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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-17
(45)【発行日】2022-02-28
(54)【発明の名称】アウトサイドハンドル装置
(51)【国際特許分類】
   E05B 77/06 20140101AFI20220218BHJP
   E05B 85/16 20140101ALI20220218BHJP
   B60J 5/04 20060101ALI20220218BHJP
【FI】
E05B77/06 A
E05B85/16 D
B60J5/04 H
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2017169291
(22)【出願日】2017-09-04
(65)【公開番号】P2019044485
(43)【公開日】2019-03-22
【審査請求日】2020-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000170598
【氏名又は名称】株式会社アルファ
(74)【代理人】
【識別番号】100145908
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 信雄
(74)【代理人】
【識別番号】100136711
【弁理士】
【氏名又は名称】益頭 正一
(72)【発明者】
【氏名】杉本 浩一朗
(72)【発明者】
【氏名】遠山 孝生
【審査官】藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-115544(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0059693(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00 - 85/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のサイドドアに設けられ、車両上下方向に延びハンドルの一端側に設けられた第1回転軸を中心にして他端側を操作可能な前記ハンドルの開動作時に前記サイドドアを解錠状態とすると共に、前記ハンドルをアウターパネルに対して面一に収納可能なフラッシュサーフェスタイプのアウトサイドハンドル装置であって、
前記車両上下方向及び車両前後方向を含む平面に交差して延びる第2回転軸を有し、前記ハンドルの開動作時に前記ハンドルの前記第1回転軸側の第1部材に当接して当該第2回転軸を中心に回動することにより前記サイドドアを解錠状態とするレバー部材と、
前記ハンドルの前記第1回転軸と同方向に延びる第3回転軸を有し、付勢手段によって前記第3回転軸を中心とする第1方向に付勢され、前記サイドドアに衝突負荷が生じたときに当該第3回転軸を中心に発生する前記第1方向の力を利用し、前記ハンドルの前記第1回転軸側の第2部材を押圧して前記ハンドルが開動作することを防止すると共に、前記サイドドアと反対側のサイドドアに衝突負荷が生じたときに当該第3回転軸を中心に発生する前記第1方向と反対方向となる第2方向の力によって前記第2部材に接触することなく空転するカウンターウェイトと、
を備えることを特徴とするアウトサイドハンドル装置。
【請求項2】
車両のサイドドアに設けられ、車両上下方向に延びる第1回転軸を中心にして操作可能なハンドルの開動作時に前記サイドドアを解錠状態とすると共に、前記ハンドルをアウターパネルに対して面一に収納可能なフラッシュサーフェスタイプのアウトサイドハンドル装置であって、
前記車両上下方向及び車両前後方向を含む平面に交差して延びる第2回転軸を有し、前記ハンドルの開動作時に前記ハンドルの前記第1回転軸側の第1部材に当接して当該第2回転軸を中心に回動することにより前記サイドドアを解錠状態とするレバー部材と、
前記ハンドルの前記第1回転軸と同方向に延びる第3回転軸を有し、付勢手段によって前記第3回転軸を中心とする第1方向に付勢され、前記サイドドアに衝突負荷が生じたときに当該第3回転軸を中心に発生する前記第1方向の力を利用し、前記ハンドルの前記第1回転軸側の第2部材を押圧して前記ハンドルが開動作することを防止すると共に、前記サイドドアと反対側のサイドドアに衝突負荷が生じたときに当該第3回転軸を中心に発生する前記第1方向と反対方向となる第2方向の力によって前記第2部材に接触することなく空転するカウンターウェイトと、を備え、
前記ハンドルは、前記ハンドルの開動作時における前半において前記第2部材が前記カウンターウェイトに押し付けられて前記カウンターウェイトを前記第3回転軸を中心に前記第2方向に回動させ、前記ハンドルの開動作時における後半において前記第2部材が前記カウンターウェイトに押し付けられることなく空転する
ことを特徴とするアウトサイドハンドル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アウトサイドハンドル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のサイドドアに設けられるアウトサイドハンドル装置においては、ハンドルが開操作されると、内部のレバー部材が回動してラッチ機構を解除し、サイドドアを解錠状態とする構成となっている。このようなアウトサイドハンドル装置は、車両側突時の衝撃でハンドルが開操作時と同じように動作してサイドドアが解錠状態となってしまう可能性がある。そこで、側突時にロック装置が解錠状態になってしまうことを防止すべく、慣性ストッパが設けられることがある。慣性ストッパは、車両側突時にストッパが所定領域に突出するものであって、この突出によってハンドルが開操作時と同じように動作してしまうことを規制し、サイドドアが解錠状態になってしまうことを防止するものである。
【0003】
しかしながら、慣性ストッパは、衝撃の検知に応じて動作するものであり、ストッパの動作タイミングに僅かな遅れがあった場合であっても、サイドドアの解錠を防止することができなくなってしまう。そこで、サイドドアが解錠状態になってしまうことを防止する手段として、カウンターウェイトを用いる技術も提案されている(例えば特許文献1参照)。カウンターウェイトは、車両側突時の衝撃でハンドルが開動作しないように、車両側突時に閉動作方向への力をハンドルに付与するためのバランス部材である。
【0004】
ここで、カウンターウェイトは、自身が設けられるサイドドアへの側突時に閉動作方向への力をハンドルに付与する。しかし、カウンターウェイトは、自身が設けられるサイドドアと反対側のサイドドアへの側突時において、ハンドルの開動作方向への力を付与してしまうおそれがある。そこで、自身が設けられるサイドドアと反対側のサイドドアへの側突時において、カウンターウェイトの力を空振りさせる空振り機構を備えたアウトサイドハンドル装置についても提案されている。
【0005】
このようなカウンターウェイトを備えるアウトサイドハンドル装置では、慣性ストッパのように衝撃の検知時に所定領域に突出する必要がなく、突出動作遅れによるサイドドアの解錠の問題を解消することができる。加えて空振り機構を備えるため、自身が設けられるサイドドアと反対側のサイドドアへの側突時においてサイドドアが解錠状態となってしまうことも防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2002-13319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本件発明者らは、ハンドルがサイドドアのアウターパネルに対して面一に収納可能なフラッシュサーフェスタイプのアウトサイドハンドル装置の研究を行っている。このようなフラッシュサーフェスタイプのアウトサイドハンドル装置は、その構成上、ハンドルが操作されてサイドドアを解錠状態とするためのレバー部材の回転軸が車幅方向に延びるものとなっている。
【0008】
このため、特許文献1に記載のいわゆるグリップタイプのハンドル装置に用いられるカウンターウェイトをフラッシュサーフェスタイプのアウトサイドハンドル装置に適用することが困難である。詳細に説明すると、グリップタイプのハンドル装置において、ハンドルはレバー部材を介してカウンターウェイトに連結されている。このため、グリップタイプのハンドル装置は、レバー部材とカウンターウェイトとの回転軸が共に車両前後方向となって一致しているものである。よって、このような回転軸が一致する構造をフラッシュサーフェスタイプに適用しようとすると、フラッシュサーフェスタイプではレバー部材の回転軸が車幅方向であることから、カウンターウェイトについても車幅方向に回転軸を有することとなる。
【0009】
しかしながら、カウンターウェイトは、車幅方向に回動してしまうハンドルとのバランスをとるための部材であることから、ハンドルと同様に車幅方向に回動する必要がある。よって、カウンターウェイトの回転軸が車幅方向となってしまうと、カウンターウェイトは車幅方向へ回動できずハンドルとのバランスをとることが困難となってしまう。
【0010】
なお、この問題は、レバー部材の回転軸が車幅方向から多少(例えば30°以下で)傾いていたとしても共通する問題である。
【0011】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、空振り機構を有するカウンターウェイトを適切に動作させることが可能なフラッシュサーフェスタイプのアウトサイドハンドル装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明に係るアウトサイドハンドル装置は、車両上下方向に延びる第1回転軸を中心にして操作可能なハンドルを有したフラッシュサーフェスタイプのアウトサイドハンドル装置であって、レバー部材と、カウンターウェイトとを備えている。レバー部材は、車両上下方向及び車両前後方向を含む平面に交差して延びる第2回転軸を有している。このレバー部材は、ハンドルの開動作時にハンドルの第1回転軸側の第1部材に当接して当該第2回転軸を中心に回動することによりサイドドアを解錠状態とする。カウンターウェイトは、ハンドルの第1回転軸と同方向に延びる第3回転軸を有している。このカウンターウェイトは、付勢手段によって第3回転軸を中心とする第1方向に付勢されている。サイドドアに衝突負荷が生じた場合、カウンターウェイトは、第3回転軸を中心に発生する第1方向の力を利用し、ハンドルの第1回転軸側の第2部材を押圧してハンドルが開動作することを防止する。一方、カウンターウェイトは、サイドドアと反対側のサイドドアに衝突負荷が生じた場合、当該第3回転軸を中心に発生する第1方向と反対方向となる第2方向の力によって第2部材に接触することなく空転する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、レバー部材はハンドルの開動作時にハンドルの第1部材に当接し、カウンターウェイトはサイドドアへの衝突負荷の発生時にハンドルの第2部材を押圧してハンドルが開動作することを防止する。このように、ハンドルは、レバー部材に当接可能であると共にカウンターウェイトにも接触可能となっており、双方に並列的に接触する構成となっている。このため、グリップタイプなどの、ハンドルがレバー部材を介してカウンターウェイトに連結される直列式の構成のようにレバー部材とカウンターウェイトとの回転軸を一致させる必要がなく、レバー部材については例えば車幅方向に延びる第2回転軸とでき、且つ、カウンターウェイトについてはハンドルと同様に車両上下方向に延びる第3回転軸とすることができる。特に、カウンターウェイトについてはハンドルの第1回転軸と同方向に延びる第3回転軸を有する構成とできることから、ハンドルとのバランスを取るように適切に動作させることができる。
【0014】
加えて、カウンターウェイトは、付勢手段によって第3回転軸を中心とする第1方向に付勢されているが、サイドドアと反対側のサイドドアに衝突負荷が生じたときに第1方向と反対方向の第2方向の力によって第2部材に接触することなく空転する。このため、反対側のサイドドアに衝突負荷が生じたときには、カウンターウェイトがハンドルを開動作させることなく、空振り機構についても適切に機能させることができる。
【0015】
従って、空振り機構を有するカウンターウェイトを適切に動作させることが可能なフラッシュサーフェスタイプのアウトサイドハンドル装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態に係るアウトサイドハンドル装置の詳細を示す正面図である。
図2図1に示すアウトサイドハンドル装置の背面図である。
図3図2に示す一部構成を示す分解図である。
図4図2に示したブラケットの背面図である。
図5図4のV-V断面図である。
図6】ハンドルが回動させられたときの状態を示す斜視図である。
図7】カウンターウェイトの拡大平面図である。
図8】カウンターウェイトの拡大斜視図である。
図9】突出片と押圧部との押圧関係を示す断面図であって、ハンドルがアウターパネルに面一に収納されている状態を示している。
図10】突出片と押圧部との押圧関係を示す断面図であって、所定角度までハンドルが開動作したときの状態を示している。
図11】突出片と押圧部との押圧関係を示す断面図であって、回動可能な最大角度までハンドルが開動作したときの状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を好適な実施形態に沿って説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、以下に示す実施形態においては、一部構成の図示や説明を省略している箇所があるが、省略された技術の詳細については、以下に説明する内容と矛盾が発生しない範囲内において、適宜公知又は周知の技術が適用されていることはいうまでもない。
【0018】
図1は、本実施形態に係るアウトサイドハンドル装置の詳細を示す正面図であり、図2は、図1に示すアウトサイドハンドル装置の背面図である。また、図3は、図2に示す一部構成を示す分解図である。
【0019】
図1及び図2に示すように、本実施形態に係るアウトサイドハンドル装置1は、車両のサイドドアに設けられるものであって、車両走行時などにおいて車両のサイドドアの表面を構成するアウターパネルに対してハンドル10が面一に収納可能なフラッシュサーフェスタイプのハンドル装置である。このようなアウトサイドハンドル装置1は、概略的に、ハンドル10と、ブラケット20と、レバー部材30と、ケーブル機構40と、カウンターウェイト50とを備えて構成されている。
【0020】
アウトサイドハンドル装置1は、ハンドル10の開操作時に、ケーブル機構40のワイヤーケーブル41が動作することにより、図外のラッチ機構を解除することができる。これにより、サイドドアが解錠状態となり、ユーザは車両への乗降が可能となる。以下、各部について詳細に説明する。
【0021】
図1に示すハンドル10は、ユーザによる回動操作が可能な操作部である。このハンドル10は、図1及び図2に示す一端側において車両上下方向に延びる軸部材(第1回転軸)11を介してブラケット20に軸支されている。軸部材11は、ブラケット20を下方に大きく貫通しており、ブラケット20を貫通した突出部分の周囲にはコイルスプリング12が設けられている。コイルスプリング12は、ブラケット20との協働によってハンドル10がアウターパネルから浮かない方向に付勢している。また、ハンドル10には、一端側に棒状部材13が取り付けられている。棒状部材13は軸部材11と同様に上下方向に延びている。
【0022】
また、図3に示すように、ハンドル10は、軸部材11側において接触板(第1部材)15と突出片(第2部材)16とを備えている。接触板15は、ハンドル10の軸部材11側の上部において水平方向に延びる板材である。突出片16は、ハンドル10の軸部材11側において、高さ方向(上下方向)の中間部付近から水平方向に突出する部材である。これらの接触板15及び突出片16は、後述するように、ハンドル10の開動作時にレバー部材30やカウンターウェイト50に接触する部位となる。
【0023】
本実施形態に係るアウトサイドハンドル装置1はフラッシュサーフェスタイプのハンドル装置であることから、ハンドル10を操作する場合、ユーザはハンドル10の表面の一端部17(図1参照)を押圧する。これにより、ハンドル10は、図3に示す矢印A1方向に回動して把持可能となる。ユーザは把持可能となったハンドル10を把持し、更に矢印A1方向にハンドル10を回動させる。これにより、ケーブル機構40のワイヤーケーブル41が動作してラッチ機構を解除し、サイドドアが解錠状態となる。なお、ハンドル10は、一端部17が押圧されて把持可能となる形態に限らず、リモコン操作などを通じてモータ制御によって把持可能な位置まで回動してもよい。
【0024】
図4は、図2に示したブラケット20の背面図であり、図5は、図4のV-V断面図である。図4及び図5に示すブラケット20は、ハンドル10、レバー部材30及びカウンターウェイト50を回動可能に軸支すると共にケーブル機構40のケーシング部42が取り付けられる枠部材である。このブラケット20は、サイドドア側に螺子止め等によって固定される。なお、図4及び図5に示すブラケット20は背面側が大きく開口しており、図2に示すように、背面側から各種部品を視認可能であるが、車両搭載時においては、この開口は他部材によって塞がれることとなる。
【0025】
このブラケット20は、一端側に軸部材11の通過孔21と、棒状部材13が嵌る周溝22とが形成されている。特に、周溝22は周状の溝となっており、棒状部材13が周溝22に嵌った状態でハンドル10が操作されることで、ハンドル10が正確に回動するように移動規制するための規制溝として機能する。さらに、ブラケット20には、通過孔21や周溝22に隣接して、貫通孔23が形成されている。この貫通孔23は、カウンターウェイト50の回転軸51(第3回転軸:図3参照)が嵌る孔部となっている。
【0026】
レバー部材30は、ハンドル10の回動操作に連動してワイヤーケーブル41を動作させるものである。このレバー部材30は、図2に示すように上部側に配置されており、一端側に軸部材(第2回転軸)31を有し、軸部材31を介してブラケット20に回転可能に接続されている。軸部材31は、車幅方向に延びるものである。なお、軸部材31は、車幅方向に延びていれば水平でなくともよく、車両上下方向及び車両前後方向を含む平面に対して交差する方向に延びていればよい。
【0027】
ブラケット20には、その一端側の上部に軸部材31が嵌まり込む貫通孔24が形成されている(図4参照)。また、レバー部材30は、図3に示すように、他端側にワイヤーケーブル41が取り付けられている。詳細に説明すると、ワイヤーケーブル41は、端末部分に球形状の端末係止具43が設けられており、レバー部材30の他端側には、この端末係止具43を保持する保持部32が形成されている。
【0028】
ケーブル機構40は、ワイヤーケーブル41が挿通される筒状のケーシング部42を有している。このケーシング部42は、図4及び図5に示すブラケット20の取付部25に取り付けられる。取付部25は、ブラケット20の底壁20aに形成され、平面視して鉤型となる溝によって形成されている(図5参照)。ケーシング部42は、ケーシング部42に形成される他の部位よりも縮径された縮径部42aを有しており(図3参照)、縮径部42aが鉤型の取付部25に嵌め込まれることでブラケット20の底壁20aに取り付けられる。なお、本実施形態においてワイヤーケーブル41は、アウターケーブル41aと、アウターケーブル41aに挿通されるインナーケーブル41bとからなる。
【0029】
図6は、ハンドル10が回動させられたときの状態を示す斜視図である。図6に示すように、ハンドル10が回動操作させると、ハンドル10の接触板15がレバー部材30の押圧部33に接触することとなり、レバー部材30の他端側に位置する保持部32が軸部材31を中心にして上方移動するように回動する(矢印A2参照)。これにより、保持部32に保持される端末係止具43についても上方に引っ張られることとなり(矢印A3参照)、ワイヤーケーブル41(特にインナーケーブル41b)も引っ張られて図外のラッチ機構を解除することとなる。この際、インナーケーブル41bは、ブラケット20の取付部25に取り付けられる筒状のケーシング部42内やアウターケーブル41a内をその軸方向に移動することとなる。
【0030】
カウンターウェイト50は、サイドドアへの衝突負荷発生時においてハンドル10が開方向(図3の矢印A1方向)に回動することを防止するバランス部材であって、レバー部材30よりも下方側に配置されている。本実施形態においてカウンターウェイト50は、一端側に筒部52を有し、この筒部52内に回転軸51を有する。回転軸51は、その下端側が図5に示すブラケット20の貫通孔23に挿入されると共に、上端側は、ブラケット20に設けられた水平方向に延びる支持板26を貫通するように挿入される。この結果、回転軸51は、車両上下方向に延びて配置されることとなり、ハンドル10の軸部材11と同方向に延びることとなる。
【0031】
また、カウンターウェイト50の回転軸51の周囲にはコイルスプリング(付勢手段)53が取り付けられている(図2参照)。このコイルスプリング53は、下端側がブラケット20に押圧され、上端側がカウンターウェイト50に押圧されるようになっている。このため、コイルスプリング53は、カウンターウェイト50を回転軸51を中心とする矢印A4の方向(第1方向)に付勢している。
【0032】
図6に示すように、カウンターウェイト50は、サイドドアへの衝突負荷発生時においてバランスを取る必要があることから、ハンドル10と接触関係にある。このため、ハンドル10の開動作時において、ハンドル10の突出片16がカウンターウェイト50の一端側の押圧部54(図3並びに後述の図7及び図8参照)に押圧される。この押圧部54は、回転軸51が挿通される筒部52よりもハンドル10側に位置していることから、ハンドル10が回動操作されると、カウンターウェイト50はコイルスプリング53の付勢力に抗して回転軸51を中心としてハンドル10から離間する方向(第2方向)に回動する(矢印A5参照)。
【0033】
図7は、カウンターウェイト50の拡大平面図であり、図8は、カウンターウェイト50の拡大斜視図である。図7及び図8に示すように、カウンターウェイト50は、平面視して略m形状となる部材である。このカウンターウェイト50は、その一端側においてコイルスプリング53の当接片55が形成されており、当接片55を介してハンドル10側に付勢されることとなる。また、カウンターウェイト50は図8に示すように他端側に肉薄部57が形成されており、ケーシング部42に干渉しない形状となっている。
【0034】
さらに、カウンターウェイト50は中央側の下面から下方に延びる突起58を有している。この突起58は、図5に示す奥壁BWから背面側に向かって延びる規制溝27に嵌るようになっており、カウンターウェイト50が回動する際に、その移動方向を規制するものとなる。
【0035】
ここで、サイドドアに衝突負荷が発生した場合、ハンドル10は開動作方向(図3の矢印A1方向)に動こうとする。しかしなから、サイドドアの衝突負荷発生時には、カウンターウェイト50に対しても矢印A1方向への力、すなわち、回転軸51を中心とした図6の矢印A4方向への力が付与される。そして、この力は、カウンターウェイト50の押圧部54を通じて、ハンドル10の突出片16に加わることから、ハンドル10の開動作を防止することとなる。
【0036】
なお、図3に示すように、ハンドル10は、軸部材11側に突出片16と一体となったハンドルウェイト18が形成されている。本実施形態においては、このハンドルウェイト18によってハンドル10の軸部材11よりも一端側の重量を高めてハンドル10の開動作を防止するようになっている。すなわち、サイドドアに衝突負荷が発生してハンドル10に外側方向への力が加わった場合、ハンドル10の軸部材11よりも他端側のみならず軸部材11の一端側にも同様に外側方向への力が加わる。このため、ハンドル10の軸部材11よりも一端側を重くしておけば、ハンドル10が矢印A1方向へ動いてしまうことを抑制することができる。
【0037】
さらに、上記のようなカウンターウェイト50は、自身が設けられるサイドドアと反対側のサイドドアに衝突負荷が発生した場合、回転軸51を中心としてハンドル10から離間する方向(図6の矢印A5方向)の力が付与されてしまう。この場合、押圧部54は、ハンドル10の突出片16から離れるように動作することとなり、突出片16を引っ張ることがなく空転する。よって、本実施形態に係るカウンターウェイト50は、反対側のサイドドアに衝突負荷が発生した場合に、ハンドル10を開動作させてしまう事態も防止する。
【0038】
ここで、本実施形態においてハンドル10の突出片16は、開動作時の前半においてカウンターウェイト50の押圧部54を押圧し、後半において押圧部54を押圧しない形状となっている。
【0039】
図9図11は、突出片16と押圧部54との押圧関係を示す断面図であって、図9はハンドル10がアウターパネルに面一に収納されている状態を示し、図10は所定角度までハンドル10が開動作したときの状態を示し、図11は回動可能な最大角度までハンドル10が開動作したときの状態を示している。なお、図9では、図2に示すIX-IXラインに相当する断面を示している。
【0040】
まず、図9に示すように、突出片16は、断面視して先端に略半円形状となる突起16aを有している。この突起16aは、ハンドル10がアウターパネルに面一に収納されている状態において、カウンターウェイト50の押圧部54に接触状態にある。
【0041】
そして、図9に示す状態から、ハンドル10が開動作させられると、突起16aが押圧部54に押圧させられる。このため、図10に示すように、ハンドル10の回動に応じてカウンターウェイト50も回動することとなる。
【0042】
さらに、図10に示す状態から、ハンドル10が更に開動作させられると、突起16aは、押圧部54の角部54aを乗り越えてしまい、押圧部54は突出片16の中間部に接触するようになる。このため、突起16aが押圧部54を押圧することがなく、ハンドル10は、突出片16が押圧部54を押圧しない空転状態となる。よって、ハンドル10が回動してもカウンターウェイト50は回動しないこととなる。
【0043】
更に詳細に説明すると、ハンドル10の回転角度が30度以下(すなわち開動作時における前半)においては、突出片16の突起16aがカウンターウェイト50の押圧部54に押し付けられて、カウンターウェイト50が回転軸51を中心として矢印A5方向へ回転させられる。一方、ハンドル10の回転角度が30度を超える場合(すなわち開動作時における後半)において、突出片16の突起16aがカウンターウェイト50の押圧部54に押し付けられることなく、突出片16がカウンターウェイト50の回動角度を維持するように摺接する空転状態となる。
【0044】
よって、カウンターウェイト50の回動角度を抑えることとなる。特に、フラッシュサーフェスタイプのアウトサイドハンドル装置1は、グリップタイプを比較すると、ハンドル10の回転角度が大きくなる傾向にあり、カウンターウェイト50の回動角度も大きくなる傾向にある。本実施形態においては、このような回転角度が大きくなるフラッシュサーフェスタイプのアウトサイドハンドル装置1において、カウンターウェイト50の回動角度を抑える構造となっている。
【0045】
なお、図10及び図11に示すように、カウンターウェイト50は、突起片16の形状や大きさ並びに押圧部54の形状や大きさ等が調整された結果、ブラケット20の背面Bから飛び出さないように回動角度が制限されている。よって、ブラケット20の厚みを大きくする必要がないようになっている。
【0046】
次に、本実施形態に係るアウトサイドハンドル装置1の作用を説明する。まず、ユーザがハンドル10を開動作させたとする。この際、ハンドル10の接触板15がレバー部材30の押圧部33を押圧すると共に、突出片16がカウンターウェイト50の押圧部54を押圧する。
【0047】
このように、ハンドル10に対して、レバー部材30とカウンターウェイト50とは、並列的に接触する関係となっている。ここで、グリップタイプでは、ハンドルに対して、レバー部材が接触し、レバー部材に対してカウンターウェイトが接触する直列式となっている。このように直列関係となっていることから、レバー部材とカウンターウェイトとの回転軸が一致している必要がある。一方で、本実施形態に係るアウトサイドハンドル装置1は並列式となっているため、レバー部材30の軸部材31とカウンターウェイト50の回転軸51とを一致させる必要がなく、レバー部材30については例えば車幅方向に延びる軸部材31とでき、且つ、カウンターウェイト50についてはハンドル10と同様に車両上下方向に延びる回転軸51とすることができる。
【0048】
ハンドル10が開動作させられると、レバー部材30は保持部32が図6の矢印A2方向に引き上げられ、ワイヤーケーブル41も矢印A3方向に引っ張られて図外のラッチ機構を解除することとなる。一方、ハンドル10が開動作させられると、カウンターウェイト50についても回動する。このとき、図9に示すように、ハンドル10の回転角度が30度以下まではカウンターウェイト50も同様に回転するが、ハンドル10の回転角度が30度を超えると、突出片16の突起16aがカウンターウェイト50の押圧部54を押圧することなく空転(摺接)状態となる。この結果、カウンターウェイト50は、図6に示す矢印A5方向に回転するが、図11に示す背面Bから飛び出さないこととなる。
【0049】
このようにして、本実施形態に係るアウトサイドハンドル装置1によれば、レバー部材30はハンドル10の開動作時にハンドルの接触板15に当接し、カウンターウェイト50はサイドドアへの衝突負荷の発生時にハンドル10の突出片16を押圧してハンドル10が開動作することを防止する。このように、ハンドル10は、レバー部材30に当接可能であると共にカウンターウェイト50にも接触可能となっており、双方に並列的に接触する構成となっている。このため、グリップタイプなどの、ハンドルがレバー部材を介してカウンターウェイトに連結される直列式の構成のようにレバー部材とカウンターウェイトとの回転軸を一致させる必要がなく、レバー部材30については例えば車幅方向に延びる軸部材31とでき、且つ、カウンターウェイト50についてはハンドル10と同様に車両上下方向に延びる回転軸51とすることができる。特に、カウンターウェイト50についてはハンドル10の軸部材11と同方向に延びる回転軸51を有する構成とできることから、ハンドル10とのバランスを取るように適切に動作させることができる。
【0050】
加えて、カウンターウェイト50は、コイルスプリング53によって回転軸51を中心とする矢印A4方向に付勢されているが、サイドドアと反対側のサイドドアに衝突負荷が生じたときに矢印A5方向の力によって突出片16に接触することなく空転する。このため、反対側のサイドドアに衝突負荷が生じたときには、カウンターウェイト50がハンドル10を開動作させることなく、空振り機構についても適切に機能させることができる。
【0051】
従って、空振り機構を有するカウンターウェイト50を適切に動作させることが可能なフラッシュサーフェスタイプのアウトサイドハンドル装置1を提供することができる。
【0052】
また、ハンドル10は、開動作時における前半において突出片16がカウンターウェイト50に押し付けられてカウンターウェイト50を回転軸51を中心に矢印A5方向に回動させ、開動作時における後半において突出片16がカウンターウェイト50に押し付けられることなく空転する。このため、ハンドル10の操作に伴って回動するカウンターウェイト50の回動角を小さくすることができる。ここで、フラッシュサーフェスタイプにおいては、グリップタイプと比較するとハンドル10の回転角が大きくなる傾向があり、カウンターウェイト50についても回転角が大きくなる傾向があることから、上記構成により、狭いサイドドア内における配置に適した構成とすることができる。
【0053】
以上、本発明に係るアウトサイドハンドル装置を実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよいし、可能であれば他の技術を組み合わせてもよい。例えば、図面に示した各構成の寸法や位置については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0054】
本実施形態に係るアウトサイドハンドル装置1は、ワイヤーケーブル41とケーシング部42とを備えたケーブル機構40を有しているが、これに限らず、いわゆる伝導ロッドを有していてもよい。
【0055】
さらに、本実施形態においてカウンターウェイト50は、ハンドル10の開動作時の後半において空転状態となって背面Bから飛び出さない構成となっているが、これに限らず、背面Bから飛び出すように構成してもよい。また、本実施形態において背面Bは、車両上下方向及び車両前後方向を含む平面に平行であることを想定しているが、これに限らず、ブラケット20の背面Bが斜め方向に向いていてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 :アウトサイドハンドル装置
10 :ハンドル
11 :軸部材(第1回転軸)
15 :接触板(第1部材)
16 :突出片(第2部材)
16a :突起
30 :レバー部材
31 :軸部材(第2回転軸)
50 :カウンターウェイト
51 :回転軸(第3回転軸)
53 :コイルスプリング(付勢手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11