(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-17
(45)【発行日】2022-02-28
(54)【発明の名称】電子写真トナー組成物用の疎水性シリカ
(51)【国際特許分類】
C01B 33/18 20060101AFI20220218BHJP
C09C 1/28 20060101ALI20220218BHJP
C09C 3/12 20060101ALI20220218BHJP
G03G 9/097 20060101ALI20220218BHJP
【FI】
C01B33/18 C
C09C1/28
C09C3/12
G03G9/097 371
G03G9/097 375
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2016239286
(22)【出願日】2016-12-09
【審査請求日】2019-09-26
(32)【優先日】2015-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】金枝 正敦
(72)【発明者】
【氏名】ライナー ラーマン
(72)【発明者】
【氏名】イェンス ペルツァー
(72)【発明者】
【氏名】ファリデー ヤムチ
(72)【発明者】
【氏名】ユルゲン ベーニッシュ
【審査官】佐藤 慶明
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-114175(JP,A)
【文献】特表2013-527107(JP,A)
【文献】特開平04-340972(JP,A)
【文献】特開平10-330115(JP,A)
【文献】特開2006-053458(JP,A)
【文献】特開2014-074905(JP,A)
【文献】特開2006-154479(JP,A)
【文献】特開2010-085837(JP,A)
【文献】日産化学工業株式会社,製品照会 スノーテックス(R),[online],[令和2年9月9日検索], インターネット<https://www.nissanchem.co.jp/products/materials/inorganic/products/01/>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00 - 33/193
C09C 1/28
C09C 3/12
G03G 9/097
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の物理化学的特性:
- 平均一次粒径(D)が30~2000nmであり、
- B×D 65
~350、ここでBは、25℃での水の平衡蒸気圧に対する水の分圧が80%である時にシリカ(100質量%)に吸着された水蒸気の質量%を表し、Dはシリカ粉末の平均一次粒径(nm)を表す、
- B/C 1.0
以上2.7
未満、ここでCは、25℃での水の平衡蒸気圧に対する水の分圧が20%である時のシリカ(100質量%)に吸着された水蒸気の質量%を表す、及び
- 炭素含有率(質量%)>0.30
を有する、疎水性シリカ粉末。
【請求項2】
疎水性が50%よりも高いことを特徴とする、請求項1に記載の疎水性シリカ粉末。
【請求項3】
コロイドシリカ粉末であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の疎水性シリカ粉末。
【請求項4】
アスペクト比が1.0~1.5であることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の疎水性シリカ粉末。
【請求項5】
疎水性が55%よりも高いことを特徴とする、請求項1に記載の疎水性シリカ粉末。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか1項に記載の疎水性シリカ粉末の製造方法であって、以下の工程:
a.シリカ分散液の調製、
b.工程aの分散液を乾燥させて、親水性シリカ粉末を得ること、
c.100℃~170℃の間であり且つ工程cの温度が工程bの温度を上回る温度での、工程bのシリカ粉末の老化処理、
d.工程cのシリカ粉末の疎水化
を含むことを特徴とする、前記製造方法。
【請求項7】
シリカ分散液を、工程aにおいてアルコキシシラン又はアルカリ水ガラスと酸との反応によって調製することを特徴とする、請求項6に記載の疎水性シリカ粉末の製造方法。
【請求項8】
工程bにおける乾燥を冷凍乾燥機内で実施することを特徴とする、請求項6又は7に記載の疎水性シリカ粉末の製造方法。
【請求項9】
工程cの老化処理を乾燥炉内で実施することを特徴とする、請求項6から8までのいずれか1項に記載の疎水性シリカ粉末の製造方法。
【請求項10】
工程dの疎水化を、疎水化剤を工程cのシリカ上に噴霧することにより実施することを特徴とする、請求項6から9までのいずれか1項に記載の疎水性シリカ粉末の製造方法。
【請求項11】
疎水化剤が、アルキルシラン、ポリジメチルシロキサン又はシラザンであることを特徴とする、請求項10に記載の疎水性シリカ粉末の製造方法。
【請求項12】
請求項1から5までのいずれか1項に記載の少なくとも1つの疎水性シリカ粉末を含有する電子写真用トナー組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、疎水性シリカ、その製造方法及びトナーにおける使用に関する。
【0002】
電子写真技術を利用する複写機、レーザープリンタ等のOA機器は、電子写真用現像剤を用いて画像を形成する。2成分系の通常の電子写真用現像剤は、着色された樹脂微粉末及びキャリアを含むトナーを使用している。キャリアは磁性又は非磁性の粒子で構成されており、これはトナーを帯電し且つ担持する働きをする。トナーとキャリアは、現像機内で撹拌されて互いに混合し、相互摩擦の結果として帯電される。露光により形成された静電潜像は、この帯電を利用して現像されている。
【0003】
トナーが微粉末状であるため、その粉体特性、例えば、流動性及び帯電特性も、電子写真プロセスにおいて十分に機能し得るので重要である。従来のタイプのトナーは、粒径が10μm以上であるため、単なる破砕粒子であったが、かろうじて取り扱うことができた。現在のタイプのトナーは、それらが5μm~8μmの間の粒径を有する微細な粉末の形態であるため、大幅に改善された印刷品質を達成した。このトナーは、様々な外添剤を必要とする。
【0004】
トナーは、摩擦帯電によって制御されるので、電荷は様々な環境条件下で安定でなければならない。トナーが使用される環境は、一般的に、相対湿度が約20%である低湿環境から相対湿度が約80%以上である高湿環境までである。電荷はトナー樹脂と外添剤において集積電荷制御剤により制御される。特に、外添剤が重要な役割を果たしている。
【0005】
従来から長年にわたって一般に使用されている外添剤は、低い凝集傾向を示し且つ均一にトナー表面に分散しやすいようにドライプロセスで製造された表面改質シリカ及びチタニアなどの金属酸化物粒子である(特開昭58-132757号(JP S58-132757 A)、特開昭59-034539号(JP S59-034539 A)、特開平10-312089号(JP H10-312089 A))。
【0006】
特開2002-108001号(JP 2002-108001 A)は、いわゆるゾルゲル法によって製造されたシリカ微粉末をトナー粒子に加えることを提案している。これらの方法は、適切な環境条件下で優れた印刷画像を確実に提供することができるが、シリカ微粉末の表面の特性は、表面上に残存するシラノール基のために吸湿性になりやすい。シラノール基は水分を取り込むことができ、このことがトナーの帯電量の低下、ひいては高湿環境下での印刷画像の劣化の主原因となる。
【0007】
本発明の課題は、環境湿度に対してこれまでになく非感受性のシリカ粉末を提供することである。これは、トナーにおいて非常に優れた外添剤を形成するのに有用である。
【0008】
上記の課題は、以下の説明、実施例及び特許請求の範囲においてより詳細に定義されたシリカ粉末によって達成される。
【0009】
従って、本発明は、以下の物理化学的特性:
- 平均一次粒径Dは、30~2000nm、好ましくは40~1000nm、特に好ましくは50~400nm、非常に特に好ましくは50~200nmである(TEMによって測定)、
- B×D<430nm、好ましくは<375nm、特に好ましくは65~350nm、ここでBは、水の平衡蒸気圧に対する水の分圧が25℃で80%である時にシリカに吸着された水蒸気の質量%(100質量%)を表し、Dはシリカ粉末の平均一次粒径(nm)を表す、
- B/C<2.7、好ましくは<2.5、特に好ましくは1.0~2.4、ここでCは、25℃での水の平衡蒸気圧に対する水の分圧が20%である時のシリカに吸着された水蒸気の質量%(100質量%)を表す、及び
- 炭素含有率>0.30質量%、好ましくは>0.40質量%、特に好ましくは0.50質量%~5.00質量%
によって特徴付けられる、疎水性シリカ粉末に関する。
【0010】
本発明の疎水性シリカ粉末の一次粒子のアスペクト比は1.0~1.5、好ましくは1.0~1.3、特に好ましくは1.0~1.2であり得る。
本発明の疎水性シリカの疎水性は、50%を上回り、好ましくは55%を上回り、特に好ましくは63%を上回り得る。
本発明の疎水性シリカのpH値は、2.5~9.5、好ましくは3.5~8.5、特に好ましくは4.5~8.0である。
本発明の疎水性シリカは、粉末であり得る。
本発明の疎水性シリカは、コロイドシリカであり得る。
【0011】
本発明の疎水性シリカ粉末は、トナーが安定な静電荷を有し得る環境湿度に対してこれまでになく非感受性であり、これは安定な品質の印刷画像をもたらす。
【0012】
本発明はさらに、以下の工程;
a.シリカ分散液の調製、
b.工程aの分散液を乾燥させて、親水性シリカ粉末を得ること、
c.100℃~170℃の間であり且つ工程cの温度が工程bの温度を上回る温度での、工程bの疎水性シリカ粉末の老化処理
d.工程cのシリカ粉末の疎水化
を含む本発明の疎水性シリカの製造方法に関する。
【0013】
工程aのシリカ分散液は、単分散コロイドシリカ分散液であり得る。単分散コロイドシリカ分散液は、ゾルゲル法又はストーバー法(Werner Stoeber, Arthur Fink, Ernst Bohn, Controlled growth of monodisperse silica spheres in the micron size range, Journal of Colloid and Interface Science, 26巻, 62頁-69頁(1968年))として知られる、アルコキシシランの使用によって、又はコロイドプロセス(Ralph K. Iler, The Chemistry of Silica, Wiley, New York, 331頁-337頁(1979年))によるアルカリ水ガラスと酸の使用によって利用可能である。この酸は、例えば塩酸又は硫酸であり得る。これらの単分散コロイドシリカ分散液は、一般的に知られており、水及び/又は有機溶媒中の分散液として市販されている。エボニックインダストリーズAGから入手可能な水性分散液は、例えばIDISIL(商標)EM13530P、EM7530P又はEM5530Pである。
【0014】
シリカ分散液は、工程bにおいて、乾燥炉、ロータリーエバポレーター、パドル乾燥機、凍結乾燥機、流動層乾燥機、及び噴霧乾燥機などによる、一般的に知られた方法によって乾燥され得る。分散液は、好ましくは、陽イオン交換によって、工程bの前に脱イオン化されるので、pH2.2~3.8、好ましくはpH2.4~3.5、特に好ましくはpH2.5~3.2の値が得られる。上記の直接乾燥法の他に、シリカ粉末はまた、フィルタープレスを使用して分散液から濾過ケーキを乾燥させることによって得られてもよい。公知の薬剤は、濾過前に、沈殿、ゲル化又は凝集を増強するために添加され得る。任意の公知の手段は、濾過ケーキの乾燥にも適用可能である。乾燥工程bにおける環境温度が後の老化工程cにおける温度よりも低く維持されなければならないことが留意されるべきである。工程bにおける乾燥は、好ましくは150℃よりも低い温度で、好ましくは130℃よりも低い温度で、特に好ましくは-30℃~-100℃で実施され得る。工程bにおける乾燥は、好ましくは、凍結乾燥機内で、周囲圧力下の乾燥炉内で又は減圧下のロータリーエバポレーター内で実施され得る。工程bにおけるシリカは、シリカの水分が5.0質量%未満、好ましくは3.0質量%未満になるまで乾燥され得る。
【0015】
次に、工程bの乾燥したシリカは、疎水化前に老化プロセス(工程c)を受け、表面上のシラノール基の数は制御下で減少する。特に、隣接するシラノール基は縮合して、このようなシラノール基を幾何学的に孤立した表面上に残す。工程cは触媒の有無にかかわらず、制御された温度と湿度で行われ得る。これは100℃~170℃、好ましくは110℃~160℃の温度で行われる。後の老化工程cにおける温度は、乾燥工程bにおける温度よりも少なくとも10℃、好ましくは少なくとも30℃、更に好ましくは少なくとも50℃、特に好ましくは少なくとも70℃、高くてよい。工程cにおけるシリカは、シリカの水分が2.0%未満、好ましくは1.5%未満になるまで老化され得る。工程cの老化処理は、周囲空気下又は窒素若しくはアルゴンなどの不活性ガス下のいずれかで実施され得る。
【0016】
特に限定されるものではないが、本発明による疎水性シリカを得るために工程dに使用される疎水化剤は、シラザン、環状オルガノシロキサン、シリコーンオイル及びシランカップリング剤であり得る。
【0017】
シラザンとしては、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、ヘキサエチルジシラザン、テトラメチルジシラザン、ヘキサブチルジシラザン、ヘキサプロピルジシラザン、ヘキサペンチルジシラザン、ヘキサメチルシクロトリシラザン、1,3-ジビニルテトラメチルジシラザン、オクタメチルシクロテトラシラザン及びジビニルテトラメチルジシラザンが挙げられる。
【0018】
環状オルガノシロキサンとしては、ヘキサフェニルシクロトリシロキサン、オクタフェニルシクロテトラシロキサン、テトラビニルテトラメチルシクロテトラシロキサン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、ペンタメチルシクロテトラシロキサン、テトラメチルシクロテトラシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、テトラメチルテトラハイドロジェンシクロテトラシロキサン、テトラメチルテトラフェニルシクロテトラシロキサン、テトラメチルテトラトリフルオロプロピルシクロテトラシロキサン及びペンタメチルペンタトリフルオロプロピルシクロペンタシロキサンが挙げられる。
【0019】
シリコーンオイルとしては、例えば、低粘度から高粘度までのオルガノポリシロキサン、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルトリメチコン、メチルシロキサン/メチルフェニルシロキサンのコポリマーが挙げられる。また、重合度の高いゴム状ジメチルポリシロキサン、ステアロキシシリコーン等の高級アルコキシ変性シリコーン、高級脂肪酸変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、フッ素変性シリコーン等を使用することも可能である。一端又は両端に反応性官能基を有するオルガノポリシロキサンを使用することも可能である。以下の式(1)によって表されるこれらのオルガノポリシロキサンは使用に適している:
Xa-(SiR2O)n-SiR2-Xb (1)
式中の基Rは、メチル基又はエチル基からなるアルキル基と同一又は異なってよく、その一部はビニル基、フェニル基及びアミノ基を含む官能基のうちの1つを含むアルキル基によって置換されてよく、基Xa及びXbは同一又は異なってよく且つハロゲン原子、ヒドロキシル基、アルコキシ基を含む反応性官能基である。nはシロキサン結合の重合度を表す整数であり、1~1000の間である。
【0020】
シランカップリング剤としては、例えば、1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3-ジフェニルテトラメチルジシロキサン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、i-ブチルトリエトキシシラン、i-ブチルトリメトキシシラン、i-プロピルトリエトキシシラン、i-プロピルトリメトキシシラン、N-ベータ(アミノエチル)ガンマ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-ベータ(アミノエチル)ガンマ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、n-オクタデシルトリメトキシシラン、N-フェニル-ガンマ-アミノプロピルトリメトキシシラン、n-ブチルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-ヘキサデシルトリメトキシシラン、o-メチルフェニルトリメトキシシラン、p-メチルフェニルトリメトキシシラン、tert-ブチルジメチルクロロシラン、a-クロロエチルトリクロロシラン、ベータ-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、ベータ-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、ベータ-クロロエチルトリクロロシラン、ベータ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、ガンマ-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、ガンマ-アニリノプロピルトリメトキシシラン,ガンマ-アミノプロピルトリエトキシシラン、ガンマ-アミノプロピルトリメトキシシラン、ガンマ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ガンマ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、ガンマ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、ガンマ-クロロプロピルトリメトキシシラン、ガンマ-クロロプロピルメチルジメトキシシラン、ガンマ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ガンマ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、アリルジメチルクロロシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルフェニルジクロロシラン、イソブチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリクロロシラン、エチルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、クロロメチルジメチルクロロシラン、ジエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジオクチルアミノプロピルトリメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジクロロシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジブチルアミノプロピルジメトキシシラン、ジブチルアミノプロピルトリメトキシシラン、ジブチルアミノプロピルモノメトキシシラン、ジプロピルアミノプロピルトリメトキシシラン、ジヘキシルジエトキシシラン、ジヘキシルジメトキシシラン、ジメチルアミノフェニルトリエトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジクロロシラン、ジメチルジメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、トリエチルクロロシラン、トリエチルメトキシシラン、トリオルガノシリルアクリレート、トリプロピルエトキシシラン、トリプロピルクロロシラン、トリプロピルメトキシシラン、トリヘキシルエトキシシラン、トリヘキシルクロロシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルクロロシラン、トリメチルシラン、トリメチルシリルメルカプタン、トリメチルメトキシシラン、トリメトキシシリル-ガンマ-プロピルフェニルアミン、トリメトキシシリル-ガンマ-プロピルベンジルアミン、ナフチルトリエトキシシラン、ナフチルトリメトキシシラン、ノニルトリエトキシシラン、ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルジメチルアセトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリス(ベータ-メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリクロロシラン、フェニルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ブロモメチルジメチルクロロシラン、ヘキサメチルジシロキサン、ヘキシルトリメトキシシラン、ベンジルジメチルクロロシラン、ペンチルトリメトキシシラン、メタクリロキシエチルジメチル(3-トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロリド、メチルトリエトキシシラン、メチルトリクロロシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン及びモノブチルアミノプロピルトリメトキシシランが挙げられる。
これらの疎水化剤は、単独で又は別の薬剤若しくは他の薬剤と組み合わせて使用され得る。
【0021】
工程cの親水性シリカ粉末の疎水化は、公知の方法で実施され得る。乾燥法に関しては、例えば、疎水化剤がシリカ上に噴霧され得るか、あるいは通気により撹拌又は流動されながら蒸気の形で反応容器に導入され得る。湿式法では、工程cのシリカは、トルエンのような溶媒中に分散され、そして疎水化剤の添加後に必要に応じて加熱又は加熱還流され得る。あるいは、これは溶媒を留去した後、高温で更に加熱され得る。2つ以上の疎水化剤が使用される場合も同様に疎水化方法は制限されないので、それらが同時に又は連続的に反応に供され得る。
【0022】
工程dの疎水化は、好ましくは、疎水化剤を工程cのシリカ上に噴霧することにより実施され得る。
疎水化剤は、好ましくはアルキルシラン、ポリジメチルシロキサン又はシラザン、特に好ましくはオクチルトリメトキシシラン又はヘキサメチルシラザンであり得る。
【0023】
必要に応じて本発明のシリカは、乾燥(工程b)、老化処理(工程c)、又は疎水化(工程d)後などいつでも粉砕工程を行うことができる。これは複数回行ってもよい。ジェットミルを含むミリングシステムであって、ミリングシステムにおけるミルが、粉砕段階で、ガス及び/又は蒸気、好ましくは水蒸気、及び/又は水蒸気を含むガスからなる群から選択される動作媒体を用いて動作されること、及び粉砕室が加熱段階で、即ち、動作媒体を用いる実際の動作の前に、粉砕室及び/又はミル出口での温度が蒸気及び/又は動作媒体の露点よりも高くなるように加熱されることを特徴とする前記ミリングシステムが特に好ましい。
【0024】
本発明はさらに本発明の疎水性シリカ粉末を含むトナー組成物に関する。本発明によるトナー組成物は、ヘンシェルミキサーなどの撹拌機を用いて着色粒子と本発明の疎水性シリカ粉末とを混合することにより得ることができる。
【0025】
着色粒子は、バインダー樹脂及び着色剤を含有し得る。着色粒子を製造するための方法は特に制限されていないが、それらは典型的には、例えば、微粉砕プロセス(着色剤を、バインダー樹脂成分としての熱可塑性樹脂中に溶融し、均質な分散液になるまで混合して組成物を形成し、これを次に微粉砕し、分級して着色粒子を得るプロセス)又は重合プロセス(着色剤を、バインダー樹脂の原料としての重合性モノマー中に溶融又は分散し、次に重合開始剤の添加後に分散安定剤を含有する水性分散媒中に懸濁し、その懸濁液を所定の温度まで加熱して重合を開始させ、重合完了後に濾過、濯ぎ、脱水及び乾燥することによって着色粒子を得るプロセス)において製造され得る。
【0026】
バインダー樹脂としては、以前からトナーに使用されている樹脂、例えば、スチレンのポリマー及びその置換生成物、例えば、ポリスチレン、ポリ-p-クロロスチレン及びポリビニルトルエン、スチレンコポリマー、例えば、スチレン-p-クロロスチレン、スチレン-プロピレン、スチレン-ビニルトルエン、スチレン-ビニルナフタレン、スチレン-メチルアクリレート、スチレン-エチルアクリレート、スチレン-ブチルアクリレート、スチレン-オクチルアクリレート、スチレン-メチルメタクリレート、スチレン-エチルメタクリレート、スチレン-ブチルメタクリレート、スチレン-アルファ-メチルクロロメタクリレート、スチレン-アクリロニトリル、スチレン-ビニルメチルエーテル、スチレン-ビニルエチルエーテル、スチレン-ビニルメチルケトン、スチレン-ブタジエン、スチレン-イソプレン、スチレン-アクリロニトリル-インデン、スチレン-マレイン酸及びスチレン-マレエート、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルクロリド、ポリビニルアセテート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、エポキシ樹脂、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族樹脂又は脂環式炭化水素樹脂及び芳香族石油樹脂が挙げられる。これらは単独で又は混合して使用され得る。公知の離型剤、帯電防止剤等は、本発明の課題を逸脱しない範囲内で前記樹脂に更に添加され得る。
【0027】
カーボンブラック及びチタン白を含む全ての顔料及び/又は染料は、着色粒子に含有される着色剤として使用され得る。着色粒子は、任意の磁性材料を含有し得る。本明細書で使用される材料としては、マグネタイト、ガンマ酸化鉄、フェライト及び鉄過剰フェライトなどの酸化鉄、鉄、コバルト及びニッケルなどの金属又は合金並びに前記金属とマグネシウム、錫、亜鉛、カルシウム、チタン、タングステン又はバナジウムなどの金属とのそれらの混合物が挙げられる。
本発明による全てのトナー組成物は、そのまま、即ち、一成分トナーとして使用することができる。これは、いわゆる2成分トナーとして使用するためのキャリアと混合することもできる。
【0028】
電子写真プロセスでは、トナーが帯電材料との摩擦によって瞬時に帯電可能であり、且つトナーの帯電が温度及び湿度などの環境条件の下で時間内に安定であることが要求されている。一般に、トナー材料は、スチレン-アクリル又はポリエステル樹脂を含有し得る。
【0029】
スチレン-アクリル系樹脂は、スチレンとアクリレートエステル及び/又はメタクリレートエステルのコポリマーであり、例えば、スチレン-メチルアクリレート、スチレン-エチルアクリレート、スチレン-ブチルアクリレート、スチレン-オクチルアクリレート、スチレン-メチルメタクリレート、スチレン-エチルメタクリレート又はスチレン-ブチルメタクリレートが挙げられる。
【0030】
ポリエステル樹脂は、多価アルコール及び多塩基酸からなり、多価アルコール又は多塩基酸の少なくともいずれかが三価又は多価の成分(架橋成分)を含有するモノマー組成物を必要に応じて重合することによって得られる。これらのポリエステル樹脂は、任意の通常の方法によって合成することができる。具体的には、反応条件は、反応温度(170℃~250℃)及び反応圧力(5mmHg~常圧)などの使用されるモノマーの反応性に従って選択されてよく、また所定の特性が達成される時に停止されてよい。
【0031】
ポリエステル樹脂を合成するために使用される二価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブタンジオール、1,4-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ポリオキシエチレンビスフェノールA、ポリオキシプロピレン(2,2)-2,2’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(3,3)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2,2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン又はポリオキシプロピレン(2,2)-2,2’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンが挙げられる。
【0032】
ポリエステルの架橋に関与する三価又は多価アルコールとしては、例えば、ソルビトール、1,2,3,6-ヘキサンテトロール(hexanetetrole)、1,4-ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、スクロース、1,2,4-ブタントリオール、1,2,5-ペンタントリオール、グリセロール、2-メチルプロパントリオール、2-メチル-1,2,4-ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン又は1,3,5-トリヒドロキシメチルベンゼンが挙げられる。
【0033】
多塩基酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、マロン酸、アルケニルコハク酸、例えばn-ドデセニルコハク酸及びn-ドデシルコハク酸、アルキルコハク酸、他の二価の有機酸及び無水物又は前記酸の低級アルキルエステルが挙げられる。
【0034】
ポリエステルの架橋に関与する三価又は多価多塩基酸としては、例えば、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、1,2,5-ベンゼントリカルボン酸、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸、2,5,7-ナフタレントリカルボン酸、1,2,4-ナフタレントリカルボン酸、1,2,5-ヘキサントリカルボン酸、1,3-ジカルボキシル-2-メチル-2-メチレンカルボキシプロパン、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8-オクタンテトラカルボン酸及び上記の無水物が挙げられる。
【0035】
本発明の疎水性シリカの利点は、環境湿度に対する非感受性である。
【0036】
平均一次粒径及びアスペクト比
平均一次粒径は、以下のように計算される。各一次粒子の長軸及び短軸は、1,000を上回る粒子について測定され、これは10万倍の倍率で透過型電子顕微鏡によって得られた画像を解析することによりシリカ粉末からランダムに選択される。長短軸の全粒径を(2×粒子の数)で割ると、平均一次粒径が得られる。
アスペクト比は(長軸の合計)/(短軸の合計)によって得られる。
【0037】
吸着された水分の測定
表面改質された疎水性シリカ粉末の水分吸着量を25℃でBELSOROP-maxを用いて測定する。各試料を、10Pa未満の圧力下にて150℃で3時間にわたり加熱し、前処理として吸着された水分を除去する。水蒸気吸着量を、水の平衡蒸気圧に対して、それぞれ20%(C)及び80%(B)の水蒸気圧の下で25℃で測定する。
【0038】
トナーの摩擦帯電の測定
2gのトナー試料と48gのフェライトキャリアを、ガラス容器(75mL)中に入れ、それぞれ、HH環境及びLL環境で24時間にわたり静置する。HH環境は、本明細書では40℃の温度及び85%の相対湿度を有する雰囲気を意味するが、LL環境は、20℃の温度及び20%の相対湿度を有する雰囲気を意味する。前記環境下で24時間保存した後、混合物を、それぞれ、TURBULA(登録商標)シェーカーミキサーを用いて5分間振とうする。次に、この混合物を0.2g取り、ブローオフ帯電測定装置TB-200(東芝ケミカル)によって空気を1分間吹き込み、トナー組成物の帯電量を、それぞれHH環境及びLL環境下で得る。
【0039】
疎水性
まず、1gの疎水性シリカ粉末を秤量し、200mlの分離漏斗に入れ、100mlの純水を加える。この上に蓋をした後、混合物をタービュラーミキサーで10分間振とうする。次に、混合物を10分間静置した。その濁った下層20~30ミリリットルを漏斗から捨てる。得られた水層の一部を10mmの石英セルに小分けし、これを次に比色計に入れる。疎水性(%)を、500nmの波長で光の透過率(%)として測定する。
【0040】
炭素含有率
実施例及び比較例における疎水化シリカ粉末の炭素含有率を、ISO3262-19によって測定した。
【0041】
親水性シリカ粉末のpH値
4gの親水性シリカ粉末を、磁気撹拌機を用いて100gの脱イオン水中に分散させる。分散液のpH値をpH計で測定する。
【0042】
疎水性シリカ粉末のpH値
4gの疎水性シリカ粉末を50gのメタノールと50gの脱イオン水の混合物中に磁気撹拌機を用いて分散させる。分散液のpH値をpH計で測定する。
【0043】
水分含有率
1gのシリカ粉末を秤量瓶で秤量し、蓋をせずに乾燥室内で105℃で2時間加熱する。加熱後、瓶に蓋をし、デシケーター内に保存して20℃まで冷却する。シリカ粉末の質量を計量する。粉末の質量損失を、試料の初期質量で割って、水分含有率を決定する。
【0044】
実施例
以下、本発明をより具体的に実施例及び比較例を用いて説明する。
【0045】
市販の水性分散液IDISIL(商標)EM13530P、EM7530P又はEM5530P(エボニックインダストリーズAG)を、陽イオン交換体(Lewatit(登録商標)S108H、ランクセスAGから購入)によって脱イオン化し、2.5~3.0のpH値を得た。その後、分散液を、液体窒素で凍結し、最初の乾燥工程において10時間よりも長くChrist Alpha 2-4 LDplus凍結乾燥機を用いて室温下で0.2ミリバールの圧力で凍結乾燥させた。第2の乾燥工程の場合、圧力を少なくとも2時間かけて0.05ミリバールまで低下させて、親水性シリカ粉末を得た。
【0046】
粉末を、乾燥炉内で表1に記載した温度で1時間にわたり老化処理した。
【0047】
反応容器に、100質量部の工程cからの老化シリカを加えた。粉末を混合により流動化した。表1に示すように記載された量(質量)の疎水化試薬を窒素雰囲気下でその上に噴霧した。この反応混合物を窒素雰囲気下で記載された温度で一定時間にわたり流動化した。得られた混合物を冷却して疎水性シリカ粉末を得た。
【表1】
【0048】
粉砕法によって製造された8μmの平均粒径を有する負に荷電したスチレン-アクリル系樹脂から構成された二成分トナー粉末を使用した。表2におけるトナー粉末と各疎水性シリカ粉末を、以下の式により算出された比を有するように一緒に混合した:
シリカ(質量部)=シリカ粉末の平均一次粒径(nm)/40
【0049】
上記混合物をヘンシェル型ミキサー(Kawata MFG Co., Ltd.によるスーパーミキサーピッコロSMP-2)に加え、次いで、600rpmで1分間、次いで3,000rpmで3分間撹拌して、トナー組成物を得た。
【0050】
トナー組成物の摩擦帯電を、HH条件下とLL条件下で測定した。結果を表2に示す。電荷の絶対値は、LL条件では、全ての試料に対して常に大きかった。それらの帯電量の比が小さい程、トナー組成物が様々な環境下でより安定していることを意味する。
【表2】
【0051】
表2では、本発明の疎水性シリカ粉末は、より低いLL/HH比を示し、これは環境湿度に対する改善された非感受性をもたらす。