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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-17
(45)【発行日】2022-02-28
(54)【発明の名称】パッキン
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/06 20060101AFI20220218BHJP
【FI】
F16J15/06 H
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017099385
(22)【出願日】2017-05-19
(65)【公開番号】P2018194113
(43)【公開日】2018-12-06
【審査請求日】2020-05-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000144810
【氏名又は名称】株式会社山田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100080090
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 邦男
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 友和
【審査官】保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-080167(JP,A)
【文献】実開昭55-050362(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J15/00-15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に環状としてなるパッキン本体と内側倒れ防止部と外側倒れ防止部と外れ止め部とを備え、前記パッキン本体の幅方向の外周側には適宜の間隔をおいて複数の前記外側倒れ防止部が形成され、複数の該外側倒れ防止部が所定数連続する範囲内において内周側には1個の前記内側倒れ防止部が形成され、1個の該内側倒れ防止部と複数の前記外側倒れ防止部とが組として構成され、該組が前記パッキン本体の長手方向に多数設けられてなると共に、前記外れ止め部は前記パッキン本体の幅方向両側に設けられ、長手方向に沿う他の領域と比較して相対的に大きい正の圧力を受ける高圧受領域内に位置する前記組における前記外側倒れ防止部の個数の割合は他の領域の前記組における前記外側倒れ防止部の個数の割合よりも高くする構成とし、前記パッキン本体の長手方向に沿って、前記内側倒れ防止部とは同一の位置とはならないように前記外側倒れ防止部が設けられてなることを特徴とするパッキン。
【請求項2】
長手方向に環状としてなるパッキン本体と内側倒れ防止部と外側倒れ防止部と外れ止め部とを備え、前記パッキン本体の幅方向の外周側には適宜の間隔をおいて複数の前記外側倒れ防止部が形成され、複数の該外側倒れ防止部が所定数連続する範囲内において内周側には1個の前記内側倒れ防止部が形成され、1個の該内側倒れ防止部と複数の前記外側倒れ防止部とが組として構成され、該組が前記パッキン本体の長手方向に多数設けられてなると共に、前記外れ止め部は前記パッキン本体の幅方向両側に設けられ、長手方向に沿う他の領域と比較して相対的に大きい負の圧力を受ける低圧受領域内に位置する前記組における前記外側倒れ防止部の個数の割合は他の領域の前記組における前記外側倒れ防止部の個数の割合よりも低くする構成とし、前記パッキン本体の長手方向に沿って、前記内側倒れ防止部とは同一の位置とはならないように前記外側倒れ防止部が設けられてなることを特徴とするパッキン。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のパッキンにおいて、幅方向両側の前記外れ止め部は、前記組の間に位置してなることを特徴とするパッキン。
【請求項4】
請求項2に記載のパッキンにおいて、負の前記低圧受領域内での各前記組における前記外側倒れ防止部の個数は2としてなることを特徴とするパッキン。
【請求項5】
請求項1,2,3又は4の何れか1項に記載のパッキンにおいて、前記パッキン本体は、長手方向に直交する断面の高さ方向で且つ頂部に向かうに従い次第に狭い幅となる上部と該上部の下端と同等幅以上となる下部とを有し、前記内側倒れ防止部と前記外側倒れ防止部とは前記上部に形成され、前記外れ止め部は前記下部に形成されてなることを特徴とするパッキン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプ,エンジン等の機器における密封性を要するハウジングで且つハウジング本体とカバー板との何れかに溝が設けられ、低い充填率でありながら溝からの脱落防止と倒れ防止ができ、耐久性及び信頼性に優れたパッキンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ポンプ,エンジン等の機器のハウジングを構成するハウジング本体とカバー板において、密封性を必要とする部分ではOリング,シール材等の密封材が多く使用されている。この密封材は、前記ハウジング本体やカバー板等の構成部材の接合面の間に装着するために、ハウジング本体又はカバー板の何れか一方に溝が形成されて、該溝に密封材が挿入配置される構造としたものである。
【0003】
溝に挿入配置された密封材は、ハウジング本体とカバー板とを組み付ける作業時や、或いは別の工場等への輸送中に、溝から簡単に外れたり、脱落しないようにする目的のために、密封材に突起が形成されたものが存在し、溝に嵌め込んだ状態で、密封材が溝から脱落しない構造としたものが存在する。このような技術として代表的なものが、下記特許文献1に開示され、ハウジング本体の組付け作業時において密封材が溝から脱落することによる作業の非効率性という問題点は解決されている。なお、特許文献1では、密封材はガスケットと称されており、以下、特許文献1の説明ではガスケットを使用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-80167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ガスケットの機器への装着については、さらに別の問題点が存在する。この問題点とはガスケットの機器の組付け時において、溝にガスケットを装着する時に、溝に挿入配置されたガスケットの前記溝から突出する部分つまり、カバー板に密着する部分が、該カバー板にて押し付けられるときに、ガスケットの長手方向に直交する断面の頂部付近が内方又は外方に倒れてしまうこともある。
【0006】
そのために、ガスケットは密封性が損なわれるように変形してしまい所望の密封性能が得られないことも十分に有りうる。特許文献1では、このような問題点を解決するために、ガスケットが倒れるように形状変化するのを防止するために、ガスケット本体の幅方向両側にそれぞれ突設された倒れ防止用突起部と呼ばれる倒れを防止する突起を設けたことが記載されている。
【0007】
特許文献1において、倒れ防止用突起部は、ガスケット本体の幅方向両側の同一箇所、或いは外周面にのみ又は内周面にのみに設けたり、外周面および内周面のそれぞれに交互に設けられている。このように、ガスケットに倒れ防止用突起部が設けられることで、ガスケットの倒れによる不良な変形を防止することができる。
【0008】
しかし、ガスケットに倒れ防止用突起部が設けられることにより、ガスケットは倒れ防止用突起部の断面積が増加し、溝に挿入したときの溝に対するガスケットの充填率が増加することになる。つまり、ガスケットの断面が溝の断面に対して占める割合が高くなる。このように充填率が高くなると、ガスケットが溝からはみ出そうとする量が多くなる。このようになると、新たな問題が生じる。
【0009】
ガスケットが使用されるポンプ等の流体を扱う機器において、内部の流体の圧力は一般的にハウジングの内方から外方に向かって作用することが多い。つまり、ガスケットにはハウジングの内方から外方に向かう方向に圧力を受けるものである。
【0010】
しかしながら、エンジン,ポンプ,ミッション等の密封性を要する機器では、水分又はオイル等の流体を扱い又は制御するものである。そして、機器の作動中に内部の流体の圧力は増減することがある。特に、ポンプでは、流体の圧力が変化し、その増減における差が大きくなり易い。そのために、流体の一部がハウジング本体とカバー板との間の微小な隙間から漏れ、その圧力がガスケットにかかることになる。
【0011】
ガスケットにかかる流体の圧力は、多くの時間ではハウジングの内方から外方に向かって作用するものであり、ガスケットの長手方向に直交する断面で且つ圧力のかかる上方箇所は、多くの時間では外方に向かって押圧され、上方部分が倒れるように傾斜する。特許文献1のように充填率が高いと、ガスケットの一部が溝からハウジング本体とカバー板の僅かな隙間に食い込む恐れが生じる。そして、このようなことが連続して起こると、ガスケットが劣化し、良好な密封性が保持できなくなる。そこで、本発明が解決しようとする技術的課題は、以上に述べたガスケットにおける欠点を解決することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そこで、発明者は、前記課題を解決すべく、鋭意,研究を重ねた結果、請求項1の発明を、長手方向に環状としてなるパッキン本体と内側倒れ防止部と外側倒れ防止部と外れ止め部とを備え、前記パッキン本体の幅方向の外周側には適宜の間隔をおいて複数の前記外側倒れ防止部が形成され、複数の該外側倒れ防止部が所定数連続する範囲内において内周側には1個の前記内側倒れ防止部が形成され、1個の該内側倒れ防止部と複数の前記外側倒れ防止部とが組として構成され、該組が前記パッキン本体の長手方向に多数設けられてなると共に、前記外れ止め部は前記パッキン本体の幅方向両側に設けられ、長手方向に沿う他の領域と比較して相対的に大きい正の圧力を受ける高圧受領域内に位置する前記組における前記外側倒れ防止部の個数の割合は他の領域の前記組における前記外側倒れ防止部の個数の割合よりも高くする構成とし、前記パッキン本体の長手方向に沿って、前記内側倒れ防止部とは同一の位置とはならないように前記外側倒れ防止部が設けられてなるパッキンとしたことにより、上記課題を解決した。
【0013】
請求項2の発明を、長手方向に環状としてなるパッキン本体と内側倒れ防止部と外側倒れ防止部と外れ止め部とを備え、前記パッキン本体の幅方向の外周側には適宜の間隔をおいて複数の前記外側倒れ防止部が形成され、複数の該外側倒れ防止部が所定数連続する範囲内において内周側には1個の前記内側倒れ防止部が形成され、1個の該内側倒れ防止部と複数の前記外側倒れ防止部とが組として構成され、該組が前記パッキン本体の長手方向に多数設けられてなると共に、前記外れ止め部は前記パッキン本体の幅方向両側に設けられ、長手方向に沿う他の領域と比較して相対的に大きい負の圧力を受ける低圧受領域内に位置する前記組における前記外側倒れ防止部の個数の割合は他の領域の前記組における前記外側倒れ防止部の個数の割合よりも低くする構成とし、前記パッキン本体の長手方向に沿って、前記内側倒れ防止部とは同一の位置とはならないように前記外側倒れ防止部が設けられてなるパッキンとしたことにより、上記課題を解決した。
【0014】
請求項3の発明を、請求項1又は2に記載のパッキンにおいて、幅方向両側の前記外れ止め部は、前記組の間に位置してなるパッキンとしたことにより、上記課題を解決した。
【0015】
請求項4の発明を、請求項2に記載のパッキンにおいて、負の前記低圧受領域内での各前記組における前記外側倒れ防止部の個数は2としてなるパッキンとしたことにより、上記課題を解決した。
【0017】
請求項5の発明を、請求項1,2,3又は4の何れか1項に記載のパッキンにおいて、前記パッキン本体は、長手方向に直交する断面の高さ方向で且つ頂部に向かうに従い次第に狭い幅となる上部と該上部の下端と同等幅以上となる下部とを有し、前記内側倒れ防止部と前記外側倒れ防止部とは前記上部に形成され、前記外れ止め部は前記下部に形成されてなるパッキンとしたことにより、上記課題を解決した。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の発明では、エンジン,ポンプ,ミッション等で、且つ水,オイル等が充填される密封性を必要とする機器のハウジングにおいて、本発明のパッキンは、該パッキンを挿入する溝に対し低い充填率で挿入することができ、しかも少数の突起状の外れ止め部にて溝からの脱落を防止できる。さらに、機器作動時において内部の流体の圧力がパッキンにかかっても、内側倒れ防止部と外側倒れ防止部の組により、これら少数の突起にてパッキンの倒れを防止でき、極めて良好な密封性能を得ることができる。
【0019】
また、内部の流体の圧力は正の圧力となることが多いため、内側倒れ防止部よりも外側倒れ防止部の数を多くしている。したがって、本発明のパッキンは、優れた耐久性を有するものである。さらに、前記パッキン本体は環状としたことにより、機器のハウジングの外部との密封を必要とする部位を包囲するように装着し易いものにできる。
【0022】
さらに、請求項1の発明では、パッキンは、長手方向に沿う他の領域と比較して相対的に大きい正の圧力を受ける高圧受領域内に位置する前記組における前記外側倒れ防止部の個数の割合は他の領域の前記組における前記外側倒れ防止部の個数の割合よりも高くする構成としたことにより、パッキンの高圧受領域ではパッキンの他の領域の組における外側倒れ防止部の数よりも多数の外側倒れ防止部を有することとなり、特にハウジングの内方から外方に向かう圧力に対して倒れを防止できる。
【0023】
請求項2の発明では、パッキンは、長手方向に沿う他の領域と比較して相対的に大きい負の圧力を受ける低圧受領域内に位置する前記組における前記外側倒れ防止部の個数の割合は他の領域の前記組における前記外側倒れ防止部の個数の割合よりも低くする構成としたことにより、パッキンの低圧受領域内では、特にハウジングの外方から内方に向かう圧力に対して倒れを防止できる。
【0024】
請求項3の発明では、幅方向両側の前記外れ止め部は、前記組の間に位置してなるパッキンとしたことにより、内側倒れ防止部と外側倒れ防止部とから構成される組と、外れ止め部とがパッキン本体の長手方向において同一位置に揃うことがない。そのために、パッキンを溝に挿入する際に、内側倒れ防止部と外側倒れ防止部と外れ止め部とがパッキンの長手方向において同一箇所にならないため、長手方向のどの箇所においても充填率も高くならず、パッキンの溝からのはみ出しを防止できる。請求項4の発明では、組における外側倒れ防止部の個数を2としたことで、前記組における内側倒れ防止部と外側倒れ防止部との個数の比率をパッキンの長手方向の何れの箇所においても1対2としたものである。したがって、1個の内側倒れ防止部と、2個の外側倒れ防止部との位置関係は三角形を構成することとなる。
【0025】
これによって、流体を扱う密封性を要する機器のハウジングにおいて、その内部の流体により、ハウジングの内方側から外方側に向かってかかる圧力を、パッキンの長手方向に沿って設けられた各組の2個の外側倒れ防止部が受け止めると共に、2個の外側倒れ防止部の間に位置する内側倒れ防止部が補助することとなり、極めてバランスの取れた反力が作用してパッキンの上部の倒れを防止して、良好な密封性を維持できる。
【0026】
また、パッキンにおいて、1個の内側倒れ防止部と、2個の外側倒れ防止部とを1つの組としてまとめたことにより、パッキン全体の外側倒れ防止部と内側倒れ防止部との個数を少なくでき、パッキンを溝に挿入配置するときでも、パッキンの溝に対する断面積の割合を少なくすること、つまり充填率を小さくできる。
【0027】
よって、パッキンがハウジング内の流体から受ける圧力の影響を少なくし、且つ1個の内側倒れ防止部と、2個の外側倒れ防止部による組がパッキン上方部分の倒れを防止することができる。さらに、全体的に内側倒れ防止部と外側倒れ防止部との個数を少なくすることで、パッキンの溝への挿入作業を容易にすることと、倒れ防止機能を両立することができる。
【0029】
請求項5の発明では、パッキン本体は、長手方向に直交する断面の高さ方向で且つ頂部に向かうに従い次第に狭い幅となる上部と該上部の下端と同等幅以上となる下部とを有し、前記内側倒れ防止部と前記外側倒れ防止部は前記上部に形成され、前記外れ止め部は前記下部に形成される構成としたことにより、機器のハウジング又はカバー板の何れか一方に形成された溝に本発明のパッキンの下部から上部に向かって挿入されるように配置することにより、本発明のパッキンは、機器内の溝に対して充填率を低く抑えることができ、極めて安定した状態で設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】(A)は本発明におけるパッキンの平面図、(B)は(A)の(α)部拡大図、(C)は(B)のY1-Y1矢視拡大断面図、(D)は(B)のY2-Y2矢視拡大断面図、(E)は(B)のY3-Y3矢視拡大断面図、(F)は(B)のY4-Y4矢視拡大断面図である。
図2】(A)は本発明におけるパッキンと溝との要部箇所拡大斜視図、(B)はパッキンの内側倒れ防止部箇所の拡大斜視図、(C)はパッキンの外れ止め部箇所の拡大斜視図である。
図3】(A)は本発明においてハウジングの溝に挿入されたパッキンの要部拡大平面図、(B)は(A)のY5-Y5矢視拡大断面図、(C)は(A)のY6-Y6矢視拡大断面図、(D)は(A)のY7-Y7矢視拡大断面図である。
図4】(A)は本発明のパッキンの第2実施形態の要部拡大平面図、(B)は本発明のパッキンの第2実施形態の要部拡大斜視図、(C)は本発明のパッキンの第3実施形態の要部拡大平面図、(D)は本発明のパッキンの第3実施形態の要部拡大斜視図である。
図5】(A)及び(B)は本発明のパッキンの組における内側倒れ防止部と両方の外側倒れ防止部との形状を異なるものとした構成の要部拡大平面図、(C)は本発明のパッキンの組における内側倒れ防止部と両方の外側倒れ防止部との間隔を異なる構成とした要部拡大平面図である。
図6】本発明のパッキンにおいて組における外側倒れ防止部の個数を3とした実施形態の要部平面図である。
図7】(A)は本発明のパッキンと内部構造を省略したハウジング本体の平面図、(B)は本発明のパッキンの内部構造を省略したハウジング本体の溝に装着しようとする縦断側面図、(C)はハウジング本体にカバー板を装着した状態の縦断側面図、(D)はハウジング本体の溝に挿入されたパッキンに流体の圧力が掛かる状態を示す拡大断面図である。
図8】(A)は本発明のパッキンの高圧受領域において組の外側倒れ防止部の間隔を狭めた実施形態の要部平面図、(B)は本発明のパッキンの高圧受領域及び低圧受領域における組の構成を示す実施形態の要部平面図、(C)は(B)の(β)部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本発明のパッキンAは、図1に示すように、無端且つ可撓性を有する環(ループ)形状としたものである。パッキンAは、ポンプ,エンジン,ミッション等の流体が通過する機器に装着されるものである。
【0032】
具体的には、前記機器のハウジングBは、ハウジング本体5とカバー板6にて構成され、ハウジング本体5又はカバー板6の何れか一方にパッキンAが挿入される溝7が形成されている(図7参照)。以下の説明では、溝7はハウジング本体5側に形成されているものとして説明する。
【0033】
パッキンAは、円弧形状,長方形状等の定形的な形状に限定されるものではなく、後述する機器のハウジングBにおける溝7の全体形状と略等しくなるように形成されるものである〔図7(A)参照〕。パッキンAは、パッキン本体1と内側倒れ防止部2と、外側倒れ防止部3と、外れ止め部4とを備えたものである。パッキン本体1は、前述したように、パッキンA全体の形状を構成するものであり、長手方向に細長としたものである〔図1(A)参照〕。ここで、パッキンAの長手方向とは、パッキンAを部分的に見た状態であり〔図1(B)参照〕、パッキンAを全体として見ると、その長手方向を周方向と称してもよい。
【0034】
そして、以下の説明において、環状のパッキンAにおいて、環状に連なる周方向を長手方向とする〔図1(A)参照〕。また、パッキンAの長手方向に直交する断面を基にして、その左右方向を幅方向とする。環状としたパッキン本体1では、内周側と外周側とが存在する〔図1(A)参照〕。パッキンAは、ハウジングBにおけるハウジング本体5とカバー板6との間に装着され、ハウジングBの内部の圧力を発生させるインペラやロータ等の主要構造部分を覆うもので、パッキン本体1の内周側は前記主要構造部分に近接した部位である〔図7(A)参照〕。従って、パッキン本体1の内周側は、ポンプ等の流体を扱うハウジングBでは、流体の圧力を受けることがある。
【0035】
該パッキン本体1の長手方向に直交する断面形状は、その高さ方向において上部11と下部12とから構成されている〔図1(C)乃至(F)参照〕。上部11は、パッキン本体1の長手方向に直交する断面の高さ方向(溝7の浅い側に対応)であり、頂部に向かうに従い次第に狭い幅となる形状である。つまり、上部11は、断面略三角山形状をなしている。
【0036】
該上部11の先端及びその付近つまり頂部付近は、断面略円弧状又は平坦状に形成されている。これは、後述するハウジングBのカバー板6に押圧されて押し潰された状態で、密着し易い構成にするためである。下部12は、長手方向に直交する断面が略方形状に形成されている。さらに、下部12は、具体的には、断面長方形状又は断面正方形状に形成されている。下部12の断面底部箇所の幅方向両角部は円弧状に形成されている〔図1(C)乃至(F)参照〕。
【0037】
下部12は、前記上部11の下端と同等幅以上となる幅方向寸法を有する。パッキン本体1の下部12は、ハウジングBのハウジング本体5又はカバー板6の何れか一方に形成される溝7に最初に挿入される部位である。パッキン本体1がハウジングBの溝7に挿入された状態で、上部11の一部は、溝7の開口上端面から上方(外方)に突出する。
【0038】
パッキン本体1の上部11が溝7の開口上端面から突出する部分は、カバー板6との接合面によって押圧され、押し潰されながらカバー板6の接合面に密着し、ハウジングBの密封状態を構成する。パッキン本体1の下部12の長手方向に直交する断面の幅方向寸法は、ハウジングBの溝7の幅方向寸法と同等以下とすることが好ましい。これは、パッキン本体1の溝7に対する充填率を低く抑えるためである。
【0039】
ここで、前記充填率とは、溝7の長手方向に直交する断面に対して、挿入されたパッキンAの長手方向に直交する断面が実質的に占める割合のことをいう。充填率は、100%の場合では、パッキン本体1の長手方向に直交する断面が、溝7の長手方向に直交する断面と等しいことを意味する。したがって、充填率が100%未満では、パッキンAが挿入された溝7内において、パッキン本体1と溝7との間に隙間が生じるものである。充填率が低いということは、パッキン本体1と溝7との間に生じる空隙が多くなることである。
【0040】
したがって、充填率を可能な限り低くすることにより、パッキンAの溝7への挿入が容易にできる。また、パッキンAの溝7への挿入が完了し、ハウジング本体5にカバー板6が装着されるときに、パッキンAのパッキン本体1の一部が溝7からはみ出すことがなく、よってハウジング本体5とカバー板6との僅かな隙間部分にパッキン本体1の一部が食い込むことを防止でき、パッキンAの損傷を防止すると共に、密封性を高く維持することができる。
【0041】
パッキン本体1の幅方向において内周側に複数の内側倒れ防止部2が形成され、外周側に内側倒れ防止部2の数よりも多数の外側倒れ防止部3が形成されている〔図1(A),(B)参照〕。内側倒れ防止部2及び外側倒れ防止部3は、パッキンAが溝7に挿入され、ハウジング本体5にカバー板6を装着するときに、パッキン本体1の上部11が、適正に押圧されないで、内側又は外側に傾いて押圧されてしまうことを防止する役目をなすものである。複数の外側倒れ防止部3は、パッキン本体1の長手方向に沿って適宜の間隔をおいて形成されている。
【0042】
多数の外側倒れ防止部3は、パッキンAにおけるパッキン本体1の幅方向の外周側に適宜の間隔をおいて形成されている。そして、多数の外側倒れ防止部3において、該外側倒れ防止部3が所定数連続する範囲内において、前記パッキン本体1の内周側には1個の内側倒れ防止部2が形成され、これら1個の内側倒れ防止部2と、複数の外側倒れ防止部3とが組A1として構成される。
【0043】
換言すると、組A1は、1個の内側倒れ防止部2と、所定数の複数の外側倒れ防止部3とからなる集合体である。外側倒れ防止部3の所定数連続する場合の所定数とは、2個以上である。さらに、組A1では、複数の前記外側倒れ防止部3は何れも、パッキン本体1の長手方向に沿って、1個の内側倒れ防止部2とは同一の位置とはならないように構成される。
【0044】
ただし、内側倒れ防止部2と外側倒れ防止部3とが長手方向に近接する状態でも組A1の構成に含まれる。つまり組A1において、内側倒れ防止部2の長手方向における位置とはずれた位置に外側倒れ防止部3が配置される。該組A1は、パッキン本体1の長手方向に沿って複数の組が設けられる〔図1(A),(B),図2(A),図3(A)参照〕。
【0045】
以下、組A1は、1個の内側倒れ防止部2と、2個の外側倒れ防止部3,3とした構成にて説明する。したがって、組A1における内側倒れ防止部2と外側倒れ防止部3との個数の比率は1対2となる。組A1において、1個の内側倒れ防止部2に対してパッキン本体1の長手方向に沿う両側に所定間隔を有して外側倒れ防止部3がそれぞれ配置される〔図3(A)参照〕。
【0046】
該組A1は、パッキン本体1の長手方向に沿って所定間隔をおいて複数設けられている〔図1(A),(B),図2(A),図3(A)参照〕。そして、パッキン本体1の長手方向に沿って隣接する組A1,A1間には、外れ止め部4,4が設けられる。両外れ止め部4,4は、パッキン本体1の幅方向両側に形成され、且つ両該外れ止め部4,4は、パッキン本体1の長手方向において同等位置に設けられる〔図1(A),(B),図2(A),図3(A)参照〕。
【0047】
つまり、パッキン本体1の長手方向に沿って組A1と外れ止め部4,4が交互に配置される状態となる〔図1(A)参照〕。組A1の総数は、パッキン本体1の全長に対応して増減する。両外れ止め部4,4がパッキン本体1の幅方向両側の同等位置に設けられる構成には、両側の外れ止め部4,4の位置が完全に一致せず、外れ止め部4の突起の長手方向の幅程度のずれも同等範囲に含まれる。また、パッキン本体1の幅方向両側の外れ止め部4,4は、隣接する組A1,A1間ではなく、組A1の範囲内に入り込んで設けられることもある。
【0048】
内側倒れ防止部2は、パッキン本体1の上部11の内周側に形成され、具体的には上部11の幅方向の内周側の傾斜面11aから幅方向外方に膨出するように形成される〔図1(B),(D),図3(A)参照〕。同様に、外側倒れ防止部3は、パッキン本体1の上部11の外周側に形成され、上部11の幅方向の外周側の傾斜面11aから幅方向外方に膨出するように形成される〔図1(B),(E),図3(A)参照〕。
【0049】
内側倒れ防止部2と外側倒れ防止部3とは、パッキン本体1の長手方向に直交する断面の両側において左右対称で同一形状となっている。内側倒れ防止部2と外側倒れ防止部3は、パッキン本体1の上部11において、上方から或いは平面的に見て円弧形状に形成される〔図1(C)乃至(F)参照〕。
【0050】
内側倒れ防止部2と外側倒れ防止部3は、上部11の下端箇所から、上部11の傾斜面11aに沿って、上部11の頂部よりも少し低い位置のところまで形成されている。内側倒れ防止部2と外側倒れ防止部3のそれぞれの上端は平坦面となっている。また、内側倒れ防止部2と外側倒れ防止部3とは、それぞれの上端の高さ方向の位置は同一であるが、これに限定されることなく異なるものであっても構わない。
【0051】
また、パッキンAが溝7に挿入配置された状態で、内側倒れ防止部2と外側倒れ防止部3の上端は、溝7内に収まるように設定される。つまり、パッキンAが溝7に適正に挿入された状態で、内側倒れ防止部2と外側倒れ防止部3の上端は、溝7の開口上端面よりも低い位置に存在することになる〔図3(C)参照〕。
【0052】
また、パッキン本体1の長手方向に直交する断面の幅方向における内側倒れ防止部2と外側倒れ防止部3の上端の幅方向に突出する量は、上部11下端における突出する量よりも少なく設定されることもある〔図1(D),(E)参照〕。つまり、パッキンAが溝7に挿入された状態で、内側倒れ防止部2と外側倒れ防止部3の下端部分とが溝7の側壁に当接又は近接し、上端部分とは隙間を有する状態となる。
【0053】
内側倒れ防止部2と外側倒れ防止部3の上方から又は平面的に見た形状が方形状としたタイプも存在する〔図4(A),(B)参照〕。ここで、方形状とは長方形,正方形又は台形が含まれる。さらに、内側倒れ防止部2と外側倒れ防止部3の上方から又は平面的に見た形状が三角形状に形成されたタイプも存在する〔図4(C),(D)参照〕。
【0054】
1つの組A1内において、以上に述べた内側倒れ防止部2と外側倒れ防止部3の形状を異なるものとしても構わない。具体的には、組A1において、内側倒れ防止部2は上方より見て円弧形状とし、外側倒れ防止部3は上方より見て方形状又は三角形状に形成されたものである〔図5(A)参照〕。或いは、組A1内において、内側倒れ防止部2は上方より見て方形状又は三角形状とし、前記外側倒れ防止部3は上方より見て円弧形状に形成されることもある〔図5(B)参照〕。
【0055】
また、組A1内において、内側倒れ防止部2と、該内側倒れ防止部2の長手方向両側に位置する外側倒れ防止部3,3とのそれぞれの間隔Lは、同一としたものである〔図3(A)参照〕。さらに、組A1において、内側倒れ防止部2と、該内側倒れ防止部2の長手方向両側に位置する一方の外側倒れ防止部3までの間隔L1と、他方の外側倒れ防止部3までの間隔L2を異ならせることもある〔図5(C)参照〕。
【0056】
外れ止め部4は、パッキン本体1の下部12に形成される〔図1(F),図2等参照〕。外れ止め部4は、下部12の長手方向に直交する断面の幅方向において、長手方向の同一箇所に形成される。外れ止め部4は、下部12の幅方向に略円弧状に膨出する形状に形成される。外れ止め部4は、パッキンAが溝7に挿入されるときに、両外れ止め部4,4が溝7の幅方向の両側壁によって押圧されて潰される部位であり、溝7に一旦挿入されたパッキンAが、組付け作業又は輸送過程で溝7から脱落することを防止する役目をなす〔図3(A)参照〕。
【0057】
各組A1において、1個の内側倒れ防止部2と、2個の外側倒れ防止部3,3は、その位置関係が三角形を構成する〔図3(A)の点線を参照〕。この内側倒れ防止部2と外側倒れ防止部3との三角形の位置関係により、組A1内における内側倒れ防止部2と外側倒れ防止部3とは、パッキンAの上部11の外周側への倒れを確実に防止することができる。
【0058】
エンジン,ポンプ,ミッション等の水,オイル等が充填される密封性を必要とする機器のハウジングBでは、該ハウジングB内の流体がハウジング本体5とカバー板6との合わさる面の僅かな隙間から、溝7に流入し、該溝7に挿入されたパッキンAに圧力Pがかかる。そこで、組A1における1個の内側倒れ防止部2と、2個の外側倒れ防止部3,3とが、その位置関係において三角形を構成することとなる。
【0059】
これによって、ハウジングBの内方側から外方側に向かってかかる圧力Pを、パッキンAの長手方向に沿って設けられた各組A1組の2個の外側倒れ防止部3,3に反力Fが作用してパッキンAの上部11の倒れを防止して、良好な密封性を維持できる〔図7(D)参照〕。逆にハウジングBの内方側が吸入負圧や低温による負圧となる事が、大気圧より高くなる頻度よりは低い頻度ではあるが起こりうる。そのため外側倒れ防止部3,3よりは少ない個数の内側倒れ防止部2にて上部11の倒れを防止する。
【0060】
また、パッキンAにおいて、1個の内側倒れ防止部2と、2個の外側倒れ防止部3,3とを1つの組A1としてまとめたことにより、パッキンA全体の内側倒れ防止部2と外側倒れ防止部3との個数を少なくでき、これによって、パッキンAを溝7に挿入配置するときでも、パッキンAの溝7に対する占有面積を少なくすること、つまり充填率を小さくできる。
【0061】
よって、パッキンAがハウジングB内の流体から受ける圧力の影響を少なくし、且つ1個の内側倒れ防止部2と、2個の外側倒れ防止部3による組A1がパッキンAの上部11の倒れを防止することができる。さらに全体的に内側倒れ防止部2と外側倒れ防止部3との個数を少なくすることで、パッキンAの溝7への挿入作業を容易にすることができる。
【0062】
ここで、ハウジングBの内方側の圧力が高くなる領域(吐出ポート近傍)では上部11がより外側に倒れ易くなるため組A1内において、外側倒れ防止部3の個数を3以上とすれば上部11の外側への倒れを防止できる。図6は、パッキンAの組A1において、外側倒れ防止部3の個数を3とした実施形態である。
【0063】
次に、ポンプ等の機器で、そのハウジングB内で水又はオイル等の流体が収容される室内において吸入及び吐出が行われる部分で、圧力が正負のいずれにおいても、高い箇所と低い箇所とが存在する。ここで、正の圧力とは大気圧より高く、ハウジングBの内部の流体による内方から外方に向かう圧力のことをいう。
【0064】
また、負の圧力とは大気圧より低く、ハウジングBの外方から内方に向かう圧力のことをいう。負の圧力がかかる原因としては寒冷地等で流体が冷えることで収縮し体積が減少する過程で生じるものである。また、ポンプでは吐出ポート付近でハウジングBの内方から外方に向かう圧力がかかることもある。
【0065】
ハウジングB内において、流体の圧力の正負の度合い又は程度が他の領域と比較して相対的に大きい圧力の箇所が存在する。つまり、流体の圧力が正負いずれにおいても、最も大きい箇所が存在する。そして、この相対的に大きい圧力の箇所によって、該ハウジングBに装着される本発明のパッキンAについても、その長手方向に沿ってかかる圧力が大きい領域と、小さい領域とが存在する。そのため、パッキンAにおいても、圧力が特に大きくかかる領域と、通常の圧力がかかる領域に応じて、それぞれの領域に含まれる組A1の構成を変化させることができる。この構成には、以下の実施形態が存在する。
【0066】
まず、パッキンAにおいて、長手方向に沿う他の領域と比較して相対的に大きい正の圧力の高圧受領域内に位置する組A1における外側倒れ防止部3のそれぞれの間隔は他の領域の組A1における外側倒れ防止部3のそれぞれの間隔よりも狭くされる構成としたものである〔図8(A)参照〕。ここで、前述したパッキンAにおける長手方向に沿う他の領域とは、正負いずれにおいても最も高い圧力が掛かる領域以外の領域と解釈してもよく、大気圧程度の圧力である。
【0067】
パッキンAにおける他の領域と比較して相対的に大きい正の圧力の領域の組A1における複数の外側倒れ防止部3の間隔を狭くすることにより、高圧受領域内の組A1自体が長手方向に短くなり、高圧受領域内により多くの数の組A1を設けることができ、高圧に対する抵抗力を強化できる。この実施形態では、高圧受領域における組A1の外側倒れ防止部3の数を3とし、その間隔は、他の領域の組A1における外側倒れ防止部3同士の間隔よりも狭く(小さく)した。この実施形態では、特にハウジングBの高圧受領域で、外側倒れ防止部3同士の間隔を狭くしたことで、極めて強固にパッキン本体1の上部11の倒れを防止できる。
【0068】
次に、パッキンAの長手方向に沿う高圧受領域内に位置する組A1における内側倒れ防止部2に対する外側倒れ防止部3の個数の割合(比率)は他の領域の組A1における内側倒れ防止部2に対する外側倒れ防止部3の個数の割合(比率)よりも高くする構成としたものである〔図8(B)参照〕。つまり、高圧受領域の組A1における外側倒れ防止部3の数を他の領域の組A1における外側倒れ防止部3の個数よりも多くした構成である。
【0069】
この実施形態では、高圧受領域内での各組A1における外側倒れ防止部3の数を4とし、他の領域における組A1の外側倒れ防止部3の数は3とした。この実施形態では、高圧受領域の組A1における外側倒れ防止部3の数が他の領域の組A1における外側倒れ防止部3の数よりも多くなり、ハウジングBの流体による内方から外方に向かう大きな圧力に対して、多くの外側倒れ防止部3が圧力に抵抗してパッキン本体1の上部11の倒れを確実に防止できる。
【0070】
次に、パッキンAの長手方向に沿う他の領域と比較して相対的に大きい負の低圧受領域内に位置する組A1における内側倒れ防止部2に対する外側倒れ防止部3の個数の割合(比率)は他の領域の組A1における内側倒れ防止部2に対する外側倒れ防止部3の個数の割合(比率)よりも低くしたものである〔図8(B),(C)参照〕。つまり、負の低圧受領域内の組A1における外側倒れ防止部3の数を他の領域の組A1における外側倒れ防止部3の個数よりも少なくした構成である。この実施形態では、負の低圧受領域内での各組A1における外側倒れ防止部3の数を2とし、他の領域における組A1の外側倒れ防止部3の数は3とした。
【0071】
この実施形態において、特に組A1の外側倒れ防止部3の長手方向における寸法を内側倒れ防止部2の長手方向における寸法より短くすることがある〔図8(C)参照〕。この実施形態では、外側倒れ防止部3の長手方向の長さを内側倒れ防止部2の長手方向の長さの略半分としたものである。この実施形態では、組A1の長手方向に沿う範囲の長さを小さくすることができ、したがって、負の低圧受領域内における組A1の配列数を実質的に増加でき、負圧によるパッキン本体1の上部11の内周側への倒れに対して内側倒れ防止部2が有効に働いて防止することができる。
【0072】
ハウジングBは、ハウジング本体5とカバー板6とから構成される(図7参照)。本発明において、ハウジングBは、ポンプ,エンジン,ミッション等の水,オイル等の流体を有する機器に使用されるものである。ハウジング本体5とカバー板6の何れか一方には、パッキンAが挿入配置される溝7が形成され、パッキンAと同等形状の環状に形成される〔図7(A)参照〕。
【0073】
溝7の幅方向長さは、パッキンAの下部12の長手方向に直交する断面の幅方向と略同等又は0.数ミリ大きい。また、下部12において幅方向両側の外れ止め部4,4を含めた幅方向寸法よりも小さく設定される。以上の説明において、溝7はハウジング本体5に形成されるものとしたが、溝7がカバー板6に形成されることもある。また、溝7は、底面部から開口上端面に向かうに従い幅方向寸法が次第に広くなるように両側壁面にテーパを有する逆台形状又は断面略有底V字形状に形成されている。
【符号の説明】
【0074】
A…パッキン、A1…組、1…パッキン本体、2…内側倒れ防止部、
3…外側倒れ防止部、4…外れ止め部B…ハウジング、5…ハウジング本体、
6…カバー板、7…溝。
図1
図2
図3
図4
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図8