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特許7026416非線形増幅率を示すスイッチ様等温DNA増幅
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-17
(45)【発行日】2022-03-01
(54)【発明の名称】非線形増幅率を示すスイッチ様等温DNA増幅
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/682 20180101AFI20220218BHJP
   C12Q 1/6844 20180101ALI20220218BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20220218BHJP
【FI】
C12Q1/682 Z
C12Q1/6844 Z ZNA
C12N15/09 Z
【請求項の数】 28
(21)【出願番号】P 2020506130
(86)(22)【出願日】2018-04-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-11
(86)【国際出願番号】 US2018027918
(87)【国際公開番号】W WO2018195044
(87)【国際公開日】2018-10-25
【審査請求日】2021-01-27
(31)【優先権主張番号】62/486,453
(32)【優先日】2017-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518041995
【氏名又は名称】モンタナ・ステイト・ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】MONTANA STATE UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マッカラ、ステファニー、イー.
(72)【発明者】
【氏名】ジェデオン、トマス
【審査官】小倉 梢
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-533494(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105154556(CN,A)
【文献】Nucleic Acids Res.,2016年,Vol. 44, e130,p. 1-9
【文献】RSC Adv.,2016年,Vol. 6,p. 89888-89894
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00 - 1/70
C12N 15/00 - 15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的オリゴヌクレオチド配列(X)を検出する方法であって、
(A)
(1)標的オリゴヌクレオチド配列(X)を含む標的核酸と;
(2)3’から5’に、
(a)標的オリゴヌクレオチド配列(X)と少なくとも実質的に相補的な第1のヌクレオチドの配列(X’)と;
(b)第1のニッキング酵素結合部位のアンチセンス鎖である第2のヌクレオチドの配列(R1)と;
(c)3’から5’に、
(i)足がかりヌクレオチド配列(t’);および
(ii)回文ヌクレオチド配列(Yp)
を含む、レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)と少なくとも実質的に相補的な第3のヌクレオチドの配列(t’Yp)と
を含む第1のアンチセンス鋳型(X’R1t’Yp)と;
(3)3’から5’に、
(a)第4のヌクレオチドの配列t’Ypと;
(b)第2のニッキング酵素結合部位のアンチセンス鎖である第5のヌクレオチドの配列(R2)と;
(c)第6のヌクレオチドの配列t’Yp
とを含む、第2のアンチセンス鋳型(t’YpR2t’Yp)であって、該2つの回文ヌクレオチド配列(Yp)は、該第2のアンチセンス鋳型(t’YpR2t’Yp)に回文を形成させ、ステム・ループ構造に折り畳ませる、
第2のアンチセンス鋳型(t’YpR2t’Yp)と;
(4)ポリメラーゼと;
(5)第1のニッキング酵素結合部位でニックを入れる第1のニッキング酵素と;
(6)第2のニッキング酵素結合部位でニックを入れる第2のニッキング酵素と;
(7)ヌクレオチドと
を含む反応混合物を形成するステップと;
(B)前記反応混合物を、反応温度で本質的に等温条件にさらして非線形増幅率で前記レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)を増幅するステップと;
(C)前記増幅レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)を検出するステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)が、
(A)前記標的オリゴヌクレオチド配列(X)および前記第1のアンチセンス鋳型(X’R1t’YP)を含む二本鎖(D1)を形成するステップと;
(B)前記ポリメラーゼを使用して、前記第1のアンチセンス鋳型(X’R1t’YP)に沿って前記二本鎖(D1)の前記標的オリゴヌクレオチド配列(X)を伸長して、前記第1のアンチセンス鋳型(X’R1t’YP)と相補的なセンス配列を含む伸長標的オリゴヌクレオチド配列を形成するステップと;
(C)前記第1のニッキング酵素によって、前記二本鎖(D1)の前記センス鎖上の前記第1のニッキング酵素結合部位でニックを入れて、前記レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)を生成するステップと;
(D)ステップ(B)および(C)を繰り返して、それによって前記レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)を線形増幅するステップと
を含むステップから線形増幅される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記レポーターオリゴヌクレオチド(tYp)が、
(A)前記レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)および前記第2のアンチセンス鋳型(t’YpR2t’Yp)を含む二本鎖(D2)を形成するステップであって、前記レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)の前記足がかり部位(t’)への結合が前記第2のアンチセンス鋳型(t’YpR2t’Yp)のステム・ループ構造をアンフォールディングするステップと;
(B)前記ポリメラーゼを使用して、前記第2のアンチセンス鋳型(t’YpR2t’Yp)に沿って前記二本鎖(D2)の前記レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)を伸長して、前記第2のアンチセンス鋳型(t’YpR2t’Yp)と相補的なセンス配列を含む伸長レポーターオリゴヌクレオチド配列を形成するステップと;
(C)前記第2のニッキング酵素によって、前記二本鎖(D2)の前記センス鎖上の前記第2のニッキング酵素結合部位でニックを入れて、前記レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)を生成するステップと;
(D)ステップ(B)および(C)を繰り返して、それによって非線形増幅率で前記レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)を増幅するステップと
を含むステップから非線形増幅率で増幅される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)の前記非線形増幅率が協同的ヒル速度論(cooperative Hill kinetics)を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)の前記非線形増幅率が協同的ヒル速度論を示す、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)の前記増幅が二相性であり、第一相が前記オリゴヌクレオチド配列(tYp)を線形増幅し、第二相が前記レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)を非線形増幅率で増幅する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
10ピコモル濃度以下の濃度で前記標的オリゴヌクレオチド配列(X)を検出することができる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第1のニッキング酵素結合部位が前記第2のニッキング酵素結合部位と同一である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第1のニッキング酵素結合部位が前記第2のニッキング酵素結合部位と同一であり、同じニッキング酵素によってニックを入れられる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記第1のヌクレオチドの配列(X’)が前記標的オリゴヌクレオチド配列(X)と完全に相補的である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記第3のヌクレオチドの配列(t’Yp)が前記レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)と完全に相補的である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記第3のヌクレオチドの配列(t’Yp)が、前記標的オリゴヌクレオチド配列(X)と非相補的である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記第1のアンチセンス鋳型(X’R1t’YP)の3’末端と前記第2のアンチセンス鋳型(t’YpR2t’YP)の3’末端がブロックされる、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記増幅レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)を検出するステップが、ルミネセンス分光法(spectroscopy)もしくは分光測定(spectrometry)、蛍光、蛍光分光法(spectroscopy)もしくは分光測定(spectrometry)、質量分析、液体クロマトグラフィー、蛍光偏光、比色、電気泳動またはその組み合わせによって少なくとも部分的に行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)の検出が、前記レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)の増幅率を検出することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)の前記増幅率を検出するステップが、ルミネセンス分光法もしくは分光測定、蛍光、蛍光分光法もしくは分光測定、質量分析、液体クロマトグラフィー、蛍光偏光、比色、電気泳動またはその組み合わせによって少なくとも部分的に行われる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記標的オリゴヌクレオチド配列(X)を含む標的核酸が、動物に由来する試料から得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記試料が血液、血清、粘液、唾液、尿または糞便である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記標的オリゴヌクレオチド配列(X)を含む標的核酸が、mRNA、マイクロRNAおよびsiRNAを含む任意の合成または天然RNA分子である、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記標的オリゴヌクレオチド配列(X)を含む標的核酸が、ゲノムDNA、ミトコンドリアDNA、mRNA、マイクロRNAまたはsiRNAの逆転写に由来するcDNAを含む任意の合成または天然DNA分子であり、前記反応混合物を形成する前に、標的オリゴヌクレオチド配列(X)を含む前記標的核酸を変性または切断するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記ポリメラーゼがウォームスタートポリメラーゼである、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)の増幅が約54℃~約60℃で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)が8~30ヌクレオチド長である、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記第1、第3、第4および第5のヌクレオチドの配列の前記足がかり部位(t’)が3~8ヌクレオチド長である、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記第2のアンチセンス鋳型(t’YpR2t’YP)の前記回文が4~22ヌクレオチド長である、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記第2のアンチセンス鋳型(t’YpR2t’YP)の前記回文が、前記反応温度よりも高いが、90℃未満の融解温度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
前記二本鎖(D2)が前記反応温度+5℃より低い融解温度を有する、請求項3に記載の方法。
【請求項28】
前記ニッキング酵素が、Nt.BstNBI、Nt.BspQI、Nb.BBvCI、Nb.BsmI、Nb.BsrDI、Nb.Bstl、Nt.Alwl、Nt.BbvCI、Nt.CviPII、Nt.BsmAI、Nb.Bpu1oIおよびNt.Bpu10Iからなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、2017年4月17日に出願された米国仮出願第62/486,453号に依拠し、これに基づく優先権を主張する。
【0002】
政府権利
本発明は、国立衛生研究所の国立トランスレーショナル科学振興センターによって授与されたUL1 TR002319の下で政府支援によりなされたものであった。政府は本発明における一定の権利を有する。
【0003】
電子的に提出された配列表の参照
本出願は、ASCII形式で電子的に提出され、参照により全体が本明細書に組み込まれる配列表を含む。2017年4月16日に作成された前記ASCIIコピーの名前は「SEQENCE LISTING_ST25」で、サイズは13KBバイトである。
【0004】
本願明細書で開示される主題は、概して、ノイズを除去し、それによって高レベルの非特異的バックグラウンド増幅および偽陽性を排除しながら、真のシグナルに決定的に作用する核酸の迅速な等温増幅のための方法、システム、組成物およびキットに関する。
【背景技術】
【0005】
プライマー媒介増幅による標的核酸の検出は長年にわたって普及しており、近年いくつかの新たな核酸増幅ベースの検出および診断アプローチが開発および使用されている。最も一般的な増幅技術はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)であり、これはその信頼性および特異性のために重要な検出方法のままである。PCRは、標的核酸のヌクレオチド配列の複製および制限された修飾のための単純で柔軟な方法である。PCR技術では、二本鎖DNAの変性、短いオリゴヌクレオチドプライマーのアニーリング、および熱安定性ポリメラーゼによる鋳型に沿ったプライマーの伸長のステップを通って進行するために、温度のサイクリングを要する。技術の進歩により、これらの反応時間は20~30分に短縮されたが、増幅を達成するには、20~40サイクルにおいて少なくとも2つの異なる温度ステップを通過するプロトコルを実行しなければならない。そのため、PCR技術は特殊な機器およびサーモサイクリングユニットのための大きな動力が要求され、各サイクルでは標的核酸の倍加が可能であるにすぎないため、比較的時間のかかる方法のままである。
【0006】
温度サイクルの必要性を回避し、検出に必要な時間を短縮するために、種々の等温増幅技術が開発されている。等温オリゴヌクレオチド増幅化学は、その簡潔性および種々のシステムへの適応性のためにますます人気が高まっている。例えば、酵素フリーの鎖置換増幅カスケードは、ナノモルの入力トリガー濃度で遊離オリゴヌクレオチドを迅速に生成することができる。他のオリゴヌクレオチド増幅反応は、ポリメラーゼに依存して、鋳型結合オリゴヌクレオチドトリガーを伸長し、ニッキングエンドヌクレアーゼに依存して、新たに作られた産物を遊離する。この反応スキームの最も一般的な例は、指数関数的増幅反応、すなわちEXPAR、およびその線形増幅修飾である。
【0007】
EXPARの線形修飾では、ニッキングエンドヌクレアーゼの認識配列を有する相補的オリゴヌクレオチドが一本鎖標的核酸にハイブリダイズする。ニッキング後、オリゴヌクレオチドはここでは、標的核酸に結合している2つの短いオリゴヌクレオチドからなる。実験条件、2つの切断されたオリゴヌクレオチドの長さ、および反応温度は、長いオリゴヌクレオチドではなく短いオリゴヌクレオチドが標的核酸から解離するように選択される。標的核酸上に残っている長いオリゴヌクレオチドは、ここではプライマーとして機能するので、結果として標的核酸の一本鎖領域が再び埋められる。次のサイクルでは、ニッキングエンドヌクレアーゼが再び一本鎖を切断し、さらに短いオリゴヌクレオチドが標的核酸から解離する。標的核酸の検出は、この反応で形成された短いオリゴヌクレオチドの質量分析検出によって行うことができる。
【0008】
EXPARの指数関数的修飾では、いわゆる増幅鋳型に結合することができる新たなプライマーを形成するために、線形増幅の解離オリゴヌクレオチドを使用する。標的核酸に加えて、この増幅鋳型を反応混合物に添加する。増幅鋳型は、ニッキングエンドヌクレアーゼの認識部位を有する。さらに、解離オリゴヌクレオチドは、5’末端と3’末端の両方に結合することができる。第1のステップでは、前のサイクルで解離したオリゴヌクレオチドが、ニッキングエンドヌクレアーゼの認識部位から5’にある相補的配列に結合し、解離したオリゴヌクレオチドと増幅鋳型との間に一過的複合体を形成する。第2のステップでは、ここではプライマーとして機能しているオリゴヌクレオチドを、増幅鋳型全体にわたってその3’末端で伸長する。したがって、ニッキングエンドヌクレアーゼの認識部位を有する二本鎖増幅鋳型が形成され、ニッキングエンドヌクレアーゼによる切断後、もう一度さらなる増幅鋳型に結合することができる短い解離オリゴヌクレオチドをもう一度放出する。この方法ではまた、解離した短いオリゴヌクレオチドの検出を、質量分析によって行うこともできる。
【0009】
しかしながら、EXPARはPCRに対していくつかの利点を有するが、EXPARは高レベルの非特異的バックグラウンド増幅をもたらし、偽陽性を生成するおそれがある。
【0010】
入力刺激に対するスイッチ様応答は、本質的に遍在性である。このスイッチング挙動は、細胞シグナル伝達、転写および遺伝子調節ネットワークで一般的である;これらのスイッチがノイズを除去しながら真のシグナルに決定的に反応することが一般に受け入れられている。いくつかの研究では、合成生化学システムにおけるスイッチ様挙動が報告されている。イオンチャネルは、標的抗原の存在下でチャネル二量体化を防ぎ、それによって標的の存在下でオンにすることにより、バイオセンサースイッチに再利用(repurpose)され得る。DNA発振器は、DNA分解とDNA増幅反応を組み合わせることによって、「オン」状態と「オフ」状態を切り替えることができる。この振動効果は、非線形DNA分解の代わりに非線形DNA増幅を通して達成することができることが注目されたが、前者は取得および操作が困難であるので、DNA回路を作成する際の選択肢ではなかった。アプタマーおよび分子ビーコンなどの構造スイッチングセンサーは、特定の標的分子の存在下で立体構造を変化させる。適切に設計すると、構造スイッチングバイオセンサーは、超高感度の協同的ヒル速度論を生成することもできる:2つの協同的結合部位を有するバイオセンサーは、第2の部位に対する標的の親和性が第1の部位への標的会合によって変化すると、超高感度の応答を生成する。これらの刺激的な生体模倣システムは、典型的にはナノモル濃度トリガー入力で出力を生成する。単一細胞は、細胞1個当たりわずか10個のマイクロRNA分子を含有することができ、臨床的に関連するDNAおよびRNAの濃度は、数百ピコモル濃度~アトモル濃度の範囲に及ぶ。臨床的に関連するタンパク質濃度は、しばしばフェムトモル範囲である。以前の研究では、制御されたスイッチであるセンサーが調査されていたが、ほとんどが、低標的濃度に必要な後の高ゲインの増幅を有さない。
【0011】
よって、EXPARなどの等温オリゴヌクレオチド増幅反応は、種々の専門分野(DNA回路および論理ゲート、miRNA検出、アプタマーベースの分析物検出、RNA検出、およびゲノムDNA検出など)にわたって広く使用されているが、先行技術の限界を克服する新規な等温オリゴヌクレオチド反応が当技術分野で必要とされている。より具体的には、ノイズを除去し、それによって高レベルの非特異的バックグラウンド増幅および偽陽性を排除しながら、真のシグナルに決定的に作用するスイッチ様増幅反応の必要性が残っている。
【発明の概要】
【0012】
したがって、本願明細書で開示される主題は、内因性スイッチング機構を有する迅速な、等温性および二相性の核酸増幅反応スキームに関する。本願明細書で開示される増幅技術は、増幅反応で自然に発生する失速を利用し、低レベルのシグナルを生成する。閾値を越えると、反応は非線形増幅率を示す高ゲインの第二相「バースト」に入り(例えば、協同的ヒル速度論(cooperative Hill kinetics))、第一相プラトーの10~100倍に及ぶオリゴヌクレオチド濃度を生成する。増幅技術は、ノイズを除去する、よって高レベルの非特異的バックグラウンド増幅および偽陽性を排除しながら、真のシグナルに決定的に作用する。さらに、非線形増幅率を示す高ゲインの「バースト」(例えば、協同的ヒル速度論)により、本願明細書で開示される等温増幅技術は、非常に低レベルの標的核酸分子(例えば、それだけに限らないが、10ピコモル濃度以下、1ピコモル濃度以下、またはフェムトモル濃度範囲(例えば、100フェムトモル濃度以下、10フェムトモル濃度以下、1フェムトモル濃度以下)さえ)を検出することが可能になる。出力速度論を調整して、第二相の反応加速を制御し、決定的なスイッチターンオンに似たものにすることができる。さらに、制御されたDNA会合熱力学を使用した反応設計は、第一相速度論をある程度制御する。タンパク質、ゲノム細菌DNA、ウイルスDNA、マイクロRNAまたはmRNAを多くのオリゴヌクレオチドトリガーに変換することができるため、この技術は広範な生物学的センサーおよび標的分子に適用可能となる。
【0013】
本願明細書で開示される主題のいくつかの実施形態は、標的オリゴヌクレオチド配列(X)を検出する方法を提供する。いくつかの実施形態では、本方法が、(1)標的オリゴヌクレオチド配列(X)を含む標的核酸と;(2)第1のアンチセンス鋳型(X’R1t’Yp)と;(3)第2のアンチセンス鋳型(t’YpR2t’Yp)とを含む反応混合物を形成するステップを含む。いくつかの実施形態では、第1のアンチセンス鋳型(X’R1t’Yp)が、3’から5’に、(a)標的オリゴヌクレオチド配列(X)と少なくとも実質的に相補的な第1のヌクレオチドの配列(X’)と;(b)第1のニッキング酵素結合部位のアンチセンス鎖の第2のヌクレオチドの配列(R1)と;(c)レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)と少なくとも実質的に相補的な第3のヌクレオチドの配列(t’Yp)とを含む。いくつかの実施形態では、第3のヌクレオチドの配列(t’Yp)が、3’から5’に、(i)足がかりヌクレオチド配列(t’)と;(ii)回文ヌクレオチド配列(Yp)とを含む。いくつかの実施形態では、第3のヌクレオチドの配列(t’Yp)が、標的オリゴヌクレオチド配列(X)と非相補的である。いくつかの実施形態では、第2のアンチセンス鋳型(t’YpR2t’Yp)が、3’から5’に、(a)t’Ypを含む第4のヌクレオチドの配列と;(b)第2のニッキング酵素結合部位のアンチセンス鎖の第5のヌクレオチドの配列(R2)と;(c)t’Ypを含む第6のヌクレオチドの配列とを含む。いくつかの実施形態では、第2のアンチセンス鋳型(t’YpR2t’Yp)の2つの回文ヌクレオチド配列(Yp)が、第2のアンチセンス鋳型(t’YpR2t’Yp)に回文を形成させ、ステム・ループ構造に折り畳ませる。反応混合物は、ポリメラーゼと、第1のニッキング酵素結合部位でニックを入れる第1のニッキング酵素と、第2のニッキング酵素結合部位でニックを入れる第2のニッキング酵素と、ヌクレオチドとをさらに含む。本方法は、反応混合物を、反応温度で本質的に等温条件にさらして非線形増幅率でレポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)を増幅するステップと、レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)を検出するステップとを含む。
【0014】
標的オリゴヌクレオチド配列(X)を検出する方法のいくつかの態様では、レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)の非線形増幅率が協同的ヒル速度論を示す。
【0015】
標的オリゴヌクレオチド配列(X)を検出する方法のいくつかの態様では、レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)の増幅が二相性である。いくつかの態様では、第一相がオリゴヌクレオチド配列(tYp)を線形増幅し、第二相がレポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)を非線形増幅率で増幅する。
【0016】
標的オリゴヌクレオチド配列(X)を検出する方法のいくつかの態様では、前記方法が、10ピコモル濃度以下の濃度で標的オリゴヌクレオチド配列(X)を検出することができる。
【0017】
標的オリゴヌクレオチド配列(X)を検出する方法のいくつかの態様では、レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)が、(A)標的オリゴヌクレオチド配列(X)および第1のアンチセンス鋳型(X’R1t’Yp)を含む二本鎖(D1)を形成するステップと;(B)ポリメラーゼを使用して、第1のアンチセンス鋳型(X’R1t’Yp)に沿って二本鎖(D1)の標的オリゴヌクレオチド配列(X)を伸長して、第1のアンチセンス鋳型(X’R1t’Yp)と相補的なセンス配列を含む伸長標的オリゴヌクレオチド配列を形成するステップと;(C)第1のニッキング酵素によって、二本鎖(D1)のセンス鎖上の第1のニッキング酵素結合部位でニックを入れて、レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)を生成するステップと;(D)ステップ(B)および(C)を繰り返して、それによってレポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)を線形増幅するステップとを含むステップから線形増幅される。
【0018】
標的オリゴヌクレオチド配列(X)を検出する方法のいくつかの態様では、レポーターオリゴヌクレオチド(tYp)が、(A)レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)および第2のアンチセンス鋳型(t’YpR2t’Yp)を含む二本鎖(D2)を形成するステップであって、レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)の足がかり部位(t’)への結合が第2のアンチセンス鋳型(t’YpR2t’Yp)のステム・ループ構造をアンフォールディングするステップと;(B)ポリメラーゼを使用して、第2のアンチセンス鋳型(t’YpR2t’Yp)に沿って二本鎖(D2)のレポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)を伸長して、第2のアンチセンス鋳型(t’YpR2t’Yp)と相補的なセンス配列を含む伸長レポーターオリゴヌクレオチド配列を形成するステップと;(C)第2のニッキング酵素によって、二本鎖(D2)のセンス鎖上の第2のニッキング酵素結合部位でニックを入れて、レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)を生成するステップと;(D)ステップ(B)および(C)を繰り返して、それによってレポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)を非線形増幅するステップとを含むステップから非線形増幅される。態様では、レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)の非線形増幅率が協同的ヒル速度論を示す。
【0019】
標的オリゴヌクレオチド配列(X)を検出する方法のいくつかの態様では、第1のニッキング結合部位と第2のニッキング結合部位が同一である。
【0020】
標的オリゴヌクレオチド配列(X)を検出する方法のいくつかの態様では、第1のニッキング部位と第2のニッキング部位が同じニッキング酵素によってニックを入れられる。
【0021】
標的オリゴヌクレオチド配列(X)を検出する方法のいくつかの態様では、第1のヌクレオチドの配列(X’)が標的オリゴヌクレオチド配列(X)と完全に相補的である。
【0022】
標的オリゴヌクレオチド配列(X)を検出する方法のいくつかの態様では、第3のヌクレオチドの配列(t’Yp)がレポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)と完全に相補的である。
【0023】
標的オリゴヌクレオチド配列(X)を検出する方法のいくつかの態様では、第1のアンチセンス鋳型(X’R1t’YP)の3’末端と第2のアンチセンス鋳型(t’YpR2t’YP)の3’末端がブロックされる。
【0024】
標的オリゴヌクレオチド配列(X)を検出する方法のいくつかの態様では、レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)の検出が、ルミネセンス分光法もしくは分光測定、蛍光、蛍光分光法もしくは分光測定、質量分析、液体クロマトグラフィー、蛍光偏光、比色および/または電気泳動によって少なくとも部分的に行われる。
【0025】
標的オリゴヌクレオチド配列(X)を検出する方法のいくつかの態様では、レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)の検出が、レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)の増幅を検出することを含む。いくつかの態様では、レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)の増幅を検出するステップが、ルミネセンス分光法もしくは分光測定、蛍光、蛍光分光法もしくは分光測定、質量分析、液体クロマトグラフィー、蛍光偏光、比色および電気泳動からなる群から選択される技術によって少なくとも部分的に行われる。
【0026】
標的オリゴヌクレオチド配列(X)を検出する方法のいくつかの態様では、レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)の検出が、レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)の増幅率を検出することを含む。標的オリゴヌクレオチド配列(X)を検出する方法のいくつかの態様では、レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)の増幅率を検出するステップが、ルミネセンス分光法もしくは分光測定、蛍光、蛍光分光法もしくは分光測定、質量分析、液体クロマトグラフィー、蛍光偏光、比色および/または電気泳動によって少なくとも部分的に行われる。
【0027】
標的オリゴヌクレオチド配列(X)を検出する方法のいくつかの態様では、標的オリゴヌクレオチド配列(X)を含む標的核酸が、動物に由来する試料から得られる。いくつかの態様では、試料が血液、血清、粘液、唾液、尿または糞便である。
【0028】
標的オリゴヌクレオチド配列(X)を検出する方法のいくつかの態様では、標的オリゴヌクレオチド配列(X)を含む標的核酸が、mRNA、マイクロRNAおよびsiRNAを含む任意の合成または天然RNA分子である。他の態様では、標的オリゴヌクレオチド配列(X)を含む標的核酸が、ゲノムDNA、ミトコンドリアDNA、mRNA、マイクロRNAまたはsiRNAの逆転写に由来するcDNAを含む任意の合成または天然DNA分子であり、前記方法が、反応混合物を形成する前に、標的オリゴヌクレオチド配列(X)を含む前記標的核酸を変性するステップを含む。
【0029】
標的オリゴヌクレオチド配列(X)を検出する方法のいくつかの態様では、ポリメラーゼがウォームスタートポリメラーゼである。
【0030】
標的オリゴヌクレオチド配列(X)を検出する方法のいくつかの態様では、レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)の増幅が約55℃~約60℃で行われる。
【0031】
標的オリゴヌクレオチド配列(X)を検出する方法のいくつかの態様では、レポーターオリゴヌクレオチド配列が8~30ヌクレオチド長である。標的オリゴヌクレオチド配列(X)を検出する方法のいくつかの態様では、第1、第3、第4および第5のヌクレオチドの配列の足がかり部位(t’)が3~8ヌクレオチド長である。標的オリゴヌクレオチド配列(X)を検出する方法のいくつかの態様では、第2のアンチセンス鋳型(t’YpR2t’Yp)の回文が4~22ヌクレオチド長である。
【0032】
標的オリゴヌクレオチド配列(X)を検出する方法のいくつかの態様では、第2のアンチセンス鋳型(t’YpR2t’Yp)の回文が、反応温度よりも高いが、90℃未満の融解温度を有する。
【0033】
標的オリゴヌクレオチド配列(X)を検出する方法のいくつかの態様では、二本鎖(D2)が反応温度+5℃より低い融解温度を有する。
【0034】
標的オリゴヌクレオチド配列(X)を検出する方法のいくつかの態様では、ニッキング酵素が、Nt.BstNBI、Nt.BspQI、Nb.BBvCl、Nb.Bsml、Nb.BsrDI、Nb.BstI、Nt.AlwI、Nt.BbvCI、Nt.CviPII、Nt.BsmAI、Nb.Bpu1oIおよびNt.Bpu10Iからなる群から選択される。
【0035】
本願明細書で開示される主題のこれらのおよび追加の実施形態および特徴は、本明細書に示される図面および詳細な説明を参照することにより明らかになるであろう。
【0036】
前記の発明の概要と以下の詳細な説明の両方が例示であり、主張される本開示のさらなる説明を提供することを意図していることが理解される。発明の概要も以下の説明も、開示の範囲を発明の概要または説明で言及される特定の特徴に規定または限定することを意図していない。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1図1A図1Bは、内因性スイッチング機構を有し、ヒル型速度論を示す高ゲインの第二相「バースト」を有する、本願明細書で開示される迅速な等温二相性核酸増幅技術の反応スキームの実施形態を示す概略図を示す。図1Aは、レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)の二相性増幅の線形相の反応スキームを示す概略図である。図1Bは、非線形増幅がヒル型速度論を示す、レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)の非線形増幅の代表的な反応スキームを示す図である。
図2図2A図2Bは、二相性核酸増幅の潜在的な経路を示す。図2Aは、二相性核酸増幅、特にレポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)の増幅の潜在的な経路の概略図である。図2Bは、鋳型(t’YpR2t’YP)、特に鋳型LS2の代表的な反応トレースを示す図である。反応段階を、各反応段階を支配する図2Aの提案された反応機構で標識している。
図3図3A図3Eは、代表的な二相性増幅反応出力を示す。図3Aは、種々の鋳型(t’YpR2t’Yp)を使用した核酸増幅(レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp))が蛍光と相関し、以前に報告された最適化EXPAR反応(点線)とほぼ同じレベルで増加し、プラトーに達することを示す代表的な増幅トレースを示す図である。遅滞期後、核酸(レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp))出力は、高ゲインの「オン」領域に飛び込む。鋳型(t’YpR2t’Yp)名を、対応する出力トレースの隣にラベリングする;鋳型配列は表1に見出すことができる。二相性DNA増幅出力を実線で示す。図3B図3Eは、LS2およびEXPAR1増幅鋳型の反応管画像を、LEDトランスイルミネーター(470nm励起)およびiPhone SEを使用して蛍光灯下で捕捉したことを示している。図3Bは、LS2鋳型、60分を示す図である。図3Cは、EXPAR1鋳型、15分を示す図である。図3Dは、LS2、0分を示す図である。図3Eは、EXPAR1、0分を示す図である。
図4図4A図4Fは、増幅開始とレポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)濃度との間の相関を示す、増幅トレースおよび対応する変曲点のグラフである。3つの代表的な鋳型のリアルタイム反応出力は、初期レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)濃度に対する反応の依存性を示しており、蛍光が生成されたレポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)と相関している。初期レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)濃度は、特に指示しない限り、100fM~10μMで10倍増加した;暗い色は、より高い初期レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)濃度を示す。図4D図4Fの水平線は、トリガーを添加していない場合の変曲点を示す。図4Aは、高濃度のトリガー(10μM)でさえも第二相に入らない標準的なEXPAR鋳型(EXPAR1)の希釈系列を示す図である。図4Bは、20μMの初期レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)の余分なトレースを含む、代表的なI型鋳型LS2 lowtGの希釈系列を示す図である。図4Cは、代表的なII型鋳型LS3の希釈系列を示す図である。計算された変曲点を、EXPAR1(図4D)、LS2 lowtG(図4E)およびLS3(図4F)について示す。図4D図4Eについて破線は適合を示す;灰色記号は第1の変曲点を示し、黒色記号は第2の変曲点を示す。エラーバーは、実験3連の標準偏差を表す。
図5】鋳型のループ構造を弱めると反応速度論が遅くなる可能性があることを示すグラフである。長いランダム配列(lrs)をニッカーゼ認識部位の後に4つの基本的ループ鋳型に付加すると、同じ産物を生成するより弱い鋳型ループが得られた。相対的第1の変曲点は、平均第1の変曲点÷lrsなしの基本的鋳型の平均第1の変曲点である;したがって、1より大きい値は、第一相反応速度論の減少を意味する。弱められたループはI型鋳型に控えめな効果を及ぼす(トリガーTm<反応温度+5℃、したがって反応温度55℃でTm<60℃)が、弱められたループを有するII型鋳型(トリガーTm>反応温度+5℃、したがって反応温度55℃でTm>60℃)は、基本的鋳型よりもはるかに遅い。エラーバーは、全て実験反復を含む少なくとも3回の独立した実験からの標準偏差を表す。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、ホルム-ボンフェローニt検定。
図6図6A図6Bは、第二相におけるトリガー生成の加速対DNA会合熱力学を示すチャートである。I型およびII型鋳型は、第二相で2つの異なる挙動を示す。図6Aは、I型鋳型が反応温度で鋳型から動的に解離することができるトリガーを有することを示す図である(トリガーTm<反応温度+5℃、したがって反応温度55℃でTm<60℃)。2つの開いた足がかりへのトリガー結合の協同性が第二相の反応加速に寄与した場合、第1のトリガー結合イベントと第2のトリガー結合イベントとの間の熱力学的差(ΔG5’足がかり+ΔG3’足がかり+ΔG回文-ΔGループ)-ΔGトリガー:鋳型は第二相の加速速度論と相関するだろう。これはI型鋳型(スピアマンのρ=0.9667、p<1.7×10-4)に当てはまるが、II型鋳型(スピアマンのρ=0.6437、p<0.10)には当てはまらない。図6Bは、II型鋳型が反応温度で安定なトリガーを有し(トリガーTm>反応温度+5℃、したがって反応温度55℃でTm>60℃)、ループ閉鎖および長いトリガー除去をより困難にしていることを示す図である。図2Aに記載される、長いトリガーの除去は、ΔG長いトリガー:トリガー+ΔGループ-ΔG長いトリガー:鋳型によって近似される。これは、II型鋳型の第二相加速(スピアマンのρ=-0.9762、p<4.0×10-4)と相関するが、I型鋳型(スピアマンのρ=-0.3333、p<0.39)とは相関しない。図6Bの挿入図は、II型鋳型の第二相加速のグラフの拡大を示すよう大きさを変更されている。
図7図7A図7Bは、成熟miRNA miR-let7f-5p(5’-UGAGGUAGUAGUUGUAUAGUU-3’、配列番号73)を使用した反応の対応する変曲点の増幅トレースおよびグラフである。miRNA miR-let7f-5pを、形質導入鋳型LS3lpG3let7f5pLNA(5’-TCCGGAGTTTGGTAATGACTCTAACTA+TACAATC+TACTACC+TC-3’(PO)(配列番号74)または形質導入鋳型LS3lowpG3let7f5p(5’-TCCGGAGTTTGGTAATGACTCTAACTATACAATCTACTACCTCA-3’NH)(配列番号75)を使用することによって形質導入して、反応混合物で5’- CCAAACTCCGGA-3’(配列番号40、表1)を誘因し、DNA鋳型LS3 lowpG3(表1)と組み合わせてさらに使用した。これは、非線形増幅率、より具体的には協同的ヒル速度論を示す二相性反応化学を誘因した。
図8図8A図8Bは、成熟miRNA hsa-miR-223-3p(5’-UGUCAGUUUGUCAAAUACCCCA-3’、配列番号76)を使用した反応の対応する変曲点の増幅トレースおよびグラフであり、成熟miRNA hsa-miR-223-3pを、形質導入鋳型LS2(表1)を使用することによって形質導入して、反応混合物で5’-ATTCTCCGGA-3’(配列番号29、表1)を誘因し、DNA鋳型LS2(表1)と組み合わせてさらに使用した。これは、非線形増幅率、より具体的には協同的ヒル速度論を示す二相性反応化学を誘因した。エラーバーは、実験3連から計算した。
図9】「AND」論理ゲートを作成するために使用することができる鋳型設計を示す図である。図9は、2つのレポーター、t’YpおよびYp’が生成されるように単一形質導入鋳型を使用してレポーター分子を分割すること、ならびに2つのレポーター、t’YpおよびYp’が生成されるように2つの形質導入鋳型を使用して2つのレポーター分子を生成することを示している。
図10図10A図10Cは増幅スイッチ設計を示す。図10Aは、一本鎖DNAに特異的なエキソヌクレアーゼを使用した阻害スイッチ設計を示す図である。図10Bは、競合スイッチ設計を示す図である。図10Cは、相対増幅スイッチ設計を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
1つまたは複数の特定の態様の以下の説明は、本質的に単なる例示であり、当然ながら変化する可能性がある本発明の範囲、その用途または使用を限定することを決して意図しない。本発明は、本明細書に含まれる非限定的な定義および用語に関して説明される。これらの定義および用語は、本発明の範囲または実施に対する限定として機能するようには設計されておらず、例示および説明目的のみのために提示されている。方法および組成物は特定の順序の個々のステップまたは特定の材料を使用するものとして説明されているが、当業者によって容易に理解されるように、本発明の説明がいろいろに配置された複数のステップまたは部分を含み得るように、ステップまたは材料は互換的であり得ることが理解される。
【0039】
本願明細書で開示されるデータは、内因性スイッチング機構を有する迅速な二相性核酸増幅技術を示している。この新規な二相性核酸増幅技術は、単純な一段階等温増幅反応であるので、温度サイクリングを必要としない。そのため、PCRなどのこのような温度サイクリングを必要とする技術と比較して、反応に必要なエネルギー、ハードウェアおよび時間が少なくなる。本願明細書で開示される増幅技術は、増幅反応で自然に発生する失速を利用し、低レベルのシグナルを生成する。閾値を越えると、反応は高ゲインの第二相「バースト」に入り、レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)を非線形増幅率で増幅し、第一相プラトーの10~100倍に及ぶレポーターオリゴヌクレオチド濃度を生成する。態様では、非線形増幅率が協同的ヒル速度論を示す。
【0040】
本願明細書で開示されるデータは、この増幅技術が、ノイズを除去し、それによって高レベルの非特異的バックグラウンド増幅および偽陽性を排除しながら、真のシグナルに決定的に作用することを示す。出力速度論を調整して、第二相の反応加速を制御し、決定的なスイッチターンオンに似たものにすることができる。さらに、制御されたDNA会合熱力学を使用した反応設計は、第一相速度論をある程度制御する。タンパク質から生成されたもしくはこれらに含まれるもの、ゲノム細菌DNA、ウイルスDNA、マイクロRNAまたはmRNAを含む標的核酸内に含まれる多種多様な標的オリゴヌクレオチド配列を、多くのオリゴヌクレオチドトリガーに変換することができるため、この技術は広範な生物学的センサーおよび標的分子に適用可能となる。明確な反応および高ゲインの出力を示すこの増幅技術の二相性の性質により、この増幅技術は、バイオマーカー検出アッセイ、特に生物試料中の低濃度分子の認識、ならびにDNA論理ゲートおよび他の分子認識システムに適したものとなっている。重要なことに、レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)が非線形増幅率で増幅される高ゲインの「バースト」により(例えば、協同的ヒル速度論を示す)、本願明細書で開示される等温増幅技術は非常に低レベル(ピコモル濃度またはそれより低いレベル)の標的核酸分子を検出することができる。
【0041】
したがって、ここで核酸の迅速な等温増幅のための本願明細書で開示される方法/アッセイ、システム、組成物およびキットの種々の実施形態に詳細に言及する。
【0042】
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態/態様を説明するためのものにすぎず、限定することを意図するものではない。本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、内容が特に明記しない限り、「少なくとも1つ」を含む複数形を含むことを意図している。「または」は「および/または」を意味する。本明細書で使用される場合、「および/または」という用語は、列挙される関連する項目の1つまたは複数の任意のおよび全ての組み合わせを含む。本明細書で使用される場合、「含む(comprises)」および/または「含んでいる(comprising)」あるいは「含む(includes)」および/または「含んでいる(including)」という用語は、述べられる特徴、領域、整数、ステップ、操作、要素および/または成分の存在を指定するが、1つまたは複数の他の特徴、領域、整数、ステップ、操作、要素、成分および/またはこれらの群の存在または追加を排除しないことがさらに理解されるだろう。「またはその組み合わせ」という用語は、前記の要素の少なくとも1つを含む組み合わせを意味する。
【0043】
特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての用語(技術用語および科学用語を含む)は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。さらに、一般的に使用される辞書で定義されている用語などの用語は、関連技術および本開示の文脈におけるそれらの意味と一致する意味を有すると解釈されるべきであり、本明細書で明示的に定義されていない限り、理想的なまたは過度に形式的な意味で解釈されないことがさらに理解される。
【0044】
内因性スイッチング機構および協同的ヒル速度論などの非線形増幅率を示す高ゲインの第二相「バースト」を有する、本願明細書で開示される等温二相性核酸増幅技術の新規な化学を、図1A図1Bに開示する。図1Aは、二相増幅技術の線形相の反応スキームを示している。この第一線形増幅相では、標的オリゴヌクレオチド配列(X)が、アンチセンス鋳型(X’R1t’Yp)(本明細書では「形質導入鋳型」と呼ばれ得る)によりレポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)(本明細書では「トリガー」とも呼ばれ得る)に変換される。実施形態では、アンチセンス配列(3’から5’)としてここに示されるアンチセンス形質導入鋳型(X’R1t’Yp)が、標的オリゴヌクレオチド配列(X)と少なくとも実質的に相補的な配列(X’)、および標的オリゴヌクレオチド配列と実質的に相補的ではないので、反応中に標的オリゴヌクレオチドとハイブリダイズしない配列を含む。標的オリゴヌクレオチドと実質的に相補的ではないアンチセンス配列は、ニッキング酵素(102)のためのニッキング酵素結合部位(R1);足がかり部位(t’)および回文配列(Yp)のアンチセンス鎖を含む。標的オリゴヌクレオチド配列(X)は、アンチセンス鋳型(X’R1t’Yp)の配列(X’)に結合して、二本鎖(D1)を形成する。標的オリゴヌクレオチド配列は、最初のオリゴヌクレオチド伸長のために3’ヒドロキシル基を提供する。ポリメラーゼ(101)および反応混合物に含有される遊離ヌクレオチドを使用すると、ポリメラーゼ(101)が、鋳型(X’R1t’Yp)に沿って標的オリゴヌクレオチド配列を伸長して、(XR1tYp)を含むセンス鎖を作成する。この伸長により、ここで伸長されている鋳型のセンス鎖にニッキング酵素認識部位(R1)が作成される。反応混合物にも含まれる、ニッキング酵素(102)は、そのニッキング部位で二本鎖(D1)のセンス鎖にニックを入れ、レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)を作成する。いったんレポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)が二本鎖(D1)から切断されると、ポリメラーゼ伸長とニッキングのプロセスが繰り返され、レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)が線形増幅される。
【0045】
図1Bは、レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)が非線形増幅率で増幅される代表的な反応スキームを示している。態様では、非線形増幅率が協同的ヒル速度論を示す。レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)は、本明細書で「DNA鋳型」と呼ばれ得るアンチセンス鋳型(t’YpR2t’Yp)によって増幅される。実施形態では、ここではアンチセンス配列(3’から5’)として示される、アンチセンスDNA鋳型(t’YpR2t’Yp)が、ニッキング酵素認識部位のアンチセンス鎖によって連結されたレポーターオリゴヌクレオチド配列に対する相補的配列の2つのコピーを含む。よって、いくつかの実施形態では、ここではアンチセンス配列(3’から5’)として示される、アンチセンスDNA鋳型(t’YpR2t’Yp)が、足がかり部位(t’)、回文配列(Yp)、ニッキング酵素(102)のためのニッキング酵素結合部位(R2)のアンチセンス鎖、足がかり部位(t’)、および回文配列(Yp)を含む。アンチセンスDNA鋳型(t’YpR2t’Yp)の2つの回文ヌクレオチド配列(Yp)は、結合(回文(104)を形成)し、アンチセンスDNA鋳型(t’YpR2t’Yp)に回文を形成させ、ステム・ループ構造(103)に折り畳ませる。レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)は、図1Aに示されるように二相性反応の第一相から最初に作成され、アンチセンスDNA鋳型(t’YpR2t’Yp)の配列(t’Yp)に結合して二本鎖(D2)を形成する。いずれかの足がかり部位(t’)へのレポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)の結合が、アンチセンスDNA鋳型(t’YpR2t’Yp)のステム・ループ構造をアンフォールディングする。アンチセンス鋳型(t’YpR2t’Yp)の3’末端へのレポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)の結合が、最初のオリゴヌクレオチド伸長のための3’ヒドロキシル基を提供する。ポリメラーゼ(101)および反応混合物に含有される遊離ヌクレオチドを使用して、ポリメラーゼ(101)がアンチセンスDNA鋳型(t’YpR2t’Yp)に沿って二重鎖(D2)のレポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)を伸長して、(tYpR2tYp)を含むセンス鎖を作成する。この伸長により、ここで伸長されている鋳型のセンス鎖にニッキング酵素結合部位(R2)が作成される。反応混合物にも含まれる、ニッキング酵素(102)は、二本鎖(D1)のセンス鎖にニックを入れ、レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)を作成する。いったんレポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)が二本鎖(D2)から切断されると、ポリメラーゼ伸長とニッキングのプロセスが繰り返され、レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)が非線形増幅率で増幅される。態様では、非線形増幅率が協同的ヒル速度論を示す。
【0046】
本願明細書で開示される二相性核酸増幅技術は、オリゴヌクレオチドの指数関数的増幅反応(EXPAR)と同じ基本的な成分の多くを含む。EXPARと本明細書に開示される二相性DNA増幅反応の両方とも、好熱性ポリメラーゼおよびニッキング酵素の作用を通して、単一反応温度(例えば、限定されないが、55℃)でトリガー配列を増幅する。元のEXPAR反応と本願明細書で開示される二相性標的オリゴヌクレオチド増幅反応の主な違いは、DNA鋳型内の回文配列であり、これによりこの鋳型がループ構造に折り畳まれる。トリガー結合とDNA鋳型会合の熱力学は、非線形増幅率でレポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)を増幅する二相性DNA増幅反応を生成するレジームにあり、協同的ヒル速度論を示すことができる。このような二相性超高感度速度論およびこのような速度論の作成に必要な鋳型は以前に報告されていない。
【0047】
スイッチ様オリゴヌクレオチド増幅反応の背後にある機構は、図2Aに詳述されているように、複数の現象によって駆動される可能性が高い。増幅には、ループDNA鋳型(t’YpR2t’Yp)(2つの回文配列(Yp)、2つの足がかり(t’)およびニッキング酵素認識部位(×)を有する)、ならびにポリメラーゼおよびニッカーゼ酵素が必要である。DNA鋳型は、鋳型の伸長を防ぐためのアミン基(NH)などのブロッキング3’基、3’足がかり(t’)、回文配列(Yp)、ニッキング酵素結合部位(×)、反復5’足がかりおよび反復回文配列(パネル1)を含み得る。回文配列は結合して回文を形成し(104)、よって鋳型をステム・ループ構造(103)に折り畳ませる。この反応は、鋳型足がかり(t’)および回文領域(Yp)に逆相補的にオリゴヌクレオチドトリガー配列(tYp)を増幅する;矢印はDNAの伸長可能な3’末端を示す。オリゴヌクレオチドトリガー(tYp)は、いずれかの足がかり領域(t’)に結合し、回文領域(104)を鎖置換し、よってループを開くことができる(サブパネル1に示される)。次いで、ポリメラーゼがDNA鋳型に沿ってオリゴヌクレオチドトリガー(tYp)を伸長し、ニッキング酵素のための結合部位(サブパネル2に示される)ならびに同一のトリガーを作成することができる。次いで、ニッキング酵素(例えば、ニッカーゼ)がセンス鎖にニックを入れる(サブパネル3aに示される)。ポリメラーゼがこのニックで伸長し、下流のオリゴヌクレオチドトリガー(tYp)が能動的または受動的に置換される(サブパネル3a→サブパネル2)。次いで、置換されたオリゴヌクレオチドトリガー(tYp)が、他の鋳型を自由にプライミングして、増幅につながる(サブパネル3a→サブパネル1)。したがって、増幅により、3’末端にニッカーゼ認識部位を含むトリガーと長いトリガーの両方が生成される(サブパネル3b)。
【0048】
図2Aをさらに参照すると、回文配列の存在がいくつかの新たな反応経路を生み出す。回文領域はトリガー二量体化を引き起こし、その後、足がかり領域がポリメラーゼによって満たされ得る;これにより、さらなる増幅サイクルからトリガー分子が除去される(サブパネル5)。トリガーは、長いトリガーの回文領域に結合する、または鋳型に結合することによって、長い安定なトリガーの除去を触媒し、ループ閉鎖を促進する(サブパネル3b、4に示される)。理論によって拘束されるものでないが、これは、増幅することができない「毒入り」の長いトリガーを除去し、鋳型上のさらなるトリガー増幅をブロックするために不可欠であり得る(サブパネル4)。ループ閉鎖も、鋳型からトリガーおよび長いトリガーを除去するのに役立つ。最後に、2つの足がかり領域を有するループの存在により、トリガーとループ鋳型との間に協同的結合が作成される。ほとんどの鋳型では、ループ構造が、開いたトリガー結合構造より安定である(表SI 2)。鋳型と第1のトリガー分子の会合によりループが開かれ、第2のトリガー会合の補助と安定化の両方が行われる(サブパネル1b)。理論によって拘束されるものではないが、これらの新たな反応経路は、図2Bに詳述されるように、増幅反応のユニークな特徴を作り出す。
【0049】
したがって、種々の実施形態では、標的オリゴヌクレオチド配列(X)を検出する方法が提供される。いくつかの実施形態では、本方法が、(1)標的オリゴヌクレオチド配列(X)を含む標的核酸と;(2)第1のアンチセンス鋳型(X’R1t’Yp)と;(3)第2のアンチセンス鋳型(t’YpR2t’Yp)とを含む反応混合物を形成するステップを含む。第1のアンチセンス鋳型(X’R1t’Yp)が、3’から5’に、(a)標的オリゴヌクレオチド配列(X)と少なくとも実質的に相補的な第1のヌクレオチドの配列(X’)と;(b)第1のニッキング酵素結合部位のアンチセンス鎖の第2のヌクレオチドの配列(R1)と;(c)レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)と少なくとも実質的に相補的な第3のヌクレオチドの配列(t’Yp)とを含む。第3のヌクレオチドの配列(t’Yp)が、3’から5’に、(i)足がかりヌクレオチド配列(t’)と;(ii)回文ヌクレオチド配列(Yp)とを含む。いくつかの実施形態では、第3のヌクレオチドの配列(t’Yp)が、標的オリゴヌクレオチド配列(X)と非相補的である。第2のアンチセンス鋳型(t’YpR2t’Yp)が、3’から5’に、(a)t’Ypを含む第4のヌクレオチドの配列と;(b)第2のニッキング酵素結合部位のアンチセンス鎖の第5のヌクレオチドの配列(R2)と;(c)t’Ypを含む第6のヌクレオチドの配列とを含む。第2のアンチセンス鋳型(t’YpR2t’Yp)の2つの回文ヌクレオチド配列(Yp)が、第2のアンチセンス鋳型(t’YpR2t’Yp)に回文を形成させ、ステム・ループ構造に折り畳ませる。方法のいくつかの態様では、DNA鋳型がt’Ypの3つ以上のコピーを含み得る。例えば、DNA鋳型は、t’Ypの3つのコピー(アンチセンス鋳型t’YpR2t’YpR2t’Ypを形成する)、t’Ypの4つのコピー(アンチセンス鋳型t’YpR2t’YpR2t’YpR2t’Ypを形成する)、t’Ypの5つのコピー(アンチセンス鋳型t’YpR2t’YpR2t’YpR2t’Ypを形成する)等を含有し得る。反応混合物は、ポリメラーゼと、第1のニッキング部位でニックを入れる第1のニッキング酵素と、第2のニッキング部位でニックを入れる第2のニッキング酵素と、ヌクレオチドとをさらに含む。本方法は、反応混合物を、反応温度で本質的に等温条件にさらして非線形増幅率でレポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)を増幅するステップと、レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)を検出するステップとを含む。いくつかの態様では、レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)の非線形増幅率が協同的ヒル速度論を示す。
【0050】
標的オリゴヌクレオチド配列(X)を検出する方法のいくつかの態様では、レポーターオリゴヌクレオチドの増幅が二相性である。いくつかの態様では、第一相がオリゴヌクレオチド配列(tYp)を線形増幅し、第二相がレポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)を非線形増幅率で増幅する。いくつかの態様では、レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)の非線形増幅率が協同的ヒル速度論を示す。
【0051】
標的オリゴヌクレオチド配列(X)を検出する方法のいくつかの態様では、レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)が、(A)標的オリゴヌクレオチド配列(X)および第1のアンチセンス鋳型(X’R1t’Yp)を含む二本鎖(D1)を形成するステップと;(B)ポリメラーゼを使用して、第1のアンチセンス鋳型(X’R1t’Yp)に沿って二本鎖(D1)の標的オリゴヌクレオチド配列(X)を伸長して、第1のアンチセンス鋳型(X’R1t’Yp)と相補的なセンス配列を含む伸長標的オリゴヌクレオチド配列を形成するステップと;(C)第1のニッキング酵素によって、二本鎖(D1)のセンス鎖上の第1のニッキング酵素結合部位でニックを入れて、レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)を生成するステップと;(D)ステップ(B)および(C)を繰り返して、それによってレポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)を線形増幅するステップとを含むステップから線形増幅される。
【0052】
標的オリゴヌクレオチド配列(X)を検出する方法のいくつかの態様では、レポーターオリゴヌクレオチド(tYp)が、(A)レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)および第2のアンチセンス鋳型(t’YpR2t’Yp)を含む二本鎖(D2)を形成するステップであって、レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)の足がかり部位(t’)への結合が第2のアンチセンス鋳型(t’YpR2t’Yp)のステム・ループ構造をアンフォールディングするステップと;(B)ポリメラーゼを使用して、第2のアンチセンス鋳型(t’YpR2t’Yp)に沿って二本鎖(D2)のレポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)を伸長して、第2のアンチセンス鋳型(t’YpR2t’Yp)と相補的なセンス配列を含む伸長レポーターオリゴヌクレオチド配列を形成するステップと;(C)第2のニッキング酵素によって、二本鎖(D2)のセンス鎖上の第2のニッキング酵素結合部位でニックを入れて、レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)を生成するステップと;(D)ステップ(B)および(C)を繰り返して、それによって非線形増幅率でレポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)を増幅するステップとを含むステップから非線形増幅率で非線形増幅される。いくつかの態様では、レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)の非線形増幅率が協同的ヒル速度論を示す。
【0053】
標的オリゴヌクレオチド配列(X)を検出する方法のいくつかの態様では、レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)が8~30ヌクレオチド長である。レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)を増幅する方法の前の実施形態のいくつかの態様では、第1、第3、第4および第5のヌクレオチドの配列の足がかり部位(t’)が3~8ヌクレオチド長である。レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)を増幅する方法の前の実施形態のいくつかの態様では、第2のアンチセンス鋳型(t’YpR2t’Yp)の回文が4~22ヌクレオチド長である。いくつかの態様では、アンチセンス鋳型(t’YpR2t’Yp)の熱力学的特性が、式1によって決定した場合に、0.5kcal/モル以上であるべきであり、式中、ΔG5’足がかりは、鋳型の5’末端に結合する足がかり(t’)結合の自由エネルギーであり、ΔG3’足がかりは鋳型の3’末端に結合する足がかり(t’)の自由エネルギーであり、ΔG回文は回文(Yp)会合の自由エネルギーであり、ΔGループは鋳型ループ二次構造の自由エネルギーであり、ΔGトリガー:鋳型は、開いた鋳型(tYp:t’YpR2t’Yp複合体)とのトリガー会合の自由エネルギーである(Mfoldウェブサーバー、塩濃度について補正されたDNAハイブリダイゼーションの経験的自由エネルギーを使用するオープンソースソフトウェアによって示される(http://unafold.rna.albany.edu/?q=mfold)):
ΔG5’足がかり+ΔG3’足がかり+ΔG回文-ΔGループ-ΔGトリガー:鋳型 (式1)
【0054】
例えば標的配列、レポーター配列または鋳型などの核酸分子上の一定の配列の位置を説明する際に、「3’」および「5’」という用語は、特定の配列または領域の、別の配列または領域に対する位置を指すことが当業者によって理解される。よって、ある配列または領域が、別の配列もしくは領域に対して3’または別の配列もしくは領域の3’である場合、その位置がその配列または領域とその核酸鎖の3’ヒドロキシルとの間にある。核酸内の位置が別の配列もしくは領域に対して5’または別の配列もしくは領域の5’である場合、それはその位置がその配列または領域とその核酸鎖の5’リン酸との間にあることを意味する。
【0055】
本明細書で使用される核酸分子などの増幅とは、試料中の核酸分子(例えば、cDNAなどのDNAまたはRNA分子)のコピー数を増加させる技術の使用を指す。本明細書に開示される実施形態は、核酸分子の等温増幅を含む。
【0056】
本明細書で使用される核酸分子などの等温増幅とは、変性、アニーリングまたは伸長ステップの温度サイクリングを必要としない核酸増幅方法を指す(ただし、等温増幅アッセイに、例えば特に二本鎖標的の場合、ポリメラーゼをアッセイに添加する前に、単一初期変性ステップを含めてもよい)。よって、PCR法とは対照的に、これらのステップは等温増幅アッセイでは単一温度で行われるが、PCRアッセイでは複数の温度が使用される。ニッキングおよび伸長反応は、同じ温度または同じ狭い温度範囲内で働く。しかしながら、温度を正確に1つの温度に維持する必要はない。高温を維持するために使用される装置が反応混合物の温度を数度変化させる場合(1度未満、2度未満または3度未満の変化など)、これは増幅反応に有害ではなく、まだ等温反応と見なすことができる。鎖置換ポリメラーゼを使用した核酸分子の等温増幅に十分な条件は、当業者によく知られている。
【0057】
本明細書で使用される標的核酸分子は、その増幅、検出、定量、定性的検出またはその組み合わせが意図される核酸分子を指す。例えば、標的は、核酸分子の定義される領域または特定の部分、例えばゲノムの一部(目的の遺伝子または目的の遺伝子(もしくはその一部)を含むDNAもしくはRNAの領域など)であり得る。標的核酸は、オリゴヌクレオチド、ゲノムDNA、ミトコンドリアDNA、mRNA、マイクロRNAまたはsiRNAの逆転写に由来するcDNAなどを含む、任意の種類の天然または合成DNA分子であり得る。前記標的核酸はまた、mRNA、マイクロRNAおよびsiRNAなどを含む、任意の種類の合成または天然RNA分子であり得る。標的核酸分子は一本鎖および/または二本鎖核酸分子を含む。標的核酸は、標的生物(標的病原体など)または標的細胞(がん細胞など)の長い核酸分子の一部、例えば病原性ゲノム、DNA、cDNA、RNAもしくはmRNA配列または腫瘍関連ゲノム、DNA、cDNA、RNAもしくはmRNA配列であり得る。核酸分子は精製形態である必要はない。種々の他の核酸分子も標的核酸分子と共に存在し得る。例えば、標的核酸分子は、特定の核酸分子または配列(本明細書では標的オリゴヌクレオチド配列または標的オリゴヌクレオチドと呼ばれ得、RNAまたはDNAを含むことができる)、少なくともその一部(ゲノム配列またはcDNA配列の一部など)の増幅が意図される。その中に含まれる標的オリゴヌクレオチド配列を含む標的核酸分子は、最初のオリゴヌクレオチド伸長のための3’ヒドロキシル基を提供する。標的核酸分子の精製または単離は、必要に応じて、市販の精製キットなどを使用するなど、当業者に知られている方法によって行うことができる。「標的配列」または「標的オリゴヌクレオチド配列」という用語の使用は、配列のセンス鎖またはアンチセンス鎖のいずれかを指し、また、元の標的配列の標的核酸、増幅コピーまたは増幅産物上に存在する配列も指す。増幅産物は、標的配列、ならびに少なくとも1つの他の配列、または他のヌクレオチドを含むより大きな分子であり得る。実施形態では、標的配列が、反応混合物に含まれる任意のニッキング酵素のためのニッキング部位を含むべきでない。
【0058】
レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)を増幅する方法の前の実施形態のいくつかの態様では、標的オリゴヌクレオチド配列(X)を含む標的核酸が、mRNA、マイクロRNAおよびsiRNAを含む任意の合成または天然RNA分子である。前の実施形態の他の態様では、標的オリゴヌクレオチド配列(X)を含む標的核酸が、ゲノムDNA、ミトコンドリアDNA、mRNA、マイクロRNAまたはsiRNAの逆転写に由来するcDNAを含む任意の合成または天然DNA分子であり、前記方法が、標的オリゴヌクレオチド配列(X)を含む一本鎖標的核酸が形成されるように、反応混合物を形成する前に、標的オリゴヌクレオチド配列(X)を含む前記標的核酸を変性および/またはニッキング/切断するステップを含む。
【0059】
本明細書で使用される核酸は、ホスホジエステル結合を介して連結したヌクレオチド単位(リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、関連する天然構造変異体およびその合成非天然類似体)で構成されるポリマー、関連天然構造変異体、およびその合成非天然類似体を指す。よって、この用語は、ヌクレオチドおよびそれらの間の結合が、例えば、限定されないが、ホスホロチオアート、ホスホルアミダート、メチルホスホナート、キラルメチルホスホナート、2-O-メチルリボヌクレオチド、ペプチド核酸(PNA)などの非天然合成類似体を含むヌクレオチドポリマーを含む。このようなポリヌクレオチドは、例えば、自動化DNA合成機を使用して合成することができる。ヌクレオチド配列がDNA配列(すなわち、A、T、G、C)によって表される場合、これには、「U」が「T」に置き換わるRNA配列(すなわち、A、U、G、C)も含まれると理解される。
【0060】
本明細書で使用されるヌクレオチドには、(それだけに限らないが)ピリミジン、プリンもしくはその合成類似体などの糖に結合した塩基、またはペプチド核酸(PNA)中のようにアミノ酸に結合した塩基を含むモノマーが含まれる。ヌクレオチドは、ポリヌクレオチド中の1つのモノマーである。「天然ヌクレオチド」は、アデニル酸、グアニル酸、シチジル酸、チミジル酸またはウリジル酸を指す。「誘導体化ヌクレオチド」は、天然ヌクレオチド以外のヌクレオチドである。反応方法は、天然ヌクレオチドの存在下で行われ得る。反応はまた、例えば、2P、33P、125Iもしくは35Sなどの放射性標識、アルカリホスファターゼなどの酵素標識、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)などの蛍光標識、ビオチン、アビジン、ジゴキシゲニン、抗原、ハプテンまたは蛍光色素に結合したまたはこれらを含むヌクレオチドなどの標識ヌクレオチド(天然ヌクレオチドなど)の存在下で行われ得る。これらの誘導体化ヌクレオチドは、例えば、鋳型またはレポーターオリゴヌクレオチドに存在し得る。ヌクレオチド配列とは、ポリヌクレオチド中の塩基の配列を指す。
【0061】
本明細書で使用されるオリゴヌクレオチドは、2つ以上、例えば3つ超のデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドを含む線状ポリヌクレオチド配列である。
【0062】
標的配列、例えば、標的オリゴヌクレオチド配列(X)を含む標的核酸は、それだけに限らないが、胞子、ウイルス、細胞、原核生物もしくは真核生物由来の核酸、または任意の遊離核酸を含有する試料を含む多くの種類の試料で増幅され得る。試料は、標的配列を含有する疑いのある任意の材料から単離され得る。例えば、試料は生物試料であり得る。本明細書で使用される生物試料は、生物材料を含む試料、例えば対象から得られた試料、または生物材料を含有する環境試料を指す。例えば、生物試料には、対象の疾患または感染症の検出に有用な全ての臨床試料が含まれる。動物、例えば、ヒトなどの哺乳動物の場合、試料が、血液、血清、骨髄、粘液、リンパ液、硬組織、例えば肝臓、脾臓、腎臓、肺、または卵巣、生検、痰、唾液、涙、糞便、または尿を含み得る。態様では、標的配列が、空気、植物、土壌、または生物を含有する疑いのある他の材料中に存在し得る。したがって、標的オリゴヌクレオチド配列(X)を検出する方法の前の実施形態のいくつかの態様では、標的オリゴヌクレオチド配列(X)を含む標的核酸が、動物に由来する試料から得られる。いくつかの態様では、試料が血液、血清、粘液、唾液、尿または糞便である。他の態様では、標的オリゴヌクレオチド配列(X)が、微生物、ウイルス、真菌、昆虫、または植物に由来する試料から得られる。
【0063】
当業者であれば、試料からRNAおよび/またはDNAなどの核酸を抽出するための適切な方法を知っているであろう。このような方法は、例えば、核酸が見出される試料の種類に依存するだろう。核酸は標準的な方法を使用して抽出することができる。例えば、市販のキット(Qiagen(DNEasy(登録商標)もしくはRNEasy(登録商標)キットなど)、Roche Applied Science(MagNA Pureキットおよび機器など)、Thermo Scientific(KingFisher mL)、bioMerieux(Nuclisens(登録商標)NASBA Diagnostics)、またはEpicentre(Masterpure(商標)キット)製のキットおよび/または機器)を使用して、迅速な核酸調製を行うことができる。他の例では、酸グアニジニウムイソチオシアネート-フェノール-クロロホルム抽出による一段階単離(ChomczynskiらAnal.Biochem.162:156~159、1987)などのグアニジニウムイソチオシアネートを使用して核酸を抽出することができる。試料は直接使用することができる、あるいは溶媒、保存剤、緩衝液または他の化合物もしくは物質を添加することなどによって処理することができる。さらに他の例では、増幅反応の前に抽出手順を行わない。さらに他の例では、細胞溶解を増幅反応の前に行う。
【0064】
2つの核酸配列について言及する場合の「相補的」という用語は、一般に、2つの配列が、2つの核酸のハイブリダイゼーションによって形成される二本鎖ヌクレオチド配列を安定化するのに十分な水素結合を2つの核酸間に形成する能力を指す。反応条件(例えば、反応温度で本質的に等温条件)下で第1の配列が第2の配列とハイブリダイズまたは結合して、最終的に一過的二本鎖を形成することができる場合に、第1の核酸は、第2の核酸配列と「少なくとも実質的に相補的」である。例えば、いくつかの実施形態では、第1の核酸の少なくとも90%が第2の核酸配列の対応する領域と相補的である(例えば、対応する領域と少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%相補的)など、第1の核酸が第2の核酸配列酸分子と「少なくとも実質的に相補的」である。レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)を増幅する方法の実施形態のいくつかの態様では、第1のヌクレオチドの配列(X’)が標的オリゴヌクレオチド配列(X)と完全に相補的である。標的オリゴヌクレオチド配列(X)を検出する方法のいくつかの態様では、第3のヌクレオチドの配列(t’Yp)がレポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)と完全に相補的である。完全に相補的とは、第1の配列が第2の配列と正確に相補的である、すなわち、第1の配列の各ヌクレオチドが、対応する位置で第2の配列のヌクレオチドと相補的であり、第1の配列が第2の配列と同じ長さであることを意味する。
【0065】
「ニッキング」とは、完全または部分的二本鎖核酸の二本鎖部分の1本の鎖のみの切断を指す。核酸にニックが入れられる位置は、ニッキング部位またはニッキング酵素部位と呼ばれる。ニッキング酵素が認識する認識配列は、ニッキング酵素結合部位と呼ばれる。「ニッキング可能である」とは、ニッキング酵素の酵素能力を指す。
【0066】
ニッキング酵素は、二本鎖核酸(DNA、RNA、DNA/RNAハイブリッド等)に結合し、二本鎖二重鎖の一方の鎖を切断するタンパク質である。ニッキング酵素は、結合部位またはニッキング酵素認識部位の上流または下流を切断することができ、その結果、いわゆるニックが二本鎖核酸に挿入され、2つのヌクレオチド間の5’-3’ホスホジエステル結合が加水分解的に切断される。よって、ニッキング酵素はホスホジエステラーゼとして作用し、その結果として一本鎖切断が二本鎖に挿入され、ポリメラーゼの付着点として機能する遊離3’-OH末端が作成される。開示される方法の実施形態では、ニッキング酵素の結合部位配列も位置する、二本鎖の一方の鎖のみ(例えば、Duplex 1またはDuplex 2)、すなわち、順方向、トップ、またはセンス鎖が切断され、他方の鎖は無傷のままである。二本鎖の一方の鎖だけでなく両方を切断するニッキング酵素は、一般に、本発明による方法の反応混合物での使用に適していない。例示的な実施形態では、反応が、結合部位の下流で切断またはニックを入れるニッキング酵素(トップ鎖ニッキング酵素)の使用を含み、その結果として産物配列がニックキング部位を含まない。結合部位の下流で切断する酵素を使用すると、ニッキング酵素を置換することなく、ポリメラーゼがより簡単に伸長することが可能になり得る。
【0067】
適切なニッキング酵素の例としては、それだけに限らないが、Nt.BstNBI、Nt.BspQI、Nb.BbvCI、Nb.BsmI、Nb.BsrDI、Nb.BtsI、Nt.AlwI、Nt.BbvCI、Nt.CviPII、Nt.BsmAI、Nb.Bpu10IおよびNt.Bpu10Iが挙げられる。さらに適切なニッキング酵素は、当業者によく知られている。標的オリゴヌクレオチド配列(X)を検出する方法のいくつかの態様では、ニッキング酵素が、Nt.BstNBI、Nt.BspQI、Nb.BBvCl、Nb.Bsml、Nb.BsrDI、Nb.BstI、Nt.AlwI、Nt.BbvCI、Nt.CviPII、Nt.BsmAI、Nb.Bpu1oIおよびNt.Bpu10Iからなる群から選択される。
【0068】
鋳型のニッキング結合部位配列は、どのニッキング酵素が各鋳型(例えば、形質導入鋳型およびDNA鋳型)に選択されるかに依存する。単一アッセイで異なるニッキング酵素を使用することができるが、単純な増幅では、例えば、両方の鋳型で使用するために単一のニッキング酵素を使用することができる。よって、本発明の実施形態は、両方の鋳型が同じニッキング酵素のための酵素結合部位を含み、ただ1つのニッキング酵素が反応に使用されるものを含む。これらの実施形態では、第1のニッキング酵素と第2のニッキング酵素の両方が同じである。本発明はまた、各鋳型が異なるニッキング酵素のためのニッキング酵素結合部位を含み、2つの異なるニッキング酵素が反応に使用される実施形態を含む。標的オリゴヌクレオチド配列(X)を検出する方法のいくつかの態様では、第1のニッキング結合部位が第2のニッキング結合部位と同一である。標的オリゴヌクレオチド配列(X)を検出する方法のいくつかの態様では、第1のニッキング結合部位と第2のニッキング結合部位が同じニッキング酵素によってニックを入れられる。
【0069】
二本鎖増幅産物のニックは、ポリメラーゼによって認識される。本発明の意味におけるポリメラーゼは、核酸複製および/または核酸修復のための酵素である。ポリメラーゼは、鋳型鎖と相補的なヌクレオチドで始まる3’-OH末端でニックを埋める。このために、例えば、相補的塩基に対応するデオキシリボヌクレオチドリン酸が連続して毎回結合し、ピロリン酸の除去を伴ってホスホジエステル結合を介して組み込まれる。実施形態では、重合反応が5’→3’方向で起こる。実施形態では、ポリメラーゼが5’→3’エキソヌクレアーゼ活性を有し得ない、および/または鎖置換活性も有し得る。実施形態では、ポリメラーゼが好熱性であり得、その結果として高温の反応温度で活性である。一定の実施形態では、ポリメラーゼがウォームスタートポリメラーゼである。ポリメラーゼがRNAプライマー(Bst(大きな断片)、9°N、Therminator、Therminator II等)を伸長する能力も有する場合、反応は、別の逆転写酵素を使用することなく単一ステップでRNA標的を増幅することもできる。
【0070】
開示される方法のいくつかの実施形態では、ポリメラーゼが鎖置換活性を有するものである。開示される方法のいくつかの実施形態では、ポリメラーゼが鎖置換活性を有する必要がなく、レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)が、ニッキング後に鋳型(例えば、形質導入鋳型およびDNA鋳型)から受動的に放出され得る。適切なポリメラーゼの例としては、それだけに限らないが、Bst DNAポリメラーゼ、Bst 2.0 WarmStart(登録商標)DNAポリメラーゼ、Bst DNAポリメラーゼ(Large断片)、9°Nm DNAポリメラーゼ、Phi29 DNAポリメラーゼ、DNAポリメラーゼI(大腸菌)、DNAポリメラーゼI、Large(Klenow)断片、Klenow断片(3’-5’エキソ-)、T4 DNAポリメラーゼ、T7 DNAポリメラーゼ、Deep VentR(商標)(エキソ-)DNAポリメラーゼ、Deep VentR(商標)DNAポリメラーゼ、DyNAzyme(商標)EXT DNA、DyNAzyme(商標)II Hot Start DNAポリメラーゼ、Phusion(商標)High-Fidelity DNAポリメラーゼ、Therminator(商標)DNAポリメラーゼ、Therminator(商標)II DNAポリメラーゼ、VentR(登録商標)DNAポリメラーゼ、VentR(登録商標)(エキソ-)DNAポリメラーゼ、RepliPHFM Phi29 DNAポリメラーゼ、rBst DNAポリメラーゼ、Large Fragment(IsoTherm(商標)DNAポリメラーゼ)、MasterAmp(商標)AmpliTherm(商標)DNAポリメラーゼ、Tag DNAポリメラーゼ、Tth DNAポリメラーゼ、Tfl DNAポリメラーゼ、Tgo DNAポリメラーゼ、SP6 DNAポリメラーゼ、Tbr DNAポリメラーゼ、DNAポリメラーゼβ、ThermoPhi DNAポリメラーゼが挙げられる。さらに適切なポリメラーゼは当業者に知られている。
【0071】
本発明の鋳型は、例えば、スペーサー、ブロッキング基、および修飾ヌクレオチドを含み得る。修飾ヌクレオチドは、天然ヌクレオチドおよびヌクレオチド三リン酸と組成および/または構造が異なるヌクレオチドまたはヌクレオチド三リン酸である。本明細書で使用される修飾ヌクレオチドまたはヌクレオチド三リン酸は、例えば、制限エンドヌクレアーゼ認識部位が存在する二本鎖核酸の一方の鎖上に修飾が存在する場合に、修飾ヌクレオチドまたはヌクレオチド三リン酸が制限酵素による切断から修飾鎖を保護するように修飾され得る。よって、修飾ヌクレオチドまたはヌクレオチド三リン酸の存在は、二本鎖核酸の切断よりもニッキングを促進する。ブロッキング基は、ポリメラーゼによる標的配列非依存性核酸重合を阻害するために鋳型に付加することができる化学部分である。通常、ブロッキング基は鋳型の3’末端に位置する。ブロッキング基の非限定的な例としては、例えば、アミン基(NH)、アルキル基、非ヌクレオチドリンカー、ホスホロチオアート、アルカンジオール残基、ペプチド核酸、および3’-OHを欠くヌクレオチド誘導体(例えば、コルジセピンを含む)が挙げられる。スペーサーの例としては、例えば、C3スペーサーが挙げられる。スペーサーは、例えば、鋳型内で、また、例えば、5’末端で、例えば標識などの他の基を結合するために使用され得る。レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)を増幅する方法の前の実施形態のいくつかの態様では、第1のアンチセンス鋳型(X’R1t’Yp)の3’末端と第2のアンチセンス鋳型(t’YpR2t’Yp)の3’末端がブロックされる。
【0072】
例えば鎖置換ポリメラーゼを使用した核酸分子の等温増幅に十分な条件は、当業者によく知られている。例えば、緩衝液条件は、Notamiら、Nucl.Acid.Res.、28:e63、2000および米国特許第8017357号明細書に開示されている。適切な緩衝液は、特定のポリメラーゼの製造業者または供給業者から得ることもできる。いくつかの実施形態では、水性緩衝液が使用される(例えば、それだけに限らないが、当技術分野で知られているように、Tris緩衝液、リン酸緩衝液または炭酸緩衝液)。水性緩衝液は、約7~約9のpHを有し得る。緩衝液は、一価(例えば、Na、典型的には30~200mMで使用される)および/または二価(Ca++もしくはMg++塩、典型的には2~20mMで使用される)を含有し得る。ニッキング酵素の前、後、またはこれと同時に、ポリメラーゼを標的核酸分子と混合してもよい。例示的な実施形態では、反応緩衝液が、当業者によく知られているように、ニッキング酵素とポリメラーゼの両方に適するように最適化される。さらに、緩衝液条件、塩濃度(例えば、MgSO、KCl)、ポリメラーゼ濃度、ニッキング酵素濃度、鋳型濃度、および遊離ヌクレオチド濃度の変動を全て、アッセイ順序および所望の検出方法に基づいて最適化することができ、これは当業者の技能の範囲内である。
【0073】
増幅反応は、典型的には、約37~75℃、例えば約37~70℃、37~42℃、54~70℃、55~65℃、55~60℃、60~77℃、60~70℃、60~65℃または65~70℃で行われる。いくつかの実施形態では、増幅反応が、約54~75℃、例えば約54℃、55℃、56℃、57℃、58℃、59℃、60℃、61℃、62℃、63℃、64℃、65℃、66℃、67℃、68℃、69℃、70℃、71℃、72℃、73℃、74℃または75℃で行われる。反応は、通常54~60℃、例えばNt.BstNBIニッキングエンドヌクレアーゼ、Bst 2.0 WarmStart(登録商標)DNAポリメラーゼの酵素組み合わせの場合は55℃の実質的に一定の温度で行われる。他の酵素組み合わせを使用してもよく、最適な反応温度は、ニッキング酵素とポリメラーゼの両方が協力して機能するための最適な温度、ならびに反応産物の融解温度に基づく。レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)を増幅する方法の前記の実施形態のいくつかの態様では、レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)の増幅が約55℃~約60℃で行われる。
【0074】
標的オリゴヌクレオチド配列(X)を検出する方法のいくつかの態様では、第2のアンチセンス鋳型(t’YpR2t’YP)の回文が、反応温度よりも高いが、90℃未満の融解温度を有する。他の態様では、第2のアンチセンス鋳型(t’YpR2t’YP)が、反応温度よりも高いが、89℃、88℃、87℃、86℃、85℃、84℃、83℃、82℃、81℃または80℃未満の融解温度を有する。標的オリゴヌクレオチド配列(X)を検出する方法のいくつかの態様では、二本鎖(D2)が反応温度+5℃より低い融解温度を有する。
【0075】
いくつかの実施形態では、特に標的オリゴヌクレオチド配列(X)を含む標的核酸が二本鎖である場合、増幅方法が、例えば、それだけに限らないが、鎖置換ポリメラーゼを反応混合物に添加する前に、反応混合物を約5分間約95℃に加熱する初期変性ステップを含む。同様に、標的オリゴヌクレオチド配列(X)を含む標的核酸が二本鎖である場合、本願明細書で開示される反応を実行する前に、二本鎖標的を両方の鎖で切断して(例えば、適切な制限酵素を使用して)、標的を分離して一本鎖にしてもよい。
【0076】
鋳型濃度は、典型的には、標的の濃度を超えている。形質導入鋳型およびDNA鋳型の濃度を同じ濃度または異なる濃度にして、一方の産物の増幅を他方の産物の増幅に対して偏らせることができる。各々の濃度は通常、10nM~1μM(例えば、約10nM、約25nM、約50nM、約100nM、約250nM、約500nM、約1μM、例えば約10~100nM、約25~250nM、約50~500nM、約100~500nM、約250~750nMまたは約500nm~1μM)である。
【0077】
それだけに限らないが、BSA、非イオン性界面活性剤、例えばTriton X-100またはTween-20、DMSO、DTT、およびRNase阻害剤などの添加剤を、増幅反応に悪影響を及ぼすことなく最適化の目的で含めることができる。
【0078】
等温増幅反応を進行させる期間は、特定の反応条件に応じて変化し得る。例えば、いくつかの実施形態では、標的オリゴヌクレオチド配列(X)を増幅することが、標的オリゴヌクレオチド配列(X)を、本願明細書で開示される反応混合物と、等温増幅に十分な条件下で、少なくとも5分間、例えば約5分間、6分間、7分間、8分間、9分間、10分間、11分間、12分間、13分間、14分間、15分間、16分間、17分間、18分間、19分間、20分間、21分間、22分間、23分間、24分間、25分間、26分間、27分間、28分間、29分間、30分間、35分間、40分間、45分間、50分間、55分間、60分間、75分間、90分間、約120分間、約150分間、約180分間、またはこれらの間の任意の値もしくは範囲(例えば、5~60分間、30~90分間、60~120分間、80~160分間、または90~180分間)の期間接触させることを含む。追加の例では、期間が、約10~60分間、例えば約10~15分間、10~20分間、10~30分間、15~20分間、15~30分間、20~30分間、30~60分間、またはこれらの間の任意の値もしくは範囲であり得る。いくつかの例では、等温増幅反応を、90分間以下、例えば約10分間、15分間、20分間、25分間、30分間、45分間、60分間、75分間または90分間の最大期間進行させる。
【0079】
反応を完了するまで、すなわち、資源の1つが使い尽くされる時まで進行させることができる。または、例えば、熱変性、またはEDTA、高塩もしくは界面活性剤の添加などの、当業者に知られている方法を使用して、反応を停止してもよい。増幅後に質量分析を使用する例示的な実施形態では、EDTAを使用して反応を停止してもよい。
【0080】
いくつかの実施形態では、2つ以上の標的オリゴヌクレオチド配列(X)が多重化アプローチで検出される。鋳型(レポーターオリゴヌクレオチド配列を含む形質導入鋳型およびDNA鋳型)の配列はそのヌクレオチド配列が異なるので、結果として鋳型の各セットは、多重化アプローチで、いくつかの異なる標的オリゴヌクレオチド配列を1つの反応容器で同時に検出することができる程度に、その標的オリゴヌクレオチド配列(X)に特異的である。いくつかの例では、方法が、単一反応容器内で2つ以上の標的オリゴヌクレオチド配列(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上の標的オリゴヌクレオチド配列)を検出するステップを含む。
【0081】
いくつかの態様では、このような多重化アプローチを使用して、「OR」論理ゲートを作成することができる。これは、それぞれが異なるオリゴヌクレオチド配列を同じレポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)に変換する、それぞれ異なる標的オリゴヌクレオチド配列(X)に特異的な複数のDNA鋳型を使用することによって行うことができる。生成されたレポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)は、図1A図1Bおよび図2Aに示されるように、レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)増幅を開始するだろう。他の態様では、このような多重化アプローチを使用して、「AND」論理ゲートを作成することができる。これを図9に示す。レポーター分子を分割すると、DNA鋳型ループ解放に対する協同的ヒル速度論的効果が増強され、2つの異なるソースからの入力がないと論理ゲートがオンにならないことが保証される。図9は、2つのレポーター、tYpおよびtYpが生成されるように(208)単一形質導入鋳型(204)を使用してレポーター分子を分割すること、ならびに2つのレポーター、tYpおよびtYpが生成されるように(208)2つの形質導入鋳型(206)を使用して2つのレポーター分子を生成することを示している。
【0082】
本明細書に開示される方法は、種々のフォーマットで行うことができる。例えば、反応を、全ての成分が可溶性である混合物で行ってもよい。あるいは、鋳型の1つまたは全てを固相に結合してもよい;例えば、3’または5’末端を、架橋剤またはスペーサーを使用して固相に共有結合してもよい。固相には、例として、ビーズ、マイクロビーズ、マイクロプレート、マイクロプレートウェル、膜、スライドおよびアレイが含まれ得る。このような固相の材料には、例として、ガラス、ナイロン、シリカおよびプラスチックが含まれ得る。また、鋳型を遺伝子チップまたはアレイに固定して、結果として多数の異なる標的オリゴヌクレオチドをハイスループット法で検出することもできる。このようなマトリックスは、シリコン材料、例えばシリコンまたは二酸化シリコン膜、シリコン基板、シリコンナノワイヤ、導電性金属、例えば金、白金、炭素材料、例えばグラファイト、カーボンナノチューブ、および導電性樹脂などを含む種々の材料によって作成することができる。本明細書に開示される方法を、マイクロ流体フォーマットで行うこともできる。
【0083】
標的オリゴヌクレオチド配列(X)を検出する方法のいくつかの態様では、方法が、増幅レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)を検出するステップをさらに含む。いくつかの態様では、増幅レポーターオリゴヌクレオチド配列が、当業者に知られている任意の方法によって検出され得る。非限定的な例としては、それだけに限らないが、ルミネセンス分光法もしくは分光測定、蛍光、蛍光分光法もしくは分光測定、質量分析、液体クロマトグラフィー、蛍光偏光、比色および電気泳動が挙げられる。
【0084】
標的オリゴヌクレオチド配列(X)を検出する方法のいくつかの態様では、レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)の増幅率を検出するステップが、ルミネセンス分光法もしくは分光測定、蛍光、蛍光分光法もしくは分光測定、質量分析、液体クロマトグラフィー、蛍光偏光、比色および電気泳動からなる群から選択される技術によって少なくとも部分的に行われる。
【0085】
一例では、増幅レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)がゲル電気泳動によって検出され、よって特定のサイズを有する増幅レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)を検出することができる。さらに、反応に含まれるヌクレオチドの1つまたは複数を、例えばビオチンで標識してもよい。ビオチン標識増幅配列は、シグナル生成酵素、例えばペルオキシダーゼに結合したアビジンを使用して捕捉され得る。
【0086】
別の例では、開示される増幅反応を、標識が増幅レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)に組み込まれるように標識ヌクレオシド(例えば、標識デオキシヌクレオシド三リン酸)の存在下で行ってもよい。核酸断片に組み込むのに適した標識およびその後の断片の検出方法は当技術分野で公知であり、例示的な標識には、それだけに限らないが、例えば2P、33P、125Iもしくは35Sなどの放射標識、アルカリホスファターゼなどの酵素標識、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)などの蛍光標識、ビオチン、アビジン、ジゴキシゲニン、抗原、ハプテンまたは蛍光色素が含まれる。
【0087】
あるいは、増幅レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)を、増幅レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)と実質的に、いくつかの例では完全に相補的な標識検出剤オリゴヌクレオチドの使用によって検出してもよい。標識ヌクレオシド(例えば、標識デオキシヌクレオシド三リン酸)と同様に、検出剤オリゴヌクレオチドをハプテン、抗原、酵素、放射性、化学発光または蛍光タグで標識してもよい。
【0088】
検出方法は、二本鎖DNAなどの核酸を特異的に染色する色素の使用を採用してもよい。DNAまたはRNAへの結合時に蛍光増強を示すインターカレーター色素は、分子生物学および細胞生物学の基本的なツールである。色素は、例えば、DNAまたはRNAインターカレーター発蛍光団であってもよく、それだけに限らないが、以下の例を含むことができる:アクリジンオレンジ、臭化エチジウム、Hoechst色素、PicoGreen、ヨウ化プロピジウム、SYBR I(非対称シアニン色素)、SYBR II、TOTO(チアゾールオレンジダイマー)およびYOYO(オキサゾールイエローダイマー)。色素は、種々の検出方法と併せて使用すると、核酸検出の感度を高める機会を提供し、さまざまな最適な使用パラメータを有し得る。例えば、臭化エチジウムは、ゲル電気泳動後およびPCR中にアガロースゲルのDNAを染色するために一般的に使用され(Hiquchiら、Nature Biotechnology 10;413~417、1992年4月)、ヨウ化プロピジウムおよびHoechst 33258は、細胞のDNA倍数性を決定するためにフローサイトメトリーで使用され、SYBR Green 1はレーザー誘起蛍光検出のキャピラリー電気泳動による二本鎖DNAの分析に使用されており、Pico Greenはマッチドイオン対ポリヌクレオチドクロマトグラフィー(matched ion pair polynucleotide chromatography)後の二本鎖DNAの検出を増強するために使用されている(Singerら、Analytical Biochemistry 249、229~238 1997)。
【0089】
核酸産物の増幅を検出および/または継続的に監視する方法も、当業者に周知である。例としては、分子ビーコン、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)の使用が挙げられる。分子ビーコンは、一端に発蛍光団および他端に消光色素を含むヘアピン型のオリゴヌクレオチドである。ヘアピンのループは標的配列と相補的なプローブ配列を含み、ステムはプローブ配列の両側に位置する相補的アーム配列のアニーリングによって形成される。発蛍光団と消光分子は、各アームの両端で共有結合している。オリゴヌクレオチドがその相補的標的にハイブリダイズするのを防ぐ条件下で、または分子ビーコンが溶液中にない場合、蛍光分子と消光分子は互いに近接し、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を防ぐ。分子ビーコンが標的分子に遭遇すると、ハイブリダイゼーションが起こる;ループ構造が蛍光をもたらす発蛍光団と消光分子の分離を引き起こす安定したより剛直な立体構造に変換される(TyagiらNature Biotechnology 14:1996年3月、303~308)。プローブの特異性のため、蛍光の生成はもっぱら意図した増幅産物の合成によるものとなる。
【0090】
分子ビーコンは非常に特異的であり、一塩基多型を識別することができる。分子ビーコンは、異なる色の発蛍光団および異なる標的配列を使用して合成することもでき、同じ反応のいくつかの産物を同時に定量化することを可能にする。定量的増幅方法では、分子ビーコンが増幅の各サイクル後に増幅標的に特異的に結合することができ、非ハイブリダイズ分子ビーコンは暗いため、増幅産物の量を定量的に決定するためにプローブ-標的ハイブリッドを分離する必要はない。得られるシグナルは、増幅産物の量に比例する。これをリアルタイムで行うことができる。特定の反応条件を、例えば、正確度および精度を高めるために、各プライマー/プローブセットに対して最適化してもよい。
【0091】
標的核酸および核酸配列の生成または存在は、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)によっても検出および監視され得る。FRETは、ドナー分子とアクセプター分子という2つの発色団間のエネルギー移動機構である。手短に言えば、ドナー発蛍光団分子が特定の励起波長で励起される。基底状態に戻る際のドナー分子からのその後の発光が、長い範囲の双極子-双極子相互作用を通してアクセプター分子に励起エネルギーを伝達し得る。アクセプター分子の発光強度を監視することができ、これはドナーとアクセプターとの間の距離、ドナー発光スペクトルとアクセプター吸収スペクトルの重複、およびドナー発光双極子モーメントとアクセプター吸収双極子モーメントの配向の関数である。FRETは、例えば、分子ビーコンで見られるDNA-DNA相互作用における分子動力学を定量化するために有用なツールである。特定の産物の生成を監視するために、プローブを一端でドナー分子および他端でアクセプター分子で標識することができる。プローブ-標的ハイブリダイゼーションにより、ドナーおよびアクセプターの距離または配向が変化し、FRET変化が観察される。(Joseph R.Lakowicz、「Principles of Fluorescence Spectroscopy」、Plenum Publishing Corporation、第2版(1999年7月1日))。
【0092】
標的核酸および核酸配列の生成または存在は、質量分析によっても検出および監視され得る。質量分析は、標的核酸種の構造および量を決定するために使用することができ、複雑な混合物の迅速な分析を提供するために使用することができる分析技術である。この方法によると、試料をイオン化し、得られたイオンを質量電荷比に従って電界および/または磁場で分離し、検出器がイオンの質量電荷比を測定する。(Crain, P.F.およびMcCloskey, J.A.、Current Opinion in Biotechnology 9:25~34(1998))。質量分析には、例えば、MALDI、MALDIITOFまたはエレクトロスプレーが含まれる。これらの方法を、ガスクロマトグラフィー(GC/MS)および液体クロマトグラフィー(LC/MS)と組み合わせてもよい。MSはDNAおよびRNAオリゴヌクレオチドの配列決定に適用されてきた(Limbach P.、MassSpectrom.Rev.15:297~336(1996);Murray K.、J.Mass Spectrom.31:1203~1215(1996))。MS、特にマトリックス支援レーザー脱離/イオン化MS(MALDI MS)は、高速シグナル取得および固体表面の自動化分析により、スループットが非常に高くなる可能性がある。MSは、時間節約に加えて、分子の固有の特性を測定し、したがって、有意に多い情報価値のあるシグナルをもたらすことが指摘されている(Koster H.ら、Nature Biotechnol.、14:1123~1128(1996))。
【0093】
標的核酸および核酸配列の生成または存在は、種々のゲル電気泳動方法によっても検出および監視され得る。ゲル電気泳動は、マトリックス、一般に架橋ポリマーを通して分子を引っ張る起電力を使用して、マトリックスを通して核酸を分離することを伴う。分子はさまざまな速度でマトリックス内を移動し、産物間の分離を引き起こし、これを、それだけに限らないが、オートラジオグラフィー、蛍光イメージングおよび核酸キレート色素による染色(例えば、DNAインターカレーター色素)を含むいくつかの方法のいずれか1つを介して可視化および解釈することができる。
【0094】
標的核酸および核酸配列の生成または存在は、キャピラリーゲル電気泳動によっても検出および監視され得る。キャピラリーゲル電気泳動(CGE)は、伝統的なゲル電気泳動と液体クロマトグラフィーを組み合わせたもので、ポリアクリルアミドなどの媒体を狭口径キャピラリーに使用して、最大で一塩基分割までの核酸分子の高速で高効率の分離をもたらす。CGEは、一般的に、わずか6個の分子の染色DNAを検出することができるレーザー誘起蛍光(LIF)検出と組み合わされる。CGE/LIF検出は、一般に、臭化エチジウム、YOYOおよびSYBR Green 1を含む蛍光DNAインターカレーター色素の使用を伴うが、蛍光色素がDNAに共有結合している蛍光DNA誘導体の使用も伴うことができる。例えば、各標的配列および/またはレポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)に異なる蛍光色素を使用して、ならびに/あるいは標的配列および/またはレポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)間のサイズ差に基づいて、この方法を使用して、いくつかの異なる標的配列の同時同定を行うことができる。
【0095】
標的核酸および核酸配列の生成または存在は、種々の表面捕捉方法によっても検出および監視され得る。これは、特定のオリゴヌクレオチドを表面に固定化して、高感度かつ選択性の高いバイオセンサーを生成することによって達成される。この方法で使用される表面には、それだけに限らないが、金および炭素が含まれ、いくつかの共有結合または非共有結合カップリング法を使用してプローブを表面に付着させることができる。標的DNAのその後の検出は、種々の方法によって監視することができる。
【0096】
電気化学的方法は、一般に、メチレンブルーなどのインターカレーターの陰極ピークをDNAプローブ電極で測定し、矩形波ボルタモグラムで可視化することを伴う。標的配列の結合は、メチレンブルーがdsDNAおよびssDNAと相互作用してハイブリッド形成の程度を異なって反映するので、メチレンブルーのボルタンメトリー還元シグナルの大きさの減少によって観察することができる。
【0097】
表面プラズモン共鳴(SPR)を使用して、プローブ付着の速度論ならびに標的捕捉のプロセスを監視することもできる。SPRは、蛍光プローブまたは他の標識の使用を必要としない。SPRは、屈折率の異なる2つの透明な媒体の界面で反射および屈折される光の原理に依存している。単色およびp偏光ならびに金薄層を含む界面を備えた2つの透明な媒体を使用すると、臨界角を超えて光の全反射が観察されるが、光の電磁場成分は低屈折率の媒体に浸透し、エバネッセント波および鮮明な影を作り出す(表面プラズモン共鳴)。これは、波と表面プラズモンとの間の共鳴エネルギー移動によるものである。共鳴条件は、金属薄膜に吸収される物質の影響を受け、核酸分子、タンパク質および糖濃度は、共鳴ユニットと質量濃度の関係に基づいて測定することができる。
【0098】
標的核酸および核酸配列の生成または存在は、側方流動装置によっても検出および監視され得る。側方流動装置は周知である。これらの装置は一般に、毛管力によって流体が流れる固相流体透過性流路を含む。例としては、それだけに限らないが、ディップスティックアッセイおよび種々の適切なコーティングを施した薄層クロマトグラフィープレートが挙げられる。試料用の種々の結合試薬、結合パートナー、または試料用の結合パートナーとシグナル生成システムを含むコンジュゲートが流路上に固定化されている。試料の検出は、いくつかの様式;例えば、酵素検出、ナノ粒子検出、比色検出および蛍光検出で達成することができる。酵素検出は、側方流動装置の表面上の相補的核酸標的にハイブリダイズする酵素標識プローブを伴い得る。得られた複合体を適切なマーカーで処理して、読み取り可能なシグナルを発生させることができる。ナノ粒子検出は、コロイド金、ラテックスおよび常磁性ナノ粒子を使用し得るビーズ技術を伴う。一例では、ビーズが抗ビオチン抗体にコンジュゲートされ得る。標的配列を直接ビオチン化してもよく、または標的配列を配列特異的ビオチン化プローブにハイブリダイズしてもよい。磁場で励起されると、金およびラテックスは肉眼で見える比色シグナルを発生させ、常磁性粒子は非視覚シグナルを発生させ、専門のリーダーによって解釈され得る。
【0099】
蛍光ベースの側方流動検出法も知られており、例えば、デュアルフルオレセインおよびビオチン標識オリゴプローブ法、結晶に埋め込まれたランタニド元素で構成されるアップコンバージョン蛍光体レポーターを利用するUPT-N ALP(Corstjensら、Clinical Chemistry、47:10、1885~1893、2001)、ならびに量子ドットの使用がある。
【0100】
核酸を側方流動装置で捕捉することもできる。捕捉の手段には、抗体依存性および抗体非依存性の方法が含まれ得る。抗体依存性捕捉は一般に、抗体捕捉ラインおよび標的と相補的な配列の標識プローブを含む。抗体非依存性捕捉は一般に、2つの結合パートナー間の非共有結合相互作用、例えばビオチン化プローブとストレプトアビジンライン間の高親和性および不可逆的結合を使用する。捕捉プローブを側方流動膜に直接固定化してもよい。抗体依存性と抗体非依存性の両方の方法が多重化に使用され得る。
【0101】
標的核酸および核酸配列の生成または存在は、多重DNA配列決定によっても検出および監視され得る。多重DNA配列決定は、DNAのプールから標的DNA配列を同定する手段である。この技術により、多くの配列決定鋳型を同時に処理することができる。プールされた複数の鋳型を、処理の完了時に個々の配列に分割することができる。手短に言えば、DNA分子をプールし、増幅し、化学的に断片化する。産物を配列決定ゲル上でサイズ別に分画し、ナイロン膜に移す。膜を、標準的なDNA配列決定技術で使用されるものと同様の方法を使用してプロービングし、オートラジオグラフィーにかける(Churchら、Science 1998年4月8日;240(4849):185~188)。オートラジオグラフを評価し、標的核酸配列の存在を定量化することができる。
【0102】
本願明細書で開示される方法のいくつかの態様では、方法が、標的オリゴヌクレオチド配列(X)が閾値濃度より上または下でない限りシグナルがオンにならない閾値ベースの検出をさらに含むことができる。このような設計を図10A図10Dに開示する。これを使用して、前記の等温反応で一般的な非特異的シグナルおよび偽陽性を除去することができる。また、これを使用して、分子(例えば、それだけに限らないが、RNA mRNAおよび/またはmiRNA)がハウスキーピング遺伝子の濃度より上または下になった場合に、センサーをオンにすることもできる。これは、例えば、miRNAおよびmRNAが典型的にはハウスキーピング遺伝子と比較して測定されるため重要であり、標準化の欠如が新しいmiRNA分析方法で言及されている懸念事項である。バイオマーカー(標的オリゴヌクレオチド配列(X)であり得る)が、病気を示す臨界濃度より上または下になった場合にのみ、閾値処理によってセンサーをオンにすることもできる。図10Aは、一本鎖DNA分子に特異的なエキソヌクレアーゼ(200)によってレポーター鎖(tYpとして示される)が固定速度で分解される阻害スイッチ設計を示す。図10Bは、第2の形質導入鋳型分子(Xs’rYt)中に部分的に相補的なmiRNA(Xs)が存在すると、レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)と相補的なデコイ分子(Yt)が生成される(速度kx)競合スイッチ設計を示す。配列Xs’はX’のスクランブルバージョンであり、内因性RNAと部分的に相補的であり得る、または速度論を調整するために長さを変化させることができる。この形質導入鋳型は、非特異的に(速度b)デコイ分子(Yt)も生成する。デコイ分子(Ypt)は、非線形増幅率(例えば、協同的ヒル速度論)での増幅を受ける前に、レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)を不活性化するだろう。図10Cは、参照miRNA(配列Z)が第2の鋳型(Z’rYpt’)に結合して、デコイ分子(Ypt)を生成する相対増幅スイッチ設計を示す。数学的モデルは、図10Bに示されるものと同一である。
【0103】
本明細書に開示される鋳型(形質導鋳型およびDNA鋳型)は、試料中の標的核酸分子の増幅および/または検出/同定のための組成物に含めることができる。さらに、本明細書に開示される鋳型(形質導鋳型およびDNA鋳型)は、試料中の標的核酸分子の増幅および/または検出/同定のためのキットに含めることができる。本発明のキットは、本明細書に記載されるように、例えば、1つまたは複数のポリメラーゼ、形質導入およびDNA鋳型、ならびに1つまたは複数のニッキング酵素を含み得る。1つの標的を増幅する場合、1つまたは2つのニッキング酵素をキットに含めてもよい。複数の標的配列を増幅し、それらの標的配列用に設計された鋳型が同じニッキング酵素のためのニッキング酵素部位を含む場合、1つまたは2つのニッキング酵素を含めてもよい。または、鋳型が異なるニッキング酵素によって認識される場合、例えば3つ以上などの、2つ以上のニッキング酵素をキットに含めてもよい。
【0104】
本発明のキットはまた、任意の数の別個の容器、パケット、チューブ、バイアル、マイクロタイタープレートなどに成分の1つまたは複数を含んでもよい、または成分をこのような容器に種々の組み合わせで組み合わせてもよい。
【0105】
キットの成分は、例えば、1つまたは複数の容器中に存在してもよい、例えば、成分の全てが1つの容器に存在してもよい、または例えば、酵素が鋳型とは別の1つまたは複数の容器に存在してもよい。成分は、例えば、凍結乾燥、冷凍乾燥または安定な緩衝液であり得る。一例では、ポリメラーゼおよびニッキング酵素が、単一容器中の凍結乾燥形態であり、鋳型が異なる容器中の凍結乾燥、冷凍乾燥、または緩衝液中のいずれかである。または、別の例では、ポリメラーゼ、ニッキング酵素および鋳型が、単一容器中の凍結乾燥形態である。または、ポリメラーゼとニッキング酵素を異なる容器に分けてもよい。
【0106】
キットは、例えば、反応に使用されるdNTP、または反応に使用される修飾ヌクレオチド、キュベットもしくは他の容器、または凍結乾燥成分を再水和するための水もしくは緩衝液のバイアルをさらに含んでもよい。使用される緩衝液は、例えば、ポリメラーゼ活性とニッキング酵素活性の両方に適切であり得る。
【0107】
本発明のキットは、1つもしくは複数の本明細書に記載される方法を行うための説明書および/または1つもしくは複数の本明細書に記載される組成物もしくは試薬の説明も含み得る。説明書および/または説明は印刷された形態であり得、キット挿入物に含まれ得る。キットはまた、このような説明書または説明を提供するインターネット上の位置の書面による説明も含み得る。
【0108】
キットは、例えば、FRET、側方流動装置、ディップスティック、蛍光色素、コロイド金粒子、ラテックス粒子、分子ビーコンまたはポリスチレンビーズに使用される試薬などの、検出方法に使用される試薬をさらに含み得る。
【0109】
態様
方法、システム、組成物およびキットの種々の態様が本明細書に記載されている。このような方法、システム、組成物およびキットのいくつかの選択例の概要を以下に提供する。
【0110】
第1の態様では、標的オリゴヌクレオチド配列(X)を検出する方法であって、
(1)標的オリゴヌクレオチド配列(X)を含む標的核酸と;
(2)第1のアンチセンス鋳型(X’R1t’Yp)であって、
3’から5’に、(a)標的オリゴヌクレオチド配列(X)と少なくとも実質的に相補的な第1のヌクレオチドの配列(X’)と;(b)第1のニッキング酵素結合部位のアンチセンス鎖の第2のヌクレオチドの配列(R1)と;(c)レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)と少なくとも実質的に相補的な第3のヌクレオチドの配列(t’Yp)とを含み、第3のヌクレオチドの配列(t’Yp)は、3’から5’に、(i)足がかりヌクレオチド配列(t’)および(ii)回文ヌクレオチド配列(Yp)を含む、第1のアンチセンス鋳型(X’R1t’Yp)と;
(3)第2のアンチセンス鋳型(t’YpR2t’Yp)であって、
3’から5’に、(a)t’Ypを含む第4のヌクレオチドの配列と;(b)第2のニッキング酵素結合部位のアンチセンス鎖の第5のヌクレオチドの配列(R2)と;(c)t’Ypを含む第6のヌクレオチドの配列とを含み、第2のアンチセンス鋳型(t’YpR2t’Yp)の2つの回文ヌクレオチド配列(Yp)は、第2のアンチセンス鋳型(t’YpR2t’Yp)に回文を形成させ、ステム・ループ構造に折り畳ませる、第2のアンチセンス鋳型(t’YpR2t’Yp)と;
(4)ポリメラーゼと;
(5)第1のニッキング酵素結合部位でニックを入れる第1のニッキング酵素と;
(6)第2のニッキング酵素結合部位でニックを入れる第2のニッキング酵素と;
(7)ヌクレオチドと
を含む反応混合物を形成するステップと;
反応混合物を、反応温度で本質的に等温条件にさらして非線形増幅率でレポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)を増幅するステップと;
レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)を検出するステップと
を含む方法が提供される。
【0111】
第2の態様は、レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)の非線形増幅率が協同的ヒル速度論を示す、第1の態様の方法である。
【0112】
第3の態様は、レポーターオリゴヌクレオチドの増幅が二相性である、第1または第2の態様の方法である。
【0113】
第4の態様は、第一相がオリゴヌクレオチド配列(tYp)を線形増幅し、第二相がレポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)を非線形増幅率で増幅する、第3の態様の方法である。
【0114】
第5の態様は、10ピコモル濃度以下の濃度で標的オリゴヌクレオチド配列(X)を検出することができる、態様1から4のいずれかの方法である。
【0115】
第6の態様は、レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)が、(A)標的オリゴヌクレオチド配列(X)および第1のアンチセンス鋳型(X’R1t’Yp)を含む二本鎖(D1)を形成するステップと;(B)ポリメラーゼを使用して、第1のアンチセンス鋳型(X’R1t’Yp)に沿って二本鎖(D1)の標的オリゴヌクレオチド配列(X)を伸長して、第1のアンチセンス鋳型(X’R1t’Yp)と相補的なセンス配列を含む伸長標的オリゴヌクレオチド配列を形成するステップと;(C)第1のニッキング酵素によって、二本鎖(D1)のセンス鎖上の第1のニッキング酵素結合部位でニックを入れて、レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)を生成するステップと;(D)ステップ(B)および(C)を繰り返して、それによってレポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)を線形増幅するステップとを含むステップから線形増幅される、態様1から5のいずれかの方法である。
【0116】
第7の態様は、レポーターオリゴヌクレオチド(tYp)が、(A)レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)および第2のアンチセンス鋳型(t’YpR2t’Yp)を含む二本鎖(D2)を形成するステップであって、レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)の足がかり部位(t’)への結合が第2のアンチセンス鋳型(t’YpR2t’Yp)のステム・ループ構造をアンフォールディングするステップと;(B)ポリメラーゼを使用して、第2のアンチセンス鋳型(t’YpR2t’Yp)に沿って二本鎖(D2)のレポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)を伸長して、第2のアンチセンス鋳型(t’YpR2t’Yp)と相補的なセンス配列を含む伸長レポーターオリゴヌクレオチド配列を形成するステップと;(C)第2のニッキング酵素によって、二本鎖(D2)のセンス鎖上の第2のニッキング酵素結合部位でニックを入れて、レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)を生成するステップと;(D)ステップ(B)および(C)を繰り返して、それによってレポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)を非線形増幅するステップとを含むステップから非線形増幅される、態様1から6のいずれかの方法である。
【0117】
第8の態様は、レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)の非線形増幅率が協同的ヒル速度論を示す、態様1から7のいずれかの方法である。
【0118】
第9の態様は、第1のニッキング結合部位と第1のニッキング部位が同一である、態様1から8のいずれかの方法である。
【0119】
第10の態様は、第1のニッキング部位と第2のニッキング部位が同じニッキング酵素によってニックを入れられる、態様1から9のいずれかの方法である。
【0120】
第11の態様は、第1のヌクレオチドの配列(X’)が標的オリゴヌクレオチド配列(X)と完全に相補的である、態様1から10のいずれかの方法である。
【0121】
第12の態様は、第3のヌクレオチドの配列(t’Yp)がレポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)と完全に相補的である、態様1から11のいずれかの方法である。
【0122】
第13の態様は、第1のアンチセンス鋳型(X’R1t’YP)の3’末端と第2のアンチセンス鋳型(t’YpR2t’YP)の3’末端がブロックされる、態様1から12のいずれかの方法である。
【0123】
第14の態様は、レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)の検出が、ルミネセンス分光法もしくは分光測定、蛍光、蛍光分光法もしくは分光測定、質量分析、液体クロマトグラフィー、蛍光偏光、比色および電気泳動からなる群から選択される技術によって少なくとも部分的に行われる、態様1から13のいずれかの方法である。
【0124】
第15の態様は、レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)の検出が、レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)の増幅を検出することを含む、態様1から14のいずれかの方法である。
【0125】
第16の態様は、レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)の増幅を検出するステップが、ルミネセンス分光法もしくは分光測定、蛍光、蛍光分光法もしくは分光測定、質量分析、液体クロマトグラフィー、蛍光偏光、比色および電気泳動からなる群から選択される技術によって少なくとも部分的に行われる、態様15の方法である。
【0126】
第17の態様は、レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)の検出が、レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)の増幅率を検出することを含む、態様1から16のいずれかの方法である。
【0127】
第18の態様は、レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)の増幅率を検出するステップが、ルミネセンス分光法もしくは分光測定、蛍光、蛍光分光法もしくは分光測定、質量分析、液体クロマトグラフィー、蛍光偏光、比色および電気泳動からなる群から選択される技術によって少なくとも部分的に行われる、態様17の方法である。
【0128】
第19の態様は、標的オリゴヌクレオチド配列(X)を含む標的核酸が動物に由来する試料から得られる、態様1から18のいずれかの方法である。
【0129】
第20の態様は、試料が血液、血清、粘液、唾液、尿または糞便である、態様19の方法である。
【0130】
第21の態様は、標的オリゴヌクレオチド配列(X)を含む標的核酸が、mRNA、マイクロRNAおよびsiRNAを含む任意の合成または天然RNA分子である、態様1から19のいずれかの方法である。
【0131】
第22の態様は、標的オリゴヌクレオチド配列(X)を含む標的核酸が、ゲノムDNA、ミトコンドリアDNA、mRNA、マイクロRNAまたはsiRNAの逆転写に由来するcDNAを含む任意の合成または天然DNA分子である、態様1から19のいずれかの方法である。
【0132】
第23の態様は、反応混合物を形成する前に、標的オリゴヌクレオチド配列(X)を含む前記標的核酸を変性するステップをさらに含む、態様1から22のいずれかの方法である。
【0133】
第24の態様は、ポリメラーゼがウォームスタートポリメラーゼである、態様1から23のいずれかの方法である。
【0134】
第25の態様は、レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)の増幅が約55℃~約60℃で行われる、態様1から24のいずれかの方法である。
【0135】
第26の態様は、レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp)が8~30ヌクレオチド長である、態様1から25のいずれかの方法である。
【0136】
第27の態様は、第1、第3、第4および第5のヌクレオチドの配列の足がかり部位(t’)が3~8ヌクレオチド長である、態様1から26のいずれかの方法である。
【0137】
第28の態様は、第2のアンチセンス鋳型(t’YpR2t’Yp)の回文が4~22ヌクレオチド長である、態様1から27のいずれかの方法である。
【0138】
第29の態様は、第2のアンチセンス鋳型(t’YpR2t’Yp)の回文が、反応温度よりも高いが、90℃未満の融解温度を有する、態様1から28のいずれかの方法である。
【0139】
第30の態様は、アンチセンス鋳型(t’YpR2t’YP)が、反応温度よりも高いが、89℃、88℃、87℃、86℃、85℃、84℃、83℃、82℃、81℃または80℃未満の融解温度を有する、態様1から29のいずれかの方法である。
【0140】
第31の態様は、二本鎖(D2)が反応温度+5℃より低い融解温度を有する、態様1から30のいずれかの方法である。
【0141】
第32の態様は、ニッキング酵素が、Nt.BstNBI、Nt.BspQI、Nb.BBvCl、Nb.Bsml、Nb.BsrDI、Nb.Bstl、Nt.Alwl、Nt.BbvCI、Nt.CviPII、Nt.BsmAI、Nb.Bpu1oIおよびNt.Bpu10Iからなる群から選択される、態様1から31のいずれかの方法である。
【0142】

以下の例は、例示として与えられるものであり、本発明の範囲を限定することを決して意図していない。
【0143】
例1
材料および方法.
特に明記しない限り、例では以下の実験技術を使用した。
【0144】
試薬:
UltraPure(商標)Tris-HCI pH 8.0、RNaseフリーEDTA、RNaseフリーMgCl2、RNaseフリーKCl、Novex(商標)TBE泳動バッファー(5X)、2X TBE-尿素試料バッファー、Novex(商標)TBE-尿素ゲル、15%、SYBR(登録商標)金核酸ゲル染色およびSYBR(登録商標)Green II RNAゲル染色は、Thermo Fisher Scientific(Waltham、MA)から購入した。ヌクレアーゼフリー水およびオリゴ長標準10/60は、Integrated DNA Technologies, Inc.(Coralville、IA)から購入した。Nt.BstNBIニッキングエンドヌクレアーゼ、Bst 2.0 WarmStart(登録商標)DNA ポリメラーゼ、10x ThermoPol Iバッファー、dNTP、BSA、および100mM MgSO4は、New England Biolabs(Beverly、MA)から購入した。
【0145】
オリゴヌクレオチドは、鋳型のトリガー汚染を回避するために2つの異なる供給源から注文した。脱塩増幅鋳型はIntegrated DNA Technologies(Coralville、IA)から購入し、100μMの濃度でIDTEバッファーに懸濁した。鋳型は、鋳型伸長を防ぐために3’末端上でアミノ基で修飾した。全ての脱塩トリガーオリゴヌクレオチドは、Eurofins Genomics(Louisville、KY)から購入し、TEバッファーに50μMの濃度で懸濁した。トリガーを、汚染を防ぐために別の部屋でヌクレアーゼフリー水に希釈した。
【0146】
鋳型設計および熱力学:
鋳型ステム・ループの熱力学を、塩濃度33について補正したDNAハイブリダイゼーション32の経験的自由エネルギーを使用するオープンソースソフトウェアであるMfoldウェブサーバー31を使用して決定した(http://unafold.rna.albany.edu/?q=mfold)。鋳型とトリガー、鋳型と伸長トリガー、産物ダイマーおよび二本鎖鋳型間の会合の自由エネルギーを、DINAmeltアプリケーション、二状態融解を使用して決定した(http://unafold.rna.albany.edu/?q=DINAMelt/Two-state-melting)。足がかり会合の自由エネルギーを決定するために、ソフトウェア入力を、足がかりと足がかり逆相補の配列とした。温度(55℃)および塩濃度([Na+]=60mM、[Mg++]=6mM)を除いて、使用した全ての設定はデフォルトのソフトウェアパラメータで維持した。
【0147】
二相性増幅反応:
増幅反応混合液は、1x ThermoPol Iバッファー[20mM Tris-HCl(pH8.8)、10mM(NHSO、10mM KCl、2mM MgSO、0.1%Triton(登録商標)X-100]、25mM Tris-HCl(pH8)、6mM MgSO、50mM KCl、0.5mM各dNTP、0.1mg/mL BSA、0.2U/μL Nt.BstNBIおよび0.0267U/μL Bst 2.0 WarmStart(登録商標)DNAポリメラーゼを含有していた。Bst 2.0 WarmStart(登録商標)DNAポリメラーゼは45℃未満では不活性である;これにより、反応開始前の非特異的増幅が減少し、理論的には実験再現性が増加する。鋳型をヌクレアーゼフリー水に希釈し、100nMの最終濃度で添加した。SYBR Green II(DMSO中10000xストック)を反応混合物に添加して、5xの最終濃度にした。反応物を4℃で調製し、トリガーと鋳型は汚染を防ぐために別々のフードで処理した。特に指示しない限り、トリガーをヌクレアーゼフリー水に希釈し、陽性試料に添加して最終濃度10pMにした;陰性対照はトリガーを含有していなかった。各実験について、鋳型を含有しない鋳型なし対照(NTC)試料および酵素を含有しない酵素なし対照試料の2つの対照を調製した。反応は、3連の20μL容量で実行した。Bio-Rad CFX Connect Thermocycler(Hercules、CA)を使用して、蛍光読み取りを測定した。12秒のイメージングステップで、20秒毎に測定を行った。150または300サイクルの55℃で32秒間で反応を実行した。混合物を20分間80℃に加熱して酵素を失活させ、引き続いて10℃で5分間加熱して試料を冷却した。完了した反応物を、さらに分析するために-20℃で保存した。
【0148】
産物定量化:
NanoDrop 3300蛍光分光光度計(Thermo Scientific、Wilmington、DE)を反応産物濃度の測定に使用した。標準(ssDNAオリゴ、Eurofins Genomics、Louisville、KY)および反応産物を、必要に応じて1X TEバッファー(1mM Tris-HCl、0.5mM EDTA)に希釈した。核酸染色液を1X TEバッファーに希釈した。1X SYBR(登録商標)Gold Nucleic Acid Gel Stain(低濃度試料用)または2.5X SYBR(登録商標)Green II RNA Gel Stain(高濃度試料用)、および1.2μLの試料を1X TEバッファーで12μLの最終容量にした。偽反応産物(酵素またはトリガーを含まない反応成分)および1X TEバッファーに希釈したトリガーを用いて反応産物と同じ方法で標準を調製した。試料を、オートゲインオンの青色光(470±10nm)で励起した。色素の蛍光ピークは、特定の塩条件でSYBR(登録商標)Green II RNAゲル染色については512nmおよびSYBR(登録商標)金核酸ゲル染色については536nmと決定され、5連測定の平均蛍光を使用して反応産物の産物濃度を決定した。1X TEバッファーをブランク測定として使用した。
【0149】
データ分析:
Matlab(Natick、MA)を使用して、カスタムソフトウェアでリアルタイム反応トレースを分析した。変曲点を、時間に対する蛍光の一次導関数のピークとして定義した。正確な変曲点を決定するために、ピークの上部を二次関数dF/dt=at2+bt+c(式中、Fは蛍光であり、tは時間である)に当てはめた。変曲点を、二次導関数のゼロとして定義した(tIF=2at+b)。第1のプラトーを、一次導関数の一次ピークと二次ピークとの間の最低点の時間に対応する蛍光として定義した。最大反応速度を、一次導関数のピークのトップとして定義した(最大dF/dt)。最大反応速度、プラトーおよび変曲点間の比を、それぞれ3回の実験反復で、2つの実験から計算した。必要に応じて、2つの実験のデータを加重平均を使用して平均した。スピアマンの順位相関係数およびp値を、Matlab(Natick、MA)で「スピアマン」として選択されるタイプの関数「corr」を使用して決定した。必要に応じて、以下の通り、式2によって、平均実験3連(x)標準偏差(σ)からの加重平均(xwav)を計算した:
【数1】
【0150】
蛍光対トリガーDNA濃度に関する標準曲線を、統計ソフトウェアRStudioを使用して単純な線形回帰モデルに当てはめた。未知の平均トリガー濃度予測を、パッケージ「chemCal」の下で、RStudioの「inverse.predict」関数を使用して得た。標準偏差を、電子スプレッドシートプログラムMicrosoft Excelの関数「stdev」を使用して計算した。予測濃度からの標準誤差を標準偏差に変換し、トリガーDNA濃度の累積標準偏差を、以下の通り、式3を使用して計算した:
【数2】
【0151】
結果および考察
二相性DNA増幅反応の反応経路:
二相性DNA増幅反応は、オリゴヌクレオチドの指数関数的増幅反応(EXPAR)と同じ基本的な成分を含む。EXPARと二相性DNA増幅反応の両方とも、好熱性ポリメラーゼおよびニッキングエンドヌクレアーゼの作用を通して、実質的に単一反応温度(例えば、55℃)でトリガー配列を増幅する。元のEXPAR反応と二相性オリゴヌクレオチド増幅反応の主な違いは、DNA鋳型内の回文配列であり、これによりこの鋳型がループ構造に折り畳まれる。トリガー結合とDNA鋳型会合の熱力学は、二相性DNA増幅反応を生成するレジームにある。
【0152】
オリゴヌクレオチド増幅反応の代表的な出力を、図3A図3Eに示す。DNA鋳型名(第2のアンチセンス鋳型(t’YpR2t’Yp))ならびに関連するトリガー(レポーターオリゴヌクレオチド配列(tYp))は表1に見出すことができる。表1を参照すると、イタリック体の塩基は足がかりを含み、太字の塩基は回文を形成する回文配列であり、下線を施した塩基は酵素結合部位を示す。太字とイタリック体の両方であるヌクレオチドは、塩濃度について補正されたDNAハイブリダイゼーションの経験的自由エネルギーを使用するオープンソースソフトウェアであるMfoldウェブサーバーによって結合されると予測されない回文の塩基を表し(http://unafold.rna.albany.edu/?q=mfold)、回文配列の一部と足がかりの一部の両方になる。反応成分の類似性にもかかわらず、ここで報告される二相性増幅反応は、他の全てのEXPAR反応とは機能的に異なる。反応の第一相は、最初の上昇および第1のプラトーを伴う、伝統的なEXPAR出力に似ている。ループDNA鋳型とトリガー会合の熱力学は、元のEXPAR反応(R=0.4072)と比較すると、第一相反応速度論と十分に相関している(スピアマンのR=0.8022、データは示さない)。これは、閉じた鋳型ループが原因である可能性がある;DNA会合の熱力学が反応速度論を支配し、伝統的なEXPARに見られる配列依存性とは対照的である。第1のプラトーの後、二相性反応は高ゲインの第二相に入る。この発見は、EXPARが第1のプラトーから回復できることを明らかにしており、これは、以前は知られていなかった事実である。反応温度(LS3 lowpG2、Tm=49.2℃)で線形配置を支持するある鋳型は二相性出力を与え、これは、二相性出力に回文領域が必要であるが、安定なループ構造は必要でないことを暗示している。
【表1-1】

【表1-2】

【表1-3】
【0153】
スイッチ様オリゴヌクレオチド増幅反応の背後にある詳細な機構は、図2Aに示され、前に論じられるように、複数の現象によって駆動される可能性が高い。理論によって拘束されるものではないが、これらの新たな反応経路は、図2Bに詳述され、また前に論じられるように、増幅反応のユニークな特徴を作り出す。
【0154】
第一反応相の特性:
第一反応相は、基本的なEXPAR反応に似ており、迅速で低ゲインの反応相にプラトーが続く。この失速は、以前はニッカーゼの完全性の喪失のせいとされていたが、第1のプラトー後の反応の回復によりこの理論は無効にされる。最近では、鋳型に結合したDNA鎖を伸長不能にするポリメラーゼエラーにより、いくつかの鋳型が「毒入り」になるという仮説が立てられている(図2A、サブパネル5)。理論によって拘束されるものではないが、これにより、元のEXPAR反応で見られるプラトーおよび二相性増幅反応の第1のプラトーが引き起こされる可能性がある(図2B)。本発明者らは、プラトートリガー濃度が鋳型濃度よりの10倍大きい1μM程度であると推定した(データは示さない)。10サイクルの伸長およびニッキング後の急速な鋳型不活性化により、3’→5’エキソヌクレアーゼドメインを欠くBst DNAポリメラーゼなどのポリメラーゼのエラー率がおよそ10-442であることを考えると、ポリメラーゼエラーがこのプラトーを引き起こす可能性は低い。理論によって拘束されるものではないが、ポリメラーゼと比較した場合にニッカーゼが最適以下条件で動作しているため、このプラトーは長く伸長不能なトリガーを残すニッカーゼ酵素の非標準的挙動による可能性がある(図2A、サブパネル4)。完全に伸長したトリガーが鋳型を毒する可能性もある;鋳型中毒の背後にある機構は本明細書では扱わない。
【0155】
第二反応相の特性:
第1のプラトー後、増幅は高ゲインの第二相に入り、第2のプラトーが続く。鋳型中に回文領域がない限り、増幅が第1のプラトーを出ない;本発明者らは、長い「毒入り」トリガーとのトリガー会合によって鋳型救済が支援されると仮定している(図2A、サブパネル4)。このトリガー依存救済により、特に3’トリガー末端のポリメラーゼ伸長後、長いトリガーが鋳型に再会合するのが妨げられる。理論によって拘束されるものではないが、トリガーが鋳型に動的に結合し、長いトリガーの再会合を妨げることもできるだろう。これらのイベントは、ループ閉鎖および鋳型救済に役立つだろう。第1のプラトーを出た後、鋳型の多くは、第一相反応速度論を大きく上回る反応産物の大きな急上昇によってマークされる、ヒル様第二相速度論を示す。理論によって拘束されるものではないが、この超高感度は、ホモトロピックなアロステリック協同性によって引き起こされ得る;図2Aのサブパネル1に見られるように、トリガーはいずれかの足がかりに結合することができる。鋳型ループ構造は、トリガー:鋳型会合(表2)と比較すると安定であり、反応産物の蓄積により、鋳型が開いた増幅適格状態にシフトし、非線形反応速度論が生成されるだろう(d([トリガー])dt∝[トリガー])。表2はループ鋳型構造の鋳型を示す。5’足がかりなし鋳型を除いて、全ての鋳型が2つの開いた足がかりおよび回文ループを含んでいた。熱力学は、トリガー:鋳型会合と長いトリガー:鋳型会合にも与えられ、長いトリガーは、伸長認識部位を有する元のトリガーである。
【表2】
【0156】
その後の第2のプラトーは、反応成分の枯渇および抑制性反応副産物の蓄積によって引き起こされる。EXPAR反応および回文ループ鋳型を使用する場合の抑制性産物のこの効果は以前に説明した。第二相の最終出力は、反応産物のPAGE分析で見られるように、ほぼDNA鋳型トリガーのサイズである。この毒入り鋳型の救済により、反応が、較正されたSYBR II蛍光で測定した場合に10~100倍多いエンドポイント反応産物を生成することが可能になる。エンドポイント産物濃度は7.8~116.9μMに及び、第2のプラトー中にいくつかの反応産物が100μMを超えた(表3)。表3は、特に指示しない限り、9632秒で定量化されたトリガーのエンドポイント濃度を示す。試料を反応エンドポイントから採取し、較正されたSYBR蛍光を使用して定量化した。エラーは、エンドポイント測定の標準偏差を表す。
【表3】
【0157】
初期トリガー濃度に対する反応応答:
蛍光読み取りにssDNA結合色素SYBR IIを使用して、初期トリガー濃度を変化させて、反応出力をリアルタイムで測定した。図4A図4Cは、代表的なリアルタイム蛍光トレースを示す。元のトリガー濃度≦10nMの試料からの平均バックグラウンド蛍光を、全ての試料から差し引いた。絶対蛍光単位は任意であることに留意することが重要である;実際、1μM~10μMの蛍光レベルの分解能は、図4Aの試料間のバックグラウンドノイズよりも小さい。ただし、この蛍光変動は、グラフの形状および変曲点には影響を及ぼさない。伝統的なEXPAR線形鋳型(EXPAR1)、I型鋳型(LS2 lowtG)およびII型鋳型(LS3)の3つの異なる鋳型タイプについてのトレースをそれぞれ示す。伝統的なEXPAR鋳型は、陽性対照と陰性対照が最も分離されていたため、384の公開された配列から選択した。検出可能な最低濃度(100fMまたは1pM)と第1のプラトー未満の最高濃度(1μM)との間の初期トリガー濃度の変曲点で当てはめを行った。
【0158】
計算された第1および第2の変曲点を図4D図4Fに示す。伝統的なEXPAR鋳型(図4Aおよび図4D)は、初期トリガー濃度(10μM)がこの鋳型のプラトー濃度(5.58μM、表3)を超えた場合でさえ、第二相に入らなかった。伝統的な鋳型の変曲点は、予想通り、元のトリガー濃度のlog10と線形的に相関していた。I型ループ鋳型とII型ループ鋳型の両方の第一相の変曲点も、元のトリガー濃度のlog10と線形的に相関していたが、相関は第二相中にわずかに非線形であるように見えた(図4Eおよび図4F)。I型鋳型は、ニッキング後に鋳型から動的に解離するトリガーを有する(トリガーTm<反応温度+5℃、したがって反応温度55℃でTm<60℃)が、II型鋳型は、ポリメラーゼによる鎖置換まで残る可能性が高い安定なトリガー鋳型会合を有していた(トリガーTm>反応温度+5℃、したがって、反応温度55℃でTm>60℃)。トリガーの初期濃度が第1のプラトーでの濃度を超えると、変曲点は、ヒル型反応で予想される、予測される適合線より早く生じるように見える。I型鋳型は、1μM超の初期トリガー濃度で第1のプラトーで始まり、II型鋳型には存在しなかった増幅の短い遅れを示した。I型鋳型はまた、より大きなトリガー初期濃度でより高い第2のプラトー蛍光レベルを有するが、これが生じた理由は不明である。II型鋳型は、初期トリガー濃度が、測定されたプラトー濃度(2.5±0.2μM、データは示さない)より上の10μMであった場合、第二相で始まった。これは、プラトーのトリガー依存性を示し、第二反応相に入ることがトリガー濃度に依存することを示唆した。伝統的なEXPARと同様に、DNAトリガーの検出限界を非特異的増幅率によって決定した。最適化した伝統的な鋳型は、100fMの初期トリガーで陰性対照と速度論的に異なり、ループ鋳型は約1pMの初期トリガーで陰性対照と速度論的に異なっていた。試験したほぼ全てのループ鋳型が、0~10pMの初期トリガー濃度を識別することができた(データは示さない)。
【0159】
鋳型内のループ熱力学を弱めることによる、第一相速度論の分析:
本発明者らは、ループ構造を弱めると、第一相で反応速度論が加速されると予想している;弱いループは強いループよりも速く開いて増幅する。この現象を調べるために、4~8ヌクレオチドの長いランダム配列をニッカーゼ認識部位の前のループに付加することによって、ループ鋳型構造の自由エネルギーを変化させた。この修飾により、鋳型ループ構造を弱めながら、回文、足がかりおよびトリガー配列が一定に保たれた。これが修飾した唯一の追加の熱力学的パラメータは、鋳型結合トリガーの初期伸長後に形成する長いトリガー:鋳型複合体の安定性の増加であった。長いトリガーは、元のトリガー配列、ニッカーゼ認識部位、および追加の長いランダム配列を含んでいた。これらの新たな長いランダム配列(lrs)鋳型の第1の変曲点を、lrsのない基本的鋳型の第1の変曲点で割った;1つの相対的な第1の変曲点は、弱められたループによって影響を受けなかった鋳型を示す。
【0160】
これらの弱められた鋳型ループは、驚くべき意義深い結果をもたらした。I型鋳型LS2の場合、ループの強度を減少させると、ループが速く開くように見えたがが、ホルム-ボンフェローニt検定のp値は有意ではなかった(p<0.09およびp<0.06、補正なし)。I型鋳型LS2 lowtGは、ループを弱めた場合、第一相で同様またはわずかに遅いトリガー生成を示した(図5)。驚くべきことに、II型鋳型ループの強度を減少させると、試験した全ての鋳型の第一反応相が遅くなり、LS3 lt-1鋳型およびLS3 lrs-4で有意な反応遅延があった(図5)。本発明者らは、長いトリガーの安定性増加がこの現象を引き起こしたと仮定している;これらの長いトリガーはより安定であったので、除去するのがより困難であった。この観察された第一相反応速度の低下は、鋳型が伸長不能な「毒入り」相補鎖によって不活性化され、II型鋳型はI型鋳型よりもこの現象を受けやすいという仮説を支持した。
【0161】
第二反応相での加速の分析:
これらの反応をデジタル読み取りとして使用する場合、第二相での急上昇は決定的なスイッチターンオンに似ているので、第二相での急速な加速は有益であるだろう。さらに、第二相で加速する能力についてDNA増幅速度論を分析し、相対的第二相速度論がDNA会合熱力学と相関しているかどうかを判定した。第二相加速を、第一相の最大反応速度に対する第二相の最大反応速度の比として定義した。本発明者らは、トリガーの2つの足がかり結合部位への協同的結合が、第二相での反応速度論の急速な増加を引き起こす可能性があると仮定した。ホモトロピックな協同的受容体のヒル係数は、第1の結合イベントと第2の結合イベントの解離定数間の比とともに増加する;第1のリガンド会合と第2のリガンド会合との間の安定性の大きな差が、より大きなヒル係数およびより大きなヒル挙動をもたらす。これは定性的に直感的である:第1の会合が提供する相対的安定性が高いほど、より高いリガンド濃度を有することの速度論的利益が大きくなる。本発明者らのシステムでは、これは、増幅不適格状態(閉じた鋳型)が二重トリガー結合を通して増幅適格状態(開いた鋳型)に移動することに対応する。自由エネルギーは、解離定数の自然対数に正比例するため、本発明者らは、DNA会合熱力学を使用して、トリガー媒介協同的ループ鋳型開放の仮説を試験した。ΔG5’足がかりは鋳型の5’末端上の足がかり結合の自由エネルギーであり、ΔG3’足がかりは鋳型の3’末端上の足がかり結合の自由エネルギーであり、ΔG回文は回文会合の自由エネルギーであり、ΔGループは鋳型ループ二次構造の自由エネルギーであり、ΔGトリガー:鋳型は開いた鋳型とのトリガー会合の自由エネルギーである。第1の結合イベントの自由エネルギーΔG5’足がかり+ΔG3’足がかり+ΔG回文-ΔGループと第2の結合イベントの自由エネルギーΔGトリガー:鋳型の差によって、第1のトリガー結合イベントと第2のトリガー結合イベントの相対的解離を特徴付けた。示される値が大きいほど、鋳型への第1のトリガー会合の安定性と第2のトリガー会合の安定性の差が大きい。
【0162】
2つの鋳型タイプは別個の挙動を示した。I型鋳型は、第1のトリガー結合イベントと第2のトリガー結合イベントの差と、第二相の反応加速との間の有意な相関を示した(スペアマンのρ=0.9667、p<1.7×10-4)が、II型鋳型は示さなかった(スペアマンのρ=0.6437、p<0.10)(図6A)。I型鋳型のループ融解温度はトリガー:鋳型複合体の融解温度よりも高かった(表2)が、会合すると、トリガーがループ構造を開き、受容体を結合適格状態に切り替える(図2A、サブパネル1b)。
【0163】
II型鋳型は、異なる支配的反応経路を有するように見える。長いトリガーは、伸長ニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位を有するトリガーである。長いトリガーの除去は、ループ閉鎖によって駆動されると仮定され、これは、ニッキング後にII型鋳型上に残った安定なトリガーの存在によって妨げられ得る。II型鋳型に見られる第二相の低加速は、図5に示されるように、長い毒入りトリガーの除去が妨げられたためである可能性がある。図6Bは、この仮説を支持している。ΔG長いトリガー:トリガーは、トリガーとの長いトリガーの会合の自由エネルギーであり、ΔG長いトリガー:鋳型は、鋳型との長いトリガー会合の自由エネルギーである。パラメータ:ΔG長いトリガー:トリガー+ΔGループ-ΔG長いトリガー:鋳型は、図2A(サブパネル4)に示されるように、長いトリガーへのトリガーの会合およびその後のループ閉鎖を通した長いトリガーの除去の熱力学を近似する。より大きな値は長いトリガーのより大きな安定性に対応し、これは長い毒入りトリガーの不十分な除去のために増幅を遅延させるだろう。II型鋳型は、この熱力学的パラメータと有意に相関し、長いトリガーの安定性は、第二相の反応加速に反比例する(スピアマンのρ=-0.9762、p<4.0×10-4)。I型鋳型を分析する場合、この相関は有意でなかった(スピアマンのρ=-0.3333、p<0.39)。これらの所見は、II型鋳型速度論が不十分な長いトリガーの除去によって妨げられている2つの異なる鋳型タイプの概念を支持している。
【0164】
結論
本発明者らは、低ゲインの第一相、引き続いて高ゲインの第二相を含む、新規な二相性DNA増幅反応を報告する。第一相は、同様の原理で動作するが、回文配列のない線形DNA鋳型を使用する、一般的なオリゴヌクレオチド増幅反応EXPARに似ている。本発明者らは、結合した伸長不能なまたは切断不能な長いトリガーを有する「毒入り」鋳型の蓄積が反応を遅延させ、ほとんどの回文鋳型および全てのEXPAR鋳型に見られる第1のプラトーを引き起こし得ると仮定している。鋳型中の回文の存在は、ループ構造が反応温度で安定ではない場合でさえ、反応をこのプラトーから救済するように見える(データは示さない)。回文は反応を第1のプラトーから救済することができるが、全ての回文鋳型がこの第1のプラトーを示したわけではない(データは示さない)。いくつかの非常に安定なループは遅い速度論および測定不能なプラトーを有し、第二相に入ったかどうか不明確であった。第二相に入ったほとんどないくらいに小さいプラトーを有する2つの鋳型は、共に比較的安定なトリガー:鋳型複合体を有していたが、2つの鋳型のみでは、プラトー相を有効に消滅させる正確なパラメータはこのデータからは明確ではない。
【0165】
ここで調べた反応は、2つの異なるカテゴリーに分類される:I型鋳型は、ニッキング後に鋳型から動的に解離するトリガーを有する(トリガーTm<反応温度+5℃、したがって反応温度55℃でTm<60℃)が、II型鋳型は、ポリメラーゼによる鎖置換まで残る可能性が高い安定なトリガー鋳型会合を有していた(トリガーTm>反応温度+5℃、したがって、反応温度55℃でTm>60℃)。DNA会合熱力学は、2つの鋳型タイプ内で第一相反応速度論および第二相加速に関連していたが、鋳型タイプ間で同じ相関は示さなかった。長い鋳型結合トリガーは、特にニッキング後に安定なトリガーが結合したII型鋳型の場合、反応を遅くするように見えた。本発明者らは、これらの効果によって、I型鋳型と比較した場合に、II型鋳型の第二相加速が小さくなり、第二相産物濃度で同じスイッチ様急上昇を示さなかったと仮定している。これらの所見から、2種類の鋳型は異なる支配的反応経路を有し、各相中で反応出力を調整するための重要な設計上の考慮事項を提供することが示唆された。例えば、第二相で高い加速を達成するために、第1のトリガー結合イベントと第2のトリガー結合イベントとの間の自由エネルギーの差が大きい(例えば、1Kcal/モル以上)I型鋳型を設計することができるだろう(図6A図6B)。第一相でのより迅速な応答のために、ΔG3’足がかり<ΔGループのようなI型鋳型を作成することができるだろう。
【0166】
本発明者らは、放出されたオリゴヌクレオチドトリガー分子に依存する二段階出力を有する新規な新たなオリゴヌクレオチド増幅反応を実証した。この二相性DNA増幅反応は、単純な一段階等温増幅反応である;この種類の反応は、温度サイクリングを必要とせず、したがって必要なエネルギー、ハードウェアおよび時間が少ないため、人気が高まっている。本発明者らは、第一相出力を近似すると同時にスイッチ様第二反応相の反応加速を調整する熱力学に基づいた反応設計フレームワークを記載してきた。この反応は、種々の分析物について報告することができる:特定のタンパク質、ゲノム細菌DNA、ウイルスDNA、マイクロRNAまたはmRNAは入力トリガーオリゴヌクレオチドを継続的に作成することができ、二相性DNA増幅反応を種々の標的分子に広く適用可能にしている。単一分子増幅と組み合わせると、この技術はデジタル増幅および検出を通して定量的となる可能性を有する。この反応の二相性により、反応が生物試料、DNA論理ゲートおよび他の分子認識システム中の低濃度分子の認識に十分適したものとなる。
【0167】
例2
miRNAの形質導入および増幅:miRNAは二相性増幅化学を誘因することができる
増幅反応混合液は、1x ThermoPol Iバッファー[20mM Tris-HCl(pH8.8)、10mM(NH4)2SO4、10mM KCl、2mM MgSO4、0.1%Triton(登録商標)X-100]、25mM Tris-HCl(pH8)、6mM MgSO4、50mM KCl、0.5mM各dNTP、0.1mg/mL BSA、0.2U/μL Nt.BstNBIおよび0.0267U/μL Bst 2.0 WarmStart(登録商標)DNAポリメラーゼを含有していた。Bst 2.0 WarmStart(登録商標)DNAポリメラーゼは45℃未満では不活性である;これにより、反応開始前の非特異的増幅が減少し、理論的には実験再現性が増加する。鋳型をヌクレアーゼフリー水に希釈し、それぞれ50nMの最終濃度で添加した。SYBR Green II(DMSO中10000xストック)を反応混合物に添加して、5xの最終濃度にした。増幅反応を、指示される濃度の合成標的miRNAの濃度によって誘因した。1ng/μLのMS2キャリアRNA(Roche)を全ての反応に含めた。指示される場合、5μg/mLの熱安定性一本鎖結合タンパク質(ET-SSB)を反応に添加した。ヌクレオチド配列の左側にあるプラス記号(+)は、LNA塩基を示す。太字のヌクレオチドは回文を示し、イタリック体は足がかり領域を示し、下線を施したヌクレオチドはニッカーゼ認識部位を示す。
【0168】
第1の例では、成熟miRNA miR-let7f-5p(5’-UGAGGUAGUAGUUGUAUAGUU-3’、配列番号62)を、形質導入鋳型LS3lpG3let7f5pLNA(5’-TCCGGAGTTTGGTAATGACTCTAACTA+TACAATC+TACTACC+TC-3’(PO)(配列番号63)または形質導入鋳型LS3lowpG3let7f5p(5’-TCCGGAGTTTGGTAATGACTCTAACTATACAATCTACTACCTCA-3’NH)(配列番号64)を使用することによって形質導入して、反応混合物で5’-CCAAACTCCGGA-3’(配列番号50、表1)を誘因し、DNA鋳型LS3 lowpG3(表1)と組み合わせてさらに使用した。これは、非線形増幅率(例えば、協同的ヒル速度論)を示す二相反応化学を誘因した。これらの反応の対応する変曲点の増幅トレースおよびグラフを、それぞれ図7Aおよび図7Bに示す。10pMのmiRNAトリガーでは、第一相の増幅速度論が異なり、このシステムをシンクベースの(sink-based)スイッチで使用することを可能にするだろう。形質導入鋳型内のLNAの存在は、増幅速度論に有意に影響を及ぼさなかった。これらの反応は、一本鎖結合タンパク質を含んでいた。
【0169】
第2の例では、成熟miRNA hsa-miR-223-3p(5’-UGUCAGUUUGUCAAAUACCCCA-3’、配列番号65)を、形質導入鋳型LS2miR223(5’-TCCGGAGAATTAATGACTCTTCCCCTATTTCACAAACTCACA-3’NH)(配列番号66)を使用することによって形質導入して、反応混合物で5’-ATTCTCCGGA-3’(配列番号37、表1)を誘因し、DNA鋳型LS2(表1)と組み合わせてさらに使用した。これは、非線形増幅率(例えば、協同的ヒル速度論)を示す二相反応化学を誘因した。これらの反応の対応する変曲点の増幅トレースおよびグラフを、それぞれ図8Aおよび図8Bに示す。反応は、初期miR-223濃度100fMで速度論的に異なっていた。
【0170】
本明細書に示され記載されたものに加えて、本発明の種々の修正が、上記記載の当業者に明らかであるだろう。このような修正も、添付の特許請求の範囲に入ることを意図している。
【0171】
特に明記しない限り、全ての試薬は、当技術分野で知られている商業的供給源から入手可能であることが理解される。
【0172】
明細書で言及される特許、刊行物および出願は、本発明が関係する分野の当業者のレベルを示している。これらの特許、刊行物および出願は、あたかも各個々の特許、刊行物または出願が具体的かつ個別に参照により本明細書に組み込まれるのと同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【0173】
前記の説明は、本発明の特定の態様の例示であるが、その実施に対する制限であることを意味するものではない。
【配列表フリーテキスト】
【0174】
配列表1 <223>鋳型LS2
配列表2 <223>鋳型LS3
配列表3 <223>鋳型LS2-1
配列表4 <223>鋳型LS2-2
配列表5 <223>鋳型LS2-3
配列表6 <223>鋳型LS2-4
配列表7 <223>鋳型LS2-5
配列表8 <223>鋳型LS2-6
配列表9 <223>鋳型LS2-7
配列表10 <223>鋳型LS2-8
配列表11 <223>鋳型LS2lrs-1
配列表13 <223>鋳型LS3lrs-2
配列表14 <223>鋳型LS3lrs-4
配列表15 <223>鋳型LS52lowtG lrs1
配列表16 <223>鋳型LS2lowtglrs2
配列表17 <223>鋳型LS3 lt-1lrs1
配列表20 <223>鋳型LS3lowpG3
配列表21 <223>鋳型LS3 sp
配列表22 <223>鋳型LS3lowpG2
配列表23 <223>鋳型LS2hpG1
配列表24 <223>鋳型LS2lp
配列表25 <223>鋳型LS2 sp
配列表26 <223>鋳型LS3 lt1
配列表27 <223>鋳型LS3 htG
配列表28 <223>鋳型LS3 lowtG
配列表29 <223>鋳型LS2 htG2
配列表30 <223>鋳型LS2 lt3
配列表31 <223>鋳型LS2 s
配列表32 <223>鋳型LS2 lowtG
配列表34 <223>鋳型LS2 no5’lrs3
配列表36 <223>鋳型EXPAR1
配列表37~61 <223>トリガー
配列表63 <223>鋳型LS3lpG3let7f5pLNA
配列表64 <223>鋳型LS3lowpG3let7f5p
配列表66 <223>鋳型LS2miR223
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9
図10A
図10B
図10C
【配列表】
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