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特許7026407エクソソーム産生促進剤及びエクソソーム産生促進方法
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  • 特許-エクソソーム産生促進剤及びエクソソーム産生促進方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-17
(45)【発行日】2022-02-28
(54)【発明の名称】エクソソーム産生促進剤及びエクソソーム産生促進方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/0775 20100101AFI20220218BHJP
   C07K 14/485 20060101ALN20220218BHJP
   C07K 14/54 20060101ALN20220218BHJP
【FI】
C12N5/0775
C07K14/485
C07K14/54
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020016464
(22)【出願日】2020-02-03
(65)【公開番号】P2021122206
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2021-06-16
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】517000379
【氏名又は名称】株式会社フルステム
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】千葉 俊明
【審査官】鈴木 崇之
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第2018-0111674(KR,A)
【文献】韓国公開特許第2019-0028677(KR,A)
【文献】韓国公開特許第2019-0050286(KR,A)
【文献】国際公開第2019/168000(WO,A1)
【文献】Arthritis Research & Therapy, 2014, 16:R163 (pp. 1-11)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00-7/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布を足場として無血清培地で培養される脂肪由来間葉系幹細胞からのエクソソームの産生を促進するエクソソーム産生促進因子であって、
SCGFを包含せず、EGF及びIL1-βを有することを特徴とするエクソソーム産生促進因子
【請求項2】
更にトレハロースを包含することを特徴とする請求項に記載のエクソソーム産生促進因子
【請求項3】
TNFαを包含しないことを特徴とする請求項1又は2に記載のエクソソーム産生促進因子
【請求項4】
脂肪由来間葉系幹細胞からのエクソソームの産生を促進するエクソソーム産生促進方法であって、
不織布を足場とし、SCGFを包含せずEGF及びIL1-βを有する無血清培地で脂肪由来間葉系幹細胞を培養することを特徴とする、エクソソーム産生促進方法。
【請求項5】
前記無血清培地に、更にトレハロースを包含することを特徴とする請求項に記載のエクソソーム産生促進方法。
【請求項6】
前記無血清培地に、TNFαを包含しないことを特徴とする請求項4又は5に記載のエクソソーム産生促進方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、間葉系幹細胞からのエクソソームの産生を促進するエクソソーム産生促進剤、及び、エクソソームの産生を促進する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
間葉系幹細胞(mesenchymal stem cell: MSC)は、間葉組織即ち中胚葉由来の結合組織に存在する、多分化能をもつ幹細胞である。間葉系幹細胞は未分化状態で炎症抑制効果、細胞増殖促進効果、血管新生促進効果等を持つサイトカイン・増殖因子を分泌し、パラクラインを介して組織修復を支持することも明らかにされている(非特許文献1)。未分化間葉系幹細胞の分泌する分子群は特定の限られた疾患に限らず、さまざまな疾患に対して治療効果を持つ。間葉系幹細胞を修復したい組織の細胞へと分化誘導することなく、しかも細胞に対して遺伝子組み換え等の人為的な操作を一切加えることなく、ナイーブな間葉系幹細胞を用いることで組織再生が可能となる。
【0003】
エクソソームは、タンパク質、脂質及びRNAを細胞間で移動させることにより細胞間の情報伝達を媒介することができる(非特許文献2、3)。エクソソームに包含されるタンパク質、microRNA、mRNA等の分子は、由来する細胞と類似の機能が備わっていることが判明している。そのため、幅広い疾患に対する細胞治療のソースとして注目されている間葉系幹細胞が分泌するエクソソームには、MSCと同様の治療効果が備わっていると期待される(非特許文献4)。
【0004】
特許文献1には、培養された神経幹細胞株(NSCL)から単離されたエクソソームが記載されている。このエクソソームは、線維芽細胞の移動、ヒト臍帯静脈内皮細胞の分岐、及び、神経突起の伸長を促進し得る。
【0005】
エクソソームは幹細胞に比べて動物血清を相対的に少なく含有しており、動物血清感染による症状の危険性も排除できる。そのためエクソソームを利用した細胞治療法は既存の幹細胞治療法の限界を克服し得る。
【0006】
特許文献2には、スフィンゴイド塩基を有効成分とするエクソソーム産生促進剤が開示されている。しかしながら特許文献2に記載されているエクソソーム産生促進剤は、アルツハイマー病を治癒するために神経細胞におけるエクソソームの産生を促進できるものに限定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2013/150303号
【文献】特開2019-156786号公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】Chamberlain G, Fox J, Ashton B, Middleton J, Concise review: mesenchymal stem cells: their phenotype, differentiation capacity, immunological features, and potential for homing. Stem Cells. 25 (2007) 2739-2749
【文献】Simons and Raposo、Curropin Cell Biology 2009;21:575-581
【文献】Skog et al.,Nat Cell Biology 2008;10:1470~1476; Valadi et al. ,Nat Cell Biology 2007;9:654~659
【文献】Katsuda T, Kosaka N, Takeshita F, Ochiya T. The therapeutic potential of mesenchymal stem cell-derived extracellular vesicles. Proteomics. 13 (2013) 1637-1653.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、脂肪由来間葉系幹細胞からのエクソソームの産生を促進するエクソソーム産生促進剤及びエクソソーム産生促進方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明にかかるエクソソーム産生促進剤は、無血清培地で培養される脂肪由来間葉系幹細胞からのエクソソームの産生を促進するエクソソーム産生促進剤であって、EGFを有することを特徴とする。
【0011】
本発明にかかるエクソソーム産生促進方法は、脂肪由来間葉系幹細胞からのエクソソームの産生を促進するエクソソーム産生促進方法であって、EGFを有する無血清培地で脂肪由来間葉系幹細胞を培養することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、脂肪由来間葉系幹細胞からのエクソソームの産生を促進させることができた。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】種々の因子を添加した場合における脂肪由来間葉系幹細胞からのエクソソームの産生量を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態について具体的に説明するが、当該実施形態は本発明の原理の理解を容易にするためのものであり、本発明の範囲は、下記の実施形態に限られるものではなく、当業者が以下の実施形態の構成を適宜置換した他の実施形態も、本発明の範囲に含まれる。
【0015】
本発明にかかるエクソソーム産生促進剤は、無血清培地で培養される脂肪由来間葉系幹細胞からのエクソソームの産生を促進する。
【0016】
脂肪由来間葉系幹細胞は、好ましくは、ヒトの脂肪由来間葉系幹細胞である。脂肪由来間葉系幹細胞は、骨髄由来間葉系幹細胞と比較して、細胞増殖が速い、再生促成因子を多く分泌する、免疫抑制能が高い、という有利な特徴を有する。さらに、脂肪由来間葉系幹細胞は、腹部又は臀部の脂肪組織から得られるため、骨髄を採取する必要のある骨髄由来間葉系幹細胞と比較して、安全に十分量確保しやすいという有利な特徴も有する。また、患者の自己脂肪組織由来の間葉系幹細胞を患者の治療に用いることは、倫理的な問題がない、免疫拒絶反応がない、感染症等の問題が少ない、静脈投与で治療効果がある等の点で優れている。
【0017】
脂肪由来間葉系幹細胞は、例えばCD73、CD90、CD105及びCD44が陽性であり、CD11b、CD19、CD34、CD45及びHLA-DRが陰性である。脂肪組織由来間葉系幹細胞は、例えば骨芽細胞、脂肪細胞、及び軟骨細胞への分化能を有する。
【0018】
脂肪組織由来間葉系幹細胞は、脂肪組織から間葉系幹細胞を分離し、血清を含む培地で間葉系幹細胞を初代培養し、初代培養から継代された間葉系幹細胞を無血清培地で増殖培養して得られる。脂肪組織は、例えばヒト等のほ乳類から外科的切除されて得られる。外科的切除の際には、局所麻酔をしてもよい。あるいは、脂肪組織は、カテーテルを腹部、大腿部、又は臀部の皮下脂肪組織に挿管することによって、吸引により得られてもよい。得られる脂肪組織の量は、例えば1gから100g、2gから50g、2gから40g、あるいは2gから20gであるが、これらに限定されない。
【0019】
得られた脂肪組織は、例えば生理食塩水で洗浄され、ハンクス平衡塩溶液に0.1%の濃度で希釈されたコラゲナーゼを含む溶液に37℃で70分間浸され、分散される。脂肪組織から分散された脂肪組織由来細胞は、1800rpmで10分間遠心分離される。さらに、遠心分離によって得られた間質血管細胞群を溶液で希釈し、100μmのナイロンメッシュで濾過する。濾過された細胞は、MEMαで洗浄される。
【0020】
無血清培地では、間葉系幹細胞用無血清培地であり、例えばDMEM、MEMα、DMEM/F12、MEM等が挙げられる。
【0021】
本発明にかかるエクソソーム産生促進剤は、EGFを有する。後述する実施例にて示されているが、複数の因子を包含する場合の脂肪由来間葉系幹細胞からのエクソソーム産生量は、それら複数の因子からEGFのみを除いた因子を包含する場合の脂肪由来間葉系幹細胞からのエクソソーム産生量よりも多い。本発明者は、EGFはエクソソームの産生を助長する因子であることを新知見として見いだしかかる事実に基づいて本発明を完成させた。
【0022】
EGFは53アミノ酸残基及び3つの分子内ジスルフィド結合から成る6045 Daのタンパク質である。細胞表面に存在する上皮成長因子受容体(EGFR)にリガンドとして結合し、細胞の成長と増殖の調節に重要な役割をする。培地中におけるEGFの含有量は、特に限定されるものではないが、終濃度で0.05~300ng/mlであることが好ましく、さらに好ましくは1~100ng/mlである。
【0023】
またIL-1βも脂肪由来間葉系幹細胞からのエクソソーム産生量を促進するため、IL-1βも包含していることが好ましい。培地中におけるIL-1βの含有量は、特に限定されるものではないが、終濃度で0.001~10ng/mlであることが好ましく、さらに好ましくは0.01~1ng/mlである。
【0024】
またトレハロースも脂肪由来間葉系幹細胞からのエクソソーム産生量を促進するため、トレハロースも包含していることが好ましい。トレハロースは2つのα-グルコースが1,1-グリコシド結合してできた二糖類である。培地中におけるトレハロースの含有量は、特に限定されるものではないが、終濃度で1~50 mg/mlであることが好ましく、さらに好ましくは10~30 mg/mlである。
【0025】
本発明にかかるエクソソーム産生促進剤は、SCGFを含有しないことが望ましい。後述する実施例にて示されているが、複数の因子を包含する場合の脂肪由来間葉系幹細胞からのエクソソーム産生量は、それら複数の因子からSCGFのみを除いた因子を包含する場合の脂肪由来間葉系幹細胞からのエクソソーム産生量よりも少ない。本発明者は、SCGFはエクソソームの産生を阻害する因子であることを新知見として見い出した。そのため、本発明にかかるエクソソーム産生促進剤ではSCGFを包含しないことが好ましい。SCGFはN型糖鎖を持たない29-kDaの蛋白でありC型レクチンのファミリーに属する。
【0026】
またTNFαも脂肪由来間葉系幹細胞からのエクソソーム産生を阻害させるため、本発明にかかるエクソソーム産生促進剤ではTNFαを包含しないことが好ましい。
【0027】
本発明においては脂肪由来間葉系幹細胞は不織布を足場として培養されることが好ましい。不織布を足場として脂肪由来間葉系幹細胞が培養される場合にあってはよりエクソソームの産生が促進される。
【0028】
不織布の目付は、1~500g/m2であればよく、例えば、50~200g/m2であることが好ましい。不織布は、親水化処理された不織布であってもよい。不織布の親水化は、フッ素ガス処理、常圧プラズマ処理、真空プラズマ処理、コロナ処理、親水性単量体のグラフト重合処理、スルホン化処理、又は界面活性剤付与処理によって施すことができ、フッ素ガス処理、常圧プラズマ処理が好ましい。
【0029】
不織布を構成する繊維はポリオレフィン系重合体であることが好ましく、ポリオレフィン系重合体としては例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-ドデセン、1-オクタデセン等が挙げられる。
【0030】
不織布を構成する繊維は、繊維径の小さい繊維であることが望ましく、平均繊維径は好ましくは200μm以下、より好ましくは010~100μm、とくに好ましくは15~50μmである。繊維には、相対的に繊維径の大きい繊維と相対的に繊維径の小さい繊維とが混在していてもよい。
【0031】
不織布は多孔質性を有するものであることが好ましい。多孔質性は組織を再生させるのに必要な細胞への十分な酸素及び栄養を補給し、二酸化炭素や老廃物を速やかに排出する意味において重要である。また多孔質性を有することにより比表面積が大きくなり細胞接着性が高まる。かかる場合の平均孔径は、例えば、5μm~200μm、20μm~100μm、25μm~100μm、30μm~100μm、35μm~100μm、40μm~100μm、50μm~100μm又は60μm~100μmであり、好ましくは、50μm~300μmである。
【0032】
不織布の形態は特に限定されるものではないが、好ましくは不織布シートである。不織布シートは、厚さ方向に貫通した複数の貫通孔を備えるものであることが好ましい。不織布シートの総膜厚は、例えば、5μm以上、10μm以上、20μm以上又は25μm以上であってもよく、500μm以下、300μm以下、100μm以下、75μm以下又は50μm以下であってもよい。好ましくは30~2000μmであり、より好ましくは500~1000μmである。
【0033】
本発明にかかるエクソソーム産生促進剤を使用することで産生されたエクソソームは、エクソソーム含有製剤として利用できる。エクソソーム含有製剤の形態は、特に限定されないが、例えば注射剤、懸濁剤、溶液剤、スプレー剤のような液剤であってもよいし、シート状製剤やゲル状製剤であってもよい。
【0034】
エクソソーム含有製剤は、その用い方は限定されず、例えば、被験体へ直接投与するために利用することや、生体外において行われる、組織や器官の再構築のための供給源として利用することができる。
【0035】
エクソソーム含有製剤は疾患又は障害の治療に利用できる。対象とし得る疾患又は障害は、免疫性疾患、虚血性疾患(下肢虚血、虚血性心疾患(心筋梗塞等)、冠動脈性心疾患、脳血管虚血、腎臓虚血、肺虚血等)、神経性疾患、クローン病、移植片対宿主病(GVHD)、潰瘍性大腸炎を含む炎症性腸疾患、全身性エリテマトーデスを含む膠原病、肝硬変、脳梗塞、脳内血腫、脳血管痙攣、放射線腸炎、アトピー性皮膚炎、多発性硬化症、関節リウマチ、乾癬、紅斑性狼瘡、糖尿病、菌状息肉腫(Alibert-Bazin症候群)、強皮症、軟骨等の結合組織の変性及び/又は炎症から起こる疾患、眼疾患、血管新生関連疾患、うっ血性心不全、心筋症、創傷、上皮損傷、線維症、肺疾患、癌等の疾患や障害が挙げられる。
【0036】
また、エクソソーム含有製剤は、美容目的の治療、処置又は改善にも利用できる。美容目的とは、純粋に健常状態への美容を目的とするのみならず、手術後または外傷後の変形及び先天性の変形に対する美容治療も含まれる。例えば、乳房の組織増大術(豊乳術、乳房再建)、頬もしくは上下眼瞼の陥凹に対する組織増大術、ならびに顔面半側萎縮症、顔面または漏斗胸への組織増大術に利用できる。
【0037】
エクソソーム含有製剤は、エクソソーム以外に薬学的に許容される担体や添加物を含有させてもよい。このような担体や添加物としては、例えば、等張化剤、増粘剤、糖類、糖アルコール類、防腐剤(保存剤)、殺菌剤又は抗菌剤、pH調節剤、安定化剤、キレート剤、油性基剤、ゲル基剤、界面活性剤、懸濁化剤、結合剤、賦形剤、滑沢剤、崩壊剤、発泡剤、流動化剤、分散剤、乳化剤、緩衝剤、溶解補助剤、抗酸化剤、甘味剤、酸味剤、着色剤、呈味剤、香料又は清涼化剤等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
本発明によれば脂肪由来間葉系幹細胞からのエクソソームを安定して大量に供給することが可能となる。遺伝子組み換え技術を用いて間葉系幹細胞にmRNA、miRNA、タンパク質等治療効果のある分子を過剰発現させ、それらの分子を搭載したエクソソームを産生することにより種々の治療及び美容への応用も可能となる。また、標的組織特異的に発現するタンパク質に対する受容体を遺伝子組み換え技術を用いてエクソソームの表面に発現させる等によりエクソソームの表面を修飾することで、標的組織へより特異的にエクソソームを送達することも可能である。
【実施例
【0039】
脂肪由来間葉系幹細胞(ADSC)を4×104個を各wellに播種した。細胞培養には不織布(3D、BioNOCII、CESCO社 in 非接着性24well plate (PrimeSurface(登録商標)住友ベークライト)、を使用した。基礎培地は、10%FBS/DMEM F12(シグマ) 1.5 mlであった。培養日数は6日間であった。Day2より1.5mlずつ毎日培地交換を行い、使用済み培養液の糖消費量を測定した。
【0040】
次に7日目及び8日目の48時間の細胞培養において、エクソソーム回収を行うため、培地はDMEM F12とした。この48時間の培養において、試験#1では10%ExoFBS(フナコシ)を添加した。ExoFBSはウシ由来エクソソームを除去されているものであり、エクソソーム研究への影響が抑制されている。また48時間の培養において、試験#2では下記表1に示す濃度にてA乃至Hの8因子を全て付加させた。
【0041】
【表1】
【0042】
48時間の培養において、試験#3では表1に示す8因子から因子Aのみを除いて残りを付加させ、試験#4では表1に示す8因子から因子Bのみを除いて残りを付加させ、試験#5では表1に示す8因子から因子Cのみを除いて残りを付加させ、試験#6では表1に示す8因子から因子Dのみを除いて残りを付加させ、試験#7では表1に示す8因子から因子Eのみを除いて残りを付加させ、試験#8では表1に示す8因子から因子Fのみを除いて残りを付加させ、試験#9では表1に示す8因子から因子Gのみを除いて残りを付加させ、試験#10では表1に示す8因子から因子Hのみを除いて残りを付加させた。
【0043】
ADSCから産生されるエクソソームの量は、回収した培養上清1.5 mlから50μlずつをExo Counter(ケンウッド)にて測定した。Exo Counterは、エクソソームをディスクとナノビーズの抗体で表面抗原特異的にサンドイッチ検出するものである。エクソソーム表面のCD81を検出してエクソソーム量を定量した。
【0044】
結果を図1に示す。図1に示されるように、EGFを除いた場合は産生されるエクソソームの量が低減しており、EGFはエクソソームの産生を助長する因子であることが判明した。またIL-1βを除いた場合も産生されるエクソソームの量が低減しており、IL-1βもエクソソームの産生を助長する因子であることが判明した。またトレハロースを除いた場合も産生されるエクソソームの量が低減しており、トレハロースもエクソソームの産生を助長する因子であることが判明した。
【0045】
逆にSCGFを除いた場合は産生されるエクソソームの量が増大しており、SCGFはエクソソームの産生を阻害する因子であることが判明した。またTNFαを除いた場合も産生されるエクソソームの量が増大しており、TNFαもエクソソームの産生を阻害する因子であることが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0046】
エクソソームの産生に利用できる。
図1