(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-17
(45)【発行日】2022-02-28
(54)【発明の名称】澱粉を含む粒子とその製造方法、および化粧料
(51)【国際特許分類】
C08J 3/16 20060101AFI20220218BHJP
A61Q 1/00 20060101ALI20220218BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20220218BHJP
A61Q 1/12 20060101ALI20220218BHJP
C08B 30/00 20060101ALI20220218BHJP
A61K 8/19 20060101ALI20220218BHJP
【FI】
C08J3/16 CEP
A61Q1/00
A61K8/73
A61Q1/12
C08B30/00
A61K8/19
(21)【出願番号】P 2021535265
(86)(22)【出願日】2020-08-20
(86)【国際出願番号】 JP2020031432
(87)【国際公開番号】W WO2021033742
(87)【国際公開日】2021-02-25
【審査請求日】2021-06-17
(31)【優先権主張番号】P 2019150611
(32)【優先日】2019-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019176387
(32)【優先日】2019-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000190024
【氏名又は名称】日揮触媒化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134119
【氏名又は名称】奥町 哲行
(72)【発明者】
【氏名】榎本 直幸
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 慧
(72)【発明者】
【氏名】佐土原 功樹
(72)【発明者】
【氏名】梁瀬 雅史
【審査官】千葉 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-174616(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104630309(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第101880405(CN,A)
【文献】モチ米澱粉の熱水ナノスケール微細化、吉岡泰嗣ほか、日本食品工学会誌、2014年6月、Vol.15、No.2、pp.95-100
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J3/00-3/28;99/00
C08B1/00-37/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミロペクチンの含有量が90重量%以上の澱粉を含む粒子であって、
平均粒子径d
1が
1.5~20μm、
最大粒子径d
2が30μm未満、かつ、前記平均粒子径の3.0倍未満であることを特徴とする粒子。
【請求項2】
アミロペクチンの含有量が90重量%以上の澱粉を含む粒子であって、
平均粒子径d
1
が0.5~20μm、
最大粒子径d
2
が30μm未満、かつ、前記平均粒子径の3.0倍未満、
真球度が0.85以上であることを特徴とする粒子。
【請求項3】
アミロペクチンの含有量が90重量%以上の澱粉と、無機酸化物を含む粒子であって、
平均粒子径d
1
が0.5~20μm、
最大粒子径d
2
が30μm未満、かつ、前記平均粒子径の3.0倍未満であることを特徴とする粒子。
【請求項4】
前記粒子には、前記澱粉が30~90重量%、前記無機酸化物が10~70重量%の範囲で含まれることを特徴とする請求項
3に記載の粒子。
【請求項5】
前記粒子が澱粉で構成された澱粉粒子である請求項1
または2に記載の粒子。
【請求項6】
比表面積が20m
2/g以上であることを特徴とする請求項
5に記載の粒子。
【請求項7】
前記粒子の固形分濃度50重量%の水分散液では、示差走査熱量計を使用して得られたDSC曲線による糊化開始温度が45℃以上である請求項
5または6に記載の粒子。
【請求項8】
前記粒子は、外殻の内側に空洞を有する中空粒子であることを特徴とする請求項
5~7のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項9】
前記粒子の固形分濃度10重量%の水分散液を80℃で24時間加熱したとき、加熱後の水分散液の粘度V
2と、加熱前の水分散液の粘度V
1の比(V
2/V
1)が2.0以下であることを特徴とする請求項
3または4に記載の粒子。
【請求項10】
グロブリンの含有量が0.10重量%以下である請求項
1~9のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項11】
真球度が0.85以上であることを特徴とする請求項
1、3~10のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項12】
粒子変動係数が50%以下である請求項1~
11のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項13】
前記粒子の水分散液を、超音波分散機を用いて60分間超音波を印加したとき、印加後の平均粒子径d
3と、印加前の平均粒子径d
1の比(d
3/d
1)が、0.95~1.05の範囲にあることを特徴とする請求項1~
12のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項14】
アミロペクチンの含有量が90重量%以上の澱粉の分散液と界面活性剤と非水系溶媒を混合して、乳化液滴を含む乳化液を調製する乳化工程と、
前記乳化液滴から水を除去する脱水工程と、
前記脱水工程で得られた非水系溶媒分散体を固液分離して澱粉粒子を固形物として得る工程と、を備えることを特徴とする粒子の製造方法。
【請求項15】
前記乳化工程で得られた乳化液を-50℃~0℃の範囲で冷却し、前記乳化液滴中の水を凍結させた凍結乳化液を作製し、前記凍結乳化液を常温に戻してから前記脱水工程を行うことを特徴とする請求項
14に記載の粒子の製造方法。
【請求項16】
請求項
1~13のいずれか一項に記載の粒子が配合された化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、良好な生分解性を持つ澱粉を含んだ粒子及びその製造方法、並びに化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、石油由来の合成高分子(プラスチック)は、さまざまな産業で利用されている。合成高分子は、長期安定性を求めて開発されることが多く、自然環境中で分解されない。そのため、様々な環境問題が起こっている。例えば、水環境に流出したプラスチック製品が長い期間蓄積され、海洋や湖沼の生態系が大きな影響を受けている。また、近年、長さが5mm以下からnmレベルまでのマイクロプラスチックが大きな問題となっている。マイクロプラスチックに該当するものとして、化粧用品等に含まれる微粒子、加工前のプラスチック樹脂の小さな塊、大きな製品が海中で浮遊するうちに微細化した物、等が挙げられている。
【0003】
近年では、化粧料の感触特性を向上させるために、数百μm級のプラスチック粒子(例えば、ポリエチレン粒子)を化粧料に配合している。プラスチック粒子は、真比重が軽いため下水処理場で除去し難く、河川、海洋、池沼等に流れ出易い。更に、プラスチック粒子は、殺虫剤等の化学物質を吸着し易いため、生物濃縮により人体に影響を与える虞がある。このことは国連環境計画等でも指摘されており、各国、各種業界団体が規制を検討している。
【0004】
また、自然派化粧品やオーガニック化粧品に関心が高まっており、化粧品の自然・オーガニック指数表示に関するガイドライン(ISO16128)が制定されている。このガイドラインによれば、製品中の原料を、例えば、自然原料、自然由来原料、非自然原料に分類し、各原料の含有量に基づいて指数が算出される。今後、このガイドラインに沿って商品に指数が表示されるようになるため、自然由来原料、更に、自然原料が要求されることが予想される。
【0005】
このような背景から、自然環境中で微生物等により水と二酸化炭素に分解され、自然界の炭素サイクルに組み込まれる生分解性プラスチックが注目されている。特に、植物由来の自然原料であるセルロース粒子は、環境に流出しても水に浮くことがなく、また、良好な生分解性を持つため、環境問題を引き起こす懸念が少ない。例えば、セルロースが溶解した銅アンモニア溶液を酸で中和して9~400nmの真球状の再生セルロース粒子を得ることが知られている(例えば、特表2008-84854号公報を参照)。また、セルロース溶液を噴霧して気相中で液滴を形成し、この液滴を凝固液に接触させて、球状の再生セルロース粒子を得ることが知られている(例えば、特開2013-133355号公報)。これらは、意図的な化学修飾を行うプロセスにより得られたII型の結晶形セルロースを用いてセルロース粒子を作製している。このような再生セルロース粒子は、前述のガイドラインの定義によれば、自然由来原料に分類される。一方、意図的な化学修飾を行わないプロセスにより得られるセルロースを用いて、スクラブ剤に適した強度と崩壊性を持つ粉末状セルロース粒子も知られている(例えば、特開2017-88873号公報を参照)。また、有機溶媒に分散させたセルロースをスプレードライ法により造粒、乾燥し、結晶形がI型の多孔質セルロース粒子を作製することが知られている(例えば、特開平2-84401号公報を参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
欧州化学品庁(European Chemicals Agency)は、2018年10月16日発行の「Note on substance identification and the potential scope of a restriction on uses of‘microplastics’ Version 1.1」において、マイクロプラスチックスは、合成ポリマーであることが前提であり、生分解性を持つ天然由来のセルロースや澱粉等は、マイクロプラスチックスとみなすべきではないとの見解を示した。
【0007】
しかし、特許文献のセルロースは、グルコース分子を構成単位としたトランス型の多糖類で、水には溶解しない。そのため、セルロースは、自然界での分解性は高くないと考えられている。
【0008】
そこで、本発明の目的は、優れた感触特性を持つ粒子を、生分解性に優れた水溶性の材料を用いて実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による粒子は、澱粉を含む粒子であり、平均粒子径d1が0.5~20μm、最大粒子径d2が30μm未満かつ、平均粒子径の3.0倍未満である。澱粉は、アミロペクチンの含有量が90重量%以上である。澱粉とセルロースは、グルコースを構成単位とする多糖類であるが、両者は異性体である。すなわち、澱粉はシス型、セルロースはトランス型である。この違いが水溶性の有無、生分解性に関係がある。水溶性の澱粉を含む粒子は環境問題を引き起こす懸念が少なく、さらに、良好な流動性を有している。そのため、プラスチックビーズと同様な用途に安心して使用することができる。このような粒子が配合された化粧料は、従来のプラスチックビーズと同様な感触特性を得ることができる。
【0010】
また、粒子は、アミロペクチンの含有量が90重量%以上の澱粉の他に、無機酸化物を含んでいてもよい。その場合、澱粉は30~90重量%、無機酸化物は10~70重量%の範囲が適している。
【0011】
一方、粒子は、アミロペクチンの含有量が90重量%以上の澱粉で構成されていてもよい。この澱粉粒子の比表面積は20m2/g以上が好ましい。さらに、この澱粉粒子の固形分濃度50重量%の水分散液では、示差走査熱量計を使用して得られたDSC曲線による糊化開始温度は45℃以上が好ましい。
【0012】
また、上述したいずれの粒子でも、グロブリンの含有量は0.10重量%以下が好ましい。
【0013】
また、本発明による澱粉を含む粒子の製造方法は、澱粉の分散液と界面活性剤と非水系溶媒を混合して、乳化液滴を含む乳化液を調製する乳化工程と、乳化液滴を脱水処理する脱水工程と、脱水工程で得られた非水系溶媒分散体を固液分離して球状澱粉粒子を固形物として得る工程と、を備えている。
【0014】
また、乳化工程で得られた乳化液を-50~0℃の範囲で冷却することにより、乳化液滴中の水を凍結させた凍結乳化液を用いてもよい。
【0015】
上述したいずれかの粒子を配合して化粧料、樹脂組成物、塗料組成物を作製することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明による粒子は、アミロペクチンの含有量が90重量%以上の澱粉を含んでいる。一般に、澱粉はアミロースとアミロペクチンにより構成されている。アミロースはシス型の多糖類であり、グルコース分子が直鎖状に繋がった構造を持つ。アミロペクチンは、アミロースが枝分かれして繋がった構造を持ち、分子量が大きい。アミロースの含有量が多いほど澱粉粒子の膨潤性が高くなり、化粧料に配合した際にベタツキの原因となる。そのため、アミロースの含有量は10重量%未満(すなわち、アミロペクチンの含有量を90重量%以上)にする必要がある。アミロペクチンの含有量は、95重量%以上が好ましく、98重量%以上が最も好ましい。すなわち、アミロペクチンの含有量は大きいほど好ましいと言える。アミロペクチンの含有量は、ゲル濾過法、ヨード比色分析法、2波長測定法等で測定できる。
【0017】
また、粒子(粒子中の澱粉)に含まれるグロブリンは0.10重量%以下が好ましい。グロブリンはタンパク質の一種であり、強いアレルゲン活性を持つ。このグロブリンは、欧米人種に比較的多い米アレルギーの原因物質とされている。そのため、グロブリンは少ないほど好ましい。0.05重量%以下、さらに0.02重量%以下が適している。澱粉穀粒(澱粉の原料)を酵素処理、高圧処理(例えば100~400Mpa)、食塩水溶液、希酸水溶液、またはアルカリ水溶液中での浸漬、洗浄処理等を組み合わせることにより、グロブリンを減らすことができる。
【0018】
また、粒子の平均粒子径d1は0.5~20μmであり、最大粒子径d2は30μm未満かつ、平均粒子径d1の3.0倍以内である。平均粒子径d1は化粧料の感触特性に影響を与える。0.5μm未満では、転がり感、転がり感の持続性、均一な延び広がり性等の感触特性が著しく低下する。20μmより大きいと、ざらつきが感じられ、ソフト感としっとり感が低下する。平均粒子径d1は1~15μmが好ましく、5~10μmが最適である。また、最大粒子径d2が30μm以上では、ざらつきが感じられ、ソフト感としっとり感が低下する。最大粒子径が平均粒子径の3.0倍を超えると、均一な延び広がり性が低下する。
【0019】
また、粒子の真球度は0.85以上、すなわち球状粒子であることが好ましい。球状粒子により、化粧料の転がり性が向上する。真球度は0.90以上が特に好ましい。ここで、真球度は走査型電子顕微鏡の写真から画像解析法により求めた。
【0020】
また、粒子の粒子変動係数(CV)は、50%以下が好ましい。粒子変動係数が50%を超えると、均一な転がり性が得られないおそれがある。粒子変動係数は、40%以下、特に30%以下が好ましい。なお、粒子変動係数は、小さいほど好適であるものの、狭小分布の粒子を得ることは工業的に困難である。概ね3%以上であれば、特に問題なく製造できる。
【0021】
粒子の比表面積は20m2/g以上が好ましい。多孔性とすることにより生分解速度を向上させることができる。そのため、50m2/g以上がより好ましい。
【0022】
澱粉には、水の共存下で加熱されると糊化する性質がある。この熱特性は、示差走査熱量計(DSC)を用いて解析することができる。これにより得られたDSC曲線(温度と熱量の変化との関係)から糊化開始温度、糊化ピーク温度、糊化終了温度を読み取ることができる。澱粉の糊化反応は吸熱反応であることから、熱量が低下し始める温度(DSC曲線が下向きになる温度)が糊化開始温度、熱量が極小値となる温度が糊化ピーク温度、糊化ピーク後に再度熱量が低下する温度が糊化終了温度である。なお、糊化開始温度が体温以上でも、稀に肌に塗布した後、経時で澱粉の糊化によるベタツキ感を感じることがある。これは、糊化開始温度が正確に捉えられていないためと考えられる。澱粉の原料は主に植物由来の澱粉穀粒という自然素材であり、澱粉穀粒の粒子間に著しい不均一性がある(例えば、澱粉化学第32巻第1号P65~83)。そのため、糊化開始温度を正確に測定できないおそれがある。検出感度0.03μW以下の超高感度DSC(例えば、米リンサイズ製Chip-DSC100)を用いることにより、熱特性をより正確に捉えることができる。
【0023】
本発明の粒子に含まれる澱粉を用いて調製された、固形分濃度50重量%の澱粉の水分散液では、糊化開始温度は45℃以上が望ましい。さらに、糊化開始温度は50℃以上が好ましく、55℃以上が特に好ましい。また、糊化ピーク温度は65℃以上、糊化終了温度は75℃以上が好ましい。さらに、糊化ピーク温度は70℃以上が好ましく、75℃以上が特に好ましい。糊化終了温度は80℃以上が好ましく、85℃以上が特に好ましい。
【0024】
また、化粧料等の製造工程で粒子が膨潤すると、当初想定していた機能が得られないおそれがある。そのため、製造工程中に平均粒子径が変化しないことが望ましい。本発明の粒子を蒸留水に分散させ、超音波分散機を用いて60分間超音波を印加する試験を行った。試験後の平均粒子径d3と試験前の平均粒子径d1の比(d3/d1)は、0.95~1.05が好ましい。この比が0.95未満の粒子は強度が低く、製造工程中の機械的負荷により崩壊し、感触改良効果が得られないおそれがある。一方、この比が1.05を超える粒子は、水中で膨潤する粒子であり、製造工程後に増粘しやすく、品質安定性が担保できない。アミロペクチンの含有量が低く、アミロースの含有量が多い場合に膨潤しやすい。この比は、0.97~1.03が特に好ましい。
【0025】
また、粒子は、外殻の内側に空洞が形成された中空構造でもよい。ここで、外殻は多孔質である。このような中空粒子は同径の中実粒子より軽いため、同じ重量に含まれる粒子数は中実粒子より多い。中空粒子の場合でも、BET法で求めた単位体積当たりの比表面積は、60m2/cm3未満である。さらに、外殻の厚さTと澱粉粒子の外径ODの比(T/OD)は、0.02~0.45の範囲が好ましい。この比が0.45を超える粒子は、中実粒子と実質的に同等である。一方、この比が0.02未満の粒子は、崩壊しやすい。この比は、0.04~0.30の範囲が特に好ましい。また、真比重は、0.30~1.60の範囲であることが好ましい。
【0026】
粒子に含まれる澱粉の原料は主に植物由来の澱粉穀粒であり、安価に入手可能である。澱粉穀粒中のアミロペクチンの含有量は植物種や品種によって異なる。例えば、コーン、馬鈴薯、小麦、タピオカ等は、73~83重量%であり、餅米、餅種コーン、餅種粟等は100重量%である。ある種のエンドウ豆では、アミロペクチンの含有量が0重量%であることが知られている。澱粉の原料としては、アミロペクチンの含有量が90重量%以上の澱粉穀粒が適している。また、澱粉穀粒を複数種混合してアミロペクチンの含有量を90重量%以上としてもよい。さらに、95重量%以上が好ましく、98重量%以上が最も好ましい。
【0027】
澱粉穀粒の形状、大きさも品種によって異なる。澱粉穀粒の形状には、多角形、楕円形、卵型等がある。後述の製造方法で球状にできるため、どのような形状の澱粉穀粒でも澱粉粒子の原料として使用できる。また、澱粉穀粒の大きさは0.5~100μmと様々である。平均粒子径d1が0.5~20μmの澱粉粒子を得るためには、澱粉穀粒の平均粒子径は20μm未満が適している。澱粉穀粒の平均粒子径は15μm以下が好ましく、10μm以下が最も好ましい。小さい粒径に制御しやすい米澱粉が最も好ましい。
【0028】
澱粉穀粒の糊化温度も、品種、産地によって異なる。温暖な地域で産出されたものは、糊化温度が高くなることが知られている。澱粉穀粒を適宜選定して粒子のDSC曲線を調整することができる。
【0029】
また、粒子を表面処理することにより、吸湿性の抑制、分散性、流動性向上を図ることもできる。一般的には表面処理剤としてシリコーン化合物が用いられるが、欧州では脱シリコーンの意識が高まっていることから、天然由来のアミノ酸系処理、天然由来のワックス成分系処理、オイル処理、金属石鹸処理等が好ましい。
【0030】
また、本発明の粒子には、上述した澱粉だけでなく無機酸化物を含んでいてもよい。澱粉を30~90重量%、無機酸化物を10~70重量%含む粒子を、以後、複合粒子と称す。無機酸化物が10重量%未満の場合は、無機酸化物が持つバインダーとしての効果が低くなり、澱粉成分同士の接点が多くなるために、糊化した際の粒子強度が弱くなる。一方、澱粉成分が30重量%未満ではソフト感が著しく低下する。なお、無機酸化物は20~50重量%の範囲、澱粉は50~80重量%の範囲が特に好ましい。
【0031】
前述の通り、澱粉には、水の共存下での加熱によって糊化する性質がある。糊化により粒子が崩壊し、媒体が増粘する。化粧料等の製造工程で澱粉成分が糊化すると、当初想定していた機能が得られないおそれがある。そのため、製造工程中に糊化しても粒子形状が維持され、媒体が増粘しないことが好ましい。本発明の複合粒子を分散した水分散液(固形分濃度10重量%)を80℃で24時間加熱したとき。加熱後の水分散液の粘度V2と、加熱前の水分散液の粘度V1の比(V2/V1)は2.0以下が好ましい。この比が2.0以上の粒子は糊化による粒子強度が低く、製造工程中の加熱により崩壊し、感触改良効果が得られないおそれがある。
【0032】
無機酸化物として、シリカ成分、酸化チタン成分、酸化マグネシウム成分、酸化鉄成分、酸化セリウム成分等が例示できる。特に、シリカ成分が適している。シリカ成分として、珪酸バインダーやシリカ粒子が挙げられる。珪酸バインダーとは、珪酸塩の水溶液を陽イオン交換樹脂で処理して脱アルカリ(Naイオンの除去等)したものである。珪酸塩とは、珪酸ナトリウム(水ガラス)、珪酸カリウム等のアルカリ金属珪酸塩、第4級アンモニウムシリケート等の有機塩基の珪酸塩などである。
【0033】
シリカ粒子とは、シリカを含有する無機酸化物粒子である。シリカを含む無機酸化物として、シリカ-アルミナ、シリカ-ジルコニア、シリカ-チタニアなどの複合酸化物、およびシリカが例示できる。シリカ成分の組成の違いによって複合粒子の製造条件を変更する必要はない。化粧料に配合することを考慮すると、非晶質シリカ粒子が好適である。
【0034】
なお、シリカ粒子の平均粒子径d2は、5nm~1μmが好ましい。平均粒子径が1μmを超えるとバインダー効果が低下する他、水中環境中でのシリカの溶解速度が低下し、その結果、良好な生分解性を損なうことがある。平均粒子径が5nm未満の場合は、微粒子としての安定性が低いことから工業的な側面で好ましくない。特に10nm~0.5μmの範囲が望ましい。
【0035】
また、シリカ成分と澱粉成分で構成された複合粒子には、シリカ成分の3割以下であれば、シリカ以外の無機酸化物成分がシリカ成分に代わって含まれていてもよい。例えば、澱粉成分を50重量%含む複合粒子は、シリカ以外の無機酸化物成分を15重量%以下であれば含んでいてもよい。このとき、シリカ成分は35重量%以上となる。この程度の量であれば、無機酸化物成分が複合粒子の内部で均一に存在することができる。シリカ以外の無機酸化物成分とは、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化セリウムの少なくとも一つを含む無機酸化物である。ここで、酸化鉄として、酸化第二鉄、α-オキシ水酸化鉄、四酸化三鉄が好ましい。
<粒子の製造方法>
次に、アミロペクチンの含有量が90重量%以上の澱粉を含む粒子の製造方法について説明する。はじめに、澱粉穀粒を水に分散し、加熱処理を行う。これにより澱粉穀粒は可溶化し、透明~半透明な澱粉の分散液が得られる。次いで、この分散液と界面活性剤と非水系溶媒を混合して、乳化させる(乳化工程)。これにより乳化液滴を含む乳化液が得られる。この乳化液滴には澱粉が内包されている。次に、乳化液を脱水処理する(脱水工程)。これにより、乳化液滴中の水が緩慢に除去される。次に、固液分離により粒子を固形物として取り出す(固液分離工程)。この固形物を乾燥して解砕することにより、粒子の粉体が得られる(乾燥工程)。
【0036】
以下、各工程を詳細に説明する。
【0037】
[乳化工程]
まず、澱粉の分散液を用意する。澱粉に含まれるアミロペクチンの量は90重量%以上である。また、澱粉に含まれるグロブリン量は0.10重量%以下が好ましい。澱粉の固形分濃度を0.01~20重量%の範囲に調整して加熱する。加熱温度は70℃以上が好ましい。70℃未満では澱粉の糊化が進行しない可能性がある。また、分散液の固形分濃度が20重量%を超えると粘度が高くなり、乳化液滴の均一性が損なわれる。0.01重量%未満では経済性が悪く、特に利点もない。なお、分散液の溶媒は水が好ましい。
【0038】
この分散液と非水系溶媒と界面活性剤を混合する。非水系溶媒は、乳化のために必要である。非水系溶媒は、水と相溶しないものであればよく、一般的な炭化水素溶媒を用いることができる。界面活性剤は、油中水滴型の乳化液滴を形成するために添加される。界面活性剤のHLB値は1~10が適している。非水系溶媒の極性に応じて、最適なHLB値を選択すればよい。HLB値は特に1~5の範囲が好ましい。また、異なるHLB値の界面活性剤を組み合わせてもよい。
【0039】
次に、この混合溶液を乳化装置により乳化させる。この時、平均径が、0.5~500μmの乳化液滴を含む乳化液が得られるように、乳化条件を設定する。乳化液滴中には糊化した澱粉と水が存在している。乳化装置には、一般的な高速せん断装置を用いることができる。この他、より微細な乳化液滴が得られる高圧乳化装置、より均一な乳化液滴が得られる膜乳化装置、マイクロチャネル乳化装置等の公知の装置を目的に応じて適用できる。
【0040】
なお、乳化液滴の平均径は以下のように測定した。乳化液をスライドガラスに滴下し、その上からカバーガラスを被せる。デジタルマイクロスコープ(キーエンス社製、VHX-600)により、カバーガラス越しに30~2000倍の倍率で撮影する。得られた乳化液滴の写真投影図から、50個の液滴を任意に選び、付属のソフトウェアにより円相当径を算出する。これら50個の円相当径の平均値を平均径(平均液滴径)とした。
【0041】
[脱水工程]
次に、乳化工程で得られた乳化液を脱水処理する。常圧または減圧下で加熱することにより、水を蒸発させる。これにより、乳化液滴から水が除去され、粒子径0.5~25μmの粒子を含む非水系溶媒分散体が得られる。粒子中の澱粉には固形分としてアミロペクチンが90重量%以上含まれている。
【0042】
例えば、常圧下の加熱脱水法では、冷却管を備えたセパラブルフラスコを加熱し、非水系溶媒を回収しながら、脱水を行う。また、減圧下の加熱脱水法では、ロータリーエバポレーターや蒸発缶等用いて減圧加熱し、非水系溶媒を回収しながら、脱水を行う。後述の固液分離工程で非水系溶媒分散体から澱粉粒子を固形物として取り出せる程度まで脱水を行うことが好ましい。非水系溶媒分散体中の水分量は10重量%以下が好ましい。この水分量を超えると、固液分離工程で球状粒子としての形態を維持できず、高い真球度が得られない。この水分量は5重量%以下がより好ましく、1重量%以下が最も好ましい。また、脱水後に冷却してもよい。冷却によりアミロペクチンが結晶化(老化)することで硬くなり、粒子強度が高くなる。
【0043】
[固液分離工程]
固液分離工程では、従来公知の濾過、遠心分離等の方法で、脱水工程で得られた非水系溶媒分散体から固形分を分離する。これにより、粒子のケーキ状物質が得られる。
【0044】
さらに、得られたケーキ状物質を洗浄してもよい。これにより、界面活性剤を低減できる。粒子を乳化物等の液体製剤に配合する場合、界面活性剤が長期安定性を阻害するおそれがある。そのため、粒子に含まれる界面活性剤の残留量は500ppm以下が好ましい。界面活性剤を低減させるためには、有機溶媒を用いて洗浄すると良い。
【0045】
[乾燥工程]
乾燥工程では、常圧または減圧下での加熱により、固液分離工程で得られたケーキ状物質に含まれる非水系溶媒を蒸発させる。これにより、平均粒子径0.5~20μmの粒子の乾燥粉体が得られる。
【0046】
また、乳化工程で得られた乳化液を-50~0℃の範囲で冷却してから脱水工程を行ってもよい。すなわち、乳化液滴中の水を凍結させて凍結乳化物とする。凍結乳化物を常温に戻してから脱水工程を行う。凍結温度が-50℃~-10℃の場合には、中実構造の多孔質粒子が得られる。-10~0℃の場合には、中空構造の粒子が得られる。-10~0℃程度の温度では、氷の結晶が徐々に成長する。結晶の成長に伴って、液滴中の澱粉が液滴の外周に排斥される。そのため、外殻の内側に空洞が形成される。
<複合粒子の製造方法>
次に、複合粒子の製造方法について説明する。複合粒子は、噴霧乾燥法、乳化法、および被覆法を用いた従来の製造方法を適応して作製できる。ここでは、無機酸化物としてシリカ成分を用いた場合を説明する。
【0047】
[澱粉分散液の調製]
はじめに、澱粉穀粒を溶媒に分散させ、加熱処理を行う。これにより澱粉穀粒は可溶化し、透明または半透明な澱粉の分散液Aが得られる。このとき、澱粉に含まれるアミロペクチンの量が90重量%以上になるように澱粉穀粒を選択する。澱粉に含まれるグロブリン量は0.10重量%以下が好ましい。また、澱粉の固形分濃度が0.01~20重量%の範囲になるように調整する。加熱温度は70℃以上が好ましい。70℃未満では澱粉の糊化が進行しない可能性がある。また、分散液Aの固形分濃度が20重量%を超えると粘度が高くなり、乳化液滴の均一性が損なわれる。0.01重量%未満では経済性が悪く、特に利点もない。なお、分散液Aの溶媒には水が好ましい。
【0048】
[混合分散液の調製]
この澱粉の分散液Aとシリカ成分とを混合して分散液Bを調製する。シリカ成分としてシリカゾルを用いる場合には、シリカ系粒子を固形分換算で1~30重量%含むシリカゾルを準備する。また、シリカ成分として珪酸バインダーを用いる場合には、固形分濃度が1.5~10.0重量%の珪酸バインダーを準備する。固形分濃度が10.0重量%を超えると、珪酸バインダーの安定性が低下する。そのため、経時によって微細なゲル状または粒子状のシリカが生成し、真球度が低下する。特に、2.0~5.0重量%が適している。
【0049】
[造粒]
次に、分散液Bを用いて、噴霧乾燥法または乳化法により造粒する。これにより、複合粒子が得られる。
【0050】
(スプレードライヤーによる噴霧乾燥法)
分散液Bを熱風気流中に1~3リットル/分の速度で噴霧することによって複合粒子が作製される。熱風は、入口温度で70~200℃、出口温度で40~60℃が好ましい。入口温度が70℃未満だと、分散液中に含まれる固形分の乾燥が不充分となる。また200℃を超えると、澱粉が分解するおそれがある。また、出口温度が40℃未満では、固形分の乾燥度合いが悪くて装置内に付着してしまう。より好ましい入口温度は、100~150℃である。
【0051】
(乳化法)
分散液Bと非水系溶媒と界面活性剤を混合する。非水系溶媒や界面活性剤については、前述の粒子の製造方法で説明したので詳細は省略する。
【0052】
この混合溶液を乳化装置により乳化させる(乳化工程)。次に、乳化液を脱水処理する(脱水工程)。次に、従来公知の濾過、遠心分離等の方法により、脱水工程で得られた非水系溶媒分散体から固形分を分離する(固液分離工程)。常圧または減圧下での加熱により、固液分離工程で得られたケーキ状物質に含まれる非水系溶媒を蒸発させる(乾燥工程)。これにより、平均粒子径0.5~20μmの複合粒子の乾燥粉体が得られる。これらの各工程は、前述した粒子の製造方法と同一なので、詳細は省略する
【0053】
(被覆法)
次に、被覆法を適用した製造方法を説明する。
【0054】
[澱粉分散液の調製]
まず、澱粉成分の分散液を用意する。この分散液には澱粉成分が固形分濃度で5~30重量%含まれている。この分散液はいろいろな方法で調製できる。
【0055】
例えば、前述の噴霧乾燥法または乳化法で、シリカ成分を加えない状態で造粒する。すなわち、前述の分散液Aを用いて造粒する。このようにして得られた澱粉粒子を用いて分散液を調製する。このとき、澱粉粒子の平均粒子径は0.5~20μm、粒子径変動係数(CV値)は50%以下が適している。ここで平均粒子径はレーザー回折散乱法により求められる体積換算の平均粒子径である。また、澱粉粒子の真球度は、0.85~1.00が適している。なお、真球度0.85~1.00の澱粉粒子では、粒子径変動係数(CV値)が5%未満であることが望ましいものの、このような粒度分布の澱粉粒子を工業的に得ることは容易ではない。現実的には、粒子径変動係数(CV値)は5~50%の範囲にある。
【0056】
あるいは、澱粉穀粒を溶媒に分散させた分散液を用いてもよい。この場合、後述する方法で澱粉穀粒をシリカ成分で被覆し、その後で、噴霧乾燥法または乳化法により造粒を行う。このようにして、所望の複合粒子が作製される。
【0057】
このような澱粉成分の分散液(澱粉粒子の分散液または澱粉穀粒の分散液)を用いて、以下のように被覆が行われる。
【0058】
[被覆]
澱粉成分の分散液に珪酸溶液を加える。これにより澱粉成分の表面にシリカ成分を析出させる。このとき、酸またはアルカリを加えてもよい。これにより、澱粉成分の最外周にシリカ成分が形成される。すなわち、核である澱粉成分の表面を覆うようにシリカ層が形成される。核となる澱粉成分は、澱粉穀粒でも澱粉粒子でもかまわない。このように、澱粉成分の表面がシリカ層で被覆された複合粒子(被覆粒子)の分散液が得られる。
【0059】
珪酸溶液に含まれる珪酸成分の固形分濃度は1~40重量%が適している。固形分濃度が低いと生産効率が低下する。固形分濃度が高すぎると、シリカ成分が澱粉成分の表面で析出する前に液中で析出し、シリカ単独の粒子を形成してしまう。基本的に、シリカ層の厚みは珪酸成分の量に比例する。
【0060】
珪酸溶液を添加する間、pHは8~10、温度は5~80℃の範囲に維持することが好ましい。これにより、澱粉成分の表面に、シリカ成分が緻密に析出される。そのため、緻密なシリカ層で被覆された粒子が得られる。pHを制御するために、塩酸、硝酸、硫酸、有機酸等の酸、または、アンモニア、有機アミン、NaOH、KOH等のアルカリを用いることができる。
【0061】
また、5~20時間かけて珪酸溶液を添加することが好ましい。時間をかけて添加することにより、表面に析出するシリカ成分が緻密になる。
【0062】
珪酸溶液には、アルカリ金属珪酸塩、有機塩基の珪酸塩等の珪酸塩溶液を利用できる。アルカリ金属珪酸塩として珪酸ナトリウムや珪酸カリウムが、有機塩基の珪酸塩として第4級アンモニウムシリケートが挙げられる。この硅酸塩溶液を脱アルカリ処理して用いることが好ましい。特に、珪酸ナトリウム水溶液(水ガラス)を陽イオン交換樹脂で脱アルカリ処理(Naイオンの除去等)して得られる溶液が好ましい。脱アルカリ処理後の溶液のpHは1~8が好ましく、1.5~4がより好ましい。
【0063】
[固液分離]
このようにして得られた被覆粒子の分散液から、従来公知の濾過、遠心分離等の方法により、固形分を分離する(固液分離工程)。これにより、被覆粒子のケーキ状物質が得られる。さらに、得られたケーキ状物質を洗浄してもよい。これにより、無機塩等の不純分を低減できる。被覆粒子を乳化物等の液体製剤に配合する場合、無機塩が長期安定性を阻害するおそれがある。そのため、被覆粒子に含まれる無機塩の残留量は1000ppm以下が好ましい。無機塩を低減させるためには、純水を用いて洗浄すると良い。
【0064】
[乾燥]
常圧または減圧下での加熱により、固液分離工程で得られたケーキ状物質に含まれる溶媒を蒸発させる(乾燥工程)。これにより、平均粒子径0.5~20μmの被覆粒子の乾燥粉体が得られる。乾燥工程の加熱温度は50~150℃、加熱時間は24時間以内が好ましい。加熱温度が50℃未満の場合には、溶媒を蒸発させるまでに至る時間が長く、経済的ではない。150℃を超える場合には、被覆粒子に含まれる澱粉が変質するおそれがあることから好ましくない。また、加熱時間が24時間を超える場合にも、複合粒子に含まれる澱粉が変質する恐れがあるし、経済的ではない。
【0065】
なお、必要に応じて、乾燥後に粉砕工程を設けてもよい。被覆粒子の乾燥粉体を粉砕することにより、被覆粒子の粒径分布を適切な範囲にすることができる。所望の粒径分布に応じて粉砕装置は選択される。
<化粧料>
上述の各粒子と各種化粧料成分を配合して化粧料を調製することができる。このような化粧料によれば、単一成分の無機粒子(シリカ粒子)と同様の転がり感、転がり感の持続性、および均一な延び広がり性、プラスチックビーズと同様のソフト感としっとり感を同時に得ることができる。すなわち、化粧料の感触改良材に求められる代表的な感触特性を満たすことができる。
【0066】
具体的な化粧料を表1に分類別に例示する。このような化粧料は、従来公知の一般的な方法で製造できる。化粧料は、粉末状、ケーキ状、ペンシル状、スティック状、クリーム状、ジェル状、ムース状、液状、クリーム状等の各種形態で使用される。
【0067】
各種化粧料成分として代表的な分類や成分を表2に例示する。さらに、医薬部外品原料規格2006(発行:株式会社薬事日報社、平成18年6月16日)や、International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook(発行:The Cosmetic, Toiletry, and Fragrance Association、Eleventh Edition2006)等に収載されている化粧料成分を配合してもよい。
【0068】
【0069】
【実施例】
【0070】
以下、アミロペクチン含有量が90重量%以上の澱粉で形成された澱粉粒子を具体的に説明する。
【0071】
[実施例1]
本実施例では、澱粉穀粒として上越スターチ社のモチールB(登録商標)を用いた。すなわち、モチールB250gを純水4750gに加え、得られた懸濁液を、加熱攪拌(120℃、16時間)した。これにより、固形分濃度5重量%の澱粉の分散液が得られた。
【0072】
この分散液と非水系溶媒と界面活性剤を混合する。ここでは、分散液40gを純水160gで希釈し、固形分濃度を1重量%とした。この希釈分散液を、ヘプタン(関東化学社製)3346gと界面活性剤AO-10V(花王社製)25gの混合溶液に加え、乳化分散機(プライミクス社製T.K.ロボミックス)を使用して10000rpmで10分間撹拌した。これにより乳化され、乳化液滴を含む乳化液が得られた。この乳化液を60℃で16時間加熱し、乳化液滴を脱水した。さらに、この脱水した乳化液を2℃で16時間冷却保管したのち、ブフナー漏斗(関谷理化硝子器械社製3.2L)を用いて定量濾紙(アドバンテック東洋社製No.2)で濾過した。その後、ヘプタンで繰り返し洗浄し界面活性剤を除去した。このようにして得られたケーキ状物質を、60℃で12時間乾燥した。この乾燥粉体を250mesh篩(JIS試験用規格篩)でふるいにかけ、澱粉粒子を得た。
【0073】
澱粉粒子の調製条件を表3に示す。また、澱粉粒子(粉体)の物性を以下の方法で測定した。他の実施例の結果も併せて表4に示す。
【0074】
(1)アミロペクチンの含有量
アミロース/アミロペクチン分析キット(日本バイオコン社製)を用い、アミロペクチンの含有量を測定した。同キットが規定する測定手順に従い、総澱粉量、アミロース量を測定し、「{1-(アミロース量/総澱粉量)}×100」をアミロペクチンの含有量(重量%)とした。
【0075】
(2)グロブリン残留量
SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動法を用いて、グロブリン残留量を測定した。まず、ドデシル硫酸ナトリウム(富士フィルム和光純薬社製)2g、尿素(富士フィルム和光純薬社製)24g、グリセリン10g、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(東京化成工業社製)0.76gを蒸留水で溶解した。この溶液を、1N塩酸水溶液を用いてpH6.8に調整した。さらに、2-メルカプトエタノール(富士フィルム和光純薬社製)2.5gを加えて100mLとして、これをタンパク質抽出液とした。実施例で得られた澱粉粒子の粉体1gを、タンパク質抽出液0.7mLに加えて攪拌後、24時間静置した。その後、遠心分離にて上澄み液を分離した。この上澄み液0.01mLを、PGMEゲル(フナコシ社製)にチャージし、電気泳動を行った。その後、このゲルをCBB染色試薬(バイオダイナミクス研究所社製)し浸漬して染色した。染色されたゲルを画像解析(富士フィルム社製ルミノイメージアナライザーLAS-100plus、富士フィルム社製)ImageGaugeによる自動定量)し、グロブリン残留量を算出した。この方法により、実施例1で得られた澱粉粒子のグロブリン残留量を測定したところ、0.20重量%であった。
【0076】
(3)各粒子の平均粒子径、最大粒子径、粒子変動係数
レーザー回折法を用いて、各粒子の粒度分布を測定した。この粒度分布からメジアン値を求め、平均粒子径d1とした。また、粒度分布で検出される最も大きい粒子径を最大粒子径d2とした。さらに、粒度分布(母集団)から標準偏差σと母平均μを求め、粒子変動係数(CV=σ/μ)を得た。表4では百分率で表している。ここでは、粒度分布を堀場製作所製のLA-950v2を用いて測定した。
【0077】
(4)超音波分散有無による平均粒子径比
前述の測定装置(LA-950v2)で、分散条件を「超音波60分間」に設定し、分散させた。この超音波分散試験後、澱粉粒子の粒度分布を測定した。この粒度分布におけるメジアン値を超音波分散後の平均粒子径d3とした。これから超音波分散試験前後の平均粒子径の比(d3/d1)を求めた。
【0078】
(5)真球度
透過型電子顕微鏡(日立製作所製、H-8000)により、2000倍から25万倍の倍率で撮影し、写真投影図を得る。この写真投影図から、任意の50個の粒子を選び、それぞれの最大径DLと、これに直交する短径DSを測定し、比(DS/DL)を求めた。それらの平均値を真球度とした。
【0079】
(6)細孔容積、細孔径
澱粉粒子の粉体10gをルツボに取り、105℃で1時間乾燥後、デシケーターに入れて室温まで冷却した。次いで、洗浄したセルに0.15g試料を取り、Belsorp-miniII(日本ベル社製)を使用して真空脱気しながら試料に窒素ガスを吸着させ、その後、脱着させる。得られた吸着等温線から、BJH法により平均細孔径を算出する。また、「細孔容積(ml/g)=(0.001567×(V-Vc)/W)」という式から細孔容積を算出した。ここで、Vは圧力735mmHgにおける標準状態の吸着量(ml)、Vcは圧力735mmHgにおけるセルブランクの容量(ml)、Wは試料の質量(g)を表す。また、窒素ガスと液体窒素の密度の比を0.001567とした。
【0080】
(7)糊化開始温度、糊化ピーク温度、糊化終了温度
澱粉粒子と蒸留水を混合して固形分濃度を50重量%に調製した。この試料20mgを密封耐圧型容器に入れ、示差走査熱量計(リガク社製Thermo-plus-EVO-DSC8230)を使用して、昇温速度2℃/分で120℃まで加熱した際のDSC曲線を得た。このDSC曲線から糊化開始温度(T1)、糊化ピーク温度(T2)、糊化終了温度(T3)を読み取ることができる。
【0081】
(8)加熱有無による粘度比
澱粉粒子の粉体と蒸留水を混合して固形分濃度を10重量%に調製した。この試料80gを耐圧型密封容器に入れ、80℃で24時間加熱した。加熱後の水分散液の粘度V2と加熱前の水分散液の粘度V2を、粘度計(東機産業社製TVB10型粘度計)を用いて測定し、粘度比(V2/V1)を算出した。
【0082】
[実施例2]
実施例1で調製した固形分濃度5重量%の分散液200gを、希釈せずにヘプタン3346gと界面活性剤(AO-10V)25gの混合溶液中に加えた。乳化分散機を使用してこの溶液を10000rpmで10分間撹拌し、乳化させた。得られた乳化液を、-5℃の恒温槽中に72時間静置し、乳化液滴中の水を凍結させた。その後、常温まで昇温し、解凍した。これを、実施例1と同様に濾過・洗浄し、界面活性剤を除去した。このようにして得られたケーキ状物質を、実施例1と同様にして、澱粉粒子を調整した。
【0083】
本実施例で得られた澱粉粒子の内部構造を調べた。粉体0.1gをエポキシ樹脂約1g(BUEHLHER製EPO-KWICK)に均一に混合して常温で硬化させた後、FIB加工装置(日立製作所製、FB-2100)を用いて、試料を作製した。透過型電子顕微鏡(日立製作所製、HF-2200)を用いて、加速電圧200kVの条件下で、この試料のSEM像を撮影した。その結果、外殻の内側に空洞が形成された中空構造の粒子であった。このSEM像から、外殻の厚さTと外径ODを計測し、外殻の厚さ比(T/OD)を求めた。
【0084】
[実施例3]
実施例2と同様に乳化液を調製した。この乳化液を-25℃の冷凍庫中に72時間静置した。これ以降は実施例2と同様にして、澱粉粒子を調製した。
【0085】
[実施例4]
澱粉穀粒としてワキシースターチY(三和澱粉工業社製)を用い、実施例1と同様に固形分濃度5重量%の分散液を調製した。この分散液を純水で希釈し、固形分濃度1重量%とした。この希釈液200gを、ヘプタン3346gと界面活性剤(AO-10V)25gの混合液中に加えた。これ以降は実施例1と同様にして澱粉粒子を調製した。
【0086】
[実施例5]
実施例1と同様に、固形分濃度5重量%の分散液を調製した。この分散液200gを希釈せずに、ヘプタン3346gと界面活性剤(AO-10V)25gの混合液中に加えた。これ以降は実施例1と同様に澱粉粒子を調製した。ただし、乳化工程における乳化分散機の回転速度を2000rpmに、脱水工程における乳化液の加熱時間(脱水時間)を24時間に変更した。
【0087】
[実施例6]
乳化分散機の回転速度を5000rpmに、乳化液の加熱時間を16時間に変更した。これ以外は実施例5と同様に澱粉粒子を調製した。
【0088】
[実施例7]
乳化分散機の回転速度を800rpmに変更した。これ以外は実施例5と同様にして澱粉粒子を調製した。
【0089】
[実施例8]
澱粉穀粒として、モチールB125gと上越スターチ社のファインスノウ(登録商標)125gを用いた。それ以外は実施例4と同様にして澱粉粒子を調製した。
【0090】
[実施例9]
澱粉穀粒として、上越スターチ社のモチールB187.5gとファインスノウ62.5gを用いた。それ以外は実施例4と同様にして澱粉粒子を調製した。
【0091】
[実施例10]
本実施例では、上越スターチ社のモチールBをアルカリ浸漬と酵素処理することしにより、グロブリン量を低減する。すなわち、モチールB1kgを純水4kgに加え、懸濁液を調製した。この懸濁液に、5重量%の水酸化ナトリウム水溶液を加えて、pHを9.0に調整した。そこに、酵素(ヤクルト薬品工業社製アロアーゼ AP-10)10gを加え、室温で24時間攪拌した。次いでこの分散液を、ブフナー漏斗(関谷理化硝子器械社製3.2L)を用いて定量濾紙(アドバンテック東洋社製No.2)で濾過した。さらに、純水で洗浄して残留酵素と分解されたタンパク質を除去した。これにより得られたケーキ状物質を、60℃で12時間乾燥した。この乾燥粉体を250mesh篩(JIS試験用規格篩)でふるいにかけた。これにより、グロブリンが低減された澱粉の粉体が得られた。
【0092】
この粉体250gを純水4750gに懸濁した。この懸濁液を、加熱攪拌(120℃、16時間)して、固形分濃度5重量%の澱粉の分散液を調製した。これ以降は実施例1と同様にして澱粉粒子を調製した。本実施例で得られた澱粉粒子のグロブリン残留量は0.02重量%であった。
【0093】
[実施例11]
本実施例では、上越スターチ社のモチールB0.5kgとファインスノウ0.5kgを純水4kgに加え、懸濁液を調製した。これ以降は実施例10と同様にして澱粉粒子を調製した。本実施例で得られた澱粉粒子のグロブリン残留量は0.02重量%であった。
【0094】
[比較例1]
乳化液の脱水条件を45℃で3時間に変更した以外は実施例4と同様に操作した。しかし、脱水後、濾過・洗浄を行って得られた物質はフィルム状であり、光学顕微鏡で観察すると、粒子は確認できなかった。脱水が不足だったため、液滴同士が合一して粒子が調製できなかったと考えられる。
【0095】
[比較例2]
澱粉穀粒として上越スターチ社のファインスノウを用いた。それ以外は実施例4と同様にして澱粉粒子を調製し、物性を測定した。
【0096】
[比較例3]
本比較例では、実施例5の固形分濃度5重量%の澱粉の分散液の代わりに、固形分濃度20重量%の分散液を用いた。すなわち、モチールB1000gを純水4000gに懸濁して、固形分濃度20重量%の分散液を調製した。これ以外は実施例5と同様にして澱粉粒子を調製し、物性を測定した。ただし、乳化工程において、乳化分散機の回転速度を800rpmに変更した。
【0097】
【0098】
【0099】
[実施例12]
はじめに、上越スターチ社のモチールB250gを純水4750gに懸濁した。この懸濁液を、加熱攪拌(120℃、16時間)して、固形分濃度5重量%の澱粉の分散液Aを調製した。この分散液Aに日揮触媒化成社製のシリカゾル(Cataloid SI-30)833gを添加し、固形分濃度9重量%の分散液Bを調製した。
【0100】
この分散液Bと非水系溶媒と界面活性剤を混合する。本実施例では、分散液B23gを純水177gで希釈し、固形分濃度を1重量%とし、この希釈分散液を、関東化学社製のヘプタン3346gと花王社製の界面活性剤(AO-10V)25gの混合溶液に加え、乳化分散機(プライミクス社製T.K.ロボミックス)を使用して10000rpmで10分間撹拌した。これにより乳化され、乳化液滴を含む乳化液が得られた。この乳化液を60℃で16時間加熱し、乳化液滴を脱水した。さらに、脱水後の乳化液を2℃で16時間冷却保管したのち、ブフナー漏斗(関谷理化硝子器械社製3.2L)を用いて定量濾紙(アドバンテック東洋社製No.2)で濾過した。その後、ヘプタンで繰り返し洗浄し界面活性剤を除去した。これにより得られたケーキ状物質を、60℃で12時間乾燥した。この乾燥粉体を250mesh篩(JIS試験用規格篩)でふるいにかけ、複合粒子の粉体を得た。
【0101】
複合粒子の調製条件を表5に示す。また、複合粒子(粉体)の物性を実施例1で説明した方法により測定した。その結果を表6に示す。後述の実施例と比較例も同様とする。
【0102】
[実施例13]
澱粉穀粒としてワキシースターチY(三和澱粉工業社製)を用い、実施例12と同様に固形分濃度9重量%の分散液Bを調製した。この分散液を純水で希釈し、固形分濃度1重量%とした。この希釈液200gを、ヘプタン3346gと界面活性剤(AO-10V)25gの混合液中に加えた。これ以降は実施例12と同様である。
【0103】
[実施例14]
実施例12と同様に、固形分濃度9重量%の分散液Bを調製した。この分散液200gを希釈せずに、ヘプタン3346gと界面活性剤(AO-10V)25gの混合液中に加えた。また、乳化工程における乳化分散機の回転速度を2000rpmに、脱水工程における乳化液の加熱時間(脱水時間)を24時間に変更した。これ以外は実施例12と同様である。
【0104】
[実施例15]
乳化分散機の回転速度を5000rpmに、乳化液の加熱時間を16時間に変更した。これ以外は実施例14と同様である。
【0105】
[実施例16]
乳化分散機の回転速度を800rpmに変更した。これ以外は実施例14と同様である。
【0106】
[実施例17]
澱粉穀粒として、モチールB125gとファインスノウ125gを用いた。それ以外は実施例13と同様である。
【0107】
[実施例18]
澱粉穀粒として、モチールB187.5gとファインスノウ62.5gを用いた。それ以外は実施例13と同様である。
【0108】
[実施例19]
実施例12で調製した分散液B200gを、希釈せずにヘプタン3346gと界面活性剤(AO-10V)25gの混合溶液中に加えた。乳化分散機を使用してこの溶液を10000rpmで10分間撹拌し、乳化させた。得られた乳化液を、-25℃の冷凍庫中に72時間静置し、乳化液滴中の水を凍結させた。その後、常温まで昇温し、解凍した。これ以降は、実施例12と同様である。
【0109】
[実施例20]
実施例12で用いたシリカゾル833gの代わりに、日揮触媒化成製のシリカゾル(Cataloid SI-550)1250gを用い、固形分濃度8%の分散液Bを調製した。それ以外は実施例12と同様である。
【0110】
[実施例21]
実施例12で用いたシリカゾル833gの代わりに、日揮触媒化成製のシリカゾル(SS-160)1562gを用い、固形分濃度8%の分散液Bを調製した。それ以外は実施例12と同様である。
【0111】
[実施例22]
実施例12で調製した分散液A(5000g)に、日揮触媒化成製のシリカゾル(Cataloid SI-30)278gを添加して分散液Bを調製した。すなわち、この分散液中のシリカ成分は25重量%、澱粉成分は75重量%である。それ以外は実施例12と同様である。
【0112】
[実施例23]
実施例12で調製した分散液A(5000g)に、日揮触媒化成製のシリカゾル(Cataloid SI-30)147gを添加して分散液Bを調製した。すなわち、この分散液中のシリカ成分は15重量%、澱粉成分は85重量%である。それ以外は実施例12と同様である。
【0113】
[実施例24]
実施例12で用いたシリカゾルの代わりに、珪酸液(固形分濃度5重量%)5000gを用い、固形分濃度5%の分散液Bを調製した。それ以外は実施例12と同様である。
【0114】
[実施例25]
本実施例では、被覆法を用いて複合粒子を作製した。まず、上越スターチ社製の澱粉粒子(モチールB)1.0kgに純水9.0kgを添加して固形分濃度10.0重量%の澱粉粒子の分散液Aが得られる。澱粉粒子の平均粒子径を、レーザー回折法により測定された粒度分布から求めた。ここでは、LA-950v2(堀場製作所社製)を用いて澱粉粒子の粒度分布を測定し、体積換算の平均粒子径(D1)を算出した。この澱粉粒子の平均粒子径(D1)は6.8μmであった。また、粒子変動係数(CV値)は31%であり、真球度は0.85であった。この澱粉粒子は核粒子として用いられる。
【0115】
次に、珪酸ナトリウム水溶液を陽イオン交換することにより、珪酸液(シリカ成分の濃度4.5重量%)を調製する。この珪酸液3.9kgを16時間かけて分散液Aに添加した。添加中、pHを9.0、液温を40℃に維持した。pHを維持する際のアルカリとして、アンモニア水(濃度15重量%)を1kg使用した。珪酸液の添加後、ブフナー漏斗(関谷理化硝子器械社製3.2L)を用いて定量濾紙(アドバンテック東洋社製No.2)で濾過した。その後、純水で繰り返し洗浄し、得られたケーキ状物質を、80℃で16時間乾燥した。この乾燥粉体を250mesh篩(JIS試験用規格篩)でふるいにかけ、複合粒子の粉体を得た。この粉体の物性の測定結果を表4に示す。本実施例で得られた複合粒子は、澱粉粒子の表面にシリカ層が被覆されている。このとき、複合粒子のシリカ成分と澱粉成分の重量比は、15/85であった。
【0116】
[実施例26]
本実施例では、実施例12のモチールBの代わりに、実施例10で調製した「グロブリンが低減された澱粉の粉体」250gを純水4750gに懸濁した。これ以降は実施例12と同様にして、複合粒子を調製した。本実施例で得られた複合粒子のグロブリン残留量は、0.01重量%であった。
【0117】
[実施例27]
本実施例では、実施例12のモチールBの代わりに、実施例11で調製した「グロブリンが低減された澱粉の粉体」250gを純水4750gに懸濁した。これ以降は実施例12と同様にして、複合粒子を調製した。本実施例で得られた複合粒子のグロブリン残留量は、0.01重量%であった。
【0118】
[比較例4]
乳化液の脱水条件を45℃で3時間に変更した以外は実施例12と同様に操作した。しかし、脱水後、濾過・洗浄を行って得られた物質はフィルム状であり、光学顕微鏡で観察すると、粒子は確認できなかった。脱水が不足だったため、液滴同士が合一して粒子が調製できなかったと考えられる。
【0119】
[比較例5]
澱粉穀粒として上越スターチ社のファインスノウを用いた。それ以外は実施例12と同様である。
【0120】
[比較例6]
本比較例では、実施例12の分散液Aの代わりに、モチールB1000gを純水4000gに懸濁して得られた、固形分濃度20重量%の分散液Aを用いた。この分散液Aに日揮触媒化成社製のシリカゾル(Cataloid SI-30)3333gを添加し、固形分濃度24重量%の分散液Bを調製した。これ以降は実施例16と同様である。
【0121】
[比較例7]
比較例6で調製した分散液A(5000g)に、日揮触媒化成社製のシリカゾル(Cataloid SI-30)175gを添加して、固形分濃度20重量%の分散液Bを調製した。このとき、分散液Bの固形分中のシリカ成分は5重量%、澱粉成分は95重量%である。それ以外は比較例6と同様である。
【0122】
【0123】
【0124】
[各粒子の粉体の感触特性]
次に、各実施例と比較例で得られた粉体の感触特性を評価した。各粉体について、20名の専門パネラーによる官能テストを行い、さらさら感、しっとり感、転がり感、均一な延び広がり性、肌への付着性、転がり感の持続性、およびソフト感の7つの評価項目に関して聞き取り調査を行った。評価点基準(a)に基づく各人の評価点を合計し、評価基準(b)に基づき感触特性を評価した。結果を表7に示す。その結果、各実施例の粉体は、化粧料の感触改良材として極めて優れているが、比較例の粉体は、感触改良材として適していないことが分かった。
【0125】
評価点基準(a)
5点:非常に優れている。
4点:優れている。
3点:普通。
2点:劣る。
1点:非常に劣る。
【0126】
評価基準(b)
◎:合計点が80点以上
○:合計点が60点以上80点未満
△:合計点が40点以上60点未満
▲:合計点が20点以上40点未満
×:合計点が20点未
【0127】
【0128】
[パウダーファンデーションの使用感]
複合粒子の粉体を用いて表8に示す配合比率(重量%)となるようにパウダーファンデーションを作製した。すなわち、各実施例の粉体を成分(1)として、成分(2)~(9)とともにミキサーに入れて撹拌し、均一に混合した。次に、化粧料成分(10)~(12)をこのミキサーに入れて再び撹拌し、均一に混合した。得られたケーキ状物質を解砕処理した後、その中から約12gを取り出し、46mm×54mm×4mmの角金皿に入れてプレス成型した。この様にして得られたパウダーファンデーションについて、20名の専門パネラーによる官能テストを行った。肌への塗布中の均一な延び、しっとり感、滑らかさ、および、肌に塗布後の化粧膜の均一性、しっとり感、やわらかさの6つの評価項目に関して聞き取り調査を行った。前述の評価点基準(a)に基づく各人の評価点を合計し、前述の評価基準(b)に基づきファンデーションの使用感を評価した。結果を表9に示す。実施例による化粧料は、塗布中でも塗布後でも、使用感が優れている。しかし、比較例の化粧料は、使用感がよくない。
【0129】
【0130】