(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-17
(45)【発行日】2022-02-28
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
B60L 15/20 20060101AFI20220218BHJP
B60L 5/00 20060101ALI20220218BHJP
B60L 9/18 20060101ALI20220218BHJP
B60L 53/12 20190101ALI20220218BHJP
B60M 7/00 20060101ALI20220218BHJP
B60W 10/04 20060101ALI20220218BHJP
B60W 10/10 20120101ALI20220218BHJP
B60W 10/08 20060101ALI20220218BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20220218BHJP
H02J 50/10 20160101ALI20220218BHJP
H02J 50/90 20160101ALI20220218BHJP
H02J 50/80 20160101ALN20220218BHJP
【FI】
B60L15/20 S
B60L5/00 B
B60L9/18 P
B60L53/12
B60M7/00 X
B60W10/00 104
B60W10/08
H02J7/00 P
H02J7/00 301D
H02J50/10
H02J50/90
H02J50/80
(21)【出願番号】P 2017224212
(22)【出願日】2017-11-22
【審査請求日】2020-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】守屋 史之
(72)【発明者】
【氏名】岡本 智史
(72)【発明者】
【氏名】堀江 拓也
【審査官】冨永 達朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-010551(JP,A)
【文献】特開2007-244030(JP,A)
【文献】特開2012-016106(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 15/20
B60L 50/40
B60L 5/00
B60L 53/12
B60M 7/00
B60W 10/04
B60W 10/08
H02J 50/10
H02J 50/90
H02J 7/00
B60L 9/18
H02J 50/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行モータである第1動力源と、走行モータ又は内燃機関である第2動力源とを、含んだ複数の動力源と、
前記走行モータへ電力を供給するバッテリと、
前記バッテリを充電する電力を地上設備の給電コイルから非接触で受ける受電コイルと、
前記受電コイルの位置を前記給電コイルに合わせる位置合わせの際に
、前記複数の動力源の中から駆動する動力源を選択する制御部と、
を備え
、
前記制御部は、ギアのシフト位置あるいは前記給電コイルと前記受電コイルとの相対位置に応じて、前記第1動力源を駆動し前記第2動力源を非駆動とする第1状態から、前記第1動力源を非駆動とし前記第2動力源を駆動する第2状態への切り替えと、前記第2状態から前記第1状態への切り替えとを行うことを特徴とする車両。
【請求項2】
前記第1動力源は前輪を駆動する前輪モータ
であり、
前記第2動力源は後輪を駆動する後輪モータ
であることを特徴とする請求項1記載の車両。
【請求項3】
前記制御部は、前記シフト位置がドライブの場合に、前記前輪モータを非駆動とする一方、前記
後輪モータを駆動し、前記シフト位置がリバースの場合に、前記前輪モータを駆動する一方、前記後輪モータを非駆動とすることを特徴とする請求項2記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触に電力を受ける受電コイルと、走行モータとを有する車両に関する。
【背景技術】
【0002】
以前より、車両に受電コイルを設ける一方、地上設備に給電コイルを設け、両者を対向させた状態で給電コイルから受電コイルへ非接触に電力を伝送し、車両の高電圧バッテリを充電する非接触充電システムが検討されている。非接触充電システムでは、電力を伝送する前、給電コイルを弱励磁して、給電コイルと受電コイルとの結合強度を計測しながら、結合強度が高くなるように受電コイルの位置を合わせる処理が行われることが想定される。位置合わせの際には、ドライバーの運転操作又は自動運転等により車両が移動することで受電コイルの位置が合せられる。
【0003】
本発明に関わる従来技術として、特許文献1には、非接触充電システムにおいて車両の受電コイルを給電コイルに位置合わせする際の車両の制御技術について開示されている。また、特許文献2には、複数の走行モータを備えた車両において、いずれかの走行モータのトルクが指令に反して低下したときに他の走行モータをどのように制御するかといった技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-005958号公報
【文献】特開2016-164036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、車両を移動して受電コイルと給電コイルとの位置合わせを行う際、弱励磁された給電コイルの磁界が車両の走行モータに作用した場合に、走行モータの回転位置センサに診断エラーが誘発されるという課題を見出した。回転位置センサの診断エラーが生じると、通常、その走行モータの駆動が禁止されるだけでなく、フェールセーフのために、高電圧バッテリがシステムから切断されるなど、車両が駆動できない状況になる。このため、非接触充電を行うことが困難となる。
【0006】
特許文献1及び特許文献2には、上記の課題を示唆する記載、並びに、この課題を解決する技術の記載はない。
【0007】
また、上記課題を解決するため、走行モータの下方を鉄板などの磁界を遮蔽する遮蔽板でシールドする構成を検討できる。しかし、この構成では、遮蔽板により車両の重量が増加し、部品コストが上昇するという課題が生じる。
【0008】
本発明は、非接触充電が可能な車両において、車両の大きな重量増を招くことなく、受電コイルの位置合わせの際に車両が駆動できない状況となることを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の発明は、
走行モータである第1動力源と、走行モータ又は内燃機関である第2動力源とを、含んだ複数の動力源と、
前記走行モータへ電力を供給するバッテリと、
前記バッテリを充電する電力を地上設備の給電コイルから非接触で受ける受電コイルと、
前記受電コイルの位置を前記給電コイルに合わせる位置合わせの際に、前記複数の動力源の中から駆動する動力源を選択する制御部と、
を備え、
前記制御部は、ギアのシフト位置あるいは前記給電コイルと前記受電コイルとの相対位置に応じて、前記第1動力源を駆動し前記第2動力源を非駆動とする第1状態から、前記第1動力源を非駆動とし前記第2動力源を駆動する第2状態への切り替えと、前記第2状態から前記第1状態への切り替えとを行う車両である。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の車両において、
前記第1動力源は前輪を駆動する前輪モータであり、前記第2動力源は後輪を駆動する後輪モータである構成とした。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の車両において、
前記制御部は、前記シフト位置がドライブの場合に、前記前輪モータを非駆動とする一方、前記後輪モータを駆動し、前記シフト位置がリバースの場合に、前記前輪モータを駆動する一方、前記後輪モータを非駆動とする構成とした。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、受電コイルの位置合わせの際、制御部が、シフト位置又は受電コイルと給電コイルとの相対位置に応じて、複数の動力源の中から駆動する動力源を適宜選択する。したがって、走行モータが給電コイルの磁界に晒されて、この走行モータが駆動困難となるような場合でも、他の動力源を用いて車両を走行させ、受電コイルの位置合わせを遂行することができる。したがって、車両の大きな重量増を招くことなく、受電コイルの位置合わせの際に車両が駆動できなくなる状況を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態1の車両及び地上設備を示すブロック図である。
【
図2】非接触充電移行処理の手順を示すフローチャートである。
【
図3】駆動する動力源の切替え例を示す説明図であり、(A)~(C)は受電コイルの位置合わせ動作の第1段階から第3段階を示す。
【
図4】駆動する動力源の切替え例を示す説明図である、(A)~(C)は受電コイルの位置合わせ動作の第1段階から第3段階を示す。
【
図5】変形例に係る非接触充電移行処理の手順を示すフローチャートである。
【
図6】本発明の実施形態2の車両及び地上設備を示すブロック図である。
【
図7】実施形態2の非接触充電移行処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の各実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1の車両及び地上設備を示すブロック図である。
【0016】
実施形態1の車両1は、複数の走行モータ(前輪モータ10と後輪モータ12)を有し、非接触充電が可能なEV(Electric Vehicle)である。車両1は、
図1に示すように、前輪を駆動する前輪モータ10と、後輪を駆動する後輪モータ12と、前輪モータ10と後輪モータ12とを駆動するインバータ11、13と、走行用の電力を蓄積及び供給する高電圧バッテリ14とを備える。また、車両1は、非接触充電ユニット15と、ドライバーの運転操作等が入力される操作部30と、車両1の制御を行う車両コントローラ20とを備える。また、車両1には、駐車時等に車両1の周囲の状況を確認するためのレーダ21、カメラ22及び駐車支援システム23が設けられている。駐車支援システム23は、レーダ21の出力及びカメラ22の映像に基づいて所定の駐車スペースへ車両1を移動させる自動運転機能を有している。上記構成のうち、前輪モータ10及び後輪モータ12は、本発明に係る走行モータの一例に相当し、車両コントローラ20は、本発明に係る制御部の一例に相当し、高電圧バッテリ14は本発明に係るバッテリの一例に相当する。
【0017】
非接触充電ユニット15は、非接触に電力を受ける受電コイル16と、受電コイル16に流れる交流電流を整流して高電圧バッテリ14に充電電流を供給する整流器17とを備える。また、非接触充電ユニット15は、電力の供給元である地上設備と無線通信(例えばwi-fi通信)するための通信部19と、非接触の電力伝送の制御を行う整流器内コントローラ18とを備える。受電コイル16は、車両1の下部かつ車両1の前後方向における前輪と後輪との間に配置される。
【0018】
操作部30は、ステアリング(ハンドル)31及びその操作量センサ35、ブレーキ及びアクセルなどのペダル32及びその操作量センサ34、SBW(Shift By Wire)33、並びに、非接触充電移行スイッチ36を備える。SBW33は、ドライバーのギアのシフト操作を電子的に入力するシステムであり、SBW33から車両コントローラ20へシフト位置を示す信号が送られる。非接触充電移行スイッチ36は、ドライバーが操作可能なスイッチであり、非接触充電前に車両1の位置合わせを開始することをドライバーが車両1へ通知するためのスイッチである。
【0019】
前輪モータ10と後輪モータ12とには、回転位置を検出するレゾルバ10a、12aがそれぞれ設けられている。レゾルバ10a、12aは、本発明に係る回転位置センサの一例に相当する。レゾルバ10a、12aは、磁気を用いて前輪モータ10及び後輪モータ12の各ロータの回転位置をそれぞれ検出する。前輪モータ10及びレゾルバ10aは車体中央よりも前輪側に配置され、後輪モータ12及びレゾルバ12aは車体中央よりも後輪側に配置される。
【0020】
車両コントローラ20は、SBW33及び操作量センサ34、35の出力に応じて、車両1の操舵制御と前輪モータ10及び後輪モータ12の駆動制御とを行う。これらの制御により、ドライバーの運転操作に応じて車両1が走行する。
【0021】
車両コントローラ20は、レゾルバ10a、12aの出力値から前輪モータ10及び後輪モータ12のロータ回転位置θx、θyを算出する。例えば前輪モータ10のレゾルバ10aの出力値(x、y)は、ロータ回転位置θxに応じてサインカーブ”Sinθx”とコサインカーブ”Cosθx”とに比例して変化する。したがって、車両コントローラ20は、出力値(x、y)を用いて所定の計算を行うことでロータ回転位置θxを求めることかできる。後輪モータ12のロータ回転位置θyについても同様に求められる。車両コントローラ20は、ロータ回転位置θx、θyに応じてインバータ11、13を駆動することで、前輪モータ10及び後輪モータ12から要求トルクをそれぞれ発生させる。
【0022】
さらに、車両コントローラ20は、レゾルバ10a、12aの出力値に異常がないか常に診断処理を行う。レゾルバ10aの出力値(x、y)の二乗和は、正常であれば、ロータ回転位置θxがどの角度位置にあっても一定になる。しかし、例えばレゾルバ10aが外部磁界に晒されるなどした場合に、出力値(x、y)の二乗和が一定値から大きく外れる場合がある。車両コントローラ20は、診断処理として、例えば出力値(x、y)の二乗和と、この二乗和の理想値からのズレ量を演算し、このズレ量が閾値以上になっていないか判別する。そして、車両コントローラ20は、閾値以上であればレゾルバ10aの出力異常であると判断する。車両コントローラ20は、後輪モータ12のレゾルバ12aに対しても同様の診断処理を行う。レゾルバ10a、12aの出力値の診断処理のことを「レゾルバ診断」と呼び、この診断結果が異常である場合を「レゾルバエラー」と呼ぶ。
【0023】
加えて、車両コントローラ20は、車両1の任意のエラー情報を入力し、所定のエラーが生じた場合に、車両1をフェールセーフモードへ遷移させる機能を有する。フェールセーフモードには、車両1を走行禁止とする走行禁止モード、車両1を低速でのみ走行可能とする高速走行禁止モードなどが含まれる。車両コントローラ20は、特別な場合を除く通常時、レゾルバエラーが生じたことに基づいて車両1を走行禁止モードへ遷移させる。
【0024】
地上設備は、非接触に電力を送る給電コイル103、並びに、電力系統から電力を入力して給電コイル103に電流を流すPFC(Power Factor Correction)101及びインバータ102等を備える。また、地上設備には、非接触充電の際に車両1と無線通信を行う通信部106と、車両1と連携しながらインバータ102を駆動して給電コイル103を励磁する地上設備コントローラ105とが設けられている。
【0025】
<非接触充電移行処理>
図2は、車両コントローラ20により実行される非接触充電移行処理の手順を示すフローチャートである。
【0026】
非接触充電移行処理は、ドライバーが非接触充電移行スイッチ36をオン操作することで車両コントローラ20により開始される。ドライバーは、通常、高電圧バッテリ14を充電するために地上設備の近くで非接触充電移行スイッチ36をオン操作し、非接触充電移行処理が開始されたら受電コイル16の位置を給電コイル103に合わせるように車両1を運転する。
【0027】
非接触充電移行処理が開始されると、車両コントローラ20は、整流器内コントローラ18に通信開始を指令し、これにより通信部19が通信を開始する(ステップS1)。通信部19は、先ず、地上設備の通信部106と通信を確立して、通信を開始する。車両コントローラ20は、所定時間内に通信部19が通信を確立したか否かを判別し(ステップS2)、通信確立していれば続くステップに処理を進めるが、タイムアウトになればエラーとして非接触充電移行処理を終了する。通常、車両1が地上設備の近傍にあれば所定時間内に通信が確立されるが、地上設備から離れていれば通信が確立されずにタイムアウトとなる。
【0028】
通信を確立したら、車両コントローラ20は無線通信により地上設備に弱励磁要求を行う(ステップS3)。具体的には、車両コントローラ20は、整流器内コントローラ18に弱励磁要求の指令を出力し、整流器内コントローラ18が通信部19の無線通信により地上設備コントローラ105へ弱励磁要求を発行する。
【0029】
弱励磁要求とは、地上設備の給電コイル103に位置合わせ用の弱い励磁を行わせるための要求である。この弱い励磁により、整流器内コントローラ18は、給電コイル103と受電コイル16との結合強度を検出し、結合強度が所定の閾値を超えた場合に、結合完了として、受電コイル16と給電コイル103とが正確に位置合わせされたことを判定できる。
【0030】
次に、車両コントローラ20は、SBW33の出力に基づき現在のギアのシフト位置を判別する(ステップS4)。このタイミングにおいて、ドライバーは車両1を運転操作して受電コイル16と給電コイル103とを位置合わせしており、前方に受電コイル16があればシフト位置を「D:ドライブ」にしている。また、後方に受電コイル16があればシフト位置を「R:リバース」にしている。
【0031】
ステップS4の判別の結果、シフト位置が「D:ドライブ」であれば、車両コントローラ20は、前輪モータ10のレゾルバ診断(レゾルバ10aの出力診断)をOFF、前輪モータ10のサーボ制御をOFFとする(ステップS5)。ただし、元々、これらがOFFであれば、そのままとする。レゾルバ診断のOFFとは、レゾルバ10aの出力診断動作を停止すること、又は、レゾルバ10aの出力診断の結果をマスクする(制御上の無効とする)ことを意味する。前輪モータ10のサーボ制御OFFとは、インバータ11から前輪モータ10への入出力を停止して、ドライバーの運転操作があっても前輪モータ10が駆動されないようにすること、すなわち駆動制御の停止又は非駆動の状態にすることを意味する。さらに、車両コントローラ20は、後輪モータ12のレゾルバ診断(レゾルバ12aの出力診断)をONし、後輪モータ12のサーボ制御をONとする(ステップS6)。ただし、元々、これらがONであれば、そのままとする。レゾルバ診断ONとは、レゾルバ診断を行って診断結果を有効とすることを意味し、後輪モータのサーボ制御ONとは運転操作に応じてトルクが発生するようにインバータ13を駆動制御可能にすることを意味する。
【0032】
一方、ステップS4の判別の結果、シフト位置が「R:リバース」であれば、車両コントローラ20は、後輪モータ12のレゾルバ診断(レゾルバ12aの出力診断)をOFF、後輪モータ12のサーボ制御をOFFとする(ステップS7)。ただし、元々、これらがOFFであれば、そのままとする。さらに、車両コントローラ20は、前輪モータ10のレゾルバ診断(レゾルバ10aの出力診断)をONし、前輪モータ10のサーボ制御をONとする(ステップS8)。ただし、元々、これらがONであれば、そのままとする。上記のステップS5~S8における、サーボ制御のON、OFFの切替え処理は、本発明に係る制御部による制御動作の一例に相当する。
【0033】
図3は、駆動する動力源の切替え例を示す説明図であり、(A)~(C)は受電コイルの位置合わせ動作の第1段階から第3段階を示す。
【0034】
上述のように、受電コイル16の位置合わせの際にシフト位置がドライブである場合、
図3(A)に示すように、給電コイル103は、受電コイル16よりも前方に位置することが想定される。この場合、受電コイル16の位置合わせの途中、弱励磁された給電コイル103の磁界中を前輪モータ10及びレゾルバ10aが通過する一方、後輪モータ12及びレゾルバ12aは磁界から離間することになる。そこで、上記のステップS5、S6の処理において、前輪モータ10及び後輪モータ12のレゾルバ診断及びサーボ制御のON、OFFが切り替えられる。これにより、
図3(B)及び
図3(C)に示すように、車両1の移動は前輪モータ10の駆動により実現され、受電コイル16の位置合わせの際に後輪モータ12が磁界中を通過しても、車両1の走行に支障が生じることを抑制できる。
【0035】
図4は、駆動する動力源の切替え例を示す説明図である、(A)~(C)は受電コイルの位置合わせ動作の第1段階から第3段階を示す。
【0036】
上述のように、位置合わせの際にシフト位置がリバースである場合、
図4(A)に示すように、給電コイル103は、受電コイル16よりも後方に位置することが想定される。この場合、受電コイル16の位置合わせの途中、弱励磁された給電コイル103の磁界中を後輪モータ12及びレゾルバ12aが通過する一方、前輪モータ10及びレゾルバ10aは磁界から離間することになる。そこで、上記のステップS7、S8の処理において、前輪モータ10及び後輪モータ12のレゾルバ診断及びサーボ制御のON、OFFが切り替えられる。これにより、
図4(B)及び
図4(C)に示すように、車両1の移動は後輪モータ12の駆動により実現され、受電コイル16の位置合わせの際に前輪モータ10が磁界中を通過しても、車両1の走行に支障が生じることを抑制できる。
【0037】
ドライバーの運転により受電コイル16の位置合わせが行われている期間、上記の切替え制御を含んだループ処理(ステップS4~S13)が繰り返される。
【0038】
ステップS4~S13のループ処理中、車両コントローラ20は、レゾルバエラーが発生したか判別する(ステップS9)。受電コイル16の位置合わせの際、ドライバーが車両1を進めすぎてあるいはバックしすぎて、レゾルバ診断ONとしたレゾルバ10a又はレゾルバ12aが給電コイル103の磁界に晒される場合がある。このような場合に、レゾルバエラーが発生して、ステップS9の判別結果がYESとなる。
【0039】
レゾルバエラーが発生したら、通常、車両コントローラ20は、内部で走行禁止モードの要求を行って、前輪モータ10及び後輪モータ12の駆動を停止する。しかし、ここでは、先ず、車両コントローラ20は、走行禁止モードの要求をマスクする(制御上の無効とする)(ステップS10)。さらに、車両コントローラ20は、エラーとなった方の前輪モータ10又は後輪モータ12のサーボ制御をOFFし(ステップS11)、処理をステップS4へ戻す。ステップS10の処理により、レゾルバエラーとなって車両1が駆動できない状態になってしまうことを抑制でき、また、ステップS11の処理により、レゾルバエラーとなった状態のままサーボ制御が続けられてしまうことを抑制できる。ドライバーは、ここでギアのシフト位置を切り替えることで、ステップS4~S8の処理により、給電コイル103から離れた方の前輪モータ10又は後輪モータ12を用いて車両1を動かすことができる。
【0040】
また、ステップS4~S13のループ処理中、車両コントローラ20は、受電コイル16と給電コイル103との結合が完了したか判別し(ステップS12)、結合が完了していなければ所定時間が経過してタイムアウトになったか判別する(ステップS13)。結合の完了の判定は、具体的には、整流器内コントローラ18が給電コイル103の弱励磁に基づく整流器17の電流を検出し、この電流値が結合完了を示す閾値を超えた場合に、これを車両コントローラ20へ通知することで達成される。結合完了の状態は、受電コイル16と給電コイル103との位置が合った状態に相当する。
【0041】
ステップS12、S13の判別の結果、結合が完了せず、タイムアウトでもなければ、車両コントローラ20は、処理をステップS4に戻す。また、タイムアウトとなれば、車両コントローラ20は、整流器内コントローラ18を介して無線通信により地上設備に弱励磁の停止要求を行う(ステップS14)。これにより、給電コイル103の弱励磁が終了し、非接触充電移行処理が終了する。
【0042】
また、ステップS12の判別の結果、結合完了となったら、車両コントローラ20は、ドライバーに受電コイル16の位置合わせが完了したことを表示出力又は音声出力により通知するなどして、車両1を停止させる(ステップS15)。次に、車両コントローラ20は、非接触充電ユニット15を介して高電圧バッテリ14の充電を開始する(ステップS16)。具体的には、車両コントローラ20は、整流器内コントローラ18に充電開始の指令を出力する。整流器内コントローラ18は、この指令に基づき、地上設備コントローラ105へ無線通信により送電要求を行い、地上設備コントローラ105がインバータ102を通常駆動して給電コイル103から送電を行う。この送電により受電コイル16から整流器17に電流が送られ、これにより高電圧バッテリ14が充電される。充電が開始されたら、非接触充電移行処理が終了する。
【0043】
以上のように、実施形態1の車両1によれば、非接触充電移行処理で受電コイル16を給電コイル103に位置合わせする際、車両コントローラ20が、ギアのシフト位置に基づいて、前輪モータ10と後輪モータ12のうちサーボ制御ONとする方を選択する。すなわち、車両コントローラ20が前輪モータ10と後輪モータ12の一方をサーボ制御ONとし、他方をサーボ制御OFFとする。これにより、前輪モータ10と後輪モータ12のうち給電コイル103の磁界に晒されて駆動制御が困難となる可能性のある方を、予めサーボ制御OFFとし、駆動制御を継続できる可能性の高い方で車両1を駆動することができる。したがって、前輪モータ10と後輪モータ12とを重量の大きな遮蔽板で磁界を遮蔽する必要がなくなり、車両1の軽量化を図れる。そして、車両1の軽量化を図りつつ、非接触充電移行処理で受電コイル16の位置合わせ中に、車両1が駆動不可となることを抑制することができる。
【0044】
さらに、実施形態1の車両1によれば、動力源として前輪モータ10と後輪モータ12とを有する。加えて、非接触充電移行処理の受電コイル16の位置合わせの際、車両コントローラ20は、ギアのシフト位置がドライブ「D」であれば前輪モータ10をサーボ制御OFFに、後輪モータ12をサーボ制御ONに切り替える。また、ギアのシフト位置がリバース「R」であれば後輪モータ12をサーボ制御OFFに、前輪モータ10をサーボ制御OFFに切り替える。したがって、負荷の少ない簡潔な制御で、受電コイル16の位置合わせ中に車両1が駆動不可となることを抑制できる。
【0045】
(変形例1)
図5は、非接触充電移行処理の変形例を示すフローチャートである。
【0046】
変形例1は、
図2のステップS4のギアのシフト位置による分岐処理を、他の条件による分岐処理に変更したもので、その他の処理及び構成は実施形態1と同様である。異なる点のみ詳細に説明する。
【0047】
変形例1では、非接触充電移行処理でドライバーの運転操作に並行して実行されるループ処理(ステップS4a~S13)において、先ず、車両コントローラ20は、給電コイル103の位置を検出する(ステップS4a)。位置の検出は、特に制限されないが、例えばカメラ22の映像の解析により行えばよい。地上設備には、位置合わせ用の標識があるので、映像から給電コイル103を直接に検出できなくても、標識を検出することで給電コイル103の位置を検出できる。次いで、車両コントローラ20は、給電コイル103が受電コイル16よりも前方にあるか後方にあるか、すなわち、受電コイル16と給電コイル103との相対位置を判別する(ステップS4b)。その結果、給電コイル103が前方にあればステップS5、S6に処理を分岐し、後方にあればステップS7、S8に処理を分岐する。
【0048】
以上のように、変形例1の車両によれば、非接触充電移行処理中の受電コイル16の位置合わせの際、車両コントローラ20は、受電コイル16と給電コイル103との相対位置に応じて、サーボ制御ONとする前輪モータ10又は後輪モータ12を選択する。したがって、変形例1の車両においても、給電コイル103の磁界の影響を受けない前輪モータ10又は後輪モータ12の駆動により車両を移動させて、受電コイル16の位置合わせを遂行することができ、実施形態1と同様の効果が奏される。
【0049】
(実施形態2)
図6は、本発明の実施形態2の車両及び地上設備を示すブロック図である。
【0050】
実施形態2の車両1Aは、HEV(Plug-in Hybrid Electric Vehicle)であり、例えば、前輪モータ10の代わりにエンジン10Aを有する点で実施形態1と異なる。実施形態1と同様の構成及び処理については詳細な説明を省略する。
【0051】
エンジン10Aは、内燃機関であり、車両コントローラ20が燃料等の制御を行うことで駆動トルクが制御される。エンジン10Aは、車体中央よりも前輪側に配置され、前輪を駆動する。なお、実施形態2において、エンジン10Aはどこに配置されていても良いし、エンジン10Aは後輪モータ12と同じく後輪を駆動する構成としてもよい。エンジン10Aは、本発明に係る動力源の一例に相当する。
【0052】
<非接触充電移行処理>
図8は、実施形態2の非接触充電移行処理の手順を示すフローチャートである。実施形態2の非接触充電移行処理は、ステップS5A、S8A、S11Aが、
図2に示した実施形態1の処理と異なる。
【0053】
実施形態2の非接触充電移行処理では、ステップS4のギアのシフト位置の判別の結果、「D:ドライブ」であれば、車両コントローラ20は、エンジン10AをOFF(ステップS5A)する。さらに、車両コントローラ20は、後輪モータ12のレゾルバ診断をON、サーボ制御をONにする(ステップS6)。一方、シフト位置が「R:リバース」であれば、車両コントローラ20は、後輪モータ12のレゾルバ診断をOFF、サーボ制御をOFFとし(ステップS7)、さらに、エンジンをONする(ステップS8A)。ステップS5A、S6、S7、S8Aの処理は、本発明に係る制御部による制御動作の一例に相当する。
【0054】
また、実施形態2の非接触充電移行処理では、ステップS9でレゾルバエラーと判別された場合、後輪モータ12のレゾルバエラーと確定されるため、ステップS10の後、後輪モータ12のサーボ制御をOFFする(ステップS11A)。
【0055】
このような構成及び制御によっても、受電コイル16の位置合わせの際に、給電コイル103の磁界が後輪モータ12に晒されるような場合に、後輪モータ12とは別の動力源(エンジン10A)が駆動するように選択される。したがって、後輪モータ12が駆動困難となって車両1の走行に支障が生じることを抑制できる。
【0056】
また、実施形態2の後輪モータ12は前輪モータに変更されてもよく、その場合、変更に対応させて、サーボ制御のONとOFFとを切り替える条件を逆にすればよい。また、エンジン10Aは、磁界を十分に遮蔽する構造を持った走行モータに変更されてもよい。
【0057】
以上、本発明の各実施形態について説明した。しかし、本発明は上記実施形態に限られるものでない。例えば、上記実施形態では、走行モータ(前輪モータ10又は後輪モータ12)のサーボ制御をOFFとするときに、この走行モータのレゾルバ診断をOFFとする構成を示した。しかし、レゾルバ診断をOFFにする代わりに、レゾルバ診断の診断結果をマスクしたり、レゾルバエラーに基づき車両を走行禁止モードとする要求をマスクしたりするように構成してもよい。
【0058】
また、上記実施形態では、走行モータとして車両の中央より前方に配置された前輪モータと車両の中央より後方に配置された後輪モータとを示した。しかし、車両には、例えば2つの前輪をそれぞれ駆動する2つの前輪モータあるいは2つの後輪をそれぞれ駆動する2つの後輪モータが設けられていてもよい。また、後輪を駆動する後輪モータが車両の中央より前方に設けられていてもよい。この場合、後輪モータのサーボ制御のONとOFFとを切り替える条件は、後輪モータの配置の変更に対応させて実施形態1の条件の逆にすればよい。
【0059】
また、上記実施形態では、受電コイルを給電コイルに位置合わせする際、ドライバーが運転操作を行って車両を移動する構成を例にとって説明したが、例えば、駐車支援システム23が自動運転を行って位置合わせを行うようにしてもよい。また、上記実施形態では、ドライバーによる非接触充電移行スイッチ36の操作を、受電コイル16の位置合わせ処理の開始契機の一条件として示した。しかし、例えば車両が地上設備に近づいたと車両コントローラ20が検知したことを受電コイルの位置合わせ処理の開始契機の一条件としてもよい。さらに、この検知に加えて、車両が一次停止又は駐車を示す低速になったことを、受電コイルの位置合わせ処理の開始契機の一条件としてもよい。車両が地上設備の近傍に位置したことは、例えば車両コントローラ20がGPS(Global Positioning System)等により車両1の位置を測定し、予め登録されている地上設備の位置データと照合することで遂行すればよい。あるいは、カメラで車両1の周囲を撮影し、画像認識により地上設備を認識することで、車両コントローラ20が地上設備の近傍に入ったことを判定してもよい
【0060】
また、上記実施形態では、車両コントローラ20が、動力源の駆動制御と、駆動する動力源の選択処理と、その他の動力源の駆動制御に付随する処理(レゾルバ診断など)を行う構成を示した。しかし、これらの処理は、2個以上のECU(Electronic Control Unit)が別々に行ったり、2個以上のECUが連携して行ったりしてもよい。その他、実施形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0061】
1、1A 車両
10 前輪モータ
10A エンジン
12 後輪モータ
10a、12a レゾルバ
11、13 インバータ
14 高電圧バッテリ
16 受電コイル
18整流器内コントローラ
19、106 通信部
20 車両コントローラ(制御部)
22 カメラ
23 駐車支援システム
36 非接触充電移行スイッチ
103 給電コイル
105 地上設備コントローラ