(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-17
(45)【発行日】2022-02-28
(54)【発明の名称】アカンプロサートのスプリンクル製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/255 20060101AFI20220218BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20220218BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20220218BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20220218BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20220218BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20220218BHJP
A61P 25/18 20060101ALI20220218BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20220218BHJP
A61P 21/02 20060101ALI20220218BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20220218BHJP
A61P 25/32 20060101ALI20220218BHJP
A61P 27/16 20060101ALI20220218BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20220218BHJP
A61P 25/14 20060101ALI20220218BHJP
A61P 25/06 20060101ALI20220218BHJP
A61P 25/22 20060101ALI20220218BHJP
A61P 25/08 20060101ALI20220218BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20220218BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20220218BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20220218BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20220218BHJP
【FI】
A61K31/255
A61K9/20
A61K47/38
A61K47/32
A61K9/48
A61P25/28
A61P25/18
A61P25/00 101
A61P21/02
A61P25/16
A61P25/32
A61P27/16
A61P11/00
A61P25/14
A61P25/06
A61P25/22
A61P25/08
A61P25/00
A61P29/00
A61P25/04
A61P3/04
A23L33/10
(21)【出願番号】P 2017558372
(86)(22)【出願日】2016-05-04
(86)【国際出願番号】 US2016030725
(87)【国際公開番号】W WO2016179252
(87)【国際公開日】2016-11-10
【審査請求日】2019-04-23
(32)【優先日】2015-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2015-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】517383630
【氏名又は名称】コンフルーエンス ファーマシューティカルズ,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ジョンズ,スティーブン,エル.
(72)【発明者】
【氏名】ペイー,ケニース,ジー.
(72)【発明者】
【氏名】ドニパルシ,バドゥリナス,アール.
(72)【発明者】
【氏名】ムニアンジャナッパ,シヴァラジ,ビー.
【審査官】金子 亜希
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-508812(JP,A)
【文献】国際公開第2014/197744(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0077878(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/255
A61K 9/20
A61K 47/38
A61K 47/32
A61K 9/48
A61P 25/28
A61P 25/18
A61P 25/00
A61P 21/02
A61P 25/16
A61P 25/32
A61P 27/16
A61P 11/00
A61P 25/14
A61P 25/06
A61P 25/22
A61P 25/08
A61P 29/00
A61P 25/04
A61P 3/04
A23L 33/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
経口投与可能な医薬製剤であって、複数のペレットを含み、前記ペレットはコア、持続放出コーティング、および腸溶性コーティングを含み前記コアはアカンプロサートカルシウムおよび希釈剤を含み、かつ
前記持続放出コーティングは、前記コアの約1~約10w/w%含まれる、医薬製剤。
【請求項2】
前記希釈剤が微細結晶セルロース(MCC)またはセルロースゲルを含む、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項3】
前記持続放出コーティングが熱可塑性セルロースエーテルを含む、請求項1~2のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項4】
前記腸溶性コーティングがメタクリル酸およびエチルアクリラートをベースとしたアニオン性コポリマーを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項5】
前記複数のペレットが、サイズが約0.5~約3.1mmの範囲である、請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項6】
アカンプロサートカルシウムの約90%超がpH6.8で30分以内に放出される放出プロファイルによって特徴付けられる、請求項1~5のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項7】
アカンプロサートカルシウムの約10%未満がpH1.2で120分以内に放出されることによって特徴付けられる、請求項1~6のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項8】
前記アカンプロサートカルシウムが前記コアの約5~約60w/w%含まれる、請求項1~7のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項9】
前記アカンプロサートカルシウムが前記コアの約45~約65w/w%含まれる、請求項1~8のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項10】
前記アカンプロサートカルシウムが単位用量剤形で約100mg~約2500mg含まれる、請求項1~9のいずれか一項に記載の医薬製剤を包含する単位用量剤形。
【請求項11】
前記アカンプロサートカルシウムが単位用量剤形で約333mg含まれる、請求項10に記載の医薬製剤を包含する単位用量剤形。
【請求項12】
医薬製造における請求項1~11のいずれか一項の医薬製剤または単位用量剤形の使用であって、前記医薬の治療対象疾患が、加齢関連認知症、軽度認知症(MCI)、痴呆症、アルツハイマー病(AD)、前兆AD、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、総合失調症、双極性障害、筋委縮性側索硬化症(ALS)、癌療法関連認知症、薬剤誘発性または毒素誘発性認知症、精神遅滞、パーキンソン病(PD)、自閉症、強迫行動、物質依存症、アルコール依存、耳鳴り、睡眠時無呼吸、パーキンソン病におけるレボドパ誘発性ジスキネジー、ハンチントン病、皮質拡延性抑制、偏頭痛、統合失調症、不安、遅発性ジスキネジー、痙攣、多発性硬化症、過食症、自閉症スペクトラム障害、広汎性発達障害-他に特定されない、特発性自閉症、脆弱X症候群、アスペルガー症候群、レット症候群、Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders IV(精神障害の診断および統計学的マニュアルIV)で定義される小児期崩壊性障害、グルタミン酸-GABA不均衡として特徴付けられる神経伝達または認知障害、中断化または調節不全化したERKシグナル化経路によって特徴付けられる障害、あるいは脳発達、学習、記憶、または認知に異常を生じるRAS病である、使用。
【請求項13】
医薬の治療対象疾患が、脆弱X症候群である請求項12に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アカンプロサートペレットのスプリンクル製剤および医薬品としてのこれらの利用に関する。
【背景技術】
【0002】
3-(アセチルアミノ)プロピルスルホン酸は、N-アセチルホモタウリンまたはアカンプロサートとも呼ばれ、
【化1】
ホモタウリンの誘導体であり、中枢神経系(CNS)における複数の受容体に影響すると考えられるγ-アミノブチル酸(GABA)の天然由来構造的アナログである。抗グルタミン酸剤として、アカンプロサートはN-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体の拮抗剤として神経薬理学的効果を及ぼすと考えられている。作用のメカニズムはCa
2+の流入を遅らせてc-fosの発現を低下させるCa
2+チャンネルの遮断を含み、メッセンジャーRNA転写における変化および選択された脳領域におけるNMDA受容体のサブユニット組成への付随的修飾をもたらすものと考えられている(Zornozaら,CNS Drug Reviews,2003,9(4),359-374、およびRammesら,Neuropharmacology,2001,40,749-760)。アカンプロサートが特に代謝型グルタミン酸受容体サブタイプ5(mGluR5)の作用剤として、一般的に興奮性グルタミン酸作動性神経伝達と相互作用し得るという証拠もある(De Witte ら,CNS Drugs2005,19(6),517-37)。アカンプロサート作用のグルタミン酸作動性メカニズムはアルコール依存に対するアカンプロサートの効果を説明することができ、神経防護におけるような、他の治療的な活性を示唆する。
【0003】
多くの発行された特許および公開された特許出願が、医薬品としてのアカンプロサートの利用に関連している。例えば、米国特許番号6,391,922号および6,689,816号は、不安障害、気分障害、精神障害、身体表現性障害、および運動障害に起因する精神神経症状を含む精神神経障害に関する新規治療を開示している。治療にはNMDA型グルタミン酸受容体拮抗剤およびGABA-A受容体作用剤として同時に作用するいずれかの薬剤を利用する。好ましくは、これらの2つの活性は単一薬剤、例えば、アカンプロサート(N-アセチルホモタウリン酸カルシウム)の特性である。あるいは、これらの活性を有する別々の薬剤を1つの化合物または混合物として組み合わせて一緒に投与することができる。本発明はまた、非競合的NMDA受容体遮断剤、または初期治療の効果を増加させるイオンチャンネル遮断剤として作用する第三薬剤のために提供される。特に好ましいイオンチャンネル遮断剤はマグネシウムである。
【0004】
米国特許番号7,745,493号は、遅発性ジスキネジア、チック障害、トゥレット症候群、および眼瞼痙攣、ならびに他の局所性ジストニアを含む運動障害に関する新規治療を開示している。治療にはNMDA型グルタミン酸受容体拮抗剤およびGABA-A受容体作用剤として同時に作用する薬剤を利用する。好ましくは、これらの2つの活性は単一薬剤、例えば、アカンプロサートの特性である。あるいは、これらの活性を有する別々の薬剤を組み合わせて一緒に投与することができる。本発明はまた、非競合的NMDA受容体遮断剤または初期治療の効果を増加させるイオンチャンネル遮断剤として作用する第三薬剤を提供する。特に好ましいイオンチャンネル遮断剤はマグネシウムである。あるいは、マグネシウムは運動障害の予防および治療のために単独で投与することができる。
【0005】
米国特許番号8,865,769号は、グルタミン酸興奮毒性およびアミロイドβ毒性と関連する神経学的障害の治療のための組み合わせおよび方法を開示している。より具体的には、本発明はバクロフェンおよびアカンプロサートの組み合わせに基づいた、多発性硬化症、アルツハイマー病、アルツハイマー病関連障害、筋萎縮性側索硬化症、パーキンソン病、ハンチントン病、神経因性疼痛、アルコール性神経障害、アルコール依存症またはアルコール離脱、あるいは脊髄損傷の新規併用療法に関するものである。
【0006】
公開された米国特許出願番号2011/0294879号は、脆弱X症候群、脆弱Xと関連した震え/失調症候群、ダウン症候群を治療する方法、および/またはこれらを有する被験体にアカンプロサートのプロドラッグを投与することを含む方法を開示している。
【0007】
WO2010093859A1は、併存性または特発性自閉症および脆弱X症候群と診断されてアカンプロサートによって治療された被験体に関するものである。患者は、例えば臨床全般印象改善度(CGI-I)および臨床全般印象重症度(CGI-S)スケールを含む機能性に関する標準的な臨床的判定を用いて評価されるとき、主要な転帰に著しい改善を全般的に示した。
【0008】
多くの発行された特許および公開された特許出願が、アカンプロサートの剤形および製剤に関連している。例えば、米国特許番号6,426,087号は生理学的メディウム中で親水性またはイオン化可能である有効成分の胃腸管における経膜または傍細胞経路による吸収を改善できる経口投与可能なガルヌス剤形を開示しており、少なくとも1種類のこのような有効成分、HLB>8を有する吸収促進剤であり、ポリソルベート、ポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンと脂肪酸のエステル、脂肪酸、脂肪アルコール、胆汁酸およびこの医薬品として許容可能なカチオンを有する塩、C1~C6アルカノールと脂肪酸のエステル、ポリオールと脂肪酸のエステル、2~6個のヒドロキシル官能基を含むポリオール、ならびにポリグリコール化グリセリドから選択される1種類以上の脂質物質からなる吸収促進剤を、1種類以上の医薬品として許容可能な添加剤と組み合わせて含むものであり、カプトプリルを含む医薬剤形は除外される。制御放出錠剤は、(1)アカンプロサートカルシウムを50%、Gelucire44/14を10%、Compritolを10%、微細結晶セルロースを19%、ポリドンを10%、およびステアリン酸マグネシウムを1%含むコア、ならびに(2)HPMCを64%、PEG-4000を15%、およびタルクを21%含むフィルムコーティング組成を含んだ。
【0009】
米国特許番号6,512,009号は、アルコールおよび薬剤依存の治療のための医薬組成物を開示しており、(i)オピオイド拮抗剤、および(ii)NMDA受容体複合体調節剤の組み合わせの治療上効果的な量を含む。医薬キットも提供され、これら2種の物質を含む。オピオイド拮抗剤は、例えばナルトレキソンであることができ、NMDA受容体複合体調節剤はアカンプロサートのようなスペルミジン部位調節剤であることができる。
【0010】
米国特許番号7,994,218号は、アカンプロサートのパント酸エステルネオペンチルスルホニルエステルプロドラッグ、このプロドラッグを含む医薬組成物、および疾患を治療するためにこのプロドラッグおよびこの組成物を使用する方法を開示している。特に、増強された経口による生物学的利用能を示すアカンプロサートプロドラッグおよび神経変性疾患、精神障害、気分障害、不安障害、身体表現性障害、運動障害、薬物乱用障害、過食障害、皮質拡延性抑制関連障害、耳鳴り、睡眠障害、多発性硬化症、および疼痛を治療するためにアカンプロサートプロドラッグを用いる方法が開示されている。
【0011】
米国特許番号8,268,352号は、高い溶解性有効成分を含む新規改良放出投与剤形を開示しており、放出制御薬剤の量を効果的に低下する二重遅延技術を利用する。投与剤形は迅速放出剤形または改良放出剤形として別の有効成分を任意に含むことができる。本発明はまた、この製剤を調製する方法に関するものである。
【0012】
米国特許番号9,000,046号は、アルコール依存、耳鳴り、睡眠時無呼吸、パーキンソン病、パーキンソン病におけるレボドパ誘発性ジスキネジー、アルツハイマー病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、皮質拡延性抑制、偏頭痛、統合失調症、不安、遅発性ジスキネジー、痙攣、多発性硬化症、様々な型の痛み、または過食症を含む障害の緊急および長期治療の両方のために、1日1回または2回の投与を可能にすることができるアカンプロサートの持続放出のための胃滞留投与剤形を開示している。この投与剤形を用いた治療方法およびこの投与剤形の製造方法も記載されている。
【0013】
公開された米国特許出願番号2011/0182953号は、アセチル-ホモタウリン酸カルシウムのB型と名付けられた新規多形型、ならびにこのB型および既知結晶型の調製方法を開示している。
【0014】
公開された米国特許出願番号2013/0310456号は、全般的にはアカンプロサート製剤に関する実施形態、この製剤の使用方法、この製剤を少なくとも1種類の他の医薬品と併用して使用する方法、およびこの製剤と神経遮断剤(抗精神病剤)および/または抗うつ剤のような少なくとも1種類の他の医薬品を含む混合製品および組成物を開示している。
【0015】
アカンプロサートは細胞膜を横断する効果的な受動的透過性に必要な物理化学的特性を欠如する極性分子である。結果として、ヒトにおけるアカンプロサートの経口による生物学的利用能は約11%のみであり、消化管からのこの薬剤の乏しい吸収がその限定された耐容性に関与している可能性がある。一つの結論は、比較的大きい錠剤が治療効果を達成するために必要とされているということである。
【0016】
アカンプロサートカルシウムは、Forest PharmaによってCampral(登録商標)として販売されており、FDAによって2004年に最初に承認された。Campral(登録商標)は、治療開始時に節制しているアルコール依存を有する患者における禁酒を維持するために指示される。Campral(登録商標)は経口投与用の腸溶性コーティング錠剤として提供される。各Campral(登録商標)錠剤はアカンプロサート300mgに相当するアカンプロサートカルシウム333mgを含有する。Campral(登録商標)錠剤における非有効成分には、クロスポビドン、微細結晶セルロース、ケイ酸マグネシウム、デンプングリコール酸ナトリウム、コロイド状無水シリカ、ステアリン酸マグネシウム、タルク、プロピレングリコール、およびEudragit(登録商標)L30Dまたは同等品を含む。亜硫酸塩が薬剤物質の合成に使用され、微量の残存亜硫酸塩がこの医薬品に存在する可能性がある。Campral(登録商標)333mg錠剤は腸溶性コーティングされた、白色、円形、両凸錠剤であり、片側にデボス加工された「333」によって識別される。Campral(登録商標)の推奨用量は毎日3回投与される333mg錠剤2錠(各投与量は合計666mg)である。低用量が患者によっては効果的であり得る。投与は食事と関係なく実施され得るが、食事との投与が臨床試験の際に実施されており、毎日規則的に3回の食事をするこれらの患者に提唱されている。腸溶性コーティングとして、コーティングのいかなる崩壊も、上部消化管を通って吸収のために下部消化管に移動する前に錠剤を迅速溶解させる。錠剤の腸溶性コーティングが破壊されるとき(すなわち、咀嚼または切断)、有害反応が助長されて消化管の不調(下痢、吐き気、およ嘔吐)が増加する。
【0017】
Campral(登録商標)の現製剤は、固体形状の333mg円形錠剤であり、大きさは10mmである。また欧州ではAOTALとして知られており、薬剤は400mgおよび800mg錠剤で利用可能である。錠剤の大きさは小児および成人の両患者での課題を示している。FDAは一般的な錠剤およびカプセルの大きさ、形状、および他の物理的特性に関するガイドライン草案を発行しており、多くの個人にとっての錠剤およびカプセルを飲み込む難しさを概説し、様々な有害事象および治療処方に従わない患者を生じる可能性がある(www.fda.gov/downloads/drugs/guidancecomplianceregulatory information/guidances/ucm377938.pdf)。このガイドラインは錠剤またはカプセルを飲み込むのに何らかの困難が伴う米国における1600万人を超える人々について評価している。錠剤の大きさおよび形状は咽頭および食道を通る製品の通過に影響する可能性があり、製品を飲み込む患者の能力に直接的に影響し得る。これによって食道における製品の崩壊、ならびに潰瘍形成、狭窄、または穿孔、ならびに痛み、嘔吐、窒息、および誤嚥のような他の有害事象の可能性をもたらし得る。FDAによって示された研究は、直径が8mmより大きい錠剤は患者の不満と困難さの増加、ならびに食道通過時間の延長と関連することを示唆している。
【0018】
機能的グルタミン酸作動性拮抗剤としてのその活性と一致して、脆弱X症候群(FXS)および併存性自閉症性障害を有する対象者におけるCampral(登録商標)(アカンプロサートカルシウム)の臨床試験は、試験者の臨床全般印象(CGI-I)によって評価されたとき、有意な症状の改善を実証し、コミュニケーションおよび社会的相互行為の技量における改善が特に顕著だった(Ericksonら,J.Autism Dev.Disord.2010)。胃腸の不良(吐き気、嘔吐)がアカンプロサートを受けた被験体で共通して観察された副作用であり、胃腸の有害事象が本試験で治療された脆弱X被験体の多くで観察された。
【0019】
Baileyによって実施され公表された試験(Bailey D.B.ら,Medication Untilization for Targeted Symptoms in Children and Adults with Fragile X Syndrome(脆弱X症候群を有する小児および成人における標的とした症状に対する薬剤利用):US Survey.J Dev Behav Pediatr.2012 33:62-69)は、さらに脆弱X症候群を有する小児患者(n=1,361のFXS患者)の40~90%が固体ピル全体を飲み込むことに著しい困難を伴うことを実証した。ピルの飲み込みは多くの小児患者にとって依然として実行が難しいままであるが、年齢および訓練によって改善する。しかし、この課題は脆弱X症候群成人の少なくとも20%、高齢患者、または飲み込み困難な人々で依然として継続している。このデータはDr.Ericksonによる臨床経験と一致しており、Campral(登録商標)によるオープンラベルパイロット試験に患者を採用するために障壁となっている。
【0020】
薬剤の錠剤またはカプセル製剤を飲み込むことができない、または飲み込めない可能性がある患者を治療するために、胃腸問題を誘発しないアカンプロサートの新規経口製剤が、長年満たされず依然として必要とされている。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】アカンプロサートカルシウム腸溶性コーティングスプリンクル(No.25/30)の溶解プロファイルを示す図である。
【
図2】5%エチルセルロース+40%腸溶性コーティングによるスプリングの開口ペトリ皿試験の溶解プロファイルを示す図である。
【
図3】10%エチルセルロース+40%腸溶性コーティングによるスプリングの開口ペトリ皿試験の溶解プロファイルを示す図である。
【
図4】10%エチルセルロース+30%腸溶性コーティングによるスプリングの開口ペトリ皿試験の溶解プロファイルを示す図である。
【
図5】アカンプロサートカルシウムスプリンクル(5%エチルセルロース+40%Eudragitコーティング)の溶解プロファイルを示す図である。
【
図6】アカンプロサートカルシウムスプリンクル(5%エチルセルロース+50%Eudragitコーティング)の溶解プロファイルを示す図である。
【
図7】1日目PKを最初の12時間で示す図である。
【
図8】666mg1日2回投与試験について1日目PKを示す図である。
【
図9】1332mg(666mg1日2回)の1日目PKを、Campral対SF15000679対SF15000775(左図)とCampral対SF14000999(右図)の比較として示す図である。
【
図10】1332mg(666mg1日2回)の1日目対4日目のPKを、Campral対SF15000679対SF15000775として示す図である。
【発明の概要】
【0022】
第1態様では、本発明は複数のスプリンクルを含む経口投与可能な医薬組成物を提供し、ここでスプリンクルはコア、持続放出コーティング、および腸溶性コーティングを含み、コアは有効成分および希釈剤を含む。
【0023】
第1実施形態では、有効成分はアセチルアミノプロパンスルホン酸、アセチルアミノプロパンスルホン酸塩、タルトリミド、およびタウロムスチンからなる群から選択されるホモタウリンアナログである。
【0024】
好ましい実施形態では、有効成分は3-アセトアミドプロパン-1-スルホン酸またはこの医薬品として許容可能な塩である。
【0025】
好ましい実施形態では、有効成分はアカンプロサートカルシウムである。
【0026】
第2実施形態では、希釈剤は微細結晶セルロース(MCC)またはセルロースゲルを含む。
【0027】
好ましい実施形態では、希釈剤は基本的に微細結晶セルロース(MCC)からなる。
【0028】
好ましい実施形態では、希釈剤はAvicel PH101を含む。
【0029】
好ましい実施形態では、希薄剤は基本的にAvicel PH101からなる。
【0030】
第3実施形態では、持続放出コーティングは熱可塑性セルロースエーテルを含む。
【0031】
好ましい実施形態では、持続放出コーティングはエチルセルロースを含む。
【0032】
好ましい実施形態では、持続放出コーティングはエチルセルロース20スタンダードを含む。
【0033】
好ましい実施形態では、持続放出コーティングはさらにクエン酸トリエチルを含む。
【0034】
好ましい実施形態では、エチルセルロース20スタンダード:クエン酸トリエチルの比は約5~30w/w%である。
【0035】
好ましい実施形態では、エチルセルロース20スタンダード:クエン酸トリエチルの比は約25w/w%である。
【0036】
第4実施形態では、腸溶性コーティングはメタクリル酸およびエチルアクリラートをベースとしたアニオン性コポリマーを含む。
【0037】
好ましい実施形態では、腸溶性コーティングはEudragitを含む。
【0038】
好ましい実施形態では、腸溶性コーティングはEudragit Sを含む。
【0039】
好ましい実施形態では、腸溶性コーティングはEudragit Lを含む。
【0040】
好ましい実施形態では、腸溶性コーティングはEudragit L100 55を含む。
【0041】
好ましい実施形態では、腸溶性コーティングはさらにクエン酸トリエチルを含む。
【0042】
好ましい実施形態では、腸溶性コーティングはさらにタルクを含む。
【0043】
好ましい実施形態では、腸溶性コーティングはさらにクエン酸トリエチルおよびタルクを含む。
【0044】
好ましい実施形態では、Eudragit L100 55:クエン酸トリエチル:タルクの比は約100:約25:約50w/w%である。
【0045】
好ましい実施形態では、Eudragit L100 55:クエン酸トリエチル:タルクの比は約100:約25:約50w/w%である。
【0046】
第5実施形態では、スプリンクルとして表示された医薬品の最大ビーズサイズについて測定したとき(http://www.fda.gov/downloads/drugs/ guidancecomplianceregulatory information/ guidances/ucm240243.pdfの最新US-FDAガイドラインに従う)、複数のペレットはサイズが約0.5mm~約3.1mmの範囲である。
【0047】
第6実施形態では、複数のペレットはASTMメッシュを用いて測定したとき、サイズが約0.6mm~約1.5mmの範囲である。
【0048】
第7実施形態では、有効成分はペレット中に均一に分散される。
【0049】
第8実施形態では、コアの表面はきめがほとんど滑らかである。
【0050】
第9実施形態では、コアの表面はほとんど無孔である。
【0051】
第10実施形態では、製剤はアカンプロサートカルシウムの持続放出製剤であり、アカンプロサートカルシウムの約90%未満がpH6.8で30分以内に放出される放出プロファイルによって特徴付けられる。
【0052】
好ましい実施形態では、アカンプロサートカルシウムの約50%未満がpH1.2で120分以内に放出される。
【0053】
第11実施形態では、製剤はアカンプロサートカルシウムの改良放出製剤であり、アカンプロサートカルシウムの約10%超がpH1.2で30分以内に放出される放出プロファイルによって特徴付けられる。
【0054】
好ましい実施形態では、アカンプロサートカルシウムの約10%超がpH1.2で120分以内に放出される。
【0055】
第12実施形態では、有効成分はコアの約5~約75w/w%(有効成分:希釈剤)含まれる。
【0056】
好ましい実施形態では、有効成分はコアの約5~約65w/w%(有効成分:希釈剤)含まれる。
【0057】
好ましい実施形態では、有効成分はコアの約5~約60w/w%(有効成分:希釈剤)含まれる。
【0058】
好ましい実施形態では、有効成分はコアの約45~約65w/w%(有効成分:希釈剤)含まれる。
【0059】
好ましい実施形態では、有効成分はコアの約50~約60w/w%(有効成分:希釈剤)含まれる。
【0060】
好ましい実施形態では、有効成分はコアの約10~約40w/w%(有効成分:希釈剤)含まれる。
【0061】
好ましい実施形態では、有効成分はコアの約20~約35w/w%(有効成分:希釈剤)含まれる。
【0062】
好ましい実施形態では、有効成分はコアの約50w/w%(有効成分:希釈剤)含まれる。
【0063】
好ましい実施形態では、有効成分はコアの約60w/w%(有効成分:希釈剤)含まれる。
【0064】
第13実施形態では、複数のペレットがカプセルに含まれる。
【0065】
好ましい実施形態では、カプセルは単位用量の有効成分を含む。
【0066】
第14実施形態では、複数のペレットは小袋に含まれる。
【0067】
好ましい実施形態では、小袋は単位用量の有効成分を含む。
【0068】
好ましい実施形態では、有効成分はアカンプロサートカルシウムであり、単位用量は約100mg~約2500mgである。
【0069】
好ましい実施形態では、単位用量は約333mgである。
【0070】
第15実施形態では、持続放出コーティングは約1~約30w/w%(持続放出コーティング:コア)である。
【0071】
好ましい実施形態では、持続放出コーティングは約1~約10w/w%(持続放出コーティング:コア)である。
【0072】
好ましい実施形態では、持続放出コーティングは約3~約7w/w%(持続放出コーティング:コア)である。
【0073】
好ましい実施形態では、持続放出コーティングは約5w/w%(持続放出コーティング:コア)である。
【0074】
第16実施形態では、腸溶性コーティングは約25~約60w/w%(腸溶性コーティング:コア)である。
【0075】
好ましい実施形態では、腸溶性コーティングは約35~約55w/w%(腸溶性コーティング:コア)である。
【0076】
好ましい実施形態では、腸溶性コーティングは約40~約50w/w%(腸溶性コーティング:コア)である。
【0077】
好ましい実施形態では、腸溶性コーティングは約50w/w%(腸溶性コーティング:コア)である。
【0078】
好ましい実施形態では、腸溶性コーティングは約40w/w%(腸溶性コーティング:コア)である。
【0079】
第17実施形態では、腸溶性コーティングは約25~約60w/w%(腸溶性コーティング:コア+持続放出コーティング)である。
【0080】
好ましい実施形態では、腸溶性コーティングは約35~約55w/w%(腸溶性コーティング:コア+持続放出コーティング)である。
【0081】
好ましい実施形態では、腸溶性コーティングは約40~約50w/w%(腸溶性コーティング:コア+持続放出コーティング)である。
【0082】
好ましい実施形態では、腸溶性コーティングは約50w/w%(腸溶性コーティング:コア+持続放出コーティング)である。
【0083】
好ましい実施形態では、腸溶性コーティングは約40w/w%(腸溶性コーティング:コア+持続放出コーティング)である。
【0084】
第18実施形態では、本医薬組成物はさらに、界面活性剤、着色剤、流動剤、滑剤、増量剤、香料、香味料、香味増強剤、または発泡剤からなる群から選択される1種類以上の添加剤を含む。
【0085】
第19実施形態では、本医薬組成物はさらにmGluR拮抗剤を含む。
【0086】
第20実施形態では、本医薬組成物はさらに抗精神病剤を含む。
【0087】
第21実施形態では、本医薬組成物はさらに、抗精神病(神経遮断)剤、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)、セロトニン-ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(SNRI)、抗うつ剤、または抗不安剤を含む。
【0088】
第22実施形態では、本医薬組成物はさらに、GABAA作用剤バマルゾール、D-サイクロセリン、GABA、ガバミド、GABOB、ガボキサドール、イボテン酸、イソニペコチン酸、ムシモール、フェニバット、ピカミロン、プロガビド、SL75102、チオムシモール、またはアルコール、アルプラゾラム、バルビツレート、ベンゾジアゼピン、および非ベンゾジアゼピンのようなGABAAの活性を増加させるポジティブアロステリック調節剤を含む。
【0089】
第23実施形態では、本医薬組成物はさらに、GABAB受容体作用剤、ムスカリン受容体拮抗剤、興奮剤、ニコチン受容体作用剤、エンドカンナビノイド受容体拮抗剤、AMPA作用剤、抗うつ剤、α2-アドレナリン作用剤、または抗痙攣剤を含む。
【0090】
第2態様では、本発明は患者における医学的状態を治療する方法を提供し、この方法を必要とする患者に本発明の経口投与可能な医薬製剤を効果的な量投与することを含む。
【0091】
第1実施形態では、医学的状態は、加齢関連認知症、軽度認知症(MCI)、痴呆症、アルツハイマー病(AD)、前兆AD、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、総合失調症、双極性障害、筋委縮性側索硬化症(ALS)、癌療法関連認知症、薬剤誘発性または毒素誘発性認知症、精神遅滞、パーキンソン病(PD)、自閉症、強迫行動、または物質依存症である。
【0092】
第2実施形態では、医学的状態は、アルコール依存、耳鳴り、睡眠時無呼吸、パーキンソン病、パーキンソン病におけるレボドパ誘発性ジスキネジー、アルツハイマー病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、皮質拡延性抑制、偏頭痛、統合失調症、不安、遅発性ジスキネジー、痙攣、多発性硬化症、様々な型の痛み、または過食症である。
【0093】
第3実施形態では、医学的状態は、自閉症スペクトラム障害、広汎性発達障害-他に特定されない、特発性自閉症、脆弱X症候群、アスペルガー症候群、レット症候群、またはDiagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders IV(精神障害の診断および統計学的マニュアルIV)でさらに参照される小児期崩壊性障害である。
【0094】
好ましい実施形態では、医学的状態は脆弱X症候群である。
【0095】
第4実施形態では、医学的状態は、グルタミン酸-GABA不均衡として特徴付けられる神経伝達または認知障害、中断化または調節不全化したERKシグナル化経路によって特徴付けられる障害、あるいは脳発達、学習、記憶、または認知に異常を生じるRAS病である。
【0096】
第5実施形態では、投与段階は医薬製剤を約pH<5.5を有する食物に摂取前に散在させることを含む。
【0097】
好ましい実施形態では、食物はアップルソースまたはヨーグルトである。
【0098】
第6実施形態では、有効成分の1回単位用量は1日に1~4回投与される。
【0099】
好ましい実施では、1回単位用量は1日に2~3回投与される。
【0100】
前述および本出願の他の箇所で説明される態様/実施形態のすべての可能な組み合わせは、本発明のさらなる態様/実施形態として考えられるということが熟慮されており、認識されるものである。
【発明を実施するための形態】
【0101】
詳細の説明
本明細書では次にように使用される。
【0102】
「生物学的利用能」は、被験体への薬剤の投与後に被験体の全身循環に到達し、薬剤について、例えば血漿または血液濃度-対-時間プロファイルを評価することによって判断することができる薬剤の速度および量を意味する。
【0103】
「腸溶性コーティング」は、胃の低pHから薬剤を保護するために経口医薬に適応されて、溶解および胃の刺激を避けるポリマーバリアを意味する。
【0104】
「医薬品として許容可能な」は、動物、より特定的にはヒトにおける使用のために、連邦または州政府の規制当局によって承認済みまたは承認見込みである、あるいは米国薬局方または他の一般的に認められている薬局方にリスト化されていることを意味する。
【0105】
「医薬品として許容可能な塩」は、化合物の塩を意味し、親化合物の所望の薬理学的活性を有する。有効成分がアカンプロサートである場合、好ましい塩はカルシウム塩である。
【0106】
「医薬組成物」は、少なくとも1種類の有効成分、および少なくとも1種類の有効成分が被験体に一緒に投与される少なくとも一種類の医薬品として許容可能な賦形剤を意味する。
【0107】
「塩」はアニオンとカチオンの集合からなる化学化合物を意味する。本開示の化合物の塩は、塩の化学量論的および非化学量論的形態を含む。特定の実施形態では、医薬に使用する可能性のため、有効成分の塩は医薬品として許容可能な塩である。
【0108】
「スプリンクル製剤」は、腸溶性コーティングされたビーズまたはペレットを意味し、球状であることができ、サイズが0.82~3.04mm(+または-10%の変動)であることがFDAによって現在定められており、食物とともに噛んでも噛まなくても経口投与することができる。スプリンクルは円柱状、円形端を有する円柱状、ダンベル状、楕円状、または球状の形状のようないくつかの形状で製造することができる。「スプリンクルと表示される医薬品におけるビーズの工業サイズに関するガイドライン(Guidance for Industry Size of Beads in Drug Products Labeled for Sprinkle)」,U.S.Department of Health and Human Services Food and Drug Administration Center for Drug Evaluation and Research(CDER),May 2012 CMC Rev.1を参照する。
【0109】
「小袋」は、例えば2層をすべての4端で互いに結合することによって作製される小さいフレキシブルなパッケージである。医薬品の従来技術では、本用語はしばしば液体、粉末、クリーム、ペースト、または顆粒として提供され得る製剤の1回用量を含む単回使用の密封されたフレキシブルなアルミニウムポーチを意味する。
【0110】
「被験者」は、哺乳動物、例えばヒトを意味する。
【0111】
「持続放出」は、同一投与経路による同一化合物の迅速放出製剤の投与によって達成されるのと比べて、延長された時間にわたって被験体の全身循環において、化合物またはその代謝物の治療的または予防的濃度を達成するのに効果的な速度で医薬組成物の投与剤形から化合物を放出することを意味する。いくつかの実施形態では、化合物の放出は少なくとも約4時間、少なくとも約8時間、少なくとも約12時間、少なくとも約16時間、少なくとも約20時間、およびいくつかの実施形態では、少なくとも約24時間にわたって生じる。
【0112】
いずれかの疾患の「治療する」または「治療」は、疾患あるいは疾患または障害の臨床症状の少なくとも1つを止めるまたは緩和する、疾患または疾患の臨床症状の少なくとも1つに罹るリスクを低下する、疾患または疾患の臨床症状の少なくとも1つの進行を低下する、あるいは疾患または疾患の臨床症状の少なくとも1つが進行するリスクを低下することを意味する。また、「治療する」または「治療」は、身体的(例えば、認識可能な症状の安定化)、生理学的(例えば、物理的パラメータの安定化)、または両方で疾患を阻害すること、および被験体に認識可能または認識不能であり得る少なくとも1つの物理的パラメータを阻害することを意味する。特定の実施形態では、「治療する」または「治療」は、被験体が疾患の症状を経験または出現していなくとも、疾患または障害に晒され得るまたはその素因があり得る被験体における疾患またはこの少なくとも1つの症状の発症を遅らせることを意味する。
【0113】
「治療上効果的な量」は、疾患または疾患の臨床症状の少なくとも1つを治療するために被験体に化合物が投与されるとき、疾患またはこの症状の治療に影響を及ぼすのに十分な化合物の量を意味する。「治療上効果的な量」は、例えば、化合物、疾患および/または疾患の症状、疾患および/または疾患または障害の症状の重篤度、年齢、体重、および/または治療すべき被験体の健康、ならびに処方する医師の判断によって変わり得る。示す例における適切な量は、従来技術の当業者によって確認され得、定型的な実験によって判断することが可能である。
【0114】
「治療上効果的な用量」は、被験者における疾患または障害に効果的な治療をもたらす用量を意味する。治療上効果的な用量は、化合物間、被験体間で変わり得、被験者の状態または送達経路のような要因に依存し得る。治療上効果的な用量は、従来技術の当業者によって知られている定型的な薬理学的方法によって判断され得る。
【0115】
化合物、組成物、および方法の特定の実施形態について詳細が本明細書で参照できる。開示される実施形態は請求を限定することが意図されていない。これとは逆に、請求はすべての代案、修正、および同等物を網羅することが意図されている。
【0116】
製剤の全般的説明
本発明のペレットコアは1種類以上の有効成分を含む。本製品は、例えばアカンプロサートおよび少なくとも1種類の第二医薬を含む、またはこれらから基本的に構成される単回投与剤形単位を含み得る。一つの実施形態では、有効成分はアセチルアミノプロパンスルホン酸、アセチルアミノプロパンスルホン酸塩、タルトリミド、およびタウロムスチンからなる群から選択される少なくとも1種類のホモタウリンアナログを含む。好ましい有効成分はアカンプロサートである。
【0117】
アカンプロサートおよびその誘導体は、単独薬剤として、またはmGluR拮抗剤との併用療法で使用して、自閉症スペクトラム障害、脆弱X症候群、ダウン症候群、および精神遅滞の他の形態を治療することができる。適切なmGluR拮抗剤は、例えは、2-メチル-6-(フェニルエチニル)-ピリジン(MPEP)、(E)-6-メチル-2-スチリルピリジン(SIB1893)、6-メチル-2-(フェニルアゾ)-3-ピリジノール、およびα-メチル-4-カルボキシフェニルグリシン(MCPG)を含むI群mGluR拮抗剤である。
【0118】
ペレットコアで単独薬剤または併用して使用できる他のI群mGluR拮抗剤は米国特許番号6,890,931号および6,916,821号に記載されている。さらに他の適切なmGluR拮抗剤は、WO01166113、WO01132632、WO01/14390、WO01108705、WO01/05963、WO01/02367、WO01/02342、WO01102340、WO00/20001、WO500173283、WO00/69816、WO00/63166、WO00/26199、WO00/26198、EP-A-0807621、WO99/54280、WO99/44639、WO99/26927、WO99108678、WO99102497、WO98/45270、WO98/34907、WO97/48399、WO97/48400、WO97/48409、WO98/53812、WO96115100、WO95/25110、WO98/06724、WO96/15099、WO97/05109、WO97/05137、および米国特特許第6,218,385号、5,672,592号、5,795,877号、5,863,536号、5,880,112、および5,902,817に記載されているmGluR5拮抗剤である。
【0119】
アカンプロサートと併用療法またはペレットコアで単独で使用することができる他の化合物は抗精神病剤であり、脆弱X症候群、ダウン症候群および精神遅滞の他の形態、または自閉症を治療することができる。併用療法で使用する非定型の抗精神病化合物を含む抗精神病剤は、例えば、アバペリドン、マレイン酸アセトフェナジン、臭化水素酸アレンテモール、アルペルチン、アミスルピリド、アリピプラゾール、アザペロン、マレイン酸バテラピン、ベンペリドール、塩酸ペンジンドピリン、ブロホキシン、ブロムペリドール、塩酸ブタクラモール、ブタペラジン、マレイン酸カルフェナジン、塩酸カルボトロリン、クロルプロマジン、クロルプロチキセン、シンペレン、シントリアミド、リン酸クロマクラン、クロペンチキソール、クロピモジド、メシル酸クロピパザン、塩酸クロロペロン、クロチアピン、マレイン酸クロチキサミド、クロザピン、塩酸シクロフェナジン、ドロペリドール、塩酸エタゾレート、フェニミド、フルシンドール、フルメザピン、フルフェナジン、デカノエート、エナント酸フルフェナジン、塩酸フルフェナジン、フルスピペロン、フルスピリレン、フルトロリン、塩酸ゲボトロリン、ハロペミド、ハロペリドール、イロペリドン、塩酸イミドリン、レンペロン、ロキサピン、リチウム、コハク酸マザペルチン、メソリダジン、メチアピン、ミレンペロン、ミリペルチン、塩酸ミリンドン、塩酸ナラノール、塩酸ネフルモジン、ネモナピリド、オカペリドン、オランザピン、オキシペロミド、ペンフルリドール、マレイン酸ペンチアピン、ペロスピロン、ペルフェナジン、ピモジド、塩酸ピノキセピン、ピパンペロン、ピペラセタジン、パルミチン酸ピポチアジン、塩酸ピキンドン、エジシル酸プロクロペラジン、マレイン酸プロクロペラジン、塩酸プロマジン、クエチアピン、レモキシプリド、塩酸レモキシプリド、リスペリドン、塩酸リムカゾール、リルゾール、塩酸スペリドール、セルチンドール、セトペロン、スピペロン、スルピリド、チオリダジン、チオチキセン、ソラジン、塩酸チオペリドン、塩酸チオスピロン、塩酸トリフルオペラジン、トリフルペリドール、トリフルプロマジン、塩酸ジプラシドン、ゾテピン、ズクロペンチキソール、ならびにこれらのアナログ、誘導体、および組み合わせを含むことができる。
【0120】
他の化合物がアカンプロサートとの併用療法またはペレットコアで単独で使用でき、抗精神病(神経遮断)剤、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)、セロトニン-ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(SNRI)、抗うつ剤、または抗不安剤などが含まれる。抗精神病剤は、例えば、第一または第二世代抗精神病剤であることができる。第一または第二世代抗精神病剤は、例えば、チオリダジン、クロルプロマジン、チオチキセン、トリフルオペラジン、フルフェナジン、ハロペリドール、ペルフェナジン、ロキサピン、モリンドン、メトクロプラミド、アリピプラゾール、アセナピン、イロペリドン、ルラシドン、オランザピン、パリペリドン、クエチアピン、リスペリドン、ジプラシドンなどの1種類以上であることができる。SSRIまたはSNRIは、例えば、シタロプラム、デスベンラファキシン、ドキセピン、デュロキセチン、エスシタロプラム、フルオキセチン、フルボキサミン、ミルナシプラン、パロキセチン、セルトラリン、ベンラファキシンなどの1種類以上であることができる。
【0121】
他の実施形態では、アカンプロサートカルシウムの化合物は、単独、またはGABAA作用剤バマルゾール、D-サイクロセリン、GABA、ガバミド、GABOB、ガボキサドール、イボテン酸、イソニペコチン酸、ムスシモール、フェニバット、ピカミロン、プロガビド、SL75102、チオムスシモール、ならびにアルコール、アルプラゾラム、バルビツレート、ベンゾジアゼピン、および非ベンゾジアゼピンのようなGABAAの活性を増加させるポジティブアロステリック調節剤からなる群から選択される少なくとも1種類の化合物との併用療法で使用することができる。
【0122】
他の実施形態では、アカンプロサートカルシウムの化合物は、脆弱X症候群、ダウン症候群および精神遅滞の他の形態、または自閉症を治療するために、単独、またはGABAB受容体作用剤、ムスカリン受容体拮抗剤、興奮剤、ニコチン受容体作用剤、エンドカンナビノイド受容体拮抗剤、AMPA作用剤、抗うつ剤、α2-アドレナリン作用剤、または抗痙攣剤からなる群から選択される少なくとも1種類の化合物との併用療法で使用することができる。いくつかの実施形態では、GABAB受容体作用剤はバクロフェン、R-バクロフェン、またはこれらのプロドラックであり、例えば、米国特許番号7,109,239号および7,300,956号で開示されている。他の実施形態では、ムスカリン受容体拮抗剤はアトロピン、ベンズトロピン、ビペリデン、ジサイクロミン、イプラトロプリピウム、プロシクリジン、スコポラミン、チオトロピウム、テレンゼピン、またはトリヘキシフェニジルである。別の実施形態では、興奮剤はアマンタジン、ブプロピオン、アトモキセチン、デキストロアンフェタミン、モダフィニル、カフェイン、メチルフェニデート、ニコチン、プサイドエフェドリン、およびアンフェタミン、ならびにこれらの代謝物、異性体、またはプロドラッグである。
【0123】
活性化合物は好ましくはコアに均一に分散され、周囲の腸溶性コーティングが溶解された後に遅れて放出される。本発明のペレットコアは、アカシア、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ポリエチレングリコール(PEG)、ポビドン、スクロース、デンプン、またはこれらのいずれかの混合物のようないずれかの適切な希釈剤を含み得る。メチルセルロースは、好ましい希釈剤である。
【0124】
本発明のペレットは、エチルセルロース、カルナウバワックス、シェラック、またはこれらのいずれかの混合物のような放出改良剤を含むコーティングを含む。エチルセルロースが好ましい。
【0125】
本発明のペレットの腸溶性コーティングは、本製剤が胃を出た後にのみ溶解されるべきものである。このようなコーティングは従来技術(例えば、EP0453001A1)で開示されている。本発明による好ましい腸溶性コーティングはメタクリル酸コポリマーまたはメチルヒドロキシプロピルセルロースフタレートを含む。商品名Eudragit(登録商標)LまたはSで入手可能であり、官能基として遊離カルボキシル基を有するポリ(メタクリル酸、メチルメタクリラート)が好ましい。これらのポリマーは胃酸で不溶性であるが、官能性カルボキシル基の数に依存してpH5.5~7超の消化液で溶解する。ポリ(メタクリル酸、メチルメタクリラート)1:1(Eudragit(登録商標)L100:メタクリル酸コポリマー、USP/NFタイプA)およびポリ(メタクリル酸、メチルメタクリラート)1:2(Eudragit(登録商標)S:メタクリル酸コポリマー、USP/NFタイプB)が特に好ましい。Eudragit(登録商標)L100が最も好ましい。前記コーティング剤の混合物、特にEudragit(登録商標)LおよびEudragit(登録商標)Sも使用することができる。
【0126】
本発明のペレット製剤は、界面活性剤、色素、流動剤、滑剤、増量剤、香料、香味料、甘味料(人工および天然の両方)のような香味増強剤、および発泡剤のような他の標準的な医薬品用添加剤などの1種類以上の標準的な添加剤を任意に含むことができる。
【0127】
例えば、アジピン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、水素化植物オイル、塩化ナトリウム、ステロテックス、ポリオキシエチレン、モノステアリン酸グリセリル、タルク、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、軽油などの界面活性剤が使用され得、フマル酸ステアリルナトリウムが好ましい。「Compritol」製品として市販されているベヘン酸グリセリルのようなワックス状脂肪酸エステルを使用することができる。他の有用な市販の界面活性剤には、「Stear-O-Wet」および「Myvatex TL」が含まれる。混合が実施可能である。
【0128】
デンプン、タルク、ラクトース、ステアリン酸、リン酸水素カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、ケイ酸カルシウム、Cabosil、Syloid、および二酸化ケイ素エアロゲルのような滑剤が使用され得る。
【0129】
増量剤が例えば小袋のかさを増加するために使用され得る。一般的に使用される増量剤のいくつかは、第二および第三の両硫酸カルシウム、デンプン、炭酸カルシウム、微細結晶セルロース、変性デンプン、ラクトース、スクロース、マンニトール、およびソルビトールである。
【0130】
香味料は天然および合成の香味性液体から選択され得る。このような物質のリストには、揮発性オイル、合成香味オイル、香味性芳香族化合物、オイル、液体、オレオレシン、および植物、葉、花、果実、茎、およびこれらの組み合わせから得る抽出物が含まれる。これらの非限定的な代表的リストには、レモン、オレンジ、ブドウ、ライム、およびグレープフルーツのようなカンキツ油、リンゴ、ナシ、モモ、ブドウ、イチゴ、ラズベリー、チェリー、プラム、パイナップル、アプリコット、または他のフルーツ香味料を含むフルーツエッセンスが含まれる。他の有用な香味料には、ベンズアルデヒド(チェリー、アーモンド)のようなアルデヒドおよびエステル、シトラールすなわちα-シトラール(レモン、ライム)、ネラールすなわちβ-シトラール(レモン、ライム)、デカナール(オレンジ、レモン)、アルデヒドC-8(カンキツ類フルーツ)、アルデヒドC-9(カンキツ類フルーツ)、アルデヒドC-12(カンキツ類フルーツ)、トリルアルデヒド(チェリー、アーモンド)、2,6-ジメチルオクタナール(緑色果実)、2-ドデデナール(カンキツ類、マンダリン)、これらの混合物などが含まれる。
【0131】
甘味料は、非限定的なリストとして挙げられるグルコース(トウモロコシシロップ)、デキストロース、転化糖、フルクトース、およびそれらの混合物(担体として使用されない場合)、サッカリンおよびそのナトリウム塩のようなその様々な塩、アスパルテームなどのジペプチド甘味料、ジヒドロ-カルコン化合物、グリシルリジン、ステビア(ステビオサイド)、クロロ誘導体またはスクラロースのようなスクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトールのような糖アルコールなどから選択され得る。水素化デンプン加水分解物、ならびに例えば3,6-ジヒドロ-6-メチル-1-1-1,2,3-オキサチアジン-4-オン-2,2-ジオキシド、特にカリウム塩(アセスルファム-K)、およびこれらのナトリウム塩とカルシウム塩のような合成甘味料が考えられる。
【0132】
いくつかの実施形態は、ビタミン、医薬、および/またはミネラルなどの有効成分の不快な味覚をマスキングする補助となる発泡剤を含む。効果的な感覚受容性感が、望ましくない香味の徴候をマスキングするのを助ける、口内の発泡作用、ならびに崩壊の歯ごたえ、速度、および感覚によって達成される。
【0133】
着色剤を使用することができる。このような着色剤には、食品、薬、および化粧品色(FD&C)、薬および化粧品色(D&C)、または外用薬および化粧品色(Ext.D&C)が含まれる。これらの色は色素、レーキ、ならびにある種の天然および派生着色剤である。有用なレーキには水酸化アルミニウムまたは他の適切な担体に吸収された色素が含まれる。
【0134】
本発明の開示によって提供される医薬組成物は、経口投与で有効成分の持続放出をもたらすように適応された投与剤形によって実行され得る。持続放出経口投与剤形は長期間にわたって薬剤を放出するために使用することが可能であり、薬剤または薬剤剤形が下部胃腸管に送達されることが望まれるときに有用である。持続放出経口投与剤形は、血漿、血液、脳脊髄液のような生物学的流体、あるいは組織または器官における治療剤濃度を長期間維持するいずれかの経口投与剤形を含む。持続放出経口投与剤形には、リサーバデバイスおよびマトリックスデバイスのような拡散制御方式、溶解制御方式、等張方式、および浸食制御方式が含まれる。持続放出投与剤形およびこれを調製する方法は従来技術で良く知られている。
【0135】
使用される制御放出経口投与剤形の特定のタイプに関わらず、有効成分は経口投与された投与剤形から十分な時間にわたって放出されて、被験体の血漿および/または血液に延長して治療濃度の有効成分をもたらすことができる。経口投与後、有効成分を含む投与剤形は、被験体への本投与剤形の経口投与後、例えば少なくとも約4時間、少なくとも約8時間、少なくとも約12時間、少なくとも約16時間、および特定の実施形態では、少なくとも約20時間などの連続した期間、被験体の血漿および/または血液に、当該薬剤の治療上効果的な濃度をもたらすことができる。薬剤の治療上効果的な量が維持される連続した期間は、同一または異なり得る。薬剤の治療上効果的な血漿濃度が維持される連続した期間は、経口投与後または時間間隔後、直ちに始まり得る。
【0136】
有効成分または有効成分を含む医薬組成物の適切な投与量は、いくつかの十分確立されたプロトコルのいずれか1つに従って判断され得る。例えば、マウス、ラット、イヌ、および/またはサルを用いた試験のような動物試験が、医薬化合物の適切な用量を判断するために使用され得る。動物試験から得られる結果を外挿によって推定して、ヒトなどの他の種で使用するための用量を判断し得る。
【0137】
製剤の使用
いくつかの実施形態では、本開示はグルタミン酸-GABA不均衡として特徴付けられるいずれかの神経伝達または認知障害、中断化または調節不全化したERKシグナル化経路によって特徴付けられるいずれかの障害、あるいは脳発達、学習、記憶、および認知に異常を生じるRAS病の治療方法で使用するための医薬品の製造におけるアカンプロサート経口ペレット製剤に関する。これらには、限定されないが、自閉症スペクトラム障害、広汎性発達障害-他に特定されない、特発性自閉症、脆弱X症候群、アスペルガー症候群、レット症候群、Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders IV(精神障害の診断および統計学的マニュアルIV)でさらに参照される小児期崩壊性障害、アルコール依存、耳鳴り、睡眠時無呼吸、パーキンソン病、パーキンソン病におけるレボドパ誘発性ジスキネジー、アルツハイマー病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、皮質拡延性抑制、偏頭痛、統合失調症、不安、遅発性ジスキネジー、痙攣、多発性硬化症、様々な型の痛み、または過食症が含まれ、加齢関連認知症、軽度認知症(MCI)、痴呆症、アルツハイマー病(AD)、前兆AD、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、双極性障害、筋委縮性側索硬化症(ALS)、癌療法関連認知症、薬剤誘発性または毒素誘発性認知症、強迫行動、および物質依存症を有する、またはこれらのリスクのある被験体が含まれる。
【0138】
脆弱X症候群、自閉症スペクトラム障害、ダウン症候群、神経学的障害および/または精神遅滞を有する被験体を治療して、障害と関連する神経学的欠陥または症状(例えば、良性小児てんかん、側頭葉てんかん、視覚的空間的欠陥、不安、攻撃、活動亢進、激越、反復行動、異常または限られた社会的相互作用、言語および学習の困難、および/またはこれらの組み合わせ)の1つ以上を低下、停止、緩和、または防止する方法も本明細書で提供される。特定の実施形態では、精神遅滞、自閉症スペクトラム障害、ダウン症候群、および脆弱X症候群を有する小児は、本発明の製剤によって治療することができる。当該小児は、乳児(生後約0~約1年)、幼児(乳児と思春期の間の期間)、および思春期(約8~約18歳)の間に治療することができる。
【0139】
特定の実施形態では、本明細書で開示される方法を使用して、精神遅滞、脆弱X症候群、自閉症スペクトラム障害、および/またはダウン症候群を有する成人(約18歳超)を治療することができる。特定の実施形態では、脆弱X症候群、自閉症スペクトラム障害、精神遅滞、および/またはダウン症候群を有する被験体(小児および成人の両方)における不安およびてんかんを、本発明の製剤を当該被験体に投与することによって治療することができる。
【0140】
用量および投与
被験体における疾患の治療に効果的である有効成分の量は、部分的には症状の性質に依存し、従来技術で知られている標準的な臨床技術によって判断することができる。さらに、インビトロまたはインビボの測定が、最適な投与量範囲を特定するのに役立てるために使用し得る。投与される有効成分の治療上効果的な量はまた、他の要因のなかで、治療される被検体、被験体の体重、疾患の重篤度、投与方法、および処方する医師の判断に依存し得る。
【0141】
当該薬剤の単位用量は、一般的には約100mg~約2500mgである。好ましくは、単位用量は約200~約500mg(例えば、約333mg)である。単位用量剤形は、一般的には1日に1~4回、好ましくは1日に2~3回投与される。
【0142】
本発明のペレット製剤は、一般的には経口投与が意図されている。例えば、ペレットは小袋に包装することができ、使用時に開封して、医薬品を摂取する食物に散在させる。好ましい食物は、アップルソースおよびヨーグルトのような約5.5未満のpHを有する。ペレットはまた、カプセルに封入することができ、カプセルとして、あるいは、カプセルを開けて内容物を摂取する食物に散在させることができる。
【0143】
例
本発明の目的は、スプリンクル投与剤形用のアカンプロサートカルシウム腸溶性コーティングペレットを開発して、アルミニウムポーチ/小袋にパッキングしたこれらのプロトタイプスプリンクルの安定性を確立することである。アカンプロサートスプリンクル投与剤形の目標とする医薬品特性を表1にまとめる。
【表1】
【0144】
本API(医薬品有効成分)は胃腸刺激を生じることが知られており、現在販売されている2種の製剤Campral(CampralはForest Laboratoriesによって米国で製造および販売されているが、MERCK KGaAはこれを米国外で販売している)およびAcampral(Sun Pharmaceuticals)は腸溶性コーティング錠剤である。製剤開発アプローチはペレットスプリンクルおよび腸溶性ポリマーによるコーティングを製造することによって、経口投与されたときに胃へのAPIの放出を回避または最小限にすることだった。目的にはペレットの適切な添加剤およびコーティングを有するアカンプロサートカルシウムペレットの製造を含み、2種類の異なるサイズ/直径の保存安定性評価とともに薬剤放出を最適化した。2種類の異なるサイズ/直径を有するスプリンクルを薬剤放出プロファイルに基づいた好ましいサイズ/直径にさらに選別して設計した。
【0145】
本製剤開発に使用した異なるロットの薬剤物質特性を表2に要約する。表3に示す添加剤をスプリンクル製剤開発試験のために使用した。
【表2】
【表3】
【0146】
アカンプロサートカルシウムスプリンクルの製剤および分析開発のために使用した装置の詳細を表4に示す。
【表4】
【0147】
測定および溶解方法などのスプリンクルの評価に使用した分析方法を表5~7に要約する。
【表5】
【表6】
【表7】
【0148】
2種類の異なる販売されている腸溶性コーティング錠剤を溶解について評価し、製品の詳細および溶解結果を表8および9に示す。
【表8】
【表9】
【0149】
販売されている製品の溶解結果は、pH1.2の緩衝液では薬剤放出が無視できる、または放出されないが、pH6.8の緩衝液では完全な放出を生じたことを示した。2種類の販売されている錠剤の放出プロファイルにおける差が、最初の30分で認められた。
【0150】
1.アカンプロサートカルシウム腸溶性コーティングスプリンクル:(第一世代試験)
本発明のさらなる目的は、販売されている製品に匹敵するような、pH1.2で<10%放出(可能な限りゼロに近い薬剤放出)およびpH6.8で完全な放出を達成するスプリンクル製剤を開発することである。2種の異なるサイズ(No.16/20およびNo.25/30)を有するスプリンクルを製造して、薬剤放出プロファイル(溶解)に基づいて1つの製法に絞り込んだ。
【0151】
アカンプロサートカルシウムスプリンクルの製造(No.16/20 ASTM)
スプリンクルの製造のための製剤組成を表10に示す。スプリンクルはAPI+Avicel PH101の浸潤塊を1.2mmのメッシュサイズに通す押し出しによって製造した。押し出した材料を造粒装置に2.1のプレートRPMで10分間加えて球体形状スプリンクルを得た。
【表10】
【0152】
測定および溶解をスプリンクル製剤について実施した。スプリンクルの各200mgは、アカンプロサートカルシウムAPIの100mgに相当した。スプリンクルの含量:98.0%w/w
【表11】
【0153】
表11に示すように、最初の30分で認められた完全な薬剤放出は、販売されている製品に匹敵する3時間までの薬剤放出を達成するために、放出制御(持続放出)が必要とされたことを示した。従って、スプリンクルの20%までのエチルセルロースコーティングは、腸溶性コーティングによってpH6.8で薬剤放出を持続すると考えられた。エチルセルロース持続放出コーティングの製剤組成を表12に示し、エチルセルロースコーティングの製造手順を表13に示す。
【表12】
【表13】
【0154】
エチルセルロースコーティングスプリンクルはさらに腸溶性保護のためにEudragitL100 55ポリマーによってコーティングする。腸溶性コーティングの製剤組成を表14に示し、腸溶性コーティングの製造手順を表15に示す。
【表14】
【表15】
【0155】
pH1.2に続いてpH6.8緩衝液におけるアカンプロサートカルシウム腸溶性コーティングスプリンクル(25%w/w)の溶解結果を表16に示す。300mgのスプリンクルはアカンプロサートカルシウムAPIの100mgに相当する。含量:105.2%w/w
【表16】
【0156】
腸溶性コーティングスプリンクルのpH1.2における20%の薬剤放出は、25%コーティングが薬剤放出を<10%に制御するのに十分でなかったことを示した。従って、50%のような高いEudragitコーティングが考えられた。
【0157】
pH1.2に続いてpH6.8緩衝液におけるアカンプロサートカルシウム腸溶性コーティングスプリンクル(50%w/w)の溶解結果を表17に示す。360mgのスプリンクルはアカンプロサートカルシウムAPIの100mgに相当する。含量:108.5%w/w
【表17】
【0158】
pH1.2緩衝液における目標薬剤放出は、50%w/w腸溶性コーティングによるスプリンクルで達成された。従って、50%腸溶性コーティングが好ましいと考えられた。
【0159】
アカンプロサートカルシウムスプリンクルNo.25/30ASTMメッシュサイズの製造
小さいサイズのスプリンクルも、大きいサイズのスプリンクルと同様にAPIおよびAveicel PH101を1:1混合で用いて製造した。小さいスプリンクル用のメッシュサイズは、大きいサイズのスプリンクル用の1.2mmに対して0.8mmだった。
【0160】
20%エチルセルロース持続放出コーティング用の製剤組成を表18、製造手順を表19に示す。
【表18】
【表19】
【0161】
エチルセルロースコーティングしたスプリンクル(20%w/w)における溶解結果を表20に示す。300mgのスプリンクルは100mgのアカンプロサートカルシウムAPIに相当する。含量:103.5%
【表20】
【0162】
薬剤放出は5時間後に90%であることが認められ、24時間の最終後の完全な放出は、100%の薬剤がスプリンクルに存在することを示した。
【0163】
次に、スプリンクルを腸溶性コーティングのために使用した。腸溶性コーティングの製剤組成を表21、製造手順を表22に示す。
【表21】
【表22】
【0164】
pH1.2に続いてpH6.8緩衝液におけるアカンプロサートカルシウム腸溶性コーティングスプリンクル(50%w/w)の溶解結果を表23に示す。360mgのスプリンクルはアカンプロサートカルシウムAPIの100mgに相当する。含量:103.5%w/w
【表23】
【0165】
pH1.2緩衝液における<10%の目標薬剤放出が50%w/w腸溶性コーティングによるスプリンクルで達成された。従って、50%腸溶性コーティングは小さいサイズのスプリンクルに対して十分好ましいと考えられた。No.16/20とNo.25/30ASTMのスプリンクルの溶解および含量に顕著な差はなかった。
【0166】
スプリンクルは、アップルソースまたはヨーグルトのような食用マトリックス中で投与されることが意図される。アップルソースのほとんどの銘柄は3~3.6の範囲のpHを有する。pH3.0~4.5における薬剤放出を測定するため、溶解試験をスプリンクルで実施し、結果を表24および25に示す。
【表24】
【表25】
【0167】
pH3.0および4.5におけるプリンクルの薬剤放出は、120分後に2%未満であることが認められた。
【0168】
No.25/30スプリンクルの安定性試験
プロトタイプを安定性について設定し、試験の詳細は下記の通りである。
バッチ番号:SF14000999
パッキング:スプリンクルをアルミ小袋に秤量してシーリングした。
充填重量:バッチ番号SF14000999のスプリンクルが1080mg
(スプリンクルをアカンプロサートカルシウムAPIの300mg相当秤量した)
条件:25℃/60%相対湿度および40℃/75%相対湿度
試験時期:開始時、1、3、および6ヶ月
評価:測定、関連物質、および溶解
【0169】
最初のプロトタイプの安定性試験結果を表26および27に、溶解プロファイルを
図1にまとめて示す。
【表26】
【表27】
【0170】
25℃/60%相対湿度および40℃/75%相対湿度での最初の3および6ヶ月安定性サンプルの溶解プロファイルは時間経過で速く放出する。また関連物質はペレットが試験した条件で6ヶ月まで安定であることを示す。また、関連物質結果は、ペレットが試験した条件で6ヶ月まで安定であることを示す。
【0171】
イヌPK試験用のアカンプロサートカルシウムスプリンクルの製造
アカンプロサートカルシウム腸溶性コーティングスプリンクルをNo.25/30ASTMスプリンクルを用いて製造した。コーティングは20%エチルセルロース(持続放出)次いで50%腸溶性コーティング(Eudragit L100 55)によって実施し、目標とした溶解プロファイルを達成した。同一コーティング処理は製剤組成を含むエチルセルロースおよび腸溶性コーティングに関する前セクションで示されるものに従った。PKバッチのバッチ番号はSF14001404である。
【0172】
No.25/30スプリンクル(イヌPFバッチ)の安定性試験
プロトタイプを安定性について設定し、試験の詳細は下記の通りである。
バッチ番号:SF14001404
パッキング:スプリンクルをアルミ小袋に秤量してシーリングした。
充填重量:バッチ番号SF14001404のスプリンクルが1199mg
(スプリンクルをアカンプロサートカルシウムAPIの333mg相当秤量した)
条件:25℃/60%相対湿度および40℃/75%相対湿度
試験時期:開始時、1、3、および6ヶ月
評価:測定、関連物質、および溶解
【0173】
PKバッチプロトタイプの最初の結果を表28にまとめて示す。
【表28】
【0174】
2種の異なるサイズ(No.16/20およびNo.25/30)で製造されたアカンプロサートカルシウムスプリンクルは、販売されている製品と比較したとき、必要とされる目標製品特性に適合することが認められた。20%で含有するエチルセルロースが、期間にわたる放出およびスプリンクルの経口投与での胃液中の放出を避ける腸溶性コーティングを維持するために必要とされる。
【0175】
2.アカンプロサートカルシウム腸溶性コーティングスプリンクル:(第二世代試験)
スプリンクル投与剤形のためにアカンプロサートカルシウム腸溶性ペレットを、薬剤添加量、エチルセルロースおよびEudragitコーティング割合に関して開発して最適化し、アルミニウムポーチ/小袋にパッケージングしたこれらのプロトタイプスプリンクルの安定性を確立することが、なお本発明のさらなる目的である。
【0176】
後述する製剤開発で使用された異なるロットに関する薬剤物質の特性を表29にまとめて示す。
【表29】
【0177】
表30に示す添加剤をスプリンクル製剤開発試験で使用した。
【表30】
【0178】
アカンプロサートカルシウムスプリンクルの製剤および分析開発のために使用した装置の詳細を表31に示す。
【表31】
【0179】
第一世代試験のスプリンクル投与剤形を、持続放出のために20%エチルセルロースコーティングおよび腸溶性保護のために50%Eudragitコーティングを有する50%薬剤添加アカンプロサートカルシウムペレットによる製剤組成物を用いて、イヌPK試験において評価した。ペレットがイヌの糞便で認められ、イヌPK試験でAUCはCampral錠剤と比べて低く、Tmaxは12~16時間だった。従って、スプリンクルのさらなる開発および最適化は、薬剤放出を促進して腸溶性コーティングを最適化/低下させるように、ペレット中の薬剤添加量を増加させてエチルセルロースの割合を低下させることに焦点が当てられた。
【0180】
測定、関連物質、および溶解方法などのスプリンクルの評価で使用した分析方法を表32~34にまとめて示す。
【表32】
【表33】
【表34】
【0181】
スプリンクルは、添加剤の量および各用量で投与するスプリンクルの量を低下させるため、薬剤添加量を50~60%w/w(API:MCC=60:40%)増加して製造した。スプリンクルの製造のための製剤組成を表35に示す。
【表35】
【0182】
スプリンクルの製造方法は押し出し段階、それに続く造粒段階を含み、概略を次に示す。
押し出し
ステップ1:アカンプロサートおよびAvicel PH101を60:40比で、ボウル中で混合した。
ステップ2:水を徐々に加えて湿潤塊を調製した。
ステップ3:湿潤塊を0.8mm単一円錐スクリーンによって100rpm押し出し速度で押し出し装置に通した。
ステップ4:押し出し物を造粒用にさらに使用した。
造粒化
ステップ1:2.11mmチェックプレートを造粒化で使用した。
ステップ2:押し出し物を造粒装置のボウルに加えた。
ステップ3:造粒装置を500~800rpmの速度で作動させた。
ステップ4:5~10mLの水を造粒化の際に液滴として加えた。
ステップ5:ペレットをさらに加温空気オーブンで乾燥させた。
【0183】
ペレットのエチルセルロースコーティングの製剤組成を表38、製造手順を表39に示す。
【表36】
【表37】
【0184】
エチルセルロースコーティングスプリンクルはさらに腸溶性保護のためにEudragit L100 55ポリマーによってコーティングする。腸溶性コーティング用の製剤組成を表38、製造手順を表39に示す。
【表38】
【表39】
【0185】
アカンプロサートカルシウム腸溶性コーティングスプリンクルの測定および溶解を表40に示す。
【表40】
【0186】
バッチ番号SF15000616
腸溶性コーティングスプリンクルのpH1.2緩衝液における30%の薬剤放出は、30%コーティングが薬剤放出を<10%までに制御するには十分でなかったことを示す。従って、40~50%のようなEudragitコーティングの高い割合が考えられた。
【0187】
バッチ番号SF15000679
40%腸溶性コーティングスプリンクルを伴う5%エチルセルロースの薬剤放出は、pH1.2で8%であることが認められ、50%腸溶性コーティングを伴う5%エチルセルロースの薬剤放出はpH1.2で4%であることが認められた。しかし、緩衝液段階における薬剤放出が迅速であることが認められた。
【0188】
バッチ番号SF15000713
30%、40%、および50%腸溶性コーティングを伴う10%エチルセルロースの薬剤放出は、酸段階で2時間後にそれぞれ15%、9%、および6%であることが認められた。10%エチルセルロースコーティングペレットでは緩衝液段階において完全な薬剤放出は認められなかった。
【0189】
これらの結果に基づき、バッチ番号SF15000679(50%腸溶性コーティングを伴う5%SRコーティング)およびバッチ番号SF15000775(5%SRコーティングおよび40腸溶性コーティング)をPKバッチとして選択した。
【0190】
薬剤放出に対する温度の影響評価
SF14000999に関する安定性試験の際、特に40℃/75%相対湿度で、薬剤の迅速な放出が緩衝液段階で時間とともに認められた。このことは、エチルセルロースコーティング層の表面への可塑剤の移動、それによる高温での迅速な薬剤放出に起因すると考えられ、仮定された。同様なことを迅速に評価するため、スプリンクルを開口したペトリ皿で40℃/75%相対湿度に2週間暴露した。
【0191】
ペレットをペトリ皿に直接加え、アルミホイルでカバーして、ピンホールで開口状態を作り出し、40℃/75%相対湿度で保存した。エチルセルロースおよびEudragitの異なるコーティング割合による開始時および開口ペトリ皿試験の溶解結果を表41にまとめ、プロファイルを
図2~4に示す。
【表41】
【0192】
酸段階におけるアカンプロサートカルシウムペレットの薬剤放出は、開始時溶解と比べて同様であることが認められ、Eudtagitコーティングが完全なままであり、迅速放出に対して影響を及ぼさないことを示した。5%エチルセルロースでは、緩衝液段階における放出速度は開始時および開口暴露の2週時点の両方で同様だった。緩衝液段階における薬剤放出は10%エチルセルロースコーティングで速いことが認められ、エチルセルロースの割合が高いと、高温で速い薬剤放出を示すことを示唆している。
【0193】
アカンプロサートカルシウムペレットの安定性試験
PK試験用に製造したプロトタイプを安定性試験で使用し、詳細は次の通りである。
バッチ番号:SF15000679、SF15000775
パッキング:スプリンクルをアルミ小袋に秤量してシーリングした。
充填重量:バッチ番号SF15000679のスプリンクルを874mg
バッチ番号SF15000775のスプリンクルを816mg
(スプリンクルをアカンプロサートカルシウムAPIの333mg相当秤量した)
条件:25℃/60%相対湿度および40℃/75%相対湿度
試験時期:開始時、1、3、6ヶ月、および12ヶ月
評価:測定、関連物質、および溶解
【0194】
PK試験用に製造したスプリンクルプロトタイプの安定性試験の結果を表42および43、溶解プロファイルを
図5および6にまとめて示す。
【表42】
【表43】
【0195】
5%エチルセルロースおよび40~50%Eudragitコーティングによって製造されたアカンプロサートカルシウムスプリンクルは、目標製品特性に適合することが認められ、6ヶ月間安定であることも認められた。
【0196】
2.イヌによる試験
a.Campral試験
薬物動態試験‘537をビーグル犬においてCovance’s Madison,Wisconsin facilityで実施した。この容認された動物モデルは本薬剤有効成分がどのように吸収、分布、および消失されるかを理解するために使用される。ビーグル犬はCampralの動物モデルとして使用され、公開されている研究が比較のために利用可能であることに留意されるべきである(Kathleen Haberny-FDA Review, Adam Wasserman-FDA review and Rhee et al.,2008a,b)。試験‘537によって、いくつかの用量範囲のなかで現存の333mg腸溶性コーティングに関するベースラインプロファイルを立証することができ、同時に有効成分が水性溶液に溶解されたときに添加剤のない単なる「裸にされた」製剤と比較することができた。
【0197】
試験は、体内の有効な薬剤の最初のピーク濃度(Cmax)が、非腸溶性コーティング溶液として送達したが十分増加し、第二に全身で利用可能な「裸にされた」薬剤の量(生物学的利用能)はCampral錠剤よりもかなり高く、最後に、「裸にされた」薬剤はすべてのイヌについてすべての投与量をわたって胃腸不耐容性をかなり増加したという3つの結果を確認した。完了した製剤試験は、単なる「裸にされた」水性溶液の添加が、本薬剤の投与に関して実際的でない経路だったことを実証した。
【0198】
b.アカンプロサートカルシウム腸溶性スプリンクル:(第一世代試験)
2種の小児に適した製剤技術について次の目標製品プロファイルを、経口関連問題(咀嚼、吐き気、および飲み込み不能)ならびにこのBCSIII化合物の投与に適応させる際の色、感触、および味覚に対する感受性に起因して、ピルの摂取に困難さを経験している脆弱X症候群患者集団の特定の要求に、どちらが適合できるか展開させた。2種の投与剤形が、表44に示すように、アカンプロサートカルシウムの微小サイズ粒子および小粒子のスプリンクル剤形に関する目標製品プロファイルで考えられた。
【表44】
【0199】
製剤開発活動には、予備処方プロファイリング、薬剤添加物適合性試験、薬剤製法開発、製剤開発および開発した製剤の非公式安定性が含まれた。多くの微小サイズ粒子プロトタイプがいくつかの異なる方法を用いることによって得られたが、目標製品プロファイルに適合するプロトタイプがなかった。開発チームは溶解を遅延するためにAPI微小粒子を安定的にコーティングすることができなかった。
【0200】
これに代わる製造方法として、開発チームは持続放出ポリマーおよび腸溶性コーティングポリマーによって均一にコーティングされたスプリンクル/ペレットを考えた。微小サイズ粒子製剤の成果から得られた経験によって、開発チームは酸(pH=1.2)および緩衝液(pH=6.8)段階でTPPに適合する溶解特性を有するいくつかのスプリンクルプロトタイプを設計した。プロトタイプはアップルソース、プディング、またはヨーグルトのような食用マトリックス中で投与されることが意図されているため、溶解試験もこのようなマトリックスと一致するpH範囲で実施した。これらの開発活動から、プロトタイプSF14000999が目標製品プロファイルに適合すると考えられた。
【0201】
SF14000999の開発をイヌ試験‘752に進め、チームはSF14000999のPKおよび耐容性プロファイルをCampral錠剤と比較して分析した。この7日試験では、1日に2,664mgの総量暴露について1,332mgを1日2回で毎日イヌに投与した。すべてのイヌはCovance stock colonyから入手した雄の未処置ビーグル犬だった。投与時、イヌは9.4~12.0kgの体重で、若年成犬/成犬だった。イヌは個別に付番したケージカードまたは埋め込みマイクロチップ識別デバイス(IMID)によって識別された。イヌは全体的な健康および体重に基づいて試験のために選択された。試験は給餌条件下で実施し、イヌは認定されたイヌ用食餌No.5007が与えられ、食餌は自由に与えられた。水は毎日新鮮なものを自由に与えられた。イヌは20~26℃、相対湿度50±20%、および12時間の明/12時間の暗サイクルを維持するように設定された部屋においてステンレス製ケージで飼育された。必要に応じて、12時間暗サイクルは試験手順に対応するために一時的に中断した。スプリンクルをCovanceで迅速溶解性カプセルに充填して、投与期間を通して1日2回分に分けた。Campral錠剤は投与期間を通して1日に2回投与した。残りの錠剤または充填したカプセルは周囲温度で保存した。各用量は1日あたり8カプセル/錠剤の総投与量(2664mg/匹)について、1日に2回、約12時間離して、イヌ1匹あたり4カプセル/錠剤(1332mg/匹)の固定用量として経口投与し、続いて約10mLの水を与えた。
【0202】
1日に2回(午前および午後)、イヌは死亡ならびに痛みおよび苦痛の徴候について観察された。健康全般および外観のケージ脇からの観察を1日に1回実施した。試験期間を通して気づいたいかなる通常と異なる観察結果も生データに記録した。体重をイヌ選択時および経口投与の1日目に測定した。1日目および7日目に、血液(約2mL)を投与前ならびに投与後0.25、0.5、1、2、4、8、12、24、および48(7日目のみ)時間に、頸静脈からK2EDTA抗凝固剤含有チューブに採取した。12時間血液サンプルは12時間投与前に収集し、24時間血液サンプルは1日2回目の投与前に採取した。
【0203】
試験の結果は高い生物学的利用能、すべてのイヌにおける胃腸不良(非形状化または液体糞便)、および本群におけるすべてのイヌの糞便におけるスプリンクルの存在を実証した。
図7は最初の12時間における本試験の1日目PKを示す。
【0204】
第二イヌ試験‘326を実施し、SF14000999の非常に高い薬剤暴露が胃腸不良を生じてさらにスプリンクルを放出するのに不十分な時間をもたらすかどうか判断した。試験‘326はSF14000999とCampralを毎日の総暴露1,332mgを666mgの1日2回投与で比較した。プロトコルは、試験を4日に短縮して、投与量を1日あたり1,332mgに低下させた。個別用量は、1日あたり4カプセル/錠剤の全用量(1332mg/匹)について、1日に2回、約12時間離して、1匹あたり2カプセル/錠剤(666mg/匹)の固定用量として投与した。カプセル/錠剤用量を経口投与し、続いて約10mLの水を与えた。
【0205】
1日に2回(午前および午後)、イヌは死亡ならびに痛みおよび苦痛の徴候について観察された。健康全般および外観のケージ脇からの観察を1日に1回実施した。試験期間を通して気づいたいかなる通常と異なる観察結果も生データに記録した。各ケージ脇での観察後、糞便をケージから取り出して廃棄した。選択した糞便サンプルを情報目的のみのために保持して写真撮影した。体重をイヌ選択時および経口投与の1日目に測定した。1日目に、血液(約2mL)を投与前ならびに投与後0.25、0.5、1、2、4、8、12(次の投与前)、13、16、20、および24時間に、各イヌの頸静脈からK2EDTA抗凝固剤含有チューブに採取した。
【0206】
図8は666mg1日2回試験での1日目PKを示す。データは、暴露(Cmax/AUC)が、スプリンクルプロトタイプSF14000999でCampralより低かったことを示した。スプリンクルはCampral(Tmax4.7時間)に対して遅い開始(Tmax13.5時間)を示した。試験8321752および8326326から、SF14000999プロトタイプは適しておらず、さらに改善して、所望の目標とする製品PKおよび耐容性特性に適合させることが必要とされた。
【0207】
c.アカンプロサートカルシウム腸溶性コーティングスプリンクル(第二世代試験)
プロトタイプSF14000999から学び、2種の新規製剤プロトタイプであるSF15000679およびSF15000775を開発した。両新規プロトタイプは、CampralおよびSF14000999と比べて好ましい放出プロファイルを示した。両スプリンクル製剤の可塑剤および腸溶性コーティングを低下させることによって、SF15000679およびSF15000775はスプリンクルあたりに高い薬剤添加量をもたらしながら、同一または小さい粒子サイズを維持した。
【0208】
イヌ試験‘326の同じ基本プロトコルを複製し、2種の新規プロトタイプを腸溶性コーティングCampral錠剤と比較したPKおよび耐容性試験を繰り返した。再度、これは1~3日目に666mgを1日2回(1,332mg/日の全量)による4日試験で、4日目は朝666mgの1回投与だった。PK-1332mg(1日2回666mg)1日目の結果を
図9に示し、一方、PK-1332mg(1日2回666mg)1日目対4日目の結果を
図10に示す。結果を表45に示す。
【表45】
【0209】
本試験の結果は、両新規スプリンクルプロトタイプはSF14000999と比べて暴露の増加を示したことを実証した。SF15000679のTmaxはSF15000775およびCampral製剤と比べてわずかに遅れた。生物学的利用能はCampral錠剤と比べてSF15000679で77%増加した。要約すると、プロトタイプSF15000679およびSF15000775に関するイヌPKおよび耐容性試験は、SF14000999およびCampralと比較して優れた放出特性および高い生物学的利用能を有することを実証した。