(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-17
(45)【発行日】2022-02-28
(54)【発明の名称】薄肉シェル型熱交換器、地下鉄廃熱源ヒートポンプシステム及びその方法
(51)【国際特許分類】
F28F 1/00 20060101AFI20220218BHJP
E21D 11/10 20060101ALI20220218BHJP
F25B 30/02 20060101ALI20220218BHJP
F25B 27/00 20060101ALI20220218BHJP
F25B 27/02 20060101ALI20220218BHJP
F28F 21/06 20060101ALI20220218BHJP
F25B 1/00 20060101ALI20220218BHJP
【FI】
F28F1/00 E
E21D11/10 Z
F25B30/02 Z
F25B27/00 P
F25B27/02 Z
F28F21/06
F25B1/00 397Z
(21)【出願番号】P 2019558776
(86)(22)【出願日】2018-12-22
(86)【国際出願番号】 CN2018122944
(87)【国際公開番号】W WO2020029516
(87)【国際公開日】2020-02-13
【審査請求日】2019-10-22
(31)【優先権主張番号】201810902021.0
(32)【優先日】2018-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201810941225.5
(32)【優先日】2018-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519380222
【氏名又は名称】青島理工大学
【氏名又は名称原語表記】QINGDAO UNIVERSITY OF TECHNOLOGY
【住所又は居所原語表記】No.777 Jialingjiang Road, Economic and Technological Development Zone, Qingdao, Shandong 266555 China
(74)【代理人】
【識別番号】100146374
【氏名又は名称】有馬 百子
(72)【発明者】
【氏名】胡 松涛
(72)【発明者】
【氏名】季 永明
(72)【発明者】
【氏名】劉 国丹
(72)【発明者】
【氏名】▲トウ▼ 振
(72)【発明者】
【氏名】童 力
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第103615841(CN,A)
【文献】特開2015-028418(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106705404(CN,A)
【文献】中国実用新案第207245732(CN,U)
【文献】中国実用新案第206397518(CN,U)
【文献】特開2017-040469(JP,A)
【文献】中国実用新案第206987841(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 1/00
E21D 11/10
F25B 30/02
F25B 27/00
F25B 27/02
F28F 21/06
F25B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄肉シェル型熱交換器、ヒートポンプユニット、放射端及び補助冷却源を備えた地下鉄廃熱源ヒートポンプシステムであって、
前記ヒートポンプユニットは、直列接続された圧縮機、凝縮器、絞り弁及び蒸発器を備え、
前記薄肉シェル型熱交換器は、
トンネル周囲の岩石の内側から外側に向かって順に配置されたトンネルの一次覆工、薄型シェル熱交換器本体及びトンネルの二次覆工を含み、薄肉シェル型熱交換器本体とトンネルの二次覆工との間にモルタル、ジオテキスタイル及び防水板で構成される保護層が挟まれ、薄肉シェル型熱交換器本体を介して地下鉄トンネル周囲の岩石と熱交換し、
前記薄型シェル熱交換器本体は、給水本管、還水本管及び給水本管と還水本管の間に接続されるキャピラリグリッドを備え、
前記キャピラリグリッドは、トンネルの円弧状の壁面の円周方向に沿って敷設され、給水本管と還水本管との間に均一に配置されかつ給水本管と還水本管を貫通する複数の熱伝達キャピラリを備え、
前記給水本管と還水本管がトンネルの同じ側の予備本管溝内に設置され、
前記熱伝達キャピラリは、直径が4.3mm、壁厚が0.85mmのポリプロピレンランダム(PPR)パイプであり、隣接する熱伝達キャピラリの間隔が10mmであり、
冬期には、前記薄肉シェル型熱交換器は、
前記薄肉シェル型熱交換器の地下鉄の排熱源側とヒートポンプユニットとの間の冬期用循環回路を介して高温の循環液体を蒸発器に送り、蒸発器で高温の循環液体と冷媒との熱交換を行い、蒸発器は圧縮機を介して熱交換後の冷媒を凝縮器に送り、熱交換後に温度が低下した循環液体は、蒸発器から前記薄肉シェル型熱交換器に回流し、
負荷側放射端の低温の循環水は負荷側放射端とヒートポンプユニットとの間の冬期用循環回路を介して凝縮器に輸送され、凝縮器内で熱交換された後、温度が上昇して高温の循環水になり、高温の循環水は凝縮器から
負荷側放射端に流れて地上の建物に暖房を供給し、
夏期には、凝縮器内の冷却水は、高温高圧冷媒ガスと熱交換された後、補助冷却源とヒートポンプユニットとの間の夏期用循環回路を介して補助冷却源内に送られ冷却されてから、凝縮器に戻され、冷媒と熱交換を行い、
夏負荷側放射端とヒートポンプユニットとの間
では、冷凍水が循環し、蒸発器内では低温低圧冷媒液と冷凍水との熱交換を行い、前記冷凍水の温度が下がると、夏負荷側放射端とヒートポンプユニットとの間の夏期用循環回路を介して夏負荷側放射端に送られ、地上の建物に冷房を供給し、
前記地下鉄廃熱源ヒートポンプシステムは、更に、地下鉄トンネル及びその岩石冷却源側とヒートポンプユニットとの間に夏期用循環回路を備え、
前記薄肉シェル型熱交換器内の循環液体は、地下鉄トンネル及びその岩石
冷却源側とヒートポンプユニットとの間の夏期用循環回路を介して凝縮器に送られ、凝縮器内で高温高圧冷媒ガスと熱交換され、温度が上昇した循環液体は凝縮器から流出し、かつ薄肉シェル型熱交換器内に戻され、地下鉄トンネル周囲の岩石に熱を放出して貯蔵されるか、又はトンネル内に直接放出され、列車風に伴って運ばれ、
負荷側放射端とヒートポンプユニットとの間の夏期用循環は、冷凍水の循環であり、蒸発器内の低温低圧冷媒液は冷凍水と熱交換され、
冷凍水は温度が低下した後、蒸発器から負荷側放射端に圧入され、地上の建物に冷房を供給した後、冷凍水の温度が上昇して、負荷側放射端から蒸発器内に戻り、循環を完了し、
前記地下鉄トンネル及びその岩石冷却源側とヒートポンプユニットとの間の夏期用循環回路は、第6三方弁、第5三方弁、第3三方弁、第1バルブ、第7三方弁、第1三方弁、第10バルブ及び第1循環水ポンプを備え、前記凝縮器の第2継手は第6三方弁、第5三方弁、第3三方弁及び第1バルブを介して薄肉シェル型熱交換器の第2オリフィスに接続され、前記凝縮器の第4継手は第7三方弁、第1三方弁、第10バルブ及び第1循環水ポンプを介して薄肉シェル型熱交換器の第1オリフィスに接続される
ことを特徴とする地下鉄廃熱源ヒートポンプシステム。
【請求項2】
前記圧縮機の出口は凝縮器の第1継手に接続され、凝縮器の第3継手は絞り弁に接続され、絞り弁の他端は蒸発器の第4継手に接続され、
蒸発器の第2継手は圧縮機の入口に接続されて、廃熱源ヒートポンプユニットの循環回路を構成する、ことを特徴とする請求項1に記載の地下鉄廃熱源ヒートポンプシステム。
【請求項3】
前記
薄肉シェル型熱交換器の地下鉄の廃熱源側とヒートポンプユニットとの間の冬期用循環回路は、第5バルブ、第1三方弁、第2三方弁、第1循環水ポンプ、第8バルブ、第3三方弁及び第4三方弁を含み、
前記蒸発器の第1継手は第5バルブ、第1三方弁、第2三方弁、第1循環水ポンプを介して薄肉シェル型熱交換器の第1オリフィスに接続され、前記蒸発器の第3継手は第8バルブ、第3三方弁及び第4三方弁を介して薄肉シェル型熱交換器の第2オリフィスに接続される、ことを特徴とする請求項1に記載の地下鉄廃熱源ヒートポンプシステム。
【請求項4】
前記負荷側放射端とヒートポンプユニットとの間の冬期用循環回路は、第6三方弁、第9三方弁、第4バルブ、第7三方弁、第8三方弁及び第10三方弁、第7バルブ及び第2循環水ポンプを備え、
前記凝縮器の第2継手は第6三方弁、第9三方弁、第4バルブを介して放射端の給水側に接続され、凝縮器の第4継手は第7三方弁、第8三方弁、第10三方弁、第7バルブ及び第2循環水ポンプを介して負荷側放射端の還水側に接続される、ことを特徴とする請求項1に記載の地下鉄廃熱源ヒートポンプシステム。
【請求項5】
前記補助冷却源とヒートポンプユニットとの間の夏期用循環回路は、第6三方弁、第5三方弁、第2バルブ、第4循環水ポンプ、第7三方弁、第8三方弁及び第6バルブを含み、
前記凝縮器の第2継手は、第6三方弁、第5三方弁、第2バルブ及び第4循環水ポンプを介して補助冷却源の給水側に接続され、前記凝縮器の第4継手は第7三方弁、第8三方弁及び第6バルブを介して補助冷却源の還水側に接続される、ことを特徴とする請求項1に記載の地下鉄廃熱源ヒートポンプシステム。
【請求項6】
前記負荷側放射端とヒートポンプユニットとの間の夏期用循環回路は、第3バルブ、第2三方弁、第9三方弁、第9バルブ、第4三方弁、第10三方弁及び第3循環水ポンプを含み、
前記蒸発器の第1継手は第3バルブ、第2三方弁と第9三方弁を介して放射端の還水側に接続され、蒸発器の第3継手は第9バルブ、第4三方弁、第10三方弁及び第3循環水ポンプを介して
負荷側放射端の給水側に接続される、ことを特徴とする請求項1に記載の地下鉄廃熱源ヒートポンプシステム。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれか一項に記載の地下鉄廃熱源ヒートポンプシステムの作動方法であって、
圧縮機から排出された高温高圧冷媒ガスは凝縮器に入り、低温高圧冷媒液に凝縮され、低温高圧冷媒液は、絞り弁を通過して低温低圧冷媒液になり、蒸発器内に流入して熱を吸収して低温低圧冷媒ガスになり、圧縮機内に戻される工程と、
冬期暖房時、第4バルブ、第5バルブ、第7バルブ、第8バルブが開かれ、第1バルブ、第2バルブ、第3バルブ、第6バルブ、第9バルブ及び第10バルブが閉じられ、第1循環水ポンプと第2循環水ポンプが開かれ、第3循環水ポンプと第4循環水ポンプが閉じられ、薄肉シェル型熱交換器内で高温循環液体は、第1オリフィスを介して第1循環水ポンプから蒸発器にポンピングされ、蒸発器内の低温低圧冷媒液と熱交換され、低温循環液体は蒸発器の第3継手から薄肉シェル型熱交換器内に戻され再び廃熱を回収し、それと同時に、放射端の低温水は第2循環水ポンプを介して凝縮器にポンピングされ、凝縮器内で高温の冷媒ガスと熱交換され、温度が上昇して高温水になり、高温水は凝縮器の第2継手から流出し、放射端に入って地上の建物に暖房を供給し、低温水は第2循環水ポンプを介して凝縮器に入り、順次循環して暖房を供給する工程と、
夏期の冷房時、第4バルブ、第5バルブ、第7バルブ、第8バルブが閉じられ、第3バルブ及び第9バルブが開かれ、第2循環水ポンプが閉じられ、第3循環水ポンプが開かれ、冷却塔を冷却源として、第2バルブ、第6バルブ及び第4循環水ポンプを開き、第1バルブ、第10バルブ及び第1循環水ポンプを閉じ、凝縮器内の冷却水は高温高圧冷媒ガスと熱交換され、冷却水は温度が上昇した後、凝縮器の第2継手を介して第4循環水ポンプから冷却塔内に圧入して冷却されてから、凝縮器内に送られ、凝縮器内の冷媒は絞り弁を介して蒸発器内に送られ、蒸発器内で低温低圧冷媒液は冷凍水の還水と熱交換され、冷凍水の温度が低下した後、蒸発器の第3継手から第3循環水ポンプを介して放射端に圧入され、地上の建物内でユーザに冷房を供給した後、冷凍水の温度が上昇し、蒸発器内に戻り、順次循環して冷房を供給する工程とを含む、ことを特徴とする地下鉄廃熱源ヒートポンプシステムの作業方法。
【請求項8】
夏期の冷房時、第4バルブ、第5バルブ、第7バルブ、第8バルブが閉じられ、第3バルブ及び第9バルブが開かれ、第2循環水ポンプが閉じられ、第3循環水ポンプが開かれ、地下鉄トンネル及びその周囲の岩石を冷却源として、第1バルブ、第10バルブ及び第1循環水ポンプを開き、第2バルブ、第6バルブ及び第4循環水ポンプを閉じ、薄肉シェル型熱交換器内の循環液
体は、第1循環水ポンプを介して凝縮器内にポンピングされ、凝縮器内で高圧高温の冷媒ガスと熱交換され、循環液
体の温度が上昇した後、凝縮器の第2継手から流出し、かつ薄肉シェル型熱交換器内に戻り、地下鉄トンネル周囲の岩石に熱を放出して貯蔵されるか、又はトンネル内に直接放出され、列車風に伴って運ばれ、凝縮器内の冷媒は温度が低下した後、絞り弁を介して蒸発器内に送られ、蒸発器内で低温低圧冷媒液は冷凍水の還水と熱交換され、冷凍水は温度が低下した後、蒸発器の第3継手から第3循環水ポンプを介して放射端に圧入され、地上の建物内でユーザに冷房を供給した後、冷凍水の温度が上昇し、蒸発器内に戻り、順次循環して冷房を供給する、ことを特徴とする請求項
7に記載の作業方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複合型ヒートポンプシステムに関し、特に、地下鉄トンネル用薄肉シェル型熱交換器、薄肉シェル型熱交換器をフロントエンドとする地下鉄廃熱源ヒートポンプシステム、及び薄肉シェル型熱交換器の取り付け施工方法と地下鉄廃熱源ヒートポンプシステムの作動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在まで、交通渋滞を緩和するために、ますます多くの大都市で地下鉄が選択されてきた。地下鉄トンネル内の熱伝達は、長期にわたり緩やかに時々刻々と変化する状態にあり、トンネル内の蓄熱は避けられない課題である。トンネル内の熱量は、地下鉄の運行時間が長くなるにつれて増え、トンネル内の空気や周囲の岩石の温度も上昇する。この課題に対し、地下鉄が早期に建設された広州や上海などのほとんどは、地上に冷却塔を設置する方法で地下鉄トンネル内の温度を直接下げている。しかしながら、地下鉄が通る区域はその大半が都心の繁華街であり、冷却塔を設置するための空間が少ない。更に、人が密集することにより、粒状物が多く発生するため、粒状物汚染によって地下鉄の空調冷却塔がレジオネラ菌に汚染され、付近の人々に伝染するという状況が発生している。
【0003】
地下鉄は途切れることなく運行しており、それに伴い大量の廃熱がトンネル周囲の岩石に絶えず蓄積される。地上の建物と比較して、地下鉄駅内の冷暖房負荷は小さい。そのため、ヒートポンプ技術を利用した合理的なフロントエンド熱交換器を介し、トンネル周囲の岩石に対して熱の吸収や放出を行う。更に、フロントエンド熱交換器と補助冷却装置と組み合わせることにより、地上の建物に対して、夏期に冷房、冬期に暖房を供給し、地下鉄の地下空間の熱汚染を解決するとともに、エネルギーを供給することができる。当該技術は地下鉄沿線区域でエネルギーサイクル内の熱平衡を実現するとともに、エネルギー利用率を大幅に向上させ、地下鉄の持続的な運用を実現する。
【0004】
地下トンネルや地下鉄駅は、基本的に地下恒温層の下方に位置しているため、地下の岩石の温度は一年中安定しており、ヒートポンプシステムの冷熱源として非常に適している。従来の土壌熱源ヒートポンプシステムにおける埋設管式熱交換器は埋設するために必要な敷地面積が大きく、かつ土壌の熱伝達率が低いため、単一の埋設管の熱交換量には限りがある。このため、熱供給量が大きい場合、埋設管が長くなり、掘削コストが増加する。更に、施工難度が高くなり、かつ埋設管の補修も困難であるなどの問題に直面する。
埋設するために必要な敷地面積が大きい、掘削孔が多い、施工難度が高い、コストが高いなど、埋設管式熱交換器による土壌熱源ヒートポンプシステムに存在する多くの問題に対して、現状では有効な解決手段がない。
先行技術文献
特許文献
【0005】
【文献】中国特許出願公開第106705404号
【文献】中国実用新案第207245732号
【文献】中国実用新案第206397518号
【文献】中国特許出願公開第103615841号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の従来技術における欠点を克服するために、本発明は、地下鉄トンネル用薄肉シェル型熱交換器、薄肉シェル型熱交換器をフロントエンドとする地下鉄廃熱源ヒートポンプシステム、及び薄肉シェル型熱交換器の取り付け施工方法と地下鉄廃熱源ヒートポンプシステムの作動方法を提供する。本発明は、地下鉄環境の質を効果的に改善し、地下鉄から環境への廃熱放出を減少させる。また、本発明は、熱交換効率が高い、環境に優しい、経済的で実用性に優れる、耐用年数が長いなどの利点を有する。かつ、地下鉄の運行による廃熱を最大限に活用し、地上の建物に対して、冬期に暖房、夏期に冷房を供給する。更に、地下鉄トンネル及びその周囲の岩石を冷源とするか、又は補助冷却装置を採用するかを自由に選択して、地上の建物に対して夏期の冷房を供給し、地下鉄廃熱源ヒートポンプシステムの優位性を最大限に発揮する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明における第1の目的は、トンネル周囲の岩石の内側から外側に向かって順に配置されたトンネルの一次覆工、薄型シェル熱交換器本体及びトンネルの二次覆工を含み、薄肉シェル型熱交換器本体とトンネルの二次覆工との間にモルタル、ジオテキスタイル及び防水板で構成される保護層が挟まれ、薄肉シェル型熱交換器本体を介して地下鉄トンネル周囲の岩石と熱交換する薄肉シェル型熱交換器を提供することである。
【0008】
更に、前記薄肉シェル型熱交換器本体は給水本管、還水(ドレン)本管及び給水本管と還水本管の間に接続されるキャピラリグリッド(キャピラリチューブ)を備え、前記キャピラリグリッドは、トンネルの円弧状の壁面の円周方向に沿って敷設される。
【0009】
前記キャピラリグリッドは、給水本管と還水本管との間に均一に配置され、かつそれらを貫通する複数の熱伝達キャピラリを備える。前記給水本管と還水本管は、トンネルの同じ側の予備本管溝内に設置される。
本発明における第2の目的は、
(1)キャピラリグリッドの敷設位置を決定し、トンネル壁面が平らか否かを検査し、かつ対応する位置に溝を開設する工程と、
(2)キャピラリグリッドの漏れ検査試験を行う工程と、
【0010】
(3)試験に合格すると(した場合)、トンネルの一次覆工、薄肉シェル型熱交換器及びトンネルの二次覆工の構造施工を行う工程と、
を含む前記薄肉シェル型熱交換器の取り付け施工方法を提供することである。
【0011】
更に、水平器、セオドライト又は水準器を用いてキャピラリグリッドの敷設位置を芯出しするが、トンネルの壁面に凹凸がある場合、セメントモルタルを用いて基準面をならす。
更に、前記トンネルの一次覆工、薄肉シェル型熱交換器及びトンネルの二次覆工の構造施工方法は、
(1)トンネルの一次覆工の施工を行う工程と、
(2)薄肉シェル型熱交換器の敷設(「取り付け」は一般的に敷設(=設置)の意味に含まれる)を行う工程と、
(3)薄肉シェル型熱交換器の外部にモルタル層、ジオテキスタイル及び防水板を順次設置する工程と、
(4)トンネルの二次覆工の施工を行う工程と、を含む。
更に、前記薄肉シェル型熱交換器の敷設取り付け方法は、
給水本管、還水本管及びキャピラリグリッドを順次取り付けて、給水本管、還水本管をキャピラリグリッドに接続する工程と、
キャピラリグリッドをセグメントごとに水圧試験し、次いで、キャピラリグリッド及び集合管に左官作業を行う工程と、
モルタル層に対してマーキング、水圧試験及び洗浄を行う工程と、を含む。
【0012】
本発明における第3の目的は、前記薄肉シェル熱交換器、廃熱源ヒートポンプシステム、放射端(液体や気体を放出する端部)及び補助冷却源を含む地下鉄廃熱源ヒートポンプシステムであって、前記廃熱源ヒートポンプシステムは、直列接続された圧縮機、凝縮器、絞り弁及び蒸発器を備える。前記薄肉シェル型熱交換器は、地下鉄廃熱源側熱交換器とヒートポンプユニットとの間の冬期用循環回路を介して高温液体を蒸発器内に送られる。蒸発器は圧縮機を介して高温液体を凝縮器内に送り、放射端の低温還水は負荷側放射端とヒートポンプユニットとの間の冬期用循環回路を介して凝縮器に送られる。低温還水は凝縮器内で熱交換され、温度が上昇して高温水になり、高温水は凝縮器から放射端に流れて地上の建物に暖房を供給する。凝縮器内の冷却水は、高温高圧冷媒ガスと熱交換された後、補助冷却源とヒートポンプユニットとの間の夏期用循環回路を介して補助冷却源内に送られる。その後、冷却されてから、凝縮器に戻され、凝縮器内の冷却水は、絞り弁を介して蒸発器に送られる。蒸発器内の低温低圧冷媒液は冷凍水と熱交換される。冷凍水の温度が下がると、負荷側放射端とヒートポンプユニットとの間の夏期用循環回路を介して放射端に送られ、地上の建物に冷房を供給する地下鉄廃熱源ヒートポンプシステムを提供することである。
【0013】
更に、前記圧縮機の出口は凝縮器の第1継手に接続され、凝縮器の第3継手は絞り弁に接続され、絞り弁の他端は蒸発器の第4継手に接続され、蒸発器の第2継手は圧縮機の入口に接続されることにより、廃熱源ヒートポンプユニットの循環回路を構成する。
【0014】
更に、前記地下鉄廃熱源側熱交換器とヒートポンプユニットとの間の冬期用循環回路は、第5バルブ、第1三方弁、第2三方弁、第1循環水ポンプ、第8バルブ、第3三方弁及び第4三方弁を備える。前記蒸発器の第1継手は第5バルブ、第1三方弁、第2三方弁、第1循環水ポンプを介して薄肉シェル型熱交換器の第1オリフィスに接続される。前記蒸発器の第3継手は第8バルブ、第3三方弁及び第4三方弁を介して薄肉シェル型熱交換器の第2オリフィスに接続される。
【0015】
更に、前記負荷側放射端とヒートポンプユニットとの間の冬期用循環回路は、第6三方弁、第9三方弁、第4バルブ、第7三方弁、第8三方弁及び第10三方弁、第7バルブ及び第2循環水ポンプを備える。前記凝縮器の第2継手は第6三方弁、第9三方弁、第4バルブを介して放射端の給水側に接続される。凝縮器の第4継手は第7三方弁、第8三方弁、第10三方弁、第7バルブ及び第2循環水ポンプを介して放射端の還水側に接続される。
【0016】
更に、前記補助冷却源側とヒートポンプユニットとの間の夏期用循環回路は、第6三方弁、第5三方弁、第2バルブ、第4循環水ポンプ、第7三方弁、第8三方弁及び第6バルブを含む。前記凝縮器の第2継手は、第6三方弁、第5三方弁、第2バルブ及び第4循環水ポンプを介して補助冷却源の給水側に接続される。前記凝縮器の第4継手は第7三方弁、第8三方弁及び第6バルブを介して補助冷却源の還水側に接続される。
【0017】
更に、前記負荷側放射端とヒートポンプユニットとの間の夏期用循環回路は、第3バルブ、第2三方弁、第9三方弁、第9バルブ、第4三方弁、第10三方弁及び第3循環水ポンプを備える。前記蒸発器の第1継手は、第3バルブ、第2三方弁と第9三方弁を介して放射端の還水側に接続される。蒸発器の第3継手は第9バルブ、第4三方弁、第10三方弁及び第3循環水ポンプを介して放射端の給水側に接続される。
【0018】
更に、地下鉄トンネル及びその岩石冷却源側とヒートポンプユニットとの間の夏期用循環回路を含む。夏期に、前記薄肉シェル型熱交換器内の循環液は、地下鉄トンネル及びその岩石冷却源側とヒートポンプユニットとの間の循環回路を介して凝縮器内に送られ、凝縮器内で高温高圧冷媒ガスと熱交換される。循環液の温度が上昇した後、凝縮器から流出し、かつ薄肉シェル型熱交換器内に戻され、熱は地下鉄トンネル周囲の岩石に放出して貯蔵されるか、又はトンネル内に直接放出され、列車風に伴って運ばれる。
【0019】
更に、前記地下鉄トンネル及びその岩石冷却源側とヒートポンプユニットとの間の夏期用循環回路は、第6三方弁、第5三方弁、第3三方弁、第1バルブ、第7三方弁、第1三方弁、第10バルブ及び第1循環水ポンプを含む。前記凝縮器の第2継手は第6三方弁、第5三方弁、第3三方弁及び第1バルブを介して薄肉シェル型熱交換器の第2オリフィスに接続される。前記凝縮器の第4継手は第7三方弁、第1三方弁、第10バルブ及び第1循環水ポンプを介して薄肉シェル型熱交換器の第1オリフィスに接続される。
【0020】
本発明の第4の目的は、圧縮機から排出された高温高圧冷媒ガスは凝縮器に入り、低温高圧冷媒液に凝縮される。低温高圧冷媒液は、絞り弁を通過して低温低圧冷媒液になり、蒸発器内に流入して熱を吸収して低温低圧冷媒ガスになり、圧縮機内に戻される工程と、
【0021】
冬期の暖房時、第4バルブ、第5バルブ、第7バルブ、第8バルブが開かれ、第1バルブ、第2バルブ、第3バルブ、第6バルブ、第9バルブ及び第10バルブが閉じられ、第1循環水ポンプ、第2循環水ポンプが開かれる。また、第3循環水ポンプ、第4循環水ポンプが閉じられ、薄肉シェル型熱交換器内で、高温の液体は、第1オリフィスを介して第1循環水ポンプから蒸発器にポンピングされ、蒸発器内の低温低圧冷媒液と熱交換される。低温の液体は蒸発器の第3継手から薄肉シェル型熱交換器内に戻され再び廃熱を回収する。それと同時に、放射端の低温の液体は第2循環水ポンプを介して凝縮器にポンピングされ、凝縮器内で高圧高温冷媒ガスと熱交換される。そのため、温度が上昇して高温水になり、高温水は凝縮器の第2継手から流出し、放射端に入って地上の建物に暖房を供給する。低温水は第2循環水ポンプを介して凝縮器にポンピングされ、順次循環して暖房を供給する工程と、
【0022】
夏期の冷房時、第4バルブ、第5バルブ、第7バルブ、第8バルブが閉じられ、第3バルブ、第9バルブが開かれる。また、第2循環水ポンプが閉じられ、第3循環水ポンプが開かれ、冷却塔を冷却源として、第2バルブ、第6バルブ、第4循環水ポンプが開かれ、第1バルブ、第10バルブ、第1循環水ポンプが閉じられる。凝縮器内の冷却水は高温高圧冷媒ガスと熱交換され、冷却水の温度が上昇した後、凝縮器の第2継手を介して第4循環水ポンプから冷却塔内に圧入されて冷却されてから、凝縮器内に送られる。凝縮器内の冷却水は絞り弁を介して蒸発器内に送られ、蒸発器内で低温低圧冷媒液は冷凍水の還水と熱交換される。冷凍水は温度が下がってから、蒸発器の第3継手から第3循環水ポンプを介して放射端に圧入され、地上の建物内でユーザに冷房を供給する。冷凍水の温度が上昇し、蒸発器内に戻され、順次循環して冷房を供給する工程と、を含む前記補助冷却源を備えた地下鉄廃熱源ヒートポンプシステムの作動方法を提供することである。
従来技術に比べ、本発明の有益な効果は以下のとおりである。
【0023】
(1)本発明において、薄肉シェル型熱交換器はトンネルの一次覆工とトンネルの二次覆工との間に配置される。薄肉シェル型熱交換器とトンネルの二次覆工との間はモルタル、ジオテキスタイル、防水板により保護されており、地下鉄周囲の岩石と直接熱交換することができる。夏期にトンネル周囲の岩石から放熱し、冬期にトンネル周囲の岩石から集熱することで、地下鉄周囲の岩石の熱平衡を保証する。また、地下鉄の環境質を効果的に改善し、環境に対する地下鉄の廃熱放出を削減する。更に、熱交換効率が高い、環境に優しい、経済的で実用性がある、耐用年数が長いなどの利点を有する。
【0024】
(2)本発明は、地下鉄の運行による廃熱を最大限に活用し、地下鉄廃熱源ヒートポンプシステムと補助冷却源とを組み合わせて、地上の建物のユーザに対する冷暖房の同時供給を実現する。更に、地下鉄トンネル及び周囲の岩石の吸熱と放熱のバランスを図り、バルブの切り替えによって夏期の冷却源の自由選択を実現する。地下鉄廃熱源ヒートポンプシステムは、土壌熱源ヒートポンプシステムの利点を用いて、夏期の地上の建物のユーザに対する冷房の供給問題を解決し、放射(端)熱交換器を用いてより省エネルギーで環境に優しいシステムを実現する。
【0025】
(3)本発明は、地下鉄の運行による廃熱を最大限に活用して、地上の建物に暖房を供給するだけでなく、夏期に、地下鉄トンネル及びその周囲の岩石を冷却源とするか、又は補助冷却源を採用するかを自由に選択して、地上の建物に冷房を供給することで、地下鉄廃熱源ヒートポンプシステムの利点を最大限に発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
本出願の一部を構成する明細書の図面は、本出願に対する理解を提供するために用いられ、本出願の例示的な実施例及びその説明は本出願を説明するためのものであり、本出願を不当に限定するものではない。
【
図1】は薄型シェル熱交換器を備えた地下鉄廃熱源ヒートポンプシステムの概略図である。
【符号の説明】
【0027】
1、薄肉シェル型熱交換器、2、圧縮機、3、凝縮器、4、絞り弁、5、蒸発器、6、ユーザ端、7、補助冷却装置、8、熱伝達キャピラリ、9、給水本管、10、還水本管、11、トンネルの一次覆工、12、薄肉シェル型熱交換器本体、13、モルタル、14、ジオテキスタイル、15、防水板、16、トンネルの二次覆工、17、予備本管溝、a、凝縮器第1継手、b、凝縮器第2継手、c、凝縮器第3継手、d、凝縮器第4継手、e、蒸発器第1継手、f、蒸発器第2継手、g、蒸発器第3継手、h、蒸発器第4継手、i、薄肉シェル型熱交換器本管第1オリフィス、j、薄肉シェル型熱交換器本管第2オリフィス、k、第1三方弁、l、第2三方弁、m、第3三方弁、n、第4三方弁、o、第5三方弁、p、第6三方弁、q、第7三方弁、r、第8三方弁、s、第9三方弁、t、第10三方弁、A、第1循環水ポンプ、B、第2循環水ポンプ、C、第3循環水ポンプ、D、第4循環水ポンプ、E、第1バルブ、F、第2バルブ、G、第3バルブ、H、第4バルブ、I、第5バルブ、J、第6バルブ、K、第7バルブ、L、第8バルブ、M、第9バルブ、N、第10バルブ。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に図面と実施例を参照しながら本発明を更に説明する。
【0029】
以下の詳細な説明はいずれも例示的なものであり、本発明のさらなる説明を提供することを意図している。特記しない限り、本明細書で使用されるすべての技術的及び科学的用語は、当業者に一般に理解されるものと同じ意味を有する。
【0030】
注意すべき点として、ここで使用される用語は、発明を実施するための形態を説明するためのものに過ぎず、本出願の例示的な実施形態を意図的に制限するものではない。ここで使用されているように、文脈に特記しない限り、単数形は複数形をも含むことが意図されている。更に、本明細書において“含有”及び/又は“含む”という用語が使用された場合、特徴、工程、操作、デバイス、アセンブリ及び/又はそれらの組み合わせの存在を示す。
【0031】
従来の地中熱ヒートポンプシステムは、埋設管方式の熱交換器であり、必要とされる敷地面積が広い。また土壌の熱伝達率が小さいため、単一の埋設管における熱交換量が制限される。熱供給量が一定の場合、熱交換面積を広くする必要があり、必要な埋設管が長く、埋設管の掘削孔が増加する。かつ、埋設管の埋設時、地下に掘削する必要があるため、施工難度や掘削孔コストが高い。埋設管が破損した場合、補修や交換も困難である。これらの課題を解決するために、本実施例は薄肉シェル型熱交換器を提供する。
【0032】
図1に示すとおり、該薄肉シェル型熱交換器はトンネル周囲の岩石の内側から外側に向かって順に配置されたトンネルの一次覆工11、薄型シェル熱交換器本体12及びトンネルの二次覆工16を含む。
【0033】
具体的には、前記薄肉シェル型熱交換器本体2は、地下鉄廃熱源ヒートポンプのフロントエンド熱交換装置として、地下鉄トンネル周囲の岩石の一次覆工11と二次覆工16との間に配置される。また、前記薄肉シェル型熱交換器本体2は、薄肉シェル型熱交換器本体12を介して、地下鉄トンネル周囲の岩石と熱交換を行い、夏期にトンネル周囲の岩石に放熱し、冬期にはトンネル周囲の岩石から集熱することで、トンネル周囲の岩石の熱平衡を保証する。
【0034】
薄肉シェル型熱交換器本体12とトンネルの二次覆工16との間にモルタル13、ジオテキスタイル14及び防水板15で構成される保護層が挟まれ、薄肉シェル型熱交換器本体に対して熱保護(熱からの保護)を行う。
【0035】
上記薄肉シェル型熱交換器本体は、トンネルの円弧状の壁面の周方向に沿って敷設される。該薄肉シェル型熱交換器本体2は給水本管9、還水本管10、給水本管9と還水本管10との間に接続されたキャピラリグリッド及びその接続部材、システム配管、管継手などを含む。
【0036】
更に、前記給水本管9、還水本管10及びその接続部材、システム配管及び管継手などは、プラスチック材、ステンレス材又は銅材で製造される。具体的には、作動温度、作動圧力、耐用年数、現場での防水、水質要件、及び施工要件に応じて、総合的に比較した上で決定される。
【0037】
前記キャピラリグリッドの色は均一であり、配管や管継手の内外側表面は平滑で、清潔であり、へこみ、気泡、明らかな引っ掻き傷や性能に影響する他の表面欠陥がない。
【0038】
具体的には、
図2に示すとおり、前記キャピラリグリッドは、給水本管10と還水本管11との間に均一に配置され、かつそれらを貫通する複数の熱伝達キャピラリ8を備える。給水本管10と還水本管11はトンネルの同じ側にある予備本管溝7内に配置される。
【0039】
前記熱伝達キャピラリ8は、直径が4.3mm、壁厚が0.85mmのPPR(ポリプロピレンランダム)パイプであり、隣接する熱伝達キャピラリの間隔は10mmである。各キャピラリグリッドの幅は1mで、キャピラリグリッド内の熱伝達キャピラリの長さは、実際の要件に応じて自由に設計できる。
【0040】
前記PPR(ポリプロピレンランダム)パイプは、一次成形され、その間には溶接継ぎ目がなく、配管の端面は軸線に対して垂直でかつ平らに切断されているものである。また、PPR(ポリプロピレンランダム)パイプは、出荷時、PPR(ポリプロピレンランダム)パイプのグリッドに対して水圧試験が行われ、先端に対してシームレス圧力シールを行い、かつ出荷時の試験圧力を0.3Mpa以上に5-10分間保持することが要求される。
【0041】
トンネルの片側に予備本管溝17及び薄肉シェル型熱交換器本管が配置され、該予備本管溝7は、給水本管と還水本管を配置するために機能する。該薄肉シェル型熱交換器本管は、給水本管と還水本管の総称であり、分岐管とする熱伝達キャピラリに給水や還水するための本管として機能している。
【0042】
本発明の実施例1が提供する地下鉄トンネル用薄肉シェル型熱交換器は、トンネルの一次覆工とトンネルの二次覆工との間に配置され、薄肉シェル型熱交換器とトンネルの二次覆工との間はモルタル、ジオテキスタイル、防水板により保護されており、地下鉄周囲の岩石と直接熱交換することができる。夏期にトンネル周囲の岩石に放熱し、冬期にトンネル周囲の岩石から集熱することで、地下鉄周囲の岩石の熱平衡を保証する。また、地下鉄環境の質を効果的に改善し、環境に対する地下鉄の廃熱放出を削減する。更に、熱交換効率が高い、環境に優しい、経済的で実用性がある、耐用年数が長いなどの利点を有する。
本実施例は、更に薄肉シェル型熱交換器の取り付け施工方法を提供する。該方法は以下の工程を含む。
【0043】
S101、キャピラリグリッドの敷設位置を決定し、トンネル壁面が平らか否かを検査し、かつ
図1の符号17に示すような対応する位置に溝を開設する。該溝は、即ち本管溝である。
【0044】
工事準備完了後、水平器、セオドライトや水準器を用いてキャピラリグリッドの敷設位置を決めて、墨打ちを行い、キャピラリグリッドの敷設位置を芯出しする。
トンネルの壁面に凹凸がある場合、凹凸が激しい部位にセメントモルタルで基準面をならす。ここで、セメントモルタルの砂とセメントの比は1:3である。
S102、キャピラリグリッドに対して漏れ検査試験を行う。
【0045】
キャピラリグリッド材料が工事現場に到着したら、サンプリングの形で水圧試験法によってキャピラリグリッドの漏れ試験を行い、漏れがあるキャピラリグリッドを取り除く。
S103、試験に合格してから、トンネルの一次覆工、薄肉シェル型熱交換器及びトンネルの二次覆工の構造施工を行う。
前記トンネルの一次覆工、薄肉シェル型熱交換器及びトンネルの二次覆工の施工方法は以下のとおりである。
S1031、トンネルの一次覆工を施工する。
S1032、薄肉シェル型熱交換器を敷設(取り付け)する。
トンネルの一次覆工完了後、薄肉シェル型熱交換器12を敷設(取り付け)する。
前記薄肉シェル型熱交換器の敷設方法は以下のとおりである。
給水本管、還水本管及びキャピラリグリッドを順次取り付けて、給水本管、還水本管をキャピラリグリッドに接続する。
キャピラリグリッドをセグメントごとに水圧試験を行い、次いで、キャピラリグリッド及び集合管に左官作業を行う。
モルタル層に対してマーキング、水圧試験及び洗浄を行う。
S1033、薄肉シェル型熱交換器の外部にモルタル層、ジオテキスタイル及び防水板を順次配置する。
薄肉シェル型熱交換器の敷設が完了したなら、その外部にモルタル保護層、ジオテキスタイル、防水板の保護層を追加する。
S1034、最後にトンネルの二次覆工を施工する。
更に薄肉シェル型熱交換器の敷設前に、トンネルの片側に予備本管溝及び薄肉シェル型熱交換器本管を配置することを含む。
【0046】
本実施例が提供する薄肉シェル型熱交換器の取り付けと施工方法は、以下を含む。薄肉シェル型熱交換器は、トンネルの一次覆工とトンネルの二次覆工との間に配置される。薄肉シェル型熱交換器とトンネルの二次覆工との間はモルタル、ジオテキスタイル、防水板により保護されており、地下鉄周囲の岩石と直接熱交換することができる。夏期にトンネル周囲の岩石に放熱し、冬期にトンネル周囲の岩石から集熱することで、地下鉄の周囲の岩石の熱平衡を保証する。また、地下鉄環境の質を効果的に改善し、環境に対する地下鉄の廃熱放出を削減する。更に、熱交換効率が高い、環境に優しい、経済的で実用性がある、耐用年数が長いなどの利点を有する。
【0047】
地下鉄の運行過程における駅内の冷却負荷はごく一部を占めるに過ぎず、地下鉄トンネルという冷熱源が夏期に地上の建物内のユーザに供給できる冷却負荷よりも遥かに小さい。しかしながら、従来技術において、夏期に地上の建物内のユーザに冷房を供給する問題は解決されておらず、上記技術的課題を解決するために,本実施例は更に前記薄肉シェル型熱交換器の地下鉄廃熱源ヒートポンプシステム及びその作動方法を提供する。さらに、補助冷却源と組み合わせて、地上の建物内のユーザに対して、冬期に暖房、夏期に冷房を供給し、地下鉄の運行時に発生した廃熱を十分に利用するという効果を実現する。
【0048】
図1に示すとおり、該地下鉄廃熱源ヒートポンプシステムはキャピラリグリッドによるフロントエンド熱交換システム、地下鉄廃熱源ヒートポンプシステム、放射端6、補助冷却源7を備える。前記キャピラリグリッドによるフロントエンド熱交換システムは前記薄肉シェル型熱交換器1及び第1循環水ポンプAを含む。前記地下鉄廃熱源ヒートポンプシステムは圧縮機2と、第1継手a、第2継手b、第3継手c、第4継手dを備えた凝縮器3と、絞り弁4と、第1継手e、第2継手f、第3継手g、第4継手hを備えた蒸発器5とを含む。システム全体は、配管及びバルブを介して接続され、放射端6は地上の建物内に配置される。
【0049】
該システムの具体的な接続方法は以下のとおりである。圧縮機2の出口は凝縮器3の第1継手aに接続される。また、凝縮器3の第3継手cは絞り弁4に接続される。また、絞り弁4の他端は蒸発器5の第4継手hに接続される。また、蒸発器5の第2継手fは圧縮機2の入口に接続されて、廃熱源ヒートポンプユニットの循環回路を構成する。蒸発器5の第1継手eは第5バルブI、第1三方弁k、第2三方弁l、第1循環水ポンプAを介して薄肉シェル型熱交換器1の第1オリフィスiに接続される。また、蒸発器5の第3継手gは第8バルブL、第3三方弁m、第4三方弁nを介して薄肉シェル型熱交換器1の第2オリフィスjに接続されて、地下鉄の廃熱源側熱交換器とヒートポンプユニットとの間の冬期用循環回路を構成する。蒸発器5の第1継手eは、第3バルブG、第2三方弁l、第9三方弁sを介して放射端6の還水側に接続される。また、蒸発器5の第3継手gは第9バルブM、第4三方弁n、第10三方弁t、第3循環水ポンプCを介して放射端6の給水側に接続されて、負荷側放射端とヒートポンプユニットとの間の夏期用循環回路を構成する。凝縮器3の第2継手bは第6三方弁p、第9三方弁s、第4バルブHを介して放射端6の給水側に接続される。また、凝縮器3の第4継手dは第7三方弁q、第8三方弁r、第10三方弁t、第7バルブK、第2循環水ポンプBを介して放射端6の還水側に接続されて、負荷側放射端とヒートポンプユニットとの間の冬期用循環回路を構成する。凝縮器3の第2継手bは第6三方弁p、第5三方弁o、第3三方弁m、第1バルブEを介して薄肉シェル型熱交換器1の第2オリフィスjに接続される。また、凝縮器3の第4継手dは第7三方弁q、第1三方弁k、第10バルブN、第1循環水ポンプAを介して薄肉シェル型熱交換器1の第1オリフィスiに接続されて、地下鉄トンネル及びその岩石冷却源側とヒートポンプユニットとの間の夏期用循環回路を構成する。凝縮器3の第2継手bは第6三方弁p、第5三方弁o、第2バルブF、第4循環水ポンプDを介して補助冷却源7の給水側に接続される。また、凝縮器3の第4継手dは第7三方弁q、第8三方弁r、第6バルブJを介して補助冷却源7の還水側に接続されて、補助冷却源側とヒートポンプユニットとの間の夏期用循環回路を構成する。
【0050】
本発明の実施例が開示した地下鉄廃熱源ヒートポンプシステムは、地上の建物内のユーザに対して、夏期および冬期のいつでも冷暖房を供給する。冬期は、地下鉄トンネル内で発生した廃熱を熱源として地上の建物内のユーザに暖房を供給する。夏期は、第1バルブE、第10バルブN、第2バルブF、第6バルブJを切り替えることによって、地上の建物内のユーザに冷房を供給する。その(冷房を供給する)ために、地下鉄トンネル及びその周囲の岩石を冷却源とするか、又は補助冷却源を単独で使用するかを選択し、もしくは2つの冷却源を併用することもできる。地下鉄の運行は必然的に地下鉄トンネル及び付近の岩石に熱の蓄積を生じさせるため、熱平衡を維持するために,夏期は補助冷却源を使用して冷房を供給することが好ましい。
【0051】
放射端6はキャピラリグリッド放射システムであってもよいが、この形態に限定されるものではなく、他の形態の放射端でもよい。前記補助冷却源7は冷却塔であってもよく、レジオネラ菌に感染する可能性を低下させるために、人込みから離れた風下側に配置するが、補助冷却源7は冷却塔に限定されるものではなく、他の形態の補助冷却源であってもよい。
【0052】
本発明の実施例が開示した地下鉄廃熱源ヒートポンプシステムは、地下鉄の運行による廃熱を最大限に活用し、地下鉄廃熱源ヒートポンプシステムと補助冷却源を組み合わせて、地上の建物内のユーザに対する冷房と暖房の同時供給を実現する。また地下鉄トンネル及び周囲の岩石の吸熱と放熱のバランスを図り、バルブの切り替えによって夏期の冷却源の自由な選択を実現し、放射端熱交換器を用いることにより省エネルギー、かつ環境に優しいシステムを実現する。地下鉄廃熱源ヒートポンプシステムは、土壌熱源ヒートポンプシステムの利点を用いてし、その欠点を回避する。
【0053】
補助冷却源を備えた地下鉄廃熱源ヒートポンプシステムにとって、供給するのが暖房であるか冷房であるかにかかわらず、廃熱源ヒートポンプの冷媒循環はいずれも不可欠であり、それらの原理は同じである。圧縮機2から排出される高温高圧冷媒ガスは凝縮器3の第1継手aに入った後、低温高圧液体に凝縮され、第3継手cから流出し、次に低温高圧冷媒液は、絞り弁4に流入し低温低圧冷媒液になり、更に蒸発器5の第4継手hから蒸発器5に流入し、蒸発器5内で熱を吸収して低温低圧冷媒ガスになり、最後に冷媒ガスは、蒸発器5の第2継手fから流出して圧縮機内2に戻り、循環を完了する。
【0054】
供給源側と負荷側の循環に関し、暖房と冷房の作動原理は異なる。本発明の実施例が提供した補助冷却源を備えた地下鉄廃熱源ヒートポンプシステムの作動過程は以下のとおりである。
【0055】
冬期暖房時、バルブH、I、K、Lを開き、バルブE、F、G、J、M、Nを閉じ,循環水ポンプA、Bを開き、循環水ポンプC、Dを閉じる。薄肉シェル型熱交換器1内で、地下鉄の廃熱を吸収することにより生成する高温液体は継手iを介して循環水ポンプAから蒸発器5内にポンピングされ、蒸発器5内の低温低圧冷媒液と熱交換してから、供給源側の低温液は、蒸発器5の継手gから薄肉シェル型熱交換器1内に戻って、廃熱を再び回収する。それとともに、負荷側で暖房用水を循環させる低温液は、循環水ポンプBを介して凝縮器3内にポンピングされ、凝縮器3内で高温高圧冷媒ガスと熱交換され、暖房用の液体は温度が上昇して高温水になる。かつ、凝縮器3の継手bから流出し、次にキャピラリグリッド放射システム6に入って地上の建物に暖房を供給し、低温水は、再び循環水ポンプBに戻って、循環を完了する。
【0056】
夏期の冷房時、どの手段であるかにかかわらず、まずバルブH、I、K、Lを閉じ、バルブG、Mを開き、循環水ポンプBを閉じ、循環水ポンプCを開く必要がある。その後、冷却源を選択し、その手段として冷却塔7を単独で冷却源とする場合、バルブF、J及び循環水ポンプDを開き、バルブE、N及び循環水ポンプAを閉じる必要がある。手段として地下鉄トンネル及びその周囲の岩石を単独で冷却源とする場合、バルブE、N及び循環水ポンプAを開き、バルブF、J及び循環水ポンプDを閉じる必要がある。本実施例において、前記2種類の冷却源を併用する場合、バルブF、J、E、N及び循環水ポンプA、Dを開く必要がある。
【0057】
補助冷却源側とヒートポンプユニットとの間の夏期用循環は、本発明の実施例についていえば冷却水の循環である。凝縮器3内の冷却水は高温高圧冷媒ガスと熱交換され、冷却水は温度が上昇した後、凝縮器3の継手bを介して循環水ポンプDを介して冷却塔7に圧入して冷却され、その後凝縮器3内に戻り、循環を完了する。地下鉄トンネル及びその岩石の冷却源側とヒートポンプユニットとの間の夏期用循環についていえば、薄肉シェル型熱交換器1内の液体は循環水ポンプAを介して継手dから凝縮器3内にポンピングされ、かつ高温高圧冷媒ガスと熱交換される。循環液は温度が上昇した後、凝縮器3の継手bから流出し、かつ薄肉シェル型熱交換器1内に戻され、地下鉄トンネルの周囲の岩石に熱を放出して貯蔵されるか、又はトンネル内に直接放出され、列車風に伴って運ばれ、循環を完了する。それとともに、負荷側放射端とヒートポンプユニットとの間の夏期用循環は、本実施例においては冷凍水の循環であり、蒸発器5内の低温低圧冷媒液は冷凍水と熱交換される。冷凍水は温度が低下した後、蒸発器5の継手gから第3循環水ポンプを介してキャピラリグリッド放射システム6内に圧入され、地上の建物内のユーザに冷房を供給した後、冷凍水の温度が上昇し、継手eから蒸発器5内に戻り、循環を完了する。
【0058】
これまで図面を参照しながら本発明を実施するための形態について説明したが,これらは本発明の保護範囲を限定するものではない。当業者であれば理解できるように,本発明の技術的解決手段を基礎として、当業者が創造的な労力を要さずに行った様々な修正又は変形は本発明の保護範囲に属する。