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特許7026464マグネトロンスパッタリング装置を用いて層を堆積させるための方法
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  • 特許-マグネトロンスパッタリング装置を用いて層を堆積させるための方法 図1
  • 特許-マグネトロンスパッタリング装置を用いて層を堆積させるための方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-17
(45)【発行日】2022-02-28
(54)【発明の名称】マグネトロンスパッタリング装置を用いて層を堆積させるための方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/34 20060101AFI20220218BHJP
   C23C 14/35 20060101ALI20220218BHJP
【FI】
C23C14/34 U
C23C14/35 F
【請求項の数】 10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017172086
(22)【出願日】2017-09-07
(65)【公開番号】P2018040057
(43)【公開日】2018-03-15
【審査請求日】2020-06-17
(31)【優先権主張番号】10 2016 116 762.2
(32)【優先日】2016-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】594102418
【氏名又は名称】フラウンホーファー-ゲゼルシャフト ツル フェルデルング デル アンゲヴァンテン フォルシュング エー ファウ
【氏名又は名称原語表記】Fraunhofer-Gesellschaft zur Foerderung der angewandten Forschung e.V.
【住所又は居所原語表記】Hansastrasse 27c, D-80686 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ハーゲン バーチュ
(72)【発明者】
【氏名】ペーター フラッハ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ヒルディッシュ
【審査官】▲高▼橋 真由
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-084526(JP,A)
【文献】特表2011-506759(JP,A)
【文献】特表2016-528385(JP,A)
【文献】米国特許第07404877(US,B2)
【文献】米国特許第06096174(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00-14/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マグネトロンスパッタリング装置を用いて真空チャンバ(1)の内部で基板(2)上に層を堆積させるための方法であって、
前記マグネトロンスパッタリング装置は、それぞれ1つのターゲットが装着された2つのマグネトロンカソード(3a;3b)と、1つの補助電極(5)と、を含み、それぞれのマグネトロンカソード(3a;3b)に、別個の電流供給装置(4a;4b)を対応付け、前記真空チャンバ(1)に、少なくとも1種類の作動ガスの他に少なくとも1種類の反応性ガスを導入する方法において、
a)第1のフェーズでは、それぞれの電流供給装置(4a:4b)によって、対応する前記マグネトロンカソード(3a;3b)にパルス状の負の直流電圧を導通接続し、このとき前記電流供給装置(4a;4b)を、プッシュプルで動作させ、
b)第2のフェーズでは、前記電流供給装置(4a;4b)によって用意されたパルス状の前記直流電圧を、対応する前記マグネトロンカソード(3a;3b)と前記補助電極(5)との間にスイッチングし、
c)前記第1のフェーズと前記第2のフェーズとの間の切り換えを、1Hz~10kHzの範囲の周波数で実施し、
d)前記基板または基板裏面電極(7)に1MHzより高周波数の電圧を発生させ、
e)前記ターゲットのスパッタリングが遷移モードで実施されるように、前記真空チャンバ(1)への前記反応性ガスの導入を制御する、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記第1のフェーズの時間区分を、全体で5%~60%の割合に調整する、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記第1のフェーズの時間区分を、全体で10%~35%の割合に調整する、
請求項2記載の方法。
【請求項4】
1MHzより高周波数の電圧を発生させるために、全てのターゲットのスパッタリングのための電力の5~50%の電力を消費する、
請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
1MHzより高周波数の電圧を発生させるために、全てのターゲットのスパッタリングのための電力の10~35%の電力を消費する、
請求項4記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1つのシリコン含有ターゲットを使用する、
請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1つのアルミニウム含有ターゲットを使用する、
請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記真空チャンバ(1)に、少なくとも酸素を含有する反応性ガスを導入する、
請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
酸素と窒素とからなる混合物、または、酸素とフッ素化合物含有ガスとからなる混合物を、反応性ガスとして前記真空チャンバに導入する、
請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記真空チャンバ(1)の内部の圧力を、0.5Pa未満の値に調整する、
請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気エネルギがパルス形態で供給されるマグネトロンスパッタリング装置を動作させるための方法に関する。マグネトロンスパッタリング装置は、マグネトロンスパッタリングによって、すなわち物理気相堆積法(PVD)によって層を堆積させるための粒子源として使用することも、プラズマ活性化化学気相堆積法(PECVD)におけるプラズマ源として使用することも可能である。
【背景技術】
【0002】
とりわけ不活性ガスと反応性ガスとからなる混合物中で、金属ターゲットの反応性マグネトロンスパッタリングによって電気絶縁性の層を堆積させる場合には、10~350kHzの間の周波数範囲におけるパルス状のエネルギ供給が定着している。その理由は、パルス状のエネルギ供給の場合には、DCエネルギ供給に比べてプロセス安定性が改善されているからである。パルス状のプロセスのパルス休止期間中には、プラズマからの電荷担体が、絶縁性の層の上に集まっている電荷担体と再結合することができる。これにより、コーティングプロセスにとって有害なアーク放電の発生を阻止することができる。このようにして、パルス状のエネルギ供給により、長期間にわたって安定的なコーティングプロセスが保証される。さらには、パルス状のエネルギが供給されるマグネトロン源は、プラズマ活性化化学蒸着のためのプラズマ源としても、安定性に関して同様に有利に利用される。
【0003】
マグネトロンスパッタリングでは、パルス状のエネルギ供給に関して、ユニポーラパルスモードおよびバイポーラパルスモードとも呼ばれる、原理が異なる2つの主要な形態が確立されている。ユニポーラパルスモードでは、パルス状の直流電圧が、マグネトロンスパッタリング源のターゲットと、別個の電極、基板、または受容体質量との間に印加される。独国特許発明第3700633号(DE 37 00 633 C2)明細書には、一般的にPVD法のためのエネルギ供給の変形例が記載されている。ここではターゲットがガス放電のカソードとして機能し、受容体質量、基板、または別個の電極がアノードとして機能する。
【0004】
バイポーラパルスモードでは、ダブルマグネトロン装置の2つの電気的に相互絶縁されたターゲットの間に、極性が交番する電圧が印加される。この場合、これらのターゲットは、選択的にマグネトロン放電として形成されるガス放電のアノードおよびカソードの形態で機能する。したがって、アノードとしての別個の電極は必要ない。旧東ドイツ国経済特許第252205号明細書(DD 252 205 A1)および独国特許出願公開第3802852号明細書(DE 38 02 852 A1)には、このバイポーラのエネルギ供給の一般的な原理が記載される。独国特許発明第4438463号明細書(DE 44 38 463 C1)には、バイポーラのパルス供給のための多岐に使用される実施形態が示されている。
【0005】
さらには、ユニポーラの動作特性とバイポーラの動作特性の両方を有する特別な形態のパルス状のエネルギ供給が公知である。例えば国際公開第2009/040406号(WO 2009/040406 A2)には、いわゆる冗長的なアノードスパッタリングが記載されている。ここでは、カソード電位にあるターゲットの他に、2つの電極がアノードおよびカソードとして交互に動作し、その時々にカソード電位にある電極がそのフェーズにおいて自由にスパッタリングされ、これによってアノードフェーズにおいて持続的に有効なアノードとなる。
【0006】
いわゆるパルスパケットモード(独国特許出願公開第19702187号明細書(DE 197 02 187 A1))でのエネルギ入力の場合には、ユニポーラのパルスのパケットが、ダブルマグネトロン装置の2つのターゲットの間に印加される。連続する2つのパケットの間にそれぞれ1回の極性の変更が実施される。
【0007】
ユニポーラパルスモードとバイポーラパルスモードとの間には、コーティングすべき基板の直ぐ手前におけるプラズマ密度と、その結果として生じる、高エネルギの粒子による成長層への衝撃とに関して、格別の相違が存在することが経験から判明している。経験によれば、ユニポーラパルスモードでは、プラズマ密度が低くなっており、かつ基板への衝撃が穏やかであり、このようなことは、例えば温度に敏感な基板をコーティングする場合に望まれている。これに対してバイポーラパルスモードでは、基板への衝撃が非常に強くなっており、この衝撃を、非常に緻密な層を生成するために有利に利用することができる。コーティングすべき基板の表面の手前におけるプラズマ密度の相違は、同一のスパッタリング装置を用いた場合であって、かつこのスパッタリング装置が両方のパルスモードに適している場合には、最大で10倍になる可能性がある。この顕著な相違に対する物理的な原因は、バイポーラモードの場合にマグネトロンターゲットがアノードとして利用されることにある。そこに印加された磁場は、高エネルギの電子をターゲット近傍の領域から基板近傍の領域に押しのけて、基板の手前におけるプラズマ密度の増加をもたらす。少なくとも2つのマグネトロンスパッタ源からなる装置を、選択的にユニポーラパルスモードまたはバイポーラパルスモードで動作させるという手段により、多数の用途に対してパルスモードを選択することによって基板の手前における適切なプラズマ密度を調整することが可能となる。しかしながら、2つのパルスモードの間でプラズマ密度の比較的微細な調量が必要となる場合には、この選択肢はもはや十分ではない。
【0008】
独国特許出願公開第19651811号明細書(DE 196 51 811 A1)には、追加的な調整可能なパルス状の電圧によって追加的にイオンを基板に向かって加速させることができる、バイポーラのエネルギ供給のための装置が記載されている。この装置の欠点は、基板への衝撃の強さを、既に高いバイポーラモードの水準を上回ってしか増加させることができないことである。
【0009】
独国特許出願公開第102010047963号明細書(DE 10 2010 047 963 A1)は、2つのターゲットを含む、バイポーラで動作されるマグネトロンスパッタリング装置を開示しており、ここでは付加的な電極が、この付加的な電極と、そのときにカソードとして機能するターゲットとの間のマグネトロン放電のアノードとして一時的かつ反復的にスイッチングされる。このような方法では、プラズマ密度と、ひいてはコーティングすべき基板表面の近傍における電離度とを調整することが可能である。この場合の欠点は、イオンが基板表面に衝突するエネルギを調整できないことである。このような堆積方法の場合、基板表面における凸凹は、このときに堆積される層によって除去されずに、堆積された層において継続する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の基礎をなす技術的課題は、従来技術の欠点を克服することが可能な、マグネトロンスパッタリング装置を用いて層を堆積させるための方法を提供することである。とりわけ本発明による方法を用いて、基板表面の凹凸を平滑にする層を基板上に堆積できるようにすべきである。本発明による方法はさらに、高速の堆積速度を有するべきである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の技術課題は、請求項1に記載の特徴を有する対象によって解決される。本発明のさらなる有利な実施形態は、従属請求項から明らかとなる。
【0012】
真空チャンバの内部で基板上に層を堆積させるための本発明による方法は、マグネトロンスパッタリング装置を用いて実施され、前記マグネトロンスパッタリング装置は、それぞれ1つのターゲットが装着された少なくとも2つのマグネトロンカソードと、少なくとも1つの補助電極とを含み、それぞれのマグネトロンカソードには、パルス状の負の直流電圧を生成するための別個の電流供給装置が対応付けられる。この場合、前記パルス状の直流電圧は、20kHz~350kHzのパルス周波数で生成される。前記真空チャンバに、少なくとも1種類の作動ガスの他にさらに少なくとも1種類の反応性ガスが導入される。反応性ガスとして、例えば酸素含有ガス、または酸素と窒素含有ガスとからなる混合物、またはフッ素化合物を含むガスと酸素とからなる混合物を、真空チャンバ内に導入することができる。
【0013】
本発明による方法では、マグネトロンカソードに対応する電流供給装置が、それぞれ異なる2つのフェーズで動作される。第1のフェーズでは、それぞれの電流供給装置によって、対応する前記マグネトロンカソードにパルス状の負の直流電圧が導通接続され、このとき前記電流供給装置は、プッシュプルで動作される。プッシュプルで動作されるとは、それぞれ少なくとも1つの電流供給装置が電圧パルスを生成する一方で、その他の電流供給装置のうちの少なくとも1つがパルス休止期間を生成することを意味する。パルス休止期間の期間中には、前記その他の電流供給装置のうちの少なくとも1つが導電的に開放状態にスイッチングされ、これによって、電圧パルスを生成する前記少なくとも1つの電流供給装置の正の電圧極が、少なくとも、導電的に開放状態にスイッチングされている前記少なくとも1つの電流供給装置に対応する前記マグネトロンカソードに導電的に接続される。これに代えて、電流供給装置を導電的に開放状態にスイッチングすることを、当該電流供給装置を適切な外部配線によって導電的にブリッジすることによって実現することも可能である。
【0014】
第2のフェーズでは、前記電流供給装置によって用意されたパルス状の前記直流電圧が、それぞれ前記電流供給装置に対応する前記マグネトロンカソードと前記補助電極との間にスイッチングされ、このとき前記電流供給装置は、コモンモードで動作すること、またはプッシュプルで動作すること、またはパルス区間に関して重複して動作することもできる。本発明による方法では、前記第1のフェーズと前記第2のフェーズとの間の切り換えが、1Hz~10kHzの範囲の周波数で実施される。第1のフェーズは、第2のフェーズに比べてより高いプラズマ密度において優れており、したがって、第1のフェーズ対第2のフェーズの時間割合の比によって、平均プラズマ密度、ひいては基板へのイオン電流の平均電流密度を調整することができる。
【0015】
本発明による方法のさらなる特徴は、コーティングすべき前記基板に1MHzより高周波数の電圧が印加されることである。基板が例えば非導電性の材料からなる場合には、この高周波数の電圧を、コーティングすべきでない基板の裏側に配置される基板電極にも印加することができる。基板または基板電極に高周波数の電圧を印加することによって、基板または基板電極に、プラズマ電位とは反対方向のバイアス電圧が形成され、このバイアス電圧によって、プラズマからコーティングすべき基板の表面にイオンが衝突するエネルギを調整することができる。形成されるバイアス電圧が高くなればなるほど、コーティングすべき基板の表面にイオンが衝突するエネルギが大きくなる。
【0016】
本発明による方法はさらに、前記マグネトロンカソード上に配置された前記ターゲットのスパッタリングが遷移モードで実施されるように、前記真空チャンバへの前記反応性ガスの導入が制御されることにおいて優れている。遷移モードで、すなわち金属モードと反応モードの間のモードでターゲットをスパッタリングする方法ステップと、これに応じて反応性ガスの流入量を制御する方法ステップとは公知であり、高速の堆積速度において優れている。遷移モードでのスパッタリングでは、ターゲット表面が部分的にのみ反応生成物によって覆われるように、したがってスパッタリング時に、ターゲット表面から金属ターゲット成分および反応生成物の両方が叩き出されるように、反応性ガスが真空チャンバに導入される。
【0017】
驚くべきことに、本発明による方法において組み合わせたような特徴の組み合わせは、高速の堆積速度での層の堆積をもたらすだけでなく、本発明による層の堆積によって、コーティングすべき基板表面の凹凸を補償することも可能であることが判明した。したがって、本発明による方法は、平滑化層を堆積させるために特に適している。基板または基板電極で発生したバイアス電圧の結果として、プラズマからコーティングすべき基板表面に向かってイオンが加速されることに付随して、コーティングすべき基板表面におけるスパッタエッチングが行われる。第1のフェーズおよび第2のフェーズの時間割合に依存する平均プラズマ密度と、バイアス電圧の高さとによって、基板表面におけるスパッタエッチングを調整することができる。
【0018】
本発明による方法において有利には、従来技術とは対照的に、基板表面のスパッタエッチングを引き起こすイオンのエネルギと電流密度とを、互いに独立して調整することができる。コーティングすべき基板表面におけるスパッタエッチングがあまり大きくなり過ぎないように、ひいては層の成長率があまり大きく低下し過ぎないようにするために、高プラズマ密度を特徴とする第1のフェーズの時間区分が、全体で5%~60%の割合に、好ましくは10%~35%の割合に調整され、基板または基板電極において高周波数の電圧を発生させるために、全てのターゲットのスパッタリングのための電力の5%~50%の電力、好ましくは10%~35%の電力が消費されると有利である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明による方法を実施するために適した装置を概略図として示す。
図2】コーティングされた基板の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下では、本発明を実施例に基づいてより詳細に説明する。図1は、本発明による方法を実施するために適した装置を概略図として示す。真空チャンバ1の内部で、プレート形状の基板2上にシリコン酸化物層を堆積させることが意図されている。本発明による方法では、真空チャンバの内部の圧力は、0.5Pa未満の値に調整される。真空チャンバ1内にはさらに、マグネトロンカソード3aと、マグネトロンカソード3bと、補助電極5と、が配置されている。マグネトロンカソード3aおよび3bにはそれぞれシリコンターゲットが装着されている。電流供給装置4aおよび4bによって、それぞれパルス状の負の直流電圧が生成される。本発明によれば、電流供給装置4aおよび4bの動作が2つのフェーズで実施される。第1のフェーズでは、それぞれ1つの電流供給装置に対応するマグネトロンカソードにパルス状の負の直流電圧が導通接続され、このとき2つの電流供給装置4a,4bはプッシュプルで動作される。すなわち、電流供給装置4aがマグネトロンカソード3aに電圧パルスを導通接続すると、電流供給装置4bはパルス休止期間を生成し、それと同時に電流供給装置4bは開放状態にスイッチングされている。開放状態にスイッチングされているとは、電流供給装置4aの正極からマグネトロンカソード3bへ電流が流れることが可能となっていることを意味する。電流供給装置4bがマグネトロンカソード3bに電圧パルスを導通接続すると、電流供給装置4aはパルス休止期間を生成し、それと同時に電流供給装置4aは開放状態にスイッチングされている。
【0021】
第2のフェーズでは、電流供給装置4aによって生成されたパルス状の直流電圧がマグネトロンカソード3aと補助電極5との間にスイッチングされ、電流供給装置4bによって生成されたパルス状の直流電圧がマグネトロンカソード3bと補助電極5との間にスイッチングされる。2つの電流供給装置4a,4bは、第2のフェーズではコモンモードで動作する。スイッチ6は、第1のフェーズでは開放されており、第2のフェーズでは閉成されている。
【0022】
フェーズを切り換えるための変更は、1Hz~10kHzの範囲の周波数で実施される。このようにして、真空チャンバ1において2つのフェーズでマグネトロンプラズマが形成される。マグネトロンプラズマは、第1のフェーズでは、第2のフェーズよりも高いプラズマ密度を有する。図1には図示されていない入口を介して、マグネトロンスパッタリングに必要な作動ガスが真空チャンバ1に導入される。このために本記載の実施例では、作動ガスとしてアルゴンが使用される。プレート形状の基板2のコーティングすべきでない方の側には基板電極7が配置されており、この基板電極7には、電流供給装置8によって1MHzより大きい周波数の電圧が印加される。基板電極7で発生するバイアス電圧によってマグネトロンプラズマからコーティングすべき基板2の表面に向かってイオンが加速され、これにより、コーティングすべき基板表面におけるスパッタエッチングが引き起こされる。
【0023】
入口9を通って反応性ガスとして酸素が真空チャンバ1に流入する。流入量は、入口弁10によって調整される。入口弁10自体は、PID制御器を有する図1には図示されていない公知の装置によって駆動され、この装置は、マグネトロン電極3aおよび3b上に配置されたシリコンターゲットが遷移モードでスパッタリングされるように、真空チャンバ1への酸素流入量を制御する。
【0024】
本発明による第1のフェーズと第2のフェーズとの間での切り換えと、基板電極7における高周波数の電圧と、マグネトロンターゲットが遷移モードでスパッタリングされるように真空チャンバ1への酸素流入量を制御することと、によって、基板の表面上に反応的に堆積されるシリコン酸化物層が、基板表面の凹凸も補償して、平滑化された層表面を形成する。
【0025】
平滑化層の堆積のために、特にシリコン含有層およびアルミニウム含有層が適している。したがって、本発明による方法の1つの実施形態では、少なくとも1つのマグネトロンカソードにシリコン含有ターゲットが装着され、および/または少なくとも1つのマグネトロンカソードにアルミニウム含有ターゲットが装着される。
【0026】
図2には、コーティングされた基板の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真が示されている。図2aは、反応性バイポーラマグネトロンスパッタリングによる公知の方法によってシリコン酸化物層13aが堆積された基板12の断面を示す。コーティングプロセスの前には、基板の表面に、種々異なる程度で互いに離間した複数の凸凹14が存在していた。図2aからは、これらの表面凸凹が、堆積されたシリコン酸化物層13aにも継続していて、このシリコン酸化物層13aに比較的小さな丘部15が形成されたことが見て取れる。図2bは、本発明による方法によってシリコン酸化物層13bが堆積された、同一の凸凹14を有する同一の基板12の断面を示す。本発明による方法によって堆積されたシリコン酸化物層13bは、公知の方法によって堆積されたシリコン酸化物層13aに比べて格段に平滑な表面を有する。
図1
図2