(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-17
(45)【発行日】2022-02-28
(54)【発明の名称】金属-繊維強化樹脂接合部材
(51)【国際特許分類】
B29C 45/14 20060101AFI20220218BHJP
B29C 45/26 20060101ALI20220218BHJP
B29C 70/06 20060101ALI20220218BHJP
B29C 65/70 20060101ALI20220218BHJP
【FI】
B29C45/14
B29C45/26
B29C70/06
B29C65/70
(21)【出願番号】P 2017174568
(22)【出願日】2017-09-12
【審査請求日】2020-08-17
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】向後 駿斗
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-305775(JP,A)
【文献】国際公開第2016/203576(WO,A1)
【文献】特開2001-208166(JP,A)
【文献】特開平07-052861(JP,A)
【文献】実開昭64-001933(JP,U)
【文献】特開2003-011233(JP,A)
【文献】特開2013-141814(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 39/00 - 39/44
B29C 45/00 - 45/84
B29C 33/00 - 33/76
B29C 70/00 - 70/88
B29C 65/00 - 65/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂部材の内部に強化繊維布帛が配設された繊維強化樹脂体と金属部材とが接合されて構成される金属-繊維強化樹脂接合部材において、
前記金属部材は、前記強化繊維布帛が係合される係合部を有し、
前記樹脂部材は、前記係合部に前記強化繊維布帛が係合された状態で少なくとも該係合部を被覆し且つ該強化繊維布帛に含浸されて前記繊維強化樹脂体を構成し、
前記係合部は、前記強化繊維布帛を挟着する挟着構造を備えて構成され、
前記係合部には複数の係合突子が突設され、その係合突子が前記強化繊維布帛に差し込まれ、その差し込み部分において該強化繊維布帛が挟着部材で挟着されて前記係合部に前記強化繊維布帛が係合されたことを特徴とする金属-繊維強化樹脂接合部材。
【請求項2】
樹脂部材の内部に強化繊維布帛が配設された繊維強化樹脂体と金属部材とが接合されて構成される金属-繊維強化樹脂接合部材において、
前記金属部材は、前記強化繊維布帛が係合される係合部を有し、
前記樹脂部材は、前記係合部に前記強化繊維布帛が係合された状態で少なくとも該係合部を被覆し且つ該強化繊維布帛に含浸されて前記繊維強化樹脂体を構成し、
前記係合部は、前記強化繊維布帛を挟着する挟着構造を備えて構成され、
前記係合部には金属板材が折り曲げられ且つ該金属板材同士が開口する挟着口部が形成され、その挟着口部の開口部に差し込まれた前記強化繊維布帛が前記金属板材同士で挟着されて前記係合部に前記強化繊維布帛が係合されたことを特徴とする金属-繊維強化樹脂接合部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属部材と繊維強化樹脂体とを接合した部材である金属-繊維強化樹脂接合部材、特に、車両の構成部品としての使用に好適な金属-繊維強化樹脂接合部材に関する。
【背景技術】
【0002】
CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)のような繊維強化樹脂体は、周知のように軽量で且つ高強度であることから、車両でも、金属部品に代えて繊維強化樹脂部品が使用されてきている。そのため、金属製部品(金属体)と繊維強化樹脂接合部材とから成る金属-繊維強化樹脂接合部材が存在することになり、金属部材と繊維強化樹脂体の接合構造が必要となる。
【0003】
このような金属部材と繊維強化樹脂体の接合構造としては、例えば下記特許文献1や特許文献2に記載されるものがある。このうち、特許文献1に記載されるものは、複数の穴(貫通穴)が形成された板状金属部材の少なくとも穴形成部の周囲に強化繊維含有樹脂体をモールディングすることにより、それらの穴内に樹脂体を充填固化して両者を接合する場合に、穴の性状や樹脂体の構成を規定することで接合強度を向上することができるとしている。また、特許文献2に記載されるものは、ねじ穴が形成された金属製インサート部材の周囲に繊維強化樹脂体をモールディングした後、インサート部材に形成された縫い合わせ穴に炭素繊維を貫通して樹脂ごとインサート部材を縫い合わせることで接合強度を向上することができるとしている。その際、インサート部材の周囲は3次元織物材で構成される繊維強化樹脂体としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-141814号公報
【文献】特開2003-11233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、車両に繊維強化樹脂体が用いられる場合、具体的な繊維強化樹脂部品は、例えばルーフやフード、スポイラーなど、所謂板材で構成される金属部品の代替などの用途がある。金属板部品の代替に繊維強化樹脂部品を用いる場合には、繊維強化樹脂体を構成する樹脂部材の内部に強化繊維で織られた強化繊維布帛を配設する場合もある。しかしながら、前述の特許文献は何れも、単に金属部材の周囲に繊維強化樹脂体をモールディングするだけであり、強化繊維布帛を内装する繊維強化樹脂体と金属部材との接合構造としては、特に接合強度の面で改善の余地がある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡易な構成で且つ金属部材と繊維強化樹脂体との接合強度の向上が図られた金属-繊維強化樹脂接合部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための金属-繊維強化樹脂接合部材は、
樹脂部材の内部に強化繊維布帛が配設された繊維強化樹脂体と金属部材とが接合されて構成される金属-繊維強化樹脂接合部材において、前記金属部材は、前記強化繊維布帛が係合される係合部を有し、前記樹脂部材は、前記係合部に前記強化繊維布帛が係合された状態で少なくとも該係合部を被覆し且つ該強化繊維布帛に含浸されて前記繊維強化樹脂体を構成することを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、金属部材の係合部に強化繊維布帛が係合された状態で、少なくともその係合部が樹脂部材で被覆されると共にその樹脂部材が強化繊維布帛に含浸されて繊維強化樹脂体が構成される。これにより、強化繊維布帛と金属部材との係合部が樹脂部材で被覆されて固着されるだけでなく、強化繊維布帛そのものが金属部材に係合されるため、簡易な構成にして金属部材と繊維強化樹脂体との接合強度が向上される。
【0009】
また、前記係合部は、前記強化繊維布帛の強化繊維束を挿通する貫通穴を備えて構成されることを特徴とする。前記熱可塑性樹脂内に強化繊維が含有されることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、貫通穴に強化繊維布帛の強化繊維束を挿通するだけで強化繊維布帛を金属部材に係合することができるので、係合部を簡易に構成することができる。
【0011】
また、前記係合部は、互いに嵌合することで前記強化繊維布帛を挟み込む凹部及び凸部を備えて構成されることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、凹部及び凸部を互いに嵌合するだけで強化繊維布帛を挟み込んで金属部材に係合することができるので、係合部を簡易に構成することができる。
【0013】
また、前記係合部は、前記強化繊維布帛を挟着する挟着構造を備えて構成されることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、挟着構造によって強化繊維布帛を挟着するだけで金属部材に係合することができるので、係合部を簡易に構成することができる。
【0015】
また、前記係合部は、前記強化繊維布帛を表裏方向に折り曲げられて該強化繊維布帛を係止する係止片を備えて構成されることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、係止片で強化繊維布帛を表裏方向に折り曲げるだけで強化繊維布帛を金属部材に係合(係止)することができるので、係合部を簡易に構成することができる。
【0017】
また、
樹脂部材の内部に強化繊維布帛が配設された繊維強化樹脂体と金属部材とが接合されて構成される金属-繊維強化樹脂接合部材の製造方法において、前記強化繊維布帛を前記金属部材に形成された係合部に係合する工程と、前記係合部に前記強化繊維布帛が係合された状態で該強化繊維布帛及び前記金属部材を金型内にセットする工程と、前記金型内に樹脂を射出し、硬化した前記樹脂部材によって少なくとも前記係合部を被覆し且つ該樹脂部材が前記強化繊維布帛に含浸されて前記繊維強化樹脂体を構成する工程と、を備えたことを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、金属部材の係合部に強化繊維布帛が係合された状態で、少なくともその係合部が樹脂部材で被覆されると共にその樹脂部材が強化繊維布帛に含浸されて繊維強化樹脂体が構成される。これにより、強化繊維布帛と金属部材との係合部が樹脂部材で被覆されて固着されるだけでなく、強化繊維布帛そのものが金属部材に係合されるため、簡易な構成にして金属部材と繊維強化樹脂体との接合強度が向上される。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明によれば、強化繊維布帛と金属部材との係合部が樹脂部材で被覆されて固着されるだけでなく、強化繊維布帛そのものが金属部材に係合されるため、簡易な構成によって金属部材と繊維強化樹脂体との接合強度が向上される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の金属-繊維強化樹脂接合部材及びその製造方法の第1の実施の形態を示す金属部材及び強化繊維布帛の説明図である。
【
図2】
図1で金属部材に強化繊維布帛を係合した状態の断面図である。
【
図3】
図1の金属部材及び強化繊維布帛の樹脂部材による被覆の説明図である。
【
図4】樹脂部材で被覆された第1の実施の形態の金属-繊維強化樹脂接合部材の斜視図である。
【
図5】本発明の第1の実施の形態の変形例を示す金属部材及び強化繊維布帛の説明図である。
【
図6】
図5で金属部材に強化繊維布帛を係合した状態の断面図である。
【
図7】本発明の金属-繊維強化樹脂接合部材及びその製造方法の第2の実施の形態を示す金属部材及び強化繊維布帛の説明図である。
【
図8】
図7で金属部材に強化繊維布帛を係合した状態の断面図である。
【
図9】
図7の金属部材及び強化繊維布帛の樹脂部材による被覆の説明図である。
【
図10】樹脂部材で被覆された第2の実施の形態の金属-繊維強化樹脂接合部材の斜視図である。
【
図11】本発明の第2の実施の形態の変形例を示す金属部材及び強化繊維布帛の説明図である。
【
図12】本発明の金属-繊維強化樹脂接合部材及びその製造方法の第3の実施の形態を示す金属部材及び強化繊維布帛の説明図である。
【
図13】
図12で金属部材に強化繊維布帛を係合した状態の一部断面側面図である。
【
図14】
図12の金属部材及び強化繊維布帛の樹脂部材による被覆の説明図である。
【
図15】樹脂部材で被覆された第3の実施の形態の金属-繊維強化樹脂接合部材の斜視図である。
【
図16】本発明の第3の実施の形態の変形例を示す金属部材及び強化繊維布帛の説明図である。
【
図17】
図16で金属部材に強化繊維布帛を係合した状態の断面図である。
【
図18】本発明の金属-繊維強化樹脂接合部材及びその製造方法の第4の実施の形態を示す金属部材及び強化繊維布帛の説明図である。
【
図19】
図18で金属部材に強化繊維布帛を係合した状態の側面図である。
【
図20】
図18の金属部材及び強化繊維布帛の樹脂部材による被覆の説明図である。
【
図21】樹脂部材で被覆された第4の実施の形態の金属-繊維強化樹脂接合部材の斜視図である。
【
図22】本発明の金属-繊維強化樹脂接合部材及びその製造方法の第5の実施の形態を示す金属部材及び強化繊維布帛の説明図である。
【
図23】
図22で金属部材に強化繊維布帛を係合した状態の断面図である。
【
図24】
図22の金属部材及び強化繊維布帛の樹脂部材による被覆の説明図である。
【
図25】樹脂部材で被覆された第5の実施の形態の金属-繊維強化樹脂接合部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明の金属-繊維強化樹脂接合部材及びその製造方法の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施の形態並びにその図例は、あくまでも金属-繊維強化樹脂接合部材及びその製造方法の一例であり、形状や寸法、或いは強化繊維布帛の積層数といった設計事項は適宜に又は任意に設定可能である。
【0022】
図1~
図4は、本発明の金属-繊維強化樹脂接合部材及びその製造方法の第1の実施の形態を示す説明図である。具体的に、
図1は、金属-繊維強化樹脂接合部材及びその製造方法の第1の実施の形態を示す金属部材14及び強化繊維布帛12の斜視図、
図2は、
図1の金属部材14に強化繊維布帛12を係合した状態の断面図、
図3は、
図1の金属部材14及び強化繊維布帛12の樹脂部材18による被覆の説明図、
図4は、樹脂部材18で被覆された金属-繊維強化樹脂接合部材の斜視図である。なお、各図は模式的に表したものであり、特に
図3、
図4の樹脂部材18は誇張して描かれている。
【0023】
この実施の形態では、例えば縦長な繊維強化樹脂体10の長手方向一端部に金属体からなる金属部材14を接合して金属-繊維強化樹脂接合部材を構成する。この縦長な繊維強化樹脂体10には、既存のCFRPと同様に、例えば炭素繊維(強化繊維)の織物からなる縦長な強化繊維布帛12が内装される。この縦長な強化繊維布帛12に樹脂(樹脂部材18)を含浸して縦長な繊維強化樹脂体10が構成される。この強化繊維布帛12の例では、強化繊維を布帛の長手方向とその直交方向に織って布帛が構成されている。以下、縦長な強化繊維布帛12(繊維強化樹脂体10も同じ)の長手方向と直交する繊維方向を幅方向、布帛の表裏面方向を表裏方向とする。
【0024】
この実施の形態では、
図1(a)に示すように、縦長な強化繊維布帛12の長手方向一端部に、布帛を構成する強化繊維の束(強化繊維束)22を複数(図では7つ)突設している。この実施の形態における複数の強化繊維束22は、強化繊維布帛12の幅方向端部から長・短・長…の順に、突出寸度の大きいものと小さいものを交互に配設している。なお、強化繊維束22の突出寸度は、大きいものは大きいもの同士、小さいものは小さいもの同士で、夫々、同じ寸法になっている。なお、前記強化繊維束22の突出寸度は、全てが略同じ寸法であっても構わない。
【0025】
一方、この実施の形態における金属部材14は、少なくとも強化繊維布帛12の幅方向以上の幅を有する方形金属板材で構成される。この金属板材からなる金属部材14は、比較的厚さが小さい。この金属部材14のうち、繊維強化樹脂体10が接合される端部には、強化繊維布帛12を係合するための係合部16として、強化繊維束22の形成部位に対応して貫通穴20が端部から2列形成され且つ千鳥状の配置されている。より具体的には、係合される強化繊維布帛12の強化繊維束22のうち、突出寸度が大きい強化繊維束22に対応する貫通穴20は、強化繊維布帛12が係合される金属部材14の端部より遠い位置に形成され、突出寸度が小さい強化繊維束22に対応する貫通穴20は近い位置に形成されている。
【0026】
そして、この実施の形態では、
図1(b)に示すように、強化繊維布帛12の各強化繊維束22を千鳥状に2列並んでいる各貫通穴20に一方から差し込むようにして挿通する。これは、例えば
図2の断面図に明示するように、例えば板状の金属部材14の一方の面、図では上面から長短に形成された各強化繊維束22を対応する貫通穴20に差し込み、各強化繊維束22の突出先端部を金属部材14の他方の面、図では下面に引っ掛けるようにして係合する。これにより、例えば貫通穴20の角隅部と強化繊維束22との間で摩擦力が作用する。周知のように、強化繊維の束は復元力が大きいので、貫通穴20を通して強化繊維の束を金属部材14の上下面に引っ掛けるだけで強化繊維の束と金属部材14の間に大きな摩擦力が作用し、この摩擦力によって強化繊維束22、即ち強化繊維布帛12が金属部材14に係合される。
【0027】
このようにして強化繊維布帛12が金属部材14の係合部16に係合されたら、その係合状態のまま、
図3(a)に示すように、強化繊維布帛12と金属部材14を金型40内にセットする。この金型40は、樹脂を注入するためのものであり、例えば上型40aと下型40bで構成される。金属部材14と金型40の間にはシール41を介装して樹脂が漏洩しないようにしている。この状態で、例えば周知のRTM(Resin Transfer Molding)などの手法を用いて金型40内に樹脂を注入する。一般にマトリックスとも呼ばれる、この樹脂には、例えばエポキシ、ナイロン、ポリウレタン樹脂などが用いられる。この注入された樹脂が硬化したら
図3(b)のように金型40を離型する。その結果、
図4に示すように、少なくとも強化繊維布帛12と金属部材14の係合部16が樹脂部材18で被覆され且つ強化繊維布帛12に樹脂部材18が含浸された状態で繊維強化樹脂体10が構成され、これにより金属-繊維強化樹脂接合部材が完成する。
【0028】
一般に、金属体からなる金属部材と繊維強化樹脂体からなる繊維強化樹脂部材を個別に製造し、それらを接合する場合には、例えば接着剤や機械的締結手段が用いられる。機械的締結手段には、例えばボルト-ナットなどが用いられる。しかしながら、繊維強化樹脂体を用いる主たる目的は軽量化であり、その一方で、重量の大きいボルト-ナットなどの機械的締結手段を用いることは、繊維強化樹脂体を用いる主たる目的と矛盾する。その点、接着剤による接合は、さほどの重量増を伴わないが、一方で接着強度が不十分であることが多い。
【0029】
これに対し、この実施の形態では、金属体からなる金属部材14の係合部16に強化繊維布帛12を係合し、その状態で少なくとも係合部16を樹脂部材18で被覆すると共に樹脂部材18を強化繊維布帛12に含浸して繊維強化樹脂体10を構成する。そのため、強化繊維布帛12と金属部材14との係合部16が樹脂部材18で被覆されて固着されるだけでなく、強化繊維布帛12そのものが金属部材14に係合されるため、簡易な構成で金属部材14と繊維強化樹脂体10との接合強度が向上される。
【0030】
また、強化繊維布帛12の強化繊維束22を挿通する貫通穴20を備えて係合部16を構成したことにより、貫通穴20に強化繊維布帛12の強化繊維束を挿通するだけで強化繊維布帛12を金属部材14に係合することができるので、係合部16を簡易に構成することができる。
【0031】
図5、
図6には、本発明の金属-繊維強化樹脂接合部材及びその製造方法の第1の実施の形態の変形例を示す。具体的に、
図5は、金属-繊維強化樹脂接合部材及びその製造方法の第1の実施の形態の変形例を示す金属部材14及び強化繊維布帛12の斜視図、
図6は、
図5の金属部材14に強化繊維布帛12を係合した状態の断面図である。この変形例では、
図5(a)に示すように、縦長な強化繊維布帛12の長手方向一端部に、突出寸度が同じ強化繊維束22を複数(図では7つ)突設している。一方、この変形例における金属部材14では、繊維強化樹脂体10の接合端部に、強化繊維布帛12を係合するための係合部16として、強化繊維束22の形成部位に対応して貫通穴20が端部から複列(図では2列)形成され且つ互いに平行に配設されている。
【0032】
そして、この変形例では、
図5(b)に示すように、強化繊維布帛12の各強化繊維束22を2列に並んでいる各貫通穴20に縫い込むようにして挿通する。これは、例えば
図6の断面図に示すように、例えば図示左方の貫通穴20に対して左上から右下に強化繊維束22を挿通したら、図示右方の貫通穴20に対しては左下から右上に強化繊維束22を挿通することで、強化繊維束22が金属部材14に縫い込まれる。前述のように、強化繊維の束は復元力が大きいので、強化繊維の束と金属部材14の間に大きな摩擦力が作用し、この摩擦力によって強化繊維束22、即ち強化繊維布帛12が金属部材14に係合される。また、この実施形態では、隣り合う強化繊維束22が隣り合う貫通穴20に対して逆方向から挿通されるように、つまり強化繊維束22が互い違いに縫い込まれるように各強化繊維束22を貫通穴20に挿通している。このように強化繊維束22を互い違いに金属部材14に縫い込むことにより、隣り合う強化繊維束22に生じる復元力がより大きくなり、その結果、金属部材14との間に大きな摩擦力が作用して強化繊維布帛12と金属部材14が堅固に係合する。このように強化繊維布帛12と金属部材14が係合されたら、第1の実施の形態と同様に、それを金型内にセットし、樹脂を注入・固化して金属-繊維強化樹脂接合部材を取得する。
【0033】
図7~
図10は、本発明の金属-繊維強化樹脂接合部材及びその製造方法の第2の実施の形態を示す説明図である。具体的に、
図7は、金属-繊維強化樹脂接合部材及びその製造方法の第2の実施の形態を示す金属部材14及び強化繊維布帛12の斜視図、
図8は、
図7の金属部材14に強化繊維布帛12を係合した状態の断面図、
図9は、
図7の金属部材14及び強化繊維布帛12の樹脂部材18による被覆の説明図、
図10は、樹脂部材18で被覆された金属-繊維強化樹脂接合部材の斜視図である。なお、各図は模式的に表したものであり、特に
図9、
図10の樹脂部材18は誇張して描かれている。
【0034】
この実施の形態における金属-繊維強化樹脂接合部材の概略構成は、第1の実施の形態のそれと同様である。また、この実施の形態における繊維強化樹脂体10の強化繊維布帛12も、第1の実施の形態と同様に、金属部材14と係合される端部に、長短の強化繊維束22が突設されているが、この実施の形態では、強化繊維布帛12の幅方向端部から、短・長・短…の順に形成されている。一方、この実施の形態における金属部材14も、第1の実施の形態と同様、方形金属板材で構成されるが、この実施の形態では、やや板厚が大きい。そして、この金属部材14のうち、繊維強化樹脂体10の接合端部には、強化繊維布帛12を係合するための係合部16として、複数の凹部23が例えば千鳥状に形成されている。具体的には、係合される強化繊維布帛12の強化繊維束22のうち、突出寸度が小さい強化繊維束22に対応する凹部23は、強化繊維布帛12が係合される金属部材14の端部より近い位置に形成され、突出寸度が大きい強化繊維束22に対応する凹部23は遠い位置に形成されている。この凹部23は穴部であってもよい。
【0035】
この実施の形態では、前述の凹部23を有する係合部16に強化繊維布帛12を係合するため、金属部材14とは別体の係合部材24を用いる。この係合部材24の材質は、適宜選定することができるが、軽量化のためには、例えば樹脂などが適用可能である。また、係合部材24の材質に、ゴムなどの弾性材料を用いることも可能である。この実施の形態の係合部材24は、金属部材14と同様の板材であり、その板材の一表面(
図7(a)では下面)に複数の凸部25が突設されている。この凸部25は、金属部材14の凹部23に対向する位置に形成されており、夫々、凹部23内に嵌合(遊嵌)する。
【0036】
そこで、係合部16を構成する金属部材14の複数の凹部23の夫々の上に対応する強化繊維束22を被せ、各凸部25が凹部23に対向するように位置合わせして係合部材24を強化繊維布帛12の上面に載せ、各凸部25が対応する凹部23に嵌まり込むようにして
図7(b)のように金属部材14に係合部材24を押し付ける。これにより、
図8の断面図に示すように、金属部材14の凹部23と係合部材24の凸部25の隙間に強化繊維布帛12が挟み込まれ、金属部材14の係合部16に強化繊維布帛12が係合される。このとき、金属部材14の凹部23と係合部材24の凸部25が過度に緊密に嵌合しないように、つまり遊嵌するように両者の寸法を設定する。周知のように、強化繊維は、繊維方向への引張に対して大きな強度を発揮するものの、剪断に対しては比較的脆い。凹部23と凸部25の隙間に強化繊維布帛12が挟み込まれるとき、布帛を構成する強化繊維には剪断力が作用するので、その剪断力が大きくなりすぎないように、つまり凹部23と凸部25が遊嵌するように両者の寸法を設定する。
【0037】
このようにして強化繊維布帛12が金属部材14の係合部16に係合されたら、その係合状態のまま、
図9(a)に示すように、強化繊維布帛12と金属部材14を金型40内にセットする。この金型40は、第1の実施の形態と同様に、樹脂を注入するためのものであり、例えば上型40aと下型40bで構成され、金属部材14と金型40の間にはシール41を介装して樹脂が漏洩しないようにしている。この状態で、例えば第1の実施の形態と同様に金型40内に樹脂を注入し、注入された樹脂が硬化したら
図9(b)のように金型40を離型する。その結果、
図10に示すように、少なくとも強化繊維布帛12と金属部材14の係合部16が樹脂部材18で被覆され且つ強化繊維布帛12に樹脂部材18が含浸された状態で繊維強化樹脂体10が構成され、これにより金属-繊維強化樹脂接合部材が完成する。
【0038】
従って、この実施の形態では、前述の第1の実施の形態の効果に加えて、互いに嵌合することで強化繊維布帛12を挟み込む凹部23及び凸部25を備えて係合部16を構成したことにより、凹部23及び凸部25を互いに嵌合するだけで強化繊維布帛12を挟み込んで金属部材14に係合することができるので、係合部16を簡易に構成することができる。なお、凹部23を係合部材24に、凸部25を金属部材14に形成してもよい。
【0039】
図11には、本発明の金属-繊維強化樹脂接合部材及びその製造方法の第2の実施の形態の変形例を示す。具体的に、
図11は、金属-繊維強化樹脂接合部材及びその製造方法の第2の実施の形態の変形例を示す金属部材14及び強化繊維布帛12の斜視図である。この変形例では、強化繊維布帛12の金属部材14との係合側端部は、縦長な方形形状のままである。一方、この変形例における金属部材14や係合部材24は、第2の実施の形態のものと同様である。この変形例では、係合部16を構成する金属部材14の複数の凹部23の上面に強化繊維布帛12の方形な端部を載せ、各凸部25が凹部23に対向するように位置合わせして係合部材24を強化繊維布帛12の上面に載せ、各凸部25が対応する凹部23に嵌まり込むようにして
図7(b)のように金属部材14に係合部材24を押し付ける。これにより、金属部材14の凹部23と係合部材24の凸部25の隙間に強化繊維布帛12そのものが挟み込まれ、金属部材14の係合部16に強化繊維布帛12が係合される。このように強化繊維布帛12と金属部材14が係合されたら、第2の実施の形態と同様に、それを金型内にセットし、樹脂を注入・固化して金属-繊維強化樹脂接合部材を取得する。なお、前記凹部23の配置位置は、特に限定されるものではなく、
図5に示す実施形態と同様に隣り合うように凹部23が配置されているものでも良い。
【0040】
図12~
図15は、本発明の金属-繊維強化樹脂接合部材及びその製造方法の第3の実施の形態を示す説明図である。具体的に、
図12は、金属-繊維強化樹脂接合部材及びその製造方法の第3の実施の形態を示す金属部材14及び強化繊維布帛12の斜視図、
図13は、
図12の金属部材14に強化繊維布帛12を係合した状態の一部断面側面図、
図14は、
図12の金属部材14及び強化繊維布帛12の樹脂部材18による被覆の説明図、
図15は、樹脂部材18で被覆された金属-繊維強化樹脂接合部材の斜視図である。なお、各図は模式的に表したものであり、特に
図14、
図15の樹脂部材18は誇張して描かれている。
【0041】
この実施の形態における金属-繊維強化樹脂接合部材の概略構成は、第1の実施の形態のそれと同様である。また、この実施の形態における繊維強化樹脂体10の強化繊維布帛12の金属部材14との係合側端部は、
図11に示す第2の実施の形態の変形例と同様、縦長な方形形状のままである。一方、この実施の形態における金属部材14では、強化繊維布帛12の幅以上の幅を有する金属板材の端部から強化繊維布帛12側に向けて、複数(図では6個)の係合突子21が突設され、これにより挟着構造を有する係合部16が構成されている。具体的には、
図12(a)に明示するように、これらの係合突子21は、比較的薄く、平たい、櫛歯状であり、それらの係合突子21が、強化繊維布帛12の平面方向(接合方向)に沿って、例えば、その繊維に縫い込むようにして差し込まれる。
【0042】
この実施の形態では、櫛歯状の複数の係合突子21からなる係合部16に強化繊維布帛12を係合するため、金属部材14とは別体の挟着部材27を用い、この挟着部材27を折り曲げて挟着受部26との間で強化繊維布帛12を挟着する。具体的には、
図12(a)に示すような断面コ字状に折り曲げられた帯状の挟着部材27を用いる。この挟着部材27の材質は、適宜選定することができるが、この例では、折り曲げ状態を維持することができる材質、つまり塑性変形可能な材質である必要がある。
【0043】
そこで、係合部16を構成する金属部材14の複数の係合突子21を夫々強化繊維布帛12の繊維に、例えば縫い込むようにして差し込み、その上方から断面コ字状の挟着部材27を被せ、
図12(b)に示すように、その挟着部材27の両脚部27aを互いに内側に折り曲げる。これにより、
図13の一部断面側面図に示すように、挟着部材27によって金属部材14に突設された係合突子21と強化繊維布帛12が挟着され、金属部材14の係合部16に強化繊維布帛12が係合される。また、この実施の形態では、緊密に当接する強化繊維布帛12の繊維と櫛歯状の係合突子21との間に生じる摩擦力も金属部材14と強化繊維布帛12の係合力に付加される。なお、金属部材14の係合突子21の強化繊維布帛12への差し込みは、必ずしも、縫い込みのような形態でなくともよく、例えば、強化繊維布帛12の織目同士の間に差し込むような形でもよい。
【0044】
このようにして強化繊維布帛12が金属部材14の係合部16に係合されたら、その係合状態のまま、
図14(a)に示すように、強化繊維布帛12と金属部材14を金型40内にセットする。この金型40は、第1の実施の形態と同様に、樹脂を注入するためのものであり、例えば上型40aと下型40bで構成され、金属部材14と金型40の間にはシール41を介装して樹脂が漏洩しないようにしている。この状態で、例えば第1の実施の形態と同様に金型40内に樹脂を注入し、注入された樹脂が硬化したら
図14(b)のように金型40を離型する。その結果、
図15に示すように、少なくとも強化繊維布帛12と金属部材14の係合部16が樹脂部材18で被覆され且つ強化繊維布帛12に樹脂部材18が含浸された状態で繊維強化樹脂体10が構成され、これにより金属-繊維強化樹脂接合部材が完成する。
【0045】
従って、この実施の形態では、前述の第1の実施の形態の効果に加えて、強化繊維布帛12を挟着する挟着構造(挟着受部26、挟着部材27)を備えて係合部16を構成したことにより、挟着構造によって強化繊維布帛12を挟着するだけで金属部材14に係合することができるので、係合部16を簡易に構成することができる。また、櫛歯状の係合突子21を強化繊維布帛12の繊維に差し込むことにより、両者の間に生じる摩擦力が金属部材14と強化繊維布帛12の係合力に付加され、両者の接合強度を更に向上することができる。
【0046】
図16、
図17には、本発明の金属-繊維強化樹脂接合部材及びその製造方法の第3の実施の形態の変形例を示す。具体的に、
図16は、金属-繊維強化樹脂接合部材及びその製造方法の第3の実施の形態の変形例を示す金属部材14及び強化繊維布帛12の斜視図、
図17は、
図16の金属部材14に強化繊維布帛12を係合した状態の断面図である。
【0047】
この変形例における金属-繊維強化樹脂接合部材の概略構成は、第1の実施の形態のそれと同様である。また、この変形例における繊維強化樹脂体10の強化繊維布帛12は、縦長な方形形状のままである。一方、この実施の形態における金属部材14も、第1の実施の形態と同様、方形金属板材で構成され、この金属部材14のうち、繊維強化樹脂体10の接合端部には、強化繊維布帛12を係合するための係合部16として、強化繊維布帛12を挟着する挟着構造を構成するための板状の挟着受部26が板材をつぎ足すように突設されている。なお、この板状の挟着受部26の突出端部には、図の下方に向けて規制縁部26aが突設されており、そのため、挟着受部26は断面形状がL字状になっている。また、この板状の挟着受部26は、強化繊維布帛12の幅と同等か又はそれより少し小さい幅を有する。
【0048】
この変形例でも、前述の板状の挟着受部26からなる係合部16に強化繊維布帛12を係合するため、金属部材14とは別体の挟着部材27を用い、この挟着部材27を折り曲げて挟着受部26との間で強化繊維布帛12を挟着する。具体的には、第3の実施の形態と同様に、
図16(a)に示すような断面コ字状に折り曲げられた帯状の挟着部材27を用いる。この挟着部材27の材質も、適宜選定することができるが、この例では、折り曲げ状態を維持することができる材質、つまり塑性変形可能な材質である必要がある。
【0049】
この変形例で強化繊維布帛12と金属部材14を係合する際には、係合部16を構成する金属部材14の板状の挟着受部26の上面に強化繊維布帛12を載せ、その上方から断面コ字状の挟着部材27を被せ、
図16(b)に示すように、その挟着部材27の両脚部27aを互いに内側に折り曲げる。これにより、
図17の一部断面側面図に示すように、金属部材14に延設された挟着受部26と挟着部材27によって強化繊維布帛12が挟着され、金属部材14の係合部16に強化繊維布帛12が係合される。その際、折り曲げられた挟着部材27の両脚部27aは規制縁部26aによって強化繊維布帛12の長手方向への移動が規制され、これにより挟着部材27と挟着受部26による強化繊維布帛12の挟着が外れない。
【0050】
なお、この変形例では、断面コ字状の挟着部材27の両脚部27aを折り曲げて強化繊維布帛12を挟着するようにしているが、例えば短い脚部27aを有する断面コ字状の挟着部材27の両脚部27a先端から内向きに短い爪部を突設し、挟着受部26に載せられた強化繊維布帛12の上側から挟着受部26の幅方向両端部に挟着部材27の脚部27aを押し込み、挟着部材27の弾性変形によって脚部27a先端部の爪部が挟着受部26の下面に当接するようにしてもよい。この場合、挟着部材27は、塑性変形可能な材質である必要はなく、例えば軽量化のために弾性を有する樹脂などを用いることもできる。
【0051】
図18~
図21は、本発明の金属-繊維強化樹脂接合部材及びその製造方法の第4の実施の形態を示す説明図である。具体的に、
図18は、金属-繊維強化樹脂接合部材及びその製造方法の第4の実施の形態を示す金属部材14及び強化繊維布帛12の斜視図、
図19は、
図18の金属部材14に強化繊維布帛12を係合した状態の側面図、
図20は、
図18の金属部材14及び強化繊維布帛12の樹脂部材18による被覆の説明図、
図21は、樹脂部材18で被覆された金属-繊維強化樹脂接合部材の斜視図である。なお、各図は模式的に表したものであり、特に
図20、
図21の樹脂部材18は誇張して描かれている。
【0052】
この実施の形態における金属-繊維強化樹脂接合部材の概略構成は、第1の実施の形態のそれと同様である。また、この実施の形態における繊維強化樹脂体10の強化繊維布帛12は、縦長な方形形状のままである。一方、この実施の形態における金属部材14は、例えば強化繊維布帛12の幅と同等の幅を有する比較的板厚の小さい縦長の方形金属板材29で構成され、この金属部材14のうち、繊維強化樹脂体10の接合端部には、強化繊維布帛12を係合するための係合部16として、強化繊維布帛12を挟着する挟着構造が構成されている。この実施の形態では、挟着構造として、金属部材14を構成する金属板材29を折り曲げて挟着口部28が形成されている。この挟着口部28は、
図18(a)に示すように、金属部材14を構成する金属板材29の端部をZ字状に折り曲げ、そのうち金属部材14側の折り曲げ部は予め板材29同士が密着するように折り曲げ成形し、金属部材14から遠い側の折り曲げ部は板材29同士が密着せず、開口するように折り曲げ成形しておく。この開口部分が挟着口部28を構成する。
【0053】
この実施の形態では、前述の挟着口部28内に強化繊維布帛12の長手方向端部を差し込み、その状態で、
図18(b)に示すように、挟着口部28の図示上方板材29aを下方に折り曲げてこの上方板材29aとその下方の板材29との間に強化繊維布帛12の端部を挟み込む。これにより、
図19の側面図に示すように、金属部材14に形成された係合部16としての挟着口部28内に強化繊維布帛12が挟着され、金属部材14の係合部16に強化繊維布帛12が係合される。
【0054】
このようにして強化繊維布帛12が金属部材14の係合部16に係合されたら、その係合状態のまま、
図20(a)に示すように、強化繊維布帛12と金属部材14を金型40内にセットする。この金型40は、第1の実施の形態と同様に、樹脂を注入するためのものであり、例えば上型40aと下型40bで構成され、金属部材14と金型40の間にはシール41を介装して樹脂が漏洩しないようにしている。この状態で、例えば第1の実施の形態と同様に金型40内に樹脂を注入し、注入された樹脂が硬化したら
図20(b)のように金型40を離型する。その結果、
図21に示すように、少なくとも強化繊維布帛12と金属部材14の係合部16が樹脂部材18で被覆され且つ強化繊維布帛12に樹脂部材18が含浸された状態で繊維強化樹脂体10が構成され、これにより金属-繊維強化樹脂接合部材が完成する。
【0055】
従って、この実施の形態では、前述の第3の実施の形態と同様に、強化繊維布帛12を挟着する挟着構造(挟着口部28)を備えて係合部16を構成したことにより、挟着構造によって強化繊維布帛12を挟着するだけで金属部材14に係合することができるので、係合部16を簡易に構成することができる。
【0056】
なお、強化繊維布帛12に噛み込む、例えば歯状、牙状、爪状などのような突子を上方板材29aの挟着口部28側先端部に設けてもよい。そして、そのようにすれば、強化繊維布帛12と金属部材14との係合力が増大するため、結果的に金属部材14と繊維強化樹脂体10との接合強度がより一層向上される。
【0057】
図22~
図25は、本発明の金属-繊維強化樹脂接合部材及びその製造方法の第4の実施の形態を示す説明図である。具体的に、
図22は、金属-繊維強化樹脂接合部材及びその製造方法の第4の実施の形態を示す金属部材14及び強化繊維布帛12の斜視図、
図23は、
図22の金属部材14に強化繊維布帛12を係合した状態の断面図、
図24は、
図22の金属部材14及び強化繊維布帛12の樹脂部材18による被覆の説明図、
図25は、樹脂部材18で被覆された金属-繊維強化樹脂接合部材の斜視図である。なお、各図は模式的に表したものであり、特に
図24、
図25の樹脂部材18は誇張して描かれている。
【0058】
この実施の形態における金属-繊維強化樹脂接合部材の概略構成は、第1の実施の形態のそれと同様である。また、この実施の形態における繊維強化樹脂体10の強化繊維布帛12は、縦長な方形形状のままである。一方、この実施の形態における金属部材14も、第1の実施の形態と同様、方形金属板材で構成され、この金属部材14のうち、繊維強化樹脂体10の接合端部には、強化繊維布帛12を係合するための係合部16として、強化繊維布帛12を表裏方向に貫通し且つ折り曲げられて強化繊維布帛12を係止する係止片30が形成されている。この係止片30は、
図22(a)に示すように、金属部材14の強化繊維布帛接合端面から強化繊維布帛12の長手方向に突設された複数の針状凸片の突出先端部30aを図示上方に屈曲して構成される。
【0059】
この実施の形態では、強化繊維布帛12の金属部材接合端面が金属部材14の強化繊維布帛接合端面に一致するようにして、金属部材14の係合部16を構成する係止片30の上方から強化繊維布帛12を係止片30上に降ろすと、
図22(b)に二点鎖線で示すように、図示上方に屈曲された係止片30の突出先端部30aが強化繊維布帛12の裏面から表面に貫通する。その状態で、各係止片30の突出先端部30aを、例えば
図22(b)の金属部材14側に折り曲げると、
図23の断面図に示すように、係止片30の突出部と折り曲げ部(突出先端部30a)に強化繊維布帛12が挟まれ、これにより金属部材14の係合部16に強化繊維布帛12が係合(係止)される。
【0060】
このようにして強化繊維布帛12が金属部材14の係合部16に係合されたら、その係合状態のまま、
図24(a)に示すように、強化繊維布帛12と金属部材14を金型40内にセットする。この金型40は、第1の実施の形態と同様に、樹脂を注入するためのものであり、例えば上型40aと下型40bで構成され、金属部材14と金型40の間にはシール41を介装して樹脂が漏洩しないようにしている。この状態で、例えば第1の実施の形態と同様に金型40内に樹脂を注入し、注入された樹脂が硬化したら
図24(b)のように金型40を離型する。その結果、
図25に示すように、少なくとも強化繊維布帛12と金属部材14の係合部16が樹脂部材18で被覆され且つ強化繊維布帛12に樹脂部材18が含浸された状態で繊維強化樹脂体10が構成され、これにより金属-繊維強化樹脂接合部材が完成する。
【0061】
従って、この実施の形態では、前述の第1の実施の形態の効果に加えて、強化繊維布帛12を表裏方向に貫通し且つ折り曲げられて強化繊維布帛12を係止する係止片30を備えて係合部16を構成したことにより、係止片30で強化繊維布帛12を表裏方向に貫通した後、その係止片30を折り曲げるだけで強化繊維布帛12を金属部材14に係合(係止)することができるので、係合部16を簡易に構成することができる。
【0062】
本発明が上記していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。従って、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当とされる特許請求の範囲に記載された発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0063】
10 繊維強化樹脂体
12 強化繊維布帛
14 金属部材
16 係合部
18 樹脂部材
20 貫通穴
21 係合突子
22 強化繊維束
23 凹部
24 係合部材
25 凸部
26 挟着受部(挟着構造)
27 挟着部材(挟着構造)
28 挟着口部(挟着構造)
30 係止片
40 金型