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  • 特許-バイオロジカルインジケーターキット 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-17
(45)【発行日】2022-02-28
(54)【発明の名称】バイオロジカルインジケーターキット
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/34 20060101AFI20220218BHJP
   C12Q 1/22 20060101ALI20220218BHJP
   A61L 2/28 20060101ALI20220218BHJP
   A61L 2/07 20060101ALI20220218BHJP
   A61L 2/14 20060101ALI20220218BHJP
   A61L 2/20 20060101ALI20220218BHJP
   A61L 2/16 20060101ALI20220218BHJP
   C12N 1/20 20060101ALI20220218BHJP
   C12R 1/07 20060101ALN20220218BHJP
【FI】
C12M1/34 A
C12Q1/22
A61L2/28
A61L2/07
A61L2/14
A61L2/20 106
A61L2/16
C12N1/20 Z
C12N1/20 A
C12R1:07
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017110022
(22)【出願日】2017-06-02
(65)【公開番号】P2018201397
(43)【公開日】2018-12-27
【審査請求日】2020-05-28
(73)【特許権者】
【識別番号】512124119
【氏名又は名称】レーベン・ジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090527
【弁理士】
【氏名又は名称】舘野 千惠子
(72)【発明者】
【氏名】中村 勝己
【審査官】白井 美香保
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0230910(US,A1)
【文献】米国特許第04839291(US,A)
【文献】医療機器学,2016年,Vol.86, No.3,p.325-332
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M1/00-3/10
C12Q1/00-3/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAPLUS/BIOSIS/MEDLINE/EMBASE(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状構造体のバイオロジカルインジケーターと該環状構造体に貼付するシールとからなるバイオロジカルインジケーターキットであって、
前記バイオロジカルインジケーターは、フィルターを介して外部にガスを透過する孔を有するカプセルと、該カプセル内に収容された滅菌指標菌の保持担体及び液体培地のアンプルとを備え、
前記カプセルは、前記孔を有する蓋を含み、
前記シールは、滅菌処理後に前記蓋の外側に貼付され、前記蓋に貼付する面側が前記滅菌指標菌の発育を阻害しない粘着剤を含み、前記孔を覆って前記バイオロジカルインジケーターを密閉状態にするものであることを特徴とするバイオロジカルインジケーターキット。
【請求項2】
前記シールは、基材と、該基材上に形成されたシリコーン樹脂を含む粘着剤層とを有することを特徴とする請求項1 に記載のバイオロジカルインジケーターキット。
【請求項3】
前記バイオロジカルインジケーターは、滅菌指標菌を7日間培養して滅菌確認を行うためのものであることを特徴とする請求項1又は2に記載のバイオロジカルインジケーター
キット。
【請求項4】
前記滅菌指標菌が、Geobacillus stearothermophilus又はBacillus atrophaeusであることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のバイオロジカルインジケーターキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は滅菌処理の際に滅菌の指標に用いられるバイオロジカルインジケーターキットに関する。
【背景技術】
【0002】
医療機関や研究施設などで使用される各種の器具や装置等に対しては、すべての微生物を死滅させるための滅菌処理が行われる。
バイオロジカルインジケーターは、指標となる菌(細菌・真菌)を一定数担持する構造体であり、様々な微生物実験や、滅菌試験等で広く利用されており、その中には培地一体型のセルフコンテインド型と称されているものがある。このような培地一体型のセルフコンテインド型は、例えば24時間程度の短時間培養で滅菌効果の判定に用いられ、主に医療施設専用として用いられている。
このバイオロジカルインジケーターは、滅菌効果を判定したい物質と一緒に種々の滅菌処理を施した後、カプセル内でアンプルを割り、培地と滅菌指標菌の保持担体を接触させて一定期間培養する。その後、滅菌指標菌の生存を判定することにより、菌に対する滅菌処理の効果を評価するものである(例えば特許文献1参照)。これにより、当該バイオロジカルインジケーターが滅菌されていた場合、同時に滅菌処理した医療器具等の滅菌が成功したとみなす。
かかる培地一体型のバイオロジカルインジケーターは市販されており、例えば、Mesa Labs社製のEZTestが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-201466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
滅菌後の培養期間は、医療施設以外での使用に際しては指標菌の7日間の培養が推奨されている。
しかしながら上記バイオロジカルインジケーターは、外部にガスを透過する孔を有しているため、培養期間が長い場合、その孔から培地が蒸発してしまい、滅菌指標菌の培養条件が悪化し、正確な判定が出来なくなるという課題があった。
それに対して、孔に被せるキャップで培地の蒸発を防ぐことも考えられるが、完全な密閉状態を確保することが困難であり、正確な結果が得られにくい、再現性が悪いといった欠点があると共に、より簡便な方法で培地の蒸発を防ぐことのできるバイオロジカルインジケーターキットが求められていた。
【0005】
そこで、本発明は上記課題を鑑み、培地一体型(セルフコンテインド型)のバイオロジカルインジケーターを用いた滅菌評価において、滅菌指標菌の7日間培養であっても正確な評価を支障なく行うことのできるバイオロジカルインジケーターキットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、鋭意研究を重ねた結果、環状構造体に貼付する面側が滅菌指標菌の発育を阻害しない粘着剤を含み、バイオロジカルインジケーターを密閉状態にするシールを用いることで滅菌指標菌の7日間培養であっても正確な評価を支障なく行うことができることを見いだした。
【0007】
本発明は、環状構造体のバイオロジカルインジケーターと該環状構造体に貼付するシールとからなるバイオロジカルインジケーターキットであって、前記バイオロジカルインジケーターは、フィルターを介して外部にガスを透過する孔を有するカプセルと、該カプセル内に収容された滅菌指標菌の保持担体及び液体培地のアンプルとを備え、前記カプセルは、前記孔を有する蓋を含み、前記シールは、滅菌処理後に前記蓋の外側に貼付され、前記蓋に貼付する面側が前記滅菌指標菌の発育を阻害しない粘着剤を含み、前記孔を覆って前記バイオロジカルインジケーターを密閉状態にするものであることを特徴とするバイオロジカルインジケーターキットである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、培地一体型(セルフコンテインド型)のバイオロジカルインジケーターを用いた滅菌評価において、滅菌指標菌の7日間培養であっても正確な評価を支障なく行うことのできるバイオロジカルインジケーターキットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】バイオロジカルインジケーターの一例における分解図(A)、蓋の斜視図(B)及びフィルターの斜視図(C)である。
図2】バイオロジカルインジケーターにシールを貼付する場合の一例を説明するための図(A)~(C)である。
図3】バイオロジカルインジケーターを培養処理するための準備の一例を説明するための図(D)~(F)である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のバイオロジカルインジケーターキットについて説明する。
本発明のバイオロジカルインジケーターキットは、環状構造体のバイオロジカルインジケーターと該環状構造体に貼付するシールとからなるバイオロジカルインジケーターキットであって、前記バイオロジカルインジケーターは、フィルターを介して外部にガスを透過する孔を有するカプセルと、該カプセル内に収容された滅菌指標菌の保持担体及び液体培地のアンプルとを備え、前記シールは、前記環状構造体に貼付する面側が前記滅菌指標菌の発育を阻害しない粘着剤を含み、前記孔を覆って前記バイオロジカルインジケーターを密閉状態にするものである。
【0011】
図1(A)は培地一体型(セルフコンテインド型)のバイオロジカルインジケーターの一実施形態における分解図である。バイオロジカルインジケーター10は、孔が形成された蓋11と包装容器15からなるカプセル、及び該カプセル内に蓋側からフィルター12、液体培地のアンプル13、滅菌指標菌の保持担体14がこの順で収容された環状構造体である。
【0012】
前記カプセルは、本実施形態のように蓋11と包装容器15とからなるものであってもよいし、この他にも蓋と包装容器が一体となっていてもよい。蓋11はフィルター12を介して外部にガスを透過する孔を有しており、孔の大きさ、個数は特に制限されない。図1(B)に蓋11を別の角度から見た場合の斜視図を示す。図示されるように蓋11には孔が形成されている。
また、包装容器15は例えばプラスチック製である。
【0013】
本実施形態のバイオロジカルインジケーターでは、フィルター12を介して外部のガスが透過し、滅菌対象物と共に滅菌処理を行う際に、フィルター12を介して保持担体14に担持された滅菌指標菌が滅菌される。
図1(C)にフィルター12を別の角度から見た場合の斜視図を示す。本実施形態のフィルター12はアンプル13の上部を覆うような形状をしているが、これに限られるものではない。
【0014】
滅菌指標菌の保持担体14はカプセル内に収容されており、滅菌指標菌が担持されている。保持担体14における滅菌指標菌としては、例えばGeobacillus stearothermophilus、Bacillus atrophaeus等が挙げられる。これらは滅菌処理の条件等により適宜変更すればよい。
Geobacillus stearothermophilusは高圧蒸気滅菌、酸化プロピレン滅菌、過酸化水素低温プラズマ滅菌等に用いられ、培養温度としては例えば55~60℃である。
Bacillus atrophaeusはエチレンオキシド(EtO)ガス滅菌等に用いられ、培養温度としては例えば35~39℃である。
なお、本実施形態における保持担体14はアンプル13の底部に沿ってテーパー状となっているが、これに限られるものではなく、適宜変更することが可能である。
【0015】
アンプル13における液体培地としては、特に制限されるものではなく、適宜変更することが可能であり、公知のものを用いることができる。また、アンプル13中の液体培地の量は、滅菌指標菌の保持担体14に液体培地が接触すればよく、特に制限されるものではないが、保持担体14の全体が液体培地に浸かる量であることが好ましい。
【0016】
滅菌指標菌の培養処理は、滅菌対象物と共にバイオロジカルインジケーターを滅菌処理した後に、液体培地を有するアンプル13を割り、液体培地を滅菌指標菌の保持担体14に接触させて、培養処理を行う。十分に滅菌が行われていれば、保持担体14における滅菌指標菌は死滅しており、培地の色は変化しない。一方、滅菌処理が不十分である場合、保持担体14における滅菌指標菌は生存しており、培養処理を行った後、培地の色が変化する。これにより、滅菌試験の評価を行うことができる。
なお、上記のように培地の色の変化を目視することにより判定することが簡便であるが、この他にも滅菌指標菌の生存数を測定して評価を行うことも可能である。
【0017】
滅菌処理としては、適宜変更することが可能であり、例えば酸化プロピレン滅菌、過酸化水素低温プラズマ滅菌、EtOガス滅菌等が挙げられ、例えば蒸気BIER(Biological Indicator Evaluator Resistometer)やガスBIER等を用いて行うことができる。滅菌の温度としては、滅菌対象物や滅菌指標菌の種類等により適宜変更される。
培養処理としては、例えばインキュベーターを用いて行うことができる。培養の温度としては、滅菌対象物や滅菌指標菌の種類等により適宜変更される。
【0018】
本発明のバイオロジカルインジケーターとしては、例えば市販されているものとして、Mesa Labs社製のEZTestが挙げられる。
【0019】
本発明のバイオロジカルインジケーターキットは、上記バイオロジカルインジケーターとシールとからなるものである。前記シールは、環状構造体であるバイオロジカルインジケーターに貼付する面側が滅菌指標菌の発育を阻害しない粘着剤を含み、カプセルが有する孔を覆ってバイオロジカルインジケーターを密閉状態にするものである。
【0020】
図2(A)に、シールの一実施形態を示す。本実施形態のシール16は、図2(B)に示される孔を有するカプセルに対して、孔を覆うように貼付される(図2(C))。シール16の大きさとしては、孔を覆うことができればよく、適宜変更することが可能である。
【0021】
本発明のバイオロジカルインジケーターが有するシールは、滅菌指標菌の発育を阻害しない粘着剤により貼付されるため、仮に培養処理において蓋11の孔やフィルター12を介してシールの粘着剤の成分が入り込んだとしても、滅菌指標菌の発育を阻害することがない。また、シールの形態であることにより、孔を覆ってバイオロジカルインジケーターを密閉状態にすることができるとともに、孔を有するカプセルに対して貼付するだけでよいため、簡易に密閉状態にすることができる。これらのことから、本発明によれば滅菌指標菌の7日間培養であっても正確な評価を支障なく行うことができる。
【0022】
シール16は、基材と、該基材上に形成されたシリコーン樹脂を含む粘着剤層とを有することが好ましい。これにより、仮にバイオロジカルインジケーターの孔から粘着剤の成分が入り込んだ場合、極端にダメージを受けた滅菌指標菌に対しても発育を阻害しにくくなる。かかるシールとしては、市販品として例えば日東電工社製NO.9030ULからなるものが挙げられる。
基材としては、密閉性を確保できるものであれば特に制限されるものではなく、適宜変更することが可能であり、例えばポリテトラフルオロエチレンが挙げられる。
【0023】
本実施形態のバイオロジカルインジケーターキットは、滅菌指標菌を7日間培養して滅菌確認を行う場合に特に有用に用いられる。
例えば医療施設に医療器具等を販売するための米国の国家規格であるFDA 510(k)の認可を受けるには、7日間培養した時を100%とした場合、24時間で97%以上の確率で再現できることを証明する必要がある。医療施設以外に製品を販売する場合、滅菌後24時間の培養による検査では不十分であり、滅菌後7日間の培養による検査が推奨されている。また、その他の規格においても滅菌後7日間の培養による検査が求められている。
【0024】
上述したように本発明のバイオロジカルインジケーターキットによれば、バイオロジカルインジケーターを密閉状態にすることができ、滅菌指標菌を7日間培養して滅菌確認を行う場合においても、正確な評価を支障なく行うことができる。また、滅菌指標菌の発育を阻害しない粘着剤を含み、良好にバイオロジカルインジケーターを密閉状態にすることができるため、再現性の点においても良好な結果が得られる。
【0025】
次に、図2及び図3を参照して本発明のバイオロジカルインジケーターキットを用いて滅菌試験を行う場合の一例を説明する。なお、ここでは図1に示されるバイオロジカルインジケーターを用いた場合の例について説明する。
【0026】
本実施形態のバイオロジカルインジケーターを滅菌対象物と共に滅菌処理した後、常温とし、図2(A)に示されるシールを蓋の孔を覆うように貼付する(図2(B)、(C))。
次に、図3(D)~図3(F)のように、クラッシャー17のプラスチック容器部分にバイオロジカルインジケーターを入れ、容器の胴体部分を強く押して培地が入っているガラス製アンプルを割る。これにより、滅菌指標菌の保持担体が培地に接触する。この状態でインキュベーター等の装置の庫内に水平に縦置きし、培養処理を行う。培養処理の後、培地の色の変化を見て滅菌処理が十分であったかどうかを判定する。
【0027】
なお、一度に滅菌試験を行うバイオロジカルインジケーターの個数は特に制限されるものではない。庫内の場所によって滅菌の状態が異なる場合があるため、複数箇所に設置して滅菌処理を行い、試験してもよい。また、培養結果を正確に知る目的で、滅菌されていないインジケーター1本をコントロール用として常時使用(培養)しておくことが好ましい。
【実施例
【0028】
以下、本発明のバイオロジカルインジケーターキットを具体的な実施例を用いて詳細に説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【0029】
(試験例1A)
バイオロジカルインジケーターとして、図1に示されるようなMesa Labs社製のEZTest(EZS/6)25個を蒸気BIER(Biological Indicator Evaluator Resistometer)に入れ、121℃、16.42分、滅菌処理を行った。なお、滅菌指標菌として、Geobacillus stearothermophilus(ATCC#7953)を用いた。
【0030】
滅菌処理の後、常温まで戻した後、庫内から取り出した。次いで、図2(A)に示すシール(日東電工社製NO.9030UL)を図2(B)に示す蓋が有する孔を塞ぐように貼付した(図2(C))。次いで、図3(D)~図3(F)に示されるように、クラッシャーにシールを貼付したバイオロジカルインジケーターを入れ、容器の胴体部分を強く押して液体培地が入っているガラス製アンプルを割った。これにより、滅菌指標菌の保持担体に液体培地を接触させた。
【0031】
次いで、バイオロジカルインジケーターを水平に縦置きして、インキュベーターを用いて温度55~60℃で7日間培養を行った。7日間の培養の後、滅菌指標菌が発育しているか否かを調べた。菌が発育しているか否かの判定は、培地の色の変化を目視することにより行った。培地の色が変わらなければ菌が発育しておらず、滅菌が十分であると判断できる。
【0032】
(試験例1B)
再確認のため、試験例1Aと同じ試験を行った。
【0033】
(試験例1C)
試験例1Aの滅菌処理において、16.42分を6.82分にした以外は試験例1Aと同様の操作を行った。試験例1Aと同様に、7日間の培養の後、菌が発育しているか否かを調べた。
【0034】
(試験例1D)
再確認のため、試験例1Cと同じ試験を行った。
【0035】
得られた結果を表1に示す。表中、「発育しなかったユニット数」とあるのは、7日間の培養の後、滅菌指標菌が発育しなかったバイオロジカルインジケーターの個数を表す。
【0036】
【表1】
【0037】
Mesa Labs社製のEZTest(EZS/6)の保証書によれば、上記の滅菌処理において、6.82分は生存時間に該当し、16.42分は死滅時間に該当する。試験例1C、試験例1Dでは菌が発育しなかったユニット数は0、すなわち、全てのバイオロジカルインジケーターで7日間培養した後に菌が発育しており、滅菌処理が不十分であることを示す。
一方、試験例1A、試験例1Bでは保証書で提示されている死滅時間で滅菌処理を行っており、7日間培養した後にも滅菌指標菌が発育したバイオロジカルインジケーターはなかった。このことから、試験例1で用いたバイオロジカルインジケーターキットは、7日間の培養を正確な評価を支障なく行えるものであり、滅菌処理が十分であるか否かを調べるために有用であることを示している。
なお、試験例1A、試験例1Bでは、温度55~60℃で7間培養しても粘着剤のタレやベトベトがなく、シールを剥がした後も粘着剤が残らなかった。
【0038】
(比較試験例1)
試験例1Aの培養処理において、バイオロジカルインジケーターの孔に貼付したシールに代えて、孔をキャップで塞いだ以外は、試験例1Aと同様の処理を行った。しかし、比較試験例1では7日間の培養中に密閉状態を保つことができず、7日間の培養を正常に行うことができなかった。
【0039】
(試験例2A)
バイオロジカルインジケーターとして、Mesa Labs社製のEZTest(EZG/6)25個をエチレンオキシドBIER(100%エチレンオキシド)に入れ、121℃、32.88分、滅菌処理を行った。なお、滅菌指標菌として、Bacillus atrophaeus(ATCC#9372)を用いた。また、ここで用いたバイオロジカルインジケーターは図1と同様の構成となっている。
【0040】
滅菌処理の後、常温まで戻した後、庫内から取り出した。次いで、試験例1A、図2図3と同様にして孔を有する蓋にシール(日東電工社製NO.9030UL)を貼付し、インキュベーターを用いて温度35~39℃で7日間培養を行った。7日間の培養の後、菌が発育しているか否かを調べた。菌が発育しているか否かの判定は、試験例1Aと同様に、培地の色の変化の有無を目視することにより行った。
【0041】
(試験例2B)
再確認のため、試験例2Aと同じ試験を行った。
【0042】
(試験例2C)
試験例2Aの滅菌処理において、32.88分を13.99分にした以外は試験例2Aと同様の操作を行った。試験例2Aと同様に、7日間の培養の後、菌が発育しているか否かを調べた。
【0043】
(試験例2D)
再確認のため、試験例2Cと同じ試験を行った。
【0044】
得られた結果を表2に示す。表中、「発育しなかったユニット数」とあるのは、7日間の培養の後、滅菌指標菌が発育しなかったバイオロジカルインジケーターの個数を表す。
【0045】
【表2】
【0046】
Mesa Labs社製のEZTest(EZG/6)の保証書によれば、上記の滅菌処理において、13.99分は生存時間に該当し、32.88分は死滅時間に該当する。試験例2C、試験例2Dでは菌が発育しなかったユニット数は0、すなわち、全てのバイオロジカルインジケーターで7日間培養した後に菌が発育しており、滅菌処理が不十分であることを示す。
一方、試験例2A、試験例2Bでは保証書で提示されている死滅時間で滅菌処理を行っており、7日間培養した後にも滅菌指標菌が発育したバイオロジカルインジケーターはなかった。このことから、試験例2で用いたバイオロジカルインジケーターキットは、7日間の培養にも正確な評価を支障なく行えるものであり、滅菌処理が十分であるか否かを調べるために有用であることを示している。
【符号の説明】
【0047】
10 バイオロジカルインジケーター
11 蓋
12 フィルター
13 アンプル
14 滅菌指標菌の保持担体
15 包装容器
16 シール
17 クラッシャー
図1
図2
図3