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特許7026289冷間タンデム圧延機の振動を抑制するための張力システムの最適化方法
<図1>
  • 特許-冷間タンデム圧延機の振動を抑制するための張力システムの最適化方法 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-16
(45)【発行日】2022-02-25
(54)【発明の名称】冷間タンデム圧延機の振動を抑制するための張力システムの最適化方法
(51)【国際特許分類】
   B21B 37/48 20060101AFI20220217BHJP
   B21B 37/28 20060101ALI20220217BHJP
【FI】
B21B37/48 D
B21B37/28 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021502440
(86)(22)【出願日】2019-07-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-02
(86)【国際出願番号】 CN2019097397
(87)【国際公開番号】W WO2020020192
(87)【国際公開日】2020-01-30
【審査請求日】2021-03-11
(31)【優先権主張番号】201810831304.0
(32)【優先日】2018-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】512171021
【氏名又は名称】宝山鋼鉄股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】BAOSHAN IRON & STEEL CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】No.885,Fujin Road,Baoshan District Shanghai,201900,P.R.China
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100087505
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 春之
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【弁理士】
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(74)【代理人】
【識別番号】100218604
【弁理士】
【氏名又は名称】池本 理絵
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】ワン,カンヂィェン
(72)【発明者】
【氏名】ヂァン,タァオ
(72)【発明者】
【氏名】リィー,シァンチィン
(72)【発明者】
【氏名】チェン,シィアォミィン
(72)【発明者】
【氏名】チィー,ペェィレェィ
【審査官】中西 哲也
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104785537(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104289528(CN,A)
【文献】特開2005-297025(JP,A)
【文献】特開2010-184277(JP,A)
【文献】特開平07-232205(JP,A)
【文献】特開2013-123747(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103544340(CN,A)
【文献】特開2000-094013(JP,A)
【文献】特開平09-239430(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21B 37/00-37/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷間タンデム圧延機の振動を抑制するための張力システムの最適化方法であって、
作業ロールを交換した後の個々の機械構造物の前記作業ロールの半径R、個々の機械構造物の作業ロールの表面直線速度νri、個々の機械構造物の前記作業ロールの元の粗さRair0、前記作業ロールの粗さによる減衰係数BLi、及び個々の機械構造物の前記作業ロールのキロメートル単位の圧延距離Lを含み、i=1、2、...、nは、前記冷間タンデム圧延機の機械構造物の順序数を表し、nは前記機械構造物の総数である、前記冷間タンデム圧延機の装置の特徴パラメータを獲得するステップ(S1)と、
ストリップの弾性係数E、前記ストリップのポアソン比ν、ストリップ幅B、機械構造物毎の前記ストリップの入口板厚h0i、機械構造物毎の前記ストリップの出口板厚h1i、前記ストリップの変形抵抗K、個々の機械構造物の圧延力P、個々の機械構造物の直前の前記ストリップの入口速度ν0i、乳濁液濃度の影響係数k、潤滑剤の粘性圧縮係数θ、及び前記潤滑剤の動的粘性ηを含む、ストリップの臨界圧延プロセスのパラメータを獲得するステップ(S2)と、
中立角が、過潤滑の臨界点に等しい咬合角と一致して、摩擦係数が極めて小さいときに、前記作業ロールと前記ストリップとの間のすべりが容易に生じ、それにより圧延機の振動をもたらす瞬間における振動決定指数の上限閾値
【数1】
を定義し、前記中立角が、低潤滑の臨界点である前記咬合角の半分の角度であるときに、前記作業ロールと前記ストリップとの間の油膜が破裂しやすく、それにより前記摩擦係数が突然に大きくなって異常な圧延圧力の変動をもたらし、ひいては前記圧延機の振動をもたらす瞬間における前記振動決定指数の下限閾値
【数2】
を定義し、T0iとして個々の機械構造物の入口張力を定義し、かつ、T1iとして出口張力を定義し、T01=T、T1n=Tであるステップ(S3)と、
前記冷間タンデム圧延機の振動を抑制するための目標となる張力システムの最適化関数の初期設定値、F=1.0×1010を与えるステップ(S4)と(前記S1~前記S4は、その順序は制限されない)、
前記張力システムで、初期のT0i及びT1iを設定することであって、T0i+1=T1iであるステップ(S5)と、
個々の機械構造物の咬合角αを計算することであって、計算式は、
【数3】
であり、上式で、Δh=h0i-h1i、R’は、i番目の機械構造物の作業ロールの平滑化半径であり、
【数4】
である、ステップ(S6)と、
前記張力システムにおける現在の油膜厚さξを計算することであって、計算式は、
【数5】
であり、上式で、krgは、前記作業ロール及び前記ストリップ鋼の縦方向の表面粗さによる潤滑剤の巻き込みの強度の係数を表し、Krsは、インプレッションレートすなわち前記作業ロールの前記表面粗さを前記ストリップ鋼に転写する割合を表す、ステップ(S7)と、
摩擦係数uと前記油膜厚さξとの間の関係に従って、個々の機械構造物の前記作業ロールと前記ストリップ鋼の間の摩擦係数
【数6】
を計算することであって、aは、i番目の機械構造物の液体摩擦係数であり、bは、前記i番目の機械構造物の乾燥摩擦係数であり、また、Bは、前記i番目の機械構造物の摩擦係数の減衰指数である、ステップ(S8)と、
圧延理論に従って前記張力システムにおける個々の機械構造物の現在の中立角γを計算することであって、計算式は、
【数7】
である、ステップ(S9)と、
前記張力システムにおける個々の機械構造物の現在の振動決定指数Ψを計算することであって、
【数8】
である、ステップ(S10)と、
不等式
【数9】
が同時に確立されるか否かを決定することであって、不等式が確立される場合、ステップS12へ進行し、確立されない場合には、ステップS5へ戻る、ステップ(S11)と、

【数10】
に従って、目標とする包括的な張力システムの最適化関数を計算することであって、上式で、Ψ0iは、前記振動決定指数の最適値
【数11】
であり、λは分布係数であり、X={T0i,T1i}は最適化変数である、ステップ(S12)と、
不等式F(X)<Fが確立されるか否かを決定することであって、不等式が確立される場合、
【数12】
、F=F(X)となることで、ステップS14へ進行し、確立されない場合には、直接、ステップS14へ進行する、ステップ(S13)と、
前記張力システムT0i及びT1iが実行可能な領域の範囲を超えているか否かを決定するステップであって、超えている場合はステップS15へ進行し、超えていない場合には、ステップS5へ戻り、前記実行可能な領域の範囲が、装置によって許容されるT0i及びT1iの0から最大値までである、ステップ(S14)と、
張力システムの最適な設定値、最適な入口張力
【数13】
及び最適な出口張力
【数14】
を出力することであって、前記実行可能な領域の範囲内で計算されたF(X)値が最小である場合、
【数15】
及び
【数16】
は、それぞれ前記T0i及びT1iである、ステップ(S15)と、
を含む、方法。
【請求項2】
前記krgの値が0.09から0.15までの範囲内である、請求項1に記載の冷間タンデム圧延機の振動を抑制するための張力システムの最適化方法。
【請求項3】
前記Krsの値が0.2から0.6までの範囲内である、請求項1に記載のタンデム冷間圧延機の振動を抑制するための張力システムの最適化方法。
【請求項4】
前記振動決定指数の前記上限閾値
【数17】
は、
【数18】
であり、前記振動決定指数の前記下限閾値
【数19】
は、
【数20】
であり、前記振動決定指数の前記最適値Ψ0iは、
【数21】
である、請求項1に記載のタンデム冷間圧延機の振動を抑制するための張力システムの最適化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冶金鋼圧延の技術分野に関し、より詳細には冷間タンデム圧延機の振動を抑制するための張力システムの最適化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車製造産業、大型船舶産業、航空宇宙産業および食品パッケージング産業の急速な発展により、ストリップに対する市場需要がますます高まっている。それと同時に、精度が高く、かつ、品質が高い製品に対する下流側のユーザの要求は、大規模で高速なストリップ製造装置の発展を促進している。ストリップの製造技術及び製造プロセスの複雑性に鑑みて、圧延機の振動は、高速でのストリップの圧延プロセスにおける圧延条件の変化に起因して発生することが頻繁にある。圧延機の振動が生じると、ストリップ鋼の表面に明暗の縞模様が交互に形成されることになり、これは、ストリップ鋼の表面品質に影響を及ぼすことになる。より重大なことには、圧延装置が損傷すると、保全のために現場における運転が停止することになり、これは、ストリップの製造企業の生産効率を著しく低下させる。したがって、高速プロセスにおける冷間タンデム圧延機の振動問題を如何に効果的に解決するかが、現場における技術的な研究の焦点であり、また、困難な点である。
【0003】
中国特許第201410026171.1号は、冷間タンデム圧延機の極端に薄いストリップ圧延のための張力システムの最適化方法を提供しており、個々の機械構造物についての入口引張り応力、出口引張り応力、変形抵抗、圧延速度、ストリップ幅、入口板厚、出口板厚、作業ロール径等のデータに応じて、現在の動作条件の下で、圧延容量及び圧延効率が考慮される場合における圧延安定性、すべり、熱によるスリップ障害及び振動を考慮しつつ、個々の機械構造物のすべり係数、熱によるスクラッチ指数、振動係数、圧延力及び圧延電力が計算され、個々の機械構造物の出口でのストリップ形状が良好なものとされている。最終的に、張力システムの最適化は、コンピュータプログラム制御によって実現されている。上記特許によれば、冷間タンデム圧延機の圧延プロセス中に、すべり、熱によるスリップ障害及び振動が存在しない場合、張力システムの最適化によって、出口ストリップの良好な形状を達成することができる。圧延機の振動は、冷間タンデム圧延機の最適な張力システムに対する唯一の制約条件であるため、冷間タンデム圧延機の高速圧延プロセスにおける振動問題を解決するために、無関係の技術的解決策が与えられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、冷間タンデム圧延機の振動を抑制するための張力システムの最適化方法を提供することである。冷間タンデム圧延プロセスにおける張力システムを最適化することにより、冷間タンデム圧延機の高速圧延プロセスにおける振動の問題を制御し、かつ、抑制することができ、これは、ストリップの表面品質の改善、及びストリップの製造企業の生産効率の改善における重要な役割を果し、また、圧延機の経済的利益をもたらす。
【課題を解決するための手段】
【0005】
冷間タンデム圧延機の振動を抑制するための張力システムの最適化方法は、
作業ロールを交換した後の個々の機械構造物の作業ロールの半径R、個々の機械構造物の作業ロールの表面直線速度νri、個々の機械構造物の作業ロールの元の粗さRair0、作業ロールの粗さによる減衰係数BLi、及び個々の機械構造物の作業ロールのキロメートル単位の圧延距離Lを含み、i=1、2、...、nは、冷間タンデム圧延機の機械構造物の順序数を表し、nは機械構造物の総数である、冷間タンデム圧延機の装置の特徴パラメータを獲得するステップ(S1)と、
ストリップの弾性係数E、ストリップのポアソン比ν、ストリップ幅B、機械構造物毎のストリップの入口板厚h0i、機械構造物毎のストリップの出口板厚h1i、ストリップの変形抵抗K、個々の機械構造物の圧延力P、個々の機械構造物の直前のストリップの入口速度ν0i、乳濁液濃度の影響係数k、潤滑剤の粘性圧縮係数θ、及び潤滑剤の動的粘性ηを含む、ストリップの臨界圧延プロセスのパラメータを獲得するステップ(S2)と、
中立角が、過潤滑の臨界点に等しい咬合角と一致して、摩擦係数が極めて小さいときに、作業ロールとストリップとの間のすべりが容易に生じ、それにより圧延機の振動をもたらす瞬間における振動決定指数の上限閾値
【数1】
を定義し、中立角が、低潤滑の臨界点である咬合角の半分の角度であるときに、作業ロールとストリップとの間の油膜が破裂しやすく、それにより摩擦係数が突然に大きくなって異常な圧延圧力の変動をもたらし、ひいては圧延機の振動をもたらす瞬間における振動決定指数の下限閾値
【数2】
を定義し、T0iとして個々の機械構造物の入口張力を定義し、かつ、T1iとして出口張力を定義し、T01=T、T1n=Tである、ステップ(S3)と、
冷間タンデム圧延機の振動を抑制するための目標となる張力システムの最適化関数の初期設定値、F=1.0×1010を与えるステップ(S4)と、
を含み、上記S1~S4は、その順序が制限されず、
張力システムにおいて、初期のT0i及びT1i、T0i+1=T1iを設定することであって、初期の張力システムでは、0であってもよく、実際には熱間圧延の変形抵抗値の0.3倍が初期の張力システムとして一般的に使用され、T0i及びT1iの最大値は、装置によって許容される最大値であり、最適な張力システムにおいて、
【数3】
及び
【数4】
は、通常、熱間圧延の変形抵抗値の0.3倍と0.6倍との間で生成される、ステップ(S5)と、
個々の機械構造物の咬合角αを計算することであって、計算式は、
【数5】
であり、上式で、Δh=h0i-h1i、R’は、i番目の機械構造物の作業ロールの平滑化半径、及び
【数6】
である、ステップ(S6)と、
張力システムにおける現在の油膜厚さξを計算することであって、計算式は、
【数7】
であり、
上式で、krgは、作業ロール及びストリップ鋼の縦方向の表面粗さによる潤滑剤の巻き込みの強度の係数を表し、Krsは、インプレッションレートすなわち作業ロールの表面粗さをストリップ鋼に転写する割合を表す、ステップ(S7)と、
摩擦係数uと油膜厚さξとの間の関係に従って、個々の機械構造物の作業ロールとストリップ鋼との間の摩擦係数
【数8】
を計算することであって、aは、i番目の機械構造物の液体摩擦係数であり、bは、i番目の機械構造物の乾燥摩擦係数であり、Bは、i番目の機械構造物の摩擦係数の減衰指数である、ステップ(S8)と、
圧延理論に従って、張力システムにおける個々の機械構造物の現在の中立角γを計算するステップであって、計算式は、
【数9】
である、ステップ(S9)と、
張力システムにおける個々の機械構造物の現在の振動決定指数Ψを計算することであって、
【数10】
である、ステップ(S10)と、
不等式
【数11】
が確立されるか否かを決定することであって、不等式が確立される場合、ステップS12へ進行し、確立されない場合には、ステップS5へ戻る、ステップ(S11)と、

【数12】
に従って、目標とする包括的な張力システムの最適化関数を計算することであって、
上式で、Ψ0iは、振動決定指数の最適値
【数13】
であり、λは分布係数であり、X={T0i,T1i}は最適化変数である、ステップ(S12)と、
不等式F(X)<Fが確立されるか否かを決定すること、であって、不等式が確立される場合には、
【数14】
、F=F(X)となることで、ステップS14へ進行し、確立されない場合には、直接、ステップS14へ進行する、ステップ(S13)と、
張力システムでT0i及びT1iが実行可能な領域の範囲を超えているか否かを決定することであって、超えている場合には、ステップS15へ進行し、超えていない場合には、ステップS5へ戻り、実行可能な領域の範囲は、装置によって許容されるT0i及びT1iの0から最大値までであり、すなわち、本発明は、T0i及びT1iに対して、実行可能な領域の範囲内でS5~S14を連続的に反復することによって目標関数F(X)を計算し、F(X)値が最小である場合、T0i及びT1iは、最適な入口張力
【数15】
及び最適な出口張力
【数16】
である、ステップ(S14)と、
張力システムの最適な設定値、最適な入口張力
【数17】
及び最適な出口張力
【数18】
を出力することであって、本発明においては、次のステップの実行が前のステップの結果に依存する場合を除き、次のステップの実行が前のステップの結果を条件としない場合には、シーケンスステップに従って、進行する必要はない、ステップ(S15)と、を含む。
【0006】
本発明の実施形態によれば、krgの値は0.09から0.15までの範囲内である。
【0007】
本発明の実施形態によれば、Krsの値は、0.2から0.6までの範囲内である。
【0008】
本発明の実施形態によれば、振動決定指数の上限閾値
【数19】
は、
【数20】
であり、振動決定指数の下限閾値
【数21】
は、
【数22】
であり、振動決定指数の最適値は、
【数23】
である。
【0009】
上記値の範囲は、実験的な経験に基づいて得られるより良好な範囲である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の冷間タンデム圧延機の振動を抑制するための張力システムの最適化方法の技術的な解決策は、冷間タンデム圧延機の高速圧延中の圧延機の振動問題に狙いを定めて採用され、振動決定指数は、冷間タンデム圧延機の圧延プロセスが、本発明における圧延機の振動の原因になることなく、安定した潤滑状態にあるか否かを判断するように定義されており、この振動決定指数に基づいて、冷間タンデム圧延機の装置及びプロセスの特徴と相俟って、冷間タンデム圧延機の振動を抑制するための張力システムの最適化方法が提案され、張力システムの適切な最適値が与えられ、冷間タンデム圧延機の高速、かつ、安定した圧延プロセスが保証され、ストリップの製造企業の生産効率が改善され、企業の経済的利益が改善され、本発明は、冷間タンデム圧延機の高速圧延プロセス中の圧延機の振動を抑制するための張力システムを最適化するために、国内的に他の同様の冷間タンデム圧延機にさらに普及することができ、これは、普及及びアプリケーションのための広範囲の展望を有している。
【0011】
本発明においては、同一の参照符号は常に同一の特徴を示している。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の技術的解決策について、図面及び実施形態に関連してさらに説明する。
【0014】
冷間タンデム圧延機の圧延プロセス中に、中立角が咬合角に等しい場合、ロールギャップは過潤滑の臨界状態にあり、また、中立角が咬合角の半分である場合、ロールギャップは低潤滑の臨界状態にある。ロールギャップが過潤滑な状態にあっても、或いは、低潤滑な状態にあっても、圧延機の振動欠陥の原因になる。圧延プロセスにおける張力システムは、圧延プロセス中に、個々の機械構造物の潤滑状態に直接影響を及ぼす。したがって、圧延機の振動欠陥を制御するために、本発明は、張力システムから開始して、冷間タンデム圧延機の張力システムの分布を最適化し、個々の機械構造物の張力の調和の取れた制御を実現して、冷間タンデム圧延機の最良の総合潤滑状態、及び個々の機械構造物の潤滑状態を保証し、それにより圧延機の振動欠陥を制御することができ、冷間タンデム圧延機の最終ストリップ鋼の表面品質、及び圧延プロセスの安定性を改善することができる。
【0015】
図1を参照すると、冷間タンデム圧延機の振動を抑制するための張力システムの最適化方法は、以下のステップを含む。
【0016】
S1では、作業ロールを交換した後の個々の機械構造物の作業ロールの半径R、個々の機械構造物のロールの表面直線速度νri、個々の機械構造物の作業ロールの元の粗さRair0、作業ロールの粗さによる減衰係数BLi、及び個々の機械構造物の作業ロールのキロメートル単位の圧延距離Lを含み、i=1、2、...、nは、冷間タンデム圧延機の機械構造物の順序数を表し、nは機械構造物の総数である、冷間タンデム圧延機の装置の特徴パラメータが獲得される。
【0017】
S2では、ストリップの弾性係数E、ストリップのポアソン比ν、ストリップ幅B、機械構造物毎のストリップの入口板厚h0i、機械構造物毎のストリップの出口板厚h1i、ストリップの変形抵抗K、個々の機械構造物の圧延力P、個々の機械構造物の直前のストリップの入口速度ν0i、乳濁液濃度の影響係数k、潤滑剤の粘性圧縮係数θ、及び潤滑剤の動的粘性ηを含む、ストリップの臨界圧延プロセスのパラメータが獲得される。
【0018】
S3では、中立角が、過潤滑の臨界点に等しい咬合角と一致して、摩擦係数が極めて小さいときに、作業ロールとストリップとの間のすべりが容易に生じ、それにより圧延機の振動をもたらす瞬間における振動決定指数の上限閾値
【数24】
が定義され、中立角が、低潤滑の臨界点である咬合角の半分の角度であるときに、作業ロールとストリップとの間の油膜が破裂しやすく、それにより摩擦係数が突然に大きくなって異常な圧延圧力の変動をもたらし、ひいては圧延機の振動をもたらす瞬間における振動決定指数の下限閾値
【数25】
が定義され、T0iとして個々の機械構造物の入口張力が定義され、かつ、T1iとして出口張力が定義され、T01=T、T1n=Tである。
【0019】
S4では、冷間タンデム圧延機の振動を抑制するための目標となる張力システムの最適化関数の初期設定値、F=1.0×1010が与えられ、
【0020】
S1~S4では、その順序は制限されず、いくつかの事例では、S1~S4は同時に実行することができる。
【0021】
S5では、初期の張力システムでT0i及びT1iが設定され、T0i+1=T1iである。
【0022】
S6では、個々の機械構造物の咬合角αが計算され、計算式は、
【数26】
であり、上式で、Δh=h0i-h1i、R’は、i番目の機械構造物の作業ロールの平滑化半径、及び
【数27】
である。
【0023】
S7では、張力システムにおける現在の油膜厚さξが計算され、計算式は、
【数28】
であり、
【0024】
上式で、krgは、作業ロール及びストリップ鋼の縦方向の表面粗さによる潤滑剤の巻き込みの強度の係数を表し、0.09から0.15までの範囲であり、Krsは、インプレッションレート、すなわち作業ロールの表面粗さをストリップ鋼に転写する割合を表し、0.2から0.6までの範囲である。
【0025】
S8では、摩擦係数uと油膜厚さξとの間の関係に従って、個々の機械構造物の作業ロールとストリップ鋼との間の摩擦係数
【数29】
が計算される。ここで、式中、aは、i番目の機械構造物の液体摩擦係数であり、bは、i番目の機械構造物の乾燥摩擦係数であり、Bは、i番目の機械構造物の摩擦係数の減衰指数である。
【0026】
S9では、圧延理論に従って、張力システムにおける個々の機械構造物の現在の中立角γが計算され、計算式は、
【数30】
である。
【0027】
S10では、張力システムにおける個々の機械構造物の現在の振動決定指数Ψが計算される。
【0028】
S11では、不等式
【数31】
が同時に確立されるか否かが決定され、不等式が確立される場合、ステップS12へ進行し、確立されない場合には、ステップS5へ戻る。
【0029】
S12では、式
【数32】
に従って、目標とする包括的な張力システムの最適化関数が計算され、
【0030】
上式で、Ψ0iは、振動決定指数の最適値
【数33】
であり、λは分布係数であり、X={T0i,T1i}は最適化変数であり、F(X)の計算された値は、個々のそれぞれの機械構造物の最大となる圧延機の振動決定指数係数値である。
【0031】
S13では、不等式F(X)<Fが確立されるか否かが決定され、不等式が確立される場合には、
【数34】
、F=F(X)となることで、ステップS14へ進行し、確立されない場合には、直接、ステップS14へ進行する。
【0032】
S14では、張力システムでT0i及びT1iが実行可能な領域の範囲を超えているか否かが決定され、超えている場合にはステップS15へ進行し、超えていない場合には、ステップS5へ戻り、実行可能な領域の範囲は、装置によって許容されるT0i及びT1iの0から最大値までである。
【0033】
S15では、最適な張力システムの設定値、最適な入口張力
【数35】
及び最適な出口張力
【数36】
が出力され、
【数37】
及び
【数38】
は、実行可能な領域の範囲内で計算されたF(X)の値が最小である場合、それぞれT0i及びT1iであり、すなわちF(X)が最小である場合、T0i及びT1iは、
【数39】
及び
【数40】
として使用される。
【0034】
[実施形態1]
S1では、作業ロールを交換した後の個々の機械構造物(機械構造物は5個)の作業ロールの半径R={1#217.5;2#217.5;3#217.5;4#217.5;5#217.5}(mm)、個々の機械構造物(機械構造物は5個)のロールの表面直線速度νri={1#149.6;2#292.3;3#328.3;4#449.2;5#585.5}(m/分)、個々の機械構造物(機械構造物は5個)の作業ロールの元の粗さRairo={1#0.53;2#0.53;3#0.53;4#0.53;5#0.53}(μm)、個々の機械構造物(機械構造物は5個)の作業ロールの粗さによる減衰係数BLi={1#0.01;2#0.01;3#0.01;4#0.01;5#0.01}、及び個々の機械構造物(機械構造物は5個)の作業ロールのキロメートル単位の圧延距離L={1#200;2#180;3#190;4#220;5#250}(km)を含み、i=1、2、...、5は、冷間タンデム圧延機の機械構造物の順序数を表し、本出願のすべての実施形態では、「#」の前の数字はi、すなわちi番目の機械構造物を表し、対応するパラメータは「#」の後である、冷間タンデム圧延機の装置の特徴パラメータが獲得される。
【0035】
S2では、ストリップの弾性係数E=206GPa、ストリップのポアソン比ν=0.3、ストリップ幅B=812mm、機械構造物毎の(機械構造物は5個)ストリップの入口板厚h0i={1#2.1;2#1.17;3#0.65;4#0.4;5#0.27}(mm)、機械構造物毎の(機械構造物は5個)のストリップの出口板厚h1i={1#1.17;2#0.65;3#0.40;4#0.27;5#0.22}(mm)、ストリップの変形抵抗K=502MPa、個々の機械構造物の圧延力P={1#507.9;2#505.4;3#499.8;4#489.8;5#487.2}(t)、個々の機械構造物(機械構造物は5個)の直前のストリップの入口速度ν0i{1#147.6;2#288.2;3#323.3;4#442.0;5#575.5}(m/分)、乳濁液濃度の影響係数k=0.9、潤滑剤の粘性圧縮係数θ=0.034m/N、及び潤滑剤の動的粘性η=5.4を含む、ストリップの臨界圧延プロセスのパラメータが獲得される。
【0036】
S3では、中立角が、過潤滑の臨界点に等しい咬合角と一致して、摩擦係数が極めて小さいときに、作業ロールとストリップとの間のすべりが容易に生じ、それにより圧延機の振動をもたらす瞬間における振動決定指数の上限閾値
【数41】
が定義され、中立角が、低潤滑の臨界点である咬合角の半分の角度であるときに、作業ロールとストリップとの間の油膜が破裂しやすく、それにより摩擦係数が突然に大きくなって異常な圧延圧力の変動をもたらし、ひいては圧延機の振動をもたらす瞬間における振動決定指数の下限閾値
【数42】
が定義され、T0iとして個々の機械構造物の入口張力が定義され、かつ、T1iとして出口張力が定義され、T01=T、T1n=Tである。
【0037】
S4では、冷間タンデム圧延機の振動を抑制するための目標とする最適化関数の初期設定値、F=1.0×1010が与えられる。
【0038】
S5では、個々の機械構造物(機械構造物は5個)の初期の張力システムにおいて、
【数43】
が設定され、T0i+1=T1i、i=1、2…5である。
【0039】
S6では、個々の機械構造物の咬合角αが計算され、計算式は、
【数44】
であり、Δh=h0i-h1i、α={1#0.004;2#0.002;3#0.001;4#0.0005;5#0.0002}、R’は、i番目の機械構造物の作業ロールの平滑化半径、
【数45】
、及びR’={1#217.8;2#224.5;3#235.6;4#260.3;5#275.4}(mm)である。
【0040】
S7では、張力システムにおける現在の油膜厚さξが計算され、計算式は、
【数46】
であり、
【0041】
上式で、krgは、作業ロール及びストリップ鋼の縦方向の粗さによって、巻き込まれる潤滑剤の強度係数を表し、0.09から0.15までの範囲であり、Krsは、インプレッションレートすなわち作業ロールの表面粗さをストリップ鋼に転写する割合を表し、0.2から0.6までの範囲である。
【0042】
S8では、摩擦係数uと油膜厚さξとの間の関係に従って、個々の機械構造物の作業ロールとストリップ鋼との間の摩擦係数
【数47】
、u={1#0.124;2#0.089;3#0.078;4#0.047;5#0.042}が計算され、aは、i番目の機械構造物の液体摩擦係数、a={1#0.0126;2#0.0129;3#0.0122;4#0.0130;5#0.0142}であり、bは、i番目の機械構造物の乾燥摩擦係数、b={1#0.1416;2#0.1424;3#0.1450;4#0.1464;5#0.1520}であり、Bは、i番目の機械構造物の摩擦係数の減衰指数、B={1#-2.4;2#-2.51;3#-2.33;4#-2.64;5#-2.58}である。
【0043】
S9では、圧延理論に従って、張力システムにおける個々の機械構造物の現在の中立角γが計算され、計算式は、
【数48】
であり、γ={1#0.0025;2#0.0012;3#0.0006;4#0.0003;5#0.00014}である。
【0044】
S10では、
【数49】
に従って、張力システムにおける個々の機械構造物の現在の振動決定指数Ψ={1#0.625;2#0.6;3#0.6;4#0.6;5#0.7}が計算される。
【0045】
S11では、不等式
【数50】
が同時に確立されるか否かが決定され、不等式が確立される場合、ステップS12へ進行する。
【0046】
S12では、張力システムの包括的な最適化目標関数は、
【数51】
であり、
【0047】
F(X)=0.231が計算され、
【0048】
上式で、
【数52】
であり、λは分布係数、λ=0.5であり、X={T0i,T1i}は最適化変数である。
【0049】
S13では、不等式F(X)<Fが確立されるか否かが決定され、不等式が確立される場合には、
【数53】
、F=F(X)となることで、ステップS14へ進行し、確立されない場合には、直接、ステップS14へ進行する。
【0050】
S14では、張力システムでT0i及びT1iが実行可能な領域の範囲を超えているか否かが決定され、超えている場合はステップS15へ進行し、すなわちT0i及びT1iのすべてのデータに対して、実行可能な領域の範囲内でS5~S14が連続的に反復され、計算されたF(X)値が比較され、F(X)が最小である場合、T0i及びT1iが選択される。
【0051】
S15では、最適な張力システムの設定値が出力され、
【数54】
である。
【0052】
【数55】
及び
【数56】
は、S14で計算されたF(X)値が最小である場合、T0i及びT1iの値である。
【0053】
[実施形態2]
S1では、作業ロールを交換した後の個々の機械構造物(機械構造物は5個)の作業ロールの半径R={1#217.5;2#217.5;3#217.5;4#217.5;5#217.5}(mm)、個々の機械構造物(機械構造物は5個)のロールの表面直線速度νri={1#149.6;2#292.3;3#328.3;4#449.2;5#585.5}(m/分)、個々の機械構造物(機械構造物は5個)の作業ロールの元の粗さRairo={1#0.53;2#0.53;3#0.53;4#0.53;5#0.53}(μm)、個々の機械構造物(機械構造物は5個)の作業ロールの粗さによる減衰係数BLi={1#0.01;2#0.01;3#0.01;4#0.01;5#0.01}、及び個々の機械構造物(機械構造物は5個)の作業ロールのキロメートル単位の圧延距離L={1#220;2#190;3#200;4#240;5#260}(km)を含み、i=1、2、...、5は、冷間タンデム圧延機の機械構造物の順序数を表す、冷間タンデム圧延機の装置の特徴パラメータが獲得される。
【0054】
S2では、ストリップの弾性係数E=210GPa、ストリップのポアソン比ν=0.3、ストリップ幅B=826mm、機械構造物毎の(機械構造物は5個)ストリップの入口板厚h0i={1#2.2;2#1.27;3#0.75;4#0.5;5#0.37}(mm)、機械構造物毎の(機械構造物は5個)のストリップの出口板厚h1i={1#1.27;2#0.75;3#0.50;4#0.37;5#0.32}(mm)、ストリップの変形抵抗K=510MPa、個々の機械構造物の圧延力P={1#517.9;2#508.4;3#502.8;4#495.8;5#490.2}(t)、個々の機械構造物(機械構造物は5個)の直前のストリップの入口速度ν0i{1#137.6;2#276.2;3#318.3;4#438.0;5#568.5}(m/分)、乳濁液濃度の影響係数k=0.9、潤滑剤の粘性圧縮係数θ=0.034m/N、及び潤滑剤の動的粘性η=5.4を含む、ストリップの臨界圧延プロセスのパラメータが獲得される。
【0055】
S3では、中立角が、過潤滑の臨界点に等しい咬合角と一致して、摩擦係数が極めて小さいときに、作業ロールとストリップとの間のすべりが容易に生じ、それにより圧延機の振動をもたらす瞬間における振動決定指数の上限閾値
【数57】
が定義され、中立角が、低潤滑の臨界点である咬合角の半分の角度であるときに、作業ロールとストリップとの間の油膜が破裂しやすく、それにより摩擦係数が突然に大きくなって異常な圧延圧力の変動をもたらし、ひいては圧延機の振動をもたらす瞬間における振動決定指数の下限閾値
【数58】
が定義され、T0iとして個々の機械構造物の入口張力が定義され、かつ、T1iとして出口張力が定義され、T01=T、T1n=Tである。
【0056】
S4では、冷間タンデム圧延機の振動を抑制するための目標とする最適化関数の初期設定値、F=1.0×1010が与えられる。
【0057】
S5では、個々の機械構造物(機械構造物は5個)の初期の張力システムにおいて、
【数59】
が設定され、T0i+1=T1i、i=1、2…5である。
【0058】
S6では、個々の機械構造物の咬合角αが計算され、計算式は、
【数60】
であり、α={1#0.003;2#0.0025;3#0.001;4#0.0004;5#0.0001}であり、上式で、Δh=h0i-h1i、R’は、i番目の機械構造物の作業ロールの平滑化半径、
【数61】
及びR’={1#219.8;2#228.7;3#237.4;4#262.5;5#278.6}(mm)である。
【0059】
S7では、張力システムにおける現在の油膜厚さξが計算され、計算式は、
【数62】
であり、
【0060】
上式で、krgは、作業ロール及びストリップ鋼の縦方向の表面粗さによる潤滑剤の巻き込みの強度の係数を表し、0.09から0.15までの範囲であり、Krsは、インプレッションレートすなわち作業ロールの表面粗さをストリップ鋼に転写する割合を表し、0.2から0.6までの範囲である。
【0061】
S8では、摩擦係数uと油膜厚さξとの間の関係に従って、個々の機械構造物の作業ロールとストリップ鋼との間の摩擦係数は、
【数63】
であり、u={1#0.135;2#0.082;3#0.085;4#0.053;5#0.047}が計算され、aは、i番目の機械構造物の液体摩擦係数、a={1#0.0126;2#0.0129;3#0.0122;4#0.0130;5#0.0142}であり、bは、i番目の機械構造物の乾燥摩擦係数、b={1#0.1416;2#0.1424;3#0.1450;4#0.1464;5#0.1520}であり、Bは、i番目の機械構造物の摩擦係数の減衰指数、B={1#-2.4;2#-2.51;3#-2.33;4#-2.64;5#-2.58}である。
【0062】
S9では、圧延理論に従って、張力システムにおける個々の機械構造物の現在の中立角γが計算され、計算式は、
【数64】
であり、γ={1#0.0025;2#0.0012;3#0.0008;4#0.0006;5#0.00023}である。
【0063】
S10では、
【数65】
に従って、張力システムにおける個々の機械構造物の現在の振動決定指数Ψ={1#0.833;2#0.48;3#0.8;4#0.6;5#0.23}が計算される。
【0064】
S11では、不等式
【数66】
が同時に確立されるか否かが決定され、不等式が確立される場合、ステップS12へ進行する。
【0065】
S12では、目標とする包括的な張力システムの最適化関数は、
【数67】
であり、
【0066】
F(X)=0.325が計算され、
【0067】
上式で、
【数68】
であり、λは分布係数、λ=0.5であり、X={T0i,T1i}は最適化変数である。
【0068】
S13では、不等式F(X)<Fが確立されるか否かが決定され、不等式が確立される場合には、
【数69】
、F=F(X)となることで、ステップS14へ進行し、確立されない場合には、直接、ステップS14へ進行する。
【0069】
S14では、張力システムにおいて、T0i及びT1iが実行可能な領域の範囲を超えているか否かが決定され、超えている場合には、ステップS15へ進行し、すなわち、T0i及びT1iのすべてのデータに対して、実行可能な領域の範囲内でS5~S14が連続的に反復され、計算されたF(X)値が比較され、また、F(X)が最小である場合には、T0i及びT1iが選択される。
【0070】
S15では、最適な張力システムの設定値が出力され、
【数70】
である。
【数71】
及び
【数72】
は、S14で計算されたF(X)値が最小である場合、T0i及びT1iである。
【0071】
[実施形態3]
S1では、作業ロールを交換した後の個々の機械構造物(機械構造物は5個)の作業ロールの半径R={1#217.5;2#217.5;3#217.5;4#217.5;5#217.5}(mm)、個々の機械構造物(機械構造物は5個)のロールの表面直線速度νri={1#149.6;2#292.3;3#328.3;4#449.2;5#585.5}(m/分)、個々の機械構造物(機械構造物は5個)の作業ロールの元の粗さRairo={1#0.53;2#0.53;3#0.53;4#0.53;5#0.53}(μm)、個々の機械構造物(機械構造物は5個)の作業ロールの粗さによる減衰係数BLi={1#0.01;2#0.01;3#0.01;4#0.01;5#0.01}、及び個々の機械構造物(機械構造物は5個)の作業ロールのキロメートル単位の圧延距離L={1#190;2#170;3#180;4#210;5#230}(km)を含み、i=1、2、...、5は、冷間タンデム圧延機の機械構造物の順序数を表す、冷間タンデム圧延機の装置の特徴パラメータが獲得される。
【0072】
S2では、ストリップの弾性係数E=201GPa、ストリップのポアソン比ν=0.3、ストリップ幅B=798mm、機械構造物毎の(機械構造物は5個)ストリップの入口板厚h0i={1#2.0;2#1.01;3#0.55;4#0.35;5#0.25}(mm)、機械構造物毎の(機械構造物は5個)のストリップの出口板厚h1i={1#1.01;2#0.55;3#0.35;4#0.25;5#0.19}(mm)、ストリップの変形抵抗K=498MPa、個々の機械構造物の圧延力P={1#526.9;2#525.4;3#502.3;4#496.5;5#493.4}(t)、個々の機械構造物(機械構造物は5個)の直前のストリップの入口速度ν0i{1#159.5;2#296.3;3#335.4;4#448.0;5#586.3}(m/分)、乳濁液濃度の影響係数k=0.9、潤滑剤の粘性圧縮係数θ=0.034m/N、及び潤滑剤の動的粘性η=5.4を含む、ストリップの臨界圧延プロセスのパラメータが獲得される。
【0073】
S3では、中立角が、過潤滑の臨界点に等しい咬合角と一致して、摩擦係数が極めて小さいときに、作業ロールとストリップとの間のすべりが容易に生じ、それにより圧延機の振動をもたらす瞬間における振動決定指数の上限閾値
【数73】
が定義され、中立角が、低潤滑の臨界点である咬合角の半分の角度であるときに、作業ロールとストリップとの間の油膜が破裂しやすく、それにより摩擦係数が突然に大きくなって異常な圧延圧力の変動をもたらし、ひいては圧延機の振動をもたらす瞬間における振動決定指数の下限閾値
【数74】
が定義され、T0iとして個々の機械構造物の入口張力が定義され、かつ、T1iとして出口張力が定義され、T01=T、T1n=Tである。
【0074】
S4では、冷間タンデム圧延機の振動を抑制するための目標とする最適化関数の初期設定値、F=1.0×1010が与えられる。
【0075】
S5では、個々の機械構造物(機械構造物は5個)の初期の張力システムでは、
【数75】
が設定され、T0i+1=T1i、i=1、2…5である。
【0076】
S6では、個々の機械構造物の咬合角αが計算され、計算式は、
【数76】
、Δh=h0i-h1i、α={1#0.005;2#0.004;3#0.002;4#0.0008;5#0.0003}であり、上式で、R’は、i番目の機械構造物の作業ロールの平滑化半径、
【数77】
及び、R’={1#209.3;2#221.7;3#232.8;4#254.6;5#272.1}(mm)である。
【0077】
S7では、張力システムにおける現在の油膜厚さξが計算され、計算式は、
【数78】
であり、
【0078】
上式で、krgは、作業ロール及びストリップ鋼の縦方向の表面粗さによる潤滑剤の巻き込みの強度の係数を表し、0.09から0.15までの範囲であり、Krsは、インプレッションレートすなわち作業ロールの表面粗さをストリップ鋼に転写する割合を表し、0.2から0.6までの範囲である。
【0079】
S8では、摩擦係数uと油膜厚さξとの間の関係に従って、個々の機械構造物の作業ロールとストリップ鋼との間の摩擦係数は、
【数79】
、u={1#0.115;2#0.082;3#0.071;4#0.042;5#0.039}が計算され、aは、i番目の機械構造物の液体摩擦係数、a={1#0.0126;2#0.0129;3#0.0122;4#0.0130;5#0.0142}であり、bは、i番目の機械構造物の乾燥摩擦係数、b={1#0.1416;2#0.1424;3#0.1450;4#0.1464;5#0.1520}であり、Bは、i番目の機械構造物の摩擦係数の減衰指数、B={1#-2.4;2#-2.51;3#-2.33;4#-2.64;5#-2.58}である。
【0080】
S9では、圧延理論に従って、張力システムにおける個々の機械構造物の現在の中立角γが計算され、計算式は、
【数80】
であり、γ={1#0.0035;2#0.0022;3#0.0008;4#0.0004;5#0.00018}である。
【0081】
S10では、
【数81】
に従って、張力システムにおける個々の機械構造物の現在の振動決定指数Ψ={1#0.7;2#0.55;3#0.4;4#0.5;5#0.6}が計算される。
【0082】
S11では、不等式
【数82】
が同時に確立されるか否かが決定され、不等式が確立される場合、ステップS12へ進行する。
【0083】
S12では、目標とする包括的な張力システムの最適化関数は、
【0084】
【数83】
であり、
【0085】
F(X)=0.277が計算され、
【0086】
上式で、
【数84】
であり、λは分布係数、λ=0.5であり、X={T0i,T1i}は最適化変数である。
【0087】
S13では、不等式F(X)<Fが確立されるか否かが決定され、不等式が確立される場合には、
【数85】
、F=F(X)となることで、ステップS14へ進行し、確立されない場合には、直接、ステップS14へ進行する。
【0088】
S14では、張力システムT0i及びT1iが実行可能な領域の範囲を超えているか否かが決定され、超えている場合はステップS15へ進行し、すなわちT0i及びT1iのすべてのデータに対して、実行可能な領域の範囲内でS5~S14が連続的に反復され、計算されたF(X)値が比較され、また、F(X)が最小である場合、T0i及びT1iが選択される。
【0089】
S15では、最適な張力システムの設定値が出力され、
【数86】
である。
【数87】
及び
【数88】
は、S14で計算されたF(X)値が最小である場合、T0i及びT1iである。
【0090】
要約すると、本発明の冷間タンデム圧延機の振動を抑制するための張力システムの最適化方法の技術的解決策は、冷間タンデム圧延機の高速圧延中の圧延機の振動問題に狙いを定めて採用され、振動決定指数は、冷間タンデム圧延機の圧延プロセスが、本発明における圧延機の振動の原因になることなく、安定した潤滑状態にあるか否かを判断するように定義されており、この振動決定指数に基づいて、冷間タンデム圧延機の装置及びプロセスの特徴と相俟って、冷間タンデム圧延機の振動を抑制するための張力システムの最適化方法が提案され、目的は、機械構造物の振動決定指数が振動決定指数の最適値
【数89】
に最も近くなり、張力システムの包括的最適化目標関数と、実際の圧延プロセスにおいて獲得される個々の機械構造物の振動決定指数Ψの間の平均二乗誤差が最小になり、個々のそれぞれの機械構造物の圧延機の振動決定指数係数F(X)の最大値が同じく最小になるように使用され、振動決定指数の上限閾値
【数90】
が、中立角γが咬合角αと一致する過剰な潤滑状態における圧延プロセス中に獲得される制約、及び振動決定指数の下限閾値
【数91】
が、中立角γが咬合角αの半分である低潤滑状態における圧延プロセス中に獲得される制約が使用され、実行可能な領域の範囲内における張力システムの最適化計算が実施され、張力システムの適切な最適化値
【数92】
及び
【数93】
が最終的に与えられる。現場における実際のアプリケーションを通して、圧延機の振動欠陥の問題が効果的に抑制され、振動の確率が著しく低減され、それと同時に、明るい縞と暗い縞が交番する欠陥が効果的に処理され、したがって、冷間タンデム圧延機の高速で、かつ、安定した圧延プロセスを保証し、ストリップの製造企業の生産効率を改善し、企業の経済的利益を増す。本発明は、冷間タンデム圧延機の高速圧延プロセス中に、圧延機の振動を抑制するための張力システムを最適化するために、国内的に他の同様の冷間タンデム圧延機にさらに普及することができ、これは、普及及びアプリケーションのための広範囲の展望を有している。
図1