(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-17
(45)【発行日】2022-02-28
(54)【発明の名称】湿式内外表面処理装置及び湿式内外表面処理方法
(51)【国際特許分類】
C25F 7/00 20060101AFI20220218BHJP
C23C 22/73 20060101ALI20220218BHJP
C25F 3/16 20060101ALI20220218BHJP
【FI】
C25F7/00 W
C23C22/73 A
C25F3/16 C
C25F7/00 M
C25F7/00 V
(21)【出願番号】P 2021204976
(22)【出願日】2021-12-17
【審査請求日】2021-12-19
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】307016180
【氏名又は名称】地方独立行政法人鳥取県産業技術センター
(73)【特許権者】
【識別番号】515005080
【氏名又は名称】株式会社アサヒメッキ
(74)【代理人】
【識別番号】100167645
【氏名又は名称】下田 一弘
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 好明
(72)【発明者】
【氏名】玉井 博康
(72)【発明者】
【氏名】福谷 武司
(72)【発明者】
【氏名】田中 俊行
(72)【発明者】
【氏名】塚根 亮
(72)【発明者】
【氏名】川見 和嘉
(72)【発明者】
【氏名】木下 淳之
(72)【発明者】
【氏名】山中 尚
(72)【発明者】
【氏名】福田 洋二
【審査官】坂口 岳志
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-250500(JP,A)
【文献】特開昭63-270500(JP,A)
【文献】特開平2-15200(JP,A)
【文献】特開平9-031694(JP,A)
【文献】特開2015-109239(JP,A)
【文献】特開2021-050383(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109706518(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第112593281(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第112680775(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 18/00 - 30/00
C23F 1/00 - 4/04
C25F 1/00 - 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空金属体の内外表面の湿式表面処理を行う表面処理部と、前記表面処理部を制御する制御部と、を備える中空金属体の内外表面湿式処理装置であって、
前記表面処理部は、前記中空金属体の外表面の湿式表面処理を行う外表面処理手段と、前記中空金属体の内表面の湿式表面処理を行う内表面処理手段とからなり、
前記外表面処理手段は、前記中空金属体を挿通可能な対向する開口部を設けた前記中空金属体を内包可能な筒状の外表面処理槽と、前記中空金属体を把持して前記開口部と前記中空金属体との間隙を封止する第1封止手段と、前記筒状の外表面処理槽内に配設された第1電極と、前記筒状の外表面処理槽内に処理薬液を給液する第1給液手段と、前記筒状の外表面処理槽内から処理済み廃薬液を排液する第1排液手段と、前記中空金属体及び前記第1電極に給電線を介して電流を供給する第1電源からなる第1給電手段を備え、
前記内表面処理手段は、前記中空金属体の両端開口部を封止する第2封止手段と、前記第2封止手段に貫設された第2電極と、前記第2封止手段を介して処理薬液を給液する第2給液手段及び処理済み廃薬液を排液する第2排液手段と、前記中空金属体及び前記第2電極に給電線を介して電流を供給する第2電源からなる第2給電手段を備える
ことを特徴とする中空金属体の内外表面湿式処理装置。
【請求項2】
前記第2封止手段が、前記第2電極を貫設する可撓性素材からなる算盤玉形状であり、両側面にナットを配設して封止手段を押圧可能とする構造を有することを特徴とする請求項1に記載する中空金属体の内外表面湿式処理装置。
【請求項3】
前記表面処理部を制御する制御部は、処理薬液の液性を計測して、計測データに基づき処理薬液の給液量及び処理済み廃薬液の排液量を制御する薬液管理部と、前記計測データを逐次記憶する薬液データ記憶部を備えることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載する中空金属体の内外表面湿式処理装置。
【請求項4】
駆動機構を設けた架台に、中空金属体の内外表面の湿式表面処理を行う表面処理部及び前記表面処理部を制御する制御部を載置して一体として運搬可能とした請求項1から請求項3のいずれかに記載する中空金属体の内外表面湿式処理装置。
【請求項5】
前記中空金属体が耐食性及び水素バリア性を有する被膜を被覆したステンレス鋼管の溶接加工部を含むステンレス鋼管であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載する中空金属体の内外表面湿式処理装置。
【請求項6】
中空金属体の内外表面の湿式表面処理を並行して行う中空金属体の内外表面湿式処理方法であって、
中空金属体を対向する開口部を設けた筒状の外表面処理槽に挿通し、挿通した中空金属体の両端開口部に第2電極板を貫設した封止手段を配設し、筒状の外表面処理槽開口部と中空金属体との間隙を封止して、中空金属体の内外表面湿式処理装置に設置する中空金属体設置工程と、
中空金属体の内外表面湿式処理装置に設置した中空金属体の内外表面に並行して処理薬液を給液して内外表面処理を行い、処理済み廃薬液を排液する湿式表面処理を逐次行う逐次湿式表面処理工程と、
からなる中空金属体の内外表面湿式処理方法。
【請求項7】
前記逐次湿式表面処理工程が、脱脂処理、酸洗処理、電解研磨処理、被膜形成処理、被膜硬化処理、不働態化処理を逐次行う処理工程であることを特徴とする請求項6に記載する中空金属体の内外表面湿式処理方法。
【請求項8】
前記中空金属体が耐食性及び水素バリア性を有する被膜を被覆したステンレス鋼管の溶接加工部を含むステンレス鋼管であることを特徴とする請求項6または請求項7のいずれかに記載する中空金属体の内外表面湿式処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、中空金属体の内外表面の湿式表面処理を並行して行う湿式内外表面処理装置及びそれを用いた中空金属体の内外表面の湿式表面処理方法に関する。特に、ステンレス配管の内外表面を同時並行して湿式表面処理を行うことができる可搬型表面処理装置及び内外表面処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ステンレス鋼は表面に自然に形成されるナノオーダーの不働態酸化膜で被覆されているため化学プラントにおける主要な装置材料として、配管や容器部材として使用されている。化学プラントを構成する配管や容器部材は、海塩粒子の付着による孔食や隙間腐食を生じ易く、腐食の進行に伴う強度低下が安全対策において懸念されている。また、高温あるいは極低温の環境下における延性低下に伴う破断事故、高圧水素の貯蔵輸送における水素脆性が問題となっている。さらに、配管や容器部材は溶接加工が施される場合が多く、溶接加工部の耐食性にも優れることが求められている。
【0003】
このため、配管や容器部材、溶接加工部材を耐水素脆性及び耐食性に優れる機能被膜で被覆することが検討されている。特許文献1、2には、ステンレス鋼に処理コスト及び設備コストが安価でコスト優位性が高い湿式処理(ウエットプロセス)により形成した金属酸化物皮膜を不働態化処理した耐食性及び耐水素脆性に優れるステンレス鋼並びにその製造方法が開示されている。
【0004】
一方、化学プラントを構成する配管や容器部材は、プラントの現場においてステンレス鋼板、ステンレス鋼管に溶接加工を施して製作されることが一般的であり、工場出荷時に耐水素脆性及び耐食性に優れる機能被膜で被覆したステンレス鋼板、ステンレス鋼管は溶接加工部を改めて機能被膜で被覆する必要がある。このため、プラントの現場において、工場生産時と同一の製造条件で溶接加工部に機能被膜を被覆できる簡易で、搬送可能な可搬型湿式表面処理装置が求められている。
【0005】
特許文献3には、空洞内に金属容器を挿置して容器の内外表面を電解処理する装置が開示されている。しかしながら、中空金属体(配管)の内外表面を湿式表面処理する装置に関するものではない。また、耐水素脆性及び耐食性に優れる機能被膜を被覆する装置でもない。
特許文献4には、燃料電池システム用曲線配管の内外表面の電解研磨処理方法が開示されている。しかしながら、電解液中に曲線配管を浸漬する方法である。また、耐水素脆性及び耐食性に優れる機能被膜を被覆する装置でもない。
特許文献5には、処理液収容タンクと処理液を被表面処理部材に噴射ノズルを用いて湿式表面処理を行う小型湿式表面処理装置が開示されている。しかしながら、被表面処理部材表面を部分的に湿式処理する装置である。また、耐水素脆性及び耐食性に優れる機能被膜を被覆する装置でもない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-188728号公報
【文献】特許第6869495号公報
【文献】特公昭61- 37358号公報
【文献】特開2015-127091号公報
【文献】WO2016-181698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願発明は、耐食性及び水素バリア性に優れる不働態化被膜を被覆したステンレス鋼配管の施工現場において、溶接加工したステンレス鋼配管の内外表面に不働態化被膜を被覆処理するための運搬可能な湿式表面処理装置及びそれを用いた湿式表面処理方法を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明の課題は、以下の態様により解決できる。具体的には、
【0009】
(態様1) 中空金属体の内外表面の湿式表面処理を行う表面処理部と、前記表面処理部を制御する制御部と、を備える中空金属体の内外表面湿式処理装置であって、前記表面処理部は、前記中空金属体の外表面の湿式表面処理を行う外表面処理手段と、前記中空金属体の内表面の湿式表面処理を行う内表面処理手段とからなり、前記外表面処理手段は、前記中空金属体を挿通可能な対向する開口部を設けた前記中空金属体を内包可能な筒状の外表面処理槽と、前記中空金属体を把持して前記開口部と前記中空金属体との間隙を封止する第1封止手段と、前記筒状の外表面処理槽内に配設された第1電極と、前記筒状の外表面処理槽内に処理薬液を給液する第1給液手段と、前記筒状の外表面処理槽内から処理済み廃薬液を排液する第1排液手段と、前記中空金属体及び前記第1電極に給電線を介して電流を供給する第1電源からなる第1給電手段を備え、前記内表面処理手段は、前記中空金属体の両端開口部を封止する第2封止手段と、前記第2封止手段に貫設された第2電極と、前記第2封止手段を介して処理薬液を給液する第2給液手段及び処理済み廃薬液を排液する第2排液手段と、前記中空金属体及び前記第2電極に給電線を介して電流を供給する第2電源からなる第2給電手段を備えることを特徴とする中空金属体の内外表面湿式処理装置である。
中空金属体の内外表面を湿式表面処理において、独立した内表面処理手段と外表面処理手段を同時並行して湿式表面処理することで、湿式表面処理の迅速性と均一性を担保できるからである。また、表面処理部を制御する制御部を設けることで、処理薬液の液性等の計測データに基づき湿式表面処理を適切に実行できるからである。
【0010】
(態様2) 前記第2封止手段が、前記第2電極を貫設する可撓性素材からなる算盤玉形状であり、両側面にナットを配設して封止手段を押圧可能とする構造を有することを特徴とする態様1に記載する中空金属体の内外表面湿式処理装置である。
可撓性素材からなる算盤玉形状の封止手段をその両側面に配設したナットで押圧することで、封止手段と中空金属体との密着性が向上するからである。
【0011】
(態様3) 前記表面処理部を制御する制御部は、処理薬液の液性を計測して、計測データに基づき処理薬液の給液量及び処理済み廃薬液の排液量を制御する薬液管理部と、前記計測データを逐次記憶する薬液データ記憶部を備えることを特徴とする態様1または態様2のいずれかに記載する中空金属体の内外表面湿式処理装置である。
処理薬液の液性等計測データを逐次取得して記憶することで、通信回線を介した製造データとの照合が可能となり、現場での湿式表面処理の品質を担保できるからである。
【0012】
(態様4) 駆動機構を設けた架台に、中空金属体の内外表面の湿式表面処理を行う表面処理部及び前記表面処理部を制御する制御部を載置して一体として運搬可能とした態様1から態様3のいずれかに記載する中空金属体の内外表面湿式処理装置である。
駆動機構を設けて運搬可能とすることで、現場処理が容易になるからである。
【0013】
(態様5) 前記中空金属体が耐食性及び水素バリア性を有する被膜を被覆したステンレス鋼管の溶接加工部を含むステンレス鋼管であることを特徴とする態様1から態様4のいずれかに記載する中空金属体の内外表面湿式処理装置である。
【0014】
(態様6) 中空金属体の内外表面の湿式表面処理を並行して行う中空金属体の内外表面湿式処理方法であって、中空金属体を対向する開口部を設けた筒状の外表面処理槽に挿通し、挿通した中空金属体の両端開口部に第2電極板を貫設した封止手段を配設し、筒状の外表面処理槽開口部と中空金属体との間隙を封止して、中空金属体の内外表面湿式処理装置に設置する中空金属体設置工程と、中空金属体の内外表面湿式処理装置に設置した中空金属体の内外表面に並行して処理薬液を給液して内外表面処理を行い、処理済み廃薬液を排液する湿式表面処理を逐次行う逐次湿式表面処理工程と、からなる中空金属体の内外表面湿式処理方法である。
【0015】
(態様7) 前記逐次湿式表面処理工程が、脱脂処理、酸洗処理、電解研磨処理、被膜形成処理、被膜硬化処理、不働態化処理を逐次行う処理工程であることを特徴とする態様6に記載する中空金属体の内外表面処理方法である。
逐次湿式表面処理工程を、脱脂処理、酸洗処理、電解研磨処理、被膜形成処理、被膜硬化処理、不働態化処理を逐次行う処理工程とすることで、耐食性及び水素バリア性を有する被膜を被覆した中空金属体を製作できるからである。
【0016】
(態様8) 前記中空金属体が耐食性及び水素バリア性を有する被膜を被覆したステンレス鋼管の溶接加工部を含むステンレス鋼管であることを特徴とする態様6または態様7のいずれかに記載する中空金属体の内外表面湿式処理方法である。
【発明の効果】
【0017】
本願発明によれば、耐食性及び水素バリア性に優れる不働態化被膜を被覆したステンレス鋼配管の施工現場において、溶接加工したステンレス鋼配管の内外表面に不働態化被膜を被覆処理するための運搬可能な湿式表面処理装置及びそれを用いた湿式表面処理方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本願発明の内外表面湿式処理装置を用いた金属配管溶接部被覆システムの概要図である。
【
図2】本願発明の内外表面湿式処理装置の装置構成図である。
【
図3】本願発明の内外表面湿式処理装置に使用する第2封止手段の実施態様を示す写真である。
【
図4】本願発明の第2封止手段による中空金属体開口部の封止態様を示す写真である。
【
図5】本願発明の運搬可能な内外表面湿式処理装置を示す写真である。
【
図6】本願発明の中空金属体の内外表面湿式処理方法を示すフロー図である。
【
図7】本願発明の内外表面湿式処理装置を用いた内外表面湿式処理方法により湿式表面処理を行ったステンレス鋼管の外表面の外観を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本願発明について、図面を参照して実施態様に従って説明する。ただし、以下の説明は、本願発明の理解のためであって、本願発明を限定するものではない。
【0020】
図1は、本願発明の可搬可能な中空金属体の内外表面湿式処理装置の位置付けの概要を説明する模式図である。化学プラントにおける主要な装置材料として使用される耐食性及び水素バリア性に優れる配管は、事前に内外表面に耐食性及び水素バリア性を有する被膜(以下、「機能被膜」という。)を被覆した長尺パイプとして、化学プラントの施工現場に出荷され、配管施工時に溶接加工される。溶接箇所は、溶接加工により機能被膜が損傷しているため、改めて機能被膜を溶接箇所に被覆する必要がある。
また、処理薬液の液性等の計測データをデータベースとして蓄積すると共に、出荷工場での処理薬の液性等の計測データと通信回線を介して照合することにより、現場での製造不良を未然にふせぐことができる。
本願発明の中空金属体の内外表面湿式処理装置(以下、「内外表面湿式処理装置」という。)は、施工現場において耐食性及び水素バリア性を有する機能被膜を溶接箇所に被覆するため装置である。また、可搬式とすることができる。
【0021】
1.中空金属体の内外表面湿式処理装置
図2は、本願発明の内外表面湿式処理装置の構成を示す説明図である。内外表面湿式処理装置100は、表面処理部200と制御部300とで構成される。
表面処理部200は、中空金属体1の内外表面に一連の湿式表面処理を行って耐食性及び水素バリア性を有する機能被膜を形成する役割を担う。制御部300は、表面処理部200における一連の湿式表面処理のプロセス条件(温度、pH、時間、電位、電流、濃度)を計測して最適制御する役割と、計測されたプロセスデータを逐次収集して蓄積するデータベースの役割を担う。
ここで、一連の湿式表面処理とは、中空金属体内外表面に機能被膜を形成するために逐次行うウエットプロセスによる表面処理をいう。具体的には、脱脂・酸洗等の中空金属体内外表面の前洗浄処理、前洗浄処理した中空金属体内外表面を平滑化する電解研磨処理、電解研磨処理により平滑化した中空金属体内外表面に被膜形成する被膜形成処理、形成した被膜を硬化させる被膜硬化処理、硬化処理した被膜を不働態化する不働態化処理をいう。
【0022】
(1)表面処理部
表面処理部200は、中空金属体1の外表面の湿式表面処理を行う外表面処理手段と、中空金属体1の内表面の湿式表面処理を行う内表面処理手段とからなる。
【0023】
(1-1)外表面処理手段
外表面処理手段は、中空金属体1を挿通可能な対向する開口部(3a,3b)を設けた中空金属体1を内包可能な筒状の外表面処理槽2と、中空金属体1を把持して開口部(3a,3b)と中空金属体1との間隙を封止する第1封止手段(4a,4b)と、外表面処理槽2内に配設された第1電極5と、外表面処理槽2内に処理薬液を給液する第1給液手段と、外表面処理槽2内から処理済み廃薬液(以下、「廃薬液」という。)を排液する第1排液手段と、中空金属体1及び第1電極5に給電線(7a,7b)を介して電流を供給する第1電源6からなる第1給電手段を備える。
【0024】
外表面処理槽2は、処理薬液10を貯留して、中空金属体1の外表面の湿式表面処理を行う処理槽としての役割を担う。また、外表面処理槽2には、一連の湿式表面処理のプロセス条件を計測する計測センサー20(pH,温度,液量)及び第1電極5が配設され、薬液供給口8及び廃薬液排出口9を備える。
外表面処理槽2の材質は、特に限定はないが、剛性、耐薬品性、電気絶縁性を有するものが好ましい。具体的には、ポリプロピレン、ポリカーボネート、フッ素系樹脂等が好適である。
【0025】
第1封止手段(4a,4b)は、中空金属体1を把持するOリング形状で、外表面処理槽2の開口部(3a,3b)と中空金属体1との密着性に優れる可撓性を有するものを使用する。また、耐薬品性及び電気絶縁性を有するものを使用する。具体的には、シリコン系樹脂、フッ素系樹脂が好適である。
【0026】
第1給液手段は、処理薬液10を貯留する処理薬液槽11、処理薬液10を外表面処理槽2に供給する給液ポンプ(12a)、処理薬液移送管(13a)で構成される。処理薬液槽11は、一連の湿式表面処理に供する処理薬液ごとに複数設けられている。また、一連の湿式表面処理相互間の水洗に供する水洗液の水洗液槽(図示せず)も設けられている。処理薬液10の給液ポンプ(12a)は制御部300で制御されて、一連の湿式表面処理に必要な処理薬液及び水洗液を適時供給する。
処理薬液移送管(13a)の材質は、特に限定はないが、耐薬品性、可撓性を有するものが好ましい。
【0027】
第1排液手段は、廃薬液14を貯留する廃薬液槽15、廃薬液14を廃薬液槽15へ排出する廃薬液移送管(16a)及び廃薬液移送管(16a)の開放を制御する電磁弁(17a)で構成される。廃薬液移送管(16a)の材質は、特に限定はないが、耐薬品性、可撓性を有するものが好ましい。
【0028】
第1給電手段は、第1電源6、給電線(7a,7b)、第1電極5からなる。第1電源6からは、給電線(7a,7b)を介して第1電極5、外表面処理槽2内の処理薬液10及び被処理材である中空金属体1に直流電流が供給される。これにより、中空金属体1の外表面において一連の湿式表面処理が進む。なお、制御部300で制御されて、一連の湿式表面処理に必要な電流を適時供給する。
【0029】
(1-2)内表面処理手段
内表面処理手段は、中空金属体1の両端開口部(21a,21b)を封止する第2封止手段(22a,22b)と、第2封止手段(22a,22b)に貫設された第2電極23と、第2封止手段(22b)を介して処理薬液10を中空金属体1の内部へ給液する第2給液手段及び廃薬液14を排液する第2排液手段と、中空金属体1及び第2電極23に給電線(24a,24b)を介して電流を供給する第2電源25からなる第2給電手段を備える。
【0030】
図3は、本願発明の内外表面湿式処理装置100に使用する第2封止手段(22a)の実施態様を示す写真である。第2封止手段(22a)は、第2電極23を貫設する算盤玉形状であり、両側面のナット27、座金28の締め付けにより中空金属体1の開口部(21a)を封止する。
図4は、第2封止手段(22a)による中空金属体1の開口部(21a)の封止態様を示す写真である。
第2封止手段(22b)は、円錐台形状であり、第2電極23、薬液移送管(13b)及び廃薬液移送管(16b)を貫設する。第2封止手段(22a,22b)の材質は、中空金属体1の開口部(21a,21b)と密着性に優れる可撓性を有するものを使用する。また、耐薬品性及び電気絶縁性を有するものを使用する。具体的には、シリコン系樹脂、フッ素系樹脂が好適である。
【0031】
第2給液手段は、処理薬液10を貯留する処理薬液槽11、処理薬液10を中空金属体1の内部に供給する給液ポンプ(12b)、処理薬液移送管(13b)で構成される。処理薬液槽11は、一連の湿式表面処理に供する処理薬液ごとに複数設けられている。また、一連の湿式表面処理相互間の水洗に供する水洗液の水洗液槽(図示せず)も設けられている。処理薬液の給液ポンプ(12b)は制御部300で制御されて、一連の湿式表面処理に必要な処理薬液及び水洗液を適時供給する。
処理薬液移送管(13b)の材質は、特に限定はないが、耐薬品性、可撓性を有するものが好ましい。
【0032】
第2排液手段は、廃薬液14を貯留する廃薬液槽15、廃薬液を廃薬液槽15へ排出する廃薬液移送管(16b)及び廃薬液移送管(16b)の開放を制御する電磁弁(17b)で構成される。廃薬液移送管(15b)の材質は、特に限定はないが、耐薬品性、可撓性を有するものが好ましい。
【0033】
第2給電手段は、第2電源25、給電線(24a,24b)、第2電極23からなる。第2電源25からは、給電線(24a,24b)を介して第2電極23、中空金属体1内部の処理薬液10及び被処理材である中空金属体1に直流電流が供給される。これにより、中空金属体1の内表面において一連の湿式表面処理が進む。なお、制御部300で制御されて、一連の湿式表面処理に必要な電流を適時供給する。
【0034】
(2)制御部
本願発明の内外表面湿式処理装置100の表面処理部200を制御する制御部300は、処理薬液11の液性を計測して、計測データに基づき処理薬液11の給液量、処理薬液の切り替え、水洗及び廃薬液14の排液量を制御する薬液管理部と、処理薬液の計測データを逐次記憶する薬液データ記憶部とを備える。
【0035】
(2-1)薬液管理部
薬液管理部は、表面処理部200による中空金属体1の内外表面処理の適切な進行を制御する役割を担う。表面処理部200の外表面処理槽2に配設された計測センサー20からインプロセス計測データ(電流、温度、電位、pH)を逐次取得する計測用PLC31及び前記計測用PLC31に配線30で接続されたシステムコントローラ33で構成される。
システムコントローラ33は、インプロセス計測データ(電流、温度、電位、pH)に基づき、給液ポンプ(12a,12b)及び電磁弁(17a,17b)の駆動を制御して、表面処理部200による中空金属体1の内外表面処理の適切な進行を制御する。システムコントローラ33は、計測データ表示用モニタ35、入力用キーボード、CPU、ROM、RAM等(図示せず)からなる。
処理薬液10は、ヒーター18により温度を制御されている。
【0036】
(2-2)薬液データ記憶部
薬液データ記憶部は、計測用PLC31を介して取得した処理薬液のインプロセス計測データ(電流、温度、電位、pH)を逐次保管する役割を担い、ROM、RAM等(図示せず)からなるデータ記憶装置32を備える。薬液データ記憶部に保管されたインプロセス計測データ(電流、温度、電位、pH)は、送受信装置34を介して中空金属体製造工場に送信され、工場内の製造履歴情報と照合することで、表面処理不良を未然に回避する役割を担う。
【0037】
(3)可搬式内外表面湿式処理装置
図5は、車輪付き台車に表面処理部及び制御部を載置した運搬可能な内外表面湿式処理装置を示す写真である。駆動機構は、車輪による手押しであるが、この駆動機構を自走可能な台車にすることもできる。
【0038】
(4)中空金属体
本願発明の中空金属体は、湿式表面処理(脱脂処理、酸洗処理、電解研磨処理、化学発色処理、硬化処理、不働態化処理)が適用し得る中空金属体(配管)であれば、特に限定されない。例えば、ニオブ、ステンレス、アルミニウム、アルミニウム合金、銅等がある。
【0039】
(4-1)ステンレス鋼
本願発明の内外表面湿式処理装置は、化学プラントにおける主要な装置材料である配管、容器部材、水素用構造鋼構造物を構成する溶接接合を施したステンレス鋼の湿式表面処理に好適に採用できる。水素貯蔵用圧力容器はステンレス鋼板で形成した各部材を溶接接合して容器を構成し、内面を酸洗処理して製造するからであり、水素を輸送する高圧パイプはステンレス鋼板を鋼帯の状態で溶接造管ラインを通して製造し、パイプラインとするためには複数のパイプを溶接接合して製造する必要があるからである。
ステンレス鋼としては、化学プラントにおける主要な装置材料として、配管や容器部材として使用されているステンレス鋼、水素を貯蔵する高圧貯蔵容器、水素を輸送する高圧パイプラインに使用されるステンレス鋼を好適に用いることができる。具体的には、フェライト系ステンレス鋼、マルテンサイト系ステンレス鋼、オーステナイト系ステンレス鋼がある。耐食性や高強度が要求される高圧貯蔵容器や高圧パイプラインには、マルテンサイト系ステンレス鋼(例えば、410C、420、430、440C、440B)、オーステナイト系ステンレス鋼(例えば、304、304L、321、347、316L)が好適に用いることができる。
【0040】
2.中空金属体の内外表面湿式処理方法
本願発明の中空金属体の内外表面湿式処理方法は、本願発明の内外表面湿式処理装置200に中空金属体1を設置する中空金属体設置工程と、内外表面湿式処理装置200に設置した中空金属体1の内外表面に並行して処理薬液を給液して内外表面処理を行い、廃薬液を排液する湿式表面処理を逐次行う逐次湿式表面処理工程とからなる。
図6に示すフロー図に沿って説明する。
【0041】
(1)中空金属体設置工程
中空金属体設置工程400は、以下の段階(ステップ)からなる。
被処理材である中空金属体1(例えば、溶接加工部を含むステンレス配管)を筒状の外表面処理槽2の対向する開口部(3a,3b)に挿通する(挿通ステップ)。挿通した中空金属体1を第1封止手段(4a,4b)及び両端開口部に第2電極板を貫設した第2封止手段(22a,22b)で、筒状の外表面処理槽2開口部及び中空金属体の両端開口部を封止する(封止ステップ)からなる。
【0042】
(2)逐次湿式表面処理工程
逐次湿式表面処理工程500は、以下の段階(ステップ)からなる。具体的には、脱脂処理、酸洗処理、電解研磨処理、化学発色処理、硬化処理、不働態化処理からなる。また、各処理の間の水洗処理も含む。
逐次湿式表面処理工程500は、本願発明の中空金属体の内外表面湿式処理装置100の制御部300により制御されている。
【0043】
(2-1)脱脂処理
金属表面に付着している油分を除去する処理である。一般的には、リン酸塩と界面活性剤をベースとしたアルカリ脱脂剤で金属表面に付着している油分を界面活性剤の乳化作用により除去する。
【0044】
(2-2)酸洗処理
金属表面を酸溶液に接触させて、錆び、その他の不純物を化学的に除去する処理である。酸洗処理により金属表面が清浄化される。酸洗処理で用いる酸溶液は、例えば、硝酸とフッ化水素酸との混合液である。なお、酸洗処理後の金属表面は非光沢面である。
【0045】
(2-3)電解研磨処理
電解研磨処理は、外部電源により、電解研磨液中で、金属をアノード(陽極)として直流電流を流して、微細な凹凸のある金属表面の凸部分の溶解により金属表面を平滑化し光沢化する研磨処理である。バフ研磨などの物理的研磨と異なり加工変質や加工硬化層を作らず、研磨面に不純物や汚染が少ないため研磨面が清浄となるという長所がある。
電解研磨浴における陽極分極曲線(Jacquet曲線)では、電位に依存しない一定電流(限界電流)範囲が存在する。この限界電流範囲において、アノード被研磨金属近傍には濃厚な粘性の高い陽極液層(Jacquet層)が形成される。この液層は溶出カチオンの拡散を抑制し、これによって研磨が行われると考えられる。すなわち、アノード金属表面状の凹凸により、粘性液層中の濃度勾配に差異を生じ、拡散電流が影響して凸部に電流が集中するようになり、表面の凹凸が消失して研磨が行われる。
【0046】
(2-3-1)電解研磨液
電解研磨液は、過塩素酸系、リン酸-硫酸-クロム酸系、リン酸-硫酸-有機物系、の3つに分類され、リン酸-硫酸-クロム酸系、リン酸-硫酸-有機物系、が広く採用されている。氷酪酸,燐酸,硫酸,硝酸,クロム酸,重クロム酸ソーダ等の単独または混合酸性水溶液で構成され、有機物(添加剤)としてエチレングリコールモノエチルエーテル,エチレングリコールモノブチルエステルやグリセリンを使用することができる。これら添加剤は電解液を安定化させ、濃度変化、経時変化、使用による劣化に対して適正電解範囲を広げる効果がある。
具体的には、40~80vol%リン酸、5~30vol%硫酸、15~20vol%水、0~35vol%エチレングリコールからなる電解液中で、40~70℃、3~10min、直流(10~30V、3~60A/dm2)で行うことができる。 電解研磨処理は、金属体表面の平滑さを改善するため、金属体表面を種々の組成の溶液(研磨液)に接触させた状態で、金属表面を研磨液中で陽極溶解し、微細な凹凸のある金属表面の凸部分の溶解により金属表面を平滑化し光沢化する処理である。バフ研磨などの物理的研磨により発生した汚れ、異物、加工変質層を除去できる。
【0047】
(2-4)被膜形成処理
被膜形成処理は、金属酸化物からなる機能被膜をステンレス鋼表面に形成して、ステンレス鋼に耐食性及び水素バリア性を付与する役割を担う。
【0048】
(2-4-1)被膜形成方法
機能被膜を構成する金属酸化物被膜の形成には、ステンレス発色技術を採用する。ステンレス発色技術とは、ステンレス鋼表面に形成される陽極酸化膜の干渉色によりステンレス鋼を発色させる技術をいう。形成される陽極酸化膜の厚さは陽極と参照極との電位差(発色電位)に関連する。クロム酸と硫酸混合溶液中で酸化クロム皮膜を形成する、いわゆるインコ法(特開昭48-011243号公報参照)が広く採用される。
機能被膜の厚さは、100nmを超えるものであり、好ましくは、110nm~350nm、より好ましくは、150nm~300nmである。
【0049】
(2-4-2)被膜形成速度
機能被膜を構成する金属酸化物の形成速度(以下、「被膜形成速度」という。)を制御することで、被膜の密着性、均一性を高めて耐食性及び水素性が低下する原因となる被膜が薄い部分や被膜欠損(ピンホール)の発生を抑制できる。
被膜形成速度は、発色液組成と温度で制御できる。発色液組成としては、硫酸とクロム酸の混合比(クロム酸/硫酸)は、クロム酸15~30wt/v%に対し、硫酸40~50wt/v%が好適である。クロム酸濃度を低減することで、被膜形成速度を低くすることができ、発色被膜の生成厚みを精密に制御できるからである。
被膜形成速度は、電位速度(mV/sec)で制御することができる。電位速度は、0.02~0.08mV/sec、好ましくは0.050~0.065mV/secである。電位速度が0.02mV/sec未満であると発色被膜の生成が遅れ生産性が低下するからである。電位速度が0.08mV/secを超えると形成された機能被膜の厚みが不均一となり、耐食性及び水素性が低下する原因となる被膜が薄い部分や被膜欠損(ピンホール)が生じるからである。
【0050】
(2-4-3)発色液
発色液組成としては、クロム酸と硫酸の混合比(クロム酸/硫酸)は、クロム酸15~30wt/vl%に対し、硫酸40~50wt/vl%が好適である。クロム酸濃度を低減することで、機能被膜の形成速度を低くすることができ、機能被膜の生成厚みを精密に制御できるからである。発色液の温度は、60~90℃である。
【0051】
発色液中のクロム酸濃度の低減に伴う機能被膜の形成I速度を補うために、マンガンイオン(Mn2+)を添加することができる。メッキ液に用いるマンガン塩としては、塩化マンガン(MnCl2)、硫酸マンガン(MnSO4)、硝酸マンガン(Mn(NO3)2)などがあり、これらの中の1種または2種以上を用いることができる。メッキ液中のマンガンイオン(Mn2+)濃度は、0.5~300mmol/Lが好ましく、5~150mmol/Lがより好ましい。マンガンイオン(Mn2+)濃度が0.5mmol/L未満では、機能被膜の形成を促す効果がなく、マンガンイオン(Mn2+)濃度が300mmol/Lを超えると不溶な部分が残って、水素バリア機能膜の形成に影響を及ぼすからである。
【0052】
(2-5)被膜硬化処理
被膜硬化処理は、被膜形成処理により形成した金属酸化物皮膜からなる機能被膜を、機能被膜が形成されたステンレス鋼を陰極とし、陰極電解により皮膜を硬化させる。被膜形成処理により形成された金属酸化物からなる機能被膜は、10~20nmの空孔が1cm2当たり1011個程度分布している。この空孔は、耐食性及び水素性を低下させる原因となるものであり、被膜硬化処理により空孔を封じることができる。また、ルーズな被膜を強固にすることもできる。
【0053】
(2-5-1)硬化処理液
硬化処理液としては、クロム酸とリン酸の混合比(クロム酸/リン酸)は、クロム酸15~30wt/v%に対し、反応促進剤としてリン酸0.2~0.3wt/v%が好適である。電流密度0.2~1.0A/dm2で、5~10min行う。
【0054】
(2-6)不動態化処理
不働態化処理は、被膜硬化処理された金属酸化物被膜からなる機能被膜にさらに保護被膜を形成する役割を担う。
ここで、不働態化とは、金属または半導体の表面に保護被膜を生成させることをいう。一般に、金属は環境の酸化性が高くなると腐食反応が進むが、ステンレス鋼においては酸化性がある程度以上高くなると保護皮膜の形成により腐食反応が抑制される。
ステンレス鋼の不動態化処理方法としては、(a)硝酸その他強力な酸化剤を含む溶液に浸漬する方法、(b)酸化剤を含む溶液中でのアノード分極による方法、(c)酸素または清浄な空気中における低温加熱による方法、などがある。本願発明はウエットプロセスであるため(a)または(b)の方法を採用することができる。この不動態化処理により極めて薄い保護膜(10~100nm)が形成される。
【0055】
(2-6-1)不動態化処理液
不働態化処理液は、不動態化させる能力のある酸化剤(以下、「不動態化剤」という。)を含む水溶液中で行う。不動態化剤としては、硝酸、クロム酸、過マンガン酸、モリブデン酸、亜硝酸がある。不動態化剤として硝酸を用いる場合は、硝酸15~30v/v%が好適である。
また、重クロム酸ナトリウムを添加すると後述する孔食電位が貴となり、耐孔食性が向上する。添加する重クロム酸ナトリウムは1.5~3.5wt%が好適である。
【0056】
(2-6-2)逐次不働態化処理
本願発明の不働態化処理は、少なくとも2以上の独立した不働態化処理を逐次的に進めることができる。不働態化剤の構成を変えた少なくとも2以上の独立した不働態化処理を行うことで、被膜形成処理及び被膜硬化処理で形成された厚さが100nmを超える機能被膜の耐食性及び水素バリア性が強化されるからである。
【0057】
(3)機能被膜
図7は、本願発明の内外表面湿式処理装置を用いた内外表面湿式処理方法により湿式表面処理を行ったステンレス鋼管の外表面の外観を示す写真であり、それぞれ、(a)処理前、(b)電解研磨処理後、(c)不働態化処理後、である。一連の湿式表面処理により、溶接加工部に耐食性及び水素バリア性を有する被膜を被覆したステンレス鋼管を得られた。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本願発明により、溶接加工したステンレス鋼配管の内外表面に機能被膜を被覆処理する運搬可能な湿式表面処理装置を提供できる。
【符号の説明】
【0059】
100 内外表面湿式処理装置
200 表面処理部
300 制御部
1 中空金属体
2 外表面処理槽
3a,3b 外表面処理槽開口部
4a,4b 第1封止手段
5 第1電極
6 第1電源
7a,7b 給電線
8 処理薬液供給口
9 廃薬液排出口
10 処理薬液
11 処理薬槽
12a,12b 給液ポンプ
13a,13b 処理薬液移送管
14 廃薬液
15 廃薬液槽
16a,16b 廃薬液移送管
17a,17b 電磁弁
18 ヒーター
20 計測センサー
21a,21b 中空金属体開口部
22a,22b 第2封止手段
23 第2電極
24a,24b 給電線
25 第2電源
30 配線
31 計測用PLC
32 データ記憶装置
33 システムコントローラ
34 送受信装置
400 中空金属体設置工程
500 逐次湿式表面処理工程
【要約】
【課題】施工現場において、溶接加工した中空金属体の内外表面湿式処理するための運搬可能な湿式表面処理装置と湿式表面処理方法を提供する。
【解決手段】表面処理部は、中空金属体の外表面の湿式表面処理を行う外表面処理手段と中空金属体の内表面の湿式表面処理を行う内表面処理手段からなる。外表面処理手段は中空金属体を挿通可能な対向する開口部を設けた中空金属体を内包可能な筒状の外表面処理槽と、中空金属体を把持して開口部と中空金属体との間隙を封止する第1封止手段と、外表面処理槽内に配設された第1電極、外表面処理槽内に処理薬液を給液する第1給液手段、外表面処理槽内から廃薬液を排液する第1排液手段、中空金属体及び第1電極に給電線を介して電流を供給する第1電源からなる第1給電手段を備え、内表面処理手段は中空金属体の両端開口部を封止する第2封止手段と、第2封止手段に貫設された第2電極と、第2封止手段を介して処理薬液を給液する第2給液手段及び廃薬液を排液する第2排液手段と、中空金属体及び前記第2電極に給電線を介して電流を供給する第2電源からなる第2給電手段を備える。
【選択図】
図2