(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-17
(45)【発行日】2022-02-28
(54)【発明の名称】ワイヤボンディング装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/60 20060101AFI20220218BHJP
【FI】
H01L21/60 301G
(21)【出願番号】P 2019570709
(86)(22)【出願日】2019-01-30
(86)【国際出願番号】 JP2019003214
(87)【国際公開番号】W WO2019155965
(87)【国際公開日】2019-08-15
【審査請求日】2020-06-29
(31)【優先権主張番号】P 2018019207
(32)【優先日】2018-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】519294332
【氏名又は名称】株式会社新川
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100170818
【氏名又は名称】小松 秀輝
(72)【発明者】
【氏名】内田 洋平
(72)【発明者】
【氏名】平良 尚也
【審査官】今井 聖和
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-027818(JP,A)
【文献】特開2001-141553(JP,A)
【文献】特開平10-260091(JP,A)
【文献】特開平07-263481(JP,A)
【文献】特開2014-103286(JP,A)
【文献】国際公開第2017/217385(WO,A1)
【文献】実開平07-034331(JP,U)
【文献】実開昭54-081778(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/60
G01L 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のボンディングエリアにおいてワイヤを電極に押圧しつつ接合するボンディングツールを備えるワイヤボンディング装置であって、
前記ボンディングツールを上下方向に沿って駆動する駆動源と、
前記駆動源に接続され、前記ボンディングツールの押圧荷重を制御する制御部と、
前記ボンディングエリアの外側に片持ち梁状に支持されて配置され、前記ボンディングツールの先端で押圧される押圧点を有して前記押圧荷重で歪みを生じる板バネと、
前記板バネの上面に設けられた第1歪みゲージと、前記板バネの下面に設けられた第2歪みゲージにより、前記押圧点への押圧荷重を取得する取得部と、
前記取得部の取得結果に基づいて、予め設定された前記押圧荷重の目標値と前記押圧荷重の実測値との荷重誤差が所定範囲内となるように、前記制御部の較正処理を実施する較正部と、を備える、ワイヤボンディング装置。
【請求項2】
前記較正処理は、
前記ボンディングツールが前記
板バネを押圧していない非押圧状態での前記
板バネの第1歪みと、前記制御部によって前記押圧荷重が前記目標値となるように制御されている場合において前記ボンディングツールが前記
板バネを当該押圧荷重で押圧している押圧状態での前記
板バネの第2歪みと、に基づいて、前記押圧荷重の前記実測値を算出する実測処理と、
算出した前記実測値と前記押圧荷重の目標値とから荷重誤差を算出すると共に、前記荷重誤差と予め設定された荷重閾値とを比較する比較処理と、
前記荷重誤差が前記荷重閾値以上である場合、前記荷重誤差が小さくなるように前記制御部における前記駆動源の制御データを変更する補正処理と、を含み、
前記較正部は、
前記荷重誤差が前記荷重閾値未満となるまで、前記実測処理、前記比較処理、及び前記補正処理を繰り返す、請求項1記載のワイヤボンディング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ワイヤボンディング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ワイヤボンディング装置を開示する。このワイヤボンディング装置は、ボンディングツールと、駆動源と、制御部と、を備える。ボンディングツールは、所定のボンディングエリアにおいてワイヤを電極に押圧しつつ接合する。駆動源は、ボンディングツールを上下方向に沿って駆動する。制御部は、ボンディングツールの押圧荷重を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、ワイヤボンディング装置が備えるボンディングツールの押圧荷重は、例えば一定期間の連続動作によって経時的に変化することがある。このため、ワイヤボンディング装置が備えるボンディングツールは、適切な押圧荷重の維持を図るため、押圧荷重の較正が定期的に行われる。
【0005】
従来、ボンディングツールの押圧荷重の較正作業は、オペレータによって実施される。この較正作業は、例えば、ワイヤボンディング装置を停止状態とし、ボンディングエリア内に取り付けたロードセルを用いて行われる。この較正作業では、ワイヤボンディング装置を停止させる期間として、少なくとも、ロードセルの取り付け及び取り外しに要する時間と、オペレータが押圧荷重の較正作業をするために要する時間と、が必要となる。その結果、較正作業の実施は、ワイヤボンディング装置の生産性を低下させる可能性がある。
【0006】
そこで、本開示は、生産性の向上と、ボンディングツールの押圧荷重の較正の実施とを両立可能なボンディング装置を説明する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一形態に係るワイヤボンディング装置は、所定のボンディングエリアにおいてワイヤを電極に押圧しつつ接合するボンディングツールを備えるワイヤボンディング装置であって、ボンディングツールを上下方向に沿って駆動する駆動源と、駆動源に接続され、ボンディングツールの押圧荷重を制御する制御部と、ボンディングエリアの外側に配置され、押圧荷重で歪みを生じる弾性部と、弾性部の歪みを取得する取得部と、取得部の取得結果に基づいて、予め設定された押圧荷重の目標値と押圧荷重の実測値との荷重誤差が所定範囲内となるように、制御部の較正処理を実施する較正部と、を備える。
【0008】
本開示の一形態に係るワイヤボンディング装置は、ボンディングツールによって弾性部を押圧することにより、弾性部に歪みを生じさせる。ワイヤボンディング装置は、較正部によって制御部の較正処理を実施する。この較正処理は、取得部で取得した弾性部の歪みの取得結果に基づいて、予め設定された押圧荷重の目標値と押圧荷重の実測値との荷重誤差が所定範囲内となるように、ボンディングツールの押圧力を制御する。このワイヤボンディング装置によれば、弾性部がボンディングエリアの外側に配置されている。その結果、例えばボンディングエリア内にロードセルを取り付ける場合と比べて、較正処理の実施のためのワイヤボンディング装置の停止時間を短くすることができる。したがって、ワイヤボンディング装置の動作時間を増加させることができる。その結果、ワイヤボンディング装置は、生産性の向上と、ボンディングツールの押圧荷重の較正の実施とを両立させることができる。
【0009】
本開示の一形態に係るワイヤボンディング装置では、較正処理は、ボンディングツールが弾性部を押圧していない非押圧状態での弾性部の第1歪みと、制御部によって押圧荷重が目標値となるように制御されている場合においてボンディングツールが弾性部を当該押圧荷重で押圧している押圧状態での弾性部の第2歪みと、に基づいて、押圧荷重の実測値を算出する実測処理と、算出した実測値と押圧荷重の目標値とから荷重誤差を算出すると共に、荷重誤差と予め設定された荷重閾値とを比較する比較処理と、荷重誤差が荷重閾値以上である場合、荷重誤差が小さくなるように制御部における駆動源の制御データを変更する補正処理と、を含み、較正部は、荷重誤差が荷重閾値未満となるまで、実測処理、比較処理、及び補正処理を繰り返してもよい。この場合、非押圧状態での第1歪みを基準として押圧状態での第2歪みに応じて押圧荷重の実測値を算出する。したがって、例えば弾性部の変位に応じて押圧荷重の実測値を算出する場合と比べて基準がばらつき難くなる。その結果、押圧荷重の実測値を高精度に算出することができる。したがって、較正処理を精度良く実施することが可能となる。
【0010】
本開示の一形態に係るワイヤボンディング装置では、弾性部は、片持ち梁状に支持された板バネであり、取得部は、板バネの上面に設けられた第1歪みゲージと、板バネの下面に設けられた第2歪みゲージと、を含んでもよい。この場合、弾性部の構成を小型且つ簡素とすることができる。したがって、ワイヤボンディング装置の省スペース化を図ることが可能となる。また、第1歪みゲージ及び第2歪みゲージが板バネの両面に設けられている。したがって、温度変化に伴う板バネの伸縮歪みが相殺される。その結果、較正処理を実施するために、ワイヤボンディング装置のボンディングエリアの温度が低下するまで待機する必要がない。その結果、ワイヤボンディング装置を連続動作させることが可能となり、生産性を一層向上させることができる。
【0011】
本開示の一形態に係るワイヤボンディング装置では、弾性部は、片持ち梁状に支持され、長手方向の一端部及び他端部に挟まれた中間部において一端部及び他端部よりも低い剛性を有する低剛性部が設けられた梁材であり、取得部は、梁材の一端部の上面及び下面に設けられた第3歪みゲージと、梁材の他端部の上面及び下面に設けられた第4歪みゲージとを含んでもよい。この場合、中間部には低剛性部が設けられている。その結果、一端部と中間部との境界部及び他端部と中間部との境界部において弾性部の歪みが大きくなる。弾性部の歪みの増大によれば、梁材の歪みを感度良く取得することができる。第3歪みゲージ及び第4歪みゲージが梁材の両面に設けられている。その結果、温度変化に伴う梁材の伸縮歪みが相殺される。したがって、較正処理を実施するために、ワイヤボンディング装置のボンディングエリアの温度が低下するまで待機する必要がない。その結果、ワイヤボンディング装置を連続動作させることが可能となり、生産性を一層向上させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本開示に係るボンディング装置は、生産性の向上と、ボンディングツールの押圧荷重の較正の実施とを、両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態のワイヤボンディング装置の平面図である。
【
図2】
図2は、
図1のワイヤボンディング装置の構成例を示す概略構成図である。
【
図3】
図3の(a)は、
図1の板バネ組立体の斜視図である。
図3の(b)は、
図1の板バネ組立体の平面図である。
図3の(c)は、
図1の板バネ組立体の側面図である。
【
図4】
図4の(a)は、
図3の板バネ組立体の非押圧状態を例示する側面図である。
図4の(b)は、
図3の板バネ組立体の押圧状態を例示する側面図である。
【
図5】
図5は、
図1に示すワイヤボンディング装置の動作例のフローチャートである。
【
図6】
図6は、較正処理を例示するフローチャートである。
【
図7】
図7の(a)は、弾性部の変形例の側面図である。
図7の(b)は、
図7の(a)の弾性部の非押圧状態を例示する側面図である。
図7の(c)は、
図7の(a)の弾性部の押圧状態を例示する側面図である。
【
図8】
図8は、板バネ組立体の他の変形例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示のワイヤボンディング装置について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を用い、重複する説明を省略する。
【0015】
[ワイヤボンディング装置の構成]
図1は、本開示のワイヤボンディング装置の平面図である。
図1に示されるように、ワイヤボンディング装置100は、キャピラリ15(ボンディングツール)を備える。キャピラリ15は、所定のボンディングエリアBAにおいてワイヤを電極に押圧することにより、ワイヤを電極に接合する。電極は、半導体チップ等の電子部品19の電極、電子部品19が取り付けられた基板18の電極等を含む。なお、以下の説明において、便宜上、ガイドレール16の延在方向をX方向とする。X方向に直交する水平方向をY方向とする。X方向及びY方向に直交する上下方向をZ方向とする。
【0016】
ワイヤボンディング装置100は、フレーム10と、XYテーブル11と、ボンディングヘッド12と、ボンディングアーム13と、超音波ホーン14と、キャピラリ15と、一対のガイドレール16と、ヒートブロック17と、板バネ組立体20と、マイクロコンピュータ60(
図2参照)と、を備えている。XYテーブル11は、フレーム10の上に設けられている。ボンディングヘッド12は、XYテーブル11の上に設けられている。ボンディングアーム13は、ボンディングヘッド12に設けられている。超音波ホーン14は、ボンディングアーム13の先端に取り付けられている。キャピラリ15は、超音波ホーン14の先端に取り付けられている。一対のガイドレール16は、基板18を所定の水平方向に沿って案内する。ヒートブロック17は、ボンディングエリアBAを加熱する。板バネ組立体20は、キャピラリ15の押圧荷重の較正に用いられる。マイクロコンピュータ60は、ワイヤボンディング装置100全体の動作を制御する。キャピラリ15の押圧荷重とは、キャピラリ15でワイヤを電極に押圧する際にワイヤに作用する荷重である。キャピラリ15の押圧荷重は、いわゆるボンド荷重である。
【0017】
図2に示されるように、モータ(駆動源)40は、ボンディングヘッド12の内部に設けられている。モータ(駆動源)40は、ボンディングアーム13をZ方向に駆動する。モータ40は固定子41と、可動子42と、を有する。固定子41は、ボンディングヘッド12に固定されている。可動子42は、X方向に沿って延在する回転軸45の周りに回動する。
【0018】
モータ40の固定子41には、電源49から駆動電力が供給されている。固定子41に供給される電流値は、電流センサ51で検出される。電流値は、モータドライバ48によって調整される。
【0019】
可動子42は、ボンディングアーム13の後部と一体となっている。可動子42が回動すると、ボンディングアーム13の先端は、Z方向に沿って揺動する。可動子42の回転軸45には、可動子42の回転角度φを検出する角度センサ52が取り付けられている。
【0020】
可動子42の回転軸45の回転中心43のZ方向位置(高さ)は、ボンディング面のZ方向位置と略同一である。回転中心43とは、
図2における一点鎖線46と一点鎖線47との交点である。ボンディング面は、
図2における一点鎖線47にて示される面である。ボンディング面は、例えば、ヒートブロック17の上に基板18が位置している場合の電子部品19の電極の上面に沿う仮想的な平面である。
【0021】
ボンディングアーム13の先端には、超音波ホーン14のフランジ14bがボルト14cで固定されている。ボンディングアーム13の先端部分の下側面には、凹部13aが設けられている。凹部13aは、超音波ホーン14の超音波振動子14aを収容する。超音波ホーン14の先端には、キャピラリ15が取り付けられている。したがって、可動子42が回動すると、キャピラリ15は、電子部品19の電極面及び板バネ31の上面に対して略垂直方向に上下方向に沿って揺動する。つまり、モータ40は、ボンディングツールであるキャピラリ15を上下方向に沿って駆動する。
【0022】
ヒートブロック17は、フレーム10上において、一対のガイドレール16の間に取り付けられている。ヒートブロック17は、1又は複数のヒータ17aを有する。ヒータ17aは、キャピラリ15によってワイヤが電極に押圧されつつ接合されるために適した温度となるように、ボンディングエリアBA(
図1参照)を加熱する。ボンディングヘッド12の近傍には、温度センサ53が取り付けられている。温度センサ53は、ワイヤボンディング装置100の代表温度を検出する。
【0023】
再び
図1に示すように、ボンディングエリアBAは、例えばXY平面に沿って規定される仮想的な領域である。ボンディングエリアBAは、ヒートブロック17上の領域である。ヒートブロック17上の領域では、ヒートブロック17のヒータ17aから提供される熱によりワイヤの接合のために好適な温度条件が得られる。ボンディングエリアBAは、例えば、略矩形状の領域であり、X方向においてボンディングアーム13の延在方向に沿う仮想線に関して線対称である。ボンディングエリアBAは、X方向において、例えば、ヒートブロック17上に基板18が位置している場合に、X方向に沿って並ぶ電子部品19の少なくとも一部を含む。ボンディングエリアBAは、Y方向において、例えばヒートブロック17上に基板18が位置している場合に、Y方向に沿って並ぶ電子部品19の全てを含む。
【0024】
再び
図2に示すように、マイクロコンピュータ60は、演算及び信号処理を行うCPU[Central Processing Unit]と、ROM[Read Only Memory]と、RAM[Random Access Memory]のメモリと、を備える。マイクロコンピュータ60には、電流センサ51、角度センサ52、及び温度センサ53の検出信号が少なくとも入力される。マイクロコンピュータ60には、図示しない撮像装置等から撮像情報が入力されてもよい。ROMは、ワイヤボンディング装置100を動作させるプログラム及びプログラムの実行に必要なデータを格納する。
【0025】
マイクロコンピュータ60は、制御部61を有している。制御部61は、モータ40及びXYテーブル11を制御して接合処理を行う。接合処理とは、例えば、ボンディング動作させる処理を含む。制御部61は、入力された撮像情報に基づいて、基板18、電子部品19及び電極の位置情報を取得する。制御部61は、メモリに格納されたボンディングプログラムを実行することで、モータ40及びXYテーブル11を動作させる。この動作は、各センサ51,52,53の検出信号、取得した位置情報、及び、予めメモリに格納された電子部品19の種類及び電極のピッチの情報等に基づく。
【0026】
制御部61は、接合処理として、具体的には、モータ40の固定子41に供給する電流の指令値を決定する。また、制御部61は、接合処理として、電流の指令値をモータドライバ48に出力する。制御部61は、固定子41に印加される電流値が電流の指令値となるようにモータドライバ48を制御する。その結果、固定子41に印加される電流値が調整される。制御部61は、キャピラリ15の押圧荷重を制御する。その結果、ワイヤは、印加された電流に応じた押圧荷重で電極に押圧される。この押圧荷重は、例えば、後述の押圧荷重の目標値としてよい。制御部61は、当該押圧荷重でキャピラリ15がワイヤを電極に押圧している状態で超音波振動子14aを振動させる。その結果、キャピラリ15によって押圧されたワイヤは、電極に接合される。
【0027】
制御部61は、XYテーブル11(
図1,
図2参照)に接続されている。制御部61は、キャピラリ15のX方向及びY方向の位置の指令値をXYテーブル11に出力する。その結果、キャピラリ15のX方向及びY方向の位置は、キャピラリ移動可能エリアCA(
図1参照)の内部となる。制御部61は、キャピラリ15のXY方向の位置を調整する。その結果、XYテーブル11は、キャピラリ15のXY方向の位置が指令した位置となるように駆動される。
【0028】
キャピラリ移動可能エリアCAは、例えば、ボンディングエリアBAに沿って規定される仮想的な領域である。キャピラリ移動可能エリアCAは、ボンディングエリアBAよりも広い。キャピラリ移動可能エリアCAは、ボンディングエリアBAに対して、少なくともヒートブロック17のボンディングヘッド12側に広く延在している。キャピラリ移動可能エリアCAは、ボンディングエリアBAを包含していてもよい。
【0029】
マイクロコンピュータ60は、制御部61の較正処理を実施する較正部62を有している。較正処理の詳細は、後述する。
【0030】
[弾性部の構成]
図1に示されるように、板バネ組立体20は、フレーム10上において、ボンディングアーム13側のガイドレール16とヒートブロック17との間に取り付けられている。板バネ組立体20は、ヒートブロック17からの熱を遮るためのカバーを備えてもよい。
【0031】
図3の(a)は、
図1の板バネ組立体の斜視図である。
図3の(b)は、
図1の板バネ組立体の平面図である。
図3の(c)は、
図1の板バネ組立体の側面図である。
図3(a)に示されるように、板バネ組立体20は、ベース21と、支持台22と、フランジ26と、板バネ(弾性部)31と、を備えている。ベース21の形状は、四角い平板である。支持台22は、ベース21の上端部においてZ方向に突設されている。フランジ26は、ベース21の下端部においてY方向に突設されている。板バネ(弾性部)31は、支持台22の上端面に押さえ板25aを介してボルト25で固定されている。フランジ26には、ボルト孔27が設けられている。ボルト孔27は、フレーム10に板バネ組立体20をボルトで固定するためのものである。
【0032】
板バネ31は、例えば金属の薄板である。板バネ31の基端部31aは、支持台22の上端面に固定される。その結果、板バネ31は、片持ち梁状に支持されている。板バネ31は、支持台22の上端面からボンディングアーム13側に向かって先端部31bが突出するようにXY平面に沿って延在している。板バネ31は、キャピラリ15の押圧荷重で歪みを生じる。
【0033】
板バネ組立体20において、少なくとも板バネ31は、ボンディングエリアBAの外側に配置されている。板バネ31は、ボンディングエリアBAの外縁とキャピラリ移動可能エリアCAの外縁との間に配置されている。換言すると、板バネ31は、キャピラリ移動可能エリアCAの外縁よりも内側に配置されている。板バネ31は、ヒートブロック17のボンディングヘッド12側に延在するボンディングエリアBAの外縁に沿って延在するように配置されている。板バネ31は、XYテーブル11の駆動によりキャピラリ15が容易に到達可能な位置に配置されている。
【0034】
板バネ31の上面31cのZ方向における位置(高さ)は、例えば、上述のボンディング面のZ方向位置と略同一である。ボンディング面は、
図2における一点鎖線47にて示されている。板バネ31の上面31cは、例えば、キャピラリ15の一定の押圧荷重に対して一定の板バネ31の歪みを生じさせるための、押圧点Pを有する。
【0035】
板バネ31の上面31cには、歪みゲージ部54(第1歪みゲージ)が設けられている。板バネ31の下面31dには、歪みゲージ部55が設けられている。歪みゲージ部54及び歪みゲージ部55は、キャピラリ15の押圧荷重で生じる板バネ31の歪みを取得する。歪みゲージ部54,55の検出信号は、マイクロコンピュータ60に入力される。
【0036】
歪みゲージ部54が設けられた位置は、板バネ31の上面31cの基端部31a側において支持台22の上端面と重複しない。歪みゲージ部54は、板バネ31の基端部31a側において上面31cに沿って生じる歪みを取得する。歪みゲージ部54は、例えば、板バネ31の幅方向に並設された2枚の歪みゲージ54a及び歪みゲージ54bを含んでいる。
【0037】
歪みゲージ部55が設けられた位置は、板バネ31の下面31dの基端部31a側において支持台22の上端面と重複しない。歪みゲージ部(第2歪みゲージ)55は、板バネ31の基端部31a側において下面31dに沿って生じる歪みを取得する。歪みゲージ部55は、例えば、板バネ31の幅方向に並設された2枚の歪みゲージ55a及び歪みゲージ55bを含んでいる。
【0038】
歪みゲージ54a及び歪みゲージ55aは、上面31c及び下面31dのそれぞれにおいて、板バネ31を挟んで互いに対応する位置に取り付けられている。歪みゲージ54b及び歪みゲージ55bは、上面31c及び下面31dのそれぞれにおいて、板バネ31を挟んで互いに対応する位置に取り付けられている。歪みゲージ54a,54b,55a,55bとしては、例えば、ピエゾタイプの歪みセンサを用いることができる。
【0039】
[較正処理]
較正部62は、制御部61の較正処理を実施する。この較正処理は、歪みゲージ部54,55の取得結果に基づく。この較正処理によれば、押圧荷重の目標値と押圧荷重の実測値との荷重誤差が所定範囲内となる。較正部62の較正処理について詳述する。較正部62は、較正処理の一例として、以下に説明する実測処理、比較処理、及び補正処理を実施する。較正部62は、較正処理を、荷重誤差が予め設定された荷重閾値未満となるまで繰り返す。
【0040】
荷重誤差は、押圧荷重の目標値に対する押圧荷重の実測値の誤差である。押圧荷重の目標値は、キャピラリ15でワイヤを電極に押圧しつつ接合するために適切な押圧荷重である。押圧荷重の目標値は、予め設定されたキャピラリ15の押圧荷重である。押圧荷重の目標値は、所定値の押圧荷重であってもよい。押圧荷重の目標値は、当該所定値から一定の許容幅を含めた所定範囲の押圧荷重であってもよい。押圧荷重の目標値は、較正部62に予め記憶されていてもよい。
【0041】
較正部62は、実測処理の前に、メモリに格納された較正処理のプログラムを実行する。その結果、モータ40及びXYテーブル11が動作する。これにより、キャピラリ15は、ボンディングエリアBAの外側に移動する。その結果、キャピラリ15は、板バネ31の押圧点Pの上方に移動する。その後、制御部61は、実測処理において、モータ40を制御する。その結果、キャピラリ15は、板バネ31の押圧点Pを押圧する。
【0042】
較正部62は、実測処理として、押圧荷重の実測値を算出する。この実測処理は、歪みゲージ部54及び歪みゲージ部55の検出信号に基づく。具体的には、較正部62は、周知の手法により、押圧荷重の実測値を算出する。周知の手法とは、例えば、歪みゲージ部54及び歪みゲージ部55で構成されるブリッジ回路を用いた手法である。実測値の算出は、歪みゲージ部54及び歪みゲージ部55の取得結果と、予め記憶している板バネ31の質量、弾性係数等の物性値と、に基づく。較正部62は、板バネ31の歪みを検出する検出回路(アンプ)としての機能を有する。この較正部62の機能は、歪みゲージ54a,54b,55a,55bの検出信号に基づく。押圧荷重の実測値は、キャピラリ15の押圧荷重である。キャピラリ15の押圧荷重は、歪みゲージ部54,55で取得した板バネ31の歪みに基づいて算出される。
【0043】
図4の(a)は、
図3の板バネ組立体の非押圧状態を例示する側面図である。
図4の(a)に示されるように、較正部62は、非押圧状態である板バネ31の第1歪みを取得する。非押圧状態は、例えば、キャピラリ15が板バネ31を押圧していない状態である。非押圧状態は、キャピラリ15と板バネ31とが離間している状態である。第1歪みは、例えば、板バネ31の自重が押圧点Pに点荷重として作用していることによって板バネ31に生じる歪みである。較正部62は、第1歪みに基づいて第1実測荷重を算出する。第1実測荷重は、押圧荷重の実測値の算出における基準である。
【0044】
図4の(b)は、
図3の板バネ組立体の押圧状態を例示する側面図である。
図4の(b)に示されるように、較正部62は、押圧状態である板バネ31の第2歪みを取得する。押圧状態は、例えば、キャピラリ15が板バネ31の押圧点Pを押圧荷重で押圧している状態である。このとき、キャピラリ15に提供される押圧荷重は、制御部61によって目標値となるように制御されている。換言すると、板バネ31の押圧点Pを押圧している状態では、キャピラリ15の押圧荷重は、押圧荷重が目標値となるように制御部61によって制御されている。第2歪みは、板バネ31に生じる歪みである。この歪みは、板バネ31の自重と、押圧点Pに点荷重として作用するキャピラリ15の押圧荷重と、によって生じる。較正部62は、第2歪みに基づいて第2実測荷重を算出する。第2実測荷重は、キャピラリ15の押圧荷重と板バネ31の重量とを含む。
【0045】
較正部62は、第2実測荷重から第1実測荷重を減算する。その結果、第3実測荷重が算出される。第3実測荷重は、板バネ31の自重分を除いた、キャピラリ15の押圧の押圧荷重の実質的な値である。
【0046】
板バネ31の重量に相当する第1実測荷重が第2実測荷重に対して十分に小さく無視できる場合には、第2実測荷重の算出において第1実測荷重をゼロとしてもよい。この場合、上述の第1実測荷重の算出を省略すると共に、第3実測荷重として第2実測荷重を用いてもよい。
【0047】
較正部62は、比較処理として、第3実測荷重と押圧荷重の目標値とを利用して荷重誤差を算出する。さらに、較正部62は、算出した荷重誤差(例えば絶対値)と予め設定された荷重閾値とを比較する。荷重閾値は、制御部61の較正処理の完了を判定するための荷重誤差の許容範囲を規定する。荷重閾値は、較正部62に予め記憶されていてもよい。
【0048】
較正部62は、補正処理として、荷重誤差が荷重閾値以上である場合、荷重誤差が小さくなるように制御部61におけるモータ40の電流の指令値(制御データ)を変更する。具体的には、較正部62は、荷重誤差が荷重閾値以上であり、且つ、第3実測荷重が押圧荷重の目標値よりも大きい場合、第3実測荷重が小さくなるように制御部61におけるモータ40の電流の指令値を低減する。この場合、較正部62は、モータ40の電流の指令値を所定値ごとにステップ的に低減させてもよい。この較正部62の動作によれば、荷重誤差が荷重閾値未満となるまで複数回の較正処理を繰り返すことができる。
【0049】
較正部62は、荷重誤差が荷重閾値以上であり、且つ、第3実測荷重が押圧荷重の目標値よりも小さい場合、第3実測荷重が大きくなるように制御部61におけるモータ40の電流の指令値を増加する。この場合、較正部62は、モータ40の電流の指令値を所定値ごとにステップ的に増加させてもよい。この較正部62の動作によれば、荷重誤差が荷重閾値未満となるまで複数回の較正処理を繰り返すことができる。
【0050】
ワイヤボンディング装置100の動作例を、
図5及び
図6を参照しつつ説明する。
図5は、
図1に示すワイヤボンディング装置の動作例のフローチャートである。
図6は、較正処理を例示するフローチャートである。
【0051】
図5に示されるように、マイクロコンピュータ60は、ワイヤボンディング装置100を始動する(ステップS10)。ステップS10において、ワイヤボンディング装置100は、ヒートブロック17のヒータ17aを稼働させる。その後、ワイヤボンディング装置100は、ヒートブロック17の温度が所定の温度まで上昇するまで待機する。つまり、ワイヤボンディング装置100は、暖機を行う(ステップS11)。
【0052】
ワイヤボンディング装置100の暖機が完了すると、マイクロコンピュータ60は、上述の接合処理(ボンディング)を実施する(ステップS12)。例えば、制御部61は、ワイヤを電極に押圧する押圧荷重が目標値となるように、キャピラリ15の押圧荷重を制御する。制御部61は、キャピラリ15がワイヤを電極に押圧している状態で超音波振動子14aを振動させる。その結果、キャピラリ15によって押圧されたワイヤは、電極に接合される。ステップS12では、接合処理が繰り返し実施されるように、ワイヤボンディング装置100が連続的に動作する。
【0053】
続いて、マイクロコンピュータ60の較正部62は、制御部61の較正処理を実施する条件である較正実施条件が成立したか否かを判定する(ステップS13)。ステップS13の較正実施条件は、例えば1000時間等の所定期間の接合処理をワイヤボンディング装置100が連続して実施したか否かとしてもよい。
【0054】
ステップS13において、較正部62が、較正実施条件が成立していないと判定した場合、ステップS15に移行する。そして、マイクロコンピュータ60は、ワイヤボンディング装置100の運転を停止するか否かを判定する(ステップS15)。ステップS15において、較正部62が、ワイヤボンディング装置100の運転を停止しないと判定した場合、ステップS12に戻る。そして、マイクロコンピュータ60は、接合処理を継続させる。
【0055】
ステップS15において、較正部62が、ワイヤボンディング装置100の運転を停止すると判定した場合、マイクロコンピュータ60は、ワイヤボンディング装置100を停止する。つまり、マイクロコンピュータ60は、プログラムの動作を停止する。
【0056】
一方、ステップS13において、較正部62が、較正実施条件が成立していると判定した場合、較正部62は、較正処理を実施する(ステップS14)。
図6は、ステップS14の較正処理の具体例を示す。
【0057】
図6に示されるように、較正部62は、ヒータ17aの稼働状態を維持すると共に、XYテーブル11を動作させる。この動作の結果、キャピラリ15は、ボンディングエリアBAの外部へ移動する(ステップS20)。ステップS20では、キャピラリ15は、板バネ31の押圧点Pの上方に移動する。当該非押圧状態であるとき、板バネ31には第1歪みが生じている。較正部62は、非押圧状態であるときの板バネ31の第1歪みを取得する(ステップS21)。
【0058】
較正部62は、現時点での押圧荷重の目標値に相当する電流をモータ40に印加する。その結果、板バネ31は、キャピラリ15によって当該押圧荷重で押圧される(ステップS22)。当該押圧状態で、板バネ31は、第2歪みを生じる。較正部62は、押圧状態であるときに、板バネ31の第2歪みを取得する(ステップS23)。較正部62は、モータ40に印加されていた電流を減少する。その結果、キャピラリ15による板バネ31の押圧は、解除される(ステップS24)。
【0059】
較正部62は、第1歪み及び第2歪みに基づいて、押圧荷重の実測値を算出する(ステップS25)。ステップS25では、第1実測荷重と第2実測荷重とが算出される。さらに、ステップS25では、第1実測荷重及び第2実測荷重から第3実測荷重が算出される。なお、上述のステップS21~ステップS25が実測処理に相当する。
【0060】
較正部62は、第3実測荷重と押圧荷重の目標値とに基づいて、荷重誤差を算出する。さらに、較正部62は、算出された荷重誤差の絶対値と予め設定された荷重閾値とを比較する。この比較によれば、荷重誤差の絶対値が荷重閾値未満であるか否かが判定される(ステップS26)。このステップS26が比較処理に相当する。
【0061】
ステップS26において、荷重誤差の絶対値が荷重閾値以上であると判定された場合(ステップS26:NO)、押圧荷重の実測値が押圧荷重の目標値からずれている。したがって、押圧荷重の較正が必要である。そこで、較正部62は、荷重誤差が小さくなるように制御部61におけるモータ40の電流の指令値を変更する(ステップS27)。なお、このステップS27は補正処理に相当する。ステップS27の後、ステップS21に戻る。そして、実測処理が実施される。
【0062】
ステップS26において、荷重誤差の絶対値が荷重閾値未満であると判定された場合(ステップS26:YES)、押圧荷重の較正を行う必要はない。そこで、較正部62は、XYテーブル11を動作させる。その結果、キャピラリ15は、ボンディングエリアBAの内部へ移動する(ステップS28)。その後、
図5のステップS15に戻る。マイクロコンピュータ60は、ワイヤボンディング装置100の運転を停止するか否かを判定する。その結果、ボンディング動作が再開されるか、または、ワイヤボンディング装置100の運転が停止される。
【0063】
ワイヤボンディング装置100は、キャピラリ15を用いて板バネ31を押圧する。その結果、板バネ31に歪みが生じる。較正部62は、制御部61の較正処理を実施する。この処理は、歪みゲージ部54及び歪みゲージ部55で取得した板バネ31の歪みの取得結果に基づく。その結果、予め設定された押圧荷重の目標値と押圧荷重の実測値との荷重誤差が所定範囲内となるワイヤボンディング装置100によれば、板バネ31がボンディングエリアBAの外側に配置されている。したがって、例えばボンディングエリアBA内にロードセルを取り付ける場合と比べて、較正処理の実施のためのワイヤボンディング装置100の停止時間を短縮することができる。その結果、ワイヤボンディング装置100の動作時間が増加する。したがって、生産性の向上と、キャピラリ15の押圧荷重の較正と、を両立させることが可能となる。
【0064】
ワイヤボンディング装置100の較正処理は、キャピラリ15が板バネ31を押圧していない非押圧状態での板バネ31の第1歪みと、キャピラリ15の押圧荷重が制御部61によって目標値となるように制御されている場合においてキャピラリ15が板バネ31の押圧点Pを当該押圧荷重で押圧している押圧状態での板バネ31の第2歪みと、に基づいて、押圧荷重の実測値(第1~第3実測荷重)を算出する実測処理と、予め設定された荷重閾値と荷重誤差とを比較する比較処理と、荷重誤差が荷重閾値以上である場合、荷重誤差が小さくなるように制御部61におけるモータ40の電流を変更する補正処理と、を含んでいる。較正部62は、荷重誤差が荷重閾値未満となるまで、実測処理、比較処理、及び補正処理を繰り返す。その結果、非押圧状態での第1歪みを基準として押圧状態での第2歪みに応じて押圧荷重の実測値を算出する。この算出によれば、基準がばらつき難い。したがって、例えば板バネ31の変位に応じて押圧荷重の実測値を算出する場合と比べて、押圧荷重の実測値を高精度に算出することができる。その結果、較正処理を精度良く実施することが可能となる。
【0065】
特に、ワイヤボンディング装置100が採用する基準は、非押圧状態での第1歪みに基づく第1実測荷重である。ここで、実測処理においては、例えばキャピラリ15の押圧による板バネ31の変位に基づいて、押圧荷重の実測値を算出する手法も考えられる。しかし、この場合、板バネ31の変位の基準を特定することが難しい。非押圧状態での第1歪みに基づく第1実測荷重を基準とする場合、例えばキャピラリ15と板バネ31とを離間させることで非押圧状態を容易に実現することができる。したがって、基準となる第1実測荷重のばらつきを抑制できる。その結果、押圧荷重の実測値を高精度に算出することができる。よって、較正処理を精度良く実施することが可能となる。
【0066】
ワイヤボンディング装置100の弾性部は、片持ち梁状に支持された板バネ31である。歪みゲージ部54は、板バネ31の上面31cに設けられた歪みゲージ54a,54bを含む。歪みゲージ部55は、板バネ31の下面31dに設けられた歪みゲージ55a,55bを含む。これにより、弾性部の構成を小型且つ簡素な構成とすることができる。したがって、ワイヤボンディング装置100の省スペース化を図ることが可能となる。また、歪みゲージ54a,54b,55a,55bは、板バネ31の両面に設けられている。したがって、温度変化に伴う板バネ31の伸縮歪みが相殺される。その結果、較正処理を実施するために、ワイヤボンディング装置100のボンディングエリアBAの温度が低下するまで待機する必要がない。その結果、ワイヤボンディング装置100を連続動作させることが可能となり、生産性を一層向上させることができる。
【0067】
換言すると、ワイヤボンディング装置100は、例えばワイヤボンディング装置を停止させた状態でボンディングエリア内に取り付けたロードセルを用いてオペレータによって実施される従来の較正作業と同様の較正精度を確保すると共に、押圧荷重の較正を全自動で実施するものといえる。また、ワイヤボンディング装置100は、信頼性が向上すると共に、長寿命化等する。さらに、較正作業を行うオペレータを省くことも可能となる。つまり、ワイヤボンディング装置100は、較正作業のいわゆるヒューマンレス化を実現する。ワイヤボンディング装置100の連続動作が実現可能となることから、ワイヤボンディング装置100の較正作業のためのメンテナンス時間は、実質的に不要である。
【0068】
[変形例]
以上、本開示に係るワイヤボンディング装置100について説明したが、本開示に係るワイヤボンディング装置100は、上記実施形態に限られるものではない。
【0069】
例えば、較正部62は、較正処理として、実測処理、比較処理、及び補正処理を荷重誤差が荷重閾値未満となるまで繰り返した。しかし、較正部62は、実測処理、比較処理、及び補正処理を一回で完了させてもよい。
【0070】
例えば、較正部62は、第1歪みに基づいて第1実測荷重を算出し、第2歪みに基づいて第2実測荷重を算出し、第1実測荷重及び第2実測荷重に基づいて第3実測荷重を算出した。しかし、押圧荷重の実測値を算出する手法は、これに限定されない。例えば、第1歪み及び第2歪みに基づいて歪みの差分を算出する。その後、算出した歪みの差分に基づいて第3実測荷重を算出してもよい。
【0071】
板バネ31は、片持ち梁状に支持されていた。しかし、板バネ31は、その他の支持形態であってもよい。
【0072】
制御部61における駆動源の制御データとして、モータ40の固定子41に印加される電流値を例示した。例えば、駆動源の制御データは、モータ40に供給される電力等であってもよい。駆動源の制御データは、荷重誤差が小さくなるようにキャピラリ15の押圧荷重を変化させ得るものであればよい。
【0073】
歪みゲージ部54及び歪みゲージ部55として、4個の歪みゲージ54a,54b,55a,55bを例示した。しかし、歪みゲージの数は、4個に限定されない。
【0074】
弾性部は、板バネ31に限定されない。弾性部には、ロバーバル機構等、歪みが生じるものを採用してよい。弾性部としては、例えば、
図7に示す梁材32を有する弾性部組立体20Aを採用してよい。
【0075】
図7の(a)は、弾性部の変形例の側面図である。
図7の(b)は、
図7の(a)の弾性部の非押圧状態を例示する側面図である。
図7の(c)は、
図7の(a)の弾性部の押圧状態を例示する側面図である。
図7に示されるように、弾性部組立体20Aは、板バネ31に代えて、梁材32を用いている点で、板バネ組立体20とは異なっている。
【0076】
梁材32の形状は、板バネ31の長手方向と同じ方向に延びる長尺な板又は角柱である。梁材32は、片持ち梁であり、一端部32aが支持されている。梁材32は、低剛性部32fが設けられている。低剛性部32fは、長手方向の一端部32a及び他端部32bに挟まれた中間部32eにおいて一端部32a及び他端部32bよりも低い剛性を有する。低剛性部32fは、例えば、梁材32の内部に形成された空間であってもよい。
【0077】
弾性部組立体20Aは、歪みゲージ部(第3歪みゲージ)56と歪みゲージ部(第4歪みゲージ)57と、を含んでいる。歪みゲージ部56及び歪みゲージ部57は、梁材32の歪みを取得する取得部である。歪みゲージ部56は、梁材32の一端部32aの上面32c及び下面32dに設けられている。歪みゲージ部57は、梁材32の他端部32bの上面32c及び下面32dに設けられている。歪みゲージ部56は、歪みゲージ56aと、歪みゲージ56bと、を含んでいてもよい。歪みゲージ56aは、梁材32の上面32cに設けられている。歪みゲージ56bは、梁材32の下面32dに設けられている。歪みゲージ部57は、歪みゲージ57aと、歪みゲージ57bと、を含んでいてもよい。歪みゲージ57aは、梁材32の上面32cに設けられている。歪みゲージ57bは、梁材32の下面32dに設けられている。
【0078】
梁材32は、中間部32eに設けられた低剛性部32fを有する。低剛性部32fによれば、一端部32aと中間部32eとの境界部、及び、他端部32bと中間部32eとの境界部において梁材32の歪みが大きくなる。その結果、梁材32の歪みを感度良く取得することができる。歪みゲージ部56及び歪みゲージ部57は、梁材32の両面に設けられている。その結果、温度変化に伴う梁材32の伸縮歪みが相殺される。したがって、較正作業を行うために、ワイヤボンディング装置100のボンディングエリアBAの温度が低下するまで待機しなくてもよい。その結果、この場合においても、ワイヤボンディング装置100を連続動作させることが可能となり、生産性を一層向上させることが可能となる。
【0079】
弾性部には、
図8に示す弾性部組立体20Bを採用してよい。
図8は、弾性部の他の変形例を示す側面図である。
図8に示されるように、弾性部組立体20Bは、歪みゲージ58,59を有する。歪みゲージ58,59は、ブロック体の一部を構成する柱状体33に取り付けられている。弾性部及び取得部は、上方からキャピラリ15に押圧された柱状体33の歪みを歪みゲージ58,59で取得してもよい。
【符号の説明】
【0080】
15…キャピラリ(ボンディングツール)、31…板バネ(弾性部)、31c…上面、31d…下面、32…梁材(弾性部)、32a…一端部、32b…他端部、32e…中間部、32f…低剛性部、32c…上面、32d…下面、33…柱状体(弾性部)、40…モータ(駆動源)、54…歪みゲージ部(第1歪みゲージ)、55…歪みゲージ部(第2歪みゲージ)、56…歪みゲージ部(第3歪みゲージ)、57…歪みゲージ部(第4歪みゲージ)、61…制御部、62…較正部、100…ワイヤボンディング装置、BA…ボンディングエリア、P…押圧点。