(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-17
(45)【発行日】2022-02-28
(54)【発明の名称】リニアアクチュエータ
(51)【国際特許分類】
H02K 33/16 20060101AFI20220218BHJP
B06B 1/04 20060101ALI20220218BHJP
【FI】
H02K33/16 A
B06B1/04 S
(21)【出願番号】P 2017541396
(86)(22)【出願日】2017-08-03
(86)【国際出願番号】 JP2017028226
(87)【国際公開番号】W WO2018030267
(87)【国際公開日】2018-02-15
【審査請求日】2020-08-03
(31)【優先権主張番号】P 2016156896
(32)【優先日】2016-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】武田 正
(72)【発明者】
【氏名】北原 裕士
(72)【発明者】
【氏名】土橋 将生
【審査官】津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-057958(JP,A)
【文献】特開2016-101075(JP,A)
【文献】特開2016-059104(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 33/16
B06B 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定体と、
可動体と、
前記固定体に対して前記可動体を直線的に駆動する磁気駆動機構と、
前記固定体と前記可動体との間に設けられた粘弾性体と、
を有し、
前記固定体は、前記駆動方向に対して直交する第1方向に向いた固定体側第1平面部と、前記第1平面部に前記第1方向で平行に対向する固定体側第2平面部と、を備え、
前記可動体は、前記固定体側第1平面部に対して前記第1方向で平行に対向する可動体側第1平面部と、前記固定体側第2平面部に対して前記第1方向で平行に対向する可動体側第2平面部と、を備え、
前記粘弾性体は、前記固定体側第1平面部と前記可動体側第1平面部との間、および前記固定体側第2平面部と前記可動体側第2平面部との間に設け
られ、
前記固定体は、前記固定体側第1平面部および前記固定体側第2平面部を備えたケースを備え、
前記ケースは、前記第1方向に向いた第1平板部と、前記第1平板部に前記第1方向で平行に対向する第2平板部と、を備え、
前記固定体側第1平面部は、前記第1平板部に形成された開口部を覆うように前記第1平板部の外面に固定された第1固定板からなり、
前記固定体側第2平面部は、前記第2平板部に形成された開口部を覆うように前記第2平板部の外面に固定された第2固定板からなることを特徴とするリニアアクチュエータ。
【請求項2】
前記固定体は、前記駆動方向および前記
第1方向に対して直交する第2方向に向いた固定体側第3平面部と、前記第3平面部に前記第2方向で平行に対向する固定体側第4平面部と、を備え、
前記可動体は、前記固定体側第3平面部に対して前記第2方向で平行に対向する可動体側第3平面部と、前記固定体側第4平面部に対して前記第2方向で平行に対向する可動体側第4平面部と、を備え、
前記粘弾性体は、さらに、前記固定体側第3平面部と前記可動体側第3平面部との間、および前記固定体側第4平面部と前記可動体側第4平面部との間に設け
られ、
前記固定体において、前記ケースは、前記第2方向に向いた第3平板部と、前記第3平
板部に前記第2方向で平行に対向する第4平板部と、を備え、
前記固定体側第3平面部は、前記第3平板部に形成された開口部を覆うように前記第3平板部の外面に固定された第3固定板からなり、
前記固定体側第4平面部は、前記第4平板部に形成された開口部を覆うように前記第4平板部の外面に固定された第4固定板からなることを特徴とする請求項1に記載のリニアアクチュエータ
【請求項3】
前記可動体は、前記粘弾性体のみによって前記固定体に前記駆動方向に移動可能に支持されていることを特徴とする請求項2に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項4】
前記固定体
は、前記ケースの内側に前記磁気駆動機構のコイルを保持する
コイルホルダを備え、
前記可動体は、前記駆動方向の一方側に位置する端板部から前記コイルと前記ケースとの間に向けて前記可動体側第1平面部、前記可動体側第2平面部、前記可動体側
第3平面部および前記可動体側第4平面部が側板部として屈曲した第1ヨークと、前記端板部に固定されて前記コイルと対向して前記コイルと前記磁気駆動機構を構成する永久磁石と、前記永久磁石に対して前記端板部とは反対側に設けられた第2ヨークと、を備えていることを特徴とする請求項2または3に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項5】
前記永久磁石では、前記駆動方向においてN極とS極とが隣り合っている第1磁石と、前記駆動方向において隣り合う位置に設けられ、前記駆動方向においてN極とS極とが隣り合っている第2磁石と、を備え、
前記第1磁石および前記第2磁石は、前記第1磁石と前記第2磁石との間に同一の極を向けていることを特徴とする請求項
4に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項6】
前記第1磁石と前記第2磁石とは、磁性板を介して接合されていることを特徴とする請求項
5に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項7】
前記粘弾性体は、ゲル状ダンパー部材からなることを特徴とする請求項1から4までの何れか一項に記載のリニアアクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動体を直線駆動するリニアアクチュエータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機等の分野では、着信等を振動によって報知するデバイスが用いられており、かかるデバイスとしては、可動体をバネ部材を介して固定体によって支持したリニアアクチュエータを用いることができる(特許文献1、2参照)。特許文献1、2に記載のリニアアクチュエータにおいては、可動体側に設けた磁石と、固定体側に設けたコイルとによって、可動体を軸線方向に駆動する。しかしながら、上記のリニアアクチュエータでは、バネ部材に起因する共振点ピークが存在し、かかる共振点ピークでは、可動体が過度に変位して固定体と衝突するおそれがある。
【0003】
一方、可動体の共振ピークを抑えるために、軸線方向において固定体と可動体とに挟まれた個所にシリコーンゲル(粘弾性体)を配置することが提案されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-7161号公報
【文献】特開2015-8573号公報
【文献】特開平11-44342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、2に記載のリニアアクチュエータにおいて、軸線方向で固定体と可動体とに挟まれた個所に、特許文献3に記載のシリコーンゲル(粘弾性体)を配置すると、可動体が軸線方向に移動するに伴い、粘弾性体が伸縮する。この場合、ダンパーが伸縮する過程でダンパーが可動体に印加する力の大きさが大きく変化するので、可動体の駆動特性における線形性が損なわれる等、可動体を適正に駆動できないという問題点がある。
【0006】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、可動体と固定体との間に粘弾性体を設けた場合でも、可動体を適正に駆動することのできるリニアアクチュエータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係るリニアアクチュエータは、固定体と、可動体と、前記固定体に対して前記可動体を直線的に駆動する磁気駆動機構と、前記固定体と前記可動体との間に設けられた粘弾性体と、を有し、前記固定体は、前記駆動方向に対して直交する第1方向に向いた固定体側第1平面部と、前記第1平面部に前記第1方向で平行に対向する固定体側第2平面部と、を備え、前記可動体は、前記固定体側第1平面部に対して前記第1方向で平行に対向する可動体側第1平面部と、前記固定体側第2平面部に対して前記第1方向で平行に対向する可動体側第2平面部と、を備え、前記粘弾性体は、前記固定体側第1平面部と前記可動体側第1平面部との間、および前記固定体側第2平面部と前記可動体側第2平面部との間に設けられ、前記固定体は、前記固定体側第1平面部、および前記固定体側第2平面部を備えたケースを備え、前記ケースは、前記第1方向に向いた第1平板部と、前記第1平板部に前記第1方向で平行に対向する第2平板部と、を備え、前記固定体側第1平面部は、前記第1平板部に形成された開口部を覆うように前記第1平板部の外面に固定された第1固定板からなり、前記固定体側第2平面部は、前記第2平板部に形成された開口部を覆うように前記第2平板部の外面に固定された第2固定板か
らなることを特徴とする。
【0008】
本発明では、固定体と可動体との間に粘弾性体が設けられており、かかる粘弾性体は、固定体において駆動方向に対して直交する第1方向に向く固定体側平面部(固定体側第1平面部および固定体側第2平面部)と、可動体において固定体側平面部と第1方向で平行に対向する可動体側平面部(可動体側第1平面部および可動体側第2平面部)との間に設けられている。このため、可動体が駆動方向に移動した際、粘弾性体はせん断変形し、その復元力が可動体に印加される。ここで、粘弾性体がせん断変形した際の復元力は、粘弾性体が伸縮した際の復元力と比べて、変形度合による変化が小さい。このため、可動体が移動した際、可動体が粘弾性体から受ける復元力の大きさの変化が小さい。従って、粘弾性体が安定したダンパー特性を安定するので、可動体を適正に駆動することができる。また、粘弾性体は平面部(固定体側平面部および可動体側平面部)に設けられているため、隙間等を発生させずに粘弾性体を固定体側および可動体側に対して固定することができる。それ故、可動体を繰り返し振動させても、粘弾性体が固定体側あるいは可動体側から剥離する等の問題が発生しにくい。しかも、固定体側平面部と可動体側平面部とは平行に対向しているため、粘弾性体は全体にわたって略一定の復元力を可動体に印加するため、ダンパー特性が安定する。また、ケースの内側に可動体を配置した後、開口部を貫通するように粘弾性体を設けることができる。従って、リニアアクチュエータに粘弾性体を設けるのが容易である。
【0009】
本発明において、前記固定体は、前記駆動方向および前記第1方向に対して直交する第2方向に向いた固定体側第3平面部と、前記固定体側第3平面部に前記第2方向で平行に対向する固定体側第4平面部と、を備え、前記可動体は、前記固定体側第3平面部に対して前記第2方向で平行に対向する可動体側第3平面部と、前記固定体側第2平面部に対して前記第2方向で平行に対向する可動体側第4平面部と、を備え、前記粘弾性体は、さらに、前記固定体側第3平面部と前記可動体側第3平面部との間、および前記固定体側第4平面部と前記可動体側第4平面部との間に設けられ、前記固定体において、前記ケースは、前記第2方向に向いた第3平板部と、前記第3平板部に前記第2方向で平行に対向する第4平板部と、を備え、前記固定体側第3平面部は、前記第3平板部に形成された開口部を覆うように前記第3平板部の外面に固定された第3固定板からなり、前記固定体側第4平面部は、前記第4平板部に形成された開口部を覆うように前記第4平板部の外面に固定された第4固定板からなる態様を採用することができる。かかる態様によれば、第1方向の2か所、および第2方向の2か所で、粘弾性体が安定したダンパー特性を安定する等の効果を奏する。また、ケースの内側に可動体を配置した後、開口部を貫通するように粘弾性体を設けることができる。従って、リニアアクチュエータに粘弾性体を設けるのが容易である。
【0010】
本発明において、前記可動体は、前記粘弾性体のみによって前記固定体に前記駆動方向に移動可能に支持されている態様を採用することができる。かかる構成によれば、バネ部材を用いて可動体を支持する必要がないので、構成の簡素化を図ることができる。
【0011】
本発明において、前記固定体は、前記ケースの内側に前記磁気駆動機構のコイルを保持するコイルホルダを備え、前記可動体は、前記駆動方向の一方側に位置する端板部から前記コイルと前記ケースとの間に向けて前記可動体側第1平面部、前記可動体側第2平面部、前記可動体側第3平面部および前記可動体側第4平面部が側板部として屈曲した第1ヨークと、前記端板部に固定されて前記コイルと対向して前記コイルと前記磁気駆動機構を構成する永久磁石と、前記永久磁石に対して前記端板部とは反対側に設けられた第2ヨークと、を備えている態様を採用することができる。
【0013】
本発明において、前記永久磁石は、前記駆動方向においてN極とS極とが隣り合っている第1磁石と、前記駆動方向において隣り合う位置に設けられ、前記駆動方向においてN極とS極とが隣り合っている第2磁石と、を備え、前記第1磁石および前記第2磁石は、前記第1磁石と前記第2磁石との間に同一の極を向けている態様を採用することができる。かかる構成によれば、コイルに鎖交する磁界の密度を高めることができる。
【0014】
本発明において、前記第1磁石と前記第2磁石とは、磁性板を介して接合されている態様を採用することができる。かかる構成によれば、第1磁石と第2磁石とを直接、接合する場合と比べて、第1磁石と第2磁石とを同極の側で接合するのが容易である。
本発明において、前記粘弾性体は、ゲル状ダンパー部材からなる態様を採用することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、固定体と可動体との間に粘弾性体が設けられており、かかる粘弾性体は、固定体において駆動方向に対して直交する第1方向に向く固定体側平面部(固定体側第1平面部および固定体側第2平面部)と、可動体において固定体側平面部と第1方向で平行に対向する可動体側平面部(可動体側第1平面部および可動体側第2平面部)との間に設けられている。このため、可動体が駆動方向に移動した際、粘弾性体はせん断変形し、その復元力が可動体に印加される。ここで、粘弾性体がせん断変形した際の復元力は、粘弾性体が伸縮した際の復元力と比べて、変形度合による変化が小さい。このため、可動体が移動した際、可動体が粘弾性体から受ける復元力の大きさの変化が小さい。従って、粘弾性体が安定したダンパー特性を安定するので、可動体を適正に駆動することができる。また、粘弾性体は平面部(固定体側平面部および可動体側平面部)に設けられているため、隙間等を発生させずに粘弾性体を固定体側および可動体側に対して固定することができる。それ故、可動体を繰り返し振動させても、粘弾性体が固定体側あるいは可動体側から剥離する等の問題が発生しにくい。しかも、固定体側平面部と可動体側平面部とは平行に対向しているため、粘弾性体は全体にわたって略一定の復元力を可動体に印加するため、ダンパー特性が安定する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明を適用したリニアアクチュエータの外観等を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示すリニアアクチュエータのXZ断面図である。
【
図3】
図1に示すリニアアクチュエータのXY断面図である。
【
図4】
図1に示すリニアアクチュエータからケースを外した状態の分解斜視図である。
【
図5】
図1に示すリニアアクチュエータから可動体を外した状態の分解斜視図である。
【
図6】
図5に示す可動体から第1ヨークを外した状態の分解斜視図である。
【
図7】
図5に示す可動体から第2ヨーク等を外した状態の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の説明において、可動体6の駆動方向にZを付し、駆動方向Zの一方側にZ1を付し、他方側にZ2を付して説明する。また、駆動方向Zに対して直交する第1方向にXを付し、駆動方向Zおよび第1方向Xに対して直交する第2方向にYを付して説明する。また、第1方向Xの一方側にX1を付し、第1方向Xの他方側にX2を付し、第2方向Yの一方側にY1を付し、第2方向Yの他方側にY2を付して説明する。
【0018】
(全体構成)
図1は、本発明を適用したリニアアクチュエータ1の外観等を示す斜視図である。
図2は、
図1に示すリニアアクチュエータ1のXZ断面図である。
図3は、
図1に示すリニアアクチュエータ1のXY断面図である。
図4は、
図1に示すリニアアクチュエータ1からケース3を外した状態の分解斜視図である。
【0019】
図1、
図2および
図3に示すリニアアクチュエータ1は、多角形の平面形状を有しており、リニアアクチュエータ1を手にした利用者に対して駆動方向Zの振動によって情報を報知する。例えば、携帯電話機等に内蔵されて着信等を報知する。リニアアクチュエータ1は、ゲーム機の操作部材等として利用することができ、振動等によって新たな感覚を実感することができる。本形態において、リニアアクチュエータ1は、固定体2と、可動体6と、固定体2に対して可動体6を駆動方向Zの一方側Z1および他方側Z2に直線的に駆動する磁気駆動機構5とを有している。磁気駆動機構5は、可動体6に保持された永久磁石8と、固定体2に保持されたコイル51とを備えている。コイル51の端部は配線基板31に接続されており、外部から配線基板31を介してコイル51に給電が行われる。
【0020】
リニアアクチュエータ1は、
図4等を参照して後述するように、固定体2と可動体6との間に設けられた粘弾性体9を有している。本形態において、リニアアクチュエータ1では、固定体2と可動体6との間にバネ部材等が設けられておらず、可動体6は、粘弾性体9のみを介して駆動方向Zに移動可能に固定体2に支持されている。
【0021】
(固定体2の構成)
図5は、
図1に示すリニアアクチュエータ1から可動体6を外した状態の分解斜視図である。固定体2は、リニアアクチュエータ1の外形を規定するケース3と、ケース3の開放端を覆うコイルホルダ4と、ケース3との間にコイルホルダ4を固定する底板30と、底板に支持された配線基板31とを有している。底板30は、コイルホルダ4に対する位置決め用の突起301が形成されている。ケース3は、駆動方向Zの一方側Z1に位置する多角形の天板部34と、天板部34の外縁から駆動方向Zの他方側Z2に延在する多角形の筒状の胴部35とを有している。本形態において、天板部34は、八角形であるが、第1方向Xで対向する2つの辺、および第2方向Yで対向する2つの辺は、他の斜めの辺より長い。このため、天板部34は、略四角形である。
【0022】
従って、胴部35は、第1方向Xの他方側X2に内面を向けた第1平板部36と、第1方向Xの一方側X2に内面を向けて第1平板部36に対して第1方向Xの他方側X1で平行に対向する第2平板部37と、第2方向Yの他方側Y2に内面を向けた第3平板部38と、第2方向Yの一方側Y2に内面を向けて第3平板部38に対して第2方向Yの他方側X1で平行に対向する第4平板部39とを有している。第1平板部36、第2平板部37、第3平板部38および第4平板部39は、駆動方向Zに対して平行である。
【0023】
図3に示すように、第1平板部36、第2平板部37、第3平板部38および第4平板部39の各々には開口部361、371、381、391が形成されており、開口部361、371、381、391は各々、第1平板部36、第2平板部37、第3平板部38および第4平板部39の各々の外面に固定された平板状の第1固定板331(固定体側第1平面部)、第2固定板332(固定体側第2平面部)、第3固定板333(固定体側第3平面部)、および第4固定板334(固定体側第4平面部)によって塞がれている。この状態で、第1固定板331は、第1平板部36の開口部361から第1方向Xの他方側X2に内面を向け、第2固定板332は、第2平板部37の開口部371から第1方向Xの一方側X1に内面を向けて、第1固定板331と第1方向Xで平行に対向している。また、第3固定板333は、第3平板部38の開口部381から第2方向Yの他方側Y2に内面を向け、第4固定板334は、第4平板部39の開口部391から第2方向Yの一方側Y1に内面を向けて、第3固定板333と第2方向Yで平行に対向している。第1固定板331、第2固定板332、第3固定板333および第4固定板334は、駆動方向Zに対して平行である。
【0024】
図2、
図3、
図4および
図5に示すように、コイルホルダ4は、ケース3の開放端側に位置する底板部41と、底板部41から駆動方向Zの一方側Z1に突出した角筒状の角筒部42とを有しており、角筒部42は、ケース3の内側に位置する。角筒部42には、駆動方向Zの他方側Z2に位置する段部421と、駆動方向Zの一方側Z1に位置するフランジ部422との間に凹状のコイル巻回部423とが形成されており、コイル巻回部423には、磁気駆動機構5のコイル51が巻回されている。本形態において、角筒部42は四角形の平面形状を有している。このため、
図3に示すように、コイル51は、第1方向Xの一方側X1で第2方向Yに延在する第1辺部511と、第1方向Xの他方側X2で第2方向Yに延在する第2辺部512と、第2方向Yの一方側Y1で第1方向Xに延在する第3辺部513と、第2方向Yの他方側Y2で第1方向Xに延在する第4辺部514とを有している。
【0025】
(可動体6の構成)
図6は、
図5に示す可動体6から第1ヨークを外した状態の分解斜視図である。
図7は、
図5に示す可動体6から第2ヨーク等を外した状態の分解斜視図である。
【0026】
図2、
図3、
図5、
図6および
図7に示すように、可動体6は、第1ヨーク7、永久磁石8、スリーブ80、および第2ヨーク70を有している。第1ヨーク7は、駆動方向Zの一方側Z1に位置する端板部71と、端板部71の外縁からコイル51とケース3の胴部35との間に向けて屈曲した胴部75とを有している。胴部75は、略四角形の平面形状を有している。このため、
図3に示すように、胴部75は、第1方向Xの一方側X1でコイル51の第1辺部511とケース3の第1固定板331との間に位置する平板部からなる第1側板部76(可動体側第1平面部)と、第1方向Xの他方側X2でコイル51の第2辺部512とケース3の第2固定板332との間に位置する平板部からなる第2側板部77(可動体側第2平面部)とを有している。また、胴部75は、第2方向Yの一方側Y1でコイル51の第3辺部513とケース3の第3固定板333との間に位置する平板部からなる第3側板部78(可動体側第3平面部)と、第2方向Yの他方側Y2でコイル51の第4辺部514とケース3の第4固定板334との間に位置する平板部からなる第4側板部79(可動体側第4平面部)とを有している。第1側板部76、第2側板部77、第3側板部78および第4側板部79は、駆動方向Zに対して平行である。
【0027】
可動体6において、第1ヨーク7の端板部71の内面には永久磁石8が固定されており、永久磁石8は、コイル51と第1方向Xおよび第2方向Yで対向してコイル51と、可動体6を駆動方向Zに直線駆動する磁気駆動機構5を構成している。また。永久磁石8に対して端板部71とは反対側には板状の第2ヨーク70が積層されている。
【0028】
永久磁石8は、駆動方向Zの一方側Z1に設けられた第1磁石81と、第1磁石81に対して駆動方向Zの他方側Z2に隣り合う位置に設けられた第2磁石82とを有しており、第1磁石81および第2磁石82は各々、駆動方向ZにおいてN極とS極とが隣り合うように着磁されている。ここで、第1磁石81および第2磁石82は、第1磁石81と第2磁石82との間に同一の極を向けている。例えば、第1磁石81は、第2磁石82の側がN極に着磁され、第2磁石82と反対側がS極に着磁されている。第2磁石82は、第1磁石81の側がN極に着磁され、第1磁石81と反対側がS極に着磁されている。
【0029】
本形態では、第1磁石81と第2磁石82とは、磁性板83を介して接合されている。より具体的には、第1磁石81は磁性板83と接着剤によって接合されているとともに、第2磁石82は磁性板83と接着剤によって接合されている。また、本形態では、第1磁石81、磁性板83および第2磁石82の周りは、角筒状のスリーブ80で覆われており、スリーブ80の内面は、第1磁石81、磁性板83および第2磁石82と接着剤によって接合されている。スリーブ80は周方向の端部801が結合されたシート部材からなる。
【0030】
(粘弾性体9の構成)
図2、
図3および
図4に示すように、粘弾性体9は、一定厚さの平板状であり、固定体2において第1方向Xに向く固定体側平面部と、可動体6において固定体側平面部と第1方向Xで平行に対向する可動体側平面部との間に設けられている。また、粘弾性体9は、固定体2において第2方向Yに向く固定体側平面部と、可動体6において固定体側平面部と平行に対向する可動体側平面部との間に設けられている。
【0031】
より具体的には、粘弾性体9は、まず、板厚方向を第1方向Xに向けて、ケース3の第1固定板331(固定体側第1平面部)と第1ヨーク7の第1側板部76(可動体側第1平面部)との間に設けられており、第1平板部36の開口部361を貫通して第1固定板331と第1側板部76とに接合されている。また、粘弾性体9は、板厚方向を第1方向Xに向けて、ケース3の第2固定板332(固定体側第2平面部)と第1ヨーク7の第2側板部77(可動体側第2平面部)との間に設けられており、第2平板部37の開口部371を貫通して第2固定板332と第2側板部77とに接合されている。また、粘弾性体9は、板厚方向を第2方向Yに向けて、ケース3の第3固定板333(固定体側第3平面部)と第1ヨーク7の第3側板部78(可動体側第3平面部)との間に設けられており、第3平板部38の開口部381を貫通して第3固定板333と第3側板部78とに接合されている。さらに、粘弾性体9は、板厚方向を第2方向Yに向けて、ケース3の第4固定板334(固定体側第4平面部)と第1ヨーク7の第4側板部79(可動体側第4平面部)との間に設けられており、第4平板部39の開口部391を貫通して第4固定板334と第4側板部79とに接合されている。
【0032】
本形態において、粘弾性体9は、針入度が10度から110度であるシリコーン系ゲルである。針入度とは、JIS-K-2207やJIS-K-2220で規定されており、この値が小さい程、硬いことを意味する。ここで、粘弾性とは、粘性と弾性の両方を合わせた性質のことであり、ゲル状部材、プラスチック、ゴム等の高分子物質に顕著に見られる性質である。従って、ダンパー部材91、92(粘弾性体)として、各種ゲル状部材を用いることができる。また、ダンパー部材91、92(粘弾性体)として、天然ゴム、ジエン系ゴム(例えば、スチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム)、クロロプレンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム等)、非ジエン系ゴム(例えば、ブチルゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等)、熱可塑性エラストマー等の各種ゴム材料及びそれらの変性材料を用いてもよい。
また、粘弾性体9は、その伸縮方向によって、線形あるいは非線形の伸縮特性を備える。例えば、粘弾性体9は、その厚さ方向(軸方向)に押圧されて圧縮変形する際は、線形の成分(バネ係数)よりも非線形の成分(バネ係数)が大きい伸縮特性を備える。これに対して、厚さ方向(軸方向)に引っ張られて伸びる場合は、非線形の成分(バネ係数)よりも線形の成分(バネ係数)が大きい伸縮特性を備える。これにより、粘弾性体9が可動体3と支持体2との間で厚さ方向(軸方向)に押圧されて圧縮変形する際は、粘弾性体9が大きく変形することを抑制できるので、可動体3と支持体2とのギャップが大きく変化することを抑制できる。一方、粘弾性体9が厚さ方向(軸方向)と交差する方向(せん断方向)に変形する場合、いずれの方向に動いても、引っ張られて伸びる方向の変形であるため、非線形の成分(バネ係数)よりも線形の成分(バネ係数)が大きい変形特性を持つ。従って、粘弾性体9では、運動方向によるバネ力が一定となる。それ故、粘弾性体9のせん断方向のバネ要素を用いることにより、入力信号に対する振動加速度の再現性を向上することができるので、微妙なニュアンスをもって振動を実現することができる。なお、粘弾性体9のケース3との固定、および粘弾性体9の第1ヨーク7との固定は、接着剤、粘着剤、あるいはシリコーンゲルの粘着性を利用して行われる。
【0033】
(本形態の動作および主な効果)
本形態のリニアアクチュエータ1において、コイル51への通電を休止している期間、可動体6は、可動体6の質量と粘弾性体9の形状保持力とが釣り合った原点位置にある。この状態で、コイル51に正弦波や反転パルス等を供給すると、可動体6は、磁気駆動機構5によって推進力を受け、粘弾性体9の形状保持力に抗して、駆動方向Zの一方側Z1に移動する。その結果、粘弾性体9は、せん断変形する。その際の可動体6の移動量は、コイル51に供給される電流値と、粘弾性体9の復元力とによって規定される。そして、コイル51への通電を停止すると、粘弾性体9の復元力によって、可動体6が原点位置に戻る。
【0034】
次に、コイル51に逆極性の正弦波や反転パルス等を供給すると、可動体6は、磁気駆動機構5によって推進力を受け、粘弾性体9の形状保持力に抗して、駆動方向Zの他方側Z2に移動する。その結果、粘弾性体9は、せん断変形する。その際の可動体6の移動量は、コイル51に供給される電流値と、粘弾性体9の復元力とによって規定される。そして、コイル51への通電を停止すると、粘弾性体9の復元力によって、可動体6が原点位置に戻る。
【0035】
このような駆動を繰り返すと、可動体6が駆動方向Zで振動する。その際の振動の周波数は、コイル51に供給される電流の周波数によって規定される。従って、振動の強弱や周波数が可変である。なお、コイル51に供給する信号の極性を連続的に切り換えて、可動体6を駆動方向Zで振動させてもよく、この場合も、可動体6の移動量は、コイル51に供給される電流値と、粘弾性体9の復元力とによって規定される。また、駆動電流において極性の負の期間と正の期間とにおいて電圧の変化に対して緩急の差を設ける。その結果、可動体6が駆動方向Zの一方側Z1に移動する際の加速度と可動体6が駆動方向Zの他方側Z2に移動する際の加速度との間に差が発生する。従って、利用者に対して、リニアアクチュエータ1が駆動方向Zの一方側Z1あるいは他方側Z2に移動するような錯覚を感じさせることができる。
【0036】
ここで、粘弾性体9は、固定体2において駆動方向Zに対して直交する第1方向Xに向く固定体側平面部(第1固定板331(固定体側第1平面部)および第2固定板332(固定体側第2平面部)と、可動体6において固定体側平面部と第1方向Xで平行に対向する可動体側平面部(第1側板部76(可動体側第1平面部)および第2側板部77(可動体側第2平面部))との間に設けられている。このため、可動体6が駆動方向Zに移動した際、粘弾性体9はせん断変形し、その復元力が可動体に印加される。従って、粘弾性体9は、可動体6の移動に追従して変形しながら可動体6の振動を吸収する。このため、可動体6の不要な振動を抑制することができる。ここで、粘弾性体9がせん断変形した際の復元力は、粘弾性体9が伸縮した際の復元力と比べて、変形度合による変化が小さい。このため、可動体6が移動した際、可動体6が粘弾性体9から受ける復元力の大きさの変化が小さい。従って、粘弾性体9が安定したダンパー特性を安定するので、可動体6を適正に駆動することができる。また、粘弾性体9は平面部(固定体側平面部および可動体側平面部)に設けられているため、隙間等を発生させずに粘弾性体9を固定体2側および可動体6側に対して固定することができる。それ故、可動体を6繰り返し振動させても、粘弾性体9が固定体2側あるいは可動体6側から剥離する等の問題が発生しにくい。しかも、固定体側平面部と可動体側平面部とは平行に対向しているため、粘弾性体9は全体にわたって略一定の復元力を可動体6に印加するため、ダンパー特性が安定する。
【0037】
また、粘弾性体9は、固定体2において駆動方向Zおよび第1方向Xに対して直交する第2方向Yに向く固定体側平面部(第3固定板333(固定体側第3平面部)および第4固定板334(固定体側第4平面部)と、可動体6において固定体側平面部と第2方向Yで平行に対向する可動体側平面部(第3側板部78(可動体側第3平面部)および第4側板部79(可動体側第2平面部))との間にも設けられている。このため、第1方向Xの2か所、および第2方向Yの2か所で、粘弾性体9が安定したダンパー特性を安定する等の効果を奏する。
【0038】
また、粘弾性体9は、針入度が10度から110度であるシリコーン系ゲルである。このため、粘弾性体9は、ダンパー機能を発揮するのに十分な弾性を有するとともに、粘弾性体9が破断して飛散するような事態が発生しにくい。また、粘弾性体9は、可動体6および固定体2の双方に接着固定されているため、可動体6の移動に伴って粘弾性体9が移動することを防止することができる。
【0039】
また、可動体6は、粘弾性体9のみによって固定体2に駆動方向Zに移動可能に支持されている。このため、バネ部材を用いた場合と違って、バネ部材に起因する共振が発生しない。
【0040】
また、粘弾性体9は、第1ヨーク7の側板部(第1側板部76、第2側板部77、第3側板部78および第4側板部79)と、ケース3の固定板(第1固定板331、第2固定板332、第3固定板333および第4固定板334)との間に設けられている。このため、ケース3の内側に可動体6を配置した後、開口部361、371、381、391を貫通するように粘弾性体9を外側から設けることができる。従って、リニアアクチュエータ1に粘弾性体9を設けるのが容易である。
【0041】
また、永久磁石8において、第1磁石81および第2磁石82は、第1磁石81と第2磁石82との間に同一の極を向けているため、第1磁石81および第2磁石82との間(磁性板83)から発生する磁界の密度が高い。従って、コイル51に鎖交する磁界の密度を高めることができるので、磁気駆動機構5は大きな推力を発生させることができる。この場合でも、第1磁石81と第2磁石82とは、磁性板83を介して接合されているため、第1磁石81と第2磁石82とを直接、接合する場合と比べて、第1磁石81と第2磁石82とを同極の側で接合するのが容易である。
【0042】
[他の実施の形態]
上記実施の形態では、リニアアクチュエータ1に可動体6を支持するバネ部材を設けなかったが、可動体6を支持するバネ部材を設けてもよい。
【0043】
また、上記実施の形態では、粘弾性体9を接着等の方法により固定体2および可動体6に固定したが、粘弾性体9を形成するための前駆体を設けた後、前駆体をゲル化させ、粘弾性体9自身の接着力によって、粘弾性体9を固定体2および可動体6に固定してもよい。
さらに、本形態では、第1磁石81と第2磁石82とは、磁性板83を介して接合されている。これに限定されるものではない。たとえば、1個の永久磁石で対向着磁するように構成されてもよく、たとえば、
図1に示す駆動方向Zにおいて中間部分に同一の極(N極、N極)に着磁され、反対側がS極、S極に着磁した永久磁石を用いてもよい。
【符号の説明】
【0044】
1…リニアアクチュエータ、2…固定体、3…ケース、4…コイルホルダ、5…磁気駆動機構、6…可動体、7…第1ヨーク、8…永久磁石、9…粘弾性体、34…天板部、36…第1平板部、37…第2平板部、38…第3平板部、39…第4平板部、51…コイル、70…第2ヨーク、71…端板部、76…第1側板部(可動体側第1平面部)、77…第2側板部(可動体側第2平面部)、78…第3側板部(可動体側第3平面部)、79…第4側板部(可動体側第4平面部)、80…スリーブ、81…第1磁石、82…第2磁石、83…磁性板、331…第1固定板(固定体側第1平面部)、332…第2固定板(固定体側第2平面部)、333…第3固定板(固定体側第3平面部)、334…第4固定板(固定体側第4平面部)、361、371、381、391…開口部、421…段部、422…フランジ部、423…コイル巻回部、X…第1方向、Y…第2方向、Z…駆動方向