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  • 特許-野地養生シート 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-17
(45)【発行日】2022-02-28
(54)【発明の名称】野地養生シート
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/28 20060101AFI20220218BHJP
   B32B 5/24 20060101ALI20220218BHJP
【FI】
E04G21/28 B
B32B5/24 101
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017065123
(22)【出願日】2017-03-29
(65)【公開番号】P2018168554
(43)【公開日】2018-11-01
【審査請求日】2020-03-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000107907
【氏名又は名称】セーレン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【弁理士】
【氏名又は名称】沖中 仁
(72)【発明者】
【氏名】出口 雅貴
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-210884(JP,A)
【文献】特開平02-118177(JP,A)
【文献】特開平05-202580(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0103608(US,A1)
【文献】特開2004-042330(JP,A)
【文献】特開2006-143867(JP,A)
【文献】特開2014-141047(JP,A)
【文献】特開2012-167451(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/28
B32B 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布と補強ネットとが多孔フィルムを挟むように積層された基材と、
前記基材の前記補強ネット側の面に形成された撥水性樹脂からなる滑り止め層と、
前記基材の前記不織布側の面に形成された粘着層とを有し、
前記滑り止め層の前記基材に対する面積が60~90%であり、
引張強度が、縦方向で200N/5cm以上、横方向で150N/5cm以上であり、
透湿性が100~5000g/m・24hの範囲であり、
耐水圧が10kPa以上であり、
波長領域400~700nmの透過率が40%以上である野地養生シート。
【請求項2】
前記粘着層の前記基材に対する面積が70~90%である請求項1に記載の野地養生シート。
【請求項3】
前記補強ネットの開口幅が2~10mmである請求項1または2に記載の野地養生
シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋根工事の際に野地を保護するための養生シートに関し、詳しくは勾配がある野地に最適に用いられ、養生後も外さずに設置したままにできることができる野地養生シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅の施工時には木材を雨や汚れから守るために、様々な養生シートが使用されてきた。例えば、野地施工から屋根下地用防水シートを葺くまでの間、雨水から野地(野地板)を守るために、いわゆる「ブルーシート」等の合成樹脂製防水シートを覆うことが行われてきた。しかしながら、合成樹脂製の防水シートは、表面が滑り易いため勾配のある野地に養生した場合、足を滑らす虞があった。
【0003】
このような問題を解決するため、防水シートの表面に滑り止め層を設けることが提案されている。(例えば特許文献1)。しかしながら、特許文献1の養生シートは、滑り止め層に撥水性がないため、雨に濡れた場合は滑り止め効果が低下してしまう。また裏面に粘着層が無いため、釘等で止める必要があり、野地を傷つけ、養生シートに穴をあけてしまうことから雨水がシート下に侵入しやすくなるという問題があった。また、養生シートに透湿性がないため、侵入した水が野地を腐食させてしまう虞があった。
【0004】
近年では、このような問題を解決するため透湿防水効果のある養生シートが開発されている。例えば、特許文献2には、透湿防水シート基材の一方の面に、シート基材の一部に粘着剤層が形成されてなる透湿性床養生用シートが提案されている。また、特許文献3には、表面樹脂層、芯部がポリエステル系樹脂で鞘部がポリオレフィン系樹脂の芯鞘繊維からなる不織布層、ポリオレフィン系樹脂からなる微多孔フィルム層、粘着層が順に形成されてなる養生シートが提案されている。
【0005】
しかしながら、これらの養生シートを野地の養生に用いた場合、シートが不透明であるため桟や瓦またはソーラーパネルの留め付け位置を示す墨出し等の基準線や目印を確認できなくなってしまう。視認性を上げるために各層を薄くすることも考えられるが、その場合強度が不足する虞がある。勾配がある野地に施工し養生シートの上を歩行した場合、養生シートの斜め方向から応力がかかるため破損されやすくなるが、破損されない程度の強度が必要であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2003-211570号公報
【文献】特開2006-143867号公報
【文献】特開2014-141047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、野地との密着性に優れ、雨に濡れても滑りにくく、墨出し視認性に優れ、適度な透湿防水性と強度を有するため野地の腐食を抑制可能な野地養生シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明にかかる野地養生シートの特徴構成は、不織布と補強ネットとが多孔フィルムを挟むように積層された基材と、基材の一方の面に形成された撥水性樹脂からなる滑り止め層と、基材の他方の面に形成された粘着層とを有し、滑り止め層の基材に対する面積が60~90%であり、引張強度が、縦方向で200N/5cm以上、横方向で150N/5cm以上であり、透湿性が100~5000g/m・24hの範囲であり、耐水圧が10kPa以上であり、波長領域400~700nmの透過率が40%以上である。
粘着層の基材に対する面積が70~90%であることが好ましい。
粘着層の補強ネットの開口幅が2~10mmであることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の野地養生シートは、野地との密着性に優れ、雨に濡れても滑りにくく、墨出し視認性に優れ、適度な透湿防水性と強度を有するため野地の腐食を抑制可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態の一例である野地養生シートを示す断面模式図である。
図2】本発明に使用される補強ネットの開口間隔と開口幅を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の野地養生シートについて、図面を参照して説明する。ただし、本発明は、以下に説明する構成に限定されることを意図するものではない。なお、図面において、本発明の野地養生シートを構成される複数の層が図示されているが、各層の厚みや大きさは説明容易化のため適宜変更しており、実際の野地養生シートにおける各層の厚みの大小関係(縮尺)を正確に反映したものではない。
【0012】
本発明の野地養生シート1は、図1に示すように、不織布3と補強ネット5とが、多孔フィルム4を挟むように積層された基材Aと、基材Aの一方の面に形成された撥水性樹脂からなる滑り止め層2と、基材Aの他方の面に形成された粘着層6とを有している。野地を養生する際には滑り止め層2を外側にし、裏面の粘着層6を野地に向けて被着させ施工する。
【0013】
基材Aは、不織布3および補強ネット5が、多孔フィルム4を挟むように積層されている。このような構成にすれば、滑り止め層2および粘着層6が不織布3または補強ネット5の表面に設けられるため接着安定が良く、多孔フィルム4を外圧から保護することもできる。
【0014】
図1では、不織布3側に滑り止め層2を形成し、補強ネット5側に粘着層6を形成しているが、滑り止め層2と粘着層6は逆であっても良い。粘着性を重要視する場合には、粘着層6が均一な膜になり粘着力を発揮しやすい面から、粘着剤が浸み込みにくい補強ネット5側に粘着層6を形成することが好ましい。
【0015】
不織布3の素材としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂が挙げられる。これらの樹脂は単独で用いてもよいし、複数種を混合した混合物として用いてもよい。なかでも生産性、加工性、強度の点でポリオレフィン系樹脂とポリエステル系樹脂の混合物が好ましい。好ましい混合物の構成としては、芯部がポリエステル系樹脂、鞘部がポリオレフィン系樹脂の芯鞘繊維であり、芯部がポリエステル系樹脂のため強度を保持でき、鞘部がポリオレフィン系樹脂であるため加工性、環境性、経済性および透湿性を発揮させやすいサーマルラミネート法を用いることが容易となる。その際ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂が挙げられるが、ポリエチレン系樹脂が、サーマルラミネート法を用いやすい面から好ましい。
【0016】
なお、鞘部の融点が100~120℃であると、不織布3と多孔フィルム4をサーマルラミネートで積層する際に、熱で多孔を塞ぐことなく充分に密着させることが出来る面で好ましい。
【0017】
不織布3の種類としては特に限定されず、スパンボンド法によって形成された不織布(スパンボンド不織布)、メルトブロー法によって形成された不織布(メルトブロー不織布)、水流交絡法によって形成された不織布(スパンレース不織布)、ニードルパンチ法によって形成された不織布(ニードルパンチ不織布)、熱融着法によって形成された不織布(サーマルボンド不織布)、溶剤接着法によって形成された不織布(ケミカルボンド不織布)によって形成された不織布等が挙げられる。
【0018】
また、不織布3の目付は15~40g/mであることが好ましく、さらに好ましくは20~30g/mである。15g/m以上であれば、強度が向上し、40g/m以下であれば、透明性に優れる。
【0019】
多孔フィルム4の素材としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂等が挙げられる。なかでも生産性、加工性の点でポリオレフィン系樹脂が好ましい。
【0020】
また、多孔フィルム4の厚みは、強度と透明性の面で10~40μmが好ましく、さらに好ましくは15~30μmである。
【0021】
多孔フィルム4の製法としては、炭酸カルシウム等のフィラーを内添し、延伸処理を施すことで微多孔を作る等の公知の製法でよい。
【0022】
また、多孔フィルム4は、透湿度3000g/m・24h以上であることが好ましい。3000g/m・24h未満であると、不織布層とのサーマルラミネート(熱融着ラミネート)などの接着加工により、透湿性養生シートとして必要な透湿度を発揮出来なくなる虞がある。多孔フィルム4の耐水圧は8kPa以上であることが好ましい。8kPa未満であると、不織布層とのサーマルラミネート(熱融着ラミネート)などの接着加工により、透湿性養生シートとして必要な防水性を発揮出来なくなる虞があり、施工し養生している期間にシート表面から水が浸透してしまう虞がある。
【0023】
また、補強ネット5の素材としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は単独で用いてもよいし、複数種を混合した混合物として用いてもよい。なかでも生産性、加工性の点でポリオレフィン系樹脂が好ましい。
【0024】
補強ネット5としては、割繊しテープ状にしたフィルムを、格子等の多角形状やクモの巣状に交叉させて交点を接着したネット状シートが挙げられ、商品名としては、例えば「ソフ(登録商標)、積水フィルム株式会社製」や「ワリフ(登録商標)、JX ANCI株式会社製」が挙げられる。
【0025】
また、補強ネット5の厚みは、20~120μmが好ましく、さらに好ましくは60~100μmである。20μm以上であれば、強度が向上し、120μm以下であれば、シート表面が平滑であるため野地面との接触面積が大きくなり、粘着効果の発揮が期待できる。
【0026】
補強ネット5の開口幅は2~10mmが好ましく、さらに好ましくは3~7mmに設定される。2mm以上であれば、透湿性を阻害する虞がなく、10mm以下であれば、強度が優れる。
【0027】
また補強ネット5の開口間隔は0.3~5mmが好ましく、さらに好ましくは1~3mmに設定される。0.3mm以上であれば、強度に優れ、5mm以下であれば、透明性を保持しやすい。
【0028】
なお、図2に示すように、補強ネット5の開口幅Hは、補強ネットを構成するフィルム間の開口部の幅を示し、補強ネットの縦方向、横方向における任意の場所でサンプリングし、平均値を求める。補強ネットの縦方向とは、補強ネットの長尺方向を、横方向とは、縦方向に対して直角方向をいう。また開口間隔Lは、開口部の間隔を示し、すなわちフィルムの幅とほぼ同じである。
【0029】
基材Aを貼り合せする方法として、ドライラミネート法、ウェットラミネート法、サーマルラミネート(熱融着ラミネート)法、押出ラミネート法、ホットメルトラミネート法が挙げられるが、接着剤が不要で、一工程で多層積層が出来るため加工性、経済性、環境性および透湿性を発揮させやすい点でサーマルラミネート法を用いることが好ましい。なお、積層する順番は、任意に設定することができる。
【0030】
基材Aの透湿性は、滑り止め層および粘着層の積層後に適度な透湿性が得られる点から、1000~10000g/m・24hであることが好ましい。
【0031】
また、基材Aの波長領域400~700nmの平均透過率は、墨出し視認性の面で、40%以上であることが好ましい。
【0032】
滑り止め層2は、基材Aの表面側(外側)に設けられ、野地養生シート施工時の安全性能を付与するためのものである。滑り止め層は、撥水性樹脂からなる。
【0033】
撥水性樹脂としては、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、炭化水素系樹脂、飽和フルオロアルキル基、アルキルシリル基、フルオロシリル基、長鎖アルキル基の官能基を有する樹脂類が挙げられ、前記樹脂類には、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、エポキシ系樹脂が挙げられる。これらの樹脂は単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。なかでも適度な離型性を有し、撥水性、安定性に優れる面から、飽和フルオロアルキル基、アルキルシリル基、フルオロシリル基、長鎖アルキル基の官能基を有する、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、エポキシ系樹脂が好ましい。
【0034】
滑り止め層2には、より滑り止め効果を発揮させるために添加材を付与することができ、例えば、微細な凹凸を形成できる無機系粉末、鉱物粉末、および不活性ガスを内包する熱膨張性マイクロカプセルや、摩擦抵抗を向上させる微粉末ゴム、ウレタンビーズ等が挙げられる。これらの添加材は単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。
【0035】
基材Aに対する滑り止め層2の面積は60~90%に設定され、好ましくは70~80%に設定される。面積を上記の範囲に設定することで、適度な滑り止め性能および透湿性を付与することができる。
【0036】
滑り止め層2の形成には、ロールコーティング法、グラビアコーティング法、リバースコーティング法、フレキソコーティング法などの公知の塗布方法が用いられる。塗布形状は、特に限定するものではなく格子状、斜線状、水玉状、網目状が挙げられる。
【0037】
また、塗布量は、滑り止め性能および透湿性の面で、1.0~5.0g/mが好ましく、さらに好ましくは1.5~3.0g/mである。
【0038】
粘着層6は、基材Aの裏面側(野地側)に設けられ、野地板養生シートの施工性を容易にするためのものである。
【0039】
粘着層6の素材としては、ポリエステル系、アクリル系、ポリウレタン系、塩化ビニル系が挙げられ、この群から選ばれる少なくとも1種からなる。なかでも、加工性、経済性、疎水性、安定性が良く、透明性もあり、粘着力を調整し易いアクリル系が好ましい。
【0040】
また、粘着層6に添加する架橋剤は、アクリル系の架橋基点であるヒドロキシル基、アミノ基、アミド基などと反応し易いイソシアネート系化合物、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、金属キレート化合物などが好ましい。なかでも、架橋速度が早いため養生時間が短く、粘着力の経時変化が起こりにくいイソシアネート系化合物、金属キレート系化合物が好ましい。
【0041】
基材Aに対する粘着層6の面積は、粘着力と強度の面から70~90%が好ましい。
【0042】
粘着層6の形成には、グラビアコーティング法、ドクターコーティング法、ロールコーティング法、フレキソコーティング法などの公知の塗布方法が用いられる。塗布される形状は、特に限定するものではなく格子状、斜線状、水玉状、網目状が挙げられる。
また、塗布量(固形分)は、強度と粘着力の面から、3.0~30.0g/mが好ましく、さらに好ましくは5.0~20.0g/mである。
【0043】
かくして、野地養生シート1は形成される。
【0044】
野地養生シート1の透湿性は、JIS A 6111 7.2に準じて求められ、100~5000g/m・24hに設定される。透湿性が100g/m・24h未満のとき、少量の水の浸入であっても野地が乾かない。また、透湿性が5000g/m・24hを超える場合、過剰に湿気を通すため外気中の湿気を通し、野地が吸湿してしまう。
【0045】
野地養生シート1の引張強度は、JIS A 6111 7.3 a)に準じて求められ、縦方向で200N/5cm以上、横方向で150N/5cm以上に設定される。縦方向で200N/5cm未満、横方向で150N/5cm未満だと、強度が不十分である。
本願における野地養生シート1において、縦方向とは、連続的に製造される野地養生シート1の製造方向(長尺方向)を、横方向とは、縦方向に対して直角方向をいう。
【0046】
野地養生シート1の耐水圧は、JIS A 6111 7.5 耐水度B法に準じて求められ、10kPa以上に設定される。10kPa未満のとき、台風やゲリラ豪雨の際に充分な防水性を発揮し難くなる。
【0047】
また、野地養生シート1の撥水性は、JIS L 1092 7.3 雨試験A法に準じて7.3.4.2の評価基準を基に求められ、雨に濡れたときの滑り止め性能の面から3級以上が好ましい。
【0048】
また、野地養生シート1の粘着力は、JIS Z 0237 10.4.1方法1:ステンレス試験板に対する180°引きはがし粘着力に準じて求められ、滑り止め性能の面から、1.5N/25mm以上が好ましい。
【0049】
また、野地養生シート1の波長領域400~700nmの平均透過率は、墨出し視認性の面から、40%以上であることが好ましい。なお、基材Aに滑り止め層および粘着層を積層した野地養生シートの平均透過率を、基材Aの平均透過率に比較して向上させるまたは低下させないように層の材料および積層方法を調整することができる。例えば、滑り止め層になる樹脂を多孔フィルムの補強ネット側に積層した場合、補強ネットの開口部を通過した樹脂が多孔フィルムに浸み込むことにより、多孔フィルム表面の凹部分が樹脂で埋まるため、多孔フィルムの表面に存在する微細な凹凸による光の乱反射が軽減され平均透過率が高くなることから、墨出し視認性を向上させることができる。
【0050】
また、野地養生シート1の総厚みは、強度と透明性の面で80~400μmであることが好ましい。
【実施例
【0051】
以下に述べる実施例、比較例によって本発明の野地養生シートを具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例及び比較例における物性および評価は、以下の方法により行った。
【0052】
〔1〕透湿性
【0053】
JIS A 6111 7.2に準じて、基材A及び野地養生シートを測定した。
【0054】
〔2〕引張強さ
【0055】
JIS A 6111 7.3 a)に準じて野地養生シートを測定した。
【0056】
〔3〕耐水圧
JIS A 6111 7.5 耐水度B法に準じて野地養生シートを測定した。
【0057】
〔4〕撥水性
JIS L 1092 7.3 雨試験A法に準じて7.3.4.2の評価基準を基に野地養生シートの撥水度を測定した。
【0058】
〔5〕粘着力
JIS Z 0237 10.4.1方法1:ステンレス試験板に対する180°引きはがし粘着力に準拠し、野地養生シートの粘着力を測定した。
【0059】
〔6〕平均透過率
赤外線分光光度計(株式会社島津製作所製 UVPC-3100)を用いて、基材A及び野地養生シートの波長領域400~700nmにおける平均透過率を測定した。
【0060】
〔7〕滑り止め性
5寸勾配(角度30.9638°)の屋根模型を作製し、日本農林協会規格の針葉樹構造用合板の野地面に野地養生シートを張り付けた後、表面を安心して歩行できるか確認し、以下の評価基準で滑り止め性を評価した。滑り止め性は、表面が乾燥状態と湿潤状態で行った。
評価基準
○:滑り難く、安全に歩行できる
△:少し滑るが、歩行できる
×:滑り易く、危険である
【0061】
〔8〕野地板との密着性
5寸勾配(角度30.9638°)の屋根模型を作製し、日本農林協会規格の針葉樹構造用合板の野地面に野地養生シートを張り付けた後、表面を10往復歩行して野地面とシートとの剥れ状態を確認し、以下の評価基準で評価した。
評価基準
○:剥れが認められない
×:剥れが認められる
【0062】
〔9〕破れ易さ
5寸勾配(角度30.9638°)の屋根模型を作製し、日本農林協会規格の針葉樹構造用合板の野地板面に野地養生シートを張り付けた後、表面を10往復歩行し、シートの破れ状態を確認し、以下の評価基準で評価した。
評価基準
○:破れず穴も開かない
×:破れが発生し穴が開く
【0063】
〔10〕墨出し視認性
5寸勾配(角度30.9638°)の屋根模型を作製し、日本農林協会規格の針葉樹構造用合板の野地面に墨出しを行い、野地養生シートを張り付けた後、墨出しが視認できるか確認し、以下の評価基準で評価した。
評価基準
○:視認できる
△:若干視認できるが、見にくい
×:視認できない
【0064】
[実施例1]
不織布A(ユニチカ株式会社製、エルベスT0203WDO、芯ポリエステル系樹脂、鞘ポリエチレン系樹脂の芯鞘構造、目付20g/m)と、多孔フィルムA(大和川ポリマー株式会社製、YP2618、厚み18μm、ポリエチレン系樹脂)と、補強ネットA(積水フィルム株式会社製、ソフHN55、厚み60μm、開口幅5mm、開口間隔1.5mm、ポリエチレン系樹脂)とを、この順にサーマルラミネート法で積層接着させた基材を得た。
次に、滑り止め層を形成するため、撥水性樹脂(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製、ピーロイル1050、長鎖アルキル基ポリビニルアルコール系樹脂)100部に対し、熱膨張性マイクロカプセル(松本油脂製薬株式会社製、マツモトマイクロスフェアー、F-36D*)を3部添加し調液した樹脂を、グラビアコーティング法によって、基材の不織布面側に、塗布量(固形分)が2.7g/mになるように塗布した。なお、基材に対する滑り止め層の面積は80%であった。
また、粘着層を形成するため、アクリル系粘着樹脂(サイデン化学株式会社製、サイビノールAT-193、アクリル系樹脂)100部に対し架橋剤(サイデン化学株式会社製、硬化剤AL、金属キレート化合物)1.4部添加した粘着剤を、グラビアコーティング法によって、基材の補強ネット側に、塗布量が5.4g/mになるように塗布し、図1のような野地養生シートを得た。なお、基材に対する粘着層の面積は80%であった。評価結果を表1に示す。
【0065】
[実施例2]
不織布を不織布B(ユニチカ株式会社製、エルベスT0403WDO、芯ポリエステル系樹脂、鞘ポリエチレン系樹脂の芯鞘構造、目付40g/m)にした以外は、実施例1と同様に加工して、野地養生シートを得た。評価結果を表1に示す。
【0066】
[実施例3]
多孔フィルムを多孔フィルムB(大和川ポリマー株式会社製、YP4400、厚み40μm、ポリエチレン系樹脂)にした以外は、実施例1と同様に加工して、野地養生シートを得た。評価結果を表1に示す。
【0067】
[実施例4]
補強ネットを補強ネットB(積水フィルム株式会社製、ソフTS515、厚み60μm、開口幅10mm、開口間隔1.5mm、ポリエチレン系樹脂)にした以外は、実施例1と同様に加工して、野地養生シートを得た。評価結果を表1に示す。
【0068】
[実施例5]
基材に対する滑り止め層の面積を60%、塗布量を2.1g/mにし、基材に対する粘着層の面積を70%、塗布量を4.2g/mにした以外は、実施例1と同様に加工して、野地養生シートを得た。評価結果を表1に示す。
【0069】
[実施例6]
基材に対する粘着層の塗布面積を90%、塗布量を6.2g/mにした以外は、実施例1と同様に加工して、野地養生シートを得た。評価結果を表1に示す。
【0070】
[実施例7]
滑り止め層と粘着層の位置を入れ替え、基材の不織布面側に粘着層を、補強ネット層側に滑り止め層を塗布した以外は、実施例1と同様に加工して、野地養生シートを得た。評価結果を表1に示す。
【0071】
[比較例1]
滑り止め層を形成しなかった以外は、実施例1と同様に加工して、野地養生シートを得た。評価結果を表1に示す。
【0072】
[比較例2]
滑り止め層の樹脂を非撥水アクリル系樹脂(根上工業株式会社製、パラクロンW-248E)にした以外は、実施例1と同様に加工して、野地養生シートを得た。評価結果を表1に示す。
【0073】
[比較例3]
基材に対する滑り止め層の面積を100%にした以外は、実施例1と同様に加工して、野地養生シートを得た。評価結果を表1に示す。
【0074】
[比較例4]
基材に対する粘着層の面積を50%にした以外は、実施例1と同様に加工して、野地養生シートを得た。評価結果を表1に示す。
【0075】
[比較例5]
補強ネットを積層しなかった以外は、実施例1と同様に加工して、野地養生シートを得た。評価結果を表1に示す。
【0076】
[比較例6]
不織布を不織布C(ユニチカ株式会社製、エルベスIIT0503WEO、芯ポリエステル系樹脂、鞘ポリエチレン系樹脂の芯鞘構造、目付50g/m)にし、多孔フィルムを多孔フィルムC(大和川ポリマー株式会社製、YP4000、厚み30μm、ポリエチレン系樹脂)にし、補強ネットを積層しなかった以外は、実施例1と同様に加工して、野地養生シートを得た。評価結果を表1に示す。
【0077】
【表1】
【0078】
表1に示すように、実施例に係る野地養生シートは、いずれも優れていた。
【0079】
これに対して、比較例に係る野地養生シートはいずれかの評価が不良であり、比較例1、2は表面が滑りやすく、比較例3は透湿性が不良であり、比較例4は、野地板との密着性が不良であり破れ易さの試験ができない状態であった。また、比較例5は強度が不足し破れ易く、比較例6は墨出し視認性が不良であった。
【符号の説明】
【0080】
1 野地養生シート
2 滑り止め層
3 不織布
4 多孔フィルム
5 補強ネット
6 粘着層
7 開口部
A 基材
H 開口幅
L 開口間隔
図1
図2