(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-17
(45)【発行日】2022-02-28
(54)【発明の名称】ダメージ加工製品、ダメージ加工機及びダメージ加工方法
(51)【国際特許分類】
B27M 1/00 20060101AFI20220218BHJP
B24B 7/06 20060101ALI20220218BHJP
B24B 7/28 20060101ALI20220218BHJP
B24B 41/06 20120101ALI20220218BHJP
B24B 7/22 20060101ALI20220218BHJP
B44C 1/22 20060101ALI20220218BHJP
【FI】
B27M1/00 F
B24B7/06
B24B7/28
B24B41/06 B
B24B7/22 A
B44C1/22 Z
(21)【出願番号】P 2017159993
(22)【出願日】2017-08-23
【審査請求日】2020-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】317012972
【氏名又は名称】株式会社徳正合板
(74)【代理人】
【識別番号】100186288
【氏名又は名称】原田 英信
(72)【発明者】
【氏名】徳正 賢一
(72)【発明者】
【氏名】武田 久和
(72)【発明者】
【氏名】仁藤 博美
【審査官】磯田 真美
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-187116(JP,A)
【文献】特開平09-267250(JP,A)
【文献】特公昭54-001074(JP,B2)
【文献】特開昭61-050763(JP,A)
【文献】特開2007-144912(JP,A)
【文献】特開平06-099343(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0255799(US,A1)
【文献】特開平09-216500(JP,A)
【文献】特開平10-272695(JP,A)
【文献】特開2003-260647(JP,A)
【文献】実開平07-007847(JP,U)
【文献】特開2009-119548(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B27M 1/00 - 3/38
B27D 5/00
B24B 7/00 - 7/30
B24B 21/00 - 21/22
B24B 41/06
B44C 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交換可能なサンドペーパーと、
ワークを移動させるワーク駆動装置と、
前記サンドペーパーをワークの加工対象面に任意の加圧力で押圧接触させる加圧パッド1と、を備え、
前記サンドペーパーはワークの移動中に
、その移動方向に
は移動せず、かつ、
その移動方向と略垂直方向に移動可能である
、ことを特徴とするダメージ加工機。
【請求項2】
交換可能なサンドペーパーと、
ワークを移動させるワーク駆動装置と、
前記サンドペーパーをワークの加工対象面に任意の加圧力で押圧接触させる加圧パッド1と、を備え、
前記サンドペーパーはワークの移動中に、その移動方向には移動せず、
前記加圧パッド1はワークの加工対象面に対する前記サンドペーパーの接触面が均等の力で押し付けられるように構成され、かつ、前記加圧パッド1はワークが移動しても
移動しないことを特徴とするダメージ加工機。
【請求項3】
前記加圧パッド1の長辺の長さは1300mm以上であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のダメージ加工機。
【請求項4】
前記加圧パッド1と対向する側にさらに任意の加圧力で押圧接触させる加圧パッド2を備え、前記加圧パッド1、2とで、前記サンドペーパーとワークを挟み込むことを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載のダメージ加工機。
【請求項5】
前記加圧パッド2はワークの加工対象面に対する前記サンドペーパーの接触面が均等の力で押し付けられるように構成され、かつ、ワークが移動しても固定的であることを特徴とする請求項4 に記載のダメージ加工機。
【請求項6】
前記加圧パッド2 の長辺の長さは1300mm以上であることを特徴とする請求項4または請求項5に記載のダメージ加工機。
【請求項7】
前記サンドペーパーを移動させる駆動ローラを備えたことを特徴とする請求項1~6の何れか1項に記載のダメージ加工機。
【請求項8】
ワーク駆動装置によって移動するワークの加工対象面に、加圧パッド1によりサンドペーパーを任意の加圧力で押圧接触させて、ワークにダメージ傷を形成するダメージ加工方法であって、 前記サンドペーパーはワークの移動中に
、その移動方向に
は移動せず、かつ、
その移動方向と略垂直方向に移動可能である
、ことを特徴とするダメージ加工方法。
【請求項9】
ワーク駆動装置によって移動するワークの加工対象面に、加圧パッド1によりサンドペーパーを任意の加圧力で押圧接触させて、ワークにダメージ傷を形成するダメージ加工方法であって、
前記サンドペーパーはワークの移動中に、その移動方向には移動せず、前記加圧パッド1はワークの加工対象面に対する前記サンドペーパーの接触面が均等の力で押し付けられるように構成され、かつ、前記加圧パッド1はワークが移動しても
移動しないことを特徴とするダメージ加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅や店舗等の内装材の面材として使用する高意匠の化粧板であるダメージ加工製品、ダメージ加工機及びダメージ加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、住宅や店舗等の内装における木質の部材や化粧板表面のデザインの傾向に、新しい方向性がみられる。それは、長い年月に渡り使い古した古材の様な外観に見せる為に、本来あってはいけない傷、割れ、ハガレ、鋸目跡等を化粧板表面のテクスチャーとして、意図的に取り込むことである。このような技法は、エイジング加工やダメージ加工等と表現され、代表的には印刷によって実現されている。しかし、印刷によるものは色や柄はそれなりに見え、製造コストも抑えられるが、印刷される面が平面となっている必要があるため、立体的なものには利用できない。
それ故、印刷では古材の特徴である傷、割れ、ハガレ、鋸目跡等を表現するには限界があり、どうしても立体感や素材感及び迫力に欠けてしまう。
【0003】
そこで、このような印刷では表現できない立体感、素材感及び迫力を表現するためにワークに加飾を加えることが行われている。なお、「加飾」の意味について、本明細書では表面にさまざまな工芸技法を用いて、立体的な傷、割れ、ハガレ、鋸目跡等をも含み得る装飾を加えることを意味する用語として用いる。また、本明細書では、加工対象物をまとめて「ワーク」という用語で記載する。具体的な加工対象物としては、天然木、木材、建材、合板、単板等木材から構成されているものであれば、殆ど全てが対象であり、また、必ずしも木材由来ではなくても本発明の加工対象物となり得る。
ワークに加飾を加えたものは、木材由来のナチュラル感と迫力の両者を合わせ持っているが、通常は金属ブラシや旋盤等を用いた工具を使用する等手作業によるところが多いので、均一な加工が難しい上にどうしても製造コストが高くなってしまう。
【0004】
そのため、これらを改善する方法として、ベルトサンダーが用いられることがある。
特にワークの加工に適した比較的広い面積の加飾を行うことができるベルトサンダーはワイドベルトサンダーといわれ、その概略構成は
図10に示すように、本体フレーム11の一定位置に案内ローラ13と駆動ローラ12が設けられており、またその上方には流体圧シリンダ装置15により上方へ押圧移動される可動式の案内ローラ14が設けられている。そして、これらローラ12、13、14には広巾の研磨ベルト16が掛け回してある。研磨ベルト16の下方にはワーク支持搬送装置19が設けてあり、この支持搬送装置19は案内ローラ17と駆動ローラ18を対向状に設け、これらローラ17、18間に無端状の搬送ベルトを掛け回した構成となっている。使用する際には、研磨ベルト16を周回移動させた状態の下で、ワークWを研磨ベルト16の下部に供給するように行うことで、ワークWはワーク支持搬送装置19で搬送される過程で研磨ベルト16によって研磨される。
【0005】
このようなワイドベルトサンダーは通常、ワークを平坦面に加工するために使用されるものであるが、使用時に工夫をすることでダメージ傷を形成するためにも使用できる。
ワイドベルトサンダーでダメージ傷を形成させる場合には、ワイドベルトサンダーに使用するサンドペーパーの粒度を変えることで、ダメージ傷の深さと幅等を調整することが行われる。
例えば、サンドペーパーの粒度に粗いものを使用すれば、ダメージ傷の形状は深く太いものが形成される。
なお、一般的にはダメージ傷に用いるサンドペーパーの粒度は比較的粗いものとなる場合が多く、その場合には、特にサンドペーパーを比較的大きな加圧力でワークの加工対象面に押圧接触させなくてはならないが、一般的なワイドベルトサンダーではそのようなことは想定していないので、それを実現するための適切な構成は考慮されていない。
また、この場合、研磨ベルトが回転していると、ワークに接触する研磨ベルトの研磨面は常に変化するので、そのままでは研磨面によって形成される研磨傷の長さや深さを均一で規則的にワークに反映させることができない(
図9参照)。
【0006】
また、1300mm幅を超えるサイズのワークを加工できるワイドベルトサンダーは一般的ではないので、通常よく使われる1300~2400mm幅サイズのワークに短時間で機械的にダメージ傷をいれるのは、現実的ではない。
仮に1300mm幅以上のワークサイズを加工できるワイドベルトサンダーを製造したとしても、ワイドベルトサンダーの構造上、ロールシャフトが長くなってしまうため、ワークに対して均一に圧力をかけることができない。
それ故、均一にダメージ傷をいれるのが困難となってしまう。
具体的には通常の場合(
図11の(a)参照)と比較して、ロールシャフトが長いと、
図11の(b)のようにロールシャフトの内側よりも端側にかかる圧力の方が大きくなってしまう。そのため、ワークの内側にはあまりダメージ傷が入らないのに対して、外側には多くのダメージ傷が入ってしまい、施工不良の原因となってしまう(
図9参照)。
結局、ワイドベルトサンダーでは木材由来のナチュラル感と迫力を表現することは難しい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたもので、木本来のナチュラル感と迫力の両者を合わせ持ち、製造コストが抑えられ、立体感や素材感のある高意匠の化粧板であるダメージ加工製品、ダメージ加工機及びダメージ加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明者はこのような従来の欠点を補うべく鋭意研究を重ねた結果、本発明に到達したものであって、上記目的達成のため、請求項1の発明のダメージ加工機は、交換可能なサンドペーパーと、ワークを移動させるワーク駆動装置と、前記サンドペーパーをワークの加工対象面に任意の加圧力で押圧接触させる加圧パッド1と、を備え
、前記サンドペーパーはワークの移動中に、その移動方向には移動せず、かつ、その移動方向と略垂直方向に移動可能である、ことを特徴とする構成とした。
この構成により、ワーク駆動装置により移動するワークの加工対象面に交換可能なサンドペーパーが加圧パッド1で押圧接触されて、適度に均一で規則的な複数のダメージ傷を形成することができる。
すなわち、従来の技術ではワイドベルトサンダーのように、研磨ベルトの回転によって、加工するのが一般的なので、ワークの加工対象面には、
図9のようにムラのある研磨傷が生じてしまう。
そのため、ワイドベルトサンダーでは高意匠のダメージ傷を形成することは困難である。その点、本発明におけるサンドペーパーは加圧パッドでワークに押圧接触された状態で、ワークの移動によりワークの加工対象面にダメージ傷を形成するものなので、
図9のようなムラのある研磨傷が生ずることは少なくなり、意匠性に優れたダメージ傷を形成することができる。
ここで、本発明の加圧パッドは、ワークとの接触面が長方形で、その長辺はワークの加工時の幅寸法(通常はワークの長辺)よりも長い寸法であることが望ましい。
このことにより、1回の工程だけでダメージ傷を形成することが可能となる。
なお、本発明で使用するサンドペーパーという用語について、単に紙やすりという意味だけでなく、研磨面もしくは研削面を持ち、研磨もしくは研削する用途のものであれば、いかなるものも本発明のサンドペーパーに該当し得る。また、サンドペーパーは、無端でも、無端でなくともよく、何れも本発明に含まれる。例えば、一般に広く市販されている研磨ベルト等は本発明のサンドペーパーに含まれる。
【0009】
また、ワークの移動中にサンドペーパーをワークの移動方向と略垂直方向に移動させることで、斜め方向のダメージ傷や規則正しいループを描いたダメージ傷を作成することができ、意匠性に優れた様々なダメージ傷を形成することができる。
また、ワークの幅分のサンドペーパーを移動させるだけで、ワークに対して新たなサンドペーパーを配置することができ、容易にサンドペーパーを交換することが可能となる。
また、サンドペーパーがワークの移動中にその移動方向には移動しないことによって、ムラのある研磨傷が生じるのをさらに防ぐことも可能となる。
【0010】
また、請求項
2の発明のダメージ加工機は
交換可能なサンドペーパーと、ワークを移動させるワーク駆動装置と、前記サンドペーパーをワークの加工対象面に任意の加圧力で押圧接触させる加圧パッド1と、を備え、前記サンドペーパーはワークの移動中に、その移動方向には移動せず、前記加圧パッド1はワークの加工対象面に対する前記サンドペーパーの接触面が均等の力で押し付けられるように構成され、かつ、前記加圧パッド1はワークが移動しても移動しないことを特徴とする。
この構成により、前述したワイドベルトサンダーのロールシャフト(
図11参照)とは異なり、寸法の大きなワークであったとしても、そのワークの加工対象面に対して均一に圧力をかけ均一なダメージ傷をつけることができる。
具体的には、加圧パッド1の長辺方向に等間隔に配置された複数のエアーパッドのそれぞれを調整することによって、サンドペーパーをワークの加工対象面に均等の力で押し付けることができる。
また、サンドペーパーがワークの移動中にその移動方向には移動しないことによって、ムラのある研磨傷が生じるのをさらに防ぐことも可能となる。
また、加圧パッド1はワークが移動しても
移動しないので、加圧パッド1の移動に伴う加圧力の変化等が生ずることがなく、正確に任意の圧力で加圧することができる。
これにより、ワークの加工対象面に均一なダメージ傷を形成することが可能となる。
特に、それぞれのエアーパッドに圧力センサーを設けて、ワーク移動中でもリアルタイムにその圧力センサーの値を測定し、常に適切な圧力となるように、それぞれのエアーパッドを調整することが望ましい。
【0011】
また、請求項
3の発明のダメージ加工機は加圧パッド1の長辺の長さは1300mm以上であることを特徴とする。
前述のように、大きなワークに対してダメージ加工する場合には、従来からあるワイドベルトサンダーを使用するのが一般的である。この際使用できるワークの最大幅は、通常は1300mmであり、最大でも1340mmを超えることはない。この値を超えてしまうと、ロールシャフトが長くなってしまって、ワークに対して均等な押圧をかけることができず、
図9で見られるようにワークの中心部分と端部分とで傷ムラができてしまう。
請求項4の構成により、従来のワイドベルトサンダーで使用できる長さを超えるワークであっても、ダメージ傷を形成することが可能となる。
特に、加圧パッド1の長辺の長さが1820mm以上であれば、通常サイズのワークの多くを利用することができ、さらに、2430mm以上であれば、特大サイズのワークも利用することができる。
【0012】
また、請求項4の発明のダメージ加工機は加圧パッド1と対向する側にさらに任意の加圧力で押圧接触させる加圧パッド2を備え、前記加圧パッド1、2とで、前記サンドペーパーとワークを挟み込むことを特徴とする。
この構成により、加圧パッド1と加圧パッド2とで、押圧接触状態の高度な調整が可能となる。
このことにより、具体的にはワークの移動中にリアルタイムでサンドペーパー及びワークにかかる加圧力を両側から微調整させて、ダメージ傷の大きさを変化させたりすることで、様々な高意匠の加工がしやすくなる。また、ワークの両面にサンドペーパーを押し付けて、ワークの両面を同時に加工対象面とする際にも有効である。
【0013】
また、請求項5の発明のダメージ加工機は加圧パッド2がワークの加工対象面に対する前記サンドペーパーの接触面が均等の力で押し付けられるように構成され、かつ、ワークが移動しても固定的であることを特徴とする。
この構成により、寸法の大きなワークであったとしても、ワークの加工対象面に対して、さらに均一に圧力をかけ均一なダメージ傷をつけることができる。
具体的には、加圧パッド2に等間隔に配置された複数のエアーパッドのそれぞれを調整することによって、サンドペーパーをワークの加工対象面にさらに均等の力で押し付けることができる。
また、加圧パッド2の長辺方向はワークが移動しても固定的であるので、加圧パッド2の移動に伴う加圧力の変化等が生ずることがなく、正確に任意の圧力で加圧することができる。
これにより、ワークの加工対象面にさらに均一なダメージ傷を形成することが可能となる。
特に、それぞれのエアーパッドに圧力センサーを設けて、ワーク移動中でもリアルタイムにその圧力センサーの値を測定し、常に適切な圧力となるように、それぞれのエアーパッドを調整することが望ましい。
【0014】
また、請求項6の発明のダメージ加工機は加圧パッド2の長辺の長さは1300mm以上であることを特徴とする。
この構成により、請求項4の構成と同様、従来のワイドベルトサンダーで使用できる長さを超えるワークであっても、ダメージ傷を形成することが可能となる。
【0015】
また、請求項7の発明のダメージ加工機はサンドペーパーを移動させる駆動ローラを備えたことを特徴とする。
この構成により、駆動ローラによってサンドペーパーを移動させることができるので、サンドペーパーの移動を制御し易くなる。また、サンドペーパーを移動させる方向、すなわちワークの移動方向と略垂直方向の両端にそれぞれ対向するように2つのローラを備え、一方だけを駆動ローラ、或は両方とも駆動ローラとしてもよい。両方とも駆動ローラとすれば、サンドペーパーを一方向だけでなく、反対方向にも移動させることが可能となる。
【0016】
また、請求項
8の発明のダメージ加工方法はワーク駆動装置によって移動するワークの加工対象面に、加圧パッド1によりサンドペーパーを任意の加圧力で押圧接触させて、ワークにダメージ傷を形成する
方法であって、前記サンドペーパーはワークの移動中に、その移動方向には移動せず、かつ、その移動方向と略垂直方向に移動可能である、ことを特徴とする。
この構成により
、請求項1について前述した内容と同様に、ワーク駆動装置により移動するワークの加工対象面にサンドペーパーが加圧パッド1で押圧接触されて、適度に均一で規則的な複数のダメージ傷を形成することができる。
すなわち、サンドペーパーは加圧パッドでワークに押圧接触された状態で、ワークの移動によりワークの加工対象面にダメージ傷を形成するものなので、
図9のようなムラのある研磨傷が生ずることはなく、意匠性に優れたダメージ傷を形成することができる。
【0017】
また、請求項
9の発明のダメージ加工方法はワーク駆動装置によって移動するワークの加工対象面に、加圧パッド1によりサンドペーパーを任意の加圧力で押圧接触させて、ワークにダメージ傷を形成するダメージ加工方法であって、
前記サンドペーパーはワークの移動中に、その移動方向には移動せず、前記加圧パッド1はワークの加工対象面に対する前記サンドペーパーの接触面が均等の力で押し付けられるように構成され、かつ、前記加圧パッド1はワークが移動しても
移動しないことを特徴とする。
この構成により、
前述したワイドベルトサンダーのロールシャフト(図11参照)とは異なり、寸法の大きなワークであったとしても、そのワークの加工対象面に対して均一に圧力をかけ均一なダメージ傷をつけることができる。
具体的には、加圧パッド1の長辺方向に等間隔に配置された複数のエアーパッドのそれぞれを調整することによって、サンドペーパーをワークの加工対象面に均等の力で押し付けることができる。
また、サンドペーパーがワークの移動中にその移動方向には移動しないことによって、ムラのある研磨傷が生じるのをさらに防ぐことも可能となる。
また、加圧パッド1はワークが移動しても移動しないので、加圧パッド1の移動に伴う加圧力の変化等が生ずることがなく、正確に任意の圧力で加圧することができる。
これにより、ワークの加工対象面に均一なダメージ傷を形成することが可能となる。
特に、それぞれのエアーパッドに圧力センサーを設けて、ワーク移動中でもリアルタイムにその圧力センサーの値を測定し、常に適切な圧力となるように、それぞれのエアーパッドを調整することが望ましい。
【発明の効果】
【0018】
以上詳述したように、本発明によれば、木本来のナチュラル感と迫力の両者を合わせ持ち、製造コストが抑えられ、立体感や素材感のある高意匠の化粧板であるダメージ加工製品、ダメージ加工機及びダメージ加工方法を提供できるなどの効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態1によるダメージ加工製品を示す図である。
【
図2】本発明の実施形態2によるダメージ加工製品を示す図である。
【
図3】本発明の実施形態3によるダメージ加工製品を示す図である。
【
図4】本発明の実施形態4によるダメージ加工製品を示す図である。
【
図5】本発明の実施形態5によるダメージ加工製品を示す図である。
【
図6】本発明の実施形態6によるダメージ加工製品を示す図である。
【
図7】本発明の実施形態によるダメージ加工機を示す説明図である。
【
図8】ダメージ加工機によるワークを加工する際の説明図である。
【
図9】従来の研磨傷のついた加工製品の一例を示す図である。
【
図10】従来のワイドベルトサンダーを示す図である。
【
図11】従来のワイドベルトサンダーで使用されているロールシャフトにかかる力を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態の高意匠の化粧板であるダメージ加工製品、ダメージ加工機及びダメージ加工方法について図面に基づき説明する。尚、本発明は本実施形態の記載内容に限られるものではない。
【0021】
以下添付図面に従って、ダメージ加工機の実施形態を説明する。
【0022】
図7及び
図8は本発明のダメージ加工機の説明図である。ただし、説明しやすいように本体フレームや動力装置等は省略している。
図7はワークが配置されてない状態で、
図8はワークを配置して加工中の状態のダメージ加工機である。
【0023】
図8で示されるように、加圧パッド1と加圧パッド2の間にワーク11が不図示のベルトや駆動ローラ等によって運ばれてくる構成となっている。
なお、ワークを移動させるための駆動ローラを、ワークが加圧パッド1、2の間に挟まれ押圧加工される前の箇所と押圧加工された後加圧パッド1、2の間から出てきた後の箇所に、それぞれ上下に設けて、上下両方の駆動ローラでワークを挟んで移動させる構成が望ましい。この構成だと、加圧パッド1、2によってワークに大きな加圧力がかかったとしても、それぞれ上下両方の駆動ローラによる強い推進力でワークを移動させることができる。
【0024】
加圧パッド1の下側(ワーク側)にはサンドペーパーの研磨面がワークに接するように配置され、ローラ8とローラ9はサンドペーパーを移動させたり、巻いたりするために備えられている。
ここで、サンドペーパーのワークと接触する箇所が摩耗した場合には、ローラを回転することで、摩耗していないサンドペーパーに容易に変えることも可能である。
【0025】
また、ダメージ傷の大きさは、サンドペーパーの粗さとワークに加える圧力で調整することができる。
サンドペーパーの粗さはサンドペーパーの粒度として例えば100番台から40番台に変更することで行われる。この際も、サンドペーパーが巻かれたローラ自体を変更するだけでよい。
ダメージ傷を加工する場合、サンドペーパーの粒度は100以下が望ましい。粒度が10以上50以下の場合には、ワークの構成部材(例えば木繊維等)がちぎれて、木材の表面が毛羽立ったように加工することができ、立体感や使用感が増し、外観上使い古した木材を表現することができる。
特に粒度が24以上40以下の場合には、このような加工性も、外観もさらに良好となるので望ましい。
【0026】
ここで、
図7、8のようにサンドペーパーが無端のものでない場合には、サンドペーパーの両端は、それぞれローラ8及びローラ9に巻かれて接続固定された上で、加圧パッド1、2に挟まれている。サンドペーパーはこれらローラ8またはローラ9の何れかにさらに巻かれることで移動することができる。
また、サンドペーパーが無端のものである場合(不図示)には、サンドペーパーはローラ8及びローラ9、そして加圧パッド1に掛け回した構成となっている。
この場合、サンドペーパーはローラ8、9の回転により、移動することができる。
何れか、または、両方のローラが駆動ローラであることが望ましい。
【0027】
ワークに与える圧力は、エアーパッドの圧力を変更することで調整可能となる。
ここで、エアーパッド3による上部からの圧力が加圧パッド1に加わると、加圧パッド1はその圧力を均等の圧力に変えてサンドペーパーに伝え、それにより、サンドペーパーはワークの加工対象面に均等に圧力をかけることが可能となる。エアーパッド4による下部からの圧力も同様であり、この圧力が加圧パッド2に加わると、加圧パッド2はその圧力を均等の圧力に変えてワークに均等な圧力をかけることができる。
このようにワークは加圧パッド1によって上側から、また、加圧パッド2によって下側から均等に圧力を加えられる一方で、
図8の矢印方向へ移動する。この際、加圧パッド1、2とも移動せずに固定的である。また、加圧パッド1の下側に配置されたサンドペーパーはワークの移動方向には移動しないように構成されている。
それにより、サンドペーパーとワークが擦れることになり、ワークにダメージ傷をつけることができるようになる。
【0028】
本発明のダメージ加工機では、サンドペーパーのワークとの接触部分が、ワークの移動方向に対して固定的になるように構成できるので、移動方向に沿った傷をワークの一方の端側からそれに対向する他方の端側まで連続して作成することができる。
すなわち、サンドペーパーの多数の研磨粒子により、適度に規則性を持った連続的な複数のダメージ傷として、次に説明する
図1~
図6で示された実施形態1~実施形態6のように本物の木目のような加飾をつけることにより、このような多様なデザインを表現することができる。
【0029】
ワークが矢印方向に移動している状態でサンドペーパーを移動させず固定しておけば、
図1に示す実施形態1のようにワークには途切れることの少ない直線状のダメージ傷をつけることができる。
【0030】
また、ワークをダメージ加工機に斜めの角度をつけて設置した場合には、
図2に示す実施形態2のようにワークへの直線状のダメージ傷を斜めにつけることができる。
【0031】
このように直線状のダメージ傷の入ったワークを再度ダメージ加工機に反対側に斜めの角度をつけて設置すると、
図2とは逆側に斜めのダメージ傷をつけることができるので、両者が一体化されて
図3で示す実施形態3のようなダメージ傷をつけることができる。
【0032】
なお、ワークをダメージ加工機に斜めの角度をつけて設置せずとも、ワークが
図8の矢印方向に移動している状態で、ローラ8またはローラ9のいずれかを駆動(サンドペーパーの巻取り)させ、サンドペーパーをワークの移動方向に対して垂直方向に一定速度で移動させることによって、
図2及び
図3で示すようなダメージ傷をつけることもできる。
【0033】
これと同様であるが一定速度ではなく、速度を早くしたり遅くしたりと調整することによって、
図4で示す実施形態4のような曲線のダメージ傷をつけることができる。
【0034】
さらにローラ8とローラ9の何れも駆動(サンドペーパーの巻取り)させることで、
図5や
図6で示す実施形態5、6のようなワークの移動方向に対称的な曲線のダメージ傷をつけることができる。ここで、
図6は
図5よりもそれぞれのローラの駆動を多くすることで、曲線が協調されたダメージ傷を示している。
【0035】
それぞれのローラは回転速度や回転方向を変えることができるように構成されているので、このような規則的な曲線の形状を自由に調整することが可能となっている。
【0036】
さらに、ワークの加工対象面の反対側の面も加工対象面である場合には、その加工対象面に対応した別のサンドペーパーを押圧接触させるとよい。
この場合、別のサンドペーパーを移動させるために、ローラ8、9に相当する別の2つのローラを設けるのが望ましい。
【0037】
また、本発明のダメージ加工機で加工したダメージ傷のついたワークを塗装すると、ダメージ傷の部分に多くの塗料が取り込まれ、より濃い色となり、ダメージ傷の無い部分とダメージ傷のある部分との違いが協調され、より一層立体感と迫力が増加する。
この際に塗布する塗料は水性でも構わないが、油性の方がよりしっかりとワークに塗料が定着するので望ましい。
さらにワークの使用感を増すために、前述の塗料が完全に乾いた後、さらに色違いの塗料を塗り、それが乾いた後に再度ダメージ加工機を使用することもできる。
この際に塗布する塗料については油性で構わないが、水性の方が塗装後の加工性が良く望ましい。
また、この際にダメージ加工機で使用する研磨部材の粒度は何れでも構わないが、特に40以上100以下の粒度だと最初に塗装した面を適度に表現することができる。
こうすることによって、最初の塗装により実現された、木目に類似した加飾に加えて、二度目の塗装により、さらに使用感の増した加飾を実現できる。
【符号の説明】
【0038】
1 加圧パッド(上)(上方向からワークに圧力を加える)
2 加圧パッド(下)(下方向からワークに圧力を加える)
3 エアーパッド(上)(上方向から加圧パッド1に圧力を加える)
4 エアーパッド(下)(下方向から加圧パッド2に圧力を加える)
6 サンドペーパー
7 サンドペーパーの移動方向の例
8 サンドペーパーが巻かれるローラ
9 サンドペーパーが巻かれるローラ