示」においては、これら作業No.および搬送先を含む搬送指示が搬送作業における「イベント」へ通知される。
【0161】
「イベント」は、かかる通知をトリガとし、つづく「作業指示」に作業No.および搬送先を出力させ、「移動」において搬送機器による搬送を行わせる。かかる搬送の結果がOKであれば、入庫作業が終了する。
【0162】
一方で、搬送作業における「出力」は、「イベント」から搬送完了を受信すれば、搬送実績登録を行う。
【0163】
<ハードウェア構成>
なお、上述してきた実施形態に係る生成装置10、管理システム30、実行システム50、制御システム70および操作システム90は、たとえば
図37に示すような構成のコンピュータ1000によって実現される。生成装置10を例に挙げて説明する。
図37は、生成装置10の機能を実現するコンピュータの一例を示すハードウェア構成図である。コンピュータ1000は、CPU1100、RAM1200、ROM1300、HDD(Hard Disk Drive)1400、通信インタフェース(I/F)1500、入出力インタフェース(I/F)1600、および、メディアインタフェース(I/F)67を備える。
【0164】
CPU1100は、ROM1300またはHDD1400に格納されたプログラムに基づいて動作し、各部の制御を行う。ROM1300は、コンピュータ1000の起動時にCPU1100によって実行されるブートプログラムや、コンピュータ1000のハードウェアに依存するプログラム等を格納する。
【0165】
HDD1400は、CPU1100によって実行されるプログラムおよび当該プログラムによって使用されるデータ等を格納する。通信インタフェース1500は、通信ネットワークを介して他の機器からデータを受信してCPU1100へ送り、CPU1100が生成したデータを、通信ネットワークを介して他の機器へ送信する。
【0166】
CPU1100は、入出力インタフェース1600を介して、ディスプレイやプリンタ等の出力装置、および、キーボードやマウス等の入力装置を制御する。CPU1100は、入出力インタフェース1600を介して、入力装置からデータを取得する。また、CPU1100は、生成したデータを、入出力インタフェース1600を介して出力装置へ出力する。
【0167】
メディアインタフェース1700は、記録媒体1800に格納されたプログラムまたはデータを読み取り、RAM1200を介してCPU1100に提供する。CPU1100は、当該プログラムを、メディアインタフェース1700を介して記録媒体1800からRAM1200上にロードし、ロードしたプログラムを実行する。記録媒体1800は、たとえばDVD(Digital Versatile Disc)、PD(Phase change rewritable Disk)等の光学記録媒体、MO(Magneto-Optical disk)等の光磁気記録媒体、テープ媒体、磁気記録媒体、または、半導体メモリ等である。
【0168】
たとえば、コンピュータ1000が実施形態に係る生成装置10として機能する場合、コンピュータ1000のCPU1100は、RAM1200上にロードされたプログラムを実行することにより、制御部13の各機能を実現する。また、HDD1400には、記憶部12内のデータが記憶される。コンピュータ1000のCPU1100は、これらのプログラムを、記録媒体1800から読み取って実行するが、他の例として、他の装置から、通信ネットワークを介してこれらのプログラムを取得してもよい。
【0169】
<まとめ>
上述してきたように、実施形態に係る生成装置10は、モデル化部13bと、生成部13cとを備える。モデル化部13bは、汎用的なワークフローエンジンを利用して物流業務に関するワークフローが生成可能となるように、上記物流業務における作業およびデータを抽象モデル化する。生成部13cは、モデル化部13bによって抽象モデル化された上記作業およびデータに基づき、上記ワークフローエンジンを利用して上記ワークフローを生成する。
【0170】
したがって、実施形態に係る生成装置10によれば、物流業務システム1の構築作業の効率化を図ることができる。
【0171】
特に、本実施形態では、第1のレベルと第2のレベルとの間、すなわち第1のレベルよりは具体的であり、第2のレベルよりは抽象的な抽象化レベルである「第3のレベル」で物流業務に関する作業およびデータを抽象モデル化することとした。
【0172】
これにより、物流業務システム1をSI提供するにあたってのシステム化工程において、顧客とSi業者の双方で見えていない部分を抽出し、情報共有することも可能となる。
【0173】
ちなみに、本実施形態に係る抽象化レベルは、ビジネスプロセスモデルにおける機能階層(FL:Function Layer)におけるFL5からFL6の間を想定している。
【0174】
また、上述した実施形態では、汎用ワークフローエンジンとしてActivitiを例に挙げたが、汎用ワークフローエンジンを限定するものではない。他の例としては、たとえばAirflowや、Argo等を用いることとしてもよい。
【0175】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0176】
1 物流業務システム
10 生成装置
11 取得I/F
12 記憶部
12a 倉庫業務情報DB
12b 抽象モデルDB
12c 汎用ワークフローエンジン
12d ワークフローDB
13 制御部
13a 取得部
13b モデル化部
13c 生成部
30 管理システム
50 実行システム
51 取得I/F
52 通信部
53 記憶部
53a ワークフローDB
54 制御部
54a 取得部
54b 連携部
54c ワークフロー制御部
54d UI提供部
70 制御システム
90 操作システム
【要約】
【課題】構築作業の効率化を図ること。
【解決手段】実施形態の一態様に係る物流業務システムの構築方法は、モデル化工程と、生成工程とを含む。モデル化工程は、汎用的なワークフローエンジンを利用して物流業務に関するワークフローが生成可能となるように、上記物流業務における作業およびデータを抽象モデル化する。生成工程は、モデル化工程において抽象モデル化された上記作業およびデータに基づき、上記ワークフローエンジンを利用して上記ワークフローを生成する。
【選択図】
図8