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特許7026535LLC共振回路及びそれを備えた電力変換装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-17
(45)【発行日】2022-02-28
(54)【発明の名称】LLC共振回路及びそれを備えた電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20220218BHJP
【FI】
H02M3/28 Q
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018039956
(22)【出願日】2018-03-06
(65)【公開番号】P2019154206
(43)【公開日】2019-09-12
【審査請求日】2021-01-29
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成26年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構/太陽光発電システム効率向上・維持管理技術開発プロジェクト/太陽光発電システム効率向上技術の開発、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
(73)【特許権者】
【識別番号】000217491
【氏名又は名称】ダイヤゼブラ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 久嗣
【審査官】佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-063711(JP,A)
【文献】特開平11-262253(JP,A)
【文献】特開平10-201230(JP,A)
【文献】特開2011-142765(JP,A)
【文献】特開2003-111430(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング部と共振コンデンサとトランスとを有し、直流入力電圧を前記スイッチング部に受け、該スイッチング部の出力を、前記共振コンデンサを介して前記トランスの1次巻線に与えて共振させる共振部と、
前記トランスの2次巻線と閉ループ回路を形成する昇圧コンデンサ及び整流ダイオードを含み、前記共振部の出力電圧を所定の直流出力電圧に変換して出力する変換部とを備え、
前記閉ループ回路には、所定の制御信号を受けてオンオフすることで、前記昇圧コンデンサの充電電圧を制御する第1スイッチング素子が設けられている
ことを特徴とするLLC共振回路。
【請求項2】
請求項1に記載のLLC共振回路において、
前記昇圧コンデンサは、前記トランスの2次巻線の一端と前記LLC共振回路の一方の出力端子との間に設けられ、
前記整流ダイオード及び前記第1スイッチング素子は、前記昇圧コンデンサの出力側のノードと前記2次巻線の他端との間に直列接続される
ことを特徴とするLLC共振回路。
【請求項3】
請求項1に記載のLLC共振回路において、
前記閉ループ回路の電圧を前記スイッチング部に回生する回生部と、
前記回生部を動作させるか否かをオンオフ制御するものであり、前記第1スイッチング素子がオフするタイミングにあわせてオンする第2スイッチング素子とを備えている
ことを特徴とするLLC共振回路。
【請求項4】
請求項3に記載のLLC共振回路において、
前記回生部は、前記昇圧コンデンサの入力側のノードと前記2次巻線の他端との間に接続される
ことを特徴とするLLC共振回路。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のLLC共振回路と、
前記第1スイッチング素子をオンオフ制御する制御回路とを備えていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項6】
請求項5記載の電力変換装置において、
前記制御回路は、前記共振コンデンサの放電開始時刻から前記第1スイッチング素子をオン制御するまでの時間を調整することで、前記昇圧コンデンサへの充電量を制御する
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項7】
請求項6記載の電力変換装置において、
前記制御回路は、前記閉ループ回路の電流が停止してから前記第1スイッチング素子をオフ制御する
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項8】
請求項5において、
前記制御回路は、前記直流入力電圧及び/又は前記変換部に接続される負荷に応じて前記第1スイッチング素子をオン制御する期間を調整する
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項9】
請求項5において、
前記制御回路は、前記第1スイッチング素子をオンするタイミングを調整することで、前記LLC共振回路の出力電圧値を制御する
ことを特徴とする電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LLC共振回路及びそれを備えた電力変換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電力変換装置において、直流電源の低コスト化のために、低電圧・大電流の直流電力の直流電源を使用することが要請されている。電力変換装置において、低入力電圧で規定の出力電力が取れるようにすると、高入力電圧かつ低負荷のときに、出力電圧の制御が困難になるという問題がある。そこで、特許文献1では、フルブリッジ複合共振型のDC-DCコンバータにおいて、軽負荷時にフルブリッジ複合共振回路をバースト発振に移行させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-142765号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、バースト発振を行うと、高い入力電圧に対してオン/オフ制御を繰り返すので、ノイズが発生し、EMI(Electromagnetic interference)の悪化、制御系の誤動作等を誘発させるおそれがある。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、バースト発振をすることなく、広範囲に出力電圧を制御できるLLC共振回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様に係るLLC共振回路は、スイッチング部と共振コンデンサとトランスとを有し、直流入力電圧を前記スイッチング部に受け、該スイッチング部の出力を、前記共振コンデンサを介して前記トランスの1次巻線に与えて共振させる共振部と、前記トランスの2次巻線と閉ループ回路を形成する昇圧コンデンサ及び整流ダイオードを含み、前記共振部の出力電圧を所定の直流出力電圧に変換して出力する変換部とを備え、前記閉ループ回路には、所定の制御信号を受けてオンオフすることで、前記昇圧コンデンサの充電電圧を制御する第1スイッチング素子が設けられていることを特徴とする。
【0007】
本発明の第2態様に係る電力変換装置は、第1態様に記載のLLC共振回路と、前記第1スイッチング素子をオンオフ制御する制御回路とを備えていることを特徴とする。
【0008】
上記第1及び第2態様では、変換部の閉ループ回路に第1スイッチング素子を設けたので、その第1スイッチング素子のオンオフにより、昇圧コンデンサの充電電圧を制御することができる。これにより、LLC共振回路及びこれを備える電力変換装置(以下、LLC共振回路(電力変換装置)と記載する)の出力電圧を任意の電圧に調整することができる。具体的に、例えば、第1スイッチング素子をオンのままにすれば、トランスの2次巻線電圧の倍電圧が出力される。一方で、第1スイッチング素子をオフのままにすれば、トランスの2次巻線電圧と昇圧コンデンサの充電電圧がキャンセルされ、LLC共振回路(電力変換装置)からの出力電圧はほぼ「0(ゼロ)」になる。すなわち、本態様のような構成にすることで、LLC共振回路(電力変換装置)の出力電圧を、ほぼゼロの状態から所望の出力電圧までの広い範囲で制御することができる。換言すると、第1スイッチング素子のオンオフにより、広範囲の入力電圧および負荷に対して、あらかじめ設定した出力電圧を安定して出力させることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、広範囲の入力電圧および負荷に対して、安定した共振動作を維持しつつ出力電圧を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】電力変換装置の回路構成例を示す図である。
図2A】電力変換装置の動作を説明するための図である。
図2B】電力変換装置の動作を説明するための図である。
図2C】電力変換装置の動作を説明するための図である。
図3図1の電力変換装置の動作例を示す波形図である。
図4図1の電力変換装置の他の動作例を示す波形図である。
図5】一般的なLLC共振回路のスイッチング周波数と出力電圧との関係を示す図である。
図6】本実施形態の電力変換装置のスイッチング素子のオンするタイミングと出力電圧との関係を示す図である。
図7】電力変換装置の他の回路構成例を示す図である。
図8図7の電力変換装置の動作例を示す波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用範囲あるいはその用途を制限することを意図するものではない。
【0012】
図1は本実施形態に係る電力変換装置Aの回路構成例を示した図である。
【0013】
本実施形態に係る電力変換装置Aは、直流電源Eからの直流入力電圧Vi(以下、電源電圧Viという)を受けて、所定の直流出力電圧Vo(以下、単に出力電圧Voという)に変換して負荷RLに出力するLLC共振を用いた電力変換装置である。本電力変換装置Aは、広範囲な入力電圧変動及び/又は負荷変動に対して、安定した共振動作を維持しつつ所望の出力電圧Voを出力させることができる点に特徴がある。
【0014】
以下、具体的に各構成要素について説明する。
【0015】
-電力変換装置の構成-
図1に示すように、電力変換装置Aは、LLC共振回路1と、LLC共振回路1の動作を制御する制御回路4とを備えている。本実施形態において、LLC共振回路とは、トランスの漏れインダクタンス及び励磁インダクタンス並びにコンデンサの共振を利用した共振回路を指すものとする。
【0016】
LLC共振回路1は、電源電圧Viを入力端子INに受け、交流に変換して出力する共振部10と、共振部10の出力を所定の出力電圧Voに変換して出力端子OUTから出力する変換部20を備える。なお、以下の説明において、入力端子INのうち、正極側と負極側とを分けて説明する場合に、符号INP,INMを付して説明する場合がある。同様に、出力端子OUTのうち、正極側と負極側とを分けて説明する場合にそれぞれにOUTP,OUTMを付して説明する場合がある。
【0017】
共振部10は、スイッチング部11と、共振コンデンサC11,C12と、トランスTR1とを備える。
【0018】
スイッチング部11は、正極側の入力端子INPと負極側の入力端子INMとの間に直列に設けられた第1及び第2スイッチング素子Q11,Q12を有する。図1では、第1及び第2スイッチング素子Q11,Q12として、N型のMOS-FETを用いた例を示している。さらに、図1では、MOS-FETと並列に形成される寄生ダイオードをあわせて図示している。寄生ダイオードには、後述する共振動作において、MOS-FETのソースからドレインに向かう電流が通過する。なお、スイッチング部11の構成は、図1の構成に限定されず、同様の機能を有する他のスイッチング回路を適用してもよい。例えば、MOS-FETに対して、寄生ダイオードと並列に接続されるように高速ダイオード素子を外付けしてもよい。
【0019】
共振コンデンサC11,C12は、電流共振用のコンデンサ(以下、第1共振コンデンサC11という)及び電圧共振用のコンデンサ(以下、第2共振コンデンサC12という)を含む。第2共振コンデンサC12は、第1スイッチング素子Q11に並列に接続される。同様に、第1共振コンデンサC11とトランスTR1の1次巻線との直列回路が、第1スイッチング素子Q11に並列に接続される。
【0020】
換言すると、正極側の入力端子INPが、第1共振コンデンサC11を介して、トランスTR1の1次巻線の一端(例えば、巻始端)に接続される。そして、トランスTR1の1次巻線の他端(例えば、巻終端)が、第2スイッチング素子Q12を介して負極側の入力端子INMに接続され、第1電流経路Ia(図2C参照)を形成している。また、第1スイッチング素子Q11と、第1共振コンデンサC11と、トランスTR1の1次巻線とにより、閉ループ回路が形成されていて、第2電流経路Ib(図2A参照)を形成している。
【0021】
なお、本開示において、「接続」との用語には、電気的に接続されるもの全般が含まれるものとする。すなわち、「接続」とは、直接接続されたものに限定されず、例えば、抵抗素子や半導体素子等を介して電気的に接続されるものを含む概念である。
【0022】
変換部20は、共振部10から出力された電圧を、所定の出力電圧Voに変換して出力する回路である。具体的に、変換部20は、トランスTR1の2次巻線の一端(例えば、巻始端)と正極出力端子OUTPとの間に直列接続された第2コンデンサC21とダイオードD22とを備える。ダイオードD22は、トランスTR1の2次巻線の一端から正極側の出力端子OUTPに向かって順方向に接続される。トランスTR1の2次巻線の他端(例えば、巻終端)は、負極側の出力端子OUTMに接続される。
【0023】
変換部20は、さらに、第2コンデンサC21とダイオードD22との間の中間ノードN21と負極側の出力端子OUTMとの間に、直列に接続された整流ダイオードD21及び第1スイッチング素子としての充電制御用スイッチング素子Q21(以下、充電制御スイッチQ21という)を備える。整流ダイオードD21は、上記中間ノードN21から負極側の出力端子OUTMに向かう方向に対して逆方向に接続される。また、両出力端子OUT間に、出力コンデンサC22が接続される。
【0024】
換言すると、変換部20では、トランスTR1の2次巻線と、第2コンデンサC21と、整流ダイオードD21と、充電制御スイッチQ21によって閉ループ回路21(第3電流経路Ic(図2B参照))を形成している。また、正極側の出力端子OUTPから第2コンデンサC21を介して、トランスTR1の2次巻線を経由して出力端子OUTMへと接続されており、第4電流経路Id(図2C参照)を形成している。
【0025】
制御回路4は、電力変換装置A全体の動作を制御するものであり、例えば、IC(Integrated Circuit)で実現することができる。制御回路4は、例えば、自機内にあらかじめ登録されたプログラムやシーケンス等にしたがって動作する。より具体的に、制御回路4は、例えば、スイッチング部11の第1及び第2スイッチング素子Q11,12、並びに変換部20の充電制御スイッチQ21を、それぞれオンオフ制御するための制御信号Vg11,Vg12,Vg21を出力する。
【0026】
-電力変換装置の動作-
次に、電力変換装置Aの動作について、図2A図2C図3図4を参照しつつ具体的に説明する。図2A図2Cでは、各タイミングでのスイッチング素子のオン、オフの状態と、電流の流れる方向を模式的に示している。また、図3,4は、それぞれ、タイミングチャートの一例を示している。
【0027】
なお、各スイッチング素子Q11,Q12,Q21は、図3図4の信号波形が「HIGH」のときにオンし、「LOW」のときオフするものとして説明する。また、図2A図2Cでは、説明を理解しやすくするために、スイッチング素子Q11,Q12,Q21を構成するMOS-FETを、単純な接点記号で示している。また、以下の説明の時間Taの前に、時間Ta~Tdの一連のプロセスを経ているものとする。
【0028】
また、説明の便宜上、1次側電流I1及び2次側電流I2の方向について以下のように定義する。1次側電流I1は、正極側の入力端子INPから負極側の入力端子INMに向かう方向(トランスTR1の1次巻線の巻始側から巻終側に向かう方向)を「順方向」、その反対を「逆方向」とする。同様に、変換部20では、正極側の出力端子OUTPから負極側の出力端子OUTMに向かう方向(トランスTR1の2次巻線の巻始側から巻終側に向かう方向)を「順方向」、その反対を「逆方向」とする。
【0029】
さらに、スイッチング素子Q11に流れる電流をIDH、スイッチング素子Q12に流れる電流をIDLと記載する。また、1次側電流I1とは、共振部10を含む電力変換装置Aの1次側回路に流れる電流であり、2次側電流I2とは、変換部20を含む電力変換装置Aの2次側回路に流れる電流である。
【0030】
(期間Taの動作)
まず、図3の期間Taでの電力変換装置Aの動作について説明する。
【0031】
図3の期間Taの始点である時刻T31において、制御回路4は、第1スイッチング素子Q11(Vg11)をオンさせ、第2スイッチング素子Q12(Vg12)をオフさせる。
【0032】
具体的に、期間Taの前の期間Tdにおいて、共振部10では、共振現象により電流が第1スイッチング素子Q11のソース側からドレイン側に向かって流れている。すなわち、第1スイッチング素子Q11に流れる電流IDHがマイナスである。制御回路4は、この電流IDHがマイナスの期間中に、第1スイッチング素子Q11をオンさせる。ここでは、その第1スイッチング素子Q11をオンさせる時刻をT31としている。
【0033】
その後、電流IDHがプラスに転じ、電力変換装置Aの1次側回路には、第2電流経路Ibに図2Aに矢印で示す方向の1次側電流I1が流れる。このときの1次側電流I1は、共振コンデンサC11,C12とトランスTR1との共振電流であり、正弦波状に変化する電流である(図3参照)。これにより、トランスTR1の1次巻線には、順方向(図2で下向き)の1次巻線電圧V1が誘起される。
【0034】
変換部20では、トランスTR1の2次巻線に、逆方向(図2で下向き)の2次巻線電圧V2が誘起される。ただし、期間Taでは、変換部20の充電制御スイッチQ21がオフ制御されているので、第3電流経路Ic(閉ループ回路21)には電流が流れない。また、ダイオードD22にブロックされるので、第4電流経路Idにも電流が流れない。したがって、この期間の2次側電流I2は、「0(ゼロ)」である。
【0035】
(期間Tbの動作)
次に、図3の期間Tbでの電力変換装置Aの動作について説明する。
【0036】
制御回路4は、第1スイッチング素子Q11をオン制御した時刻T31(Vg11がLowからHighになった時)から所定時間Taが経過した時刻T32に、充電制御スイッチQ21(Vg21)をオンさせる。このとき、制御回路4は、第1スイッチング素子Q11のオン制御、及び第2スイッチング素子Q12のオフ制御を継続している。そうすると、第1スイッチング素子Q11に流れる電流IDHがさらに増加し、それに応じて、第2電流経路Ib(図2Aの矢印参照)に流れる電流が増加する。これにより、変換部20では、2次巻線電圧V2が誘起され続ける。
【0037】
変換部20では、上記2次巻線電圧V2により、第3電流経路Icに逆方向の電流(2次側電流I2)が流れる(図2Bの2次側矢印参照)。
【0038】
この逆方向電流により、充電制御スイッチQ21のオン期間に応じた電荷が第2コンデンサC21に充電される。すなわち、第2コンデンサC21が、充電制御スイッチQ21のオン期間に応じた充電電圧に充電される。このとき、2次側電流I2は、第1スイッチング素子Q11がオフされるまで上昇を続ける。すなわち、期間Tbの間、2次側電流I2は上昇を続ける。一方で、1次側電流I1は、期間Tbの間「0(ゼロ)」に向かって徐々に減少する。
【0039】
(期間Tcの動作)
次に、図3の期間Tcでの電力変換装置Aの動作について説明する。
【0040】
制御回路4は、充電制御スイッチQ21をオンしてから、期間Tbが経過した時刻T33に、第1スイッチング素子Q11をオフさせる。そうすると、第3電流経路Icに流れる2次側電流I2は、次第に減少し、時刻T33から期間Tcが経過した時刻T34に「0(ゼロ)」になる。
【0041】
上記をまとめると、充電制御スイッチQ21をオンする第1タイミングと、第1スイッチング素子Q11をオフする第2タイミングにより、2次側電流I2が流れる期間が規定される。したがって、上記第1及び第2タイミングを制御することで、2次側電流I2が流れる期間である(Tb+Tc)の時間を制御することができ、結果として、第2コンデンサC21の充電電圧を制御することができる。
【0042】
(期間Tdの動作)
次に、図3の期間Tdでの電力変換装置Aの動作について説明する。
【0043】
時刻T34において、制御回路4は、第2スイッチング素子Q12をオンさせる。また、制御回路4は、共振部10の第1スイッチング素子Q1のオフ状態を維持し、充電制御スイッチQ21のオン状態を維持する。なお、図3において、第3電流経路Icに流れる2次側電流I2が「0(ゼロ)」になる時刻と、第2スイッチング素子Q12をオンさせる時刻がともにT34になっているが、後述する図4に示すように両時刻が互いに異なっていてもよい。
【0044】
制御回路4が第2スイッチング素子Q12をオンさせるタイミングは、例えば、上記逆方向の電流が図2Cの矢印で示す方向になる前、すなわち、第1電流経路Iaに流れる電流(1次側電流I1)が順方向に転じる前である。
【0045】
なお、図3では、2次側電流I2が「0(ゼロ)」になる第3タイミングと、制御回路4が第2スイッチング素子をオンさせる第4タイミングとを揃えているが、これに限定されない。例えば、後述する図4の例では、上記第3タイミングと上記第4タイミングとが互いに異なる例を示している。
【0046】
引き続き、共振部10では、第1電流経路Iaに逆方向電流(図2Bの1次側の矢印参照)が流れる。この1次側電流I1は、共振コンデンサC11と、昇圧コンデンサC21と、トランスTR1との共振電流であり、正弦波状に変化する電流である(図3参照)。
【0047】
2次側電流I2が「0(ゼロ)」になると、引き続き、トランスTR1の1次巻線には、逆方向(図2Bで上向き)の1次巻線電圧V1が誘起され、トランスTR1の2次側に、逆方向(図2Bで上向き)の2次巻線電圧V2が誘起される。
【0048】
そうすると、変換部20では、第4電流経路Idに、順方向電流(図2Cの2次側矢印参照)が流れる。このとき、先ほど期間Tbで昇圧コンデンサC21に充電されていた電荷もあわせて放電されるので、出力電圧Voが充電された電荷(充電電圧)に応じた分だけ上昇する。
【0049】
次に、制御回路4は、時刻T36において、第2スイッチング素子Q12及び充電制御スイッチQ21をオフさせる。これにより、共振部10では、共振コンデンサC11と、昇圧コンデンサC21と、トランスTR1との共振作用により、第1スイッチング素子Q11の寄生ダイオードを介して、第1電流経路Iaに、図2Cに示す矢印と逆方向の電流が流れる。
【0050】
このとき、変換部20では、図2Cに示す第4電流経路Idの電流が、期間Tcで2次側電流I2が「0(ゼロ)」になった時点(時刻T34)から流れ始める。そして、時刻T36において第2スイッチング素子Q12オフされると、2次側電流I2は、短時間で「0(ゼロ)」になる(図3の時刻T36から時刻T37の間を参照)。
【0051】
以上をまとめると、本実施形態では、変換部20において、トランスTR1の2次巻線と昇圧コンデンサC21及び整流ダイオードD21とで形成された閉ループ回路21に充電制御スイッチQ21を設けている。そして、このような充電制御スイッチQ21を設けることで、昇圧コンデンサC21の充電電圧を制御することができる。具体的に、充電制御スイッチQ21をオンさせるまでの時間Ta及びオン制御する時間(Tb+Tc)を変更することで、昇圧コンデンサC21に充電する電荷量、ひいては、昇圧コンデンサC21の充電電圧を制御することができる。この昇圧コンデンサC21は、出力電圧Voの昇圧の際に放電するコンデンサなので、昇圧コンデンサC21の充電量を制御することで、電力変換装置Aの出力電圧Voを制御することができる。
【0052】
なお、図3の例では、Tdの期間内に2次側電流I2がプラスに転じていないので、第2スイッチング素子Q12のオン期間は、時間(Tb+Tc)よりも大きく、次のサイクルが始まる時刻T37(T31)までの期間で任意に設定することができる。2次側電流I2がプラスに転じると、逆起電力が発生する場合があるが、本実施形態ではそのようなことがない。
【0053】
-出力電圧Voの制御について-
以下において、電力変換装置Aの出力電圧Voの制御に関し、より具体的に説明する。
【0054】
図5は、一般的なLLC共振回路のスイッチング周波数と出力電圧との関係を示したグラフである。具体的に、図5に特性を例示するLLC共振回路は、本実施形態のように変換部20の閉ループ回路21に充電制御スイッチQ21を設けていないものである。
【0055】
図5において、三角印でプロットしたものが「低入力電圧かつ重負荷」の場合の特性であり、丸印でプロットしたものが「高入力電圧かつ軽負荷」の場合の特性である。図5からわかるように、入力電圧が高くなり、負荷が軽くなると、特性曲線は上側に移動する。
【0056】
図5では、例えば、規定の出力電圧がV21であり、「高入力電圧かつ軽負荷(丸印)」において、出力電圧V21が安定して出力できるように設計した例を示している。このように設計した場合、図5の三角印で示す「低入力電圧かつ重負荷」において規定の出力電圧V21となるように制御ができない。
【0057】
これに対し、「低入力電圧かつ重負荷(三角印)」で出力電圧V21が安定して出力できるようにすることも考えられるが、そうすると「高入力電圧かつ軽負荷(丸印)」で規定の出力電圧V21となるように制御できない。すなわち、一般的なLLC共振回路では、広範囲な入力電圧変動及び負荷変動に対して、規定の出力電圧Voを出力できるように制御することは非常に困難である。
【0058】
例えば、太陽光発電等の自然エネルギーを用いた発電装置では、日射の状態等の環境要因により、電力変換装置に入力される入力電圧が、低電圧から高電圧に大きく触れる可能性がある。また、負荷の状態においても大きく変動する可能性がある。例えば、負荷が需要家内に設置されていると仮定した場合には、電力をほとんど消費しない軽負荷の状態から、電力を大量に消費する重負荷の状態まで幅広く変化する可能性がある。そうすると、一般的なLLC回路では、上記図5で示したような問題が発生する。これに対し、本実施形態に係る電力変換装置Aでは、充電制御スイッチQ21をオン制御する期間である所定時間(Tb+Tc)の長さを変更して昇圧コンデンサC21の充電電圧を制御することで、出力電圧の値を制御できるようにしている。
【0059】
図6は、本実施形態に係る電力変換装置Aにおいて、変換部20の充電制御スイッチQ21のオンするタイミング(図6では位相と記載)と出力電圧との関係を示す図である。図6では、スイッチング周波数を60[kHz]に固定し、充電制御スイッチQ21のオンするタイミングを変えた例を示している。なお、第1スイッチング素子Q11と第2スイッチング素子Q12とのデューティ比は、0.5に設定している。
【0060】
また、図6において、位相0[度]は、充電制御スイッチQ21が共振部10の第1スイッチング素子Q11と同時にオンするタイミングを示している。そして、位相180[度]は、2次巻線電圧V2が逆方向から順方向に切り換わるタイミングを示している。図6に示すように、位相、すなわち、充電制御スイッチQ21のオンするタイミングを変化させることで、出力電圧VoがV21からほぼ「0(ゼロ)」まで変化させることができる(図5では範囲D1に相当)。このように、充電制御スイッチQ21のオンするタイミングで出力電圧を広範囲に制御することができるので、入力電圧変動や負荷変動が発生した場合においても、所望の出力電圧を負荷に供給できるように調整することが可能になる。
【0061】
なお、出力電圧Voがほぼ「0(ゼロ)」になる場合は、充電制御スイッチQ21が常時オフ設定されているときである。以下、具体的に説明する。
【0062】
まず、図3の期間Tdにおいて、制御回路4は、第1スイッチング素子Q11をオフさせ、第2スイッチング素子Q12をオンさせる。そうすると、図2Cに示すように、順方向(図2で上向き)の2次巻線電圧V2が誘起され、昇圧コンデンサC21が逆方向(図2で左向き)に充電される。
【0063】
次に、期間Taから期間Tcにおいて、制御回路4は、第1スイッチング素子Q11をオンさせ、第2スイッチング素子Q12をオフさせる。そうすると、図2Aに示すように、逆方向(図2で下向き)の2次巻線電圧V2が誘起される。ただし、充電制御スイッチQ21がオフ制御されているので第3電流経路Icには電流が流れず、かつ、ダイオードD22にブロックされ第4電流経路Idにも電流が流れないので、昇圧コンデンサC21の充電状態が維持される。
【0064】
その後、図3の期間Tdに進むと、順方向(図2で上向き)の2次巻線電圧V2と、昇圧コンデンサC21の充電電圧とが互いに相殺しあってキャンセルされ、出力電圧Voがほぼ「0(ゼロ)」になる。
【0065】
-無負荷の場合の動作について-
本実施形態におけるLLC共振回路1(電力変換装置A)は、無負荷状態においても安定した安定した共振動作を維持しつつ出力電圧を制御することができるという特徴がある。
【0066】
以下において、図4を参照しつつ、具体的に説明する。図4では、制御回路4が、第1スイッチング素子Q11をオンさせてから充電制御スイッチQ21をオンさせるまでの時間をT1、2次側電流I2が流れている期間をT2、充電制御スイッチQ21のオン期間をT3として説明する。
【0067】
図4に示すように、無負荷の場合、充電制御スイッチQ21をオンさせるタイミングを規定する時間T1が、図3の場合と異なっている。具体的に、時間T1は、第1スイッチング素子Q11のオン期間よりも長い時間、又は、第1スイッチング素子Q11のオン期間の後半と充電制御スイッチQ21のオン期間の前半とが少し重なるような時間に設定するのが好ましい。
【0068】
また、充電制御スイッチQ21のオン期間T3は、2次側電流I2がプラスに転じている期間T2よりも長く設定するのが好ましい。充電制御スイッチQ21のオン期間T3が前述の期間T2より短いと、2次巻線電圧V2に逆起電力が発生する場合があるためである。さらに、充電制御スイッチQ21をオンさせた後に、オフさせるタイミングは、2次電流I2が逆方向から順方向に転じる前に設定するのが好ましい。これにより、2次巻線電圧V2に、逆起電力が発生するのを回避することができる。
【0069】
(その他の実施形態)
以上、本発明の実施形態について説明したが、種々の改変が可能である。
【0070】
例えば、図3の例では、時刻T36において、第2スイッチング素子Q12と充電制御スイッチQ21とを同時にオフさせるものとしているがこれに限定されない。具体的に、充電制御スイッチQ21をオフさせるタイミングは、時刻T34以降であり、第3電流経路Icに流れる電流(2次側電流I2)が順方向に転じるまでの間で任意に設定することが可能である。プラスに転じてからオフさせると、2次巻線電圧に逆起電力が発生する場合があるためである。ただし、充電制御スイッチQ21をオフさせるタイミングを、2次側電流I2が順方向に転じた後に設定してもよい。この場合、閉ループ回路21のスイッチング素子Q21に逆起電力が発生するが、例えば、スイッチング素子Q21の耐圧を高めることで、逆起電力の影響が出ないようにすることができる。
【0071】
また、図7に例示するように、電力変換装置Aに回生部3を設けてもよい。回生部3は、トランスTR1の2次巻線に発生した逆起電力を1次側入力部に回生させるための回路であり、充電制御スイッチQ21に逆起電力に起因する高電圧が印加されるのを防ぐことができる。
【0072】
図7の電力変換装置Aにおいて、回生部3は、トランスTR1の2次巻線の一端と昇圧コンデンサC21との間の中間ノードN22と、トランスTR1の2次巻線の他端との間に接続される。
【0073】
回生部3は、コンデンサC31を介して上記中間ノードN22に1次巻線の一端が接続されたトランスTR3と、トランスTR3の他端と上記中間ノードN22との間に接続されたスイッチング素子Q32とを備えている。さらに、トランスTR3の1次巻線の一端と、トランスTR1の2次巻線の他端との間には、逆方向に接続されたダイオードD31と第2スイッチング素子としてのスイッチング素子Q31が直列に接続されている。
【0074】
そして、回生部3のトランスTR3の2次巻線の一端が順方向接続されたダイオードD32を介して正極側の入力端子INPに接続され、同他端が負極側の入力端子INMに接続されている。上記のトランスTR3、スイッチング素子Q32及びダイオードD32により、フライバック電源が構成されている。
【0075】
さらに、制御回路4は、制御信号Vg11,Vg12,Vg21に加えて、スイッチング素子Q31,Q32をそれぞれオンオフ制御するための制御信号Vg31,Vg32を出力する。
【0076】
それ以外の構成は、図1と同様であり、ここではその詳細な説明を省略する。
【0077】
次に、図7の電力変換装置Aの動作について、図8を参照しつつ具体的に説明する。図8では、時間Th~Tkが、それぞれ、図3の時間Ta~Tdに対応している。以下の説明では、図3との相違点を中心に説明する。
【0078】
図8の期間Thにおいて、充電制御スイッチQ21がオフする少し前の時刻((期間Thの開始時刻)+(T11:Q21のオン期間)-T13)でスイッチング素子Q31に制御信号Vg31として「HIGH」を与えて、スイッチング素子Q31をオンさせる。これにより、仮に充電制御スイッチQ21をオフさせたとしても、2次側電流I2が途切れることなく、コンデンサC31へと流れる。このとき、コンデンサC31の充電が終わるまで、すなわち、充電電流がゼロになるまで、スイッチング素子Q31をオンさせるようにする。これにより、トランスTR1の2次巻線に、逆起電力が発生しない。
【0079】
今度は、次の周期のコンデンサC31の充電開始までに、コンデンサC31に充電された電荷を放電させる必要がある。そこで、制御回路4は、コンデンサC31の充電電圧が、フライバック電源(トランスTR3,スイッチング素子Q32及びダイオードD32)の入力電圧として与えられるようにする。具体的に、制御回路4は、スイッチング素子Q31がオフしてから、すなわち、制御信号Vg31のオン期間T12が経過してから、次回スイッチング素子Q11がオンするまで(次の期間Thが始まるまで)の期間内に、スイッチング素子Q32をオンさせ、コンデンサC31に蓄積された電荷をLLC共振回路1の一次側回路の入力部に回生させる。
【0080】
以上のように、回生部3を設けることにより、充電制御スイッチQ21をオフ制御することによる逆起電力が、トランスTR3を介して電力変換装置Aの入力端子INに回生されるので、充電制御スイッチQ21に逆起電力がかかるのを防ぐことができる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明によると、広範囲な入力電圧変動、負荷変動に対応させてLLC共振回路の出力電圧を制御することができるので、極めて有用である。
【符号の説明】
【0082】
10 共振部
11 スイッチング回路
20 整流部
21 閉ループ回路
C11,C12 共振コンデンサ
TR1 トランス
Q21 スイッチング素子(第1スイッチング素子)
C21 昇圧コンデンサ
D21 整流ダイオード
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5
図6
図7
図8