(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-17
(45)【発行日】2022-02-28
(54)【発明の名称】把持鉗子、鉗子供給具および鉗子回収具
(51)【国際特許分類】
A61B 17/122 20060101AFI20220218BHJP
【FI】
A61B17/122
(21)【出願番号】P 2021545696
(86)(22)【出願日】2021-02-22
(86)【国際出願番号】 JP2021006682
(87)【国際公開番号】W WO2021172291
(87)【国際公開日】2021-09-02
【審査請求日】2021-08-04
(31)【優先権主張番号】P 2020029138
(32)【優先日】2020-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591206108
【氏名又は名称】マルホ発條工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】501083643
【氏名又は名称】学校法人慈恵大学
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100174388
【氏名又は名称】龍竹 史朗
(72)【発明者】
【氏名】滝野 創紀
(72)【発明者】
【氏名】炭山 和毅
(72)【発明者】
【氏名】樺 俊介
【審査官】山口 賢一
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-061535(JP,A)
【文献】特開2014-018509(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/122
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体組織に対して着脱される把持鉗子であって、
一対の長尺の把持片と、
前記一対の把持片それぞれの長手方向における一端部同士を接続し前記一対の把持片の他端部同士が
互いに離れる方向へ予め設定された第1距離だけ離間した第1状態となるように前記一対の把持片を付勢する接続部材と、
筒状であり外壁から突出した外鍔部を有するとともに、内側に前記接続部材が配置される第1位置から前記第1位置よりも前記一対の把持片の先端部側に位置する予め設定された第2位置まで移動されると、前記一対の把持片の先端部同士が
互いに離れる方向へ前記第1距離よりも短い予め設定された第2距離だけ離間した第2状態となるリングと、
磁性体と、
一部に前記磁性体が固定された状態で前記接続部材
に連結
される連結部材と、を備える、
把持鉗子。
【請求項2】
前記一対の把持片は、それぞれ、細長の板状であり、厚さ方向において互いに対向するように配置されるとともに、他端部から互いに近づく方向へ突出し前記生体組織を係止する係止片を有し、
前記接続部材は、長尺板状であり前記一対の把持片のうちの一方に一端部で連続する第1バネ片と、長尺板状であり前記第1バネ片の厚さ方向に直交し且つ前記第1バネ片の短手方向から見たときに前記第1バネ片と交差するとともに、前記一対の把持片のうちの他方に一端部で連続する第2バネ片と、前記第1バネ片の他端部と前記第2バネ片の他端部とを接続する接続片と、を有する、
請求項1に記載の把持鉗子。
【請求項3】
前記磁性体は、球状であり、中心を通る貫通孔が設けられ、
前記連結部材は、内側に接続片が嵌入される切欠部と、前記磁性体の貫通孔に嵌入される突出部と、を有する、
請求項1または2に記載の把持鉗子。
【請求項4】
一対の長尺の把持片と、前記一対の把持片それぞれの長手方向における一端部同士を接続し前記一対の把持片の他端部同士が
互いに離れる方向へ予め設定された第1距離だけ離間した第1状態となるように前記一対の把持片を付勢する接続部材と、筒状であり外壁から突出した外鍔部を有するとともに、内側に前記接続部材が配置される第1位置から前記第1位置よりも前記一対の把持片の先端部側に位置する予め設定された第2位置まで移動されると、前記一対の把持片の先端部同士が
互いに離れる方向へ前記第1距離よりも短い予め設定された第2距離だけ離間した第2状態となるリングと、磁性体と、
一部に前記磁性体が固定された状態で前記接続部材
に連結
される連結部材と、を有する把持鉗子を生体組織に固定するための鉗子供給具であって、
前記磁性体を挟持する一対の挟持片と、前記一対の挟持片それぞれの一端部を支持し前記一対の挟持片から前記磁性体が離脱可能な開放状態となるように前記一対の挟持片を付勢する支持片と、を有する磁性体保持部と、
前記磁性体保持部を支持する支持ワイヤと、
長尺の筒状であり、内側に前記磁性体保持部および前記支持ワイヤが挿通されるインナシースと、
長尺の筒状であり、内側に前記インナシースが挿通されるアウタシースと、
前記インナシースおよび前記支持ワイヤを各別に前記アウタシースに対して相対的に移動させるための操作ユニットと、を備え、
前記一対の把持片が前記アウタシースの外側に配置され前記一対の把持片の間に前記生体組織が配置されるとともに、前記磁性体保持部を前記インナシースの内側に配置された状態で、前記磁性体保持部が前記インナシースの先端部側とは反対側へ移動すると前記リングが前記第1位置から前記第2位置へ移動し前記一対の把持片が前記生体組織を把持し、
前記インナシースの先端部が前記アウタシースの外側へ突き出された状態で、前記一対の挟持片が前記インナシースの外側へ突き出されると、前記一対の挟持片が前記開放状態となり、前記把持鉗子が前記一対の挟持片から離脱する、
鉗子供給具。
【請求項5】
前記アウタシースの内側における少なくとも前記アウタシースの先端部を含む一部の前記アウタシースの筒軸方向に直交する断面の
面積が最小となる部分の前記アウタシースの筒軸方向に直交する断面の面積は、前記リングの前記外鍔部における筒軸方向に直交する断面の輪郭
の内側の面積が最大となる部分の前記リングの筒軸方向に直交する断面の輪郭の内側の面積よりも大きく、
前記インナシースにおける少なくとも前記インナシースの先端部を含む一部は、内側に前記磁性体保持部が前記磁性体を挟持した状態で、前記接続部材と前記磁性体と前記連結部材と前記磁性体保持部を収納可能な大きさに設定され、前記インナシースの内側
全体における前記インナシースの筒軸方向に直交する断面の面積が、前記リングの前記外鍔部における筒軸方向に直交する断面の輪郭
の内側の面積が最大となる部分の前記リングの筒軸方向に直交する断面の輪郭の内側の面積よりも小さい、
請求項4に記載の鉗子供給具。
【請求項6】
可撓性を有し前記アウタシースと前記操作ユニットとの間に介在するとともに、内側に前記支持ワイヤと前記インナシースとが配置される長尺の管体を更に備える、
請求項4または5に記載の鉗子供給具。
【請求項7】
前記磁性体は、球状であり、
前記挟持片は、互いに対向する側の端縁に円弧状の切欠部が設けられている、
請求項4から6のいずれか1項に記載の鉗子供給具。
【請求項8】
一対の長尺の把持片と、前記一対の把持片それぞれの長手方向における一端部同士を接続し前記一対の把持片の他端部同士が
互いに離れる方向へ予め設定された第1距離だけ離間した第1状態となるように前記一対の把持片を付勢する接続部材と、筒状であり外壁から突出した外鍔部を有するとともに、内側に前記接続部材が配置される第1位置から前記第1位置よりも前記一対の把持片の先端部側に位置する予め設定された第2位置まで移動されると、前記一対の把持片の先端部同士が
互いに離れる方向へ前記第1距離よりも短い予め設定された第2距離だけ離間した第2状態となるリングと、
吸着対象である磁性体と、
一部に前記磁性体が固定された状態で前記接続部材
に連結
される連結部材と、を有し生体組織に固定された把持鉗子を回収するための鉗子回収具であって、
前記磁性体を吸着するための磁石と、
先端部に前記磁石を支持する支持ワイヤと、
長尺の筒状であり、内側に前記磁石および前記支持ワイヤが挿通されるインナシースと、
長尺の筒状であり内側に前記インナシースが挿通されるシース本体と、前記シース本体の先端部から前記シース本体の筒軸に沿って延出し前記シース本体側とは反対側の端部に前記外鍔部が掛止される突起を有する延出部と、を有するアウタシースと、
前記インナシースおよび前記支持ワイヤを各別に前記アウタシースに対して相対的に移動させるための操作ユニットと、を備え、
前記磁性体が前記磁石に吸着し且つ前記突起と前記インナシースの先端部とで前記外鍔部が挟持された状態で、前記磁石が前記リングに近づくことにより前記リングが前記第2位置から前記第1位置へ移動すると、前記一対の把持片が前記第2状態になり、前記把持鉗子が前記生体組織から離脱する、
鉗子回収具。
【請求項9】
前記インナシースにおける少なくとも前記インナシースの先端部を含む一部は、
前記把持鉗子が備える前記磁性体が前記磁石に吸着した状態で、前記接続部材と
前記把持鉗子が備える前記磁性体と前記連結部材と前記磁石を収納可能な大きさに設定されている、
請求項8に記載の鉗子回収具。
【請求項10】
前記延出部は、半筒状であり、
前記突起は、前記延出部における前記シース本体側とは反対側の端部から前記シース本体の筒軸に向かって突出している、
請求項8または9に記載の鉗子回収具。
【請求項11】
前記突起における前記シース本体側には、前記シース本体の筒軸から離れるほど前記シース本体側への突出量が大きくなるように傾斜した第1傾斜部が設けられている、
請求項8から10のいずれか1項に記載の鉗子回収具。
【請求項12】
前記突起における前記シース本体側とは反対側には、前記シース本体側に近づくほど前記延出部の筒軸に近づくように傾斜した第2傾斜部が設けられている、
請求項8から11のいずれか1項に記載の鉗子回収具。
【請求項13】
生体組織に対して着脱される把持鉗子であって、
一対の把持片と、
長尺板状であり厚さ方向に貫通し長手方向に沿って延在する長孔が穿設されるとともに、長手方向における一端部で前記一対の把持片のいずれか一方に連続し、厚さ方向に互いに重ねて配置された一対のアーム片と、
前記一対のアーム片それぞれの他端部を回転自在に枢支する第1軸部と、
筒状であり内側に前記一対のアーム片および前記第1軸部が配置されるとともに、
筒状の側壁における前記一対のアーム片それぞれの厚さ方向に直交する短手方向において前記一対のアーム片に対向する部分に筒軸方向に沿って延在するスリットが形成され
た筒状部と、内側において前記一対のアーム片それぞれの前記長孔に挿通され
前記筒状部の前記側壁に固定された第2軸部
と、を有する鉗子本体と、
磁性体と、
一部に前記磁性体が固定された状態で前記第1軸部
に連結
される連結部材と、を備え、
前記一対の把持片は、前記第2軸部が前記長孔における前記第1軸部側の端部に配置されると、前記一対の把持片それぞれの前記一対のアーム片に連続する側とは反対側の端部同士が
互いに離れる方向へ予め設定された第1距離だけ離間した第1状態となり、前記第2軸部が前記長孔における前記第1軸部側とは反対側の端部に配置されると、前記一対の把持片それぞれの前記一対のアーム片に連続する側とは反対側の端部同士が
互いに離れる方向へ前記第1距離よりも短い予め設定された第2距離だけ離間した第2状態となる、
把持鉗子。
【請求項14】
前記連結部材は、板状であり前記第1軸部に枢支される支持片と、長尺であり長手方向における一端部が前記支持片に連続する2つの脚片と、前記2つの脚片それぞれの長手方向における他端部に連続し前記磁性体が固定される固定片と、を有する、
請求項13に記載の把持鉗子。
【請求項15】
前記2つの脚片は、それぞれ、前記2つの脚片それぞれの短手方向に沿って互いに遠ざかる方向へ突出する第1突起を有し、
前記鉗子本体は、前記一対の把持片が前記第2状態にあるときに前記第1突起を係止可能な係止部を有する、
請求項14に記載の把持鉗子。
【請求項16】
前記2つの脚片は、それぞれ、前記第1突起よりも前記他端部側において前記2つの脚片それぞれの短手方向に沿って互いに遠ざかる方向へ突出する第2突起を更に有し、
前記第2突起は、前記一対の把持片が前記第2状態にあるときに前記鉗子本体の外側に配置される、
請求項15に記載の把持鉗子。
【請求項17】
前記鉗子本体の内側に配置され前記第1軸部を前記第2軸部へ近づく方向へ付勢する付勢部材を更に備える、
請求項13から16のいずれか1項に記載の把持鉗子。
【請求項18】
一対の把持片と、長尺板状であり厚さ方向に貫通し長手方向に沿って延在する長孔が穿設されるとともに、長手方向における一端部で前記一対の把持片のいずれか一方に連続し、厚さ方向に互いに重ねて配置された一対のアーム片と、前記一対のアーム片それぞれの他端部を回転自在に枢支する第1軸部と、筒状であり内側に前記一対のアーム片および前記第1軸部が配置されるとともに、
筒状の側壁における前記一対のアーム片それぞれの厚さ方向に直交する短手方向において前記一対のアーム片に対向する部分に筒軸方向に沿って延在するスリットが形成され
た筒状部と、内側において前記一対のアーム片それぞれの前記長孔に挿通され
前記筒状部の前記側壁に固定された第2軸部
と、を有する鉗子本体と、磁性体と、
一部に前記磁性体が固定された状態で前記第1軸部
に連結
される連結部材と、を備える把持鉗子であって、前記一対の把持片は、前記第2軸部が前記長孔における前記第1軸部側の端部に配置されると、前記一対の把持片それぞれの前記一対のアーム片に連続する側とは反対側の端部同士が
互いに離れる方向へ予め設定された第1距離だけ離間した第1状態となり、前記第2軸部が前記長孔における前記第1軸部側とは反対側の端部に配置されると、前記一対の把持片それぞれの前記一対のアーム片に連続する側とは反対側の端部同士が
互いに離れる方向へ前記第1距離よりも短い予め設定された第2距離だけ離間した第2状態となる、把持鉗子を生体組織に固定するための鉗子供給具であって、
前記磁性体を挟持する一対の挟持片と、前記一対の挟持片それぞれの一端部を支持し前記一対の挟持片から前記磁性体が離脱可能な開放状態となるように前記一対の挟持片を付勢するアーム片と、を有する磁性体保持部と、
前記磁性体保持部を支持する支持ワイヤと、
長尺の筒状であり、先端部に前記鉗子本体に係合する係合部を有するとともに、内側に前記磁性体保持部および前記支持ワイヤが挿通されるシースと、を備え、
前記係合部が前記鉗子本体を係合し前記一対の把持片の間に前記生体組織が配置されるとともに、前記磁性体保持部が前記シースの内側に配置された状態で、前記磁性体保持部が前記シースの先端部側とは反対側へ移動すると前記第2軸部が前記長孔における前記第1軸部側とは反対側の端部に配置され前記一対の把持片が前記生体組織を把持し、
前記係合部による前記鉗子本体の係合状態が解除され前記磁性体保持部が前記シースの外側へ突き出されると、前記一対の挟持片が前記開放状態となり、前記把持鉗子が前記一対の挟持片から離脱する、
鉗子供給具。
【請求項19】
前記係合部は、前記シースの先端部から延出する突出部を有し、
前記鉗子本体は、前記突出部に係合する切欠部を有する、
請求項18に記載の鉗子供給具。
【請求項20】
一対の把持片と、長尺板状であり厚さ方向に貫通し長手方向に沿って延在する長孔が穿設されるとともに、長手方向における一端部で前記一対の把持片のいずれか一方に連続し、厚さ方向に互いに重ねて配置された一対のアーム片と、前記一対のアーム片それぞれの他端部を回転自在に枢支する第1軸部と、筒状であり内側に前記一対のアーム片および前記第1軸部が配置されるとともに、
筒状の側壁における前記一対のアーム片それぞれの厚さ方向に直交する短手方向において前記一対のアーム片に対向する部分に筒軸方向に沿って延在するスリットが形成され
た筒状部と、内側において前記一対のアーム片それぞれの前記長孔に挿通され
前記筒状部の前記側壁に固定された第2軸部
と、を有する鉗子本体と、磁性体と、
一部に前記磁性体が固定された状態で前記第1軸部
に連結
される連結部材と、を備える把持鉗子であって、前記一対の把持片は、前記第2軸部が前記長孔における前記第1軸部側の端部に配置されると、前記一対の把持片それぞれの前記一対のアーム片に連続する側とは反対側の端部同士が
互いに離れる方向へ予め設定された第1距離だけ離間した第1状態となり、前記第2軸部が前記長孔における前記第1軸部側とは反対側の端部に配置されると、前記一対の把持片それぞれの前記一対のアーム片に連続する側とは反対側の端部同士が
互いに離れる方向へ前記第1距離よりも短い予め設定された第2距離だけ離間した第2状態となる、把持鉗子を生体組織に固定するための鉗子供給具であって、
前記磁性体を挟持する一対の挟持部と、筒状であり前記一対の挟持部それぞれの一端部を支持する支持部と、を有する磁性体保持部と、
長尺の筒状であり先端部で前記磁性体保持部を支持するインナシースと、
前記磁性体保持部の内側に配置され前記磁性体保持部の前記挟持部側へ移動されたときに前記一対の挟持部それぞれの他端部が互いに離れる方向へ移動するように前記一対の挟持部を押圧する押圧部材と、
前記インナシースの内側に挿通され先端部で前記押圧部材を支持する支持ワイヤと、
長尺の筒状であり、先端部に前記鉗子本体に係合する係合部を有するとともに、内側に前記磁性体保持部、前記インナシース、前記押圧部材および前記支持ワイヤが挿通されるアウタシースと、を備え、
前記係合部が前記鉗子本体を係合し前記一対の把持片の間に前記生体組織が配置されるとともに、前記磁性体保持部が前記アウタシースの内側に配置された状態で、前記磁性体保持部が前記アウタシースの先端部側とは反対側へ移動すると前記第2軸部が前記長孔における前記第1軸部側とは反対側の端部に配置され前記一対の把持片が前記生体組織を把持し、
前記係合部による前記鉗子本体の係合状態が解除され前記磁性体保持部が前記シースの外側へ突き出された状態で前記押圧部材が前記磁性体保持部の前記インナシース側とは反対側へ移動すると、前記一対の挟持部が前記磁性体が離脱可能な開放状態となり、前記把持鉗子が前記一対の挟持部から離脱する、
鉗子供給具。
【請求項21】
一対の把持片と、長尺板状であり厚さ方向に貫通し長手方向に沿って延在する長孔が穿設されるとともに、長手方向における一端部で前記一対の把持片のいずれか一方に連続し、厚さ方向に互いに重ねて配置された一対のアーム片と、前記一対のアーム片それぞれの他端部を回転自在に枢支する第1軸部と、筒状であり内側に前記一対のアーム片および前記第1軸部が配置されるとともに、
筒状の側壁における前記一対のアーム片それぞれの厚さ方向に直交する短手方向において前記一対のアーム片に対向する部分に筒軸方向に沿って延在するスリットが形成され
た筒状部と、内側において前記一対のアーム片それぞれの前記長孔に挿通され
前記筒状部の前記側壁に固定された第2軸部
と、を有する鉗子本体と、
吸着対象である磁性体と、
一部に前記磁性体が固定された状態で前記第1軸部
に連結
される連結部材と、を備える把持鉗子であって、前記一対の把持片は、前記第2軸部が前記長孔における前記第1軸部側の端部に配置されると、前記一対の把持片それぞれの前記一対のアーム片に連続する側とは反対側の端部同士が
互いに離れる方向へ予め設定された第1距離だけ離間した第1状態となり、前記第2軸部が前記長孔における前記第1軸部側とは反対側の端部に配置されると、前記一対の把持片それぞれの前記一対のアーム片に連続する側とは反対側の端部同士が
互いに離れる方向へ前記第1距離よりも短い予め設定された第2距離だけ離間した第2状態となる、生体組織に固定された把持鉗子を回収するための鉗子回収具であって、
前記磁性体を吸着するための磁石と、
先端部に前記磁石を支持する支持ワイヤと、
長尺の筒状であり、内側に前記磁石および前記支持ワイヤが挿通されるシースと、を備え、
前記把持鉗子が備える前記磁性体が前記磁石に吸着し且つ前記シースの先端部が前記鉗子本体に当接した状態で、前記支持ワイヤの先端部が前記第1軸部側へ押し込まれることにより前記第2軸部が前記長孔における前記第1軸部側の端部に配置されると、前記一対の把持片が前記第2状態になり、前記把持鉗子が前記生体組織から離脱する、
鉗子回収具。
【請求項22】
前記シースにおける少なくとも先端部は、伸縮性を有する材料から形成さ
れている、
請求項21に記載の鉗子回収具。
【請求項23】
一対の把持片と、長尺板状であり厚さ方向に貫通し長手方向に沿って延在する長孔が穿設されるとともに、長手方向における一端部で前記一対の把持片のいずれか一方に連続し、厚さ方向に互いに重ねて配置された一対のアーム片と、前記一対のアーム片それぞれの他端部を回転自在に枢支する第1軸部と、筒状であり内側に前記一対のアーム片および前記第1軸部が配置されるとともに、
筒状の側壁における前記一対のアーム片それぞれの厚さ方向に直交する短手方向において前記一対のアーム片に対向する部分に筒軸方向に沿って延在するスリットが形成され
た筒状部と、内側において前記一対のアーム片それぞれの前記長孔に挿通され
前記筒状部の前記側壁に固定された第2軸部
と、を有する鉗子本体と、磁性体と、
一部に前記磁性体が固定された状態で前記第1軸部
に連結
される連結部材と、を備える把持鉗子であって、前記一対の把持片は、前記第2軸部が前記長孔における前記第1軸部側の端部に配置されると、前記一対の把持片それぞれの前記一対のアーム片に連続する側とは反対側の端部同士が
互いに離れる方向へ予め設定された第1距離だけ離間した第1状態となり、前記第2軸部が前記長孔における前記第1軸部側とは反対側の端部に配置されると、前記一対の把持片それぞれの前記一対のアーム片に連続する側とは反対側の端部同士が
互いに離れる方向へ前記第1距離よりも短い予め設定された第2距離だけ離間した第2状態となる、生体組織に固定された把持鉗子を回収するための鉗子回収具であって、
前記磁性体を挟持する一対の挟持部と、筒状であり前記一対の挟持部それぞれの一端部を支持する支持部と、を有する磁性体保持部と、
長尺の筒状であり先端部で前記磁性体保持部を支持するインナシースと、
前記把持鉗子が備える前記磁性体を吸着するための磁石を有し、前記磁性体保持部の内側に配置され前記磁性体保持部の前記挟持部側へ移動されたときに前記一対の挟持部それぞれの他端部が互いに離れる方向へ移動するように前記一対の挟持部を押圧するとともに前記磁石を前記磁性体保持部の外側に突出させる吸着部材と、
前記インナシースの内側に挿通され先端部で前記吸着部材を支持する支持ワイヤと、
長尺の筒状であり、内側に前記磁性体保持部、前記インナシース、前記吸着部材および前記支持ワイヤが挿通されるアウタシースと、を備え、
前記把持鉗子が備える前記磁性体が前記磁石に吸着し且つ前記アウタシースの先端部が前記連結部材に当接した状態で、前記アウタシースの先端部が前記第1軸部側へ押し込まれることにより前記第2軸部が前記長孔における前記第1軸部側の端部に配置されると、前記一対の把持片が前記第2状態になり、前記把持鉗子が前記生体組織から離脱する、
鉗子回収具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、把持鉗子、鉗子供給具および鉗子回収具に関する。
【背景技術】
【0002】
一対のクリップ爪部と一対のクリップ爪部が内側に挿通される管体とを有するクリップと、磁石と、磁石とクリップとを係止するワイヤと、を備え、体腔内に留置される留置具が提案されている(例えば特許文献1参照)。この留置具は、例えば、胃、腸等の管腔器官の内側に生じた病変の除去のために使用される。ここで、一対のクリップ爪部は、基端同士が繋がっていて基端から先端に向けてX状に延びて違いに交差している一つのバネ材からなる。また、一対のクリップ爪部は、管体から先端が突き出した状態では先端が開いており、管体がクリップ爪部の先端側に近づくように移動されると、それに伴い、先端同士が互いに接近する。そして、留置具を体腔内の生体組織に固定する場合、一対のクリップ爪部の先端を生体組織に近づけて生体組織を一対のクリップ爪部の間に配置した状態で、管体をクリップ爪部の先端側へ移動させることにより一対のクリップ爪部の先端同士を接近させる。これにより、一対のクリップ爪部が生体組織を挟み込んだ状態で、留置具が生体組織に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたような留置具は、一度生体組織に固定すると、その固定位置を変更することができない。例えば、留置具を使った手術を行う者が留置具を誤った位置に固定してしまった場合、留置具の固定位置を正しい位置へ変更することができない。また、体腔内に生じた線状の創部を手術する際、複数の留置具を創部に沿って固定する場合がある。この場合、例えば1つの留置具を固定した後にその留置具が創部に沿った方向へ倒れてしまった場合、他の留置具を固定すべき部分が留置具で塞がれてしまう。そうすると、創部に沿って十分な数の留置具を固定することができなくなる虞がある。このような場合、倒れてしまった留置具を一旦生体組織から離脱させてから再度固定し直す必要がある。これらのことから、生体組織に固定された留置具を生体組織から離脱させて回収したり、回収した留置具を再度生体組織の他の場所に固定させることにより留置具の固定位置を変更したりする技術が要請されている。
【0005】
本発明は、上記事由に鑑みてなされたものであり、生体組織への脱着を容易に行うことができる把持鉗子、鉗子供給具および鉗子回収具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る把持鉗子は、
生体組織に対して着脱される把持鉗子であって、
一対の長尺の把持片と、
前記一対の把持片それぞれの長手方向における一端部同士を接続し前記一対の把持片の他端部同士が互いに離れる方向へ予め設定された第1距離だけ離間した第1状態となるように前記一対の把持片を付勢する接続部材と、
筒状であり外壁から突出した外鍔部を有するとともに、内側に前記接続部材が配置される第1位置から前記第1位置よりも前記一対の把持片の先端部側に位置する予め設定された第2位置まで移動されると、前記一対の把持片の先端部同士が互いに離れる方向へ前記第1距離よりも短い予め設定された第2距離だけ離間した第2状態となるリングと、
磁性体と、
一部に前記磁性体が固定された状態で前記接続部材に連結される連結部材と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る把持鉗子は、一対の把持片の間に生体組織を配置した状態でリングが第1位置から第2位置へ移動されて生体組織が一対の把持片で挟持されることで生体組織に固定される。また、把持鉗子を生体組織から離脱させる場合、リングを再び第2位置へ移動させて接続部材の付勢力により一対の把持片を開かせる。ここで、本発明に係る把持鉗子では、リングが外壁から突出した外鍔部を有する。これにより、例えば突起を有する鉗子回収具の突起をリングの外鍔部に掛止してリングを第2位置から第1位置へ簡単に移動させることができるので、把持鉗子を容易に生体組織から離脱させることができる。従って、生体組織への脱着を容易に行うことができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】本発明の実施の形態1に係る把持鉗子の斜視図である。
【
図1B】実施の形態1に係る把持鉗子の側面図である。
【
図2A】実施の形態1に係る把持鉗子についてリングが第1位置に配置された状態を示す平面図である。
【
図2B】実施の形態1に係る把持鉗子についてリングが第2位置に配置された状態を示す平面図である。
【
図3A】実施の形態1に係る鉗子供給具の平面図である。
【
図3B】実施の形態1に係る鉗子供給具の一部の斜視図である。
【
図4A】実施の形態1に係る鉗子供給具の一部の側面図である。
【
図4B】実施の形態1に係る鉗子供給具の一部の平面図である。
【
図5A】実施の形態1に係る鉗子供給具を使用して把持鉗子を生体組織へ近づける様子を示す図である。
【
図5B】実施の形態1に係る鉗子供給具を使用して把持鉗子の把持片を生体組織に接触させた状態を示す図である。
【
図5C】実施の形態1に係る鉗子供給具を使用して把持鉗子を生体組織に固定させた状態を示す図である。
【
図6】実施の形態1に係る鉗子供給具を生体組織に固定された把持鉗子から離脱させる様子を示す図である。
【
図7A】実施の形態1に係る鉗子回収具の平面図である。
【
図7B】実施の形態1に係る鉗子回収具の一部の斜視図である。
【
図8A】実施の形態1に係る鉗子回収具の一部の側面図である。
【
図8B】実施の形態1に係る鉗子回収具の一部の平面図である。
【
図9A】実施の形態1に係る鉗子回収具を生体組織に固定された把持鉗子に近づける様子を示す図である。
【
図9B】実施の形態1に係る鉗子回収具の磁石に把持鉗子の磁石に吸着させた様子を示す図である。
【
図9C】実施の形態1に係る鉗子回収具のアウタシースの鉤状部を把持鉗子の外鍔部に掛止させる様子を示す図である。
【
図10A】実施の形態1に係る鉗子回収具のアウタシースの鉤状部とインナシースの先端部とで把持鉗子の外鍔部を挟持した状態を示す図である。
【
図10B】実施の形態1に係る鉗子回収具において、支持ワイヤに対してアウタシース、インナシースおよびリングを相対的に移動させた様子を示す図である。
【
図11A】本発明の実施の形態2に係る把持鉗子の平面図である。
【
図11B】実施の形態2に係る把持鉗子の側面図である。
【
図12A】実施の形態2に係る把持鉗子について第2軸部が長孔の第1軸部側の端部に配置された状態を示す平面図である。
【
図12B】実施の形態2に係る把持鉗子について第2軸部が長孔の延在方向における略中央部に配置された状態を示す平面図である。
【
図12C】実施の形態2に係る把持鉗子について第2軸部が長孔の第1軸部側とは反対側の端部に配置された状態を示す平面図である。
【
図13A】実施の形態2に係る鉗子供給具の断面図である。
【
図13B】実施の形態2に係る鉗子供給具の断面図である。
【
図13C】実施の形態2に係る鉗子供給具のボールクランプを開放した状態を示す断面図である。
【
図14A】実施の形態2に係る鉗子供給具を使用して把持鉗子を生体組織へ近づける様子を示す図である。
【
図14B】実施の形態2に係る鉗子供給具を使用して把持鉗子の把持片を生体組織に接触させた状態を示す図である。
【
図14C】実施の形態2に係る鉗子供給具を使用して把持鉗子を生体組織に固定させた状態を示す図である。
【
図15A】実施の形態2に係る鉗子供給具の突起を鉗子本体に係合させた状態を示す図である。
【
図15B】実施の形態2に係る鉗子供給具の磁性体保持部をシースの外側に配置した状態を示す図である。
【
図15C】実施の形態2に係る鉗子供給具から把持鉗子を離脱させる様子を示す図である。
【
図16A】実施の形態2に係る鉗子回収具の断面図である。
【
図16B】実施の形態2に係る鉗子回収具の断面図である。
【
図17A】実施の形態2に係る鉗子回収具を生体組織に固定された把持鉗子に近づける様子を示す図である。
【
図17B】実施の形態2に係る鉗子回収具の磁石に把持鉗子の磁石に吸着させた様子を示す図である。
【
図17C】実施の形態2に係る鉗子回収具のシースの先端部を連結部材の突起に近づける様子を示す図である。
【
図18A】実施の形態2に係る鉗子回収具のシースの先端部を突起の頂部に配置した状態を示す図である。
【
図18B】実施の形態2に係る鉗子回収具の突起を鉗子本体の内側へ移動させた状態を示す図である。
【
図18C】実施の形態2に係る鉗子回収具から把持鉗子を離脱させる様子を示す図である。
【
図19A】本発明の実施の形態3に係る把持鉗子の平面図である。
【
図19B】実施の形態3に係る把持鉗子の側面図である。
【
図20A】実施の形態3に係る把持鉗子について第2軸部が長孔の第1軸部側の端部に配置された状態を示す平面図である。
【
図20B】実施の形態3に係る把持鉗子について第2軸部が長孔の延在方向における略中央部に配置された状態を示す平面図である。
【
図20C】実施の形態3に係る把持鉗子について第2軸部が長孔の第1軸部側とは反対側の端部に配置された状態を示す平面図である。
【
図21A】実施の形態3に係る鉗子供給具の断面図である。
【
図21B】実施の形態3に係る鉗子供給具の断面図である。
【
図21C】実施の形態3に係る鉗子供給具のボールクランプを開放した状態を示す断面図である。
【
図22A】実施の形態3に係る鉗子供給具を使用して把持鉗子を生体組織へ近づける様子を示す図である。
【
図22B】実施の形態3に係る鉗子供給具を使用して把持鉗子の把持片を生体組織に接触させた状態を示す図である。
【
図22C】実施の形態3に係る鉗子供給具を使用して把持鉗子を生体組織に固定させた状態を示す図である。
【
図23A】実施の形態3に係る鉗子供給具のボールクランプをアウタシースの外側へ突き出した状態を示す図である。
【
図23B】実施の形態3に係る鉗子供給具のボールクランプから把持鉗子の磁性体を離脱させた状態を示す図である。
【
図24A】実施の形態3に係る鉗子回収具の断面図である。
【
図24B】実施の形態3に係る鉗子回収具の断面図である。
【
図24C】実施の形態3に係る鉗子回収具の断面図である。
【
図25A】実施の形態3に係る鉗子回収具を生体組織に固定された把持鉗子に近づける様子を示す図である。
【
図25B】実施の形態3に係る鉗子回収具の磁石に把持鉗子の磁石に吸着させた様子を示す図である。
【
図25C】実施の形態3に係る鉗子回収具のボールクランプにより磁性体を保持した状態を示す図である。
【
図26A】実施の形態3に係る鉗子回収具のボールクランプをアウタシースの内側に収容した状態を示す図である。
【
図26B】実施の形態3に係る鉗子回収具により把持鉗子を保持した状態で生体組織から離脱した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態に係る把持鉗子について、図を参照しながら説明する。本実施の形態に係る把持鉗子は、生体組織に対して着脱される把持鉗子である。この把持鉗子は、一対の長尺の把持片と、一対の把持片それぞれの長手方向における一端部同士を接続する接続部材と、筒状であり筒軸に直交し且つ外壁から筒軸から離れる方向へ突出した外鍔部を有するリングと、磁石と、接続部材と磁石とを連結する連結部材と、を備える。ここで、接続部材は、一対の把持片の他端部同士が予め設定された第1距離だけ離間した第1状態となるように一対の把持片を付勢する。また、リングは、内側に接続部材が配置される第1位置から第1位置よりも一対の把持片の先端部側に位置する予め設定された第2位置まで移動されると、一対の把持片の先端部同士が第1距離よりも短い予め設定された第2距離だけ離間した第2状態となる。
【0010】
例えば
図1Aおよび
図1Bに示すように、本実施の形態に係る把持鉗子1は、生体組織に対して着脱される把持鉗子であり、一対の長尺の把持片111、112と、一対の把持片111、112それぞれの長手方向における一端部同士を接続する接続部材19と、円筒状のリング12と、磁性体14と、接続部材19と磁性体14とを連結する連結部材13と、を備える。一対の把持片111、112は、それぞれ、細長の板状であり、厚さ方向において互いに対向するように配置されている。そして、一対の把持片111、112は、それぞれ、接続部材19に連続する側と反対側の他端部から互いに近づく方向へ突出し生体組織が係止される係止片111a、112aを有する。把持片111、112は、ステンレス鋼(例えばSUS304)、コバルト合金、エンジニアリングプラスチック(ピーク材:硬質プラスチック)等から形成されている。
【0011】
接続部材19は、シリコン、チタン等のコーティングが施された金属から把持片111、112と連続一体に形成され、2つのバネ片113、114と、接続片115と、を有する。バネ片113は、長尺板状であり一端部で把持片111に連続する第1バネ片である。バネ片113は、把持片111と連続一体に形成されており、バネ片113のその厚さ方向に直交する短手方向の幅は、把持片111のその厚さ方向に直交する短手方向の幅に比べて短く設定されている。バネ片114は、長尺板状であり一端部で把持片112に連続する第2バネ片である。バネ片114は、把持片112と連続一体に形成されており、バネ片114のその厚さ方向に直交する短手方向の幅は、把持片112のその厚さ方向に直交する短手方向の幅に比べて短く設定されている。また、バネ片114は、バネ片113の厚さ方向に直交するバネ片113の短手方向、即ち、Z軸方向から見たときにバネ片113と交差している。ここで、バネ片113は、バネ片114に対して-Z方向側に配置されている。接続片115は、バネ片113、114と連続一体に形成され、バネ片113の他端部とバネ片114の他端部とを接続している。ここで、接続部材19は、
図2Aに示すように、一対の把持片111、112の他端部同士が予め設定された第1距離L1だけ離間した第1状態となるように一対の把持片111、112を付勢する。
【0012】
リング12は、例えば樹脂から形成され、円筒状のリング本体121と、リング本体121の外壁から突出した円環状の外鍔部122と、を有する。ここで、リング12は、
図2Aに示す内側に接続部材19が配置される第1位置Pos1から、
図2Bに示す第1位置Pos1よりも一対の把持片111、112の先端部側に位置する予め設定された第2位置Pos2まで移動されると、一対の把持片111、112の先端部同士が第1距離L1よりも短い予め設定された第2距離L2だけ離間した第2状態となる。ここで、第2距離L2は、例えば
図2Bに示すように、係止片111a、112aの先端部同士が当接する距離に設定することができる。
【0013】
磁性体14は、球状の磁性体であり、その中心を通る断面円形の貫通孔14aが設けられている。連結部材13は、ステンレス鋼(例えばSUS304)、コバルト合金、エンジニアリングプラスチック(ピーク材:硬質プラスチック)等から形成され、本体部131と、本体部131から突出し磁性体14の貫通孔14aに嵌入される突出部132と、を有する。本体部131には、内側に接続部材19の接続片115が嵌入される切欠部131aが形成されている。また、突出部132は、周部に凹凸部分が形成されている。そして、突出部132が磁性体14の貫通孔14aに嵌入されると、その凹凸部分が磁性体14の貫通孔14aの内壁に係止され、磁性体14が突出部132に固定される。
【0014】
次に、本実施の形態に係る把持鉗子を体腔内の生体組織に固定するための鉗子供給具について説明する。
図3Aに示すように、本実施の形態の鉗子供給具2は、把持鉗子1の磁性体14を挟持するボールクランプ28と、支持ワイヤ22と、インナシース24と、アウタシース27と、フレキシブルチューブ26と、操作ユニット29と、を備える。ボールクランプ28は、例えば樹脂から形成され、
図3Bに示すように、把持鉗子1の磁性体14を挟持する一対の挟持片282と、一対の挟持片282それぞれの一端部を支持する支持片281と、を有する磁性体保持部である。支持片281は、一対の挟持片282から磁性体14が離脱可能な開放状態となるように一対の挟持片282を付勢する。また、一対の挟持片282は、互いに対向する側の端縁に円弧状の切欠部282aが設けられている。これにより、ボールクランプ28により磁性体14を堅固に挟持することができるので、把持鉗子1を生体組織Biに固定する前段階で把持鉗子1が不意に鉗子供給具2から脱落してしまうことが防止される。
【0015】
支持ワイヤ22は、例えば樹脂からボールクランプ28と連続一体に形成され、
図4Aおよび
図4Bに示すように、先端部に固定されたボールクランプ28を支持する。インナシース24は、長尺の円筒状であり、内側にボールクランプ28および支持ワイヤ22が挿通される。インナシース24は、ステンレス鋼(例えばSUS304)、コバルト合金、エンジニアリングプラスチック(ピーク材:硬質プラスチック)等から形成されている。インナシース24は、ボールクランプ28が把持鉗子1の磁性体14を挟持した状態で、把持鉗子1の接続部材19と磁性体14と連結部材13とボールクランプ28を収納可能な大きさに設定されている。また、インナシース24の内側の筒軸方向に直交する断面の面積は、把持鉗子1のリング12の外鍔部122のその筒軸方向に直交する断面の輪郭の面積よりも小さい。即ち、インナシース24の内径D21は、把持鉗子1のリング12の外鍔部122の外径D1よりも小さい。これにより、把持鉗子1のリング12のインナシース24の内側への進入が規制されている。
【0016】
アウタシース27は、長尺の円筒状であり、内側にインナシース24が挿通される。アウタシース27は、シリコン、チタン等のコーティングが施された金属から形成されている。アウタシース27の内側の筒軸方向に直交する断面の面積は、把持鉗子1のリング12の外鍔部122のその筒軸方向に直交する断面の輪郭の面積よりも大きい。即ち、アウタシース27の内径D22は、把持鉗子1のリング12の外鍔部122の外径D1よりも大きい。
【0017】
図3Aに戻って、フレキシブルチューブ26は、アウタシース27と操作ユニット29との間に介在する長尺の管体である。フレキシブルチューブ26は、ステンレス鋼(例えばSUS304)、コバルト合金、エンジニアリングプラスチック(ピーク材:硬質プラスチック)等から形成された可撓性を有する長尺のコイルばねである。フレキシブルチューブ26の内側には、
図4Aおよび
図4Bに示すように、支持ワイヤ22とインナシース24とが配置されている。なお、フレキシブルチューブ26は、コイルばねに限定されるものではなく、その他の弾性材料から形成された長尺の管体であってもよい。
【0018】
図3Aに戻って、操作ユニット29は、インナシース24および支持ワイヤ22を各別にアウタシース27に対して相対的に移動させるためのものである。操作ユニット29は、ユニット本体21と、2つの操作部23、操作部25と、を有する。ユニット本体21は、長尺であり操作部23、25をそれぞれ各別に摺動自在に支持する操作部支持部211と、操作部支持部211の長手方向における一端部に設けられた環状の把手212と、を有する。また、ユニット本体21は、操作部支持部211の長手方向における他端部から操作部支持部211の長手方向に沿って延在する延出部213を有する。延出部213の先端部には、フレキシブルチューブ26におけるアウタシース27側とは反対側の端部が固定されている。また、延出部213には、インナシース24および支持ワイヤ22を延出部213の延在方向に沿って案内するガイド213aが形成されている。
【0019】
操作部23は、操作部本体231と、操作部本体231に設けられた2つの環状の把手232と、支持ワイヤ22の端部を操作部本体231に固定する固定部233と、を有する。操作部23が操作部支持部211の長手方向に沿って摺動されると、支持ワイヤ22が、アウタシース27およびフレキシブルチューブ26に対して相対的に移動する。操作部25は、操作部本体251と、操作部本体251に設けられた2つの環状の把手252と、を有する。操作部本体251には、インナシース24におけるボールクランプ28が配置される側とは反対側の端部が固定されている。操作部25が操作部支持部211の長手方向に沿って摺動されると、インナシース24が、アウタシース27およびフレキシブルチューブ26に対して相対的に移動する。
【0020】
次に、本実施の形態に係る鉗子供給具2を使用して把持鉗子1を体腔内の生体組織に固定する方法について説明する。まず、
図5Aに示すように、把持鉗子1をリング12が前述の第1位置Pos1に配置され且つボールクランプ28により磁性体14が挟持された状態で、鉗子供給具2のアウタシース27の内側に配置する。このとき、把持鉗子1の把持片111、112は、それらの+Y方向側の端部がアウタシース27の内壁に当接した状態でアウタシース27の内側に収容される。この状態で、矢印AR1に示すように、アウタシース27を体腔内の生体組織Biへ近づける。
【0021】
次に、
図5Bに示すように、アウタシース27を生体組織Biにある程度近づけた状態で、インナシース24の先端部をアウタシース27の外側、即ち、+Y方向側へ突き出す。ここにおいて、
図3Aに示す操作部25をアウタシース27側へ摺動させることにより、インナシース24の先端部をアウタシース27の外側へ突き出すことができる。このとき、
図5Bに示すように、把持鉗子1の一対の把持片111、112がアウタシース27の外側に配置される。また、把持鉗子1の接続部材19の付勢力により、一対の把持片111、112の他端部同士が予め設定された第1距離L1だけ離間した第1状態となる。そして、この状態で、アウタシース27を更に生体組織Biに近づけて一対の把持片111、112それぞれの係止片111a、112aを生体組織Biに当接させることにより、係止片111a、112aを生体組織Biに係止させる。このとき、一対の把持片111、112の間に生体組織Biが配置される。
【0022】
続いて、
図5Cに示すように、ボールクランプ28をインナシース24の先端部側とは反対側、即ち、-Y方向側へ移動させる。ここにおいて、
図3Aに示す操作部23をアウタシース27側とは反対側へ摺動させることにより、ボールクランプ28を-Y方向へ移動させることができる。このとき、
図5Cに示すように、把持鉗子1のリング12が第1位置Pos1から第2位置Pos2へ移動する。そして、一対の把持片111、112の他端部同士が、第1距離L1よりも短い第2距離L2だけ離間した第2状態となり、一対の把持片111、112が生体組織Biを把持した状態となる。
【0023】
その後、
図6に示すように、インナシース24の先端部がアウタシース27の外側へ突き出された状態で、ボールクランプ28をインナシース24の先端部側、即ち、+Y方向へ移動させてボールクランプ28の一対の挟持片282をインナシース24の外側へ突き出す。また、アウタシース27およびインナシース24を把持鉗子1のリング12から離脱する方向へ移動させる。ここにおいて、
図3Aに示す操作部23をアウタシース27側へ摺動させることにより、ボールクランプ28を+Y方向へ移動させることができる。このとき、
図6に示すように、ボールクランプ28の支持片281の付勢力により、一対の挟持片282が開放状態となり、把持鉗子1の磁性体14が一対の挟持片282から離脱する。以上説明したように、鉗子供給具2を使用した一連の操作を行うことにより、把持鉗子1を体腔内の生体組織Biに固定することができる。
【0024】
次に、体腔内の生体組織に固定された本実施の形態に係る把持鉗子を回収するために使用される鉗子回収具について説明する。
図7Aに示すように、本実施の形態の鉗子回収具3は、把持鉗子1の磁性体14を吸着保持する磁石38と、支持ワイヤ32と、インナシース34と、アウタシース37と、フレキシブルチューブ36と、操作ユニット39と、を備える。磁石38は、
図7Bに示すように、例えば円柱状の永久磁石である。支持ワイヤ32は、
図8Aおよび
図8Bに示すように、先端部に磁石38が固定されている。インナシース34は、長尺の円筒状であり、内側に磁石38および支持ワイヤ32が挿通される。インナシース34は、ステンレス鋼(例えばSUS304)、コバルト合金、エンジニアリングプラスチック(ピーク材:硬質プラスチック)等から形成されている。インナシース34は、把持鉗子1の磁性体14が磁石38に吸着した状態で、把持鉗子1の接続部材19と磁性体14と磁石38と連結部材13を収納可能な大きさに設定されている。
【0025】
アウタシース37は、長尺の円筒状であり内側にインナシース34が挿通されるシース本体371と、シース本体371の先端部、即ち、+Y方向側の端部から延出する延出部372と、を有する。アウタシース37は、ステンレス鋼(例えばSUS304)、コバルト合金、エンジニアリングプラスチック(ピーク材:硬質プラスチック)等から形成されている。延出部372は、シース本体371側とは反対側の端部、即ち、+Y方向側の端部に、把持鉗子1のリング12の外鍔部122が掛止される突起372aを有する。また、延出部372は、半筒状であり、突起372aは、延出部372における+Y方向側の端部から延出部372の筒軸に向かって突出している。更に、突起372aにおける-Y方向側には、延出部372の筒軸に近づくほど-Y方向側への突出量が大きくなるように傾斜した第1傾斜部372bが形成されている。これにより、把持鉗子1のリング12の筒軸に対して交差する方向からアウタシース37の先端部を挿入した場合でも、突起372aにリング12の外鍔部122を円滑に掛止することができる。また、延出部372における+Y方向側には、シース本体371側ほど延出部372の筒軸に近づくように傾斜した第2傾斜部372cが設けられている。これにより、把持鉗子1の磁性体14を延出部372の内側へ円滑に導入することができる。
【0026】
図7Aに戻って、フレキシブルチューブ36は、アウタシース37と操作ユニット39との間に介在する長尺の管体である。フレキシブルチューブ36の内側には、
図8Aおよび
図8Bに示すように、支持ワイヤ32とインナシース34とが配置されている。フレキシブルチューブ36は、可撓性を有する長尺のコイルばねである。このように、鉗子供給具2が、フレキシブルチューブ26を備えことにより、鉗子供給具2を体腔内へ円滑に導入することができるので、鉗子供給具2の操作性を高めることができる。
【0027】
図7Aに戻って、操作ユニット39は、インナシース34および支持ワイヤ32を各別にアウタシース37に対して相対的に移動させるためのものである。操作ユニット39は、ユニット本体31と、2つの操作部33、操作部35と、を有する。ユニット本体31は、長尺であり操作部33、35をそれぞれ各別に摺動自在に支持する操作部支持部311と、操作部支持部311の長手方向における一端部に設けられた環状の把手312と、を有する。また、ユニット本体31は、操作部支持部311の長手方向における他端部から操作部支持部311の長手方向に沿って延在する延出部313を有する。延出部313の先端部には、フレキシブルチューブ36のアウタシース37側とは反対側の端部が固定されている。また、延出部313には、インナシース34および支持ワイヤ32を延出部313の延在方向に沿って案内するガイド313aが形成されている。
【0028】
操作部33は、操作部本体331と、操作部本体331に設けられた2つの環状の把手332と、支持ワイヤ32の磁石38が固定される側とは反対側の端部を操作部本体331に固定する固定部333と、を有する。操作部33が操作部支持部311の長手方向に沿って摺動されると、支持ワイヤ32が、アウタシース37およびフレキシブルチューブ36に対して相対的に移動する。操作部35は、操作部本体351と、操作部本体351に設けられた2つの環状の把手352と、を有する。操作部本体351には、インナシース34におけるアウタシース37の延出部372側とは反対側に配置される端部が固定されている。操作部35が操作部支持部311の長手方向に沿って摺動されると、インナシース34が、アウタシース37およびフレキシブルチューブ36に対して相対的に移動する。
【0029】
次に、本実施の形態に係る鉗子回収具3を使用して体腔内の生体組織に固定された把持鉗子1を回収する方法について説明する。まず、
図9Aに示すように、支持ワイヤ32の先端部に固定された磁石38をアウタシース37の外側に突き出した状態で、矢印AR2に示すように、磁石38を生体組織Biに固定された把持鉗子1の磁性体14に近づける。そして、
図9Bに示すように、鉗子回収具3の磁石38に把持鉗子1の磁性体14を吸着させる。
【0030】
次に、把持鉗子1の磁性体14が磁石38に吸着された状態で、鉗子回収具3の支持ワイヤ32を-Y方向側へ移動させることにより、
図9Cに示すように、把持鉗子1のリング12の外鍔部122をアウタシース37の突起372a近傍に配置する。ここにおいて、
図7Aに示す操作部33をアウタシース37側とは反対側へ摺動させることにより、磁石38を-Y方向へ移動させることができる。そして、
図10Aに示すように、把持鉗子1のリング12の外鍔部122を、鉗子回収具3の突起372aの-Y方向側に掛止させる。
【0031】
続いて、インナシース34の先端部がアウタシース37の突起372aに近づく方向へインナシース34を移動させることにより、インナシース34の先端部を把持鉗子1のリング12の外鍔部122に当接させる。ここにおいて、
図7Aに示す操作部35をアウタシース37側へ摺動させることにより、インナシース24の先端部をアウタシース37の突起372aに近づけることができる。このとき、
図10Aに示すように、把持鉗子1の外鍔部122が、アウタシース37の突起372aとインナシース34の先端部との間で挟持された状態となる。
【0032】
その後、
図10Bに示すように、磁石38を把持鉗子1のリング12に近づく方向、即ち、+Y方向へ移動させる。ここにおいて、
図7Aに示す操作部33をアウタシース37側へ摺動させることにより、磁石38を+Y方向へ移動させることができる。このとき、
図10Aに示すように第2位置Pos2に位置する把持鉗子1のリング12が、
図10Bに示すように第1位置Pos1へ移動する。このとき、把持鉗子1の接続部材19の付勢力により、一対の把持片111、112が前述の第1状態となり、一対の把持片111、112の係止片111a、112aが、生体組織Biから離脱する。そして、把持鉗子1の外鍔部122をアウタシース37の突起372aとインナシース34の先端部との間で挟持した状態で、把持鉗子1を体腔外へ取り出す。以上説明したように、鉗子回収具3を使用した一連の操作を行うことにより、生体組織Biに固定された把持鉗子1を回収することができる。
【0033】
以上説明したように、本実施の形態に係る把持鉗子1では、一対の把持片111、112の間に生体組織Biを配置した状態でリング12が第1位置Pos1から第2位置Pos2へ移動されて生体組織Biが一対の把持片111、112で挟持されることで生体組織Biに固定される。そして、把持鉗子1を生体組織Biから離脱させる場合、リング12を再び第2位置Pos2へ移動させて接続部材19の付勢力により一対の把持片111、112を開かせる必要がある。これに対して、本実施の形態に係る把持鉗子1によれば、リング12が、その外壁から突出した外鍔部122を有する。これにより、例えば突起372aを有する鉗子回収具3の突起372aをリング12の外鍔部122に掛止してリング12を第2位置Pos2から第1位置Pos1へ簡単に移動させることができるので、把持鉗子1を容易に生体組織Biから離脱させることができる。従って、生体組織Biへの脱着を容易に行うことができるという利点がある。
【0034】
また、本実施の形態の一対の把持片111、112は、それぞれ、生体組織Biを係止する係止片を有する。これにより、生体組織Biを堅固に把持することができる。また、本実施の形態に係る接続部材19は、バネ片113と、バネ片113の厚さ方向に直交し且つバネ片113の短手方向から見たときにバネ片113と交差するバネ片114と、を有する。これにより、比較的簡素な構造で付勢力を適切な大きさで維持できる接続部材19を実現することができる。
【0035】
更に、本実施の形態に係る磁性体14は、球状であり、中心を通る貫通孔14aが設けられ、連結部材13が、内側に接続部材19の接続片115が嵌入される切欠部131aと、磁性体14の貫通孔14aに嵌入される突出部132と、を有する。これにより、連結部材13の構造を簡素化することができる。
【0036】
また、本実施の形態に係る鉗子供給具2は、インナシース24および支持ワイヤ22を各別にアウタシース27に対して相対的に移動させるための操作ユニット29を備える。そして、把持鉗子の一対の把持片111、112がアウタシース27の外側に配置され一対の把持片111、112の間に生体組織Biが配置されるとともに、ボールクランプ28をインナシース24の内側に配置された状態で、ボールクランプ28が-Y方向へ移動すると把持鉗子1のリング12が第1位置Pos1から第2位置Pos2へ移動し一対の把持片111、112が生体組織Biを把持する。また、インナシース24の先端部がアウタシース27の外側へ突き出された状態で、ボールクランプ28の一対の挟持片282がインナシース24の外側へ突き出されると、一対の挟持片282が開放状態となり、把持鉗子1が一対の挟持片282から離脱する。このように、本実施の形態に係る鉗子供給具2を使用すれば、アウタシース27に対してインナシース24または支持ワイヤ22を移動させる操作を行うだけで、把持鉗子1を生体組織Biに固定することができる。従って、ユーザの把持鉗子1を生体組織Biへ固定する際の作業負担が軽減されるという利点がある。
【0037】
更に、本実施の形態に係る鉗子回収具3は、インナシース34および支持ワイヤ32を各別にアウタシース37に対して相対的に移動させるための操作ユニット39を備える。そして、把持鉗子1の磁性体14が支持ワイヤ32の+Y方向側の端部に固定された磁石38に吸着し且つアウタシース37の突起372aとインナシース34の先端部とでリング12の外鍔部122が挟持された状態で、磁石38がリング12に近づけられることによりリング12が第2位置Pos2から第1位置Pos1へ移動し、一対の把持片111、112が前述の第2状態になり、把持鉗子1が生体組織Biから離脱する。このように、本実施の形態に係る鉗子回収具3を使用すれば、アウタシース37に対してインナシース34または支持ワイヤ32を移動させる操作を行うだけで、生体組織Biに固定された把持鉗子1を生体組織Biから離脱させることができる。従って、ユーザの生体組織Biに固定された把持鉗子1を生体組織Biから離脱させて回収する際の作業負担が軽減されるという利点がある。
【0038】
(実施の形態2)
本実施の形態に係る把持鉗子は、一対の把持片と、長手方向における一端部で一対の把持片のいずれか一方に連続し厚さ方向に互いに重ねて配置された一対の支持片と、一対の支持片それぞれの他端部を回転自在に枢支する第1軸部と、鉗子本体と、磁性体と、第1軸部と磁性体とを連結する連結部材と、を備える。ここで、一対の支持片は、長尺板状であり、厚さ方向に貫通し長手方向に沿って延在する長孔が穿設されている。鉗子本体は、筒状であり内側に一対の支持片および第1軸部が配置されるとともに、側壁における一対の支持片それぞれの厚さ方向に直交する短手方向において一対の支持片に対向する部分に筒軸方向に沿って延在するスリットが形成されている。また、鉗子本体は、内側において一対の支持片それぞれの長孔に挿通され側壁に固定された第2軸部を有する。一対の把持片は、第2軸部が長孔における第1軸部側の端部に配置されると、一対の把持片それぞれの一対の支持片に連続する側とは反対側の端部同士が予め設定された第1距離だけ離間した第1状態となる。一方、一対の把持片は、第2軸部が長孔における第1軸部側とは反対側の端部に配置されると、一対の把持片それぞれの一対の支持片に連続する側とは反対側の端部同士が第1距離よりも短い予め設定された第2距離だけ離間した第2状態となる。
【0039】
例えば
図11Aおよび
図11Bに示すように、本実施の形態に係る把持鉗子2001は、一対の把持片2111、2112と、一対のアーム片2113、2114と、筒状の鉗子本体2012と、磁性体14と、円柱状の第1軸部2015と、第1軸部2015に枢支された連結部材2013と、付勢部材2017と、を備える。一対の把持片2111、2112は、それぞれ、板状であり、厚さ方向において互いに対向するように配置されている。そして、一対の把持片2111、2112は、それぞれ、アーム片2113、2114に連続する側と反対側の他端部から互いに近づく方向へ突出し生体組織が係止される突出部2111a、2112aを有する。把持片2111、2112は、ステンレス鋼(例えばSUS304)、コバルト合金、エンジニアリングプラスチック(ピーク材:硬質プラスチック)等から形成されている。
【0040】
一対のアーム片2113、2114は、それぞれ、ステンレス鋼(例えばSUS304)、コバルト合金、エンジニアリングプラスチック(ピーク材:硬質プラスチック)等から把持片2111、2112と連続一体に形成されている。アーム片2113、2114は、+Y方向側の端部で把持片2111、2112に連続し、厚さ方向、即ち、Z軸方向に互いに重ねて配置されている。アーム片2113、2114は、長尺板状であり、厚さ方向に貫通しY軸方向に沿って延在する長孔2113a、2114aが穿設されている。長孔2113a、2114aは、それぞれ、Y軸方向と平行に延在する第1サブ長孔21131a、21141aと、+Y方向側の端で第1サブ長孔21131a、21141aに連通しY軸と交差する方向へ延在する第2サブ長孔21132a、21142aと、から構成される。そして、アーム片2113、2114は、第2サブ長孔21132aが+X方向側へ傾斜した方向へ延在し、第2サブ長孔21142aが-X方向側へ傾斜した方向へ延在するように重ねて配置されている。また、アーム片2113、2114それぞれの-Y方向側の端部には、平面視円形の貫通孔2113b、2114bが貫設されている。そして、アーム片2113、2114それぞれ-Y方向側の端部は、貫通孔2113b、2114bに挿通された第1軸部2015により回転自在に枢支されている。
【0041】
鉗子本体2012は、筒状であり、内側に一対のアーム片2113、2114および第1軸部2015が配置されている。鉗子本体2012は、円筒状の第1筒状部2121と、外径が第1筒状部2121の外径よりも長い有底円筒状であり底壁に開口部2122cが貫設された第2筒状部2122と、を有する。第1筒状部2121の側壁におけるX軸方向においてアーム片2113、2114に対向する部分には、第1筒状部2121の筒軸方向、即ち、Y軸方向に沿って延在するスリット2121aが形成されている。第2筒状部2122の-Y方向側の端部には、底壁における開口部2122cの外周部から側壁に亘って延在し後述する切欠部2122bが形成されている。切欠部2122bは、平面視円形の開口部21221bと、開口部21221bに連通するスリット21222bと、から構成されている。また、第1筒状部2121の底壁における開口部2122cの外周部2122aは、一対の把持片2111、2112が後述する第2状態にあるときに後述する連結部材2013の突起2132aを係止可能な係止部として機能する。更に、鉗子本体2012は、内側において一対のアーム片2113、2114それぞれの長孔2113a、2114aに挿通され第1筒状部2121の+Y方向側の端部の側壁に固定された第2軸部2123を有する。
【0042】
そして、
図12Aに示すように、鉗子本体2012の第2軸部2123が、アーム片2113、2114の長孔2113a、2114aにおける第1軸部2015側の端部、即ち、第2サブ長孔21132a、21142bの第1サブ長孔21131a、21141aに連通する側とは反対側の端部に配置されたとする。この場合、一対の把持片2111、2112それぞれのアーム片2113、2114に連続する側とは反対側の端部同士が、予め設定された第1距離L21だけ離間した第1状態となる。また、
図12Bに示すように、鉗子本体2012の第2軸部2123が、アーム片2113、2114それぞれの第1サブ長孔21131a、21141aの第2サブ長孔21132b、21142aに連通する側の端部に配置されたとする。この場合、一対の把持片2111、2112それぞれのアーム片2113、2114に連続する側とは反対側の端部同士が、第1距離L21よりも短い予め設定された第2距離L22だけ離間した第2状態となる。更に、
図12Cに示すように、鉗子本体2012の第2軸部2123が、アーム片2113、2114の長孔2113a、2114aにおける第1軸部2015側とは反対側の端部、即ち、第1サブ長孔21131a、21141aの第2サブ長孔21132b、21142aに連通する側とは反対側の端部に配置されたとする。この場合、一対の把持片2111、2112それぞれのアーム片2113、2114に連続する側とは反対側の端部同士は、第2距離L22だけ離間した第2状態を維持する。
【0043】
図11Aに戻って、磁性体14は、球状の磁性体であり、その中心を通る断面円形の貫通孔14aが設けられている。連結部材2013は、ステンレス鋼(例えばSUS304)、コバルト合金、エンジニアリングプラスチック(ピーク材:硬質プラスチック)等から形成されている。連結部材2013は、板状であり第1軸部2015に枢支される支持片2131と、2つの脚片2132と、磁性体14が固定される固定片2133と、を有する。支持片2131は、その厚さ方向に貫通する平面視円形の貫通孔2131aが設けられており、貫通孔2131aに挿通された第1軸部2015により枢支されている。2つの脚片2132は、それぞれ、長尺であり、長手方向における一端部が支持片2131に連続し、長手方向における他端部が固定片2133に連続している。2つの脚片2132は、可撓性を有し、互いに近づく方向へ弾性変形可能となっている。また、2つの脚片2132は、それぞれ、短手方向に沿って互いに離れる方向へ突出する第1突起である突起2132aを有する。
【0044】
付勢部材2017は、鉗子本体2012の内側に配置され、第1軸部2015を鉗子本体2012の第2軸部2123へ近づく方向へ付勢する。付勢部材2017は、板状であり第1軸部2015に枢支される支持片2171と、バネ片2172と、を有する。支持片2171は、その厚さ方向に貫通する平面視円形の貫通孔2171aが設けられており、貫通孔2171aに挿通された第1軸部2015により枢支されている。付勢部材2017は、
図11Bに示すように、アーム片2113の-Z方向側およびアーム片2114の+Z方向側それぞれに配置されている。
【0045】
次に、本実施の形態に係る把持鉗子を体腔内の生体組織に固定するための鉗子供給具について説明する。
図13Aに示すように、本実施の形態の鉗子供給具2002は、把持鉗子2001の磁性体14を挟持するボールクランプ2028と、ボールクランプ2028と連続一体に形成された支持ワイヤ2022と、シース2024と、を備える。また、鉗子供給具2002は、シース2024に対して支持ワイヤ2022を相対的に移動させるための操作ユニット(図示せず)を備える。ボールクランプ2028は、例えばSUS301-CSPその他弾性を有する材料から形成され、
図13Bおよび
図13Cに示すように、把持鉗子2001の磁性体14を挟持する一対の挟持片2282と、一対の挟持片2282それぞれの一端部を支持する支持片2281と、を有する磁性体保持部である。支持片2281は、一対の挟持片2282から磁性体14が離脱可能な開放状態となるように一対の挟持片2282を付勢する。また、一対の挟持片2282は、互いに対向する側の端縁に円弧状の切欠部2282aが設けられている。
【0046】
支持ワイヤ2022は、例えばSUS304の単線ワイヤまたはこの撚線であるワイヤロープからボールクランプ2028と連続一体に形成されている。シース2024は、長尺の円筒状であり、内側にボールクランプ2028および支持ワイヤ2022が挿通される。シース2024は、ステンレス鋼(例えばSUS304)、コバルト合金、エンジニアリングプラスチック(ピーク材:硬質プラスチック)等から形成されている。シース2024は、ボールクランプ2028が把持鉗子2001の磁性体14を挟持した状態で、把持鉗子2001の一部とボールクランプ2028を収納可能な大きさに設定されている。また、シース2024の外径は、把持鉗子2001の鉗子本体の第2筒状部2122の外径よりも小さい。これにより、把持鉗子2001の鉗子本体2012のシース2024の内側への進入が規制されている。また、シース2024の先端部には、シース2024の先端部から延出する延出部2242が設けられている。延出部2242は、鉗子本体2012の切欠部2122bに係合する係合部であり、平面視円形の第1部位22421と、第1部位22421とシース2024の先端部とに接続された長尺の第2部位22422と、を有する。また、第1部位22421の中央部には、平面視円形の開口部2242aが設けられている。更に、延出部2242には、開口部2242aに連通し、シース2024の先端部にまで延在するスリット2242bが設けられている。このように、延出部2242に開口部2242aとスリット2242bとが設けられていることにより、延出部2242がその幅方向に収縮するように変形可能となっている。
【0047】
次に、本実施の形態に係る鉗子供給具2002を使用して把持鉗子2001を体腔内の生体組織に固定する方法について説明する。まず、
図14Aに示すように、把持鉗子2001の連結部材2013の突起2132aが鉗子本体2012の内側に配置され且つボールクランプ2028により磁性体14が挟持された状態で、シース2024の延出部2242を把持鉗子2001の切欠部2122bに係合させる。このとき、把持鉗子2001の鉗子本体2012の-Y方向側の端部がシース2024の先端部に当接した状態でシース2024の先端部に配置される。この状態で、矢印AR21に示すように、シース2024の先端部を体腔内の生体組織Biへ近づける。
【0048】
次に、
図14Bに示すように、シース2024の先端部を生体組織Biにある程度近づけた状態で、磁性体14を挟持したボールクランプ2028をシース2024の先端部側、即ち、+Y方向側へ突き出す。このとき、把持鉗子2001の第2軸部2123が長孔2113a、2114aにおける第1軸部2015側の端部へ移動する。そして、把持鉗子2001の一対の把持片2111、2112のアーム片2113、2114に連続する側と反対側の端部同士が第1距離L21だけ離間した第1状態となる。この状態で、シース2024の先端部を更に生体組織Biに近づけて一対の把持片2111、2112それぞれの突出部2111a、2112aを生体組織Biに当接させることにより、突出部2111a、2112aを生体組織Biに係止させる。このとき、一対の把持片2111、2112の間に生体組織Biが配置される。
【0049】
続いて、
図14Cに示すように、ボールクランプ2028をシース2024の先端部側とは反対側、即ち、-Y方向側へ移動させる。このとき、把持鉗子2001の第2軸部2123が、長孔2113a、2114aにおける第1軸部2015側とは反対側の端部に向かって移動する。そして、一対の把持片2111、2112の他端部同士が、第2距離L22だけ離間した第2状態となり、一対の把持片2111、2112が生体組織Biを把持した状態となる。
【0050】
その後、
図15Aに示すように、ボールクランプ2028を-Y方向側へ更に移動させる。このとき、把持鉗子2001の連結部材2013の2つの脚片2132が互いに近づく方向へ弾性変形しそれらの突起2132aが鉗子本体2012の底壁の外周部2122aを乗り越えて鉗子本体2012の外側へ移動する。このとき、付勢部材2017のバネ片2172が鉗子本体2012の底壁の内側に当接し第1軸部2015を第2軸部2123へ近づく方向へ付勢した状態となる。そして、連結部材2013の突起2132aが、それぞれ、付勢部材2017の付勢力により鉗子本体の底壁の外周部2122aに係止された状態となる。
【0051】
次に、
図15Bに示すように、支持ワイヤ2022をシース2024に対して+Y方向へ相対的に移動させることにより、ボールクランプ2028をシース2024の外側へ突き出す。このとき、ボールクランプ2028の支持片2281の付勢力により、一対の挟持片2282が開放状態となる。そして、
図15Cに示すように、把持鉗子2001の磁性体14を、ボールクランプ2028の一対の挟持片2282から離脱させる。以上説明したように、鉗子供給具2002を使用した一連の操作を行うことにより、把持鉗子2001を体腔内の生体組織Biに固定することができる。
【0052】
次に、体腔内の生体組織に固定された本実施の形態に係る把持鉗子を回収するために使用される鉗子回収具について説明する。
図16Aに示すように、本実施の形態の鉗子回収具2003は、把持鉗子2001の磁性体14を吸着保持する磁石2038と、支持ワイヤ2032と、シース2034と、を備える。また、鉗子回収具2003は、シース2034に対して支持ワイヤ2032を相対的に移動させるための操作ユニット(図示せず)を備える。磁石2038は、例えば円柱状の永久磁石である。支持ワイヤ2032は、先端部に磁石38が固定されている。シース2034は、長尺の円筒状であり、内側に磁石2038および支持ワイヤ2032が挿通される。シース2034における少なくとも先端部は、伸縮性を有する材料から形成されている。そして、シース2034の先端部は、筒軸方向に直交する断面の面積が縮小、即ち、先端部が縮径するように付勢されている。また、
図16Bに示すように、支持ワイヤ2032の先端部がシース2034の先端部から突き出された状態では、シース2034の先端部が拡張して支持ワイヤ2032の側方に当接する。シース2034は、把持鉗子2001の磁性体14が磁石2038に吸着した状態で、把持鉗子2001の連結部材2013の一部、磁性体14および磁石2038を収納可能な大きさに設定されている。
【0053】
次に、本実施の形態に係る鉗子回収具2003を使用して体腔内の生体組織に固定された把持鉗子2001を回収する方法について説明する。まず、
図17Aに示すように、支持ワイヤ2032の先端部に固定された磁石2038をシース2034の外側に突き出した状態で、矢印AR22に示すように、磁石2038を生体組織Biに固定された把持鉗子2001の磁性体14に近づける。そして、
図17Bに示すように、鉗子回収具2003の磁石2038に把持鉗子2001の磁性体14を吸着させる。
【0054】
次に、
図17Cに示すように、把持鉗子2001の磁性体14が磁石2038に吸着された状態で、鉗子回収具2003のシース2034を支持ワイヤ2032に対して+Y方向側へ移動させることにより、シース2034の先端部を連結部材2013の突起2132aに近づける。そして、
図18Aに示すように、シース2034の先端部を連結部材2013の頂部へ乗り上げさせる。このとき、連結部材2013の2つの脚片2132が互いに近づく方向へ撓む。この状態で、鉗子回収具2003の支持ワイヤ2032を+Y方向側へ移動させることにより、連結部材2013の突起2132aが鉗子本体2012の内側へ移動する。
【0055】
続いて、鉗子回収具2003の支持ワイヤ2032に対してシース2034を-Y方向へ移動させると、連結部材13が復元力により元の状態に戻り、
図18Bに示すように、突起2132aが鉗子本体2012の外周部2122aに係合した状態となる。このとき、把持鉗子2001の第2軸部2123が、アーム片2113、2114の長孔2113a、2114a内を第1軸部2015側へ移動する。
【0056】
その後、
図18Cに示すように、支持ワイヤ2032およびシース2034を共に+Y方向へ移動させることにより、磁性体14が吸着された磁石2038を鉗子本体2012に近づける。このとき、把持鉗子2001の第2軸部2123がアーム片2113、2114の長孔2113a、2114aにおける第1軸部2015側の端部へ移動し、一対の把持片2111、2112が前述の第1状態となる。そして、一対の把持片2111、2112の突出部2111a、2112aが、生体組織Biから離脱する。そして、把持鉗子2001の磁性体14を磁石2038に吸着させた状態で、把持鉗子2001を体腔外へ取り出す。以上説明したように、鉗子回収具2003を使用した一連の操作を行うことにより、生体組織Biに固定された把持鉗子2001を回収することができる。
【0057】
以上説明したように、本実施の形態に係る把持鉗子2001では、一対の把持片2111、2112の間に生体組織Biを配置した状態で、鉗子本体2012の第2軸部2123がアーム片2113、2114の長孔2113a、2114aにおける第1軸部2015側とは反対側の端部に配置されると、生体組織Biが一対の把持片2111、2112で挟持され、把持鉗子2001が生体組織Biに固定される。そして、把持鉗子2001を生体組織Biから離脱させる場合、磁性体14を鉗子本体2012に近づく方向へ移動させて、鉗子本体2012の第2軸部2123がアーム片2113、2114の長孔2113a、2114aにおける第1軸部2015側の端部に配置するだけで、把持鉗子2001を生体組織Biから離脱させることができる。このように、把持鉗子2001は、磁性体14を鉗子本体2012に近づく方向へ押すだけで、容易に生体組織Biから離脱させることができるので、生体組織Biへの脱着を容易に行うことができるという利点がある。
【0058】
また、本実施の形態に係る連結部材2013は、長尺であり長手方向における一端部が支持片2131に連続し長手方向における他端部が固定片2133に連続する可撓性を有する2つの脚片2132を有する。そして、2つの脚片2132は、それぞれ、2つの脚片2132それぞれ互いに遠ざかる方向へ突出する突起2132aを有する。また、鉗子本体2012の底壁の外周部2122aは、一対の把持片2111、2112が前述の第2状態にあるときに突起2132aを係止可能となっている。これにより、把持鉗子2001が第2状態にあるときにその状態を安定的に維持させることができるので、把持鉗子2001が生体組織Biに固定された状態を安定して維持させることができる。
【0059】
更に、本実施の形態に係る付勢部材2017は、連結部材2013の突起2132aが鉗子本体2012の底壁の外周部2122aに係止された状態で、第1軸部2015を鉗子本体2012の第2軸部2123へ近づく方向へ付勢する。これにより、連結部材2013の突起2132aが鉗子本体2012の底壁の外周部2122aに係止された状態を安定的に維持することができる。
【0060】
また、本実施の形態に係る鉗子供給具2002において、シース2024の延出部2242が鉗子本体2012の切欠部2122bを係合し、一対の把持片2111、2112の間に生体組織Biが配置されるとともに、ボールクランプ2028がシース2024の内側に配置されているとする。この状態で、ボールクランプ2028が-Y方向へ移動すると鉗子本体2012の第2軸部2123がアーム片2113、2114の長孔2113a、2114aにおける第1軸部2015側とは反対側の端部に配置され一対の把持片2111、2112が生体組織Biを把持する。また、シース2024の延出部2242による鉗子本体2012の切欠部2122bの係合状態が解除され、ボールクランプ2028がシース2024の外側へ突き出されると、一対の把持片2111、2112が開放状態となり、把持鉗子2001が一対の把持片2111、2112から離脱する。このように、本実施の形態に係る鉗子供給具2002を使用すれば、シース2024または支持ワイヤ2022を移動させる操作を行うだけで、把持鉗子2001を生体組織Biに固定することができる。従って、ユーザの把持鉗子2001を生体組織Biへ固定する際の作業負担が軽減されるという利点がある。
【0061】
更に、本実施の形態に係る鉗子回収具2003は、磁性体14が磁石2038に吸着し且つシース2034の先端部が鉗子本体2012に当接した状態で、支持ワイヤ2032の先端部が把持鉗子2001の第1軸部2015側へ押し込まれることにより鉗子本体2012の第2軸部2123がアーム片2113、2114の長孔2113a、2114aにおける第1軸部2015側の端部に配置される。そして、一対の把持片2111、2112が、前述の第2状態になり、把持鉗子2001が生体組織Biから離脱する。このように、本実施の形態に係る鉗子回収具2003を使用すれば、シース2034または支持ワイヤ2032を移動させる操作を行うだけで、生体組織Biに固定された把持鉗子2001を生体組織Biから離脱させることができる。従って、ユーザの生体組織Biに固定された把持鉗子2001を生体組織Biから離脱させて回収する際の作業負担が軽減されるという利点がある。
【0062】
(実施の形態3)
本実施の形態に係る把持鉗子は、実施の形態2と同様に、一対の把持片と、長手方向における一端部で一対の把持片のいずれか一方に連続し厚さ方向に互いに重ねて配置された一対の支持片と、一対の支持片それぞれの他端部を回転自在に枢支する第1軸部と、鉗子本体と、磁性体と、第1軸部と磁性体とを連結する連結部材と、を備える。また、鉗子本体は、内側において一対の支持片それぞれの長孔に挿通され側壁に固定された第2軸部を有する。例えば
図19Aおよび
図19Bに示すように、本実施の形態に係る把持鉗子3001は、一対の把持片2111、2112と、一対のアーム片2113、2114と、筒状の鉗子本体3012と、磁性体14と、円柱状の第1軸部3015と、第1軸部3015に枢支された連結部材3013と、コイルばね3172と、を備える。なお、
図19Aおよび
図19Bにおいて、実施の形態2と同様の構成については、
図11Aおよび
図11Bと同一の符号を付している。
【0063】
アーム片2113、2114は、+Y方向側の端部で把持片2111、2112に連続し、厚さ方向、即ち、Z軸方向に互いに重ねて配置されている。アーム片2113、2114は、長尺板状であり、厚さ方向に貫通しY軸方向に沿って延在する長孔2113a、2114aが穿設されている。長孔2113a、2114aは、それぞれ、Y軸方向と平行に延在する第1サブ長孔21131a、21141aと、+Y方向側の端で第1サブ長孔21131a、21141aに連通しY軸と交差する方向へ延在する第2サブ長孔21132a、21142aと、から構成される。また、アーム片2113、2114それぞれ-Y方向側の端部は、貫通孔2113b、2114bに挿通された第1軸部3015により回転自在に枢支されている。
【0064】
鉗子本体3012は、筒状であり、内側に一対のアーム片2113、2114および第1軸部3015が配置されている。鉗子本体3012は、有底円筒状であり底壁に開口部3121cが貫設された筒状部3121を有する。筒状部3121の側壁におけるX軸方向においてアーム片2113、2114に対向する部分には、筒状部3121の筒軸方向、即ち、Y軸方向に沿って延在するスリット3121aが形成されている。筒状部3121の-Y方向側の端部には、底壁における開口部3121cの外周部から側壁に亘って延在し後述する切欠部3121bが形成されている。また、筒状部3121の側壁には、一対の把持片2111、2112が後述する第2状態にあるときに後述する連結部材3013の突起3132aが嵌入される細長のスリット3121dが形成されている。このスリット3121dは、一対の把持片2111、2112が第2状態、即ち、閉状態にあるときに後述の連結部材3013の突起3132aを係止可能な係止部として機能する。更に、鉗子本体3012は、内側において一対のアーム片2113、2114それぞれの長孔2113a、2114aに挿通され第1筒状部2121の+Y方向側の端部の側壁に固定された第2軸部3123を有する。
【0065】
そして、
図20Aに示すように、鉗子本体3012の第2軸部3123が、アーム片2113、2114の長孔2113a、2114aにおける第1軸部3015側の端部、即ち、第2サブ長孔21132a、21142bの第1サブ長孔21131a、21141aに連通する側とは反対側の端部に配置されたとする。この場合、一対の把持片2111、2112それぞれのアーム片2113、2114に連続する側とは反対側の端部同士が、予め設定された第1距離L31だけ離間した第1状態となる。また、
図20Bに示すように、鉗子本体3012の第2軸部3123が、アーム片2113、2114それぞれの第1サブ長孔21131a、21141aの第2サブ長孔21132b、21142aに連通する側の端部に配置されたとする。この場合、一対の把持片2111、2112それぞれのアーム片2113、2114に連続する側とは反対側の端部同士が、第1距離L31よりも短い予め設定された第2距離L32だけ離間した第2状態となる。更に、
図20Cに示すように、鉗子本体3012の第2軸部3123が、アーム片2113、2114の長孔2113a、2114aにおける第1軸部3015側とは反対側の端部、即ち、第1サブ長孔21131a、21141aの第2サブ長孔21132b、21142aに連通する側とは反対側の端部に配置されたとする。この場合、一対の把持片2111、2112それぞれのアーム片2113、2114に連続する側とは反対側の端部同士は、第2距離L32だけ離間した第2状態を維持する。
【0066】
図19Aに戻って、磁性体14は、球状の磁性体であり、その中心を通る断面円形の貫通孔14aが設けられている。連結部材3013は、板状であり第1軸部3015に枢支される支持片3131と、2つの脚片3132と、磁性体14が固定される固定片3133と、を有する。支持片3131は、その厚さ方向に貫通する平面視円形の貫通孔3131aが設けられており、貫通孔3131aに挿通された第1軸部3015により枢支されている。2つの脚片3132は、それぞれ、長尺であり、長手方向における一端部が支持片3131に連続し、長手方向における他端部が固定片3133に連続している。2つの脚片3132は、可撓性を有し、互いに近づく方向へ弾性変形可能となっている。また、2つの脚片3132は、それぞれ、長手方向における2箇所から短手方向に沿って互いに離れる方向へ突出する2対の突起3132a、3132bを有する。一対の突起3132aは、脚片3132それぞれの短手方向に沿って互いに遠ざかる方向へ突出する第1突起である。一対の突起3132bは、突起3132aよりも磁性体14側において脚片3132それぞれの短手方向に沿って互いに遠ざかる方向へ突出する第2突起である。この突起3132bは、一対の把持片2111、2112が第2状態、即ち、閉状態にあるときに鉗子本体3012の外側に配置される。
【0067】
コイルばね3172は、鉗子本体3012の内側に配置され、第1軸部3015を鉗子本体3012の第2軸部3123へ近づく方向へ付勢する付勢部材である。コイルばね3172は、長尺であり第1軸部3015に枢支される支持片3171に巻回されるように配置されている。支持片3171は、長手方向の一端部に平面視円形の貫通孔(図示せず)が設けられており、この貫通孔に挿通された第1軸部3015により枢支されている。
【0068】
次に、本実施の形態に係る把持鉗子を体腔内の生体組織に固定するための鉗子供給具について説明する。
図21Aに示すように、本実施の形態の鉗子供給具3002は、把持鉗子3001の磁性体14を挟持するボールクランプ3028と、ボールクランプ3028に連結されたインナシース3027と、インナシースの内側に挿通された支持ワイヤ3022と、押圧部材3026と、インナシース3027の外側に配置されたアウタシース3024と、を備える。また、鉗子供給具3002は、アウタシース3024に対してインナシース3027または支持ワイヤ3022を相対的に移動させるための操作ユニット(図示せず)を備える。ボールクランプ3028は、
図21Bおよび
図21Cに示すように、断面半円状であり把持鉗子3001の磁性体14を挟持する一対の挟持部3282と、円筒状であり一対の挟持部3282それぞれの一端部を支持する支持部3281と、を有する磁性体保持部である。支持部3281と一対の挟持部3282との間には、挟持部3282が支持部3281側の一端部を支点として他端部が旋回可能となるように切欠部3283が形成されている。また、一対の挟持部3282は、それぞれ、細長であり挟持部3282の長手方向に延在し後述の押圧部材3026に設けられた突起3263が挿通されるスリット3282bが穿設されている。また、支持部3281における一対の挟持部3282の並び方向における両側には、それぞれ、細長であり筒軸方向に延在し後述の押圧部材3026に設けられたピン3262が挿通されるスリット3282aが穿設されている。
【0069】
支持ワイヤ3022は、インナシース3027の内側に挿通されている。押圧部材3026は、円柱状であり中心軸方向における基端側が支持ワイヤ3022の先端部に固定されている。押圧部材3026の先端部には、磁性体14を押圧する押圧部3261が設けられ、押圧部材3026の後端部には、押圧部材3026の移動を案内するための円柱状のピン3262が設けられている。ピン3262の両端部は、ボールクランプ3028のスリット3282a内に嵌入された状態でスリット3282aに沿って移動自在となっている。また、押圧部材3026の側壁の2箇所には、それぞれ、その中心軸方向に直交する方向へ突出する突起3263が配設されている。ここで、
図21Bに示すように、押圧部材3026がボールクランプ3028の内側に配置され且つ一対の挟持部3282が閉じた状態にあるとき、2つの突起3263は、それぞれ、ボールクランプ3028のスリット3282bに嵌入された状態となっている。そして、押圧部材3026が、ボールクランプ3028に対して
図21Cの矢印AR30に示す方向へ相対的に移動すると、突起3263が、スリット3282bから離脱して一対の挟持部3282の先端側へ移動する。このとき、2つの突起3263の先端部が、それぞれ、挟持部3282の内壁に当接して挟持部3282が押圧部材3026から離れる方向へ押し上げる。これにより、
図21Cに示すように、一対の挟持部3282が開き且つ押圧部材3026の押圧部3261が一対の挟持部3282の外側に突出した状態となる。
【0070】
アウタシース3024は、長尺の円筒状であり、内側にインナシース3027、押圧部材3026および支持ワイヤ3022が挿通される。アウタシース3024の先端部には、アウタシース3024の先端部から延出する2つの延出部3242が設けられている。2つの延出部3242は、それぞれ、鉗子本体3012の切欠部3121bに係合する係合部であり、その中央部には、長尺の開口部3242aが設けられている。更に、アウタシース3024の先端部における延出部3242の両側には、アウタシース3024の長手方向に延在する切欠部3242bが設けられている。このように、延出部3242に開口部3242aが設けられ且つアウタシース3024の先端部に切欠部3242bが設けられていることにより、延出部3242がその幅方向に収縮するように変形可能となっている。また、アウタシース3024の先端部における2つの延出部3242の対向方向と直交する方向で対向する2箇所には、
図21Aに示すような、アウタシース3024の先端部からその長手方向に延在するスリット3024aが設けられている。このスリット3024aの幅は、把持鉗子3001の連結部材3013の突起3132bが挿入可能な幅に設定されている。更に、アウタシース3024は、ボールクランプ3028が把持鉗子3001の磁性体14を挟持した状態で、把持鉗子3001の一部およびボールクランプ3028を収納可能な大きさに設定されている。
【0071】
次に、本実施の形態に係る鉗子供給具3002を使用して把持鉗子3001を体腔内の生体組織に固定する方法について説明する。まず、
図22Aに示すように、把持鉗子3001の連結部材3013の突起3132aが鉗子本体2012のスリット3121dに嵌入され且つボールクランプ3028により磁性体14が挟持された状態で、アウタシース3024の延出部3242を把持鉗子3001の切欠部3121cに係合させる。このとき、把持鉗子3001の連結部材3013の突起3132bがアウタシース3024の先端部に当接した状態でアウタシース3024の先端部に配置される。また、把持鉗子3001の連結部材3013の突起3132bは、
図21Aに示すアウタシース3024のスリット3024aの内側に嵌入された状態となっている。この状態で、
図22Aの矢印AR21に示すように、アウタシース3024の先端部を体腔内の生体組織Biへ近づける。
【0072】
次に、
図22Bに示すように、アウタシース3024の先端部を生体組織Biにある程度近づけた状態で、磁性体14を挟持したボールクランプ3028をアウタシース3024の先端部側、即ち、+Y方向側へ突き出す。このとき、把持鉗子3001の第2軸部3123が長孔2113a、2114aにおける第1軸部3015側の端部へ移動する。そして、把持鉗子3001の一対の把持片2111、2112のアーム片2113、2114に連続する側と反対側の端部同士が第1距離L31だけ離間した第1状態となる。この状態で、アウタシース3024の先端部を更に生体組織Biに近づけて一対の把持片2111、2112それぞれの突出部2111a、2112aを生体組織Biに当接させることにより、突出部2111a、2112aを生体組織Biに係止させる。このとき、一対の把持片2111、2112の間に生体組織Biが配置される。
【0073】
続いて、ボールクランプ3028をアウタシース3024の先端部側とは反対側、即ち、-Y方向側へ移動させる。このとき、把持鉗子3001の第2軸部3123が、長孔2113a、2114aにおける第1軸部3015側とは反対側の端部に向かって移動する。このとき、把持鉗子3001の連結部材3013の2つの脚片3132が互いに近づく方向へ弾性変形しそれらの突起3132aが鉗子本体3012の底壁3121eの外周部を乗り越えて鉗子本体3012の外側へ移動する。このとき、コイルばね3172が第1軸部3015を第2軸部3123へ近づく方向へ付勢した状態となる。そして、連結部材3013の突起3132aが、それぞれ、コイルばね3172の付勢力により鉗子本体3012のスリット3121dの内側に係止された状態となる。そして、
図22Cに示すように、一対の把持片2111、2112の他端部同士が、第2距離L32だけ離間した第2状態となり、一対の把持片2111、2112が生体組織Biを把持した状態で維持される。
【0074】
次に、
図23Aに示すように、支持ワイヤ3022およびインナシース3027をアウタシース3024に対して+Y方向へ相対的に移動させることにより、ボールクランプ3028をアウタシース3024の外側へ突き出す。このとき、把持鉗子3001の連結部材3013の突起3132bは、
図21Aに示すアウタシース3024のスリット3024aの内側から離脱する。続いて、
図23Bに示すように、支持ワイヤ3022をインナシース3027に対して+Y方向へ相対的に移動させることにより、押圧部材3026の突起3263によりボールクランプ3028を開いた状態にすると同時に、押圧部材3026の押圧部3261により磁性体14をボールクランプ3028の外側へ押し出す。以上説明したように、鉗子供給具3002を使用した一連の操作を行うことにより、把持鉗子3001を体腔内の生体組織Biに固定することができる。
【0075】
次に、体腔内の生体組織に固定された本実施の形態に係る把持鉗子を回収するために使用される鉗子回収具について説明する。
図24Aに示すように、本実施の形態の鉗子回収具3003は、鉗子供給具3002と同様に、把持鉗子3001の磁性体14を挟持するボールクランプ3038と、ボールクランプ3038に連結されたインナシース3037と、インナシースの内側に挿通された支持ワイヤ3032と、を備える。また、鉗子回収具3003は、先端部で磁性体14を吸着する吸着部材3036と、インナシース3037の外側に配置されたアウタシース3034と、を備える。また、鉗子回収具3003は、鉗子供給具3002と同様に、アウタシース3034に対してインナシース3037または支持ワイヤ3032を相対的に移動させるための操作ユニット(図示せず)を備える。ボールクランプ3038は、鉗子供給具3002のボールクランプ3028と同様に、
図24Bおよび
図24Cに示すように、一対の挟持部3382と、一対の挟持部3382それぞれの一端部を支持する支持部3381と、を有する。また、支持部3381と一対の挟持部3382との間には切欠部3383が形成されている。また、一対の挟持部3382は、それぞれ、後述の吸着部材3036に設けられた突起3363が挿通されるスリット3382bが穿設されている。また、支持部3381には、後述の吸着部材3036に設けられたピン3362が挿通されるスリット3382aが穿設されている。
【0076】
吸着部材3036は、円柱状であり中心軸方向における基端側が支持ワイヤ3032の先端部に固定されている。吸着部材3036の先端部には、磁性体14を吸着するための磁石3361が設けられている。また、吸着部材3036の後端部には、吸着部材3036の移動を案内するための円柱状のピン3362が設けられている。ピン3362の両端部は、ボールクランプ3028のスリット3282a内に嵌入されている。また、吸着部材3036の側壁の2箇所には、それぞれ、その中心軸方向に直交する方向へ突出する突起3363が配設されている。ここで、
図24Bに示すように、吸着部材3036がボールクランプ3038の内側に配置され且つ一対の挟持部3382が閉じた状態にあるとき、2つの突起3363は、それぞれ、ボールクランプ3038のスリット3382bに嵌入された状態となっている。そして、吸着部材3036の突起3363が、スリット3382bから離脱して一対の挟持部3382の先端側へ移動すると、2つの突起3363が挟持部3282が吸着部材3036から離れる方向へ押し上げる。これにより、
図24Cに示すように、一対の挟持部3382が開き且つ吸着部材3036の磁石3361が一対の挟持部3382の外側に突出した状態となる。
【0077】
アウタシース3034は、長尺の円筒状であり、内側にインナシース3037、吸着部材3036および支持ワイヤ3022が挿通される。このアウタシース3024は、ボールクランプ3038を内側に収容できる大きさに設定されている。また、アウタシース3034の先端部の開口径は、ボールクランプ3028が把持鉗子3001の磁性体14を挟持した状態で、把持鉗子3001の連結部材3013の突起3132b部分が内側へ侵入できない長さに設定されている。
【0078】
次に、本実施の形態に係る鉗子回収具3003を使用して体腔内の生体組織に固定された把持鉗子3001を回収する方法について説明する。まず、
図25Aに示すように、支持ワイヤ3032の先端部に固定された吸着部材3036の磁石3361をボールクランプ3038の外側に突き出した状態で、矢印AR32に示すように、磁石3361を生体組織Biに固定された把持鉗子3001の磁性体14に近づける。そして、
図25Bに示すように、鉗子回収具3003の磁石3361に把持鉗子3001の磁性体14を吸着させる。
【0079】
次に、把持鉗子3001の磁性体14が磁石3361に吸着された状態で、鉗子回収具3003の支持ワイヤ3032をインナシース3037に対して-Y方向へ移動させることにより、吸着部材3036の磁石3361に吸着された磁性体14をボールクランプ3038の内側へ移動させる。このとき、
図25Cに示すように、ボールクランプ3038の一対の挟持部3382が閉じて磁性体14がボールクランプ3038に保持された状態となる。続いて、アウタシース3034を支持ワイヤ3032に対して+Y方向側へ移動させることにより、アウタシース3034の先端部を把持鉗子3001の連結部材3013の突起3132bに近づける。そして、
図26Aに示すようにアウタシース3034の先端部の連結部材3013の突起3132bに当接させる。そして、アウタシース3034の先端部を連結部材3013の2つの突起3132bに押し付けることにより、連結部材3013を2つの突起3132bが互いに近づくように撓ませる。この状態で、アウタシース3034を生体組織Bi側へ移動させることにより、連結部材3013の突起3132aが鉗子本体3012の内側へ移動する。その後、鉗子回収具3003の支持ワイヤ3032に対してアウタシース3034を-Y方向へ移動させると、連結部材3013が復元力により元の状態に戻り、突起3132aが鉗子本体3012のスリット3121dに嵌入された状態となる。このとき、把持鉗子3001の第2軸部3123が、アーム片2113、2114の長孔2113a、2114a内を第1軸部3015側へ移動し、一対の把持片2111、2112が前述の第1状態となる。そして、
図26Bに示すように、一対の把持片2111、2112の突出部2111a、2112aを生体組織Biから離脱させて、把持鉗子3001を体腔外へ取り出す。以上説明したように、鉗子回収具3003を使用した一連の操作を行うことにより、生体組織Biに固定された把持鉗子3001を回収することができる。
【0080】
以上説明したように、本実施の形態に係る把持鉗子3001では、一対の把持片2111、2112の間に生体組織Biを配置した状態で、鉗子本体3012の第2軸部2123がアーム片2113、2114の長孔2113a、2114aにおける第1軸部2015側とは反対側の端部に配置されると、生体組織Biが一対の把持片2111、2112で挟持され、把持鉗子2001が生体組織Biに固定される。そして、把持鉗子3001を生体組織Biから離脱させる場合、磁性体14を鉗子本体3012に近づく方向へ移動させて、鉗子本体3012の第2軸部3123がアーム片2113、2114の長孔2113a、2114aにおける第1軸部3015側の端部に配置するだけで、把持鉗子3001を生体組織Biから離脱させることができる。このように、把持鉗子3001は、磁性体14を鉗子本体3012に近づく方向へ押すだけで、容易に生体組織Biから離脱させることができるので、生体組織Biへの脱着を容易に行うことができるという利点がある。
【0081】
また、本実施の形態に係る鉗子回収具3003は、把持鉗子3001の磁性体14をボールクランプ3038により保持した状態で体腔外へ取り出すことができる。従って、把持鉗子3001の搬送途中における把持鉗子3001の体腔内への落下の発生を抑制することができる。
【0082】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は前述の各実施の形態の構成に限定されるものではない。例えば実施の形態における把持鉗子1の接続部材19が、ヒンジまたはリンクバーを用いた構造を有するもの、或いは、その他のリング12の移動に伴い把持片111、112を開閉できる構造を有するものであってもよい。
【0083】
実施の形態1に係る鉗子供給具2において、アウタシースの内側におけるアウタシースの先端部を含む一部のみのアウタシースの筒軸方向に直交する断面の面積が、把持鉗子1のリング12の外鍔部122における筒軸方向に直交する断面の輪郭の面積よりも大きいものであってもよい。この場合、例えばアウタシースにおけるその先端部を含む一部以外の外径を小さくすることが可能となる。また、実施の形態に係る鉗子供給具2において、インナシース24におけるインナシースの先端部を含む一部のみが、内側にボールクランプ28により把持鉗子1の磁性体14が挟持された状態で、把持鉗子1の接続部材19、磁性体14、連結部材13およびボールクランプ28を収納可能な大きさに設定されているものであってもよい。この場合、例えばインナシースにおけるその先端部を含む一部以外の外径を小さくすることが可能となる。更に、実施の形態に係る鉗子供給具2において、インナシースの内側におけるインナシースの先端部を含む一部のインナシースの筒軸方向に直交する断面の面積のみが、把持鉗子1のリング12の外鍔部122における筒軸方向に直交する断面の輪郭の面積よりも小さいものであってもよい。
【0084】
また、実施の形態1に係る鉗子回収具3において、インナシースにおけるインナシースの先端部を含む一部のみが、把持鉗子1の磁性体14が支持ワイヤ32の先端部に固定された磁石38に吸着された状態で、把持鉗子1の接続部材19と磁性体14と連結部材13と磁石30とを収納可能な大きさに設定されているものであってもよい。
【0085】
各実施の形態では、把持鉗子1の磁性体14が球状である例について説明したが、磁性体14の形状はこれに限定されるものではなく、例えば、立方体状、直方体状、円柱状或いはその他の形状であってもよい。この場合、鉗子供給具2、2002のボールクランプ28、2028の切欠部282a、2282aの形状は、磁性体14の形状に応じた形状とするのが好ましい。例えば、磁性体14が立方体状である場合、切欠部282a、2282aの形状を矩形状にすればよい。
【0086】
本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、この発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。すなわち、本発明の範囲は、実施の形態ではなく、請求の範囲によって示される。そして、請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、この発明の範囲内とみなされる。
【0087】
本出願は、2020年2月25日に出願された日本国特許出願特願2020-029138号に基づく。本明細書中に日本国特許出願特願2020-029138号の明細書、特許請求の範囲および図面全体を参照として取り込むものとする。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明は、内視鏡を使用した体腔内の生体組織の手術を行う際に生体組織の病変部分を把持する把持鉗子として好適である。
【符号の説明】
【0089】
1,2001,3001:把持鉗子、2,2002,3002:鉗子供給具、3,2003,3003:鉗子回収具、12:リング、13,2013,3013:連結部材、14:磁性体、14a,2113b,2114b,2131a,2171a,3131a:貫通孔、19:接続部材、21,31:ユニット本体、22,32,2022,2032,3022,3032:支持ワイヤ、23,25,33,35:操作部、24,34,3027,3037:インナシース、26,36:フレキシブルチューブ、27,37,3024,3034:アウタシース、28,3028,3038:ボールクランプ、29,39:操作ユニット、38,3361:磁石、111,112,2111,2112:把持片、111a,112a:係止片、113,114,2172:バネ片、115:接続片、121:リング本体、122:外鍔部、131:本体部、132, 2111a,2111b:突出部、211,311:操作部支持部、212,232,252,312,332,352:把手、213,313,372,2242,3242:延出部、213a,313a:ガイド、231,251,331,351:操作部本体、233,333:固定部、281,2131,2171,3171:支持片、282,2282:挟持片、282a,2282a,3121b,3283:切欠部、371:シース本体、372a,2132a,3132a,3132b:突起、372b:第1傾斜部、372c:第2傾斜部、2012,3012:鉗子本体、2015,3015:第1軸部、2017:付勢部材、2024,2034:シース、2113,2114:アーム片、2113a,2114a:長孔、2121:第1筒状部、2112a,3024a,3121a,3121d,3282a,3282b,3382a,3382b,21222b:スリット、2122:第2筒状部、2122a:外周部、2122b,3242b:切欠部、2122c,2242a,3121c,3242a,21221b:開口部、2123,3123:第2軸部、2133:固定片、2342:先端部、3026:押圧部材、3036:吸着部材、3121:筒状部、3121e:底壁、3172:コイルばね、3261:押圧部、3262,3362:ピン、3281,3381:支持部、3282,3382:挟持部、21131a,21141a:第1サブ長孔、21132a,21142a:第2サブ長孔、J37:筒軸、L1:第1距離、L2:第2距離