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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-17
(45)【発行日】2022-02-28
(54)【発明の名称】ワーク検査装置及びワーク検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/046 20180101AFI20220218BHJP
【FI】
G01N23/046
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2017202562
(22)【出願日】2017-10-19
(65)【公開番号】P2019074489
(43)【公開日】2019-05-16
【審査請求日】2020-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】512097042
【氏名又は名称】日本装置開発株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋田 拓磨
(72)【発明者】
【氏名】木下 修
【審査官】今浦 陽恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-183958(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0303309(US,A1)
【文献】特開2013-244528(JP,A)
【文献】特開2006-038625(JP,A)
【文献】特開2005-351875(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 - 6/14
G01N 23/00 - 23/2276
G06T 1/00 - 1/40
G06T 3/00 - 5/50
G06T 9/00 - 9/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一の金型(M)で成形された複数のワーク(W)を検査するワーク検査装置(1であって、
上記複数のワークのそれぞれのレントゲン撮影画像(C)を処理する処理装置(20を備え、
上記処理装置は、
上記レントゲン撮影画像による3次元ボリュームデータ(D1)の中から内部欠陥(B,B1,B2)に関する内部欠陥ボクセルデータ(D2)を抽出するデータ抽出部(23)と、
上記複数のワークのそれぞれについて上記データ抽出部によって抽出された上記内部欠陥ボクセルデータから得られる比較用画像データ(D3)を、上記複数のワークに共通の全体形状を示すワーク本体データ(Dw)に対して上記内部欠陥の元の位置である合成位置(P,P1,P2)に合成するデータ合成部(25)と、
上記データ抽出部によって抽出された上記内部欠陥ボクセルデータに基づいて、上記内部欠陥を構成するボクセル集合体(A,A1,A2)を表わす数値化データ(Dc)からこのボクセル集合体と同一の体積を有する簡易図形(S,S1,S2)の図形ボクセルデータ(Ds,Ds1,Ds2,Ds3)を上記比較用画像データとして作成するデータ作成部(24)と、
を有し、
上記データ合成部は、上記データ作成部によって作成された上記図形ボクセルデータを上記ワーク本体データに対して上記合成位置である上記ボクセル集合体の重心(G)の位置に合成する、ワーク検査装置(1
【請求項2】
上記処理装置は、上記データ合成部によって上記ワーク本体データに対して合成された上記比較用画像データの複数が互いに重なる重なり度合いを判別する重なり判別部(26)を有する、請求項1に記載のワーク検査装置。
【請求項3】
上記処理装置は、上記比較用画像データを上記重なり判別部によって判別された上記重なり度合いに応じて予め設定された色相で表示装置(40)に表示させる色相設定部(27)を有する、請求項に記載のワーク検査装置。
【請求項4】
上記ワーク本体データは、上記複数のワークのいずれか1つの上記3次元ボリュームデータの中から上記内部欠陥に相当する3次元ボリュームデータを除いたものである、請求項1~のいずれか一項に記載のワーク検査装置。
【請求項5】
上記処理装置は、上記レントゲン撮影画像を上記3次元ボリュームデータに再構成する再構成演算部(22)を有する、請求項1~のいずれか一項に記載のワーク検査装置。
【請求項6】
上記レントゲン撮影画像を得るためのCT撮影装置(10)を備え、
上記CT撮影装置は、X線発生器(11)と、X線検出器(12)と、上記X線発生器と上記X線検出器との間に回転可能に配置された回転ベース(13)と、を有し、上記回転ベースには上記複数のワークのそれぞれを共通基準位置(Q)に位置決め可能な位置決め治具(14)が取付けられている、請求項1~のいずれか一項に記載のワーク検査装置。
【請求項7】
同一の金型(M)で成形された複数のワーク(W)を検査するワーク検査方法であって、
上記複数のワークのそれぞれのレントゲン撮影画像(C)による3次元ボリュームデータ(D1)の中から内部欠陥(B,B1,B2)に関する内部欠陥ボクセルデータ(D2)を抽出するデータ抽出ステップ(S106)と、
上記複数のワークのそれぞれについて上記データ抽出ステップによって抽出した上記内部欠陥ボクセルデータから得られる比較用画像データ(D3)を、上記複数のワークに共通の全体形状を示すワーク本体データ(Dw)に対して上記内部欠陥の元の位置である合成位置(P,P1,P2)に合成するデータ合成ステップ(S112)と、
上記データ抽出ステップによって抽出した上記内部欠陥ボクセルデータに基づいて、上記内部欠陥を構成するボクセル集合体(A,A1,A2)を表わす数値化データ(Dc)からこのボクセル集合体と同一の体積を有する簡易図形(S,S1,S2)の図形ボクセルデータ(Ds,Ds1,Ds2,Ds3)を上記比較用画像データとして作成するデータ作成ステップ(S111)と、
を有し、
上記データ合成ステップにおいて、上記データ作成ステップによって作成した上記図形ボクセルデータを上記ワーク本体データに対して上記合成位置である上記ボクセル集合体の重心(G)の位置に合成する、ワーク検査方法。
【請求項8】
上記データ合成ステップによって上記ワーク本体データに対して合成した上記比較用画像データの複数が互いに重なる重なり度合いを判別する重なり判別ステップ(S113)を有する、請求項7に記載のワーク検査方法。
【請求項9】
上記比較用画像データを上記重なり判別ステップによって判別した上記重なり度合いに応じて予め設定された色相で表示装置(40)に表示させる色相設定ステップ(S114)を有する、請求項に記載のワーク検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークを検査する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アルミニウム、亜鉛、マグネシウムなど金属材料を金型で鋳造した鋳造品や、樹脂材料を金型で成形した樹脂成形品などのワークに対して、ワーク内部に形成された内部欠陥を非破壊で検査するための装置が種々提案されている。
【0003】
下記の特許文献1には、鋳造品をX線CT撮影装置で撮影することによって内部欠陥の1つである鋳巣を検査する技術が開示されている。この技術は、鋳造品のCT撮影で得られた3次元CTボリュームデータに対して特定のフィルタ処理を実行することによって、鋳造品の内部に形成された鋳巣をその大きさに関係なく検査可能とするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-351875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、鋳造品の内部に発生する鋳巣には、鋳造金型の構造に起因する鋳巣と、実際の鋳造条件の微細な変化などに応じて発生する鋳巣と、が含まれることが知られている。同一の金型で複数の鋳造品を鋳造した場合、鋳造条件の変化に応じて発生する鋳巣が鋳造品の内部にランダムに発生するのに対して、鋳造金型の構造に起因する鋳巣は、鋳造品の内部の概ね共通した領域に集中して発生する。
【0006】
そこで、同一の金型で鋳造した複数のサンプルを上記のX線CT撮影装置で撮影し、レントゲン撮影画像による3次元ボリュームデータに含まれる鋳巣をサンプル間で精度良く比較できれば、鋳巣が発生する要因と金型の構造との関連付けを行うことができる。これにより、鋳巣の発生状況を金型の構造に反映させることが可能になり、高価な金型の開発や改良に要するコストが低く抑えられる。
【0007】
しかしながら、複数のサンプルの3次元ボリュームデータを人手によって統計的に集計して鋳巣の比較を行う場合には多大な工数を要する。このため、工数を低く抑えるためには、複数のサンプルの3次元ボリュームデータをシステム上で合成することが考えられる。
【0008】
ところが、1つのサンプルあたりの3次元ボリュームデータのデータ容量が大きいため、複数の3次元ボリュームデータをシステム上で合成する処理に時間がかかる。特に、上記の関連付けを確かなものにするためには数多くのサンプルが必要になるため、これらのサンプルの3次元ボリュームデータをシステム上で合成すると膨大な時間を要する。
従って、金型の限られた開発期間や改良期間の中でサンプル間での鋳巣の比較を行うのが難しい。かといって、サンプル数を減らすと今度は上記の関連付けの精度が下がるため、鋳巣の発生状況を金型の構造に反映させるという本来の目的を全うするのが難しい。
また、上述のような不具合は、金属材料を金型で鋳造した鋳造品についてのみならず、樹脂材料を金型で成形した樹脂成形品についても同様に生じ得る。
【0009】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、同一の金型で成形された複数のワークのそれぞれの内部欠陥同士を短時間で比較することができるワーク検査技術を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、
同一の金型(M)で成形された複数のワーク(W)を検査するワーク検査装置(1であって、
上記複数のワークのそれぞれのレントゲン撮影画像(C)を処理する処理装置(20を備え、
上記処理装置は、
上記レントゲン撮影画像による3次元ボリュームデータ(D1)の中から内部欠陥(B,B1,B2)に関する内部欠陥ボクセルデータ(D2)を抽出するデータ抽出部(23)と、
上記複数のワークのそれぞれについて上記データ抽出部によって抽出された上記内部欠陥ボクセルデータから得られる比較用画像データ(D3)を、上記複数のワークに共通の全体形状を示すワーク本体データ(Dw)に対して上記内部欠陥の元の位置である合成位置(P,P1,P2)に合成するデータ合成部(25)と、
上記データ抽出部によって抽出された上記内部欠陥ボクセルデータに基づいて、上記内部欠陥を構成するボクセル集合体(A,A1,A2)を表わす数値化データ(Dc)からこのボクセル集合体と同一の体積を有する簡易図形(S,S1,S2)の図形ボクセルデータ(Ds,Ds1,Ds2,Ds3)を上記比較用画像データとして作成するデータ作成部(24)と、
を有し、
上記データ合成部は、上記データ作成部によって作成された上記図形ボクセルデータを上記ワーク本体データに対して上記合成位置である上記ボクセル集合体の重心(G)の位置に合成する、ワーク検査装置(1)、
にある。
【0011】
また、本発明の別態様は、
同一の金型(M)で成形された複数のワーク(W)を検査するワーク検査方法であって、
上記複数のワークのそれぞれのレントゲン撮影画像(C)による3次元ボリュームデータ(D1)の中から内部欠陥(B,B1,B2)に関する内部欠陥ボクセルデータ(D2)を抽出するデータ抽出ステップ(S106)と、
上記複数のワークのそれぞれについて上記データ抽出ステップによって抽出した上記内部欠陥ボクセルデータから得られる比較用画像データ(D3)を、上記複数のワークに共通の全体形状を示すワーク本体データ(Dw)に対して上記内部欠陥の元の位置である合成位置(P,P1,P2)に合成するデータ合成ステップ(S112)と、
上記データ抽出ステップによって抽出した上記内部欠陥ボクセルデータに基づいて、上記内部欠陥を構成するボクセル集合体(A,A1,A2)を表わす数値化データ(Dc)からこのボクセル集合体と同一の体積を有する簡易図形(S,S1,S2)の図形ボクセルデータ(Ds,Ds1,Ds2,Ds3)を上記比較用画像データとして作成するデータ作成ステップ(S111)と、
を有し、
上記データ合成ステップにおいて、上記データ作成ステップによって作成した上記図形ボクセルデータを上記ワーク本体データに対して上記合成位置である上記ボクセル集合体の重心(G)の位置に合成する、ワーク検査方法、
にある。
【発明の効果】
【0012】
上記のワーク検査装置またはワーク検査方法において、ワークのレントゲン撮影画像による3次元ボリュームデータから内部欠陥に関する内部欠陥ボクセルデータが抽出される。この内部欠陥ボクセルデータは、ワーク自体の3次元ボリュームデータに比べてデータ容量が小さい。
従って、複数の3次元ボリュームデータを合成する場合に比べると、この内部欠陥ボクセルデータから得られる比較用画像データをワーク本体データに対してシステム上で合成するときの処理負荷を低く抑えることができる。そして、ワーク本体データに対して合成された比較用画像データ同士の比較によって内部欠陥の発生状況を複数のワーク間で比較できる。
この場合、比較用画像データの合成のための処理負荷が低いため、複数のワークのそれぞれのレントゲン撮影画像を取得してからこれらのレントゲン撮影画像に含まれる内部欠陥を比較するまでの一連の処理を短時間で行うことができる。
【0013】
以上のごとく、上記態様によれば、同一の金型で成形された複数のワークのそれぞれの内部欠陥同士を短時間で比較することができるワーク検査技術を提供できる。
なお、特許請求の範囲及び課題を解決する手段に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態1のワーク検査装置の構成図。
図2図1中のCT撮影装置の回転ベースの周辺構造を示す斜視図。
図3】実施形態1のワーク検査方法のフローチャート。
図4図3のフローチャートにしたがって複数のワークのそれぞれのレントゲン撮影画像を処理する過程を模式的に示す図。
図5】ワークのレントゲン撮影画像による3次元ボリュームデータを模式的に示す図。
図6図5の3次元ボリュームデータに含まれる第1の鋳巣のボクセル集合体を示す図。
図7図5の3次元ボリュームデータに含まれる第2の鋳巣のボクセル集合体を示す図。
図8図6の第1の鋳巣のボクセル集合体から作成される図形ボクセルデータを示す図。
図9図7の第2の鋳巣のボクセル集合体から作成される図形ボクセルデータを示す図。
図10】ワーク本体データに対して複数の図形ボクセルデータが合成された様子を示す図。
図11図10において各図形ボクセルデータのボクセルが色分けされた状態を示す図。
図12参考形態1のワーク検査装置の構成図。
図13参考形態1のワーク検査方法のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、ワーク検査装置及びワーク検査方法に係る実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0016】
なお、本明細書の図面では、特に断わらない限り、ワークの左右方向を矢印Xで示し、このワークの奥行方向を矢印Yで示し、このワークの高さ方向を矢印Zで示すものとする。
【0017】
(実施形態1)
図1に示されるように、実施形態1のワーク検査装置(以下、単に「検査装置」ともいう。)1は、同一の金型で成形された複数のワークWを検査する装置である。本実施形態では、このワークWとして、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム、銅などの金属材料からなる鋳造品(ダイカスト)を想定している。このワークWには鋳造時に空間的な欠陥である内部欠陥としての鋳巣Bが発生する。
【0018】
検査装置1は、CT撮影装置10と、処理装置20と、外部記憶装置30と、表示装置40と、を備えている。
【0019】
CT撮影装置10は、X線を使用してワークWを撮影するためのものである。このCT撮影装置10は、X線発生器11と、X線検出器12と、ワークWを設置するためにX線発生器11とX線検出器12との間に回転軸Lを中心に回転可能に配置された回転ベース13と、を有する。このCT撮影装置10は、「CTスキャン装置」とも称呼される。
【0020】
X線発生器11は、既知の機器でありその構造についての説明は省略するが、電圧により加速した電子を金属に打ち込むことによってX線を発生させるように構成されている。X線検出器12は、X線を検出する機能を有するものであり、本実施形態ではX線2次元カメラによって構成されている。このX線2次元カメラは、撮影素子としてCMOSやアモルファスなどを用いたフラットパネルディテクタ(FPD)である。このX線検出器12は、イーサーネット(LAN)またはカメラリンクなどの接続手段(図示省略)を介して処理装置20に電気的に且つ常時に接続されている。
【0021】
ワークWのCT撮影において、X線検出器12で発生したX線は、回転ベース13上に設置されたワークWの中をエネルギー吸収されながら透過した後にX線検出器12に到達する。そして、このときの透過画像がX線検出器12によって検出される。回転ベース13を回転させながらCT撮影を行うことによって、1つのワークWについて複数枚の2次元のレントゲン撮影画像Cが得られる。これら複数枚のレントゲン撮影画像Cは、撮影された順番でX線検出器12から上記の接続手段を介して処理装置20の記憶部21へ連続的に伝送される。このレントゲン撮影画像Cを、「レントゲン透視画像」或いは「レントゲン透視写真」ということもできる。
【0022】
図2に示されるように、回転ベース13には位置決め治具14が取付けられるのが好ましい。この位置決め治具14は、同一の金型Mで成形された複数のワークWのそれぞれを共通基準位置Qに位置決め可能に構成されている。この目的のために、位置決め治具14は、回転ベース13の固定される固定脚15と、この固定脚15の上方に配置される板状の保持板16と、備え、保持板16の前面には、ワークWを下方から支持するための2つの突出部17と、ワークWに対して共通基準位置Qで係合する2つの突出部18が設けられている。
【0023】
この位置決め治具14によれば、例えば同一の金型Mで成形された第1番目のワークW1から第n番目のワークWnまでのワークWを順次切替えてCT撮影するとき、各ワークWを保持板16に対して共通基準位置Qに簡単に位置決めしてセットできる。
【0024】
ここで、位置決め治具14の保持板16は、垂直方向に対して鋭角θで傾斜するように構成されるのが好ましい。本構成によれば、保持板16にセットされたワークWは、その重量によって保持板16の前面に向けて付勢されることになり、保持板16に安定的に保持される。
【0025】
また、位置決め治具14は、回転ベース13に着脱可能に構成され、且つワークWの種類毎に準備されるのが好ましい。この場合、位置決め治具14を必要に応じて取り替えることによって、ワークWを種類毎に切替えてCT撮影するときに、各ワークWの位置決め作業を簡単に行うことができる。
【0026】
なお、複数のワークWの位置決めのために上記の位置決め治具14を用いる代わりに、処理装置20側の処理において複数枚のレントゲン撮影画像Cに共通の絶対座標を指定するようにしてもよい。
【0027】
図1に戻り説明すると、処理装置20は、複数のワークWのそれぞれのレントゲン撮影画像Cを処理する機能を有するパーソナルコンピューター(以下、「PC」という。)を用いて構成されている。
【0028】
この処理装置20は、その機能を実現するために、記憶部21と、再構成演算部22と、データ抽出部23と、データ作成部24と、データ合成部25と、重なり判別部26と、色相設定部27と、を備えている。この処理装置20を構成するこれらの要素については、必要に応じて複数の要素を1つの要素に統合したり、1つの要素を複数の要素に分割したりすることもできる。
【0029】
記憶部21は、CT撮影装置10のX線検出器12から伝送された複数枚のレントゲン撮影画像Cを一時的に記憶する機能を有する。この記憶部21は、PCのマザーボード上のメモリによって構成されている。なお、処理装置20には、記憶部21と同様の機能を有する外部記憶装置30が取付けられている。この外部記憶装置30は、記憶部21よりも大容量のハードディスクドライブ(HDD)及びソリッドステートドライブ(SSD)の少なくとも一方によって構成されている。
【0030】
再構成演算部22は、CPU或いはGPU(画像ボード)とCT再構成ソフトとを使用して、複数枚のレントゲン撮影画像Cを3次元ボリュームデータD1に再構成する再構成演算を実行するように構成されている。
【0031】
データ抽出部23は、再構成演算部22によって再構成演算された3次元ボリュームデータD1の中から、内部欠陥ボクセルデータである、鋳巣Bに関する鋳巣ボクセルデータD2を抽出する機能を有する。
【0032】
ここで、3次元ボリュームデータD1は、複数枚のレントゲン撮影画像Cを再構成演算することによって作成される。即ち、この3次元ボリュームデータD1は、再構成演算によって直接的に作成される3次元CTボリュームデータである。各ワークWについてこの3次元ボリュームデータD1が得られる。この3次元ボリュームデータD1は、3次元空間をさいの目に細かく区切ったボクセル(最小の立方体(正規格子))の集合体であるボクセル集合体で表わされ、3次元空間内の画像の密度分布を3次元データ配列で表現したものである。具体的には、ボクセルごとにX線の吸収量を蓄えたデータが得られ、各ボクセルに対して1つの画素値(X線の吸収量を示す値)が与えられる。
【0033】
データ作成部24は、データ抽出部23によって抽出された鋳巣ボクセルデータD2に基づいて、鋳巣Bを構成するボクセル集合体Aを表わす数値化データDcを求め、この数値化データDcからボクセル集合体Aと同一の体積を有する簡易図形としての球体Sの図形ボクセルデータDsを比較用画像データD3として作成する機能を有する。
【0034】
本実施形態において、数値化データDcは、球体Sの位置と大きさを特定するための数値によって構成される。具体的な数値化データDcとして、3次元ボリュームデータD1のうち鋳巣Bを構成するボクセル集合体Aの重心Gの3次元座標とこのボクセル集合体Aの体積とのそれぞれの数値が挙げられる。この場合、ボクセル集合体Aの重心Gのxyz座標の値と、ボクセル集合体Aの体積値を使用できる。なお、ボクセル集合体Aの体積値を、この体積値から求められる球体Sの直径値で表わすこともできる。
【0035】
このデータ作成部24によれば、数値化データDcを用いることによって鋳巣Bが球体Sの図形ボクセルデータDsとして再ボクセル化される。このときの処理を「再ボクセル化」或いは「逆ボクセル化」ということもできる。
【0036】
なお、簡易図形である球体Sに代えて、立方体などのような角柱体、円錐体、楕円体をはじめ、他の簡易的な3次元図形を用い、これらの図形の図形ボクセルデータDsを作成するようにしてもよい。要するに、形状が複雑な鋳巣B(ボクセル集合体A)に比べて形状が簡単な簡易図形であれば足りる。
【0037】
データ合成部25は、複数のワークWのそれぞれについてデータ抽出部23によって抽出された鋳巣ボクセルデータD2から得られる図形ボクセルデータDs(比較用画像データD3)を、ワーク本体データDwに対して鋳巣Bの元の位置である合成位置P、即ちボクセル集合体Aの重心Gの位置に合成する機能を有する。
【0038】
ここで、ワーク本体データDwは、複数のワークWのいずれか1つの3次元ボリュームデータD1の中から鋳巣Bに相当する3次元ボリュームデータを除いたものである。
なお、これに代えて、ワークWの全体形状を示すCADデータをワーク本体データDwとして使用することもできる。
【0039】
重なり判別部26は、データ合成部25によってワーク本体データDwに対して合成された図形ボクセルデータDsの複数が互いに重なる重なり度合いを判別する機能を有する。そして、色相設定部27は、この重なり判別部26によって判別された重なり度合いに応じて予め設定された色相で図形ボクセルデータDsを表示装置40に表示させる機能を有する。
【0040】
表示装置40は、処理装置20によるデータや画像の処理で生じる情報を表示可能なPCディスプレイ(モニター)として構成されており、接続手段(図示省略)を介して処理装置20に電気的に接続されている。
【0041】
次に、上記構成の検査装置1を使用した検査方法について図3図11を参照しつつ説明する。
【0042】
図3のフローチャートに示されるように、同一の金型Mで成形された複数のワークWを検査するワーク検査方法は、ステップS101からステップS114までの処理を順次実行することによって達成される。なお、必要に応じてこのフローチャートに別のステップが追加されてもよいし、或いはこのフローチャートの1つのステップが複数のステップに分割されてもよい。
【0043】
ステップS101は、1つのワークWをCT撮影装置10の回転ベース13に対してセットするステップである。このステップS101では、ワークWの位置決めを容易に行うために、上記の位置決め治具14(図2を参照)を使用するのが好ましい。このステップS101によれば、CT撮影装置10を作動させる前の準備が実行される。
【0044】
ステップS102は、ステップS101に次いで、CT撮影装置10を作動させてワークWをCT撮影するステップである。このステップS102では、X線発生器11及びX線検出器12を作動させた状態で回転軸Lを中心に回転ベース13を回転駆動する。このステップS102によれば、ワークWの実際のCT撮影が実施されて、このワークWの複数枚のレントゲン撮影画像Cが得られる。
【0045】
ステップS103は、ステップS102で得られた、ワークWの複数枚のレントゲン撮影画像Cを記憶するステップである。このステップS103によれば、複数枚のレントゲン撮影画像CがCT撮影装置10から処理装置20の記憶部21に伝送されて一時的に記憶される。このステップS103では、複数枚のレントゲン撮影画像Cが、記憶部21に代えて或いは加えて、外部記憶装置30に記憶されてもよい。
【0046】
ステップS104は、複数枚のレントゲン撮影画像Cを3次元ボリュームデータD1に再構成するステップである。このステップS104では、記憶部21に一時的に記憶されている複数枚のレントゲン撮影画像Cを読み出して、これら複数枚のレントゲン撮影画像Cを再構成演算部22のCT再構成ソフトによって3次元ボリュームデータD1に再構成する。このステップS104が全てのワークWについて実行される。
【0047】
例えば、図4に示されるように、第1番目のワークW1について複数枚のレントゲン撮影画像C1が3次元ボリュームデータD1に再構成され、第n番目のワークWnについて複数枚のレントゲン撮影画像Cnが3次元ボリュームデータD1に再構成される。
【0048】
ステップS105は、ステップS104で再構成した3次元ボリュームデータD1を表示装置40に表示するステップである。このステップS105によれば、ユーザは表示装置40において各ワークWを立体として観察することができ、或いは各ワークWの断面を観察することができる。
【0049】
ここで、図5に示されるように、3次元ボリュームデータD1は、内部空間を構成するボクセルaの集合体A(「ボイド」ともいう。)によって構成されている。各ボクセルaの輝度値を閾値に基づいて区分することによって、3次元ボリュームデータD1の中の複数の鋳巣Bを選別できる。
【0050】
ステップS106は、各ワークWのレントゲン撮影画像Cによる3次元ボリュームデータD1の中から、鋳巣Bに関する鋳巣ボクセルデータD2を抽出するデータ抽出ステップである。このステップS106は、データ抽出部23によって全てのワークWの鋳巣Bについて実行される。
【0051】
例えば、図5に示されるように、鋳巣Bの1つである第1の鋳巣B1は、ワークWの位置P1に形成されており、且つボクセル集合体Aの1つであるボクセル集合体A1によって構成されている。同様に、鋳巣Bの1つである第2の鋳巣B2は、ワークWの位置P2に形成されており、且つボクセル集合体Aの1つであるボクセル集合体A2によって構成されている。
従って、このステップS106によれば、これらのボクセル集合体A1,A2が、3次元ボリュームデータD1の中から鋳巣ボクセルデータD2として抽出される。
【0052】
ステップS107は、ステップS106によって抽出した鋳巣ボクセルデータD2を数値化するステップである。具体的には、ボクセル集合体Aを表わす数値化データDcを求める。このステップS107は、データ作成部24によって全てのワークWの鋳巣Bについて実行される。
【0053】
例えば、図4及び図6に示されるように、鋳巣B1についてはこの鋳巣B1を構成するボクセル集合体A1の重心Gの3次元座標(x1,y1,z1)とこのボクセル集合体A1の体積V1とのそれぞれの数値を、ボクセル集合体A1を表わす数値化データDcとしている。この場合、ボクセル集合体A1の体積は、このボクセル集合体A1を構成するボクセルaの数から導出される。
【0054】
同様に、図4及び図7に示されるように、鋳巣B2についてはこの鋳巣B2を構成するボクセル集合体A2の重心Gの3次元座標(x2,y2,z2)とこのボクセル集合体A2の体積V2とのそれぞれの数値を、ボクセル集合体A2を表わす数値化データDcとしている。この場合、ボクセル集合体A2の体積は、このボクセル集合体A2を構成するボクセルaの数から導出される。
【0055】
上記の数値化データDcは、そのデータ容量がワークWの3次元ボリュームデータD1のデータ容量を大幅に下回る。例えば、3次元ボリュームデータD1のデータ容量が数ギガバイトであるのに対して、数値化データDcのデータ容量が数キロバイトになる。
【0056】
ステップS108は、ステップS107によって求めた数値化データDcを記憶部21に一時的に記憶させるステップである。
【0057】
ステップS109は、ワークWの検査数nが所定数kに達したか否かを判定する。このS109では、検査数nが所定数kに達した場合(ステップS109の「Yes」の場合)にはステップS110にすすみ、そうでない場合(ステップS109の「No」の場合)にはステップS101に戻る。なお、ワークWの鋳巣Bの比較精度を高めるために、このときの所定数kを少なくとも30程度にするのが好ましい。
【0058】
ステップS110は、記憶部21から数値化データDcを読み出すステップである。
【0059】
ステップS111は、ステップ110によって読み出した数値化データDcに基づいて、ボクセル集合体Aと同一の体積を有する球体Sの図形ボクセルデータDsを比較用画像データD3として作成するデータ作成ステップである。この図形ボクセルデータDsは、球形Sの3次元ボリュームデータ、即ちボクセル集合体である。これにより、鋳巣Bが再ボクセル化されて、球体Sの図形ボクセルデータDsが作り出される。このステップS111を、「再ボクセル化ステップ」或いは「逆ボクセル化ステップ」ということもできる。このステップS111は、データ作成部24によって全てのワークWの鋳巣Bについて実行される。
【0060】
例えば、図4及び図8に示されるように、鋳巣B1については、ボクセル集合体A1と同一の体積を有する球体S1の図形ボクセルデータDs1を比較用画像データD3として作成する。同様に、図4及び図9に示されるように、鋳巣B2については、ボクセル集合体A2と同一の体積を有する球体S2の図形ボクセルデータDs2を比較用画像データD3として作成する。
【0061】
ステップS112は、ステップS111によって作成した図形ボクセルデータDsを、複数のワークWに共通の全体形状を示すワーク本体データDwに対して鋳巣Bの元の位置である合成位置Pに合成(「積算」ともいう。)するデータ合成ステップである。このステップS112は、データ合成部25によって全てのワークWの鋳巣Bについて実行される。
【0062】
例えば、図4及び図10に示されるように、第1の鋳巣B1については、ボクセル集合体A1に対応した球体S1の図形ボクセルデータDs1を、ワーク本体データDwのうちこの鋳巣B1の元の位置である合成位置P1(図5参照)に合成する。この合成位置P1は、ボクセル集合体A1の重心Gの位置である。
【0063】
同様に、第2の鋳巣B2については、ボクセル集合体A2に対応した球体S2の図形ボクセルデータDs2を、ワーク本体データDwのうちこの鋳巣B2の元の位置である合成位置P2(図5参照)に合成する。この合成位置P2は、ボクセル集合体A2の重心Gの位置である。
【0064】
なお、ワーク本体データDwに対して図形ボクセルデータDsが合成された状態を表示装置40であるPCディスプレイに表示するのが好ましい。この場合、これらワーク本体データDw及び図形ボクセルデータDsがともに3次元ボリュームデータであるため、ユーザはワークWの断面観察を行うことができる。
【0065】
ステップS113は、ステップS112によってワーク本体データDwに対して合成した図形ボクセルデータDsの複数が互いに重なる重なり度合いを判別する重なり判別ステップである。このステップS113は、重なり判別部26によって全てのワークWの鋳巣Bについて実行される。
【0066】
このステップS113によれば、複数のワークWについての図形ボクセルデータDsの重なり度合いを判別できる。本実施形態では、ワーク本体データDwのボクセルaに対して重なっている各図形ボクセルデータDsのボクセルaの重なり数(以下、「ボクセル重なり数」という。)を重なり度合いとして判別する。この重なり数の関する情報は、記憶部21に記憶される。
【0067】
ステップS114は、図形ボクセルデータDsをステップS113によって判別した重なり度合いに応じて予め設定された色相で表示装置40に表示させる色相設定ステップである。このステップS114は、色相設定部27によって全てのワークWの鋳巣Bについて実行される。
【0068】
このステップS114では、例えばワーク本体データDwを黒色や白色などのベース色で表示する一方で、各図形ボクセルデータDsにおいてボクセル重なり数が相対的に多いボクセルaを、ボクセル重なり数が相対的に少ないボクセルよりも目立ち易い色で表示する。このステップS114によれば、ユーザは各ワークWにおける鋳巣Bの発生状況と、全てのワークWにおける鋳巣Bの発生確率を視認できる。
【0069】
ここで、図形ボクセルデータDsのボクセル重なり数の表示態様の一例について図11を参照しつつ説明する。
【0070】
図11に示される例では、ワーク本体データDwのみと重なる1つの図形ボクセルデータDs1と、ワーク本体データDwと重なり且つ互いに重なる2つの図形ボクセルデータDs2と、ワーク本体データDwと重なり且つ互いに重なる3つの図形ボクセルデータDs3と、が示されている。この場合、第1領域R1に属するボクセルaのボクセル重なり数は「1」であり、第2領域R2に属するボクセルaのボクセル重なり数は「2」であり、第3領域R3に属するボクセルaのボクセル重なり数は「3」である。
【0071】
従って、1つの表示形態では、第2領域R2のボクセルaを第1領域R1のボクセルaよりも目立ち易い色相で表示し、且つ第3領域R3のボクセルaを第2領域R2のボクセルaよりも目立ち易い色相で表示することができる。このとき、各領域の間でボクセルaの色相を連続的に変化させてもよいし、或いは各領域の間でボクセルaの色相を段階的に変化させてもよい。
【0072】
例えば、ワークWの数が30である場合、ボクセル重なり数は1から30までの数値に成り得る。そこで、表示装置40であるPCディスプレイに表示される色相がR(赤)、G(緑)、B(青)の組み合わせで成り立ちRGBそれぞれが8ビット(256階調)の情報を持つ場合、RGBそれぞれの階調を適宜に設定して互いに組み合わせることによって、ボクセル重なり数が1から30までの間でのボクセルaの色相を連続的に或いは段階的に変化させることができる。
【0073】
なお、上述のような、ボクセル重なり数に応じてボクセルaを色分けする表示形態に代えて、ボクセルaの重なり密度や重なり面積など、ボクセル重なり数以外のパラメータに応じてボクセルaを色分けする表示形態や、図形ボクセルデータDsの重なり数に応じてこの図形ボクセルデータDsを色分けする表示形態を採用することもできる。
【0074】
また、表示装置40に表示された図形ボクセルデータDsがマウス等の選択手段で選択されたとき、その選択位置におけるボクセルaのボクセル重なり数が表示装置40に数値表示されるように構成するのが好ましい。これにより、ユーザは、ボクセルaのボクセル重なり数を色相の相違によって定性的に把握できるのに加えて、数値によっても定量的に把握することができる。
【0075】
次に、上記の実施形態1の作用効果について説明する。
【0076】
実施形態1によれば、各ワークWのレントゲン撮影画像Cによる3次元ボリュームデータD1から鋳巣Bに関する鋳巣ボクセルデータD2が抽出される。更に、この鋳巣ボクセルデータD2を数値化した数値化データDcを用いて図形ボクセルデータDsが作成される。このときの数値化データDcは、ワークW自体の3次元ボリュームデータD1に比べてデータ容量が小さい。例えば、データ容量が数ギガバイトである3次元ボリュームデータD1に対して、数値化データDcのデータ容量が数キロバイトに抑えられる。
従って、複数の3次元ボリュームデータD1を合成する場合に比べると、この数値化データDcから得られる図形ボクセルデータDsをワーク本体データDwに対してシステム上で合成するときの処理負荷を低く抑えることができる。そして、ワーク本体データDwに対して合成された図形ボクセルデータDs同士の比較によって鋳巣Bの発生状況を複数のワークW間で比較できる。
この場合、図形ボクセルデータDsの合成のための処理負荷が低いため、複数のワークWのそれぞれのレントゲン撮影画像Cを取得してからこれらのレントゲン撮影画像Cに含まれる鋳巣Bを比較するまでの一連の処理を短時間で行うことができる。
【0077】
以上のごとく、実施形態1によれば、同一の金型Mで成形された複数のワークWのそれぞれの鋳巣B同士を短時間で比較することが可能になる。
【0078】
また、実施形態1によれば、ワーク本体データDwに対して合成された図形ボクセルデータDsの複数が互いに重なる重なり度合い(ボクセル重なり数)を判別することによって、鋳巣Bの発生確率を把握できる。特に、図形ボクセルデータDsをボクセル重なり数に応じて予め設定された色相で表示装置40に表示させることによって、ユーザは複数のワークW間で鋳巣Bが集中して発生している箇所を視認できる。
【0079】
これにより、ユーザは、複数のワークWの内部の概ね共通した領域に集中して発生している鋳巣Bを金型Mの構造に起因するものであると判定でき、この鋳巣Bが発生する要因と金型Mの構造との関連付けを行うことができる。一方で、この鋳巣Bを、実際の鋳造条件の微細な変化などに応じてランダムに発生する内部欠陥と区別できる。その結果、鋳巣Bの発生状況を金型Mの構造に反映させることが可能になり、高価な金型Mの開発や改良に要するコストを低く抑えることができる。
【0080】
また、実施形態1によれば、ワーク本体データDwとして、複数のワークWのいずれか1つの3次元ボリュームデータD1を使用することによって、ワーク本体データDwに図形ボクセルデータDsが合成された状態でワークWの断面観察が可能になる。
【0081】
以下、上記の実施形態1に関連する他の実施形態について図面を参照しつつ説明する。他の実施形態において、実施形態1の要素と同一の要素には同一の符号を付しており、当該同一の要素についての説明は省略する。
【0082】
参考形態1
図12に示されるように、参考形態1のワーク検査装置101は、処理装置120の構成についてのみ実施形態1のワーク検査装置1と相違している。
【0083】
処理装置120は、記憶部21と、再構成演算部22と、データ抽出部23と、データ合成部25と、重なり判別部26と、色相設定部27と、を備えている。即ち、この処理装置120は、実施形態1の処理装置20のデータ作成部24に相当する要素を備えていない。
その他の構成は、実施形態1と同様である。
【0084】
図13に示されるように、参考形態1のワーク検査装置101を使用した検査方法は、ステップS201からステップS212までの処理を順次実行することによって達成される。なお、必要に応じてこのフローチャートに別のステップが追加されてもよいし、或いはこのフローチャートの1つのステップが複数のステップに分割されてもよい。
【0085】
ここで、ステップS201からステップS206までの処理及びステップS208の処理は、実施形態1のステップS101からステップS106までの処理及びステップS108の処理(図3を参照)と同じである。従って、以下では、それ以外のステップの処理についてのみ説明する。
【0086】
ステップS207は、ステップS206によって抽出した鋳巣ボクセルデータD2を記憶部21に一時的に記憶させるステップである。この場合、鋳巣ボクセルデータD2は、ボクセル集合体Aを構成する全てのボクセルaの3次元座標として記憶される。
【0087】
ステップS209は、記憶部21から鋳巣ボクセルデータD2を読み出すステップである。
【0088】
ステップS210は、ステップS209によって読み出した鋳巣ボクセルデータD2を、ワーク本体データDwに対して鋳巣Bの元の位置である合成位置Pに合成するデータ合成ステップである。この場合、鋳巣ボクセルデータD2自体が比較用画像データD3となる。このステップS210は、データ合成部25によって全てのワークWの鋳巣Bについて実行される。
【0089】
ステップS211は、ステップS210によってワーク本体データDwに対して合成した鋳巣ボクセルデータD2の複数が互いに重なる重なり度合い(ボクセルaの重なり数)を判別する重なり判別ステップである。このステップS211は、重なり判別部26によって全てのワークWの鋳巣Bについて実行される。
【0090】
ステップS212は、鋳巣ボクセルデータD2をステップS210によって判別した重なり度合いに応じて予め設定された色相で表示装置40に表示させる色相設定ステップである。このステップS212は、色相設定部27によって全てのワークWの鋳巣Bについて実行される。
【0091】
参考形態1によれば、鋳巣ボクセルデータD2(鋳巣Bのボクセル集合体A)がその形状のままでワーク本体データDwに対して合成されるため、表示装置40において合成後の鋳巣Bを精度良く表示させることができる。これにより、ユーザは、実施形態1のような簡易的な球形ではなく、現実の鋳巣Bの形状での観察が可能になる。
【0092】
また、ワーク本体データDwに対して合成される鋳巣ボクセルデータD2のデータ容量は、実施形態1における数値化データDcよりも大きいが、鋳巣Bの体積が相当に小さいため、ワークWの3次元ボリュームデータD1のデータ容量に対しては依然としてこのデータ容量を大幅に下回る。
このため、鋳巣ボクセルデータD2の合成のための処理負荷が低く、複数のワークWのそれぞれのレントゲン撮影画像Cを取得してからこれらのレントゲン撮影画像Cに含まれる鋳巣Bを比較するまでの一連の処理を短時間で行うことができる。
【0093】
また、実施形態1のデータ作成部24、ステップS107のような数値化ステップ、及びステップS111のようなデータ作成ステップをともに省略することができる。
【0094】
その他、実施形態1と同様の作用効果を奏する。
【0095】
本発明は、上記の典型的な実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の応用や変形が考えられる。例えば、上記の実施形態を応用した次の各形態を実施することもできる。
【0096】
上記の実施形態では、処理装置20が再構成演算部22と重なり判別部26と色相設定部27の3つの要素を少なくとも備える場合について例示したが、これに代えて、これら3つの要素の全てが省略された構成(以下、「第1の構成」という。)や、再構成演算部22のみが省略された構成(以下、「第2の構成」という。)や、色相設定部27のみが省略された構成(以下、「第3の構成」という。)や、重なり判別部26及び色相設定部27の両方が省略された構成(以下、「第4の構成」という。)を採用することもできる。
【0097】
例えば、第1の構成の場合には、各ワークWの3次元ボリュームデータD1を記憶部21に予め記憶させ、データ抽出部23によって3次元ボリュームデータD1を記憶部21から読み出してこの3次元ボリュームデータD1の中から鋳巣ボクセルデータD2を抽出すればよい。また、ワーク本体データDwに対して比較用画像データD3が合成された状態を表示装置40に表示させることによって、ユーザは複数のワークWのそれぞれの鋳巣B同士を比較できる。
【0098】
また、第2の構成の場合には、各ワークWの3次元ボリュームデータD1を記憶部21に予め記憶させ、データ抽出部23によって3次元ボリュームデータD1を記憶部21から読み出してこの3次元ボリュームデータD1の中から鋳巣ボクセルデータD2を抽出すればよい。
【0099】
また、第3の構成の場合には、重なり判別部26によって判別された、比較用画像データD3の重なり度合いを色分けすることなく、その重なり度合いを示す数値情報を記憶部21に記憶させることができる。
【0100】
また、第4の構成の場合には、ワーク本体データDwに対して比較用画像データD3が合成された状態を表示装置40に表示させることによって、ユーザは複数のワークWのそれぞれの鋳巣B同士を比較できる。
【0101】
上記の実施形態では、ワークWをCT撮影装置10で撮影しながら処理装置20において画像処理を行う場合について例示したが、これに代えて、処理装置20における画像処理を、ワークWをCT撮影装置10で撮影する操作とは別のタイミングで実行することもできる。
【0102】
上記の実施形態では、CT撮影装置10のX線検出器12が処理装置20に常時に接続される場合について例示したが、これに代えて、CT撮影装置10及び処理装置20を互いに分離させた状態で使用することもできる。
【0103】
上記の実施形態では、ワークWの内部の鋳巣を鋳巣Bとして検査する場合について例示したが、鋳巣以外に割れなどの空間的な鋳巣Bを検査することもできる。
【0104】
上記の実施形態では、X線を使用してワークWのレントゲン撮影画像を得る場合について例示したが、これに代えて、ガンマ線などのようなX線以外の放射線を使用してワークWのレントゲン撮影画像を得るようにしてもよい。
【0105】
上記の実施形態では、金属材料から同一の金型Mで鋳造された複数の鋳造品(ダイカスト)を検査する場合について例示したが、この検査技術を、樹脂材料から同一の金型で成形された複数の樹脂成形品を検査する技術に適用することもできる。
【符号の説明】
【0106】
1,101 ワーク検査装置(検査装置)
10 CT撮影装置
11 X線発生器
12 X線検出器
13 回転ベース
14 位置決め治具
20,120 処理装置
22 再構成演算部
23 データ抽出部
24 データ作成部
25 データ合成部
26 重なり判別部
27 色相設定部
40 表示装置
a ボクセル
A,A1,A2 ボクセル集合体
B,B1,B2 鋳巣(内部欠陥)
C レントゲン撮影画像
D1 3次元ボリュームデータ
D2 鋳巣ボクセルデータ(内部欠陥ボクセルデータ)
D3 比較用画像データ
Dc 数値化データ
Ds,Ds1,Ds2,Ds3 図形ボクセルデータ(比較用画像データ)
Dw ワーク本体データ
G 重心
M 金型
P,P1,P2 合成位置
Q 共通基準位置
S,S1,S2 球体(簡易図形)
W,W1,Wn ワーク
S106,S206 データ抽出ステップ
S111 データ作成ステップ
S112,S210 データ合成ステップ
S113,S211 重なり判別ステップ
S114,S212 色相設定ステップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13