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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-17
(45)【発行日】2022-02-28
(54)【発明の名称】被覆材
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20220218BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20220218BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20220218BHJP
   C09D 201/04 20060101ALI20220218BHJP
   C09D 7/65 20180101ALI20220218BHJP
   C09D 5/18 20060101ALI20220218BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D7/61
C09D7/63
C09D201/04
C09D7/65
C09D5/18
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018022592
(22)【出願日】2018-02-10
(65)【公開番号】P2019137784
(43)【公開日】2019-08-22
【審査請求日】2020-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】510114125
【氏名又は名称】株式会社エフコンサルタント
(72)【発明者】
【氏名】田中 康典
【審査官】松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/062794(WO,A1)
【文献】特開2010-031064(JP,A)
【文献】特表2000-514862(JP,A)
【文献】特開平05-065436(JP,A)
【文献】米国特許第05401793(US,A)
【文献】特開平09-071752(JP,A)
【文献】特開2011-162598(JP,A)
【文献】特開2010-159508(JP,A)
【文献】特開2011-241255(JP,A)
【文献】特開2019-065259(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
その被膜が温度上昇によって炭化断熱層を形成する被覆材であって、
前記被覆材は、被膜表面温度が200℃以上で炭化断熱層を形成する発泡性耐火被覆材であり、
前記被覆材は、樹脂成分、及び耐火性付与粉体を含み、
前記耐火性付与粉体は、発泡剤、炭化剤、難燃剤、及び充填剤を含み、
その被膜のフッ素含有量が10~150mg/kgであることを特徴とする被覆材。
【請求項2】
前記被覆材は、樹脂成分として、フッ素含有樹脂を含むことを特徴とする請求項1に記載の被覆材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な被覆材に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼材や、コンクリート、木材、合成樹脂等の基材を火災から保護する目的として、火災時等の温度上昇によって発泡し、炭化断熱層を形成する被覆材が種々提案されている。このような被覆材としては、合成樹脂に、発泡剤、炭化剤、難燃剤等を配合したものが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、特定の難燃剤を用いることにより良好に炭化層を保持することが可能となり効果的に断熱できることが記載されている。また、特許文献2には、有機質結合材と熱硬化型無機質結合材を含むことにより、鋼材に対する付着性、発泡後の塗膜の均一性、強度等に優れることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平10-7947号公報
【文献】特開平10-110121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1、特許文献2等の被覆材であっても、十分な発泡性が得られない場合や、炭化断熱層(発泡層)の灰化や収縮等の問題が生じ炭化断熱層を安定して形成することができない場合があり、十分な耐熱保護性能を得るためには、まだ改善の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような課題を解決するために本発明者らは、その被膜が火災時等の温度上昇によって炭化断熱層を形成する被覆材について、結合材及び耐火性付与粉体を含み、その被膜のフッ素含有量が特定量であることにより、上記問題を解決し、基材の耐熱保護性能を高めることができることを見出し、本発明の完成に至った。
【0007】
すなわち、本発明は以下の特徴を有するものである。
1.その被膜が温度上昇によって炭化断熱層を形成する被覆材であって、
前記被覆材は、被膜表面温度が200℃以上で炭化断熱層を形成する発泡性耐火被覆材であり、
前記被覆材は、樹脂成分、及び耐火性付与粉体を含み、
前記耐火性付与粉体は、発泡剤、炭化剤、難燃剤、及び充填剤を含み、
その被膜のフッ素含有量が10~150mg/kgであることを特徴とする被覆材。
2.前記被覆材は、樹脂成分として、フッ素含有樹脂を含むことを特徴とする1.に記載の被覆材。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、その被膜が温度上昇によって炭化断熱層を形成する被覆材であって、上記被覆材は、樹脂成分、及び耐火性付与粉体を含み、その被膜のフッ素含有量が特定範囲であることにより、火災時等による温度上昇に際し、優れた発泡性を有するとともに、炭化断熱層の灰化・収縮等を抑制して安定した炭化断熱層を形成し、基材の耐熱保護性を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明をその実施の形態に基づき詳細に説明する。
【0010】
本発明被覆材は、その被膜が火災等による温度上昇(加熱)により炭化断熱層を形成するものであり、前記被覆材は、樹脂成分、及び耐火性付与粉体を必須成分として含み、その被膜のフッ素含有量が10~150mg/kg(好ましくは15~110mg/kg、より好ましくは20~100mg/kg)であるフッ素含有被膜を形成するものである。なお、本発明において「a~b」は「a以上b以下」と同義である。
【0011】
本発明では、被膜中のフッ素含有量が上記範囲を満たすことにより、被膜の温度上昇(好ましくは被膜表面温度が200℃以上、さらに好ましくは250℃以上)によって、優れた発泡性を有するとともに、炭化断熱層の灰化・収縮等を抑制して安定した炭化断熱層を形成し、基材の耐熱保護性を高めることができる。なお、被膜中のフッ素含有量が上記下限以上である場合、炭化断熱層の温度上昇(具体的には、炭化断熱層表面温度が400℃を超えた場合)に伴う炭化断熱層の灰化の進行を抑制することができる。一方、フッ素含有量が上記上限以下である場合には、十分な発泡性を得ることができ、上記効果を高めることができる。特に、高温下において上記効果をいっそう高めることができる。さらに、上記効果に加え、被覆材の流動性が高まり、塗装作業性や成形性等を向上せることができる。また、形成された被膜は、耐熱保護性に加え、耐水性、耐候性、耐汚染性、光反射性、美観性等においても優れた効果を発揮することができる。
【0012】
なお、本発明において、フッ素含有量は、燃焼イオンクロマトグラフィー法にて測定される値である。具体的には、本発明の被覆材を離型紙上に塗付し、標準状態(気温23℃、相対湿度50%)で乾燥させた被膜を、粉砕して20mgを採取し試料とする。次いで、自動試料燃焼装置(「AQF-100」三菱ケミカルアナリテック(株)製)を用い、アルゴン及び酸素雰囲気下、1000℃、10分の条件で試料を加熱し、発生したフッ素の量を、イオンクロマトグラフ(「ICS-1600」サーモフィッシャーサイエンティフィック(株)製)を用いて定量することにより求めることができる。
【0013】
このようなフッ素含有被膜を形成する被覆材は、例えば、以下の(1)及び/または(2)の態様によって得られる。
(1)樹脂成分(A)としてフッ素含有樹脂を含む。
(2)フッ素化合物(B)(フッ素含有樹脂を除く)を含む。
【0014】
上記(1)は、樹脂成分(A)としてフッ素含有樹脂を含む態様であれば特に限定されず、フッ素含有樹脂のみの態様、あるいは、フッ素含有樹脂とそれ以外の合成樹脂を混合した態様も使用できる。本発明被覆材では、フッ素含有樹脂とそれ以外の合成樹脂を混合した態様が好ましい。これにより、本発明の効果を十分に得ることができる。
【0015】
上記(1)におけるフッ素含有樹脂の態様としては、水分散型、水可溶型等の水系樹脂、溶剤可溶型樹脂、非水分散型樹脂等の溶剤系樹脂、あるいは粉末樹脂(ビーズ状、ペレット状を含む)であってもよく、各種硬化剤(架橋剤)、硬化触媒等を使用する態様であってもよい。本発明において、樹脂成分(A)として、フッ素含有樹脂をそれ以外の合成樹脂と混合して使用する場合のフッ素含有樹脂の態様としては、粉末樹脂が好適である。
【0016】
本発明のフッ素含有樹脂としては、例えば、含フッ素モノマーの単独又は共重合体;含フッ素モノマーと、その他の重合性モノマーとの共重合体等が挙げられる。
上記含フッ素モノマーとしては、フルオロオレフィンモノマー、フルオロアルキル基含有アクリル系モノマー等が挙げられる。フルオロオレフィンモノマーしては、例えば、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、等のパーフルオロオレフィン類、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等が挙げられる。フルオロアルキル基含有アクリル系モノマーとしては、例えば、パーフルオロメチルメタクリレート、パーフルオロイソノニルメチルメタクリレート、2-パーフルオロオクチルエチルアクリレート、2-パーフルオロオクチルエチルメタクリレート、トリフルオロエチルアクリレート等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用できる。
【0017】
上記その他の重合性モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n-アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシプロピルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、ヒドロキシペンチルビニルエーテル等のヒドロキシアルキルビニルエーテル;エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノアリルエーテル、トリエチレングリコールモノアリルエーテル等のヒドロキシアリルエーテル;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノ(メタ)アクリレート、アミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有モノマー;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸またはそのモノアルキルエステル、イタコン酸またはそのモノアルキルエステル、フマル酸またはそのモノアルキルエステル等のカルボキシル基含有モノマー;(メタ)アクリルアミド、エチル(メタ)アクリルアミド等のアミド含有モノマー;(メタ)アクリロニトリル等のニトリル基含有モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有モノマー;スチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニルモノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル等のビニルエステル;エチレン、プロピレン等のオレフィン系モノマー等が挙げられ、必要に応じこれらの1種または2種以上が使用できる。
【0018】
このようなフッ素含有樹脂としては、具体的には、ポリビニルフルオライド、ポリビニリデンフルオライド、ポリトリフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレンなどの単独重合体;テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン-クロロトリフルオロエチレン共重合体などの共重合体が例示できる。フッ素含有樹脂は、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0019】
さらに、本発明のフッ素含有樹脂としては、アクリル複合フッ素含有樹脂が好適である。フッ素含有樹脂がアクリル(複合)部分を有することにより、フッ素含樹脂以外の樹脂成分への相溶性、分散性が高まり、本発明の効果を高めることができる。このようなアクリル複合フッ素含有樹脂としては、例えば、アクリル樹脂とフッ素含有樹脂との混合物及び/または反応物が使用でき、特に、粉末状のアクリル複合ポリテトラフルオロエチレンは、被膜中での分散性に優れ、発明の効果をよりいっそう高めることができる。
【0020】
上記アクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを構成成分として含む樹脂であり、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、必要に応じ上述の「その他の重合性モノマー」((メタ)アクリル酸アルキルエステルを除く。例えば、スチレン等の芳香族ビニルモノマー、酢酸ビニルモノマー等のビニルエステル等)を重合して得られる共重合体が使用できる。アクリル複合ポリテトラフルオロエチレン中のアクリル樹脂の含有量は、好ましくは10~90重量%(より好ましくは20~80重量%)である。このような場合、優れた分散性を発揮し、本発明の効果を十分に発揮することができる。
【0021】
アクリル複合ポリテトラフルオロエチレンの製造方法としては、公知の方法であれば特に限定されないが、例えば、ポリテトラフルオロエチレン粒子分散液と、アクリル樹脂分散液を混合し、凝固又は噴霧乾燥により得る方法、ポリテトラフルオロエチレン粒子分散液の存在下で上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル等を重合し、凝固又は噴霧乾燥により得る方法、ポリテトラフルオロエチレン粒子分散液と、アクリル樹脂分散液を混合したラテックス存在下で上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル等を重合し、凝固又は噴霧乾燥により得る方法等が挙げられる。
【0022】
フッ素含有樹脂以外の合成樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれであってもよく、公知のものを使用することができ、その態様としては、水分散型、水可溶型、NAD型、溶剤可溶型、無溶剤型、あるいは粉末樹脂(ビーズ状、ペレット状を含む)等が挙げられ、1液タイプ、2液タイプ等特に限定されず用いることができる。具体的には、熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリブタジエン樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、アクリルスチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル/バーサチック酸ビニルエステル共重合樹脂、酢酸ビニル/エチレン共重合樹脂、酢酸ビニル/バーサチック酸ビニルエステル/アクリル共重合樹脂、酢酸ビニル/アクリル共重合樹脂、ポリエチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、単独又は2種以上で使用できる。
【0023】
本発明の樹脂成分(A)としては、上記フッ素樹脂、及びフッ素含有樹脂以外の合成樹脂として、熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。さらには、フッ素含有樹脂以外の合成樹脂として、アクリル樹脂、スチレン樹脂、アクリルスチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル/エチレン共重合樹脂、等の少なくとも1種を含むことが好ましい。これによって発泡性の点において優れた効果を得ることができる。なお、本発明の樹脂成分(A)としては、ポリオール成分及びイソシアネート成分を含む態様を除くことができる。
【0024】
上記(1)において、樹脂成分(A)中のフッ素含有樹脂の含有量は、被覆材により形成される被膜中のフッ素含有量が10~150mg/kg(好ましくは15~110mg/kg、より好ましくは20~100mg/kg)となるように配合されればよい。具体的には、樹脂成分(A)がフッ素含有樹脂のみで構成される場合には、そのフッ素含有モノマーの含有量を、適宜設定すればよい。また、樹脂成分(A)が、フッ素含有樹脂とそれ以外の合成樹脂を含む場合には、樹脂成分(A)の全量に対して、フッ素含有樹脂は固形分換算で好ましくは0.5~30重量%(より好ましくは1~10重量%)である。
【0025】
また、上記(2)におけるフッ素化合物(B)(フッ素含有樹脂を除く)としては、フッ素含有成分であれば特に限定されず、例えば、フッ素含有の界面活性剤、消泡剤、レベリング剤、等の各種添加剤等が使用できる。
【0026】
上記(2)において、フッ素化合物(B)の含有量は、被覆材により形成される被膜中のフッ素含有量が10~150mg/kg(好ましくは15~110mg/kg、より好ましくは20~100mg/kg)となるように配合されればよい。具体的には、樹脂成分(A)がフッ素含有樹脂を含む場合は、樹脂成分(A)のフッ素含有量によって調整すればよいが、樹脂成分(A)の全量に対して、フッ素化合物(B)を固形分換算で好ましくは0.01~20重量部(より好ましくは0.5~10重量部)である。また、樹脂成分(A)が、フッ素含有樹脂を含まない場合には、樹脂成分(A)の全量に対して、フッ素化合物(B)を固形分換算で好ましくは0.1~30重量部(より好ましくは1~10重量部)である。
【0027】
さらに本発明の被覆材には、耐火性付与粉体を含む。耐火性付与粉体としては、例えば、発泡剤(C)、炭化剤(D)、難燃剤(E)、及び充填剤(F)等が挙げられる。
【0028】
発泡剤(C)としては、例えば、メラミン及びその誘導体、ジシアンジアミド及びその誘導体、アゾビステトラゾーム及びその誘導体、アゾジカーボンアミド、尿素、チオ尿素等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上で使用することができる。発泡剤(C)の含有量は、上記樹脂成分(A)の固形分100重量部に対して、好ましくは10~200重量部(より好ましくは20~150重量部)である。なお、本発明の発泡剤(C)は、火災時等の温度上昇によって被膜に発泡作用を付与するものであり、具体的には、被膜表面の温度が好ましくは200℃以上となった場合に発泡作用を付与するものである。
【0029】
炭化剤(D)としては、例えば、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、デンプン、カゼイン等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上で使用することができる。本発明では、特にペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールが脱水冷却効果と炭化断熱層形成作用に優れている点で好ましい。炭化剤(D)の含有量は、上記樹脂成分(A)の固形分100重量部に対して、好ましくは10~200重量部(より好ましくは20~120重量部)である。なお、本発明の炭化剤(D)は、火災時等の温度上昇によって、上記樹脂成分(a)の炭化とともに脱水炭化することにより、炭化断熱層を形成する作用を付与するものである。
【0030】
難燃剤(E)としては、例えば、トリクレジルホスフェート、ジフェニルクレジルフォスフェート等の有機リン系化合物;塩素化ポリフェニル、塩素化ポリエチレン、塩化ジフェニル、塩化トリフェニル、塩素化パラフィン、五塩化脂肪酸エステル、パークロロペンタシクロデカン、塩素化ナフタレン、テトラクロル無水フタル酸等の塩素化合物;三酸化アンチモン、五塩化アンチモン等のアンチモン化合物;三塩化リン、五塩化リン、リン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム、リン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸メラム、ポリリン酸メレム、リン酸ホウ素、ポリリン酸ホウ素、リン酸アルミニウム、ポリリン酸アルミニウム等のリン化合物;その他ホウ酸亜鉛、ホウ酸ソーダ等の無機質化合物等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上で使用することができる。本発明では、難燃剤(E)として、リン化合物を含むことが好ましい。難燃剤(E)の含有量は、上記樹脂成分(A)の固形分100重量部に対して、好ましくは100~1000重量部(より好ましくは200~800重量部)である。
【0031】
充填剤(F)としては、例えば、タルク、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化チタン、酸化亜鉛、シリカ、粘土、クレー、シラス、マイカ、珪砂、珪石粉、石英粉、硫酸バリウム等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上で使用することができる。充填剤(F)の含有量は、上記樹脂成分(A)の固形分100重量部に対して、好ましくは3~200重量部(より好ましくは5~150重量部)である。
【0032】
さらに、本発明では、上記成分に加えて金属水和物(G)を含むこともできる。金属水和物(G)は、温度上昇時に、脱水反応等による吸熱性を示すものであり、上記充填剤(F)とは異なるものである。このような金属水和物(G)としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用することができる。また、金属水和物(G)の平均粒子径は、好ましくは0.1~20μm(より好ましくは0.2~15μm、さらに好ましくは0.3~8μm、最も好ましくは0.4~3μm)である。金属水和物(G)の含有量は、上記樹脂成分(A)の固形分100重量部に対して、好ましくは1~200重量部(より好ましくは10~100重量部、さらに好ましくは25~80重量部)である。
【0033】
本発明では、充填剤(F)と金属水和物(G)を併用することが好ましく、この場合、充填剤(F)と金属水和物(G)は重量比1:9~9:1(より好ましくは2:8~8:2)とすることが好ましい。この場合、発泡性、特に高温下における炭化断熱層の収縮等を抑制し、安定した炭化断熱層を形成することができるため、本発明の効果を高めることができる。なお、平均粒子径は、レーザ回折式粒度分布測定装置によって測定される。
【0034】
その他、添加剤としては、本発明の効果を著しく阻害しないものであればよく、例えば、顔料、繊維、湿潤剤、可塑剤、滑剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、増粘剤、レベリング剤、分散剤、消泡剤、架橋剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、希釈溶媒等が挙げられる。
【0035】
本発明の被覆材は、以上のような成分を常法により均一に混合することで製造することができる。本発明の被覆材の形態としては、上記構成成分を含む塗材、あるいは上記構成成分を含むシート、等が挙げられる。
【0036】
本発明の被覆材は、建築物・土木構築物等の構造物の表面被覆に適用する発泡性耐火被覆材として好適なものであり、耐熱保護性を付与すべき基材に塗付または貼着することによってその効果を発揮することができる。具体的には、壁、柱、床、梁、屋根、階段、天井、戸等の各種基材に施工することができる。適用可能な基材としては、例えば、コンクリート、モルタル、サイディングボード、押出成形板、石膏ボード、パーライト板、煉瓦、プラスチック、木材、金属、鉄骨(鋼材)、ガラス、磁器タイル等が挙げられる。これら基材は、その表面に、既に被膜が形成されたもの、何らかの下地処理(防錆処理、難燃処理等)が施されたもの、壁紙が貼り付けられたもの等であってもよい。
【0037】
本発明の被覆材が塗材の場合は、使用する樹脂成分の種類に応じて、1液型、2液型いずれの被覆材であってもよい。2液型とは、流通時には主剤と、硬化剤とを、それぞれ別のパッケージに保存した状態とし、使用時(塗付時)にこれらを混合すればよい。
【0038】
また、被覆材を基材に塗付する際には、例えば、スプレー、ローラー、刷毛、こて等の塗付具を使用して、1工程ないし数工程塗り重ねて塗付すれば良く、塗付時には、必要に応じ水や溶剤等で希釈することもできる。最終的に形成される被膜厚は、所望の機能性、適用部位等により適宜設定すれば良いが、好ましくは0.4~5mm程度である。
【0039】
本発明の被覆材を予めシート状に成形する際には、上述の各成分を均一に混合して得られる混合物を、公知の方法によって成形すればよい。各成分の混合時には、必要に応じ溶剤を混合したり、加熱したりすることも可能である。ビーズ状、ペレット状等の結合材を使用する場合は、この結合材の軟化温度まで加熱装置によって加熱し、ニーダー等によって混練しながら、各成分を混合すればよい。得られたシート状の被覆材は、接着剤、釘、鋲等を用いて貼着することができる。
【0040】
本発明のシート状の被覆材の厚みは、適用部位用等に応じて適宜設定すれば良いが、好ましくは0.2~10mm、より好ましくは0.5~6mm程度である。これにより、火災時等の高温に晒された場合に、優れた耐熱保護性を発揮することができる。さらに、シート状の被覆材は、上記構成成分を含むシートのみから構成されていてもよいが、裏面(基材側)に、有機繊維及び/または無機繊維等を含む繊維質シート等の補強材が積層されていてもよい。
【0041】
本発明では、上記被覆材により形成される被膜を保護するために、必要に応じてさらに上塗材を塗付することもできる。このような上塗材は、公知の被覆材を塗付することによって形成することができる。上塗材としては、例えばアクリル樹脂系、ウレタン樹脂系、アクリルシリコン樹脂系、フッ素樹脂系等の被覆材を用いることができる。上塗材の塗付は、公知の塗付方法によれば良く、例えば、スプレー、ローラー、刷毛等の塗装器具を使用することができる。
【実施例
【0042】
以下に実施例を示して、本発明の特徴をより明確にする。但し、本発明は、この範囲には限定されない。
【0043】
(被覆材1~2、4~10)
表1に示す配合に従い、各原料を常法により混合・攪拌し、溶剤で希釈することによって被覆材1~2、4~10を製造した。なお、原料としては以下のものを使用した。
(被覆材3)
表1に示す配合に従い、各原料の混合物を温度120℃に設定した加圧ニーダーで混練してシート用混練物を調製後、無機繊維シートに混練物を積層し圧延ローラーによってシート状に加工し、膜厚1.5mmのシート状被覆材(450mm×1200mm)を作製した。
【0044】
・樹脂成分(A)
樹脂成分(A-1):フッ素含有樹脂(フルオロエチレン・ビニルエーテル交互共重合体)
樹脂成分(A-2):フッ素含有樹脂(アクリル複合ポリテトラフルオロエチレン)
樹脂成分(A-3):アクリルスチレン樹脂
樹脂成分(A-4):酢酸ビニル/エチレン共重合樹脂
・フッ素化合物(B):フッ素含有界面活性剤
【0045】
・発泡剤(C):メラミン
・炭化剤(D):ジペンタエリスリトール
・難燃剤(E):ポリリン酸アンモニウム
・充填剤(F):酸化チタン
・添加剤:分散剤、消泡剤、可塑剤等(フッ素含有化合物を除く)
【0046】
(試験例1~2、4~10)
予めさび止め塗装した鋼板(縦150mm×横70mm×厚さ1.6mm)の片面に被覆材をスプレーで塗付(乾燥膜厚1.5mm)し、常温(25℃)で7日間養生させたものを試験体とし、以下の評価を実施した。
(試験例3)
予めさび止め塗装した鋼板(縦150mm×横70mm×厚さ1.6mm)の片面に被覆材3の無機繊維シート側が鋼板側となるように接着材(アクリル樹脂系)を介して貼着したものを試験体とし、以下の評価を実施した。
【0047】
<耐熱性評価1>
ISO 5660-1 コーンカロリーメーター法に基づき、電気ヒーター(CONEIII、株式会社東洋精機製)を用いて、試験体表面(被覆材側)に50kW/mの輻射熱を15分間放射したときの発泡倍率、及び鋼板裏面温度を測定した。各評価基準は以下の通りである。また、結果は表1に示す。
(発泡倍率)
AA:発泡倍率35倍超
A:発泡倍率25倍超35倍以下
B:発泡倍率20倍超25倍以下
C:発泡倍率15倍超20倍以下
D:発泡倍率15倍以下
(裏面温度)
AA:430℃未満
A:430℃以上470℃未満
B:470℃以上500℃未満
C:500℃以上550℃未満
D:550℃超
【0048】
<耐熱性評価2>
ISO 5660-1 コーンカロリーメーター法に基づき、電気ヒーター(CONEIII、株式会社東洋精機製)を用いて、試験体表面に50kW/mの輻射熱を30分間放射したときの発泡倍率、及び鋼板裏面温度を測定し、さらに灰化性を評価した。発泡倍率、及び鋼板裏面温度の評価基準は上記耐熱性評価1と同様である。灰化性評価基準は以下の通りである。また、結果は表1に示す
【0049】
(灰化性評価)
上記耐熱性評価2において、輻射熱を30分間放射後に形成された炭化断熱層の断面を確認し、灰化(白色)部分の割合を算出した。評価基準は、灰化の少ないものを「A」、灰化が進行したものを「D」とする4段階評価(優:A>B>C>D:劣)とした。
【0050】
【表1】
【0051】
試験例1~9は、耐熱性評価1、耐熱性評価2(加熱試験を延長した高温下)のいずれにおいても、発泡性に優れ、安定して炭化断熱層を形成し、さらには炭化断熱層の収縮を抑制することが可能であり、十分な耐熱保護性能を発揮できるものであった。一方、試験例10では、試験例1~9と比較すると発泡性が低く、さらには、加熱試験を延長した場合において、炭化断熱層の収縮が見られた。