(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-16
(45)【発行日】2022-02-25
(54)【発明の名称】車両シートのためのスマートカバー、およびこのようなスマートカバーを備える車両シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/58 20060101AFI20220217BHJP
A47C 7/62 20060101ALI20220217BHJP
【FI】
B60N2/58
A47C7/62 Z
(21)【出願番号】P 2021541665
(86)(22)【出願日】2020-11-16
(86)【国際出願番号】 IB2020060755
(87)【国際公開番号】W WO2021099912
(87)【国際公開日】2021-05-27
【審査請求日】2021-07-19
(31)【優先権主張番号】102019000021993
(32)【優先日】2019-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519234327
【氏名又は名称】マルトゥール・イタリー・ソチエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100210398
【氏名又は名称】横尾 太郎
(72)【発明者】
【氏名】ユステュンベルク,ジャン
【審査官】田中 佑果
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-526318(JP,A)
【文献】特開2010-101836(JP,A)
【文献】再公表特許第2011/007549(JP,A1)
【文献】国際公開第2018/128788(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00-2/90
A47C 7/62
G01L 1/20
G01V 3/08
H01G 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つまたは複数のファブリックで作られる車両シートカバー(10)であって、
前記カバーを形成する前記ファブリックのうちの少なくとも1つのファブリックが1つまたは複数の撚り糸のセンサ(YS)を備え、
前記カバーを形成する前記ファブリックのうちの少なくとも1つのファブリックが1つまたは複数の撚り糸の電気二重層コンデンサ(YSC)を備え、
前記撚り糸の電気二重層コンデンサ(YSC)が前記撚り糸のセンサ(YS)に電気的に接続される、
ことを特徴とする、車両シートカバー(10)。
【請求項2】
前記撚り糸のセンサ(YS)が圧力センサおよび/または温度センサとして作られる、 請求項1に記載の車両シートカバー(10)。
【請求項3】
前記撚り糸のセンサ(YS)が圧電センサとして作られる、
請求項1または2に記載の車両シートカバー(10)。
【請求項4】
前記撚り糸のセンサ(YS)が導電性ポリマーのナノ繊維から作られる、
請求項3に記載の車両シートカバー(10)。
【請求項5】
前記撚り糸の電気二重層コンデンサ(YSC)が炭素繊維およびカーボンナノチューブに基づく電極から作られる、
請求項1に記載の車両シートカバー(10)。
【請求項6】
前記電極のうちの少なくとも一方、または両方の前記電極が、活性物質による受動的コーティング、多孔性および官能基を導入するための電気化学的活性化、または電着により、適切に処理される、
請求項5に記載の車両シートカバー(10)。
【請求項7】
前記電極が固体電解質ポリマーで覆われる、
請求項6に記載の車両シートカバー(10)。
【請求項8】
前記撚り糸のセンサ(YS)および前記撚り糸の電気二重層コンデンサ(YSC)が、前記カバー(10)の異なるファブリック内に配置されるかまたは前記カバー(10)の1つの同じファブリックの異なる領域(12a、12b、14a、14b)内に配置される、
請求項1に記載の車両シートカバー(10)。
【請求項9】
前記撚り糸のセンサ(YS)が、前記カバーをその上に配置している前記車両シートを占有する使用者のボディに接触する前記カバーの領域(12a、14a)内に配置され、 前記撚り糸の電気二重層コンデンサ(YSC)が、摩擦および摩耗をほぼ受けない前記カバーの領域(12b、14b)内に配置される、
請求項8に記載の車両シートカバー(10)。
【請求項10】
前記撚り糸のセンサ(YS)および前記撚り糸の電気二重層コンデンサ(YSC)が前記カバーの1つの同じ領域内に配置される、
請求項1に記載の車両シートカバー(10)。
【請求項11】
前記撚り糸のセンサ(YS)が前記カバー(10)の前記ファブリック/ファブリックの横撚り糸、前記ファブリックの縦撚り糸、または前記ファブリックの横撚り糸および縦撚り糸の組み合わせであってよい、
請求項1に記載の車両シートカバー(10)。
【請求項12】
前記撚り糸の電気二重層コンデンサ(YSC)が、前記カバー(10)の前記ファブリック/ファブリックの横撚り糸、前記ファブリックの縦撚り糸、または前記ファブリックの横撚り糸および縦撚り糸の組み合わせであってよい、
請求項1に記載の車両シートカバー(10)。
【請求項13】
前記撚り糸の電気二重層コンデンサ(YSC)による前記撚り糸のセンサ(YS)の電力供給を管理するための制御電子部品(PSM)をさらに備える、
請求項1に記載の車両シートカバー(10)。
【請求項14】
クッション(102)およびバックレスト(104)を有する車両シート(100)であって、
前記車両シートがフレームを備え、
前記フレーム上にパッドが設置され、
前記パッドの上にカバーが嵌め込まれ、
前記カバーが請求項1から13のいずれか一項に記載の車両シートカバー(10)である、
ことを特徴とする、車両シート(100)。
【請求項15】
前記撚り糸電気二重層コンデンサ(YSC)のためのエネルギー源として環境発電要素(16)をさらに備える、
請求項14に記載の車両シート(100)。
【請求項16】
前記環境発電要素が太陽電池(16)である、
請求項15に記載の車両シート(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両シートのためのスマートカバーに関し、上記スマートカバーが車両シートを占有する使用者の1つまたは複数の生物測定学データを検出するのを可能にする。
本発明はさらに、このようなスマートカバーを備える車両シートに関する。
【0002】
本発明は、有利には、車両を運転する使用者の疲労度、またより概略的には身体コンディションを監視するのを可能にする。
【背景技術】
【0003】
車両の分野では、特に自動車の分野では、安全性に対して、特に事故防止に対しての注目が増している。
この点に関して、使用者の居眠り運転の状態を検出するための装置に関連する文献が多数存在する。
【0004】
これらの装置は、一般に、使用者の姿勢検出(例えば、頭部または目の位置の検出)に基づくものであり、検出した姿勢が居眠り状態に一致する場合に警告信号を発するように設計される。
【0005】
しかし、これらの装置は明確な制限を有する。
1つには、いわゆる「突発発症の睡眠」が既に起こっている場合にはこれらの装置の介入が遅れる、ということがある。結果として、使用者が、起こり得る事故を回避するために有する反応時間が制限される。
【0006】
2つ目として、完全に目が覚めており警戒を怠っていない使用者が、眠気に関連する姿勢であるとこの装置によって認識される姿勢を誤ってとってしまう場合に、この装置が誤った警告を発する可能性がある、ということがある。
【0007】
3つ目として、これらの装置が居眠りを原因とする使用者の姿勢の変化しか検出することができず、ストレス、不安状態、および息切れなどの、事故につながり得る他のリスク要因を検出することができない、ということがある。
【0008】
したがって、近年、生物測定学データの検出を介してより正確に使用者のより多くの身体状態を監視することができる解決策を開発することが試みられている。
考えられる1つの解決策は、心電図を得るために使用者が自分の皮膚に貼付することができる電極を車両シート(または、車両コックピットの中にあるより一般的な何らかの他の要素)に装備することである。
【0009】
しかし、この解決策は非常に不快であり、実装することが困難であることは明らかである。
したがって、直接的な物理的接触なしで使用者から生物測定学データを収集する手段を車両シートに装備することを伴う代替の解決策も開発されている。
【0010】
このような生物測定学データは、例えば、心拍数、血圧、呼吸数、および体温などを含むことができる。
一般に、これらの解決策は、シートの上に着座する使用者の解剖学的位置に対応するそれぞれの位置において車両シートの内部に配置される圧電センサを有する検出装置を使用することを伴い、この圧電センサが、生理学的要因を原因とする使用者によりセンサに加えられる機械的応力に反応して電気信号を発生させる。
【0011】
例えば、呼吸およびそれに伴う使用者の肋骨郭の膨張/収縮がこれらのセンサにかかる圧力を誘発し、さらにその結果としてセンサの機械的変形を誘発する。この機械的変形が圧電センサにより電気信号へと変換され、この電気信号が使用者の呼吸数を推定するために再処理され得る。
【0012】
こうすることで、圧電センサが、使用者の皮膚に直接に必ずしも接触するわけではなく使用者の生理学的状態を原因とする機械的応力を検出することができる。
上記装置が、発生する電気信号に基づいて、使用者の対応する生物測定学的情報を導き出すことができる処理ユニットをさらに有する。
【0013】
センサを適切に配置することにより(例えば、心臓の位置および/または呼吸器系の位置に)、使用者の身体状態を効果的に監視することが可能となる。
上述の種類の装置が、例えば、文献、米国特許第10034631号、DE202012001096U、およびWO2015/127193で開示されている。
【0014】
これらの文献で説明される装置は、組み合されて多数の異なる生物測定学パラメータを検出することができるが、欠点を有さないというわけではない。
具体的には、圧電センサが存在することにより車両シートの構造が複雑になり、これらのセンサならびに相対的な接続および電力供給要素の位置決めには非常に長い組み立て時間が伴うことになる。
【0015】
車両の全体重量も増大する。この重量の増大は一見わずかであると思われる可能性もあるが、シート(さらには、車両コックピット内の他の構成要素)の重量を最小にすることが自動車分野での主要な方針の1つであることはよく知られている。
【0016】
加えて、これらのセンサ、その接続部、および対応するバッテリーまたは同様の電力供給要素を提供することの必要性により、シートの設計における製造業者の自由度に制約が課されることになる。
【0017】
使用者の生物測定学データを高い信頼性で正確に監視することには多数のセンサが必要となることにより、これらのすべての欠点が増幅する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【文献】米国特許第10034631号
【文献】DE202012001096U
【文献】WO2015/127193
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の主要な目的は、シートの製造プロセスの複雑さおよび製造時間ならびにその全体重量に悪影響を与えないような、車両シートを占有する使用者の生物測定学データの検出および監視のための解決策を提供することにより、従来技術の制限を解消することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
これらのおよび他の目的が、添付の特許請求の範囲で請求される車両シートカバーおよび車両シートを用いて達成される。
本発明は車両シートのためのスマートカバーを提供し、上記スマートカバーが1つまたは複数のファブリックで作られ、ここでは、上記ファブリックのうちの少なくとも1つのファブリックの1つまたは複数の撚り糸がセンサとして作られ、またここでは、上記ファブリックのうちの少なくとも1つのファブリックの1つまたは複数の撚り糸が電気二重層コンデンサとして作られ、上記撚り糸の電気二重層コンデンサが上記撚り糸のセンサに電気的に接続される。本発明により、エネルギーが本発明によるカバーの撚り糸の電気二重層コンデンサ内で蓄えられ、カバーの撚り糸のセンサに電力を供給するときに放出され得る。
【0021】
結果として、本発明では、使用者の生物測定学データの検出のための装置が車両シートのカバーに一体化される。
カバーのための製作時間が従来のカバーの製作時間と同等である。その理由は、従来の製織プロセスを利用して撚り糸のセンサおよび撚り糸の電気二重層コンデンサの両方がカバーに一体化されるからである。
【0022】
カバーの重量も実質的に同等である。その理由は、上記カバーの撚り糸のセンサおよび撚り糸の電気二重層コンデンサと従来のカバーで使用される撚り糸との間の重量差が完全に無視できる程度であるからである。
【0023】
加えて、撚り糸のセンサおよび撚り糸の電気二重層コンデンサの両方が、カバーを形成する1つまたは複数のファブリックに一体化されることを理由として、センサ要素が使用中にずれてその効果を低減するような位置に配置されるようなリスクがない。
【0024】
本発明によるカバーが製造プロセスの最後に表面処理を施されるようなカバーと大きく異なることも指摘しておかなければならない。表面処理を施されたファブリックは、摩耗を理由として、表面処理によって与えられた特性を経時的に失う可能性がある。これは、車両シートカバーを作るのに使用されるファブリックの場合に特に深刻となる。その理由は、このようなファブリックはより強く摩耗を受けるからである。対して、本発明によるカバーは、センサとして本質的に機能することができる撚り糸、および電気二重層コンデンサとして本質的に機能することができる撚り糸の両方を備えることを理由として、その動作が経時的に劣化しない。
【0025】
撚り糸の電気二重層コンデンサによる撚り糸のセンサの電力供給の管理のために必要である電子部品がさらに本発明によるカバーに付随することになる。
撚り糸のセンサによって検出されるデータが、読み取られるためにおよび使用者の身体状態の生物測定学データへと変換されるために、制御ユニットへ送信され得る。
【0026】
これらの生物測定学データは、例えば、心拍数、血圧、呼吸数、および体温などを含むことができる。
本発明によるカバーの撚り糸のセンサが、好適には、圧力センサおよび/または温度センサである。
【0027】
本発明によるカバーの撚り糸のセンサが、好適には、圧電センサである。
本発明の実施形態で、撚り糸のセンサおよび撚り糸の電気二重層コンデンサが、同じファブリック内にまたはファブリックの同じ領域(正方形パッチ)内に配置される。
【0028】
本発明の別の実施形態で、織り糸のセンサおよび撚り糸の電気二重層コンデンサが、異なるファブリック内に、またはファブリックの異なる領域(正方形のパッチ)内に配置される。
【0029】
後者の実施形態によると、撚り糸のセンサおよび撚り糸の電気二重層コンデンサをカバー内の異なる位置に配置することが可能となる。
具体的には、シートを占有する使用者の身体に接触してそれらの働きを効果的に作用させることができるような位置に撚り糸のセンサを配置することが可能となる。これらの位置は、クッション部分、バックレスト部分、ヘッドレスト部分、およびアームレスト部分などの中で特定され得る。
【0030】
対して、撚り糸の電気二重層コンデンサが、例えば、シートを占有する使用者の身体に接触しないような位置である、別の位置に配置され得る。
本発明によるカバーの撚り糸のセンサが、横撚り糸、縦撚り糸、またはその両方として使用され得る。
【0031】
本発明によるカバーの撚り糸の電気二重層コンデンサが、横撚り糸、縦撚り糸、またはその両方として使用され得る。
本発明の好適な実施形態によると、撚り糸のセンサが導電性ポリマーのナノ繊維の束から作られる。
【0032】
本発明の特に好適な実施形態によると、撚り糸のセンサが、導電性の圧電抵抗ポリマー(piezoresistive polymer)のナノ繊維の束から作られる。
本発明の好適な実施形態によると、撚り糸の電気二重層コンデンサが炭素繊維電極またはカーボンナノチューブから作られる。
【0033】
本発明の特に好適な実施形態によると、上記電極のうちの少なくとも一方、または両方の電極が、活性物質による受動的コーティング、多孔性および官能基を導入するための電気化学的活性化、または電着により、適切に処理される。
【0034】
本発明はさらに、上述のスマートカバーを備えるシートに関連する。
上記シートが、有利には、撚り糸の電気二重層コンデンサによる撚り糸のセンサの電力供給の管理のために必要である電子部品を備える。
【0035】
本発明の好適な実施形態によると、シートが、リジッド印刷回路基板またはフレキシブル印刷回路基板として作られる電子制御ユニットを装備する。この回路が、撚り糸の電気二重層コンデンサによって得られる電圧を利用することにより撚り糸に電力供給する役割を有する。加えて、本発明によるシートに一体化される電子制御ユニットが、生物測定学の視点から電気データを読み取るためにセンサからの電気データを分析する回路部分を内蔵し、それにより使用者の生物測定学データ(心拍数、血圧、呼吸数、体温、等々)に関する情報を提供する。
【0036】
上記電子制御ユニットが、生物測定学データをリモートトランシーバ(例えば、車両ダッシュボードの中に設けられる)に無線伝送する役割を有する回路部分をさらに装備することができる。
【0037】
好適には、本発明によるシートが環境発電のための要素をさらに備え、このエネルギーがカバーの織り糸の電気二重層コンデンサの中で蓄えられることになる。
本発明の好適な実施形態では、上記環境発電要素が、太陽放射に対して通常露出されるようなシートの部分の中に配置される太陽電池である。
【0038】
これに対応する形で、電子制御ユニットが、環境発電の役割(例えば、太陽電池)および上記環境発電要素からカバーの撚り糸の電気二重層コンデンサまでのエネルギー伝達の役割を有する回路部分をさらに有する。
【0039】
添付図を参照する、非限定の例として与えられる本発明の好適な実施形態の以下の詳細な説明から本発明の別の特徴および利点がより明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】本発明による車両シートを示す概略図である。
【
図2】
図1の車両シートのカバーに一体化される生物測定学データ検出装置の動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1を参照すると、本発明による車両シート100が示されている。
それ自体既知の手法で、車両シート100がクッション102およびバックレスト104を備える。上記車両シート100が、ヘッドレスト、1つまたは2つのアームレストなどの追加のアクセサリー要素をさらに備えることができる。
【0042】
やはりそれ自体既知の手法で、車両シート100がフレーム(例えば、金属、合金、および複合材料で作られる)を備え、このフレーム上にパッドが設置される。
カバー10がパッドの上に嵌め込まれ、クッション102およびバックレスト104を覆う。
【0043】
アクセサリー要素(ヘッドレスト、アームレストなど)が提供される場合、これらのアクセサリー要素の各々が、フレームと、上記フレーム上に設置されるパッドと、上記パッドの上に嵌め込まれるカバーとを有することができる。
【0044】
一般に、カバー10は、単一のファブリック、または複数の異なるファブリックから作られ得る。
複数の異なるファブリックから作られるカバーの場合、上記ファブリックが異なる材料(ポリエステル、熱可塑性ポリウレタン、ポリアクリロニトリルなど)から得られ得るか、同じ種類であるが異なる品質を有する材料から得られ得るか、または同じ材料から得られて異なる処理を施されてもよく、結果として、多様な特性を有する最終的なファブリックが得られる。
【0045】
有利には、異なるファブリックで作られるカバーの場合、異なる特徴を有するファブリックが、カバーの異なる部分を製造するのに使用され得る。
本発明によると、カバー10を形成するファブリックのうちの少なくとも1つのファブリックが1つまたは複数の撚り糸のセンサを備え、上記カバーを形成するファブリックのうちの少なくとも1つのファブリックが1つまたは複数の撚り糸の電気二重層コンデンサを備え、上記撚り糸の電気二重層コンデンサが上記撚り糸のセンサに電気的に接続される。
【0046】
撚り糸のセンサが、好適には、圧力センサおよび/または温度センサとして作られる。
撚り糸のセンサが、好適には、圧電センサとして作られる。
図1の実施形態では、撚り糸のセンサおよび撚り糸の電気二重層コンデンサが、カバー10の異なるファブリック内に配置されるかまたはカバー10の1つの同じファブリックの異なる領域内に配置される。
【0047】
具体的には、
図1を参照すると、第1の織り糸のセンサが、シート100のクッション102のところにある第1のファブリック領域12aのところで、カバー10のファブリックを製造するための撚り糸として使用され、対して第1の撚り糸の電気二重層コンデンサが、やはりシート100のクッション102のところにあるが第1のファブリック領域12aとは離れたところの、第2のファブリック領域12bのところで、カバー10のファブリックを製造するための撚り糸として使用される。
【0048】
同様に、第2の撚り糸のセンサが、シート100のバックレスト104のところにある第3のファブリック領域14aのところで、カバー10のファブリックを製造するのに使用され、第2の撚り糸の電気二重層コンデンサが、やはりシート100のバックレスト104のところにあるが第3のファブリック領域14aから離れたところの、第4のファブリック領域14bのところで、カバー10のファブリックを製造するのに使用される。
【0049】
第1の撚り糸のセンサが第1の撚り糸の電気二重層コンデンサに電気的に接続され、第2の撚り糸のセンサが第2の撚り糸の電気二重層コンデンサに電気的に接続される。
有利には、第1の撚り糸のセンサが、使用者がシート100の上に着座しているときに使用者の身体に接触することになる第1のファブリック領域12aの中に配置される。上記第1のファブリック領域12aが、例えば、クッション102の上側面上の、実質的に中央の位置に設けられ得る。
【0050】
こうすることで、上記第1のファブリック領域12aが、使用者の生理学的要因によって誘発される圧力変化および/または温度変化を効果的に検出することができる。
対して、撚り糸の電気二重層コンデンサが、例えばクッション102の側面のうちの1つの側面などである、摩擦および摩耗をほぼ受けない第2のファブリック領域12b内に配置され得る。
【0051】
同様に、第2の撚り糸のセンサが、使用者がシート100の上に着座しているときに使用者の身体に接触することになる第3のファブリック領域14aの中に配置される。上記第3のファブリック領域14aが、例えば、ブラケット104の前面上に設けられ得、好適には、上記第3のファブリック領域14aが、車両シート100を占有する使用者の心臓および/または肺のところに配置される。
【0052】
こうすることで、上記第3のファブリック領域14aが、使用者の生理学的要因によって誘発される圧力変化および/または温度変化を効果的に検出することができる。
対して、第2の撚り糸の電気二重層コンデンサが、例えばバックレスト104の側面のうちの1つの側面またはバックレスト104の後面などである、摩擦および摩耗をほぼ受けない第2のファブリック領域14b内に配置され得る。
【0053】
この実施形態は限定的な意味で理解されるべきではなく、撚り糸のセンサおよび撚り糸の電気二重層コンデンサがカバー10の同じファブリック領域内に設けられ得る。
撚り糸のセンサがカバー10のファブリックの横撚り糸であってよいか、上記ファブリックの縦撚り糸であってよいか、または上記ファブリックの横撚り糸および縦撚り糸の組み合わせであってよい。
【0054】
撚り糸のセンサが、ファブリックの製造のために、好適にはポリエステルまたは他の適切な材料で作られる、従来の撚り糸と組み合わされ、それによりカバーを製造するのに適する連続する撚り糸を得ることができる。
【0055】
上記撚り糸のセンサがその長さの全体にわたるセンサとして作られ得るか、またはニュートラルセグメントと交互になるように特定のセグメントのみでセンサとして作られ得る。
【0056】
撚り糸の電気二重層コンデンサがカバー10のファブリックの横撚り糸であってよいか、上記ファブリックの縦撚り糸であってよいか、または上記ファブリックの横撚り糸および縦撚り糸の組み合わせであってよい。
【0057】
撚り糸の電気二重層コンデンサが、ファブリックの製造のために、好適にはポリエステルまたは他の適切な材料で作られる、従来の撚り糸と組み合わされ、それによりカバーを製造するのに適する連続する撚り糸を得ることができる。
【0058】
撚り糸のセンサが、圧電抵抗変換(piezoresistive transduction)の原理を利用して、シートを占有する使用者の生物測定学パラメータ(心拍数、血圧、呼吸数など)を監視するのに使用され得る圧力センサおよび/または温度センサであり、その結果、使用者の集中力および疲労度の状態に関する情報が得られる。
【0059】
撚り糸のセンサが、好適には、ポリマーナノ繊維の束によって作られる。撚り糸のセンサがエレクトロスピニングテクニックを用いて得られ得る。
上記ポリマーナノ繊維が:
- 高度に変形可能であって本質的に導電性を有するポリマー;
- 炭素ベースのナノ粒子を含有するポリマーナノ複合材料
- ポリアクリロニトリルのナノ繊維の酸化およびその後の炭化により得られる炭素ベースのナノ繊維
から開発され得る。
【0060】
これらのポリマーナノ繊維の実現のために他の適切な原材料が提供されてもよいことが当業者には明らかとなろう。
ポリマーナノ繊維はセンサの有効要素を表すものである。その理由は、ポリマーナノ繊維が、温度および/または外圧の変化(心拍、血圧などを原因とする)によって誘発される機械的な変形を電気信号へと変換することができるからである。具体的には、これらの信号はナノ繊維の圧電抵抗特性に起因するものとみなされ得る。
【0061】
撚り糸の電気二重層コンデンサが、好適には、炭素繊維およびカーボンナノチューブに基づく電極から作られる。
本発明の好適な実施形態では、上記電極のうちの少なくとも1つ、または上記電極の両方が、活性物質による受動的コーティング、多孔性および官能基を導入するための電気化学的活性化、または電着により、適切に処理される。
【0062】
そのうちの少なくとも一方が適切に処理された両方の撚り糸の電極が、電解重合プロセスまたは含浸プロセスにより、固体電解質ポリマーによって覆われる。
次いで、2つの撚り糸の電極が結合されて/撚り合わせられて、撚り糸の電気二重層コンデンサを形成する。
【0063】
撚り糸の電気二重層コンデンサは、電力密度値が低く、充電/放電サイクルの回数が限定され、安全性の問題および廃棄問題を有するようなリチウムバッテリーの使用に対しての、エコフレンドリーな代替手段を表すものである。
【0064】
本発明により、エネルギーが本発明による撚り糸の電気二重層コンデンサ内で蓄えられ、撚り糸のセンサおよび可能性として車両コックピット内部の他の低電力電子デバイスに電力を供給するときに放出され得る。
【0065】
したがって、本発明は、車両シート100のカバー10に一体化される、使用者の生物測定学データを検出するための装置を得るのを可能にする。
好適には、上記検出装置が完全な自律型であり、この目的のために、シート100が環境発電のための要素をさらに備え、エネルギーがカバー10の撚り糸の電気二重層コンデンサの中で蓄えられることになる。
【0066】
上記環境発電要素が、例えば、太陽放射に対して露出されるようなシートの部分のところに配置される太陽電池16であってよい。この太陽電池がカバー10の撚り糸の電気二重層コンデンサに電気的に接続される。
【0067】
代替形態として、カバー10の撚り糸の電気二重層コンデンサが外部エネルギー源に接続されてもよい。
図2では、
図1のシート100の生物測定学データ検出装置の動作原理がブロック図の形態で概略的に示されている。
【0068】
エネルギー源ESが撚り糸の電気二重層コンデンサYSCにエネルギーを伝達し、撚り糸の電気二重層コンデンサYSCが上記エネルギーを蓄えることができる。
上記エネルギー源が、例えば、その動作のために必要なすべての電子部品を内蔵する回路ブロックを装備する太陽電池から構成され得る。
【0069】
次に、上記エネルギーが、車両シートを占有する使用者によって誘発される圧力変化および/または温度変化を検出するために撚り糸のセンサYSによって使用され得る。
具体的には、制御モジュールPSMを提供することが可能であり、この制御モジュールPSMは、電気二重層コンデンサから入力電圧を受信すると、一定の出力電圧を送り返し、この一定の出力電圧が、撚り糸のセンサを制御するマイクロコントローラ(
図2ではCTRLで示される)のための、さらには上記撚り糸のセンサのための、供給電圧として機能する。
【0070】
生物測定学データ検出装置の電子部品が、撚り糸のセンサからの信号を分析してその生物測定学的様相を評価する、信号調整SCのための、および例えば車両コックピットの中に設けられるデバイスへの伝達である信号伝達RTのための、専用の電子部品をさらに含む。
【0071】
圧力変化および/または温度変化に関連する、撚り糸のセンサYSからくる信号が、電子制御ユニット(マイクロコントローラCTRL)によって分析および処理され得る。このようにして分析および処理されたデータが、信号伝達RTのためのモジュールにより、例えば車両ダッシュボード内に設けられてオンボードコンピュータさらには視覚表示ユニットに接続されるデバイスである、リモートデバイスに伝達される。
【0072】
本明細書で提示される好適な実施形態の本記述は単に例示である非限定的な形で理解されなければならず、添付の特許請求の範囲によって定義される保護範囲から逸脱することなく、当業者の知識の範囲内にある多数の変更形態および修正形態も可能である。
【符号の説明】
【0073】
10 車両シートカバー
12a 第1のファブリック領域、カバーの領域
12b 第2のファブリック領域、カバーの領域
14a 第3のファブリック領域、カバーの領域
14b 第4のファブリック領域、カバーの領域
16 太陽電池
100 車両シート
102 クッション
104 バックレスト
CTRL マイクロコントローラ
ES エネルギー源
PSM 制御電子部品、制御モジュール
RT 信号伝達
SC 信号調整
YS 撚り糸のセンサ
YSC 撚り糸の電気二重層コンデンサ